JP6769872B2 - 代謝測定によるマススペクトル耐性判定 - Google Patents

代謝測定によるマススペクトル耐性判定 Download PDF

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Description

本発明は、抗生物質に対する微生物耐性を判定するためのマススペクトル方法に関する。
制定単位の「統一原子質量単位」(u) の代わりに、この文書では単位「ダルトン」を使用する。これは、「Bureau International des Poids et Mesures」による最新版 (第8版) の2006年文書「The International System of Units (SI)」で、原子質量単位と同等のものとして追加されている。これに記載されているように、ダルトンの追加は主に、キロダルトン、ミリダルトン、および同様の単位を使用できるようにするためになされたものである。
単純化のために、本文書では用語「ペプチド」のみが使用されるが、対象となる分子はタンパク質でもあり得る。従来技術では、軽量のペプチドから重いタンパク質への移行は滑らかであり、明確に区分されたものではない。
用語「微生物」は、本明細書で使用されるとき、例えば、細菌、単細胞真菌 (例えば酵母)、微小藻類および原生動物を含む微細な生物体を指す。単数形の「微生物」(「microorganism」または「microbe」)という語は、個々の微生物細胞、ならびに、遺伝学的に同一である微生物細胞の微生物株または単離物に使用される。複数形の「微生物(microbes)」は、分析下にある微生物細胞を意味する。
一般的な表現で使用されるように、用語「抗生物質」は、微生物感染症の治療のための薬理学的活性物質を意味する。
ペニシリンが最初の薬理学的抗生物質として使用されて以来、微生物株は、多様なタイプの抗生物質に対してさまざまなタイプの耐性を次第に発達させ、あるいは他の微生物から耐性を獲得する(すなわち、抗生物質の影響を弱めたり、完全に中和したりする性質を獲得する) ようになっている。一方で、残念なことに、耐性が頻繁に生じている。病院で発生する微生物は昨今、多くが耐性を有している。場合によっては、病院で通常使用される抗生物質に対して病院内で伝播する微生物の耐性を予測することが可能である。しかしながらこれは、病院外でかかった感染症には該当しない。
耐性判定に商業的に使用されている方法として、抗生物質を含む栄養培地での細菌成長ゾーンを検出する方法、または、抗生物質を含む液体培地で成長関連の不透明度変化を検出する方法は、時間がかかり、通常、1営業日を超える時間がかかる。しかしながら、微生物サンプルまたは微生物分離物の抗生物質耐性を迅速に判定することは非常に重要である。よって迅速な光学測定手法が開発されている。
特許文献1(V. M. Govorun and J. Franzen, 2006、英国特許第2438066 B号、米国特許第 8,293,496 B2号に対応、本明細書では以下「Govorun」と称する) では、微生物の耐性を判定するマススペクトル方法を開示しており、この方法では、抗生物質を加えた培地と加えていない培地とで培養した後、微生物のタンパク質プロファイルがマススペクトルで測定され、比較される。
特に、ベータラクタマーゼ(ペニシリンおよび関連物質) に対する耐性を検出するために、マススペクトル方法が開発されており、これは特許文献2(M. Kostrzewa et. al) および特許文献3に開示されている。これらは特定の基質の分解産物測定に基づくものであり、微生物の付近において、その抗生物質と同様である。
特許出願文書EP 13002450.8号 (K. Sparbier et al) およびEP 13002699.0号 (K. Sparbier and C. Lange) では更に、耐性を判定するマススペクトル方法が記述されており、この方法では、同位体標識された栄養成分の摂取、または、抗生物質存在下での微生物バイオマスの増加が測定される。同位体標識された栄養物の摂取、またはバイオマスの増加は、耐性があることを示す。これらの方法は特定の耐性タイプに限定されるものではなく、よって、ベータラクタマーに対する耐性のみを示すものではない。よって、これらの2つの出願文書は、本明細書に参照により援用される。またこれらは、一般的な耐性の問題と、特に耐性のマススペクトルによる判定の問題についての導入解説を含んでおり、迅速な耐性判定の重要性が説明されている。
これまでに、この2つの出願文書の方法が、それぞれ、異なる微生物種および異なる抗生物質について、最適な結果を生じることが見出されている。だが、よくあることだが、普遍的に適用可能な方法は(まだ) 利用可能にはなっていない。よって、耐性を判定するための更なる方法に対する明確なニーズが存在する。
