JP6778681B2 - Hmgb1媒介性炎症の治療 - Google Patents

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Description

(関連出願の相互参照)
本願は、2014年12月12日に出願された、シリアル番号が62/090,934の米国仮特許出願、及び、2015年9月23日に出願された、シリアル番号が62/222,486の米国仮特許出願に基づく優先権を出張し、それらの全文を引用により該当出願に組み込む。
(政府の資金援助)
本発明は、米国国立衛生研究所及び米国国立癌症研究所(the National Institutes of Health and the National Cancer Institute)が付与した支援番号がRO1GM62508、RO1GM098446、5P50GM053789、RO1GM107876及びR01AT005076の政府支援によってなされた。よって、政府は本発明に一定の権利を有する。
本願は、ASCIIフォームで電子的に提出された配列表を含み、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。前記ASCIIのコピーは2015年12月14日に作成され、HMGB1 NSLIJ−024062_ST25と命名し、サイズが4096バイトである。
感染又は損傷後、即時型宿主炎症反応は、病原又は損傷関連分子モード(PAMPs又はDAMPs)を効果的に識別できる自然免疫細胞の受容体により媒介される。たとえば、細菌エンドトキシン(リポ多糖類、LPS)に対する哺乳動物応答はLPS結合タンパク質(LBP)、CD14、MD2及びTLR4によって媒介される。LPSを捕捉した後、LBPはそれをCD14とMD2に移し、次にCD14とMD2はLPSをシグナル伝達型高親和性膜貫通Toll様(Toll−like)レセプター4(TLR4)に輸送する(Nagai等,Nat Immunol,3:667−672,2002)。LPSとTLR4の組み合わせは「早期」(例えばTNF、IL−1、IFN−β)と「後期」前炎症性メディエーター(たとえば、HMGB1)の順次放出を誘発する(Wang等,Science,285:248−251,1999)。
一般的に存在する核タンパク質として、HMGB1は虚血/再灌流(Tsung等,J Exp Med,201:1135−1143,2005)又は化学的中毒に起因する非菌性組織損傷後に損傷細胞から受動的に放出され得る(Antoine等,Hepatology,58:777−787,2013)。HMGB1は、RAGE、TLR4及び分化クラスター24(CD24)/Siglec−10を含む受容体を介してシグナル伝達することができ、それにより、DAMPとして作用して、自然免疫細胞を警告して募集して活性化させて大範囲のサイトカイン及びケモカインを生産する。このように、感染や無菌性損傷等の一見無関係な状態は、共通の過程、すなわち、自然免疫細胞から主動的に分泌されるか又は損傷組織から受動的に放出されるHMGB1によって引き起こされる炎症を持っている(Andersson,U.及びTracey,K.J.,Annu Rev Immunol,29:139−162,2011)。細胞外HMGB1は感染・損傷誘発炎症性疾患の病原性メディエーターとして確認された(Yang等,J Leukoc Biol,93:865−873,2013)。
HMGB1は、酸化還元感受性タンパク質であり、23位、45位及び106位に保存されたシステイン残基を3つ含む。システインの酸化還元状態は、その細胞外ケモカイン又はサイトカインの誘発性質を決定する。具体的には、すべてのシステイン残基が還元されたHMGB1(完全還元HMGB1)はCXCL12と結合して、CXCR4受容体を介して免疫細胞浸潤を相乗的に刺激する。Cys23−Cys45ジスルフィド結合と還元Cysl06(ジスルフィドHMGB1)を有する部分的に酸化されたHMGB1は、TLR4受容体を介して免疫細胞を活性化させることにより、サイトカイン/ケモカインを生産する。一旦すべてのシステインが最終的に酸化されると(スルホニルHMGB1)、HMGB1はケモカイン・サイトカイン活性を欠いている。HMGB1はTLR4/MD2シグナル伝達経路を介して炎症反応誘導を行い、且つ、TLR4/MD2との相互作用にはチオール含有システイン106である特別な原子構造を有する特定HMGBl酸化還元形態を必要とする(Yang等,Mol Med,18:250−259,2012)ことが示された。十分な証拠によれば、活性化された免疫細胞から主動的に分泌されるか又は死亡細胞から受動的に放出されるHMGB1は、それぞれ翻訳後修飾を有する複数種のアイソフォームの混合物であることが証明された。逆説的には、免疫系がTLR4/MD2受容体系をどのように使用して、HMGB1のそれぞれアイソフォームを区別し、特にジスルフィドHMGBl分子を識別してほかのアイソフォームを排除するかは未知である。
特に注目されているHMGB1媒介性炎症はインフルエンザによって引き起こされるものである。インフルエンザは進化し続けており、毎年新しい抗原変異体が出現し、最後のいくつかのインフルエンザシーズンに例示されるように、推薦されるワクチンが予想よりもかなり効果が低い。従って、インフルエンザ感染の影響を緩和するための、現在年々使用されているインフルエンザワクチンと抗ウイルス薬の代替品を開発することが急務である。インフルエンザウイルスは、マウスに作用しないTLR8とTLR10を含む複数種のPRR(TLR3、TLR7、TLR8 、TLR10を含む)と細胞内センサー(RIG−I)により感知される。マウスマクロファージによるインフルエンザ誘発サイトカインの発生にはCD14が必要であるが、TLR2とTLR4に依存しない。また、WTマウスに比べて、MyD88−/−とMyD88/TRIFの二重欠損マウスでは肺サイトカイン生産の急激減少を示すことは、これらTLRシグナル伝達経路が疾患に対して重要な役割を果たすことを示している。
Imai等は、化学的又は微生物による傷害が、宿主から誘導される酸化リン脂、すなわち酸化された1−パルミトイル−2−アラキドノイル−ホスファチジルコリン(OxPAPC)を肺で発生させるNADPH依存性活性酸素種を引き起こすことを示唆している(Imai等,Cell,133:235−249,2008)。彼らは、病原体識別に係る初期感知に関わらず、OxPAPCがまずマクロファージにおいてALIに届く共用するTLR4、TRIF及びIL−6依存性経路を開始させるという結論を出した。Eritoran(すなわち、既知の最も有効な合成脂質A類似体(Lien等,J. Biol. Chem,276:1873−1880,2001))を用いてインフルエンザ感染マウスを治療することによって、インフルエンザによる死亡とALIをブロックする。5日間、WTマウスに毎日投与する場合は、感染2、4又は6日目から、Eritoran治療は生存率と臨床症状を大幅に改善するとともに、ALI、OxPAPCの蓄積、サイトカインストーム及び全身性炎症を減少させる(Shirey等,Nature,497:498−502,2013)。
本発明は、必要とする患者に治療有効量のMD2アンタゴニストを投与することによってHMGB1媒介性炎症を治療又は予防する方法を提供する。いくつかの実施形態において、HMGB1はHMGB1ジスルフィドアイソフォームである。いくつかの実施形態において、HMGB1媒介性炎症を治療するに当たって、感染の発症後、MD2アンタゴニストを投与する。いくつかの実施形態において、MD2アンタゴニストを薬学的に許容可能な担体に混入して投与する。
HMGB1媒介性炎症は感染又は無菌性損傷により引き起こされ得る。いくつかの実施形態において、HMGB1媒介性炎症はインフルエンザ感染のようなウイルス感染によって引き起こされる。いくつかの実施形態において、ウイルス感染によるHMGB1炎症を治療するに当たって、該方法はさらに患者にanviral剤(例えばオセルタミビル)を投与するステップを含む。ほかの実施形態では、HMGBl媒体性炎症は細菌感染によって引き起こされる。さらなる実施形態では、HMGBl媒体性炎症は無菌性損傷(例えばアセトアミノフェン中毒)によって引き起こされる。
本発明の別の態様は、FSSEのアミノ酸配列を有するMD2アンタゴニストを含む組成物を提供する。いくつかの実施形態において、MD2アンタゴニスト組成物はさらに薬学的に許容可能な担体を含む。
本発明は以下の図面を参照してより容易に理解され得る。
図1A−1DはジスルフィドHMGBlがMD2に結合されることを示すグラフである。(A)それぞれのHMGBlアイソフォーム(1μg/ml、16h)で刺激されたRAW 264.7細胞でTNFリリースを測定する。*:ジスルフィドHMGB1に対してP<0.05。N=3−5。(B)表面プラズモン共鳴(SPR、BIAcore)分析を行って、HMGB1とMD2又はTLR4との結合を評定する(チップに塗布)。上行:HMGB1のヒトMD2へ結合;12nMの見かけKd(左図)でそれぞれHMGBl濃度(12.5,25,50及び100nM)で計測した。ヒトMD2(12.5,25,50及び100nM)とHMGBlの結合(チップに塗布、中間図)、ジスルフィドHMGBl(100nM)とTLR4の結合(チップに塗布、右図)が計測された。下行:非サイトカイン誘導性HMGB1(C106A、Hg−HMGB1、1μΜ)とMD2の結合(チップに塗布、左図)が計測された。HMGBlアイソフォームとMD2の結合(チップに塗布、右図)が計測された。データは応答単位(Response unit ,RU)又は時間(秒)(Time(Sec))に対する相対RU(Relative response unit )を示し、さらに三回の実験を示す。(C)カルモジュリンビーズにより、MD2を発現させた酵母Sf9細胞上澄みとCBP標識HMGB1又はCBPの混合物(免疫沈降、IP)を免疫沈降させ、さらに該混合物を抗ヒトMD2抗体又はCBP抗体によりイムノブロッティング(IB)させる。ここで、組換えMD2タンパク質を陽性対照(control)(右側)とする。示されるデータは3回の繰り返しを示す。(D)HMGB1とヒトMD2の結合のSPR分析(チップに塗布);抗HMGBl mAbモノクローナル抗体(左図)又は示される非関連マウスIgG(右図)の存在下で行われる。データは3回の繰り返しを示す。
図2A−2Cは、MD2がHMGBl依存性TLR4シグナル伝達に不可欠であることを示すグラフ及び画像である。(A)上部パネル:RAW 264.7細胞に対してMD2(siRNA)のノックダウン(knockdown)を行う。WesternブロッティングによりMD2とNF−κΒレベル(p65)を評定する。密度測定法によりNF−κB(p65)タンパク質のレベルをβアクチンのレベル(比)に対して正規化させ、未刺激細胞に対する倍数変化として表示する。下部パネル:MD2阻害作用を有するRAW 264.7細胞(中空バー)又は対照siRNA(中実バー)からの、HMGB1誘導TNFの放出。*:siRNA対照群に対してP<0.05である。N=4−5。(B)左パネル:HMGBl(2μg/ml)又は超純LPS(200ng/ml)を用いて野生型(WT)又はMD2 KOマウスからの原発性腹膜マクロファージを16時間刺激し、Westernブロッティングにより核抽出物におけるNF−κΒ(p50とp65)タンパク質のレベルを評定する(左上パネル)。NF−κB活性化はβアクチンに対するp50又はp65として表示され、且つ、未刺激細胞の倍数変化として計算される(左下図)。右パネル:HMGB1でマウスマクロファージを刺激して、マウスサイトカインAbアレイ(G−CSF、IL−12p40、IL−6、TNF、RANTES、MCP−1、sTNFRl;右上パネル)又はELISA(TNF用、右下グラフ)を用いて放出したサイトカインを測定する。*WT群に対してp<0.05。N=5回の独立した実験。(C)肝損傷モデルにおいてWT又はMD2 KOマウスにAPAPを感染させて、24時間後に安楽死させて、次に肝臓酵素(GLDH、ALT及びAST;左の列のグラフ)とサイトカイン(HMGB1、TNF及びIL−6;右の列のグラフ)の血清レベルを検出する。*:WT APAP群に対してP<0.05である。N=1群にマウス5−13匹。これらマウスの肝臓組織の代表的なH&E染色が示される。N=1群にマウス5−8匹(拡大倍数、×200;矢印は壊死領域を示す;中間パネル)。縮尺=100μm。WTとMD2 KOマウスについて、致死量のAPAPを投与した場合の動物の生存率を評定した(生存百分率)。N=1群にマウス15匹。*:野生型に対してP<0.05(右パネルのグラフ)。
図3Aと図3Bは、抗HMGB1モノクローナル抗体を投与することによりAPAPによるマウス肝損傷を緩和させることを示すグラフを示す。(A)マウスにAPAPを注射し(i.p.)、次に抗HMGB1抗体又は対照IgGを注射して治療する(i.p.,方法参照)。動物生存率(生存率%)を評定する。N=20匹のマウス/群。*:IgG群に対してP<0.05。(B)APAPを投与してから24h後にマウスの肝臓酵素(ALT)とサイトカイン(TNFとIL−6)の血清レベルをマウスに抗HMGB1 Ab又は対照IgGの投与下で(方法参照)測定する。N=10匹のマウス/群。*:IgG群に対してP<0.05である。
図4A−4Dは、HMGB1阻害剤のスクリーニング結果を示すグラフ及び写真である。(A)MD2(チップに塗布)とP5779(FSSE)及びほかのペプチド(100nM)との相互作用を計測するためにSPR分析を行った。Kd値は示された。データは3回の実験を示す。(B)HMGBl(1μg/ml)とそれぞれのペプチド(50μg/ml)の組み合わせによりインビトロで初代ヒトマクロファージを16時間連続刺激し、ELISAでTNFの放出を測定する。N=4−5。*:HMGB1単独に対してP<0.05である。(C)P5779(12.5,25,50及び100nM)又はスクランブル対照(ctrl)ペプチド(100nM)とヒトMD2(P5779に対して、Kd=0.65μΜ)、HMGBl又はTLR4(チップに塗布)との結合を測定するために、SPR分析を行った。データは3回の実験を示す。(D)はMD2と四量体ペプチドFSSE(左)とSFSE(右)との分子ドッキングを模式的に示す。茶色領域はMD2のペプチド結合ポケットの表面、緑色領域はTLR4タンパク質の表面を示す。下部パネルは水素結合、及びファンデルワールス(van der Waals)の相互作用を示す。対照例よりも強いファンデルワールス相互作用を有するP5779は十分にMD2の疎水性ポケットに伸びてMD2のTyr102と結合された追加の水素結合を形成する。
