JP6745733B2 - 酸素発生反応触媒、酸素発生反応電極及び酸素発生反応方法 - Google Patents

酸素発生反応触媒、酸素発生反応電極及び酸素発生反応方法 Download PDF

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Description

本発明は、酸素発生反応触媒、この酸素発生反応触媒を備えた酸素発生反応電極、及びこの酸素発生反応電極を使用した酸素発生反応方法に関する。
酸素発生反応(OER;Oxygen Evolution Reaction)は、クリーンエネルギーとされる水素を生成するための水の電気分解や、金属空気電池の充電反応に相当するため、再生可能エネルギーの観点から、エネルギー問題を解決する上で非常に重要な化学反応として位置付けられている。
例えば、太陽光による直接的な水分解反応は以下の反応式で表される。
[陰極]2H+2e→H
[陽極]2HO→O+4H+4e
すなわち、陰極では水素が発生し、陽極では酸素発生反応(OER)が起きる。
一方、金属空気電池の放電反応を、金属の亜鉛の場合で示すと以下の反応式で表される。
[負極]Zn+2OH→ZnO+HO+2e
[正極]O+2HO+4e→4OH
充電反応はこれらの逆反応として、以下の反応式で表される。
[負極]ZnO+HO+2e→Zn+2OH
[正極]4OH→O+2HO+4e
すなわち、正極(空気極)において、放電時は酸素還元反応となり、充電時には酸素発生反応となる。酸素発生反応(OER)は、上記充電反応における正極の反応式で表される。
しかしながら、酸素発生反応の反応速度は遅く、この反応が強力な酸化反応であるため、金属空気電池においてはその正極材料が充電中に酸化されてしまい、性能が著しく劣化してしまう。
このような正極材料の劣化を防ぎ酸素発生反応速度を増大させるため、RuO(酸化ルテニウム)やIrO(酸化イリジウム)などの酸化物触媒を電極に添加する対策が従来より講じられてきた。
しかしながら、RuOやIrOは過電圧が高く、電流密度も十分に大きくないため、金属空気電池は未だ本格的な実用化には至っていない。RuOやIrOなどの代替材料として、近年盛んに探索が行われているペロブスカイト酸化物(例えば、特許文献1参照)や金属水酸化物を使用した触媒の提案もなされている。
特開平08−067997号公報
しかしながら、ペロブスカイト酸化物もRuOやIrOと同様に、酸素発生反応の過電圧が高く、電流密度も十分に満足できるレベルにはない。なお、この場合に過電圧とは、電気化学反応において、熱力学的に求められる反応の理論電位(平衡電極電位)と、実際に反応が進行するときの電極の電位との差である。
金属空気電池は、電池に内蔵していない酸素を空気中から取り込んで正極の活物質として使用できるため、金属空気電池のエネルギー密度はリチウムイオン電池の10倍以上と電気自動車などへの応用も十分に見込める。それにも拘わらず触媒の酸素発生活性が十分でないために充電が行えず、電気を放電するだけの一次電池の使用形態に留まっている。
このような金属空気電池の課題は、酸素発生活性の向上の他にも正極側の空気取り入れ構造の複雑化などがあるが、二次電池としての本格的な実用化への最も大きな障壁は触媒の酸素発生活性が十分でない点である。
本発明はこのような現状に鑑みて創案されたもので、酸素発生活性を大幅に向上させることができ、金属空気電池の二次電池としての本格的な実用化にも大いに寄与し得る酸素発生反応触媒、酸素発生反応電極及び酸素発生反応方法の提供を目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、非フェルミ流体に特有の電子構造を有する遷移金属酸化物の触媒機能に着目した。
具体的には、本発明の酸素発生反応触媒は、局在化したdバンド間に、フェルミ準位を横切る金属的な状態が存在すると共にバンドギャップが存在しない非フェルミ流体の電子構造を有する遷移金属酸化物を含んでいる。
