JP6735091B2 - 電波透過材及び電波透過部材 - Google Patents

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Description

本発明は、電波透過材及び電波透過部材に関する。
通常、壁材、ホワイトボード等の表面に磁石を用いて着脱可能な状態でポスター、メモ等の資料を固定したり、軽量部材を仮固定したりすることがある。
磁石により、磁力を用いて簡易固定を行う時には、通常は、鉄板かそれに準ずる金属薄板を用いる。磁力を用いた簡易固定は、着脱が容易であり、接着剤、ピン等による固定と異なり、壁面を損傷する懸念がないという利点がある。
しかしながら、例えば、展示室の一壁面、ディスプレイボード、ホワイトボード等に金属板を用いた場合、広い面積で金属板により電波が遮断されることになる。このため、金属板を使用した部材を用いた場合、通信状態の悪化等が懸念される。
また、近年、電磁誘導方式等を利用した非接触電力伝送が注目されている。非接触電力伝送によれば、金属接点、コネクタ等を介すことなく、電力を伝送することができ、コードレス電話、通信モバイル等の充電に適用する方法が提案されている。
電磁誘導方式とは、2つの隣接するコイルの片方に電流を流すと、発生する磁束を媒介して隣接したもう片方コイルに起電力が発生する仕組みを応用した電力伝送方式である。通常は、充電する機器を充電パッドに近接して配置し、充電を行なう。
電磁誘導方式を用いた充電器は、現状では、送電側の充電パッドを平面上に配置し、その上に充電する機器を配置する方法が一般的である(例えば、特許文献1、2参照)。このため、電磁誘導方式を用いた充電器では、十分な面積の平面状の部材が必要である。
電磁誘導方式を用いた充電の場合、電力伝送の部材同士の距離が長かったり、位置がずれたりすると、電力伝送効率が低下するという問題があるため、上記平面配置方式が主流である。充電器の配置場所の自由度を上げるという観点からは、垂直に配置した充電パッドに、充電する間、充電される機器を安定に仮固定することが望まれている。このため、例えば、磁力で機器を仮固定することを考えた場合、充電に必要な磁束を遮断せずに機器を仮固定する部材が必要となる。
特開2014−155303号公報 特開2014−57023号公報
既述のように、磁力を用いて部材を被固定部材に仮固定しようとする場合、被固定部材の電波透過性の低下を抑制する方法は未だ見出されていないのが現状である。
本発明の課題は、磁力を有し、磁石等を磁着することができ、且つ、電波透過性を有する電波透過材、及びそれを用いた電波透過部材を提供することにある。
発明者らは、上記課題に鑑み鋭意研究の結果、磁性流体から分散媒を除去して得られた、表面の少なくとも一部が有機物で被覆された磁性粉体と樹脂基材とを含む成形物により上記課題を解決しうることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
<1> 磁性粒子、分散剤、及び分散媒を含有する磁性流体から、分散媒を除去して得られる、表面の少なくとも一部が前記分散剤で被覆された、平均一次粒子径が5nm〜55nmである磁性粉体と、ゴム材料及び樹脂材料から選択される少なくとも一種と、を含み、同軸管透過法で測定した場合に1GHz〜18GHzの周波数において電波シールド性が−5dB以上であり、且つ、10Hz〜1GHzの周波数において、KEC法で測定した場合に、電波シールド性が5dB以下であり、磁石により部材を仮固定するための電波透過材。
すなわち、本発明の電波透過材は、磁性粒子、分散剤、及び分散媒を含有する磁性流体の、前記磁性粒子の表面の少なくとも一部が、前記分散剤で被覆された、平均一次粒子径が5nm〜55nmである磁性粉体と、ゴム材料及び樹脂材料から選択される少なくとも一種と、を含む電波透過材である。
<2> 前記磁性粉体の含有量が、電波透過材の全量に対し、30質量%〜90質量%である<1>に記載の電波透過材。
<3> 前記分散剤が、界面活性剤である<1>又は<2>に記載の電波透過材。
<4> 基材上に、<1>〜<3>のいずれか1つに記載の電波透過材を備える電波透過部材。
本発明の作用機構は明確ではないが、以下のように考えている。
本発明に用いられる磁性粉体は、磁性粒子、分散剤、及び分散媒を含有する磁性流体から、分散媒を除去して得られた磁性粉体である。よって、前記磁性粒子の表面の少なくとも一部が、磁性流体に含まれる分散剤により被覆された磁性粉体であり、凝集が効果的に抑制されている。このため、微細な磁性粒子を直接表面処理剤等で処理して得られる表面処理磁性粉体に比較して、平均一次粒径が5nm〜55nmという微細な磁性粉体であっても分散性に優れる。前記磁性流体から分離した前記磁性粒子が、本発明における「表面の少なくとも一部が分散剤で被覆された磁性粉体」に相当する。
従って、当該磁性粉体と樹脂材料とを含む電波透過部材では、樹脂材料基材中において、ミクロンオーダーの観察では磁性粉体が凝集体を形成しているように見えても、ナノオーダーで観察した場合、互いにナノオーダーの間隙を有して磁性粉体が単分散されており、超常磁性の態様を維持した状態で分散されて存在する。これら磁性粉体は、磁性を有するため、磁性粉体を含む本発明の電波透過材は、磁石を仮固定することができる。
一般に用いられる金属材料を格子状の形態とした電波遮断材は、格子状に組まれた金属線が相当の直径を有することにより、金属の影響を受け、電波は格子の空隙を透過することなく電波が遮断される。一方、本発明の電波透過材は、既述のように樹脂材料中において、平均一次粒径が5nm〜55nmである微細な磁性粉体が、互いにナノオーダーの距離をおいて均一に分散されているため、一般的な波長の電波は、磁性粉体の間隙を透過することができるものと考えられる。このため、本発明の電波透過材は、磁力を付与することができ、且つ、電波透過性に優れるものと推定される。
