以下に図面を用いて本発明の実施の形態を詳細に説明する。以下に説明する実施の形態は例示であって、以下に説明する実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、この発明を実施するための実施の形態1における電動機制御装置100の構成を示すブロック図である。図1において、電動機システム1000は、電動機1、電動機1に機械的に接続されたベルト駆動部2及びベルト駆動部2と機械的に接続された負荷機械5を有している。図2は、本発明の実施の形態1の電動機システム1000の構成を示す図である。
図2に示すように、駆動側連結部204は電動機1に接続され、駆動プーリ201は駆動側連結部204に接続されている。また、駆動プーリ201及び従動プーリ202の外周には、ベルト203が環状に巻きかけられている。従動側連結部205は従動プーリ202に接続され、従動側連結部205は負荷機械5に接続されている。
ベルト駆動部2は、駆動プーリ201、ベルト203及び従動プーリ202で構成される。電動機1の発生するトルク(単位はニュートンメートル[Nm]、本発明の実施の形態に示す単位はすべて例示である。)は、ベルト駆動部2を介して負荷機械5へと伝達される。負荷機械5はこのトルクによって駆動される機械装置である。
電動機1の回転又はトルクは、駆動側連結部204によって駆動プーリ201に伝達され、駆動プーリ201の回転又はトルクは、ベルト203によって従動プーリ202に伝達される。さらに、従動プーリ202の回転又はトルクは、従動側連結部205によって負荷機械5に伝達される。
なお、ベルト203、駆動プーリ201及び従動プーリ202は、歯を有し歯がかみ合うことによってトルクを伝達してもよい。また、ベルト203、駆動プーリ201及び従動プーリ202は、歯を有さず摩擦力によってトルクを伝達してもよい。また、図2には、電動機1と駆動検出部3の間の駆動検出部3による検出を示す部分を図示してもよい。また、電動機1と駆動制御部4の間の駆動指令信号51を図示してもよい。
また、電動機1とベルト駆動部2を直接接続することによって駆動側連結部204を有しない構造としてもよい。また、ベルト駆動部2と負荷機械5を直接接続することによって従動側連結部205を有しない構造としてもよい。また、駆動側連結部204及び従動側連結部205は、ベルト、プーリ等を含んでもよい。
電動機制御装置100について説明する。図1に示すように、電動機制御装置100は、駆動検出部3、駆動制御部4及びベルト張力状態値算出部6を有している。なお、駆動制御部4及びベルト張力状態値算出部6として、電子計算機又は電子計算機に回路を組み合わせたものを用いてもよい。
また、電動機制御装置100の構成要素である駆動検出部3、駆動制御部4及びベルト張力状態値算出部6の間は、直接接続してもよく配線を介して接続してもよい。また、イントラネット、インターネット等のネットワークを介して接続してもよい。また、例えば、駆動制御部4、ベルト張力状態値算出部6等の構成要素については、複数の異なるソフトウエアを用いて、一つの電子計算機を、複数の構成要素として機能させてもよい。
電動機制御装置100の動作について説明する。駆動制御部4は電動機1が発生するトルクを指示して電動機1を制御し駆動する駆動指令信号51を出力する。駆動制御部4は、駆動指令信号51として、電動機1のトルクに代えて電動機システム1000の回転動作の角度(単位はラジアン[rad])又は角速度(単位はラジアン毎秒[rad/s])を出力してもよい。
電動機システム1000の回転動作とは、電動機1のトルクが伝達されることによる回転動作であって電動機システム1000の構成要素の回転動作である。角度とは、例えば、電動機1については、電動機1の回転子の回転動作における角度である。駆動指令信号51の例としては、電動機1、駆動プーリ201、従動プーリ202、負荷機械5、駆動側連結部204の有するプーリ、従動側連結部205の有するプーリのいずれか一つの回転動作の角度又は角速度を挙げることができる。
電動機1は駆動指令信号51に基づいてトルクを発生する。駆動検出部3は、電動機1の角度を検出し、検出結果を駆動検出信号52として出力する。なお、駆動検出部3として、例えばエンコーダを用いることができる。また、駆動検出部3は、電動機システム1000の回転動作の角度、角速度又は角加速度(単位はラジアン毎秒毎秒[rad/s2])を検出し、検出結果を駆動検出信号52として出力することもできる。
駆動検出信号52の例としては、電動機1、駆動プーリ201、従動プーリ202、負荷機械5、駆動側連結部204の有するプーリ、従動側連結部205の有するプーリのいずれか一つの回転動作の角度、角速度又は角加速度の検出値を挙げることができる。ここで、負荷機械5が、電動機1のトルクによって回転する構成要素を有しない場合、上記例示に負荷機械5は含まれない。
なお、角速度を検出する場合、駆動検出部3を速度センサとしてもよい。また、角加速度を検出する場合、駆動検出部3を加速度センサとしてもよい。また、角度を検出するエンコーダと時間微分演算器を組み合わせて駆動検出部3を構成し、角速度又は角加速度を検出してもよい。
ベルト張力状態値算出部6は、駆動検出信号52に基づいてベルト張力状態値53を出力する。図1のベルト張力状態値53は、ベルト張力(単位はニュートン[N])である。以下ではベルト張力をSとする。なお、ベルト張力状態値算出部6は、ベルト張力Sと相関関係を有しその信号の変化からベルト張力Sの変化を検出することができる信号をベルト張力状態値53として出力することもできる。
また、ベルト張力状態値算出部6は、ベルト張力Sの状態を示す信号をベルト張力状態値53として出力することもできる。ベルト張力状態値53の例としては、ベルト張力Sの値があらかじめ定めた正常な範囲の中にあるかどうかを示す信号、ベルト張力Sの時間変動の振幅、ベルト張力Sの時間変動における最大値又は最小値、ベルト203を取り付けた直後の検出結果からのベルト張力Sの変化量等を挙げることができる。
また、ベルト張力状態値53として、ねじり振動の共振周波数fr、ねじり振動の共振周波数frの時間変動の振幅、ベルト203を取り付けた直後のねじり振動の共振周波数frの検出結果からのねじり振動の共振周波数frの変化量等を出力することもできる。なお、ねじり振動の共振周波数frの値の変化からベルト張力Sの変化を検知し、異常発生の有無を監視することもできる。
以下に、ベルト張力状態値算出部6の動作について説明する。ベルト203は、駆動プーリ201と従動プーリ202の間に接続されたバネとして機能する特性(バネ特性)を有する。このバネ特性にあらわれるねじり剛性によって共振現象が発生する。この共振現象が発生する周波数を、ねじり振動の共振周波数(単位はヘルツ[Hz])とよぶ。以下では、ねじり振動の共振周波数をfrとする。
図1のベルト張力状態値算出部6は、ねじり振動の共振周波数frを算出し、ねじり振動の共振周波数frからベルト張力Sを算出する。まず、ベルト張力状態値算出部6がねじり振動の共振周波数frを算出する動作について説明する。ベルト張力状態値算出部6は、駆動検出部3が検出した電動機1の角度を駆動検出信号52として取得する。この角度をA(t)とする。tは時間(単位は秒[s])である。
ベルト張力状態値算出部6は、角度(A(t))に対して周波数解析(例えば、フーリエ変換)を行い、駆動検出信号52の周波数特性を算出する。具体的には、フーリエ変換によって算出された駆動検出信号52の周波数特性をA(f)とする。
fは周波数(単位はヘルツ[Hz])である。ベルト張力状態値算出部6は、駆動検出信号52の周波数特性(A(f))の極大値を与える周波数fを、ねじり振動の共振周波数frとする。以上に説明した動作によって、ベルト張力状態値算出部6は、ねじり振動の共振周波数frを算出する。(1)式は駆動検出信号52の周波数特性を示す。
次に、ベルト張力状態値算出部6が、ねじり振動の共振周波数frからベルト張力Sを算出する動作について説明する。ベルト駆動部2のねじり剛性のバネ定数を、Ktor(単位はニュートンメートル毎ラジアン[Nm/rad])とする。電動機側イナーシャ(単位はキログラム平方メートル[kgm2])をJ1とする。電動機側イナーシャJ1は、駆動プーリ201、駆動側連結部204及び電動機1が全体として有するイナーシャである。
負荷機械側イナーシャ(単位はキログラム平方メートル[kgm2])をJ2とする。負荷機械側イナーシャJ2は、従動プーリ202、従動側連結部205及び負荷機械5が全体として有するイナーシャである。ベルト張力状態値算出部6は、次の(2)式を用いてねじり振動の共振周波数frから、バネ定数Ktorを算出することができる。
次に、駆動プーリ201と従動プーリ202の間に生じるベルト203の引張剛性を、Kten(単位はニュートン毎メートル[N/m])とする。駆動プーリ201の半径をR1(単位はメートル[m])、従動プーリ202の半径をR2(単位はメートル[m])とする。
ベルト張力状態値算出部6は、次の(3)式を用いることによって、(2)式を用いて求めたねじり剛性のバネ定数Ktor及び駆動プーリ201の半径R1、従動プーリ202の半径R2から、引張剛性Ktenを求めることができる。
図3は、本発明の実施の形態1のベルト203の伸び量ΔLと引張剛性Ktenの関係を示す図である。ここで、ベルト203の長手方向の伸び量をΔL(単位はメートル[m])とする。図1のベルト駆動部2では、伸び量ΔLと引張剛性Ktenの間に、線形関係があるとする。ここで、一方が他方の一次式で表される関係を、線形関係とよんでいる。