非フェルミ流体では、クーロンポテンシャルによって局在化したdバンド間にフェルミ準位を横切る金属的な状態が存在すると共にバンドギャップが存在しないため、酸素吸着物質レベルとフェルミ準位とのエネルギー差が酸素発生反応の過電圧の指標となる。非フェルミ流体では、この特有の電子構造によってd軌道と酸素吸着物質との間を電子が盛んに移動して、電流密度が急峻に増加し、酸素発生活性が大幅に向上する。
遷移金属酸化物が、HgRuであることが好ましい。
遷移金属酸化物が、CaRuであることも好ましい。
遷移金属酸化物が、CdRuであることも好ましい。
本発明の酸素発生反応電極は、これらの酸素発生反応触媒のうちのいずれか1つと、この酸素発生反応触媒を担持する導電性材料とを備えている。
この場合、導電性材料は、炭素材料、金属材料及びポリマーからなる群から選択された1つである。
本発明の酸素発生反応方法は、空気極と対向極とを用いて酸素を発生させる酸素発生反応方法において、この空気極として、上述した酸素発生反応電極を用いる。
本発明によれば、酸素発生活性を大幅に向上させることができ、金属空気電池の二次電池としての本格的な実用化にも大いに寄与し得る酸素発生反応触媒を提供できる。
本発明に係る酸素発生反応触媒における非フェルミ流体に特有な電子構造を説明するための模式図である。 OER触媒の電気化学特性を測定するための触媒電極を示す図で、(a)は斜視図、(b)は断面図である。 OER触媒の電気化学特性を測定するための酸素発生反応装置の概要図である。 各酸素発生反応触媒の過電圧の実験結果を示すグラフである。 各酸素発生反応触媒における電流密度の大きさを示すグラフである。 図5におけるRuOの電流密度を1とした場合の、3種類の非フェルミ流体の倍率を示したグラフである。 電位を所定の範囲内で掃引したときのフェルミ流体に対する非フェルミ流体の電流密度の増加率の急峻性を示すグラフである。
本発明は、酸素発生反応触媒として、非フェルミ流体に特有な電子構造を有する遷移金属酸化物を用いるものである。このような電子構造を有する遷移金属酸化物は、触媒活性が著しく高く、水分解反応時の酸素発生触媒や金属空気電池の充電反応時の酸素発生触媒として使用し極めて優れた特性を得ることができる。
図1に基づいて、非フェルミ流体に特有な電子構造を、遷移金属酸化物の一例であるモット絶縁体と比較として説明する。同図(a)は非フェルミ流体に特有な電子構造を有しない遷移金属酸化物の一例としてモット絶縁体の電子構造を示しており、同図(b)は本発明の非フェルミ流体の一実施例であるHgRu(水銀、ルテニウム、酸素から成る化合物)の電子構造を示している。
同図(a)に示すモット絶縁体では、d電子間の電子相関が強いため、クーロンポテンシャルUddによってdバンドが局在化し、バンドギャップが存在している。
一方、同図(b)に示す非フェルミ流体の場合も、d電子間の電子相関に起因するクーロンポテンシャルUddのためにdバンドが局在化しており、これはモット絶縁体の場合と同様である。しかしながら、非フェルミ流体では、フェルミ準位Eを横切る金属的な状態又はd電子が遍歴した状態Mも同時に存在する。この特有の電子構造によって、非フェルミ流体では、バンドギャップが存在しない。
HgRu等の非フェルミ流体の特異性は、その電気抵抗率の温度依存性に最も顕著に現れる。非フェルミ流体ではバンドギャップが存在しないので、電気抵抗率は温度の増加とともに上昇して金属的な振る舞いをする。すなわち、一般に金属と呼ばれているフェルミ流体では、電気抵抗率が温度の2乗に比例するのに対し、非フェルミ流体では、温度の1乗又は3/2乗に比例する。例えばHgRuでは温度の1乗に比例する。これは、非フェルミ流体が、上記のようにd電子が遍歴した状態Mが存在する遍歴電子系に属するにも拘わらず、局在化したdバンドも有するためである。
