JP6777025B2 - 方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

方向性電磁鋼板の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6777025B2
JP6777025B2 JP2017126422A JP2017126422A JP6777025B2 JP 6777025 B2 JP6777025 B2 JP 6777025B2 JP 2017126422 A JP2017126422 A JP 2017126422A JP 2017126422 A JP2017126422 A JP 2017126422A JP 6777025 B2 JP6777025 B2 JP 6777025B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
less
steel sheet
hot
annealing
grain
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2017126422A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2018009244A (ja
Inventor
雅紀 竹中
雅紀 竹中
早川 康之
康之 早川
今村 猛
今村  猛
有衣子 江橋
有衣子 江橋
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
JFE Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Steel Corp filed Critical JFE Steel Corp
Publication of JP2018009244A publication Critical patent/JP2018009244A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6777025B2 publication Critical patent/JP6777025B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Description

本発明は、方向性電磁鋼板を製造する方法に関するものである。
方向性電磁鋼板は、主に変圧器や発電機等の電気機器の鉄心材料として用いられる軟磁気特性材料であって、鉄の磁化容易軸である<001>方位が鋼板の圧延方向に高度に揃った結晶組織を有する。このような集合組織は、方向性電磁鋼板の製造工程のうち、二次再結晶焼鈍の際に、いわゆるゴス(Goss)方位と称される(110)[001]方位の結晶粒を優先的に巨大成長させる、二次再結晶を通じて形成される。
従来、このような方向性電磁鋼板は、3質量%程度のSiと、MnS,MnSe,AlNなどのインヒビター成分を含有するスラブを、1300℃を超える温度で加熱し、インヒビター成分を一旦固溶させたのち、熱間圧延し、必要に応じて熱延板焼鈍を施して、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延によって最終板厚とし、ついで湿(潤)水素雰囲気中で一次再結晶焼鈍を施して一次再結晶および脱炭を行ったのち、マグネシア(MgO)を主剤とする焼鈍分離剤を塗布してから、二次再結晶およびインヒビター成分の純化のために、1200℃で5h程度の最終仕上げ焼鈍を行うことによって製造されてきた(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
上述したとおり、従来の方向性電磁鋼板の製造に際しては、MnS,MnSe,AlNなどの析出物(インヒビター成分)をスラブ段階で含有させ、1300℃を超える高温でのスラブ加熱によってこれらのインヒビター成分を一旦固溶させ、後工程で微細析出させることにより二次再結晶を発現させるという手法が採用されてきた。
すなわち、従来の方向性電磁鋼板の製造工程では、1300℃を超える高温でのスラブ加熱が必要であったため、その製造コストは極めて高いものとならざるを得ず、近年の製造コスト低減の要求に応えることができないというところに問題を残していた。
こうした課題を解決するために、例えば、特許文献4では、酸可溶性Al(sol.Al)を0.010〜0.060%含有させ、スラブ加熱を低温に抑え脱炭焼鈍工程で適正な窒化雰囲気下で窒化を行なうことにより、二次再結晶時に(Al,Si)Nを析出させインヒビターとして用いる方法が提案されている。
ここで、(Al,Si)Nは、鋼中に微細分散し有効なインヒビターとして機能し、上記の製造方法による窒化処理後の鋼板では、窒化珪素を主体とした析出物(Si34もしくは(Si,Mn)N)が表層のみに形成される。そして、引き続いて行われる二次再結晶焼鈍において、窒化珪素を主体とした析出物はより熱力学的に安定したAl含有窒化物((Al,Si)N、あるいはAlN)に変化する。この際、非特許文献1によれば、表層近傍に存在したSi34は、二次再結晶焼鈍の昇温中に固溶する一方、窒素は鋼中へ拡散し、900℃を超える温度になると板厚方向にほぼ均一なAl含有窒化物として析出し、全板厚で粒成長抑制力(インヒビション効果)を得ることができるとされている。なお、この手法によれば、高温でのスラブ加熱を用いた析出物の分散制御に比べて、比較的容易に板厚方向に同じ析出物量と析出物粒径を得ることができる。
一方、最初からスラブにインヒビター成分を含有させずに二次再結晶を発現させる技術についても検討が進められている。例えば、特許文献5には、インヒビター成分を含有させなくとも二次再結晶出来る技術(インヒビターレス法)が示されている。
米国特許第1965559号公報 特公昭40−15644号公報 特公昭51−13469号公報 特許第2782086号公報 特開2000-129356号公報 特開2000-199014号公報
上記インヒビターレス法では、高温でのスラブ加熱が不要であり、低コストで方向性電磁鋼板を製造することが可能であるが、インヒビター成分を有しないが故に正常粒成長(一次再結晶粒成長)の抑制力が不足し、二次再結晶時に成長するゴス粒の方位が悪く、高温スラブ加熱材に比べて製品の磁気特性が劣ることとなる。特に熱間圧延において、粗圧延が完了したシートバーを仕上げ圧延するまでに、圧延方向先端(LE)部に対して圧延方向尾端(TE)部は数十秒程度待機するために、仕上げ圧延開始前にインヒビターが粗大に析出してしまい、二次再結晶時に必要な微細インヒビター量が不足し、熱延‐TE部において二次再結晶不良となるケースが多発する課題があった。