独国特許第10 2006 021 493 B4号明細書 独国特許第10 2010 023 452 B4号明細書 独国特許出願公開第10 2011 012 060 A1号明細書
本発明の目的は、1つまたは複数の抗生物質に対する微生物の耐性を、確実かつ低コストで、かつ、最も重要なこととして迅速に判定することが可能な、マススペクトル方法および好適な合成培地を提供することである。
成長が速い、従って特に危険な病原体についての、耐性判定は、可能であれば、かかる時間を1時間未満とすべきである。
本発明は、抗生物質に対する微生物耐性のマススペクトルによる判定の方法を提供し、ここにおいて、微生物は、特定の濃度の抗生物質を含む培地で培養される。この方法は、培地の少なくとも1つの栄養成分が、培養中に減少するかどうか、あるいは、栄養成分の化学的変性変異体が新たに現われて増加しているかどうかを、マススペクトルにより判定することを含むことを特徴とする。栄養成分の減少、または栄養成分の化学的変性変異体の増加は、この特定の濃度での抗生物質に対する耐性を示す。化学的変性変異体は、メチル化、アシル化、アセチル化、酸化、または同様の反応により生成され得るが、特に、栄養成分の分解により生成され得る。新たな物質の出現とその増加は、通常、すでに存在する栄養成分の減少を測定するよりも容易である。
好ましい栄養成分はペプチドであり、この減少または化学的変性が判定される。具体的には、D-アミノ酸のコアを有するペプチドが使用され、このコアのみを含むペプチドの生成および増加が、マススペクトルで測定される。また、同位体標識されたアミノ酸からなるペプチドを使用することも可能であり、ここにおいて、培地中で長さが短くなった同位体標識ペプチドの生成が、マススペクトルで測定される。栄養成分の減少、または化学的変性変異体の増加は、所定量の参照物質を添加することにより判定することができる。化学的変性変異体の測定はしばしば、参照物質を必要としないが、あるいは、変性なしの栄養成分と比較して行うこともできる。培養が終わった後に、1つまたは複数の参照物質を所定量添加することができる。参照物質は好ましくは、D-アミノ酸からなるペプチドである。
一実施形態において、微生物は、抗生物質を含む第1培地中で予備培養した後、この予備培養した微生物を更に第2培地中で成長させる。次に、第2培地の栄養成分の分解、または、化学的変性変異体の増加が、マススペクトルで測定される。
更なる一実施形態において、微生物は、抗生物質と共に予備培養した後、更なる栄養成分が添加される。この栄養成分の分解、または、この栄養成分の化学的変性変異体の増加が、マススペクトルで測定される。この更なる栄養成分は好ましくはペプチドであり、この添加の直後に、分泌されたペプチダーゼに対する阻害剤を培地に添加する。
分析対象の微生物を分割して、これらを、抗生物質なしの第1培地と、抗生物質を含む第2培地とで同時に培養することができる。耐性の強度を判定するため、分析対象の微生物を、異なる濃度の抗生物質を含んだ複数の培地で培養することが、好ましい。微生物は更に、より多数の部分に分割して、これらを、抗生物質なしの培地と、さまざまなタイプの抗生物質をそれぞれさまざまな濃度で含んだ、対応する数の培地で、同時に培養することができる。
本発明は更に、本発明による方法に好適な栄養成分、特にD-アミノ酸のコアを含むペプチドを含む、合成培地を提供する。
本発明は、よって、上述の2つの出願文書とは対照的に、Govorunの方法によらない方法を提供する。本発明の目的はむしろ、微生物培養中の抗生物質の存在下における微生物周辺の環境において、例えば酵素的分解による、特定の栄養成分の減少、または特定の栄養成分の化学的変性変異体の増加を判定し、これにより、生存する微生物の代謝をマススペクトルによって判定するものである。よって、マススペクトル分析を行う対象は微生物ではなく、培地の成分である。マススペクトルで観察される、特殊な栄養成分および変性生成物は、本明細書において「インジケーター」と呼ばれる。これらは、抗生物質が存在しているとき、培養中の微生物の代謝が無傷の状態か、それとも損われているかを示すインジケーターである。
微生物はその環境から栄養成分を摂取する。これは部分的にはエネルギーを生成するためであり、また、部分的には微生物の内部構造に使用するための物質を合成するためである。タンパク質、脂質、および特に炭水化物が、微生物の栄養成分として用いられる。小さな分子は、さまざまなメカニズムの支援により、細胞壁から直接吸収され得る。より大きな分子については、分泌された酵素による外部的消化などの、より複雑な手段が用いられる。
代謝が無傷である場合、栄養成分は、酸化、アシル化、メチル化、またはアセチル化により変性され得る。
