以下、図面を参照しつつ、本発明の各実施形態について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る油圧ショベル10(作業機械)の側面図である。なお、以後、図1には、「上」、「下」、「前」および「後」の方向が示されているが、当該方向は、本実施形態に係る油圧ショベル10の構造を説明するために便宜上示すものであり、油圧ショベル10の使用態様などを限定するものではない。
油圧ショベル10は、下部走行体11(機械本体)と、下部走行体11の上に縦軸回りに旋回可能に支持された上部旋回体12(機械本体)と、を備える。下部走行体11および上部旋回体12は、油圧ショベル10のベースを構成する。上部旋回体12は、上部フレーム13と、上部フレーム13の上に備えられた運転室14およびカウンタウエイト15と、を備える。上部フレーム13は、水平方向に沿って延びる板状部材からなる。運転室14には、油圧ショベル10の作業者が操作する操作レバー143(図2)などが備えられている。カウンタウエイト15は、上部フレーム13の後方部分に備えられ、油圧ショベル10のバランスを保持する機能を備えている。
更に、上部フレーム13の前方部分には、作業アタッチメント16が装着されている。作業アタッチメント16は、不図示の支持機構によって上部フレーム13に支持されている。作業アタッチメント16は、上部旋回体12に起伏可能に装着されるブーム17(構造体)と、このブーム17の先端に回動可能に連結されるアーム18と、このアーム18の先端に回動可能に連結されるバケット19と、を備える。ブーム17は、上部旋回体12に回動可能に支持されている。アーム18は、ブーム17の先端部に回動可能に支持されている。また、バケット19は、アーム18の先端部に回動可能に支持されている。
作業アタッチメント16には、ブーム用油圧アクチュエータであるブームシリンダ20と、アーム用油圧アクチュエータであるアームシリンダ21と、バケット用油圧アクチュエータであるバケットシリンダ22と、が装着され、これらのシリンダは伸縮可能な油圧シリンダにより構成される。ブームシリンダ20は、作動油の供給を受けることにより伸縮してブーム17を起伏方向に回動させるようにブーム17と上部旋回体12との間に介在する。アームシリンダ21は、作動油の供給を受けることにより伸縮してアーム18をブーム17に対して水平軸回りに回動させるようにアーム18とブーム17との間に介在する。更に、バケットシリンダ22は、作動油の供給を受けることにより伸縮してバケット19をアーム18に対して水平軸回りに回動させるようにバケット19とアーム18との間に介在する。
図2は、本実施形態に係る油圧ショベル10の制御部50のブロック図である。図2を参照して、油圧ショベル10は、更に、油圧ポンプ25と、圧力計26(特性値検出部)と、キースイッチ141と、操作レバー142と、外部光センサ143(外部検出部)と、表示部144と、内部光センサ172と、を備える。
油圧ポンプ25は、可変容量式のポンプであって、油圧ショベル10の不図示のエンジンから入力される動力によって作動油を吐出する。油圧ポンプ25から吐出された作動油は、ブームシリンダ20、アームシリンダ21およびバケットシリンダ22に供給される。なお、作動油の流路において油圧ポンプ25と各シリンダとの間には、不図示のコントロールバルブがそれぞれ配設されている。コントロールバルブは、パイロット操作式の油圧切替弁から構成される。コントロールバルブは、一対のパイロットポートを備えている。コントロールバルブは、当該パイロットポートに入力されるパイロット圧に応じて開弁動作を行い、各ブームシリンダに供給される作動油の流量を変化させる。また、コントロールバルブは、作動油の供給先を、各シリンダのヘッド側油圧室とロッド側油圧室との間で切り替える。本実施形態では、コントロールバルブは3位置切換弁からなり、操作レバー142の操作に応じて切替操作される。この結果、ブーム17の上げ下げ動作、アーム18の押し引き動作およびバケット19の回動動作が操作可能とされる。
圧力計26は、油圧ポンプ25の吐出圧を測定(検出)する。圧力計26によって検出された吐出圧は、後記の負荷状態判定部503によって参照される。当該吐出圧は、ブーム17に付与される外力またはブーム17にかかる応力に対応する特性値に相当する。
キースイッチ141は、油圧ショベル10の不図示のエンジンを起動するために、運転室14内に設けられたスイッチである。キースイッチ141は、油圧ショベル10の作業者によって操作される。
操作レバー142は、油圧ショベル10の各部材を駆動するために、運転室14内に設けられたレバーである。一例として、操作レバー142は、ブーム17、アーム18およびバケット19の各駆動ならびに上部旋回体12の旋回動作のための操作を受け付ける。操作レバー142は、油圧ショベル10の作業者によって操作される。
外部光センサ143は、図1に示すように、運転室14の天井部に備えられている。外部光センサ143は、油圧ショベル10(ブーム17)の外部の明るさを検出する。本実施形態では、外部光センサ143は、公知の照度センサからなる。なお、他の実施形態において、外部光センサ143は、油圧ショベル10の周囲の情報を取得するために備え付けられたカメラなどでもよい。この際、元々油圧ショベル10に取り付けられているカメラ(バックビューモニター、アラウンドビューモニターなどの周辺認識カメラ)の画像の明るさが使用される態様でもよい。
