以下において、本発明の内容について詳細に説明する。
本明細書において、「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さない基(原子団)と共に置換基を有する基(原子団)をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。
本明細書において「露光」とは、特に断らない限り、光を用いた露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線を用いた描画も露光に含める。また、露光に用いられる光としては、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等の活性光線または放射線が挙げられる。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートの双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよびメタクリルの双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルおよびメタクリロイルの双方、または、いずれかを表す。
本明細書において、重量平均分子量および数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定でのポリスチレン換算値として定義される。
本明細書において、化学式中のMeはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、Buはブチル基を表し、Phはフェニル基を表す。
本明細書において、近赤外線とは、極大吸収波長領域が波長700〜2500nmの光(電磁波)をいう。
本明細書において、全固形分とは、組成物の全成分から溶剤を除いた成分の総質量をいう。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
<硬化性組成物>
本発明の硬化性組成物は、後述する式(1)で表される化合物(以下、化合物(1)ともいう)と、硬化性化合物とを含有することを特徴とする。
本発明の硬化性組成物を用いることにより、表面荒れが抑制された膜を製造することができる。このような効果が得られる理由としては次によるものであると推測される。化合物(1)において、X1の式(1)におけるピロロピロール環上のN原子と結合する原子と、X2の式(1)におけるピロロピロール環上のN原子と結合する原子とがそれぞれ異なる。すなわち、化合物(1)における、ピロロピロール環上の2つのN原子上の構造が非対称となっている。このような構造とすることによって、分子同士の重なりやすさが低下し、化合物(1)の結晶性が低下したと推測される。その結果、製膜時における化合物(1)の析出が抑制されて表面荒れが抑制された膜を製造できたと推測される。
また、化合物(1)は、赤外遮蔽性に優れつつ、可視透明性にも優れる。このため、化合物(1)を含む本発明の硬化性組成物は、分光特性に優れた膜を製造できる。たとえば、本発明の硬化性組成物を用いることで、可視透明性に優れ、赤外線遮蔽性に優れた近赤外線カットフィルタなどを製造することができる。また、本発明の硬化性組成物において、化合物(1)の他に、さらに、赤外線を透過させて可視光を遮光する色材を含有させることで、分光特性に優れ、特定の赤外線を選択的に透過する赤外線透過フィルタを製造することもできる。赤外線透過フィルタにおいて、化合物(1)は、透過する光(近赤外線)をより長波長側に限定する役割を有している。そして、化合物(1)は、可視透明性及び赤外遮蔽性に優れるので、遮蔽させる可視領域の分光や、透過させる赤外領域の分光を適切な範囲に制御しやすい。
以下、本発明の硬化性組成物の各成分について説明する。
<<式(1)で表される化合物(化合物(1))>>
本発明の硬化性組成物は、下記式(1)で表される化合物(化合物(1))を含有する。化合物(1)は、近赤外領域に極大吸収波長を有することから、近赤外線吸収化合物でもある。
式中、R1およびR2は、各々独立にアルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表す;
R3〜R6は、各々独立に水素原子または置換基を表し、R3とR4、R5とR6は、それぞれ結合して環を形成していてもよい;
X1およびX2は、各々独立に水素原子または置換基を表し、かつ、X1の式(1)におけるピロロピロール環上のN原子と結合する原子と、X2の式(1)におけるピロロピロール環上のN原子と結合する原子とがそれぞれ異なる。
式(1)において、R1およびR2は、各々独立にアルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表し、アリール基またはヘテロアリール基が好ましく、アリール基がより好ましい。
R1およびR2が表すアルキル基の炭素数は、1〜30が好ましく、1〜20がより好ましく、1〜10がさらに好ましい。
R1およびR2が表すアリール基の炭素数は、6〜30が好ましく、6〜20がより好ましく、6〜12が特に好ましい。
R1およびR2が表すヘテロアリール基を構成する炭素原子の数は、1〜30が好ましく、1〜12がより好ましい。ヘテロアリール基を構成するヘテロ原子の種類としては、例えば、窒素原子、酸素原子および硫黄原子を挙げることができる。ヘテロアリール基を構成するヘテロ原子の数としては、1〜3が好ましく、1〜2がより好ましい。ヘテロアリール基は、単環または縮合環が好ましく、単環または縮合数が2〜8の縮合環がより好ましく、単環または縮合数が2〜4の縮合環がさらに好ましい。
上述したアルキル基、アリール基およびヘテロアリール基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基を有していることが好ましい。置換基としては、酸素原子を含んでもよい炭化水素基、アミノ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、ヘテロアリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテロアリールスルホニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、ヘテロアリールスルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、メルカプト基、アルキルスルフィノ基、アリールスルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、シリル基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基等が挙げられ、酸素原子を含んでもよい炭化水素基、ヒドロキシ基またはハロゲン原子が好ましい。
置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
置換基としての炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基などが挙げられる。
アルキル基の炭素数は、1〜40が好ましい。下限は、3以上がより好ましく、5以上が更に好ましく、8以上が一層好ましく、10以上が特に好ましい。上限は、35以下がより好ましく、30以下が更に好ましい。アルキル基は直鎖、分岐、環状のいずれでもよいが、直鎖または分岐が好ましく、分岐が特に好ましい。分岐のアルキル基の炭素数は、3〜40が好ましい。下限は、例えば、5以上がより好ましく、8以上が更に好ましく、10以上が一層好ましい。上限は、35以下がより好ましく、30以下が更に好ましい。分岐のアルキル基の分岐数は、例えば、2〜10が好ましく、2〜8がより好ましい。
アルケニル基の炭素数は、2〜40が好ましい。下限は、例えば、3以上がより好ましく、5以上が更に好ましく、8以上が一層好ましく、10以上が特に好ましい。上限は、35以下がより好ましく、30以下が更に好ましい。アルケニル基は直鎖、分岐、環状のいずれでもよいが、直鎖または分岐が好ましく、分岐が特に好ましい。分岐のアルケニル基の炭素数は、3〜40が好ましい。下限は、例えば、5以上がより好ましく、8以上が更に好ましく、10以上が一層好ましい。上限は、35以下がより好ましく、30以下が更に好ましい。分岐のアルケニル基の分岐数は、2〜10が好ましく、2〜8がより好ましい。
アリール基の炭素数は、6〜30が好ましく、6〜20がより好ましく、6〜12が更に好ましい。
酸素原子を含む炭化水素基としては、−L−Rx1で表される基が挙げられる。
Lは、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−(ORx2)m−または−(Rx2O)m−を表す。Rx1は、アルキル基、アルケニル基またはアリール基を表す。Rx2は、アルキレン基またはアリーレン基を表す。mは2以上の整数を表し、m個のRx2は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
Lは、−O−、−(ORx2)m−または−(Rx2O)m−であることが好ましく、−O−がより好ましい。Lは、−OCO−であることも好ましい。
Rx1が表すアルキル基、アルケニル基、アリール基は上述したものと同義であり、好ましい範囲も同様である。Rx1は、アルキル基またはアルケニル基であることが好ましく、アルキル基がより好ましい。Lが−OCO−である場合、Rx1は、アリール基であることも好ましい。
Rx2が表すアルキレン基の炭素数は、1〜20が好ましく、1〜10がより好ましく、1〜5が更に好ましい。アルキレン基は直鎖、分岐、環状のいずれでもよいが、直鎖または分岐が好ましい。Rx2が表すアリーレン基の炭素数は、6〜20が好ましく、6〜12がより好ましい。Rx2はアルキレン基が好ましい。
mは2以上の整数を表し、2〜20が好ましく、2〜10がより好ましい。
R1およびR2は、各々独立に置換基を有するアリール基であることが好ましい。R1およびR2が、置換基として長鎖アルキル基(好ましくは炭素数7〜30のアルキル基)を有する基を含む場合、化合物(1)は溶剤溶解性が良好であり、このような化合物は染料として好ましく用いることができる。上記の長鎖アルキル基は、直鎖、分岐のいずれでもよいが、分岐のアルキル基が好ましい。長鎖アルキル基(好ましくは炭素数7〜30のアルキル基)を有する基としては、炭素数7〜30のアルコキシ基、炭素数7〜30のアルコキシ基を有する炭化水素基、炭素数7〜30のアルコキシ基を有するヘテロアリール基などが挙げられる。
また、R1およびR2が、置換基として炭素数の小さな炭化水素基(好ましくは、炭素数1〜6の炭化水素基)、ヘテロアリール基、ヒドロキシ基などを有する場合、化合物(1)は溶剤溶解性が低く、このような化合物は顔料として好ましく用いることができる。
R1およびR2の具体例としては、以下が挙げられる。以下において、Meはメチル基を表し、Buはブチル基を表す。*は、式(1)における結合位置を表す。
式(1)において、R3〜R6は、各々独立に水素原子または置換基を表し、R3とR4、R5とR6は、それぞれ結合して環を形成していてもよい。置換基としては、以下の置換基Tが挙げられる。
(置換基T)
アルキル基(好ましくは炭素数1〜30)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜30)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30)、ヘテロアリールオキシ基(好ましくは炭素数1〜30)、アシル基(好ましくは炭素数1〜30)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜30)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜30)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜30)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30)、ヘテロアリールチオ基(好ましくは炭素数1〜30)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜30)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素数6〜30)、ヘテロアリールスルホニル基(好ましくは炭素数1〜30)、アルキルスルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30)、アリールスルフィニル基(好ましくは炭素数6〜30)、ヘテロアリールスルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜30)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜30)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロアリール基(好ましくは炭素数1〜30)。これらの基は、さらに置換可能な基である場合、さらに置換基を有してもよい。さらなる置換基としては、上述した置換基Tで説明した基が挙げられる。
式(1)において、R3およびR4の一方と、R5およびR6の一方はは電子求引性基であることが好ましい。ハメットの置換基定数σ値(シグマ値)が正の置換基は、電子求引性基として作用する。ここで、ハメット則で求められた置換基定数にはσp値とσm値がある。これらの値は多くの一般的な成書に見出すことができる。本発明においては、ハメットの置換基定数σ値が0.2以上の置換基を電子求引性基として例示することができる。σ値は、0.25以上が好ましく、0.3以上がより好ましく、0.35以上が更に好ましい。上限は特に制限はないが、好ましくは0.80以下である。電子求引性基の具体例としては、シアノ基(σp値=0.66)、カルボキシル基(−COOH:σp値=0.45)、アルコキシカルボニル基(例えば、−COOMe:σp値=0.45)、アリールオキシカルボニル基(例えば、−COOPh:σp値=0.44)、カルバモイル基(例えば、−CONH2:σp値=0.36)、アルキルカルボニル基(例えば、−COMe:σp値=0.50)、アリールカルボニル基(例えば、−COPh:σp値=0.43)、アルキルスルホニル基(例えば、−SO2Me:σp値=0.72)、アリールスルホニル基(例えば、−SO2Ph:σp値=0.68)などが挙げられる。ここで、Meはメチル基を、Phはフェニル基を表す。なお、ハメットの置換基定数σ値については、例えば、特開2011−68731号公報の段落番号0017〜0018を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
式(1)において、R3およびR4の一方は電子求引性基(好ましくはシアノ基)を表し、他方はヘテロアリール基を表すことが好ましい。また、R5およびR6の一方は電子求引性基(好ましくはシアノ基)を表し、他方はヘテロアリール基を表すことが好ましい。ヘテロアリール基は、下記式(A−1)で表される基または(A−2)で表される基であることが好ましい。
式(A−1)において、X1は、O、S、NRX1またはCRX2RX3を表し、RX1〜RX3は、各々独立に水素原子または置換基を表し、Ra1およびRa2は、各々独立に水素原子または置換基を表し、Ra1とRa2は、互いに結合して環を形成していてもよい。*は、式(1)における結合位置を表す。
Ra1、Ra2およびRX1〜RX3が表す置換基としては、置換基Tが挙げられ、アルキル基、アリール基およびハロゲン原子が好ましい。
Ra1とRa2が結合して形成する環は、芳香族環が好ましい。Ra1とRa2とが環を形成する場合、(A−1)としては、下記の(A−1−1)で表される基、(A−1−2)で表される基などが挙げられる。
式中、X1は、O、S、NRX1またはCRX2RX3を表し、RX1〜RX3は、各々独立に水素原子または置換基を表し、R101a〜R109aは、各々独立に水素原子または置換基を表す。*は、式(1)における結合位置を表す。R101a〜R109aが表す置換基としては、置換基Tが挙げられる。
式(A−2)において、Y1〜Y4は、各々独立にNまたはCRY1を表し、Y1〜Y4の少なくとも2つはCRY1であり、RY1は、水素原子または置換基を表し、隣接するRY1同士は互いに結合して環を形成していてもよい。*は、式(1)における結合位置を表す。RY1が表す置換基としては、置換基Tが挙げられ、アルキル基、アリール基およびハロゲン原子が好ましい。
Y1〜Y4の少なくとも2つはCRY1であり、隣接するRY1同士は互いに結合して環を形成していてもよい。隣接するRY1同士が結合して形成する環は、芳香族環が好ましい。隣接するRY1同士が環を形成する場合、(A−2)としては、下記の(A−2−1)で表される基、(A−2−2)で表される基などが挙げられる。
式中、R201a〜R227aは、各々独立して、水素原子または置換基を表し、*は、式(1)における結合位置を表す。R201a〜R227aが表す置換基としては、置換基Tが挙げられる。
R3〜R6が表すヘテロアリール基の具体例としては下記の基が挙げられる。以下において、Buはブチル基を表す。*は、式(1)における結合位置を表す。