微生物が抗生物質の存在下、培地中で無傷の代謝を依然として有している限り、培養物中の少なくとも一部の栄養成分が減少するか、または変性形態で現われる。よって、好適に構成された培地中の好適に選択された栄養成分は、正常または異常な微生物代謝のインジケーターとして、マススペクトルで観測することができる。抗生物質により、代謝機能、ひいては生命機能が停止されると、少なくとも事前に分泌された酵素が引き続き触媒として作用していない場合は、インジケーターの減少または変性が本質的に停止する。事前に分泌された酵素については測定を行うことができる。抗生物質の存在下でインジケーターが減少し続けていない場合、また、変性形態がもはや増加しない場合は、微生物がこの抗生物質に対して感受性であることを示す。本発明は、培地中のこれらのインジケーターの減少、または培地中のこれらのインジケーターの変性形態の出現の、マススペクトル測定に基づく。
インジケーターは十分にイオン化し、マススペクトルで明瞭に識別でき、栄養物として微生物が優先的に摂取し、また存在量が多すぎない(よって、その減少を定量的に追跡することができる) ものであるべきである。また、インジケーターの化学的変性形態を容易に検出可能であるべきである。インジケーターの摂取または変性は、摂取が容易な過剰栄養に限定されるべきではない。例えば、インジケーターとしてペプチドが使用された場合、培地には、摂取がより容易なアミノ酸成分を含めるべきではない。
インジケーターの検出可能性は、特に、フラグメントイオン分析の能力を備えた質量分析計が使用される場合、同位体標識を用いることにより更に強化することができる。同位体標識されたインジケーターを使用する場合、インジケーターの細胞外酵素開裂も、マススペクトルで特に良好に観察することができる。それ以上分解不能であるような、所定の分解産物をもたらし、かつマススペクトルで特殊なインジケーターとして機能するような、インジケーターを合成することも可能である。
インジケーターの減少を定量するために、好適な参照物質を正確な量、添加する。微生物により分解も摂取もされない物質が、参照物質として使用することができる。例えば、インジケーターと類似であるが、インジケーターよりアミノ酸1つ分だけ長いかまたは短いペプチドで、天然のL-アミノ酸の代わりにD-アミノ酸のみを含むものを、参照物質として使用することができる。これは、天然のペプチダーゼによる攻撃を受けないことを意味する。
この参照物質はまた、好ましくは、消化作用を避けるために、培養が終わってからのみ添加することができる。参照物質は、同位体で標識することもできる。予想されるスケールで参照物質と比較したインジケーターの減少、または、インジケーターの化学的変性変異体の出現は、分析対象の微生物が、その使用濃度での抗生物質に対して耐性であることを示す。感受性の微生物は、抗生物質の濃度が最小阻害濃度(MIC) を上回るとき、インジケーターの減少を呈さない。
インジケーターとして使用するのに最適の栄養成分は、微生物種によって異なるが、耐性の判定は一般に、微生物種の同定の後で行われるため、微生物種は通常、周知である。
マトリックス支援レーザー脱離(MALDI) および関連方法、ならびにエレクトロスプレーイオン化 (ESI)、または他のタイプのイオン化法も、イオン化方法として使用することができる。MALDIでは、調製の際に、培地の成分を乾燥させ、マトリックス基質と混合して、好適な試料支持体上に載せる。ESIでは、培地を液体状態でスプレーする。これらのタイプのイオン化のイオン源を備えたあらゆる質量分析計を使用することができる。
耐性の強さを少なくともざっと見積もるために、さまざまな濃度で抗生物質を添加した培地を使用することができる。複数の抗生物質に対する耐性を調べるために、複数の抗生物質を含む複数の培養物で、また複数の抗生物質の混合物を含む複数の培養物で、それぞれの場合において必要に応じて抗生物質の濃度を変えて、同時に調製することが可能である。
好適なインジケーターおよびさまざまな抗生物質を備えた調製済み培地と、参照物質の溶液も、提供することができる。MALDIイオン化法用に、サンプルサイトを備えた市販のサンプル支持体の場合、マトリックス基質の薄層があらかじめ準備されており、この薄層があらかじめ、所定量の参照物質を含み得る。
本発明による、微生物の同定と、2つの抗生物質AB1およびAB2に対する耐性の判定のための方法のフローチャートの一例を示す。
上記で述べたように、本発明は、上述の2つの出願文書とは異なり、Govorunの方法によらない方法を提供する。これらとは異なり、本発明の目的は、抗生物質の存在下で、培地中の、特定の栄養成分(本明細書において「インジケーター」と呼ばれる) の減少、または特定の栄養成分の化学的変性変異体の増加 (例えば酵素反応による) を判定する。これは、生存する微生物の代謝をマススペクトルで判定することを可能にする。よって、マススペクトル分析の対象となるのは微生物またはその成分ではなく、好ましくは、例えば微生物が沈降により液体中に沈殿した後、または遠心分離または濾過により除去された後の、培地成分のみである。