ベルト張力状態値算出部6は、(3)式を用いて求めた引張剛性Ktenから、ベルト203の長手方向の伸び量ΔLと引張剛性Ktenとの関係である線形関係を用いて伸び量ΔLを求めることができる。図4は、本発明の実施の形態1のベルト203の伸び量ΔLとベルト張力Sの関係を示す図である。図4の関係は、ベルト203の材料、サイズから計算によって求めてもよい。
図4に示すように、図1のベルト駆動部2では、ベルト張力Sと伸び量ΔLの間に、ベルト張力Sが伸び量ΔLの2次式で表される関係があるとする。ベルト張力状態値算出部6は、図4に示す関係であるベルト張力Sと伸び量ΔLとの関係式を用いて、図3によって求めた伸び量ΔLからベルト張力Sを求めることができる。
ベルト張力Sと伸び量ΔLとの関係は、テーブルで関係を記述しておき、間を補間するようにしても良い。以上のように、(2)式、(3)式、図3及び図4を用いて、ねじり振動の共振周波数frからベルト張力Sを算出することができる。
以上説明したように、電動機側イナーシャJ1と負荷機械側イナーシャJ2とで表現されるベルト203のねじり剛性のバネ定数Ktorとベルト203のねじり振動の共振周波数frとの関係式に、実測したねじり振動の共振周波数frを代入してねじり剛性のバネ定数Ktorを求める。
そして、ベルト駆動部2の幾何的寸法によって表現されるベルトの引張剛性Ktenとねじり剛性のバネ定数Ktorとの関係から、ベルトの引張剛性Ktenを求める。そして、引張剛性Ktenと伸び量ΔLの関係から伸び量ΔLを求める。そして、伸び量ΔLとベルト張力Sの関係からベルト張力Sを求めることができる。
以上が図1のベルト張力状態値算出部6の動作の一例である。次に、駆動指令信号51及び駆動検出信号52に含まれる信号成分について述べる。以下で信号成分といった場合、周波数の成分を意味する。例えば、ねじり振動の共振周波数frの信号成分とは、周波数がねじり振動の共振周波数frである信号成分を意味する。
図1の駆動指令信号51がねじり振動の共振周波数frの信号成分を含む場合、駆動検出部3は、より確実にねじり振動の共振周波数frの信号成分を含む駆動検出信号52を出力することができる。そして、ベルト張力状態値算出部6は、駆動検出信号52に含まれるねじり振動の共振周波数frの信号成分を用いて精度よくベルト張力Sの状態を検出することができる。
ねじり振動の共振周波数frの予測値等の目安となる値がない場合、図1を用いて説明した実施の形態のように、駆動制御部4が、ねじり振動の共振周波数frの信号成分を含む程度に広い周波数帯域をもつ駆動指令信号51を出力し、駆動検出信号52の周波数特性を算出してねじり振動の共振周波数frを求めてもよい。
また、駆動制御部4が周波数帯域の異なる複数の駆動指令信号51を出力することによって、ベルト張力状態値算出部6が駆動検出信号52の周波数特性を算出せずに、ねじり振動の共振周波数frを求めることもできる。以下に、駆動制御部4が、周波数帯域の異なる複数の駆動指令信号51を出力する場合の動作例を示す。
駆動制御部4は、時系列に、順次周波数帯域を変えて複数の駆動指令信号51を出力する。その結果、駆動検出部3から、周波数帯域の異なる駆動検出信号52が時系列に、順次出力される。ベルト張力状態値算出部6は、取得した複数の駆動検出信号52の信号強度を比較し、信号強度が最も高い駆動検出信号52を選択する。
さらに、ベルト張力状態値算出部6は、駆動制御部4から、駆動指令信号51の出力された時刻と周波数帯域を対応づけるデータを取得し、このデータを参照して信号強度が最も高い駆動検出信号52の周波数帯域を求める。ベルト張力状態値算出部6は、求めた周波数帯域を、ねじり振動の共振周波数frの含まれる周波数帯域とする。
さらに、(2)式、(3)式、図3及び図4を用いてベルト張力Sを求める。さらに、求めたベルト張力Sに対応する周波数帯域を、ベルト張力状態値53として出力することができる。
このように、電動機システム1000の回転動作の検出結果である駆動検出信号52から、ベルト駆動部2のねじり振動の状態として、ねじり振動の共振周波数frの含まれる周波数帯域を検出した結果に基づいてベルト張力状態値53を出力してもよい。なお、図1に示す本実施の形態において、ねじり振動の状態は、駆動検出信号52から取得され、ベルト張力状態値53を算出する際に用いられる信号又はデータである。
本実施の形態のねじり振動の状態の例としては、駆動検出信号52の時間波形、駆動検出信号52のフーリエ変換による周波数特性、実測したねじり振動の共振周波数fr、実測したねじり振動の共振周波数frの含まれる周波数帯域の上限値又は下限値等を挙げることができる。
また、ベルト張力状態値算出部6は、フーリエ変換を用いずに、駆動検出信号52の周波数特性を得ることもできる。フーリエ変換を用いずに周波数特性を算出する動作の例としては、あらかじめ定めた周波数範囲の信号成分を抽出する、あらかじめ定めた周波数の信号成分をサンプリングする等を挙げることができる。上記のあらかじめ定めた信号成分を抽出する場合のベルト張力状態値算出部6の動作の一例を挙げる。
駆動検出信号52から、ベルト駆動部2のねじり振動の共振周波数frの信号成分を含む信号を抽出し、抽出した信号の強度を検出する。この信号の強度が、あらかじめ定めた値を下回った場合に、ベルト張力Sに異常が発生したことを示す信号をベルト張力状態値53として出力する。このようにして、ベルト張力状態値算出部6は、駆動検出信号52の周波数特性を取得しベルト張力状態値53を出力してもよい。
また、図1において、電動機制御装置100の構成要素の一部を、ベルト張力状態値算出部6を含む装置とは別に、ベルト張力状態値算出部6を含む装置の外部に設けた構成としても、電動機制御装置100と同様に、ベルト張力Sの状態を検出することができる。構成要素の一部を外部に設けた構成の例としては、図1の駆動検出部3を外部に設けた電動機制御装置、図1の駆動制御部4を外部に設けた装置等を挙げることができる。以下では、駆動制御部4を外部に設けた装置を、ベルト張力状態検出装置とよぶ。
また、ベルト張力状態値53の算出に用いられる駆動検出信号52を、駆動検出部3が出力している時と出力していない時とで、駆動指令信号51の周波数帯域を変化させてもよい。駆動検出部3が駆動検出信号52を出力する時は、ベルト張力状態値算出部6がベルト張力状態値53を出力するために、ねじり振動の共振周波数frの信号成分を含む駆動指令信号51を駆動制御部4が出力することが望ましい。一方、駆動検出部3が駆動検出信号52を出力しない時は、ベルト張力状態値算出部6がベルト張力状態値53を算出する必要がないため、駆動制御部4は制約を受けずに駆動指令信号51の周波数帯域を選択できる。
そこで、駆動検出信号52を駆動検出部3が出力していない時、電動機1の動作に適した周波数帯域を有する駆動指令信号51を駆動制御部4が出力して駆動検出信号52の非検出時の電動機1のエネルギー効率を向上させてもよい。そして、エネルギー効率を向上することによって、電動機1の動作時間を短縮してもよい。
例えば、電動機システム1000が所望の動作をするのに、ねじり振動の共振周波数frより低い周波数で動作させた場合に、エネルギー効率が最も高くなるとする。このような場合、駆動制御部4は、駆動検出部3が駆動検出信号52を出力する時のみ、ねじり振動の共振周波数frを含む駆動指令信号51を出力し、駆動検出部3が駆動検出信号52を出力しない時は、ねじり振動の共振周波数frを含まない、低い周波数の駆動指令信号51を出力してもよい。
特許文献2、特許文献3は、ベルトの横振動(ベルト203の進行方向に対して垂直方向の振動)の共振現象を検出してベルト張力を検出している。一方、本実施の形態の電動機制御装置100は、縦振動(ベルト203の進行方向に平行な方向の振動)における共振現象を用いてベルト張力状態値53を算出する。縦振動における共振周波数は、横振動における共振周波数に比べて周波数が高い。そのため、横振動における共振現象を利用して検出をおこなう装置に比べて、周囲の雑音の影響を受けにくく、誤検出が発生しにくい。
図1の電動機制御装置100によれば、電動機システム1000の回転動作の検出結果からベルト張力Sの状態を検出することができる。そのため、ベルト張力Sの状態を検出するために、回転動作を検出する装置に加えて、新たに、歪センサ、圧力検出装置、トランスデューサ等の検出装置を設ける必要がない。
歪センサ、圧力検出装置、トランスデューサ等を設置すると、電動機システムに、これらの検出装置の配線、設置スペース等による制約が生じる。一方、電動機制御装置100が適用される電動機システムには、トランスデューサ等の検出装置を設ける必要がなく、上記の制約が生じない。そのため、電動機制御装置100によれば、小型又は簡単な構成の装置を用いて、ベルト張力の状態を検出することができる。
また、電動機制御装置100によれば、電動機システム1000の構成要素の回転動作を検出すればよいため、ベルト203から離れた位置に検出装置を設けることも可能となる。そのため、小型又は簡単な構成の装置を用いて、ベルト張力の状態を検出することができる。
また、電動機システム1000の回転動作を検出する装置が電動機1を制御する目的で設けられている場合には、制御のために設けた検出装置を、駆動検出部3として使用することができる。そして、ベルト張力の状態を検出するための検出装置を、新たに設ける必要がない。そのため、電動機制御装置100によれば、小型又は簡単な構成の装置を用いて、ベルト張力の状態を検出することができる。
また、図1の電動機制御装置100によれば、横振動を発生させる加振手段を新たに設けることなく、ベルト張力Sの状態を検出することができる。そのため、小型又は簡単な構成の装置を用いて、ベルト張力の状態を検出することができる。