酸素発生反応では、電子に占有されていないd軌道と酸素吸着物質との間で電子のやりとりが行われるため、酸素吸着物質の酸素原子と軌道の重なりが大きい反結合性軌道の方が、結合性軌道に比べて酸素発生反応が促進される。そのため、モット絶縁体では、図1(a)に示すように、酸素吸着物質のO2pレベルと図中上方に位置する上部dバンドとのエネルギー差Δηが酸素発生反応の過電圧の指標となる。
一方、非フェルミ流体では金属的な状態Mが存在するため、図1(b)に示すように、酸素吸着物質のO2pレベルとフェルミ準位Eとのエネルギー差Δηが酸素発生反応の過電圧の指標となる。
酸素吸着物質のO2pレベルとdレベル(d軌道のエネルギー準位)とのエネルギー差Δηが小さければ小さいほど、過電圧は小さくなり、電流密度も急峻に増加する。この過電圧は触媒のdレベルを酸素吸着物質のO2pレベルまで下げる役割をするため、これによってd軌道と酸素吸着物質との間を電子が盛んに移動し、電流密度も急峻に増加する。
酸素吸着物質のO2pレベルとのエネルギー差Δηは、非フェルミ流体の方がずっと小さいので、酸素発生反応の過電圧は小さくなり、d軌道と酸素吸着物質との間を電子が盛んに移動する。これが、後述するように、非フェルミ流体が並外れた酸素発生活性を有する原理である。
本願発明者らが非フェルミ流体に着目したきっかけは、RuOなどに代表されるフェルミ流体(一般的な金属)が酸素発生反応中でアモルファス化されることにあった。過電圧を小さくすることだけを考えれば、一見フェルミ流体は有利に思えるが、結合性軌道にある電子が非結合性軌道に自由に移動してしまい、金属イオンと酸素の結合が弱くなり、触媒表面のアモルファス化が深刻化していた。アモルファス化が進行した場合、物質本来の活性に比べると、過電圧は大きくなり、電流密度の増加率も減少してしまう。そこで、酸素吸着物質のO2pレベルとのエネルギー差を小さく保ったまま、結合性軌道にある電子の非結合性軌道への移動を制御(抑制)できる物質群はないかと探した結果、局在化したdバンドを持ちながらも、バンドギャップのない非フェルミ流体に辿り着いたのである。
非フェルミ流体では、フェルミ準位Eを横切る金属的な状態Mが局在化したdバンド間のクッションの役割、換言すれば、結合性軌道にある電子の非結合性軌道への移動障壁の機能を果たしていると言える。
[実施例1]
実施例1として、非フェルミ流体に特有な電子構造を有する遷移金属酸化物にHgRuを用いた酸素発生反応触媒及びこの酸素発生反応触媒を用いた測定用触媒電極を作製した。
[酸素発生反応触媒の作製]
このHgRuを含む酸素発生反応触媒は、HgO、RuO、KClOの粉末を混合し、高圧合成法(Ru5+は高原子価)によって6GPa、950℃の条件下で合成したものを純水で洗浄することにより作製した。
[測定用触媒電極の作製]
この酸素発生反応触媒を用いた測定用触媒電極を以下の通りに作製した。
(1)3.33wt%のKイオン交換された、パーフルオロカーボン材料であるナフィオン(登録商標)分散液を、5wt%のナフィオン分散体(Sigma-Aldrich製)と0.1M−水酸化カリウム(KOH)水溶液(Wako,Ltd.製)を2:1の体積比で混合して作製した。
(2)HgRuを含む酸素発生反応触媒25mg、アセチレンブラック(Strem Chemicals Inc.製)5mg、及び3.33wt%のKイオン交換されたナフィオン分散液1.5mlを混合し、テトラヒドロフラン(THF, Sigma-Aldrich製)を加えて5mlとした。これを撹拌・混合して触媒インクを作製した。
(3)この触媒インク3.6μlをグラッシーカーボン(GC)のディスク電極に垂らし、室温で一晩乾燥させて測定用の触媒電極を得た。
