発明の分野:
本発明は、オレキシン受容体1型(OX1R)に対するヒトモノクローナル抗体及び癌の処置のためのその使用に関する。
発明の背景:
オレキシン(ヒポクレチン)は、視床下部において産生される2つの神経ペプチドを含む:オレキシンA(OX−A)(33アミノ酸ペプチド)及びオレキシンB(OX−B)(28アミノ酸ペプチド)(Sakurai T. et al., Cell, 1998, 92, 573-585)。オレキシンはラットにおける飼料消費を刺激することが判明し、このことは、摂食行動を調節する中枢性フィードバック機序におけるメディエーターとしてのこれらのペプチドの生理学的役割を示唆する。オレキシンは、睡眠状態と覚醒状態を調節し、過眠症患者又は不眠症患者に対する可能性ある新規な治療アプローチを開拓する。オレキシンはまた、覚醒、報酬、学習、及び記憶において役割を果たすことが示されている。2つのオレキシン受容体がクローニングされ、哺乳動物において特徴付けられている。それらはGタンパク質共役受容体(7回膜貫通受容体)のスーパーファミリーに属する(Sakurai T. et al., Cell, 1998, 92, 573-585):オレキシン−1受容体(OX1R又はHCTR1)は、OX−BよりもOX−Aに対してより選択的であり、オレキシン−2受容体(OX2R又はHCTR2)はOX−AならびにOX−Bに結合する。近年の研究は、オレキシンによるOX1Rの活性化が、大腸癌化学療法において最も一般的に使用される薬物に対して耐性である時でさえ、インビトロ及びインビボにおける大腸癌細胞の頑強なアポトーシスを促進することができることを示す(Voisin T, El Firar A, Fasseu M, Rouyer-Fessard C, Descatoire V, Walker F, Paradis V, Bedossa P, Henin D, Lehy T, Laburthe M. Aberrant expression of OX1 receptors for orexins in colon cancers and liver metastases: an openable gate to apoptosis. Cancer Res. 2011 May 1;71(9):3341-51)。特に、OX1Rは、Gqにより媒介されるホスホリパーゼC活性化及び細胞内カルシウム移行に関連していない機序を通して癌細胞株のアポトーシスを促進することが示された。オレキシンは、OX1R、ITIM、及びITSMにおける2つのチロシンベースモチーフのチロシンのリン酸化を実際に誘導し、その結果、ホスホチロシンホスファターゼSHP−2が補充され、その活性化はミトコンドリアのアポトーシスに関与する(Voisin T, El Firar A, Rouyer-Fessard C, Gratio V, Laburthe M. A hallmark of immunoreceptor, the tyrosine-based inhibitory motif ITIM, is present in the G protein-coupled receptor OX1R for orexins and drives apoptosis: a novel mechanism. FASEB J. 2008 Jun;22(6):1993-2002.;El Firar A, Voisin T, Rouyer-Fessard C, Ostuni MA, Couvineau A, Laburthe M. Discovery of a functional immunoreceptor tyrosine-based switch motif in a 7-transmembrane-spanning receptor: role in the orexin receptor OX1R-driven apoptosis. FASEB J. 2009 Dec;23(12):4069-80. doi: 10.1096/fj.09-131367. Epub 2009 Aug 6)。注目すべきは、すべての原発性結腸直腸腫瘍は、その場所及びデュークス分類によるステージに関係なくOX1Rを発現し、一方、隣接する正常な結腸細胞ならびに対照の正常組織は陰性であった。その他に、OX1Rの発現は近年、膵臓癌、肝臓癌腫、及び進行前立腺癌において確認されている。したがって、先行技術は、OX1Rが癌のアキレス腱である(化学療法耐性の場合でさえ)ことを支持し、OX1Rが癌療法のための妥当な標的であることを示唆する。しかしながら、癌細胞のアポトーシスを促進することのできるOX1Rに対する抗体は、これまで先行技術に全く記載されていない。
発明の要約:
本発明は、オレキシン受容体1型(OX1R)に対するヒトモノクローナル抗体及び癌の処置のためのその使用に関する。特に、本発明は、特許請求の範囲によって定義される。
発明の詳細な説明:
本発明は、OX1Rに対するヒトモノクローナル抗体を提供する。特に、本発明のヒトモノクローナル抗体は、それらがヒト抗体であり、ヒトOX1Rに対して高い親和性で結合し、マウス型とヒト型のOX1Rの間で交差反応することができ、癌細胞のアポトーシス及び腫瘍発生のインビボでの抑制を促進することができるというような1つ以上の機能的特性によって特徴付けられる。特に、本発明は、実施例に記載されているようなC2抗体から導かれた抗体を提供する。
本明細書において使用する「OX1R」という用語は当技術分野におけるその一般的な意味を有し、ヒトにおいてHCRTR1遺伝子によってコードされるタンパク質である、ヒポクレチン受容体1型としても知られるオレキシン受容体型を指す。本発明によると、OX1Rは、Gqにより媒介されるホスホリパーゼC活性化及び細胞内カルシウム移行に関連していない機序を通して、様々な癌細胞株のアポトーシスを促進する。オレキシンは、OX1R、ITIM、及びITSMにおける2つのチロシンベースモチーフのチロシンのリン酸化を実際に誘導し、その結果、ホスホチロシンホスファターゼSHP−2が補充され、その活性化がミトコンドリアのアポトーシスに関与する(Voisin T, El Firar A, Rouyer-Fessard C, Gratio V, Laburthe M. A hallmark of immunoreceptor, the tyrosine-based inhibitory motif ITIM, is present in the G protein-coupled receptor OX1R for orexins and drives apoptosis: a novel mechanism. FASEB J. 2008 Jun;22(6):1993-2002.;El Firar A, Voisin T, Rouyer-Fessard C, Ostuni MA, Couvineau A, Laburthe M. Discovery of a functional immunoreceptor tyrosine-based switch motif in a 7-transmembrane-spanning receptor: role in the orexin receptor OX1R-driven apoptosis. FASEB J. 2009 Dec;23(12):4069-80. doi: 10.1096/fj.09-131367. Epub 2009 Aug 6.)。本発明のヒト抗体は、同じ機序を介して癌細胞のアポトーシスを促進することができると考えられる。
本明細書において使用する「抗体」又は「免疫グロブリン」という用語は同じ意味を有し、本発明において同等に使用されるだろう。本明細書において使用する「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち、抗原に免疫特異的に結合する抗原結合部位を含有する分子を指す。したがって、抗体という用語は、完全な抗体分子だけでなく、抗体断片ならびに抗体及び抗体断片の変異体(誘導体を含む)も包含する。天然抗体では、2本の重鎖は、互いにジスルフィド結合によって連結され、各々の重鎖はジスルフィド結合によって軽鎖に連結されている。ラムダ(l)及びカッパ(κ)という2種類の軽鎖がある。抗体分子の機能的活性を決定する5つの主要な重鎖クラス(又はアイソタイプ)が存在する:IgM、IgD、IgG、IgA、及びIgE。各々の鎖は、明確に異なる配列ドメインを含有する。軽鎖は、2つのドメイン、すなわち可変ドメイン(VL)及び定常ドメイン(CL)を含む。重鎖は、4つのドメイン、すなわち1つの可変ドメイン(VH)及び3つの定常ドメイン(CH1、CH2、及びCH3、まとめてCHと称する)を含む。軽鎖(VL)及び重鎖(VH)の両方の可変領域は、抗原に対する結合認識及び特異性を決定する。軽鎖の定常領域ドメイン(CL)及び重鎖の定常領域ドメイン(CH)は、抗体鎖の会合、分泌、胎盤通過移動、補体との結合、及びFc受容体(FcR)への結合などの重要な生物学的特性を付与する。Fv断片は、免疫グロブリンのFab断片のN末端部分であり、1本の軽鎖及び1本の重鎖の可変部分からなる。抗体の特異性は、抗体結合部位と抗原性決定基との間の構造的相補性に存する。抗体結合部位は、超可変領域又は相補性決定領域(CDR)に主に由来する残基から作られる。時に、非超可変領域又はフレームワーク領域(FR)に由来する残基が、抗体結合部位に関与し得るか、又は、ドメイン構造全体に影響を及ぼし得、したがって、結合部位に影響を及ぼし得る。相補性決定領域すなわちCDRは、ネイティブな免疫グロブリン結合部位の天然Fv領域の結合親和性及び特異性を一緒に規定するアミノ酸配列を指す。免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖は各々、それぞれL−CDR1、L−CDR2、L−CDR3、及びH−CDR1、H−CDR2、H−CDR3と称される、3つのCDRを有する。抗原結合部位は、それ故、典型的には、重鎖及び軽鎖の各々のV領域に由来するCDRセットを含む、6つのCDRを含む。フレームワーク領域(FR)は、CDR間に挿入されたアミノ酸配列を指す。抗体可変ドメイン内の残基は、Kabat et al.によって考案された体系に従って慣習的に番号付けされる。この体系は、Kabat et al., 1987、Sequences of Proteins of Immunological Interest、アメリカ合衆国保健福祉省、アメリカ国立衛生研究所、米国(本明細書では以後「Kabat et al.」)に示されている。この番号付け体系が本明細書において使用される。Kabat残基の呼称は、配列番号の配列内のアミノ酸残基の直線的な番号付けと直接常に対応しているわけではない。実際の直線的なアミノ酸配列は、厳密なKabat番号付けよりも少ない又は追加されたアミノ酸を含有し得、これはフレームワーク領域であれ又は相補性決定領域(CDR)であれ、基本的な可変ドメイン構造の構造的成分の短縮又は構造的成分への挿入に相当する。所与の抗体についての正しいKabatによる残基の番号付けは、「標準的な」Kabatにより番号付けされた配列と、抗体の配列内の相同性を有する残基とをアラインさせることによって決定され得る。重鎖可変ドメインのCDRは、Kabat番号付け体系によると残基31〜35B(H−CDR1)、残基50〜65(H−CDR2)、及び残基95〜102(H−CDR3)に位置する。軽鎖可変ドメインのCDRは、Kabat番号付け体系によると残基24〜34(L−CDR1)、残基50〜56(L−CDR2)、及び残基89〜97(L−CDR3)に位置する。
本明細書において使用するように、本明細書において使用する「ヒト抗体」という用語は、ヒト免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を有する抗体を含むことを意図する。本発明のヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基を含み得る(例えば、インビトロでの無作為若しくは部位特異的突然変異誘発によって又はインビボでの体細胞突然変異によって導入される突然変異)。しかしながら、本明細書において使用する「ヒト抗体」という用語は、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植された抗体を含むことを意図するものではない。
本明細書において使用する「モノクローナル抗体」、「モノクローナルAb」、「モノクローナル抗体組成物」、「mAb」という用語又は同等な用語は、単一分子組成の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性及び親和性を示す。したがって、「ヒトモノクローナル抗体」という用語は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を有する単一の結合特異性を示す抗体を指す。
本発明によると、C2抗体のVH領域は、以下のように定義されている配列番号1の配列からなり、kabatにより番号付けされた配列は表Aに定義されている。
したがって、C2のH−CDR1は、配列番号1の31位のアミノ酸残基から35位のアミノ酸残基の範囲の配列によって定義される。
したがって、C2のH−CDR2は、配列番号1の50位のアミノ酸残基から66位のアミノ酸残基の範囲の配列によって定義される。
したがって、C2のH−CDR3は、配列番号1の99位のアミノ酸残基から109位のアミノ酸残基の範囲の配列によって定義される。
本発明によると、C2抗体のVL領域は、以下のように定義されている配列番号2の配列からなり、kabatにより番号付けされた配列は表Bに定義されている。
