実施の形態1.
図1に、本実施の形態1に係る回転電機装置1の概略回路図を示す。回転電機装置1は、回転電機本体2と、回転電機本体2を駆動制御する駆動装置4とを備える。回転電機本体2は、第一系統の巻線16aと第二系統の巻線16bを備える。駆動装置4は、第一系統の巻線16aを駆動する第一系統の駆動回路12aと、第二系統の巻線16bを駆動する第二系統の駆動回路12bとを備えている。
本実施の形態では、制御系統及び電源系統も2重化されている。駆動装置4は、第一系統の駆動回路12aを制御する第一系統の制御回路28a、第二系統の駆動回路12bを制御する第二系統の制御回路28bを備えている。また、駆動装置4は、第一系統の電源コネクタ6a、第一系統の信号コネクタ7a、第一系統のローパスフィルタ回路30a、第一系統の電源リレー回路31a、第二系統の電源コネクタ6b、第二系統の信号コネクタ7b、第二系統のローパスフィルタ回路30b、及び第二系統の電源リレー回路31bを備える。
回転電機装置1は、第一系統の切替回路13a、第二系統の切替回路13b、及び巻線切替回路14を備えている。各部について、以下で詳細に説明する。
<電源接続>
第一系統の電源コネクタ6aは、第一の直流電源5aが接続される接続端子である。第一の直流電源5aは、回転電機装置1の外部に設けられている。第二系統の電源コネクタ6bは、第二の直流電源5bが接続される接続端子である。第二の直流電源5bは、回転電機装置1の外部に設けられている。第一及び第二の直流電源5a、5bは、12V、48V等の直流電源とされ、鉛電池、リチウムイオン2次電池等の電池の出力電圧、もしくは電池の出力電圧が降圧又は昇圧された直流電圧とされる。
第一系統の電源コネクタ6aから供給された電流は、第一系統のローパスフィルタ回路30aを介して第一系統の制御回路28aに供給されるとともに、第一系統の電源リレー回路31aを介して第一系統の駆動回路12aに供給される。第二系統の電源コネクタ6bから供給された電流は、第二系統のローパスフィルタ回路30bを介して第二系統の制御回路28bに供給されるとともに、第二系統の電源リレー回路31bを介して第二系統の駆動回路12bに供給される。
<回転電機本体2>
第一系統の巻線16aは、U相、V相、W相の3相の巻線U1、V1、W1を有している。第二系統の巻線16bは、U相、V相、W相の3相の巻線U2、V2、W2を有している。回転電機本体2は、固定子に、第一系統の巻線16aと第二系統の巻線16bが設けられ、回転電機本体2の回転子に、永久磁石が設けられた、永久磁石同期の回転電機とされている。
第一系統の巻線16aは、3相各相の巻線U1、V1、W1の一端が相互に接続されたY結線とされ、第二系統の巻線16bは、3相各相の巻線U2、V2、W2の一端が相互に接続されたY結線とされている。なお、第一系統の巻線16a、第二系統の巻線16bは、それぞれ、Δ結線とされてもよい。
図1に示すように、第一系統の3相各相の巻線U1、V1、W1の他端は、第一系統の切替回路13aの3相各相用のリレー回路13au、13av、13awを介して第一系統の駆動回路12aの3相各相用の正極側のスイッチング素子121と負極側のスイッチング素子122の接続点に接続される。第二系統の3相各相の巻線U2、V2、W2の他端は、第二系統の切替回路13bの3相各相用のリレー回路13bu、13bv、13bwを介して3相各相用の正極側のスイッチング素子121と負極側のスイッチング素子122の接続点に接続される。
また、第一系統の3相各相の巻線U1、V1、W1は、巻線切替回路14の3相各相用のリレー回路14u、14v、14wを介して、第二系統の3相各相の巻線U2、V2、W2と接続される。
回転電機本体2には、回転子の回転角度(磁極位置)を検出するための第一系統の回転センサ15a、第二系統の回転センサ15bが備えられている。第一系統の回転センサ15aの出力信号は、第一系統の制御回路28aの入力回路9aに入力され、第二系統の回転センサ15bの出力信号は、第二系統の制御回路28bの入力回路9bに入力される。第一系統の回転センサ15a及び第二系統の回転センサ15bには、レゾルバ、ロータリーエンコーダ等の回転角度が検出できるセンサが用いられる。
<駆動回路12>
第一系統の駆動回路12aは、第一の直流電源5aから出力された直流電力と、回転電機本体2の第一系統の3相の巻線16aに供給する交流電力とを変換する、スイッチング素子を備えたインバータである。第一系統の駆動回路12aは、相毎に正極側スイッチング素子121及び負極側スイッチング素子122を備えている。各相の正極側スイッチング素子121及び負極側スイッチング素子122は、直流電源の正極側と負極側との間に直列接続されており、その接続点が、第一系統の切替回路13aを介して、第一系統の対応する相の巻線に接続される。
第二系統の駆動回路12bは、第二の直流電源5bから出力された直流電力と、回転電機本体2の第二系統の3相の巻線16bに供給する交流電力とを変換する、スイッチング素子を備えたインバータである。第二系統の駆動回路12bは、相毎に正極側スイッチング素子121及び負極側スイッチング素子122を備えている。各相の正極側スイッチング素子121及び負極側スイッチング素子122は、直流電源の正極側と負極側との間に直列接続されており、その接続点が、第二系統の切替回路13bを介して、第二系統の対応する相の巻線に接続される。
各系統の各相用のスイッチング素子には、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、ダイオードが逆並列接続されたIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等が用いられる。
第一系統の駆動回路12aの各相の負極側スイッチング素子とグランド(直流電源の負極側)を結ぶ直列回路には、第一系統の電流センサ123としてのシャント抵抗123が直列接続されている。各シャント抵抗123の両端電位差が、電流センサ123の出力信号として第一系統の制御回路28aの入力回路9aに入力される(不図示)。第一系統の各スイッチング素子のゲート端子は、第一系統の制御回路28aの出力回路11aに接続されている。よって、第一系統の各スイッチング素子は、第一系統の制御回路28aの出力回路11aから出力される制御信号によりオン又はオフされる。第一系統の駆動回路12aに供給される直流電流の電圧を検出するための電源電圧センサが備えられており、電源電圧センサの出力信号は、第一系統の制御回路28aの入力回路9aに入力される(不図示)。
