以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態の制御を適用する車両駆動系の構成図である。
車両は、エンジン1から駆動輪12に至る駆動力の伝達経路の上流側から順に、トルクコンバータ2と、前後進切り替え機構3と、無段変速機(以下、CVT)9と、ファイナルギア10と、ドライブシャフト11とを備える。
エンジン1は、車両の動力源である。トルクコンバータ2は、基本的には流体を介して動力を伝達するが、流体を介さずに動力伝達を可能とするロックアップクラッチ2aを有する。このロックアップクラッチ2aは、車速が所定のロックアップ車速以上のときに締結され、ロックアップクラッチ車速未満のとき解放される。
前後進切り替え機構3は、遊星歯車、前進クラッチ及び後進ブレーキを有する。
CVT9は、プライマリプーリ4と、セカンダリプーリ5と、Vベルト6とを有する。プライマリプーリ室4a及びセカンダリプーリ室5aに給排されるCVTフルード量を調整することで、プライマリプーリ4及びセカンダリプーリ5とVベルト6との接触半径が変化する。これにより、変速比を無段階かつ連続的に変更することができる。
プライマリプーリ4には前後進切り替え機構3からトルク及び回転が伝達される。Vベルト6は、プライマリプーリ4及びセカンダリプーリ5に巻き掛けられ、プライマリプーリ4に伝達されたトルク及び回転をセカンダリプーリ5に伝達する。セカンダリプーリ5に伝達されたトルク及び回転は、ファイナルギア10により減速され、ドライブシャフト11を介して駆動輪12に伝達される。
車両は、オイルポンプ15と、油圧制御回路16と、CVTコントロールユニット13とをさらに備える。
オイルポンプ15は、図示しないオイルパンからCVTフルードを吸い上げ、油圧を発生させる。オイルポンプ15には、エンジン1の動力で駆動する機械式のオイルポンプや、電力により駆動する電動式のオイルポンプを用いることができる。
油圧制御回路16は、オイルポンプ15が発生させる油圧を調整してCVT9や前後進切り替え機構3の各部位に伝達する。油圧制御回路16は、ライン圧調整部17、プライマリプーリ室4aの油圧(以下、プライマリ油圧)を調整する第1油圧調整部18、セカンダリプーリ室5aの油圧(以下、セカンダリ油圧)を調整する第2油圧調整部19を含んで構成される。
ライン圧調整部17は、オイルポンプ15が発生させる油圧を調整してライン圧を生成する。ライン圧は、プライマリ油圧及びセカンダリ油圧の元圧となる油圧である。第1油圧調整部18は、ライン圧からプライマリ油圧を生成する。第2油圧調整部19は、ライン圧からセカンダリ油圧を生成する。ライン圧調整部17、第1油圧調整部18、第2油圧調整部19には、油圧レギュレータを用いることができる。
CVTコントロールユニット13は、油圧制御回路16を制御することによって、CVT9の変速比を制御する。CVTコントロールユニット13には、プライマリプーリ回転速度センサ7、セカンダリプーリ回転速度センサ8及びアクセルペダル開度センサ14、さらには図示しないインヒビタスイッチやエンジン回転速度センサからの出力信号が入力される。CVTコントロールユニット13は、エンジン回転速度センサの出力信号に基づいて車速を検出することができる。
CVTコントロールユニット13は、上述した各センサからの信号や図示しないエンジンコントロールユニットからのエンジントルク情報等に基づいて目標変速比を演算する。さらにCVTコントロールユニット13は、目標変速比、実変速比及びアクセルペダル開度に基づいて目標変速速度を演算するとともに、セカンダリプーリ5の回転速度(以下、セカンダリ回転速度)に目標変速比を乗じてプライマリプーリ4の目標回転速度(以下、目標プライマリ回転速度)を演算する。なお、本実施形態における「変速比」は、プライマリプーリ4の回転速度(以下、プライマリ回転速度)をセカンダリ回転速度で除した値を意味する。
CVTコントロールユニット13は、目標変速速度と目標プライマリ回転速度とを共に実現するプライマリプーリ4及びセカンダリプーリ5の目標クランプ圧を演算する。そして、CVTコントロールユニット13は目標クランプ圧に基づいて油圧制御回路16を制御することで、CVTコントロールユニット13はプライマリプーリ室4a及びセカンダリプーリ室5aへのCVTフルードの給排を行う。