特許文献6には、スラブに連続的な温度勾配を付与して加熱したり、加熱炉出側で制御冷却する方法によって、上記熱間圧延時のLE部とTE部の温度差を少なくする方法が示されている。ただし、この方法におけるスラブ温度の長手方向での精密な制御は安定性に乏しかった。
本発明は、上記の課題に鑑み、方向性電磁鋼板の磁気特性を従来よりもさらに向上させるとともに、コイルの長手方向全長にわたって良好な磁気特性を得ることにより、歩留まりを向上させることを目的とする。
発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた。
その結果、酸可溶性Al、S、Se、SnおよびSbの成分元素について、従来認知されているインヒビターとして機能させるための含有量に満たない、微小量域において、これらの各成分の含有量を相互に規制することによって、1300℃以下の低温域のスラブ加熱であっても正常粒成長の抑制力が得られることを新規に知見するに至った。
また、熱間圧延の仕上げ圧延初パス直前のシートバーにおける、熱延‐TE部の表面温度を900℃超に制御することによって、熱延‐TE部での二次再結晶不良が抑制され、コイルの長手方向全長にわたって良好な磁気特性が得られることについても新規に知見するに至った。
加えて、熱間圧延の仕上げ圧延最終パスにおいて熱延-TE部のひずみ速度を200s-1以上とすることによって、更に良好な磁気特性が得られることについても新規に知見するに至った。
さらに、本発明は、後工程で窒化処理を適用することで、AlNではなく窒化珪素(Si34)を析出させて、正常粒成長の抑制力として機能させること、および二次再結晶焼鈍前に鋼板に塗布する焼鈍分離剤中に硫化物、硫酸塩、セレン化物およびセレン酸塩のうちから選んだ一種または二種以上を添加することで二次再結晶直前の正常粒成長の抑制力として機能させることが、正常粒成長の抑制力をさらに強化し、磁気特性の更なる向上に寄与することも見出した。以上より、本発明は、高温スラブ加熱を必要としない低コスト、高生産性を有する方向性電磁鋼板の製造方法において、高温スラブ加熱材と同等の磁気特性を有する方向性電磁鋼板の製造を工業的に可能ならしめたものである。
上記課題を解決する本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
1.質量%で、
C:0.002%以上0.080%以下、
Si:2.0%以上8.0%以下、
Mn:0.02%以上0.50%以下、
酸可溶性Alを0.003%以上0.010%未満、
Sおよび/またはSeを合計で0.005%以上0.010%以下並びに
Snおよび/またはSbを合計で0.005%以上1.000%以下
含有し、Nを0.006%未満に抑制し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼スラブを1300℃以下で加熱し、
該鋼スラブに熱間圧延を施して熱延鋼板とし、
該熱延鋼板に、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して最終板厚を有する冷延鋼板とし、
該冷延鋼板に一次再結晶焼鈍を施し、その後、二次再結晶焼鈍を施す方向性電磁鋼板の製造方法であって、
前記熱間圧延の仕上げ圧延直前における、圧延方向尾端部から圧延方向先端部側に5m入った位置の表面温度が900℃超であることを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
2.前記熱間圧延の仕上げ圧延最終パスにおける前記圧延方向尾端部から圧延方向先端部側に5m入った位置のひずみ速度を200s-1以上とすることを特徴とする上記1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
3.質量%で、Snおよび/またはSbを合計で0.020%以上0.300%以下含有することを特徴とする上記1または2に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
4.前記成分組成は、さらに、
質量%で、
Ni:0.005%以上1.5%以下、
Cu:0.005%以上1.5%以下、
Cr:0.005%以上0.1%以下、
P:0.005%以上0.5%以下、
Mo:0.005%以上0.5%以下、
Ti:0.0005%以上0.1%以下、
Nb:0.0005%以上0.1%以下、
V:0.0005%以上0.1%以下、
B:0.0002%以上0.0025%以下、
Bi:0.005%以上0.1%以下、
Te:0.0005%以上0.01%以下および
Ta:0.0005%以上0.01%以下
のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする、上記1〜3のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
5.前記冷延鋼板に窒化処理を施すことを特徴とする上記1〜4のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
6. 前記一次再結晶焼鈍後の前記冷延鋼板の表面に焼鈍分離剤を塗布してから前記二次再結晶焼鈍を施し、
前記焼鈍分離剤に、硫化物、硫酸塩、セレン化物、およびセレン酸塩の1種または2種以上が添加されていることを特徴とする上記1〜5のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
7.前記冷延鋼板に磁区細分化処理を施すことを特徴とする上記1〜6のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
8.前記磁区細分化処理が、前記二次再結晶焼鈍後の前記冷延鋼板への電子ビーム照射によるものであることを特徴とする、上記7に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
9.前記磁区細分化処理が、前記二次再結晶焼鈍後の前記冷延鋼板へのレーザー照射によるものであることを特徴とする、上記7に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
本発明によれば、方向性電磁鋼板の磁気特性を従来よりもさらに向上させるとともに、コイルの長手方向全長にわたって良好な磁気特性を得ることにより、歩留まりを向上させることができる。
