JP6736782B2 - 接合用組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、接合用組成物に関する。
従来、金属部品と金属部品とを機械的、電気的及び/又は熱的に接合するために、接合材が用いられている。上記接合材としては、例えば、はんだ、導電性接着剤、銀ペースト、異方導電性フィルム等が挙げられる。これらの接合材は、金属部品同士の接合だけではなく、金属部品と、セラミック部品、樹脂部品等との接合にも用いられることがある。例えば、近年、発光ダイオード(LED)等の発光素子、半導体チップ等を基板に接合する用途や、これらの基板を更に放熱部材に接合する用途に接合材が用いられることがある。
LED等の発光素子を備えた高輝度の照明デバイスや発光デバイス、パワーデバイスと言われる高温で高効率の動作をする半導体素子を備えた半導体デバイス等は、デバイス使用時の駆動温度が高い傾向にある。はんだは、これらのデバイスの駆動温度よりも融点が低いため、LED等の発光素子、半導体チップ等の接合には適さない。更に、近年、環境保全や「電気・電子機器に含まれる特定有害物質の使用制限に関する欧州議会及び理事会指令」(RoHS)の規制の観点から、鉛を含まない接合材が求められている。
耐熱性が高く、鉛を含有しない新たな接合材として、金属ナノ粒子を含有する接合材料が検討されている(例えば、特許文献1〜9等参照)。
特許文献1には、銀粒子からなる固形分と溶剤とを混練してなる金属ペーストにおいて、前記固形分が、粒径100〜200nmの銀粒子を粒子数基準で30%以上含む銀粒子で構成されており、固形分を構成する銀粒子全体の平均粒径が、60〜800nmであり、更に、固形分を構成する銀粒子は、保護剤として炭素数の総和が4〜8のアミン化合物が結合しており、TG−DTA分析における銀粒子の焼結に起因する発熱ピークが200℃未満で発現する金属ペーストが開示されている。
特許文献2には、一次粒子の粒度分布が、粒径20〜700nmの範囲内の第1ピークと、粒径200〜500nmの範囲内の第2ピークとを有する銀粉を含む接合材であって、従来の加熱温度よりも低温の加熱処理であっても高いシェア強度を有する接合層を形成することが可能で、長時間保存でも増粘しにくく、保存安定性が高い接合材とこれを用いた接合体の製造方法が開示されている。
特許文献3には、銅粒子と、銅粒子を被覆する複数の銀微粒子とを備え、銀微粒子の表面の少なくとも一部は、大気圧下における沸点が70〜300℃であるアミン化合物で被覆され、銀微粒子の粒子径が1〜500nmである、複合粒子が開示されている。そして、このような複合粒子は300℃未満の加熱により焼結するため、複合粒子同士は、その表面で銀の金属結合を形成し、複合粒子と被着体との界面では、金属結合や金属拡散が発生し、接合強度も高いものとなり、その結果、半導体部材(半導体素子、半導体素子搭載用支持部材)との接着性に優れ、接着信頼性の高い焼結体が得られることが開示されている。
特許第5795096号公報 特開2017−106086号公報 特開2016−129101号公報 特開2015−232181号公報 国際公開第2013/108408号 特開2014−74132号公報 特開2011−94223号公報 特開2008−161907号公報 特開2011−175871号公報
従来、金属ナノ粒子を用いた接合では、300〜350℃の不活性雰囲気下で加圧しながら接合を行うことがあった。また、LED等の発光素子、半導体チップ等の接合では、接合時におけるこれらのデバイスの損傷を防ぐ観点からは、300℃未満の焼成温度で焼結できることが望ましい。
近年、LED等の発光素子、半導体チップ等を備えたデバイスには、出力を高める要請があり、高集積化したり、投入電力を増大したりすることがある。そのため、これらのデバイスの駆動温度はより高くなり、接合材の使用環境がより過酷になる傾向にあるため、LED等の発光素子、半導体チップ等の接合には、高い接合強度及び耐熱信頼性が求められる。
上記特許文献1〜9には、金属粒子を含有する金属ペーストが開示されており、比較的低温で、加圧を行わなくとも接合強度が得られること等が開示されている。しかしながら、さらに高い接合強度を実現するためには、更なる検討の余地があった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、比較的低温でも、加圧することなく接合することができ、優れた接合強度、及び、優れた耐熱信頼性が得られる接合用組成物を提供する。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、比較的低温で加圧することなく焼成する工程を経て、優れた接合強度、及び、優れた耐熱信頼性を有する接合材を得るためには、特定の第一級アミンに被覆された平均粒径の異なる2種類の銀微粒子を用い、さらに、分散媒として不飽和炭化水素を含むことが、上記目的を達成するうえで極めて有効であることを見出し、本発明に到達した。
本発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
すなわち、本発明は、第一級アミンで被覆されている銀微粒子と、分散媒とを含有する接合用組成物であって、上記第一級アミンは、炭素数が4〜12、かつ、沸点が300℃以下であり、上記銀微粒子は、平均粒径が45〜75nmである第一の銀微粒子と、平均粒径が200〜550nmである第二の銀微粒子とを含み、上記分散媒は、不飽和炭化水素を含むことを特徴とする。
上記第二の銀微粒子は、上記第一の銀微粒子とは異なる銀錯化合物から形成されたものであることが好ましい。
上記第一の銀微粒子と上記第二の銀微粒子との重量比率は、4:6〜7:3であることが好ましい。
上記分散媒は、水酸基を有する有機溶剤を少なくとも含むことが好ましい。
上記不飽和炭化水素は、リシノール酸であることが好ましい。
上記接合用組成物は、高分子分散剤を含まないことが好ましい。
上記接合用組成物を275℃で加熱焼成して得られる接合層の空隙率が10%以下であることが好ましい。
本発明によれば、比較的低温でも、加圧することなく接合することができ、空隙率が低く、優れた接合強度、及び、優れた耐熱信頼性が得られる接合用組成物を提供することができる。
本発明の接合用組成物は、第一級アミンで被覆されている銀微粒子と、分散媒とを含有する接合用組成物であって、上記第一級アミンは、炭素数が4〜12、かつ、沸点が300℃以下であり、上記銀微粒子は、平均粒径が45〜75nmである第一の銀微粒子と、平均粒径が200〜550nmである第二の銀微粒子とを含み、上記分散媒は、不飽和炭化水素を含むことを特徴とする。
なお、本明細書で示す沸点とは、1気圧(大気圧下)での値である。
上記第一級アミンは、銀微粒子の表面の少なくとも一部に結合し、コロイドを形成する成分である。上記第一級アミンは、銀微粒子の表面の全てを被覆する必要はなく、コロイドを形成できる程度に、銀微粒子の表面の少なくとも一部を被覆していればよい。上記第一級アミンに被覆されていることで、本発明の接合用組成物中における上記銀微粒子の分散安定性を向上させ、凝集を防ぐことができる。一方、本発明の接合用組成物を焼成する際に、上記第一級アミンが残存していると、銀微粒子同士の融着を阻害するため、焼成時には蒸発又は分解する観点から、上記第一級アミンは、比較的低温でも、銀微粒子の表面から離脱しやすいアミンであることが好ましい。
従って、上述の観点から、本発明の銀微粒子を被覆する上記第一級アミンは、炭素数が4〜12、かつ、沸点が300℃以下のものである。このような第一級アミンであれば、特に限定されず、直鎖状であっても分鎖状であってもよく、また、側鎖を有していてもよい。