なお、CVTコントロールユニット13は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。CVTコントロールユニット13を複数のマイクロコンピュータで構成することも可能である。
ここで、CVTコントロールユニット13が実行する変速制御について説明する。
CVTコントロールユニット13は、通常変速モードと擬似有段アップシフトモードのいずれか一方を選択して実行する。
通常変速モードは、一般的に知られた無段変速機の変速制御である。すなわち、車速及びアクセル操作量に応じた変速パターンを、目標プライマリ回転速度をパラメータとするマップとして記憶しておき、上記のように求めた目標プライマリ回転速度でマップ検索することで目標変速比を決定する変速モードである。通常変速モードによれば、アクセルペダルの操作量に応じて変速比が変化する。また、通常変速モードの場合、加速する際にエンジン回転速度が変化することなく、車速だけが増大するという事態が生じ、乗員に違和感を与えることがある。
これに対し、擬似有段アップシフトモードは、あたかも有段変速機のような変速スケジュールで変速する変速モードである。すなわち、エンジン回転速度がアップシフト判定回転速度になるまでは変速比を一定に維持し、アップシフト判定回転速度に到達したらアップシフト指令を出してアップシフトする変速モードである。これによれば、車速の上昇に連動してエンジン回転速度が上昇するので、乗員に与える違和感を抑制できる。
なお、本実施形態における「アップシフト」とは、変速比を大きい側(Low側)から小さい側(High側)へ変更することをいう。
CVTコントロールユニット13は、後述する方法により運転者による加速要求があると判断した場合に、通常変速モードから擬似有段アップシフトモードへ切り替える。
ところで、一般的な有段変速機の加速時におけるアップシフト制御においては、乗員の感じる加速感の観点から、変速速度はより速い方が好ましい。これはCVT9における擬似有段アップシフトモードにおいても同様である。しかし、アップシフトを開始するタイミングにおいて、ライン圧よりも高いプライマリ油圧が必要な場合には、アップシフトの開始とともにライン圧を増圧させたのではプライマリ油圧の上昇速度が遅くなり、必要なプライマリ油圧を速やかに生成することができない。その結果、変速速度が遅くなり、加速感が損なわれるという問題がある。
その点本実施形態では、CVTコントロールユニット13が以下に説明するライン圧制御を実行することで、上記問題を解消する。
図2は、CVTコントロールユニット13が実行するライン圧制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。
ステップS10で、CVTコントロールユニット13は、図示しないエンジンコントロールユニットからエンジントルクを読み込むとともに、プライマリプーリ回転速度センサ7、セカンダリプーリ回転速度センサ8及びアクセルペダル開度センサ14の出力信号を読み込む。
ステップS20で、CVTコントロールユニット13は現在の制御モードが擬似有段アップシフトモードであるか否かを判定する。具体的には、CVTコントロールユニット13は、アクセルペダル開度が閾値以上かつアクセルペダル開度の変化速度が閾値以上の場合、つまり運転者の加速要求が大きい場合に、擬似有段アップシフトモードであると判定する。擬似有段アップシフトモードの実行が想定される運転シーンは、例えば、高速道路の本線への合流時である。このため、アクセルペダル開度の閾値は、例えば、全開に対して50[%]以上とし、アクセルペダル開度の変化速度の閾値は、例えば、踏み込み方向に60[deg/s]以上とする。なお、これらの閾値はあくまでも一例であり、実際には本実施形態を適用する車両の仕様に応じて適宜設定する。
CVTコントロールユニット13は、ステップS20で擬似有段アップシフトモードであると判定したらステップS30の処理を実行し、擬似有段アップシフトモードでないと判定したらステップS70の処理を実行する。
ステップS30で、CVTコントロールユニット13は、ライン圧の増圧量を演算する。具体的には、疑似有段アップシフトモード中における変速速度の目標値(以下、目標変速速度)を用いて図3のテーブルからライン圧の増圧量を演算する。目標変速速度は、例えば加速度が大きいほど速い目標変速速度が設定されたテーブルを予め作成しておき、現在の車速から算出した加速度とテーブルを用いて演算する。