図5A−5EはMD2とHMGB1との結合に特異的阻害剤として、四量体ペプチド(P5779)の発展を示すグラフ及び写真を示す。(A)SPR分析時に、HMGB1はチップに塗布されて、次に分析物としてのMD2(1μΜ)及びそれぞれ量のP5779(図示)を流す。P5779(IC50=29nM)によるHMGB1とMD2の結合の阻害作用を評定した(上図)。逆実験において、ヒトMD2をチップに塗布し、次にHMGB1(1μΜ)とそれぞれ量のP5779を分析物として添加する。P5779(IC50=2nM)はHMGB1とMD2の結合を抑制した(下図)。データは3回の独立した実験を示す。(B)HMGB1(1μg/ml)又はほかの刺激物(Poly I:C,S100A12,LPS,PGN及び CpGDNA)に増加量のP5779(又はスクランブル対照ペプチド)を加えてヒト血液から分離したヒト初代マクロファージについてインビトロで16時間連続刺激する。ELISAによりTNF放出を測定する。N=4−5。*:HMGBlプラス対照ペプチド(ctrl)に対してP<0.05である。(C)HMGBl(1μg/ml)にP5779又は対照ペプチド(ctrl、50μg/ml)を加えてチオグリコール酸塩(エステル)による腹膜マウスマクロファージについてインビトロで16時間連続刺激し、さらにマウスサイトカインAbアレイ(左パネル)によって各種サイトカインの細胞外レベルを分析する。データは3−4回の実験を示す。密度測定法により各実験を繰り返して未刺激細胞に対する倍数増加(−HMGB1)として表示する(右表)。*:+HMGB1群に対してP<0.05である。(D)LPS(2ng/ml)でP5779(50μg/ml)又は対照ペプチド(ctrl)が存在し又は存在しない条件下で血液から分離した初代ヒトマクロファージについてインビトロで16時間連続刺激し、ヒトサイトカインAbアレイ(左パネル)により各種サイトカインの細胞外レベルを分析する。データは3回の繰り返しを示す。(E)雄C57BL/6マウスにLPS(8mg/kg、i.p.)とP5779又は対照ペプチド(ctrl)の組み合わせを注射する(マウス1匹に500μg、i.p.)。90分間後に動物を安楽死させる。ELISAsによって血清TNFとIL−6のレベルを測定する。N=1群にマウス5匹。
図6A−6Cは、HMGB1阻害剤(P5779)で治療することによりインビボAPAP媒体性中毒、虚血/再灌流損傷や敗血症の死亡率を低下させることを示すグラフ及び画像を示す。(A)C57BL/6マウスにAPAPを注射し(i.p.方法)、次にP5779(示される用量)又は対照ペプチド(ctrl、500μg/マウス;i.p.)を投与する。24h後にマウスを安楽死させて、ELISAsによって血清酵素レベル(ASLとALT)及びサイトカインレベル(TNF)を測定する(左上図)。N=1群にマウス6−10匹。生存実験では、マウスにAPAPを注射し(i.p.)、次にP5779又は対照ペプチドを投与する(ctrl、i.p.方法参照)。生存率を2週間監視する(百分生存率)。N=マウス30匹/群(左下図)。右パネル:P5779又は対照ペプチドを投与する正常(未処理)又はAPAP注射マウスの肝臓組織切片の代表的なH&E写真を示す。臨床スコアは評定されて右側に示された。肝壊死は矢印により示される(拡大、×200)。縮尺=100μm。N=マウス6−10匹/群。*:対照ペプチド群に対してP<0.05である。(B)虚血/再灌流(I/R)手術時にP5779又は対照ペプチド(500μg /マウス、i.p.)を投与して、6時間後にマウスを安楽死させて、ALTとASTの血清レベルを検出し(左ヒストグラム)、組織肝損傷を評価する。*:I/R群に対してP<0.05である。N=マウス5−7匹/群。代表的なH&E肝組織切片(右パネル、好中球浸潤:矢印;拡大、×200)を示す。縮尺=100μm。N=マウス3−5匹/群。(C)マウスにCLP手術を実施して、示された量でP5779又は対照ペプチド(Ctrl)をi.p.投与する。動物生存率を2週間監視する(生存率%)。N=マウス20匹/群。*:対照ペプチド群に対してP<0.05である。
図7A−7Cは、抗TLR4 IgG処置によりマウスを致命的なインフルエンザチャレンジから保護するグラフを示す。(A)C57BL/6Jマウスはマウス適合インフルエンザウイルス株PR8(〜7500 TCID50、i.n.;〜LD90)により感染された。マウスに対照IgG又は高度特異的抗TLR4 IgG(2mg/マウス、i.v.)を一回(2日目だけ)又は二回(2日目と4日目)投与する。毎日、生存率(B)の監視と臨床スコア(C)を行う。各図は2回の別々の実験の結果を組み合わせたものを示す(マウス5匹/処置群/実験)。
図8Aと図8Bは、EritoranによるIRAK4KDKIとTRIF−/−マウスへの影響を示すグラフを提供する。WT C57BL/6J(AとB)、IRAK4KDKI(A)及びTRIF−/−(B)マウスはマウス適合インフルエンザウイルス株PR8(〜 7500 TCID50、i.n.;〜LD90)によって感染される。感染後の2日目から、マウスに5日間媒体(生理食塩水;i.v.)又はEritoran(E5564;200μg/マウス;i.v.)を連続投与する。14日間の生存率を監視する。示されたデータは2−3回の別々の実験(マウス5−10匹/処置群/実験)の結果を組み合わせたものである。
図9Aと図9Bは、抗TLR2 IgG処置によりマウスを致命的なインフルエンザのチャレンジから保護することを示すグラフを提供する。(A)実験方法:感染3時間前と感染後の1日目又は感染後の2日目と4日目後に、アイソタイプ対照IgG又は抗TLR2(T2.5;100μg/ms i.v.)でC57BL/6Jマウスを処置する。毎日生存率(B)を監視する。示されたデータは2回の別々の実験の結果を組み合わせたものである(マウス5匹/処置群/実験)。
図10Aと図10Bは、TLR2/TLR4二重ノックアウトマウスがインフルエンザ感染に対してより感受性が高いことを示すグラフ及び写真を提供する。(A)C57BL/6J WTマウス、TLR2−/−マウス、TLR4−/− マウス及びTLR2/TLR4二重ノックアウトマウス(TLR2/4)はマウス適合インフルエンザウイルス株PR8(〜40000 pfu、i.n.;WTマウスの〜LD10)により感染された。マウスについて14日間生存率を毎日監視する。示されたデータは2つの別々の実験を組み合わせたものである(マウス4−12匹/群/実験)。(B):(A)と同様に、WTマウス、TLR2−/−マウスとTLR2/4二重ノックアウトマウスを感染させた。感染後5日目に肺を採取して組織病理学的検査を行う。示されたデータは代表的な肺切片(マウス3−4匹/群)である。
図11A−11Dは、EritoranでWTマウス、TLR4−/−マウスを前処置することによりマウスを致命的なインフルエンザチャレンジから保護できないことを示すグラフを提供する。(A)WTマウスとTLR4−/−マウスをマウス適合インフルエンザウイルス株PR8(〜7500 TCID50、i.n.)により感染させて、感染後2日目、4日目及び6日目に安楽死された。肺を採取して、ウイルス力価とIFN−βmRNAを分析する。示されたデータは2回の別々の分析(マウス4−5匹/群/実験)の結果を組み合わせたものである。(B)基本的な実験方法によって、前処置/早期とEritoranを用いたPR8感染マウスに対する治療処置を比較する。C57BL/6J WTマウス及びTLR4−/−マウスについては、処置しないか(黒丸)、感染3時間前から4日間前処置を連続する場合の1日目(3h;黒四角;前治療/レジメン(regimen))、又は5日間連続感染した後の2日目から(白抜き丸;治療方案)、Eritoranで処置する。(CとD)マウスについて毎日生存率を監視する。示されたデータは2回の別々の実験(マウス5−6匹/処置/実験)の結果を組み合わせたものである。
図12A−12Dは、EritoranがHMGB1誘導性TLR4のインビトロシグナル伝達、インビボでインフルエンザ誘導性HMGB1の放出及び致死率を軽減させることを示すグラフである。(A)媒体単独(M)又はEritoran(E;10ng/ml)でチオグリコール酸塩(エステル)により引き起こされたC57BL/6Jマクロファージを1時間連続処理し、次にLPS(L;10g/ml)又はHMGBl(H;1μg/ml)で2時間連続処理する。TNFα又はIFN−βの発現を検出するために、全RNAを処理してqRT−PCRに供した。(B)コットンラット(6−8匹/時間点/治療)をpdHlNlA/California/04/09(106 TCID50、i.n.)によって感染させ、次に感染後の6hからEritoran又はプラセボで処置する。ELISAによって血清HMGB1レベルを測定する(*p<0.05)。(C)C57BL/6Jマウスにマウス適合インフルエンザウイルス株PR8(〜7500 TCID50、i.n.;〜LD90)を感染させる。感染後2日目から5日間(2日目−6日目)にわたり、マウスに対照ペプチド(500μg/マウス;i.p.)、Eritoran(E5564;200μg/マウス;i.v.)を投与するか、HMGBlペプチドP5779(500μg/マウス;i.p.)を投与する。生存率(C)と臨床スコア(D)を14日間毎日連続監視する。示されるデータは2回の実験(マウス5−10匹/処置群/実験)の結果を組み合わせたものである。
図13A−13Cは、致命的なインフルエンザチャレンジに対するAT−1001による効果を示すグラフを提供する。(A)C57BL/6Jマウスにマウス適合インフルエンザウイルス株PR8(〜7500 TCID50、i.n.;〜LD90)を感染させる。感染後2日目から5日間(2日間−6日間)にわたり、マウスに媒体(生理食塩水;i.v.)、Eritoran(E5564;200μg/マウス;i.v.)を投与するか、AT−1001(150μg/マウス;i.v.)を投与する。生存率(A)と臨床スコア(B)を14日間毎日連続監視する。示されたデータは3回の別々の実験(マウス5匹/処置群/実験)の結果を組み合わせたものである。(C)肺の湿重量/乾燥重量(W/D)の比を感染後の肺水腫の指標とする。C57BL/6Jマウスの感染及び治療は以下に示されたとおりである。感染後7日目に、肺を採取して、切除直後に肺重量を測定し、湿重量として記録する。肺組織を、5−6日間空気乾燥を連続して、再び安定した乾燥重量を得るまで再秤量する。湿重量を乾燥重量で割ってW/D重量比を算出する。各群のNはそれぞれのバーにより示される。それぞれの垂直なバーは平均値(±s.e.m.)を示す。
図14Aと図14Bは、致命的なインフルエンザチャレンジに対するIL−1Raの効果を示すグラフを提供する。C57BL/6Jマウスにマウス適合インフルエンザウイルス株PR8(〜7500 TCID50、i.n.;〜LD90)を感染させる。感染後2日目から5日間(2日目−6日目)にわたり、マウスに媒体(生理食塩水;i.v.)、Eritoran(E5564;200μg/マウス;i.v.)を投与するか、IL−1Ra(150μg/マウス;i.v.)を投与する。生存率(頂部パネル)の監視と臨床スコア(底部パネル)を毎日14日間連続する。示されたデータは2回の別々の実験(マウス5匹/処置群/実験)の結果を組み合わせたものである。
発明人は必要とする患者に治療有効量のMD2アンタゴニストを投与することによりHMGB1媒介性炎症を治療する方法を開示する。
定義
本明細書に使用されている用語は、実施形態を説明するためのものであり、発明全体を制限するものと理解すべきではない。文脈から判断して矛盾しない限り、本発明の明細書及び添付した請求項に使用される単数形「一」及び「前記」はその複数形式も含む。
本明細書に使用されている「治療」、「処置」等とは、HMGB1媒介性炎症に罹患した患者に有用な任意の操作を指し、少なくとも1種の症状の減少又は抑制、疾患進行・病状発展の遅延等の改善が挙げられる。
本明細書では互換的に使用される用語「ポリペプチド」及び「ペプチド」とはアミノ酸のポリマーを指す。特定の長さを有するアミノ酸ポリマーを意味するものではない。従って、遺伝子組換え技術により生産されるか、化学又は酵素法により合成されるか、又は自然に存在するかを問わず、たとえば、オリゴペプチド、タンパク質及び酵素のいずれもポリペプチド又はペプチドの定義内に含まれる。該用語はさらに、グリコシル化、アセチル化、リン酸化等のような修飾又は誘導を行ったポリペプチドも含む。
本明細書に使用されている「アミノ酸」とは一般式NH2−CRH−COOHで表れる化合物を意味し、但し、側鎖RはH又は有機基である。Rが有機基である場合は、Rは変化可能であり、且つ極性でも非極性(すなわち疎水性)でもよい。本発明のアミノ酸は天然に生成するものでも、合成するものでもよい(一般的に、nonproteinogenicと呼ばれる)。
以下の略語は本発明を通して使用される:A=Ala=アラニン、T=Thr=スレオニン、V=Val=バリン、C=Cys=システイン、L=Leu=ロイシン、Y=Tyr=チロシン、I=Ile=イソロイシン、N=Asn=アスパラギン、P=Pro=プロリン、Q=Gln=グルタミン、F=Phe=フェニルアラニン、D=Asp=アスパラギン酸、W=Trp=トリプトファン、E=Glu=グルタミン酸、M=Met=メチオニン、K=Lys=リジン、G=Gly=グリシン、R=Arg=アルギニン、S=Ser=セリン、H=His=ヒスチジン。
本明細書に使用されている「薬学的に許容可能な」とは、該化合物又は組成物が、疾患の重篤度及び治療の必要性に照らして過度に有害な副作用無しに本明細書の前記方法により患者に投与することに適していることを意味する。
用語「治療上有効」は、疾患の重篤度を低下させるとともに、典型的に代謝療法に関連する有害な副作用を回避する各薬剤の用量を意味する。治療有効量は一回又は一回以上の用量で投与できる。一方、有効用量は、特定の効果(例えば酵素阻害作用)を与えるのに十分な量であり、治療有効量であっても治療有効量でなくてもよい。
HMGB1媒介性炎症の治療方法
