JP6737103B2 - 鋼、鋼材及び摺動部品、並びに鋼材の製造方法 - Google Patents

鋼、鋼材及び摺動部品、並びに鋼材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、鋼、鋼材及び摺動部品、並びに鋼材の製造方法に関する。
クランクシャフトに代表される摺動部品には、耐摩耗性及び疲労強度が求められる。耐摩耗性及び疲労強度を高めるために、摺動部品の多くには、高周波焼入れや冷間ロール加工等の表面硬化処理が実施される。
摺動部品には、上記の特性に加えて、優れた耐焼付き性が求められる。自動車の軽量化ニーズを背景に、クランクシャフトの細軸化及び狭幅化に対する要求が高まっている。そのため、クランクシャフトと軸受との間の摺動条件は過酷になっている。したがって、クランクシャフトには、従来よりも優れた耐焼付き性が求められている。
特許第4589885号公報には、熱伝導率κが40W/mK以上であって、かつ高周波焼入れ後の表面硬さHvが(2.7×κ+420)よりも大きいことを特徴とするクランクシャフトが開示されている。同文献には、焼付きの支配因子は摺動面の温度上昇であると記載されている。温度上昇を抑制するためには、熱伝導率を高くすること、及び、摩擦係数を低減することが有効であると記載されている。
特許第4140283号公報には、表層から200nmまでの領域における組織が、面積率で5%以下の初析フェライトとラメラー間隔が30nm以下のパーライトとの混合組織であることを特徴とする非調質鋼クランクシャフトが開示されている。同文献には、耐摩耗性に影響するのは表層から200nmまでの領域における硬さであり、ナノインデンテーション装置を用いてこの領域を測定した硬さが10GPa以上であれば、優れた耐摩耗性が得られると記載されている。
特許第4589885号公報 特許第4140283号公報
上記の特許文献に記載されているように、耐焼付き性を向上させるためには、表面(摺動面)から数100nm以内の領域の硬さ(以下、「ナノ硬さ」という。)を高くすることが有効である。ナノ硬さを高くすれば、内部が軟質であっても、優れた耐焼付き性を得ることができる。
本発明者らは、摺動部品のナノ硬さが、長時間摺動することによって変化することを見いだした。上記の特許文献では、長時間摺動後のナノ硬さについては検討されていない。
本発明の課題は、摺動部品の材料として好適な鋼、鋼材を提供すること、及び耐焼付き性に優れた摺動部品を提供することである。
本発明の一実施形態による鋼は、化学組成が、質量%で、C:0.35〜0.6%、Si:0.50%未満、Mn:0.70%未満、P:0.02%以下、S:0.05〜0.1%、Mo:0.5〜3.5%、Al:0.005〜0.06%、N:0.001〜0.02%、Nb:0.002〜0.05%、残部:Fe及び不純物であり、下記式(1)で示されるSMo指数が1.0以上である。
Mo=(S/32×Mo/96)×10・・・式(1)
ここで、式(1)の元素記号には、対応する元素の含有量が質量%で代入される。
本発明の一実施形態による鋼材は、化学組成が、質量%で、C:0.35〜0.6%、Si:0.50%未満、Mn:0.70%未満、P:0.02%以下、S:0.05〜0.1%、Mo:0.5〜3.5%、Al:0.005〜0.06%、N:0.001〜0.02%、Nb:0.002〜0.05%、残部:Fe及び不純物であり、下記式(1)で示されるSMo指数が1.0以上であり、前記鋼材の少なくとも表層にMoCが析出した組織を有し、前記MoCの平均粒子間隔が1.0μm以下である。
Mo=(S/32×Mo/96)×10・・・式(1)
ここで、式(1)の元素記号には、対応する元素の含有量が質量%で代入される。
本発明の一実施形態による摺動部品は、化学組成が、質量%で、C:0.35〜0.6%、Si:0.50%未満、Mn:0.70%未満、P:0.02%以下、S:0.05〜0.1%、Mo:0.5〜3.5%、Al:0.005〜0.06%、N:0.001〜0.02%、Nb:0.002〜0.05%、残部:Fe及び不純物であり、下記式(1)で示されるSMo指数が1.0以上であり、前記摺動部品の少なくとも表層の組織はマルテンサイトであり、前記マルテンサイトの旧オーステナイト粒の平均粒径が20μm以下である。
Mo=(S/32×Mo/96)×10・・・式(1)
ここで、式(1)の元素記号には、対応する元素の含有量が質量%で代入される。
本発明の一実施形態による摺動部品は、化学組成が、質量%で、C:0.35〜0.6%、Si:0.50%未満、Mn:0.70%未満、P:0.02%以下、S:0.05〜0.1%、Mo:0.5〜3.5%、Al:0.005〜0.06%、N:0.001〜0.02%、Nb:0.002〜0.05%、残部:Fe及び不純物であり、下記式(1)で示されるSMo指数が1.0以上であり、前記摺動部品の少なくとも表層の組織は、転位密度が1015−2以上の高転位密度組織である。
Mo=(S/32×Mo/96)×10・・・式(1)
ここで、式(1)の元素記号には、対応する元素の含有量が質量%で代入される。
本発明の一実施形態による鋼材の製造方法は、化学組成が、質量%で、C:0.35〜0.6%、Si:0.50%未満、Mn:0.70%未満、P:0.02%以下、S:0.05〜0.1%、Mo:0.5〜3.5%、Al:0.005〜0.06%、N:0.001〜0.02%、Nb:0.002〜0.05%、残部:Fe及び不純物であり、下記式(1)で示されるSMo指数が1.0以上である素材を準備する工程と、前記素材を1000〜1250℃に加熱する工程と、前記加熱された素材を熱間鍛造する工程と、前記熱間鍛造された素材を850℃以上の温度から焼入れする工程と、前記焼入れされた素材を500〜650℃の温度で焼戻しする工程とを備える。
Mo=(S/32×Mo/96)×10・・・式(1)
ここで、式(1)の元素記号には、対応する元素の含有量が質量%で代入される。
本発明の一実施形態による鋼材の製造方法は、化学組成が、質量%で、C:0.35〜0.6%、Si:0.50%未満、Mn:0.70%未満、P:0.02%以下、S:0.05〜0.1%、Mo:0.5〜3.5%、Al:0.005〜0.06%、N:0.001〜0.02%、Nb:0.002〜0.05%、残部:Fe及び不純物であり、下記式(1)で示されるSMo指数が1.0以上である素材を準備する工程と、前記素材を1000〜1250℃に加熱する工程と、前記加熱された素材を熱間鍛造する工程とを備え、前記熱間鍛造する工程は、500〜650℃の温度において減面率が10%以上の加工を前記素材に加える温間加工工程を含む。
Mo=(S/32×Mo/96)×10・・・式(1)
ここで、式(1)の元素記号には、対応する元素の含有量が質量%で代入される。
本発明によれば、摺動部品の材料として好適な鋼、鋼材、及び耐焼付き性に優れた摺動部品が得られる。