微生物は、その周囲からさまざまな方法で栄養成分を摂取することができる。栄養成分は、部分的にはエネルギーを生成し、また部分的には物質合成により微生物の内部構造を構築するのに使用される。タンパク質、脂質、および炭水化物が、微生物の栄養成分として用いられる。栄養成分の摂取は、さまざまな、時に非常に複雑な経路をたどって行われ、これには、しばしば微生物細胞外での、栄養成分の化学的変性または酵素開裂が含まれる。
古細菌、酵母、グラム陽性菌およびグラム陰性菌の細胞壁は、非常にさまざまな構造を有しているが、通常、硬い弾性壁構造を有している(細菌の場合、この構造は、多糖類とテトラペプチドの比較的多孔質のネットワークであるペプチドグリカンを含む)。加えて、この細胞壁の外側と内側両方に、タンパク質 (例えばポリン) が埋め込まれた膜があり、これらは、細胞壁、特に細胞膜を通る分子の輸送を主とする、数多くのはたらきを有する。微生物の細胞壁は自然に、気体および非常に小さな中性分子(数百ダルトン以下) に対してのみ、浸透性である。イオンおよび多くの生物学的活性物質については、支援が提供されない限り乗り越えられないバリアがある。しかしながら、あらゆる生存プロセスおよび具体的な細胞機能は、環境の中で、物質や粒子を選択的に交換している細胞のはたらきに依存している。よって、分子に細胞壁を通過させるための、非常に選択的なメカニズムが存在する(例えば、チャンネルまたはいわゆるキャリアなど)。
真核微生物の場合、エンドサイトーシスは、大きな分子を小さな粒子にする特殊な輸送プロセスである。エンドサイトーシスとは、細胞壁の陥入プロセスに使用される用語であり、これにより、個々の細胞またはコンパートメントが液滴を包み込み、この中には特定の物質(マクロ分子または大きな栄養粒子) が溶け込んでおり、より小さな液胞にされる。陥入プロセスの最後に、いわゆるエンドソームが遊離して細胞の内側に入り込み、内膜系の一部となる。よってこの細胞は、周囲の培地の一部を細胞内に組み入れることになる。更に重要なのは、受容体介在性(または受容体制御性) エンドサイトーシスであり、この場合、細胞表面の特定の受容体が、組み込む粒子の識別を担っている。エンドサイトーシスはエキソサイトーシスとは反対の減少であり、不要になった代謝産物などの物質が外に放出される。エンドサイトーシスとエキソサイトーシスは通常、細胞壁の面積が同じに維持される場合、平衡状態にある。
特に細菌の場合(ただし酵母も含む)、大きな分子は、分泌された酵素(「細胞外酵素」) によって細胞外で分解され、または酸化、アシル化、アセチル化、またはメチル化により変性されて、細胞壁を通って輸送されるようにすることができる。これらの変性により生成された分子も、無傷または損われた代謝のインジケーターとして好適である。
栄養成分が厳密にどのようにして摂取されるかにかかわらず、微生物が培地中で生存していてかつ無傷の代謝を有している場合、栄養の摂取により、栄養培地中の一部の栄養成分の濃度が減少する。これらの栄養成分は、その微生物が正常または異常な代謝を有していることを示すインジケーターとして、マススペクトルで観察することができる。この減少が、化学変性(例えば酵素反応) によるものである場合、分解または変性生成物も出現し、これもマススペクトルで観察することができる。抗生物質により、代謝機能、ひいては生命機能が停止されると、インジケーターの微生物細胞内への輸送が停止する。インジケーターの分解と、分解産物の生成も停止する。ただし、これらのプロセスが、事前に分泌された酵素により触媒的に継続している場合は除く。よって、抗生物質の存在下で短時間後に栄養成分が減少しない場合、または、分解産物および変性生成物がもはや増加しない場合には、微生物がこの抗生物質に感受性であることを示す。本発明は、栄養培地中のこれらのインジケーターの減少、または栄養培地中のこれらのインジケーターの変性を、マススペクトルで測定することに基づく。
上記で延べたように、耐性は、インジケーターの酵素的開裂をマススペクトルで観察することによっても判定できる。培地中に当初存在していなかった分解産物が、生成されているためである。インジケーターが同位体標識されている場合、インジケーターの同位体標識されたフラグメントが観察される。具体的には、インジケーターは、容易に識別可能な分解産物を供給する特殊な構造を有し得る。
例えば、インジケーターとして用いられるペプチドは、中央部分が6〜10個のD-アミノ酸のコアを有し、少なくとも一方の端にいくつかのL-アミノ酸がつながっている構造を有し得る。分泌されたプロテアーゼはL-アミノ酸のみを分解するため、D-アミノ酸を含むコアは未消化のまま残る。このコアペプチドは、新しい、当初検出されなかった物質として、マススペクトルに出現する(経時的に増加する)。さまざまな多くのペプチドをインジケーターとして使用することができ、これらはすべて同じD-アミノ酸のコアを有し、その端には、微生物が必要とするさまざまなL-アミノ酸が提供されているものであり得る。このD-アミノ酸のコアは、マススペクトルで検出し、その増加を測定することが可能である。ペプチドが細胞の外で分解されるかどうか、また分解が微生物細胞内で行われるかどうか、未消化の分解産物が再び排出されるかどうかは、ここでは重要ではない。