以上説明したように、電動機制御装置100は、電動機システム1000の電動機1を駆動する信号である駆動指令信号51を出力する駆動制御部4を備える。電動機システム1000は、負荷機械5、負荷機械5に機械的に接続された従動プーリ202、従動プーリ202に巻きかけられたベルト203、ベルト203が巻きかけられた駆動プーリ201及び駆動プーリ201に機械的に接続された電動機1を含む。
さらに、電動機制御装置100は、ベルト張力状態値算出部6を備える。ベルト張力状態値算出部6は、電動機システム1000の回転動作の角度、角速度又は角加速度を検出した駆動検出信号52に基づきベルト203のベルト張力の状態を示すベルト張力状態値53を出力する。
図1に示すベルト張力状態値算出部6は、駆動検出信号52にあらわれるねじり振動の状態を検出した検出結果に基づいてベルト張力状態値53を出力してもよい。また、駆動検出信号52の周波数特性に基づいてベルト張力状態値53を出力してもよい。また、駆動検出信号52にあらわれるねじり振動の共振周波数frを検出した結果からベルト張力状態値53を出力してもよい。
また、ねじり振動の共振周波数frの信号成分を含む周波数帯域を求め、求めた周波数帯域からベルト張力Sの取りうる値の範囲を求め、この範囲をベルト張力状態値53として出力してもよい。また、ねじり振動の共振周波数frを求め、求めたねじり振動の共振周波数frからベルト張力Sの値を算出し、算出したベルト張力Sの値をベルト張力状態値53として出力してもよい。
また、図1に示すベルト張力状態値算出部6は、ねじり振動の状態の変化、周波数特性の変化、ねじり振動の共振周波数frの変化のいずれかひとつからベルト張力Sの状態の変化を検知してもよい。
本実施の形態によれば、電動機等の回転動作を検出するセンサの検出結果からベルト張力を求めることができる。そのため、小型又は簡単な構成の装置を用いて、電動機システムが有する電動機のトルクを伝達するベルトのベルト張力の状態を検出することが可能な電動機制御装置又はベルト張力状態検出装置を提供することができる。
実施の形態2.
図5は、本発明を実施するための実施の形態2における電動機制御装置100aの構成を示すブロック図である。電動機制御装置100aは、ベルト張力状態値算出部6に代えてベルト張力状態値算出部6aを備える点が、実施の形態1の図1に示す電動機制御装置100と異なる。
図1のベルト張力状態値算出部6は、駆動検出信号52に基づいてベルト張力状態値53を出力する。一方、図5に示すベルト張力状態値算出部6aは、駆動指令信号51及び駆動検出信号52に基づいてベルト張力状態値53を出力する。
図5に示す電動機制御装置100aの説明において、図1に示す実施の形態1の電動機制御装置100の構成要素と同じ又は対応する構成要素については、同一の符号を付す。図5を参照して電動機制御装置100aの動作について説明する。
ベルト張力状態値算出部6aは、図1のベルト張力状態値算出部6と同様に、駆動検出信号52を取得し駆動検出信号52の周波数特性である(1)式のA(f)を算出する。さらに、ベルト張力状態値算出部6aは、電動機1の発生するトルクを指示して電動機1を制御し駆動する駆動指令信号51を取得する。このトルクをT(t)とする。
ベルト張力状態値算出部6aは、駆動指令信号51についてフーリエ変換による周波数解析を行い、トルクであるT(t)から(4)式を得る。(4)式のT(f)は、フーリエ変換によって得られた駆動指令信号51の周波数特性である。ベルト張力状態値算出部6aは、駆動検出信号52の周波数特性を駆動指令信号51の周波数特性で除すことによって(5)式を得る。
ベルト張力状態値算出部6aは、(5)式の極大値を与える周波数fを、ねじり振動の共振周波数frとすることによって、ねじり振動の共振周波数frを求める。すなわち、駆動検出信号52の周波数特性の駆動指令信号51の周波数特性に対する比をとる。そして、上記の比の極大値を与える周波数fを、ねじり振動の共振周波数frとする。
さらに、図5のベルト張力状態値算出部6aは、図1のベルト張力状態値算出部6と同様に、(2)式、(3)式、図3及び図4に示す関係を用いてねじり振動の共振周波数frからベルト張力Sを算出する。そして、算出した結果をベルト張力状態値53として出力する。以上が、図5のベルト張力状態値算出部6aの動作である。
駆動検出信号52の周波数特性は、駆動指令信号51の周波数特性に依存して変化する。図5のベルト張力状態値算出部6aによれば、(5)式の極大値を与える周波数fをねじり振動の共振周波数frとすることによって、駆動指令信号51の周波数特性の変動が、ねじり振動の共振周波数frの算出結果におよぼす影響を低減することができる。
そのため、ねじり振動の共振周波数frを精度よく算出することが可能となる。そして、精度よくベルト張力Sを算出することができる。特に、ねじり振動の共振周波数frにおいて駆動指令信号51の周波数特性が、周波数に依存して大きく変化する場合、図5の電動機制御装置100aは顕著な効果を奏する。
なお、ベルト張力状態値算出部6aは、駆動指令信号51に代えて、電動機1に流れる電流の検出値又は電動機1の発生するトルクの検出値を用いても、精度よくベルト張力状態値53を算出することができる。
また、電動機制御装置100aの構成要素の一部を、ベルト張力状態値算出部6aを含む装置とは別に、ベルト張力状態値算出部6aを含む装置の外部に設けた構成としても、電動機制御装置100aと同様に、精度よくベルト張力Sの状態を検出することができる。構成要素の一部を、ベルト張力状態値算出部6aを含む装置の外部に設けた構成の例としては、図5の駆動検出部3を電動機制御装置の外部に設けた電動機制御装置、図5の駆動制御部4をベルト張力状態検出装置の外部に設けたベルト張力状態検出装置等を挙げることができる。
また、ベルト張力状態値算出部6aは、実施の形態1のベルト張力状態値算出部6と同様に、ベルト張力Sの値に代えて、ベルト張力Sの状態を示す信号を、適宜、ベルト張力状態値53として出力することができる。また、ベルト張力状態値算出部6aは、ベルト張力Sと相関関係を有しその信号の変化からベルト張力Sの変化を検出することができる信号をベルト張力状態値53として出力することもできる。
ベルト張力状態値53の例としては、ベルト張力Sの値があらかじめ定めた正常な範囲の中にあるかどうかを示す信号、ベルト張力Sの時間変動の振幅、ベルト張力Sの時間変動における最大値又は最小値、ベルト203を取り付けた直後の検出結果からのベルト張力Sの変化量等を挙げることができる。
また、ベルト張力状態値53として、ねじり振動の共振周波数fr、ねじり振動の共振周波数frの時間変動の振幅、ベルト203を取り付けた直後のねじり振動の共振周波数frの検出結果からのねじり振動の共振周波数frの変化量等を出力することもできる。そして、ねじり振動の共振周波数frの値の変化からベルト張力Sの変化を検知し、異常発生の有無を監視してもよい。
また、電動機制御装置100aにおいても、実施の形態1において説明した電動機制御装置100の動作と同様に、周波数帯域の異なる複数の駆動指令信号51を、出力する時刻を変えて出力するように、図5の駆動制御部4を動作させることができる。そして、駆動指令信号51及び駆動検出信号52の周波数特性を利用せずに、ベルト張力状態値53を精度よく出力することができる。
以上説明したように、ベルト張力状態値算出部6aは、駆動指令信号51および駆動検出信号52に基づいてベルト張力状態値53を出力する。または、ベルト張力状態値算出部6aは、駆動指令信号51と、電動機1の電流の検出値又は電動機1のトルクの検出値とに基づいてベルト張力状態値53を出力する。
また、図5に示すベルト張力状態値算出部6aは、駆動検出信号52の周波数特性と、駆動指令信号51、電動機1の電流の検出値、電動機1のトルクの検出値のいずれかひとつの周波数特性との比をとる。そして、この比からベルト張力状態値53を出力してもよい。また、この比にあらわれるねじり振動の状態を検出した検出結果に基づきベルト張力状態値53を出力してもよい。
図5に示す本実施の形態において、ねじり振動の状態は、駆動検出信号52及び駆動指令信号51から取得され、ベルト張力状態値53を算出する際に用いられる信号又はデータである。
本実施の形態のねじり振動の状態の例としては、駆動検出信号52、駆動指令信号51、電動機1のトルクの検出値、電動機1の電流の検出値のいずれかひとつについての時間波形又はフーリエ変換による周波数特性を挙げることができる。さらに、実測したねじり振動の共振周波数fr、実測したねじり振動の共振周波数frの含まれる周波数帯域の上限値又は下限値等を挙げることができる。
なお、この比の極大値を与える周波数を、ねじり振動の共振周波数frとすることによってねじり振動の共振周波数frを求め、さらに、求めたねじり振動の共振周波数frからベルト張力Sを求め、ベルト張力状態値53を出力してもよい。
また、この比から、ねじり振動の共振周波数frの信号成分を含む周波数帯域を求め、求めた周波数帯域からベルト張力Sの取りうる値の範囲を求め、この範囲をベルト張力状態値53として出力してもよい。また、この比から、ねじり振動の共振周波数frを求め、求めたねじり振動の共振周波数frからベルト張力Sの値を算出し、算出したベルト張力Sの値をベルト張力状態値53として出力してもよい。
本実施の形態によれば、小型又は簡単な構成の装置を用いて、電動機システムが有する電動機のトルクを伝達するベルトのベルト張力の状態を検出することが可能な電動機制御装置又はベルト張力状態検出装置を提供することができる。さらに、ベルト張力の状態を精度よく検出することができるという効果を奏する。
実施の形態3.
