以下、図面を参照しながら、配置方法及び配置装置、並びに、デバイス製造方法及びデバイス製造装置の実施形態について説明する。以下では、電子デバイスを製造するデバイス製造装置1を用いて、配置方法及び配置装置、並びに、デバイス製造方法及びデバイス製造装置の実施形態を説明する。但し、本発明が以下に説明する実施形態に限定されることはない。
以下の説明では、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸から定義されるXYZ直交座標系を用いて、デバイス製造装置1を構成する各種構成要素の位置関係について説明する。尚、以下の説明では、説明の便宜上、X軸方向及びY軸方向のそれぞれが水平方向(つまり、水平面内の所定方向)であり、Z軸方向が鉛直方向(つまり、水平面に直交する方向であり、実質的には上下方向)であるものとする。また、X軸、Y軸及びZ軸周りの回転方向(言い換えれば、傾斜方向)を、それぞれ、θX方向、θY方向及びθZ方向と称する。
(1)デバイス製造装置1の構造
初めに、図1を参照しながら、本実施形態のデバイス製造装置1の構造について説明する。図1は、本実施形態のデバイス製造装置1の構造の一例を示す側面図である。
本実施形態のデバイス製造装置1は、所望の第1物体上の所望領域に、第1物体よりも小さな所望の第2物体を配置する(言い換えれば、位置させる)。従って、本実施形態のデバイス製造装置1は、配置装置の一例として機能する。例えば、デバイス製造装置1は、ナノメートルサイズ又はマイクロメートルサイズの第2物体を、ナノメートルサイズ、マイクロメートルサイズ、ミリメートルサイズの又はセンチメートルサイズの第1物体上の所望領域に配置する。但し、デバイス製造装置1は、任意のサイズの第2物体を、任意のサイズの第1物体上の所望領域に配置してもよい。
デバイス製造装置1は、第2物体を第1物体上の所望領域に配置するために、第2物体が供給された第1物体に光を照射する。具体的には、デバイス製造装置1は、第2物体に対して光を照射する。その結果、後に実験結果を参照しながら説明するように、光の照射位置を中心とする第1物体上の所定領域に、第2物体が付着していく。デバイス製造装置1は、所望領域に基づいて光の照射位置を調整することで、第2物体を第1物体上の所望領域に付着させる。その結果、第2物体は、第1物体上の所望領域に配置される。
デバイス製造装置1は、任意の電子デバイスを製造するために用いられる。以下では、説明の便宜上、デバイス製造装置1は、カーボンナノチューブ(Carbon Nano Tube)CNTをキャリアCとして用いる電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor)FETを製造するために用いられるものとする。この場合、デバイス製造装置1は、カーボンナノチューブCNTが供給された基板200上のキャリア形成領域201に光を照射する。その結果、カーボンナノチューブCNTが、キャリア形成領域201に配置される。
カーボンナノチューブCNTをキャリア形成領域201に配置するために、デバイス製造装置1は、図1に示すように、光源11と、照明光学系12と、ミラー13aと、ミラー13bと、ミラー13cと、空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)14と、ハーフミラー15と、投影光学系16と、ステージ17と、検出器18と、コントローラ19とを備えている。
光源11は、コントローラ19の制御下で、光EL1を射出する。このような光EL1として、例えば、赤外光(例えば、波長が1064nmとなるYAGレーザ光)が用いられる。但し、光EL1として、後に詳述するようにその他の種類の光が用いられてもよい。
照明光学系12は、例えば米国特許第8,792,081号公報などに開示されるように、フライアイレンズやロッド型インテグレータ等のオプティカルインテグレータを有する照度均一化光学系、及び照野絞り(いずれも不図示)を有していてもよい。照明光学系12は、光源11からの光EL1の光量を均一化して光EL2として射出する。この光EL2によって空間光変調器14の光変調面14aが照明される。なお、空間光変調器の光変調面14a上には、照明光学系12の照野絞り(マスキングシステム)で規定された矩形状の照明領域が形成される。
尚、照明光学系12は、光変調面14a上での光EL2の強度分布を変更するビーム強度分布変更部等を含んでいてもよい。
ミラー13aは、照明光学系12から出力される光EL2を偏向して、空間光変調器14の光変調面14aに導く。
空間光変調器14は、後述するように、2次元的に配列された複数のミラー要素141を備える。ここで、複数のミラー要素141が配列されている面を光変調面14aと称する。光変調面14aには、照明光学系12からミラー13aを介して伝搬してくる光EL2が照射される。光変調面14aは、XY平面に平行な平面であって、光EL2の進行方向に交わる面である。光変調面14aは、矩形の形状を有している。光EL2は、光変調面14aをほぼ均一な照度分布で照明する。
空間光変調器14は、当該空間光変調器14の光変調面14aに照射された光EL2を、投影光学系15に向けて反射する。空間光変調器14は、コントローラ19の制御下で、光EL2を反射する際に、当該光EL2を空間変調する。ここで、「光を空間変調する」とは、当該光の進行方向を横切る断面における当該光の振幅(言い換えれば、強度)、光の位相、光の偏光状態、光の波長及び光の進行方向(言い換えれば、偏向状態)のうちの少なくとも1つである光特性の分布を変化させることを意味する。本実施形態では、空間光変調器14は、反射型の空間光変調器である。
ここで、図2(a)から図2(d)を参照しながら、空間光変調器14の構造の一例について更に説明を加える。図2(a)は、空間光変調器14の光変調面14aの構造の一例を示す平面図である。図2(b)は、空間光変調器14の光変調面14aの一部の構造を示す斜視図である。図2(c)は、空間光変調器14の1つのミラー要素141の構成を示す斜視図である。図2(d)は、空間光変調器14が備えるミラー要素141がとり得る2つの状態を示す側面図である。
図2(a)及び図2(b)に示すように、空間光変調器14は、複数のミラー要素141を備えている。尚、図2(b)は、図面の見易さを考慮して、図2(a)に示す複数のミラー要素141の一部を抜粋した図面である。複数のミラー要素141は、光変調面14aに平行な面であるXY平面上において、二次元のアレイ状に(言い換えれば、マトリクス状に)配列されている。例えば、複数のミラー要素141のY軸方向に沿った配列数は、数百から数千である。例えば、複数のミラー要素141のX軸方向に沿った配列数は、複数のミラー要素141のY軸方向に沿った配列数の数倍から数十倍である。複数のミラー要素141のY軸方向に沿った配列数の一例は、数百から数千である。複数のミラー要素141は、X軸方向に沿って所定の配置間隔pxの間隔を隔て且つY軸方向に沿って所定の配置間隔pyの間隔を隔てるように、配列されている。配置間隔pxの一例は、例えば、10マイクロメートルから1マイクロメートルである。配置間隔pyの一例は、例えば、10マイクロメートルから1マイクロメートルである。
各ミラー要素141は、正方形の形状を有している。各ミラー要素141のX軸方向及びY軸方向のサイズは、各ミラー要素141の位置及び/又は姿勢が変更されるため、それぞれ、上述した配置間隔px及びpyよりも小さくなる。つまり、X軸方向に沿って隣接する2つのミラー要素141の間及びY軸方向に沿って隣接する2つのミラー要素141の間には、ミラー要素141を構成しない隙間142が存在する。逆に言えば、各ミラー要素141の位置及び/又は姿勢の変更を考慮すると、各ミラー要素141のX軸方向及びY軸方向のサイズがそれぞれ上述した配置間隔px及びpyと同一となる(つまり、隙間142が存在しない)ように各ミラー要素141を製造することは、技術的に困難であると推定される。但し、各ミラー要素141の形状及びサイズは任意であってもよい(例えば各ミラー要素141のX軸方向及びY軸方向のサイズが上述した配置間隔px及びpyと実質的に同一であってもよい)。
各ミラー要素141のうち光EL2が照射される面は、光EL2を反射する反射面141aとなっている。各ミラー要素141のXY平面に平行な2つの表面のうち−Z方向側に位置する表面は、反射面141aとなっている。反射面141aには、例えば金属膜が形成されている。複数のミラー要素の141の反射面141aの集合が、実質的には、光EL2が照射される光変調面14aとなる。
図2(c)に示すように、空間光変調器14の各ミラー要素141は、第1接続部材143によってヒンジ部144と接続されている。ヒンジ部144は、弾性変形を利用してZ軸方向に撓むことが可能な可撓性を有している。このヒンジ部144は、支持基板149上に設けられた一対のポスト部145によって支持されている。また、ヒンジ部144には、後述する電極148によって静電力(引力又は斥力)の作用を受けるアンカー部146とヒンジ部144とを接続する第2接続部材147が設けられている。このように、アンカー部146とミラー要素141とは、第1接続部材143及び第2接続部材147並びにヒンジ部144を介して機械的に接続されている。そして、支持基板149の表面には電極148が形成されている。なお、ポスト部145は一対には限定されず、2以上の数であってもよい。
電極148に所定の電圧が印加されると、アンカー部146の裏面と電極148との間に静電力が作用する。上述の通り、アンカー部146の裏面と電極148との間に静電力を作用させると、アンカー部146が支持基板149側に移動し、この移動に伴ってミラー要素141も支持基板149側に移動する。