式(1)において、R3とR4、R5とR6は、それぞれ結合して環を形成していてもよい。R3とR4が結合して環を形成する場合は、5〜7員環(好ましくは5または6員環)を形成することが好ましい。また、R5とR6が結合して環を形成する場合は、5〜7員環(好ましくは5または6員環)を形成することが好ましい。形成される環の具体例としては、例えば特開2011−68731号公報の段落0019〜0021を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
式(1)において、X1およびX2は、各々独立に、水素原子または置換基を表し、かつ、X1の式(1)におけるピロロピロール環上のN原子と結合する原子と、X2の式(1)におけるピロロピロール環上のN原子と結合する原子とが互いに異なる。
X1およびX2としては、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、(R7A)2B−、(R7B)2P−、(R7C)3Si−、(R7D)nM1−またはM2−を表すことが好ましい。R7A〜R7Dは、各々独立に水素原子または置換基を表し、nは2〜4の整数を表し、M1は、n+1価の金属原子を表し、M2は1価の金属原子を表す。
X1およびX2が表すアルキル基およびアルコキシ基の炭素数は、1〜30が好ましく、1〜20がより好ましく、1〜10がさらに好ましい。
X1およびX2が表すアリール基の炭素数は、6〜30が好ましく、6〜20がより好ましく、6〜12が特に好ましい。
X1およびX2が表すヘテロアリール基を構成する炭素原子の数は、1〜30が好ましく、1〜12がより好ましい。ヘテロアリール基を構成するヘテロ原子の種類としては、例えば、窒素原子、酸素原子および硫黄原子を挙げることができる。ヘテロアリール基を構成するヘテロ原子の数としては、1〜3が好ましく、1〜2がより好ましい。ヘテロアリール基は、単環または縮合環が好ましく、単環または縮合数が2〜8の縮合環がより好ましく、単環または縮合数が2〜4の縮合環がさらに好ましい。
X1およびX2が表すアシル基としては、−C(=O)−RX100で表される基が挙げられる。また、X1およびX2が表すアシルオキシ基としては、−O−C(=O)−RX100で表される基が挙げられる。RX100は、アルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表す。アルキル基、アリール基またはヘテロアリール基としては、X1およびX2が表すものとして上述した基が挙げられる。
上述したアルキル基、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アリール基およびヘテロアリール基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては、上述した置換基Tで説明した基が挙げられる。
R7A〜R7Dが表す置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基が挙げられ、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基またはヘテロアリール基が好ましく、ハロゲン原子、アルキル基またはアリール基がより好ましく、アリール基がさらに好ましい。複数個のR7A、R7B、R7CおよびR7Dは、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、複数のR7A同士、R7B同士、R7C同士およびR7D同士は、互いに結合して環を形成していてもよい。
R7A〜R7Dが表すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、フッ素原子が特に好ましい。
R7A〜R7Dが表すアルキル基およびアルコキシ基の炭素数は、1〜40が好ましい。下限は、例えば、3以上がより好ましい。上限は、例えば、30以下がより好ましく、25以下が更に好ましい。アルキル基およびアルコキシ基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよいが、直鎖または分岐が好ましい。
R7A〜R7Dが表すアルケニル基の炭素数は、2〜40が好ましい。下限は、例えば、3以上がより好ましい。上限は、例えば、30以下がより好ましく、25以下が更に好ましい。
R7A〜R7Dが表すアリール基およびアリールオキシ基の炭素数は、6〜20が好ましく、6〜12がより好ましい。アリール基およびアリールオキシ基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては、上述した置換基Tで説明した基が挙げられ、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子などが好ましい。
R7A〜R7Dが表すヘテロアリール基およびヘテロアリールオキシ基は、単環であっても多環であってもよい。ヘテロアリール基およびヘテロアリールオキシ基のヘテロアリール環を構成するヘテロ原子の数は1〜3が好ましい。ヘテロアリール環を構成するヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子または硫黄原子が好ましい。ヘテロアリール環を構成する炭素原子の数は3〜30が好ましく、3〜18がより好ましく、3〜12がさらに好ましく、3〜5が特に好ましい。ヘテロアリール環は、5員環または6員環が好ましい。ヘテロアリール基およびヘテロアリールオキシ基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては上述した置換基Tで説明した基が挙げられ、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子などが好ましい。
M1が表すn+1価の金属原子としては、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、スズ、バナジウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、パラジウム、イリジウム、白金などが挙げられる。
M2が表す1価の金属原子としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、銀、セシウムなどが挙げられる。
式(1)において、X1が(R7A)2B−、(R7B)2P−、(R7C)3Si−、(R7D)nM1−またはM2−を表す場合、X1はR2、R3およびR4の少なくとも1つと共有結合または配位結合していてもよい。また、X2が(R7A)2B−、(R7B)2P−、(R7C)3Si−、(R7D)nM1−またはM2−を表す場合、X2はR1、R5およびR6の少なくとも1つと共有結合または配位結合していてもよい。
(R7A)2B−で表される基の具体例としては、例えば以下に示す基が挙げられる。以下において、Buはブチル基を表す。*は、式(1)における結合位置を表す。
式(1)において、X1およびX2のいずれか一方は、(R7A)2B−を表すか、あるいは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アリール基またはヘテロアリール基を表すことが好ましく、X1およびX2のいずれか一方が(R7A)2B−を表し、他方が、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アリール基またはヘテロアリール基を表すことがより好ましく、X1およびX2のいずれか一方が(R7A)2B−を表し、他方が、水素原子、アルキル基、アシルオキシ基またはアリール基を表すことが更に好ましく、X1およびX2のいずれか一方が(R7A)2B−を表し、他方が、水素原子を表すことが特に好ましい。このような化合物を用いることで、製膜時における析出をより効果的に抑制でき、表面荒れのより抑制された膜を製造し易い。また、X1およびX2のいずれか一方が(R7A)2B−である場合は、耐熱性や、可視透明性が向上する。そして、X1およびX2のいずれか一方が(R7A)2B−で、他方が、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アリール基またはヘテロアリール基であることにより、優れた可視透明性を維持しつつ、化合物の結晶性を大きく低下でき、製膜時における結晶の析出をより効果的に抑制しやすい。
化合物(1)の具体例としては、下記化合物が挙げられる。以下において、Buはブチル基を表し、Phはフェニル基を表す。また、以下の表に付記したC−1、A−2、B−1などの記号は、上述の具体例で示した基である。
化合物(1)は、顔料であってもよく、染料であってもよい。なお、本発明において、顔料とは、溶剤に対して溶解しにくい化合物を意味する。例えば、顔料は、23℃の水100gに対する溶解度、および、23℃のシクロヘキサノン100gに対する溶解度が、それぞれ0.1g未満であることが好ましく、0.01g未満であることがより好ましい。また、本発明において、染料とは、溶剤に対して溶解しやすい化合物を意味する。例えば、染料は、23℃の水100gに対する溶解度、または、23℃のシクロヘキサノン100gに対する溶解度が、0.1g以上であることが好ましく、1g以上であることがより好ましい。
化合物(1)の極大吸収波長は、波長700〜1000nmの範囲に有することが好ましい。なお、本明細書において、「波長700〜1000nmの範囲に極大吸収波長を有する」とは、化合物(1)の溶液での吸収スペクトルにおいて、波長700〜1000nmの範囲に最大の吸光度を示す波長を有することを意味する。化合物(1)の吸収スペクトルの測定に用いる測定溶媒としては、クロロホルム、酢酸エチル、テトラヒドロフランが挙げられる。化合物(1)がクロロホルムで溶解する化合物である場合は、クロロホルムを測定溶媒として用いる。
本発明の硬化性組成物において、化合物(1)の含有量は、本発明の硬化性組成物の全固形分に対して、0.01〜50質量%が好ましい。下限は、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましい。上限は、30質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。
<<他のピロロピロール化合物>>
本発明の硬化性組成物は、上述した化合物(1)以外のピロロピロール化合物(以下、他のピロロピロール化合物ともいう)を含有することができる。他のピロロピロール化合物としては、下記式(10)で表される化合物であることが好ましい。
式中、R11およびR12は、各々独立にアルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表す;
R13〜R16は、各々独立に水素原子または置換基を表し、R13とR14、R15とR16は、それぞれ結合して環を形成していてもよい;
X11およびX12は、各々独立に水素原子または置換基を表し、かつ、X11の式(10)におけるピロロピロール環上のN原子と結合する原子と、X12の式(10)におけるピロロピロール環上のN原子と結合する原子とが同一である。
式(10)におけるR11〜R16は、式(1)で説明したR1〜R6と同義であり、好ましい範囲も同様である。
式(10)におけるX11およびX12が表す置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、(R17A)2B−、(R17B)2P−、(R17C)3Si−、(R17D)nM1−、M2−が挙げられる。R17A〜R17Dは、各々独立に水素原子または置換基を表し、nは2〜4の整数を表し、M1は、n+1価の金属原子を表し、M2は1価の金属原子を表す。X11およびX12が表すアルキル基、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アリール基、ヘテロアリール基の好ましい範囲は、上述した式(1)のX1およびX2で説明した基と同様であり、好ましい範囲も同様である。また、M1が表すn+1価の金属原子、M2が表す1価の金属原子、R17A〜R17Dが表す置換基としては、上述した式(1)のM1、M2、R7A〜R7Dと同様であり、好ましい範囲も同様である。
式(10)において、X11およびX12は水素原子であるか、または、同一の置換基であることが好ましい。より好ましくはX11およびX12は同一の置換基であり、更に好ましくは、X11およびX12は同一の置換基であって、(R17A)2B−である。
このような化合物は、ピロロピロール環上の2つのN原子上の構造が非対称である化合物(1)に比べて合成が容易である。特に、ピロロピロール環上の2つのN原子上の置換基が同一の化合物は、化合物(1)に比べて合成が容易である。一方、ピロロピロール環上の2つのN原子上の置換基が同一の化合物は結晶性が高い傾向にあるが、化合物(1)と併用することにより、製膜時における結晶の析出を抑制でき、表面荒れの抑制された膜を製造し易い。
他のピロロピロール化合物の具体例としては、下記化合物が挙げられる。また、特開2009−263614号公報の段落番号0016〜0058に記載の化合物、特開2011−68731号公報の段落番号0037〜0052に記載の化合物、国際公開WO2015/166873号公報の段落番号0010〜0033に記載の化合物などが挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本発明の硬化性組成物が他のピロロピロール化合物を含む場合、他のピロロピロール化合物の含有量は、本発明の硬化性組成物の全固形分に対して、0.01〜50質量%が好ましい。下限は、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましい。上限は、30質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。また、化合物(1)と他のピロロピロール化合物との合計質量中における化合物(1)の含有量は、0.1〜99質量%であることが好ましい。下限は、1質量%であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。上限は、98質量%以下であることが好ましく、97質量%以下であることがより好ましい。化合物(1)の含有量が上記範囲であれば、表面荒れが抑制された膜を製造し易い。また、化合物(1)と他のピロロピロール化合物との合計質量中における化合物(1)の含有量の上限は、コストの観点から60質量%以下とすることもでき、50質量%以下とすることもでき、30質量%以下とすることもできる。
<<他の近赤外線吸収化合物>>
本発明の硬化性組成物は、上述した化合物(1)、および、他のピロロピロール化合物以外の近赤外線吸収化合物(他の近赤外線吸収化合物ともいう)をさらに含んでもよい。
他の近赤外線吸収化合物としては、例えば、シアニン化合物、スクアリリウム化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、リレン化合物、メロシアニン化合物、クロコニウム化合物、オキソノール化合物、ジイモニウム化合物、ジチオール化合物、トリアリールメタン化合物、ピロメテン化合物、アゾメチン化合物、アントラキノン化合物、ジベンゾフラノン化合物、銅化合物などが挙げられる。スクアリリウム化合物としては、例えば、特開2011−208101号公報の段落番号0044〜0049に記載の化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。シアニン化合物としては、例えば、特開2009−108267号公報の段落番号0044〜0045に記載の化合物、特開2002−194040号公報の段落番号0026〜0030に記載の化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。ジイモニウム化合物としては、例えば、特表2008−528706号公報に記載の化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。フタロシアニン化合物としては、例えば、特開2012−77153号公報の段落番号0093に記載の化合物、特開2006−343631号公報に記載のオキシチタニウムフタロシアニン、特開2013−195480号公報の段落番号0013〜0029に記載の化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。ナフタロシアニン化合物としては、例えば、特開2012−77153号公報の段落番号0093に記載の化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。また、シアニン化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、ジイモニウム化合物およびスクアリリウム化合物は、特開2010−111750号公報の段落番号0010〜0081に記載の化合物を使用してもよく、この内容は本明細書に組み込まれる。また、シアニン化合物は、例えば、「機能性色素、大河原信/松岡賢/北尾悌次郎/平嶋恒亮・著、講談社サイエンティフィック」を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。銅錯体としては、国際公開WO2016/068037号公報の段落番号0009〜0049に記載された銅錯体、特開2014−41318号公報の段落0022〜0042に記載されたリン酸エステル銅錯体、特開2015−43063号公報の段落番号0021〜0039に記載されたスルホン酸銅錯体などが挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