図3のテーブルは、横軸が目標変速速度、縦軸がライン圧の増圧量であり、目標変速速度が低くなるほどライン圧の増圧量も小さくなっている。これは、目標変速速度が低いほど必要になるプライマリ油圧も低くなり、プライマリ油圧が低くなれば必要となるライン圧も低くなるからである。
ステップS40で、CVTコントロールユニット13は、アップシフトを開始する直前に増圧が終了するように、ライン圧の増圧を指示するタイミング(以下、ライン圧増圧指示タイミング)を演算する。具体的には、まず現在の車両の加速度に基づいてアップシフト開始までの時間を演算する。次に、実際のライン圧の応答(遅れ時間)に基づいて、ライン圧の増圧に要する時間を演算し、アップシフトを開始するタイミングのどれだけ前にライン圧の増圧を開始すればよいかを演算する。例えば、アップシフトを開始するタイミングにおける車速をV2[km/h]、現在の車速をV1[km/h]、現在の車両の加速度をG[m/s2]とすると、アップシフト開始タイミングまでの時間Δt1は式(1)で表される。
Δt1=(V2−V1)/(9.8G×3.6) ・・・(1)
一方、ライン圧の応答は、時定数Tpl[s]の1次遅れの形とすると、90%到達までに3Tpl[s]を要することが、これまでの経験から推測できる。このことから、ライン圧の増圧が終了したと判断できるまでの時間Δt2を決定する。そして、Δt1=Δt2となるタイミングを、ライン圧増圧指示タイミングとする。
ステップS50で、CVTコントロールユニット13は、ライン圧増圧指示タイミングになったか否かを判定し、判定結果が肯定的な場合はステップS60の処理を実行し、否定的な場合はステップS70の処理を実行する。
ステップS60で、CVTコントロールユニット13は、現在のライン圧にステップS30で求めたライン圧の増圧量を加算した増圧ライン指示圧を、ライン指示圧として設定する。これにより、実際のライン圧(以下、ライン実圧)はアップシフトを開始するタイミングにおいて増圧ライン指示圧まで高まっているので、アップシフト指令に応じて速やかにプライマリ圧を上昇させることが可能となり、その結果、変速速度を高めることができる。
ステップS70で、CVTコントロールユニット13は、通常変速モードの場合に設定するライン圧をライン指示圧として設定する。
なお、ステップS30〜S50を省略し、ステップS20で擬似有段アップシフトモードであると判定したら、その時点で可能な増圧可能な上限圧まで増圧を開始してもよい。ただし、この場合には、必要以上にライン圧を増圧することになる機会が増加し、増圧が終了してからアップシフト開始まで増圧後のライン圧を維持することになる。すなわち、オイルポンプ15に無駄な仕事をさせることになるので、エンジン1の燃費悪化を招来することになる。その点、上述したステップS30〜S50を実行すれば、不必要に増圧することでの燃費悪化を回避できる。
なお、図2の制御ルーチンは、アップシフトが終了したら再度実行する。これにより、多段の有段変速機と同様の変速が可能となる。
ここで、ステップS30の処理の変形例を説明する。
上記説明では、目標変速速度のみに基づいてライン圧の増圧量を演算したが、変形例では、より適切なライン圧の増圧量を演算するために、プライマリ回転速度、入力トルク及び変速比もパラメータとして用いる。
まず、プライマリ回転速度をパラメータとする場合について説明する。
図4は、現在のプライマリ回転速度に基づいてライン圧の増圧量を演算するために用いるテーブルである。横軸がプライマリ回転速度、縦軸がライン圧の増圧量であり、プライマリ回転速度が高いほどライン圧の増圧量が小さくなっている。変形例では、ステップS30において、プライマリ回転速度を用いて図4からライン圧の増圧量を演算する。
ここで、プライマリ回転速度が高いほどライン圧の増圧量を小さくする理由について説明する。
図7は、プライマリ油圧(図中の「PRI圧力」)とセカンダリ油圧(図中の「SEC圧力」)からプーリストローク速度を生成する制御ブロック図である。なお、プーリストローク速度は、変速速度に相当する。
図7のバランス推力比は、所定の変速比を維持するために必要とされる、プライマリプーリ4の軸方向推力とセカンダリプーリ5の軸方向推力との比である。図7のKは固定ゲイン、ωpはプライマリ回転速度、Tは時定数、sは微分演算子、Lは無駄時間である。なお、セカンダリ油圧は、ベルト滑りが生じない大きさの一定値とし、プライマリ油圧を変化させることで所望の変速速度を実現するものとする。また、以下の説明において、エンジン回転速度領域は、オイルポンプ15が十分な吐出量を吐出し得る領域であるものとする。