一態様では、本発明は、必要とする患者に治療有効量のMD2アンタゴニストを投与することによって、HMGB1媒介性炎症を治療する方法を提供する。高移動度群タンパク質1(HMGB1)は、感染と損傷による炎症性疾患及び病状の両方のメディエーターである。活性化されたマクロファージ及び単球は炎症のサイトカインメディエーターとしてHMGB1を分泌する。HMGB1は高移動度群タンパク質1(HMG−1)、アムホテリン(amphoterin)としても知られており、HMGB1遺伝子によってコードされる。それぞれ翻訳後修飾を有する複数のHMGB1アイソフォームは炎症反応に関与する。従って、いくつかの実施形態において、HMGB1媒介性疾患は1つ又は複数のHMGB1アイソフォームにより媒介される。たとえば、いくつかの実施形態において、HMGB1はHMGB1ジスルフィドアイソフォームである。
本明細書で定義されるHMGB1媒介性炎症は、HMGB1が疾患の病理において重要な役割を果たす病態又は病症である。後記したとおり、HMGB1はマクロファージ、単球及び樹状細胞等の免疫細胞により炎症のサイトカインメディエーターとして分泌されるものである。HMGB1はTLR4と結合して形成されたTLR4/MD2シグナル伝達経路を介して炎症反応を誘導し、それにより、HMGB1依存的なマクロファージサイトカイン放出の活性化を媒介する。従って、HMGB1は滅菌性及び感染性炎症反応の両方に関与する。
炎症性疾患には、組織病理学的炎症を特徴とする様々な障害が含まれる。病原体に対する宿主防御システムとして進化した免疫活性化は、調節不能になり、病因が既知か未知の多様な疾患の発病メカニズムを促進する可能性がある。免疫活性化及び関連炎症は、病因の「共同特性(denominator)」又は一般的なメカニズムであるようであり、ほかの無関係なヒト疾患間の病理学的関連性や類似性を説明できる(Margolis,L.,Am J Med.,128(6):562−6,2015)。炎症性疾患の例として、尋常性ざ瘡、敗血症、喘息、セリアック病、慢性前立腺炎、糸球体腎炎、炎症性腸疾患、骨盤内炎症性疾患、虚血再灌流障害、関節リウマチ、サルコイドーシス、血管炎、ハウスダストダニ誘発気道炎症及び間質性膀胱炎が含まれる。HMGB1はこれら疾患の炎症反応において重要な役割を果たす(Yang等,Mol Med,21:S6−S12,2015;Kang等,Mol Aspects Med.,1−116,2014;Andersson等,Annual Rev Immunol,29:139−62,2011)。
いくつかの実施形態において、HMGB1媒介性炎症は感染によって引き起こされる。炎症は感染からの保護に対し重要な役割を果たし、細胞損傷の初期病因を排除すること、元の傷害部位及び炎症過程において壊死細胞と損傷組織を除去すること、組織修復を開始させることなどを含む。しかし、場合によって、感染は過度、さらに潜在的な危険性を有する炎症を引き起こす可能性がある。たとえば、サイトカイン媒介性肺炎症のウイルス誘発は感染の病原性において重要な役割を果たす。同様に、細菌感染に起因するエンドトキシンはHMGB1媒介性炎症の一種の形態として敗血症を引き起こし得る。
HMGB1媒介性炎症は各種感染に起因し得る。たとえば、いくつかの実施形態において、HMGB1媒介性炎症はウイルス感染によって引き起こされる。病的炎症を引き起こし得るウイルスの例として、デングウイルス、B型肝炎ウイルス(Cao等,Sci Rep.,5:14240−5,2015)、インフルエンザAウイルス(H1N1)(Nosaka等,Critical Care,19:249−258,2015)、ニワトリ感染性貧血ウイルス(Sawant等,Vaccine,33:333−40,2015)、ヒトパピローマウイルス(Weng等,Mol Med Rep,10:1765−71,2014)が含まれる。いくつかの実施形態において、HMGB1媒介性炎症はインフルエンザウイルス感染によって引き起こされるものであり、病的炎症を引き起こす可能性が高い。
ほかの実施形態では、HMGB1媒介性炎症は細菌感染によって引き起こされる。病的炎症は様々なタイプの細菌による感染の結果として起こり得る。病的炎症反応を引き起こし得る細菌の例として、マイコバクテリウム・ツベルクローシス、類鼻疽菌、野兎病菌(Kang等,Mol Aspects Med.,1−116,2014;Laws等,Internation J of Infect Dis,40:1−8,2015;D’Elia RV等,Antimicrob Agents Chemother,6月期号PMCID: PMC3754292,2013)、シュードモナス・アエルギノサ、グラム陰性病原体によって誘発される角膜炎(McClellan等,J Immunol,194:1776−1787,2015)が含まれる。
あるいは、いくつかの実施形態において、HMGB1媒介性炎症は感染以外の因子によって引き起こされる。感染以外の因子による炎症は本明細書では「無菌性損傷」による炎症と呼ばれる。無菌性損傷は関節リウマチ、肺繊維症及び急性肝不全を含むいくつかの疾患の病因となる急性炎症反応を引き起こす恐れがある。無菌性炎症の例として、アセトアミノフェン中毒、創傷治癒、関節リウマチ、出血性ショック、心筋梗塞、虚血再灌流傷害および移植、脳虚血および損傷(Kang等,Mol Aspects Med.,1−116,2014;Andersson等,Annual Rev Immunol,29:139−62,2011;Yang等,Mol Med,21:S6−S12,2015)が含まれる。いくつかの実施形態において、HMGB1媒介性炎症はアセトアミノフェン中毒によるものである。
MD2アンタゴニスト
患者のHMGB1媒介性炎症を治療する好ましい方法としては、患者に治療有効量の骨髄分化タンパク質2(MD2)アンタゴニストを投与する。他の多数の炎症治療方法に比べて、MD2アンタゴニストによる治療は、抗微生物免疫応答性を実質的に低下させないことを利点の1つとする。
MD2アンタゴニストはMD2活性を妨害する化合物である。たとえば、MD2アンタゴニストはMD2と別のペプチド(たとえばTLR4又はHMGB1)との結合を妨害できる。Hawkins等はEritoranと関連化合物(脂質に基づく化合物)がMD2アンタゴニストとして使用できることを開示した(Hawkins等,Curr Top Med Chem.,4(11): 1147−71,2004)。発明人により同定された別のMD2アンタゴニストはP5779であり、FSSEのアミノ酸配列を有するテトラペプチドである。もう一つのMD2アンタゴニストはペプチドMD2−Iである(Slivka等,ChemBioChem,10(4):645−649,2009)。
候補MD2アンタゴニストは動物モデルで試験できる。その動物モデルは、たとえば、炎症を検討するための動物モデルの検討に用いられ得るものであってもよい。動物モデル(たとえばマウス)の炎症検討は公知する手技である。たとえば、Chen等はヒトと鼠モデルとの敗血症評定についての差異を検討した(Chen等,Surg Clin North Am.,94(6): 1135−49,2014)。候補薬剤で処置した対照動物と処置を受けなかった対照同腹仔との計測結果を代表として比較した。遺伝子組換え動物モデルも利用可能であり、且つ、一般的にヒト疾患モデルとして使用される(たとえば:Greenberg等,Proc. Natl. Acad. Sci. USA,92:3439−3443,1995参照)。候補薬剤は、これら動物モデルにおいて用いることにより、候補薬剤が炎症関連の1つ又は複数の症状を減少させるか否かを調査する。
候補薬剤については、MD2アンタゴニストとしての有効性を直接計測することによっても評価できる。たとえば、ELISAはMD2との結合の特性評価特徴付けに用いられ得る。MD2拮抗活性を特徴付けできる適合な方法は、本明細書に記載の実施例において更に説明する。
本発明の方法は予防的及び/又は治療的処置を提供できる。たとえば、HMGB1媒介性炎症の発展に先立って、MD2アンタゴニストを患者に投与できる。予防的投与は患者の以降のHMGB1媒介性炎症に罹患する可能性を効果的に減少させ、又はその後起こるHMGB1媒介性炎症の重症度を効果的に低下させることができる。HMGB1媒介性炎症を発症するリスクの高い患者(例えばHMGB1媒介性炎症の家族歴のある患者)に予防的処置を提供できる。
あるいは、本発明の化合物はHMGB1媒介性炎症に罹患した患者に治療的に投与できる。このような方法で、炎症又は感染の発症後にMD2アンタゴニストが投与される。治療的投与の一実施形態において、該化合物の投与はHMGB1媒介性炎症を効果的に解消し、別の実施形態では、該化合物の投与はHMGB1媒介性炎症の重篤度を低下させ又は罹患した患者の寿命を延ばすのに有効である。
本発明の方法は必要とする患者にMD2アンタゴニストを投与するステップを含む。該患者は好ましくは哺乳動物、例えば飼いならされた家畜(例えば牛、馬、豚)又はペット(例えば犬、猫)である。より好ましくは、患者はヒトである。患者がHMGB1媒介性炎症に罹患しているように見える場合は、必要により特徴付けできる。いくつかの実施形態において、診断により、患者がHMGB1媒介性炎症に罹患しているようであると判断できる。
MD2アンタゴニストを投与することによりHMGBl媒介性炎症を治療する時、1種又は複数種のほかの化合物を投与することも炎症又は炎症の病因の治療に有用である。たとえば、感染による炎症を治療する場合は、抗ウイルス剤又は抗菌剤等の抗微生物剤を患者に併用できる。
いくつかの実施形態において、抗ウイルス剤も患者に投与される。選択される抗ウイルス剤は特定のウイルスや患者の症状の重篤度に応じて異なる。抗ウイルス剤の例として、アバカビル、アシクロビル、アデフォビル、アマンタジン、アンプレナビル、アンプリジェン、アルビドール、アタザナビル、アトプリプラ、バラビア、ボセプレビルト、シドフォビル、コンビビル、ドルテグラビル、ダルナビル、デラビルジン、ジダノシン、ドコサノール、エドキサジン、エファビレンツ、エムトリシタビン、エンフビルチド、エンテカビル、ファムシクロビル、ホミビルセン、フォサプレナビル、フォスカネット、フォスフォネット、ガンシクロビル、イバシタビン、イムノビル、イドクスウリジン、イミキモッド、インジナビル、イノシン、インターフェロンI−III型、ラミブジン、ロピナビル、ロビリド、マラビロック、モロキシジン、メシザゾン、ネルフィナビル、ネビラピン、ネクサビル、オセルタミビル(タミフル)、ペグインターフェロンoc−2a、ペンシクロビル、ペラミビル、PF−429242、プレコナリル、ポドフィロトキシン、ラルテグラビル、リバビリン、リマンタジン、リトナビル、ピリミジン(pyramidine)、サキナビル、ソフォスビル、スタビジン、ティーツリー油、テラプレビル、テノフォビル、テノホビルジソプロキシル、チプラナビル、トリフルリジン、トリジビル、トロンタジン、ツルバダ、traporved、バラシクロビル(バルトレックス)、バルガンシクロビル、ビリビコフ、ビダラビン、ビラミジン、ザルシタビン、ザナミビル(リレンザ)及びジドブジンが含まれる。
いくつかの実施形態において、患者に抗菌剤が併用できる。選択される抗菌剤は特定の細菌や患者の病症の重篤度に応じて異なる。抗菌剤の例として、キノロン類薬物、例えばシプロフロキサシン、オフロキサシン、モキシフロキサシン、メトキシフロキサシン、ペフロキサシン、ノルフロキサシン、スパルフロキサシン、テマフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、シノキサシン;ペニシリン類、例えばクロキサシリン、ベンジルペニシリン及びフェノキシメチルペニシリン;アミノグリコシド、例えばエリスロマイシン及びそのほかのマクロライド;及び抗結核薬、例えばリファンピシン及びリファペンチンが含まれる。
投与及び製剤
前記1種又は複数種の化合物(たとえば、MD2アンタゴニスト)は薬学的に許容可能な塩として投与できる。薬学的に許容可能な塩は、化合物の比較的非毒性の、無機及び有機酸の付加塩を指す。これら塩は、化合物の最後の分離・精製過程において、in situ製造、又は、精製した化合物と適切な対イオンを反応させ(該化合物の性質に依存する)、次に形成された塩を分離して製造することができる。対イオンの代表として、塩素イオン、臭素イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、トシル酸イオン、リン酸イオン、酒石酸イオン、エチレンジアミン及びマレイン酸塩等が含まれる。(たとえば、Haynes等,J.Pharm. Sci.,94:2111− 2120,2005参照)。
本発明の医薬組成物は、MD2アンタゴニストと、当業者に公知の様々な希釈剤又は賦形剤を含む1種又は複数種の薬学的に許容可能な患者への送達用の担体とを含む。たとえば、腸管外投与の場合は、等張性生理食塩水が好ましい。局所投与の場合は、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の担体を含むクリーム、又は、局所クリームにペプチドの活性を遮断又は抑制しない典型的なほかの薬剤を使用できる。その適切な担体は、アルコール、リン酸塩緩衝液、及びほかの平衡塩溶液が含まれるが、これらに制限されない。
便宜上、製剤は、都合よい単位投与用投薬製剤形態として、且つ、薬学分野で周知の任意の方法によって製造できる。好ましくは、このような方法は、活性剤と1種又は複数種の補助成分を構成する担体とを結合するステップを含む。一般的には、製剤は活性剤と、液体担体、微細に分散させた固体担体又は両方とを均一且つ密接に結合させて製造されるものであり、次に、必要に応じて、それを所望した製剤に成形する。本発明の方法は、患者、好ましくは哺乳動物、より好ましくは人間に所望効果を奏する量の本発明の組成物を投与するステップを含む。MD2アンタゴニストは単回投与しても複数回投与してもよい。MD2アンタゴニストの有用な用量は動物モデルでのインビトロ活性及びインビボ活性を比較することによって決定できる。マウス及びほかの動物の有効用量に基づいて人間の有効用量を推定する外挿方法は本分野で公知することである(たとえば米国特許No. 4938949参照)。
MD2アンタゴニストは、好ましくは、医薬組成物に製剤されて、次に本発明の方法によって、選択された投与経路に適した各種形式で対象(患者)に投与する。製剤は、経口、吸入、直腸、膣、局所、経鼻、眼又は腸管外(皮下、筋肉内、腹腔内及び静脈内投与)投与に適合した製剤を含むが、これらに制限されない。