また、他の近赤外線吸収化合物として、無機粒子を用いることもできる。無機粒子としては、金属酸化物粒子または金属粒子が好ましい。金属酸化物粒子としては、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)粒子、酸化アンチモンスズ(ATO)粒子、酸化亜鉛(ZnO)粒子、Alドープ酸化亜鉛(AlドープZnO)粒子、フッ素ドープ二酸化スズ(FドープSnO2)粒子、ニオブドープ二酸化チタン(NbドープTiO2)粒子などが挙げられる。金属粒子としては、例えば、銀(Ag)粒子、金(Au)粒子、銅(Cu)粒子、ニッケル(Ni)粒子など挙げられる。また、無機微粒子としては酸化タングステン系化合物が使用できる。酸化タングステン系化合物は、セシウム酸化タングステンであることが好ましい。酸化タングステン系化合物の詳細については、特開2016−006476号公報の段落番号0080を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。無機粒子の形状は特に制限されず、球状、非球状を問わず、シート状、ワイヤー状、チューブ状であってもよい。
無機粒子の平均粒子径は、800nm以下が好ましく、400nm以下がより好ましく、200nm以下が更に好ましい。無機粒子の平均粒子径がこのような範囲であることによって、可視透明性が良好である。光散乱を回避する観点からは、平均粒子径は小さいほど好ましいが、製造時における取り扱い容易性などの理由から、無機粒子の平均粒子径は、通常、1nm以上である。
本発明の硬化性組成物が他の近赤外線吸収化合物を含有する場合、他の近赤外線吸収化合物の含有量は、本発明の硬化性組成物の全固形分に対して、0.01〜50質量%が好ましい。下限は、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましい。上限は、30質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。
また、化合物(1)と、他のピロロピロール化合物と、他の近赤外線吸収化合物との合計の含有量は、本発明の硬化性組成物の全固形分に対して、0.01〜50質量%が好ましい。下限は、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましい。上限は、30質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。
<<硬化性化合物>>
本発明の硬化性組成物は、硬化性化合物を含有する。硬化性化合物としては、架橋性化合物、樹脂等が挙げられる。樹脂は、非架橋性の樹脂(架橋性基を有さない樹脂)であってもよく、架橋性の樹脂(架橋性基を有する樹脂)であってもよい。架橋性基としては、エチレン性不飽和結合を有する基、エポキシ基、メチロール基、アルコキシメチル基などが挙げられる。エチレン性不飽和結合を有する基としては、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。なお、架橋性の樹脂(架橋性基を有する樹脂)は、架橋性化合物でもある。
本発明において、硬化性化合物としては、樹脂を少なくとも含むものを用いることが好ましく、樹脂とモノマータイプの架橋性化合物とを用いることがより好ましく、樹脂と、エチレン性不飽和結合を有する基を有するモノマータイプの架橋性化合物とを用いることが更に好ましい。
本発明の硬化性組成物において、硬化性化合物の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して、0.1〜80質量%であることが好ましい。下限は、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上がさらに好ましく、5質量%以上が一層好ましい。上限は、75質量%以下がより好ましく、70質量%以下がさらに好ましい。硬化性化合物は、1種類のみでもよく、2種類以上でもよい。2種類以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
(架橋性化合物)
架橋性化合物としては、エチレン性不飽和結合を有する基を有する化合物、エポキシ基を有する化合物、メチロール基を有する化合物、アルコキシメチル基を有する化合物等が挙げられる。架橋性化合物は、モノマーであってもよく、樹脂であってもよい。エチレン性不飽和結合を有する基を有するモノマータイプの架橋性化合物は、ラジカル重合性化合物として好ましく用いることができる。また、エポキシ基を有する化合物、メチロール基を有する化合物、アルコキシメチル基を有する化合物は、カチオン重合性化合物として好ましく用いることができる。
モノマータイプの架橋性化合物の分子量は、2000未満であることが好ましく、100以上2000未満であることがより好ましく、200以上2000未満であることがさらに好ましい。上限は、例えば1500以下であることが好ましい。樹脂タイプの架橋性化合物の重量平均分子量(Mw)は、2,000〜2,000,000であることが好ましい。上限は、1,000,000以下であることが好ましく、500,000以下であることがより好ましい。下限は、3,000以上であることが好ましく、5,000以上であることがより好ましい。
樹脂タイプの架橋性化合物としては、エポキシ樹脂や、架橋性基を有する繰り返し単位を含む樹脂などが挙げられる。架橋性基を有する繰り返し単位としては、下記(A2−1)〜(A2−4)などが挙げられる。
R1は、水素原子またはアルキル基を表す。アルキル基の炭素数は、1〜5が好ましく、1〜3がさらに好ましく、1が特に好ましい。R1は、水素原子またはメチル基が好ましい。
L51は、単結合または2価の連結基を表す。2価の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO2−、−NR10−(R10は水素原子あるいはアルキル基を表し、水素原子が好ましい)、または、これらの組み合わせからなる基が挙げられる。アルキレン基の炭素数は、1〜30が好ましく、1〜15がより好ましく、1〜10がさらに好ましい。アルキレン基は、置換基を有していてもよいが、無置換が好ましい。アルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよい。また、環状のアルキレン基は、単環、多環のいずれであってもよい。アリーレン基の炭素数は、6〜18が好ましく、6〜14がより好ましく、6〜10がさらに好ましい。
P1は、架橋性基を表す。架橋性基としては、エチレン性不飽和結合を有する基、エポキシ基、メチロール基、アルコキシメチル基などが挙げられる。
エチレン性不飽和結合を有する基を有する化合物としては、3〜15官能の(メタ)アクリレート化合物であることが好ましく、3〜6官能の(メタ)アクリレート化合物であることがより好ましい。エチレン性不飽和結合を有する基を含む化合物の例としては、特開2013−253224号公報の段落0033〜0034の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。具体例としては、エチレンオキシ変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としてはNKエステルATM−35E;新中村化学工業社製)、ジペンタエリスリトールトリアクリレート(市販品としては KAYARAD D−330;日本化薬株式会社製)、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としては KAYARAD D−320;日本化薬株式会社製)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(市販品としては KAYARAD D−310;日本化薬株式会社製)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(市販品としては KAYARAD DPHA ;日本化薬株式会社製、A−DPH−12E;新中村化学工業社製)、およびこれらの(メタ)アクリロイル基がエチレングリコール残基またはプロピレングリコール残基を介して結合している構造が好ましい。またこれらのオリゴマータイプも使用できる。また、特開2013−253224号公報の段落番号0034〜0038、特開2012−208494号公報の段落番号0477(対応する米国特許出願公開第2012/0235099号明細書の段落番号0585)の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、エチレン性不飽和結合を有する基を有する化合物の具体例としてはジグリセリンEO(エチレンオキシド)変性(メタ)アクリレート(市販品としては M−460;東亞合成製)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業社製、A−TMMT)、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(日本化薬社製、KAYARAD HDDA)を用いることもできる。また、これらのオリゴマータイプも使用できる。例えば、RP−1040(日本化薬株式会社製)などが挙げられる。
エチレン性不飽和結合を有する基を含む化合物は、さらに、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基等の酸基を有していてもよい。市販品としては、例えば、東亞合成株式会社製のアロニックスシリーズ(例えば、M−305、M−510、M−520)などが挙げられる。
エチレン性不飽和結合を有する基を含む化合物は、カプロラクトン構造を有する化合物も好ましい態様である。カプロラクトン構造を有する化合物としては、特開2013−253224号公報の段落0042〜0045の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。市販品としては、例えばサートマー社製のエチレンオキシ鎖を4個有する4官能アクリレートであるSR−494、日本化薬株式会社製のペンチレンオキシ鎖を6個有する6官能アクリレートであるDPCA−60、イソブチレンオキシ鎖を3個有する3官能アクリレートであるTPA−330などが挙げられる。
本発明がエチレン性不飽和結合を有する基を含む化合物を含有する場合、エチレン性不飽和結合を有する基を含む化合物の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましく、5質量%以上が特に好ましい。上限は、80質量%以下が好ましく、75質量%以下がより好ましく、70質量%以下が更に好ましい。
エポキシ基を有する化合物(以下、エポキシ化合物ともいう)としては、単官能または多官能グリシジルエーテル化合物や、多官能脂肪族グリシジルエーテル化合物などが挙げられる。また、エポキシ化合物としては、脂環式エポキシ基を有する化合物を用いることもできる。
エポキシ化合物としては、1分子にエポキシ基を1つ以上有する化合物が挙げられる。エポキシ化合物はエポキシ基を1分子に1〜100個有する化合物が好ましい。エポキシ基の上限は、例えば、10個以下とすることもでき、5個以下とすることもできる。エポキシ基の下限は2個以上が好ましい。
エポキシ化合物は、低分子化合物(例えば、分子量1000未満)でもよいし、高分子化合物(macromolecule)(例えば、分子量1000以上、ポリマーの場合は、重量平均分子量が1000以上)のいずれでもよい。エポキシ化合物の重量平均分子量は、2000〜100000が好ましい。重量平均分子量の上限は、10000以下が好ましく、5000以下がより好ましく、3000以下が更に好ましい。
エポキシ化合物の市販品としては、EHPE3150((株)ダイセル製)、EPICLON N−695(DIC(株)製)、アデカグリシロール ED−505((株)ADEKA製、エポキシ基含有モノマー)、マープルーフG−0150M、G−0105SA、G−0130SP、G−0250SP、G−1005S、G−1005SA、G−1010S、G−2050M、G−01100、G−01758(日油(株)製、エポキシ基含有ポリマー)などが挙げられる。また、エポキシ化合物としては、特開2013−011869号公報の段落番号0034〜0036、特開2014−043556号公報の段落番号0147〜0156、特開2014−089408号公報の段落番号0085〜0092に記載された化合物を用いることもできる。これらの内容は、本明細書に組み込まれる。
本発明の硬化性組成物がエポキシ化合物を含有する場合、エポキシ化合物の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましく、5質量%以上が特に好ましい。上限は、80質量%以下が好ましく、75質量%以下がより好ましく、70質量%以下が更に好ましい。
また、本発明の硬化性組成物が、ラジカル重合性化合物とエポキシ化合物とを含む場合、両者の質量比は、ラジカル重合性化合物:エポキシ化合物=100:1〜100:400が好ましく、100:1〜100:100がより好ましい。
メチロール基を有する化合物(以下、メチロール化合物ともいう)としては、メチロール基が、窒素原子または芳香族環を形成する炭素原子に結合している化合物が挙げられる。また、アルコキシメチル基を有する化合物(以下、アルコキシメチル化合物ともいう)としては、アルコキシメチル基が、窒素原子または芳香族環を形成する炭素原子に結合している化合物が挙げられる。アルコキシメチル基またはメチロール基が、窒素原子に結合している化合物としては、アルコキシメチル化メラミン、メチロール化メラミン、アルコキシメチル化ベンゾグアナミン、メチロール化ベンゾグアナミン、アルコキシメチル化グリコールウリル、メチロール化グリコールウリル、アルコキシメチル化尿素およびメチロール化尿素等が好ましい。また、特開2004−295116号公報の段落0134〜0147、特開2014−089408の段落0095〜0126の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本発明の硬化性組成物がメチロール化合物を含有する場合、メチロール化合物の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましく、5質量%以上が特に好ましい。上限は、80質量%以下が好ましく、75質量%以下がより好ましく、70質量%以下が更に好ましい。
本発明の硬化性組成物がアルコキシメチル化合物を含有する場合、アルコキシメチル化合物の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましく、5質量%以上が特に好ましい。上限は、80質量%以下が好ましく、75質量%以下がより好ましく、70質量%以下が更に好ましい。
(樹脂)
本発明の硬化性組成物は、硬化性化合物として樹脂を用いることができる。硬化性化合物は、樹脂を少なくとも含むものを用いることが好ましい。樹脂は分散剤として用いることもできる。なお、顔料などを分散させるために用いられる樹脂を分散剤ともいう。ただし、樹脂のこのような用途は一例であって、このような用途以外の目的で樹脂を使用することもできる。なお、架橋性基を有する樹脂は、架橋性化合物にも該当する。
樹脂の重量平均分子量(Mw)は、2,000〜2,000,000が好ましい。上限は、1,000,000以下が好ましく、500,000以下がより好ましい。下限は、3,000以上が好ましく、5,000以上がより好ましい。
樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、エン・チオール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリアリーレンエーテルホスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂などが挙げられる。これらの樹脂から1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。エポキシ樹脂としては、上述した架橋性化合物の欄で説明したエポキシ化合物として例示した化合物のうちポリマータイプの化合物が挙げられる。また、樹脂は、国際公開WO2016/088645号公報の実施例に記載の樹脂、特開2016−146619号公報の実施例に記載の樹脂を用いることもできる。
本発明で用いる樹脂は、酸基を有していてもよい。酸基としては、例えば、カルボキシル基、リン酸基、スルホ基、フェノール性ヒドロキシ基などが挙げられる。これら酸基は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。酸基を有する樹脂はアルカリ可溶性樹脂として好ましく用いることができる。本発明の硬化性組成物がアルカリ可溶性樹脂を含有することにより、アルカリ現像によって所望のパターンを形成できる。
酸基を有する樹脂としては、側鎖にカルボキシル基を有するポリマーが好ましい。具体例としては、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体、ノボラック樹脂などのアルカリ可溶性フェノール樹脂、側鎖にカルボキシル基を有する酸性セルロース誘導体、ヒドロキシ基を有するポリマーに酸無水物を付加させた樹脂が挙げられる。特に、(メタ)アクリル酸と、これと共重合可能な他のモノマーとの共重合体が、アルカリ可溶性樹脂として好適である。(メタ)アクリル酸と共重合可能な他のモノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、ビニル化合物などが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートおよびアリール(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等、ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、グリシジルメタクリレート、アクリロニトリル、ビニルアセテート、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー等が挙げられる。また他のモノマーとしては、特開平10−300922号公報に記載のN位置換マレイミドモノマー、例えば、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等を用いることもできる。なお、これらの(メタ)アクリル酸と共重合可能な他のモノマーは1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