第二系統の駆動回路12bの各相の負極側スイッチング素子とグランド(直流電源の負極側)を結ぶ直列回路には、第二系統の電流センサ123としてのシャント抵抗123が直列接続されている。各シャント抵抗123の両端電位差が、電流センサ123の出力信号として第二系統の制御回路28bの入力回路9bに入力される(不図示)。第二系統の各スイッチング素子のゲート端子は、第二系統の制御回路28bの出力回路11bに接続されている。よって、第二系統の各スイッチング素子は、第二系統の制御回路28bの出力回路11bから出力される制御信号によりオン又はオフされる。第二系統の駆動回路12bに供給される直流電流の電圧を検出するための電源電圧センサが備えられており、電源電圧センサの出力信号は、第二系統の制御回路28bの入力回路9bに入力される(不図示)。
上記では、各系統の駆動回路12a、12bの出力電流と入力電圧を検出する事例について述べたが、各系統の駆動回路12a、12bの出力電圧、入力電流を検出する回路を設けることもできる。
<第一系統の切替回路>
第一系統の切替回路13aは、第一系統の駆動回路12aと第一系統の巻線16aとの接続、非接続を切り替える。
本実施の形態では、図2に回路の詳細を示すように、第一系統の切替回路13aは、3相各相に1つずつ、合計3つのリレー回路13au、13av、13awを備えている。図1に示すように、第一系統のU相のリレー回路13auは、第一系統のU相の巻線U1の端子と第一系統の駆動回路12aのU相用の接続点との接続経路上に直列接続されている。第一系統のV相のリレー回路13avは、第一系統のV相の巻線V1の端子と第一系統の駆動回路12aのV相用の接続点との接続経路に直列接続される。第一系統のW相のリレー回路13awは、第一系統のW相の巻線W1の端子と第一系統の駆動回路12aのW相用の接続点との接続経路に直列接続される。
本実施の形態では、各リレー回路13au、13av、13awは、電磁リレー回路とされており、それぞれ、磁気コイル13amu、13amv、13amwを備えている。各磁気コイル13amu、13amv、13amwが通電状態になると、各リレー回路13au、13av、13awの接点が開き、各相の巻線と駆動回路との接続が解除される。一方、各磁気コイル13amu、13amv、13amwが非通電状態になると、各リレー回路13au、13av、13awの接点が閉じ、各相の巻線と駆動回路とが接続される。なお、各リレー回路は、磁気コイルへの通電状態で接点が閉じ、非通電状態で接点が開くように構成されてもよい。
本実施の形態では、第一系統の切替回路13aの接続の状態は第一系統の制御回路28aにより制御される。具体的には、第一系統の制御回路28a(第一系統の出力回路11a)から、接続線34を介して各磁気コイル13amu、13amv、13amwに電力が供給されると、各リレー回路13au、13av、13awの接点が開き、各磁気コイル13amu、13amv、13amwへの電力供給が停止すると、各リレー回路13au、13av、13awの接点が閉じる。
<第二系統の切替回路>
第二系統の切替回路13bは、第二系統の駆動回路12bと第二系統の巻線16bとの接続、非接続を切り替える。
本実施の形態では、図3に回路の詳細を示すように、第二系統の切替回路13bは、3相各相に1つずつ、合計3つのリレー回路13bu、13bv、13bwを備えている。図1に示すように、第二系統のU相のリレー回路13buは、第二系統のU相の巻線U2の端子と第二系統の駆動回路12bのU相用の接続点との接続経路上に直列接続されている。第二系統のV相のリレー回路13bvは、第二系統のV相の巻線V2の端子と第二系統の駆動回路12bのV相用の接続点との接続経路に直列接続される。第二系統のW相のリレー回路13bwは、第二系統のW相の巻線W2の端子と第二系統の駆動回路12bのW相用の接続点との接続経路に直列接続される。
本実施の形態では、各リレー回路13bu、13bv、13bwは、電磁リレー回路とされており、それぞれ、磁気コイル13bmu、13bmv、13bmwを備えている。各磁気コイル13bmu、13bmv、13bmwが通電状態になると、各リレー回路13bu、13bv、13bwの接点が開き、各相の巻線と駆動回路との接続が解除される。一方、各磁気コイル13bmu、13bmv、13bmwが非通電状態になると、各リレー回路13bu、13bv、13bwの接点が閉じ、各相の巻線と駆動回路とが接続される。なお、各リレー回路は、磁気コイルへの通電状態で接点が閉じ、非通電状態で接点が開くように構成されてもよい。
本実施の形態では、第二系統の切替回路13bの接続の状態は第二系統の制御回路28bにより制御される。具体的には、第二系統の制御回路28b(第二系統の出力回路11b)から、接続線35を介して各磁気コイル13bmu、13bmv、13bmwに電力が供給されると、各リレー回路13bu、13bv、13bwの接点が開き、各磁気コイル13bmu、13bmv、13bmwへの電力供給が停止すると、各リレー回路13bu、13bv、13bwの接点が閉じる。
<巻線切替回路>
巻線切替回路14は、第一系統の巻線16aと第二系統の巻線16bとの接続、非接続を切り替える。
本実施の形態では、図4に回路の詳細を示すように、巻線切替回路14は、3相各相に1つずつ、合計3つのリレー回路14u、14v、14wを備えている。図1に示すように、U相のリレー回路14uは、第一系統のU相の巻線U1の端子と第二系統のU相の巻線U2の端子との接続経路上に直列接続されている。V相のリレー回路14vは、第一系統のV相の巻線V1の端子と第二系統のV相の巻線V2の端子との接続経路上に直列接続されている。W相のリレー回路14wは、第一系統のW相の巻線W1の端子と第二系統のW相の巻線W2の端子との接続経路上に直列接続されている。
本実施の形態では、各リレー回路14u、14v、14wは、電磁リレー回路とされており、それぞれ、磁気コイル14mu、14mv、14mwを備えている。各磁気コイル14mu、14mv、14mwが通電状態になると、各リレー回路14u、14v、14wの接点が閉じ、第一系統の各相の巻線と第二系統の各相の巻線とが接続される。一方、各磁気コイル14mu、14mv、14mwが非通電状態になると、各リレー回路14u、14v、14wの接点が開き、各相の巻線と駆動回路との接続が解除される。なお、各リレー回路は、磁気コイルへの通電状態で接点が開き、非通電状態で接点が閉じるように構成されてもよい。
本実施の形態では、巻線切替回路14の接続の状態は、第一系統の制御回路28a及び第二系統の制御回路28bの双方により制御される。本例では、第一系統の制御回路28a(第一系統の出力回路11a)及び第二系統の制御回路28b(第二系統の出力回路11b)は、第一系統の接続線36aと第二系統の接続線36bとダイオードオア回路を介して、各磁気コイル13bmu、13bmv、13bmwに並列接続されている。具体的には、第一系統の出力回路11aに接続された第一系統の接続線36aと各磁気コイル14mu、14mv、14mwとの接続経路上に第一系統のダイオード14daが直列接続され、第二系統の出力回路11bと接続された第二系統の接続線36bと各磁気コイル14mu、14mv、14mwの接続経路上に第二系統のダイオード14dbが直列接続されている。よって、第一系統の制御回路28a及び第二系統の制御回路28bのいずれか一方から、各磁気コイル14mu、14mv、14mwに電力が供給されると、各リレー回路14u、14v、14wの接点が閉じ、各磁気コイル14mu、14mv、14mwへの電力供給が停止すると、各リレー回路14u、14v、14wの接点が開く。なお、第一系統のダイオード14daは、第一系統の制御回路28aに備えられてもよく、第二系統のダイオード14dbは第二系統の制御回路28bに備えられてもよい。また、ダイオードオア回路は、論理的にオア回路を成立させる他の構成に置き換えることができ、例えばトランジスタのオープンコレクタの接続によるワイアードオア、ロジックIC(Integrated Circuit)のオア回路を使用してもよい。