したがって、C2のL−CDR1は、配列番号2の23位のアミノ酸残基から36位のアミノ酸残基の範囲の配列によって定義される。
したがって、C2のL−CDR2は、配列番号2の52位のアミノ酸残基から58位のアミノ酸残基の範囲の配列によって定義される。
したがって、C2のL−CDR3は、配列番号2の91位のアミノ酸残基から100位のアミノ酸残基の範囲の配列によって定義される。
したがって、本発明は、C2のVL領域、VH領域、又は1つ以上のCDRの機能的変異体を含む抗体を提供する。本発明のヒトモノクローナル抗体の脈絡で使用されるVL、VH、又はCDRの機能的変異体は依然として、抗体が、親抗体(すなわちC2抗体)の親和性/結合力及び/又は特異性/選択性の少なくともかなりの割合(少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%又はそれ以上)を保持することを可能とし、場合によってはこのような本発明のヒトモノクローナル抗体は、親Abよりも大きな親和性、選択性及び/又は特異性を伴っていてもよい。このような機能的変異体は典型的には、親Abに対して有意な配列同一率を保持している。CDR変異体の配列は、大半が保存的な置換を通して親抗体配列のCDR配列とは異なり得;例えば、変異体における少なくとも約35%、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上(例えば約65〜95%、例えば約92%、93%、又は94%)の置換が保存的なアミノ酸残基の置換である。CDR変異体の配列は、大半が保存的な置換を通して親抗体配列のCDR配列とは異なり得;例えば、変異体における少なくとも10個、例えば少なくとも9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個、又は1個の置換が保存的なアミノ酸残基の置換である。本発明の脈絡において、保存的置換は、以下のように反映されるアミノ酸のクラス内での置換によって定義され得る:
脂肪族残基I、L、V、及びM
シクロアルケニルに関連した残基F、H、W、及びY
疎水性残基A、C、F、G、H、I、L、M、R、T、V、W、及びY
負に荷電した残基D及びE
極性残基C、D、E、H、K、N、Q、R、S、及びT
正に荷電した残基H、K、及びR
小さな残基A、C、D、G、N、P、S、T、及びV
非常に小さな残基A、G、及びS
ターンに関与する残基A、C、D、E、G、H、K、N、Q、R、S、P、及び形成に関与する残基T
フレキシブル残基Q、T、K、S、G、P、D、E、及びR。
より保存的な置換の分類としては:バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リジン−アルギニン、アラニン−バリン、及びアスパラギン−グルタミンが挙げられる。変異体CDRにおけるヒドロパシー/親水性特性及び残基の重量/サイズに関する保存もまた、C2のCDRと比較して実質的に保持されている。タンパク質に対して相互作用的な生物学的機能を付与する上でのヒドロパシーアミノ酸指標の重要性は当技術分野において一般的に理解されている。アミノ酸の相対的なヒドロパシー特徴は、結果として生じるタンパク質の二次構造に寄与し、これは次いでタンパク質と、他の分子、例えば酵素、基質、受容体、DNA、抗体、抗原などとの相互作用を規定することが認められている。各アミノ酸は、それらの疎水性及び荷電の特徴に基づいてヒドロパシー指標が割り当てられている。これらは:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/システイン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);トレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタミン酸(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパラギン酸(−3.5);アスパラギン(−3.5);リジン(−3.9);及びアルギニン(−4.5)である。類似の残基の保持もまた又は代替的に、BLASTプログラム(例えば、標準的な設定のBLOSUM62、オープンギャップ=11及びエクステンドギャップ=1を使用してNCBIを通して利用可能なBLAST2.2.8)の使用によって決定されるような、類似性スコアによって測定され得る。適切な変異体は典型的には、親ペプチドに対して少なくとも約70%の同一率を示す。
いくつかの実施態様では、本発明の抗体は、C2のH−CDR1に1個、2個、3個、4個、5個、又は6個の置換を含む。
いくつかの実施態様では、本発明の抗体は、C2のH−CDR2に1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、又は16個の置換を含む。
いくつかの実施態様では、本発明の抗体は、C2のH−CDR3に1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、又は10個の置換を含む。
いくつかの実施態様では、本発明の抗体は、C2のL−CDR1に1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、又は13個の置換を含む。
いくつかの実施態様では、本発明の抗体は、C2のL−CDR2に1個、2個、3個、4個、5個、又は6個の置換を含む。
いくつかの実施態様では、本発明の抗体は、C2のL−CDR3に1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、又は9個の置換を含む。
本発明によると、第二のアミノ酸配列に対して少なくとも50%の同一率を有する第一のアミノ酸配列は、第一の配列が、第二のアミノ酸配列に対して50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70;71;72;73;74;75;76;77;78;79;80;81;82;83;84;85;86;87;88;89;90;91;92;93;94;95;96;97;98;99;又は100%の同一率を有することを意味する。本発明によると、第二のアミノ酸配列に対して少なくとも70%の同一率を有する第一のアミノ酸配列は、第一の配列が、第二のアミノ酸配列に対して70;71;72;73;74;75;76;77;78;79;80;81;82;83;84;85;86;87;88;89;90;91;92;93;94;95;96;97;98;99;又は100%の同一率を有することを意味する。
いくつかの実施態様では、本発明のヒトモノクローナル抗体は、i)C2のH−CDR1に対して少なくとも50%の同一率を有するH−CDR1、ii)C2のH−CDR2に対して少なくとも50%の同一率を有するH−CDR2、及びiii)C2のH−CDR3に対して少なくとも50%の同一率を有するH−CDR3を含む重鎖を含む抗体である。
いくつかの実施態様では、本発明のヒトモノクローナル抗体は、i)C2のL−CDR1に対して少なくとも50%の同一率を有するL−CDR1、ii)C2のL−CDR2に対して少なくとも50%の同一率を有するL−CDR2、及びiii)C2のL−CDR3に対して少なくとも50%の同一率を有するL−CDR3を含む軽鎖を含む抗体である。
いくつかの実施態様では、本発明のヒトモノクローナル抗体は、i)C2のH−CDR1に対して少なくとも50%の同一率を有するH−CDR1、ii)C2のH−CDR2に対して少なくとも50%の同一率を有するH−CDR2、及びiii)C2のH−CDR3に対して少なくとも50%の同一率を有するH−CDR3を含む重鎖と、i)C2のL−CDR1に対して少なくとも50%の同一率を有するL−CDR1、ii)C2のL−CDR2に対して少なくとも50%の同一率を有するL−CDR2、及びiii)C2のL−CDR3に対して少なくとも50%の同一率を有するL−CDR3を含む軽鎖とを含む抗体である。
いくつかの実施態様では、本発明のヒトモノクローナル抗体は、i)C2のH−CDR1、ii)C2のH−CDR2、及びiii)C2のH−CDR3を含む重鎖を含む抗体である。
いくつかの実施態様では、本発明のヒトモノクローナル抗体は、i)C2のL−CDR1、ii)C2のL−CDR2、及びiii)C2のL−CDR3を含む軽鎖を含む抗体である。
いくつかの実施態様では、本発明のヒトモノクローナル抗体は、i)C2のH−CDR1、ii)C2のH−CDR2、及びiii)C2のH−CDR3を含む重鎖と、i)C2のL−CDR1、ii)C2のL−CDR2、及びiii)C2のL−CDR3を含む軽鎖とを含む抗体である。
いくつかの実施態様では、本発明のヒトモノクローナル抗体は、配列番号1に対して少なくとも70%の同一率を有する重鎖を含む抗体である。
いくつかの実施態様では、本発明のヒトモノクローナル抗体は、配列番号2に対して少なくとも70%の同一率を有する軽鎖を含む抗体である。
いくつかの実施態様では、本発明のヒトモノクローナル抗体は、配列番号1に対して少なくとも70%の同一率を有する重鎖と、配列番号2に対して少なくとも70%の同一率を有する軽鎖とを含む抗体である。
いくつかの実施態様では、本発明のヒトモノクローナル抗体は、配列番号1に対して同一である重鎖を含む抗体である。
いくつかの実施態様では、本発明のヒトモノクローナル抗体は、配列番号2に対して同一である軽鎖を含む抗体である。
いくつかの実施態様では、本発明のヒトモノクローナル抗体は、配列番号1に対して同一である重鎖と、配列番号2に対して同一である軽鎖とを含む抗体である。
本発明の抗体は、上記の態様の1つ以上の機能的若しくは構造的な特色によって、又は選択された機能的及び構造的な特色の任意の組み合せによって特徴付けられ得る。
本発明の抗体は、任意のアイソタイプであり得る。アイソタイプの選択は典型的には、所望のエフェクター機能、例えばADCC誘導によって先導され得る。例示的なアイソタイプは、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4である。ヒト軽鎖定常領域のカッパ又はラムダのいずれかを使用し得る。所望であれば、本発明のヒトモノクローナル抗体のクラスは、公知の方法によって切り替えられ得る。典型的なクラススイッチ技術を使用して、あるIgGサブクラスを別のサブクラスへと、例えばIgG1からIgG2へと変換し得る。したがって、本発明のヒトモノクローナル抗体のエフェクター機能は、様々な治療用途のために、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgE、又はIgM抗体へとアイソタイプを切り替えることよって変化し得る。いくつかの実施態様では、本発明の抗体は完全長抗体である。いくつかの実施態様では、完全長抗体は、IgG1抗体である。いくつかの実施態様では、完全長抗体はIgG4抗体である。いくつかの実施態様では、OX1R特異的IgG4抗体は、安定化されたIgG4抗体である。適切な安定化されたIgG4抗体の例は、上記のKabat et al.におけるようなEUインデックスに示されている、ヒトIgG4の重鎖定常領域内の409位のアルギニンがリジン、トレオニン、メチオニン、又はロイシン、好ましくはリジン(国際公開公報第2006033386号に記載)で置換されている抗体、及び/又は、ヒンジ領域がCys−Pro−Pro−Cys配列を含む抗体である。他の適切な安定化されたIgG4抗体は、国際公報第2008145142号に開示され、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。いくつかの実施態様では、本発明のヒトモノクローナル抗体は、ADCCなどのエフェクター機能を媒介する能力が低減するように又は更には消失するように突然変異させた、IgG4ではない型、例えばIgG1、IgG2又はIgG3の抗体である。このような突然変異は、例えば、Dall'Acqua WF et al., J Immunol. 177(2): 1129-1138(2006)及びHezareh M, J Virol. 75(24) : 12161-12168(2001)に記載されている。
フレームワーク領域又はCDR領域内で行なわれた修飾に加えて又はその代わりに、本発明の抗体は、典型的には抗体の1つ以上の機能的特性、例えば血清中半減期、補体との結合、Fc受容体との結合、及び/又は抗原依存性細胞傷害性などを改変させるためにFc領域内に修飾を含むように工学操作されていてもよい。更に、同じく抗体の1つ以上の機能的特性を改変させるために本発明のヒトモノクローナル抗体は化学的に修飾されていても(例えば、1つ以上の化学的部分を抗体に付着させることができる)、又はそのグリコシル化を改変させるために、修飾されていてもよい。例えば、本発明によって提供される抗体の親和性は、当技術分野において公知である任意の適切な方法を使用して改変させ得ることが理解されるだろう。それ故、本発明はまた、OX1Rに対して改善された親和性を有する、本発明の抗体分子の変異体にも関する。このような変異体は、CDRの突然変異(Yang et al., J. Mol. Biol., 254, 392-403, 1995)、鎖シャッフリング(Marks et al., Bio/Technology, 10, 779-783, 1992)、E.coliの突然変異株の使用(Low et al., J. Mol. Biol., 250, 359-368, 1996)、DNAシャッフリング(Patten et al., Curr. Opin. Biotechnol., 8, 724-733, 1997)、ファージディスプレイ(Thompson et al., J. Mol. Biol., 256, 77-88, 1996)、及びセクシャルPCR(Crameri et al., Nature, 391, 288-291, 1998)をはじめとする数多くの親和性成熟プロトコールによって得ることができる。Vaughan et al.(上記)はこれらの親和性成熟法を考察している。