表示部144は、運転室14内に配置され、各種の情報を表示する。一例として、表示部144は、ブーム17に亀裂が発生している亀裂発生情報を表示することで、作業者に報知、警告する。
内部光センサ172は、ブーム17の内部に取り付けられている。図3は、本実施形態に係る油圧ショベル10のブーム17の内部の様子を示す模式的な斜視図である。ブーム17は、外側面と内側面と含み所定の厚さを備えた筒状の構造体であって、内部に前記内側面によって画定される内部空間Sが形成されている。また、図3において、本体側軸支部17Aおよびアーム側軸支部17Bは、ブーム17の両端部に配置された軸支部である。本体側軸支部17Aは、上部旋回体12に回動可能に支持され、ブーム17の回動における支点となる。アーム側軸支部17Bは、アーム18を回動可能に支持するための軸支部である。なお、図3では、ブーム17の内部を説明するために、透視図で示している。実際には、ブーム17は鋼材などからなり、通常では光を透過させない。以後の図面においても同様である。
内部光センサ172は、受光部172Aを備えている。内部光センサ172は、受光部172Aが内部空間Sに露出するようにブーム17に取り付けられ、内部空間Sの明るさを検出する。本実施形態では、内部光センサ172は、公知の照度センサからなる。なお、内部光センサ172はブーム17に直接取り付けられてもよいし、治具を介して取り付けられてもよい。
なお、内部光センサ172のケーブル172S(電源供給線および信号伝達線)はブーム17の内部を這うように配設されたのち、上部旋回体12に備えられた不図示の電源供給部(バッテリ)および後記の制御部50(メカトロコントローラ)に接続されるように、ブーム17の外部に引き出されている。この際、ケーブル172Sを引き出すために、ブーム17に小さな穴が開口されている場合は、内部空間Sに光が入らないように当該穴部分にシールをすることが望ましい。また、ケーブル172Sは必ずしもブーム17の内部を這うように配設される必要はないが、ブーム17の内部に配設される部分が多い方が、外力によるケーブル172Sの損傷リスクや日光・風雨等による劣化進展リスクが低下する。また、内部光センサ172に対する電源供給には、電池による供給に加え、振動エネルギー等を活用した発電素子・発電手段などが用いられてもよい。
制御部50は、油圧ショベル10の動作を統括的に制御するもので、制御信号の送受先として、キースイッチ141、操作レバー142、外部光センサ143、表示部144、油圧ポンプ25および内部光センサ172などに電気的に接続されている。なお、制御部50は、油圧ショベル10に備えられたその他のユニットにも電気的に接続されている。
制御部50は、CPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、CPUの作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)等から構成され、CPUが前記制御プログラムを実行することにより、駆動制御部501、演算部502、負荷状態判定部503、亀裂発生判定部504、出力部505、記憶部506および補正部507を機能的に有するよう動作する。
駆動制御部501は、操作レバー142に入力された操作の量に応じて、油圧ポンプ25および不図示のコントロールバルブを制御する。この結果、ブーム17、アーム18、バケット19の駆動ならびに上部旋回体12の旋回動作が実行される。
演算部502は、外部光センサ143および内部光センサ172の検出結果の平均値を演算する。本実施形態では、演算部502は、予め設定された検出時間(1〜10秒)の間の各センサの受光量を平均処理する。
負荷状態判定部503は、圧力計26によって検出される油圧ポンプ25の吐出圧に応じて、ブーム17の負荷状態を判定する。ブーム17の負荷状態とは、ブーム17に生じた亀裂が開くような負荷がブーム17に掛かっている状態である。本実施形態では、負荷状態判定部503は、圧力計26によって検出されたポンプ圧P(吐出圧)が所定の値を超えた場合に、ブーム17が前記負荷状態であると判定する。
亀裂発生判定部504は、内部光センサ172の検出結果に応じて、ブーム17における前記外側面と前記内側面とを連通する亀裂の発生を判定する。本実施形態では、亀裂発生判定部504は、負荷状態判定部503によってブーム17が負荷状態であると判定された際に、内部光センサ172の検出結果に応じてブーム17の亀裂の発生を判定する。
出力部505は、亀裂発生判定部504によってブーム17に亀裂が発生していると判定された場合に、表示部144に対して警告情報を出力し、当該情報を表示させる。
記憶部506は、負荷状態判定部503および亀裂発生判定部504によって参照される各種の閾値情報を記憶している。
補正部507は、内部光センサ172の検出結果を補正する。本実施形態では、補正部507は、外部光センサ143の検出結果(外部の明るさ)に応じて、内部光センサ172の検出結果(ブーム17の内部空間Sの明るさ)を補正する。