経口投与に適合した本発明の製剤は、錠剤、トローチ、カプセル、ロゼンジ、ウェハ又はカシェのような個別の単位として投与してもよく、いずれも所定量の活性剤を含む。活性剤は、粉末又は粒子、又は活性化合物を含有する脂質体、又は水性液体又は非水性液体溶解した溶液又は懸濁液(例えばシロップ、エリキシル、エマルジョン、ドラフト)としてもよい。このような組成物及び製剤は、典型的に少なくとも約0.1wt%の活性剤を含有する。MD2アンタゴニストの量は、患者において所望の結果を達成させるのに有効である計測量である。
吸入製剤は、吸入器装置から投与するために設計される製剤である。吸入又は注入組成物は、薬学的に許容可能な溶液と懸濁液、水性又は有機溶剤、その混合物、エアロゾル及び粉末を含む。好ましくは、組成物は局所的または全身的効果のために、経口または鼻の呼吸経路によって投与される。好ましくは薬学的に許容可能な溶媒における組成物は不活性ガスを用いて噴霧できる。溶液、懸濁液又は粉末組成物は、好ましくは製剤を送達する装置から、適切な方式により経口又は経鼻投与する。経鼻スプレー製剤には、活性剤と防腐剤、等張剤との精製水溶液が含まれる。こうした製剤は好ましくは鼻粘膜に適合したpHと等張性の状態に調整される。
直腸又は膣投与製剤は、カカオバター又は硬化脂肪又は硬化脂肪カルボン酸のような適切な担体を含む座薬として提供され得る。眼科用製剤は、pHと等張性因子が好ましくは眼球に適合するように調整される以外、鼻スプレーと同様の方法によって製造される。局所製剤は、鉱油、石油、ポリヒドロキシアルコール又は局所薬物製剤用のほかの基剤等の1種又は複数種の媒体に溶解又は懸濁した活性剤を含む。
錠剤、トローチ、丸剤、カプセル剤等にも、結合剤、例えばトラガカントゴム、アラビアゴム、コーンスターチ又はゼラチン;賦形剤、例えば第二リン酸カルシウム;崩壊剤、例えばコーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸等;潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム;甘味剤、例えばスクロース、フルクトース、ラクトース又はアスパルテーム;及び天然又は人工香味料から選ばれた1種又は複数種を含む。単位投与用剤型がカプセル剤である場合、液体担体、例えば植物油又はポリエチレングリコールを更に含んでもよい。各種のほかの材料は被覆物として存在してもよく、又は、ほかの方式で固体単位投与用剤型の物理的形態を変化してもよい。たとえば、錠剤、丸剤又はカプセル剤にはゼラチン、ワックス、ジェラック、砂糖等がコーティングされることができる。シロップ又はエリキシルは1種又は複数種の甘い味剤、防腐剤(例えばメチルパラベンまたはプロピルパラベン)、糖の結晶化を遅延させる薬剤、ほかの成分の溶解性を高める薬剤(例えばグリセリン又はソルビトールのようなポリオール、染料及び香味剤)を含む。任意の単位投与用剤型を製造するための材料は使用量下で実質的に無毒である。MD2アンタゴニストは徐放性製剤や装置に組み込んでもよい。
以下の示例によって本発明を説明する。なお、特定の実施例、材料、量及びステップは本明細書に記載された発明の範囲と精神に基づいて理解すべきである。
実施例
実施例1:MD2はジスルフィドHMGB1依存性TLR4シグナル伝達の必須条件である
病原体及び損傷関連分子モード(PAMPとDAMP)の自然免疫受容体は感染と損傷に対する炎症性応答を調整する。活性化された免疫細胞から分泌される又は損傷細胞から受動的に放出されるHMGB1は、その細胞外機能に顕著に影響を及ぼす酸化還元修飾を受けている。今まで、TLR4シグナルソームがどのようにしてHMGB1アイソフォームを区別するかは不明であった。骨髄性分化因子2(MD2)は、LPSと結合するための2つの逆方向平行βシートを折り畳んでなる疎水性ポケットを有し、LPS相互作用及びTLR4シグナル伝達に分子特異性を付与する(Meng等,J Biol Chem,285:8695−8702,2010)。従って、MD2が同様にそれぞれのHMGB1アイソフォームを区別して、TLR4依存性シグナル伝達を促進できると推定される。
ここで、細胞外TLR4アダプターMD2が、ほかのアイソフォームではなく、サイトカイン誘導性HMGB1ジスルフィドアイソフォームに特異的に結合することを示す。MD2欠損マウス及びマクロファージにおけるMD2サイレンシングにより、HMGB1依存性TLR4シグナル伝達の要件を明らかにした。HMGB1ペプチドライブラリーをスクリーニングすることにより、本発明者らは、特異的MD2アンタゴニストとして、MD2/HMGB1相互作用とTLR4シグナル伝達を妨げる四量体(FSSE、P5779と命名)を見出す。P5779は、LPS誘発性サイトカイン/ケモカインの発生を妨げず、それにより、PAMP媒介性TLR4/MD2応答を保持できる。また、P5779はマウスを肝臓虚血/再灌流損傷、化学的中毒や敗血症から保護できる。これらの知見は、自然的システムが特異的HMGB1アイソフォームを選択的に識別する新しいメカニズムを明らかにしている。該結果は、DAMP媒介性炎症を軽減させるとともに抗微生物免疫応答を維持することを目的とする方法に直接的に応用できる。
結果及び検討
サイトカイン誘導性(ジスルフィド)HMGB1とMD2の効果的な結合
HMGBlは、三種類の酸化還元感受性システイン残基を有して、それらが酸化還元反応により修飾され、細胞外で発現するか又はケモカイン又はサイトカイン活性を欠く複数種のHMGBlアイソフォームに形成する。その基本的な分子機構を解明するために、MD2(TLR4シグナルソームの細胞外アダプター受容体)がそれぞれ炎症特性を有する各種HMGB1アイソフォームを識別できるかどうかを検討した。水銀チオレート又は還元剤のジチオスレイトールに暴露することによって点突然変異又は化学修飾を発生させることで、それぞれ形式のHMGB1を形成して、これらのMD2結合特性を計測した。以前の報道(Venereau等,J Exp Med,209:1519−1528 ,2012; Yang等,Mol Med,18:250−259,2012)と同様に、ジスルフィドHMGB1アイソフォームだけがTNF分泌を誘導する(図1A)。バイオセンサーに基づく表面プラズモン共鳴分析(BIAcore)により、MD2かHMGBlがセンサチップに固定されているに関わらず(図1B)、ジスルフィドHMGB1だけが高親和力でMD2と結合する(見かけKd=12nM)ことを証明する。それに対して、MD2欠失の場合は、BIAcoreにおいてMD2との結合についてTLR4がより活発であるものの、HMGBlはTLR4に直接結合できず(図1B)、それはMD2はHMGB1/TLR4シグナル伝達経路に不可欠なものであることを示す。HMGBlのジスルフィドアイソフォームと異なり、H2S修飾された完全還元又はスルホニルHMGB1は、マクロファージ培養物ではTNFリリース(図1A)を誘導できず、ジスルフィドHMGB1に比べて、MD2結合について1000倍以上減少する(図1B)。特に、ジスルフィドHMGB1のシステイン106が化学修飾された場合、TNF刺激とMD2結合の特性がなくなり、これから分かるように、メルカプトシステイン106はHMGB1サイトカイン活性の調整において重要な役割を果たす(図1A−B)。
更にHMGB1−MD2相互作用を検討するために、免疫沈降分析法を用いて、HMGB1発現細胞溶解物からMD2をプルダウンした。カルモジュリン結合タンパク質(CBP)標識のジスルフィドHMGB1(CBP標識単独ではない)と共培養して、MD2発現構築物でトランスフェクトされた酵母細胞からMD2(図1C)をプルダウンし、それによって、MD2がジスルフィドHMGB1に結合されることを確認した。また、この相互作用は、無関係なIgGではなく、抗HMGB1モノクローナル抗体によってブロックされ、それは、HMGB1−MD2相互作用がアンタゴニストに対して特異的且つ標的であることを実証する(図1D)。
MD2はHMGB1媒介性炎症反応に必要である
HMGB1媒介性サイトカイン誘導におけるMD2の重要性をさらに評価するために、siRNAを用いてマウスマクロファージ様RAW 264.7細胞又はヒト(THP−1)単球中のMD2発現をノックダウンした。MD2発現のサイレンシング(80−90%)は、マウスマクロファージ及びヒト単球でのHMGB1刺激媒介性NF−κΒ活性化とTNF放出の有意な低下を伴う(図2A)。HMGB1誘導型自然免疫活性化におけるMD2の必要性を確認するために、チオグリコール酸塩による腹膜マクロファージを野生型のMD2遺伝子ノックアウト(KO)マウスから分離して、ジスルフィドHMGB1により刺激した。MD2発現の破壊は、NF−κBのLPS誘導及びHMGB1誘導の活性化、サイトカイン(TNFとIL−6)及びケモカイン(たとえば、RANTESとMCP−1)分泌の完全な障害(図2B)を引き起こす。HMGB1により刺激されたIL−12/p40の放出は、おそらくその他の受容体を介したシグナル伝達に起因してMD2非依存性メカニズムによるものである。
HMGB1は、アセトアミノフェン(APAP)誘発性肝中毒の重要なメディエーター(Antoine等,J Hepatol,56:1070−1079,2012)である。HMGB1誘導炎症反応におけるMD2のインビボ重要性を評価するために、本発明者らは、APAP中毒モデルを用いて、MD2欠損による無菌性炎症への影響を検討した。肝壊死性損傷の肝臓酵素放出(GLDH、AST及びALT)と組織学的分析によって評価されるように、APAPを注射した野生型(WT)マウス(図2C、矢印)に比べて、MD2発現の破壊は急性肝損傷の有意な減少をもたらす。また、MD2 KOマウスの肝損傷軽減は、サイトカイン(TNFとIL−6)放出及びAPAP誘発による動物致死率の有意な低下を伴い、それにより、無菌性炎症及び損傷におけるMD2の大切な役割が確認された(図2C)。特に、APAPを投与してから24時間後、野生型マウスとMD2 KOマウスの血清HMGB1レベルは向上する(図2C)。HMGB1中和モノクローナル抗体を用いて、APAP誘導による肝臓酵素(ALT)と前炎症性サイトカイン(TNFとIL−6)の放出を有意に阻害するとともに生存率(図3)を向上させるというAPAP誘導性肝中毒におけるHMGBlの中心的な役割は更に確認された。要するに、これらインビボ実験のデータはMD2とHMGB1の無菌性損傷の発症メカニズムにおける重要な役割を示す。
HMGB1特異的阻害剤としての新規MD2結合ペプチドの開発
HMGB1のシステイン106領域のHMGB1/MD2相互作用とHMGB1/TLR4シグナル伝達における重要な関与作用が認められたため、合理的な方法によって、模倣ペプチド阻害剤をスクリーニングした。BIAcore技術及び分子ドッキング技術によって、MD2結合特性について、システイン106領域に渡るシステイン同族体を組み込んだ一連の三量体と四量体ペプチドをスクリーニングした(図4A、C−D)。大部分のペプチドはMD2結合能力を欠いていたが、本発明者らは、有効なHMGB1特異的阻害剤として作用するHMGB1 B boxドメイン内の1つのエピトープを同定した。分子ドッキングシミュレートから示されるように、FSSE(P5779)四量体はMD2の疎水性ポケットに完全に伸びており、周囲の疎水性残基との最大ファンデルワールス相互作用とともにTyr102との付加的な水素結合(図4D)を形成する。その結果、0.65μΜのKd値でMD2に結合し、且つヒトマクロファージからのHMGB1誘導性TNFの放出を有意に抑制した(図4A−B)。この相互作用について、P5779がMD2の非存在下でほかのタンパク質(HMGB1とTLR4)に結合できないので、特異的である(図4C)。同様に、BIAcore実験(図4C)及び分子ドッキング分析(図4D)では、P5779のアミノ酸配列をスクランブリングさせたもの(対照ペプチド)はMD2結合能力を失わせた。
MD2結合ペプチドの治療可能性を評価するために、P5779がMD2/HMGB1相互作用をブロックすることによって、HMGB1誘導型サイトカインの生産を阻害できるかどうかを検討した。MD2又はHMGB1がBIAcoreセンサチップに塗布された場合は、P5779は濃度依存的にMD2/HMGB1相互作用を抑制した(図5A)。また、P5779は濃度依存的に初代ヒトマクロファージ中のHMGB1誘導型TNFの放出を抑制した(図5B)。1μg/mLのHMGB1が存在する条件下で、50%のTNF放出を抑制するP5779有効濃度(IC50)は約5μg/mLである。P5779のアミノ酸配列をスクランブリングすると、HMGB1誘導型TNFの放出を抑制する能力が無効になった(図5B)。マクロファージのP5779への暴露は、Poly I:C、S100A12、LPS、PGN及びCpG DNAによって媒介されるTNF放出を抑制しなかった(図5B)。P5779はさらに、ほかのサイトカイン(IL−6とIL−12p40/p70を含む)及びケモカイン(例えばRANTESとMCP−1)のHMGB1誘導型放出を有意に減少させる(図5C)。P5779は、マクロファージ中のLPS刺激型サイトカイン/ケモカインのインビトロ放出を抑制せず(図5D)、さらにマウスに高用量(8mg/kg)で投与した場合もLPS誘導型全身性サイトカインのインビボレベルを減弱させなかった(図5E)。従って、P5779は、PAMPsに応答したマクロファージ活性化を阻害することなく、HMGB1−MD2−TLR4シグナル伝達を選択的に減弱させる。
MD2標的P5779によるアセトアミノフェン(APAP)中毒、虚血及び敗血症の治療効果
APAP誘導型肝中毒モデルでは、P5779は肝血清酵素(AST、ALT)、前炎症性サイトカイン(TNF)及び肝壊死のAPAP誘導型上昇を用量依存的に低下させるとともに、生存率を向上させた(図6A、矢印)。肝虚血/再灌流(I/R)により媒介される無菌性損傷でも、P5779は肝血清酵素放出(AST、ALT)及び好中球浸潤を有意に減弱させた(図6B、矢印)。また、盲腸結紮や穿刺(CLP)により誘発された敗血症モデルでは、対照としてスクランブルされたペプチド処理に比べて、P5779による処置は、有意且つ用量依存的に生存率を向上させた(図6C)。重要なことは、既知のHMGB1による敗血症後遺症に対する遅延病原性の役割と一致するように、P5779は腹膜炎の発症24時間後に投与しても有効である。要するに、これら結果から明らかなように、P5779はジスルフィドHMGB1とMD2の結合をブロックすることにより、HMGB1媒介性臓器不全及び死亡を減弱させる。