本発明の好ましい態様においては、樹脂材料中に磁力を付与しうる磁性粉体を30質量%〜90質量%で含有することにより、磁力の付与と電波透過性がより向上すると推定される。なお、本発明はこの推定機構に何ら制限されない。
一般に、電波シールド材とは、電波シールド性が同軸管透過法で測定した場合−25dB以下、KEC法で測定した場合には25dB以上である材料を意味する。
他方、本発明の電波透過材における電波透過性とは、電波の透過を遮る電波シールド性を有さないことを意味する。より具体的には、本発明における電波透過性とは、同軸管透過法で測定した場合に1GHz〜18Gzの周波数において電波シールド性が−5dB未満のものを含まないことを意味する。
更に、本発明の電波透過材は、10Hz〜1Gzの周波数において、KEC法で測定した場合に、電波シールド性が5dB以下であることが好ましい。
なお、電波シールド性の測定方法については、以下の実施例において詳述する。
本明細書では、以下、磁力を有し、磁石等を磁着することができ、且つ、電波透過性を有する電波透過材を、「磁力付与性電波透過材」又は、単に「電波透過材」と称することがある。
本発明によれば、磁力を有し、磁石等を磁着することができ、且つ、電波透過性を有する電波透過材、及びそれを用いた電波透過部材を提供することができる。
実施例1−1〜1−4、及び対照例の電波透過材の近傍界における電波シールド性を示すグラフである。 実施例1−1〜1−4、及び対照例の電波透過材の遠方界における電波シールド性を示すグラフである。 実施例1−1、比較例1〜2、及び対照例の電波透過材の近傍界における電波シールド性を示すグラフである。 実施例1−1、比較例1〜2、及び対照例の電波透過材の遠方界における電波シールド性を示すグラフである。 実施例1−1、実施例2〜実施例3、及び対照例の電波透過材の遠方界における電波シールド性を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの内容に特定はされない。その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
なお、本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本明細書において組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において、「置換基」の表記は、特に断りのない限り、無置換のもの、置換基を更に有するものを包含する意味で用いられ、例えば「アルキル基」と表記した場合、無置換のアルキル基と置換基を更に有するアルキル基の双方を包含する意味で用いられる。その他の置換基についても同様である。
<電波透過材>
本発明の電波透過材は、磁性粒子、分散剤、及び分散媒を含有する磁性流体の、前記磁性粒子の表面の少なくとも一部が、分散剤で被覆された磁性粉体と、樹脂材料と、を含み、同軸管透過法で測定した場合に1GHz〜18GHzの周波数において電波シールド性が−5dB以上であり、且つ、10Hz〜1GHzの周波数において、KEC法で測定した場合に、電波シールド性が5dB以下であり、磁石により部材を仮固定するための成形体である。
前記磁性粉体は、磁性粒子、分散剤、及び分散媒を含有する磁性流体から常法により取り出すことができ、例えば、磁性流体から分散媒を除去することで得ることができる。
以下、本発明の電波透過材について、その材料、製造方法と共に詳細を説明する。
〔磁性粉体〕
本発明の電波透過材に用いられる磁性粉体は、表面の少なくとも一部が分散剤により被覆された磁性粉体である。該磁性粉体は、磁性粒子、分散剤、及び分散媒を含有する磁性流体中に含まれる、表面の少なくとも一部が分散剤で被覆された磁性粒子であり、磁性流体から分散媒を除去して得ることができ、超常磁性を発現する磁性粉体である。ここで、超常磁性とは強磁性体の微粒子の集合体でヒステリシスを示さず残留磁化もないものを意味し、常磁性の原子磁気モーメントと比較して100〜100000倍の値を示す。
(1.磁性流体の調製)
磁性流体とは、磁性粒子を分散媒中に分散させたコロイド溶液であり、その分散性が非常に良いため、重力、磁場等によって沈殿あるいは分離等の固−液分離が生じることなく、それ自身磁性を持った均一な液体と見なすことができる流体である。
本発明において用いられる磁性流体は、適宜調製してもよく、市販品を用いてもよい。
市販品としては、例えば、EXPシリーズ、Pシリーズ、APGシリーズ、RENシリーズ(以上、商品名:フェローテック社製)等が挙げられる。
磁性流体を調製する場合、調製法は、磁性粒子の巨視的粒子をコロイド的サイズまで細分する方法と、原子又はイオンを凝縮させて磁性微粒子を得る方法と、に分けられる。
前者に属する方法としては、粉砕法、スパークエロージョン法が挙げられる。後者に属する方法としては、化学共沈法(湿式法)、金属カルボニルの熱分解法、真空蒸着法等が挙げられる。本発明においては、生産性に優れる点で、化学共沈法が適している。
化学共沈法により磁性流体を調製する方法としては、例えば、硫酸第1鉄水溶液と硫酸第2鉄水溶液より調製したマグネタイト水スラリーにオレイン酸ナトリウムを添加し、マグネタイト粒子表面にオレイン酸イオンを吸着させ、水洗、乾燥後、有機溶媒に分散させる方法が挙げられる。
本発明で用いられる磁性流体は、磁性粒子、分散剤及び分散媒を含有するものである。各成分について以下に詳細に説明する。
(磁性粒子)
本発明で用いられる磁性粒子は、例えば、マグネタイト、γ酸化鉄、マンガンフェライト、コバルトフェライト、もしくはこれらと亜鉛、ニッケルとの複合フェライトやバリウムフェライト等の強磁性酸化物、又は、鉄、コバルト、希土類等の強磁性金属、窒化金属等が挙げられる。この中でもマグネタイトが量産性の点から好ましい。
なお、本発明で用いられる磁性粒子は、超常磁性を発現する範囲の平均粒子径、つまり臨界粒子径以下のものであれば特に制限はなく用いられる。例えば、マグネタイトやγ酸化鉄の場合、50nm以下が好ましく、10nm〜40nmの範囲であるものが特に好ましい。