具体的には、例えば、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン等のジアミン;ペンタノールアミン、アミノイソブタノール等のアミノアルコール;ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン等のアルキルアミン(直鎖状アルキルアミン、側鎖を有していてもよい。);シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン等のシクロアルキルアミン;3−メトキシプロピルアミン等のアルコキシアミン;ジグリコールアミン;アニリン;アリルアミン等が挙げられる。なお、上記第一級アミンの炭素数とは、主鎖及び側鎖の炭素数の合計である。
上記第一級アミンは、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、カルボニル基、エステル基、メルカプト基等の、アミン以外の官能基を含む化合物であってもよい。また、上記第一級アミンは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記第一級アミンは、比較的低温でも銀微粒子の表面から離脱しやすい観点から、沸点が300℃以下とされ、250℃以下であることが好ましい。
より低温で銀微粒子の表面から離脱するアミンを用いることで、本発明の接合用組成物を焼成する際に、銀微粒子同士の融着をより促進することができる。
本発明の接合用組成物は、銀微粒子として、平均粒径が45〜75nmの第一の銀微粒子と、平均粒径が200〜550nmである第二の銀微粒子とを含む。すなわち、本発明の接合用組成物は、銀微粒子の分布を測定したときに、粒径45〜75nmの範囲内に第一のピークを有し、かつ粒径200〜550nmの範囲内に第二のピークを有する。上記第一の銀微粒子は平均粒径が45〜75nmであるため、比表面積が大きく、単位重量あたりの被覆する第一級アミン量も多くなる。そのため、焼成時の体積収縮が大きくなり、接合後にクラックやボイドが発生しやすくなる傾向にある。一方、上記第二の銀微粒子は平均粒径が200〜550nmであるため、比表面積が小さく、単位重量あたりの被覆する第一級アミン量は少なくなる。よって、焼成時の体積収縮が小さく、接合後にクラックやボイドが発生しにくくなる傾向にある。このような上記第一の銀微粒子と上記第二の銀微粒子とを併用することで、焼成時の体積収縮を抑え、クラックやボイドを生じ難くすることができ、より密度の高い焼結体を得ることができる。
ここで、融点の高い貴金属類について、微粒子化することにより、量子サイズ効果、すなわち、ナノ粒子化によって発現する量子力学的な効果によって融点が大幅に低下することが一般的に知られている。よって、本発明の接合用組成物について、できるだけ低い温度での焼成を実現させるには、接合用組成物に含まれる銀微粒子の平均粒径を小さくすることが重要であると考えられている。
上記第二の銀微粒子は、上記第一の銀微粒子と比べると、平均粒径が大きく、上述のようなサイズ効果の影響が小さくなり焼成温度は高温になってしまうため、被接合体と接合しにくくなる傾向にあるが、上記第一の銀微粒子と上記第二の銀微粒子とを併用することで、焼成温度を比較的低温に抑えることができる。
すなわち、本発明の接合用組成物は、銀微粒子として、上記第一の銀微粒子と上記第二の銀微粒子とを含むことで、比較的低温度での焼成を実現しながら、接合後の焼結体でのクラックやボイドの発生を抑制し、空隙率が低くより密度が高い、優れた接合強度を有する焼結体を得ることができる。
上記第一の銀微粒子の平均粒径は、45〜75nmである。本発明の接合用組成物は、300℃を超える焼成温度でも金属粒子同士を焼結させることができるが、平均粒径が45〜75nmの上記第一の銀微粒子を含むことにより、融点降下が生じ、比較的低温(例えば、300℃以下、好ましくは275℃程度)でも金属粒子同士を焼結させることができる。また、接合用組成物中の金属粒子の分散性を経時的に変化し難くすることができる。上記第一の銀微粒子の平均粒径が45nm未満であると、銀微粒子の比表面積が大きくなることに起因して、接合用組成物の粘度が高くなり、取り扱い性が低下する。また、銀微粒子の表面を第一級アミンで被覆する場合に、上記第一級アミンの成分量が増加し、焼成後に有機物が残留して、焼結体の密度が低下するため、接合強度が低下する。一方、上記第一の銀微粒子の平均粒径が75nmを超えると、融点降下が生じ難くなり、比較的低温で銀微粒子同士が焼結し難くなる。上記第一の銀微粒子の平均粒径の好ましい下限は47nmであり、好ましい上限は72nmである。
上記第二の銀微粒子の平均粒径は、200〜550nmである。上記第二の銀微粒子の平均粒径が200nm未満であると、銀微粒子の比表面積が大きくなることに起因して、被覆する第一級アミンの量が増加し、焼成時の収縮が大きくなり、全体の体積収縮を充分に抑制できないことがある。すなわち、接合後の焼結体にクラックやボイドが発生しやすくなる場合がある。また、第二の銀微粒子の表面を被覆する上記第一級アミンの量が増加し、焼成後に有機物が残留して、焼結体の密度が低下し、接合強度の低下を招く恐れが生じる。一方、上記第二の銀微粒子の平均粒径が550nmを超えると、本発明の接合用組成物を被接合部材同士で挟んだ際に、粒径の大きい金属粒子によって隙間が生じ、接合強度が低下する場合がある。上記第二の金属粒子の平均粒径の好ましい下限は240nmであり、好ましい上限は450nmである。
本明細書中、「平均粒径」とは、銀微粒子の一次平均粒径であり、数平均粒径をいう。上記数平均粒径は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)(例えば、日立ハイテクノロジーズ社製のS−4800型)を用いて得られた画像を、画像処理ソフト(例えば、WinROOF、MITANI CORPORATION製)を用いて算出することができる。
本発明において、上記第二の銀微粒子は、上記第一の銀微粒子とは異なる銀錯化合物から形成されたものであることが好ましい。異なる銀錯化合物から形成されることで、第一及び第二の銀微粒子の表面を被覆する第一級アミン量が異なり、両者を焼成する際の体積収縮が異なる銀微粒子を得ることができる。すなわち、上記第一及び第二の銀微粒子は、異なる銀錯化合物から形成されることにより、平均粒径を異なるものとすることができる。
なお、銀微粒子の固形分中の上記第一の銀微粒子を被覆する第一級アミン量は0.5重量%以上3.0重量%以下であることが好ましく、上記第二の銀微粒子を被覆する第一級アミン量は0重量%より大きく0.5重量%未満であることが好ましい。
本発明における銀微粒子は、上記第一の銀微粒子と上記第二の銀微粒子とを、4:6〜7:3の重量比率で含むことが好ましい。これにより、低温焼結性を実現しつつ、接合強度をより向上させることができる。上記第一の銀微粒子の重量が、上記第二の銀微粒子60重量部に対して40重量部未満であると、接合用組成物中の平均粒径が45〜75nmである第一の銀微粒子の割合が低くなり、比較的低温において銀微粒子同士が焼結し難くなることがある。一方、上記第一の銀微粒子の重量が、上記第二の銀微粒子30重量部に対して70重量部を超えると、焼成時の体積収縮が大きくなり、焼結体にクラックやボイドが生じ易くなるため、接合強度が低下する傾向にある。上記第一の銀微粒子の重量よりも上記第二の銀微粒子の重量が多くなると、接合用組成物の流動性が低下し取り扱い性が低下する一方で、重量減少率は低下する傾向があるため、上記第一の銀微粒子と上記第二の銀微粒子との重量比率は、取り扱い性と重量減少率とのバランスを考慮して決定することができる。
なお、接合用組成物における第一級アミンの全含有量は、0.1〜15重量%であるのが好ましい。上記第一級アミン成分の全含有量が0.1重量%以上であれば、得られる接合用組成物の導電性が良くなる傾向があり、15重量%以下であれば、接合用組成物の分散安定性が良い傾向がある。上記第一級アミンの全含有量のより好ましい下限は0.2重量%であり、より好ましい上限は5重量%であり、更に好ましい下限は0.3重量%であり、更に好ましい上限は4重量%である。上記第一級アミンの全含有量は、熱重量分析により測定することができる。