各ミラー要素141の状態は、アンカー部146と電極148との間に作用する静電力及びヒンジ部144の弾性力に起因して、反射面141aに直交する方向(つまり、Z軸方向)に沿った位置が異なる2つの状態の間で切り替わる。例えば、図2(d)の左側に示すように、アンカー部146と電極148との間に静電力が作用していない場合(つまり、ヒンジ部144が撓んでいない場合)には、各ミラー要素141は、各ミラー要素141の反射面141aが基準平面A1に一致する第1状態となる。例えば、図2(d)の右側に示すように、アンカー部146と電極148との間に静電力が作用している場合(つまり、ヒンジ部144が撓んでいる場合)には、各ミラー要素141は、各ミラー要素141の反射面141aが基準平面A1から+Z方向側に向かって距離d1だけシフトした変位平面A2に一致する第2状態となる。
第2状態にあるミラー要素141の反射面141aは、第1状態にあるミラー要素141の反射面141aから+Z方向側に向かって距離d1だけシフトした位置にある。このため、第2状態にあるミラー要素141が光EL2を反射することで得られる光EL3の波面の位相は、第1状態にあるミラー要素141が光EL2を反射することで得られる光EL3の波面の位相と比較して、距離d1の倍の長さに相当する位相量だけ異なる。本実施形態では、距離d1は、光EL1の波長λの1/4と一致する。つまり、d1は、d1=λ/4という数式にて表現される。この場合、第2状態にあるミラー要素141が光EL2を反射することで得られる光EL3の波面の位相は、第1状態にあるミラー要素141が光EL2を反射することで得られる光EL3の波面の位相と比較して、180度(πラジアン)だけ異なる。このため、複数のミラー要素141の状態に応じて、複数のミラー要素141が反射した光EL3の、当該光EL3の進行方向に直交する(或いは、交わる)面における位相分布が定まる。つまり、空間光変調器14は、光EL3の位相分布を制御することができる。
空間光変調器14は、コントローラ19の制御下で、カーボンナノチューブCNTの配置位置(つまり、キャリア形成領域201)に応じて、複数のミラー要素141の状態を制御する。その結果、空間光変調器14は、キャリア形成領域201に応じた第1変調パターンで、光EL2を空間変調する。尚、本実施形態における「変調パターン」は、光EL2を空間変調するためのパターン(つまり、複数のミラー要素141の状態の分布パターンと実質的に同一)である。この場合、第1変調パターンで空間変調された光EL3が基板200上に分布しているカーボンナノチューブCNTに照射されることで、カーボンナノチューブCNTがキャリア形成領域201に配置される。
尚、このような空間光変調器14の一例は、例えば、援用によって本願明細書に取り込まれる米国特許出願公開第2013/0222781号明細書に記載されている。
再び図1において、ミラー13b及び13cは、空間光変調器14によって空間変調された光EL3を偏向して、ハーフミラー15に導く。ハーフミラー15は、光EL3を反射し、投影光学系16に導く。
投影光学系16は、空間光変調器14によって空間変調された光EL3を基板200に投影する。投影光学系16は、光EL3を、基板200の表面に設定される面状の露光領域ELAに投影する。投影光学系16は、第1変調パターンに応じて定まる位相分布を有する光EL3を、位相分布に応じた強度分布を持つ空間像として基板200に投影する。
ステージ17は、基板200を保持可能であり、保持した基板200をリリース可能である。ステージ17は、コントローラ19の制御下で、基板200を保持した状態で、露光領域ELAを含む平面(例えば、XY平面)に沿って移動可能である。ステージ17は、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向、θX方向、θY方向及びθZ方向のうちの少なくとも一つに沿って移動可能である。
光EL3が照射された基板200(或いは、カーボンナノチューブCNT)からは、光EL3の照射に起因して発生する光EL4が出射する。光EL4は、例えば、基板200(或いは、カーボンナノチューブCNT)によって光EL3が反射又は屈折されることで発生する光(いわゆる、反射光又は屈折光)を含んでいてもよい。光EL4は、例えば、基板200(或いは、カーボンナノチューブCNT)によって光EL3が散乱されることで発生する光(いわゆる、散乱光であり、レイリー散乱光及びラマン散乱光のうちの少なくとも一方を含む)を含んでいてもよい。
光EL4は、ハーフミラー15を透過する。ハーフミラー15を透過した光EL4は、検出器18によって検出される。コントローラ19は、検出器18の検出結果に基づいて、基板200上におけるカーボンナノチューブCNTの状態を特定する。例えば、コントローラ19は、基板200上におけるカーボンナノチューブCNTが実際に配置されている位置を特定することができる。
コントローラ19は、デバイス製造装置1の動作を制御する。コントローラ19は、例えば、CPU(Central Processing Unit)や、メモリを含んでいてもよい。特に、上述したように、コントローラ19は、空間光変調器14による光EL2の空間変調動作を制御する。更に、コントローラ19は、ステージ17の移動を制御する。具体的には、コントローラ19は、基板200上の任意の領域に露光領域ELAが位置するように、ステージ17を制御する。
尚、図1及び図2を用いて説明したデバイス製造装置1は一例である。従って、図1及び図2に示すデバイス製造装置1の少なくとも一部が適宜改変されてもよい。以下、デバイス製造装置1の少なくとも一部の改変の例について説明する。
デバイス製造装置1は、電子デバイスとは異なる任意のデバイスを製造するために用いられてもよい。例えば、デバイス製造装置1は、細胞、DNA又は細菌等の生体構造物を利用した生体デバイス(或いは、ウイルス等の微小構造物を利用したデバイス)を製造するために用いられてもよい。この場合、デバイス製造装置1は、生体構造物を第1物体上の所望領域に配置する。
デバイス製造装置1は、電子デバイスないしは任意のデバイスを製造するために用いられなくてもよい。デバイス製造装置1は、電子デバイスないしは任意のデバイスを製造する目的とは異なる任意の目的で、所望の第2物体を、所望の第1物体上の所望領域に配置してもよい。
デバイス製造装置1は、ミラー13aを備えていなくてもよい。この場合、照明光学系12は、空間光変調器14に向けて光EL2を射出する。デバイス製造装置1は、ミラー13aに加えて又は代えて、照明光学系12が射出した光EL2を空間光変調器14に導く導光光学系を備えていてもよい。
デバイス製造装置1は、ミラー13b及び13cを備えていなくてもよい。この場合、空間光変調器14は、ハーフミラー15又は投影光学系16に向けて光EL3を射出する。デバイス製造装置1は、ミラー13b及び13cに加えて又は代えて、空間光変調器14が射出した光EL3をハーフミラー15又は投影光学系16に導く導光光学系を備えていてもよい。
空間光変調器14は、光EL3の位相分布を制御することに加えて又は代えて、光EL3の強度分布(つまり、光EL3の進行方向に直交する(或いは、交わる)方向に沿った面上における強度分布)を制御してもよい。空間光変調器14は、複数のミラー要素141に代えて、光EL2を空間変調することが可能な任意の装置(例えば、液晶パネル等)を備えていてもよい。空間光変調器14は、透過型の空間光変調器であってもよい。
上述の例における空間光変調器14は、それぞれの上下方向(つまり、光EL2の進行方向)に沿った位置が可変である複数のミラー要素141を備える位相型(ピストン型)の空間光変調器である。しかしながら、空間光変調器14は、それぞれが傾斜可能な(例えば、X軸又はY軸に対して傾斜可能な)複数のミラー要素を備える傾斜型の空間光変調器であってもよい。また、空間光変調器14は、傾斜型の空間光変調器が備える複数のミラー要素の反射面に段差を設けた位相段差傾斜ミラー型の空間光変調器であってもよい。位相段差傾斜ミラー型の空間光変調器は、光変調面14aに平行な反射面141aが反射した光EL3と光変調面14aに対して傾斜している反射面141aが反射した光EL3との間の位相差をλ/2(180度(πラジアン))に設定する空間光変調器である。また、援用によって本願明細書に取り込まれる国際公開第2014/104001号パンプレットに開示されている、それぞれの上下方向の位置が可変である複数のミラー要素と、当該複数のミラー要素の間に位置する固定反射面とを備え、ミラーの上下方向の移動によって光EL2を空間変調する空間光変調器が用いられてもよい。
投影光学系16は、縮小系であってもよい。例えば、投影光学系16の投影倍率は、1/200であってもよい。投影光学系16は、等倍系又は拡大系であってもよい。投影光学系16の解像度は、空間光変調器14の各ミラー要素141の大きさ(各ミラー要素の一辺の寸法)に投影倍率を乗じた値よりも大きくなるように設定されていてもよい。この場合、単一のミラー要素141によって反射された光EL3は、露光領域ELA上では解像されることはない。
投影光学系16と基板200との間に、光EL3の光路を含む液浸空間が形成されていてもよい。
デバイス製造装置1は、検出器18を備えていなくてもよい。この場合、デバイス製造装置1は、ハーフミラー15を備えていなくてもよい。デバイス製造装置1がハーフミラー15を備えていない場合には、空間光変調器14は、投影光学系16に向けて、光EL3を射出してもよい。或いは、空間光変調器14は、空間光変調器14が射出した光EL3を投影光学系16に導く導光光学系光に向けて、光EL3を射出してもよい。
(2)電界効果トランジスタFETの構造