具体的には、N量、酸可溶性Al量、Sn+Sb量、およびS+Se量、並びにFET(熱間圧延における仕上げ圧延初パス直前のシートバー表面温度)をコイル長手方向全長にわたって厳密に制御することで、正常粒成長の抑制力が強化され、二次再結晶時に成長するゴス粒の方位が先鋭化し、低温スラブ加熱法の課題であった製品の磁気特性を大幅に向上させると同時に、コイルの長手方向全長にわたって良好な磁気特性を得ることにより、歩留まりを向上させることができる。これにより、高磁束密度化が困難とされる板厚:0.23mmのような薄い鋼板であっても、製品板の磁束密度B8が1.88T以上という優れた磁気特性をコイル全長で安定的に得ることができる。
また、さらに追加で窒化処理や焼鈍分離剤への所定成分の添加を施した場合には、磁束密度B8が1.94T以上という極めて優れた磁気特性を得ることができる。
しかも、上記の窒化処理や焼鈍分離剤への所定成分の添加を施した場合には、電子ビームまたは連続レーザーによる磁区細分化処理後の鉄損W17/50が0.70W/kg以下という、高温スラブ加熱材に匹敵するレベルの優れた鉄損特性を、低コスト、高生産性プロセスである本製造方法で得ることができる。
製品板の磁束密度B8に及ぼす素材中のSn+Sb量およびS+Se量の影響を示したグラフである。 製品板のHOT-LE相当部およびHOT-TE相当部における、磁束密度B8に及ぼすFETの影響を示したグラフである。
以下、本発明の一実施形態による方向性電磁鋼板の製造方法について説明する。まず、鋼の成分組成の限定理由について述べる。なお、本明細書において、各成分元素の含有量を表す「%」は、特に断らない限り「質量%」を意味する。
C:0.002%以上0.080%以下
Cは、0.002%に満たないと、Cによる粒界強化効果が失われ、スラブに割れが生じるなど、製造に支障を来たす欠陥を生ずるようになる。一方、0.080%を超えると、脱炭焼鈍で、磁気時効の起こらない0.005%以下に低減することが困難となる。よって、Cは0.002%以上0.080%以下の範囲とする。より好ましくは、0.020%以上0.070%以下とする。
Si:2.0%以上8.0%以下
Siは、鋼の電気抵抗を増大させ、鉄損の一部を構成する渦電流損を低減するのに極めて有効な元素である。鋼板に、Siを添加していった場合、含有量が11%までは、電気抵抗が単調に増加するものの、含有量が8.0%を超えたところで、加工性が著しく低下する。一方、含有量が2.0%未満では、電気抵抗が小さくなり良好な鉄損特性を得ることができない。そのため、Si量は2.0%以上8.0%以下とした。より好ましくは2.5%以上4.5%以下である。
Mn:0.02%以上0.50%以下
Mnは、SやSeと結合してMnSやMnSeを形成し、これらのMnSやMnSeが微量であっても粒界偏析元素との併用によって、二次再結晶焼鈍の昇温過程において正常粒成長を抑制するように作用する。しかしながら、Mn量が0.02%に満たないと、この作用が、正常粒成長の抑制力不足となる。一方、Mn量が0.50%を超えると、熱延前のスラブ加熱過程において、Mnを完全固溶させるためには高温でのスラブ加熱が必要となるだけでなく、MnSやMnSeが粗大析出してしまうために、正常粒成長の抑制力が低下する。そのため、Mn量は0.02%以上0.50%以下とした。より好ましくは、0.05%以上0.20%以下とする。
Sおよび/またはSeを合計で0.005%以上0.010%以下
SおよびSeは、本発明の特徴の一つである。SおよびSeは、上述の通り、Mnと結合して正常粒成長の抑制作用を発現するが、Sおよび/またはSeの合計含有量が0.005%未満では、正常粒成長の抑制力不足となるので、Sおよび/またはSeは合計含有量で0.005%以上含有させることとした。一方、合計含有量が0.010%を超えると、本発明の特徴である1300℃以下の低温スラブ加熱過程においてMnSやMnSeが完全固溶できず、正常粒成長の抑制力不足となる。そのため、Sおよび/またはSeは、合計含有量で0.005%以上0.010%以下とした。
酸可溶性Al:0.003%以上0.010%未満
Alは、表面に緻密な酸化膜を形成し、窒化の際にその窒化量の制御を困難にしたり、脱炭を阻害することもあるため、Alは酸可溶性Al量で0.010%未満に抑制する。酸素親和力の高いAlは、製鋼で微量添加することにより鋼中の溶存酸素量を低減し、特性劣化につながる酸化物系介在物の低減などを見込める。この観点から、酸可溶性Alを0.003%以上含有させることにより、磁気特性の劣化を抑制することができる。
N:0.006%未満
Nもまた、SやSeと同様、過剰に存在すると、二次再結晶を困難にする。特にN量が0.006%以上になると、二次再結晶が生じ難くなり、磁気特性が劣化するので、Nは0.006%未満に抑制するものとした。なお、0.001%未満とするのは工業的規模の製造では難しいため、0.001%以上の含有は許容される。
Snおよび/またはSbを合計で0.005%以上1.000%以下
SnおよびSbは本発明の特徴の一つである。SnおよびSbは粒界偏析元素であり、これらの元素を含有させることで、正常粒成長の抑制力が増加し、二次再結晶の駆動力が高まり、二次再結晶を安定化させることができる。Snおよび/またはSbの合計含有量が0.005%未満では、正常粒成長の抑制力効果が不十分であり、また、合計含有量が1.000%を超えると、正常粒成長の抑制力過多により二次再結晶が不安定になり磁気特性の劣化を招く。加えて、粒界脆化や圧延荷重増加による製造性も困難となる。そのため、Snおよび/またはSbは、合計含有量で0.005%以上1.000%以下とした。また、磁気特性バラツキ低減や製造性を考慮し、より好ましくは、0.020%以上0.300%以下とする。
ここで、SnおよびSbの含有量を上記の範囲とするに至った実験について以下に説明する。
表1は、S+Se量およびSn+Sb量に応じて変化する製品板のHOT-LE相当部およびHOT-TE相当部の磁束密度B8を示した表である。「HOT-LE相当部」とは、熱延コイルにおいて圧延方向先端部から圧延方向尾端部側に5m入った位置に相当する部位を指し、「HOT-TE相当部」とは、熱延コイルにおいて圧延方向尾端部から圧延方向先端部側に5m入った位置に相当する部位を指す。残部はFeおよび不可避的不純物からなる表1に示す各鋼の220mm厚のスラブを、1200℃に加熱したのち、2.6mm厚まで熱間圧延した。熱間圧延の仕上げ圧延における最終パスのひずみ速度は、HOT-LE部、HOT-TE部でそれぞれ、125s-1、188s-1とした。ついで、1050℃で60sの熱延板焼鈍後、0.23mm厚まで冷間圧延してから、820℃で100sの一次再結晶焼鈍を施した。この一次再結晶焼鈍時での500〜700℃間の昇温速度は100℃/sとした。ついで、鋼板表面にMgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布してから、1200℃で10時間の純化焼鈍を兼ねた二次再結晶焼鈍を行い、引き続きリン酸塩系の絶縁張力コーティングの塗布、焼付けと鋼帯の平坦化を目的とする平坦化焼鈍を施して製品板とし、それぞれの条件下での試験片を得た。