いくつかの実施態様では、CHIのヒンジ領域は、ヒンジ領域内のシステイン残基の数が改変されるように、例えば増加又は減少するように修飾されている。このアプローチは更に、Bodmer et al.による米国特許第5,677,425号に記載されている。CHIのヒンジ領域内のシステイン残基の数は、例えば、軽鎖と重鎖の会合を促進するように、又は抗体の安定性を上昇若しくは低下させるように改変されている。
いくつかの実施態様では、本発明のヒトモノクローナル抗体は、その生物学的半減期を延長させるように修飾されている。様々なアプローチが可能である。例えば、1つ以上の以下の突然変異を導入することができる:Wardによる米国特許第6,277,375号に記載のようにT252L、T254S、T256F。あるいは、生物学的半減期を延長するために、Presta et al.による米国特許第5,869,046号及び第6,121,022号に記載のように、IgGのFc領域のCH2ドメインの2つのループから採用されたサルベージ受容体結合エピトープを含有するようにCHI領域又はCL領域内で抗体を改変させることができる。
いくつかの実施態様では、Fc領域は、少なくとも1つのアミノ酸残基を異なるアミノ酸残基で置換することによって改変され、これにより抗体のエフェクター機能は改変される。例えば、1つ以上のアミノ酸を、抗体が、エフェクターリガンドに対して改変された親和性を有するが、親抗体の抗原結合能を保持するように異なるアミノ酸残基で置換することができる、親和性が改変されたエフェクターリガンドは、例えば、Fc受容体又は補体のC1成分であり得る。このアプローチは更に、どちらもWinter et al.による米国特許第5,624,821号及び第5,648,260号に詳述されている。
いくつかの実施態様では、抗体が、改変されたC2qに対する結合及び/又は低減された若しくは消失した補体依存性細胞傷害性(CDC)を有するようにアミノ酸残基から選択された1つ以上のアミノ酸を異なるアミノ酸残基で置換することができ、このアプローチは更に、ldusogie et al.による米国特許第6,194,551号に詳述されている。
いくつかの実施態様では、1つ以上のアミノ酸残基を改変させて、これにより、抗体の補体結合能を改変させる。このアプローチは更に、Bodmer et al.によるPCR公開公報WO94/29351号に記載されている。いくつかの実施態様では、Fc領域は、1つ以上のアミノ酸を修飾することによって、抗体が抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を媒介する能力を向上させるように、及び/又はFc受容体に対する抗体の親和性を増加させるように修飾されている。このアプローチは更に、PrestaによるPCR公開公報WO第00/42072号に記載されている。更に、FcyRI、FcyRII、FcyRIII及びFcRnに対するヒトIgG1上の結合部位がマッピングされ、改善された結合を示す変異体が記載されている(Shields, R. L. et al, 2001 J. Biol. Chen. 276:6591-6604、国際公開公報第2010106180号参照)。
いくつかの実施態様では、抗体のグリコシル化が修飾されている。例えば、無グリコシル化抗体を作製することができる(すなわち抗体はグリコシル化を欠失している)。グリコシル化は、例えば、抗原に対する抗体の親和性を増加させるために改変させることができる。このような糖鎖の修飾は、例えば、抗体配列内の1つ以上のグルコシル化部位を改変させることによって成し遂げることができる。例えば、1つ以上の可変領域フレームワークグリコシル化部位が消失し、これにより、その部位でのグリコシル化が消失する、1つ以上のアミノ酸の置換を行なうことができる。このような無グリコシル化は、抗原に対する抗体の親和性を増加させ得る。このようなアプローチは更に、Co et al.による米国特許第5,714,350号及び第6,350,861号に詳述されている。更に又は代替的には、改変された型のグリコシル化を有する抗体、例えば低減した量のフコシル残基を有するか若しくはフコシル残基を全く有さない低フコシル化抗体若しくは非フコシル化抗体、又は、二分岐したGlcNac構造の増加した抗体を作製することができる。このような改変されたグリコシル化パターンは、抗体のADCC能を増加させることが実証されている。このような糖鎖の修飾は、例えば、改変されたグリコシル化機構を有する宿主細胞内で抗体を発現させることによって成し遂げられ得る。改変されたグリコシル化機構を有する細胞は当技術分野において記載され、宿主細胞として使用して、その中で本発明の組換え抗体を発現させ、これにより改変されたグリコシル化を有する抗体を生成することができる。例えば、Hang et al.による欧州特許第1,176,195号は、フコシルトランスフェラーゼをコードするFUT8遺伝子が機能的に破壊された細胞株を記載し、これによってこのような細胞株において発現された抗体は、低フコシル化を示すか、又はフコシル残基を欠失している。それ故、いくつかの実施態様では、本発明のヒトモノクローナル抗体は、低フコシル化又は非フコシル化パターンを示す細胞株における、例えば、フコシルトランスフェラーゼをコードするFUT8遺伝子の発現が欠失した哺乳動物細胞株における組換え発現によって産生され得る。PrestaによるPCT公開公報WO03/035835号は、Asn(297)に連結された糖鎖にフコースを付着する能力が低減し、また、その結果としてその宿主細胞内で発現された抗体の低フコシル化を生じる、変異CHO細胞株、すなわちLecl3細胞を記載する(Shields, R.L. et al, 2002 J. Biol. Chem. 277:26733-26740も参照されたい)。Umana et al.によるPCT公開公報WO99/54342号は、糖タンパク質を修飾するグリコシルトランスフェラーゼ(例えば、β(1,4)−NアセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII))を発現するように工学操作された細胞株を記載し、これによって、工学操作された細胞株において発現された抗体は、増加した二分岐GlcNac構造を示し、これにより抗体のADCC活性は増加する(Umana et al, 1999 Nat. Biotech. 17: 176-180も参照されたい)。Eureka Therapeutics社は更に、フコシル残基の欠失した改変された哺乳動物グリコシル化パターンを有する抗体を生成することができる遺伝子的に工学操作されたCHO哺乳動物細胞を記載する(http://www.eurekainc.com/a&boutus/companyoverview.html)。あるいは、本発明のヒトモノクローナル抗体は、哺乳動物様のグルコシル化パターンについて工学操作され、かつグリコシル化パターンとしてフコースを欠失している抗体を生成することのできる、酵母又は糸状菌において生成され得る(例えば、EP1297172B1を参照されたい)。
本発明によって考えられる本明細書の抗体の別の修飾はPEG化である。例えば抗体の生物学的(例えば血清中)半減期を延長させるために抗体をPEG化することができる。抗体をPEG化するために、抗体又はその断片を、典型的にはポリエチレングリコール(PEG)、例えばPEGの反応性エステル又はアルデヒド誘導体と、1つ以上のPEG基が抗体又は抗体断片と付着するようになる条件下で反応させる。PEG化は、反応性PEG分子(又は類似の反応性の水溶性ポリマー)とのアシル化反応又はアルキル化反応によって行なわれ得る。本明細書において使用する「ポリエチレングリコール」という用語は、他のタンパク質を誘導体化するために使用されている任意の形状のPEG、例えばモノ(CI−CIO)アルコキシ−又はアリールオキシ−ポリエチレングリコール又はポリエチレングリコール−マレイミドを包含することを意図する。いくつかの実施態様では、PEG化しようとする抗体は、無グリコシル化抗体である。タンパク質をPEG化するための方法は当技術分野において公知であり、本発明のヒトモノクローナル抗体に適用することができる。例えばNishimura et al.による欧州特許第0154316号及びIshikawa et al.による欧州特許第0401384号を参照されたい。
本発明によって考えられる抗体の別の修飾は、生じる分子の半減期を延長させるための、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン又はその断片に対する、本発明のヒトモノクローナル抗体の少なくとも抗原結合領域のコンジュゲート又はタンパク質融合である。このようなアプローチは、例えば、Ballance et al.の欧州特許第0322094号に記載されている。
いくつかの実施態様では、抗体は抗原結合断片である。抗体断片は、慣用的な技術によって、例えば完全長抗体の断片化によって、又は組換え細胞内での抗体断片をコードしている核酸の発現によって得ることができる(例えば、Evans et al., J. Immunol. Meth. 184, 123-38(1995)を参照)。次いで、断片を、完全長抗体について本明細書に記載されているのと同じようにその特性について試験又はスクリーニングし得る。以下は、本発明のOX1R特異的抗原結合断片の例示的な型式を記載する:
−ヒンジ領域でジスルフィド橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片である、F(ab’)2断片。これらは、例えば完全長抗体をペプシンで処理することによって作製することができる。
−VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価断片である、Fab’又はFab断片。Fab断片は、例えば、IgG抗体をパパインで処理することによって得ることができる。Fab’断片は、例えば、ジチオトレイトールなどの還元剤を使用してF(ab’)2断片のジスルフィド橋を還元することによって得ることができる。
−VHドメイン及びCH1ドメインから本質的になる、Fd断片。
−単一アームの抗体及びその一本鎖抗体のVLドメイン及びVHドメインから本質的になる、Fv断片。一本鎖抗体(一本鎖Fv(scFv)抗体としても知られる)は、Fv断片のVLドメイン及びVHドメインが、組換え法を使用して、VL領域及びVH領域が対になって一価分子を形成している単一タンパク質の鎖として発現させることを可能とする合成リンカーによって接続されている構築物である(例えばBird et a/., Science 242, 423-426(1988)及びHuston et al., PNAS USA 85, 5879-5883(1988)参照)。
−VL鎖又はVH鎖、ならびに、配列番号1又は配列番号2に対して少なくとも70%の同一率を有するアミノ酸配列を含むか又はからなる、断片。
いくつかの実施態様では、本発明は、本明細書で上記された本発明のヒトモノクローナル抗体分子に由来する第一の抗原結合部位と、少なくとも1つの第二の抗原結合部位とを含む、多重特異的抗体を提供する。いくつかの実施態様では、第二の抗原結合部位は、例えば、ヒトエフェクター細胞上の抗原と結合することによって、又は細胞傷害性薬剤若しくは第二の治療剤を結合させることによって、殺滅機序を補充するために使用される。本明細書において使用する「エフェクター細胞」という用語は、免疫応答の認識期及び活性化期ではなく、免疫応答のエフェクター期に関与する免疫細胞を指す。例示的な免疫細胞としては、骨髄系又はリンパ系起源の細胞、例えばリンパ球(例えばB細胞及びT細胞、例えば細胞傷害性T細胞(CTL))、キラー細胞、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、単球、肥満細胞、及び顆粒球、例えば好中球、好酸球及び好塩基球が挙げられる。いくつかのエフェクター細胞は特定のFc受容体(FcR)を発現し、特定の免疫機能を行なう。いくつかの実施態様では、エフェクター細胞、例えばナチュラルキラー細胞は、ADCCを誘導することができる。例えば、FcRを発現する単球、マクロファージは、標的細胞の特異的殺滅及び免疫系の他の成分への抗原の提示に関与している。いくつかの実施態様では、エフェクター細胞は、標的抗原又は標的細胞を貪食し得る。エフェクター細胞上での特定のFcRの発現は、サイトカインなどの体液性因子によって調節され得る。エフェクター細胞は標的抗原を貪食し得るか、又は標的細胞を貪食若しくは溶解し得る。適切な細胞傷害性薬剤及び第二の治療剤を以下に例示し、これには、毒素(例えば放射能標識されたペプチド)、化学療法剤、及びプロドラッグが挙げられる。
いくつかの実施態様では、第二の抗原結合部位は、ヒトB細胞上の抗原、例えばCD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD80、CD138、及びHLA−DRに結合する。
いくつかの実施態様では、第二の抗原結合部位は組織特異的抗原に結合し、特定の組織への二重特異的抗体の局在を促進する。