図6は、この発明を実施するための実施の形態3における電動機制御装置100bの構成を示すブロック図である。図6の電動機制御装置100bは、動作指令生成部9を備える点が、実施の形態2の図5に示す電動機制御装置100aと異なる。さらに、駆動制御部4に代えて駆動制御部4aを備える点が、図5の電動機制御装置100aと異なる。
図6の駆動制御部4aは、駆動検出信号52と動作指令生成部9の出力する動作指令信号54に基づいて駆動指令信号51を出力し、電動機1の動作を動作指令信号54に追従させ、フィードバック制御を行う。
図6に示す実施の形態3の電動機制御装置100bの説明において、図5に示す実施の形態2の電動機制御装置100aの構成要素と同じ又は対応する構成要素については、同一の符号を付す。図6を参照して電動機制御装置100bの動作について説明する。動作指令生成部9は、電動機1の動作の指令値であり、駆動指令信号51を生成する際の目標となる動作指令信号54を出力する。動作指令生成部9として、例えば電子計算機を用いることができる。
図6の動作指令信号54は、電動機1の回転動作のトルクの指令値である。駆動制御部4aは、動作指令信号54及び駆動検出信号52に基づいて電動機1の動作を指示する駆動指令信号51を出力し、電動機1の発生するトルクを動作指令信号54に追従させる。すなわち、駆動指令信号51を出力することによって、動作指令信号54と電動機1のトルクの差異が小さくなるように電動機1を動作させる。図6のベルト張力状態値算出部6aは、図5に示す実施の形態2のベルト張力状態値算出部6aと同様にベルト張力状態値53を出力する。
図6の電動機制御装置100bによれば、電動機システム1000に対するフィードバック制御を行い、かつ、ベルト張力Sの状態を検出することができる。そして、電動機システム1000がフィードバック制御を行うことが必要となる場合に、顕著な効果を奏する。フィードバック制御を行うことが必要となる場合の例としては、電動機システム1000の動作が外乱の影響を強く受ける場合、電動機システム1000の動作が高精度である場合等を挙げることができる。
なお、動作指令信号54は、電動機1の発生するトルクの指令値に限定されるものではない。動作指令信号54を、電動機システム1000の回転動作の角度又は角速度の指令値としてもよい。動作指令信号54の例としては、電動機1、駆動プーリ201、従動プーリ202、負荷機械5、駆動側連結部204の有するプーリ、従動側連結部205の有するプーリのいずれか一つの回転動作の角度又は角速度の指令値を挙げることができる。
また、動作指令信号54が、電動機1以外の構成要素の回転動作の角度又は角速度の指令値である場合、駆動制御部4aは、動作指令信号54を、電動機1の回転動作の指令値に換算してもよい。そして、換算した指令値に電動機1を追従させることによって、電動機1の回転動作を動作指令信号54に追従させてもよい。
また、本実施の形態で、電動機1の動作は動作指令信号54に追従するが、電動機1の動作は、すべての時刻において電動機1の動作が動作指令信号54に一致するものに限定されるものではない。例えば、動作中は両者の間に誤差が発生し、停止時にはこの誤差がなくなるように動作させてもよい。また、実施の形態1に説明した駆動制御部4の動作例と同様に、駆動指令信号51の周波数帯域が時間に依存して切り替わるように図6の駆動制御部4aを動作させ、電動機1の動作効率を向上してもよい。
また、図6の駆動制御部4aは、実施の形態1の駆動制御部4と同様に、電動機システム1000の回転動作における角度又は角速度を、駆動指令信号51として出力することができる。また、実施の形態1の電動機制御装置100の構成に動作指令生成部9を加え、図6の電動機制御装置100bと同様に、フィードバック制御系を構成し、かつ、ベルト張力Sの状態を検出することができる電動機制御装置を構成してもよい。
また、図6の電動機制御装置100bの構成要素の一部を、ベルト張力状態値算出部6aを含む装置とは別に、ベルト張力状態値算出部6aを含む装置の外部に設けた構成でも、電動機制御装置100bと同様に、フィードバック制御系を構成する電動機制御装置において、ベルト張力Sの状態を検出することができる。
構成要素の一部を、ベルト張力状態値算出部6aを含む装置の外部に設けた構成の例としては、駆動検出部3を電動機制御装置の外部に設けた電動機制御装置、駆動制御部4a又は動作指令生成部9をベルト張力状態検出装置の外部に設けたベルト張力状態検出装置等を挙げることができる。
以上説明したように、電動機制御装置100bは、電動機1の動作の指令であり駆動指令信号51を生成する際の目標となる動作指令信号54を出力する動作指令生成部9をさらに備える。そして、駆動制御部4aは、動作指令信号54及び駆動検出信号52に基づいて電動機1を動作指令信号54に追従させる駆動指令信号51を出力する。
本実施の形態によれば、小型又は簡単な構成の装置を用いて、電動機システムが有する電動機のトルクを伝達するベルトのベルト張力の状態を検出することが可能な電動機制御装置又はベルト張力状態検出装置を提供することができる。さらに、電動機制御装置がフィードバック制御系を構成する場合においても、ベルト張力の状態を検出することができるという効果を奏する。
実施の形態4.
図7は、この発明を実施するための実施の形態4における電動機制御装置100cの構成を示すブロック図である。電動機制御装置100cは、ベルト張力異常判定部10を備える点が実施の形態2の図5に示す電動機制御装置100aと異なる。ベルト張力異常判定部10は、ベルト張力状態値53と基準値を比較し、比較した結果に基づいてベルト張力の状態が正常であるか異常であるかを示す信号を出力する。図7に示す電動機制御装置100cの説明において、電動機制御装置100aの構成要素と同じ又は対応する構成要素については、同一の符号を付す。
ベルト張力異常判定部10として、比較回路と比較回路の出力に応じて信号を出力する信号出力回路を用いてもよい。また、電子計算機を用いてもよい。図7を参照して電動機制御装置100cの動作について説明する。ベルト張力異常判定部10は、ベルト張力状態値53をあらかじめ定めた基準値と比較し、比較した結果に基づいてベルト張力Sの状態が正常であるか異常であるかを示すベルト張力異常判定値55を出力する。
この基準値として、下限判定値又は上限判定値を定めてもよい。また、下限判定値及び上限判定値の両方を定めてもよい。下限判定値はベルト張力状態値53の正常範囲の下限である。上限判定値はベルト張力状態値53の正常範囲の上限である。これらの基準値は、実験に基づいて定めてもよく、計算に基づいて定めてもよい。実施の形態1と同様に、本実施の形態のベルト張力状態値53を、ベルト張力S以外のベルト張力Sの状態を示す値としてもよい。
下限判定値を定めた場合のベルト張力異常判定部10の動作を例示する。ベルト張力状態値53が下限判定値より小さい場合異常であることを示す信号を出力し、ベルト張力状態値53が下限判定値と同じであるか又は下限判定値より大きい場合、正常であることを示す信号を出力してもよい。
上限判定値を定めた場合のベルト張力異常判定部10の動作を例示する。ベルト張力状態値53が上限判定値より大きい場合異常であることを示す信号を出力し、ベルト張力状態値53が上限判定値と同じである場合又は上限判定値より小さい場合、正常であることを示す信号を出力してもよい。
下限判定値と上限判定値の両方を定めた場合のベルト張力異常判定部10の動作を例示する。ベルト張力異常判定部10は、ベルト張力状態値53が、上限判定値より大きい場合に正常範囲の上限より大きいことを示す信号を出力してもよい。そして、ベルト張力状態値53が下限判定値より小さい場合に、正常範囲の下限より小さいことを示す信号を出力してもよい。
そして、ベルト張力状態値53が、下限判定値もしくは上限判定値と同じ値である場合又は下限判定値と上限判定値の間の値である場合には、ベルト張力状態値53が正常範囲の中にあることを示す信号を出力してもよい。以上が下限判定値と上限判定値の両方を定めた場合のベルト張力異常判定部10の動作例である。
電動機制御装置100cによれば、ベルト張力Sの状態が正常であるか異常であるかを示すベルト張力異常判定値55を出力するため、より確実に又は容易に、ベルト張力Sに異常が発生したことを検知することができる。なお、電動機制御装置100又は電動機制御装置100bに、図7のベルト張力異常判定部10を追加し、より確実に又は容易に、ベルト張力Sの状態に異常が発生したことを検知してもよい。
また、電動機制御装置100cの構成要素の一部を、ベルト張力状態値算出部6aを含む装置とは別に、ベルト張力状態値算出部6aを含む装置の外部に設けた構成としても、より確実に又は容易に、ベルト張力Sの状態に異常が発生したことを検知することができる。構成要素の一部を、ベルト張力状態値算出部6aを含む装置の外部に設けた構成の例としては、図7の駆動制御部4をベルト張力状態検出装置の外部に設けたベルト張力状態検出装置等を挙げることができる。
以上説明したように、電動機制御装置100cは、ベルト張力異常判定部10をさらに備える。ベルト張力異常判定部10は、あらかじめ定めた基準値とベルト張力状態値53とを比較し、比較した結果に基づいてベルト203のベルト張力Sの状態が正常であるか異常であるかを示すベルト張力異常判定値55を出力する。
本実施の形態によれば、小型又は簡単な構成の装置を用いて、電動機システムが有する電動機のトルクを伝達するベルトのベルト張力の状態を検出することが可能な電動機制御装置又はベルト張力状態検出装置を提供することができる。さらに、より確実に又は容易にベルト張力の状態に異常が発生したことを検知することができるという効果を奏する。
実施の形態5.