或いは、図5に示すように、巻線切替回路14は、第一系統の制御回路28aが制御する第一系統制御用の巻線切替回路14aと、第二系統の制御回路28bが制御する第二系統制御用の巻線切替回路14bと、を備えており、第一系統制御用の巻線切替回路14a及び第二系統制御用の巻線切替回路14bが第一系統の巻線16aと第二系統の巻線16bとの間に並列接続されてもよい。第一系統制御用の巻線切替回路14aは、図4の巻線切替回路14と同様に、3相各相に1つずつ、3つのリレー回路14au、14av、14awと、3つの磁気コイル14amu、14amv、14amwとを備えている。3つの磁気コイル14amu、14amv、14amwは、第一系統の制御回路28a(第一系統の出力回路11a)により通電状態が制御される。また、第二系統制御用の巻線切替回路14bは、図4の巻線切替回路14と同様に、3相各相に1つずつ、3つのリレー回路14bu、14bv、14bwと、3つの磁気コイル14bmu、14bmv、14bmwとを備えている。3つの磁気コイル14bmu、14bmv、14bmwは、第二系統の制御回路28b(第二系統の出力回路11b)により通電状態が制御される。
第一系統のU相の巻線U1の端子と第二系統のU相の巻線U2の端子との間に、第一系統制御用のU相のリレー回路14au及び第二系統制御用のU相のリレー回路14buが並列接続されている。第一系統のV相の巻線V1の端子と第二系統のV相の巻線V2の端子との間に、第一系統制御用のV相のリレー回路14av及び第二系統制御用のV相のリレー回路14bvが並列接続されている。第一系統のW相の巻線W1の端子と第二系統のW相の巻線W2の端子との間に、第一系統制御用のW相のリレー回路14aw及び第二系統制御用のV相のリレー回路14bvが並列接続されている。
<電動パワーステアリング装置24>
図6に電動パワーステアリング装置24の構成図を示す。回転電機本体2の駆動力が、車両の操舵装置の駆動力源とされており、回転電機装置1は、電動パワーステアリング装置24に組み込まれている。運転者が操作するハンドル17にはステアリングシャフト18が連結されている。ステアリングシャフト18には運転者の操舵角及び操舵トルクの一方又は双方を検知する2つの系統の操舵センサ19a、19bが取り付けられている。操向輪である前輪20a、20bのナックルアーム21a、21bには、ラック軸22に連結されたタイロッド23a、23bが接続されており、ラック軸22の動きがタイロッド23a、23bと、ナックルアーム21a、21bを経て前輪20a、20bに伝わることにより、前輪20a、20bが操向される。ラック軸22には転舵モータである回転電機装置1が取り付けられており、回転電機装置1の出力トルクがラック軸22を動かす動力となっている。回転電機装置1は、2つの系統の操舵センサ19a、19bの出力信号と車速などの2つの系統の車両信号27a,27bに基づき、回転電機装置1の出力トルクを制御することにより、運転者の操作に応じた転舵が行われる。
<一体構成にされた回転電機装置1>
図7及び図8に、回転電機装置1の側面図及び背面図を示す。回転電機本体2、駆動装置4、第一系統及び第二系統の電源コネクタ6a、6b、及び第一系統及び第二系統の信号コネクタ7a、7bが一体的に構成されている。回転子の駆動力が出力される出力軸3が、回転電機本体2から軸方向の一方側に突出している。出力軸3は、ギヤ機構等によりラック軸22等の動力伝達機構に連結される。回転電機本体2の出力軸3が突出する反対側には、2つの系統の駆動回路12a、12b、制御回路28a、28bなどを包含する駆動装置4が、設けられている。回転電機本体2及び駆動装置4は、円筒状のケース内に収容されている。2つの系統の電源コネクタ6a、6b、操舵センサ19a、19b及び車両信号27a、27b用の信号コネクタ7a、7bが、駆動装置4から出力軸3の反対側に突出している。
<制御回路>
第一系統の制御回路28aは、第一系統の電源リレー回路31a、第一系統の切替回路13a、第一系統の駆動回路12a、及び巻線切替回路14を制御する。第一系統の制御回路28aの各制御は、制御回路28aが備えた処理回路により実現される。具体的には、第一系統の制御回路28aは、第一系統の、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置10a、記憶装置33a、演算処理装置10aに外部の信号を入力する入力回路9a、演算処理装置10aから外部に信号を出力する出力回路11a、及び制御回路28aの各部に電力を供給する電源回路8aを備えている。
第二系統の制御回路28bは、第二系統の電源リレー回路31b、第二系統の切替回路13b、第二系統の駆動回路12b、及び巻線切替回路14を制御する。第二系統の制御回路28bの各制御は、制御回路28bが備えた処理回路により実現される。具体的には、第二系統の制御回路28bは、第二系統の、CPU等の演算処理装置10b、記憶装置33b、演算処理装置10bに外部の信号を入力する入力回路9b、演算処理装置10bから外部に信号を出力する出力回路11b、及び制御回路28bの各部に電力を供給する電源回路8bを備えている。
第一系統及び第二系統の演算処理装置10a、10bとして、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、IC、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、各種の論理回路、及び各種の信号処理回路等が備えられてもよい。また、第一系統及び第二系統の演算処理装置10a、10bとして、同じ種類の回路等又は異なる種類の回路等が複数備えられ、各処理が分担して実行されてもよい。第一系統及び第二系統の記憶装置33a、33bとして、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等が備えられている。
第一系統の入力回路9aは、第一系統の回転センサ15a、第一系統の電流センサ123、第一系統の電源電圧センサ(不図示)、操舵センサ19a、車両信号27a等の各種のセンサおよび信号線が接続され、これらセンサおよび信号線の信号を第一系統の演算処理装置10aに入力するA/D変換器等を備えている。第一系統の出力回路11aには、第一系統の電源リレー回路31a、第一系統の切替回路13a、第一系統の駆動回路12aの各スイッチング素子のゲート端子、および巻線切替回路14等の電気負荷が接続され、これら電気負荷に第一系統の演算処理装置10aから制御信号を出力する駆動回路等を備えている。