図1は、合金元素の添加量と熱伝導率との関係を示すグラフである。 図2Aは、MoCの析出形態を模式的に示す図である。 図2Bは、セメンタイトの析出形態を模式的に示す図である。 図3は、本発明の一実施形態による鋼材の製造方法の一例を示すフロー図である。 図4は、本発明の一実施形態による鋼材の製造方法の他の例を示すフロー図である。 図5は、本発明の一実施形態による摺動部品の製造方法の一例を示すフロー図である。 図6は、本発明の一実施形態による摺動部品の製造方法の他の例を示すフロー図である。 図7は、冷間ロール加工用に加工された供試材の模式図である。 図8Aは、摩擦試験用の試験片の模式図である。 図8Bは、ピンオンディスク型摩擦試験の模式図である。 図8Cは、摩擦時間と摩擦力との関係を模式的に示すグラフである。 図9は、ピンオンディスク型摩耗試験の模式図である。 図10は、ナノインデンテーション法によるナノ硬さ測定の模式図である。 図11Aは、試験番号1の、摩耗試験後のナノ硬さの分布を示すグラフである。 図11Bは、試験番号2の、摩耗試験後のナノ硬さの分布を示すグラフである。 図11Cは、試験番号3の、摩耗試験後のナノ硬さの分布を示すグラフである。 図11Dは、試験番号4の、摩耗試験後のナノ硬さの分布を示すグラフである。 図11Eは、試験番号5の、摩耗試験後のナノ硬さの分布を示すグラフである。 図12は、試験番号1〜22の、摩耗試験後における表層から20nm以内の位置におけるナノ硬さを示すグラフである。
本発明者らは、主に自動車用のクランクシャフトを対象として、焼付き現象について検討した。通常、クランクシャフトと軸受とは、油膜を挟んで対向する流体潤滑の状態で摺動している。しかし、本発明者らの調査によって、長時間の摺動中には、流体潤滑から境界潤滑に至る局面が少なからずあることがわかった。一般的に境界潤滑環境下で鋼が長時間摺動を受けると、加工硬化や摩擦熱による軟化が生じ、摺動面近傍(表面から20nm以内)の硬さが変化することが明らかになった。
組織観察の結果、摺動面では、摺動による加工層の形成と、摩擦熱による組織の変質(焼戻し、回復、及び再結晶)とが重畳的に起こっていることがわかった。このうち、摺動による加工層の形成はナノ硬さを向上させる因子であり、摩擦熱による組織の変質はナノ硬さを低下させる因子である。
したがって、摺動面のナノ硬さを向上させるためには、(1)熱伝導率の向上による摩擦熱散逸、(2)表面硬化処理、及び(3)熱的安定性の向上による組織の変質の抑制が有効である。
(1)熱伝導率の向上による摩擦熱散逸
熱伝導率の向上には、Si含有量の低減が有効であることが従来から知られている。本発明者らは、他の元素の影響を明らかにするため、中高炭素鋼をベースとして合金元素の添加量を変化させて、その熱伝導率を測定した。結果を図1に示す。図1に示すとおり、C、Siに加えて、Mnも熱伝導率に大きく影響を与える元素であり、Mn含有量の低減によって熱伝導率を向上できることがわかった。一方、MoやWは、熱伝導率に大きく影響しないことがわかった。
Mnは、焼入れ性向上に寄与する元素であり、従来、摺動部品に用いられる鋼には、Mnが1〜2%含有されている。焼入れ性を確保しつつ熱伝導率を向上させるためには、Mn含有量を低減する代わりに、Moを含有させることが必要である。
(2)表面硬化処理
摺動部品の耐摩耗性や耐焼付き性を向上させるためには、摺動面を硬化させる必要がある。しかしながら、単に硬化させるだけでは表層が脆くなるばかりである。耐摩耗性や耐焼付き性を向上させるためには、加工硬化率を高めなければならない。ただし、加工硬化量が増すと再結晶が生じやすくなる。再結晶は、加工硬化された硬質の組織の中に、部分的に発生する。再結晶部は軟質組織であるため、摩耗の起点になりやすい。したがって、摺動部品には、加工硬化率が高く、かつ、再結晶が起こりにくい鋼材及び鋼材組織を選択する必要がある。上記の条件を満たす組織を形成させる表面硬化処理として、高周波焼入れ及び冷間ロール加工が好適である。その理由は、高周波焼入れにより生成するマルテンサイトには、可動転位が多く含まれるためである。また、冷間ロール加工による加工硬化組織においても可動転位が多く含まれるためである。
鋼材に表面硬化処理として高周波焼入れを施した場合、少なくともその表層の組織が微細なマルテンサイトになる。本発明者らは、微細な結晶粒から生じたマルテンサイトは、加工硬化率が高いことを見いだした。このメカニズムは明らかではないが、マルテンサイトのバリアントや下部組織が影響しているものと考えられる。本発明者らは、MoとSとを複合添加することによって、結晶粒を微細化できることも見いだした。このメカニズムも明らかではないが、MoとSとがクラスタを形成し、粒成長を抑制している可能性がある。また、一般には結晶粒を微細化すると焼入れ性が低下するが、MoとSとの複合添加は、焼入れ性の向上にも寄与する。
鋼材に表面硬化処理として冷間ロール加工を施した場合、通常、摩擦熱によって、表層部分の転位密度は低下する。加工硬化率を向上させるためには、表層部分の転位密度を高く維持できることが好ましい。本発明者らは、MoとSとを複合添加することによって、転位の回復を抑制できることを見いだした。
(3)熱的安定性の向上による組織の変質の抑制
本発明者らは、MoとSとを複合添加することによって、鋼の熱的安定性を向上できることを見いだした。このメカニズムは明らかではないが、Sが転位の移動を妨げ、焼戻し、回復、及び再結晶を抑制するためと考えられる。また、MoとSとを複合添加することによって、MoとSとがクラスタを形成し、この効果を促進している可能性がある。
上述のとおり、MoとSとを複合添加することによって、加工硬化性及び熱的安定性の両方を向上させることができる。Mo含有量及びS含有量のいずれかのみ高い場合ではこの効果は得られず、Mo含有量とS含有量の積を所定値以上にすることが重要である。具体的は、下記式(1)で示されるSMo指数が1.0以上であれば、加工硬化性及び熱的安定性を顕著に向上させることができる。
Mo=(S/32×Mo/96)×10・・・式(1)
ここで、式(1)の元素記号には、対応する元素の含有量が質量%で代入される。
本発明者らはさらに、(4)摺動面の摩擦係数の低減によって、摺動部品の耐焼付き性を向上できることを見いだした。
(4)摺動面の摩擦係数の低減
本発明者らは、Sを添加することによって、鋼材表面の潤滑性を向上させ、摺動面の摩擦係数を軽減できることを見いだした。このメカニズムは明らかではないが、Sは表面偏析しやすい元素であるから、表面偏析したSが潤滑性に影響している可能性がある。
従来、機械構造用鋼やクランクシャフト用鋼材では、切削性を確保する観点から、MnSを生成させるためSを多く含む鋼が開発されてきた。しかしながら、MnSが表面近傍に存在すると、摩耗の起点になり、摩耗分の生成が助長されるため、焼付きが起こりやすくなることが明らかとなった。
本発明者らはさらに、(5)表面硬化処理前に微細なMoCを析出させる処理(以下、「細粒化(析出)処理」という。)を実施することで、表面硬化処理後の摺動部品の耐焼付き性をより一層向上できることを見いだした。
(5)細粒化(析出)処理