続いて、図3(a)及び図3(b)を参照しながら、デバイス製造装置1を用いて製造される電界効果トランジスタFETの構造の一例について説明する。図3(a)は、電界効果トランジスタFETの断面図(図3(b)に示す電界効果トランジスタFETのIII−III’断面図)である。図3(b)は、電界効果トランジスタFETの上面図である。
図3(a)及び図3(b)に示すように、電界効果トランジスタFETは、基板200と、複数のソース電極Sと、複数のドレイン電極Dと、複数のゲート電極Gと、複数の絶縁層Iと、複数のキャリアCとを備えている。基板200には、単一のソース電極Sと、単一のドレイン電極Dと、単一のゲート電極Gと、単一の絶縁層Iと、単一のキャリアCとを含む素子セットESが、複数形成されている。複数の素子セットESの夫々は、トランジスタとして機能可能である。但し、基板200には、単一の素子セットESが形成されていてもよい。
基板200は、絶縁基板である。絶縁基板は、絶縁体から構成される第1基板であってもよい。絶縁基板は、絶縁体、半導体又は金属から構成される第1支持基板と、当該第1支持基板に積層される第1絶縁層とを含む第2基板であってもよい。第1支持基板を構成する絶縁体は、例えば、酸化シリコン、チッカシリコン、酸化アルミニウム、酸化チタン、フッ化カリウム、絶縁性樹脂(例えば、アクリル樹脂や、エポキシ樹脂等)、ポリイミド及びテフロン(登録商標)等のうちの少なくとも一つである。第1支持基板を構成する半導体は、例えば、14族元素(例えば、シリコンや、ゲルマニウム等)、ガリウム砒素、インジウム燐、テルル化亜鉛、及び、炭化シリコン等のうちの少なくとも一つである。第1支持基板を構成する金属は、酸化物を相対的に形成しやすい金属(例えば、アルミニウムや、マグネシウム等)である。
但し、後に詳述するように、基板200を介して光EL3が基板200の表面に照射される場合には(図8(b)参照)、基板200は、光EL3を透過するという透過性を有する。従って、基板200は、透過性を有する材料から構成される。
基板200上には、複数のソース電極Sと、複数のドレイン電極Dとが形成されている。複数のソース電極S及び複数のドレイン電極Dの夫々は、金属(例えば、金や、白金や、チタン等)から構成される。各ソース電極Sと、各ソース電極Sと共に同一の素子セットESを構成するドレイン電極Dとは、所定距離の間隔を確保した上で、図3(a)及び図3(b)中Y軸方向に沿って並んでいる。ソース電極Sとドレイン電極Dとの間の間隔は、例えば、数ナノメートルから数十ナノメートル程度である。ソース電極Sとドレイン電極Dとの間の領域は、キャリアCが形成されるべきキャリア形成領域201である。図3(a)及び図3(b)に示す例では、キャリア形成領域201は、Y軸方向が長手方向となる形状を有する。
キャリア形成領域201には、キャリアCが形成されている。キャリアCは、ソース電極Sとドレイン電極Dとを連結する。キャリアCは、単一のカーボンナノチューブCNTから構成されていてもよい。或いは、キャリアCは、バンドルされた複数のカーボンナノチューブCNTから構成されていてもよい。カーボンナノチューブCNTは、単層(シングルウォール)カーボンナノチューブを含んでいてもよい。カーボンナノチューブCNTは、多層(マルチウォール)カーボンナノチューブを含んでいてもよい。尚、カーボンナノチューブCNTの直径は、例えば、1ナノメートルから数ナノメートル程度である。カーボンナノチューブCNTの長さ(長手方向の長さ)は、例えば、数マイクロメートル程度である。
キャリアCの少なくとも一部の上には、絶縁層Iが形成されている。絶縁層Iは、例えば、上述した絶縁体を構成する材料から構成されている。絶縁層I上には、ゲート電極Gが形成されている。ゲート電極Gは、金属(例えば、金や、白金や、チタン等)から構成される。
以上説明した電界効果トランジスタFETは、いわゆるトップゲート型の電界効果トランジスタである。従って、デバイス製造装置1は、トップゲート型の電界効果トランジスタFETを製造する。しかしながら、デバイス製造装置1は、トップゲート型の電界効果トランジスタFETとは異なる電界効果トランジスタを製造してもよい。
例えば、デバイス製造装置1は、ボトムゲート型の電界効果トランジスタFET−1を製造してもよい。尚、ボトムゲート型の電界効果トランジスタFET−1は、図4(a)に示すように、ソース電極S、ドレイン電極D及びキャリアCが基板200の一表面(図4(a)では、+Z軸側の表面)に形成される一方で、ゲート電極Gが基板200の他の表面(第1表面の逆側の表面であって、図4(a)では、+Z軸側の表面)に形成される電界効果トランジスタである。或いは、例えば、デバイス製造装置1は、サスペンデッド型の電界効果トランジスタFET−2を製造してもよい。尚、サスペンデッド型の電界効果トランジスタFET−2は、図4(b)に示すように、キャリアCが基板200に対して浮いている(つまり、キャリアCがソース電極S及びドレイン電極Dによって吊り下げられている)電界効果トランジスタである。尚、図4(b)に示す例では、ゲート電極Gは、キャリアCの下側(図4(b)では、−Z軸側)に形成されている。
どのような電界効果トランジスタFETを製造する場合であっても、デバイス製造装置1は、後述する製造方法に従って、カーボンナノチューブCNTをキャリア形成領域201に配置することに変わりはない。
尚、図3を用いて説明した電界効果トランジスタFETは一例である。従って、図3に示す電界効果トランジスタFETの少なくとも一部が適宜改変されてもよい。例えば、ゲート電極Gは、キャリアC上に形成されていてもよい。この場合、キャリアC上に絶縁像Iが形成されていなくてもよい。
(3)電界効果トランジスタFETの製造方法
続いて、図5を参照しながら、電界効果トランジスタFETの製造方法について説明する。図5は、電界効果トランジスタFETの製造方法の流れの一例を示すフローチャートである。
図5に示すように、まず、基板200上に、複数のソース電極S及び複数のドレイン電極Dが形成される(ステップS1)。複数のソース電極S及び複数のドレイン電極Dは、例えば、蒸着マスクを用いた蒸着法によって形成される。
その後、基板200上に、複数のキャリアCが形成される(ステップS2)。尚、複数のキャリアCの形成方法については、後に詳述する(図6等参照)。
その後、ステップS2で形成された複数のキャリアC上に、複数の絶縁層Iが夫々形成される(ステップS3)。複数の絶縁層Iは、例えば、基板200に絶縁膜を形成する成膜法、並びに、絶縁層Iの形成パターンに応じて絶縁膜をパターニングするフォトリソグラフィ工程及びエッチング工程を用いて形成される。この場合、フォトリソグラフィ工程の少なくとも一部は、デバイス製造装置1によって行われてもよい。具体的には、絶縁膜をパターニングする際に、空間光変調器14は、複数の絶縁層Iの形成パターンに応じて光EL2を空間変調してもよい。その結果、絶縁膜(より具体的には、絶縁膜上に塗布されたレジスト)は、絶縁層Iの形成パターンに応じて空間変調された光EL3(つまり、絶縁層Iの形成パターンに応じた露光パターンを有する光EL3)によって露光される。
その後、ステップS3で形成された絶縁層I上に、複数のゲート電極Gがまとめて形成される(ステップS4)。複数のゲート電極Gは、例えば、蒸着マスクを用いた蒸着法によって形成される。
以上説明したステップS1からステップS4の工程を経て、電界効果トランジスタFETが製造される。
尚、図5を用いて説明した電界効果トランジスタFETの製造方法は一例である。従って、図5に示す電界効果トランジスタFETの製造方法の少なくとも一部が適宜改変されてもよい。以下、電界効果トランジスタFETの製造方法の少なくとも一部の改変の例について説明する。
複数のキャリアCは、複数のソース電極S及び複数のドレイン電極Dが形成される前に形成されてもよい。サスペンデッド型の電界効果トランジスタFET−2が製造される場合には、複数のキャリアCは、複数のゲート電極Gが形成された後に形成されてもよい。サスペンデッド型では、サスペンデッド型の電界効果トランジスタFET−2が製造される場合には、複数のゲート電極G、複数のソース電極S及び複数のドレイン電極Dが同一のタイミングで形成されてもよい。
複数のソース電極S及び複数のドレイン電極Dは、基板200に金属膜を形成するスパッタリング法(或いは、蒸着法)、並びに、複数のソース電極S及び複数のドレイン電極Dの形成パターンに応じて金属膜をパターニングするフォトリソグラフフィ工程及びエッチング工程を用いて形成されてもよい。この場合、フォトリソグラフィ工程の少なくとも一部は、デバイス製造装置1によって行われてもよい。具体的には、金属膜をパターニングする際に、空間光変調器14は、複数のソース電極S及び複数のドレイン電極Dの形成パターンに応じて光EL2を空間変調してもよい。その結果、金属膜(より具体的には、金属膜上に塗布されたレジスト)は、複数のソース電極S及び複数のドレイン電極Dの形成パターンに応じて空間変調された光EL3(つまり、複数のソース電極S及び複数のドレイン電極Dの形成パターンに応じた露光パターンを有する光EL3)によって露光される。
複数のゲート電極Gは、基板200に金属膜を形成するスパッタリング法(或いは、蒸着法)、並びに、複数のゲート電極Gの形成パターンに応じて金属膜をパターニングするフォトリソグラフフィ工程及びエッチング工程を用いて形成されてもよい。この場合、フォトリソグラフィ工程の少なくとも一部は、デバイス製造装置1によって行われてもよい。具体的には、金属膜をパターニングする際に、空間光変調器14は、複数のゲート電極Gの形成パターンに応じて光EL2を空間変調する。その結果、金属膜(より具体的には、金属膜上に塗布されたレジスト)は、複数のゲート電極Gの形成パターンに応じて空間変調された光EL3(つまり、複数のゲート電極Gの形成パターンに応じた露光パターンを有する光EL3)によって露光される。
(4)キャリアCの形成方法