これら結果は、HMGB1アイソフォーム識別可能なMD2により、HMGB1に対する自然免疫細胞選択的な識別の新規なメカニズムを明らかにする。HMGB1ペプチドライブラリーをスクリーニングすることにより、自然免疫細胞中のMD2/LPS/TLR4シグナル伝達を損なうことなくMD2−HMGB1相互作用を特異的に遮断する新規四量体ペプチド(FSSE、P5779)を見出した。このペプチドは、無菌性損傷による炎症性疾患に罹患した動物モデルを保護するだけでなく、致命的感染チャレンジ後にも保護を与え、それにより、PAMP誘発自然免疫を抑制することなくDAMP媒介性阻害性炎症反応を減弱させる新規治療ストラテジを開発する可能性を開拓した。
MD2は、LPSと結合するための大きな疎水性ポケットを形成する2つの逆平行βシートからなるβカップ折り畳み構造を有する。推定されたMD2とHMGB1(12nM)の結合親和力は、MD2とLPS(65nm)との結合親和力に相当する(Visintin等,J Immunol.,175(10):6465−72,2005)。MD2におけるジスルフィドHMGB1との結合部位を明らかにするために、さらなる構造分析が必要である。
HMGB1中和抗体は、無菌性損傷を予防することができ(Tsung等,J Exp Med,201:1135−1143,2005)、また、HMGB1放出及びその細胞外活性を抑制できる薬剤(Wang等,Science,285:248−251,1999)であり、敗血症から保護できる。敗血症の初期段階において、PAMP媒介性炎症反応は宿主防御に不可欠なことである。後期段階においては、DAMP放出はサイトカインストームと器官機能不全を深刻にする(Wang等,Expert Opin Ther Targets,18:257−268,2014)。この考え方は、敗血症の末期では、初期感染が終了してもHMGB1レベルが持続的に上昇するという最近の検討結果によって裏付けられ、この考え方も敗血症の長期病理学的結果に繋がるを解釈できる(Valdes−Ferrer等,Shock,40:492−495,2013)。微生物誘発敗血症は、無菌性損傷による全身性炎症反応症候群(SIRS)と臨床的に区別できない(Sursal等,Shock,39:55−62,2013)。TLR4/MD2がジスルフィドHMGB1の相互に排他的なシグナル伝達受容体複合体として作用するという知見に基づいて、PAMP媒介性シグナル伝達を保存すると同時に、DAMP媒介性炎症反応を選択的に弱めるストラテジを開発することが可能になる。
大量の証拠により、微生物感染に抵抗するための早期PAMP媒介性天然免疫応答を残す必要があることをサポートする。たとえば、C3H/HeJマウスにおける欠陥のあるTLR4シグナル伝達は、感染動物モデルの疾患の重症化度及び死亡率の増加に繋がる(Khanolkar等,J Virol,83:8946−8956,2009)。LPSは、TLR4によってマクロファージの貪食活性を強化させ、骨髄細胞おけるTLR4の選択的欠失はCLPモデルにおける細菌クリアランスを損なう(Deng等,J Immunol,190:5152−5160,2013)。これら知見は、生理学的防御免疫応答を保存しながら、媒介性炎症を選択的に弱める治療アプローチの重要性を強調している。PAMP誘発炎症応答ではなくDAMP誘発炎症応答に対するMD2標的選択的阻害剤としてのP5779の発見は、そのような新規治療ツールを提供する。
材料及び方法
薬剤
ヒトTLR4/MD2複合体、ヒトMD2、TLR2及び可溶性RAGEはR&D system社(Minneapolis,MN)から入手した。リポ多糖類(LPS,E. coli. 0111 :B4)、アセトアミノフェン、triton X−114、枯草菌由来のペプチドグリカン、ブラストサイジンS.,NaSH、マウスIgG及びヒトマクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)のいずれもSigma(St. Louis,MO)から購入した。タンパク質A/Gアガロース及びイソプロピル−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)はPierce (Rockford,IL)製である。NHS活性化セファロース4高速フロービーズはGE Healthcare(Cat #17−0906−01,Uppsala,Sweden)から入手した。チオグリコール酸塩培地はBecton Dickinson社(Sparks,MD)から購入した。超純LPS(Cat # tlrl−pelps)、ポリイノシン−ポリシチジル酸(poly I:C)及びBタイプのCpGオリゴヌクレオチドはInVivogen(San Diego,CA)から入手した。ヒトS100 A12はCirculex社(Bangkok,Thailand)から入手した。抗ヒト及びマウスMD2抗体はImgenex(San Diego,CA)から購入した。抗CBP標識抗体はGenScript (Piscataway,NJ)から入手した。抗p50抗体(E381)と抗p65抗体(sc−372)のそれぞれはEpitomics(Burlingame,CA)とSanta Cruz Biotech (Dallas,Texas)から入手した。BIOO Scientific(Austin、TX)製のカラーエンドポイントアッセイキットを用いて血清ALTとASTのレベルを測定する。
HMGB1タンパク質、抗体及びペプチドの製造
前記したとおり、組換えHMGB1は、大腸菌(E.coli)で発現させて同質性になるまで精製した(Li等,J Immunol Methods,289:211−223,2004)。液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC−MS/MS)によって特徴付けを行ったところ、このようなサイトカインを誘起するHMGB1は、システイン23と45の間にジスルフィド結合を有し、さらにシステイン106上のメルカプトが無くなった(Yang等,Mol Med,18:250−259,2012)。水銀チオレートをシステイン106に合成形成することにより、酸化還元修飾されたHMGB1(Hg−HMGB1)を化学合成し、S−硫黄水和化(H2S)によりシステインメルカプト(−SH)基を−SSHに変換するか、又はシステイン106の突然変異によりそれをアラニン(C106A HMGB1)に変換した(Yang等,Proc Natl Acad Sci USA,107:11942−11947,2010)。HMGB1とNaSH(5mM)を室温で3時間共培養して、H2Sで修飾されたシステインを有するHMGB1を生産した。酸化された又はDTT還元されたHMGB1の製造は前記のものと同様である(Yang等,2012)。発色リムルスアメーバサイトライセート試薬を用いてHMGB1中のLPS含有量を測定した(Lonza,Walkersville、MD)。前記したとおり、Triton X−114でHMGB1を抽出して、任意の汚染LPSを除去した(Li等,2004)。SDS−PAGE後に、クマシーブルー染色によりすべての組換えタンパク質の純度と完全性を検証したところ、純度は一般的に85%より高かった。リムルスアッセイにより測定したところ、すべてのHMGB1タンパク質製剤において、LPS含有量は検出できないか、又は、10pg/mgタンパク質未満である。以前に報道したように、抗HMGB1モノクローナル抗体(2g7)が生成された(Qin等,J Exp Med,203: 1637−1642,2006)。三量体ペプチド又は四量体ペプチド(FSSE、FSSEY、FEEE、FEED、SSE、SFSE)及びカルモジュリン結合ペプチド(CBP)は全てGeneMed株式会社(San Antonio,TX)からカスタマイズされるものである。高速液体クロマトグラフィーHPLCによって、ペプチドは純度90%になるまで精製されたことが確認された。リムルスアッセイによって測定したところ、合成ペプチド製剤におけるEndotoxinが検出できなかった。これらペプチドは、まずDMSOに溶解して、次に生産者の取扱い書に従ってPBSで希釈し、また、使用直前に新しく調製した。mini−protean Tris−TricineゲルはBioRad実験室(Hercules,CA)から入手した。
細胞分離及び培養
前記のとおり、チオグリコール酸塩により誘発された腹腔マクロファージは、2mlの無菌4%チオグリコール酸塩ブロスを腹腔内に注射したマウス(C57BL/6又は遺伝子ノックアウト、雄、10−12週齢)から得た(Yang等,2010)。マウスマクロファージ様RAW 264.7(TIB−71)とヒト白血病単球THP−1(TIB−202)はアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC,Rockville,MD)から入手した。以前に報道したように、Ficoll密度勾配遠心分離法によって、正常個体によって供与された血液からヒト初代単球(Yang等、2010)を精製した。HMGB1(1μg/ml)、TLR4アゴニストLPS(4ng/ml)、TLR3アゴニストpoly I:C(50μg/ml)、TLR2アゴニストペプチドグリカン(PGN)(5μg/ml)、RAGEアゴニストS100A12(50μg/ml)及びTLR9アゴニストCpG−DNA(1μΜ)で96ウェルプレートにおけるヒト初代マクロファージを刺激し、指示されたように、P5779(又はスクランブル対照ペプチド)の使用量を16時間かけて徐々に増加した。ELISA法によりTNF放出を測定した。
免疫沈降分析
カルモジュリン結合タンパク質(CBP)標識の組換えマウスHMGB1又はCBPペプチド単独(10μG)と、ヒトMD2上澄み液(50μl、カルモジュリンビーズで予備洗浄)とを4℃で穏やかに振とうしながら、一晩培養した。ヒトMD2上澄み液はヒトMD2でトランスフェクトしたsf9昆虫細胞(Teghanemt等,J.B.C.,283:21881−21889,2008)から得た。リムルスアッセイによって測定したところ、HMGBlとMD2の上澄み液は全て検出不能な量のLPSを含む。次に、CBP−HMGB 1混合物又はCBPとMD2との混合物をカルモジュリンビーズ(30μl排出ビーズ(drained beads))とともに4℃で1時間培養した。PBS含有0.1% triton X100で強く洗浄した後、Western blot実験法により抗ヒトMD2又は抗CBP抗体をプローブとして、ビーズに結合したタンパク質を分析した。
サイトカイン及びNF−κΒの測定
ELISAキット(R&D System社,Minneapolis,MN)を用いて、細胞培養液又はマウス血清中のTNFとIL−6の放出レベルを測定した。ELISAキットを用いて血清HMGB1レベル(IBL international,Hamberg,Germany)を測定した。マウス又はヒトサイトカインアレイCI(Raybiotech,Norcross,GA)を用いて、生産者の指示に従って、チオグリコール酸塩によるマウス腹膜マクロファージ又は初代ヒトマクロファージのサイトカイン発現プロファイルを測定した。同時に、22種類のサイトカイン又はケモカインを測定した。Westernブロット法によって、核断片中のp50とp65の発現を検出することによってNF−κΒ活性化を分析した。βアクチンの発現もサンプル等量添加対照として測定された。Silverイメージスキャナー(Silver−scanner II、Lacie Limited、Beaverton、OR)でWesternブロットを走査して、ImageJソフトウェア (vl.59,国立衛生研究)によって相対バンド強度を定量化し、βアクチンに対応した量との比として表示した。
表面プラズモン共鳴分析
Biacore T200装置を用いてリアルタイム結合相互作用を検討した。HMGB1−MD2結合分析のために、ヒトMD2をCM5シリーズチップ(GE Life Science)に固定した。参照物として1つのフローセルを1Mエタノールアミン(pH 8.5)で活性化させた直後にブロックした。25℃で、10μL/minの流速でサンプルフローセルにジスルフィドHMGB1(又はアイソフォーム)(10mMの酢酸塩緩衝液、pH5.2中)を7分間かけて注射した。濃度を増加していくジスルフィドHMGB1又はHMGB1アイソフォーム(C106A、スルホニル基、完全に還元、水銀又はH2S修飾HMGB1、1μΜ)を固定されたMD2に流させた。それに対して、HMGB1をチップに塗布して、各種量のMD2を分析物として添加した。D. Golenbock博士(Worcester,MA)及びTimothy Billiar博士(Pittsburgh,PA)からの2種の別のヒトMD2タンパク質を用いて結果を確認した。TLR4−HMGB1結合実験については、ヒトTLR4をチップにコーティングしてジスルフィドHMGB1(100nM)を分析物として添加した。ペプチドのスクリーニング実験については、ヒトMD2をセンサチップに塗布して、各種のオリゴペプチド(FSSE(配列番号:1)、FSSEY(配列番号:2)、FEEE(配列番号:3)、FEED(配列番号:4)、SSE、SFSE(配列番号:5)、100nM)を分析物として添加した。分離時間は2分間に設定し、次に、10nM水酸化ナトリウム溶液を用いて1分間再生した。BIAcore評定ソフトウェアを用いてKdを評定した。HMGB1抗体によりMD2−HMGB1相互作用をブロックする実験では、ヒトMD2をチップに塗布して分析物としてHMGB 1(100nM)を添加するとともに、HMGB1 mAb又は対照IgGの量を増加させ、応答単位を記録した。
MD2とペプチドの分子ドッキング
前記したとおり、タンパク質データベース(PDB、コード:3VQ2)からMD2/TLR4の結晶構造を取得し、MOEソフトウェアを用いて分子ドッキングを行った(Zan等,Mol Sim,6:498−508,2012)。分子可視化システムPymol 0.99によって三次元グラフを構築した。
siRNAによるRAW 264.7とTHP−1細胞中のMD2のノックダウン