MoCは、粒成長を抑制する。そのため、細粒化(析出)処理した鋼材に、表面硬化処理として高周波焼入れを実施すれば、高周波焼入れによって形成されるマルテンサイトの旧オーステナイト粒を顕著に微細化することができる。より具体的には、MoCの平均粒子間隔を1.0μm以下にしておくことで、旧オーステナイト粒の平均粒径を10μm以下にすることができる。また、MoCは転位の運動に対するピンニング作用を有し、転位の回復を抑制する。そのため、細粒化(析出)処理した鋼材に冷間ロール加工を実施すれば、高い転位密度を付与することができる。
MoCはさらに、針状又は板状の粗大なセメンタイトの生成を抑制する。針状又は板状の粗大なセメンタイトは、例えば残留応力を除去するために高周波焼入れ後に行われる低温での焼戻し熱処理や摺動中の摩擦熱によって生成し、摺動部品の耐摩耗性を低下させ、結果として耐焼付き性を低下させる。MoCは、Cを固定することにより、針状又は板状の粗大なセメンタイトの生成を抑制し、摺動部品の耐焼付き性の向上に寄与する。
細粒化促進処理は、以下の(A)又は(B)によって実現できる。なお、MoCの平均粒子間隔を制御するためには、C、Mo、Sの各含有量に加えて、Al含有量を適切に制御する必要がある。
(A)熱間鍛造された素材を焼入れし、さらに500〜650℃の温度で焼戻しする。
(B)熱間鍛造中に、500〜650℃の温度において減面率が10%以上の加工を素材に加える。
以上の知見に基づいて、本発明は完成された。以下、本発明の一実施形態による鋼、高鋼材、及び摺動部品について詳述する。
[鋼及び鋼材]
本明細書において、「鋼」とは、化学組成のみで規定されるものを意味し、「鋼材」とは、この鋼が摺動部品の粗形状に加工されたものを意味する。
[化学組成]
本実施形態による鋼及び鋼材は、以下に説明する化学組成を有する。以下の説明において、元素の含有量の「%」は、質量%を意味する。
C:0.35〜0.6%
炭素(C)は、鋼の焼入れ性を高め、硬さの向上に寄与する。C含有量が0.35%未満では、鋼の焼入れ性が不足する。一方、C含有量が0.6%を超えると、鋼の被削性が低下する。したがって、C含有量は0.35〜0.6%である。C含有量の下限は、好ましくは0.36%であり、さらに好ましくは0.38%である。C含有量の上限は、好ましくは0.5%であり、さらに好ましくは0.45%である。
Si:0.50%未満
シリコン(Si)は、不純物として鋼に含有される。さらに、Siを積極的に含有させると、粗大なセメンタイトの生成を抑制する効果がある。一方、Si含有量が0.50%以上になると、鋼の熱伝導率が低下して十分な耐焼付き性が得られない。したがって、Si含有量は0.50%未満である。粗大なセメンタイトの生成を抑制する効果を顕著に得るためには、Si含有量は、0.05%以上とすることが好ましく、さらに0.10%以上とすることがより好ましい。Si含有量の上限は、好ましくは0.40%であり、さらに好ましくは0.30%である。
Mn:0.70%未満
マンガン(Mn)は、不純物として鋼に含有される。Mn含有量が高いと、固溶S量を低減させてしまう。本実施形態では、Sの表面偏析を利用して表面の潤滑作用を付与させる必要がある。しかしながら、MnSの生成により固溶S量が低下すると上記の潤滑作用は得られない。したがって、Mnの含有量を低減し、MnSの生成を抑える必要がある。上記の効果を確保するために、Mn含有量は0.70%未満に抑える必要がある。Mn含有量の上限は、好ましくは0.60%であり、さらに好ましくは0.50%であり、さらに好ましくは0.40%である。一方、Mn含有量の下限は低いほど望ましいが、不純物として含有されるので、実質的には0.01%である。製鋼コストを考慮すると、Mn含有量の下限は、好ましくは0.05%であり、さらに好ましくは0.10%である。
P:0.02%以下
リン(P)は、不純物である。P含有量が0.02%を超えると、鋼の疲労強度が低下する。したがって、P含有量は0.02%以下である。P含有量は、好ましくは0.01%以下であり、さらに好ましくは0.005%以下である。
S:0.05〜0.1%
硫黄(S)は、固溶元素として転位の移動を妨げ、転位密度を向上させる。Sはさらに、オーステナイトの粒成長を抑制することで、マルテンサイトの旧オーステナイト粒を微細化する。その結果、摺動による加工硬化性が高まり、耐摩耗性を向上させる。耐摩耗性が向上すると、焼付きを抑制することができる。これらの効果は、SとMoとを複合添加することで顕著になる。また、Sは鋼材表面の潤滑性を向上させ、摺動面の摩擦係数を低減させる。S含有量が0.05%未満では、これらの効果が得られない。一方、S含有量が0.1%を超えると、熱間加工性が低下する。したがって、S含有量は0.05〜0.1%である。S含有量の下限は、好ましくは0.052%である。S含有量の上限は、好ましくは0.07%であり、さらに好ましくは0.06%である。
Mo:0.5〜3.5%
モリブデン(Mo)は、鋼の焼入れ性を高める。さらに、固溶状態においても、MoCとして析出した状態においても、転位の移動を妨げて転位密度を向上させる。また鋼にMoを添加しても、鋼の熱伝導率を大きく低下させない。本実施形態では、熱伝導率を高めるためにMn含有量を低くしているので、MnをMoで代替することにより、焼入れ性と高熱伝導率とを両立させることが可能となる。Moはまた、Sと複合添加することで、鋼の熱的安定性の向上粒成長の抑制に寄与する。Mo含有量が0.5%未満では、これらの効果が十分に得られない。一方、Mo含有量が3.5%を超えると、鋼の被削性が低下する。したがって、Mo含有量は0.5〜3.5%である。Mo含有量の下限は、好ましくは0.8%であり、さらに好ましくは0.9%であり、さらに好ましくは1.0%である。Mo含有量の上限は、好ましくは3.3%であり、さらに好ましくは3.2%である。
Al:0.005〜0.06%
アルミニウム(Al)は、窒化物を形成し、窒化物のピンニング効果によってオーステナイト粒の微細化に寄与する。Alはさらに、MoCの微細化に寄与することが明らかになった。Al含有量が0.005%未満では、この効果が十分に得られない。一方、Al含有量0.06%を超えると、鋼の被削性が低下する。したがって、Al含有量は0.005〜0.06%である。Al含有量の下限は、好ましくは0.01%であり、さらに好ましくは0.02%である。Al含有量の上限は、好ましくは0.055%であり、さらに好ましくは0.05%である。
N:0.001〜0.02%
窒素(N)は、窒化物や炭窒化物を形成し、窒化物や炭窒化物のピンニング効果によってオーステナイト粒の微細化に寄与する。N含有量が0.001%未満では、この効果が十分に得られない。一方、N含有量が0.02%を超えると、鋼の靱性が低下する。したがって、N含有量は0.001〜0.02%である。N含有量の下限は、好ましくは0.0015%であり、さらに好ましくは0.002%である。N含有量の上限は、好ましくは0.015%である。
Nb:0.002〜0.05%