Figure 0006777025
図1に、製品板のHOT-LE相当部の磁束密度B8に及ぼす素材中のS+Se量(SとSeの合計量)およびSn+Sb量(SnとSbの合計量)の影響について調べた結果を示す。図1に示したとおり、Sおよび/またはSeを合計で0.005%以上0.010%以下とした上で、素材中のSn+Sb量を適正な値に制御することで、磁束密度が向上した。特に、Snおよび/またはSbを合計で0.005%以上1.000%以下に制御することで磁束密度B8が1.88T以上となった。また、Snおよび/またはSbを合計で、0.020%以上0.300%以下に制御することで磁束密度B8が1.90T以上となった。
Sおよび/またはSeを合計で0.005%以上0.010%以下とした上で、素材中のSn+Sb量を適正な値に制御することで製品板の磁束密度が向上した理由については必ずしも明確ではないが、発明者らは以下のように考えている。SおよびSeは、MnS、MnSeあるいはCu2S、Cu2Seといった析出物と固溶S、Se分による粒界偏析効果の併用により、正常粒成長の抑制効果が強化され、二次再結晶時に成長するゴス粒の方位が先鋭化し、低温スラブ加熱法の課題であった製品の磁気特性を大幅に向上させることができる。さらに、SnおよびSbは、粒界偏析元素として知られており、正常粒成長の抑制力として寄与すると考えられる。加えて、SおよびSeが粒界偏析することで、SnおよびSbが粒界偏析しやすい状況となり、粒界偏析の効果が増大するものと考えられる。
以上、本発明の基本成分について説明した。上記成分以外の残部はFeおよび不可避的不純物であるが、本発明では、その他にも必要に応じて、以下に示す元素を適宜含有させることができる。
Ni:0.005%以上1.5%以下
Niは、オーステナイト生成元素であるため、オーステナイト変態を利用することで熱延板組織を改善し、磁気特性を向上させる上で有用な元素である。しかしながら、含有量が0.005%未満では、磁気特性の向上効果が小さく、一方含有量が1.5%超では、加工性が低下するため通板性が悪くなるほか、二次再結晶が不安定となり磁気特性が劣化するので、Niは0.005%以上1.5%以下の範囲とした。
Cu:0.005%以上1.5%以下、Cr:0.005%以上0.1%以下、P:0.005%以上0.5%以下、Mo:0.005%以上0.5%以下、Ti:0.0005%以上0.1%以下、Nb:0.0005%以上0.1%以下、V:0.0005%以上0.1%以下、B:0.0002%以上0.0025%以下、Bi:0.005%以上0.1%以下、Te:0.0005%以上0.01%以下、Ta:0.0005%以上0.01%以下
Cu、Cr、P、Mo、Ti、Nb、V、B、Bi、TeおよびTaはいずれも、磁気特性向上に有用な元素であるが、それぞれの含有量が上記範囲の下限値に満たないと、磁気特性の改善効果が乏しく、一方それぞれの含有量が上記範囲の上限値を超えると、二次再結晶が不安定になり磁気特性の劣化を招く。従って、Cuは0.005%以上1.5%以下、Crは0.005%以上0.1%以下、Pは0.005%以上0.5%以下、Moは0.005%以上0.5%以下、Tiは0.0005%以上0.1%以下、Nbは0.0005%以上0.1%以下、Vは0.0005%以上0.1%以下、Bは0.0002%以上0.0025%以下、Biは0.005%以上0.1%以下、Teは0.0005%以上0.01%以下、Taは0.0005%以上0.01%以下の範囲でそれぞれ含有させることができる。
本発明は、微量析出物と粒界偏析元素を併用した、繊細(Subtle)抑制力(Inhibition)制御(Control)(SIC法)とも言うべき方法である。SIC法は、低温スラブ加熱と正常粒成長の抑制効果を同時に達成することのできる、従来のインヒビターを使用する技術や、インヒビターレス技術よりも優れた利点を有する。
SおよびSeは、スラブ加熱工程で再固溶した場合、熱延時にMnSおよびMnSeとして微細析出し、正常粒成長の抑制力強化に寄与すると考えられる。一方、Sおよび/またはSeが合計で0.005%未満の場合にはその効果が十分ではないために磁気特性向上効果が得られず、Sおよび/またはSeが合計で0.010%超の場合には1300℃以下の低温スラブ加熱工程で再固溶が不十分となり、急激に正常粒成長の抑制力が低下し、二次再結晶不良を引き起こすと考えられる。
次に、本発明の製造方法について説明する。
上記の成分組成を有する鋼スラブを、スラブ加熱し、その後、熱間圧延を行う。スラブ加熱温度は1300℃以下とする。1300℃超で加熱する場合、通常のガス加熱ではなく、誘導加熱等の特別な加熱炉を使用する必要があるため、コスト、生産性および歩留まり等の観点から不利となる。
本発明の特徴は、熱間圧延における仕上げ圧延初パス直前のシートバー表面温度について、圧延方向尾端部温度FET(TE)が900℃超となるように厳密に制御することで、製品の磁気特性を大幅に向上させるとともに、コイルの長手方向全長にわたって良好な磁気特性を得ることにより、歩留まりを向上させることにある。ここで、FET(TE)は、仕上げ圧延直前における材料の圧延方向尾端部から圧延方向先端部側に5m入った位置の幅方向中央部の平均表面温度を示すものとする。また、FET(LE)は、仕上げ圧延直前における材料の圧延方向先端部から圧延方向尾端部側に5m入った位置の幅方向中央部の平均表面温度を示すものとする。
また、圧延方向尾端部温度FET(TE)が900℃超となるように制御するためには、例えば、シートバーを増厚したり、仕上圧延速度を速くしたり、バーヒーターでシートバーを加熱したりすることが必要となる。
また、熱間圧延の仕上げ圧延時の最終パスのひずみ速度を高めることによって、これらの効果をより高めることができる。ひずみ速度を高めるには、例えば、圧延速度を高めたり、圧下率を高めたり、ロール径を小さくしたりすることが必要となる。
ここで、熱間圧延におけるHOT-TE部の仕上げ圧延初パス直前のシートバー表面温度を上記の範囲とすること、および仕上げ圧延最終パスのひずみ速度を上記の範囲とすることに至った実験について以下に説明する。