図7から、プライマリ回転速度ωpが大きくなると、同じ変速速度を得るために必要なプライマリ油圧とセカンダリ油圧との差圧は小さくなることがわかる。上述した通りセカンダリ油圧は一定なので、差圧が小さくなればプライマリ油圧の増圧量も小さくなる。したがって、図4に示した通りプライマリ回転速度が高くなるほどライン圧の増圧量は小さくて済む。
次に、入力トルクをパラメータとする場合について説明する。ここでいう入力トルクとは、CVT9に入力されるトルクのことである。
図5は、現在の入力トルクに基づいてライン圧の増圧量を演算するために用いるテーブルである。横軸が入力トルク、縦軸がライン圧の増圧量であり、入力トルクが小さいほどライン圧の増圧量が小さくなっている。変形例では、入力トルクを用いて、図5からライン圧の増圧量を演算する。
ここで、入力トルクが小さいほどライン圧の増圧量が小さくなる理由について説明する。なお、以下の説明において、セカンダリ油圧は一定、かつプライマリ油圧より高いものとする。
図8は、トルク比とバランス推力比との関係を示す図である。ここでいうトルク比とは、入力トルクをセカンダリ油圧に相当するトルク容量で除した値であり、トルク比=1がベルト滑りの生じない上限値である。図示する通り、トルク比が大きくなるほどバランス推力比は大きくなり、かつ、変速比がハイ側になるほどバランス推力比が大きくなっている。
変速開始時の入力トルクが小さいほど、トルク比は小さくなり、図8に示す通りバランス推力比も小さくなる。バランス推力比が小さくなれば、変速開始時におけるプライマリ油圧が小さくなるので、同じ差圧を作る場合にはプライマリ油圧が小さくなった分だけライン圧の増圧量は小さくて済む。したがって、図5に示した通り、入力トルクが小さいほどライン圧の増圧量は小さくなる。
次に、変速比をパラメータとする場合について説明する。ここでいう変速比とは、変速開始時における変速比である。
図6は、現在の変速比に基づいてライン圧の増圧量を演算するために用いるテーブルである。横軸が変速比、縦軸がライン圧の増圧量であり、変速比がハイ側であるほどライン圧の増圧量が小さくなっている。変形例では、変速比を用いて、図5からライン圧の増圧量を演算する。
ここで、変速比がハイ側であるほどライン圧の増圧量が小さくなる理由について説明する。
図8に示す通り、変速比がロー側になるほどバランス推力比は小さくなる。上述した通り、バランス推力比が小さくなれば、変速開始時におけるプライマリ油圧が小さくなるので、ライン圧の増圧量は小さくて済む。したがって、図6に示した通り、変速比がハイ側であるほどライン圧の増圧量は小さくなる。
変形例では、ステップS30で目標変速速度に基づいてライン圧の増圧量を演算し、さらに、上述したプライマリ回転速度に基づくライン圧の増圧量、入力トルクに基づくライン圧の増圧量及び変速比に基づくライン圧の増圧量を演算する。そして、これらのライン圧の増圧量から最も大きなものを選択し、選択したライン圧の増圧量に所定のマージンを加算したものを最終的なライン圧の増圧量とする。なお、所定のマージンを加算するのは、各センサの検出値に公差範囲内の誤差があった場合でも適切な増圧量となるようにするためである。所定のマージンは、例えば、0.2〜0.3[MPa]の大きさにすれば十分である。
このように、変速速度に加えて、さらに複数のパラメータに基づいてライン圧の増圧量を演算することで、速やかなアップシフトのために過不足のないライン圧の増圧量を決定することができる。なお、上記説明ではプライマリ回転速度、入力トルク及び変速比の全てをさらなるパラメータとして用いたが、これらのうち、いずれか一つ又は二つのパラメータだけを用いてもよい。
次に、本実施形態の作用効果について、図9及び図10を参照して説明する。
図9は、図2の制御ルーチンを実行した場合のタイミングチャートである。なお、図9のタイミングチャートには、比較例としてアップシフト判定回転速度に到達してからライン圧の増圧を開始する場合についても示している。
図9のタイミングt1は、擬似有段アップシフトモードに入るタイミングであり、タイミングt3はアップシフト指示が出されてアップシフトを開始するタイミングである。なお、タイミングt1以降は、アクセルペダル開度は一定に維持されるものとする。
タイミングt1で擬似有段アップシフトモードに入ると、本実施形態及び比較例のいずれも、変速比はその時点の変速比に固定される。