図8は、この発明を実施するための実施の形態5における電動機制御装置100dの構成を示すブロック図である。図8に示す電動機制御装置100dは、機械諸元記憶部11(第一の機械諸元記憶部)を備える点が、図5に示す実施の形態2の電動機制御装置100aと異なる。さらに、駆動制御部4に代えて、駆動制御部4bを備える点が電動機制御装置100aと異なる。駆動制御部4bは、電動機システム1000の機械諸元である機械諸元56に基づいて駆動指令信号51を出力する。
図8に示す電動機制御装置100dの説明において、実施の形態2の電動機制御装置100aの構成要素と同じ又は対応する構成要素については、同一の符号を付す。機械諸元記憶部11は、例えば、半導体メモリ、ハードディスク等の記憶媒体としてもよい。また、記憶装置を有する計算機としてもよい。図8を参照して電動機制御装置100dの動作について説明する。
機械諸元記憶部11は、ベルト203を取り付けた時(初期)のベルト張力S、ベルト203の特性、駆動プーリ201の半径、従動プーリ202の半径、電動機側イナーシャJ1、負荷機械側イナーシャJ2等を機械諸元56(第一の機械諸元)として記憶する。機械諸元56は、ベルト203に発生するねじり振動の状態に関する電動機システム1000の機械的特性値である。駆動制御部4bは、機械諸元記憶部11から出力された機械諸元56に基づいて駆動指令信号51を出力する。
駆動制御部4bの動作について説明する。駆動制御部4bは、ベルト駆動部2が有するねじり振動の共振周波数frの予測値である予測共振周波数58(第一の予測共振周波数)を算出する。さらに、駆動制御部4bは、予測共振周波数58の信号成分を含む駆動指令信号51を出力することによって、ねじり振動の共振周波数frの信号成分を含む駆動指令信号51をより確実に出力することができる。
そのため、図8のベルト張力状態値算出部6aが取得する駆動指令信号51及び駆動検出信号52には、ねじり振動の共振周波数frの信号成分がより確実に含まれることとなる。そのため、電動機制御装置100dによれば、より確実にねじり振動の状態を検出することができる。そして、より確実にベルト張力Sの状態を検出することができる。
また、駆動制御部4bは、予測共振周波数58を用いて駆動指令信号51の周波数帯域を設定し、ねじり振動の共振周波数frの信号成分を含む駆動指令信号51の周波数帯域をより狭くすることができる。そして、ベルト張力状態値53を算出する際の駆動指令信号51及び駆動検出信号52に含まれる雑音の量を減らすことができる。そのため、電動機制御装置100dによれば、精度よくベルト張力Sの状態を検出することができる。
なお、電動機制御装置100、電動機制御装置100b、電動機制御装置100cのいずれか一つに、機械諸元記憶部11を追加した構成を用いて、電動機制御装置100dを用いた場合と同様に、より確実に又は精度よくベルト張力Sの状態を検出してもよい。
また、機械諸元記憶部11が記憶する機械諸元56は、初期の値に限定されるものではなく、ベルト203を取り付けた時から時間が経過した後の値でもよい。また、一定の時間が経過するごとに、機械諸元56を更新してもよい。また、異なる時点の機械諸元56の値を複数記憶し、記憶した値の平均値を用いてもよい。
また、駆動制御部4bは、駆動指令信号51について、周波数帯域の幅、データ間隔、単位時間あたりのデータ数、信号出力期間等の信号の仕様を機械諸元56に基づいて決定してもよい。例えば、駆動制御部4bは、機械諸元56を用いて、ベルト張力状態値53に求められる精度から駆動指令信号51の信号仕様を決定してもよい。以下に、駆動制御部4bの駆動指令信号51の信号仕様を決定する具体的な動作について説明する。
ベルト張力Sの値が、あらかじめ設けたベルト張力Sの許容範囲内にあるか否かを検知する場合に、あらかじめ設けたベルト張力Sの許容範囲から、機械諸元56を用いてねじり振動の共振周波数frの許容範囲を算出する。さらに、ねじり振動の共振周波数frの許容範囲の幅から、駆動指令信号51の信号仕様を決定する。
駆動指令信号51の信号仕様を決定する際には、実測したねじり振動の共振周波数frが許容範囲の中にはいっているかどうかを判断できるように、駆動指令信号51の単位時間あたりのデータ数、周波数帯域の幅等の信号仕様を決定する。このように、駆動制御部4bは、予測共振周波数58を算出せずに駆動指令信号51を出力してもよい。
駆動制御部4bは、上記に例示した動作によって、ねじり振動の共振周波数frの信号成分を含む駆動指令信号51の周波数帯域を狭くしてもよい。また、ねじり振動の共振周波数frの信号成分を含む駆動指令信号51を、より確実に出力してもよい。そして、電動機制御装置100dと同様に、より確実に又は精度よくベルト張力Sの状態を検出してもよい。
なお、実施の形態1の駆動制御部4と同様に、本実施の形態の駆動制御部4bは、電動機1の発生するトルクに代えて、電動機システム1000の回転動作の角度又は角速度を駆動指令信号51として出力することもできる。
また、電動機制御装置100dの構成要素の一部を、ベルト張力状態値算出部6aを含む装置の外部に、ベルト張力状態値算出部6aを含む装置とは別に設けても、電動機制御装置100dを用いた場合と同様に、ベルト張力Sの状態を、精度よく又はより確実に検出することができる。
構成要素の一部を、ベルト張力状態値算出部6aを含む装置の外部に設けた構成の例としては、図8の駆動検出部3又は機械諸元記憶部11を電動機制御装置の外部に設けた電動機制御装置、図8の駆動制御部4bをベルト張力状態検出装置の外部に設けたベルト張力状態検出装置等を挙げることができる。
以上説明したように、駆動制御部4bは、電動機システム1000の機械諸元であってベルト203に発生するねじり振動の状態に関する機械諸元56を記憶する機械諸元記憶部11から出力された機械諸元56に基づいて駆動指令信号51を出力する。
駆動制御部4bは、機械諸元56からねじり振動の共振周波数frの予測値である予測共振周波数58を算出し、予測共振周波数58の信号成分を含む駆動指令信号51を出力してもよい。また、駆動指令信号51について、周波数帯域の幅、データ間隔、単位時間あたりのデータ数、信号出力期間等の信号仕様を機械諸元56に基づいて決定し、決定した信号仕様に従って駆動指令信号51を出力してもよい。
駆動制御部4bが信号仕様を決定する際、機械諸元56に基づいて、機械諸元56を用いてねじり振動の状態とベルト張力Sの状態とを関係づけてもよい。
本実施の形態によれば、小型又は簡単な構成の装置を用いて、電動機システムが有する電動機のトルクを伝達するベルトのベルト張力の状態を検出することが可能な電動機制御装置又はベルト張力状態検出装置を提供することができる。さらに、精度よく又はより確実に、ベルト張力の状態を検出することができるという効果を奏する。
実施の形態6.