本発明の接合用組成物は、分散媒を含有する。分散媒を含有することで、接合用組成物の粘度を調整し、取り扱い性を良好なものとすることができる。
なお、本発明の接合用組成物は、分散媒として、上記第一の銀微粒子を被覆する第一級アミン及び上記第二の銀微粒子を被覆する第一級アミンを含まないことが好ましい。分散媒として、上記第一及び第二の銀微粒子と同じ有機成分を含む場合、相溶性が得られるため銀微粒子の分散性が向上する傾向にあるが、被覆していない状態では揮発性が高く、接合用組成物として安定性がない場合があるためである。
上記分散媒は、不飽和炭化水素を含む。これにより本発明の接合用組成物中の固形分である銀微粒子が分散媒中に分散し、上記接合用組成物全体に対する上記分散媒の含有量が少ない場合においても、ペースト状とすることが可能となる。これにより、本発明の接合用組成物のハンドリング性が容易になる。
上記不飽和炭化水素としては、例えば、アセチレン、ベンゼン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−ビニルシクロヘキセン、テルペン系アルコール、アリルアルコール、オレイルアルコール、2−パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、チアンシ酸、リシノール酸、リノール酸、リノエライジン酸、リノレン酸、アラキドン酸、アクリル酸、メタクリル酸、没食子酸及びサリチル酸等が挙げられる。
なかでも、水酸基を有する不飽和炭化水素が好ましい。水酸基は銀微粒子の表面に配位しやすく、当該銀微粒子の凝集を抑制することができる。水酸基を有する不飽和炭化水素としては、例えば、テルペン系アルコール、アリルアルコール、オレイルアルコール、チアンシ酸、リシノール酸、没食子酸及びサリチル酸等が挙げられる。好ましくは、水酸基を有する不飽和脂肪酸であり、例えば、チアンシ酸、リシノール酸、没食子酸及びサリチル酸等が挙げられる。
上記不飽和炭化水素はリシノール酸であることが好ましい。リシノール酸はカルボキシル基とヒドロキシル基とを有し、銀微粒子の表面に吸着して当該銀微粒子を均一に分散させると共に、銀微粒子の融着と被接合体への接合とを促進する。
本発明の接合用組成物における分散媒全体に対する上記不飽和炭化水素の含有量は、0.1重量%以上、2.0重量%以下であることが好ましい。上記分散媒中の上記不飽和炭化水素の含有量が、0.1重量%未満であると、分散媒に対する銀微粒子の分散性が悪くなる可能性があり、2.0重量%を超えると、銀微粒子の焼結を妨げる問題を生じる可能性がある。
上記不飽和炭化水素の含有量は、0.2重量%以上1.5重量%以下であることがより好ましい。
上記分散媒としては、本発明の効果を損なわない範囲で種々のものを使用可能であり、例えば、水又は有機溶剤を用いることができる。上記有機溶剤としては、例えば、炭化水素(但し、上記不飽和炭化水素を除く)、アルコール及びエーテル等が挙げられる。
上記炭化水素としては、脂肪族炭化水素、環状炭化水素及び脂環式炭化水素等が挙げられ、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記脂肪族炭化水素としては、例えば、テトラデカン、オクタデカン、ヘプタメチルノナン、テトラメチルペンタデカン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、トリデカン、メチルペンタン、ノルマルパラフィン、イソパラフィン等の飽和又は不飽和脂肪族炭化水素が挙げられる。
上記環状炭化水素としては、例えば、トルエン、キシレン等が挙げられる。
上記脂環式炭化水素としては、例えば、リモネン、ジペンテン、テルピネン、ターピネン(テルピネンともいう。)、ネソール、シネン、オレンジフレーバー、テルピノレン、ターピノレン(テルピノレンともいう。)、フェランドレン、メンタジエン、テレベン、ジヒドロサイメン、モスレン、イソテルピネン、イソターピネン(イソテルピネンともいう。)、クリトメン、カウツシン、カジェプテン、オイリメン、ピネン、テレビン、メンタン、ピナン、テルペン、シクロヘキサン等が挙げられる。
上記アルコールは、OH基を分子構造中に1つ以上含む化合物であり、脂肪族アルコール、環状アルコール及び脂環式アルコールが挙げられ、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、OH基の一部は、本発明の効果を損なわない範囲でアセトキシ基等に誘導されていてもよい。
上記脂肪族アルコールとしては、例えば、ヘプタノール、オクタノール(1−オクタノール、2−オクタノール、3−オクタノール等)、デカノール(1−デカノール等)、トリデカノール(イソトリデカノール等)、ラウリルアルコール、テトラデシルアルコール、セチルアルコール、2−エチル−1−ヘキサノール、オクタデシルアルコール、ヘキサデセノール、オレイルアルコール等の炭素数が6〜30の飽和又は不飽和脂肪族アルコール等が挙げられる。
上記環状アルコールとしては、例えば、クレゾール、オイゲノール等が挙げられる。更に、脂環式アルコールとしては、例えば、シクロヘキサノール等のシクロアルカノール;テルピネオール(α、β、γ異性体、又はこれらの任意の混合物を含む。)、ジヒドロテルピネオール等のテルペンアルコール(モノテルペンアルコール等);ジヒドロターピネオール;ミルテノール;ソブレロール;メントール;カルベオール;ペリリルアルコール;ピノカルベオール;ソブレロール;ベルベノール等が挙げられる。
上記エーテルとしては、例えば、ヘキシルエーテル、ブチルカルビトール、ヘキシルカルビトール、ジプロピレングリコール−n−ブチルエーテル、テルソルブTHA−90、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テルソルブTOE−100、ブチルカルビトールアセテート、トリエチレングリコールメチルエーテルアセテート等が挙げられる。
上記分散媒は、水酸基(OH基)を有する有機溶剤を少なくとも含むことが好ましい。水酸基を有する有機溶剤としては、上述のアルコール、上述の炭化水素の中でも水酸基を有するもの、及び、上述のエーテルの中でも水酸基を有するものが挙げられる。分散媒として水酸基を有する有機溶剤を少なくとも含むことで、銀微粒子との相溶性と揮発性とを両立できるためである。
銀微粒子との相溶性と揮発性とを両立する観点から、水酸基を有するエーテルを有機溶剤として用いることが好ましく、ヘキシルカルビトール等が挙げられる。
また、分散媒全体に対する上記水酸基を有する有機溶剤の含有量は、50重量%以上、99重量%以下であることが好ましい。上記分散媒中の上記有機溶剤の含有量が、50重量%未満であると、分散媒に対する銀微粒子の分散性が悪くなる可能性があり、99重量%を超えると、接合性が悪化する問題を生じる可能性がある。
上記水酸基を有する有機溶剤の含有量は、60重量%以上98重量%以下であることがより好ましい。
本発明の接合用組成物全体に対する上記分散媒の含有量は、6重量%以上、15重量%以下であることが好ましい。上記分散媒の含有量が6重量%未満であると、接合用組成物のせん断粘度が高すぎるため取り扱い性が悪く、被接合部材に塗工し難くなる。一方で、上記分散媒の含有量が、15重量%を超えると、25℃から550℃までの熱分析による重量減少率が増大する。また、接合用組成物中の銀微粒子の含有量が少なくなるため、焼結体の密度が低くなり、充分な接合強度が得られない場合がある。
また、上記分散媒は、沸点が250℃以上であることが好ましい。このような分散媒を含む接合用組成物は、印刷中や塗布後等において、常温で乾燥することがなく、取扱性に優れるためである。また、上記分散媒は、常温において液体であることが好ましい。
上記分散媒は、上述の観点から、上記炭化水素、上記アルコール及び上記エタノールが1つ以上選択されたものであることが好ましく、特に、ヘキシルカルビトール(沸点258℃)及びブチルカルビトールアセテート(沸点245℃)を含み、沸点が250℃以上であることが好ましい。