本実施形態では、上述した演算により求めたタイミングt2において、ライン指示圧が増大し、これに伴いライン実圧が上昇し始める。そして、ライン実圧はアップシフトを開始するタイミングt3の直前にライン指示圧に到達する。一方、比較例では、ライン指示圧はアップシフトを開始するタイミングt3で増大する。
タイミングt3になると、本実施形態及び比較例のいずれでもアップシフトを開始するためにプライマリ指示圧が増大し、これに応じてライン実圧が上昇する。このとき、本実施形態では既にライン実圧が上昇している。これに対し比較例では、ライン指示圧もタイミングt3で増大するので、ライン実圧とプライマリ実圧とが同時に上昇することとなる。このため、プライマリ実圧の上昇速度は、本実施形態の方が比較例よりも速くなる。したがって、変速比の変化は本実施形態の方が比較例よりも速くなる。すなわち、本実施形態の方が比較例よりも高い変速速度でアップシフトすることができる。
なお、プライマリ指示圧を増大させるのは、アップシフトを行うためなので、本実施形態及び比較例のいずれも、アップシフトが終了したらプライマリ指示圧が低下し、これに伴いプライマリ実圧も低下している。
図10は、図2の制御ルーチンを実行した場合の車速とエンジン回転速度との関係を示す図である。図中の実線は本実施形態、破線は図9の比較例を示している。
タイミングt1で擬似有段アップシフトモードに入ると、本実施形態も比較例も同様に、車速の上昇に連動してエンジン回転速度が上昇する。しかし、上述した変速速度の違いから、アップシフトに伴ってエンジン回転速度が低下する時間は、本実施形態の方が比較例よりも短くなる。その分、擬似有段アップシフトモード中に、車速の上昇に連動してエンジン回転速度が上昇する時間は、本実施形態の方が比較例よりも長くなる。このため、本実施形態の方が比較例よりも加速感が向上する。
以上のように本実施形態では、運転者の加速要求の大きさに応じて通常変速モードと擬似有段アップシフトモードのうち一方のモードを選択し、選択されたモードに基づき前記無段変速機の変速比を制御する。そして、擬似有段アップシフトモードを選択した場合には、予め設定したアップシフト判定回転速度に到達したときにアップシフトを開始し、アップシフトを開始する前にライン圧を増圧させておく。これにより、アップシフトを開始する際に速やかにプライマリ油圧を上げることができるので、速い変速を実現でき、その結果、加速感を向上させることが可能となる。
本実施形態では、アップシフトを開始する直前にライン圧の増圧が終了するタイミングでライン圧の増圧を開始する。これにより、ライン圧が増圧した状態を必要以上に長い時間維持する必要がなくなるので、速い変速を実現し、かつライン圧の増圧に伴う燃費悪化を抑制できる。
本実施形態では、目標変速速度が低い場合には、目標変速速度が高い場合に比べてライン圧の増圧量を小さくする。目標変速速度が低いほど必要となるプライマリ油圧は低くなるので、本実施形態によれば速い変速を実現し、かつ増圧量を不必要に大きくすることによる燃費悪化を抑制できる。
本実施形態では、プライマリ回転速度が高い場合には、プライマリ回転速度が低い場合に比べてライン圧の増圧量を小さくする。プライマリ回転速度が高いほど変速し易くなるので、必要となるプライマリ油圧は小さくなる。したがって本実施形態によれば、速い変速を実現し、かつ増圧量を不必要に大きくすることによる燃費悪化を抑制できる。
本実施形態では、CVT9への入力トルクが小さい場合には、CVT9への入力トルクが大きい場合に比べてライン圧の増圧量を小さくする。入力トルクが小さいほどアップシフトし易くなるので、必要となるプライマリ油圧は小さくなる。したがって本実施形態によれば、速い変速を実現し、かつ増圧量を不必要に大きくすることによる燃費悪化を抑制できる。
本実施形態では、変速比がロー側の場合には、変速比がハイ側の場合に比べてライン圧の増圧力を小さくする。アップシフト直前の変速比がロー側になるほど、アップシフトし易くなるので、必要となるプライマリ油圧は小さくなる。したがって本実施形態によれば、速い変速を実現し、かつ増圧量を不必要に大きくすることによる燃費悪化を抑制できる。
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるわけではなく、特許請求の範囲に記載の技術的思想の範囲内で様々な変更を成し得ることは言うまでもない。