続いて、図6から図14(b)を参照しながら、図5のステップS2におけるキャリアCの形成方法について説明する。図6は、図5のステップS2におけるキャリアCの形成方法の流れの一例を示すフローチャートである。図7(a)から図14(b)は、夫々、図5のステップS2におけるキャリアCの形成方法を構成する一工程が行われている時点での基板200の状態を示す。
図6に示すように、基板200上に、カーボンナノチューブCNTが分散している溶液であるCNT分散液LQが供給される(図6のステップS21)。CNT分散液LQを構成する溶媒は、例えば、ゲル状の又はゾル状の溶媒である。
CNT分散液LQには、カーボンナノチューブCNTを溶液に均一に分散させる(溶液中でカーボンナノチューブCNTを分散化させることで、カーボンナノチューブCNTのバンドル化を妨げる)ための可溶化処理が施されていることが好ましい。
可溶化処理は、カーボンナノチューブCNTの表面に分子を物理的に介在させることでカーボンナノチューブCNTを孤立させる第1可溶化処理(いわゆる、物理修飾による可溶化処理)を含んでいてもよい。第1可溶化処理は、例えば、カーボンナノチューブCNTを溶液に均一に分散させることが可能な可溶化剤をCNT分散液LQに添加することで実現されてもよい。可溶化剤は、例えば、界面活性剤である。界面活性剤は、陰イオン性界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、又は、陰イオン性界面活性剤と両性界面活性剤との混合物であってもよい。陰イオン性界面活性剤は、例えば、炭素数が10から14となるアルキル硫酸系の塩に相当する界面活性剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、デシル酸硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム又はドデシルベンゼン硫酸ナトリウム(SDBS)等)、ドデカンスルホン酸系の塩(例えば、ナトリウム塩、以下同じ)、ドデカノイルサルコシン酸系の塩、ドデカン酸系の塩及びコール酸系の塩のうちの少なくとも一つであってもよい。両性界面活性剤は、例えば、n−ドデシルホスホコリンであってもよい。或いは、界面活性剤は、陰イオン性界面活性剤及び両性界面活性剤のうちの少なくとも一つと、その他の界面活性剤との混合物であってもよい。その他の界面活性剤は、その他の陰イオン性界面活性剤、その他の両性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、高分子ポリマーを含む分散剤、DNAを含む分散剤及びたんぱく質を含む分散剤のうちの少なくとも一つであってもよい。
或いは、可溶化処理は、カーボンナノチューブCNTの一部に官能基を埋め込むことでカーボンナノチューブCNTを孤立させる第2可溶化処理(いわゆる、化学修飾による可溶化処理)を含んでいてもよい。第2可溶化処理は、カーボンナノチューブCNTを分散可能な溶媒を、CNT分散液LQの溶媒として用いることで実現されてもよい。カーボンナノチューブCNTを分散可能な溶媒は、例えば、N−メチルピロリドン(NMP)、N,Nジメチルホルムアミド(DMF)及びジメチルスルホキシド(DMSO)のうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。
以下、CNT分散液LQの供給方法の一例を説明する。図7(a)及び図7(b)に示すように、CNT分散液LQが基板200に供給される前に、基板200の第1表面200a上には、第1表面200aの外縁に沿って壁部材220が形成される。壁部材220は、XY平面上において閉じたループ状の形状を有する。その後、基板200と壁部材220とによって囲まれた空間に、CNT分散液LQが注入される。その後、壁部材220の上部に、基板200の第1表面200aと対向するようにカバー部材210が形成される。その結果、CNT分散液LQは、基板200と、カバー部材210と、壁部材220との間に囲まれた空間に密封される。
基板200の第1表面200aは、キャリアCが形成される面である。従って、図7(c)に示すように、第1表面200aには、キャリア形成領域201が設定されている。尚、図7(c)は、第1表面200aに既に形成されているソース電極S及びドレイン電極Dを点線で示している。CNT分散液LQが基板200に供給された時点では、カーボンナノチューブCNTは、CNT分散液LQ内をランダムに浮遊している。従って、図7(c)に示すように、第1表面200a上においても、カーボンナノチューブCNTは、ランダムに分布している。つまり、カーボンナノチューブCNTは、キャリア形成領域201上のみならず、キャリア形成領域201とは異なる第1表面200a上の領域202(以下、適宜“キャリア非形成領域202”と称する)にも分布している。デバイス製造装置1は、このような基板200に対して光EL3を照射することで、カーボンナノチューブCNTをキャリア形成領域201に集めて付着させる。
カーボンナノチューブCNTをキャリア形成領域201に集めて付着させるために、CNT分散液LQが供給された基板200が、デバイス製造装置1のステージ17にローディングされる(ステップS22)。
具体的には、図8(a)に示すように、基板200がカバー部材210の下方に位置するように、基板200がステージ17にローディングされてもよい。光EL3の伝搬方向に沿って第1表面200aの逆側に位置する基板200の第2表面200bがステージ17に対向するように、基板200がステージ17にローディングされてもよい。第1表面200aがステージ17に対向しないように、基板200がステージ17にローディングされてもよい。ステージ17から見て、基板200とカバー部材210とがこの順番に配置されるように、基板200がステージ17にローディングされてもよい。この場合には、デバイス製造装置1は、カバー部材210及びCNT分散液LQを介して、光EL3を第1表面200aに照射する。つまり、光EL3は、カバー部材210及びCNT分散液LQを透過して、第1表面200aに到達する。
尚、図8(a)に示すように基板200がローディングされる場合には、カバー部材21及び壁部材220のうちの少なくとも一方が形成されていなくてもよい。つまり、CNT分散液LQが単に第1表面200aに供給されていてもよい。
或いは、図8(b)に示すように、基板200がカバー部材210の上方に位置するように、基板200がステージ17にローディングされてもよい。第1表面200aがステージ17に対向するように、基板200がステージ17にローディングされてもよい。ステージ17から見て、カバー部材210と基板200とがこの順番に配置されるように、基板200がステージ17にローディングされてもよい。この場合には、デバイス製造装置1は、基板200を介して、光EL3を基板200の第1表面200aに照射する。言い換えれば、デバイス製造装置1は、カバー部材210及びCNT分散液LQを介することなく、光EL3を基板200の第1表面200aに照射する。つまり、光EL3は、光EL3の伝搬方向に沿って第1表面200aの逆側に位置する基板200の第2表面200bから基板200の内部に侵入し、基板200を透過して、基板200の第1表面200aに到達する。
尚、図8(b)に示すように基板200がローディングされる場合には、カバー部材210形成されていなくてもよい。この場合には、ステージ17がカバー部材21として用いられてもよい。
その後、コントローラ19は、基板200上での複数のキャリア形成領域201の位置に応じて、複数のミラー要素141の状態を制御する。この場合、空間光変調器14は、コントローラ19の制御下で、複数のミラー要素141の状態に応じた第1変調パターンで、光EL2を空間変調する。つまり、空間光変調器14は、コントローラ19の制御下で、複数のキャリア形成領域201の形成位置に応じた第1変調パターンで、光EL2を空間変調する。その結果、第1変調パターンで空間変調された光EL3によってキャリア形成領域201の少なくとも一部を含む露光対象領域203が露光される(図6のステップS23)。このため、複数のキャリア形成領域201の形成位置に応じた第1変調パターンは、露光対象領域203の形成位置に応じた第1変調パターンであるとも言える。
各露光対象領域203は、図9(a)に示すように、各露光対象領域203に対応するキャリア形成領域201と一致する領域であってもよい。或いは、各露光対象領域203は、図9(b)に示すように、各露光対象領域203に対応するキャリア形成領域201の一部と一致する領域であってもよい。例えば、キャリア形成領域201の形状が長手方向(図9(b)のY軸方向)に延びる矩形である場合には、露光対象領域203は、短手方向(図9(b)X軸方向)に沿ったキャリア形成領域201の中心(或いは、中心付近)を通って長手方向に沿って延びる領域であってもよい。一方で、キャリア非形成領域202は、光EL3によって露光されない。但し、キャリア非形成領域202は、相対的に弱い強度(例えば、後述するようにカーボンナノチューブCNTを付着させることができない強度)の光EL3によって露光されてもよい。或いは、露光対象領域203は、図示しないものの、各露光対象領域203に対応するキャリア形成領域201を包含する領域であってもよい。
図10(a)に示すように、コントローラ19は、各露光対象領域203の全体に同時に光EL3を照射するように、空間光変調器14を制御してもよい。つまり、コントローラ19は、各露光対象領域203の全体が光EL3で同時に露光されるように、空間光変調器14を制御してもよい。この場合、光EL3が照射される領域(図10(a)中のハッチング領域参照)と露光対象領域203とが一致する。