磁性粒子の平均粒子径は、動的光散乱法で測定される平均一次粒子径である。
磁性流体に含まれる磁性粒子の含有量は、量産性の観点から、固形分換算で、30質量%〜70質量%であることが好ましく、40質量%〜60質量%であることがより好ましい。
なお、固形分換算とは、焼成後の磁性粒子の質量の全質量に対する含有量を指す。
(分散剤)
分散剤は、磁性流体中において、磁性粒子の分散媒への分散性を向上させるために添加される。分散剤としては、公知の界面活性剤、高分子分散剤等が適宜使用しうるが、なかでも、分散性及び得られた磁性粉体の性能の観点から、界面活性剤が好ましい。
磁性流体中に前記磁性粒子と分散剤とを含むことで、分散剤の少なくとも一部が磁性粒子に付着し、磁性粒子の表面の少なくとも一部が、分散剤、好ましくは、界面活性剤で被覆される。磁性粒子の表面の少なくとも一部が界面活性剤で被覆されることで、界面活性剤の親水基が磁性粒子の表面に向けて吸着され、かつ、疎水基が分散媒へ配向するため、磁性粒子が安定に分散媒中に分散する。
本発明において分散剤として用いられる界面活性剤としては、例えば、オレイン酸又はその塩、石油スルホン酸又はその塩、合成スルホン酸又はその塩、エイコシルナフタレンスルホン酸又はその塩、ポリブテンコハク酸又はその塩、エルカ酸又はその塩等のように、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基等の極性基を有する炭化水素化合物である陰イオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のような非イオン性界面活性剤;アルキルジアミノエチルグリシンのような分子構造中に陽イオン部分と陰イオン部分とを共に持つ両性界面活性剤;等が挙げられる。この中で安価であり入手のしやすさからオレイン酸ナトリウムが好ましい。
分散剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
磁性流体中の分散剤の含有量は、磁性粒子同士の凝集を防ぐことができる量であればよいが、固形分換算で、5質量%〜25質量%がより好ましく、10質量%〜20質量%が特に好ましい。なお、上記含有量は、分散剤を複数種含む場合はその総量を表す。
(分散剤で被覆された磁性粒子)
磁性流体中において、分散剤が磁性粒子に吸着し、磁性粒子表面の少なくとも一部が分散剤にて被覆された状態となる。このような磁性粒子を「分散剤で被覆された磁性粒子」と称する。磁性粒子同士の凝集を防ぐという観点からは、磁性粒子の表面に1nm〜5nm程度の分散剤が吸着して、表面の少なくとも一部が分散剤に被覆されていることが好ましく、表面に2nm〜3nm程度の分散剤が吸着していることがより好ましい。
分散剤により被覆された磁性粒子の平均粒子径は、磁性粒子がマグネタイトやγ酸化鉄である場合には、前述の磁性粒子の平均粒子径より、平均粒子径55nm以下であることが好ましく、ハンドリング性等の観点からは5nm以上であることが好ましく、11nm〜45nmであることが特に好ましい範囲である。
分散剤で被覆された磁性粒子の平均粒子径は、平均一次粒子径のことである。
なお、磁性粒子の平均粒子径は、特に断りのない限り、界面活性剤に代表される分散剤により表面の少なくとも一部が被覆された磁性粒子の平均粒子径を指す。本明細書における磁性粒子の平均粒子径は、堀場製作所社製のナノ粒子解析装置 nano Partica SZ−100シリーズを使用し、動的光散乱法により測定される値である。
分散剤の含有量、分散剤を複数種含む場合はその総含有量は、磁性粒子同士の凝集を防ぐ観点から、磁性流体に対する固形分換算で、5質量%〜25質量%が好ましく、10質量%〜20質量%がより好ましい。
(分散媒)
本発明において磁性流体の分散媒としては、常温で液状であり、磁性粒子を分散しうるものであれば特に制限はなく、水、有機溶剤等から選ばれる1種以上が用いられる。
有機溶剤としては、ポリオレフィン、イソパラフィン、ヘプタン、トルエン等の分子量5000以下の炭化水素類、ポリオールエステル等のエステル類、シリコーンオイル等が挙げられる。相溶性が良好であれば、複数種の有機溶剤を混合して用いてもよい。
また、分散媒として、水、水と水溶性有機溶剤との混合物等も好ましく使用される。水溶性有機溶剤としては、エタノール、メタノール等が挙げられる。分散媒として水を用いる場合、不純物の少ない純水、イオン交換水等を用いることが好ましい。
分散媒に対する各成分の濃度は特に問わないが、後の工程における作業性等の観点から分散媒は、前記各成分を合計した固形分濃度が30質量%〜90質量%の範囲であることが好ましく、60質量%〜80質量%の範囲であることがより好ましい。
固体成分における磁性粒子(無機成分)の合計含有量と、界面活性剤に代表される分散剤等の有機成分の合計含有量との割合は、超常磁性を発現する範囲であれば特に問わないが一般的には磁性粒子と分散剤の質量比としては、60:40〜90:10が好ましく、70:30〜85:15の範囲であることがより好ましい。
磁性流体中の無機成分、有機成分の含有比率は、示差熱熱容量測定により確認することができる。本明細書中の各成分の含有量は、SII社製、EXSTAR6000TG/DTAにて、測定した数値を採用している。
(その他の成分)
磁性流体には、本発明の効果を損なわない範囲において、磁性粒子、分散剤及び分散媒に加え、目的に応じて、さらに種々の他の成分を併用してもよい。
他の成分としては、例えば、水酸化カリウム、トリエチルアミン等のpHコントロール剤が挙げられる。pHコントロール剤を含むことで、磁性粒子の平均一次粒子径を制御することができる。
(2.磁性流体からの分散媒の除去)
本発明における磁性粉体は、前記の如く磁性流体から、常法により、磁性流体に含まれる磁性粒子を取り出すことで得ることができる。
本工程では、好ましくは、磁性流体から分散媒を除去し、少なくとも一部が分散剤で被覆された磁性粒子を含む固体成分を得る。
