JP6753636B2 - 難燃性樹脂組成物、これを用いたケーブル及びワイヤハーネス - Google Patents
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Description
図1は、本発明に係るケーブルの一実施形態を示す部分側面図である。図2は、図1のII−II線に沿った断面図である。図1及び図2に示すように、ケーブル10は、絶縁電線4と、絶縁電線4を被覆する被覆体3とを備えている。そして、絶縁電線4は、信号を伝送する伝送媒体としての導体1と、導体1を被覆する絶縁層2とを有している。
導体1は、1本の素線のみで構成されてもよく、複数本の素線を束ねて構成されたものであってもよい。導体1の材質は特に限定されるものではないが、アルミニウム又はアルミニウム合金であることが好ましい。この場合、導体1として銅などを用いる場合に比べて、絶縁電線4、ひいてはケーブル10をより軽量化できる。また、導体1の断面積についても、特に限定されるものではないが、細径化や軽量化の観点から、5mm2未満であることが好ましく、3mm2以下であることがより好ましい。但し、導体1の強度及び導電率の観点からは、導体1の断面積は0.13mm2以上であることが好ましい。
絶縁層2は、上述したように、難燃性樹脂組成物で構成されており、この難燃性樹脂組成物は、プロピレン系樹脂を含むベース樹脂と、難燃剤と、酸化チタン含有粒子とを含んでいる。
ベース樹脂は、プロピレン系樹脂を80質量%より多く含む樹脂で構成されていればよい。この場合、ベース樹脂がプロピレン系樹脂を80質量%以下含む樹脂で構成される場合に比べて、難燃性樹脂組成物の耐摩耗性をより十分に向上させることができる。
難燃剤は、シリコーン系化合物と、脂肪酸含有化合物と、炭酸カルシウム粒子及び珪酸塩化合物粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種からなる無機粒子とを含んでいる。
無機粒子は、絶縁電線4の燃焼時にシリコーン系化合物及び脂肪酸含有化合物とともにベース樹脂に対するバリア層を形成して絶縁電線4の難燃性を向上させるためのものである。無機粒子としては炭酸カルシウム粒子及び珪酸塩化合物粒子が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。無機粒子として炭酸カルシウム粒子、珪酸塩化合物粒子又はこれらの混合物を用いると、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物に比べて、少量で効果的に難燃性を向上させることができるため、絶縁層2の軽量化、ひいては絶縁電線4の軽量化を図ることができる。炭酸カルシウム粒子は、重質炭酸カルシウム又は軽質炭酸カルシウムのいずれでもよい。また、珪酸塩化合物粒子としてはタルク粒子及びクレー粒子などが挙げられる。
シリコーン系化合物は、難燃剤として機能するものであり、シリコーン系化合物としては、ポリオルガノシロキサンなどが挙げられる。ここで、ポリオルガノシロキサンは、シロキサン結合を主鎖とし側鎖に有機基を有するものであり、有機基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基;ビニル基;及びフェニル基などのアリール基などが挙げられる。具体的にはポリオルガノシロキサンとしては、例えばジメチルポリシロキサン、メチルエチルポリシロキサン、メチルオクチルポリシロキサン、メチルビニルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)ポリシロキサンなどが挙げられる。ポリオルガノシロキサンとして、シリコーンパウダー、シリコーンオイル、シリコーンガム及びシリコーンレジンが挙げられる。中でも、シリコーンガムが好ましい。この場合、シリコーン系化合物がシリコーンガム以外のシリコーン系化合物である場合に比べて、絶縁層2においてブルームが起こりにくくなるとともに絶縁層2の難燃性をより向上させることができる。
脂肪酸含有化合物は、難燃剤として機能するものである。脂肪酸含有化合物とは、脂肪酸又はその金属塩を言う。ここで、脂肪酸としては、例えば炭素原子数が12〜28である脂肪酸が用いられる。このような脂肪酸としては、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸、ベヘン酸及びモンタン酸が挙げられる。中でも、脂肪酸としては、ステアリン酸が好ましい。この場合、ステアリン酸以外の脂肪酸を用いる場合に比べて、絶縁層2の難燃性をより向上させることができる。
酸化チタン含有粒子は酸化チタン粒子を含有する。酸化チタン粒子は、ルチル型酸化チタン粒子でもアナタース型酸化チタン粒子でもよいが、ルチル型酸化チタン粒子であることが好ましい。この場合、酸化チタン粒子がアナタース型酸化チタン粒子である場合に比べて、難燃性樹脂組成物の耐摩耗性をより向上させることができる。