このようにして作製した測定用の触媒電極10は、図2に示すように、多層の円柱形状を有しており、グラッシーカーボンからなる直径4mmのディスク電極11と、このディスク電極11の周囲に積層されたPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)からなる絶縁層12と、この絶縁層12の周囲に積層された、Pt(白金)からなるリング電極13と、このリング電極13の周囲に積層された、PEEK(ポリエーテル・エーテルケトン)からなる絶縁層14と、ディスク電極11上に滴下・乾燥された触媒(OER触媒)15とから構成されている。この触媒電極10は、不図示の回転リングディスク装置により軸心16を中心に回転駆動される。
電極での酸素発生反応をよりスムーズに行わせるという観点から、OER触媒15は導電性材料に担持されていることが望ましい。その導電性材料としては、導電性を有するものであればよく、特に限定されない。例えば炭素材料、多孔質導電性ポリマー及び金属多孔体等を挙げることができる。炭素材料は、多孔質構造を有するものであっても良く、多孔質構造を有しないものであってもよい。多孔質構造を有する炭素材料としては、具体的にはメソポーラスカーボン等を挙げることができる。一方、多孔質構造を有しない炭素材料としては、具体的にはグラファイト、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ及びカーボンファイバー等を挙げることができる。
[実施例2]
実施例2として、非フェルミ流体である遷移金属酸化物にCaRu(カルシウム、ルテニウム、酸素の化合物)を用いた酸素発生反応触媒及びこの酸素発生反応触媒を用いた測定用触媒電極を作製した。
[酸素発生反応触媒の作製]
このCaRuを含む酸素発生反応触媒は、CaO、RuO、KClOの粉末を混合し、高圧合成法(Ru5+は高原子価)によって6GPa、950℃の条件下で合成したものを純水で洗浄することにより作製した。
[測定用触媒電極の作製]
この酸素発生反応触媒を用いた測定用触媒電極の作製方法は実施例1の場合と同様である。
[実施例3]
実施例3として、非フェルミ流体である遷移金属酸化物にCdRu(カドミウム、ルテニウム、酸素の化合物)を用いた酸素発生反応触媒及びこの酸素発生反応触媒を用いた測定用触媒電極を作製した。
[酸素発生反応触媒の作製]
このCdRuを含む酸素発生反応触媒は、CdO、RuO、KClOの粉末を混合し、高圧合成法(Ru5+は高原子価)によって6GPa、950℃の条件下で合成したものを純水で洗浄することにより作製した。
[測定用触媒電極の作製]
この酸素発生反応触媒を用いた測定用触媒電極の作製方法は実施例1の場合と同様である。
[比較例1]
比較例1として、フェルミ流体である遷移金属酸化物にRuOを用いた酸素発生反応触媒及びこの酸素発生反応触媒を用いた測定用触媒電極を作製した。
[酸素発生反応触媒の作製]
このRuOを含む酸素発生反応触媒には、AlfaAesar社製のものを使用した。
[測定用触媒電極の作製]
この酸素発生反応触媒を用いた測定用触媒電極の作製方法は実施例1の場合と同様である。
[実施例1〜3及び比較例1の測定用触媒電極を用いたOER触媒の電気化学特性の測定]
図3に、OER触媒15の電気化学特性を測定するための酸素発生反応装置を示す。作用電極としての触媒電極10と、Ptワイヤーからなる対向極17と、Hg/HgOからなる参照電極18とが水酸化カリウム水溶液(KOH)に浸漬されており、これらの電極はバイ・ポテンショスタット20に電気的に接続されている。この酸素発生反応装置では、触媒の違いによる電位の変化を測定するのが目的であるが、触媒電極の電極表面では触媒による化学反応が生じているため、結果的に電気化学特性の測定となる。
測定手順としては、特許文献1に開示されている方法と同様の方法を採用した。すなわち、上記で得られた触媒電極10を用いて、OER触媒15の電気化学的特性を以下の手順で測定した。
酸素飽和させた電解液(例えば、KOH水溶液)に触媒を担持させたグラッシーカーボン電極(触媒電極)10を浸し、バイ・ポテンショスタット20を備えた回転リングディスク装置を用い、所定の電位掃引速度(例えば10mV/sec)で所定の電位まで(例えば、0.3〜0.9Vvs.Hg/HgO(Hg/HgO電極基準電位)まで)掃引した。