いくつかの実施態様では、第二の抗原結合部位は、OX1Rを発現している細胞と同じ種類の細胞上に位置する抗原、典型的には腫瘍関連抗原(TAA)に結合するが、第一の抗原結合部位とは異なる結合特異性を有する。このような多重特異的又は二重特異的抗体は、腫瘍細胞への結合特異性を増強し得、かつ/又は複数のエフェクター経路に関与し得る。例示的なTAAとしては、癌胎児性抗原(CEA)、前立腺特異的抗原(PSA)、RAGE(腎抗原)、α−フェトプロテイン、CAMEL(黒色腫上のCTL認識抗原)、CT抗原(例えばMAGE−B5、−B6、−C2、−C3、及びD;Mage−12;CT10;NY−ESO−1、SSX−2、GAGE、BAGE、MAGE、及びSAGE)、ムチン抗原(例えばMUC1、ムチン−CA125など)、ガングリオシド抗原、チロシナーゼ、gp75、c−Met、Marti、MelanA、MUM−1、MUM−2、MUM−3、HLA−B7、Ep−CAM、又は癌関連インテグリン、例えばα5β3インテグリンが挙げられる。あるいは、第二の抗原結合部位は、OX1Rの異なるエピトープに結合する。第二の抗原結合部位は、代替的には、血管新生因子又は他の癌関連増殖因子、例えば血管内皮増殖因子、線維芽細胞増殖因子、上皮増殖因子、アンジオゲニン、又はこれらのいずれかの受容体、特に癌進行に関連した受容体、例えばHER受容体(EGFR、HER2、HER3、又はHER4)、c−MET、又はIGFRに結合し得る。
いくつかの実施態様では、第二の抗原結合部位は、本発明の第二のヒトモノクローナル抗体、例えば本発明のヒトモノクローナル抗体に由来する。
本発明の多重特異的抗体分子の例示的な型式としては、(i)化学的ヘテロコンジュゲーションによって架橋された2つの抗体、一方はOX1Rに対する特異性を有し、他方は第二の抗原に対する特異性を有する;(ii)2つの異なる抗原結合領域を含む単一抗体;(iii)2つの異なる抗原結合領域、例えば、エキストラペプチドリンカーによって直列に連結された2つのscFvを含む、一本鎖抗体;(iv)デュアル可変ドメイン抗体(DVD−Ig)、ここでの各々の軽鎖及び重鎖は、短いペプチド結合を通して直列に2つの可変ドメインを含有している(Wu et al., Generation and Characterization of a Dual Variable Domain Immunoglobulin (DVD-IgTM) Molecule, In : Antibody Engineering, Springer Berlin Heidelberg (2010));(v)化学的に連結された二重特異的(Fab’)2断片;(vi)各標的抗原に対する2つの結合部位を有する四価の二重特異的抗体を生じる2つの一本鎖ディアボディの融合体である、Tandab;(vii)多価分子を生じるscFvとディアボディの組合せ体である、フレキシボディ(flexibody);(viii)プロテインキナーゼAの「二量体化及びドッキングドメイン」に基づき、これはFabに適用されると、1つの異なるFab断片に連結された2つの同一なFab断片からなる三価の二重特異的な結合タンパク質を生じることができる、いわゆる「ドック及びロック」分子;(ix)例えば、ヒトFab−アームの両端に融合した2つのscFvを含む、いわゆるスコーピオン分子;ならびに(x)ディアボディが挙げられるがこれらに限定されない。二重特異的抗体の別の例示的な型式は、ヘテロ二量体化を強制する相補的CH3ドメインを有するIgG様分子である。このような分子は、公知の技術、例えば、トリオマブ(Triomab)/クアドローマ(Quadroma)(トリオンファーマ社/フレゼニウス・バイオテク社)、ノブ・イントゥ・ホールズ(Knob-into-Holes)(ジェネンテック社)、CrossMAb(ロシュ社)及びエレクトロスタティカリー・マッチド(electrostatically-matched)(アムジェン社)、LUZ−Y(ジェネンテック社)、鎖交換操作されたドメインボディ(SEEDボディ)(EMDセローノ)、Biclonic(メルス社)、及びデュオボディ(ジェンマブ社)の技術として公知のものを使用して調製することができる。
いくつかの実施態様では、二重特異的抗体は、制御されたFab−アームの交換を介して、典型的にはデュオボディ技術を使用して得られるか又は得ることができる。制御されたFab−アーム交換によって二重特異的抗体をインビトロで生成するための方法が、国際公開公報第2008119353号及び国際公開公報第2011131746号(両方共にジェンマブ社による)に記載されている。国際公開公報第2008119353号に記載された1つの例示的な方法では、二重特異的抗体は、還元条件下でのインキュベーションによる、IgG4様のCH3ドメインを両方共が含む2つの単一特異的抗体間の「Fab−アーム」又は「半分の分子」の交換(重鎖と付着した軽鎖の取り替え)によって形成される。生じた生成物は、異なる配列を含み得る2つのFabアームを有する二重特異的抗体である。国際公開公報第2011131746号に記載の別の例示的な方法では、本発明の二重特異的抗体は、以下の工程を含む方法によって調製され、ここで第一及び第二の抗体の少なくとも一方は本発明のヒトモノクローナル抗体である:a)免疫グロブリンのFc領域を含む第一抗体を準備する工程、前記Fc領域は第一のCH3領域を含む;b)免疫グロブリンのFc領域を含む第二の抗体を準備する工程、前記Fc領域は第二のCH3領域を含み;ここで前記第一及び第二のCH3領域の配列は異なり、前記の第一のCH3領域と第二のCH3領域の間のヘテロ二量体相互作用は、前記の第一及び第二のCH3領域の各々のホモ二量体相互作用よりも強力なものである;c)前記の第一の抗体を、還元条件下で前記の第二の抗体と一緒にインキュベートする工程;及びd)前記の二重特異的抗体を得る工程、ここで第一の抗体は本発明のヒトモノクローナル抗体であり、第二の抗体は異なる結合特異性を有するか、又はその逆である。還元条件は、例えば、2−メルカプトエチルアミン、ジチオトレイトール及びトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィンから例えば選択された還元剤を加えることによって提供され得る。工程d)は更に、例えば、脱塩による、例えば還元剤の除去によって、非還元性又はより低い還元性となるように条件を回復する工程を含み得る。好ましくは、第一及び第二のCH3領域の配列は異なり、ほんの僅かのかなり保存的な非対称的な突然変異を含み、それによって前記の第一のCH3領域と第二のCH3領域との間のヘテロ二量体相互作用は、前記の第一及び第二のCH3領域の各々のホモ二量体相互作用より強力である。これらの相互作用に関するさらなる詳細及びどのようにして成し遂げられ得るかは国際公開公報第2011131746号に提供され、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。以下は、このような非対称的な突然変異の組み合せの例示的な実施態様であり、場合により一方又は両方のFc領域がIgG1アイソタイプである。
いくつかの実施態様では、第一のFc領域は、366、368、370、399、405、407、及び409からなる群より選択された位置にアミノ酸の置換を有し、第二のFc領域は、366、368、370、399、405、407、及び409からなる群より選択された位置にアミノ酸の置換を有し、ここで第一及び第二のFc領域は同じ位置において置換されていない。
いくつかの実施態様では、第一のFc領域は、405位にアミノ酸の置換を有し、前記の第二のFc領域は、366、368、370、399、407、及び409からなる群より選択された位置、場合により409にアミノ酸の置換を有する。
いくつかの実施態様では、第一のFc領域は、409位にアミノ酸の置換を有し、前記の第二のFc領域は、366、368、370、399、405、及び407からなる群より選択された位置、場合により405又は368にアミノ酸の置換を有する。
いくつかの実施態様では、第一及び第二の両方のFc領域はIgG1アイソタイプであり、第一のFc領域は405位にLeuを有し、第二のFc領域は409位にArgを有する。
本発明のヒトモノクローナル抗体は、例えば、任意の化学的、生物学的、遺伝子的、又は酵素的技術を単独で又は組み合わせてのいずれかであるがこれらに限定されない、当技術分野において公知の任意の技術によって生成され得る。例えば、所望の配列のアミノ酸配列が分かれば、当業者は、標準的なポリペプチド作製技術によって、前記抗体を容易に作製することができる。例えば、それらは、周知の固相法を使用して、好ましくは市販のペプチド合成装置(例えばアプライド・バイオシステムズ、フォスターシティ、カリフォルニア州によって製造されたもの)を使用して、製造業者の説明書に従って合成され得る。あるいは、本発明の抗体は、当技術分野において周知の組換えDNA技術によって合成され得る。例えば、抗体をコードするDNA配列を発現ベクターに組み込み、このようなベクターを、所望の抗体を発現するであろう適切な真核宿主又は原核宿主に導入した後にDNA発現産物として抗体を得ることができ、それから周知の技術を使用して後にそれらを単離することができる。
したがって、本発明の更なる目的は、本発明のヒトモノクローナル抗体をコードする核酸配列に関する。いくつかの実施態様では、核酸配列は、本発明のヒトモノクローナル抗体の重鎖及び/又は軽鎖をコードする。
典型的には、前記核酸は、任意の適切なベクターに含まれ得るDNA分子又はRNA分子である。本明細書において使用する「ベクター」という用語は、それが連結されている別の核酸を輸送することができる核酸分子を指すことを意図する。ある種類のベクターは「プラスミド」であり、これは追加のDNAセグメントを連結することができる環状の二本鎖DNAループを指す。別の種類のベクターはウイルスベクターであり、ここでは追加のDNAセグメントをウイルスゲノムに連結することができる。あるベクターは、それらが導入された宿主細胞内で自己複製することができる(例えば、細菌複製起点を有する細菌ベクター及びエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノムに組み込むことができ、これにより宿主ゲノムと共に複製される。更に、あるベクターは、それらが作動可能に連結されている遺伝子の発現を指令することができる。このようなベクターは、「組換え発現ベクター」(又は単に「発現ベクター」)と本明細書において称される。一般的に、組換えDNA技術において有用な発現ベクターは、プラスミドの形状であることが多い。本明細書において、「プラスミド」及び「ベクター」は互換的に使用される。なぜならプラスミドは最も一般的に使用される形状のベクターであるからである。しかしながら、本発明は、同等な機能を果たすウイルスベクター(例えば複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス)などのこのような他の形状の発現ベクターも含むことを意図する。
よって、本発明の更なる目的は、本発明の核酸を含むベクターに関する。
このようなベクターは、被験者への投与時に前記抗体の発現を引き起こすか又は指令するための、調節要素、例えばプロモーター、エンハンサー、終結因子などを含み得る。動物細胞用の発現ベクターに使用されるプロモーター及びエンハンサーの例としては、SV40の初期プロモーター及びエンハンサー(Mizukami T. et al. 1987)、モロニーマウス白血病ウイルスのLTRプロモーター及びエンハンサー(Kuwana Y et al. 1987)、免疫グロブリンH鎖のプロモーター(Mason JO et al. 1985)及びエンハンサー(Gillies SD et al. 1983)などが挙げられる。ヒト抗体C領域をコードする遺伝子を挿入及び発現することができる限りにおいて、動物細胞用の任意の発現ベクターを使用することができる。適切なベクターの例としては、pAGE107(Miyaji H et al. 1990)、pAGE103(Mizukami T et al. 1987)、pHSG274(Brady G et al. 1984)、pKCR(O'Hare K et al. 1981)、pSG1βd2−4−(Miyaji H et al. 1990)などが挙げられる。プラスミドの他の例としては、複製起点を含む複製プラスミド、又は組み込み型プラスミド、例えばpUC、pcDNA、pBRなどが挙げられる。ウイルスベクターの他の例としては、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、及びAAVベクターが挙げられる。このような組換えウイルスは、当技術分野において公知の技術によって、例えばパッケージング細胞のトランスフェクトによって、又はヘルパープラスミド若しくはウイルスを用いての一過性トランスフェクションによって作製され得る。ウイルスパッケージング細胞の典型例としては、PA317細胞、PsiCRIP細胞、GPenv+細胞、293細胞などが挙げられる。このような複製欠損組換えウイルスを作製するための詳細なプロトコールは、例えば、国際公開公報第95/14785号、国際公開公報第96/22378号、米国特許第5,882,877号、米国特許第6,013,516号、米国特許第4,861,719号、米国特許第5,278,056号、及び国際公開公報第94/19478号に見られ得る。
本発明の更なる目的は、本発明に係る核酸及び/又はベクターによってトランスフェクト、感染、又は形質転換された宿主細胞に関する。