酸基を有する樹脂は、更に架橋性基を有する繰り返し単位を含有していてもよい。酸基を有する樹脂が、更に架橋性基を有する繰り返し単位を含有する場合、全繰り返し単位中における架橋性基を有する繰り返し単位の含有量は、10〜90モル%であることが好ましく、20〜90モル%であることがより好ましく、20〜85モル%であることがさらに好ましい。また、全繰り返し単位中における酸基を有する繰り返し単位の含有量は、1〜50モル%であることが好ましく、5〜40モル%であることがより好ましく、5〜30モル%であることがさらに好ましい。
酸基を有する樹脂としては、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/他のモノマーからなる多元共重合体が好ましく用いることができる。また、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを共重合したもの、特開平7−140654号公報に記載の、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート/ポリメチルメタクリレートマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体なども好ましく用いることができる。
酸基を有する樹脂は、下記式(ED1)で示される化合物および/または下記式(ED2)で表される化合物(以下、これらの化合物を「エーテルダイマー」と称することもある。)を含むモノマー成分を重合してなるポリマーを含むことも好ましい。
式(ED1)中、R1およびR2は、各々独立に水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基を表す。
式(ED2)中、Rは、水素原子または炭素数1〜30の有機基を表す。式(ED2)の具体例としては、特開2010−168539号公報の記載を参酌できる。
エーテルダイマーの具体例としては、例えば、特開2013−29760号公報の段落番号0317を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。エーテルダイマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
酸基を有する樹脂は、下記式(X)で示される化合物に由来する繰り返し単位を含んでいてもよい。
式(X)において、R1は、水素原子またはメチル基を表し、R2は炭素数2〜10のアルキレン基を表し、R3は、水素原子またはベンゼン環を含んでもよい炭素数1〜20のアルキル基を表す。nは1〜15の整数を表す。
酸基を有する樹脂としては、特開2012−208494号公報の段落番号0558〜0571(対応する米国特許出願公開第2012/0235099号明細書の段落番号0685〜0700)の記載、特開2012−198408号公報の段落番号0076〜0099の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
酸基を有する樹脂の酸価は、30〜200mgKOH/gが好ましい。下限は、50mgKOH/g以上が好ましく、70mgKOH/g以上がより好ましい。上限は、150mgKOH/g以下が好ましく、120mgKOH/g以下がより好ましい。
酸基を有する樹脂としては、例えば下記構造の樹脂などが挙げられる。以下の構造式中、Meはメチル基を表す。
本発明の硬化性組成物は、樹脂として、式(A3−1)〜(A3−7)で表される繰り返し単位を有する樹脂を用いることも好ましい。
式中、R5は水素原子またはアルキル基を表し、L4〜L7は各々独立に単結合または2価の連結基を表し、R10〜R13は各々独立にアルキル基またはアリール基を表す。R14およびR15は、各々独立に水素原子または置換基を表す。
R5は、水素原子またはアルキル基を表す。アルキル基の炭素数は、1〜5が好ましく、1〜3がさらに好ましく、1が特に好ましい。R5は、水素原子またはメチル基が好ましい。
L4〜L7は、各々独立に単結合または2価の連結基を表す。2価の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO2−、−NR10−(R10は水素原子あるいはアルキル基を表し、水素原子が好ましい)、または、これらの組み合わせからなる基が挙げられ、アルキレン基、アリーレン基およびアルキレン基の少なくとも1つと−O−との組み合わせからなる基が好ましい。アルキレン基の炭素数は、1〜30が好ましく、1〜15がより好ましく、1〜10がさらに好ましい。アルキレン基は、置換基を有していてもよいが、無置換が好ましい。アルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよい。また、環状のアルキレン基は、単環、多環のいずれであってもよい。アリーレン基の炭素数は、6〜18が好ましく、6〜14がより好ましく、6〜10がさらに好ましい。
R10〜R13が表すアルキル基は、直鎖状、分岐状または環状のいずれでもよく、環状が好ましい。アルキル基は置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。アルキル基の炭素数は、1〜30が好ましく、1〜20がより好ましく、1〜10がさらに好ましい。R10〜R13が表すアリール基の炭素数は6〜18が好ましく、6〜12がより好ましく、6がさらに好ましい。R10は、環状のアルキル基またはアリール基が好ましい。R11、R12は、直鎖状または分岐状のアルキル基が好ましい。R13は、直鎖状のアルキル基、分岐状のアルキル基、または、アリール基が好ましい。
R14およびR15が表す置換基は、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ヘテロアリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、−NRa1Ra2、−CORa3、−COORa4、−OCORa5、−NHCORa6、−CONRa7Ra8、−NHCONRa9Ra10、−NHCOORa11、−SO2Ra12、−SO2ORa13、−NHSO2Ra14または−SO2NRa15Ra16が挙げられる。Ra1〜Ra16は、各々独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または、ヘテロアリール基を表す。なかでも、R14およびR15の少なくとも一方は、シアノ基または−COORa4を表すことが好ましい。Ra4は、水素原子、アルキル基またはアリール基を表すことが好ましい。
式(A3−7)で表される繰り返し単位を有する樹脂の市販品としては、ARTON F4520(JSR(株)製)などが挙げられる。また、式(A3−7)で表される繰り返し単位を有する樹脂の詳細については、特開2011−100084号公報の段落番号0053〜0075、0127〜0130の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
本発明の硬化性組成物は、樹脂として分散剤を含有することができる。特に、顔料を用いた場合、分散剤を含むことが好ましい。分散剤は、酸性分散剤(酸性樹脂)、塩基性分散剤(塩基性樹脂)が挙げられる。分散剤は、酸性分散剤を少なくとも含むことが好ましく、酸性分散剤のみであることがより好ましい。分散剤が、酸性分散剤を少なくとも含むことにより、顔料の分散性が向上し、優れた現像性が得られる。このため、フォトリソグラフィ法にて好適にパターン形成することができる。なお、分散剤が酸性分散剤のみであるとは、例えば、分散剤の全質量中における、酸性分散剤の含有量が99質量%以上であることが好ましく、99.9質量%以上とすることもできる。
ここで、酸性分散剤(酸性樹脂)とは、酸基の量が塩基性基の量よりも多い樹脂を表す。酸性分散剤(酸性樹脂)は、酸基の量と塩基性基の量の合計量を100モル%としたときに、酸基の量が70モル%以上を占める樹脂が好ましく、実質的に酸基のみからなる樹脂がより好ましい。酸性分散剤(酸性樹脂)が有する酸基は、カルボキシル基が好ましい。酸性分散剤(酸性樹脂)の酸価は、40〜105mgKOH/gが好ましく、50〜105mgKOH/gがより好ましく、60〜105mgKOH/gがさらに好ましい。
また、塩基性分散剤(塩基性樹脂)とは、塩基性基の量が酸基の量よりも多い樹脂を表す。塩基性分散剤(塩基性樹脂)は、酸基の量と塩基性基の量の合計量を100モル%としたときに、塩基性基の量が50モル%を超える樹脂が好ましい。塩基性分散剤が有する塩基性基は、アミンが好ましい。
分散剤として用いる樹脂は、酸基を有する繰り返し単位を含むことが好ましい。分散剤として用いる樹脂が酸基を有する繰り返し単位を含むことにより、フォトリソグラフィ法によりパターン形成する際、画素の下地に発生する残渣をより低減することができる。
分散剤として用いる樹脂は、グラフト共重合体であることも好ましい。グラフト共重合体は、グラフト鎖によって溶剤との親和性を有するために、顔料の分散性、及び、経時後の分散安定性に優れる。グラフト共重合体の詳細は、特開2012−255128号公報の段落番号0025〜0094の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。また、グラフト共重合体の具体例は、下記の樹脂が挙げられる。以下の樹脂は酸基を有する樹脂(アルカリ可溶性樹脂)でもある。また、グラフト共重合体として特開2012−255128号公報の段落番号0072〜0094に記載の樹脂が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
また、本発明において、樹脂(分散剤)は、主鎖及び側鎖の少なくとも一方に窒素原子を含むオリゴイミン系分散剤を用いることも好ましい。オリゴイミン系分散剤としては、pKa14以下の官能基を有する部分構造Xを有する構造単位と、原子数40〜10,000の側鎖Yを含む側鎖とを有し、かつ主鎖及び側鎖の少なくとも一方に塩基性窒素原子を有する樹脂が好ましい。塩基性窒素原子とは、塩基性を呈する窒素原子であれば特に制限はない。
オリゴイミン系分散剤については、特開2012−255128号公報の段落番号0102〜0166の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。オリゴイミン系分散剤の具体例としては、例えば、以下が挙げられる。以下の樹脂は酸基を有する樹脂(アルカリ可溶性樹脂)でもある。また、オリゴイミン系分散剤としては、特開2012−255128号公報の段落番号0168〜0174に記載の樹脂を用いることもできる。
分散剤は、市販品としても入手可能であり、そのような具体例としては、Disperbyk−111(BYKChemie社製)などが挙げられる。また、特開2014−130338号公報の段落番号0041〜0130に記載された顔料分散剤を用いることもでき、この内容は本明細書に組み込まれる。また、上述した酸基を有する樹脂などを分散剤として用いることもできる。
本発明の硬化性組成物において、樹脂の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましく、20質量%以上が特に好ましい。上限は、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましい。
本発明の硬化性組成物が酸基を有する樹脂を含む場合、酸基を有する樹脂の含有量は、組成物の全固形分に対して、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましく、20質量%以上が特に好ましい。上限は、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましい。
また、本発明の硬化性組成物が、エチレン性不飽和結合を有する基を有するモノマータイプの架橋性化合物と、樹脂とを含む場合、エチレン性不飽和結合を有する基を有するモノマータイプの架橋性化合物と樹脂との質量比は、エチレン性不飽和結合を有する基を有するモノマータイプの架橋性化合物/樹脂=0.4〜1.4であることが好ましい。上記質量比の下限は0.5以上が好ましく、0.6以上がより好ましい。上記質量比の上限は1.3以下が好ましく、1.2以下がより好ましい。上記質量比が上記範囲であれば、矩形性に優れたパターンを形成し易い。
また、エチレン性不飽和結合を有する基を有するモノマータイプの架橋性化合物と、酸基を有する樹脂との質量比は、エチレン性不飽和結合を有する基を有するモノマータイプの架橋性化合物/酸基を有する樹脂=0.4〜1.4であることが好ましい。上記質量比の下限は0.5以上が好ましく、0.6以上がより好ましい。上記質量比の上限は1.3以下が好ましく、1.2以下がより好ましい。上記質量比が上記範囲であれば、矩形性に優れたパターンを形成し易い。
<<光開始剤>>
本発明の硬化性組成物は、光開始剤を含有することができる。光開始剤としては、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤などが挙げられる。硬化性化合物の種類に応じて選択して用いることが好ましい。硬化性化合物としてラジカル重合性化合物を用いた場合においては、光開始剤として光ラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。また、硬化性化合物としてカチオン重合性化合物を用いた場合においては、光開始剤として光カチオン重合開始剤を用いることが好ましい。光開始剤としては、特に制限はなく、公知の光開始剤の中から適宜選択することができる。例えば、紫外領域から可視領域の光線に対して感光性を有する化合物が好ましい。
光開始剤の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対し0.1〜50質量%が好ましく、0.5〜30質量%がより好ましく、1〜20質量%が更に好ましい。光開始剤の含有量が上記範囲であれば、より良好な感度とパターン形成性が得られる。本発明の硬化性組成物は、光開始剤を1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。光開始剤を2種類以上含む場合は、その合計量が上記範囲となることが好ましい。
(光ラジカル重合開始剤)
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を有する化合物、オキサジアゾール骨格を有する化合物など)、アシルホスフィン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、α−ヒドロキシケトン化合物、α−アミノケトン化合物などが挙げられる。光ラジカル重合開始剤は、露光感度の観点から、トリハロメチルトリアジン化合物、ベンジルジメチルケタール化合物、α−ヒドロキシケトン化合物、α−アミノケトン化合物、アシルホスフィン化合物、ホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシム化合物、トリアリールイミダゾールダイマー、オニウム化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物、シクロペンタジエン−ベンゼン−鉄錯体、ハロメチルオキサジアゾール化合物および3−アリール置換クマリン化合物が好ましく、オキシム化合物、α−ヒドロキシケトン化合物、α−アミノケトン化合物、および、アシルホスフィン化合物から選ばれる化合物がより好ましく、オキシム化合物が更に好ましい。光重合開始剤としては、特開2014−130173号公報の段落0065〜0111の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
α−ヒドロキシケトン化合物の市販品としては、IRGACURE−184、DAROCUR−1173、IRGACURE−500、IRGACURE−2959、IRGACURE−127(以上、BASF社製)などが挙げられる。α−アミノケトン化合物の市販品としては、IRGACURE−907、IRGACURE−369、IRGACURE−379、及び、IRGACURE−379EG(以上、BASF社製)などが挙げられる。アシルホスフィン化合物の市販品としては、IRGACURE−819、DAROCUR−TPO(以上、BASF社製)などが挙げられる。