図9は、この発明を実施するための実施の形態6における電動機制御装置100eの構成を示すブロック図である。図9に示す電動機制御装置100eは、機械諸元記憶部11a(第二の機械諸元記憶部)を備える点が、図5に示す実施の形態2の電動機制御装置100aと異なる。さらに、ベルト張力状態値算出部6aに代えて、ベルト張力状態値算出部6bを備える点が、電動機制御装置100aと異なる。
図9に示すベルト張力状態値算出部6bは、機械諸元56aに基づいて駆動指令信号51号及び駆動検出信号52に信号処理SPを施す。そして、ベルト張力状態値算出部6aは、信号処理SPを施した信号を用いてベルト張力状態値53を出力する。
図9に示す電動機制御装置100eの説明において、図5に示す電動機制御装置100aの構成要素と同じ又は対応する構成要素については、同一の符号を付す。図9を参照して電動機制御装置100eの動作について説明する。機械諸元記憶部11aは、機械諸元記憶部11と同様に、半導体メモリ、ハードディスク等の記憶媒体としてもよく、記憶装置を有する計算機としてもよい。
機械諸元記憶部11aは、ベルト取り付け時(初期)のベルト張力S、ベルト203の特性、駆動プーリ201の半径、従動プーリ202の半径、電動機側イナーシャJ1、負荷機械側イナーシャJ2等を機械諸元56a(第二の機械諸元)として記憶する。機械諸元56aは、電動機システム1000の機械特性であって、ベルト203に発生するねじり振動の状態に関する数値である。実施の形態5の機械諸元56と同様に、初期の値に限定されるものではない。
ベルト張力状態値算出部6bは、機械諸元56aに基づいて、駆動指令信号51及び駆動検出信号52に信号処理SP(第一の信号処理)を施す。そして、信号処理SPを施して得た信号に基づいてベルト張力状態値53を算出する。ベルト張力状態値算出部6bが信号処理SPを施して得た信号からベルト張力状態値53を算出する動作は、ベルト張力状態値算出部6aが駆動指令信号51及び駆動検出信号52からベルト張力状態値53を算出する動作と同様である。以下に、信号処理SPについて説明する。
ベルト張力状態値算出部6bは、機械諸元記憶部11aから出力された機械諸元56aに基づいてねじり振動の共振周波数frの予測値である予測共振周波数58a(第二の予測共振周波数)を算出する。そして、あらかじめ定めた周波数範囲の信号成分のみを通過させるフィルタを構成する。上記周波数範囲には、予測共振周波数58aが含まれている。また、用いるフィルタの種類は、信号に含まれる外乱成分の特性を考慮し、バンドパスフィルタ、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ等から選択してもよい。
駆動指令信号51及び駆動検出信号52はこのフィルタを通過する。ベルト張力状態値算出部6bは、このフィルタを通過した信号を、ベルト張力状態値53を算出する際に用いる。以上が信号処理SPの一例である。ベルト張力状態値算出部6bは、信号処理SPを施すことによって雑音の量を低減し、ベルト張力状態値53を精度よく算出することができる。ここで、フィルタを通過した信号には、予測共振周波数58aの信号成分が含まれている。
なお、電動機制御装置100eに、実施の形態4において説明したベルト張力異常判定部10を追加し、より確実に又は容易に、ベルト張力Sに異常が発生したことを検出してもよい。また、電動機制御装置100aに代えて、電動機制御装置100、電動機制御装置100b、電動機制御装置100c、電動機制御装置100dのいずれか一つに機械諸元記憶部11aを追加してもよい。そして、各構成において、精度よくベルト張力Sの状態を検出してもよい。
また、図5のベルト張力状態値算出部6aと同様に、ベルト張力状態値算出部6bは、駆動指令信号51に代えて、電動機1の電流の検出値又は電動機1の発生するトルクの検出値を用いることもできる。電動機制御装置100eにおいて、駆動指令信号51に代えて、電動機1の電流又はトルクを用いた場合には、電流の検出値又はトルクの検出値に信号処理SPを施して、ベルト張力Sの状態を精度よく検出してもよい。
また、予測共振周波数58aを算出しない信号処理SPによって、ベルト張力Sの状態を、精度よく検出することもできる。予測共振周波数58aを算出しない信号処理SPの例としては、駆動指令信号51又は駆動検出信号52からデータを取得する際のデータサンプリングを挙げることができる。ベルト張力状態値算出部6bは、データサンプリング周期、データサンプリング期間等の条件を、機械諸元56aに基づいて決定してもよい。
そして、決定した条件に従って駆動指令信号51及び駆動検出信号52に対してデータサンプリングをおこない、雑音の量を低減した信号を用いて、ベルト張力状態値53を精度よく出力してもよい。また、ベルト張力状態値算出部6bは、駆動指令信号51と駆動検出信号52のいずれか一方に信号処理SPを施し、信号処理SPを施した信号と信号処理SPを施していない信号に基づいてベルト張力状態値53を精度よく出力してもよい。
また、電動機制御装置100eの構成要素の一部を、ベルト張力状態値算出部6bを含む装置の外部に、ベルト張力状態値算出部6bを含む装置とは別に設けても、ベルト張力Sの状態を精度よく検出することができる。構成要素の一部を、ベルト張力状態値算出部6bを含む装置の外部に設けた構成の例としては、駆動検出部3又は機械諸元記憶部11aを電動機制御装置の外部に設けた電動機制御装置、駆動制御部4bをベルト張力状態検出装置の外部に設けたベルト張力状態検出装置等を挙げることができる。
ベルト張力状態値算出部6bは、機械諸元56aに基づいてねじり振動の共振周波数frの予測値である予測共振周波数58aを算出する。そして、予測共振周波数58aの信号成分を含む周波数範囲のみを通過させるフィルタを構成する。そして、駆動指令信号51及び駆動検出信号52に対してこのフィルタを通過させることにより、周波数領域でのフィルタリングによる信号処理SPを行ってもよい。
また、データサンプリング周期、データサンプリング期間等のデータサンプリングの条件を、機械諸元56aに基づいて決定してもよい。そして、決定した条件に従って駆動指令信号51及び駆動検出信号52に対してデータサンプリングをおこなってもよい。さらに、データサンプリングを行う際、ベルト張力状態値53に必要とされる精度からデータサンプリングの条件を決定するために機械諸元56aを用いてもよい。
例えば、ベルト張力Sの値の正常範囲をあらかじめ決定し、ベルト張力Sの値がその正常範囲内にあるか否かを検知する場合、ベルト張力Sの正常範囲から機械諸元56aを用いてねじり振動の共振周波数frの正常範囲を算出する。
そして、ねじり振動の共振周波数frの検出値がねじり振動の共振周波数frの正常範囲にあるか否かを判断するのに、必要十分なデータ間隔となるようにデータサンプリングの条件を決定する。このようにして、計算時間を短縮し、かつ、ベルト張力Sの値がその正常範囲内にあるか否かを検知してもよい。
以上説明したように、ベルト張力状態値算出部6bは、電動機システム1000の機械諸元であってベルト203に発生するねじり振動の状態に関する機械諸元56aを記憶する機械諸元記憶部11aから出力された機械諸元56aに基づいて、駆動検出信号52に対して信号処理SPを施す。信号処理SPは、周波数領域でのフィルタリング又はデータサンプリングである。さらに、ベルト張力状態値算出部6bは、駆動検出信号52に信号処理SPを施して得た信号に基づいてベルト張力状態値53を出力する。
本実施の形態によれば、小型又は簡単な構成の装置を用いて、電動機システムが有する電動機のトルクを伝達するベルトのベルト張力の状態を検出することが可能な電動機制御装置又はベルト張力状態検出装置を提供することができる。さらに、ベルト張力の状態を精度よく検出できるという効果を奏する。
実施の形態7.