表2は、FETおよび仕上げ圧延最終パスのひずみ速度に応じて、製品板の磁束密度B8が変化することを示している。ここで、圧延時のひずみ速度(εm)は、以下の式(1)で表されるEkelundの式を用いて算出した。
Figure 0006777025
なお、vRはロール周速度(mm/s)、R'はロール半径(mm)、h1はロール入側板厚(mm)、rは圧下率(-)(無次元)である。
残部はFeおよび不可避的不純物からなる表2に示す各鋼の220mm厚のスラブを、1200℃に加熱したのち、2.2mm厚まで熱間圧延した。ついで、1050℃で60sの熱延板焼鈍後、0.23mm厚まで冷間圧延してから、840℃で100sの一次再結晶焼鈍を施した。この一次再結晶焼鈍時での500〜700℃間の昇温速度は100℃/sとした。ついで、鋼板表面にMgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布してから、1200℃で10時間の純化焼鈍を兼ねた二次再結晶焼鈍を行い、引き続きリン酸塩系の絶縁張力コーティングの塗布、焼付けと鋼帯の平坦化を目的とする平坦化焼鈍を施して製品とし、それぞれの条件下での試験片を得た。
Figure 0006777025
図2に、製品板のHOT-LE相当部およびHOT-TE相当部の磁束密度B8に及ぼすFETおよび仕上げ圧延最終パスのひずみ速度の影響について調べた結果を示す。図2に示したとおり、FETを900℃超とすることで、磁束密度が著しく向上した。FETはLE部よりもTE部の方が必ず低下するため、FET(TE)を900℃超となるように制御することで、コイルの長手方向全長にわたって良好な磁気特性を得ることができる。また、No.6、No.7は、熱間圧延の仕上げ圧延最終パスの圧下率を制御することでひずみ速度を200s-1以上に高めた。ひずみ速度を200s-1以上とすることにより、上記の効果をより高めることができた。なお、本実験では、最終パスのひずみ速度で比較しているが、タンデム圧延を行う熱延ミルの場合、仕上げ圧延時におけるどの段階のパスのひずみ速度を高めても同様の効果を得ることができる。
FETを900℃超とすることにより製品板の磁束密度が向上した理由については必ずしも明確ではないが、発明者らは以下のように考えている。FETを900℃超とすることにより、MnS、MnSe、AlNなどが仕上げ圧延開始前に粗大に析出することを抑制し、後工程で、微細なMnS、MnSe、AlN等の析出量を増加させているものと考えられる。さらに、仕上げ圧延のひずみ速度を高めることにより、仕上げ圧延中に当該MnS、MnSe、AlN等のひずみ誘起微細析出を促進したものと考えられる。これらの効果により、二次再結晶時に微細MnS、MnSe、AlN等の析出量が増加し、二次再結晶不良が抑制されたものと考えられる。
熱間圧延後、必要であれば、熱延板焼鈍することで熱延板組織の改善を行う。この時の熱延板焼鈍は、均熱温度:800℃以上1200℃以下、均熱時間:2s以上300s以下の条件で行うことが好ましい。
熱延板焼鈍の均熱温度が800℃未満では、熱延板組織の改善が完全ではなく、未再結晶部が残存するため、所望の組織を得ることができないおそれがある。一方、均熱温度が1200℃超では、AlN、MnSeおよびMnSの溶解が進行し、二次再結晶過程でAlN、MnSeおよびMnSによるの抑制力が不足して、二次再結晶化しなくなる結果、磁気特性の劣化を引き起こすこととなる。従って、熱延板焼鈍の均熱温度は800℃以上1200℃以下とすることが好ましい。
また、均熱時間が2sに満たないと、高温保持時間が短いために、未再結晶部が残存し、所望の組織を得ることができなくなるおそれがある。一方、均熱時間が300sを超えると、AlN、MnSeおよびMnSの溶解が進行し、微量に添加したN、酸可溶性Al、Sn+Sb、およびS+Seの上記した効果が弱まり、冷延組織の不均質化が進行する結果、二次再結晶焼鈍板の磁気特性が劣化する。従って、熱延板焼鈍の均熱時間は2s以上300s以下とすることが好ましい。
次いで、熱間圧延後または熱延板焼鈍後に、鋼板を、中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延によって最終板厚まで圧延する。この場合、中間焼鈍は、熱延板焼鈍と同じ思想で、均熱温度:800℃以上1200℃以下、均熱時間:2s以上300s以下とすることが好ましい。
冷間圧延については、最終冷間圧延における圧下率を80%以上95%以下とすることで、より良好な一次再結晶焼鈍板集合組織を得ることができる。また、圧延温度を100〜250℃に上昇させて圧延を行うことや、冷間圧延の途中で100〜250℃の範囲での時効処理を1回または複数回行うことは、ゴス組織を発達させる上で有効である。
上記の冷間圧延後、好ましくは均熱温度:700℃以上1000℃以下で一次再結晶焼鈍を施す。また、この一次再結晶焼鈍は、例えば湿水素雰囲気中で行えば、鋼板の脱炭も兼ねさせることができる。ここで、一次再結晶焼鈍における均熱温度が700℃未満では、未再結晶部が残存し、所望の組織を得ることができないおそれがある。一方、均熱温度が1000℃超では、ゴス方位粒の二次再結晶が起こってしまう可能性がある。従って、一次再結晶焼鈍における均熱温度は700℃以上1000℃以下とすることが好ましい。また、一次再結晶焼鈍に際しては、500〜700℃の温度域の平均昇温速度を50℃/s以上とすることが好ましい。
さらに、本発明では、一次再結晶焼鈍から二次再結晶焼鈍までのいずれかの段階で窒化処理を適用することができる。この窒化処理は、一次再結晶焼鈍後、アンモニア雰囲気中で熱処理を行うガス窒化や、塩浴中で熱処理を行う塩浴窒化、さらにはプラズマ窒化や、窒化物を焼鈍分離剤中に含有させたり、二次再結晶焼鈍雰囲気を窒化雰囲気とするなどの公知の技術が適用できる。
その後、必要であれば鋼板表面にMgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布したのち、二次再結晶焼鈍を行う。その際、焼鈍分離剤中に硫化物、硫酸塩、セレン化物およびセレン酸塩のうちから選んだ一種または二種以上を添加することができる。当該添加物は二次再結晶焼鈍中に分解したのち、鋼中に浸硫、浸セレンし、インヒビション効果をもたらす。二次再結晶焼鈍の焼鈍条件についても、特に制限はなく、従来公知の焼鈍条件で行えば良い。なお、この時の焼鈍雰囲気を水素雰囲気とすると、純化焼鈍も兼ねることができる。その後、絶縁被膜塗布工程および平坦化焼鈍工程を経て、所望の方向性電磁鋼板を得る。この時の絶縁被膜塗布工程および平坦化焼鈍工程の製造条件についても、特段の規定はなく、常法に従えば良い。