次に、本実施形態に係る油圧ショベル10において、亀裂発生判定部504(図2)がブーム17の亀裂発生を検出するフローについて詳述する。本実施形態では、亀裂発生判定部504が2つの亀裂検出処理フローを備えている。図4は、本実施形態に係る油圧ショベル10の亀裂検出処理の第1フローチャートである。図5は、本実施形態に係る油圧ショベル10の亀裂検出処理の第2フローチャートである。なお、他の実施形態において、亀裂発生判定部504は、第1フローチャートおよび第2フローチャートの何れか一方を実行するものでもよい。
図4を参照して、作業者によってキースイッチ141がオンされると(ステップS01でYES)、亀裂発生判定部504(図2)は、操作レバー142の操作の量を確認し、油圧ショベル10が無負荷アイドル状態か否かを判定する(ステップS02)。この際、亀裂発生判定部504は、操作レバー142に接続された不図示のリモコン弁の下流側のパイロット油の圧力の大きさによって、油圧ショベル10のアイドル状態を確認することができる。油圧ショベル10が無負荷アイドル状態の場合(ステップS02でYES)、亀裂発生判定部504は内部光センサ172を制御して内部空間Sの光量L0を計測する(ステップS08)。この際、亀裂発生判定部504は、計測、取得された光量L0を記憶部506(図2)に記憶させる。当該光量L0は、亀裂判定処理のための光量の初期値として、後記のステップで参照される。
やがて、油圧ショベル10の使用開始に伴って、作業者によって操作レバー142が操作され、油圧ショベル10のアイドル状態が解除されると(ステップS02でNO)、亀裂発生判定部504は、操作レバー142にブーム17のブーム上げ動作の指令が入力されているか否かを判定する(ステップS03)。そして、ブーム上げ動作の指令が入力されている場合(ステップS03でYES)、亀裂発生判定部504は、操作レバー142にアーム18のアーム引き動作の指令が入力されているか否かを判定する(ステップS04)。そして、ステップS04でアーム引き動作の指令が入力されている場合(ステップS04でYES)、亀裂発生判定部504は、圧力計26の検出結果を参照し、油圧ポンプ25のポンプ圧Pと予め記憶部506に格納された閾値Poとの大小関係を比較する(ステップS05)。
ステップS05でポンプ圧P≧Poの場合(ステップS05でYES)、亀裂発生判定部504はブーム17が負荷状態にあると判定する。前述のように、ブーム17の負荷状態とは、ブーム17に生じた亀裂が開くような負荷がブーム17に掛かっている状態である。すなわち、ブーム17のブーム上げ動作が実行され、かつ、アーム18のアーム引き動作が実行され、更に、油圧ポンプ25のポンプ圧Pが所定の値以上とされている場合には、油圧ショベル10が負荷の大きい作業を実行していることとなる。この場合、大きな外力がブーム17にかかり、ブーム17の各壁面にも大きな応力がかかっている。したがって、ブーム17の表面に小さな亀裂が生じている場合、その亀裂が開きやすく、ブーム17の外側面から内側面を貫通して、外部の光が内部空間S(図3)に侵入しやすい。このため、亀裂発生判定部504は、ブーム17の負荷状態において内部光センサ172を制御して、内部空間Sの光量L1を計測する(ステップS06)。内部光センサ172は、光量L1に応じた信号を出力する。内部光センサ172から出力された信号は、制御部50に取り込まれる(なお、内部光センサ172がアナログセンサの場合には、内部光センサ172から出力された信号がA/D変換を経て取り込まれる)。また、内部光センサ172の出力信号は、一定期間(たとえば1日や1時間)に亘って所定の間隔で出力され、演算部502によって平均化処理された後、演算部502に記憶されてもよい。以下では、光量L1に加え、光量L1に応じた出力信号および平均値を含む概念を、光量L1として説明する。後述の他の実施形態においても同様である。
次に、亀裂発生判定部504は、演算部502(図2)を制御して、ステップS06で取得した光量L1と記憶部506に格納された光量L0との光量差ΔLを計算させる(ステップS07)。更に、亀裂発生判定部504は、計算された光量差ΔLと予め記憶部506に記憶された閾値LNとの大小関係を判定する(ステップS09)。なお、閾値LNは、ブーム17において亀裂が実際に発生している場合の光量差ΔLを予め複数の実験に基づいて導出したものである。ステップS09において、光量差ΔL≧LNの場合(ステップS09でYES)、亀裂発生判定部504は、ブーム17に亀裂(図3の符号J参照)が発生しており、ブーム17の負荷状態において外部の光が内部空間Sに侵入していると判定する。そして、亀裂発生判定部504は、表示部144に対して、ブーム17の亀裂発生アラーム情報を表示させる(ステップS10)。なお、亀裂発生判定部504は、表示部144への表示に代えて、遠隔地の情報センターに亀裂発生アラームを報知してもよい。いずれの場合においても、光、音、メールなどによって報知が行われてもよい。なお、ステップS03でブーム17のブーム上げ動作が行われていない場合、ステップS04でアーム18のアーム引き動作が行われていない場合、およびステップS05でポンプ圧P<Poの場合には、それぞれ、ステップS02以降のフローが継続される。