本発明による方法の細菌培養は、完全に合成された栄養培地で行うのが最良である。完全合成された栄養培地は、化学的バックグラウンドノイズが少なく、非常にクリーンなマススペクトルが得られる。合成栄養培地は通常、1リットルの水に、エネルギー源および合成の出発物質として、約10グラムのグルコースを含む。原則として、細菌はグルコースの消化により、自分で内因性タンパク質およびペプチドを合成することができる。この場合、約0.5 gのK2HPO4をカリウムおよびリン酸源として添加し、約1 gのNH4Clをアミノ酸の窒素源として添加し、0.2 gのMgSO4を酵素の硫黄およびマグネシウムとして添加し、更にいくつかの微量元素を添加する必要がある。しかしながらこの合成プロセスは、多量のエネルギーを消費する。アミノ酸、消化可能なペプチドまたはタンパク質、またはその他の消化可能な栄養物がすでに栄養培地内に存在する場合は、微生物は合成プロセスを回避する。例えば、ごくわずかのペプチドのみが存在するが、個別のアミノ酸は存在しない場合には、このペプチドをインジケーターとして使用することができる。8〜12個のアミノ酸を含むペプチドが特に好ましい。これは、約1000〜1400ダルトンに対応する。例えば、それぞれ10個のアミノ酸を有する2種のペプチドをインジケーターとして使用し、このペプチドは、20種のアミノ酸すべてを含むように選択することができる。あるいは、3種以上のペプチドを使用して、微生物において優位な比率ですべてのアミノ酸をカバーすることができる。ペプチドのうちひとつをインジケーターとして使用することができ、または複数のペプチドを同時にインジケーターとして使用することも可能である。これらは、培地のマススペクトルで同時にすべて検出できるからである。
高感度のマススペクトルを得るために、リン脂質を使用することも可能であるが、これらはアミノ酸を含まない。また、特によくイオン化可能なように誘導されたペプチドを添加することもでき、これにより、高レベルの感度でマススペクトル同定が可能になる。
更に、多くの細菌が、ビオチン(ビタミンH、分子量m = 244 Da)、ニコチン酸(ビタミンB7、m = 123 Da)、チアミン(ビタミンB1、m = 335 Da)、パラアミノ安息香酸 (m = 137 Da)、パントテン酸 (ビタミンB5、m = 219 Da)、ピリドキサミン(ビタミンB6、m = 168 Da) およびシアノコバラミン (ビタミンB12、m = 1355 Da) のビタミン混合物を必要とする。これらのビタミンも、インジケーターとして使用することができる。
インジケーターとして使用するのに最適の栄養成分は、微生物種によって異なり得るが、耐性の判定は一般に、微生物種の同定の後で行われるため、微生物種は通常、周知である。
インジケーターとして添加される化合物は、低濃度であるべきであり、これにより、微生物が少量で、少量の変化しか生成しない場合であっても、容易に検出可能になる。同じ理由から、微生物は、同定のために培養されるため一般に寒天上のコロニーとして存在するが、これをできるだけ少量(数マイクロリットルの量) の液体培地に添加する。これらの体積は、参照物質の添加のため、正確に測定しなければならない。また、同じ微生物の複数のコロニーを採取して、培養容積に加えることも可能である。
インジケーターの減少分を定量するために、好適な参照物質を、正確に測定した量で添加する。例えば保護基などにより、微生物により分解も摂取もされない物質が、参照物質として使用することができる。
特に好適なのは、D-アミノ酸のみを含むペプチドである。これらの物質は微生物が消化できないにもかかわらず、微生物がこれらを摂取するのを防ぐのはほぼ不可能であるが、培養が終わった後に限りこの参照物質を添加すると、培地中のこれら参照物質の濃度が低下するのを避けるために有利である。予想されるスケールで参照物質と比較したインジケーターの減少または分解産物の増加は、分析対象の微生物が、その使用濃度での抗生物質に対して耐性であることを示す。感受性の微生物は、抗生物質の濃度が最小阻害濃度(MIC) を上回るとき、インジケーターの減少を呈さない。
図1のフロー図に示すように、本明細書において、比較のため、微生物によりもたらされるインジケーターの自然減少または自然変化を測定するために、抗生物質を含まない培地も調製することが、好都合である。
移行期間があるという事実については、すでに上述した。抗生物質を含む培地中の細菌は、抗生物質の濃度が最大阻害濃度をはるかに上回る場合であっても、すぐにすべての代謝を停止するわけではない。通常、最初に抗生物質を摂取しなければならず、また他の方法で効果を現わすことが必要である。この段階でインジケーターの分解または変性を防ぐために、抗生物質を伴う予備培養を実施し、その後でのみインジケーターを添加することができる。この予備培養の最も好ましい持続時間は、実験的に決定しなければならない。