上記の条件を満たして製造された方向性電磁鋼板は、二次再結晶後に極めて高い磁束密度を有し、併せて低い鉄損特性を有する。高い磁束密度を有するということは二次再結晶過程においてゴス方位およびその近傍方位のみが優先成長したことを示している。ゴス方位およびその近傍になるほど、二次再結晶粒の成長速度は増大することから、高磁束密度化するということは潜在的に二次再結晶粒径が粗大化することを示しており、ヒステリシス損低減の観点からは有利であるが、渦電流損低減の観点からは不利となる。
従って、このような鉄損低減という最終目標に対しての相反する事象を解決するために、磁区細分化処理を施すことが好ましい。適切な磁区細分化処理を施すことで、二次再結晶粒径粗大化により不利となっていた渦電流損が低減し、ヒステリシス損の低減と併せて、極めて低い鉄損特性を得ることができる。
磁区細分化処理としては、公知の全ての耐熱型または非耐熱型の磁区細分化処理が適用できるが、二次再結晶焼鈍後の鋼板表面に電子ビームまたはレーザーを照射する方法を用いれば、鋼板の板厚方向内部まで磁区細分化効果を浸透させることができるので、エッチング法などの他の磁区細分化処理よりも極めて低い鉄損特性を得ることができる。
その他の製造条件は、方向性電磁鋼板の一般的な製造方法に従えばよい。
(実施例1)
表3に示す種々の成分組成からなる220mm厚の鋼スラブを、1200℃に加熱したのち、2.5mm厚まで熱間圧延した。仕上げ熱延における最終パスのひずみ速度は、HOT-LE部、HOT-TE部でそれぞれ、143s-1、190s-1とした。ついで、1020℃で60sの熱延板焼鈍後、0.27mm厚まで冷間圧延してから、840℃で120sの一次再結晶焼鈍を施した。この一次再結晶焼鈍時における500〜700℃間の昇温速度は150℃/sとした。
ついで、鋼板表面にMgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布してから、1200℃で10時間の純化焼鈍を兼ねた二次再結晶焼鈍を行い、引き続きリン酸塩系の絶縁張力コーティングの塗布、焼付けと鋼帯の平坦化を目的とする平坦化焼鈍を施して製品とした。
かくして得られた製品の磁気特性について調べた結果を、表3に併記する。
Figure 0006777025
表3に示したように、Sおよび/またはSeを合計で0.005%以上0.010%以下とした上で、素材中のSn+Sb量を適正な値に制御することで、磁束密度が向上した。特に、Snおよび/またはSbを合計で0.005%以上1.000%以下に制御することで、HOT-LE相当部、HOT-TE相当部の両部位で磁束密度B8が1.88T以上となった。また、Snおよび/またはSbを合計で0.020%以上0.300%以下に制御することで、HOT-LE相当部、HOT-TE相当部の両部位で磁束密度B8が1.90T以上となった。
(実施例2)
表3におけるNo.13および、No.18の鋼スラブを、1230℃に加熱したのち、2.4mm厚まで熱間圧延した。ついで、1000℃で60sの熱延板焼鈍後、1回目の冷間圧延により1.8mmの中間厚まで圧延した。ついで、1040℃で60sの中間焼鈍後、2回目の冷間圧延により0.23mm厚まで冷間圧延してから、850℃で120sの一次再結晶焼鈍を施した。この一次再結晶焼鈍時における500〜700℃間の昇温速度は100℃/sとした。ついで、表4に示す条件で窒化処理および焼鈍分離剤中への硫酸塩添加の検討を行った。窒素化処理は、一次再結晶焼鈍板についてアンモニアを含有するガス雰囲気中で750℃で30sおよび950℃で30sのガス窒化処理を施した。窒化処理後の鋼板の窒素量を表4に示す。焼鈍分離剤中への硫酸塩添加は、鋼板表面にMgOおよびMgO:100質量部に対して10質量部のMgSO4を添加した焼鈍分離剤を塗布した。その後、それぞれの鋼板を1180℃で50時間の純化焼鈍を兼ねた二次再結晶焼鈍を行い、引き続きリン酸塩系の絶縁張力コーティングの塗布、焼付けと鋼帯の平坦化を目的とする平坦化焼鈍を施して製品板とした。
かくして得られた製品板の磁気特性について調べた結果を、表4に併記する。
Figure 0006777025
表3に示したように、Sおよび/またはSeを合計で0.005%以上0.010%以下かつSnおよび/またはSbを合計で0.020%以上0.300%以下に制御することで、HOT-LE相当部、HOT-TE相当部の両部位で磁束密度B8が1.90T以上となったことに加えて、表4に示されるように、一次再結晶焼鈍板への窒化処理や焼鈍分離剤中への硫酸塩添加により、HOT-LE相当部、HOT-TE相当部の両部位で磁束密度B8が1.94T以上となった。
(実施例3)
表4に示したNo.13-b、13-c、18-bおよび18-cのサンプルについて、表5に示す磁区細分化処理の効果を確認する実験を行った。エッチングは、冷延鋼板の片面について、幅:80μm、深さ:15μm、圧延方向間隔:5mmの溝を圧延直角方向に形成した。電子ビームは、平坦化焼鈍後の鋼板の片面について、ビーム径:0.1mm、加速電圧:150kV、ビーム電流:10mA、走査速度:100m/s、照射間隔:8mmの条件で圧延直角方向に連続照射した。連続レーザーは、平坦化焼鈍後の鋼板の片面について、ビーム径:0.1mm、出力:1200W、走査速度:100m/s、照射間隔:8mmの条件で圧延直角方向に連続照射した。
かくして得られた製品の磁気特性について調べた結果を、表5に併記する。
Figure 0006777025
表5に示したように、磁区細分化処理を施すことで、さらに良好な鉄損特性が得られることが分かる。具体的には、電子ビームまたは連続レーザによる磁区細分化処理後の鉄損W17/50が0.70W/kg以下という、高温スラブ加熱材に匹敵するレベルの優れた鉄損特性を、低コスト、高生産性プロセスである本製造方法で得ることができる。
本発明の方向性電磁鋼板によれば、微量インヒビター成分を制御することで正常粒成長の抑制力が強化され、二次再結晶時に成長するゴス粒の方位が先鋭化し、低温スラブ加熱法の課題であった製品の磁気特性を大幅に向上させると同時に、コイルの長手方向全長にわたって良好な磁気特性を発現し、歩留まりを向上させることができる。特に、高磁束密度化が困難とされる板厚:0.23mmのような薄い鋼板であっても、二次再結晶焼鈍後の磁束密度B8が1.88T以上という優れた磁気特性をコイル全長で安定的に得ることができる。