Nb(ニオブ)は、窒化物や炭窒化物を形成し、窒化物や炭窒化物のピンニング効果によってオーステナイト粒の微細化に寄与する。Nb含有量が0.002%未満では、この効果が得られない。一方、Nb含有量が0.05%を超えると、鋼の靱性が低下する。したがって、Nb含有量は0.002〜0.05%である。Nb含有量の下限は、好ましくは0.005%であり、さらに好ましくは0.010%である。Nb含有量の上限は、好ましくは0.045%であり、さらに好ましくは0.04%である。
本実施形態による鋼及び鋼材の化学組成の残部は、Fe及び不純物である。ここでいう不純物は、鋼の原料として利用される鉱石やスクラップから混入する元素、あるいは製造過程の環境等から混入する元素をいう。
[SMo指数]
本実施形態による鋼及び鋼材は、下記式(1)で示されるSMo指数が1.0以上である。
Mo=(S/32×Mo/96)×10・・・式(1)
ここで、式(1)の元素記号には、対応する元素の含有量が質量%で代入される。
MoとSとを複合添加することによって、旧オーステナイト粒を微細化して加工硬化性を向上させることができるとともに、鋼の熱的安定性を向上させることができる。このメカニズムは明らかではないが、Mo含有量及びS含有量のいずれかのみ高い場合ではこの効果が得られないことから、Mo原子とS原子とがクラスタを形成しているのではないかと考えられる。
Mo指数が1.0未満の場合には、旧オーステナイト粒を微細化する効果、又は鋼の熱的安定性を向上する効果が得られず、結果的に焼付きを抑制する効果が得られない。好ましいSMo指数の下限は1.5であり、より好ましくは2.0である。SMo指数の上限は特になく、Mo含有量の最大値の3.5%、S含有量の最大値の0.1%を式(1)に代入した場合の11.4であってもよい。鋼の熱間加工性及び被削性を考慮すると、SMo指数の上限は、6.0とするのが好ましい。
[組織]
本実施形態による鋼材は、好ましくは、少なくともその表層にMoCが析出した組織を有する。
鋼材に表面硬化処理として高周波焼入れが実施される場合、MoCは、高周波焼入れによってマルテンサイトが形成される際の旧オーステナイト粒を微細化し、加工硬化性を向上させる。高周波焼入れでは一般に、鋼の表層だけにマルテンサイトを形成する。そのため、本実施形態による鋼材は、少なくともその表層にMoCが析出していればよい。なお、「表層」とは、鋼材の表面から500μmまでの深さの領域を指す。
鋼材に表面硬化処理として冷間ロール加工が実施される場合、MoCは、冷間ロール加工の際の摩擦熱による転位の回復を抑制し、転位密度の向上に寄与する。この場合も、本実施形態による鋼材は、少なくともその表層にMoCが析出していればよい。
鋼材の、MoCが析出した組織のマトリクスは特に限定されない。組織のマトリクスは例えば、フェライト・パーライト、又は焼戻しマルテンサイトである。
MoCの平均粒子間隔は、好ましくは、1.0μm以下である。MoCの平均粒子間隔が小さいほど、微細なMoCが高密度に析出していることを示す。MoCの平均粒子間隔が1.0μm以下であれば、表面硬化処理として高周波焼入れを実施したときに、マルテンサイトの旧オーステナイト粒をより微細にすることができる。より具体的には、旧オーステナイト粒の平均粒径を5μm以下にすることができる。MoCの平均粒子間隔が1.0μm以下であれば、表面硬化処理として冷間ロール加工を実施したときに、転位密度を高くすることができる。より具体的には、転位密度を1015−2以上にすることができる。MoCの平均粒子間隔は、好ましくは0.5μm以下である。なお、MoCの平均粒子間隔の下限を規定する意味は特にないが、0.05μm程度が実質的な下限である。
MoCの平均粒子間隔は、次のように測定する。
鋼材から、試料を採取する。電界放出型電子線マイクロアナライザ(FE−EPMA)によって、加速電圧15kVで30μm×30μmの領域を0.06μm間隔で500×500点を測定する。Mo濃度が50質量%以上である測定点を1とし、50質量%未満である点を0として二値化して、MoCの2次元分布像を得る。MoCの平均粒子間隔を以下の手順により導出する。
(1)2次元分布像から、単位面積当たりの粒子数Pを測定する。
(2)2次元平面上での平均粒子間隔Δ2を、下式で導出する。
Δ2=0.500P −1/2
(参考文献)佐久間、西澤:日本金属学会報,10,(1971),P.279−289
[摺動部品]
本実施形態による摺動部品は、上述した鋼材から製造され、かつ少なくともその一部に高周波焼入れ又は冷間ロール加工が実施された摺動部品である。そのため、本実施形態による摺動部品は、上述した鋼材と実質的に同じ化学組成を有する。
摺動部品は例えば、クランクシャフトである。
本実施形態による摺動部品は、少なくともその一部に、表面硬化処理として高周波焼入れ又は冷間ロール加工が施されている。高周波焼入れが実施されると、少なくともその表層の組織はマルテンサイトになる。冷間ロール加工が実施されると、少なくともその表層の組織は高転位密度組織になる。
摺動部品は一般に、摺動部分にだけ表面硬化処理が実施される。本実施形態による摺動部品は、摺動部品のあらゆる部分において表層の組織がマルテンサイトや高転位密度組織である必要はなく、少なくとも摺動部分においての表層の組織がマルテンサイトや高転位密度組織であればよい。
[表面硬化処理として高周波焼入れを実施した場合の組織]
表面硬化処理として高周波焼入れが実施された摺動部品は、少なくともその表層の組織がマルテンサイトである。さらに、マルテンサイトの旧オーステナイト粒の平均粒径は、20μm以下である。旧オーステナイト粒の平均粒径が20μmを超えると、十分な加工硬化性が得られない。旧オーステナイト粒の平均粒径は、好ましくは5μm以下である。なお、旧オーステナイト粒の平均粒径の下限を規定する意味は特にないが、1μm程度が実質的な下限である。
マルテンサイトの旧オーステナイト粒の平均粒径は、次のように測定する。
摺動部品から、高周波焼入れした表面と垂直な方向を含む断面が観察面となるように試料を採取する。観察面を研磨し、ピクリン酸でエッチングして旧オーステナイト粒界を現出させる。そして、切片法によって摺動部品の表層の平均粒径を算出する。具体的には、表面から500μmまでの領域を対象とし、全長Lの直線を引き、この直線を横切った結晶粒の数nを求め、切片長さ(L/n)を求める。5本以上の直線について切片長さ(L/n)を求め、その算術平均を平均粒径とする。
[表面硬化処理として冷間ロールを実施した場合の組織]
表面硬化処理として冷間ロール加工が実施された摺動部品は、少なくともその表層の組織が、転位密度が1015−2以上の高転位密度組織である。具体的には、表面から100μm以内の深さの組織が、転位密度が1015−2以上の高転位密度組織である。表層部の転位密度が1015−2未満だと、十分な表層ナノ硬さが得られない。表層部の転位密度は、好ましくは1.5×1015−2以上であり、さらに好ましくは2.0×1015−2以上である。
表層部の転位密度は、次のように測定する。