更に、露光領域ELA内に複数の露光対象領域203が含まれる場合には、コントローラ19は、露光領域ELA内の複数の露光対象領域203の全てにまとめて同時に光EL3を照射するように、空間光変調器14を制御してもよい。或いは、コントローラ19は、露光領域ELA内の複数の露光対象領域203に順に光EL3を照射する(例えば、少なくとも一つの露光対象領域203毎に光EL3を照射する)ように、空間光変調器14を制御してもよい。
或いは、図10(b)に示すように、コントローラ19は、各露光対象領域203を構成する複数の領域部分に光EL3を順次照射するように、空間光変調器14を制御してもよい。つまり、コントローラ19は、各露光対象領域203が光EL3で部分的に順次走査露光されるように、空間光変調器14を制御してもよい。例えば、図10(b)に示すように、コントローラ19は、露光対象領域203上に光EL3の集光スポットSPが形成されるように、空間光変調器14を制御してもよい。その後、コントローラ19は、集光スポットSPが露光対象領域203上を移動する(走査する)ように、空間光変調器14を制御してもよい。
更に、露光領域ELA内に複数の露光対象領域203が含まれる場合には、コントローラ19は、露光対象領域203を光EL3で部分的に順次走査露光する動作が、複数の露光対象領域203で同時に行われるように、空間光変調器14を制御してもよい。例えば、コントローラ19は、露光領域ELA内の複数の露光対象領域203に複数の集光スポットSPが夫々形成されると共に、複数の集光スポットSPが同時に移動するように、空間光変調器14を照射してもよい。或いは、コントローラ19は、コントローラ19は、露光対象領域203を光EL3で部分的に順次走査露光する動作が、複数の露光対象領域203を対象に順次行われる(例えば、少なくとも一つの露光対象領域203毎に順次行われる)ように、空間光変調器14を制御してもよい。
尚、各露光対象領域203が光EL3で部分的に順次走査露光される場合には、空間光変調器14が集光スポットSPを移動させることに加えて又は代えて、集光スポットSPが基板200に対して相対的に移動するようにステージ17が移動してもよい。
露光対象領域203に光EL3が照射されると、後に実験結果を参照しながら説明するように、カーボンナノチューブCNTは、露光対象領域203を中心とする所定領域(或いは、露光対象領域203)に集まってくる。従って、露光対象領域203を中心とする所定領域(或いは、露光対象領域203)がキャリア形成領域201と一致するように露光対象領域203が設定されれば、カーボンナノチューブCNTがキャリア形成領域201上に集まってくる。以下では、露光対象領域203を中心とする所定領域(或いは、露光対象領域203)がキャリア形成領域201と一致するものとする。
露光対象領域203に光EL3が照射される時間が長くなるほど、キャリア形成領域201にはより多くのカーボンナノチューブCNTが集まる。従って、コントローラ19は、キャリアCを形成するために必要な量のカーボンナノチューブCNTがキャリア形成領域201上に集まるまで露光対象領域203に光EL3が照射されるように、空間光変調器14を制御する。その結果、キャリア形成領域201には、キャリアCを形成するために必要な量のカーボンナノチューブCNTが集まる(言い換えれば、堆積又は集積する)。
キャリア形成領域201に集められたカーボンナノチューブCNTは、基板200との間の分子間力及び摩擦力によって、実質的に基板200に付着している。従って、カーボンナノチューブCNTが集められたキャリア形成領域201(或いは、露光対象領域203)に光EL3が照射されなくなったとしても、キャリア形成領域201には、集められたカーボンナノチューブCNTが付着し続ける。一方で、キャリア非形成領域202が光EL3によって露光されないがゆえに、キャリア非形成領域202にカーボンナノチューブCNTが集まることは殆どない。
カーボンナノチューブCNTが分散している所定領域に向けて光EL3を照射した場合において、所定領域のうち当該所定領域上での光EL3の強度が大きく変化する領域部分に集まるカーボンナノチューブCNTの量が、所定領域のうちその他の領域部分に集まるカーボンナノチューブCNTの量よりも多くなる。具体的には、図11の上側のグラフに示すように、(i)所定領域内の位置P1から位置P2の間にある領域部分#1に、相対的に高い強度の光EL3を照射し、(i)所定領域内の位置P2から位置P3の間にある領域部分#2に、照射位置が位置P2から位置P3に向かうにつれて強度が低くなっていく光EL3を照射し、(iii)所定領域内の位置P3から位置P4の間にある領域部分#3に光EL3を照射しない場合を想定する。この場合には、図11の下側のグラフに示すように、領域部分#2に集まるカーボンナノチューブCNTの積量は、領域部分#1に集まるカーボンナノチューブCNTの量及び領域部分#3に集まるカーボンナノチューブCNTの量よりも多くなる。
このため、図12に示すように、コントローラ19は、キャリア形成領域201(或いは、露光対象領域203、以下本段落において同じ)上において強度が大きく変化する光EL3を基板200に照射するように、空間光変調器14を制御してもよい。言い換えれば、コントローラ19は、キャリア形成領域201上における光EL3の強度の変化率がキャリア非形成領域202上における光EL3の強度の変化率よりも大きくなるように、空間光変調器14を制御してもよい。例えば、図12に示すように、コントローラ19は、光EL3の照射位置がキャリア形成領域201の端部からキャリア形成領域201の中心に向かうにつれて強度が単調に増加する又は減少する光EL3を基板200に照射するように、空間光変調器14を制御してもよい。或いは、例えば、コントローラ19は、光EL3の照射位置がキャリア形成領域201の一方の端部から他方の端部に向かって強度が単調に増加する又は減少する光EL3を基板200に照射するように、空間光変調器14を制御してもよい。その結果、キャリア形成領域201には、カーボンナノチューブCNTがより効率的に集められる。
その後、基板200がデバイス製造装置1から取り出される。その後、基板200(特に、カーボンナノチューブCNTが集められたキャリア形成領域201が設定されている第1表面200a)が、洗浄液(例えば、水)によって洗浄される(図6のステップS24)。ここで、上述したように、露光対象領域203に光EL3が照射されなくなったとしても、キャリア形成領域201には、分子間力及び摩擦力によって、カーボンナノチューブCNTが付着し続ける。従って、図13(a)及び図13(b)に示すように、基板200が洗浄された場合であっても、キャリア形成領域201には、分子間力及び摩擦力によって、カーボンナノチューブCNTが付着し続ける。一方で、キャリア非形成領域202には、カーボンナノチューブCNTが付着していない。従って、図13(a)及び図13(b)に示すように、基板200が洗浄された場合には、キャリア非形成領域202には、カーボンナノチューブCNTが存在することは殆どない。
その後、基板200が乾燥される(図6のステップS24)。例えば、CNT分散液LQ及び洗浄水を構成する液体が蒸発させられる。その結果、図14(a)及び図14(b)に示すように、キャリア形成領域201に集められたカーボンナノチューブCNTによって、キャリア形成領域201にキャリアCが形成される。
尚、基板200が洗浄及び乾燥されるタイミングで、CNT分散液LQを保持するために基板200上に形成されたカバー部材210及び壁部材220が除去されてもよい。
以上説明したように、本実施形態のデバイス製造装置1は、電界効果トランジスタFETを製造することができる。特に、本実施形態のデバイス製造装置1は、電界効果トランジスタFETを構成するキャリアCを、基板200上に形成することができる。
デバイス製造装置1は、光EL3を用いて、キャリア形成領域201にカーボンナノチューブCNTを集めて付着させることで、キャリアCを形成する。このため、デバイス製造装置1は、ナノメートルサイズのカーボンナノチューブCNTを用いた電界効果トランジスタFETを好適に製造することができる。更には、デバイス製造装置1は、各カーボンナノチューブCNTを光トラップ力で個別に捕捉し且つ捕捉した各カーボンナノチューブCNTを移動させることでキャリア形成領域201に集めなくてもよい。つまり、デバイス製造装置1は、露光対象領域203に光EL3を照射すれば、キャリア形成領域201にカーボンナノチューブCNTを集めて付着させることができる。従って、デバイス製造装置1は、比較的容易に、カーボンナノチューブCNTから構成されるキャリアCを形成することができる。
デバイス製造装置1は、CNT分散液LQを介して光EL3を照射することで、カーボンナノチューブCNTから構成されるキャリアCを形成することができる(図8(a)参照)。このため、CNT分散液LQを介することなく光EL3が照射される場合と比較して、より多くのカーボンナノチューブCNTが光EL3の伝搬経路上に分布することになる。従って、デバイス製造装置1は、より多くのカーボンナノチューブCNTを集めることで、キャリアCを形成することができる。或いは、キャリアCを構成するために必要な量のカーボンナノチューブCNTを集めるために要する時間が短縮されるため、デバイス製造装置1は、キャリアCを効率的に形成することができる。
デバイス製造装置1は、CNT分散液LQを介することなく光EL3を照射することで、カーボンナノチューブCNTから構成されるキャリアCを形成することができる(図8(b)参照)。このため、CNT分散液LQを光EL3が通過することに起因した光EL3の減衰が防止される。従って、デバイス製造装置1は、相対的に高強度な光EL3を照射することで、キャリアCを効率的に形成することができる。