第二系統の入力回路9bは、第二系統の回転センサ15b、電流センサ123、電源電圧センサ(不図示)、操舵センサ19b、車両信号27b等の各種のセンサおよび信号線が接続され、これらセンサおよび信号線の信号を第二系統の演算処理装置10bに入力するA/D変換器等を備えている。第二系統の出力回路11bには、第二系統の電源リレー回路31b、第二系統の切替回路13b、第二系統の駆動回路12bの各スイッチング素子のゲート端子、および巻線切替回路14等の電気負荷が接続され、これら電気負荷に第二系統の演算処理装置10bから制御信号を出力する駆動回路等を備えている。
第一系統の出力回路11aと第二系統の出力回路11bとは、通信線37により相互に接続されており、第一系統の演算処理装置10a及び第二系統の演算処理装置10bは、駆動回路の故障情報等の制御情報を相互に伝達する。
各系統の制御回路28a、28bの各制御は、各系統の演算処理装置10a、10bが、各系統の記憶装置33a、33bに記憶されたソフトウェア(プログラム)を実行し、各系統の記憶装置33a、33b、入力回路9a、9b、出力回路11a、11b、及び電源回路8a、8b等の各系統の制御回路28a、28bの他のハードウェアと協働することにより実現される。
<駆動回路の正常時のモータ制御>
各系統の制御回路28a、28bは、各系統のトルク指令値、回転速度、及び電源電圧に基づいて、各系統の3相巻線の電流指令値を算出する。この際、各系統の巻線の誘起電圧定数の変化、直流電圧の変化により、同じトルク指令値に対応する電流指令値が変化する。
本実施の形態では、第一系統の制御回路28aは、第一系統の操舵センサ19aの出力信号に基づいて検出した操舵トルク及び第一系統の車両信号27a(例えば、車速)に基づいて、操舵機構をアシストするトルク指令値を算出するように構成されている。また、第二系統の制御回路28bは、第二系統の操舵センサ19bの出力信号に基づいて検出した操舵トルク及び第二系統の車両信号27b(例えば、車速)に基づいて、操舵機構をアシストするトルク指令値を算出するように構成されている。
各系統の制御回路28a、28bは、各系統の3相巻線の電流検出値が、各系統の3相巻線の電流指令値に近づくように、3相巻線に印加する電圧指令値を変化させる電流フィードバック制御を行う。各系統の3相巻線の電流指令値の設定、電流フィードバック制御は、dq軸の回転座標系上で行われる。各系統のdq軸の回転座標系は、回転子に設けられた永久磁石のN極の向き(磁極位置)に定めたd軸、及びd軸より電気角で90°(π/2)進んだ方向に定めたq軸からなる、回転子の電気角での回転に同期して回転する2軸の回転座標系である。
具体的には、各系統の制御回路28a、28bは、各系統のトルク指令値に基づいて、各系統のd軸の電流指令値及びq軸の電流指令値を算出する。各系統の制御回路28a、28bは、各系統の3相の電流検出値をd軸の電流検出値及びq軸の電流検出値に変換する。各系統の制御回路28a、28bは、各系統について、d軸の電流検出値がd軸の電流指令値に近づき、q軸の電流検出値がq軸の電流指令値に近づくように、d軸の電圧指令値及びq軸の電圧指令値を変化させる。そして、各系統の制御回路28a、28bは、各系統のd軸の電圧指令値及びq軸の電圧指令値を、各系統の3相の電圧指令値に変換する。
なお、各系統の制御回路28a、28bは、各系統の回転センサ15a、15bの出力信号に基づいて、回転子の回転速度及び回転角度(磁極位置)を検出し、各系統の各相の電流センサ123の出力信号に基づいて、3相巻線に流れる電流を検出し、各系統の電圧センサの出力信号に基づいて、各系統の駆動回路12a、12bに供給される直流電圧を検出する。
各系統の制御回路28a、28bは、各系統の3相巻線の電圧指令値に基づいて、各系統の各スイッチング素子をオンオフ制御するPWM(Pulse Width Modulation)制御を実行する。各系統の制御回路28a、28bは、各系統の各相の電圧指令値と、直流電圧の振幅で振動するキャリア波(三角波)とを比較し、比較結果に基づいて各相のオンオフ制御信号を生成して、対応するスイッチング素子のゲート端子に出力する。
<駆動回路の故障判定>
第一系統の制御回路28aは、検出情報に基づいて、第一系統の駆動回路12aの故障又は正常を判定する。例えば、第一系統の制御回路28aは、第一系統の電流センサ123の出力信号に基づいて検出した各相の電流検出値、及び第一系統の各スイッチング素子のオンオフ制御情報に基づいて、各スイッチング素子の故障の有無を判定する。第一系統の制御回路28aは、第一系統のスイッチング素子が故障していると判定した場合は、第一系統の駆動回路12aが故障していると判定し、第一系統のスイッチング素子が故障していないと判定した場合は、第一系統の駆動回路12aが正常であると判定する。第一系統の制御回路28aは、第一系統の駆動回路12aの故障判定結果を、通信線37を介して、第二系統の制御回路28bに伝達する。
第二系統の制御回路28bは、検出情報に基づいて、第二系統の駆動回路12bの故障又は正常を判定する。例えば、第二系統の制御回路28bは、第二系統の電流センサ123の出力信号に基づいて検出した各相の電流検出値、及び第二系統の各スイッチング素子のオンオフ制御情報に基づいて、各スイッチング素子の故障の有無を判定する。第二系統の制御回路28bは、第二系統のスイッチング素子が故障していると判定した場合は、第二系統の駆動回路12bが故障していると判定し、第二系統のスイッチング素子が故障していないと判定した場合は、第二系統の駆動回路12bが正常であると判定する。第二系統の制御回路28bは、第二系統の駆動回路12bの故障判定結果を、通信線37を介して、第一系統の制御回路28aに伝達する。
上記では、各系統の駆動回路12a、12bに設けられた電流センサ123の出力と各系統の各スイッチング素子のオンオフ制御情報に基づいて、各スイッチング素子の故障の有無を判定している。しかし、各系統の駆動回路12a、12bに供給される直流電流の電圧を検出する電源電圧センサの出力と各系統の各スイッチング素子のオンオフ制御情報に基づいて、各系統の駆動回路が健全に電源電圧を供給されているかどうか判断し、各系統の駆動回路12a、12bの故障判定をしてもよい。 同様に、各系統の駆動回路12a、12bに供給される電流の大きさ、または、出力電流の電圧と各系統の各スイッチング素子のオンオフ制御情報に基づいて、各系統の駆動回路12a、12bの故障判定をしてもよい。
なお、各スイッチング素子または各系統の駆動回路12a、12bが故障検出回路を有する場合は、第一系統の制御回路28a及び第二系統の制御回路28bは、故障検出回路の出力信号に基づいて、各スイッチング素子の故障の有無を判定してもよい。