更に、本発明の接合用組成物は、高分子分散剤を含有しないことが好ましい。高分子分散剤は、300℃以下の焼成では焼成後も接合層に残り易く、焼結を阻害し、接合信頼性に悪影響を及ぼす可能性があるためである。
本発明の接合用組成物を275℃で加熱焼成して得られる接合層の空隙率は、10%以下であることが好ましい。また、加圧されることなく、275℃で加熱焼成して得られる接合層の空隙率が10%以下であることが好ましい。このような状態であることにより耐熱信頼性という観点で、線膨張係数の違いによるひずみに対してクラックの進展が遅くなるためである。
本発明の接合用組成物が用いられる被接合体は、Au、Ag、Cu等が挙げられ、無垢のCuを好適に用いることができる。なお、被接合体として無垢のCuを用いる場合、接合するためには表面酸化膜を除去しなければならないという課題を生じる。そのため、本発明の接合用組成物は、分散媒としてリシノール酸のようなカルボン酸を含む不飽和炭化水素を含有することが好ましい。カルボン酸は銅表面の酸化膜を除去する効果があり、銅表面に無加圧接合する際に有効であるためである。
また、本発明の接合用組成物は、大気雰囲気又は不活性雰囲気下で加熱焼成されるものであるが、被接合体として無垢のCuを用いる場合、不活性雰囲気下で加熱焼成されるものであることが好ましい。
接合層(焼結体ともいう)を形成する際の雰囲気が、大気雰囲気という酸素を含む酸化雰囲気である場合、接合力に悪影響を及ぼす可能性のある、被接合体との界面部の酸化膜形成が懸念される。Au、Agを用いる場合は酸化膜をほとんど形成しないが、無垢のCuを用いる場合、こうした影響が顕著になる傾向があると考えられる。したがって、こうした影響を排除できうる窒素を初めとした不活性雰囲気下で加熱焼成されるものであることが好ましい。なお、本発明の接合用組成物は、不活性雰囲気下での加熱焼成においても、充分な接合強度を発揮するものである。
本発明の接合用組成物は、上記の成分に加えて、本発明の効果を損なわない範囲で、使用目的に応じた適度な粘性、密着性、乾燥性又は印刷性等の機能を付与するために、例えば、バインダーとしての役割を果たすオリゴマー成分、樹脂成分、有機溶剤(固形分の一部を溶解又は分散していてよい。)、増粘剤、界面活性剤又は表面張力調整剤等の任意成分を添加してもよい。かかる任意成分としては、特に限定されない。
上記樹脂成分としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂(例えば、ブロックドイソシアネートを用いたもの)、ポリアクリレート系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、メラミン系樹脂又はテルペン系樹脂等を挙げることができ、これらはそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記有機溶剤としては、上記の分散媒として挙げられたものを除き、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、2−プロピルアルコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1−エトキシ−2−プロパノール、2−ブトキシエタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、重量平均分子量が200以上1,000以下の範囲内であるポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、重量平均分子量が300以上1,000以下の範囲内であるポリプロピレングリコール、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、グリセリン又はアセトン等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記増粘剤としては、例えば、クレイ、ベントナイト又はヘクトライト等の粘土鉱物;例えば、ポリエステル系エマルジョン樹脂、アクリル系エマルジョン樹脂、ポリウレタン系エマルジョン樹脂又はブロックドイソシアネート等のエマルジョン;メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体;キサンタンガム又はグアーガム等の多糖類等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記界面活性剤としては、特に限定されず、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤の何れかを用いることができ、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、4級アンモニウム塩等が挙げられる。少量の添加量で効果が得られるので、フッ素系界面活性剤が好ましい。
本発明の接合用組成物において、上記第一及び第二の銀微粒子は、銀コロイド粒子として存在している。一般的に、上記銀コロイド粒子の形態に関しては、例えば、銀微粒子の表面の一部に有機物が付着して構成されている銀コロイド粒子、銀微粒子をコアとして、その表面が有機物で被覆されて構成されている銀コロイド粒子、それらが混在して構成されている銀コロイド粒子等が挙げられるが、特に限定されない。本発明においては、有機物である第一級アミンが付着している銀コロイド粒子、第一級アミンに被覆されている銀コロイド粒子、及び、それらが混在して構成される銀コロイド粒子を銀微粒子という。本明細書における銀微粒子としては、銀微粒子をコアとして、その表面が第一級アミンで被覆されて構成されている銀コロイド粒子が好ましい。
本明細書において、第一級アミンで被覆されている銀微粒子は、銀微粒子の表面の一部に付着する有機物、及び/又は、銀微粒子の表面を被覆する有機物等に対し、第一級アミンが50重量%以上である場合に、第一級アミンで被覆されている銀微粒子という。ここで、銀微粒子を被覆する有機物中の第一級アミンの量は、例えば、熱重量分析等の方法により測定することができる。
本発明の接合用組成物のせん断粘度は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜調整すればよいが、25℃におけるせん断粘度が、せん断速度10s−1において、15〜200Pa・sであることが好ましい。上記範囲とすることにより、例えば、LED等の発光素子、半導体チップ等を基板に接合する用途、これらの基板を更に放熱部材に接合する用途に好適に用いることができる。上記せん断粘度のより好ましい下限は25Pa・sであり、より好ましい上限は180Pa・sである。
上記せん断粘度の調整は、銀微粒子の粒径の調整、有機物である第一級アミンの含有量の調整、分散媒その他の成分の添加量の調整、各成分の配合比の調整、増粘剤の添加等によって行うことができる。上記せん断粘度は、コーンプレート型粘度計(例えば、アントンパール社製のレオメーターMCR301)により測定することができる。
本発明の接合用組成物により被接合部材同士を接合した場合の接合強度は、20〜150MPaであることが好ましい。接合強度が、20〜150MPaであれば、LED等の発光素子、半導体チップ等と基板との接合、上記基板と放熱部材との接合に好適に用いることができる。上記接合強度のより好ましい下限は30MPaであり、更に好ましい下限は50MPaである。上記接合強度は、一方の被接合部材に接合用組成物を塗工し、他方の被接合部材を貼り付けた後、焼成し、得られた積層体について、例えば、ボンドテスター(レスカ社製)を用いて、接合強度試験を行うことで評価できる。