Claims (8)

  1. 質量%で、
    C:0.002%以上0.080%以下、
    Si:2.0%以上8.0%以下、
    Mn:0.02%以上0.50%以下、
    酸可溶性Alを0.003%以上0.010%未満、
    Sおよび/またはSeを合計で0.005%以上0.010%以下並びに
    Snおよび/またはSbを合計で0.005%以上1.000%以下
    含有し、Nを0.006%未満に抑制し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼スラブを1300℃以下で加熱し、
    該鋼スラブに熱間圧延を施して熱延鋼板とし、
    該熱延鋼板に、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して最終板厚を有する冷延鋼板とし、
    該冷延鋼板に一次再結晶焼鈍を施し、その後、二次再結晶焼鈍を施す方向性電磁鋼板の製造方法であって、
    前記熱間圧延の仕上げ圧延直前における、圧延方向尾端部から圧延方向先端部側に5m入った位置の表面温度が900℃超であって、
    前記熱間圧延の仕上げ圧延最終パスにおける、前記圧延方向尾端部から圧延方向先端部側に5m入った位置のひずみ速度を200s -1 以上とすることを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
  2. 質量%で、Snおよび/またはSbを合計で0.020%以上0.300%以下含有することを特徴とする請求項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  3. 前記成分組成は、さらに、
    質量%で、
    Ni:0.005%以上1.5%以下、
    Cu:0.005%以上1.5%以下、
    Cr:0.005%以上0.1%以下、
    P:0.005%以上0.5%以下、
    Mo:0.005%以上0.5%以下、
    Ti:0.0005%以上0.1%以下、
    Nb:0.0005%以上0.1%以下、
    V:0.0005%以上0.1%以下、
    B:0.0002%以上0.0025%以下、
    Bi:0.005%以上0.1%以下、
    Te:0.0005%以上0.01%以下および
    Ta:0.0005%以上0.01%以下
    のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  4. 前記冷延鋼板に窒化処理を施すことを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  5. 前記一次再結晶焼鈍後の前記冷延鋼板の表面に焼鈍分離剤を塗布してから前記二次再結晶焼鈍を施し、
    前記焼鈍分離剤に、硫化物、硫酸塩、セレン化物、およびセレン酸塩の1種または2種以上が添加されていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  6. 前記冷延鋼板に磁区細分化処理を施すことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  7. 前記磁区細分化処理が、前記二次再結晶焼鈍後の前記冷延鋼板への電子ビーム照射によるものであることを特徴とする請求項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  8. 前記磁区細分化処理が、前記二次再結晶焼鈍後の前記冷延鋼板へのレーザー照射によるものであることを特徴とする、請求項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
JP2017126422A 2016-07-01 2017-06-28 方向性電磁鋼板の製造方法 Active JP6777025B2 (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016131692 2016-07-01
JP2016131692 2016-07-01