その後、同様の電位掃引速度で初期電位まで(例えば0.9〜0.3Vvs.Hg/HgOまで)掃引し、その間の電流密度(OER電流・電位曲線)を測定した(図7参照)。
測定は、Ptワイヤー電極17を対向極とし、0.10M−KOH水溶液で満たされたHg/HgO電極を参照電極18とした。Hg/HgO電極基準の電位と可逆水素電極(RHE:Reversible Hydrogen Electrode)基準の電位との間には、0Vvs.Hg/HgO=+0.926Vvs.RHEの関係があり、これは電解液とHg/HgO電極の内部液のpHが同じであれば常に成り立つ。
全ての測定は酸素飽和下、室温で行われ、O/HO酸化還元対の平衡電位を0.304Vvs.Hg/HgO(1.23Vvs.RHE)に固定して実施された。OER反応に対する触媒特性評価のために、触媒で修飾されたグラッシーカーボン部分の電位は、10mVs−1の電位掃引速度において、0.3〜0.9Vvs.Hg/HgO(1.23〜1.83Vvs.RHE)に制御された。
以下の記載において、全てのOER電流は触媒の推定表面積当たりの相対的電流値として示され、電位は電解液の抵抗成分(交流インピーダンス法によりおよそ43Ωと決定)によるiRドロップの補正を行い、RHE基準の電位(E−iR/Vvs.RHE)として示されている。
アルカリ水溶液中における触媒電極でのOER反応は以下の反応式に沿って進行する。
4OH→O+2HO+4e
[実施例1〜3及び比較例1のOER触媒性能の評価指標]
触媒性能の評価指標を、電位を掃引して得られる電流・電位曲線で説明する。触媒表面で上記反応式によるOERを進行させるとき、酸素発生に伴うエネルギー分の電圧を加える必要がある。この電圧は溶液のpHにより一定である。
一方で、更に酸素発生反応の活性化エネルギー分の電圧(過電圧)を過剰にかける必要がある。過電圧が低いほど、すなわち電流の立ち上がりが低電位であるほどOER触媒性能が優れていることになる。また、電流の立ち上がりが急峻なほど、すなわち、所定の電位に対する電流値の増加(電流勾配)が急峻であるほど、OER触媒性能が優れていることになる。したがって、電流・電位曲線において、過電圧値及び電流・電位曲線の勾配の2つがOER触媒性能の評価指標となる。
図4は、実施例1〜3及び比較例1の酸素発生反応触媒並びに他の酸素発生反応触媒の過電圧の実験結果を示すグラフである。各過電圧は、熱力学的に求められる反応の理論電位(平衡電極電位)と、実際に反応が進行するときの電極の電位(ここでは電流密度10mA/cmでの値)との差を示している。具体的には、過電圧h(V)= (可逆水素電極電位を基準とした)測定電位E(V)−1.23Vから求められる。図4では、非フェルミ流体を除いて、従来知られている酸素発生反応触媒でも比較的過電圧の低い材料を列挙しているが、同図から明らかなように、そのなかでも非フェルミ流体である実施例1のHgRuの過電圧は他の酸素発生反応触媒に比べて極めて小さい。換言すれば、HgRuは塩基性溶液中における過電圧が図抜けて低い。
図4における他の酸素発生反応触媒について簡単に説明すると、NiFeOOHは、ニッケル、鉄、酸素、水酸基からなる化合物を示している。BSCFは、バリウム、ストロンチウム、コバルト、鉄、酸素から成る化合物を示している。CCFOは、カルシウム、銅、鉄、酸素から成る化合物(CaCuFe12)で、Aサイトのプロブスカイト構造を有する化合物である。また、Bi2.4Ru1.6は、ビスマス、ルテニウム、酸素から成る化合物を示している。
なお、図4において、フェルミ流体(典型的な金属)である比較例1のRuOに比べて非フェルミ流体である実施例3のCdRuの方が過電圧は大きくなっているが、これには理由がある。後述するように、RuOとCdRuではアモルファス化の原因が異なり、CdRuでは過電圧が大きいことが必ずしも電流密度の急峻性の低下につながらない。