本発明の接合用組成物は、優れた耐熱信頼性(ヒートサイクル信頼性ともいう。)を有する。上記ヒートサイクル信頼性が良好であることで、駆動温度が高いデバイスの製造における、LED等の発光素子、半導体チップ等の接合にも好適に用いることができる。上記ヒートサイクル信頼性は、例えば、接合用組成物と被接合部材とを焼結した積層体を、大気雰囲気下で−40℃及び150℃で、10分ずつ保持することを1サイクルとして、500〜1000サイクルのヒートサイクル試験を行うことで評価することができる。上記ヒートサイクル試験は、例えば、冷熱衝撃試験機(ヒューテック製)を用いて行うことができる。積層体の初期強度に対する、ヒートサイクル試験後の積層体の接合強度の低下率は、20%未満であることが好ましく、5%未満であることがより好ましい。
<接合用組成物の調製>
本発明の接合用組成物の製造方法は、特に限定されないが、まず、銀微粒子分散体を調製し、上記銀微粒子分散体と分散媒とを、必要に応じて上記各種成分と混合することにより、本発明の接合用組成物を得ることができる。
上記銀微粒子分散体の調製方法としては、還元により分解して銀原子を生成しうる銀化合物と、有機保護成分との混合液を調製する第1工程と、上記混合液中の上記銀化合物を還元することで表面の少なくとも一部に有機保護成分が付着した銀微粒子を生成する第2工程とを含む方法が挙げられる。以下に、具体的な製造方法を説明する。
上記第1工程においては、第一級アミン(以下、単にアミンという。)を銀1molに対して1mol以上添加することが好ましい。上記アミンの添加量を銀1molに対して1mol以上とすることで、還元によって生成される銀微粒子の表面に上記アミンを一定量以上付着させることができ、上記銀微粒子に種々の分散媒に対する優れた分散性と低温焼結性とを付与することができる。
以下、銀微粒子の製造方法を具体的に説明するが、下記説明は上記第一の銀微粒子及び上記第二の銀微粒子の両者に共通するものであるため、単に「銀微粒子」と記載する。
有機成分であるアミンで被覆された銀微粒子を得るための出発材料としては、種々の公知の銀化合物を用いることができ、例えば、銀塩又は銀塩の水和物を用いることができる。具体的には、硝酸銀、硫酸銀、塩化銀、酸化銀、酢酸銀、シュウ酸銀、ギ酸銀、亜硝酸銀、塩素酸銀、硫化銀等の銀塩が挙げられる。これらは還元可能なものであれば特に限定されず、適当な溶媒中に溶解させても、溶媒中に分散させたまま使用してもよい。また、これらは単独で用いても複数併用してもよい。なかでも、シュウ酸銀が好ましい。シュウ酸銀は、最も単純なジカルボン酸銀であり、シュウ酸銀を用いて合成されるシュウ酸銀アミン錯体は、低温かつ短時間で還元が進むことから、本発明の銀微粒子の合成に好適である。更に、シュウ酸銀を用いると、合成時には副生成物が発生せず、系外にシュウ酸イオン由来の二酸化炭素が出るのみであるため、合成後に精製の手間が少ない。
上記銀化合物を還元する方法としては、加熱する方法が好ましい。上記加熱方法は特に限定されない。上記加熱により上記銀化合物を還元する方法としては、例えば、シュウ酸銀等の銀化合物とアミン等の有機成分から生成される錯化合物を加熱して、上記錯化合物に含まれるシュウ酸イオン等を分解して生成する原子状の銀を凝集させる方法が挙げられる。上記方法により、アミン等の有機保護成分で被覆された銀微粒子を製造することができる。
このように、銀化合物の錯化合物をアミンの存在下で熱分解することで、アミンにより被覆された銀微粒子を製造する金属アミン錯体分解法においては、単一種の分子である銀アミン錯体の分解反応により原子状銀が生成するため、反応系内に均一に原子状銀を生成することが可能である。そのため、複数の成分間の反応により銀原子を生成する場合と比較して、反応を構成する成分の組成揺らぎに起因する反応の不均一が抑制され、特に工業的規模で多量の銀微粒子を製造する際に有利である。
なお、上記第1工程における混合液の組成、及び、上記第2工程における還元条件(例えば、加熱温度及び加熱時間等)は、所望の銀微粒子が第一の銀微粒子であれば、得られる銀微粒子の平均粒径を45〜75nmとするように調整し、所望の銀微粒子が第二の銀微粒子であれば、得られる銀微粒子の平均粒径を200〜550nmとするように調整する。また、上記第2工程で得られる銀微粒子分散体から銀微粒子を取り出す方法は特に限定されないが、例えば、その銀微粒子分散体の洗浄を行う方法等が挙げられる。
また、有機保護成分である第一級アミンは、上記銀化合物と、有機保護成分(第一級アミン)との混合液を調製する第1工程のみではなく、第1工程で得られた混合液中の上記銀化合物を還元する第2工程において添加されることとしてもよい。また、上記第1工程で添加される第一級アミンと上記第2工程で添加される第一級アミンとは、同じ種類であっても、異なる種類であってもよい。ただし、得られた銀微粒子に付着又は被覆する有機保護成分のうち50重量%以上が第一級アミンであることが好ましく、得られた銀微粒子に付着又は被覆する有機保護成分の全てが第一級アミンであることがより好ましい。
また、金属アミン錯体分解法においては、生成する銀原子にアミン分子が配位結合しており、上記銀原子に配位したアミン分子の働きにより凝集を生じる際の銀原子の運動がコントロールされるものと推察される。この結果として、金属アミン錯体分解法によれば非常に微細で、粒度分布が狭い銀微粒子を製造することが可能となる。
更に、製造される銀微粒子の表面にも多数のアミン分子が比較的弱い力の配位結合を生じており、これらが銀微粒子の表面に緻密な保護被膜を形成するため、保存安定性に優れ、表面の清浄な有機被覆銀微粒子を製造することが可能となる。また、上記被膜を形成するアミン分子は加熱等により容易に脱離可能であるため、非常に低温で焼結可能な銀微粒子を製造することが可能となる。
特に本発明における接合用組成物において、銀微粒子を被覆する第一級アミンは、炭素数が4〜12であり、かつ、沸点が300℃以下であるため、300℃以下の比較的低温度においても銀微粒子から脱離しやすい。
また、固体状の銀化合物とアミンとを混合して錯化合物等の複合化合物が生成する際に、被覆銀微粒子の被膜を構成する酸価をもつ分散剤に対して、アミンを混合して用いることにより、錯化合物等の複合化合物の生成が容易になり、短時間の混合で複合化合物を製造可能となる。また、上記アミンを混合して用いることにより、各種の用途に応じた特性を有する被覆銀微粒子の製造が可能である。
上記のようにして得られたアミン等の有機保護成分で被覆された銀微粒子を含む分散液には、銀微粒子の他に、金属塩の対イオン、分散剤等が存在しており、液全体の電解質濃度や有機物濃度が高い傾向にある。このような状態の液は、電導度が高い等の理由で銀微粒子の凝析が起こり、沈殿し易い。または、沈殿しなくても、金属塩の対イオン、分散に必要な量以上の過剰な分散剤等が残留していると、導電性を悪化させるおそれがある。そこで、上記銀微粒子を含む溶液を洗浄して余分な残留物を取り除くことにより、有機保護成分で被覆された銀微粒子を確実に得ることができる。
上記洗浄方法としては、例えば、表面を有機保護成分で被覆された銀微粒子を含む分散液を一定時間静置し、上澄み液を取り除いた後、銀微粒子を沈殿させる溶媒(例えば、水、メタノール、メタノール/水混合溶媒等)を加えて撹枠し、再度一定期間静置して上澄み液を取り除く工程を幾度か繰り返す方法が挙げられる。他の方法としては、上記の静置の代わりに遠心分離を行う方法、限外濾過装置やイオン交換装置等により脱塩する方法等が挙げられる。このような洗浄によって余分な残留物を取り除くと共に有機溶媒を除去することにより、表面を有機保護成分で被覆された銀微粒子を得ることができる。
上記方法により第一の銀微粒子と第二の銀微粒子とが得られるが、これらを含む銀微粒子分散体と分散媒とを混合する方法は特に限定されず、攪拌機やスターラー等を用いて従来公知の方法によって行うことができる。スパチュラのようなもので撹拌したりして、適当な出力の超音波ホモジナイザーを当ててもよい。
このようにして接合用組成物を調製することができる。
<接合方法>