<駆動回路の故障時の課題>
特許文献1の技術のように、1系統の駆動回路の故障時、異状系統の巻線への電力供給を停止し、正常側の系統の巻線に供給される電流を増加させると、正常側の系統の巻線が巻き回しされたステータの周方向の位置において磁界が増加し、ロータの磁石を不可逆的に減磁させる可能性がある。ロータの磁石が減磁されると、モータの出力トルクが低下する。また、正常側の系統の巻線の発熱量の増加により、巻線の温度が許容温度を超えやすくなり、駆動継続時間が短くなる問題が生じる。
<切換回路の切り替え制御>
そこで、第一系統の駆動回路12a及び第二系統の駆動回路12bが正常である時は、第一系統の制御回路28aは、第一系統の切替回路13aを接続状態に制御し、第二系統の制御回路28bは、第二系統の切替回路13bを接続状態に制御し、第一系統の制御回路28a又は第二系統の制御回路28bは、巻線切替回路14を非接続状態に制御する。
第二系統の駆動回路12bが正常であり第一系統の駆動回路12aが故障した時は、第一系統の制御回路28aは、第一系統の切替回路13aを非接続状態に制御し、第二系統の制御回路28bは、第二系統の切替回路13bを接続状態に制御し、第一系統の制御回路28a又は第二系統の制御回路28bは、巻線切替回路14を接続状態に制御する。
この状態になると、本実施の形態では、第一系統の3相の巻線U1、V1、W1は、第一系統の駆動回路12aから切り離され、第一系統のU相の巻線U1は、第二系統のU相の巻線U2と同様に、第二系統の駆動回路12bのU相の接続点に接続され、第一系統のV相の巻線V1は、第二系統のV相の巻線V2と同様に、第二系統の駆動回路12bのV相の接続点に接続され、第一系統のW相の巻線W1は、第二系統のW相の巻線W2と同様に、第二系統の駆動回路12bのW相の接続点に接続される。
第一系統の駆動回路12aが正常であり第二系統の駆動回路12bが故障した時は、第一系統の制御回路28aは、第一系統の切替回路13aを接続状態に制御し、第二系統の制御回路28bは、第二系統の切替回路13bを非接続状態に制御し、第一系統の制御回路28a又は第二系統の制御回路28bは、巻線切替回路14を接続状態に制御する。
この状態になると、本実施の形態では、第二系統の3相の巻線U2、V2、W2は、第二系統の駆動回路12bから切り離され、第二系統のU相の巻線U2は、第一系統のU相の巻線U1と同様に、第一系統の駆動回路12aのU相の接続点に接続され、第二系統のV相の巻線V2は、第一系統のV相の巻線V1と同様に、第一系統の駆動回路12aのV相の接続点に接続され、第二系統のW相の巻線W2は、第一系統のW相の巻線W1と同様に、第一系統の駆動回路12aのW相の接続点に接続される。
上記の構成によれば、駆動回路が故障した系統の巻線を、故障系統の駆動回路から切り離し、正常系統の駆動回路に接続することができる。よって、正常系統の駆動回路により、正常系統の巻線及び異状系統の巻線に電流を流すことができ、出力トルクの低下を抑制することができる。正常時と同様に、巻線の磁界がステータの周方向に分散するため、ロータ磁石の不可逆減磁の発生を防止できる。また、正常時と同様に、正常系統の巻線及び異常系統の巻線に分散して電流が流れるので、巻線の発熱による駆動継続時間の短縮も抑制できる。
本実施の形態では、各系統の制御回路28a、28bは、上述した各切替回路の各磁気コイルへの通電、非通電を切り替え、各切替回路の接続状態、非接続状態を切り替える。
<駆動回路の故障時のモータ制御>
第一系統の駆動回路12a及び第二系統の駆動回路12bのいずれか一方が故障し、他方が正常である時は、正常系統の制御回路は、正常である駆動回路の出力電流を、第一系統の駆動回路及び第二系統の駆動回路の双方が正常である場合の出力電流よりも増加させる。
本実施の形態では、駆動回路の正常時における、第一系統のトルク指令値と第二系統のトルク指令値とが同じになり、第一系統の電流指令値と第二系統の電流指令値とが同じになるように構成されている。
正常系統の制御回路は、正常である駆動回路の出力電流を、第一系統の駆動回路及び第二系統の駆動回路の双方が正常である場合の出力電流の2倍に増加させる。
この構成によれば、駆動回路の異常時において、第一系統の巻線16a及び第二系統の巻線16bに流れる電流を、駆動回路の正常時と同等にでき、出力トルクを維持できる。
具体的には、第二系統の駆動回路12bが正常であり第一系統の駆動回路12aが故障した時は、第二系統の制御回路28bは、第二系統の駆動回路12bの出力電流を、第一系統の駆動回路12a及び第二系統の駆動回路12bの双方が正常である場合の出力電流の2倍に増加させる。一方、第一系統の駆動回路12aが正常であり第二系統の駆動回路12bが故障した時は、第一系統の制御回路28aは、第一系統の駆動回路12aの出力電流を、第一系統の駆動回路12a及び第二系統の駆動回路12bの双方が正常である場合の出力電流の2倍に増加させる。
本実施の形態では、正常系統の制御回路は、上述した駆動回路の正常時と同様に、トルク指令値に基づいて、d軸の電流指令値及びq軸の電流指令値を算出する。そして、正常系統の制御回路は、算出した正常時のd軸の電流指令値及びq軸の電流指令値をそれぞれ2倍した値を、異常時のd軸の電流指令値及びq軸の電流指令値として算出する。正常系統の制御回路は、上述した駆動回路の正常時と同様に、正常系統の3相の電流検出値をd軸の電流検出値及びq軸の電流検出値に変換する。そして、正常系統の制御回路は、d軸の電流検出値が異常時のd軸の電流指令値に近づき、q軸の電流検出値が異常時のq軸の電流指令値に近づくように、d軸の電圧指令値及びq軸の電圧指令値を変化させる。そして、正常系統の制御回路は、d軸の電圧指令値及びq軸の電圧指令値を、3相の電圧指令値に変換する。そして、正常系統の制御回路は、3相の電圧指令値に基づいて、正常系統の各スイッチング素子をオンオフ制御するPWM制御を実行する。
なお、正常系統の駆動回路を流れる電流が正常時の2倍になり、駆動回路の発熱量が増加する。よって、駆動回路の発熱量が増加し過ぎないように、正常系統の制御回路は、2倍に増加された異常時のd軸の電流指令値及びq軸の電流指令値を、上限制限するように構成されてもよい。また、出力電流の増加率は2倍でなくともよく、1倍から2倍の間に設定されてもよい。
<巻線配置>
図9に、第一系統の巻線16a及び第二系統の巻線16bのステータ25への巻き回し配置の第一例を示し、図10に、その第二例を示す。図12には、比較例に係る巻き回し配置の例を示す。
本実施の形態では、各系統の巻線16a、16bは、3相の巻線を2セット有している。すなわち、第一系統の巻線16aは、第一セットの3相の巻線U1_1、V1_1、W1_1と、第二セットの3相の巻線U1_2、V1_2、W1_2とを有している。第二系統の巻線16bは、第一セットの3相の巻線U2_1、V2_1、W2_1と、第二セットの3相の巻線U2_2、V2_2、W2_2とを有している。