摺動部品から、冷間ロール加工した面を含む試料を採取し、冷間ロール加工した面を機械研磨及び電解研磨する。Cu−Kαを線源とするX線発生装置を用いて、フェライト相の回折ピークを4点以上測定する。測定した回折ピークは、専用解析ソフトウェアによってバックグラウンドを除去し、Kα1とKα2とに分離する。分離したKα1回折ピークに対して、各回折角θ[rad]における半価幅(半値全幅)Δ2θ[rad]を測定する。なお、半価幅は、LaB(六ホウ化ランタン)の単結晶を用いて装置由来の半価幅を測定し、測定された半価幅から差し引いて補正する。
下記に示すModified Williamson−Hallの式から、転位密度ρ[m−2]を求める。
[0000]
Figure 0006737103
ここで、ΔKFWHM=Δ2θcosθ/λ、K=2sinθ/λ、λはX線の波長(0.154nm)、Dは結晶子サイズ、bはフェライトのバーガースベクトル(0.249nm)、Oは高次項である。
Cは、下記のように結晶異方性を示す定数である。
Figure 0006737103
Mは転位配列を示す無次元の係数であり、ここではM=1とした。
(*)式において、高次項を無視すると、ΔKFHHMとKとは直線関係を示す。ΔKFHHMとKとをプロットすることによって、切片から結晶子サイズDを、傾きから転位密度ρを求めることができる。
[高周波焼入れを実施した場合、及び冷間ロール加工を実施した場合の共通の組織]
本実施形態による摺動部品は、好ましくは、少なくとも表層に炭化物が析出した組織を有し、炭化物の平均長径が10nm以下である。
炭化物の種類は特に限定されないが、例えばMoC及びセメンタイトである。炭化物の平均長径が10nmを超えると、摺動時に摩耗が促進され、結果として耐焼付き性が低下する。なお、炭化物の平均長径の下限を規定する意味は特にないが、1nm程度が実質的な下限である。
炭化物の平均長径は、次のように測定する。
摺動部品から、高周波焼入れ又は冷間ロール加工した表面と垂直な方向を含む断面が観察面となるように試料を採取する。透過電子顕微鏡(TEM)によって、観察面を40000倍及び100000倍で、摺動部品の表面を含むようにそれぞれ5視野観察する。電子線の入射方向は母相フェライト<001>方向とする。視野の大きさは例えば40000倍の場合には2.0μm×1.2μm、100000倍の場合には0.8×0.5μmである。
電子線回折像から、炭化物の種類を特定する。図2A及び図2Bはそれぞれ、MoC及びセメンタイトの析出形態を模式的に示す図である。図2Aに示すように、電子線の入射方向が母相フェライト[100]方向とすれば、MoCの場合は、母相フェライトの[100]方向に延びた棒状の形状を呈する。一方、図2Bに示すように、セメンタイトは、[110]に沿った円盤状である。したがって、明視野画像からMoCとセメンタイトの判別が可能である。これらは、直接、各炭化物の長径を測定する。各視野で炭化物の長径を平均し、さらに10視野の平均をとったものを炭化物の平均長径とする。ただし、平均を求めるにあたって、長径が1nm未満のものは含めない。炭化物であるかどうかの判定が困難なためである。
[製造方法]
以下、本実施形態による鋼材及び摺動部品の製造方法の一例を説明する。本実施形態による鋼材及び摺動部品の製造方法は、これに限定されない。
[鋼材の製造方法]
図3は、本実施形態による鋼材の製造方法の一例を示すフロー図である。この製造方法は、素材を準備する工程(ステップA1)と、素材を加熱する工程(ステップA2)と、加熱された素材を熱間鍛造する工程(ステップA3)と、熱間鍛造された素材を焼入れする工程(ステップA4)と、焼入れされた素材を焼戻しする工程(ステップA5)とを備えている。
まず、上述した化学組成の素材を準備する(ステップA1)。例えば、上述した化学組成の鋼を溶製し、連続鋳造及び分塊圧延によってビレットを製造する。
素材を1000〜1250℃に加熱する(ステップA2)。続いて、加熱された素材を熱間鍛造する(ステップA3)。熱間鍛造によって、素材を摺動部品の粗形状に加工する。熱間鍛造の条件は特に限定されないが、仕上げ温度は例えば900℃である。熱間鍛造後、素材を放冷する。
熱間鍛造された素材を、850℃以上の温度から焼入れする(ステップA4)。より具体的には、熱間鍛造された素材を、850℃以上の温度に加熱した後、油冷又は水冷する。
焼入れされた素材を、500〜650℃の温度で焼戻しする(ステップA5)。保持時間は、例えば5〜60分である。これによって、微細なMoCが析出した組織が得られる。
図4は、本実施形態による鋼材の製造方法の他の例を示すフロー図である。この製造方法は、素材を準備する工程(ステップB1)と、素材を加熱する工程(ステップB2)と、加熱された素材を熱間鍛造する工程(ステップB3)とを備えている。
まず、上述した化学組成の素材を準備する(ステップB1)。例えば、上述した化学組成の鋼を溶製し、連続鋳造及び分塊圧延によってビレットを製造する。
素材を1000〜1250℃に加熱する(ステップB2)。続いて、加熱された素材を熱間鍛造する(ステップB3)。素材を熱間鍛造する工程(ステップB3)は、主鍛造工程(ステップB3−1)と、温間加工工程(ステップB3−2)とを含んでいる。
主鍛造工程(ステップB3−1)の条件は、特に限定されない。温間加工工程(ステップS3−2)は、500〜650℃の温度で、減面率が10%以上の加工を素材に加える。温間加工による歪誘起析出によって、微細なMoCが析出した組織が得られる。なお、主鍛造工程の終了後に続けて温間加工を実施してもよいし、主鍛造工程の終了後に一旦放冷し、500〜650℃の温度に再加熱してから温間加工を実施してもよい。温間加工は、鍛造工程の最終の工程で実施することが好ましい。
[摺動部品の製造方法]
(1)表面硬化処理として高周波焼入れをする場合
図5は、本実施形態による摺動部品の製造方法の一例を示すフロー図である。この製造方法は、鋼材を準備する工程(ステップC1)と、鋼材を切削加工する工程(ステップC2)と、切削加工された鋼材を高周波焼入れする工程(ステップC3)と、高周波焼入れされた鋼材を低温焼戻しする工程(ステップC4)とを備えている。
まず、上述した化学組成及び組織を有する鋼材を準備する(ステップC1)。鋼材は、図3又は図4で例示した製造方法によって製造されたものであってもよいし、それ以外の製造方法によって製造されたものであってもよい。図3又は図4で例示した製造方法は細粒化(析出)処理を含んでいるが、鋼材は、細粒化(析出)処理を含まない製造方法によって製造されたものでもよい。
鋼材は、MoCが析出した組織を有することが好ましい。ただし、MoCが析出した組織を有していることは必須ではない。
鋼材を摺動部品の形状に切削加工する(ステップC2)。なお、摺動部品の形状によっては、切削加工(ステップC2)は実施されなくてもよい。
鋼材を高周波焼入れする(ステップC3)。高周波加熱時の到達温度は850〜1000℃とするのが好ましい。また、焼入れ時の冷却速度は1〜10℃/秒とするのが好ましい。高周波焼入れは、鋼材の一部にのみ実施してもよい。具体的には、摺動部分にのみ高周波焼入れを実施してもよい。