尚、図6から図14(b)を用いて説明したキャリアCの形成方法は一例である。従って、図6から図14(b)に示すキャリアCの形成方法の少なくとも一部が適宜改変されてもよい。以下、キャリアCの形成方法の少なくとも一部の改変の例について説明する。
デバイス製造装置1は、フォトリソグラフィ法を用いて基板200上にデバイスパターンを形成するための露光と同一のタイミングで、露光対象領域203に光EL3を照射してもよい。つまり、デバイス製造装置1は、キャリア形成領域201の形成位置に応じた第1変調パターン及びデバイスパターンに応じた第2変調パターンの双方を含む第3変調パターンで空間変調された光EL3で、基板200を露光してもよい。この場合、デバイス製造装置1は、デバイスパターンを形成する工程を流用して、キャリアCを形成することができる。このため、キャリアCを形成する工程の簡略化(短縮化)が実現される。尚、デバイスパターンは、例えば、電界効果トランジスタFETを構成する任意の構造物(例えば、素子、電極又は配線)に対応するデバイスパターンであってもよい。デバイスパターンは、基板200上に形成され且つ電界効果トランジスタFETとは異なる任意の回路素子を構成する任意の構造物に対応するデバイスパターンであってもよい。
コントローラ19は、検出器18の検出結果に基づいて、カーボンナノチューン部CNTがキャリア形成領域201に集められているか否か(或いは、付着しているか否か)を判定してもよい。例えば、検出器18がラマン分光計である場合には、コントローラ19は、ラマン散乱光を計測する検出器18の検出結果(つまり、ラマン散乱光の検出結果)に基づいて、カーボンナノチューブCNTの位置を特定することができる。その結果、コントローラ19は、カーボンナノチューン部CNTがキャリア形成領域201に集められているか否か(或いは、付着しているか否か)を判定することができる。
デバイス製造装置1は、ソース電極S及びドレイン電極Dの夫々とキャリアCとを固着させてもよい。具体的には、ソース電極SとキャリアCとが接触する位置において、ソース電極S及びキャリアCの双方と接触するように光硬化樹脂が形成される。更に、ドレイン電極DとキャリアCとが接触する位置において、ドレイン電極D及びキャリアCの双方と接触するように光硬化樹脂が形成される。その後、デバイス製造装置1は、光硬化樹脂に対して、光EL3を照射する。具体的には、コントローラ19は、光硬化樹脂220の形成位置に応じて、複数のミラー要素141の状態を制御する。この場合、空間光変調器14は、光硬化樹脂220の形成位置に応じた第4変調パターンで、光EL2を空間変調する。従って、第4変調パターンで空間変調された光EL3が、光硬化樹脂220に照射される。その結果、光EL3の照射に起因して、光硬化樹脂が硬化する。このため、ソース電極S及びドレイン電極Dの夫々とキャリアCとが固着される。
この場合、デバイス製造装置1は、同一の空間光変調器14を用いて、カーボンナノチューブCNTを集めて付着させる動作と、キャリアCの固着動作とを行うことができる。このため、カーボンナノチューブCNTを集めて付着させるための装置とキャリアCを固着するための装置とを別個独立に用意しなくてもよい。このため、デバイス製造装置1を用いて電界効果トランジスタFETを製造する場合には、装置コストの低減が可能である。
光硬化樹脂の形成位置は、制御情報として、メモリに格納されていてもよい。この場合、コントローラ19は、制御情報に基づいて、光硬化樹脂の形成位置に応じた第3変調パターンを決定してもよい。空間光変調器14は、コントローラ19が決定した第3変調パターンで、光EL2を空間変調してもよい。
デバイス製造装置1は、第4変調パターンで空間変調した光EL3を、光硬化樹脂(つまり、ソース電極S及びドレイン電極Dの夫々とキャリアCとの固着位置)に照射することに代えて、任意の処理を施す位置に照射してもよい。この場合、空間光変調器14は、任意の処理を施す位置や任意の処理の種類等に応じた第5変調パターンで、光EL2を空間変調する。例えば、光EL3の強度が相対的に大きい場合には、光EL3の照射によってカーボンナノチューブCNTの特性が変わることがある。例えば、カーボンナノチューブCNTのうち光EL3が照射された部分が、光EL3の照射によって燃焼することがある。この場合、デバイス製造装置1は、光EL3の照射によるカーボンナノチューブCNTの燃焼を利用して、カーボンナノチューブCNTを切断してもよい。例えば、デバイス製造装置1は、カーボンナノチューブCNTの切断位置に光EL3を照射することで、切断位置においてカーボンナノチューブCNTを切断してもよい。この場合、空間光変調器14は、カーボンナノチューブCNTの切断位置に応じた第5変調パターンで、光EL2を空間変調する。或いは、デバイス製造装置1は、光EL3の照射によるカーボンナノチューブCNTの燃焼を利用して、不要なカーボンナノチューブCNTを燃焼(つまり、基板200上より除去)してもよい。
キャリアCは、カーボンナノチューブCNTに加えて又は代えて、その他のナノ物質(典型的には、カーボンナノ物質)から構成されていてもよい。その他のナノ物質の形状は、カーボンナノチューブの形状のように長手形状又は棒状であってもよい。その他のナノ物質の形状は、長手形状又は棒状とは異なる任意の形状(例えば、シート状、板状、球状、円形状又は矩形形状等)であってもよい。その他のナノ物質の一例として、カーボンナノホーン、カーボンナノコイル、カーボンマイクロコイル、カーボンファイバ、カーボンナノオニオン、フラーレン、及び、カーボンナノカプセル等があげられる。この場合であっても、デバイス製造装置1は、カーボンナノチューブCNTと同様に、ナノ物質をキャリア形成領域201に配置することができる。
キャリアCに加えて又は代えて、電界効果トランジスタFETを構成するその他の構造物が、カーボンナノチューブCNT(或いは、その他のナノ物質)から構成されていてもよい。その他の構造物は、例えば、複数のソース電極S、複数のドレイン電極D及び複数のゲート電極Gのうちの少なくとも一つである。この場合、デバイス製造装置1は、キャリアCを構成するカーボンナノチューブCNTと同様に、電界効果トランジスタFETを構成するその他の構造物を所望領域に配置することができる。
上述の実施形態では、デバイス製造装置1は、基板200の表面に沿った又は平行な方向に延びるカーボンナノチューブCNTを配置している。しかしながら、デバイス製造装置1は、基板200の表面に垂直な方向に延びるカーボンナノチューブCNTを配置してもよい。
光源11は、光EL1として、赤外光とは異なる任意の光を射出してもよい。例えば、光源11は、波長が193nmであるArFエキシマレーザ光又は波長が248nmであるKrFエキシマレーザ光等の遠紫外光(DUV光:Deep Ultra Violet光)を射出してもよい。光源11は、F2レーザ光(波長157nm)等の真空紫外光(VUV光:Vacuum Ultra Violet光)を射出してもよい。光源11は、所望の波長を有する任意のレーザ光又はその他任意の光(例えば、水銀ランプから射出される輝線であり、例えば、g線、h線若しくはi線等)を射出してもよい。光源11は、米国特許第7,023,610号明細書に開示されているように、DFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(或いは、エルビウムとイットリウムの双方)がドープされたファイバアンプで増幅すると共に非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換することで得られる高調波を射出してもよい。光源11は、波長が100nm以上の光に限らず、波長が100nm未満の光を射出してもよい。例えば、光源11は、軟X線領域(例えば、5から15nmの波長域)のEUV(Extreme Ultra Violet)光を射出してもよい。露光装置1は、光源11に加えて又は代えて、光EL1として用いることが可能な電子線ビームを射出する電子線ビーム源を備えていてもよい。露光装置1は、光源11に加えて又は代えて、YAGレーザ若しくは固体レーザ(半導体レーザ等)から出力されるレーザ光の高調波を生成する固体パルスレーザ光源を備えていてもよい。固体パルスレーザ光源は、光EL1として用いることが可能な波長が193nm(これ以外の種々の波長、例えば213nm、266nm、355nm等の波長が可能)でパルス幅1ns程度のパルスレーザ光を1〜2MHz程度の周波数で射出可能である。露光装置1は、光源11に加えて又は代えて、光EL1として用いることが可能な任意のエネルギビームを射出するビーム源を備えていてもよい。
(5)カーボンナノチューブをカバーガラスに付着させる実験の結果
続いて、図15から図23を参照しながら、光の照射によってカーボンナノチューブをカバーガラスに付着させる実験の結果について説明する。尚、この実験は、本願発明者等によって行われた。
図15は、実験に用いた実験装置3の構造を示す断面図である。実験装置3は、ソーラボ社製の光ピンセット(光トラップ)キットを流用した。図15に示すように、実験装置3は、光源31と、レーザ光学系32と、ハーフミラー33と、油浸対物レンズ34と、ステージ35と、観察器36と、観察光学系37とを備える。光源31は、ファイバ出力型のバタフライレーザダイオード(PL975P350J−FT900−APC)である。光源31は、975nmの波長のレーザ光ELを、最大300mWの出力で出射可能である。レーザ光学系32は、光源31が出射したレーザ光ELをハーフミラー33に導く。ハーフミラー33は、レーザ光学系32から入射するレーザ光ELを、油浸対物レンズ34の入射面に向けて反射する。油浸対物レンズ34は、油浸対物レンズ34の出射面とステージ35上のサンプル40との間に油浸空間34aを形成する。油浸対物レンズ34は、サンプル40にレーザ光ELを集光する。ステージ35は、サンプル40を搭載する。観察器36は、ハーフミラー33及び観察光学系37を介して、サンプル40を観察する。