以上のように、本実施形態の第1フロー(図4)では、亀裂発生判定部504が内部光センサ172の検出結果に応じて、ブーム17における外側面と内側面とを連通する亀裂の発生を判定する。このような構成によれば、外部の光のブーム17の内部空間Sへの侵入に基づいて、ブーム17に亀裂が生じ貫通したことを容易に検出することができる。このため、作業者の目視や耳などに依存することなく、ブーム17の内部空間Sの幅広い範囲で亀裂を検出することができる。特に、内部光センサ172の受光部172Aが内部空間Sに露出するように配置されているため、亀裂がブーム17の壁部や溶接ビードを貫通したときに内部空間Sに入り込む光が精度良く捉えられる。また、内部光センサ172として汎用されている照度センサなどをブーム17の内部空間Sに取り付ければよく、油圧ショベル10のコストが低減される。
また、上記の第1フローでは、亀裂発生判定部504は、負荷状態判定部503によってブーム17が負荷状態であると判定された際に、内部光センサ172の検出結果に応じて亀裂の発生を判定する。ブーム17の壁部を貫通した亀裂が通常の状態(アイドル状態)では閉じている場合、または、亀裂が多少開いているが板厚方向に沿ってジグザグ形状となっている場合には、外部の光が途中で散乱・減衰するためブーム17の内部空間Sまで届かない場合がある。このような場合でも、ブーム17に捻りや変形が生じるような負荷(外力、応力)がかかっている場合には、亀裂の隙間が広がり、ブーム17の内部空間Sに光が侵入しやすくなる。したがって、ブーム17の負荷状態において、内部光センサ172の検出結果を参照することで、早い段階で亀裂の発生を検出することができる。ここで、図4のステップS03およびS04では、ブーム17に負荷がかかっていることを検出するステップであり、ステップS05は、ブーム17にかかっている負荷が所定の値以上であることをポンプ圧Pの大きさによって検出するステップに相当する。
また、上記の構成によれば、筒状のブーム17の内部空間Sが完全に密閉されていなくても、内部空間Sの明るさの変化に基づいて、亀裂の発生を検出することができる。なお、内部空間Sが密閉されている場合には、内部空間Sが極めて暗いため、僅かな光の侵入でも検出されやすい。このため、内部空間Sの明るさの変化に基づいて、亀裂が精度良く検出される。このようにブーム17の内部空間Sが極めて暗い場合には、明るさの検出に高い精度が要求されないため、内部光センサ172として安価なセンサを採用することができる。また、上記の構成によれば、内部光センサ172の受光部172Aがブーム17の内部に配置されるため、外部の汚れた環境(土砂・粉じん等)によって内部光センサ172の受光部172Aが汚れることが防止される。更に、衝撃などで内部光センサ172が破損する可能性が低く、長期間にわたって亀裂の発生を安定して監視することができる。また、上記の構成によれば、ブーム17およびアーム18の駆動状態において圧力計26が計測する油圧ポンプ25の吐出圧に応じて、負荷状態判定部503がブーム17の負荷状態を容易に検出することができる。なお、負荷状態判定部503は、ブーム17のみが駆動されている際の油圧ポンプ25の吐出圧に応じて、ブーム17の負荷状態を検出してもよい。
なお、ブーム17に発生する亀裂については、亀裂が発生した瞬間(小さな亀裂の発生段階)を必ずしも捉える必要はない。通常、作業者が亀裂を発生した場合であっても、すぐに修理することはなく、亀裂の成長を定期的、継続的に確認し、亀裂が進展した時点でブーム17の修理を行えばよい。このため、本実施形態では、亀裂が発生した瞬間ではなく、ブーム17の壁部を貫通しある程度の大きさになった亀裂を、安価かつ確実に捉えることができる。亀裂がある程度進展した状態であっても、一度亀裂の発生を検出することができれば、定期的にサービスマンが油圧ショベル10を巡回して、亀裂を継続的に確認することによって、ブーム17が破損に至る前の段階で修理対応が可能となる。なお、ブーム17において亀裂の入り易い領域が予め想定される場合には、その近くに内部光センサ172を取り付けてもよい。また、内部光センサ172の受光部172Aが亀裂の入り易い領域に対向するように内部光センサ172が取り付けられると、更に精度良く亀裂を検出することができる。
なお、図4の第1フローでは、夜間やトンネル内での作業時のように油圧ショベル10の周囲が暗い場合には、亀裂の検出を精度良く実行できない。油圧ショベル10の作業者が昼間に実行された亀裂検出フローの結果を表示部144などにおいて選択的に確認すれば、当該問題が容易に解消できるが、本実施形態では、亀裂発生判定部504が周囲の明るさを考慮した第2フローを更に備えている。第2フローでは、操作レバー142の操作に関わらず、ブーム17の亀裂の有無を判定する。
図5を参照して、キースイッチ141がオンされると(ステップS11でYES)、亀裂発生判定部504は、外部光センサ143および内部光センサ172を制御して、ブーム17の外部および内部の明るさ(光量)を計測させる(ステップS12)。この際、外部光センサ143および内部光センサ172は、所定の時間内において、明るさデータを複数回取得する。次に、亀裂発生判定部504は、演算部502(図2)を制御して、外部光センサ143および内部光センサ172が取得した複数の明るさデータの平均値LO、LIをそれぞれ算出させる(ステップS13)。