図12の比較例では、第一系統の巻線16a(U1、V1、W1)と第二系統の巻線16b(U2、V2、W2)が交互に隣り合う配置となっている。また、3種類の相(U相、V相、W相)を円周上に等間隔に配置している。比較例の巻線配置において、2系統の駆動回路のうち一方が故障した場合に、特許文献1のように、他方の駆動回路で他方の系統の巻線にのみ電流を流す制御を行うことを考える。このとき、第一系統の巻線と第二系統の巻線が交互に隣り合う配置とし、また、3種類の相(U相、V相、W相)を円周上に等間隔に配置することにより、一方の系統の巻線のみで駆動した場合の電磁加振力の空間次数が正常時よりも低次になることを防止することができる。これにより、一方の系統の巻線のみによる駆動時の振動の発生が抑止できる。
しかしながら、比較例の巻線配置では、第一系統、第二系統ともに故障が発生していない場合、2つの系統の巻線16a、16bが交互に隣り合う配置とされることにより系統間の干渉(電磁気的なカップリング)が大きくなり、電流制御において系統間の干渉を考慮した制御(非干渉制御)を行うことが必要となる。
この非干渉制御は複雑な計算を高速で実行する必要があるため、演算処理装置10a、10bの演算負荷を増大させる。そのため、より高性能な演算処理装置10a、10bが必要となり、装置のコストを上昇させる要因となる。
本実施の形態の図9の第一例では、第一系統の巻線16a及び第二系統の巻線16bは、同じ系統の巻線毎にまとまって、周方向に2つに分かれてステータ25に設けられている。
この構成によれば、第一系統の巻線と第二系統の巻線が周方向に隣接する箇所を、2個所まで低減することができ、系統間の干渉(電磁気的なカップリング)を減少させることができる。よって、駆動回路の故障が発生していない正常制御時の系統間の非干渉制御の必要性を低減し、制御の簡易化と安価な演算処理装置10a、10bの使用を可能とすることができる。一方、同一系統の巻線がまとまっているので、駆動回路の故障時に、特許文献1のように、一方の系統の巻線だけに電流を流すと、電磁加振力の空間次数が正常時よりも低次(この例では正常時は4次、1系統のみ駆動時は1次)になり、同じ加振力でもより振動が発生しやすくなる。しかし、本実施の形態では、駆動回路の故障時に両系統の巻線に電流を流すので、正常時と同様の電磁加振力の空間次数を発生させることができる。よって、故障時も、正常時に比べて振動が増大することはなく、車両の操縦性、信頼性、静粛性を確保することができる。
図9の例では、第一系統の第一セットの3相の巻線U1_1、V1_1、W1_1及び第二セットの3相の巻線U1_2、V1_2、W1_2が、ステータ25の周方向の一方側半分に巻き回しされている。第二系統の第一セットの3相の巻線U2_1、V2_1、W2_1及び第二セットの3相の巻線U2_2、V2_2、W2_2が、ステータ25の周方向の他方側半分に巻き回しされている。また、同じセットの3相の巻線は、周方向にまとまって配置されている。
また、第一系統であるか第二系統であるかを考慮しなければ、同じ相の巻線は、周方向に等間隔に配置されている。すなわち、第一系統のU相の巻線U1_1、U1_2及び第二系統のU相の巻線U2_1、U2_2は、周方向に等間隔に配置されている。また、第一系統のV相の巻線V1_1、V1_2及び第二系統のV相の巻線V2_1、V2_2は、周方向に等間隔に配置されている。第一系統のW相の巻線W1_1、W1_2及び第二系統のU相の巻線W2_1、W2_2は、周方向に等間隔に配置されている。この配置により、駆動回路の異常時に、正常系統の駆動回路により、両系統の巻線を適切に制御することができる。
本実施の形態の図10の第二例では、第一系統の巻線16a及び第二系統の巻線16bは、同じ系統及び同じセットの3相の巻線毎に、周方向にまとまってステータ25に設けられている。
この構成によれば、第一系統の巻線と第二系統の巻線が周方向に隣接する箇所を、比較例のように交互に配置される場合よりも低減することができ、系統間の干渉(電磁気的なカップリング)を減少させることができる。よって、正常制御時の系統間の非干渉制御の必要性を低減し、制御の簡易化と安価な演算処理装置10a、10bの使用を可能とすることができる。また、駆動回路の故障時に両系統の巻線に電流を流すので、正常時と同様の電磁加振力の空間次数を発生させることができる。よって、故障時も、正常時に比べて振動が増大することはなく、車両の操縦性、信頼性、静粛性を確保することができる。
図10の例では、第一系統の第一セットの3相の巻線U1_1、V1_1、W1_1、第二系統の第一セットの3相の巻線U2_1、V2_1、W2_1、第一系統の第二セットの3相の巻線U1_2、V1_2、W1_2、及び第二系統の第二セットの3相の巻線U2_2、V2_2、W2_2が、それぞれ、周方向にまとまって配置され、この順に周方向に配置されている。第一系統であるか第二系統であるかを考慮しなければ、同じ相の巻線は、周方向に等間隔に配置されている。この配置により、駆動回路の異常時に、正常系統の駆動回路により、両系統の巻線を適切に制御することができる。
図10の例では、各系統の巻線の第一セットと第二セットは各層毎に、互いに円周上に対称の位置に配置されている。よって、一方の系統の巻線に断線等の故障が発生して、他方の系統の巻線のみに通電して回転電機装置1の運転を継続する場合を想定すると、その場合の振動の増加を低減することが期待できる。
図9及び図10のように、第一系統の巻線16a及び第二系統の巻線16bが、同じ系統の巻線毎、又は同じ系統及び同じセットの3相の巻線毎に、ステータにまとめて配置することで、系統間の電磁的干渉だけでなく、系統間の物理的干渉も減少させることができ、巻線作業の作業性を向上し、また巻線のユニット化による生産性、整備性の向上を図ることができる。
<巻線の故障判定>
第一系統の制御回路28aは、検出情報に基づいて、第一系統の巻線16aの故障又は正常を判定する。例えば、第一系統の制御回路28aは、第一系統の電流センサ123の出力信号に基づいて検出した各相の電流検出値、及び第一系統の各スイッチング素子のオンオフ制御情報に基づいて、第一系統の巻線16aの各相の故障(断線、短絡等)の有無を判定する。第一系統の駆動回路12aがスイッチング素子をオンしている状況で、出力電流が過大であれば、第一系統の制御回路28aは、第一系統の巻線16aの短絡を判定できる。第一系統の制御回路28aは、第一系統の巻線16aの故障の有無を判定した場合は、判定結果を通信線37を介して、第二系統の制御回路28bに伝達する。