サンプル40は、ステージ35上に搭載されるスライドガラス41と、スライドガラス41上に貼り付けられ且つ中央に穴があけられたゴムシート42と、ゴムシート42を覆うカバーガラス43と、スライドガラス41、ゴムシート42及びカバーガラス43によって囲まれた空間に密封されたCNT分散液44とを備える。サンプル40は、カバーガラス43が油浸空間34aに面するように、ステージ35上に搭載した。
CNT分散液44は、以下の手順で製造された。まず、1wt%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS:界面活性剤)を含む溶媒10mlに対して、4mgのカーボンナノチューブを加えた。カーボンナノチューブは、CoMoCAT法で合成された単層カーボンナノチューブ(シグマアルドリッチジャパン社製のCoMoCAT724777)である。その後、得られた溶液を懸濁した。その後、溶液を高圧噴射することで溶液内においてカーボンナノチューブを分散させる高圧分散処理を行った。高圧分散処理は、スギノマシン社製のStar Burst minimoを用いて行った。噴射圧は240MPaに設定し、噴射回数は30回であった。その後、冷水で溶液を冷却しながら、250mWの出力の超音波を溶液に5時間照射した。超音波の照射には、コスモバイオ社製のナノラプターを用いた。その後、超遠心分離器を用いて、10000rpmの回転速度で溶液を15分間遠心分離した。その後、溶液の上澄み液を80%回収した。回収した上澄み液を、CNT分散液44として用いた。
このような実験装置3を用いてサンプル40にレーザ光ELを照射した。この際、CNT分散液44に面するカバーガラス43の上面(図15中の+Z軸側の面)にレーザ光ELが集光されるように、ステージ35のZ軸方向に沿った位置を調整した。また、光源31の出力は、100mWに設定した。このような前提でサンプル40にレーザ光ELを照射すると、レーザ光ELの照射開始から1秒も経過しないうちに、カバーガラス43の上面に何らかの物質が付着する様子が、観察器36によって観察された。更に、レーザ光ELを照射したまま、ステージ35をXY平面に沿って移動させた。移動速度は、厳密に一定ではないものの、概ね2mm/sであった。その結果、図16に示すように、カバーガラス43の上面には、ステージ35の移動軌跡に合致した軌跡に沿って何らかの物質が付着する様子が観察された。尚、物質が付着した領域の径(軌跡に交わる方向に沿ったサイズ)は、概ね100μmであった。一方で、カバーガラス43上でのレーザ光ELのスポットの径は、概ね1μmであった。つまり、本実験では、レーザ光ELのスポットが移動した領域を中心とする所定領域に、物質が付着した様子が観察された。
カバーガラス43上に付着した物質がどのような物質であるかを評価するために、カバーガラス43を純水で洗浄した後、当該物質のラマンスペクトルを観察した。その結果、図17に示すラマンスペクトルが観察された。尚、図17には、CNT分散液44のラマンスペクトルも合わせて描画されている。図17に示すように、付着した物質のラマンスペクトルには、G−Bandのスペクトルが含まれていた。G−Bandは、カーボンナノチューブの基本構造であるグラフェンシートに特有のC−Cの振動構造に特有のスペクトルである。更に、カーボンナノチューブの振動構造は、カーボンナノチューブの円周方向に沿った振動成分と、カーボンナノチューブの円筒方向(長手方向)に沿った振動成分とを含んでいることが知られている。図17は、G−Bandにこれら2つの成分に相当する2つのスペクトルが存在することを示している。更に、図17に示すように、付着した物質のラマンスペクトルには、RBM(Radial Breathing Mode)のスペクトルが含まれていた。RBMは、カーボンナノチューブの直径方向に沿った振動成分に特有のスペクトルである。このため、図17に示すラマンスペクトルを見る限りは、カバーガラス43上に付着した物質は、カーボンナノチューブであることが明らかである。
尚、図18は、カバーガラス43を洗浄する前の時点でのカバーガラス43上に付着した物質の観察器36による観察像(図18上部)及びSEM(Scanning Electron Microscope)による観察像(図18下部)を示す。一方で、図19は、カバーガラス43を洗浄した後の時点でのカバーガラス43上に付着した物質の観察器36による観察像(図19下部)及びSEMによる観察像(図19下部)を示す。図18及び図19に示すように、カバーガラス43を洗浄したとしても、カバーガラス43上にはカーボンナノチューブが付着し続けたことが分かる。一方で、図18及び図19に示すように、カバーガラス43の洗浄により、バンドル化したカーボンナノチューブの径(つまり、カーボンナノチューブのバンドル構造体の径)が、概ね20nmから60nmから、概ね10nmから40nmにまで小さくなっていることが分かる。これは、カバーガラス43の洗浄により、バンドル構造体の表面から界面活性剤(SDS)が剥離したことに起因していると考えられる。
カーボンナノチューブは、上述したように電子デバイスを構成する部品として使用可能である。用いられる。このため、カーボンナノチューブが電子デバイスを構成する部品として使用される場合には、カバーガラス43に付着したカーボンナノチューブの電気特性は、電子デバイスを構成する部品として使用することができる程度に良好であることが好ましい。そこで、カバーガラス43上に付着したカーボンナノチューブの電気特性の一例であるIV特性(電流−電圧特性)を測定した。IV特性を測定するために、図20(a)に示すように、付着したカーボンナノチューブの点A及び点Bの夫々にプローブを接触させると共に、当該プローブを介して点Aと点Bとの間に0Vから10Vの間で変動する電圧を印加した。電圧の印加と合わせて、プローブを介して、点Aと点Bとの間に流れる電流を測定した。その結果、図20(b)に示すIV特性が得られた。図20(b)に示すように、カバーガラス43に付着したカーボンナノチューブのIV特性は、付着したカーボンナノチューブがオーミックコンタクトによって相互に接触していることを示している。つまり、カバーガラス43に付着したカーボンナノチューブの電気特性は、電子デバイスを構成する部品として使用することができる程度に良好であることが分かる。
尚、図20(b)は、カバーガラス43を洗浄した後の時点でのIV特性に加えて、カバーガラス43を洗浄する前の時点でのIV特性をも示している。これら2つのIV特性を見る限りは、カバーガラス43の洗浄によりIV特性が向上していることが分かる。このような洗浄によるIV特性の向上は、カバーガラス43の洗浄によってカーボンナノチューブから界面活性剤が剥離したことに起因していると考えられる。
上に述べたラマンスペクトル及びIV特性の測定に加えて、カバーガラス43の厚み方向(図15のZ軸方向)におけるカーボンナノチューブの状態を更に評価するために、カバーガラス43の厚み方向におけるカーボンナノチューブの像(断層像)を撮影した。断層像は、走査透過電子顕微鏡(STEM:Scanning Transmission Electron Microscope)を用いて撮影した。撮影結果は、図21(a)及び図21(b)に示す。図21(a)及び図21(b)に示すように、本実験では、カバーガラス43に密着した状態で集まったカーボンナノチューブのみならず、カバーガラス43から浮いた状態で(つまり、ブリッジ状に)集まったカーボンナノチューブもまた観察された。カーボンナノチューブをカバーガラス43に強固に付着させるためには、カーボンナノチューブは、カバーガラス43に密着した状態で集まることが好ましいと想定される。そこで、カバーガラス43に密着した状態で集まったカーボンナノチューブとカバーガラス43から浮いた状態で集まったカーボンナノチューブとの違いを評価するために、EDS元素分析を行った。具体的には、カーボンナノチューブがカバーガラス43に密着している領域及びカーボンナノチューブがカバーガラス43から浮いている領域の夫々において、エネルギー分散型X線分光器を用いて、カバーガラス43の厚み方向に沿ったEDS(Energy Dispersive X−ray Spectrometer)スペクトルを観察した。図22は、カーボンナノチューブがカバーガラス43に密着している領域において観察されたEDSスペクトルを示す。図23は、カーボンナノチューブがカバーガラス43から浮いている領域において観察されたEDSスペクトルを示す。図22に示すように、カーボンナノチューブがカバーガラス43に密着している領域では、カバーガラス43とカーボンナノチューブとの間の界面に、ナトリウム元素に相当するスペクトルのピークが観察された。一方で、図23に示すように、カーボンナノチューブがカバーガラス43から浮いている領域では、カバーガラス43とカーボンナノチューブとの間の界面に、ナトリウム元素に相当するスペクトルのピークが観察されなかった。このため、カーボンナノチューブとカバーガラス43との間の界面にカーボンナノチューブとカバーガラス43とをつなぐ物質(本実験では、ナトリウム又はナトリウムを含む物質)が存在すれば、カーボンナノチューブとカバーガラス43との密着性が高まることが分かる。