次に、亀裂発生判定部504は、算出された外部光量の平均値LOと予め記憶部506に記憶された閾値LKとの大小関係を比較する(ステップS14)。閾値LKは、ブーム17の亀裂判定に必要な外部光量として予め実験によって導出された値である。ステップS14において、外部光量平均値LO≧LKの場合(ステップS14でYES)、亀裂発生判定部504は、ブーム17の亀裂判定に必要な外部光量が得られていると判定し、演算部502を制御して光量比LTを算出させる(ステップS15)。ここで、光量比LTとは、内部光量平均値LIを外部光量平均値LOで除した値である。なお、ステップS14において、外部光量平均値LO<LKの場合(ステップS14でNO)、亀裂発生判定部504は、ブーム17の亀裂判定に必要な外部光量が得られていないと判定し、ステップS12以降のフローを繰り返す。
ステップS15において光量比LTが算出されると、亀裂発生判定部504は、算出された光量比LTと予め記憶部506に記憶された閾値LMとの大小関係を比較する(ステップS16)。閾値LMは、ブーム17に亀裂が発生している場合の光量比として予め実験によって導出された値である。なお、演算部502には、外部光量平均値LOの大きさに応じて複数の閾値LMが格納されていることが望ましい。ステップS16において、光量比LT≧LMの場合(ステップS16でYES)、亀裂発生判定部504は、ブーム17に亀裂が発生しており、外部の光が内部空間Sに侵入していると判定する。そして、亀裂発生判定部504は、表示部144に対して、ブーム17の亀裂発生アラーム情報を表示させる(ステップS17)。なお、この場合も、亀裂発生判定部504は、表示部144への表示に代えて、遠隔地の情報センターに亀裂発生アラームを報知してもよい。
以上のように、本実施形態の第2フロー(図5)では、亀裂発生判定部504が内部光センサ172および外部光センサ143の検出結果に応じて、ブーム17の亀裂の発生を判定する。このため、油圧ショベル10(ブーム17)の周囲の明るさに応じて、内部光センサ172の検出光量に誤差が生じることが抑止される。この結果、亀裂の発生を更に精度良く検出することができる。
また、当該第2フローでは、亀裂発生判定部504は、外部光センサ143の検出結果が所定の明るさを超えた場合(図5のステップS14でYES)に、内部光センサ172の検出結果に応じて、亀裂の発生を判定する。このため、亀裂発生判定部504は、亀裂判定のために必要な外部光量が存在する場合に限って、亀裂判定処理を実行する。この結果、精度の低い亀裂判定処理が実行されることが抑止される。換言すれば、第2フローでは、外部環境の明るさの影響が打ち消され、安定して亀裂の貫通を把握することができる。
なお、亀裂発生判定部504は、ステップS15において算出された光量比LTの大きさに応じて、発生が推定される亀裂の大きさに関する情報を表示部144などに表示してもよい。外部光量に対する内部光量の大きさが大きいほど、大きな亀裂が発生している可能性が高いためである。この場合、作業者に対して、亀裂に対する対応の緊急性を報知することができる。
また、図4の第1フローを実行する場合も、亀裂発生判定部504が予め外部光センサ143の検出結果を参照し、油圧ショベル10の周辺が所定の明るさ以上の場合に、第1フローを実行してもよい。更に、補正部507が、内部光センサ172が検出した内部空間Sの光量を、外部光センサ143が検出した外部光量に応じて補正してもよい。一例として、亀裂発生判定部504が外部の光が弱いと判定した場合には、補正部507が内部光センサ172の検出結果を所定の割合で増幅した上で、亀裂発生判定部504が亀裂の判定を行ってもよい。
次に、本発明の第2実施形態について、図6に基づいて説明する。図6は、本実施形態に係る油圧ショベルのブーム17Mの内部の様子を示す模式的な斜視図である。本実施形態では、先の第1実施形態と比較して、ブーム17Mの内部構造において相違するため、当該相違点について説明し、その他の点の説明を省略する。
図6を参照して、ブーム17Mは、開口部17Hと、隔壁173(隔離体)と、を備える。開口部17Hは、本体側軸支部17Aとアーム側軸支部17Bとの間において、ブーム17Mの壁部に開口されている。開口部17Hは、ブーム17Mの外側面と内側面とを連通し、内部空間Sに繋がっている。開口部17Hは、ブーム17Mの内部をチェック、メンテナンスするために開口されている。
隔壁173は、ブーム17Mの内側面に連結され、内部空間Sの一端側(本体側軸支部17A側)に閉空間を形成する。隔壁173は、ブーム17Mの長手方向と直交するように配置されている。また、本実施形態では、隔壁173上に内部光センサ172が固定されている。この結果、内部光センサ172の受光部の周囲には、隔壁173およびブーム17の内側面によって画定された閉空間が形成される。
図6に示されるブーム17Mでは、開口部17Hが内部空間Sに連通しているため、外部の光が内部空間Sに入りこみやすい。このため、先の第1実施形態の第1フローまたは第2フローが実行されても、亀裂から侵入する光の光量変化が内部光センサ172によって検出されにくい場合がある。一方、本実施形態では、隔壁173が内部光センサ172の周囲に閉空間を形成している。このため、内部光センサ172の周囲が暗い状態に維持され、亀裂の発生を安定して検出することができる。なお、図6において、複数の隔壁173が、ブーム17Mの内部空間Sのその他の領域に配置されてもよい。