高周波焼入れされた鋼材を、低温焼戻しする(ステップC4)。低温焼戻しの温度は特に限定されないが、例えば150〜200℃である。なお、焼割れの心配がない場合、低温焼戻し(ステップC4)は実施されなくてもよい。
(2)表面硬化処理として冷間ロール加工をする場合
図6は、本実施形態による摺動部品の製造方法の他の例を示すフロー図である。この製造方法は、鋼材を準備する工程(ステップD1)と、鋼材を切削加工する工程(ステップD2)と、切削加工された鋼材を冷間ロール加工する工程(ステップD3)とを備えている。
まず、上述した化学組成及び組織を有する鋼材を準備する(ステップD1)。鋼材は、図3又は図4で例示した製造方法によって製造されたものであってもよいし、それ以外の製造方法によって製造されたものであってもよい。図3又は図4で例示した製造方法は細粒化(析出)処理を含んでいるが、鋼材は、細粒化(析出)処理を含まない製造方法によって製造されたものでもよい。
鋼材は、MoCが析出した組織を有することが好ましい。ただし、MoCが析出した組織を有していることは必須ではない。
鋼材を摺動部品の形状に切削加工する(ステップD2)。なお、摺動部品の形状によっては、切削加工(ステップD2)は実施されなくてもよい。
鋼材に冷間ロール加工を施す(ステップD3)。冷間ロール加工の条件は、最大接触面圧(ヘルツ面圧)が2000〜4000MPa、摺動距離が1000〜2500mとするのが好ましい。冷間ロール加工は、鋼材の一部にのみ実施してもよい。具体的には、摺動部分にのみ冷間ロール加工を実施してもよい。
以上、本発明の実施形態を説明した。本実施形態によれば、耐焼付き性に優れた摺動部品、並びに摺動部品用として好適な鋼及び鋼材が得られる。
上述した実施形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態を適宜変形して実施することが可能である。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されない。
表1に示す化学組成の鋼を150kg真空誘導溶解炉(VIM)によって溶製し、素材とした。各素材を1200〜1250℃に加熱し、50mm角、150mm長さに熱間鍛造して、表2に示す試験番号1〜22の供試材を作製した。なお、表1の「−」は、該当する元素の含有量が不純物レベルであることを示す。
Figure 0006737103
Figure 0006737103
供試材の一部は、細粒化(析出)処理を実施して作製した。表2の「前処理」の欄に「温間加工」と記載されている供試材には、細粒化(析出)処理として、熱間鍛造の最終工程において、600℃で15%の加工を加える温間加工を実施し、50mm角、150mm長さに鍛造した。同欄に「焼入れ焼戻し」と記載されている供試材には、細粒化(析出)処理として、熱間鍛造後、950℃に加熱した後焼入れし、さらに600℃で30分間焼戻しを実施した。同欄に「鍛造まま」と記載されている供試材は、細粒化促進処理を実施せず、熱間鍛造後そのまま室温まで放冷した。
各供試材から、長手方向と垂直な面が観察面となるように試料を採取した。観察面を光学顕微鏡で観察して、組織を特定した。結果を表2の「硬化処理前の組織」の欄に示す。同試料からTEM観察用試料を作成し、観察面の電子線回折像から、炭化物の種類(MoC又はセメンタイト)を特定した。結果を表2の「硬化処理前の炭化物の種類」の欄に示す。全炭化物の個数に対するMoCの個数の割合が10%未満の場合、同欄に「θ」と記載した。全炭化物の個数に対するMoCの個数の割合が10%以上の場合、同欄に「MoC+θ」と記載した。
また、長手方向と垂直な面が観察面となるように試料を採取し、前述の実施形態で説明した方法によって、MoCの平均粒子間隔を求めた。なお、Mo濃度が50質量%以上の粒子がMoCであることを、TEM観察の結果と比較して確認した。結果を表2の「硬化処理前のMoCの平均粒子間隔」の欄に示す。
表2に示すように、細粒化(析出)処理を実施した供試材は、試験番号16を除き、MoCが析出した組織を有していた。試験番号16でMoCが析出しなかったのは、鋼種KのSMo指数が低すぎたためと考えられる。細粒化促進処理を実施しなかった供試材の組織には、いずれもMoCが析出していなかった。
MoCが析出した供試材のうち、試験番号3、9、11、13、及び15は、MoCの平均粒子間隔が1.0μmよりも大きかった。試験番号3の平均粒子間隔が大きかったのは、鋼種BのS含有量が少なすぎたためと考えられる。試験番号9の平均粒子間隔が大きかったのは、鋼種EのS含有量又はNb含有量が少なすぎたためと考えられる。試験番号11の平均粒子間隔が大きかったのは、鋼種FのNb含有量が少なすぎたためと考えられる。試験番号13の平均粒子間隔が大きかったのは、鋼種GのS含有量又はAl含有量が少なすぎたためと考えられる。試験番号15の平均粒子間隔が大きかったのは、鋼種HのAl含有量が少なすぎたためと考えられる。
各供試材に対し、2種類の表面硬化処理の1種類を選択して実施した。具体的には、(1)高周波焼入れ相当の熱処理又は(2)冷間ロール加工を実施した。
(1)高周波焼入れ
試験番号1〜15の供試材に対し、高周波焼入れ相当の熱処理を実施した。具体的には、鍛造材表面から12mm角、60mm長さの試験片を切り出し、各供試材を950℃の到達温度になるまで加熱し、その後、直ちに室温まで2℃/秒の冷却速度で冷却した。これは油冷相当の冷却速度である。高周波焼入れ相当の熱処理を実施した後、各供試材を150〜200℃で低温焼戻しした。
(2)冷間ロール加工
試験番号16〜21の供試材に対し、冷間ロール加工を実施した。具体的には、50mm角、150mm長さの供試材から、図7に示すようなφ50mm、150mm長さの形状に機械加工し、さらにR6.5mmの溝加工を加えた。当該溝部分に、R6のピンからなる冷間ロールで摺動距離2000mの冷間加工を加えた。ロール加工条件は、最大接触面圧(ヘルツ面圧)が3500MPa以上になるように圧延荷重を調整した。
Figure 0006737103
表3の「表面処理」の欄の「IH」は、表面硬化処理として高周波焼入れ相当の熱処理を実施したことを示す。同欄の「CR」は、表面硬化処理として冷間ロール加工を実施したことを示す。
表面硬化処理を実施した各供試材から、寸法:2.7mm×2.0mm×2.0mmのブロックを複数個採取した。この際、表面硬化処理を施した供試材の表面が2.7mm×2.0mmの面となるよう、供試材の表面からブロックを採取した。転位密度測定のためのX線半価幅の測定、並びに後述する摩擦係数の測定、摩耗試験及び摩耗試験後のナノ硬さの測定は、2.7mm×2.0mmの面(以下、「試験面」という。)に対して行うが、この試験面の凹凸を除去するため、ペーパー研磨及びコロイダルシリカを用いた研磨を実施した。さらに、ペーパー研磨及びコロイダルシリカを用いた研磨によって生成した加工層を除去するため、電解研磨を実施した。ペーパー研磨、コロイダルシリカを用いた研磨及び電解研磨によって除去した表面の深さは約3μmであった。