被覆体3は、絶縁層2を物理的又は化学的な損傷から保護するものである。
次に、上述したケーブル10の製造方法について説明する。
図3は、本発明のワイヤハーネスの一実施形態を示す断面図である。図3に示すように、ワイヤハーネス20は、ケーブルとしての複数本(図3では4本)の絶縁電線4を束ねるテープ21とを備える。テープ21は、複数本の絶縁電線4をその長さ方向に沿って全体的に被覆している必要はなく、複数本の絶縁電線4をその長さ方向に沿って必要な箇所で部分的に被覆していればよい。
ベース樹脂、金属酸化物含有粒子及び難燃剤を、表1〜6に示す配合量で配合し、2軸押出機(32mm)によって200℃にて混練し、難燃性樹脂組成物を得た。なお、表1〜6において、各配合成分の配合量の単位は質量部である。また、実施例1〜35及び比較例1〜9において、ベース樹脂の配合量が100質量部となっていないが、これらの実施例及び比較例では、シリコーンMB中にもベース樹脂の一部が含まれており、ベース樹脂の配合量とシリコーンMB中のベース樹脂の配合量とを合計すればその合計は100質量部となる。
(A−1) プロピレン系樹脂
プロピレンブロックコポリマー(ブロックPP)
MFR(230℃、2.16kg重)0.5g/10分、プライムポリマー社製
ホモポリプロピレン(ホモPP)
MFR(230℃、2.16kg重)0.5g/10分、プライムポリマー社製
プロピレンランダムコポリマー(ランダムPP)
MFR(230℃、2.16kg重)0.5g/10分、プライムポリマー社製
(A−2) ポリエチレン
直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)
密度0.92g/cm3、MFR(190℃、2.16kg重)2g/10分、住友化学社製
(A−3)熱可塑性エラストマー
スチレン系熱可塑性エラストマー(水添スチレン−ブタジエンゴム(水添SBR))
製品名「ダイナロン1320P」、JSR社製
(A−4)極性基含有ポリオレフィン(変性ポリオレフィン)
無水マレイン酸変性ポリプロピレン(プロピレン系樹脂)
三井化学社製
無水マレイン酸変性直鎖状低密度ポリエチレン(ポリエチレン系)
デュポン社製
(B−1) 酸化チタン(TiO2)含有粒子
酸化チタン含有粒子1
ルチル型酸化チタン粒子(付着物としてアルミナ、シリカ及びポリオールを含む、酸化チタン粒子100質量%あたりの付着物の付着量4〜7質量%、平均粒径0.21μm、製品名「PF690」、石原産業社製)
酸化チタン含有粒子2
ルチル型酸化チタン粒子(付着物としてアルミナ及びポリオールを含む、酸化チタン粒子100質量%あたりの付着物の付着量2〜5質量%、平均粒径:0.21μm、製品名「CR−60−2」、石原産業社製)
酸化チタン含有粒子3
ルチル型酸化チタン粒子(付着物としてアルミナ、シリカ、ポリオール及びポリシロキサンを含む、酸化チタン粒子100質量%あたりの付着物の付着量3〜6質量%、平均粒径:0.21μm、製品名「PF691」、石原産業社製)
酸化チタン含有粒子4
ルチル型酸化チタン粒子(付着物としてアルミナ、シリカ及びポリオールを含む、酸化チタン粒子100質量%あたり付着物の付着量4〜7質量%、平均粒径0.25μm、製品名「PF711」、石原産業社製)
酸化チタン含有粒子5
ルチル型酸化チタン粒子(付着物としてアルミナ、シリカ及びポリオールを含む、酸化チタン粒子100質量%あたりの付着物の付着量6〜10質量%、平均粒径0.28μm、製品名「CR−95」、石原産業社製)
酸化チタン含有粒子6
ルチル型酸化チタン粒子(付着物としてアルミナ及びジルコニアを含む、平均粒径0.40μm、製品名「R−38L」、堺化学社製)
酸化チタン含有粒子7
アナタース型酸化チタン粒子(付着物:なし、平均粒径0.18μm、製品名「SA−1・L」、堺化学社製)
(B−2) 非酸化チタン含有粒子
酸化亜鉛粒子
ZnO、三井金属鉱業社製
酸化鉄粒子
Fe2O3、昭和化学社製
(C−1) 金属水酸化物
水酸化マグネシウム
高級脂肪酸で表面処理、平均粒径1.1μm、製品名「マグシーN6」、神島化学社製
(C−2) 無機粒子
炭酸カルシウム粒子
パラフィン処理、平均粒径1.7μm、製品名「NCC−P」、日東粉化社製
珪酸塩化合物粒子
カオリンクレー、平均粒径1.5μm、製品名「Glomax LL」、竹原化学工業社製
(C−3) 脂肪酸含有化合物
脂肪酸金属塩
ステアリン酸マグネシウム
脂肪酸
ステアリン酸
(C−4)シリコーンMB
シリコーンMB1
50質量%シリコーンガム(ジメチルポリシロキサン)と50質量%PPとを含有、信越化学社製
シリコーンMB2
50質量%シリコーンガム(ジメチルポリシロキサン)と50質量%PEとを含有、信越化学社製