第二系統の制御回路28bは、検出情報に基づいて、第二系統の巻線16bの故障又は正常を判定する。例えば、第二系統の制御回路28bは、第二系統の電流センサ123の出力信号に基づいて検出した各相の電流検出値、及び第二系統の各スイッチング素子のオンオフ制御情報に基づいて、第二系統の巻線16bの各相の故障(断線、短絡等)の有無を判定する。第二系統の駆動回路12bがスイッチング素子をオンしている状況で、出力電流が過大であれば、第二系統の制御回路28bは、第二系統の巻線16bの短絡を判定できる。第二系統の制御回路28bは、第二系統の巻線16bの故障の有無を判定した場合は、判定結果を通信線37を介して、第一系統の制御回路28aに伝達する。
なお、各系統の巻線16a、16bの故障の有無は、各インバータ回路の出力電圧、入力電流または入力電圧と、各スイッチング素子のオンオフ制御情報に基づいて判定してもよい。また、各スイッチング素子または駆動回路12a、12bが負荷の断線、短絡の検出回路を有する場合は、第一系統の制御回路28a及び第二系統の制御回路28bは、負荷の断線、短絡の検出回路の出力信号に基づいて、各系統の巻線16a、16bの故障の有無を判定してもよい。
第一系統の巻線16aおよび第二系統の巻線16bに、故障が発生していない場合、2つの系統の制御回路28a、28bの制御状態について説明する。第一系統の制御回路28aは第一系統の切替回路13aを接続状態に制御し、巻線切替回路14を非接続状態に制御する。第二系統の制御回路28bは第二系統の切替回路13bを接続状態に制御し、巻線切替回路14を非接続状態に制御する。この状態で、第一系統の駆動回路12aは、第一系統の巻線16aを自由に駆動でき、第二系統の駆動回路12bは、第二系統の巻線16bを自由に駆動できる。
第二系統の巻線16bが正常であり、第一系統の巻線16aに故障が検出された場合、2つの系統の制御回路28a、28bの制御状態について説明する。第一系統の制御回路28aは第一系統の切替回路13aを非接続状態に制御し、巻線切替回路14を非接続状態に制御する。第二系統の制御回路28bは第二系統の切替回路13bを接続状態に制御し、巻線切替回路14を非接続状態に制御する。そして、第一系統の駆動回路12aをオフ状態に制御し電流を流さないようにする。この場合、回転電機装置1は故障の発生していない第二系統の駆動回路12bと巻線16bのみを用いて駆動を継続することができる。
第一系統の巻線16aが正常であり、第二系統の巻線16bに故障が検出された場合、2つの系統の制御回路28a、28bの制御状態について説明する。第一系統の制御回路28aは第一系統の切替回路13aを接続状態に制御し、巻線切替回路14を非接続状態に制御する。第二系統の制御回路28bは第二系統の切替回路13bを非接続状態に制御し、巻線切替回路14を非接続状態に制御する。そして、第二系統の駆動回路12bをオフ状態に制御し電流を流さないようにする。この場合、回転電機装置1は故障の発生していない第一系統の駆動回路12aと巻線16aのみを用いて駆動を継続することができる。
2系統の巻線16a、16bの一方に、断線、短絡といった故障が発生した場合は、故障した巻線を使用することができない。2系統の駆動回路12a、12bのうち一方が故障した場合は、故障していない他方の駆動回路で両系統の巻線16a、16bを駆動して、正常である場合と遜色のない制御ができる。しかし、2系統の巻線のうちの一方が故障した場合は、正常時と同等の制御は困難であり、正常時の半分の巻線で駆動を継続することしかできない。しかしながら、上記の様な、一方の系統の駆動回路が故障した場合の制御性を維持できる駆動方式を採用しつつ、加えて、一方の系統の巻線が故障した場合に限定的な制御性を維持しつつ回転電機装置1の制御を継続できるので、回転電機装置1の信頼性を高めることができる。
実施の形態2.
実施の形態2に係る回転電機装置1について説明する。上記の実施の形態1と同様の構成部分は説明を省略する。本実施の形態に係る回転電機装置1の基本的な構成は実施の形態1と同様であるが、第一系統の切替回路13aを操作する接続線34a、34bが第一系統の制御回路28aと第二系統の制御回路28bの双方から伸びており、第二系統の切替回路13bを操作する接続線35a、35bが第一系統の制御回路28aと第二系統の制御回路28bの双方から伸びている点が異なる。
第一系統の制御回路28aは、第二系統の制御回路28bの異常の有無を判定し、異常があると判定した場合は、第二系統の切替回路13bを非接続状態に制御し、第一系統の切替回路13a及び巻線切替回路14を接続状態に制御する。第二系統の制御回路28bは、第一系統の制御回路28aの異常の有無を判定し、異常があると判定した場合は、第一系統の切替回路13aを非接続状態に制御し、第二系統の切替回路13b及び巻線切替回路14を接続状態に制御する。
<制御回路の相互監視>
実施の形態2として、図11に、第一系統の制御回路28aと第二系統の制御回路28bが通信線37により信号を交換し、相互に監視し一方の制御回路が他方の制御回路の返信異常を検出した時、当該系統の故障を判定する回転電機装置1を示す。第一系統の制御回路28aと第二系統の制御回路28bは通信線37により信号を交換し、相互に監視し一方の制御回路が他方の制御回路の返信異常を検出した時、故障判定する。
第一系統の制御回路28aは定期的に第二系統の制御回路28bへ所定の問い合わせコードの送信を行う。問い合わせコードを受信した第二系統の制御回路28bは所定のルールに従って返信コードの送信を行う。第一系統の制御回路28aは問い合わせコードの送信後、所定の期間内に正しい返信コードの受信があった場合、第二系統の制御回路28bが正常であると判定する。所定期間内に正しい返信コードの受信が無ければ、第一系統の制御回路28aは第二系統の制御回路28bが故障であると判定する。
第二系統の制御回路28bは定期的に第一系統の制御回路28aへ所定の問い合わせコードの送信を行う。問い合わせコードを受信した第一系統の制御回路28aは所定のルールに従って返信コードの送信を行う。第二系統の制御回路28bは問い合わせコードの送信後、所定の期間内に正しい返信コードの受信があった場合、第一系統の制御回路28aが正常であると判定する。所定期間内に正しい返信コードの受信が無ければ、第二系統の制御回路28bは第一系統の制御回路28aが故障であると判定する。
<制御回路の故障対応>
第一系統の制御回路28aは、第二系統の制御回路28bが正常と判定した場合、接続線34aを介して第一系統の切替回路13aを接続状態に制御する。そして、接続線35aを介して切替回路13bを接続状態に制御する。さらに、接続線36aを介して巻線切替回路14を非接続状態に制御する。第一系統の制御回路28aは、第二系統の制御回路28bの異常を判定した場合、接続線34aを介して第一系統の切替回路13aを接続状態に制御する。そして、接続線35aを介して切替回路13bを非接続状態に制御する。さらに、接続線36aを介して巻線切替回路14を接続状態に制御する。