RAW 264.7細胞中のMD2ノックダウンについては、トランスフェクト試薬DharmaFect1(50nM、名称:on−target plus smart pool、原産地:Dharmacon、生産者:Lafayett、CO)を用いて、細胞にマウスMD2又は対照siRNAをトランスフェクトした。THP−1細胞中のMD2をノックダウンするために、MD2に対する特異的siRNAのトランスフェクトはAmaxa Nucleofectorキットによって行った。トランスフェクトの48時間後、抗MD2抗体を用いて、Westernブロッティングによりノックダウン効果を確認した。トランスフェクト後の48時間から、HMGB 1(1μg/ml)で細胞を16時間連続刺激した。細胞溶解物と上澄み液を収集して、収集した細胞溶解物と上澄み液についてWesternブロッティング又はELISA法によって検出した。NE−PERタンパク質抽出キット(Thermo Scientific,Hudson、NH)を用いて、RAW 264.7、THP−1又はMD2遺伝子ノックアウトマウスからの初代マウスマクロファージに対してNF−κB測定を行った。
動物
Jackson実験室(Bar Harbor,ME)から雄C57BL/6マウスを得た。MD2遺伝子ノックアウト(C57BL/6バックグラウンド)マウスをRiken Bio−Resource Center(茨城、日本)から購入した。全ての動物は、標準温度と光照サイクル条件下でFeinstein医学研究所又はピッツバーグ大学で置かれており、且つすべての動物についての操作ステップは動物実験委員会IACUC (institutional animal care and use committee)により承認された。
MD2 KOマウスの尾スニップからの遺伝子タイピング
PCRプライマーはRiken Bio−Resource Centerにより設計されてInvitrogen社(Carlsbad,CA)から入手した。同一プライマーで遺伝子タイピングのうちの野生型(PCR産物=2000bp)の識別とMD2遺伝子のノックアウト(PCR産物=800bp)を行う。
ネズミ肝臓温虚血/再灌流(I/R)については、前記70%温肝臓I/Rモデル(Tsung等,J Exp Med,201:1135−1143,2005)の実施と同様である。手術際に、マウスにP5779(500μg/匹)又は媒体を腹腔内注射して、以降の6時間後に安楽死させた。心穿刺によって全血を採血して、肝臓を採取し、分析のために10%ホルマリンに固定した。
盲腸結紮穿刺(CLP)については、C57BL/6マウス(雄、8−12週齢)に前記CLPステップを実施した(Yang等,2004)。CLP手術の24時間後から、50又は500μg/匹の量でP5779又はスクランブル対照ペプチドを腹腔内注射するように、1日に1回処置を行い、4日間持続した。生存率を2週間モニターした。
アセトアミノフェン(APAP)肝中毒モデルについては、3組の実験を行った。全ての実験において、マウスを一般的に絶食させて一晩放置し、APAP(生存率検討の場合は350mg/kg、血清測定の場合は400mg/kg)を腹腔内(IP)注射し、前記したように(Antoine等,J Hepatol,56: 1070−1079、2012)、APAP注射24時間後にマウスを安楽死させた。第一組の実験には、雄MD2 KO又はC57/BL6マウス(8−12週齢)を用いて行った。マウスにAPAPを注射して24時間後に安楽死させ(血清測定の場合)又は2週間監視した(生存率検討の場合)。第二組の実験は野生型雄(C57/BL6)マウスのAPAPモデルに抗HMGB1抗体を投与して行った。生存率実験では、マウスにAPAPを注射するとともに抗HMGB1抗体を投与した(5μg/匹、IP、1日に1回、4日間持続、APAP注射2時間後から1日間置きに2つのさらなる用量を投与)。無関係な非免疫IgGを対照群とした。血清測定では、マウスにAPAPとともに抗HMGB1モノクローナル抗体を注射し(5μg/匹、APAP注射後の2時間と7時間に腹腔内注射)、APAP注射24時間後に安楽死させた。第三組の実験はP5779の野生型マウスのAPAPモデルに対する効果を評定した。雄C57BL/6マウスにAPAPを注射するとともに、P5779(50又は500μg/匹)又はスクランブル対照ペプチド(500μg/マウス、APAP注射後の2時間と7時間にi.p.注射)を投与し、APAP注射24時間後に安楽死させた。生存率実験では、マウスにAPAPを注射するとともに、P5779又は対照ペプチド(500μg/匹、i.p.、APAP注射2時間後から1日に1回、5日間持続)による処置を実施し、生存率を2週間監視した。前記したとおり、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(GLDH)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)及びアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の血清レベルによって肝中毒を測定した(Antoine等,Hepatology,58:777−787,2013)。
組織評価
肝臓を採取して10%ホルマリンに固定し、次にパラフィンに包埋した。ヘマトキシリンとエオシンで5−μΜの切片を染色した。肝臓のH&E染色はAML実験室(Baltimore,MD)で行われた。盲検法によって肝組織学を評定し、以前に報道した修飾方法で、壊死と炎症(細胞の腫脹、組織構造の喪失、鬱血)量に基づいて臨床スコアを計算した(Desmet等,Journal of hepatology,38:382−386,2003)。0点=3−4個の代表的な切片に壊死又は炎症の迹象はない;1点=軽度の壊死又は炎症<全検査面積の25%、2点=顕著な壊死と炎症(全面積の25−50%);3=重度の壊死と炎症(>50%面積)。
統計分析
別段の記載がない限り、データは平均値+SEMとして示す。処置群間の差異はスチューデントt検定、一元配置分散分析(ANOVA)及びそれに次ぐ最小有意差検定によって測定された。両側フィッシャーの正確確率計測によって、動物生存率検討における各群間の差異を測定した。サイトカインアレイの検討分析はSilk scientific社(Orem,Utah)のUN−Scan−itソフトウェアを用いて行われた。p値が0.05より小さいと、統計的に有意であると考えられる。
実施例2:インフルエンザを標的とする自然免疫応答の新しいストラテジ
本発明者らは、TLR4−/−マウスがマウス適合A/PR/8/34(PR8)インフルエンザによる致死に対して不応性であり、逆には、TLR4アンタゴニスト(Eritoran)の治療的投与がPR8による死亡と急性肺損傷(ALI)をブロックしたことを報道した。本明細書において、抗TLR4治療又はTLR2特異的IgG治療も野生型(WT)マウスを致死的PR8感染から保護できること、PR8感染3時間前から、4日間持続して投与すると、EritoranはWTマウスとTLR4−/−マウスを死亡から保護できないことは、Eritoranがウイルスによって引き起こされた、保護に必要な非TRL4シグナルをブロックする必要があることを示したこと、の知見を見出した。機械的には、(i)EritoranはHMGB1によって媒介された、TLR4依存性インビトロシグナル伝達及びインビボで循環するHMGB1をブロックし、且つ、HMGB1阻害剤はPR8に対する保護を提供すること、(ii)EritoranはALIに関連する肺水腫を抑制すること、(iii)IL−1受容体アンタゴニスト(IL−1Ra)治療による部分的な保護によって証明されるように、IL−ΙβはPR8誘導型致死に有意に寄与することが考えられる。感染後の4日目からEritoranとオセルタミビルを投与する場合は、PR8による致死から保護する効果を奏する。Eritoran処置は後続のPR8チャレンジに対する適応性免疫応答を遮断できない。要するに、本発明者らのデータは、インフルエンザ感染に対する宿主標的治療アプローチを裏付けるものである。
結果
以前に報道したように、TLR4−/−マウスがマウス適応インフルエンザPR8((Nhu等,Mucosal Immunol.,3:29−39,2010)に対して不応性であり、ここでは、TLR4−/−マウスが病原性マウス適応H1N1ウイルス株ma.Ca/04に対しても不応性であることが証明された(Ye等,PLoS Pathog.,6:e1001145,2010)。本発明者らは、TLR4アンタゴニストEritoranを用いてPR8が感染されたWTマウスに対して治療的処置を行うことにより致死から有意的に保護を与えるとともにALIを阻害することを明示したことがあり、これら知見は、ma.ca/04ウイルス株が感染されたC57BL/6マウスにおいて実証された。EritoranはさらにPR8が感染されたBALB/cマウスを保護する(データに示されていない)。最後に、感染後の4日目から、さらなる用量のEritoran(すなわち、1日に1回投与と1日に2回投与を比較)を投与しても、1日の単回投与による保護効果の向上に役立てない(データに示されていない)。要するに、これらデータは以前の観察、すなわち、Eritoranによるマウスへの治療的処置が、それぞれ感染条件下でより多くのインフルエンザウイルス株による致死から保護できることを強調している。以下の実験は、Eritoran媒介性保護に対する機械論的な洞察力を提供し、さらに、Eritoran処置による影響を受けるインフルエンザ誘発性疾患に有用な新経路を識別するように設計された。
インフルエンザに起因する致死性とEritoranによる保護の基盤となるシグナル伝達の要件の解明
Eritoranは、その共受容体MD2の深い疎水性ポケットに結合されることによって、TLR4シグナル伝達をブロックし、さらにリガンドにより誘導された二量体化をブロックした(Kim等,Cell,130:906−917,2007)。PR8誘導致死におけるTLR4の役割を確認するために、高度に特異的な抗TLR4抗体でマウスを処置した(Roger等,Proc. Natl. Acad. Sci. U S A,106:2348−2352,2009)(図7A)。PR8のi.v.により感染された後の2日目と4日目に、抗TLR4 IgG(アイソタイプマッチングする対照IgG)を投与すると、マウスを致死性感染から保護し(図7B)、有意に向上している臨床スコアを取得した(p<0.004、図7C)。この結果から、TLR4シグナル伝達はインフルエンザによる致死と臨床症状のコアであることが明らかなになった。
TLR4はMyD88依存性とTRIF依存性シグナル伝達経路を活性化させる唯一のTLRである。Imai等の中心的な結論の一つとしては、不活性化されたH5N1インフルエンザウイルス又は宿主から誘導された酸化リン脂(OxPAPC)により誘導されたTLR4媒介性ALIは完全にTRIF依存性である。ただし、MyD88はインフルエンザに対する宿主応答に強く関与している(Teijaro等,J. Immunol.,82:6834−43,2009)。IRAK4(MyD88に募集された第一酵素)はシグナル伝達を開始させて、ΙΚΚα/β/γ複合活性化、ΙκΒαリン酸化及び結局としてNF−κΒ活性化を引き起こす。TRIF経路はIRF3活性化を駆動するとともにNF−κΒ活性化の遅延を引き起こすが、この後者の経路はIRAK4を介してIKK複合体を活性化させるものではない。インフルエンザに対する宿主応答とEritoranの保護メカニズムの基盤となる(一本又は複数本)下流経路を説明するために、PR8致死性とEritoranのIRAK4キナーゼデッドノックイン(IRAK4KDKDI)マウスにおける効果を評価した。TRIF−/−マウスに比べて、このようなマウスはMyD88依存性シグナル伝達をブロックしたIRAK4の触媒的に不活性な形態を有する。IRAK4KDKIマウスは、野生型マウスよりも僅か遅延した平均死亡時間を示し、Eritoran処置では、WTマウスの90%生存率に対して約60%の生存率を有する(図8A)。興味深いことに、TRIF−/−マウスは、WTマウス又はIRAK4KDKIマウス(50%生存率)よりもPR8感染に対して抵抗性がより高いものの、TLR4−/−マウスのように不応性ではなかった(Nhu等,Innate Immun.,18:193−203,2012)。しかしながら、Eritoran処置は生存率をWTレベルに有意に向上させた(p<0.001;図8B)。VIPERは11個のアミノ酸を有するペプチドであり、TRIFに結合されてTRIF依存性シグナル伝達をブロックするように示されたワクシニアウイルスのA46タンパク質から誘導された(Lysakova−Devine 等,J. Immunol.,185:4261−71,2010)。WTマウスがPR8に感染された後、細胞浸透VIPERペプチド(9R−VIPER)又はEritoranで治療的処置を行った結果、TRIF−/−マウスでの保護度と同様に、9R−VIPER処置は部分的な保護(約50%)を発生させた(図8B)。要するに、MyD88依存性経路とTRIF依存性経路は全てインフルエンザ媒介性疾患とEritoran誘導型保護に寄与する。
PR8誘発性致死について、WTマウスよりもTLR2−/−マウスは感受性が高いことを報告した。しかしながら、WTマウスと異なり、Eritoran治療法はTLR2−/−マウスを保護することができなかった。従って、TLR2はEritoranの直接又は間接的なターゲットであると推定される。TLR2のインフルエンザによる疾患における役割を確認するために、インビボでのシグナル伝達をブロックするTLR2(クローンT2.5)に対するモノクローナル抗体が使用された(Meng等,J. Clin. Invest.,113:1473−1481,2004)。PR8感染の3時間前とPR8感染後の1日目から、各群のマウスについて、一群を抗TLR2抗体で処置し、一群をアイソタイプ対照抗体で処置し、残りの2群にはPR8感染後の2日目と4日目に抗TLR2抗体又は対照抗体を投与した(図9A)。抗TLR4 IgGが奏する保護効果(図7)と同様に、感染後の2日目と4日目に投与された場合は、抗TLR2抗体によるPR8感染WTマウスに対する処置は、マウスを死亡から有意に保護し(p<0.001;図9B)、それに対して、初期に投与された場合は、抗TLR2処置は有効ではなかった。これら結果から明らかなように、TLR2アゴニストは致死性に寄与するPR8の感染後に発生する。