RuOはフェルミ流体なので図1で説明したエネルギー差Δηは非常に小さいが、結合性軌道にある電子が反結合性軌道に自由に移動でき、その結果、Ru−Oボンド(ルテニウムと酸素の結合力)が弱体化して触媒表面のアモルファス化が進行する。これにより、測定時の過電圧は本来の過電圧よりも大きくなってしまう。
一方、非フェルミ流体であるCdRuの場合は、図1で説明したエネルギー差ΔηはRuOに比べて大きいばかりでなく、AサイトのCdと酸素の共有結合性が弱いために触媒表面のアモルファス化が進行し、測定時の過電圧はRuOより大きくなる。
同じく非フェルミ流体である実施例1のHgRuの場合は、図1で説明したエネルギー差ΔηはRuOに比べて大きいが、AサイトのHgと酸素の共有結合性が強く、触媒表面のアモルファス化が進行しないので、測定時の過電圧は本来の過電圧となり、RuOに比べて小さくなる。非フェルミ流体である実施例2のCaRuについても同様のことが言える。
図5は、実施例1〜3及び比較例1の酸素発生反応触媒における電流密度の大きさを示すグラフである。可逆水素電極電位(RHE)を基準としたもので、1.5Vでの値を縦軸を対数目盛として示している。
図6は、図5における比較例1のRuOの電流密度を1とした場合の、実施例1〜3の3つの非フェルミ流体(HgRu、CaRu、CdRu)の倍率を示したグラフである。実施例1のHgRuでは、電流密度が桁外れに大きいことが分かる。
アモルファス化が進行した場合、物質本来の活性に比べると、過電圧は大きくなり、電流密度の増加率も減少する。しかし、アモルファス化による過電圧への影響は電流密度の増加率への影響よりも小さくなる。そのため、もともとエネルギー差Δηが小さい比較例1のRuOの場合は、測定時も過電圧は僅かしか増加しない。非フェルミ流体である実施例2及び3のCaRuやCdRuは、AサイトのCaやCdがKOH水溶液に溶けるのがアモルファス化の原因であり、RuOは金属であることがアモルファス化の原因である。CaRuやCdRu等の非フェルミ流体では、アモルファス化が進んでもRu−Oの結合は弱くならないが、RuOではアモルファス化が進んだ場合Ru−Oの結合が弱くなる。Ru−Oの結合が弱くなると、酸素吸着物質とRuとの間での電子のやりとりが緩慢になり、電流密度の増加率の減少となる。
実施例2及び3のCaRuやCdRuの非フェルミ流体では、AサイトのCaやCdはフェルミ準位近傍に電子が存在しないため、酸素発生反応には直接関わっていない。そのため、電流密度の増加率の減少は、比較例1のRuOの場合の方が、顕著に現れる。上記のように、実施例2及び3のCaRuやCdRuにはAサイトのCaやCdがKOH水溶液に溶けるという欠点が存在するが、それ以上に、酸素発生反応中もRu−Oの結合を強固に保つという非フェルミ流体の特長が、急峻な電流密度の増加につながっている。このため、図5から明らかなように、電流密度において、非フェルミ流体である実施例2及び3のCaRuやCdRuは、フェルミ流体(典型的な金属)である比較例1のRuOに比べ優位性を有している。このことは、非フェルミ流体の触媒は塩基性溶液中でも触媒機能の観点からは安定であることを示している。非フェルミ流体である実施例1のHgRuは、Aサイトの元素がKOH水溶液に溶けてしまうという実施例2及び3のCaRuやCdRuの欠点も克服する特性を有している。すなわち、塩基性溶液中でも長期に亘って安定であることを示している。このため、図4〜図6から明らかなように、他の酸素発生反応触媒に比べて並外れて低い過電圧、桁外れに大きい電流密度となっており、金属空気電池の二次電池としての本格的な実用化にも大いに期待できる酸素発生活性を有している。