オキシム化合物としては、特開2001−233842号公報に記載の化合物、特開2000−80068号公報に記載の化合物、特開2006−342166号公報に記載の化合物、特開2016−21012号公報に記載などを用いることができる。本発明において好適に用いることができるオキシム化合物としては、例えば、3−ベンゾイルオキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−(4−トルエンスルホニルオキシ)イミノブタン−2−オン、及び2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オンなどが挙げられる。また、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.1653−1660)、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.156−162)、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995年、pp.202−232)、特開2000−66385号公報、特開2000−80068号公報、特表2004−534797号公報、特開2006−342166号公報に記載の化合物等も挙げられる。市販品としては、IRGACURE−OXE01、IRGACURE−OXE02、IRGACURE−OXE03、IRGACURE−OXE04(以上、BASF社製)も好適に用いられる。また、TR−PBG−304(常州強力電子新材料有限公司製)、アデカアークルズNCI−831((株)ADEKA製)、アデカアークルズNCI−930((株)ADEKA製)、アデカオプトマーN−1919((株)ADEKA製、特開2012−14052号公報に記載の光重合開始剤2)も用いることができる。
本発明において、光ラジカル重合開始剤として、フルオレン環を有するオキシム化合物を用いることもできる。フルオレン環を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2014−137466号公報に記載の化合物が挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれる。
本発明において、光ラジカル重合開始剤として、フッ素原子を有するオキシム化合物を用いることもできる。フッ素原子を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2010−262028号公報に記載の化合物、特表2014−500852号公報に記載の化合物24、36〜40、特開2013−164471号公報に記載の化合物(C−3)などが挙げられる。これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本発明において、光ラジカル重合開始剤として、ニトロ基を有するオキシム化合物を用いることができる。ニトロ基を有するオキシム化合物は、二量体とすることも好ましい。ニトロ基を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2013−114249号公報の段落番号0031〜0047、特開2014−137466号公報の段落番号0008〜0012、0070〜0079に記載されている化合物、特許4223071号公報の段落番号0007〜0025に記載されている化合物、アデカアークルズNCI−831((株)ADEKA製)が挙げられる。
本発明において好ましく使用されるオキシム化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
オキシム化合物は、350nm〜500nmの波長領域に吸収極大を有する化合物が好ましく、360nm〜480nmの波長領域に吸収極大を有する化合物がより好ましい。また、オキシム化合物は、365nm及び405nmの波長の光に対する吸光度が高い化合物が好ましい。
オキシム化合物の365nm又は405nmにおけるモル吸光係数は、感度の観点から、1,000〜300,000であることが好ましく、2,000〜300,000であることがより好ましく、5,000〜200,000であることが特に好ましい。
化合物のモル吸光係数は、公知の方法を用いて測定することができる。例えば、分光光度計(Varian社製Cary−5 spectrophotometer)にて、酢酸エチル溶媒を用い、0.01g/Lの濃度で測定することが好ましい。
光ラジカル重合開始剤は、オキシム化合物とα−アミノケトン化合物とを含むことも好ましい。両者を併用することで、現像性が向上し、矩形性に優れたパターンを形成しやすい。オキシム化合物とα−アミノケトン化合物とを併用する場合、オキシム化合物100質量部に対して、α−アミノケトン化合物が50〜600質量部が好ましく、150〜400質量部がより好ましい。
光ラジカル重合開始剤の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対し0.1〜50質量%が好ましく、0.5〜30質量%がより好ましく、1〜20質量%が更に好ましい。光ラジカル重合開始剤の含有量が上記範囲であれば、より良好な感度とパターン形成性が得られる。本発明の硬化性組成物は、光ラジカル重合開始剤を1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。光ラジカル重合開始剤を2種類以上含む場合は、その合計量が上記範囲となることが好ましい。
(光カチオン重合開始剤)
光カチオン重合開始剤としては、光酸発生剤が挙げられる。光酸発生剤としては、光照射により分解して酸を発生する、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩などのオニウム塩化合物、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン、o−ニトロベンジルスルホネート等のスルホネート化合物などが挙られる。光カチオン重合開始剤の詳細については特開2009−258603号公報の段落番号0139〜0214の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
光カチオン重合開始剤は市販品を用いることもできる。光カチオン重合開始剤の市販品としては、(株)ADEKA製のアデカアークルズ SPシリーズ(例えば、アデカアークルズSP−606など)、(株)BASF製 IRGACURE250、IRGACURE270、IRGACURE290などが挙げられる。
光カチオン重合開始剤の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対し0.1〜50質量%が好ましく、0.5〜30質量%がより好ましく、1〜20質量%が更に好ましい。光カチオン重合開始剤の含有量が上記範囲であれば、より良好な感度とパターン形成性が得られる。本発明の硬化性組成物は、光カチオン重合開始剤を1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。光カチオン重合開始剤を2種類以上含む場合は、その合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<酸無水物、多価カルボン酸>>
本発明の硬化性組成物がエポキシ化合物を含む場合、酸無水物および多価カルボン酸から選ばれる少なくとも1種をさらに含むことが好ましい。
酸無水物としては具体的には無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水グルタル酸、2,4−ジエチル無水グルタル酸、3,3−ジメチル無水グルタル酸、ブタンテトラカルボン酸無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物、等の酸無水物が挙げられる。特にメチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、2,4−ジエチル無水グルタル酸、ブタンテトラカルボン酸無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物等が、耐光性、透明性、作業性の観点から好ましい。
多価カルボン酸は少なくとも2つのカルボキシル基を有する化合物である。なお、以下の化合物に幾何異性体又は光学異性体が存在する場合は特に制限されない。多価カルボン酸としては、2〜6官能のカルボン酸が好ましく、例えば、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、1,2,3−プロパントリカルボン酸、1,3,5−ペンタントリカルボン酸、クエン酸等のアルキルトリカルボン酸類;フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、シクロヘキサントリカルボン酸、ナジック酸、メチルナジック酸等の脂肪族環状多価カルボン酸類;リノレン酸やオレイン酸などの不飽和脂肪酸の多量体およびそれらの還元物であるダイマー酸類;ブタン二酸、リンゴ酸、ヘキサン二酸、ペンタン二酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、ノナン二酸、デカン二酸等の直鎖アルキル二酸類等が好ましく、さらにはブタン二酸、ヘキサン二酸、ペンタン二酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、ノナン二酸、デカン二酸が好ましく、特にブタン二酸が、耐熱性、膜の透明性の観点からより好ましい。
酸無水物および多価カルボン酸の含有量は、エポキシ化合物100質量部に対し、0.01〜20質量部が好ましく、0.01〜10質量部がより好ましく、0.1〜6.0質量部がさらに好ましい。
<<紫外線吸収剤>>
本発明の硬化性組成物は、紫外線吸収剤を含有することができる。紫外線吸収剤としては、共役ジエン化合物、アミノブタジエン化合物、メチルジベンゾイル化合物、クマリン化合物、サリシレート化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、アクリロニトリル化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン化合物などを用いることができる。これらの詳細については、特開2012−208374号公報の段落番号0052〜0072、特開2013−68814号公報の段落番号0317〜0334の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。共役ジエン化合物の市販品としては、例えば、UV−503(大東化学(株)製)などが挙げられる。また、ベンゾトリアゾール化合物としてはミヨシ油脂製のMYUAシリーズ(化学工業日報、2016年2月1日)を用いてもよい。
本発明の硬化性組成物において、紫外線吸収剤の含有量は、本発明の硬化性組成物の全固形分に対して、0.01〜10質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましい。本発明において、紫外線吸収剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<有彩色着色剤>>
本発明の硬化性組成物は、有彩色着色剤を含有することができる。本発明において、有彩色着色剤とは、白色着色剤および黒色着色剤以外の着色剤を意味する。有彩色着色剤は、波長400nm以上650nm未満の範囲に吸収を有する着色剤が好ましい。
本発明において、有彩色着色剤は、顔料であってもよく、染料であってもよい。顔料は、有機顔料であることが好ましい。有機顔料としては、以下が挙げることができる。
カラーインデックス(C.I.)Pigment Yellow 1,2,3,4,5,6,10,11,12,13,14,15,16,17,18,20,24,31,32,34,35,35:1,36,36:1,37,37:1,40,42,43,53,55,60,61,62,63,65,73,74,77,81,83,86,93,94,95,97,98,100,101,104,106,108,109,110,113,114,115,116,117,118,119,120,123,125,126,127,128,129,137,138,139,147,148,150,151,152,153,154,155,156,161,162,164,166,167,168,169,170,171,172,173,174,175,176,177,179,180,181,182,185,187,188,193,194,199,213,214等(以上、黄色顔料)、
C.I.Pigment Orange 2,5,13,16,17:1,31,34,36,38,43,46,48,49,51,52,55,59,60,61,62,64,71,73等(以上、オレンジ色顔料)、
C.I.Pigment Red 1,2,3,4,5,6,7,9,10,14,17,22,23,31,38,41,48:1,48:2,48:3,48:4,49,49:1,49:2,52:1,52:2,53:1,57:1,60:1,63:1,66,67,81:1,81:2,81:3,83,88,90,105,112,119,122,123,144,146,149,150,155,166,168,169,170,171,172,175,176,177,178,179,184,185,187,188,190,200,202,206,207,208,209,210,216,220,224,226,242,246,254,255,264,270,272,279等(以上、赤色顔料)、
C.I.Pigment Green 7,10,36,37,58,59等(以上、緑色顔料)、
C.I.Pigment Violet 1,19,23,27,32,37,42等(以上、紫色顔料)、
C.I.Pigment Blue 1,2,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,22,60,64,66,79,80等(以上、青色顔料)、
これら有機顔料は、単独若しくは種々組合せて用いることができる。
染料としては特に制限はなく、公知の染料が使用できる。化学構造としては、ピラゾールアゾ系、アニリノアゾ系、トリアリールメタン系、アントラキノン系、アントラピリドン系、ベンジリデン系、オキソノール系、ピラゾロトリアゾールアゾ系、ピリドンアゾ系、シアニン系、フェノチアジン系、ピロロピラゾールアゾメチン系、キサンテン系、フタロシアニン系、ベンゾピラン系、インジゴ系、ピロメテン系等の染料が使用できる。また、これらの染料の多量体を用いてもよい。また、特開2015−028144号公報、特開2015−34966号公報に記載の染料を用いることもできる。
本発明の硬化性組成物が、有彩色着色剤を含有する場合、有彩色着色剤の含有量は、本発明の硬化性組成物の全固形分に対して0.1〜70質量%が好ましい。下限は、0.5質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましい。上限は、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
有彩色着色剤の含有量は、近赤外線吸収色素100質量部に対し、10〜1000質量部が好ましく、50〜800質量部がより好ましい。
また、有彩色着色剤と近赤外線吸収色素との合計量は、本発明の硬化性組成物の全固形分に対して1〜80質量%とすることが好ましい。下限は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。上限は、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましい。
本発明の硬化性組成物が、有彩色着色剤を2種以上含む場合、その合計量が上記範囲内であることが好ましい。
<<赤外線を透過させて可視光を遮光する色材>>
本発明の硬化性組成物は、赤外線を透過させて可視光を遮光する色材(以下、可視光を遮光する色材ともいう)を含有することもできる。
本発明において、可視光を遮光する色材は、紫色から赤色の波長領域の光を吸収する色材であることが好ましい。また、本発明において、可視光を遮光する色材は、波長450〜650nmの波長領域の光を遮光する色材であることが好ましい。また、可視光を遮光する色材は、波長900〜1300nmの光を透過する色材であることが好ましい。
本発明において、可視光を遮光する色材は、以下の(A)および(B)の少なくとも一方の要件を満たすことが好ましい。
(A):2種類以上の有彩色着色剤を含み、2種以上の有彩色着色剤の組み合わせで黒色を形成している。
(B):有機系黒色着色剤を含む。
有彩色着色剤としては、上述したものが挙げられる。有機系黒色着色剤としては、例えば、ビスベンゾフラノン化合物、アゾメチン化合物、ペリレン化合物、アゾ系化合物などが挙げられ、ビスベンゾフラノン化合物、ペリレン化合物が好ましい。ビスベンゾフラノン化合物としては、特表2010−534726号公報、特表2012−515233号公報、特表2012−515234号公報などに記載の化合物が挙げられ、例えば、BASF社製の「Irgaphor Black」として入手可能である。ペリレン化合物としては、C.I.Pigment Black 31、32などが挙げられる。アゾメチン化合物としては、特開平1−170601号公報、特開平2−34664号公報などに記載の化合物が挙げられ、例えば、大日精化社製の「クロモファインブラックA1103」として入手できる。
2種以上の有彩色着色剤の組み合わせで黒色を形成する場合の、有彩色着色剤の組み合わせとしては、例えば以下が挙げられる。
(1)黄色着色剤、青色着色剤、紫色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
(2)黄色着色剤、青色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
(3)黄色着色剤、紫色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