次に、本発明の第3実施形態について、図7および図8に基づいて説明する。図7は、本実施形態に係る油圧ショベルのブーム17Nの内部の様子を示す模式的な斜視図である。図8は、ブーム17Nの内部の様子を示す模式的な拡大断面図である。なお、図8では、ブーム17Nの外側にOUTと示し、ブーム17の内側にINと示している。本実施形態では、先の第2実施形態と比較して、ブーム17Nの内部構造において相違するため、当該相違点について説明し、その他の点の説明を省略する。
図6を参照して、ブーム17Nは、開口部17Hに加え、隔離体174を備えている。隔離体174は箱型形状からなり、ブーム17Nの壁部170(鋼板)の内側面に連結されている。隔離体174は、壁部170との間で閉空間を形成している。本実施形態では、内部光センサ172の受光部172Aが壁部170の内側面に対向するように、隔離体174の内面に内部光センサ172が固定されている。このような構成においても、内部光センサ172の受光部172Aの周囲が暗い状態に維持され、亀裂の発生を安定して検出することができる。また、受光部172Aがブーム17の内側面に対向して配置されるため、亀裂から侵入した光を内部光センサ172が安定して検出することができる。なお、ブーム17Nにおいて応力が集中しやすく、亀裂が発生しやすい「要注意領域AE」にこのような隔離体174および内部光センサ172が配置されることは望ましい。
次に、本発明の第4実施形態について、図9に基づいて説明する。図9は、本実施形態に係る油圧ショベルのブーム17Pの内部の様子を示す模式的な斜視図である。本実施形態では、先の第1実施形態と比較して、内部光センサ172の配置において相違するため、当該相違点について説明し、その他の点の説明を省略する。
図9を参照して、本実施形態では、複数の内部光センサ172がブーム17Pの内側面に固定されている。各内部光センサ172の受光部は、内部空間Sに露出している。また、それぞれの内部光センサ172は、ブーム17の内側面のうち互いに交差する異なる面にそれぞれ固定されている。このような構成においては、各内部光センサ172の受光部が、異なる内側面に発生した亀裂から侵入した光を受光することができる。このため、ブーム17に発生した亀裂を早期かつ精度良く検出することができる。また、図9の複数の内部光センサ172の受光量を比較することで、亀裂の発生場所を大まかに検出することができる。亀裂に近い位置に配置される内部光センサ172の方がより大きな光量を受光するためである。また、複数の内部光センサ172の検出結果を比較することで、誤検出の可能性を低減することができる。
次に、本発明の第5実施形態について、図10に基づいて説明する。図10は、本実施形態に係る油圧ショベルの内部光センサ172がブームに取り付けられた様子を示す模式的な拡大断面図である。なお、図10では、ブームの外側にOUTと示し、ブームの内側にINと示している。本実施形態では、先の第1実施形態と比較して、内部光センサ172の取付構造において相違するため、当該相違点について説明し、その他の点の説明を省略する。
本実施形態では、ブームが、壁部170と、取り付けホルダ175と、を備えている。壁部170には、壁部170の外側面と内側面とを連通するように開口された孔部IHが開口されている。内部光センサ172は、受光部172Aが孔部IHを通過して内部空間Sに露出するように、取り付けホルダ175に着脱可能とされている。一例として、取り付けホルダ175にはねじ切りが施されており、作業者が、外周部にネジ形状を有する内部光センサ172を回転させながら取り付けホルダ175に固定すればよい。内部光センサ172のケーブル172Sは、ブームの外側面に沿って引き回される。このような構成の場合、油圧ショベル10の設置現場で、内部光センサ172を後付することができる。したがって、油圧ショベル10の移動時に内部光センサ172が損傷、破損することが抑止される。また、仮に内部光センサ172が故障した場合でも、内部光センサ172を容易に交換することができる。なお、ブームの壁部170には、複数の孔部IHが形成されており、作業内容に応じて必要な箇所に内部光センサ172が取り付けられてもよい。この場合、内部光センサ172が不要な箇所においては、孔部IHに不図示のキャップなどが装着されればよい。
次に、本発明の第6実施形態について、図11に基づいて説明する。図11は、本実施形態に係る油圧ショベルの内部光センサ172がブームに取り付けられた様子を示す模式的な拡大断面図である。なお、図11では、ブームの外側にOUTと示し、ブームの内側にINと示している。本実施形態では、先の第5実施形態と比較して、内部光センサ172の構造において相違するため、当該相違点について説明し、その他の点の説明を省略する。
本実施形態では、内部光センサ172が、孔部IH(図10)に挿入されるセンサ本体と、センサ本体の外側面側に電気的に接続され、内部空間Sの明るさに応じた出力信号を出力する基板部176と、を備える。また、基板部176には、不図示の電池または振動発電装置が内蔵されている。更に、基板部176は、前記出力信号を送信可能な不図示の無線アンテナ(無線通信装置)を備えている。このような構成によれば、ケーブル172S(電源供給線や信号伝達線)を長い距離にわたってブーム17の外部に這わす必要がなく、ケーブル172Sの断線リスクが低減される。また、ブーム17の製造段階でブーム17の内部空間Sに内部光センサ172を装着する場合と比較して、ブーム17の製造上の工数を低減することができる。また、ブーム17の内側面に剛性を向上するためのリブなどを配置することが可能となり、ブーム17の設計上の自由度を向上することができる。