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2018009244A JP2018009244A (ja) 2018-01-18
JP6777025B2 true JP6777025B2 (ja) 2020-10-28

Family

ID=60994150

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017126422A Active JP6777025B2 (ja) 2016-07-01 2017-06-28 方向性電磁鋼板の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6777025B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7110642B2 (ja) * 2018-03-20 2022-08-02 日本製鉄株式会社 一方向性電磁鋼板の製造方法
CN112916615B (zh) * 2021-01-22 2022-07-19 内蒙古工业大学 一种高性能取向硅钢冷轧工艺
CN115369225B (zh) * 2022-09-14 2024-03-08 张家港扬子江冷轧板有限公司 新能源驱动电机用无取向硅钢及其生产方法与应用

Family Cites Families (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH1046253A (ja) * 1996-08-06 1998-02-17 Nippon Steel Corp 磁束密度が高い方向性電磁鋼板の製造方法
JP4206538B2 (ja) * 1998-12-28 2009-01-14 Jfeスチール株式会社 方向性電磁鋼板の製造方法
JP5839172B2 (ja) * 2011-02-24 2016-01-06 Jfeスチール株式会社 方向性電磁鋼板の製造方法
JP6079580B2 (ja) * 2013-11-20 2017-02-15 Jfeスチール株式会社 方向性電磁鋼板の製造方法
CN104726796A (zh) * 2013-12-23 2015-06-24 Posco公司 取向电工钢板及其制造方法
JP6132103B2 (ja) * 2014-04-10 2017-05-24 Jfeスチール株式会社 方向性電磁鋼板の製造方法
JP6160649B2 (ja) * 2014-05-19 2017-07-12 Jfeスチール株式会社 方向性電磁鋼板の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2018009244A (ja) 2018-01-18

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6481772B2 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JP6801740B2 (ja) 方向性電磁鋼板用熱延鋼板およびその製造方法
JP5842400B2 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
KR101921401B1 (ko) 방향성 전기 강판의 제조 방법
JP5668893B2 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
WO2017006955A1 (ja) 方向性電磁鋼板とその製造方法
JP6191780B2 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法および窒化処理設備
KR101683693B1 (ko) 방향성 전자 강판의 제조 방법
JP6132103B2 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JP6531864B2 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
KR20140044928A (ko) 철손 특성이 우수한 방향성 전기 강판의 제조 방법
KR20160138253A (ko) 방향성 전기 강판의 제조 방법
JP6838601B2 (ja) 低鉄損方向性電磁鋼板とその製造方法
JP2017122247A (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JP6777025B2 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JP6160649B2 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JP7037657B2 (ja) 方向性電磁鋼板およびその製造方法
JPWO2019131853A1 (ja) 低鉄損方向性電磁鋼板とその製造方法
JP6866901B2 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JP6866869B2 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20190124

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20200128

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20200303

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20200507

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20200908

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20200921

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6777025

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250