分散媒を除去する方法には特に制限はなく、例えば、磁性流体に凝集成分を添加することで、磁性流体に含まれる磁性粒子を凝集沈降させ、上澄みである分散媒を除去する方法、固体成分を、適切な開口部を有するフィルターやろ紙を用いてろ別する方法、分散媒の沸点以上の温度で加熱して分散媒を蒸発除去する方法、磁性流体に対して遠心力をかけることにより、磁性流体に含まれる分散剤が被覆された磁性粒子を分離する遠心分離による方法、マグネットにより分離する方法等が挙げられる。
なお、このとき、磁性粒子に付着しなかった残余の分散剤等も、分散媒とともに除去されることがある。
本発明は、既述のように磁性流体を用いることで、分散剤で被覆された磁性粒子を得るものであるが、磁性粉体は極めて微小であるために、通常の被覆方法、例えば、静電接触法やスプレー法等により磁性流体表面に有機材料を被覆処理しても、本願発明の効果を奏し得るような被覆磁性粉体を得ることは極めて困難である。
なかでも、分離効率、安全性の観点から、磁性粒子を凝集沈降させる方法が好ましい。以下、この方法について詳細に説明する。
本実施形態では、まず、磁性流体に、凝集成分を添加することで、磁性流体に含まれる磁性粒子を凝集沈降させる。
凝集沈降する方法としては、例えば、磁性流体の分散媒である有機溶剤としてイソパラフィンを用いた場合、凝集成分としては、アルコール、なかでも、エタノールを含有する溶剤を添加する方法が挙げられる。凝集成分を添加して、撹拌することで、均一分散していた磁性粒子が互いに凝集して沈降する。エタノールは、原液でもよいが、80質量%以上の濃度の水溶液であれば使用しうる。
撹拌して安定に磁性粒子を沈降させるため、本工程における沈降時間は、室温(25℃)の温度条件下で、1時間〜36時間程度であることが好ましく、20時間〜28時間程度であることがより好ましい。
このとき、粒子の沈降には、凝集成分として、アルコール等の有機溶剤を用いることが好ましい。他方、通常、効率のよい粒子の凝集を生じさせる目的で用いられる共沈剤等は、共沈剤等自体が導電性を有するために、得られる磁性粉体や硬化物の磁気特性に影響を与える虞があることから使用しないことが好ましい。
(3.磁性粉体の製造)
分散媒を除去する工程は、分散媒を除去し、分散媒と分離された分散剤で被覆された磁性粒子を含む固体成分を加熱して、残存する溶媒の量をさらに減少させることが好ましい。そして、その後、固体成分が凝集していた場合には、これを再粉末化して磁性粉体を得る工程をさらに有する。
まず、凝集沈降物等の固体成分をさらにろ別してアルコールや残余の分散媒を分離し、加熱する。
急速な高温の加熱を行うと磁性粒子が均一に乾燥されなかったり、磁性粒子間に残存するアルコールが急速に体積膨張することにより磁性粒子が飛び散ったりする虞があるため、乾燥温度は、70℃〜200℃の範囲とすることが好ましく、100℃〜150℃の範囲とすることがより好ましい。又はじめは60℃〜80℃にて1時間程度乾燥し、その後、温度を100℃〜150℃とする等、2段階の乾燥工程としてもよい。
乾燥装置としては、所定の温度に昇温した対流式オーブンに投入して乾燥する方法、ロータリーキルンに投入して乾燥する方法等が好ましい。乾燥時間は、5時間〜10時間が好ましく、6時間〜9時間程度がより好ましい。加熱後、放置して冷却することで、乾燥を終了する。放冷は1〜2時間程度でよい。
溶剤が残存している場合、磁性粒子表面がべたつくので、手指接触により、ベタつきを感じない程度まで乾燥することが好ましい。
乾燥後に、固体成分を粉末化する工程に移行し、前工程で凝集した固体成分は再粉末化される。再粉末化は、例えば、凝集した固体成分を粉砕することで行われ、粉末化されて得られた粉末が本発明の磁性粉体となる。
粉砕を行う場合、粉砕前の乾燥状態において、シランカップリング剤を均一に乾燥後の粒子表面に散布することも好ましい。シランカップリング剤は、磁性粒子表面に吸着して後述する樹脂材料との密着性を向上させることができる。
本発明に用いうるシランカップリング剤としては、磁性粒子に吸着しうる官能基を有するものであれば、公知のものを適宜使用すればよい。
シランカップリング剤としては、例えば、信越化学工業(株)製、KBM−403(商品名)等が挙げられる。
シランカップリング剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
シランカップリング剤の添加量は、乾燥した粒子100質量部に対して、0.5質量部〜1.5質量部の範囲であることが好ましい。
粉砕は、カッターミキサー、ヘンシェルミキサー等の、圧縮応力や剪断応力を付与しうる公知の粉砕装置で行うことが好ましい。乳鉢、臼等によるずり応力の掛かる粉砕は、得られる磁性粉体の磁気特性に影響を与えるため、好ましくない。
このようにして本発明の磁性粉体を得る。本発明の磁性粉体は、磁性粒子表面の少なくとも一部が、磁性流体に由来する分散剤や所望により添加されるシランカップリング剤等の有機成分で被覆されている。
磁性粉体の表面に有機成分が存在することは、熱示差分析等により確認することができる。
[ゴム材料・樹脂材料]
電波透過材は、ゴム材料及び樹脂材料からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する。ゴム材料及び樹脂材料は、成形体を得る際の成形材料として機能する。以下、「ゴム材料及び樹脂材料からなる群より選ばれる少なくとも一種」を「有機成形材料」と称することがある。
(ゴム材料)
ゴム材料としては、特に制限はなく、電波透過材の使用目的又は求められる性状等に応じて選択すればよく、例えば、天然ゴム、合成ゴム〔例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、エチレンプロピレンゴム(EPM,EPDM)、シリコーンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、アクリルゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴム等〕などを挙げることができる。中でも、耐油性や入手が容易な点で、シリコーンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)等が好ましい。