第二系統の制御回路28bは、第一系統の制御回路28aが正常と判定した場合、接続線34bを介して第一系統の切替回路13aを接続状態に制御する。そして、接続線35bを介して切替回路13bを接続状態に制御する。さらに、接続線36bを介して巻線切替回路14を非接続状態に制御する。第二系統の制御回路28bは、第一系統の制御回路28aの異常を判定した場合、接続線34bを介して第一系統の切替回路13aを非接続状態に制御する。そして、接続線35bを介して切替回路13bを接続状態に制御する。さらに、接続線36bを介して巻線切替回路14を接続状態に制御する。
第一系統の演算処理装置10a、第二系統の演算処理装置10bのいずれかが無応答状態となった場合、第一系統の駆動回路12aまたは第二系統の駆動回路12bが出力を制御が出来なくなる事態が想定できる。その場合、第一系統の制御回路28aまたは第二系統の制御回路28bが通信線37を介して信号を交換し、相互監視することで、一方の正常な制御回路が他方の故障している制御回路の返信異常により故障を判定することが出来る。一方の正常な制御回路が、他方の故障が発生している制御回路の系統の、切替回路13aまたは13bを非接続状態に、巻線切替回路14を接続状態となるように制御する。
第一系統の制御回路28aの第一系統の切替回路13a、第二系統の切替回路13bへの各接続線34a、35a、および第二系統の制御回路28bの第一系統の切替回路13a、第二系統の切替回路13bへの各接続線34b、35bをダイオードオアで接続することにより、故障が発生している系統の出力回路の信号レベルに拠らず、正常な系統の制御回路がHレベルを出力することで、故障が発生している系統の切替回路13aまたは13bを非接続状態に制御し、その系統の制御回路から巻線を切り離すことが出来る。また、両系統の制御回路28a、28bの巻線切替回路14への接続線36a、36bをダイオードオアで接続することにより、故障が発生している系統の出力回路の信号レベルに拠らず、正常な系統の制御回路がHレベルを出力することで、巻線切替回路14を接続状態に制御し、2系統の巻線16a、16bを接続することが出来る。
このようにして、第一系統の制御回路28a、第二系統の制御回路28bのいずれかが故障している場合も、故障している系統の巻線を駆動回路から切り離して正常な系統の駆動回路に接続して駆動することが出来る。制御回路が故障している系統に関しては、当該制御回路の異常によって当該系統の駆動回路も正常な駆動信号を出力できず、当該系統の巻線に適切な電流が流されない場合がある。よって、一方の系統の制御回路異常による回転電機装置1の不良動作を防止し、正常な系統の制御回路によって、正常な系統の駆動回路を用いて2つの系統の巻線16a、16bを駆動して運転を継続することができる。
[その他の実施の形態]
本願のその他の実施の形態について説明する。なお、以下に説明する各実施の形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施の形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
(1)上記の各実施の形態においては、図9、図10では、2系統3相2セットの巻線について示したが、巻線のセット数は2に限定するものではなく、1セット若しくは3セット以上の場合の回転電機装置にも適用できる。また、巻線の相数は3に限定するものではなく、2相若しくは4相以上の場合の回転電機装置にも適用できる。また、巻線の系統数は2に限定するものではなく、3系統以上の場合の回転電機装置にも適用できる。
(2)上記の各実施の形態においては、回転電機本体2の駆動力が、車両の操舵装置の駆動力源とされている場合を例として説明した。しかし、本願の実施の形態はこれに限定されない。すなわち、回転電機本体2の駆動力が、例えば、車輪の駆動力源とされるなど、他の装置の駆動力源とされてもよい。或いは、回転電機装置1が発電機として機能し、回転電機装置1が発電した電力が、直流電源5a又は直流電源5bに供給されてもよい。
(3)上記の各実施の形態においては、制御回路として、2系統の制御回路28a、28bが設けられ、演算処理装置(CPU)が2つ設けられている場合を例に説明した。しかし、本願の実施の形態はこれに限定されない。すなわち、演算処理装置(CPU)を1つ設けた、1つの制御回路により2組のインバータ及び巻線接続切替機構を制御するように構成されてもよい。この場合は、1つの制御回路の出力回路に、第一系統の切替回路13a、第二系統の切替回路13b、及び巻線切替回路14が接続され、1つの制御回路により、各切替回路の接続状態又は非接続状態が切り替えられる。また、巻線切替回路14は、第一系統の切替回路13a又は第二系統の切替回路13bと同様のものが用いられる。1つの制御回路の出力回路に、第一系統の駆動回路12a及び第二系統の駆動回路12bが接続され、1つの駆動回路により、第一系統及び第二系統の各スイッチング素子がオンオフされる。また、第一系統の制御回路28a及び第二系統の制御回路28bは、1つの制御回路に設けられた第一系統の制御部及び第二系統の制御部と読み替えることができる。また、2重系とされた、電源コネクタ、信号コネクタ、ローパスフィルタ回路、電源リレー回路、及び回転センサは、1重系とされてもよい。
(4)上記の各実施の形態においては、回転電機装置1が一体的に構成されている場合を例として説明した。しかし、本願の実施の形態はこれに限定されない。すなわち、回転電機装置1の各部が、任意の組み合わせで、複数のユニットに別体に構成されてもよい。
(5)上記の各実施の形態においては、第一系統の切替回路13a、第二系統の切替回路13b、及び巻線切替回路14に、電磁リレー回路が用いられている場合を例として説明した。しかし、本願の実施の形態はこれに限定されない。すなわち、第一系統の切替回路13a、第二系統の切替回路13b、及び巻線切替回路14に、スイッチング素子等の他の種類の切換回路が用いられてもよい。
(6)上記の実施の形態2においては、制御回路28a、28bが通信線37を介して信号を交換し、相互監視することで、一方の正常な制御回路が他方の故障している制御回路の返信異常により故障を判定する事例を説明したが、相互監視の方法はこれに限るものではない。互いに、操舵センサ信号、車両信号、駆動回路に対する電流指令値、電圧指令値、それらの平均値を交換して、所定値の範囲を逸脱している場合に、その系統の制御回路の異常を判定してもよい。また、一方の系統の制御回路は、他方の系統の操舵センサ信号、車両信号に基づいて、他方の系統の駆動回路に対する電流指令値、電圧指令値の妥当性を判断し、妥当な範囲を逸脱している場合にその系統の異常を判定することとしてもよい。
(7)上記の実施の形態2においては、制御回路28a、28bが通信線37を介して信号を交換し、相互監視することで、一方の正常な制御回路が他方の故障している制御回路の返信異常により故障を判定する事例を説明したが、通信線を1本ではなく2本もしくは3本以上として、通信線についても二重化もしくは多重化し、回転電機装置全体の信頼性を向上してもよい。
本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。