「形質転換」という用語は、「外来」(すなわち外来性又は細胞外)遺伝子、DNA又はRNA配列を宿主細胞に導入することを意味し、それによって宿主細胞は、導入された遺伝子又は配列を発現して、所望の物質、典型的には導入された遺伝子又は配列によってコードされるタンパク質又は酵素を産生するだろう。導入されたDNA又はRNAを受け取り発現する宿主細胞は「形質転換」されている。
本発明の核酸を使用して、適切な発現系において本発明のヒトモノクローナル抗体を産生し得る。「発現系」という用語は、例えば、ベクターによって保有されそして宿主細胞に導入された外来DNAによってコードされるタンパク質の発現のための、適切な条件下での宿主細胞及び適格ベクターを意味する。一般的な発現系としては、E.coli宿主細胞及びプラスミドベクター、昆虫宿主細胞及びバキュロウイルスベクター、ならびに哺乳動物宿主細胞及びベクターが挙げられる。宿主細胞の他の例としては、原核細胞(例えば細菌)及び真核細胞(例えば酵母細胞、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞など)が挙げられるがこれらに限定されない。具体例としては、E.coli、クリベロマイセス、又はサッカロマイセス酵母、哺乳動物細胞株(例えばVero細胞、CHO細胞、3T3細胞、COS細胞など)ならびに一次又は確立された哺乳動物細胞株(例えばリンパ芽球細胞、線維芽細胞、胚細胞、上皮細胞、神経細胞、脂肪細胞などから産生)が挙げられる。また例としては、マウスSP2/0−Agl4細胞(ATCC CRL1581)、マウスP3X63−Ag8.653細胞(ATCC CRL1580)、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子(本明細書において以後「DHFR遺伝子」と称する)を欠失させたCHO細胞(Urlaub G et al; 1980)、ラットYB2/3HL.P2.G1 1.16Ag.20細胞(ATCC CRL1662、本明細書において以後「YB2/0細胞」と称する)なども挙げられる。
本発明はまた、本発明に係る抗体を発現する組換え宿主細胞を生成する方法に関し、前記方法は、(i)上記のような組換え核酸又はベクターを適格宿主細胞にインビトロ又はエクスビボで導入する工程、(ii)得られた組換え宿主細胞をインビトロ又はエクスビボで培養する工程、及び(iii)場合により、前記抗体を発現及び/又は分泌する細胞を選択する工程を含む。このような組換え宿主細胞は、本発明の抗体の生成のために使用することができる。
別の態様では、本発明は、医薬品としての使用のための、本明細書の任意の態様又は実施態様において定義されているような、本発明のヒトモノクローナル抗体に関する。
別の態様では、本発明は、治療有効量の本発明のヒトモノクローナル抗体を被験者に投与する工程を含む、それを必要とする被験者における癌を処置する方法に関する。
本明細書において使用する「処置」又は「処置している」は、臨床結果を含む、有益な又は所望の結果を得るためのアプローチである。本発明の目的のために、有益な又は所望の臨床結果としては、以下の1つ以上が挙げられるがこれらに限定されない:疾患から生じる1つ以上の症状の軽減、疾患の程度の低減、疾患の安定化(例えば、疾患の悪化の予防又は遅延)、疾患の拡大(例えば転移)の予防又は遅延、疾患の再発の予防又は遅延、疾患の進行の遅延又は緩徐化、疾患状態の寛解、疾患の緩解(部分的又は全体的)をもたらすこと、疾患を処置するために必要とされる1つ以上の他の薬物療法の用量の低減、疾患の進行の遅延、生活の質の改善、及び/あるいは、生存期間の延長。「処置」によって、癌の病理学的結果の低減も包含される。本発明の方法は、これらの処置の態様のいずれか1つ以上を考える。
典型的には、癌は、胆管癌(例えば、末梢癌、遠位胆管癌、肝内胆管癌)、膀胱癌、骨癌(例えば、骨芽細胞腫、骨軟骨腫、血管腫、軟骨粘液線維腫、骨肉腫、軟骨肉腫、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、骨巨細胞腫、脊索腫、リンパ腫、多発性骨髄腫)、脳及び中枢神経系の癌(例えば、髄膜腫、星細胞腫、乏突起神経膠腫、上衣腫、神経膠腫、髄芽腫、神経節膠腫、シュワン腫、胚細胞腫、頭蓋咽頭腫)、乳癌(例えば、乳管内上皮内癌、浸潤性乳管癌、浸潤性小葉癌、上皮内小葉癌、女性化乳房)、キャッスルマン病(例えば、巨大リンパ節過形成、血管小胞性リンパ節過形成)、子宮頸癌、結腸直腸癌、子宮体癌(例えば、子宮内膜腺癌、腺類癌、乳頭漿液性腺癌、明細胞)、食道癌、胆嚢癌(粘液性腺癌、小細胞癌)、消化管カルチノイド腫瘍(例えば、絨毛癌、破壊性絨毛腺癌)、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、カポジ肉腫、腎臓癌(例えば、腎細胞癌)、喉頭癌及び下咽頭癌、肝臓癌(例えば、血管腫、肝腺腫、限局性結節性過形成、肝細胞癌)、肺癌(例えば、小細胞肺癌、非小細胞肺癌)、中皮腫、形質細胞腫、鼻腔癌及び副鼻腔癌(例えば、嗅神経芽腫、正中肉芽腫)、鼻咽頭癌、神経芽細胞腫、口腔癌及び中咽頭癌、卵巣癌、膵臓癌、陰茎癌、下垂体癌、前立腺癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫(例えば、胎児性横紋筋肉腫、胞巣状横紋筋肉腫、多形性横紋筋肉腫)、唾液腺癌、皮膚癌(例えば、黒色腫、非黒色腫皮膚癌)、胃癌、精巣癌(例えばセミノーマ、非セミノーマ胚細胞癌)、胸腺癌、甲状腺癌(例えば、濾胞性癌、未分化癌、低分化癌、甲状腺髄様癌、甲状腺リンパ腫)、膣癌、外陰癌、及び子宮癌(例えば、子宮平滑筋肉腫)からなる群より選択され得る。
いくつかの実施態様では、被験者は上皮癌を患う。本明細書において使用する「上皮癌」という用語は、上皮を起源とする任意の悪性プロセスを指す。上皮癌の例としては、婦人科の癌、例えば子宮内膜癌、卵巣癌、子宮頸癌、外陰癌、子宮癌又は卵管癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、膵臓癌、尿路癌、膀胱癌、頭頸部癌、口腔癌、結腸直腸癌、及び肝臓癌が挙げられるがこれらに限定されない。上皮癌は、様々なステージならびに様々な等級であり得る。いくつかの実施態様では、上皮癌は、乳癌、前立腺癌、肺癌、膵臓癌、膀胱癌、結腸直腸癌、及び卵巣癌からなる群より選択される。いくつかの実施態様では、上皮癌は結腸直腸癌である。いくつかの実施態様では、上皮癌は肝臓癌、特に肝細胞癌である。いくつかの実施態様では、上皮癌は乳癌である。いくつかの実施態様では、上皮癌は卵巣癌である。いくつかの実施態様では、上皮癌は前立腺癌、特に進行前立腺癌である。いくつかの実施態様では、上皮癌は肺癌である。いくつかの実施態様では、上皮癌は頭頸部癌である。いくつかの実施態様では、上皮癌は頭頸部扁平上皮細胞癌である。
本明細書において使用する「膵臓癌(pancreatic cancer)」又は「膵臓癌(pancreas cancer)」という用語は、本明細書で使用する場合、膵臓細胞に由来する癌に関する。特に、膵臓癌としては、膵臓腺腫(例えば膵管腺癌)ならびに他の膵外分泌腫瘍(例えば漿液性嚢胞腺腫)、腺房細胞癌、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)及び膵内分泌腫瘍(例えばインスリノーマ)が挙げられた。
本明細書において使用する「肝細胞癌」という用語は当技術分野におけるその一般的な意味を有し、肝細胞で発生した癌を指す。一般的に、肝臓癌は、概して肝細胞癌を示す。肝細胞癌(HCC)は、B型肝炎ウイルス(HBV、本明細書では以後、HBVと称し得る)又はC型肝炎ウイルス(HCV、本明細書では以後、HCVと称し得る)などの感染病原体によって引き起こされ得る。いくつかの実施態様では、HCCは、アルコール性脂肪性肝炎又は非アルコール性脂肪性肝炎(本明細書では以後、「NASH」と略し得る)から生じる。いくつかの実施態様では、HCCは初期ステージのHCC、非転移性HCC、原発性HCC、進行HCC、局所進行HCC、転移性HCC、緩解状態のHCC、又は再発HCCである。いくつかの実施態様では、HCCは局所的で切除可能であるか(すなわち、手術による完全な除去が可能な肝臓の一部に限局された腫瘍)、局所的で切除不可能であるか(すなわち、局所腫瘍は切除不可能であり得る。なぜなら、重要な血管構造を巻き込んでいるか、又は肝臓が損傷されているからである)、又は切除不可能である(すなわち、腫瘍が肝臓のすべての葉を巻き込んでいる、及び/又は他の臓器(例えば肺、リンパ節、骨)を巻き込むように拡大している)。いくつかの実施態様では、HCCは、TNM分類によると、ステージIの腫瘍(血管への浸潤を伴わない単一の腫瘍)、ステージIIの腫瘍(血管浸潤を有する単一の腫瘍、又は複数の腫瘍、いずれも5cmより大きくない)、ステージIIIの腫瘍(複数の腫瘍、いずれも5cmより大きい、又は門脈若しくは肝静脈の主要な分枝を巻き込んだ腫瘍)、ステージIVの腫瘍(胆嚢以外の隣接する臓器に直接浸潤しているか又は臓側腹膜の穿孔を有する腫瘍)、N1腫瘍(領域性リンパ節転移)、又はM1腫瘍(遠隔転移)である。いくつかの実施態様では、HCCは、AJCC(対癌米国合同委員会)によるステージ分類によると、ステージT1、T2、T3、又はT4のHCCである。
本明細書において使用する「進行前立腺癌」という用語は当技術分野におけるその一般的な意味を有する。「去勢抵抗性前立腺癌」、「CaP」、「アンドロゲン受容体依存性前立腺癌」、「アンドロゲン非依存性前立腺癌」は互換的に使用され、前立腺癌細胞がアンドロゲンの非存在下で、及び/又は、癌細胞上のアンドロゲン受容体の発現を伴うことなく、「増殖」(すなわち、数が増加)する前立腺癌を指す。
本明細書において使用する「治療有効量」という用語は、所望の治療結果を達成するのに必要とされる投与量及び時間において有効な量を指す。治療有効量の本発明のヒトモノクローナル抗体は、個体の疾患状態、年齢、性別、及び体重、ならびに個体において所望の応答を誘起する本発明のヒトモノクローナル抗体の能力などの要因に応じて変化し得る。治療有効量はまた、抗体又は抗体の一部のあらゆる毒性作用又は有害な作用を治療的に有益な効果がまさるものでもある。本発明のヒトモノクローナル抗体についての有効な投与量及び投与計画は処置しようとする疾患又は容態に依存し、当業者によって決定され得る。当技術分野における通常の技能を有する医師は、必要とされる医薬組成物の有効量を容易に決定しかつ処方し得る。例えば、医師は、所望の治療効果を達成するために必要とされるものよりも低いレベルで医薬組成物中に使用される本発明のヒトモノクローナル抗体の用量を開始し、所望の効果が達成されるまで投与量を次第に増加させることができる。一般的に、本発明の組成物の適切な用量は、特定の投与計画により治療効果を生じるのに効果的な最も低い用量である化合物の量であろう。このような有効用量は一般的に、上記の要因に依存するだろう。例えば、治療用途のための治療有効量は、疾患の進行を安定化させるその能力によって測定され得る。化合物の癌抑制能は、例えば、ヒト腫瘍における効力を予測する動物モデル系で評価され得る。あるいは、組成物のこの特性を、細胞増殖を抑制するか又は細胞毒性を誘発する化合物の能力を、当業者には公知であるインビトロアッセイによって調べることによって評価し得る。治療有効量の治療用化合物は、被験者における腫瘍サイズを減少させ得るか、又はさもなくば症状を寛解し得る。当業者は、このような量を、被験者のサイズ、被験者の症状の重篤度、及び選択された具体的な組成物又は投与経路などの要因に基づいて決定することができるだろう。本発明のヒトモノクローナル抗体の治療有効量の例示的で非限定的な範囲は、約0.1〜100mg/kg、例えば約0.1〜50mg/kg、例えば約0.1〜20mg/kg、例えば約0.1〜10mg/kg、例えば約0.5、例えば約0.3、約1、約3mg/kg、約5mg/kg、又は約8mg/kgである。本発明のヒトモノクローナル抗体の治療有効量の例示的で非制限的な範囲は、0.02〜100mg/kg、例えば約0.02〜30mg/kg、例えば約0.05〜10mg/kg、又は0.1〜3mg/kg、例えば約0.5〜2mg/kgである。投与は、例えば、静脈内、筋肉内、腹腔内、又は皮下であり得、例えば標的部位の近位に投与され得る。上記の処置法及び使用法における投与計画は、最適な所望の応答(例えば治療応答)をもたらすように調整される。例えば、1回のボーラスを投与しても、数回の分割用量を経時的に投与しても、又は用量を、治療状況の緊急事態が示されれば比例的に低減若しくは増加させてもよい。いくつかの実施態様では、処置効力は、治療中に、例えば予め定められた時点でモニタリングされる。いくつかの実施態様では、効力は、腫瘍細胞を含有している試料中のOX1Rレベルを測定することによって、疾患領域の可視化によって、又は本明細書に更に記載されている他の診断法によって、例えば、本発明の標識されたヒトモノクローナル抗体、本発明のヒトモノクローナル抗体に由来する断片又はミニ抗体を使用して、例えば1回以上のPET−CTスキャンを実施することによってモニタリングされ得る。所望であれば、医薬組成物の有効な1日用量は、場合により単一投与剤形で、1日を通して適切な間隔で別々に投与される2、3、4、5、6、又はそれ以上の分割用量として投与され得る。いくつかの実施態様では、本発明のヒトモノクローナル抗体は、すべての望ましくない副作用を最小限にするために長時間かけて、例えば24時間以上かけての緩徐な連続注入によって投与される。本発明のヒトモノクローナル抗体の有効用量はまた、週1回、隔週で、又は3週間に1回の投与期間を使用して投与されてもよい。投与期間は、例えば8週間、12週間、又は臨床的進行が確立されるまでに限定されていてもよい。非制限的な例として、本発明に係る処置は、処置開始後1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39又は40日目の少なくとも1日に、又は代替的には1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20週目の少なくとも1週に、又はそれを任意に組み合わせて、1日あたり約0.1〜100mg/kg、例えば、0.2、0.5、0.9、1.0、1.1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、45、50、60、70、80、90又は100mg/kgの量の、本発明の化合物の1日用量として、24、12、8、6、4、又は2時間毎に1回用量又は分割用量を使用して、又はそれを任意に組み合わせて使用して提供され得る。