シリコーンゴムとしては、2液反応型シリコーンゴムであってもよく、例えば、シリコーン主剤(ミラブル型シリコーン TSE221−5U、TSE260−5U、TSE261−5U、以上モメンテイブ・パフォーマンス・ジャパン社製)、KE75S−U、KE555−U 以上、信越化学工業(株)製)及び加硫剤(ミラブル型シリコーン TC8、モメンテイブ・パフォーマンス・ジャパン社製)により加熱硬化する熱硬化型シリコーンゴムでもよい。
〔樹脂材料〕
樹脂材料としては、特に制限はなく、電波透過材の使用目的に応じて、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂から適宜選択される。
本発明に使用しうる樹脂材料の代表的な例としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリイミド樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂等が挙げられ、電波透過材の使用目的に応じて1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。
ゴム材料及び樹脂材料は、いずれか一方を用いてもよいし、両方を併用してもよい。また、ゴム材料及び樹脂材料は、それぞれ、透過部材に求められる性状に応じて、1種単独で用いるほか、2種以上を併用してもよい。
〔他の成分〕
電波透過材には、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、更に他の成分を含んでいてもよい。
電波透過材が含みうる他の成分としては、例えば、架橋剤、磁性を有しない無機粒子、発泡剤、充填剤、老化防止剤、加硫剤、硬化促進剤、離型剤や充填剤等が挙げられる。
架橋剤としては、特に限定されず、熱硬化性樹脂と架橋し得るものであれば適宜使用することができる。例えばイミダゾール系架橋剤、尿素系架橋剤、高級脂肪酸金属塩、トリフェニルホスフィン等が挙げられる。
離型剤としては、シリカ粒子、酸化チタン粒子等の磁性を有しない無機粒子、カルナバワックス、キャンデリラワックス、エステルワックス等のワックス類等が挙げられる。
<電波透過材の製造>
本発明の電波透過材は、既述の工程により得られた磁性粉体と樹脂材料とを混合して、磁性粉体と樹脂材料との混合物を得る工程と、必要に応じて得られた混合物を成形して成形体を作製する工程と、を実施することにより得ることができる。
(磁性粉体と有機成形材料との混合物を得る工程)
本工程では、前工程で得られた本発明に係る磁性粉体と有機成形材料とを混合して、磁性粉体と有機成形材料との混合物を得る。混合物には、所望により他の成分を含んでいてもよい。
得られた混合物に含まれる有機成形材料が、電波透過材の成形用材料となる。
混合物の調製は、磁性粉体と、粉末状、ペレット状、或いは粘土状の有機成形材料から選択される少なくとも一種以上とを併せて撹拌することで行われる。

混合物の均一性をより向上させる観点からは、磁性粉体に粉末状、ペレット状、或いは粘土状の有機成形材料を投入し、一軸又は二軸押出機もしくは2本ロールで混練することが好ましい。混練する温度や混練時間は使用する樹脂材料に応じて適宜調整すればよい。
混練が溶融混練の場合、均一混合の観点からは、予め溶融した有機成形材料に本発明に係る磁性粉体を投入するよりも、粉体状或いはペレット状等の固体状態の有機成形材料と磁性粉体とを混合し、昇温して溶融混練する方が好適である。
溶融混練としては、例えば、ローラー型等の各種ブレードを使用した高剪断型二軸混合装置などを用いて、樹脂材料の軟化温度以上の温度に加熱して混練する方法などが挙げられる。
混練が2本ロールを用いて行なわれる場合、粘土状の有機成形材料をローラー上で圧縮混練後、磁性粉体を加えて混練する方法が挙げられる。
有機成形材料と磁性粉体との混合比率は、目的とする磁力の強さ、成形体の強度等、必要に応じて適宜選択される。
電波透過材に十分な磁力を付与することができ、且つ、磁性粉体の均一分散が容易であるという観点からは、電波透過材に含まれる磁性粉体の含有量は、電波透過材全量に対して20質量%〜90質量%であることが好ましく、30質量%〜85質量%であることがより好ましい。この点を考慮すれば、電波透過材における有機成形材料の含有量は、磁性粉体100質量部に対して、有機成形材料が10質量部〜80質量部であることが好ましく、15質量部〜70質量部であることがより好ましい。
(成形体を作製する工程)
前工程で得られた磁性粉体と有機成形材料からなる混合物を、必要に応じて、有機成形材料の種類、物性等に応じて成形加工することで、目的とする形状の電波透過材を得ることができる。
電波透過材の成形方法としては、使用する樹脂材料の特性に応じて、各種の成形方法を採用することができる。成形方法としては、例えば、トランスファー成形、射出成形、押出成形、注型成形、圧縮成形、ディッピング成形等が挙げられる。これらの成形方法を、成形体としての電波透過材の形状に応じて適宜選択して適用すればよい。
電波透過材の形状には、特段の定めはなく、何れの形状の成形体とした場合でも、磁力が付与され、且つ、優れた電波透過性を有する。
電波透過材は、成形後、さらに再加熱処理されることが好ましい。再加熱により、成形体の硬度をより高めることができる。再加熱処理は、熱対流式オーブン等の加熱装置を用いて行うことができる。
また、再加熱条件については、シール部材の組成又は成形体の形状等により適宜選択することができる。再加熱温度としては、100℃〜300℃の範囲とすることができる。また、再加熱時間は、再加熱温度により異なるが、1時間〜3時間の範囲とすることができる。
電波透過材を、例えば、壁材、展示用パネル等に用いる場合には、平板状に成形することができる。