しかしながら更に、栄養培地の組成によっては、この予備培養中にプロテアーゼがすでに分泌されており、インジケーターを添加した後にこれを触媒的に分解してしまい、(少なくとも一時的に) 無傷の代謝があるという印象を与えることがあり得る。この場合、予備培養後に微生物を抗生物質ですすぎ、これを、インジケーターと抗生物質を含んだ新しい培地に入れることが有用である。このすすぎは、注意深い遠心分離または濾過による既知の方法で実施することができる。
また更に、予備培養後に、分泌されたプロテアーゼの阻害剤を添加して、プロテアーゼを無効にすることができる。この阻害剤は、生きている微生物により引き続き分泌されるプロテアーゼを停止しないよう、量を測定しなければならない。
更に次に、この阻害剤を阻害する物質を用いて、過剰な阻害剤を中和することも可能である。
インジケーターと参照物質の両方とも、容易にイオン化でき、マススペクトルで容易に識別可能なピークを提供するものであるべきである。リン脂質が特に良好なマススペクトル感度を有することが、すでに示されている。また、参照物質を利用して、大きな濃度範囲をカバーすることが可能である。例えば、100:10:1または25:5:1の比で3種の参照物質を使用することができる。これは特に分解産物の測定に有利である。分解産物の濃度は、ゼロから増加するからである。
イオン化方法として、比較的大きな有機分子をイオン化するすべての方法を使用することができ、特に、マトリックス支援レーザー脱離(MALDI) および関連方法、ならびにエレクトロスプレーイオン化 (ESI) を使用することができる。MALDIでは、調製の際に、少量の培地を乾燥させ、マトリックス基質と混合して、好適な試料支持体上に載せる。ESIでは、例えば、ナノESIと呼ばれる方法により、小さなキャピラリー先端から、培地を液体状態でスプレーする。これらのタイプのイオン化のイオン源を備えたあらゆる質量分析計を使用することができる。
微生物の完全耐性と完全感受性との間には、中間段階が存在する。すなわち、成長が損われているが、完全には阻害されていない場合である。微生物の耐性の強度を推定するために、抗生物質の実際の阻害濃度を測定することができる。抗生物質のMIC値 (完全感受性の微生物における、数時間の曝露の後の最小阻害濃度) は多くの場合周知である。しかし実際の阻害濃度はこれとは異なり得る。抗生物質作用が平衡状態に達するまで待つのは数時間かかるため不可能であり、更に、MIC値は耐性の強度とともに増加するからである。実際の阻害濃度を測定するために、さまざまな濃度の抗生物質を添加した培養を使用することができ、ここにおいて濃度レベルは、例えば、既知のMIC値に対して、1×MIC、10×MIC、および100×MICの濃度に対応し得る。上述の方法による実績により、濃度1×MICでの微生物成長の阻害は、その微生物が完全に感受性の場合にのみ観察される。弱い耐性の場合、微生物は、10×MIC以上の濃度でのみ阻害される。一方、非常に強い耐性の場合、100×MICの濃度でも成長が依然として検出される。この影響は、インジケーターの減少または変化の値からも判定することができる。このことは、中間の耐性の場合、異なる濃度の抗生物質で成長が異なることを意味する。
この方法を濃度勾配なしで実施する場合、10×MICの濃度が特に好適であることが見出されている。
耐性を判定するために、好ましく選択された利用可能なインジケーターと共に、調製済みの合成培地を用いることが有利である。さまざまなタイプの抗生物質が、これらに添加済みである。参照物質を含む調製済み溶液も提供することができる。MALDIイオン化法用に、サンプルサイトを備えた市販のサンプル支持体の場合、マトリックス基質の薄層があらかじめ準備されており、この薄層があらかじめ、所定量の参照物質を含み得る。次に、所定量の栄養培地を、適用しなければならない。調製済みの量のマトリックス基質(小さい瓶入りで市販されている) も、参照物質をすでに含んでいる場合がある。
この方法は驚異的に迅速である。微生物において必要なのは、培地に馴化するための待ち時間が約20分間で、この後、もし微生物が耐性の場合、更に20分後に、インジケーターの顕著な減少または分解産物の増加を観察することができる。危険な感染症は通常、倍加時間がわずか約20分間の成長が速い微生物によって引き起こされる。
複数の抗生物質に対する耐性を調べるために、複数の抗生物質を含む複数の培養物で、それぞれの抗生物質について必要に応じて抗生物質の濃度を変えて、調製することが可能である。複数の培養物のサンプルを調製し測定するのに必要な時間は、培養時間に比べれば、ほとんど取るに足らない。
多剤耐性菌(例: MRSA、メシチリン耐性黄色ブドウ球菌) の迅速試験のため、数種類の抗生物質の混合物を含んだ培地を提供することもできる。微生物がこの混合物中で成長した場合は、多剤耐性である。