なお、図10および図11に示される内部光センサ172と取り付けホルダ175とは、 一体的なユニットから構成されるものでもよい。また、ブーム17の外側から内部光センサ172を覆うように、不図示のカバーが装着されてもよい。この場合、内部光センサ172の破損、損傷が更に防止される。
以上、本発明の各実施形態に係る油圧ショベル10(作業機械)について説明した。なお、このような油圧ショベル10において実行される亀裂検出方法は、油圧ショベル10の上部旋回体12に支持され、外側面と内側面と含む筒状のブーム17であって、内部に内側面によって画定される内部空間Sが形成されているブーム17に発生する亀裂を検出する亀裂検出方法である。そして、当該亀裂検出方法では、内部空間Sの明るさを検出する内部光センサ172の検出結果に応じて、ブーム17における外側面と内側面とを連通する亀裂の発生を判定する。内部光センサ172は、受光部172Aを備え、受光部172Aがブーム17の内部空間Sに露出するようにブーム17に取り付けられる。
なお、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではない。本発明に係る作業機械として、以下のような変形実施形態が可能である。
(1)上記の実施形態では、亀裂が発生する構造体としてブーム17を用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。他の構造体として、アーム18や上部旋回体12の内部に内部光センサ172が配置され、亀裂の発生が判定される態様でもよい。
(2)上記の第1実施形態では、図4のステップS07において、所定の初期値(光量ΔL0)に対する内部光センサ172の検出結果(光量ΔL1)の差分(光量差ΔL)が所定の閾値を超え場合に、亀裂発生判定部504が、亀裂が発生したと判定する態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。所定の初期値(光量ΔL0)は、油圧ショベル10の工場出荷時に、演算部502に記憶されてもよい。更に、亀裂発生判定部504は、内部光センサ172の検出結果が所定の閾値を超えた場合、または、前回の検出結果や過去の検出結果に対する内部光センサ172の検出結果の差分が所定の閾値を超えた場合に、ブーム17に亀裂が発生したと判定するものでもよい。これらの場合にも、内部光センサ172の検出結果に基づいて、容易に亀裂の発生を判定することができる。また、内部光センサ172の検出結果(光量ΔL1)の大きさの変化を時系列に沿って記憶部506に記憶し、光量ΔL1が急激に増大した際に、亀裂が発生したと判定する態様でもよい。また、亀裂発生判定部504が、光量ΔL1の増大傾向を表示部144または遠隔地の情報センターに報知することで、サービスマンの巡回頻度やタイミングを好適に決定することができる。
(3)また、上記の実施形態では、本発明に係る作業機械として、油圧ショベル10を用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明に係る作業機械は、クレーン、解体機、掘削機、ハンドリング機などであってもよい。また、作業機械は、油圧ショベル10のように、下部走行体11および上部旋回体12の上下に分離した車体を備えることなく、単体の車体からなるものでもよい。また、作業機械は油圧によって駆動されるものに限定されるものではない。
(4)また、上記の実施形態では、内部光センサ172および外部光センサ143が検出する光量(明るさ)に応じた出力信号が、平均化処理された後、他の閾値と比較される態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。内部光センサ172および外部光センサ143が検出する光量の最大値や上位10点の平均値に基づいて、亀裂の判定が実行される態様でもよい。最大値が使用されることによって、貫通した亀裂から最も光が内部空間Sに侵入した状態を検出することができる。このため、各センサの出力の平均値によって亀裂が判定される場合と比較して、早い段階で亀裂を検出することができる。一方、最大値に基づく誤検知を抑止するために、最大値と平均値と併用することで、亀裂を早期に検出しつつ誤検知を防ぐ態様でもよい。
また、上記の各実施形態では、油圧ショベル10の制御部50が亀裂の発生を判定する態様について説明したが、各センサの出力に基づいて演算部502が算出した最大値や平均値を、遠隔通信手段によって情報センター側(遠隔で情報を収集し活用する組織)に送信する態様でもよい。そして、情報センター側で各油圧ショベル10の機体ごとにそれらの値が保存され、情報センターの処理装置が過去の検出結果(光量)の時系列変化を検証する態様でもよい。この場合、出荷後の初期段階からの内部光センサ172の出力の変化量が所定の閾値を越えた場合に、その機体の番号とアラームメッセージとを不図示の表示パネルに表示し、情報センター側で亀裂の発生を把握する態様でもよい。