本発明の接合用組成物を用いれば、比較的低温(例えば、300℃以下、好ましくは275℃程度)でも、加熱を伴う部材同士の接合において高い接合強度を得ることができる。即ち、上記接合用組成物を第1の被接合部材と第2の被接合部材との間に塗布する接合用組成物塗布工程と、第1の被接合部材と第2の被接合部材との間に塗布した接合用組成物を、所望の温度(例えば、300℃以下、好ましくは275℃程度)で焼成して接合する接合工程とにより、第1の被接合部材と第2の被接合部材とを接合することができる。
上記接合工程では、第1の被接合部材と第2の被接合部材とが対向する方向に加圧することもできるが、特に加圧しなくとも充分な接合強度を得ることができるのも本発明の利点のひとつである。上記焼成は、段階的に温度を上げたり下げたりすることもできる。上記被接合部材は、予め表面に界面活性剤又は表面活性化剤等を塗布しておくことも可能である。
上記「塗布」とは、接合用組成物を面状に塗布する場合も線状に塗布(描画)する場合も含む概念である。加熱により焼成される前の状態の接合用組成物からなる塗膜の形状は、所望する形状にすることが可能である。したがって、接合用組成物を焼成することで得られる焼結体(接合層)の形状は、面状であってもよいし、線状であってもよい。これら面状の接合層及び線状の接合層は、連続していても不連続であってもよく、連続する部分と不連続の部分とを含んでいてもよい。
上記第1の被接合部材及び第2の被接合部材としては、接合用組成物を塗布して加熱により焼成して接合することのできるものであればよく、特に制限はないが、接合時の温度により損傷しない程度の耐熱性を具備した部材であるのが好ましい。
上記第1及び第2の被接合部材を構成する材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステルや、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルスルホン(PES)、ビニル樹脂、フッ素樹脂、液晶ポリマー、セラミクス、ガラス又は金属等を挙げることができる。
上記第1及び第2の被接合部材は、例えば板状又はストリップ状等の種々の形状であってよく、リジッドでもフレキシブルでもよい。上記第1及び第2の被接合部材の厚さも適宜選択することができる。接着性若しくは密着性の向上又はその他の目的のために、表面層が形成された部材や親水化処理等の表面処理を施した部材を上記第1及び第2の被接合部材として用いてもよい。
上記第1及び第2の被接合部材としては、樹脂基板、金属板、LED等の発光素子、半導体チップ、電子回路が形成されたセラミック基板等が挙げられ、その被接合部材の表面が、無垢の銅の他、金や銀といった金属であるものに対して好適に用いることができる。
接合用組成物を被接合部材に塗布する工程としては、種々の方法を用いることができ、例えば、ディッピング、スクリーン印刷、スプレー式、バーコート式、スピンコート式、インクジェット式、ディスペンサー式、ピントランスファー法、スタンピング法、刷毛による塗布方式、流延式、フレキソ式、グラビア式、オフセット法、転写法、親疎水パターン法、シリンジ式、ピン転写又はステンシル印刷等を用いることができる。なかでも、本発明の接合用組成物は、固形分濃度が高いため、ディスペンサー式、ピン転写、ステンシル印刷にも好適に用いることができる。
上記焼成を行う方法は特に限定されるものではなく、例えば従来公知のオーブン等を用いて、被接合部材上に塗布または描画した上記接合用組成物の温度が、例えば300℃以下となるように焼成することによって接合することができる。上記焼成の温度の下限は必ずしも限定されず、被接合部材同士を接合できる温度であって、かつ、本発明の効果を損なわない範囲の温度であることが好ましい。上記焼成の温度の下限は、例えば、230℃である。
上記焼成を行う環境は、大気雰囲気下でも不活性雰囲気下でもよいが、不活性雰囲気下で好適に焼成することができる。特に無垢の銅を表面に有する被接合部材の接合を行う場合は、窒素雰囲気下で焼成されることが好ましい。
なお、本発明の接合用組成物は、従来のエポキシ樹脂等の熱硬化を利用し、焼成後の接合強度を得るものとは異なり、上述したように金属粒子の焼結によって充分な接合強度が得られるものである。そのため、接合後において、接合温度よりも高温の使用環境に置かれて、残存した有機物が劣化したり、分解・消失した場合であっても、接合強度の低下するおそれはなく、耐熱性に優れている。
本発明の接合用組成物によれば、例えば、300℃以下、好ましくは275℃程度の低温加熱による焼成でも、優れた接合強度が得られるため、比較的熱に弱い被接合部材同士を接合することができる。また、焼成時間は特に限定されるものではなく、焼成温度に応じて、接合できる焼成時間であればよい。
本実施形態においては、上記被接合部材と接合層との密着性を更に高めるため、上記被接合部材の表面処理を行ってもよい。上記表面処理方法としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、UV処理、電子線処理等のドライ処理を行う方法、基材上にあらかじめプライマー層や接合用組成物の受容層を設ける方法等が挙げられる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。本発明の接合用組成物は、更に、例えば、導電性、熱伝導性、誘電性、イオン伝導性等に優れたスズドープ酸化インジウム、アルミナ、チタン酸バリウム、鉄リン酸リチウム等の無機粒子を含有してもよい。
以下、本発明について実施例を掲げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
<銀微粒子Aの調製>
3−メトキシプロピルアミン(沸点116℃)3.0gをマグネティックスターラーで充分に攪拌しながらシュウ酸銀3.0gを添加し、増粘させた。得られた粘性物質を100℃の恒温層に入れ、約15分間反応させた。さらにそこへドデシルアミン(沸点249℃)を20g添加して同温度で15分間反応させた。
反応後の懸濁液の分散媒を置換するため、メタノール10mlを当該懸濁液に加えて攪拌後、遠心分離により銀微粒子Aを沈殿させて分離し、上澄みを捨てた。分離した銀微粒子Aに対して再度メタノール10mlを加え、攪拌及び遠心分離を行うことで銀微粒子Aを沈殿させて分離した。
<銀微粒子Bの調製>
ジグリコールアミン6.0gをマグネティックスターラーで充分に攪拌しながらシュウ酸銀3.0gを添加し、増粘させた。得られた粘性物質を100℃の恒温層に入れ、約15分間反応させた。そこへドデシルアミン(沸点249℃)を20g添加して同温度で15分間反応させた。
反応後の懸濁液の分散媒を置換するため、メタノール10mlを当該懸濁液に加えて攪拌後、遠心分離により銀微粒子Bを沈殿させて分離し、上澄みを捨てた。分離した銀微粒子Bに対して再度メタノール10mlを加え、攪拌及び遠心分離を行うことで銀微粒子Bを沈殿させて分離した。
<接合用組成物の調製>
得られた銀微粒子A及び銀微粒子Bをそれぞれ1gずつ測り取り、ここに、分散媒としてヘキシルカルビトール0.1g、ブチルカルビトールアセテート0.1g及びリノシール酸0.01gを加えて攪拌混合し、接合用組成物を得た。
上記のようにして得られた接合用組成物について下記項目を評価した。
[評価試験]
(1)一次粒子の平均粒径の測定
得られた銀微粒子A及び銀微粒子Bの一次粒子の平均粒子径を、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製、S−4800)を用いて撮影した写真から、ランダムに選択した200個程度の一次粒子の粒径を画像処理ソフトWinROOF(MITANI CORPORATION製)にて測定して算出した。
得られた結果を下記表1に示す。
(2)接合強度測定
得られた接合用組成物を無垢の無酸素銅板(20mm角)にメタルマスクを用いて6mm角に塗布し、予備乾燥として70℃に設定したオーブンに入れて30分間乾燥させた。乾燥させた該接合用組成物の上に、金メッキを施したSiチップ(底面積5mm×5mm)を積層し、0.2MPaで押し付けた。