また、非接触式充電パネル等に用いる場合には、目的に応じた形状で容易に成形体を形成することができる。
<電波透過部材>
既述の本発明の電波透過材は、成形体としてそのまま使用してもよいが、任意の基材表面に本発明の電波透過材を備えることで、基材に磁力付与性電波透過材としての機能が付与された電波透過部材とすることができる。
本発明の電波透過部材は、基材上に、既述の本発明の電波透過材を備える電波透過部材である。
電波透過材を備えるとは、基材の少なくとも一部の任意の領域に電波透過材を備えることを指し、例えば、シート状の基材表面に電波透過材からなる層を設ける態様、成形体である基材の所望の領域に電波透過材を設ける態様などが挙げられる。
電波透過部材に用いる基材には特に制限はない。
形状としては、例えば、シート状の可撓性の基材を用いることで、磁力付与性で、且つ、電波透過性を有するシートを得ることができる。得られたシートは、磁力付与性電波透過材としての機能を備え、種々の目的で必要に応じて使用することができる。
例えば、接着剤層を有するシート状の基材の、接着剤層を有しない側の表面に本発明の電波透過材からなる層を設けて壁紙とするか、或いは、さらに、基材上に設けられた電波透過材からなる層の表面に任意の意匠を施して壁紙とすることができる。
得られた電波透過材からなる層を有する壁紙を、壁面に貼付することで、任意の壁面に電波透過性を低下させずに、磁力を付与することができる。
樹脂、セッコウ、セメント、ゴム等、有機材料、無機材料から選ばれた電波透過性の材料で構成された成形体を基材として、基材表面に、本発明の電波透過材を備えることで種々の形状、及び物性を有する電波透過部材とすることができる。
電波透過性の展示パネル等を形成する場合には、パネル全体を本発明の電波透過材で構成してもよいが、樹脂製ボード、木製ボード、セッコウボード等、電波を遮断したり、吸収したりしない材料のボードを基材として、表面に本発明の電波透過材からなる層を設けることで、磁力付与性電波透過部材としてのボードが得られる。磁力付与性電波透過部材は、内装材として使用したり、電磁パネルとして任意の場所に設置したりすることができる。
基材自体に必要な強度等の物性を有するものを用いることで、既述の本発明の電波透過材を構成する樹脂材料の選択の自由度が向上するという利点をも有する。
その他、任意の樹脂成形体の表面に本発明の電波透過材からなる層を形成することで、電波透過部材とすることができる。
例えば、非接触式充電器において、モバイル等を磁力により仮固定させたい部分の表面に、本発明の電波透過材からなる層を設けることで、当該部分のみに磁力付与性電波透過材の領域を有する部材とすることができる。
従って、本発明の電波透過材は、成形体として使用するのみならず、任意の基材表面に電波透過材からなる層を設けることで、種々の用途に使用することができる。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例によって、何ら限定されるものではない。なお、以下、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を表す。
[実施例1−1]
1.磁性粉体の調製
磁性流体(EXP.12038、フェローテック社製、分散剤により被覆された磁性粒子(平均一次粒子径:15nm、磁性粒子:マグネタイト、分散剤:オレイン酸ナトリウム、分散媒:イソパラフィン)を50ml分取し、エタノール(85%水溶液)を50ml添加して、よく撹拌し、磁性粒子を凝集沈降させる。沈降時間は24時間とした。その後、エタノールをろ別し、磁性粒子の凝集沈降物を得た。
得られた凝集沈降物を平らにならし、115℃に昇温した対流式オーブンに投入した。対流式オーブン中で8時間加熱乾燥し、その後、2時間放置冷却した。乾燥後の磁性粉体を熱示差分析したところ、無機成分82%及び有機成分18%を含むことが確認された。これにより、磁性粉体の表面の少なくとも一部に、磁性流体に由来する有機成分(界面活性剤)が存在することが確認された。
その後、粉体凝集物を、ミキサーを使用して微粉になるまで粉砕し、磁性粉体を得た。粉砕後の磁性粉体の平均粒子径は28nmであった。なお、本測定にはSympatec GmbH社製Heros Partical Size Analysis windox5を用いた。
2.磁性粉体組成物の製造
シリコーン樹脂主剤(ミラブル型シリコーン TSE221−5U、モメンテイブ・パフォーマンス・ジャパン製)及び加硫剤(ミラブル型シリコーン TC8、モメンテイブ・パフォーマンス・ジャパン製)を、混練装置(2本ロール、東洋精機製作所)にて下記の条件で混練し、混練物が透明になった時点で、上記の磁性粉体を、磁性粉体とシリコーン樹脂材料との総量に対する磁性粉体の含有比率が40%となるように投入し、さらに混練することにより、シリコーン樹脂を含有する磁性粉体組成物を得た。
<混練条件>
・配合割合:シリコーン主剤 100質量部、加硫剤0.5質量部
・混練温度:40℃
・回転数:定速回転(機器由来)
・混練時間:30分間
3.電波透過材の作製
上記のようにして得られた磁性粉体組成物を用いて、下記の加熱条件にてプレス成形し縦15mm×横15mm×高さ2mmの電波透過材を得た。その後、その電波透過材を下記の再加熱条件で再加熱して、実施例1−1の電波透過材を得た。
<a.加熱条件>
・プレス圧:30トン
・プレス温度:170℃
・プレス時間:10分間
<b.再加熱条件>
・装置:熱対流式オーブン
・再加熱温度:200℃
・再加熱時間:30分間
4.電波透過材の評価
(外観評価)
得られた板状の電波透過材の外観を目視で観察したところ、磁性粉体と樹脂との分離に起因する亀裂や表面凹凸等は観察されず、外観に優れた成形体であった。
(電波透過性)
得られた実施例1−1の電波透過材成形体の電波透過性を近傍界、遠方界のそれぞれについて評価した。
近傍界とは10Hzから1GHzの範囲の周波数を示し、遠方界とは1GHから18GHzの範囲の周波数を示す。