これら知見を拡張するために、WT、TLR2−/−、TLR4−/−及びTLR2/4二重ノックアウトマウスに致死量以下のPR8を感染させて14日間モニターした。TLR2/4二重ノックアウトマウスは、WTマウス又はシングルノックアウトマウスよりも感染させやすい(図8A)。具体的には、ALIはWTマウスよりもTLR2/4二重ノックアウトマウスにおいて顕著に悪化し、実質および肺胞空間(好中球とリンパ球からなる)全体にわたって炎症性浸潤を示した(図10B)。これら知見から明らかなように、ウイルス感染に、初期に誘導されたTLR2アゴニストはTLR4−/−マウスの致死性PR8感染に対する抵抗力にとって必要である。
Eritoran処置のタイミングは保護にとって大切なことである。
ディファレンシャルなインフルエンザウイルスのコピーも誘導可能なIFN−β mRNAのレベルもTLR4−/−マウスのPR8感染に対する抵抗力の原因でない(図11A)。以前に報道したように、Eritoran治療法は、PR8感染WTマウスを保護したが(図11Bと図11C、白抜き丸、左パネル)、TLR4−/−マウスの抵抗力に作用しなかった(図11Bと図11D;白抜き丸、右パネル)(Shirey等,Nature,497:498−502,2013)。しかし、最初に予防的なEritoran処置(PR8感染の3時間前)を行い、次にEritoranを4日間連続投与すると(図11B、前治療/レジメン;黒四角)、WTマウスは死亡から保護されなかった(図11C、黒四角、左側パネル)。それは、死亡とALIの、早期にインフルエンザを誘発できるが末期に作用するメディエーターがWTマウスにおいてEritoranのターゲットであることを意味する。驚くべきことに、同じレジメンでは、TLR4−/−マウスがPR8に感染されやすくなり(図11Bと図11D、黒四角、右パネル)、それは、TLR2/4二重ノックアウトマウスによるデータと一致するように、Eritoranの非TLR4ターゲットがTLR4−/−マウスのPR8感染に対する抵抗力にとって必要であることを示す。前処置/早期EritoranはCD14−/−マウス又はTLR2−/−マウスの感受性に影響を及ぼさない。
P5779(MD2アンタゴニスト)はインフルエンザ媒介性致死を阻止する。
Eritoranで処置する場合、PR8感染マウスの肺(図7A参照)には、サイトカイン誘導の不活化及びOxPAPC(Imai等により示されたDAMP)の蓄積を示し、それにより、TLR4を介してマクロファージに対する作用を果たすことでALIを媒介することが以前に報道した(Imai等,Cell,133:235−249,2008)。報道によると、内毒性とグラム陰性敗血症に最も密接に関連するDAMPである高移動度群B1(HMGB1)は、重度のインフルエンザ感染の間に放出され(Alleva等,J. Immunol. 181:1454−1459,2008)、TLR4共受容体(MD2)と結合することによりTLR4を活性化させた(Yang等,J. Leukoc. Biol.,93:865−873,2013)。HMGB1に刺激されたWTネズミマクロファージは、インビトロでEritoranによって阻害されたMyD88依存性とTRIF依存性の遺伝子発現を誘導した(図12A)。PR8に感染されたマウスと非適合ヒトインフルエンザpdH1N1ウイルス株に感染されたコットンラットは、インビボでのEritoran処置により阻害された循環HMGB1の増加を示した(図12B)。従って、OxPAPCと同様に、HMGB1は、TLR4活性化を通じてインフルエンザにより誘導されたALIに寄与する感染後、比較的遅く放出するDAMPを示す。P5779はHMGB1の小分子阻害剤であり、MD2/HMGB1相互作用を阻止し、HMGB1誘導型TLR4シグナル伝達をブロックすると同時に、LPS誘導型サイトカイン/ケモカイン誘導を妨害しないことが最近示された。P5779はマウスを肝臓虚血/再灌流損傷、化学的中毒及び敗血症から保護した(Yang等,Exp. Med.,212:5−14,2015)。P5779のインフルエンザ感染に対する有効性を評定するために、WT C57BL/6JマウスにPR8を感染させてから2日後、Eritoran(E5564)(不活性化対照ペプチド)又はP5779でマウスを5日間連続処置した。マウスのEritoran処置とP5579処置のいずれも有意に向上した生存率と低下した臨床スコアを示し、対照阻害剤で処置するマウスは、臨床スコアが高く、感染により死亡した(図12Cと図12D)。
PAR2アンタゴニストはインフルエンザ誘発致死と肺リークを阻止する。
最初にゾヌリン(現在はプレハプトグロビン2(pre−haptoglobin 2)として知られている)と呼ばれる宿主誘導タンパク質は、タイトジャンクションタンパク質のリン酸化によって腸管の透過性を向上させることが判明した(Goldblum等,FASEB J,25:144−158 (2011)。シグナル伝達は、TLR4と物理的及び機能的に相互作用できることが示されたシグナル伝達タンパク質であるプロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)に依存していた。AT−1001(酢酸ララゾン)は、ゾヌリン類似体ペプチドアンタゴニストとして、ヒトの耐性に優れるとともに、セリアック病に関連する腸炎症を軽減できる。近来、AT−1001は、ZO−1リン酸化の抑制と気管支肺胞洗浄液(BALF)中の白血球数とミエロペルオキシダーゼ活性の低下により、IgG免疫複合体又はLPSの肺内沈着によって誘導されたマウスにおけるALIを減弱させることについての報告があった(Rittirsch等,Am. J. Physiol. Lung Cell. Mol. Physiol.,304:L863−72,2013)。PAR2−/−とTLR4−/−マウスのいずれも致命的なPR8感染に対して不応性であることから、致命的なインフルエンザチャレンジの間のAT−1001処置とEritoran処置の効果の差異を比較した。WTマウスにPR8を感染させて、感染後の2日目から、ビヒクル(生理食塩水)、Eritoran又はAT−1001で5日間連続処置した。Eritoran処置に比べて、マウスのAT−1001処置は、有意な保護と低下した臨床スコアを示した(図13Aと図13B)。AT−1001はLPS又は免疫複合体により誘導されたALIに関する肺水腫を減少させるため、EritoranとAT−1001がPR8感染に起因する肺水腫の減少を引き起こすかどうかを計測し、湿/乾燥(W/D)重量比率で測定を行った。PR8感染後にEritoran又はAT−1001で処置したマウスに比べて、PR8感染後、ビヒクルで処置したマウスは高いW/D比を示し(図13C)、それは、インフルエンザ感染期間に、Eritoranの付加的な保護作用は、肺水腫を軽減させることによりALIを減弱させることにあることを示す。
インフルエンザによる致死性に対するIL−1βの寄与
PR8に感染されてEritoranで処置したマウスの肺にはIL−1β mRNAが強く阻害されることが示された。続いて、Teijero等は、インフルエンザに感染されたIL−1R−/−マウスが、p.i.2日間後、BALFにおけるサイトカインレベルの減少を示すことを報道していた(Teijaro J.R.等,J. Immunol.,82:6834−43,2009)。ただし、ALIにも致死性にも評定しなかった。rIL−1受容体アンタゴニスト(IL−IRa;a.k.a. Kineret,anakinra)は高炎症性疾患(例えば関節リウマチ、クリオピリン関連周期性症候群)の治療に臨床的に使用される(Dinarello等,Nat. Rev. Drug Discov.,11:633−652、2012)。Eritoranの保護効果に比べて、rIL−1Raで処置したPR8感染C57BL/6J WTマウスは、有意ながら中等の生存率(図8A)と臨床スコア(図8B)を示す。それは、IL−1βがインフルエンザによる疾患の媒介に関与するが、Eritoranにより作用が阻害されたほかのメディエーターも関与することを示す。
Eritoran処置はインフルエンザに対するオセルタミビル治療法の治療効果を改善する。
単独で、又は、承認されたノイラミニダーゼ阻害剤である抗ウイルス療法(登録商標Tamiflu(オセルタミビル))と併用して投与されたEritoranの効果を評定した。有効性を実現するために、発症後の2日間内で、オセルタミビル処置が推薦される(Khazeni等,Ann. Intern. Med.,151:464−473,2009)。モデルでは、感染後3日目に、マウスは臨床症状を示すので、感染後2日目、4日目又は6日目からビヒクル、Eritoran単独、オセルタミビル単独、又はEritoranとオセルタミビルの組み合わせを用いて5日間連続処置したマウスを比較した。感染後2日目から処置し始める場合は、この2種の薬剤は全て高保護性を有し、併用することによるさらなる効果がなかった。しかしながら、感染後4日目又は6日目から投与して処置する場合は、オセルタミビル単独で治療すれば、有意な保護効果はなく(特に6日目から投与する場合)、それに対して、Eritoranは、以前に報道したように、致死からの大きな保護効果を果たす。重要なことに、4日目から投与し始める場合は、Eritoran/オセルタミビルの組み合わせによる処置は生存率を有意に向上させる。それは、セレコキシブ(COX−2阻害剤)とザナミビルを同時共投すると、ザナミビル単独で投与する場合よりもインフルエンザ感染マウスの生存率を向上できるというZheng等による結果と一致する(Zheng等,Proc. Natl. Acad. Sci. U S A、105:8091−8096,2008)。以前の検討から明らかなように、インフルエンザ感染期間に、EritoranはCOX−2誘導を減少させる。
Eritoran処置後、PR8感染の生存者では適応免疫を形成した。
重要なことに、2週間後、EritoranによってPR8から保護されたマウスは、追加したEritoran処置をせずに二次PR8チャレンジした場合、生存した。従って、一次感染中のEritoranによる抗炎症作用は、インフルエンザに対する適応性免疫応答の発達を損なわない。
検討
インフルエンザは世界的に健康上の懸念である。ウイルスが迅速に突然変異して、抗ウイルス耐性や免疫原性抗原エピトープの発現が変化することによって、従来のワクチンが無効になる。従来の検討(Nhu等,Mucosal Immunol.,3:29−39,2010)に基づき、耐性に優れた合成TLR4アンタゴニスト(Kalil等,Shock,36:327−331,2011)であるEritoran(E5564)は、宿主誘導型DAMPの応答中のTLR媒介性シグナル伝達をブロックすることによりインフルエンザ誘発ALIを低減させる新規な治療方法である。本明細書では、細胞レベル及び分子レベルから、ALI誘導及びEritoran処置によるその低減の機構を更に詳細に説明する。
我々のデータにより示すように、Eritoran療法は、TLR4−/−マウスのインフルエンザ感染に対する耐性を変えない。Eritoran療法と抗TLR4抗体療法のいずれもWTマウスを保護し、EritoranはTLR4シグナル伝達に必要なCD14とMD2にインビトロで結合する(Shirey等,Nature,497:498−502,2013)。要するに、これら知見は、TLR4のインフルエンザ誘発性疾患へ関与すること、及びEritoranにより媒介される保護のターゲットとすることを強力に示唆する。Eritoran前治療/レジメンは、TLR4−/−マウスを感染しやすくするので、Eritoranは、耐病性の誘導の早期に必要な非TLR4 PRRとも相互作用しなければならない。CD14はTLR2、TLR3、TLR7及びTLR9の共受容体として作用でき、且つ、後者の3つがインフルエンザに対する宿主応答に関与し(Leung等,J. Gen. Virol.,95:1870−1879,2014)、IFN−βを誘導できるので(Kawai等,Nat. Immunol.,11 373−384、2010)、前治療/初期レジメンによって投与されるEritoranは、CD 14に結合するとともに、特異的PAMP又はDAMPのこれらTLRのうちの1つ又は複数への転移を抑制することによって、IFN−βを誘導すると仮定している。この仮説は、初期レジメンによってEritoranを投与したWTマウスとTLR4−/− マウスがIFN−β−/−マウスのようにPR8により感染されやすく、また、CD14−/−マウスがEritoran前治療/早期又は治療レジメンにより保護できないという観察によってサポートされる。Pauligk等が提出したように、サイトカインを発生できないためであるかもしれない(Immunobiology,209:3−10,2004)。
PR8感染マウスのEritoran媒介性保護におけるTLR2の役割はより謎めいたものである。実際には、治療的に投与される場合は、抗TLR2 MAb(対照IgGではなく)はマウスにPR8からの保護を提供することが観察されたにもかかわらず、PR8感染3時間前とPR8感染後1日目に投与される場合は、同一抗TLR2 MAbは最低限の保護しか提供できなかった。それは、TLR2が、TLR4と同様に、感染後期に有害な役割を果たすことの強力な証拠となっている。OxPAPC(Kadl等,Free Radic. Biol. Med.,51:1903−1909,2011)とHMGB1(Yang等,J. Leukoc. Biol.,93:865−873,2013)は全て感染後に誘導されるTLR2とTLR4アゴニストであると報道した。これらDAMPは、TLR2の発現及び/又はTLR2依存性シグナルを相乗的に強化できる。TLR2/4二重ノックアウトマウスが亜致死PR8により非常に感染されやすいという知見は、TLR2とTLR4の欠失によって、IL−1とIL−18シグナルがMyD88をより容易に取得できるようになることを示唆している。また、TLR2は、TLR4−/−マウスのPR8抵抗性を媒介する物質の生産に必要であることを示唆している。