本発明はまた、本発明のヒトモノクローナル抗体を癌を処置するための少なくとも1つの更なる治療剤と組み合わせて使用する、治療適用を提供する。このような投与は、同時に、別々に、又は逐次的であり得る。同時投与のために、薬剤は、適宜1つの組成物として、又は別々の組成物として投与され得る。
更なる治療剤は典型的には、処置しようとする障害に対して妥当である。例示的な治療剤としては、他の抗癌抗体、細胞傷害性薬剤、化学療法剤、抗血管新生剤、抗癌免疫原、細胞周期制御/アポトーシス調節剤、ホルモン調節剤、及び以下に記載した他の薬剤が挙げられる。
1つの態様では、更なる治療剤は、別の標的、例えばCC2、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD21、CD22、CD23、CD25、CD30、CD33、CD37、CD38、CC20、CC20L、CC26、CD52、CD54、CD80、CD126、B7、MUCl、テネイシン、HM1.24又はHLA−DRに結合する少なくとも1つの第二の抗体である。例えば、第二の抗体は、CD20、CD19、CD21、CD23、CD38、CC26、CD80、CD138、HLA−DR、CD22を含むがこれらに限定されないB細胞抗原、又はOX1R上の別のエピトープに結合し得る。いくつかの実施態様では、第二の抗体は、血管内皮増殖因子A(VEGF−A)に結合する。いくつかの実施態様では、本発明のヒトモノクローナル抗体は、特定の治療用抗体と組み合わせて使用するためのものである。本発明の合剤に包含するために適切である癌免疫療法剤として現在使用されているモノクローナル抗体としては、リツキシマブ(リツキサン(登録商標))、トラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標))、イブリツモマブチウキセタン(ゼヴァリン(登録商標))、トシツモマブ(ベキサール(登録商標))、セツキシマブ(C−225、アービタックス(登録商標))、ベバシズマブ(アバスチン(登録商標))、ゲムツズマブオゾガマイシン(マイロターグ(登録商標))、アレムツズマブ(キャンパス(登録商標))、及びBL22が挙げられるがこれらに限定されない。他の例としては、抗CTLA4抗体(例えばイピリムマブ)、抗PD1抗体、抗PDL1抗体、抗TIMP3抗体、抗LAG3抗体、抗B7H3抗体、抗B7H4抗体、又は抗B7H6抗体が挙げられる。いくつかの実施態様では、抗体としては、B細胞を枯渇させる抗体が挙げられる。典型的なB細胞を枯渇させる抗体としては、抗CD20モノクローナル抗体[例えば、リツキシマブ(ロシュ社)、イブリツモマブチウキセタン(バイエル・シェーリング社)、トシツモマブ(グラクソスミスクライン社)、AME−133v(アプライド・モレキュラー・エボリューション社)、オクレリズマブ(ロシュ社)、オファツムマブ(HuMax−CD20、ジェンマブ社)、TRU−015(トルビオン社)、及びIMMU−106(イムノメディクス社)]、抗CD22抗体[例えば、エプラツズマブ、Leonard et al., Clinical Cancer Research (Z004) 10: 53Z7-5334]、抗CD79a抗体、抗CD27抗体、又は抗CD19抗体(例えば米国特許第7,109,304号)、抗BAFF−R抗体(例えば、ベリムマブ、グラクソスミスクライン社)、抗APRIL抗体(例えば、抗ヒトAPRIL抗体、プロサイ社)、及び抗IL−6抗体[例えば、De Benedetti et al., J Immunol (2001) 166: 4334-4340及びSuzuki et al., Europ J of Immunol (1992) 22 (8) 1989-1993によって以前に記載されている、これらは全体が参照により本明細書に組み入れられる]が挙げられるがこれらに限定されない。
いくつかの実施態様では、本発明のヒトモノクローナル抗体は、化学療法剤と組み合わせて使用される。「化学療法剤」という用語は、腫瘍の増殖を抑制するのに有効である化合物を指す。化学療法剤の例としては、アルキル化剤、例えばチオテパ及びシクロホスファミド;アルキルスルホネート類、例えばブスルファン、インプロスルファン、及びピポスルファン;アジリジン系、例えばベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、及びウレドーパ;エチレンイミン類及びメチルメラミン類、例えばアルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド、及びトリメチロールメラミン;アセトゲニン類(特にブラタシン及びブラタシノン);カンプトテシンを含む(合成類似体のトポテカンを含む);ブリオスタチンを含む;カリスタチン;CC−1065(例えば、そのアドゼレシン、カルゼレシン及びビゼレシン合成類似体を含む);クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体、KW−2189及びCBI−TMIを含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンジスタチン;ナイトロジェンマスタード、例えばクロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イフォスファミド、メクロレタミン、塩酸メクロレタミンオキシド、メルファラン、ノボエンビキン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソウレア類、例えばカルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン;抗生物質、例えばエンジイン抗生物質(例えばカリケアマイシン、特にカリケアマイシン(11及びカリケアマイシン211、例えばAgnew Chem Intl. Ed. Engl. 33:183-186(1994)参照);ダイネミシン、例えばダイネミシンA;エスペラマイシン;ならびにネオカルジノスタチン発色団及び関連したクロモプロテイン系エンジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カルビシン、カルミノマイシン(canninomycin)、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ドキソルビシン(モルホリノ−ドキソルビシン、シアノモルホリノ−ドキソルビシン、2−ピロリノ−ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗薬、例えばメトトレキサート及び5−フルオロウラシル(5−FU);葉酸類似体、例えばデノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサート;プリン類似体、例えばフルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジン類似体、例えばアンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロキシウリジン、5−FU;アンドロゲン、例えばカルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗副腎薬、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補充物質、例えばフォリン酸;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトレキサート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジコン;エフロルニチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン;メイタンシノイド、例えばメイタンシン及びアンサミトシン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ポドフィリン酸;2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲンナニウム(spirogennanium);テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2’’−トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特にT−2毒素、ベルカリンA、ロリジンA、及びアンギジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara−C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えばパクリタキセル(タキソール(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology、プリンストン、N.J.州)及びドセタキセル(タキソテア(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer、アントニー、フランス);クロラムブシル;ゲムシタビン;6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金類似体、例えばシスプラチン及びカルボプラチン;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP−16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロン酸塩;CPT−11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸;カペシタビン;ならびに、上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、又は誘導体が挙げられる。またこの定義には、腫瘍に対するホルモン作用を調節又は阻害するように作用するホルモン拮抗剤、例えばエストロゲン拮抗薬、例えばタモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害性4(5)−イミダゾール、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、及びトレミフェン(フェアストン);及びアンドロゲン拮抗薬、例えばフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、及びゴセレリン;ならびに、上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、又は誘導体も含まれる。