近傍界の測定は、KEC法により行い、遠方界の測定は、同軸管透過法により行った。
(KEC法)
KEC法とは、社団法人関西電子工業振興センターで開発された電磁波シールド効果測定方法である。電波の送信には標準信号発生器を、受信には電気計測器:スペクトラムアナライザをそれぞれ用い、板状の電波透過材を両端の治具で挟み込み、標準信号発生器より発生した電波を、スペクトラムアナライザを用いて受信し、発信した電波と受信した電波との強度を測定し、下記式に基づいて近傍電磁界(近傍界)のシールド性を測定する方法である。
KEC法におけるシールド効果は、下記の式で表される。
SE(電界)=20log(Ex/E0)
上記式中、E0はシールド材がないときの電界強度を表し、Exはシールド材があるときの電界強度を表す。
SE(磁界)=20log(Hx/H0)
上記式中、H0は、シールド材がないときの磁界強度を表し、Hxは、シールド材があるときの磁界強度を表す。
KEC法により測定した近傍界の電波透過性の結果を図1に示した。
図1に示すように近傍界における電波シールド効果は5dB以下であり、実施例1−1の電波透過材は近傍界において電波透過性であることが確認された。
(同軸管透過法)
同軸管透過法は、遠方界におけるシールド効果を測定する方法であり、具体的には、テーパ状同軸管を2本対にして、内導体と外導体の間に板状の電波透過材を取り付け、ネットワークアナライザ(アンリツ社製、商品名37247C)を用いて周波数が500MHz〜18GHzの範囲における透過減衰量(S21)を測定する方法である。
同軸管透過法により測定した遠方界の電波透過性の結果を図2に示した。
図2に示すように遠方界における電波シールド効果は−5dB以上であり、実施例1−1の電波透過材は遠方界においても電波透過性であることが確認された。
(磁石の磁着性)
52gの治具を吊り下げた直径16.5mm×長さ12mmの円筒形状の451ミリテスラのネオジム磁石を、得られた板状の電波透過材に磁着させ、磁石の磁着性を確認した。その結果、問題なく磁着した。
その後、治具の重さを変更して磁着性を確認したところ、100g以上の荷重の治具を磁力により仮固定しうることが確認された。このことから実施例1−1の電波透過材は磁力付与性を有することがわかった。
〔実施例1−2〜1−4〕
実施例1において用いた磁性粉体の含有比率をそれぞれ60%(実施例1−2)、65%(実施例1−3)、及び70%(実施例1−4)に変更した以外は、実施例1−1と同様にして板状の電波透過材を作製した。
実施例1−2〜1−4の板状の電波透過材について、実施例1−1と同様に外観評価を行なった。
外観評価では、得られた板状の成形体の外観を目視で観察したところ、磁性粉体と樹脂との分離に起因する亀裂や表面凹凸等は観察されず、いずれも、外観に優れた成形体であった。
実施例1−2〜1−4の板状の電波透過材について、実施例1−1と同様にシールド効果の評価を行なった。近傍界の測定結果を図1に、遠方界の測定結果を図2にそれぞれ示した。図1及び図2に明らかなように、実施例1−1と同様に、実施例1−2〜1−4の電波透過材はシールド効果はそれぞれ、5dB以下、−5dB以上であり、電波透過性であることが確認された。
実施例1−2〜1−4の板状の電波透過材について、実施例1−1と同様に磁石の磁着性の評価を行なった。実施例1−1と同様に、実施例1−2〜1−4の電波透過材はいずれも磁着性を示し、100g以上の荷重の治具を磁力により仮固定しうることが確認された。このことから、実施例1−2〜1−4の電波透過材はいずれも磁力付与性を有することがわかった。
〔比較例1〕
実施例1−1に記載の磁性粒子の凝集沈降物を300℃で8時間加熱し、磁性流体に由来する有機成分(分散剤)を除去し磁性粉体を得た。この磁性粉体は明らかに酸化が進んでいたが実施例1−1に記載した方法により磁性粉体組成物を用いて比較例1の成形体を得た。ここでの混練条件は、実施例1−1と同様とした。
比較例1の板状の磁性粉体組成物成形体について、実施例1−1と同様にして外観評価を行なった。得られた板状の成形体の外観を目視で観察したところ、磁性粉体と樹脂との分離に起因する亀裂や表面凹凸等は観察されず、外観に優れた成形体であった。なお、成形体は、磁性粉体組成物に含まれる磁性粉体の酸化に起因して成形体は赤茶けた色相であった。
比較例1の板状の磁性粉体組成物成形体について、実施例1−1と同様にして、シールド効果の評価を行なった。近傍界の測定結果を図3に、遠方界の測定結果を図4にそれぞれ示した。また、対照として、実施例1−1の測定結果を併記した。
図3及び図4に明らかなように、近傍界では、比較例1の電波透過材のシールド効果は、実施例1−1と同様に5dB以下であり、電波透過性であることが確認された。一方、遠方界では、シールド効果が−5dB未満の部分があり、本発明で定義する電波透過性を有しないものであることが分かる。
比較例1の電波透過材について、実施例1−1と同様に磁石の磁着性の評価を行なった。実施例1−1と同様に、比較例1の電波透過材は磁着性を示し、100g以上の荷重の治具を磁力により仮固定しうることが確認された。このことから、比較例1の電波透過材は磁力付与性を有することがわかった。
〔比較例2〕
実施例1−1に記載の磁性粉体の代わりに鉄粉(純鉄、JER製、JIP KB90:商品名)を使用した以外は実施例1−1と同様にして磁性粉体組成物の成形体を得た。
比較例2の板状の成形体について、実施例1−1と同様の外観評価を行なった。得られた板状の成形体の外観を目視で観察したところ、磁性粉体と樹脂との分離に起因する亀裂や表面凹凸等は観察されず、外観に優れた成形体であった。
比較例2の板状の磁性粉体組成物成形体について、実施例1−1と同様にして、シールド効果の評価を行なった。近傍界の測定結果を図3に、遠方界の測定結果を図4にそれぞれ示した。