得られた積層体をリフロー炉((株)シンアペックス製)に入れ、窒素を流し、酸素濃度300ppmになったところで室温から昇温速度3.8℃/minで最大温度275℃まで昇温した後、60分間保持し焼成処理を行った。焼成処理の際、加圧は行わず無添加で行い、窒素は流し続けた。自然冷却し積層体を取り出した。
得られた積層体に対し、常温にて100kgfのロードセルのボンドテスター((株)レスカ製)を用いて接合強度試験を行った。なお、5mm角のチップかつ100kgfのロードセルの場合、接合強度の上限は40MPaとなる。
得られた結果を下記表1に示す。
(3)耐熱信頼性試験(−40℃/200℃ヒートサイクル試験)
得られた接合用組成物を無垢の無酸素の窒化ケイ素の銅張り基板(30mm×40mm)にメタルマスクを用いて11mm角に塗布し、予備乾燥として70℃に設定したオーブンに入れて30間乾燥させた。乾燥させた該接合用組成物の上に、金メッキを施したSiチップ(底面積10mm×10mm)を積層し、0.2MPaで押し付けた。
得られた積層体をリフロー炉((株)シンアペックス製)に入れ、窒素を流し、酸素濃度300ppmになったところで室温から昇温速度3.8℃/minで最大温度275℃まで昇温した後、60分間保持し焼成処理を行った。焼成処理の際、加圧は行わず無添加で行い、窒素は流し続けた。自然冷却し積層体を取り出した。
得られた積層体を冷熱衝撃試験機((株)ヒューテック製)に入れ、大気雰囲気で−40℃と200℃とでそれぞれ10分間キープするサイクルを、任意のサイクル数で取り出した。1000サイクル後に0サイクルに対してボイド率が50%以上増加した場合を「×」、10%より大きく50%未満増加した場合を「△」、10%以下の増加であり変化していないと判断できる場合を「〇」と判定した。得られた結果を下記表1に示す。
なお、ボイド率は、日本クラウトクレーマー(株)製の超音波探傷装置(探触子80MHz・φ3mm・PF=10mm)にて評価した。接合界面での反射ピークが最も高くなるところに微調整し、材質音速=Si:9600mm/sとして測定した。
(4)空隙率の測定
上記(3)で作製した耐熱信頼性試験前の積層体の接合部分を研磨した後、イオンミリングにて断面出しを行った。その後、走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製、S−4800)にて断面観察を行った。断面観察した電子顕微鏡写真から該接合用組成物が焼結した層の空隙の面積を、該接合用組成物が焼結した層の全体面積で割って空隙率を算出した(画像処理ソフトWinROOF(MITANI CORPORATION製)にて測定し算出した)。空隙率が10%以下の場合を「〇」、空隙率が11〜20%の場合を「△」、空隙率が20%以上の場合、及び、大きな空隙が存在したり、接合した界面が剥離したりしているものは「×」とした。
得られた結果を下記表1に示す。
(実施例2)
接合用組成物の調製で用いる銀微粒子A及び銀微粒子Bの量を、銀微粒子Aを0.8g、銀微粒子Bを1.2gに変更したこと以外は実施例1と同様にして接合用組成物を調製し、実施例1と同様の評価試験を行った。得られた結果を下記表1に示す。
(実施例3)
接合用組成物の調製で用いる銀微粒子A及び銀微粒子Bの量を、銀微粒子Aを1.2g、銀微粒子Bを0.8gに変更したこと以外は実施例1と同様にして接合用組成物を調製し、実施例1と同様の評価試験を行った。得られた結果を下記表1に示す。
(実施例4)
銀微粒子Bの調製で用いるジグリコールアミンを6.0gから10.0gに変更したこと以外は実施例1と同様にして接合用組成物を調製し、実施例1と同様の評価試験を行った。得られた結果を下記表1に示す。
(実施例5)
銀微粒子Aの調製で用いる3−メトキシプロピルアミンを3.0gから9.0gに変更し、銀微粒子Bの調製で用いるジグリコールアミンを6.0gから10.0gに変更し、さらに、接合用組成物の調製で用いる銀微粒子A及び銀微粒子Bの量を、銀微粒子Aを1.4g、銀微粒子Bを0.6gに変更したこと以外は実施例1と同様にして接合用組成物を調製し、実施例1と同様の評価試験を行った。得られた結果を下記表1に示す。
(実施例6)
銀微粒子A及び銀微粒子Bの調製で用いたドデシルアミンをオクチルアミン(沸点176℃)に変更し、接合用組成物の調製で用いた分散媒を、ヘキシルカルビトール0.05g、ブチルカルビトールアセテート0.05g及びリシノール酸0.005gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして接合用組成物を得た。また、上記評価試験(2)及び(3)における積層体の作製において70℃の予備乾燥を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして評価試験を行った。得られた結果を下記表1に示す。
(実施例7)
銀微粒子A及び銀微粒子Bの調製で用いたドデシルアミンをオクチルアミン(沸点176℃)に変更し、接合用組成物の調製で用いた銀微粒子A及び銀微粒子Bの量を、銀微粒子Aを1.0g、銀微粒子Bを1.0gに変更し、分散媒を、ヘキシルカルビトール0.05g、ブチルカルビトールアセテート0.05g及びリシノール酸0.005gに変更したこと以外は、実施例5と同様にして接合用組成物を得た。また、上記評価試験(2)及び(3)における積層体の作製において70℃の予備乾燥を行わなかったこと以外は実施例5と同様にして評価試験を行った。得られた結果を下記表1に示す。
(実施例8)
銀微粒子A及び銀微粒子Bの調製で用いたドデシルアミンを添加しなかったこと、接合用組成物の調製で用いた銀微粒子A及び銀微粒子Bの量を、銀微粒子Aを1.2g、銀微粒子Bを0.8gに変更し、分散媒を、ヘキシルカルビトール0.05g、ブチルカルビトールアセテート0.05g及びリシノール酸0.005gに変更したこと以外は、実施例5と同様にして接合用組成物を得た。また、上記評価試験(2)及び(3)における積層体の作製において70℃の予備乾燥を行わなかったこと以外は実施例5と同様にして評価試験を行った。得られた結果を下記表1に示す。
(実施例9)
銀微粒子A及び銀微粒子Bの調製で用いたドデシルアミンをオクチルアミン(沸点176℃)に変更したこと以外は実施例1と同様にして接合用組成物を得た。また、実施例1と同様にして評価試験を行った。得られた結果を下記表1に示す。
(比較例1)
接合用組成物の調製で用いた銀微粒子Aを添加せず、銀微粒子Bの量を2.0gに変更したこと以外は実施例1と同様にして接合用組成物を調製し、実施例1と同様に評価を行った。得られた結果を下記表2に示す。
(比較例2)
接合用組成物の調製で用いた銀微粒子Bを添加せず、銀微粒子Aの量を2.0gに変更したこと以外は実施例1と同様にして接合用組成物を調製し、実施例1と同様に評価を行った。得られた結果を下記表2に示す。
(比較例3)
<銀微粒子Aの調製>
3−メトキシプロピルアミン(沸点116℃)2.0gとジグリコールアミン2.0gをマグネティックスターラーで充分に攪拌しながらシュウ酸銀3.0gを添加し、増粘させた。得られた粘性物質を100℃の恒温層に入れ、約15分間反応させた。反応後の懸濁液の分散媒を置換するため、メタノール10mlを当該懸濁液に加えて攪拌後、遠心分離により銀微粒子Aを沈殿させて分離し、上澄みを捨てた。分離した銀微粒子Aに対して再度メタノール10mlを加え、攪拌及び遠心分離を行うことで銀微粒子Aを沈殿させて分離した。
<接合用組成物の調製>
得られた銀微粒子Aを2g測り取り、ここに、分散媒としてヘキシルカルビトール0.05g、ブチルカルビトールアセテート0.05g及びリシノール酸0.005gを加えて攪拌混合し、接合用組成物を得た。