図10は、この発明を実施するための実施の形態7における電動機制御装置100fの構成を示すブロック図である。図10に示す電動機制御装置100fは、ベルト張力状態値記憶部12(第一のベルト張力状態値記憶部)を備える点が、図5に示す実施の形態2の電動機制御装置100aと異なる。さらに、駆動制御部4に代えて駆動制御部4cを備える点が、電動機制御装置100aと異なる。駆動制御部4cは、ベルト張力状態値記憶57に基づいて駆動指令信号51を出力する。
図10に示す電動機制御装置100fの説明において、図5に示す電動機制御装置100aの構成要素と同じ又は対応する構成要素には、同一の符号を付す。図10を参照して、電動機制御装置100fの動作について説明する。ベルト張力状態値記憶部12は、ベルト張力状態値53をベルト張力状態値記憶57(第一のベルト張力状態値記憶)としてあらかじめ記憶する。
ベルト張力状態値記憶部12を、半導体メモリ、ハードディスク等の記憶媒体としてもよい。また、記憶装置を有する計算機としてもよい。駆動制御部4cは、ベルト張力状態値記憶部12から出力されたベルト張力状態値記憶57に基づいて、ねじり振動の共振周波数frの予測値を算出する。算出した予測値を、共振周波数計算値59(第一の共振周波数計算値)とする。
駆動制御部4cは、共振周波数計算値59の信号成分を含む駆動指令信号51を出力する。その結果、図10のベルト張力状態値算出部6aは、ねじり振動の共振周波数frの信号成分を含む駆動指令信号51及び駆動検出信号52を、より確実に取得することができる。そして、電動機制御装置100fによれば、より確実にベルト張力の状態を検出することができる。
さらに、駆動制御部4cは、共振周波数計算値59を用いて、駆動指令信号51の周波数帯域をより狭く設定することができる。これにより、図10のベルト張力状態値算出部6aは、雑音の量が低減され共振周波数計算値59の信号成分を含む信号を、ベルト張力状態値53の算出に用いることができる。その結果、電動機制御装置100fによれば、精度よくベルト張力Sの状態を検出することができる。
駆動制御部4cは、共振周波数計算値59を算出せずに駆動指令信号51を出力することもできる。共振周波数計算値59を算出しない動作の例としては、駆動指令信号51について、周波数帯域の幅、データ間隔、単位時間あたりのデータ数等の信号仕様を、ベルト張力状態値記憶57に基づいて決定する動作を挙げることができる。
上記に例示した動作によって、ねじり振動の共振周波数frの信号成分を含む駆動指令信号51をより確実に出力してもよい。また、駆動指令信号51及び駆動検出信号52に含まれる雑音の量を低減させてもよい。駆動指令信号51の信号仕様を決定する駆動制御部4cの動作をさらに例示する。
例えば、ベルト張力Sの値が、あらかじめ定めた正常範囲内にあるかどうかを検知する場合に、ベルト張力状態値記憶57を用いて、正常時のベルト張力Sのばらつきの範囲を求める。さらに、求めたばらつきの範囲を参照して、ベルト張力Sの正常範囲を決定し、ベルト張力Sの正常範囲から、ねじり振動の共振周波数frの正常範囲を求める。駆動制御部4cは、この正常範囲の幅から、駆動指令信号51の信号仕様を決定してもよい。
ベルト張力状態値53が一度も出力されていない場合、ベルト張力状態値記憶部12がベルト張力状態値記憶57を記憶していないため、駆動制御部4cがベルト張力状態値記憶57を使用できない状態が発生し得る。このような場合、ベルト張力状態値53の予測値を算出し、この予測値をベルト張力状態値記憶57に代えて用いてもよい。予測値を算出する際に用いる数値データの例としては、実施の形態5の図8の機械諸元56等の数値データ、電動機システム1000の周波数応答特性等を挙げることができる。
なお、電動機制御装置100、電動機制御装置100b、電動機制御装置100c、電動機制御装置100eのいずれか一つにベルト張力状態値記憶部12を追加し、ベルト張力Sの状態を精度よく又はより確実に検出してもよい。また、本実施の形態の駆動制御部4cは、駆動制御部4と同様に、電動機1の発生するトルクに代えて、電動機システム1000の回転動作の角度又は角速度を出力することができる。
また、図10の電動機制御装置100fの構成要素の一部を、ベルト張力状態値算出部6aを含む装置とは別に、ベルト張力状態値算出部6aを含む装置の外部に設けても、ベルト張力Sの状態を精度よく又はより確実に検出することができる。構成要素の一部を、ベルト張力状態値算出部6aを含む装置の外部に設けた構成の例としては、図10の駆動検出部3又はベルト張力状態値記憶部12を、電動機制御装置の外部に設けた電動機制御装置、図10の駆動制御部4cをベルト張力状態検出装置の外部に設けたベルト張力状態検出装置等を挙げることができる。
以上説明したように、駆動制御部4cは、ベルト張力状態値53をベルト張力状態値記憶57としてあらかじめ記憶するベルト張力状態値記憶部12から出力されたベルト張力状態値記憶57に基づいて駆動指令信号51を出力する。
また、駆動制御部4cは、ねじり振動の共振周波数frの予測値である共振周波数計算値59を算出し、共振周波数計算値59の信号成分を含む駆動指令信号51を出力してもよい。また、駆動制御部4cは、駆動指令信号51について、周波数帯域の幅、データ間隔、単位時間あたりのデータ数等の信号仕様をベルト張力状態値記憶57に基づいて決定し、決定した信号仕様を有する駆動指令信号51を出力してもよい。
本実施の形態によれば、小型又は簡単な構成の装置を用いて、電動機システムが有する電動機のトルクを伝達するベルトのベルト張力の状態を検出することが可能な電動機制御装置又はベルト張力状態検出装置を提供することができる。さらに、ベルト張力の状態を、精度よく又はより確実に検出することができるという効果を奏する。
実施の形態8.
図11は、この発明を実施するための実施の形態8における電動機制御装置100gの構成を示すブロック図である。図11に示す電動機制御装置100gは、ベルト張力状態値記憶部12a(第二のベルト張力状態値記憶部)を備える点が、図5に示す実施の形態2の電動機制御装置100aと異なる。さらに、ベルト張力状態値算出部6aに代えてベルト張力状態値算出部6cを備える点が、図5に示す電動機制御装置100aと異なる。
図11のベルト張力状態値算出部6cは、あらかじめベルト張力状態値53を記憶したベルト張力状態値記憶57aに基づいて、駆動指令信号51及び駆動検出信号52に対して信号処理SP1を施し、信号処理SP1を施して得た信号に基づいてベルト張力状態値53を出力する。
図11に示す電動機制御装置100gの説明において、図5に示す電動機制御装置100aの構成要素と同じ又は対応する構成要素については、同一の符号を付す。以下に、図11を参照して電動機制御装置100gの動作について説明する。
ベルト張力状態値記憶部12aは、ベルト張力状態値53をベルト張力状態値記憶57a(第二のベルト張力状態値記憶)としてあらかじめ記憶する。ベルト張力状態値算出部6cは、ベルト張力状態値記憶57aに基づいて、駆動指令信号51及び駆動検出信号52に対して信号処理SP1を施す。
さらに、ベルト張力状態値算出部6cは、駆動指令信号51及び駆動検出信号52に信号処理SP1を施して得た信号に基づいてベルト張力状態値53を出力する。ベルト張力状態値算出部6cが信号処理SP1を施して得た信号からベルト張力状態値53を算出する動作は、ベルト張力状態値算出部6aが駆動指令信号51及び駆動検出信号52からベルト張力状態値53を算出する動作と同様である。
以下に、信号処理SP1について説明する。ベルト張力状態値算出部6cは、ベルト張力状態値記憶57aに基づいて、共振周波数計算値59a(第二の共振周波数計算値)を算出する。共振周波数計算値59aは、ベルト駆動部2のねじり振動の共振周波数frの予測値である。ベルト張力状態値算出部6cは、駆動指令信号51及び駆動検出信号52から、共振周波数計算値59aの信号成分を含む信号をそれぞれ抽出する。
ベルト張力状態値算出部6cは、共振周波数計算値59aを用いることによって、共振周波数計算値59aの信号成分を含み、周波数帯域が狭く雑音の量が低減された信号をベルト張力状態値53の算出に用いることができる。その結果、精度よくベルト張力Sの状態を検出することができる。
また、ベルト張力状態値算出部6cがベルト張力状態値記憶57aを利用できない場合、実施の形態7のベルト張力状態値記憶部12と同様に、計算によって求めたベルト張力状態値53の予測値を、ベルト張力状態値記憶57aに代えて用いてもよい。
また、信号処理SP1を、共振周波数計算値59aを算出しない信号処理としてもよい。共振周波数計算値59aを算出しない信号処理SP1の例としては、データサンプリングを挙げることができる。このデータサンプリングの際に、データサンプリング周期、データサンプリング期間等のデータサンプリングの条件を、ベルト張力状態値記憶57aに基づいて決定してもよい。
上記に例示したデータサンプリングによる信号処理SP1を、駆動指令信号51及び駆動検出信号52に施すことによって、ベルト張力状態値算出部6cがベルト張力状態値53を算出する際に用いる信号の雑音の量を低減させてもよい。そして、ベルト張力Sの状態を検出する精度を向上させてもよい。さらに、ベルト張力状態値算出部6cがデータサンプリングの条件を決定する動作を例示する。
ベルト張力Sの値が、ベルト張力Sの正常範囲の中にあるかどうかを検知する場合に、ベルト張力状態値記憶57aを用いて正常時のベルト張力Sのばらつきの範囲を決定する。さらに、決定したベルト張力Sの正常時のばらつきの範囲からベルト張力Sの正常範囲を設定し、ベルト張力Sの正常範囲からねじり振動の共振周波数frの正常範囲を算出する。そして、算出されたねじり振動の共振周波数frの正常範囲の幅から、データサンプリングの条件を決定する。
また、電動機制御装置100、電動機制御装置100b、電動機制御装置100c、電動機制御装置100d、電動機制御装置100fのいずれか一つに、ベルト張力状態値記憶部12aを追加し、精度よくベルト張力Sの状態を検出してもよい。また、図11のベルト張力状態値算出部6cは、駆動指令信号51と駆動検出信号52の両方に信号処理SP1を施すが、駆動指令信号51と駆動検出信号52のいずれか一方に、信号処理SP1を施してもよい。
また、図11のベルト張力状態値算出部6cは、図5に示すベルト張力状態値算出部6aと同様に、駆動指令信号51に代えて、電動機1に流れる電流の検出値又は電動機1の発生するトルクの検出値を用いることもできる。電動機1の電流の検出値又はトルクの検出値を用いた場合には、電流の検出値又はトルクの検出値に信号処理SP1を施し、ベルト張力Sの状態を精度よく検出してもよい。
また、図11に示す電動機制御装置100gの構成要素の一部を、ベルト張力状態値算出部6cを含む装置とは別に、ベルト張力状態値算出部6cを含む装置の外部に設け、電動機制御装置100gと同様に、精度よくベルト張力Sの状態を検出してもよい。構成要素の一部を、ベルト張力状態値算出部6cを含む装置の外部に設けた構成の例としては、駆動検出部3又はベルト張力状態値記憶部12aを電動機制御装置の外部に設けた電動機制御装置、駆動制御部4をベルト張力状態検出装置の外部に設けたベルト張力状態検出装置等を挙げることができる。
ベルト張力状態値算出部6cは、ベルト張力状態値53をベルト張力状態値記憶57aとしてあらかじめ記憶するベルト張力状態値記憶部12aから出力されたベルト張力状態値記憶57aに基づいて駆動検出信号52に対して信号処理SP1を施す。さらに、駆動検出信号52に信号処理SP1を施して得た信号に基づいてベルト張力状態値53を出力する。
また、ベルト張力状態値算出部6cは、ベルト張力状態値記憶57aに基づいてねじり振動の共振周波数frの予測値である共振周波数計算値59aを算出し、駆動指令信号51及び駆動検出信号52から、共振周波数計算値59aの信号成分を含む信号をそれぞれ抽出してもよい。
また、ベルト張力状態値算出部6cは、データサンプリング周期、データサンプリング期間等のデータサンプリングの条件を、ベルト張力状態値記憶57aに基づいて決定し、決定した条件に従って駆動指令信号51及び駆動検出信号52に対してデータサンプリングを施してもよい。
本実施の形態によれば、小型又は簡単な構成の装置を用いて、電動機システムが有する電動機のトルクを伝達するベルトのベルト張力の状態を検出することが可能な電動機制御装置又はベルト張力状態検出装置を提供することができる。さらに、ベルト張力の状態を、精度よく検出することができるという効果を奏する。
実施の形態9.