図3及び図4に明らかなように、近傍界では、実施例1−1と同様に、比較例2の電波透過材のシールド効果は5dB以下であり、電波透過性であることが確認された。一方、遠方界では、シールド効果が−5dB未満の場合があり、特に、14GHz〜16GHzの範囲ではシールド性が−20dB未満であり、本発明で定義する電波透過性を有しないものであることが分かる。
比較例2の電波透過材について、実施例1−1と同様に磁石の磁着性の評価を行なった。実施例1−1と同様に、比較例2の電波透過材は磁着性を示し、100g以上の荷重の治具を磁力により仮固定しうることが確認された。このことから、比較例2の電波透過材は磁力付与性を有することがわかった。
〔対照例〕
実施例1−1と同様の電波シールド効果の評価において、ブランク、即ち、空気が存在する条件にて、近傍界、及び遠方界の電波シールド性を測定した。近傍界の測定結果を図1及図3に、遠方界の測定結果を図2及び図4にそれぞれ示した。ブランクの場合、電波遮断要因はないものの、若干の電波シールド性の変動が観察された。この結果より、空気の存在によっても電波シールド性の測定ノイズが観測されることがわかる。
〔実施例2〕
実施例1−1において用いたシリコーン樹脂を含有する磁性粉体組成物を、以下のように調製したABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂)を含有する磁性粉体組成物に代えた以外は、実施例1−1と同様にして板状の電波透過材を作製した。
ABS樹脂(日本エイアンドエル(株)製、クララスチック K−2540A(パウダー):商品名)を、質量比1:1でメチルエチルケトン(MEK)にて溶解した後、実施例1−1で用いた磁性粉体を、ABS樹脂と磁性粉体とを含む磁性粉体組成物に対し、磁性粉体が40%となる量添加し、十分に混合した。得られた混合物を型に入れ、7日間放置して溶媒を除去し、板状の磁性粉体組成物の成形体を得た。
実施例2の電波透過材について、実施例1−1と同様の外観評価を行なった。得られた板状の成形体の外観を目視で観察したところ、磁性粉体と樹脂との分離に起因する亀裂や表面凹凸等は観察されず、外観に優れた成形体であった。
電波透過性については、実施例1−1と同様にして、遠方界1Gz〜18Gzまでの電波シールド性を測定した。結果を図5に示した。また、対照として、実施例1−1の測定結果を図5に併記した。
図5に明らかなように、遠方界において、実施例2の電波透過材のシールド効果は−5dB以上であり、電波透過性であることが確認された。
実施例2の電波透過材について、実施例1−1と同様に磁石の磁着性の評価を行なった。実施例1−1と同様に、実施例2の電波透過材は磁着性を示し、100g以上の荷重の治具を磁力により仮固定しうることが確認された。このことから、実施例2の電波透過材は磁力付与性を有することがわかった。
〔実施例3〕
熱硬化性樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合物、商品名:ZX−1059、新日鉄化学社製、エポキシ当量:160〜170)100質量部、硬化剤(ポリ(アルキレンオキシド)ジアミン、商品名:ジェファーミンD‐230、ハインツマン社製)35質量部、磁性粉体の混合物全量に対する含有量を40%として以下の手順により板状の電波透過材を作製した。
熱硬化性樹脂と硬化剤と磁性粉体の混合物を一軸押出混合機にて加熱溶融、圧延冷却し、シート状にした後、ミキサーにて破砕し、磁性粉体と樹脂材料とを含む粉末状の電波透過材を得た。
得られた粉末状の電波透過材を、テストピース用金型を備えた押出成形機の金型に投入し、長さ15mm、幅15mm、厚さ0.5mmの板状に成形した。
いずれの混合物も、混練性、及びプレス成形性共に問題がないことを確認した。
実施例4の電波透過材について、実施例1−1と同様に外観評価を行なった。得られた板状の成形体の外観を目視で観察したところ、磁性粉体と樹脂との分離に起因する亀裂や表面凹凸等は観察されず、外観に優れた成形体であった。
電波透過性については、実施例1−1と同様にして遠方界の電波シールド性を測定した。結果を図5に示した。
図5に明らかなように、遠方界において、実施例3の電波透過材のシールド効果は−5dB以上であり、電波透過性であることが確認された。
実施例3の電波透過材について、実施例1−1と同様に磁石の磁着性の評価を行なった。実施例1−1と同様に、実施例3の電波透過材は磁着性を示し、100g以上の荷重の治具を磁力により仮固定しうることが確認された。このことから、実施例3の電波透過材は磁力付与性を有することがわかった。
本発明の磁力付与性電波透過材は、磁力を有し、磁石による部材の仮固定が可能であり、且つ、設置箇所の電波を遮断しない電波透過性を有することから、磁石による資料や物品の仮固定が可能であり、且つ、設置箇所の電波透過性を妨げないことから、磁力付与性壁紙、ディスプレイボード、ホワイトボード等の電波透過部材、非接触型の充電器等、種々の用途に有用である。

Claims (4)

  1. 磁性粒子、分散剤、及び分散媒を含有する磁性流体から、分散媒を除去して得られる、表面の少なくとも一部が前記分散剤で被覆された、平均一次粒子径が5nm〜55nmである磁性粉体と、ゴム材料及び樹脂材料から選択される少なくとも一種と、を含み、同軸管透過法で測定した場合に1GHz〜18GHzの周波数において電波シールド性が−5dB以上であり、且つ、10Hz〜1GHzの周波数において、KEC法で測定した場合に、電波シールド性が5dB以下であり、磁石により部材を仮固定するための成形体である電波透過材。
  2. 前記磁性粉体の含有量が、電波透過材の全量に対し、30質量%〜90質量%である請求項1に記載の電波透過材。
  3. 前記分散剤が、界面活性剤である請求項1又は請求項2に記載の電波透過材。
  4. 基材上に、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の電波透過材を備える電波透過部材。
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