そして、上記研磨後のブロックの試験面と垂直関係にある面を対象として組織の特定、炭化物の特定、旧オーステナイト粒の平均粒径の測定(高周波焼入れ相当の熱処理を実施した供試材のみ)、炭化物の平均長径の測定、ビッカース硬さの測定を行った。
組織の特定、旧オーステナイト粒の平均粒径の測定及びビッカース硬さの測定は、研磨後の試験面から500μmの深さのところを観察対象とした。炭化物の特定及び炭化物の平均長径の測定は、研磨後の試験面を含む視野で行った。組織の特定は、光学顕微鏡で行った。結果を表3の「組織」の欄に示す。炭化物の種類(MoC又はセメンタイト)は、TEM観察用試料を作成し、電子線回折像から特定した。結果を表3の「炭化物の種類」の欄に示す。全炭化物の個数に対するMoCの個数の割合が10%未満の場合、同欄に「θ」と記載した。全炭化物の個数に対するセメンタイトの個数の割合が10%未満の場合、同欄に「MoC」と記載した。上記以外の場合、同欄に「MoC+θ」と記載した。
前述の実施形態で説明した方法によって、旧オーステナイト粒の平均粒径、炭化物の平均長径、及び転位密度を求めた。結果を表3の「旧γ粒径」、「炭化物の平均長径」、及び「転位密度」の欄にそれぞれ示す。これらの欄における「−」は、同測定を実施していないことを示す。さらに、ビッカース硬さを測定した。結果を表3の「ビッカース硬さ」の欄に示す。
各試験片の摩擦係数を測定した。ピンオンディスク型摩擦・摩耗試験機を用い、鋼種Aを用いて試験番号1のブロックと同様の処理をして製造したディスクと、試験番号2〜16のブロックの試験片を互いに接触させて測定した。
図8Aに示すように、2.7mm×2.0mmの面30aを試験面とした。図8Bに示すように、前記試験番号1のディスク50上に、試験片30を0.3MPaの面圧で押しつけたまま、摺動速度0.8m/秒で摺動させた。
図8Cは、摩擦時間と摩擦力との関係を模式的に示すグラフである。図8Cに示すように、摩擦試験において、試験初期、「なじみ」に至るまでに摩擦力は一旦増加するという現象が生じる。その後、「なじみ」が安定すると摩擦力は下がり一定値を示すようになる。本試験では、試験を開始し、摩擦力が一定値を示したのを確認した後、具体的には試験開始後10分後から摩擦力の測定を開始し、その後10分間試験を継続して得られた摩擦力の平均値を動摩擦力Fとした。動摩擦力Fを試験片の法線力(=0.3MPa)で割って動摩擦係数μとした。各試験番号の動摩擦係数μを、試験番号1の動摩擦係数で割った値を、表2の「鋼種Aとの摩擦係数比」の欄に記載した。
表面偏析は、上記の10分間の「なじみ」試験後、すなわち摩擦力が一定値を示す試験開始後10分間で試験中断し、以下の方法で測定した。摩擦試験後の試験片から、表面偏析測定用の試験片を採取した。試験片に対して、オージェ分析装置の中でスパッタリングを実施して試験面の酸化皮膜を除去した。酸化皮膜を除去した試験片に対して、オージェ分光法によってSの偏析量を測定した。結果を表3の「表面のS偏析係数」の欄に示す。同欄の「≧2」は、Sの偏析量が母材のS含有量の2倍以上であったことを示す。同欄の「−」は、Sの偏析量が母材のS含有量の2倍未満であったこと、又はSの偏析量が定量不能であったことを示す。
表3に示すように、高周波焼入れ相当の熱処理を施したブロックの表層の組織は、すべてマルテンサイトであった。表2及び表3に示すように、細粒化(析出)処理が実施されてMoCが析出した試験番号3、5、7、9、11、13、及び15は、旧オーステナイト粒の平均粒径が5μm以下であった。細粒化促進処理が実施されなくても、化学組成が適切であった試験番号4及び6は、旧オーステナイト粒の平均粒径が20μm以下であった。
細粒化(析出)処理が実施された試験番号のうち、MoCの平均粒子間隔が1.0μm以下であった試験番号5及び7は、セメンタイトが析出せず、かつ炭化物の平均長径が10nm未満であった。
冷間ロール加工を施したブロックのうち、化学組成が適切であった試験番号17〜20のブロックは、いずれも表層の組織が、転位密度が1015−2以上の高転位密度組織であった。
S含有量が0.05%以上であり、かつSMo指数が1.0以上であった試験番号4〜7、10,11,14、15、及び17〜20の摩擦係数は、試験番号1の90%以下であった。さらに、他の元素の含有量も適切であった試験番号4〜7及び17〜20の摩擦係数は、試験番号1の80%以下であった。また、試験番号4〜7、14、15、及び17〜20の摩擦係数は、Sの表面偏析量が母材の2倍以上であった。なお、試験番号10、11は摩擦試験中に表層に剥離が生じ、Sの表面偏析の定量が不可能であった。
[耐焼付き性評価]
長時間摺動後のナノ硬さを評価するため、以下に説明するように、各ブロックに対して摩耗試験を実施し、摩耗試験後のナノ硬さを測定した。
摩擦係数の測定の際に採取した試験片と同寸法の試験片を用いて、図9に示すピンオンディスク型摩耗試験を実施した。
ピンオンディスク型摩耗試験は、より具体的には、次のように実施した。ピンオンディスク試験機の回転ディスク10の表面に、800番のエメリーペーパー20を貼り付けた。そして、エメリーペーパー20にブロックである試験片30の試験面30aを0.3MPaの面圧で押しつけたまま、摺動距離が2000mになるように回転ディスク10を回転させた。
上記の試験を、エメリーペーパー20に潤滑油(5W−20、油温:130℃)を塗布した環境(潤滑環境)、及び潤滑油を塗布しない環境(無潤滑環境)の2通りの環境で実施した。
摩耗試験後、試験面のナノ硬さをナノインデテーション法によって測定した。潤滑環境及び無潤滑環境の両方において、試験面から20nm以内の位置におけるナノ硬さ(以下、「表層ナノ硬さ」という。)が14GPa以上になることを目標とした。
ナノ硬さの測定は、Agilent Technology社製ナノインデンター、XP/DCM型を用いた。図10に示すように、ナノインデンターの探針40を試験片30の試験面30aに接触させて測定した。より具体的には、ダイアモンド製のバーコビッチ型針を試験面30aに連続剛性方式(CSM式)で押し込んだ。連続剛性方式の条件は、振動数を45Hz、振幅を2nm、押し込み深さを250nmとした。
試験番号1〜5の、摩耗試験後のナノ硬さの分布を、図11A〜図11Eにそれぞれ示す。
図11Aに示すように、試験番号1は、潤滑環境に比べ、無潤滑環境の場合には、ナノ硬さが大きく低下していた。これは、鋼種AのMn含有量が高いため、熱伝導率が低く、摩擦熱の影響が大きかったためと考えられる。
図11B及び図11Cに示すように、試験番号2及び3は、潤滑環境と無潤滑環境との差は小さいものの、全体的にナノ硬さが低く、14GPa未満であった。これは、鋼種BのS含有量が低く熱的安定性が低かったため、又は摩擦係数が大きかったためと考えられる。
図11D及び図11Eに示すように、試験番号4及び5は、ナノ硬さが高く、かつ潤滑環境と無潤滑環境との差が小さかった。さらに、潤滑環境及び無潤滑環境の両方において、表層ナノ硬さが14GPa以上であった。
試験番号1〜22の表層ナノ硬さを、表4及び図10に示す。
Figure 0006737103