上記のようにして得られた実施例1〜35及び比較例1〜9のケーブルについて、以下のようにして難燃性、耐摩耗性及び耐曲げ白化性の評価を行った。
実施例1〜35及び比較例1〜9のケーブルについて、JASO D618に記載の試験方法で水平燃焼試験を行った。水平燃焼試験では、絶縁層が燃焼するまで接炎し、離炎後、消火するまでの残炎時間を測定した。そして、以下の残炎時間ごとに以下のようにしてランク付けして評価した。結果を表1〜6に示す。難燃性の合格基準は下記の通りとした。
(評価ランク)
◎・・・残炎時間が15秒未満
○・・・残炎時間が15秒以上25秒未満
△・・・残炎時間が25秒以上30秒以下
×・・・残炎時間が30秒超又は全焼
(合格基準)評価ランクが◎、〇又は△であること
耐摩耗性は、上記実施例1〜35及び比較例1〜9のケーブルについて、JASO D618に記載の試験方法にてスクレープ摩耗試験を行い、このとき測定される「導通するまでのスクレープ摩耗回数」の最小値を指標とした。そして、ケーブルについて、その種類に応じて以下のようにしてランク付けを行って評価した。結果を表1〜6に示す。耐摩耗性の合格基準は下記の通りとした。
(評価ランク)
◎・・・スクレープ摩耗回数が300回以上
○・・・スクレープ摩耗回数が200回以上300回未満
△・・・スクレープ摩耗回数が150回以上200回未満
×・・・スクレープ摩耗回数が150回未満
(合格基準)評価ランクが◎、〇又は△であること
実施例1〜35及び比較例1〜9のケーブルについて、絶縁層の外径の3倍径(直径3.75mm)のマンドレル、5倍径(直径6.25mm)のマンドレル、7倍径(直径8.75mm)のマンドレルに巻き付け、そのとき白化が確認できるかどうかを目視にて調べた。そして、以下のようにしてランク付けを行って耐白化性を評価した。結果を表1〜6に示す。耐白化性の合格基準は下記の通りとした。
(評価ランク)
◎・・・絶縁層の外径の3倍径のマンドレルに巻き付けても白化が確認されない
○・・・絶縁層の外径の3倍径のマンドレルに巻き付けると白化が確認されるが、絶縁層
の外径の5倍径のマンドレルに巻き付けても白化が確認されない
△・・・絶縁層の外径の5倍径のマンドレルに巻き付けると白化が確認されるが、絶縁層
の外径の7倍径のマンドレルに巻き付けても白化が確認されない
×・・・絶縁層の外径の7倍径のマンドレルに巻き付けても白化が確認される
(合格基準)評価ランクが◎、〇又は△であること
2…絶縁層
3…被覆体
4…絶縁電線
10…ケーブル
20…ワイヤハーネス
Claims (9)
- プロピレン系樹脂を含むベース樹脂と、
難燃剤と、
酸化チタン粒子を含有する酸化チタン含有粒子とを含み、
前記難燃剤が、シリコーン系化合物と、脂肪酸含有化合物と、炭酸カルシウム粒子及び珪酸塩化合物粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種からなる無機粒子とを含み、
前記ベース樹脂中の前記プロピレン系樹脂の含有率が80質量%より大きく、
前記酸化チタン含有粒子が、前記酸化チタン粒子の表面に付着する酸化物及び/又は有機物をさらに含有する難燃性樹脂組成物。 - 前記プロピレン系樹脂が、ホモポリプロピレン、プロピレンブロックコポリマー及びプロピレンランダムコポリマーからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
- 前記ベース樹脂100質量部に対し、前記酸化チタン含有粒子が1質量部以上10質量部以下の割合で配合される、請求項1又は2に記載の難燃性樹脂組成物。
- 前記酸化チタン粒子がルチル型酸化チタン粒子である請求項1〜3のいずれか一項に記載の難燃性樹脂組成物。
- 前記酸化チタン粒子の平均粒径が0.2μm以上0.3μm以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の難燃性樹脂組成物。
- 前記ベース樹脂100質量部に対し、
前記無機粒子が6質量部以上20質量部未満の割合で配合され、
前記シリコーン系化合物が1.5質量部以上10質量部以下の割合で配合され、
前記脂肪酸含有化合物が3質量部以上20質量部以下の割合で配合される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の難燃性樹脂組成物。 - 前記ベース樹脂が、極性基を有するポリオレフィンを1質量%以上10質量%以下含む請求項1〜6のいずれか一項に記載の難燃性樹脂組成物。
- 導体又は光ファイバで構成される伝送媒体と、
前記伝送媒体を被覆する絶縁層とを有し、
前記絶縁層が、請求項1〜7のいずれか一項に記載の難燃性樹脂組成物で構成される層を含む、ケーブル。 - 請求項8に記載のケーブルを有するワイヤハーネス。
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