図7は、上記のように所定の電位掃引速度で所定の電位まで掃引し、同様の電位掃引速度で初期電位まで掃引したその間の電流密度(OER電流・電位曲線)の測定結果を示すグラフである。図7(b)は、図7(a)の電位掃引初期段階の拡大図である。上記のように、過電圧が低いほど、すなわち電流の立ち上がりが低電位であるほどOER触媒性能が優れていることになる。また、電流の立ち上がりが急峻なほど、すなわち、所定の電位に対する電流値の増加(電流勾配)が急峻であるほど、OER触媒性能が優れている。この観点から、図7の測定結果を考察すると、フェルミ流体(典型的な金属)である比較例1のRuOに比べて、非フェルミ流体では電流勾配が急峻であり、OER触媒性能が優れていることが分かる。なかでも、非フェルミ流体である実施例1のHgRuの電流勾配の急峻性は際立っており、OER触媒性能が如何に優れているかが分かる。
上述のように、本願発明者らが非フェルミ流体に着目したきっかけは、フェルミ流体が酸素発生反応中でアモルファス化されることにあり、アモルファス化が進行した場合、過電圧が大きくなって電流密度の増加率も減少してしまうという推考であった。しかしながら、上記のように、非フェルミ流体であっても酸素発生反応中でアモルファス化される場合があることが分かった。この点は着眼理由に沿わないが、上記のとおり、フェルミ流体とはアモルファス化の原因が異なり、図4に示すように、アモルファス化によって過電圧が大きくなっても電流密度の向上にはさほど影響せず、図5に示すように、フェルミ流体に対する電流密度の優位性を確保できることが判明した。このことは、非フェルミ流体に着目したことが結果的に酸素発生反応における触媒性能の大幅な向上が期待できる材料の今後の発見に明るい道筋を示したと言える。さらに、HgRuのように桁外れの酸素発生活性を有する触媒を見出すことができた点は、当該触媒分野におけるブレークスルーと言っても過言ではない成果である。
上記では、非フェルミ流体として、実施例1〜3のHgRu、CaRu、及びCdRuの3つの触媒について説明したが、非フェルミ流体に特有な電子構造をもつ他の遷移金属酸化物においても、上述した原理により優れたOER触媒性能が存在することを予測できる。
上記実施例では、金属空気電池の二次電池化を意図した説明としたが、本発明はこれに限定されず、水素生成のための電気分解等においても同様に実施でき、高い触媒性能を得ることができる。
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。また、本発明の実施例に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を例示したに過ぎず、本発明による効果は、これら実施例に記載されたものに限定されるものではない。
M フェルミ準位を横切る金属的な状態
10 酸素発生反応電極としての触媒電極
15 酸素発生反応触媒

Claims (7)

  1. 局在化したdバンド間に、フェルミ準位を横切る金属的な状態が存在すると共にバンドギャップが存在しない非フェルミ流体の電子構造を有する遷移金属酸化物を含むことを特徴とする酸素発生反応触媒。
  2. 前記遷移金属酸化物が、HgRuであることを特徴とする請求項1に記載の酸素発生反応触媒。
  3. 前記遷移金属酸化物が、CaRuであることを特徴とする請求項1に記載の酸素発生反応触媒。
  4. 前記遷移金属酸化物が、CdRuであることを特徴とする請求項1に記載の酸素発生反応触媒。
  5. 請求項1から4のいずれか1項に記載の酸素発生反応触媒と、該酸素発生反応触媒を担持する導電性材料とを備えたことを特徴とする酸素発生反応電極。
  6. 前記導電性材料が、炭素材料、金属材料及びポリマーからなる群から選択された1つであることを特徴とする請求項5に記載の酸素発生反応電極。
  7. 空気極と対向極とを用いて酸素を発生させる酸素発生反応方法において、
    前記空気極として、請求項5又は6に記載の酸素発生反応電極を用いることを特徴とする酸素発生反応方法。
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