(4)黄色着色剤および紫色着色剤を含有する態様。
(5)緑色着色剤、青色着色剤、紫色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
(6)紫色着色剤およびオレンジ色着色剤を含有する態様。
(7)緑色着色剤、紫色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
(8)緑色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
本発明の硬化性組成物が、可視光を遮光する色材を含有する場合、可視光を遮光する色材の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましく、20質量%以下がより一層好ましく、15質量%以下が特に好ましい。下限は、例えば、0.01質量%以上とすることができ、0.5質量%以上とすることもできる。
<<顔料誘導体>>
本発明の硬化性組成物は、更に顔料誘導体を含有することができる。顔料誘導体としては、顔料の一部を、酸基、塩基性基、塩構造を有する基又はフタルイミドメチル基で置換した構造を有する化合物が挙げられる。顔料誘導体としては、式(B1)で表される化合物が好ましい。
式(B1)中、Pは色素構造を表し、Lは単結合または連結基を表し、Xは酸基、塩基性基、塩構造を有する基またはフタルイミドメチル基を表し、mは1以上の整数を表し、nは1以上の整数を表し、mが2以上の場合は複数のLおよびXは互いに異なっていてもよく、nが2以上の場合は複数のXは互いに異なっていてもよい。
式(B1)中、Pは、色素構造を表し、ピロロピロール色素構造、ジケトピロロピロール色素構造、キナクリドン色素構造、アントラキノン色素構造、ジアントラキノン色素構造、ベンゾイソインドール色素構造、チアジンインジゴ色素構造、アゾ色素構造、キノフタロン色素構造、フタロシアニン色素構造、ナフタロシアニン色素構造、ジオキサジン色素構造、ペリレン色素構造、ペリノン色素構造、ベンゾイミダゾロン色素構造、ベンゾチアゾール色素構造、ベンゾイミダゾール色素構造およびベンゾオキサゾール色素構造から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ピロロピロール色素構造、ジケトピロロピロール色素構造、キナクリドン色素構造およびベンゾイミダゾロン色素構造から選ばれる少なくとも1種が更に好ましく、ピロロピロール色素構造が特に好ましい。
式(B1)中、Lは単結合または連結基を表す。連結基としては、1〜100個の炭素原子、0〜10個の窒素原子、0〜50個の酸素原子、1〜200個の水素原子、および0〜20個の硫黄原子から成り立つ基が好ましく、無置換でもよく、置換基を更に有していてもよい。
式(B1)中、Xは、酸基、塩基性基、塩構造を有する基またはフタルイミドメチル基を表し、酸基または塩基性基が好ましい。酸基としては、カルボキシル基、スルホ基等が挙げられる。塩基性基としてはアミノ基が挙げられる。
顔料誘導体としては、例えば、特開昭56−118462号公報、特開昭63−264674号公報、特開平1−217077号公報、特開平3−9961号公報、特開平3−26767号公報、特開平3−153780号公報、特開平3−45662号公報、特開平4−285669号公報、特開平6−145546号公報、特開平6−212088号公報、特開平6−240158号公報、特開平10−30063号公報、特開平10−195326号公報、国際公開WO2011/024896号公報の段落番号0086〜0098、国際公開WO2012/102399号公報の段落番号0063〜0094等に記載の化合物を用いることもでき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本発明の硬化性組成物が顔料誘導体を含有する場合、顔料誘導体の含有量は、顔料100質量部に対し、1〜50質量部が好ましい。下限値は、3質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。上限値は、40質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。顔料誘導体の含有量が上記範囲であれば、顔料の分散性を高めて、顔料の凝集を効率よく抑制できる。顔料誘導体は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<溶剤>>
本発明の硬化性組成物は、溶剤を含有することができる。溶剤としては、有機溶剤が挙げられる。溶剤の種類は、各成分の溶解性や組成物の塗布性を満足すれば基本的には特に制限はない。有機溶剤の例としては、例えば、エステル類、エーテル類、ケトン類、芳香族炭化水素類などが挙げられる。これらの詳細については、国際公開WO2015/166779号公報の段落番号0223を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。また、環状アルキル基が置換したエステル系溶剤、環状アルキル基が置換したケトン系溶剤を好ましく用いることもできる。有機溶剤の具体例としては、ジクロロメタン、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、酢酸シクロヘキシル、シクロペンタノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。本発明において有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ただし溶剤としての芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等)は、環境面等の理由により低減したほうがよい場合がある(例えば、有機溶剤全量に対して、50質量ppm(parts per million)以下とすることもでき、10質量ppm以下とすることもでき、1質量ppm以下とすることもできる)。
本発明においては、金属含有量の少ない溶剤を用いることが好ましく、溶剤の金属含有量は、例えば10質量ppb(parts per billion)以下であることが好ましい。必要に応じて質量ppt(parts per trillion)レベルの溶剤を用いてもよく、そのような高純度溶剤は例えば東洋合成社が提供している(化学工業日報、2015年11月13日)。
溶剤から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、蒸留(分子蒸留や薄膜蒸留等)やフィルタを用いたろ過を挙げることができる。ろ過に用いるフィルタのフィルタ孔径としては、10nm以下が好ましく、5nm以下がより好ましく、3nm以下が更に好ましい。フィルタの材質は、ポリテトラフロロエチレン、ポリエチレンまたはナイロンが好ましい。
溶剤は、異性体(原子数が同じであるが構造が異なる化合物)が含まれていてもよい。また、異性体は、1種のみが含まれていてもよいし、複数種含まれていてもよい。
本発明において、有機溶剤は、過酸化物の含有率が0.8mmol/L以下であることが好ましく、過酸化物を実質的に含まないことがより好ましい。
溶剤の含有量は、硬化性組成物の全量に対し、10〜90質量%であることが好ましく、20〜80質量%であることがより好ましく、25〜75質量%であることが更に好ましい。
<<重合禁止剤>>
本発明の硬化性組成物は、重合禁止剤を含有することができる。重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、tert−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン塩(アンモニウム塩、第一セリウム塩等)が挙げられる。中でも、p−メトキシフェノールが好ましい。重合禁止剤の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して、0.001〜5質量%が好ましい。
<<シランカップリング剤>>
本発明の硬化性組成物は、シランカップリング剤を含有することができる。本発明において、シランカップリング剤は、加水分解性基とそれ以外の官能基とを有するシラン化合物を意味する。また、加水分解性基とは、ケイ素原子に直結し、加水分解反応及び縮合反応の少なくともいずれかによってシロキサン結合を生じ得る置換基をいう。加水分解性基としては、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基などが挙げられ、アルコキシ基が好ましい。すなわち、シランカップリング剤は、アルコキシシリル基を有する化合物が好ましい。また、加水分解性基以外の官能基としては、例えば、ビニル基、スチリル基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、エポキシ基、オキセタニル基、アミノ基、ウレイド基、スルフィド基、イソシアネート基、フェニル基などが挙げられ、(メタ)アクリロイル基およびエポキシ基が好ましい。シランカップリング剤としては、特開2009−288703号公報の段落番号0018〜0036に記載の化合物、特開2009−242604号公報の段落番号0056〜0066に記載の化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
シランカップリング剤の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して、0.01〜15.0質量%が好ましく、0.05〜10.0質量%がより好ましい。シランカップリング剤は、1種類のみでもよく、2種類以上でもよい。2種類以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<界面活性剤>>
本発明の硬化性組成物は、界面活性剤を含有させてもよい。界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などの各種界面活性剤を使用することができる。界面活性剤は、国際公開WO2015/166779号公報の段落番号0238〜0245を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
本発明において、界面活性剤は、フッ素系界面活性剤であることが好ましい。本発明の硬化性組成物にフッ素系界面活性剤を含有させることで液特性(特に、流動性)がより向上し、省液性をより改善することができる。また、厚みムラの小さい膜を形成することもできる。
フッ素系界面活性剤中のフッ素含有率は、3〜40質量%が好適であり、より好ましくは5〜30質量%であり、特に好ましくは7〜25質量%である。フッ素含有率がこの範囲内であるフッ素系界面活性剤は、塗布膜の厚さの均一性や省液性の点で効果的であり、組成物中における溶解性も良好である。
フッ素系界面活性剤として具体的には、特開2014−41318号公報の段落番号0060〜0064(対応する国際公開2014/17669号公報の段落番号0060〜0064)等に記載の界面活性剤、特開2011−132503号公報の段落番号0117〜0132に記載の界面活性剤が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、メガファックF171、F172、F173、F176、F177、F141、F142、F143、F144、R30、F437、F475、F479、F482、F554、F780(以上、DIC(株)製)、フロラードFC430、FC431、FC171(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS−382、SC−101、SC−103、SC−104、SC−105、SC−1068、SC−381、SC−383、S−393、KH−40(以上、旭硝子(株)製)、PolyFox PF636、PF656、PF6320、PF6520、PF7002(以上、OMNOVA社製)等が挙げられる。
また、フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を含有する官能基を持つ分子構造で、熱を加えるとフッ素原子を含有する官能基の部分が切断されてフッ素原子が揮発するアクリル系化合物も好適に使用できる。このようなフッ素系界面活性剤としては、DIC(株)製のメガファックDSシリーズ(化学工業日報、2016年2月22日)(日経産業新聞、2016年2月23日)、例えばメガファックDS−21が挙げられる。
フッ素系界面活性剤は、ブロックポリマーを用いることもできる。例えば特開2011−89090号公報に記載された化合物が挙げられる。フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、アルキレンオキシ基(好ましくはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基)を2以上(好ましくは5以上)有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、を含む含フッ素高分子化合物も好ましく用いることができる。下記化合物も本発明で用いられるフッ素系界面活性剤として例示される。
上記の化合物の重量平均分子量は、好ましくは3,000〜50,000であり、例えば、14,000である。上記の化合物中、繰り返し単位の割合を示す%は質量%である。
また、フッ素系界面活性剤は、エチレン性不飽和基を側鎖に有する含フッ素重合体を用いることもできる。具体例としては、特開2010−164965号公報の段落番号0050〜0090および段落番号0289〜0295に記載された化合物、例えばDIC(株)製のメガファックRS−101、RS−102、RS−718K、RS−72−K等が挙げられる。フッ素系界面活性剤は、特開2015−117327号公報の段落番号0015〜0158に記載の化合物を用いることもできる。
ノニオン系界面活性剤としては、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン並びにそれらのエトキシレート及びプロポキシレート(例えば、グリセロールプロポキシレート、グリセロールエトキシレート等)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル、プルロニックL10、L31、L61、L62、10R5、17R2、25R2(BASF社製)、テトロニック304、701、704、901、904、150R1(BASF社製)、ソルスパース20000(日本ルーブリゾール(株)製)、NCW−101、NCW−1001、NCW−1002(和光純薬工業(株)製)、パイオニンD−6112、D−6112−W、D−6315(竹本油脂(株)製)、オルフィンE1010、サーフィノール104、400、440(日信化学工業(株)製)などが挙げられる。
界面活性剤の含有量は、本発明の硬化性組成物の全固形分に対して、0.001質量%〜5.0質量%が好ましく、0.005〜3.0質量%がより好ましい。界面活性剤は、1種類のみでもよく、2種類以上でもよい。2種類以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<その他成分>>
本発明の硬化性組成物は、必要に応じて、増感剤、硬化促進剤、フィラー、熱硬化促進剤、熱重合禁止剤、可塑剤及びその他の助剤類(例えば、導電性粒子、充填剤、消泡剤、難燃剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、表面張力調整剤、連鎖移動剤など)を含有してもよい。これらの成分を適宜含有させることにより、膜物性などの性質を調整することができる。これらの成分は、例えば、特開2012−003225号公報の段落番号0183(対応する米国特許出願公開第2013/0034812号明細書の段落番号0237)の記載、特開2008−250074号公報の段落番号0101〜0104、0107〜0109等の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。酸化防止剤としては、例えばフェノール化合物、リン系化合物(例えば特開2011−90147号公報の段落番号0042に記載の化合物)、チオエーテル化合物などを用いることができる。市販品としては、例えば(株)ADEKA製のアデカスタブシリーズ(AO−20、AO−30、AO−40、AO−50、AO−50F、AO−60、AO−60G、AO−80、AO−330など)が挙げられる。酸化防止剤の含有量は、本発明の硬化性組成物の全固形分に対して、0.01〜20質量%であることが好ましく、0.3〜15質量%であることがより好ましい。酸化防止剤は、1種類のみでもよく、2種類以上でもよい。2種類以上を使用する場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
本発明の硬化性組成物の粘度(23℃)は、例えば、塗布により膜を形成する場合、1〜100mPa・sであることが好ましい。下限は、2mPa・s以上がより好ましく、3mPa・s以上が更に好ましい。上限は、50mPa・s以下がより好ましく、30mPa・s以下が更に好ましく、15mPa・s以下が特に好ましい。
本発明の硬化性組成物の固形分濃度は、塗布方法などにより変更されるが、例えば、1〜50質量%であることが好ましい。下限は10質量%以上がより好ましい。上限は30質量%以下がより好ましい。
本発明の硬化性組成物の収容容器としては、特に限定はなく、公知の収容容器を用いることができる。また、収納容器として、原材料や組成物中への不純物混入を抑制することを目的に、容器内壁を6種6層の樹脂で構成する多層ボトルや6種の樹脂を用いて7層構造にしたボトルを使用することも好ましい。このような容器としては例えば特開2015−123351号公報に記載の容器が挙げられる。