試験番号4〜7、及び17〜20は、潤滑環境及び無潤滑環境の両方において、摺動後の表層ナノ硬さが14GPa以上であった。これらは、優れた耐焼付き性を備えていると考えられる。
試験番号1、2、8、10、12、及び14は、潤滑環境及び無潤滑環境の両方において、摺動後の表層ナノ硬さが14GPa未満であった。これらは、旧オーステナイト粒が粗大であるとともに、針状又は板状の粗大なセメンタイトが析出したため、摺動によって摩耗が促進されたと考えられる。
試験番号3、9、11、13、15及び16は、潤滑環境及び無潤滑環境の両方において、摺動後の表層ナノ硬さが14GPa未満であった。これらは、旧オーステナイト粒は微細であったものの、摩擦係数が高かったため、摩耗が促進されたと考えられる。
試験番号21及び22は、潤滑環境及び無潤滑環境の両方において、摺動後の表層ナノ硬さが14GPa未満であった。試験番号21は、MoCを含有しない鋼材からなるため転位密度が低い。試験番号21、22はSの含有量が低く、表層のS偏析量が少ないため摩擦係数が高く、摺動部の温度が上がることで転位密度が低下する。さらに試験番号21はMoCを含まないため、転位の回復が促進される。したがって、転位密度が低かったため、摺動による摩耗が促進されたと考えられる。

Claims (8)

  1. 摺動部品用鋼であって、
    化学組成が、質量%で、
    C :0.35〜0.6%、
    Si:0.50%未満、
    Mn:0.70%未満、
    P :0.02%以下、
    S :0.05〜0.1%、
    Mo:0.5〜3.5%、
    Al:0.005〜0.06%、
    N :0.001〜0.02%、
    Nb:0.002〜0.05%、
    残部:Fe及び不純物であり、
    下記式(1)で示されるSMo指数が1.0以上である、摺動部品用鋼。
    Mo=(S/32×Mo/96)×10・・・式(1)
    ここで、式(1)の元素記号には、対応する元素の含有量が質量%で代入される。
  2. 摺動部品用鋼材であって、
    化学組成が、質量%で、
    C :0.35〜0.6%、
    Si:0.50%未満、
    Mn:0.70%未満、
    P :0.02%以下、
    S :0.05〜0.1%、
    Mo:0.5〜3.5%、
    Al:0.005〜0.06%、
    N :0.001〜0.02%、
    Nb:0.002〜0.05%、
    残部:Fe及び不純物であり、
    下記式(1)で示されるSMo指数が1.0以上であり、
    前記鋼材の少なくとも表層にMoCが析出した組織を有し、
    前記MoCの平均粒子間隔が1.0μm以下である、摺動部品用鋼材。
    Mo=(S/32×Mo/96)×10・・・式(1)
    ここで、式(1)の元素記号には、対応する元素の含有量が質量%で代入される。
  3. 摺動部品であって、
    化学組成が、質量%で、
    C :0.35〜0.6%、
    Si:0.50%未満、
    Mn:0.70%未満、
    P :0.02%以下、
    S :0.05〜0.1%、
    Mo:0.5〜3.5%、
    Al:0.005〜0.06%、
    N :0.001〜0.02%、
    Nb:0.002〜0.05%、
    残部:Fe及び不純物であり、
    下記式(1)で示されるSMo指数が1.0以上であり、
    前記摺動部品の少なくとも表層の組織はマルテンサイトであり、
    前記マルテンサイトの旧オーステナイト粒の平均粒径が20μm以下である、摺動部品。
    Mo=(S/32×Mo/96)×10・・・式(1)
    ここで、式(1)の元素記号には、対応する元素の含有量が質量%で代入される。
  4. 請求項3に記載の摺動部品であって、
    前記マルテンサイトの旧オーステナイト粒の平均粒径が5μm以下である、摺動部品。
  5. 摺動部品であって、
    化学組成が、質量%で、
    C :0.35〜0.6%、
    Si:0.50%未満、
    Mn:0.70%未満、
    P :0.02%以下、
    S :0.05〜0.1%、
    Mo:0.5〜3.5%、
    Al:0.005〜0.06%、
    N :0.001〜0.02%、
    Nb:0.002〜0.05%、
    残部:Fe及び不純物であり、
    下記式(1)で示されるSMo指数が1.0以上であり、
    前記摺動部品の少なくとも表層の組織は、転位密度が1015−2以上の高転位密度組織である、摺動部品。
    Mo=(S/32×Mo/96)×10・・・式(1)
    ここで、式(1)の元素記号には、対応する元素の含有量が質量%で代入される。
  6. 請求項4又は5に記載の摺動部品であって、
    前記摺動部品の少なくとも表層に炭化物が析出した組織を有し、
    前記炭化物の平均長径が10nm以下である、摺動部品。
  7. 請求項2に記載の摺動部品用鋼材の製造方法であって、
    化学組成が、質量%で、C:0.35〜0.6%、Si:0.50%未満、Mn:0.70%未満、P:0.02%以下、S:0.05〜0.1%、Mo:0.5〜3.5%、Al:0.005〜0.06%、N:0.001〜0.02%、Nb:0.002〜0.05%、残部:Fe及び不純物であり、下記式(1)で示されるSMo指数が1.0以上である素材を準備する工程と、
    前記素材を1000〜1250℃に加熱する工程と、
    前記加熱された素材を熱間鍛造する工程と、
    前記熱間鍛造された素材を850℃以上の温度から焼入れする工程と、
    前記焼入れされた素材を500〜650℃の温度で焼戻しする工程とを備える、摺動部品用鋼材の製造方法。
    Mo=(S/32×Mo/96)×10・・・式(1)
    ここで、式(1)の元素記号には、対応する元素の含有量が質量%で代入される。
  8. 請求項2に記載の摺動部品用鋼材の製造方法であって、
    化学組成が、質量%で、C:0.35〜0.6%、Si:0.50%未満、Mn:0.70%未満、P:0.02%以下、S:0.05〜0.1%、Mo:0.5〜3.5%、Al:0.005〜0.06%、N:0.001〜0.02%、Nb:0.002〜0.05%、残部:Fe及び不純物であり、下記式(1)で示されるSMo指数が1.0以上である素材を準備する工程と、
    前記素材を1000〜1250℃に加熱する工程と、
    前記加熱された素材を熱間鍛造する工程とを備え、
    前記熱間鍛造する工程は、500〜650℃の温度において減面率が10%以上の加工を前記素材に加える温間加工工程を含む、摺動部品用鋼材の製造方法。
    Mo=(S/32×Mo/96)×10・・・式(1)
    ここで、式(1)の元素記号には、対応する元素の含有量が質量%で代入される。
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