マトリックス支援レーザー脱離(MALDI) による培地乾燥成分のイオン化は、マトリックス基質がすでに薄層内に調製されているサンプル支持プレートか、マトリックス溶液調製物のいずれかを必要とする。市販のマトリックス基質はしばしば、超音波なしで溶かすのが難しいという欠点を有する。このため、現在は、精密に測定された量の、小瓶入り精製・凍結乾燥マトリックス基質が市販されている。
これを用いると、溶媒を加えたときにマトリックス基質がすぐに溶け、溶液が適正な濃度ですぐに使用できる。本発明に定義されるように、インジケーターの分解または変化の定量のため、慎重に測定された量の、少なくとも1種の参照物質を、これらの製品のマトリックス基質に追加することができる。MALDIサンプルの調製のために使用する装置において、マトリックス溶液を、慎重に測定した量で、かつ接触させることなしに、栄養培地の乾燥成分に適用することができる。すでに製品として市販されている薄いマトリックス層付きのサンプル支持プレートは、更に、所定量の参照物質を含み得る。この薄層はそれぞれ、小さなサンプル領域に適用され、これら領域は十分に間隔をあけて離れていて、それぞれ約2ミリメートルの直径を有する。
耐性を判定する方法の手順の典型的な一例が、図1に示されている。ここに示されている方法は、微生物を寒天上で培養する(101) ことから始まる。コロニーの微生物を採取し (102)、消化させ、処理してMALDIサンプルにする (103)。マススペクトルの取得(104) で、参照スペクトルとこのマススペクトル比較することにより、微生物の同定が得られる(105)。臨床検査業者では、平行して同定する微生物サンプルの数にもよるが、コロニー採取から同定までわずか10〜30分程度しかかからない。耐性を判定するために、同じ微生物の更に複数のコロニーを、同時に採取することができる(106)。これらは培地に混合され、異なるタイプの培養に分割される (107)。この図に示される例においては、3つの培養物が調製される:
抗生物質を含まない培地での培養(108)、ならびに、抗生物質Ab1 (109) およびAb2 (110) を含んだ2つの培養である。この例において、培地にはすでにインジケーターが含まれている。もちろん、更に他の抗生物質を入れた培養物も調製することができ、また耐性の強度も判定する場合には、異なる抗生物質濃度での培養物も調製することができる。微生物に衝撃を与えないよう、また加熱によって時間の遅れが生じないよう、培養物はすべて、最適温度で調製済みである。培養時間は、待ち時間および微生物の倍加時間(世代期間) に依存し、これは微生物の同定により既知である。培養は、倍加時間1回〜3回分だけが必要である。成長の速い微生物には、約20〜40分間で十分である。
さまざまな培養物から得た培地サンプルに、参照物質を加えてから、MALDIサンプルに加工し、マススペクトルを取得する (111)。
抗生物質なしで培養された培地のマススペクトル(108) を使用して、インジケーターの正常な減少または分解産物の増加を測定する。これは主に、接種した微生物の未知の数に依存している。培養物の培地(109) および (110) に、参照物質を添加し(111)、MALDIサンプルを調製 (112) してから、マススペクトル (113) を取得する。これらのマススペクトルと、抗生物質を含まない培地での減少との関係から、インジケーターの減少または非減少を導き出す。抗生物質を含む培養物のインジケーターの減少は、耐性を示す。
この方法は現在、MALDIイオン化を用いて実施されている。MALDIは、ほぼ一価の分子イオンのみを形成するという大きな利点を有する。これは、500〜2,000ダルトンの好ましい質量範囲に100〜300ものピークが現れるにもかかわらず、マススペクトルは過負荷にならないことを意味する。このためには、MALDIイオン源を用いる任意のタイプの質量分析計を使用することが可能であり、例えば、飛行時間質量分析計や、イオントラップ質量分析計も使用することができる。特に有利なのはタンデム型質量分析計である。これは、特定のイオンをフラグメント化することにより、インジケーターを明確に検出することができる。これらの質量分析計には、同位体標識されたインジケーターの使用が好ましい。
ただし、他のタイプのイオン化を使用することもできる。ESI (エレクトロスプレーイオン化) やDESI (エレクトロスプレーによる固体サンプルの直接表面イオン化) などのスプレー式方法は、非常に多量の多価イオンを形成し、これはマススペクトルを容易に過負荷にし得るが、これらは液体クロマトグラフィー(HPLC) やキャピラリー電気泳動 (CE) などの分離方法と組み合わせることができ、これにより物質を分離して、よりシンプルな構造でマススペクトルを取得することが可能である。