本発明の硬化性組成物の用途は、特に限定されない。例えば、近赤外線カットフィルタなどの形成に好ましく用いることができる。また、本発明の硬化性組成物において、更に、可視光を遮光する色材を含有させることで、特定の波長以上の近赤外線のみを透過可能な赤外線透過フィルタを形成することもできる。
<硬化性組成物の調製方法>
本発明の硬化性組成物は、前述の成分を混合して調製できる。硬化性組成物の調製に際しては、全成分を同時に溶剤に溶解または分散して硬化性組成物を調製してもよいし、必要に応じては、各成分を適宜配合した2つ以上の溶液または分散液をあらかじめ調製し、使用時(塗布時)にこれらを混合して硬化性組成物を調製してもよい。
また、本発明の硬化性組成物が顔料などの粒子を含む場合は、粒子を分散させるプロセスを含むことが好ましい。粒子を分散させるプロセスにおいて、粒子の分散に用いる機械力としては、圧縮、圧搾、衝撃、剪断、キャビテーションなどが挙げられる。これらプロセスの具体例としては、ビーズミル、サンドミル、ロールミル、ボールミル、ペイントシェーカー、マイクロフルイダイザー、高速インペラー、サンドグラインダー、フロージェットミキサー、高圧湿式微粒化、超音波分散などが挙げられる。またサンドミル(ビーズミル)における粒子の粉砕においては、径の小さいビーズを使用する、ビーズの充填率を大きくする事等により粉砕効率を高めた条件で処理することが好ましい。また、粉砕処理後にろ過、遠心分離などで粗粒子を除去することが好ましい。また、粒子を分散させるプロセスおよび分散機は、「分散技術大全、株式会社情報機構発行、2005年7月15日」や「サスペンション(固/液分散系)を中心とした分散技術と工業的応用の実際 総合資料集、経営開発センター出版部発行、1978年10月10日」、特開2015−157893号公報の段落番号0022に記載のプロセス及び分散機を好適に使用出来る。また粒子を分散させるプロセスにおいては、ソルトミリング工程にて粒子の微細化処理を行ってもよい。ソルトミリング工程に用いられる素材、機器、処理条件等は、例えば特開2015−194521号公報、特開2012−046629号公報の記載を参酌できる。
硬化性組成物の調製にあたり、異物の除去や欠陥の低減などの目的で、硬化性組成物をフィルタでろ過することが好ましい。フィルタとしては、従来からろ過用途等に用いられているフィルタであれば特に限定されることなく用いることができる。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、ナイロン(例えばナイロン−6、ナイロン−6,6)等のポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂(高密度、超高分子量のポリオレフィン樹脂を含む)等の素材を用いたフィルタが挙げられる。これら素材の中でもポリプロピレン(高密度ポリプロピレンを含む)およびナイロンが好ましい。
フィルタの孔径は、0.01〜7.0μm程度が適しており、好ましくは0.01〜3.0μm程度であり、更に好ましくは0.05〜0.5μm程度である。フィルタの孔径が上記範囲であれば、微細な異物を確実に除去できる。また、ファイバ状のろ材を用いることも好ましい。ファイバ状のろ材としては、例えばポリプロピレンファイバ、ナイロンファイバ、グラスファイバ等が挙げられる。具体的には、ロキテクノ社製のSBPタイプシリーズ(SBP008など)、TPRタイプシリーズ(TPR002、TPR005など)、SHPXタイプシリーズ(SHPX003など)のフィルタカートリッジが挙げられる。
フィルタを使用する際、異なるフィルタ(例えば、第1のフィルタと第2のフィルタなど)を組み合わせてもよい。その際、各フィルタでのろ過は、1回のみでもよいし、2回以上行ってもよい。
また、上述した範囲内で異なる孔径のフィルタを組み合わせてもよい。ここでの孔径は、フィルタメーカーの公称値を参照することができる。市販のフィルタとしては、例えば、日本ポール株式会社(DFA4201NXEYなど)、アドバンテック東洋株式会社、日本インテグリス株式会社(旧日本マイクロリス株式会社)又は株式会社キッツマイクロフィルタ等が提供する各種フィルタの中から選択することができる。
第2のフィルタは、第1のフィルタと同様の素材等で形成されたものを使用することができる。
また、第1のフィルタでのろ過は、分散液のみに対して行い、他の成分を混合した後で、第2のフィルタでろ過を行ってもよい。
<膜、積層体>
次に、本発明の膜について説明する。本発明の膜は、上述した本発明の硬化性組成物から得られるものである。本発明の膜は、近赤外線カットフィルタや赤外線透過フィルタとして好ましく用いることができる。また、熱線遮蔽フィルタとして用いることもできる。本発明の膜は、パターンを有していてもよく、パターンを有さない膜(平坦膜)であってもよい。また、本発明の膜は、支持体上に積層して用いてもよく、本発明の膜を支持体から剥離して用いてもよい。なお、本発明の膜を赤外線透過フィルタとして用いる場合、赤外線透過フィルタとしては、例えば、可視光を遮光し、波長900nm以上の波長の光を透過するフィルタが挙げられる。なお、本発明の膜を、赤外線透過フィルタとして用いる場合、上述の化合物(1)と、可視光を遮光する色材(好ましくは、2種以上の有彩色着色剤を含有する色材、または、有機系黒色着色剤を少なくとも含有する色材)とを含む組成物を用いたフィルタであるか、化合物(1)を含む層の他に、可視光を遮光する色材の層が別途存在するフィルタであることが好ましい。本発明の膜を赤外線透過フィルタとして用いる場合、化合物(1)は、透過する光(近赤外線)をより長波長側に限定する役割を有している。
本発明の膜の膜厚は、目的に応じて適宜調整できる。膜厚は、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましい。膜厚の下限は、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.3μm以上が更に好ましい。
また、本発明の積層体は、本発明の膜とカラーフィルタとを有する。積層体においては、本発明の膜とカラーフィルタとは、両者が厚み方向で隣接していてもよく、隣接していなくてもよい。本発明の膜とカラーフィルタとが厚み方向で隣接していない場合は、カラーフィルタが形成された支持体とは別の支持体に、本発明の膜が形成されていてもよく、本発明の膜とカラーフィルタとの間に、固体撮像素子を構成する他の部材(例えば、マイクロレンズ、平坦化層など)が介在していてもよい。カラーフィルタは、有彩色着色剤を含む着色組成物を用いて製造できる。有彩色着色剤としては、本発明の硬化性組成物に含まれるものとして説明した有彩色着色剤が挙げられる。着色組成物は、硬化性化合物(樹脂、ラジカル重合性化合物など)、光重合開始剤、界面活性剤、溶剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤などをさらに含有することができる。これらの詳細については、本発明の硬化性組成物に含まれるものとして説明した材料が挙げられ、これらを同様に用いることができる。
なお、本発明において、近赤外線カットフィルタとは、可視領域の波長の光(可視光)を透過させ、近赤外領域の波長の光(近赤外線)の少なくとも一部を遮光するフィルタを意味する。近赤外線カットフィルタは、可視領域の波長の光をすべて透過するものであってもよく、可視領域の波長の光のうち、特定の波長領域の光を透過させ、特定の波長領域の光を遮光するものであってもよい。また、本発明において、カラーフィルタとは、可視領域の波長の光のうち、特定の波長領域の光を透過させ、特定の波長領域の光を遮光するフィルタを意味する。また、赤外線透過フィルタとは、可視領域の波長の光を遮光し、近赤外領域の波長の光(近赤外線)の少なくとも一部を透過させるフィルタを意味する。
本発明の膜を、近赤外線カットフィルタとして用いる場合、本発明の膜は、波長700〜1000nmの範囲に極大吸収波長を有することが好ましい。また、波長400〜550nmの平均透過率が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、85%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることが特に好ましい。また、波長400〜550nmの全ての範囲での透過率が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。また、近赤外線カットフィルタの赤外線遮蔽性の好ましい範囲は用途によって異なるが、波長700〜1000nmの範囲の少なくとも1点での透過率が20%以下であることが好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましい。
本発明の膜を赤外線透過フィルタとして用いる場合、本発明の膜は、膜の厚み方向における光の透過率の、波長400〜830nmの範囲における最大値が20%以下であり、膜の厚み方向における光の透過率の、波長1000〜1300nmの範囲における最小値が80%以上であることが好ましい。このような分光特性を有する膜は、波長400〜750nmの範囲の光を遮光し、波長900nm以上の光を透過する赤外線透過フィルタとして好ましく用いることができる。
本発明の膜は、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)などの固体撮像素子や、赤外線センサ、画像表示装置などの各種装置に用いることができる。
<膜の製造方法>
次に、本発明の膜の製造方法について説明する。本発明の膜は、本発明の硬化性組成物を塗布する工程を経て製造できる。
本発明の膜の製造方法において、硬化性組成物は支持体上に塗布することが好ましい。支持体としては、例えば、シリコン、無アルカリガラス、ソーダガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、石英ガラスなどの材質で構成された基板が挙げられる。これらの基板には、有機膜や無機膜などが形成されていてもよい。有機膜の材料としては、例えば上述した硬化性組成物の欄で説明した樹脂が挙げられる。また、支持体としては、樹脂で構成された基板を用いることもできる。また、支持体には、電荷結合素子(CCD)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)、透明導電膜などが形成されていてもよい。また、支持体には、各画素を隔離するブラックマトリクスが形成されている場合もある。また、支持体には、必要により、上部の層との密着性改良、物質の拡散防止或いは基板表面の平坦化のために下塗り層を設けてもよい。また、支持体としてガラス基板を用いる場合においては、ガラス基板上に無機膜を形成したり、ガラス基板を脱アルカリ処理して用いることが好ましい。
硬化性組成物の塗布方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、滴下法(ドロップキャスト);スリットコート法;スプレー法;ロールコート法;回転塗布法(スピンコーティング);流延塗布法;スリットアンドスピン法;プリウェット法(たとえば、特開2009−145395号公報に記載されている方法);インクジェット(例えばオンデマンド方式、ピエゾ方式、サーマル方式)、ノズルジェット等の吐出系印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、反転オフセット印刷、メタルマスク印刷法などの各種印刷法;金型等を用いた転写法;ナノインプリント法などが挙げられる。インクジェットでの適用方法としては、特に限定されず、例えば「広がる・使えるインクジェット−特許に見る無限の可能性−、2005年2月発行、住ベテクノリサーチ」に示された方法(特に115ページ〜133ページ)や、特開2003−262716号公報、特開2003−185831号公報、特開2003−261827号公報、特開2012−126830号公報、特開2006−169325号公報などに記載の方法が挙げられる。
硬化性組成物を塗布して形成した組成物層は、乾燥(プリベーク)してもよい。低温プロセスによりパターンを形成する場合は、プリベークを行わなくてもよい。プリベークを行う場合、プリベーク温度は、150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、110℃以下が更に好ましい。下限は、例えば、50℃以上とすることができ、80℃以上とすることもできる。プリベーク温度を150℃以下で行うことにより、例えば、イメージセンサの光電変換膜を有機素材で構成した場合において、有機素材の特性をより効果的に維持することができる。
プリベーク時間は、10秒〜3000秒が好ましく、40〜2500秒がより好ましく、80〜220秒がさらに好ましい。乾燥は、ホットプレート、オーブン等で行うことができる。
本発明の膜の製造方法においては、更にパターンを形成する工程を含んでいてもよい。パターン形成方法としては、フォトリソグラフィ法を用いたパターン形成方法や、ドライエッチング法を用いたパターン形成方法が挙げられる。なお、本発明の膜を平坦膜として用いる場合には、パターンを形成する工程を行わなくてもよい。以下、パターンを形成する工程について詳細に説明する。
(フォトリソグラフィ法でパターン形成する場合)
フォトリソグラフィ法でのパターン形成方法は、本発明の硬化性組成物を塗布して形成した組成物層に対しパターン状に露光する工程(露光工程)と、未露光部の組成物層を現像除去してパターンを形成する工程(現像工程)と、を含むことが好ましい。必要に応じて、現像されたパターンをベークする工程(ポストベーク工程)を設けてもよい。以下、各工程について説明する。
<<露光工程>>
露光工程では組成物層をパターン状に露光する。例えば、組成物層に対し、ステッパー等の露光装置を用いて、所定のマスクパターンを有するマスクを介して露光することで、組成物層をパターン露光することができる。これにより、露光部分を硬化することができる。露光に際して用いることができる放射線(光)としては、g線、i線等の紫外線が好ましく、i線がより好ましい。照射量(露光量)は、例えば、0.03〜2.5J/cm2が好ましく、0.05〜1.0J/cm2がより好ましく、0.08〜0.5J/cm2が最も好ましい。露光時における酸素濃度については適宜選択することができ、大気下で行う他に、例えば酸素濃度が19体積%以下の低酸素雰囲気下(例えば、15体積%、5体積%、実質的に無酸素)で露光してもよく、酸素濃度が21体積%を超える高酸素雰囲気下(例えば、22体積%、30体積%、50体積%)で露光してもよい。また、露光照度は適宜設定することが可能であり、通常1000W/m2〜100000W/m2(例えば、5000W/m2、15000W/m2、35000W/m2)の範囲から選択することができる。酸素濃度と露光照度は適宜条件を組み合わせてよく、例えば、酸素濃度10体積%で照度10000W/m2、酸素濃度35体積%で照度20000W/m2などとすることができる。
<<現像工程>>
次に、露光後の組成物層における未露光部の組成物層を現像除去してパターンを形成する。未露光部の組成物層の現像除去は、現像液を用いて行うことができる。これにより、露光工程における未露光部の組成物層が現像液に溶出し、光硬化した部分だけが支持体上に残る。現像液としては、下地の固体撮像素子や回路などにダメージを与えない、アルカリ現像液が望ましい。現像液の温度は、例えば、20〜30℃が好ましい。現像時間は、20〜180秒が好ましい。また、残渣除去性を向上するため、現像液を60秒ごとに振り切り、更に新たに現像液を供給する工程を数回繰り返してもよい。
現像液に用いるアルカリ剤としては、例えば、アンモニア水、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジグリコールアミン、ジエタノールアミン、ヒドロキシアミン、エチレンジアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルビス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセンなどの有機アルカリ性化合物や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウムなどの無機アルカリ性化合物が挙げられる。現像液は、これらのアルカリ剤を純水で希釈したアルカリ性水溶液が好ましく使用される。アルカリ性水溶液のアルカリ剤の濃度は、0.001〜10質量%が好ましく、0.01〜1質量%がより好ましい。また、現像液には、界面活性剤を用いてもよい。界面活性剤の例としては、上述した硬化性組成物に含まれるものとして説明した界面活性剤が挙げられ、ノニオン系界面活性剤が好ましい。現像液は、移送や保管の便宜などの観点より、一旦濃縮液として製造し、使用時に必要な濃度に希釈してもよい。希釈倍率は特に限定されないが、例えば1.5〜100倍の範囲に設定することができる。なお、このようなアルカリ性水溶液からなる現像液を使用した場合には、現像後純水で洗浄(リンス)することが好ましい。