(5)また、上記の第1実施形態では、油圧ポンプ25のポンプ圧Pに基づいてブーム17が負荷状態であることが判定され、当該負荷状態において亀裂の発生が判定される態様にて説明した。このような処理では、油圧ショベル10の作業状態において、亀裂の判定を実行することができる。なお、本発明はこれに限定されるものではない。油圧ショベル10(図1)において、バケット19が地面を強く押圧しながら、作業アタッチメント16が機械本体(下部走行体11、上部旋回体12)の前方部分を上方に浮き上がらせるような、いわゆる車体持ち上げモードが装備されている場合には、当該車体持ち上げモードの実行に伴って、亀裂発生判定部504が亀裂判定を実行する態様でもよい。バケット19、アーム18およびブーム17を支持体として、油圧ショベル10の機械本体が持ち上げられる場合には、各構造体に強い外力が付与されるため、亀裂の一時的な開きが促進される。
更に、図12は、本変形実施形態に係る油圧ショベル(作業機)において、ブームに付与される外力と内部光センサ172(図3)が出力する内部光量との関係を示す散布図である。以下、図1乃至図3、図12を参照して、本変形実施形態について説明する。
前述のように、ブーム17の構造によっては、ブーム17にかかる外力が小さい場合には亀裂が閉じたままであり、ブーム17に大きな外力が加わった場合に亀裂が広がることがある。このような場合、負荷の小さな作業をした作業日には亀裂が閉じたまま、あるいは、少ししか広がることがないため、内部光センサ172で検出される光量は小さくなる。一方、負荷の大きな作業をした作業日には、内部光センサ172で検出される光量が大きくなる。このため、作業日毎の負荷によって内部光センサ172の検出結果が変動することがあり、亀裂の発生、進展の把握に誤差が生じる可能性がある。
このため、本変形実施形態では、油圧ショベル10において、亀裂発生判定部504が、演算部502を制御して、ブーム17、アーム18およびバケット19(いずれも構造体)のそれぞれの角度(姿勢角)を計測する。姿勢角が検出される態様として、各部材が回動するリンク構造の回転軸部分に公知のポテンショメータが取り付けられ姿勢角が検出される態様や、各シリンダ20〜22(図2)のシリンダストロークが計測され、シリンダと2つのリンク部材(ブームやアームなど)とがなす三角形状から姿勢角が算出される態様、更には、公知の情報化施工で使われるような加速度センサやジャイロセンサを含む角度センサなどによって姿勢角が検出される態様などがあげられる。
次に、亀裂発生判定部504は、シリンダ20〜22(図2)の油圧シリンダのヘッド圧とロッド圧とを不図示の圧力センサによって計測する。ここで、ヘッド側の断面積およびロッド側の断面積はいずれも既知であるため、油圧シリンダに加わっている荷重が計算可能とされる。
以上の処理によって、ブーム17、アーム18およびバケット19の各姿勢角と油圧シリンダに加わる荷重の大きさとが算出されるため、各構造体に加わっている外力の向きと大きさとを計算(推定)することができる。さらには、公知の構造力学上の演算手法によって、各構造体の各部位の応力を計算することができる。
そして、各構造体に加わる外力の大きさ(または外力の特定方向の成分)、あるいは、応力の大きさが演算部502によって計算されると、亀裂発生判定部504は、上記の外力または応力が所定の閾値以上となったときに、内部光センサ172の出力(光量)を記憶部506に記憶させる。更に、所定の期間の間に記憶部506に蓄積された光量の値の平均値を演算部502が計算する。そして、この平均値の変化(初期状態からの変化)が所定の閾値を超えた場合に、亀裂発生判定部504が構造体に亀裂が入ったと判定し、表示部144などにアラーム情報を出力する。
以上のような処理によっても、油圧ショベル10の無負荷アイドラ状態では亀裂が閉じたままであり、ブーム17に外力がかかったときに亀裂が広がるような場合に、外力に応じて内部光センサ172の出力が変化することが考慮された上で、亀裂の発生が安定して判定される。また、このような構成においては、亀裂の大きさを定量的に把握することが可能となる。
なお、油圧ショベル10において発生する外力(または応力)の一定時間(たとえば1時間)の平均値と、内部光センサ172の値の平均値の値とを図12のグラフのように蓄積し、回帰線の相関係数を求めてもよい。上記の相関係数が大きい場合、外力に応じて内部光センサ172の値が変化するということを意味する。すなわち、亀裂がブーム17の内外を貫通し、広がっていることの根拠となる。したがって、相関係数の大きさと内部光センサ172の出力の大きさとに基づいて、より信頼性の高い亀裂判定を実行することができる。
さらに、推定される外力の値と内部光センサ172の出力とを遠隔地の情報センター側に送信し、それらの関係が散布図にプロットされ、亀裂の発生が判断されてもよい。例えば、図12のように外力と内部光センサ172の値(光量)との関係に異常値が存在した場合や、外力が所定の値を超えた場合に光量が増え出すような非線形の関係が外力と光量との間に存在する場合には、当該判定方法が有効となる。
以上のように、本変形実施形態では、亀裂発生判定部504は、特性値検出部によって検出される特性値(外力の大きさ)と内部光センサの検出結果との相関関係における相関係数が所定の値を超えた場合に、構造体に前記亀裂が発生したと判定する。このため、亀裂判定における誤検知の確率を減らし、信頼性の高い亀裂判定を実行することができる。