いくつかの実施態様では、本発明のヒトモノクローナル抗体は、標的化癌療法と組み合わせて使用される。標的化癌療法は、癌の増殖、進行、及び拡大に関与する特定の分子(「分子標的」)に干渉することによって、癌の増殖及び拡大を遮断する薬物又は他の物質である。標的化癌療法は、時々、「分子標的化薬」、「分子標的化療法」、「精密医療」又は類似の名称で呼ばれる。いくつかの実施態様では、標的化療法は、被験者にチロシンキナーゼ阻害剤を投与する工程からなる。「チロシンキナーゼ阻害剤」という用語は、受容体型及び/又は非受容体型チロシンキナーゼの選択的又は非選択的阻害剤として作用する様々な治療剤又は薬物のいずれかを指す。チロシンキナーゼ阻害剤及び関連化合物は当技術分野において周知であり、米国特許公開公報第2007/0254295号に記載され、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。チロシンキナーゼ阻害剤に関連した化合物は、チロシンキナーゼ阻害剤の効果を再現すること、例えば関連化合物は、異なるメンバーのチロシンキナーゼシグナル伝達経路に作用して、そのチロシンキナーゼのチロシンキナーゼ阻害剤と同じ効果を生じることが当業者によって理解されるだろう。本発明の実施態様の方法に使用するのに適したチロシンキナーゼ阻害剤及び関連化合物の例としては、ダサチニブ(BMS−354825)、PP2、BEZ235、サラカチニブ、ゲフィチニブ(イレッサ)、スニチニブ(スーテント;SU11248)、エルロチニブ(タルセバ;OSI−1774)、ラパチニブ(GW572016;GW2016)、カネルチニブ(CI1033)、セマキシニブ(SU5416)、バタラニブ(PTK787/ZK222584)、ソラフェニブ(BAY43−9006)、イマチニブ(グリベック:STI571)、レフルノミド(SU101)、バンデタニブ(ザクチマ;ZD6474)、MK−2206(8−[4−アミノシクロブチル)フェニル]−9−フェニル−1,2,4−トリアゾロ[3,4−f][1,6]ナフチリジン−3(2H)−オン塩酸塩)、その誘導体、その類似体、及びその組み合せが挙げられるがこれらに限定されない。本発明に使用するに適した追加のチロシンキナーゼ阻害剤及び関連化合物は、例えば、米国特許公開公報第2007/0254295号、米国特許第5,618,829号、第5,639,757号、第5,728,868号、第5,804,396号、第6,100,254号、第6,127,374号、第6,245,759号、第6,306,874号、第6,313,138号、第6,316,444号、第6,329,380号、第6,344,459号、第6,420,382号、第6,479,512号、第6,498,165号、第6,544,988号、第6,562,818号、第6,586,423号、第6,586,424号、第6,740,665号、第6,794,393号、第6,875,767号、第6,927,293号、及び第6,958,340号に記載され、これらすべてその全体が参照により本明細書に組み入れられる。いくつかの実施態様では、チロシンキナーゼ阻害剤は、経口投与され、少なくとも1回の第I相臨床試験、より好ましくは少なくとも1回の第II相臨床試験、更により好ましくは少なくとも1回の第III相臨床試験の、最も好ましくは少なくとも1つの血液学的又は腫瘍学的適応症についてFDAによって承認されている対象である、低分子キナーゼ阻害剤である。このような阻害剤の例としては、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、カネルチニブ、BMS−599626(AC−480)、ネラチニブ、KRN−633、CEP−11981、イマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブ、AZM−475271、CP−724714、TAK−165、スニチニブ、バタラニブ、CP−547632、バンデタニブ、ボスチニブ、レスタウルチニブ、タンデュチニブ、ミドスタウリン、エンザスタウリン、AEE−788、パゾパニブ、アキシチニブ、モテサニブ、OSI−930、セジラニブ、KRN−951、ドビチニブ、セリシクリブ、SNS−032、PD−0332991、MKC−1(Ro−317453;R−440)、ソラフェニブ、ABT−869、ブリバニブ(BMS−582664)、SU−14813、テラチニブ、SU−6668、(TSU−68)、L−21649、MLN−8054、AEW−541、及びPD−0325901が挙げられるがこれらに限定されない。
いくつかの実施態様では、本発明のヒトモノクローナル抗体は、HER阻害剤と組み合わせて使用される。いくつかの実施態様では、HER阻害剤は、EGFR阻害剤である。GFR阻害剤は、当技術分野において周知である(erbB−1キナーゼの阻害剤;Expert Opinion on Therapeutic Patents Dec 2002, Vol. 12, No. 12, Pages 1903-1907, Susan E Kane. Cancer therapies targeted to the epidermal growth factor receptor and its family members. Expert Opinion on Therapeutic Patents Feb 2006, Vol. 16, No. 2, Pages 147-164. Peter TrOX1Rer Tyrosine kinase inhibitors in cancer treatment (Part II). Expert Opinion on Therapeutic Patents Dec 1998, Vol. 8, No. 12, Pages 1599-1625)。このような薬剤の例としては、EGFRに結合する抗体及び有機低分子が挙げられる。EGFRに結合する抗体の例としては、MAb579(ATCC CRL HB8506)、MAb455(ATCC CRL HB8507)、MAb225(ATCC CRL8508)、MAb528(ATCC CRL8509)(米国特許第4,943,533号、Mendelsohn et al.参照)及びその変異体、例えばキメラ化225(C225又はセツキシマブ;アービタックス(登録商標))及び再形成したヒト225(H225)(国際公開公報第96/40210号、インクローンシステムズ社を参照);IMC−11F8、完全なヒトのEGFR標的化抗体(インクローン社);II型突然変異体EGFRに結合する抗体(米国特許第5,212,290号);米国特許第5,891,996号に記載のようなEGFRに結合するヒト化及びキメラ抗体;ならびに、ABX−EGFなどのEGFRに結合するヒト抗体(国際公開公報第98/50433号、アブジェニクス社を参照);EMD55900(Stragliotto et al. Eur. J. Cancer 32A:636-640 (1996));EMD7200(マツズマブ)、EGFRとの結合に関してEGF及びTGF−αの両方と競合するEGFRに対して指向されるヒト化EGFR抗体;ならびに、mAb806又はヒト化mAb806(Johns et al., J. Biol. Chem. 279(29):30375-30384 (2004))が挙げられる。抗EGFR抗体を細胞傷害性薬剤とコンジュゲートさせて、したがって、イムノコンジュゲートを生成することができる(例えば、欧州特許第659,439A2号、Merck Patent GmbH社を参照)。EGFRに結合する有機低分子の例としては、ZD1839又はゲフィチニブ(イレッサ(商標);アストラゼネカ社);CP−358774又はエルロチニブ(タルセバ(商標);ジェネンテック/OSI社);及びAG1478、AG1571(SU5271;スーゲン社);EMD−7200が挙げられる。いくつかの実施態様では、HER阻害剤は、ダコミチニブ(PF−00299804)などの有機低分子pan−HER阻害剤である。いくつかの実施態様では、HER阻害剤は、セツキシマブ、パニツムマブ、ザルツムマブ、ニモツズマブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、ネラチニブ、カネルチニブ、バンデタニブ、アファチニブ、TAK−285(HER2とEGFRのデュアル阻害剤)、ARRY334543(HER2とEGFRのデュアル阻害剤)、ダコミチニブ(pan−ErbB阻害剤)、OSI−420(デスメチルエルロチニブ)(EGFR阻害剤)、AZD8931(EGFR、HER2及びHER3阻害剤)、AEE788(NVP−AEE788)(EGFR、HER2、及びVEGFR1/2阻害剤)、ペリチニブ(EKB−569)(pan−ErbB阻害剤)、CUDC−101(EGFR、HER2及びHDAC阻害剤)、XL647(HER2とEGFRのデュアル阻害剤)、BMS−599626(AC480)(HER2とEGFRのデュアル阻害剤)、PKC412(EGFR、PKC、サイクリックAMP依存性プロテインキナーゼ及びS6キナーゼ阻害剤)、BIBX1382(EGFR阻害剤)、及びAP26113(ALK及びEGFR阻害剤)からなる群より選択される。阻害剤のセツキシマブ、パニツムマブ、ザルツムマブ、ニモツズマブは、モノクローナル抗体である。エルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、ネラチニブ、カネルチニブ、バンデタニブ、及びアファチニブはチロシンキナーゼ阻害剤である。
いくつかの実施態様では、本発明のヒトモノクローナル抗体は、c−Met阻害剤と組み合わせて使用される。いくつかの実施態様では、c−Met阻害剤は、抗c−Met阻害剤である。いくつかの実施態様では、抗c−met抗体は、MetMAb(オナルツズマブ)又はその後発生物製剤形である。MetMAbは、例えば、国際公開公報第2006/015371号;Jin et al, Cancer Res (2008) 68:4360に開示されている。本発明の方法に使用するのに適した他の抗c−met抗体は本明細書に記載され、当技術分野において公知である。例えば、国際公開公報第05/016382号に開示された抗c−met抗体(抗体13.3.2、9.1.2、8.70.2、8.90.3を含むがこれらに限定されない);ジェノアのCBAにICLC番号PD03001で寄託されたハイブリドーマ細胞株によって産生されるか、又は、HGF受容体のβ鎖の細胞外ドメイン上のエピトープを認識する抗c−met抗体(前記エピトープはモノクローナル抗体によって認識されるものと同じである);国際公開公報第2007/126799号に開示された抗c−met抗体(04536、05087、05088、05091、05092、04687、05097、05098、05100、05101、04541、05093、05094、04537、05102、05105、04696、04682を含むがこれらに限定されない);国際公開公報第2009/007427号に開示された抗c−met抗体(CNCM、パスツール研究所、パリ、フランスに2007年3月14日に1−3731番で、2007年3月14日に1−3732番で、2007年7月6日に1−3786番で、2007年3月14日に1−3724番で寄託された抗体を含むがこれらに限定されない);20110129481に開示された抗c−met抗体;米国特許第20110104176号に開示された抗c−met抗体;国際公開公報第2009/134776号に開示された抗c−met抗体;国際公開公報第2010/059654号に開示された抗c−met抗体;国際公開公報第2011020925号に開示された抗c−met抗体(CNCM、パスツール研究所、パリ、フランスに2008年3月12日に1−3949番で寄託されたハイブリドーマ、及び2010年1月14日に1−4273番で寄託されたハイブリドーマから選択された抗体を含むがこれらに限定されない)。いくつかの実施態様では、cMET阻害剤は、K−252a;SU−11274;PHA−665752、及び国際公開公報第2002/096361号に記載の他のcMET阻害剤;AM7;AMG−208、及び国際公開公報第2009/091374号に記載の他のcMet阻害剤;JNJ−38877605、及び国際公開公報第2007/075567号に記載の他のcMet阻害剤;MK−2461、及び国際公開公報第2007/002254号及び/又は国際公開公報第2007/002258号に記載の他のcMet阻害剤;PF−04217903、及び国際公開公報第2007/132308号に記載の他のcMet阻害剤;BMS777607;GSK136089(XL−880及びフォレチニブとしても知られる)、及び国際公開公報第2005/030140号に記載の他のcMET阻害剤;BMS907351(XL−184としても知られる);EMD1214063;LY2801653;ARQ197;MK8033;PF2341066、及び国際公開公報第2006/021881号に記載の他のcMET阻害剤;MGCD265;E7050;MP470;SGX523;Kirin J.J. Cui, Inhibitors targeting hepatocyte growth factor receptor and their potential therapeutic applications. Expert Opin. Ther. Patents 2007; 17: 1035-45に記載のcMet阻害剤;国際公開公報第2008/103277号に記載のcMet阻害剤;国際公開公報第2008/008310号に記載のcMet阻害剤;国際公開公報第2007/138472号に記載のcMet阻害剤;国際公開公報第2008/008539号に記載のcMet阻害剤;国際公開公報第2009/007390号に記載のcMet阻害剤;国際公開公報第2009/053737号に記載のcMet阻害剤;国際公開公報第2009/024825号に記載のcMet阻害剤;国際公開公報第2008/071451号に記載のcMet阻害剤;国際公開公報第2007/130468号に記載のcMet阻害剤;国際公開公報第2008/051547号に記載のcMet阻害剤;国際公開公報第2008/053157号に記載のcMet阻害剤;国際公開公報第2008/017361号;国際公開公報第2008/145242号;国際公開公報第2008/145243号;国際公開公報第2008/148449号;国際公開公報第2009/007074号;国際公開公報第2009/006959号;国際公開公報第2009/024221号;国際公開公報第2009/030333号;及び/又は国際公開公報第2009/083076号に記載のcMet阻害剤;国際公開公報第2009/093049号に記載のcMet阻害剤;米国特許第2008/039457号に記載のcMet阻害剤;国際公開公報第2007/149427号に記載のcMet阻害剤;国際公開公報第2007/050309号に記載のcMet阻害剤;国際公開公報第2009/056692号に記載のcMet阻害剤;国際公開公報第2009/087305号に記載のcMet阻害剤;米国特許第2009/197864号に記載のcMet阻害剤;米国特許第2009/197862号に記載のcMet阻害剤;米国特許第2009/156594号に記載のcMet阻害剤;国際公開公報第2008/124849号に記載のcMet阻害剤;国際公開公報第2008/067119号に記載のcMet阻害剤;国際公開公報第2007/064797号に記載のcMet阻害剤;国際公開公報第2009/045992号に記載のcMet阻害剤;国際公開公報第2008/088881号に記載のcMet阻害剤;国際公開公報第2007/081978号に記載のcMet阻害剤;国際公開公報第2008/079294号に記載のcMet阻害剤;国際公開公報第2008/079291号に記載のcMet阻害剤;国際公開公報第2008/086014号に記載のcMet阻害剤;国際公開公報第2009/033084号に記載のcMet阻害剤;国際公開公報第2007/059202号に記載のcMet阻害剤;米国特許第2009/170896号に記載のcMet阻害剤;国際公開公報第2009/077874号及び/又は国際公開公報第2007/023768号に記載のcMet阻害剤;国際公開公報第2008/049855号に記載のcMet阻害剤;国際公開公報第2009/026717号に記載のcMet阻害剤;ならびに国際公開公報第2008/046216号に記載のcMet阻害剤からなる群より選択される。