Eritoranは、インフルエンザにより誘導された「サイトカインストーム」とOxPAPC累積(酸化されたリン脂TLR4 DAMP)を軽減させる。メカニズム的には、これら知見は、Eritoranは、(i)HMGB1により媒介されたTLR4依存性インビトロシグナル伝達、血清へのHMGB1のインビボ放出をブロックして、保護効果がP5779(高選択的HMGB1阻害剤)に相当すること、及び(iii)肺水腫抑制作用がAT−1001(ゾヌリンにより誘導された肺水腫の阻害剤)に相当することを示すことによって、拡張されている。Eritoran療法の後者の効果は、前記した未治療インフルエンザ感染マウスに比べて向上している肺機能に関連する。最近の検討によれば、腸上皮における傍細胞透過性向上により肺損傷を引き起こすことを示唆することによって、腸管においてトラウマ/出血性ショックに起因するTLR4活性化とALIの発展との可能な相関が示される(Sodhi等,J. Immunol.,194:4931−4939,2015)。また、PR8感染マウスに対する治療により得られた部分的な保護効果は、IL−1シグナル伝達のPR8誘導型致死での役割をサポートするものの、PR8による疾患等のほかの炎症メディエーターのPR8誘導型疾患での作用をもサポートする。Eritoran誘導型保護が適応性免疫応答の進行を阻止できないという知見に基づいて、Eritoranの、インフルエンザによる二次細菌感染に対する強化された感度に対する効果評定のために、さらなる検討が必要である。全体として、本発明者らの発見は、侵入するウイルスに応答する宿主の能力を制御する微生物−宿主炎症細胞の相互作用の複雑さを強調している。示された証拠から明らかなように、自然免疫細胞における複数の受容体が関与する可能性が高く、しかしながら、微生物及び宿主リガンドに応答するこれら受容体間の未知の相互作用が、宿主応答に質的及び量的に有意に影響を及ぼす可能性も高い。
方法
試薬
Eritoran(E5564)はEisai社(Andover,MA)により提供されるものであり,前記のように製造された(Shirey等,Nature,497:498−502,2013)。大腸菌K235 LPSの製造は前記のとおりである(Mclntire等,Biochemistry,6:2363−2376,1967)。抗TLR2 IgGとアイソタイプ対照IgGはAffymetrix(Santa Clara,CA)から購入する。組換えHMGB1はKevin Traceyにより提供される(Feinstein Institute for Medical Research,Manhasset,NY)。9R−VIPERはAndrew Bowie(Trinity College,Ireland)により提供される。P5779と対照ペプチドはYousef Al Abed(Feinstein Institute for Medical Research,Manhasset,NY)により提供される。抗TLR4 IgGとアイソタイプ対照IgGはThierry Roger and Thierry Calandra(Infectious Diseases Service,Centre Hopsilalier Universitaire Vaudois and University of Lausanne,Lausanne,Switzerland)により提供される。At−1001はAlessio Fassano(Division of Pediatric Gastroenterology and Nutrition,MGH,Boston,MA)により提供される。IL−1RaはCharles Dinarello(University of Colorado,CO)により提供される。
マウス及びコットンラット
6−8週齢のWT C57BL/6Jマウスは購入された(The Jackson Laboratory,Bar Harbor,ME)。標的突然変異を有する全てのマウスはC57BL/6バックグラウンドになるように飼育されるか、又は直接C57BL/6バックグラウンドから直接得た。TLR4−/−マウス(最初、Shizuo Akira(大阪、日本)により提供)は、UMB(Baltimore,MD)とUniv. Massachusetts Medical School(Worcester,MA)で飼育)、IRAK4KDKI(Lilly Research Laboratoriesにより提供、Indianapolis,IN,UMBで飼育)、TLR2−/−マウス(Shizuo Akiraにより提供、U.Massachusetts Medical Schoolで飼育)、及びTLR2/TLR4二重ノックアウトマウス(U.Mass. Medical School (Worcester,MA)で飼育)。BALB/cByJマウスはJackson Laboratories(Bar Harbor,ME)から購入する。すべてのマウス系統は特定の無病原体条件において飼育している。実験は、University of Maryland、BaltimoreとMassachusetts Medical School Department of Animal Medicineの規定に従って行われ、各研究所の動物管理使用委員会(IACUC)の承認を得て行った。
近交系の若齢成体(4−8週齢)コットンラット(Sigmodon hispidus)はSigmovir Biosystem社(Rockville,MD)で飼育した。全てのコットンラット実験は、動物管理使用委員会(IACUC)の承認を得て行った。
ウイルス
マウス適合H1N1インフルエンザA/PR/8/34ウイルス(「PR8」)(ATCC、Manassas、VA)は、前記したように(Teijaro等,J. Immunol.,82:6834−43,2009)、10日齢の孵化鶏卵の尿膜腔液で成長し、Donna Farber博士(Columbia University,NY)により提供される。マウス適合H1N1インフルエンザmaCa.04はDaniel Perez(Georgia State University,Atlanta,GA)により提供される。非適合ヒトインフルエンザウイルス株pHlNlの入手及び増殖は前記のとおりである(Blanco等,J. Virol.,87:2036− 45,2013)。
ウイルスチャレンジ与治療
マウスにマウス適合インフルエンザウイルス株A/PR/8/34(PR8;〜7500 TCID50,i.n.,25 μl/鼻孔)又はmaCa.04(〜2200 TCID50,i.n.)を感染させた。感染後2日目に、マウスにプラセボ又はE5564(Eritoran;100 μlで200 μg/匹 ,i.v.)、抗TLR4 IgG(2mg/匹,i.v.)又はそのアイソタイプ対照IgG、抗TLR2(T2.4クローン;100μg/匹,i.v.)又はそのアイソタイプ対照IgG、P5779又はその対照ペプチド(500μg/匹,i.p.)、AT−1001(150μg/匹,i.v.)、IL−1Ra(150μg/匹,i.v.)、又はオセルタミビル(1mg/匹,p.o.)を投与した。いくつかの実験では、感染後4日目又は6日目から、処置群マウスにEritoran又はオセルタミビルを投与し且つ5日間連続投与する。いくつかの実験では、一部の処置群マウスについて、PR8感染3時間前に、E5564(200mg/匹,i.v.)を投与し、次に、感染後1日目から、4日間(1日目−5日目)を連続処置する。いくつかの実験では、処置群マウスについて、PR8感染3時間前に、抗TLR2(T2.5クローン,100μg/匹,i.v.)又はその対照アイソタイプIgGで処置し、次に、感染後1日目に再び1回処置し、合計で2回処置する。毎日、マウスの生存率、体重減少及び臨床症状(例えば無気力、立毛、フリル毛皮、猫背の姿勢、急速な浅い呼吸、聞こえるくちばし)を14日間連続監視する。毎日、マウスについて0(症状無し)−5(垂死)の範囲内で採点する。
TLR2/4二重ノックアウトマウスの検討
感染際に、C57BL/6J WT、TLR4−/−、TLR2−/−及びTLR2/4二重ノックアウトマウスは8−12週齢である。インフルエンザA/PR/8/34(Charles River Laboratories,Wilmington,MA)ウイルス原液を無菌リン酸塩緩衝液(PBS)で希釈し、使用まで氷で保存している。マウスをイソフルランで麻酔して、マウスを1匹ずつ40000pfu(30μl,i.n.)感染させる。2つの試験において、毎日、マウスの感染後の生存率を14日間連続監視する。別の試験において、感染後5日目に、マウスを安楽死させて、肺を採取して病理学的検査を行う。University of Massachusetts Medical School Morphology Coreからの1mlホルマリン(10%ホルムアルデヒド)で肺をインシチュ(in situ)膨脹させる。膨脹させた肺をPBSに入れて24−48時間固定する。次に、University of Massachusetts Medical School Morphology Coreによって、肺を垂直に二等分してパラフィンで包埋処理を行う。スライドを製造して、H&E染色をして、組織学的分析に用いる。
肺の湿重量/乾燥重量比率
未処置又はE5564又はAT−1001のいずれかで処置したマウスにおいて、肺湿/乾燥(W/D)重量比をインフルエンザ感染後のマウス肺水腫の指数とする。感染後7日目に、マウスを安楽死させ、解剖して全肺を採取し、切除直後に肺の重量(湿重量)を測定する。次に、肺組織を5−6日間空気乾燥させ、乾燥重量が変化しないまで、毎日再秤量し、安定した乾燥重量を最終乾燥重量とする。湿重量を最終乾燥重量で割ってW/D重量比を算出した。
定量的リアルタイムPCR(qRT−PCR)
全RNAの分離とqRT−PCRは前記のように行われる(Shirey等,J. Immunol.,181:4159−4167,2008)。特定遺伝子のmRNAレベルは、偽感染肺を基準とする相対遺伝子発現として示された。
マクロファージの培養及び処置
C57BL/6J WTマウスからのチオグリコール酸塩により誘発された腹膜マクロファージを12ウェル(2×106)組織培養板に入れて、前記したように濃縮させる(Shirey等,J.Immunol.,181:4159−4167,2008)。Eritoranを用いて、マクロファージについて1時間前処置を連続して(10ng/ml)、次にLPS(10ng/ml)又はHMGB1(1μg/ml)で2時間刺激する。
HMGB1血清レベル
0日目に、9×104 TCID50のpHlNlをコットンラットに鼻腔内接種する。感染後2日目に、1日に1回、生理食塩水で処理(モック)し又は37.33mg/kgのEritoranで処理する。感染後4日目と6日目に、血液サンプルを収集して、ELISAキットを用いて生産者(IBL International,Toronto,Ontario,Canada)が提供する方法によって、血清についてHMGB1を測定する。
統計
不対両側スチューデントt検定により、2組間の有意差を測定し、且つ、有意差をp<0.05に設定する。3組間以上の比較を行うために、一元配置ANOVAにより分析し、次に有意性をp<0.05に設定したテューキー多重比較検定を行う。生存率検討については、ログランク(Mantel Cox)が使用される。
本明細書に引用されるすべての特許、特許出願、出版物及び電子的に入手可能な材料は全て参照として援用される。前述の詳細な説明及び実施例は理解を明確にするためにのみ示したものである。なお、以上は不必要な制限が理解されるべきではない。特に、化合物が有効であるという可能性のあるメカニズムを説明する理論を示す可能性があるが、発明者は本明細書に記載の理論に制限されない。本発明は、図示及び説明した具体的な詳細に制限されるものではなく、当業者にとって自明な変形は請求項により定義される発明に含まれる。

Claims (19)

  1. HMGB1ジスルフィドアイソフォーム媒介性炎症の治療に用いられる医薬組成物であって、
    前記医薬組成物は、治療有効量のP5779を含み、
    前記P5779は四量体ペプチドFSSEである、医薬組成物。
  2. 前記炎症は、感染、敗血症又は無菌性損傷により引き起こされたものである請求項1に記載の医薬組成物。
  3. 前記炎症は、ウイルス感染又は細菌感染により引き起こされたものである請求項1に記載の医薬組成物。
  4. 前記炎症は、インフルエンザウイルス感染により引き起こされたものである請求項1に記載の医薬組成物。
  5. 前記炎症は、アセトアミノフェン中毒により引き起こされたものである請求項1に記載の医薬組成物。
  6. 前記炎症は、デングウイルス、B型肝炎ウイルス、ニワトリ感染性貧血ウイルス、ヒトパピローマウイルス、マイコバクテリウム・ツベルクローシス、類鼻疽菌、野兎病菌、シュードモナス・アエルギノサ、グラム陰性病原体によって誘発される角膜炎、創傷治癒、関節リウマチ、出血性ショック、又は心筋梗塞により引き起こされたものである請求項1に記載の医薬組成物。
  7. さらに、感染により引き起こされたHMGB1ジスルフィドアイソフォーム媒介性炎症の、感染発症後の治療に有効である請求項1に記載の医薬組成物。
  8. 前記炎症の患者はヒトである請求項1に記載の医薬組成物。
  9. 薬学的に許容可能な担体をさらに含む請求項1に記載の医薬組成物。
  10. 感染、敗血症又は無菌性損傷により引き起こされたHMGB1媒介性炎症の治療に用いられる医薬組成物であって、
    前記医薬組成物は、治療有効量のP5779を含み、
    前記P5779は四量体ペプチドFSSEである、医薬組成物。
  11. 前記HMGB1は、HMGB1ジスルフィドアイソフォームである請求項10に記載の医薬組成物。
  12. 前記感染は、ウイルス感染又は細菌感染である請求項10に記載の医薬組成物。
  13. 前記感染は、インフルエンザウイルス感染である請求項10に記載の医薬組成物。
  14. 前記無菌性損傷は、アセトアミノフェン中毒である請求項10に記載の医薬組成物。
  15. 前記無菌性損傷は、虚血再灌流傷害である請求項10に記載の医薬組成物。
  16. 人に投与される請求項10に記載の医薬組成物。
  17. 薬学的に許容可能な担体をさらに含む請求項10に記載の医薬組成物。
  18. さらに、感染により引き起こされたHMGB1媒介性炎症の、感染発症後の治療に用いられる請求項10に記載の医薬組成物。
  19. 前記感染又は無菌性損傷は、デングウイルス、B型肝炎ウイルス、ニワトリ感染性貧血ウイルス、ヒトパピローマウイルス、マイコバクテリウム・ツベルクローシス、類鼻疽菌、野兎病菌、シュードモナス・アエルギノサ、グラム陰性病原体によって誘発される角膜炎、創傷治癒、関節リウマチ、出血性ショック、又は心筋梗塞に引き起こされたものである請求項10に記載の医薬組成物。
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