現像後、乾燥を施した後に加熱処理(ポストベーク)を行うこともできる。ポストベークは、膜の硬化を完全なものとするための現像後の加熱処理である。ポストベークを行う場合、ポストベーク温度は、例えば100〜240℃が好ましい。膜硬化の観点から、200〜230℃がより好ましい。また、発光光源として有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子を用いた場合や、イメージセンサの光電変換膜を有機素材で構成した場合は、ポストベーク温度は、150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、100℃以下が更に好ましく、90℃以下が特に好ましい。下限は、例えば、50℃以上とすることができる。ポストベークは、現像後の膜に対して、上記条件になるようにホットプレートやコンベクションオーブン(熱風循環式乾燥機)、高周波加熱機等の加熱手段を用いて、連続式あるいはバッチ式で行うことができる。
(ドライエッチング法でパターン形成する場合)
ドライエッチング法でのパターン形成は、硬化性組成物を支持体上などに塗布して形成した組成物層を硬化して硬化物層を形成し、次いで、この硬化物層上にパターニングされたフォトレジスト層を形成し、次いで、パターニングされたフォトレジスト層をマスクとして硬化物層に対してエッチングガスを用いてドライエッチングするなどの方法で行うことができる。フォトレジスト層の形成においては、更にプリベーク処理を施すことが好ましい。特に、フォトレジストの形成プロセスとしては、露光後の加熱処理、現像後の加熱処理(ポストベーク処理)を実施する形態が望ましい。ドライエッチング法でのパターン形成については、特開2013−064993号公報の段落番号0010〜0067の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
<光学フィルタ>
次に、本発明の光学フィルタについて説明する。本発明の光学フィルタは、上述した本発明の膜を有する。本発明の光学フィルタは、近赤外線カットフィルタおよび赤外線透過フィルタから選ばれる少なくとも1種として好ましく用いることができる。また、本発明の膜を用いた画素と、赤、緑、青、マゼンタ、黄、シアン、黒および無色から選ばれる画素とを有する態様も本発明の光学フィルタの好ましい態様である。
本発明の膜を近赤外線カットフィルタとして用いる場合、本発明の膜の他に、更に、銅を含有する層、誘電体多層膜、紫外線吸収層などを有していてもよい。近赤外線カットフィルタが、更に、銅を含有する層および/または誘電体多層膜を有することで、視野角が広く、赤外線遮蔽性に優れた近赤外線カットフィルタが得られ易い。また、近赤外線カットフィルタが、更に、紫外線吸収層を有することで、紫外線遮蔽性に優れた近赤外線カットフィルタとすることができる。紫外線吸収層としては、例えば、国際公開WO2015/099060号公報の段落番号0040〜0070、0119〜0145に記載の吸収層を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。誘電体多層膜としては、特開2014−41318号公報の段落番号0255〜0259の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。銅を含有する層としては、銅を含有するガラスで構成されたガラス基材(銅含有ガラス基材)や、銅錯体を含む層(銅錯体含有層)を用いることもできる。銅含有ガラス基材としては、銅を含有する燐酸塩ガラス、銅を含有する弗燐酸塩ガラスなどが挙げられる。銅含有ガラスの市販品としては、NF−50(AGCテクノグラス(株)製)、BG−60、BG−61(以上、ショット社製)、CD5000(HOYA(株)製)等が挙げられる。銅錯体としては、国際公開WO2016/068037号公報の段落番号0009〜0049に記載された化合物などが挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
本発明の膜を、近赤外線カットフィルタまたは赤外線透過フィルタとして用いる場合、近赤外線カットフィルタと赤外線透過フィルタとを組み合わせて用いることもできる。近赤外線カットフィルタと、赤外線透過フィルタとを組み合わせて用いることで、特定波長の赤外線を検出する赤外線センサの用途に好ましく用いることができる。両者のフィルタを組み合わせて用いる場合、近赤外線カットフィルタおよび赤外線透過フィルタの両方を本発明の硬化性組成物を用いて形成することもでき、いずれか一方のみを、本発明の硬化性組成物を用いて形成することもできる。
<固体撮像素子>
本発明の固体撮像素子は、上述した本発明の膜を含む。固体撮像素子の構成としては、本発明の膜を有する構成であり、固体撮像素子として機能する構成であれば特に限定はない。例えば、以下のような構成が挙げられる。
支持体上に、固体撮像素子の受光エリアを構成する複数のフォトダイオードおよびポリシリコン等からなる転送電極を有し、フォトダイオードおよび転送電極上にフォトダイオードの受光部のみ開口したタングステン等からなる遮光膜を有し、遮光膜上に遮光膜全面およびフォトダイオード受光部を覆うように形成された窒化シリコン等からなるデバイス保護膜を有し、デバイス保護膜上に、本発明における膜を有する構成である。さらに、デバイス保護膜上であって、本発明における膜の下(支持体に近い側)に集光手段(例えば、マイクロレンズ等。以下同じ)を有する構成や、本発明における膜上に集光手段を有する構成等であってもよい。また、カラーフィルタは、隔壁により例えば格子状に仕切られた空間に、各画素を形成する膜が埋め込まれた構造を有していてもよい。この場合の隔壁は各画素よりも低屈折率であることが好ましい。このような構造を有する撮像装置の例としては、特開2012−227478号公報、特開2014−179577号公報に記載の装置が挙げられる。
<画像表示装置>
本発明の画像表示装置は、本発明の膜を含む。画像表示装置としては、液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示装置などが挙げられる。画像表示装置の定義や詳細については、例えば「電子ディスプレイデバイス(佐々木 昭夫著、(株)工業調査会 1990年発行)」、「ディスプレイデバイス(伊吹 順章著、産業図書(株)平成元年発行)」などに記載されている。また、液晶表示装置については、例えば「次世代液晶ディスプレイ技術(内田 龍男編集、(株)工業調査会 1994年発行)」に記載されている。本発明が適用できる液晶表示装置に特に制限はなく、例えば、上記の「次世代液晶ディスプレイ技術」に記載されている色々な方式の液晶表示装置に適用できる。画像表示装置は、白色有機EL素子を有するものであってもよい。白色有機EL素子としては、タンデム構造であることが好ましい。有機EL素子のタンデム構造については、特開2003−45676号公報、三上明義監修、「有機EL技術開発の最前線−高輝度・高精度・長寿命化・ノウハウ集−」、技術情報協会、326−328ページ、2008年などに記載されている。有機EL素子が発光する白色光のスペクトルは、青色領域(430nm−485nm)、緑色領域(530nm−580nm)及び黄色領域(580nm−620nm)に強い極大発光ピークを有するものが好ましい。これらの発光ピークに加え更に赤色領域(650nm−700nm)に極大発光ピークを有するものがより好ましい。
<赤外線センサ>
本発明の赤外線センサは、上述した本発明の膜を含む。赤外線センサの構成としては、赤外線センサとして機能する構成であれば特に限定はない。以下、本発明の赤外線センサの一実施形態について、図面を用いて説明する。
図1において、符号110は、固体撮像素子である。固体撮像素子110上に設けられている撮像領域は、近赤外線カットフィルタ111と、赤外線透過フィルタ114とを有する。また、近赤外線カットフィルタ111上には、カラーフィルタ112が積層している。カラーフィルタ112および赤外線透過フィルタ114の入射光hν側には、マイクロレンズ115が配置されている。マイクロレンズ115を覆うように平坦化層116が形成されている。
近赤外線カットフィルタ111は本発明の硬化性組成物を用いて形成することができる。近赤外線カットフィルタ111の分光特性は、使用する赤外発光ダイオード(赤外LED)の発光波長に応じて選択される。
カラーフィルタ112は、可視領域における特定波長の光を透過及び吸収する画素が形成されたカラーフィルタであって、特に限定はなく、従来公知の画素形成用のカラーフィルタを用いることができる。例えば、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の画素が形成されたカラーフィルタなどが用いられる。例えば、特開2014−043556号公報の段落番号0214〜0263の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる
赤外線透過フィルタ114は、使用する赤外LEDの発光波長に応じてその特性が選択される。例えば、赤外LEDの発光波長が850nmである場合、赤外線透過フィルタ114は、膜の厚み方向における光透過率の、波長400〜650nmの範囲における最大値が30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましく、0.1%以下であることが特に好ましい。この透過率は、波長400〜650nmの範囲の全域で上記の条件を満たすことが好ましい。
赤外線透過フィルタ114は、膜の厚み方向における光透過率の、波長800nm以上(好ましくは800〜1300nm)の範囲における最小値が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。上記の透過率は、波長800nm以上の範囲の一部で上記の条件を満たすことが好ましく、赤外LEDの発光波長に対応する波長で上記の条件を満たすことが好ましい。
赤外線透過フィルタ114の膜厚は、100μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましく、1μm以下が特に好ましい。下限値は、0.1μmが好ましい。膜厚が上記範囲であれば、上述した分光特性を満たす膜とすることができる。
赤外線透過フィルタ114の分光特性、膜厚等の測定方法を以下に示す。
膜厚は、膜を有する乾燥後の基板を、触針式表面形状測定器(ULVAC社製 DEKTAK150)を用いて測定した。
膜の分光特性は、紫外可視近赤外分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製 U−4100)を用いて、波長300〜1300nmの範囲において透過率を測定した値である。
また、例えば、赤外LEDの発光波長が940nmである場合、赤外線透過フィルタ114は、膜の厚み方向における光の透過率の、波長450〜650nmの範囲における最大値が20%以下であり、膜の厚み方向における、波長835nmの光の透過率が20%以下であり、膜の厚み方向における光の透過率の、波長1000〜1300nmの範囲における最小値が70%以上であることが好ましい。
図1に示す赤外線センサにおいて、平坦化層116上には、近赤外線カットフィルタ111とは別の近赤外線カットフィルタ(他の近赤外線カットフィルタ)がさらに配置されていてもよい。他の近赤外線カットフィルタとしては、銅を含有する層および/または誘電体多層膜を有するものなどが挙げられる。これらの詳細については、上述したものが挙げられる。また、他の近赤外線カットフィルタとしては、デュアルバンドパスフィルタを用いてもよい。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」、「%」は、質量基準である。
<合成例>
(化合物P−19の合成例)
下記のスキームに従って化合物P−19を合成した。下記のスキームに示す化合物Aの10質量部と、2−(2−ベンゾチアゾリル)アセトニトリルの4.8質量部とを、トルエン200質量部中で加熱攪拌し、次いで、オキシ塩化リン10.5質量部を加えて4時間加熱還流した。反応後、室温まで冷却して、メタノール200質量部を加え、室温で30分間攪拌した。析出した結晶をろ別し、メタノール400質量部で洗浄した。得られた結晶を50℃で12時間送風乾燥させることで、化合物Bを8.1質量部得た。
ジフェニルボリン酸2−アミノエチル0.9質量部を含有するトルエン70質量部中に、塩化チタン1.3質量部を添加し、35℃で30分間撹拌した。次に、化合物Bの5質量部を添加し、さらに3時間加熱還流条件で攪拌した。室温まで冷却して、メタノール140質量部を加え、さらに30分攪拌した。析出した結晶を濾取し、シリカカラムクロマトグラフィ(クロロホルム溶媒)で精製し、化合物P−19を1.3質量部で得た。
得られた化合物のマススペクトルは以下の通りであった。
マススペクトル: M+=1357.9
<試験例1>
下記表に示す化合物のシクロヘキサノンに対する溶解性を観察して評価した。
A:23℃のシクロヘキサノン100gに対する化合物の溶解度が1g以上である。
B:23℃のシクロヘキサノン100gに対する化合物の溶解度が0.1g以上1g未満である。
C:23℃のシクロヘキサノン100gに対する化合物の溶解度が0.1g未満である。
表2に示されるように、ピロロピロール環上の2つのN原子上の構造が非対称の化合物である、化合物P−1、P−8、P−9を用いた実施例1〜3は、溶解性が良好であった。
なお、上記表における化合物P−1、P−8、P−9は、化合物(1)の具体例として表1に挙げた化合物である。化合物R−1、R−2は下記構造の化合物である。
<試験例2>
下記の原料を混合および撹拌した後、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)でろ過して、硬化性組成物を製造した。なお、実施例129は、化合物としてP−19とP−56との混合物(P−19/P−56=50/50(質量比))を用いた。また、実施例130は、化合物としてP−47とP−56との混合物(P−47/P−56=80/20(質量比))を用いた。また、実施例131は、化合物としてP−10とP−42との混合物(P−10/P−42=60/40(質量比))を用いた。また、実施例132は、化合物としてP−10とS−1との混合物(P−10/S−1=10/90(質量比))を用いた。また、実施例133は、化合物としてP−19とS−2との混合物(P−19/S−2=5/95(質量比))を用いた。また、実施例134は、化合物としてP−42とS−3との混合物(P−42/S−3=20/80(質量比))を用いた。また、実施例135は、化合物としてP−47とS−4との混合物(P−47/S−4=15/85(質量比))を用いた。また、実施例136は、化合物としてP−56とS−5との混合物(P−56/S−5=10/90(質量比))を用いた。
(硬化性組成物)
下記表に示す化合物・・・・・1.92質量部
樹脂1(下記構造の樹脂、Mw=40,000)・・・・・7.51質量部
架橋性モノマー1(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製、KAYARAD DPHA))・・・・・1.28質量部
光重合開始剤(下記構造の化合物)・・・・1.40質量部
界面活性剤1(メガファックRS−72−K(DIC製、30%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液))
・・・・・1.59質量部
シクロペンタノン・・・・・86.3質量部
(表面荒れの評価)
各硬化性組成物をガラス基材上に、製膜後の膜厚が1.0μmとなるようにスピンコート塗布して塗膜を形成した。次いで、ホットプレートを用いて、100℃で2分間加熱した後、i線ステッパー露光装置FPA−3000i5+(Canon(株)製)を用い、1000mJ/cm2の露光量で全面露光した。次いで、ホットプレートを用いて、200℃で5分間加熱(ポストベーク)し、膜を製造した。製造した膜に対して、230℃で30分間、加熱処理を行ない、加熱処理後の膜について光学顕微鏡(オリンパス社製 MX−61L)を用いて明視野200倍にて、加熱処理後の膜にムラ及び結晶析出が無いか観察した。光学顕微鏡でムラ及び結晶析出が確認されず均一な膜となっている場合、加熱処理時の熱応力に対する耐性が優れていると判断される。
A:ムラ及び結晶析出が見られない。
B:僅かにムラまたは結晶析出が見られる
C:ムラが強く見られる、または結晶が激しく析出している。
上記表に示されるように、実施例の硬化性組成物を用いた膜は、表面荒れが抑制されていた。また、実施例129〜131に記載されるように、ピロロピロール環上の2つのN原子上の構造が非対称の化合物を2種類併用した場合であっても、表面荒れを効果的に抑制することができた。また、実施例132〜136に示されるようにピロロピロール環上の2つのN原子上の構造が非対称の化合物と、ピロロピロール環上の2つのN原子上の構造が対称の化合物とを併用した場合であっても、表面荒れを効果的に抑制することができた。一方、ピロロピロール環上の2つのN原子上の構造が対称の化合物のみを用いた比較例101、102は表面荒れが劣っていた。
上記の硬化性組成物に対し、さらに可視光を遮光する色材を配合することで、所定の赤外線を選択的に透過させる赤外線透過フィルタを製造することができる。また顔料誘導体をさらに配合しても同様の効果が得られる。
上記の硬化性組成物において、樹脂、架橋性モノマー、光重合開始剤、界面活性剤および溶剤の種類を本明細書に記載の化合物に置き換えても同様の効果が得られる。
なお、上記表における化合物P−1、P−6、P−9、P−10、P−11、P−19、P−20、P−22、P−24、P−26、P−27、P−29、P−37、P−40、P−42、P−45、P−46、P−47、P−48、P−50、P−51、P−54、P−55、P−56、P−57、P−59、P−60、P−63、P−75は、化合物(1)の具体例として表1に挙げた化合物である。化合物R−1、R−2は上述した構造の化合物である。化合物S−1〜S−5は下記構造の化合物である。