図12は、この発明を実施するための実施の形態9における電動機制御装置100hの構成を示すブロック図である。電動機制御装置100hは、実施の形態4の図7に示す電動機制御装置100cのベルト張力異常判定部10に代えて、ベルト張力異常判定部10aを備える。さらに、図7に示す電動機制御装置100cの構成要素に加えて、機械学習装置13を備える。本実施の形態において、実施の形態4の図7と同じ又は対応する構成要素については、同一の符合を付す。
ベルト張力異常判定部10aは、ベルト張力異常判定部10と同様に、ベルト張力状態値53と基準値を比較し、比較した結果に基づいてベルト張力Sの状態が正常であるか異常であるかを示す値を、ベルト張力異常判定値55として出力する。ベルト張力異常判定部10aは、判断に用いる基準値を、機械学習装置13から取得する。以下では、ベルト張力異常判定部10aが判断に用いる基準値をrvとする。機械学習装置13は、状態変数svに基づいて作成される訓練データセットに従って、基準値rvを学習する。そして、学習した結果に基づき上記の基準値rvを決定する。
図13は、実施の形態9における電動機制御装置100hが備える機械学習装置13の構成を示すブロック図である。
機械学習装置13は、状態観測部21、データ記憶部22、学習部23及び意思決定部24を備える。また、学習部23は、報酬計算部231及び行動価値関数更新部232を備える。状態観測部21は、駆動指令信号51、駆動検出信号52、ベルト張力状態値53、ベルト張力異常判定値55及び基準値rvを取得し、状態変数svを決定する。ここで、状態観測部21は駆動指令信号51及び駆動検出信号52を取得しない構成としてもよい。
データ記憶部22は、状態観測部21が取得した、駆動指令信号51、駆動検出信号52、ベルト張力状態値53、ベルト張力異常判定値55及び基準値rvと、決定した状態変数svとを記憶する。状態観測部21は、データ記憶部22を利用して、取得した信号の情報を、時間ごとに区分する、関連のあるデータごとにまとめる、等のデータ処理を行った後、状態変数svとして学習部23へ出力してもよい。また、データ記憶部22は、必要に応じて設ければよく、省いてもよい。また、データ記憶部22は、機械学習装置13の外部、電動機制御装置100hの外部等に設けることもできる。
学習部23は、状態変数svに基づいて作成される訓練データセットに従って、基準値rvを学習する。換言すれば、学習部23は、状態変数svと関連付けて、基準値rvを学習する。本実施の形態では、一例として強化学習(Reinforcement Learning)を適用した場合を説明するが、本実施の形態の学習部23が使用する学習アルゴリズムは、強化学習に限定されるものではない。学習部23は、様々な学習アルゴリズムを用いて学習を実行することができる。教師あり学習、教師なし学習、半教師あり学習等の学習アルゴリズムを適用することも可能である。また、上述した学習アルゴリズムとして、特徴量そのものの抽出を学習する深層学習(Deep Learning)を用いてもよい。また、他の方法、例えば、ニューラルネットワーク、遺伝的プログラミング、機能論理プログラミング、サポートベクターマシン、ベイズ最適化等に従って機械学習を実行してもよい。
強化学習は、ある環境内におけるエージェント(行動主体)が現在の状態を観測し、取るべき行動を決定するというものである。エージェントは行動を選択し、環境から報酬を得る。そして、エージェントは、一連の行動を通じて報酬が最も多く得られるような方策を学習する。強化学習の代表的な手法として、Q学習(Q-Learning)、TD学習(TD-Learning)等が知られている。例えばQ学習の場合、行動価値関数Q(s,a)の一般的な更新式は、(6)式で表される。更新式は、行動価値テーブルで表記してもよい。
(6)式において、stは時刻tにおける環境を表し、atは時刻tにおける行動を表す。行動atによって環境はst+1に変わる。rt+1はその環境の変化によってもらえる報酬を表し、γは割引率を表し、αは学習係数を表す。なお、割引率γは0より大きく1以下の範囲(0<γ≦1)、学習係数αは0より大きく1以下の範囲(0<α≦1)とする。本実施の形態にQ学習を適用した場合、行動atは、基準値rvの決定である。
報酬計算部231の動作例を示す。報酬計算部231は、ベルト張力状態値53、基準値rv、ベルト張力異常判定値55及び実際の異常発生の有無から構成される組を、複数組生成する。ここで、実際の異常発生の有無は、駆動指令信号51、駆動検出信号52、ベルト張力状態値53等に基づく状態変数svから判定する。そして、報酬計算部231は、ベルト張力異常判定値55の示す異常の有無と、実際の異常発生の有無を照合し、両者が一致した回数を、照合を実行した全回数で除して得た値を報酬rとしてもよい。このようにすれば、ベルト張力異常判定部10aの判断と、実際に発生した異常の有無とが一致する回数が多いほど、高い報酬を与えることができるため、より正しい判断結果を得ることができる基準値rvを学習することができる。
なお、ベルト張力異常判定値55が異常の種類を示す場合、報酬計算部231は、ベルト張力異常判定値55の示す異常の種類と、実際に発生した異常の種類を照合してもよい。そして、異常の有無及び種類が一致した場合、最も高い報酬を与え、異常の有無は一致して異常の種類は一致しなかった場合、中程度の報酬を与え、異常の有無が一致しなかった場合は小さい報酬又はマイナスの報酬を与えるとしてもよい。このようにすれば、異常の有無及び異常の種類を、より正確に検出できる基準値rvを学習することができる。
行動価値関数更新部232は、報酬計算部231で計算された報酬rと状態変数svとに基づき、基準値rvを計算するための行動価値関数Qを更新する。意思決定部24は、行動価値関数Qに基づいて基準値rvを決定する。具体的には、意思決定部24は、更新された行動価値関数Qが最も大きくなる行動at、すなわち基準値rvを決定する。このようにして、基準値rvを更新することにより、異常についてより正確な判断を実施することができる基準値rvについて学習を進めることができる。
なお、電動機システム1000と同様の電動機システムを複数設け、複数の電動機システムによる判断を並行して実行し、効率よく学習を進めてもよい。また、電動機システム1000から取得したデータを用いて学習を行った電動機制御装置100hを、別の電動機システムに接続し、別の電動機システムから取得したデータを用いて、さらに学習を実行してもよい。
また、本実施の形態の学習の結果を搭載した学習済み学習器を用いて、電動機制御装置を構成してもよい。上記の学習済み学習器は、本実施の形態の学習によって更新済の行動価値関数Qを用いて基準値rvを決定する学習済プログラムによって実現してもよい。また、本実施の形態の学習による基準値rvの調整の結果を記憶させた学習済みデータによって上記の学習済み学習器を実現してもよい。このようにすれば、学習済プログラム、学習済みデータ等を、電動機制御装置に追加することによって、学習結果を利用することができる電動機制御装置を、短時間で提供することができる。また、本実施の形態に説明した方法によって、基準値rvの自動調整、電動機制御装置の製造等を実行してもよい。
本実施の形態によれば、小型又は簡単な構成の装置を用いて、電動機システムが有する電動機のトルクを伝達するベルトのベルト張力の状態を検出することが可能な電動機制御装置又はベルト張力状態検出装置を提供することができる。さらに、ベルト張力に発生する異常の有無の判断に用いる基準値rvを学習することができる。これにより、より正確に異常の有無を判断することのできる電動機制御装置を提供できるという効果を奏する。
以上に説明した実施の形態は、適宜組み合わせて使用することができる。また、以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。