ここで、EDSスペクトルにおいて観察されたナトリウムの由来について検討するに、まず、カバーガラス43は、ナトリウムを含んでいる。しかしながら、本実験で用いた100mW程度の出力のレーザ光ELでは、カバーガラス43からナトリウムが溶け出すほどにカバーガラス43が高温になることはない。従って、EDSスペクトルにおいて観察されたナトリウムの由来は、カバーガラス43ではないと推測される。そうすると、EDSスペクトルにおいて観察されたナトリウムの由来は、CNT分散液44に含まれるドデシル硫酸ナトリウム(つまり、界面活性剤)である可能性が高いと推測される。従って、本実験結果を見る限りは、CNT分散液44に界面活性剤が添加される場合には、CNT分散液44に界面活性剤が添加されない場合と比較して、カーボンナノチューブとカバーガラス43との密着性が高まると想定される。
このため、本実験結果を見る限りは、上述したデバイス製造装置1がカーボンナノチューブCNTをキャリア形成領域201に配置する際には、CNT分散液LQに界面活性剤が添加されることが好ましい。但し、CNT分散液LQに界面活性剤が添加されていなくても、デバイス製造装置1がカーボンナノチューブCNTをキャリア形成領域201に配置することができることに変わりはない。
或いは、CNT分散液LQに界面活性剤が添加されることに加えて又は代えて、上述したデバイス製造装置1がカーボンナノチューブCNTをキャリア形成領域201に配置する際に、基板200の第1表面200a上に、カーボンナノチューブCNTと基板200とをつなぐ物質(いわゆる、カップリング剤)が予め塗布されていてもよい。この場合であっても、カーボンナノチューブCNTと基板200との間の界面にカーボンナノチューブCNTと基板200をつなぐ物質が存在することになる。このため、カーボンナノチューブとカバーガラス43との密着性が高まる。尚、カーボンナノチューブCNTと基板200とをつなぐ物質の一例として、シランカップリング剤(例えば、アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)等)や、テトラシアノキノジメタン(TCNQであり、例えば、フッ素化TCNQであるF4−TCNQ等)があげられる。
尚、本願発明者等は、界面活性剤(ドデシル硫酸ナトリウム)が添加されていないCNT分散液を用いた実験も行っている。説明の簡略化のためにこの実験の結果についての詳細な説明は省略するものの、この実験においても、カバーガラス43上にカーボンナノチューブが付着する様子が観察された。但し、界面活性剤が添加されていないCNT分散液を用いて付着したカーボンナノチューブの電気特性よりも、界面活性剤が添加されたCNT分散液44を用いて付着したカーボンナノチューブの電気特性の方が良好であった。但し、界面活性剤が添加されていないCNT分散液を用いて付着したカーボンナノチューブが、電子デバイスを構成する部品として使用することができることに変わりはない。
(6)デバイス製造装置の変形例
(6−1)第1変形例のデバイス製造装置1a
続いて、図24を参照しながら、第1変形例のデバイス製造装置1aを説明する。図24は、第1変形例のデバイス製造装置1aの構造の一例を示す側面図である。
図24に示すように、デバイス製造装置1aは、上述したデバイス製造装置1と比較して、空間光変調器14に代えて、マスク24を備えていると言う点で異なっている。デバイス製造装置1aのその他の構成要件は、デバイス製造装置1のその他の構成要件と同一であってもよい。
マスク24には、キャリア形成領域201に応じたマスクパターンが形成されている。具体的には、マスク24には、マスク24を通過した光EL3がキャリア形成領域201に照射されるように、光EL2の少なくとも一部を遮光し且つ光EL2の少なくとも他の一部を通過させるマスクパターンが形成されている。このため、マスク24を透過した光EL3は、上述した空間光変調器14によって空間変調された光EL3と同様に、キャリア形成領域201に照射される。従って、デバイス製造装置1aもまた、上述したデバイス製造装置1が享受することが可能な効果と同様の効果を享受することができる。加えて、マスク24が使用されるがゆえに、空間光変調器14が使用される場合と比較して、露光領域ELAを大きくすることができる。このため、キャリアCの形成効率が向上する。つまり、電界効果トランジスタFETの製造に関するスループットが向上する。
但し、マスク24に形成されているマスクパターンが固定されているため、第1変形例では、デバイス製造装置1aは、各キャリア形成領域201を構成する複数の領域部分に光EL3を順次照射することはできない(図10(b)参照)。
(6−2)第2変形例のデバイス製造装置1b
続いて、図25(a)及び図25(b)を参照しながら、第2変形例のデバイス製造装置1bを説明する。図25(a)は、第2変形例のデバイス製造装置1bの構造の一例を示す側面図である。図25(b)は、第2変形例のデバイス製造装置1bが備える光学素子34の構造を、光EL2の経路と共に示す断面図である。
図25(a)に示すように、デバイス製造装置1bは、上述したデバイス製造装置1と比較して、空間光変調器14に代えて、光学部材34を備えていると言う点で異なっている。更に、デバイス製造装置1bは、上述したデバイス製造装置1と比較して、ハーフミラー15及び投影光学系16を備えていなくてもよいと言う点で異なっている。更に、デバイス製造装置1bは、上述したデバイス製造装置1と比較して、照明光学系12からの光EL2を光学部材34に向けて反射するミラー35を備えていてもよいと言う点で異なっている。デバイス製造装置1bのその他の構成要件は、デバイス製造装置1のその他の構成要件と同一であってもよい。
光学部材34は、当該光学素子34に入射した光EL2を、キャリア形成領域201を照射可能な光EL3に変換する。光EL2を光EL3に変換するために、光学部材34は、光学素子を含んでいる。光学素子は、光EL2を反射可能な反射素子を含んでいてもよい。光学素子は、光EL2を透過可能な透過素子を含んでいてもよい。光学素子は、光EL2を屈折可能な屈折素子を含んでいてもよい。光学素子は、光EL2を遮断(遮光)可能な遮光素子を含んでいてもよい。
図25(b)は、光学部材34の構造の一例を示す。図25(b)に示すように、光学部材341は、第1光学素子341と、第2光学素子342と、第3光学素子343と、第4光学素子344とを含んでいてもよい。第1光学素子341は、光EL2を、光EL2−1と光EL2−2とに分岐する。第2光学素子342は、第1光学素子341から伝搬してくる光EL2−1を、第4光学素子344に向けて反射する。第3光学素子343は、第1光学素子341から伝搬してくる光EL2−2を、第4光学素子344に向けて反射する。特に、第3光学素子343は、コントローラ19の制御下で、第1光学素子341から伝搬してくる光EL2−2の特性(例えば、光EL2−2の位相や、強度や、反射角度等)を変えながら、光EL2−2を第4光学素子344に向けて反射する。このような第3光学素子343の一例として、例えば、DMD(Digital Mirror Device)があげられる。第4光学素子344は、入射する光EL2−1及びEL2−2を全反射させる全反射面(図25(b)中の右側の面)を含む。光EL2−1及びEL2−2が全反射することで、第4光学素子344の全反射面には、近接場光が発生する。第2変形例では、デバイス製造装置1bは、この近接場光を光EL3として用いる。従って、第2変形例では、第4光学素子344の全反射面が基板200に近接し且つ対向するように、光学部材34が配置される。
全反射面は、光EL2−1及びEL2−2を全反射している。このため、近接場光は、光EL2−1と光EL2−2とが干渉することで生ずるパターンを有する。デバイス製造装置1bは、第3光学素子343における光EL2−2の特性を変えることで、光EL2−1と光EL2−2との間の干渉態様を変えることができる。光EL2−1と光EL2−2との間の干渉態様が変わると、干渉によって生ずるパターン(つまり、近接場光が有するパターン)も変わる。従って、第3光学素子343は、コントローラ19の制御下で、近接場光が有するパターンがキャリア形成領域201に応じたパターンとなるように、光EL2−2の特性を変えてもよい。
このようなデバイス製造装置1bもまた、上述したデバイス製造装置1が享受することが可能な効果と同様の効果を享受することができる。
尚、デバイス製造装置1が近接場光を光EL3として用いない場合であっても、デバイス製造装置1は、光EL2を光EL3に変換可能な光学部材34を備えていてもよいことは言うまでもない。
また、上述の実施形態において、分子間力を利用して第2物体を第1物体に付着させてもよい。また、上述の実施形態において、静電力を利用して第2物体を第1物体に付着させてもよい。また、上述の実施形態において、表面力を利用して第2物体を第1物体に付着させてもよい。また、上述の実施形態において、電磁力を利用して第2物体を第1物体に付着させてもよい。また、上述の実施形態において、自然界の4つの力のうち重力を利用して第2物体を第1物体に付着させてもよい。また、上述の実施形態において、自然界の4つの力のうち電磁力を利用して第2物体を第1物体に付着させてもよい。また、上述の実施形態において、自然界の4つの力のうち弱い力を利用して第2物体を第1物体に付着させてもよい。また、上述の実施形態において、自然界の4つの力のうち強い力を利用して第2物体を第1物体に付着させてもよい。
上述の各実施形態の構成要件の少なくとも一部は、上述の各実施形態の構成要件の少なくとも他の一部と適宜組み合わせることができる。上述の各実施形態の構成要件のうちの一部が用いられなくてもよい。また、法令で許容される限りにおいて、上述の各実施形態で引用した全ての公開公報及び米国特許の開示を援用して本文の記載の一部とする。
本発明は、上述した実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う配置方法及び配置装置、並びに、デバイス製造方法及びデバイス製造方法もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。