しかしながら、例えば化学的イオン化(CI) などの、ほぼ一価イオンのみを生成する他のイオン化方法もある。化学的イオン化は、中性スプレー法と組み合わせて使用することができるが、また、固体サンプルのレーザーアブレーションと共に使用することもでき、またOTOF-MS (直交イオン射出を伴う飛行時間型質量分析計) と共に使用することもできる。

Claims (20)

  1. 微生物の抗生物質に対する耐性をマススペクトルにより判定する方法であって、
    前記微生物を前記抗生物質とともに予備培養した後、
    少なくとも1種類の栄養成分を新たに添加した、特定の濃度の前記抗生物質を含む合成培地で前記微生物を培養し、
    記合成培地の前記添加された栄養成分が減少したかどうか、または、前記添加された栄養成分の化学的変性変異体が増加したかどうかを、マススペクトルにより測定し、
    この結果、前記添加された栄養成分減少した場合、あるいは前記添加された栄養成分の化学的変性変異体増加した場合に前記特定の濃度の抗生物質対して前記微生物が耐性であると判定する、方法。
  2. 前記添加された栄養成分の減少、又は前記添加された栄養成分の化学的変性変異体の増加が、所定量添加された参照物質と比較することにより判定される、請求項1に記載の方法。
  3. 前記参照物質が、D-アミノ酸から作られたペプチドである、請求項2に記載の方法。
  4. 前記参照物質が、前記合成培地中での成長の完了後に所定量添加される、請求項2に記載の方法。
  5. 前記添加された栄養成分がペプチドであり、前記栄養成分の添加の直後に、既に分泌されているペプチダーゼの阻害剤が添加される、請求項1に記載の方法。
  6. 耐性の強度を判定するため、前記微生物を、いくつかの濃度の前記抗生物質を含んだ合成培地で培養する、請求項1に記載の方法。
  7. 微生物の抗生物質に対する耐マススペクトルによ判定する方法であって
    前記微生物を、特定の濃度の抗生物質と、D-アミノ酸のコアを含む少なくとも1種類のペプチドとを含む培地で培養し、
    前記D-アミノ酸のコアのみを含むペプチドが増加するかどうかを、マススペクトルで測定し、
    前記D-アミノ酸のコアのみを含むペプチドの増加があった場合に前記特定の濃度の抗生物質対して前記微生物が耐性であると判定する、方法。
  8. 前記少なくとも1種類のペプチドが同位体標識されたアミノ酸からなり、培地中で長さが短くなった同位体標識ペプチドの生成が、マススペクトルで測定される、請求項7に記載の方法。
  9. 前記増加は、所定量添加された少なくとも1種類の参照物質と比較することにより判定される、請求項7に記載の方法。
  10. 前記参照物質が、D-アミノ酸から作られたペプチドである、請求項9に記載の方法。
  11. 前記参照物質が、前記培地中での成長の完了後に所定量添加される、請求項9に記載の方法。
  12. 前記微生物が、抗生物質を含む第1の合成培地で予備培養されてから、この予備培養された微生物が更に第2の合成培地で培養される、請求項7に記載の方法。
  13. 前記微生物が、抗生物質で予備培養されてから、前記少なくとも1種類のペプチドが添加される、請求項7に記載の方法。
  14. 前記微生物を分割して、これらの分割部分を、抗生物質を含まない第1の合成培地と、抗生物質を含む第2の合成培地とで、それぞれ培養する、請求項7に記載の方法。
  15. マトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)またはエレクトロ・スプレーイオン化 (ESI)のいずれかの方法が、マススペクトル測定におけるイオン化方法として用いられる、請求項1または請求項7に記載の方法。
  16. 前記合成培地は、前記添加された少なくとも1種類の栄養成分として、少なくとも1種類のペプチドを含む、請求項1に記載の方法。
  17. 前記合成培地は、個別のアミノ酸を含まない、請求項16に記載の方法。
  18. 前記少なくとも1種類のペプチドは、全20種類のアミノ酸を含む、請求項16に記載の方法。
  19. 前記抗生物質の濃度は、抗生物質の最小阻害濃度(MIC)の10倍である、請求項1または請求項7に記載の方法。
  20. 微生物の抗生物質に対する耐性をマススペクトルにより判定する方法であって、
    前記微生物を、特定の濃度の抗生物質を含む第1の合成培地で予備培養し、
    前記予備培養された微生物を、特定の濃度の前記抗生物質を含む第2の合成培地で更に培養し
    前記第2の合成培地の栄養成分の分解、または、前記第2の合成培地の栄養成分の化学的変性変異体の増加、マススペクトルで測定
    この結果、前記栄養成分減少した場合、あるいは前記栄養成分の化学的変性変異体増加した場合前記特定の濃度の前記抗生物質に対して前記微生物が耐性であると判定する、方法。
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