上記評価試験(2)及び(3)における積層体の作製において70℃の予備乾燥を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして評価試験を行った。得られた結果を下記表2に示す。
(比較例4)
接合用組成物の調製において、銀微粒子Bとして福田金属箔粉工業製マイクロ銀粒子(平均粒径2.5μm)を用いたこと以外は実施例3と同様にして接合用組成物を調製し、実施例3と同様にして評価を行った。得られた結果を下記表2に示す。
(比較例5)
<銀微粒子Aの調製>
3−メトキシプロピルアミン(沸点116℃)3.0gをマグネティックスターラーで充分に攪拌しながらシュウ酸銀3.0gを添加し、増粘させた。得られた粘性物質を100℃の恒温層に入れ、約15分間反応させた。さらにそこへレブリン酸10gを添加して同温度で15分間反応させた。反応後の懸濁液の分散媒を置換するため、メタノール10mlを当該懸濁液に加えて攪拌後、遠心分離により銀微粒子Aを沈殿させて分離し、上澄みを捨てた。分離した銀微粒子Aに対して再度メタノール10mlを加え、攪拌及び遠心分離を行うことで銀微粒子Aを沈殿させて分離した。得られた銀微粒子Aは、レブリン酸で被覆されており、3−メトキシプロピルアミンによる被覆はされていなかった。
<銀微粒子Bの調製>
ジグリコールアミン6.0gをマグネティックスターラーで充分に攪拌しながらシュウ酸銀3.0gを添加し、増粘させた。得られた粘性物質を100℃の恒温層に入れ、約15分間反応させた。反応後の懸濁液の分散媒を置換するため、メタノール10mlを当該懸濁液に加えて攪拌後、遠心分離により銀微粒子Bを沈殿させて分離し、上澄みを捨てた。分離した銀微粒子Bに対して再度メタノール10mlを加え、攪拌及び遠心分離を行うことで銀微粒子Bを沈殿させて分離した。
<接合用組成物の調製>
得られた銀微粒子Aを0.8g、銀微粒子Bを1.2g測り取り、ここに、分散媒としてヘキシルカルビトール0.1g、ブチルカルビトールアセテート0.1g及びリシノール酸0.01gを加えて攪拌混合し、接合用組成物を得た。
得られた接合用組成物に対し、実施例1と同様にして評価試験を行った。得られた結果を下記表2に示す。
(比較例6)
<銀微粒子Aの調製>
3−メトキシプロピルアミン(沸点116℃)3.0gと、ドデシルアミン(沸点249℃)20gと、をマグネティックスターラーで充分に攪拌しながらシュウ酸銀3.0gを添加し、増粘させた。得られた粘性物質を100℃の恒温層に入れ、約15分間反応させた。反応後の懸濁液の分散媒を置換するため、メタノール10mlを当該懸濁液に加えて攪拌後、遠心分離により銀微粒子Aを沈殿させて分離し、上澄みを捨てた。分離した銀微粒子Aに対して再度メタノール10mlを加え、攪拌及び遠心分離を行うことで銀微粒子Aを沈殿させて分離した。
<銀微粒子Bの調製>
3−メトキシプロピルアミン(沸点116℃)5.0gと、ドデシルアミン(沸点249℃)0.5gと、ジグリコールアミン6.0gと、をマグネティックスターラーで充分に攪拌しながらシュウ酸銀3.0gを添加し、増粘させた。得られた粘性物質を100℃の恒温層に入れ、約15分間反応させた。反応後の懸濁液の分散媒を置換するため、メタノール10mlを当該懸濁液に加えて攪拌後、遠心分離により銀微粒子Bを沈殿させて分離し、上澄みを捨てた。分離した銀微粒子Bに対して再度メタノール10mlを加え、攪拌及び遠心分離を行うことで銀微粒子Bを沈殿させて分離した。
<接合用組成物の調製>
得られた銀微粒子Aと銀微粒子Bとをそれぞれ1.0gずつ測り取り、ここに、分散媒としてヘキシルカルビトール0.1g、ブチルカルビトールアセテート0.1g及びリシノール酸0.01gを加えて攪拌混合し、接合用組成物を得た。
得られた接合用組成物に対し、実施例1と同様にして評価試験を行った。得られた結果を下記表2に示す。
(比較例7)
接合用組成物の調製において、分散媒としてリシノール酸を加えなかったこと以外は実施例1と同様にして接合用組成物を調製し、実施例1と同様にして評価試験を行った。得られた結果を下記表2に示す。
(実施例10)
接合用組成物の調製で用いた銀微粒子A及び銀微粒子Bの量を、銀微粒子A0.8g、銀微粒子B1.2gに変更したこと以外は、実施例8と同様にして接合用組成物を得た。また、実施例8と同様にして評価試験を行った。得られた結果を下記表3に示す。
(実施例11)
銀微粒子Bとして、実施例1の銀微粒子Bの調製方法においてドデシルアミンを添加せずに合成したものを用いたことと、分散媒を2−エチル−1,3−ヘキサンジオール0.05g、ブチルカルビトールアセテート0.05g、リシノール酸0.005gに変更したこと以外は実施例10と同様にして接合用組成物を得た。また、実施例10と同様にして評価試験を行った。得られた結果を下記表3に示す。
(実施例12)
銀微粒子Bとして、実施例1の銀微粒子Bの調製方法においてドデシルアミンを添加せずに合成したものを用いたことと、接合用組成物の調製で用いた銀微粒子A及び銀微粒子Bの量を、銀微粒子A0.4g、銀微粒子B1.6gに変更したこと以外は、実施例8と同様にして接合用組成物を得た。また、実施例8と同様にして評価試験を行った。得られた結果を下記表3に示す。
Figure 0006736782
Figure 0006736782
Figure 0006736782
上記表1〜3の結果から、特定の第一級アミンに被覆されており平均粒径が45〜75nmである銀微粒子A、及び、特定の第一級アミンに被覆されており平均粒径が200〜550nmである銀微粒子Bを含み、さらに、分散媒として不飽和炭化水素(リシノール酸)を含む実施例1〜12は、40MPa以上の高い接合強度を有し、空隙率が10%以下の高密度接合層が形成されており、耐熱信頼性が充分に高いものであった。
一方、銀微粒子の粒子径が特定の範囲の組み合わせを満たさない比較例1〜4に係る接合用組成物は、接合強度、空隙率及び耐熱信頼性のいずれかが劣るものであり、全てを満たした接合用組成物は得られなかった。
また、銀微粒子として、特定の第一級アミンに被覆されていない銀微粒子A及びBを用いた比較例5に係る接合用組成物は、接合強度、空隙率及び耐熱信頼性のいずれもが劣るものであった。
また、比較例6に係る接合用組成物は、銀微粒子として、特定の第一級アミンを一部に含むが、その含有量により加熱前の錯化合物が異なってくるため、銀微粒子Aの粒径が小さくなった。そのため、比較例6に係る接合用組成物は、接合強度、空隙率及び耐熱信頼性のいずれもが劣るものであった。
分散媒に不飽和炭化水素(リシノール酸)を含まない比較例7に係る接合用組成物は、接合強度、空隙率及び耐熱信頼性のいずれもが劣るものであった。

Claims (5)

  1. 第一級アミンで被覆されている銀微粒子と、分散媒とを含有する接合用組成物であって、
    前記第一級アミンは、炭素数が4〜12、かつ、沸点が300℃以下であり、
    前記銀微粒子は、平均粒径が45〜75nmである第一の銀微粒子と、平均粒径が200〜550nmである第二の銀微粒子とを含み、
    前記分散媒は、ブチルカルビトールアセテート及びリシノール酸を含むことを特徴とする接合用組成物。
  2. 前記第一の銀微粒子と前記第二の銀微粒子との重量比率は、4:6〜7:3であることを特徴とする請求項に記載の接合用組成物。
  3. 前記分散媒は、水酸基を有する有機溶剤を少なくとも含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の接合用組成物。
  4. 高分子分散剤を含まないことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の接合用組成物。
  5. 前記接合用組成物を275℃で加熱焼成して得られる接合層の空隙率が10%以下であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の接合用組成物。
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