いくつかの実施態様では、本発明のヒトモノクローナル抗体は、免疫療法剤と組み合わせて使用される。本明細書において使用する「免疫療法剤」という用語は、癌細胞に対する生体の免疫応答を間接的に若しくは直接的に増強、刺激、若しくは増大させ、かつ/又は、他の抗癌療法の副作用を低減する化合物、組成物、又は処置を指す。したがって、免疫療法は、癌細胞に対する免疫系の応答を直接的に若しくは間接的に刺激若しくは増強させ、かつ/又は、他の抗癌剤によって引き起こされ得る副作用を和らげる療法である。免疫療法はまた、当技術分野において免疫学的療法、生物学的療法、生体応答調節剤療法、及び生物療法とも呼ばれる。当技術分野において公知である一般的な免疫療法剤の例としては、サイトカイン、癌ワクチン、モノクローナル抗体、及び非サイトカインアジュバントが挙げられるがこれらに限定されない。あるいは、免疫療法処置は、ある量の免疫細胞(T細胞、NK細胞、樹状細胞、B細胞など)を被験者に投与することからなり得る。
免疫療法剤は非特異的であってもよく、すなわち、免疫系を全般的にブーストし、それによってヒト生体が癌細胞の増殖及び/又は拡大に対して戦うのにより効果的となるか、あるいは、それらは特異的であってもよく、すなわち、癌細胞それ自体に標的化されてもよく、免疫療法計画は、非特異的な免疫療法剤と特異的な免疫療法剤を併用してもよい。
非特異的免疫療法剤は、免疫系を刺激するか又は間接的に改善させる物質である。非特異的免疫療法剤は、癌の処置のための主要な療法として単独で使用されているだけでなく、主要な療法に付加して使用され、この場合には、非特異的免疫療法剤は、他の療法(例えば癌ワクチン)の効力を増強させるアジュバントとして機能する。非特異的免疫療法剤はまた、この後者の状況において、他の療法の副作用、例えば特定の化学療法剤によって誘発された骨髄抑制を低減させるように機能することができる。非特異的免疫療法剤は、重要な免疫系の細胞に対して作用することができ、そして二次応答、例えばサイトカイン及び免疫グロブリンの増加した産生を引き起こすことができる。あるいは、該薬剤は、それ自体、サイトカインを含んでいてもよい。非特異的免疫療法剤は、一般的に、サイトカイン又は非サイトカインアジュバントとして分類される。
多くのサイトカインが、免疫系をブーストさせるように設計された一般的な非特異的免疫療法として、又は、他の療法と共に施されるアジュバントとしてのいずれかとして癌の処置に適用されている。適切なサイトカインとしては、インターフェロン、インターロイキン、及びコロニー刺激因子が挙げられるがこれらに限定されない。本発明によって考えられるインターフェロン(IFN)としては、一般的な種類のIFN、IFN−アルファ(IFN−α)、IFN−ベータ(IFN−β)、及びIFN−ガンマ(IFN−γ)が挙げられる。IFNは、例えば、癌細胞の増殖を減速させることによって、癌細胞からより正常な行動を有する細胞への発達を促進することによって、及び/又は、癌細胞による抗原の産生を増加させて免疫系が癌細胞をより容易に認識し破壊できるようにすることによって、癌細胞に対して直接的に作用することができる。IFNはまた、例えば、血管新生を減速させることによって、免疫系をブーストすることによって、ならびに/又はナチュラルキラー(NK)細胞、T細胞及びマクロファージを刺激することによって、癌細胞に対して間接的に作用することもできる。組換え型IFN−αは、ロフェロン(ロシュ製薬)及びイントロンA(シェリング社)として市販されている。本発明によって考えられるインターロイキンとしては、IL−2、IL−4、IL−11及びIL−12が挙げられる。市販されている組換え型インターロイキンの例としては、プロロイキン(登録商標)(IL−2;カイロン社)及びニューメガ(登録商標)(IL−12;ワイス製薬)が挙げられる。ザイモジェネティクス社(シアトル、ワシントン州)は、組換え型IL−21を現在試験中であり、これもまた本発明の合剤への使用に考えられる。本発明によって考えられるコロニー刺激因子(CSF)としては、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF又はフィルグラスチム)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF又はサルグラモスチム)及びエリスロポエチン(エポエチンアルファ、ダルベポエチン)が挙げられる。1つ以上の増殖因子を用いての処置は、従来の化学療法を受けている被験者において新たな血球の生成を刺激するのに役立ち得る。したがって、CSFを用いての処置は、化学療法に伴う副作用を低減させるのに役立ち得、またより高用量の化学療法剤の使用を可能とし得る。様々な組換え型コロニー刺激因子、例えば、ニューポジェン(登録商標)(G−CSF;アムジェン社)、ニューラスタ(ペグフィルグラスチム;アムジェン社)、ロイキン(GM−CSF;バーレックス社)、プロクリット(エリスロポエチン;オーソバイオテック社)、エポジェン(エリスロポエチン;アムジェン社)、アラネスプ(エリスロポエチン)が市販されている。
本発明の組み合せ組成物及び組み合せ投与法はまた、「全細胞」及び「養子」免疫療法を含み得る。例えば、このような方法は、免疫系の細胞(例えば、腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)、例えばCC2+及び/又はCD8+T細胞(例えば腫瘍特異的抗原及び/又は遺伝子増強剤を用いて増殖させたT細胞)、抗体を発現しているB細胞又は他の抗体を産生している細胞又は抗体を提示している細胞、樹状細胞(例えば、DC増殖剤、例えばGM−CSF及び/若しくはFlt3−Lと共に培養された樹状細胞ならびに/又は腫瘍関連抗原の積載された樹状細胞)、抗腫瘍NK細胞、いわゆるハイブリッド細胞、又はその組み合せの注入又は再注入を含み得る。細胞溶解液はまた、このような方法及び組成物において有用であり得る。このような態様において有用であり得る、臨床試験における細胞性「ワクチン」としては、カンバキシン(Canvaxin)(商標)、APC−8015(デンドレオン社)、HSPPC−96(アンチジェニクス社)、及びメラシン(登録商標)細胞溶解液が挙げられる。ミョウバンなどのアジュバントと場合により混合された、癌細胞から剥離された抗原及びその混合物(例えば、Bystryn et al., Clinical Cancer Research Vol. 7, 1882-1887、2001年7月を参照)もまた、このような方法及び組み合せ組成物における成分であり得る。
いくつかの実施態様では、本発明のヒトモノクローナル抗体は、放射線療法と組み合わせて使用される。放射線療法は、患者への放射線照射又は関連した放射性医薬品の投与を含み得る。放射線源は、処置される患者に対して外部又は内部のいずれであってもよい(放射線処置は、例えば、外照射療法(EBRT)又は密封小線源療法(BT)の形態であり得る)。このような方法を実施する際に使用され得る放射性元素としては、例えば、ラジウム、セシウム−137、イリジウム−192、アメリシウム−241、金−198、コバルト−57、銅−67、テクネチウム−99、ヨウ化物−123、ヨウ化物−131、及びインジウム−111が挙げられる。
投与のために、本発明のヒトモノクローナル抗体は、医薬組成物として製剤化される。本発明のヒトモノクローナル抗体を含む医薬組成物を公知の方法に従って製剤化し、これにより、薬学的に有用な組成物を調製することができ、ここでは治療用分子は薬学的に許容される担体の混合物で配合されている。組成物は、その投与がレシピエント患者にとって耐容性があり得る場合に「薬学的に許容される担体」であると言われる。無菌リン酸緩衝化食塩水は、薬学的に許容される担体の一例である。他の適切な担体は当業者には周知である。(例えばGennaro (ed.), Remington's Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Company, 19th ed. 1995)を参照)。製剤は更に、1つ以上の賦形剤、保存剤、可溶化剤、緩衝化剤、ウイルス表面上でのタンパク質の損失を防ぐためのアルブミンなどを含み得る。
医薬組成物の剤形、投与経路、投与量、及び投与計画は必然的に、処置しようとする容態、病気の重篤度、患者の年齢、体重、及び性別などに依存する。
本発明の医薬組成物は、局所、経口、非経口、鼻腔内、静脈内、筋肉内、皮下、又は眼内投与などのために製剤化され得る。
典型的には、医薬組成物は、注射され得る製剤にとって薬学的に許容されるビヒクルを含有している。これらは、特に、等張で無菌の食塩水溶液(リン酸一ナトリウム若しくはリン酸二ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム若しくは塩化マグネシウムなど、又はこのような塩の混合物)、又は場合に応じて滅菌水若しくは生理食塩水を添加すると注射液の復元を可能とする乾燥組成物、特に凍結乾燥組成物であり得る。
投与に使用される用量は、様々なパラメーターに応じて、特に、使用される投与様式、関連した病態、又は代替的には所望の処置期間に応じて適応され得る。
医薬組成物を調製するために、有効量の本発明のヒトモノクローナル抗体を、薬学的に許容される担体又は水性媒体に溶解又は分散させ得る。
注射用途に適した医薬剤形としては、無菌水溶液又は分散液;ゴマ油、ピーナッツ油、又は水性プロピレングリコールを含む製剤;及び、無菌注射液又は分散液の即時調製のための無菌粉末が挙げられる。すべての場合において、剤形は無菌でなければならず、シリンジが容易に扱える程度に流動性でなければならない。それは、製造及び保存の条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用から防腐されていなければならない。
遊離塩基又は薬理学的に許容される塩としての活性化合物の溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合された水中において調製され得る。分散液はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びその混合物中においてならびに油中において調製され得る。通常の保存及び使用の条件下で、これらの調製物は、微生物の増殖を防ぐ保存剤を含有している。
本発明のヒトモノクローナル抗体は、中性形又は塩の形の組成物へと製剤化され得る。薬学的に許容される塩としては、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基を用いて形成される)が挙げられ、これは無機酸、例えば塩酸若しくはリン酸、又はこのような有機酸、例えば酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などを用いて形成される。遊離カルボキシル基を用いて形成される塩はまた、無機塩基、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、又は水酸化鉄、及びこのような有機塩基、例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどから誘導され得る。
担体はまた、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、その適切な混合物、及び植物油を含有している溶媒又は分散媒体であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用によって、分散液の場合には必要とされる粒径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって維持され得る。微生物の作用の防御は、様々な抗細菌剤及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらされ得る。多くの場合、等張剤、例えば糖又は塩化ナトリウムを含めることが好ましい。注射用組成物の吸収延長は、該組成物中に吸収を遅延させる物質、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを使用することによってもたらされ得る。
無菌注射液は、必要量の活性化合物を適切な溶媒中に、必要であれば上記に列挙された様々な他の成分と共に組み込み、その後、滅菌ろ過することによって調製される。一般的に、分散液は、様々な滅菌された活性成分を、基本分散媒体と上記に列挙された成分の中からの必要とされる他の成分とを含有している無菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。無菌注射液の調製のための無菌粉末の場合、好ましい調製法は真空乾燥及び凍結乾燥技術であり、これにより、以前に滅菌ろ過されたその溶液から活性成分と任意の追加の所望の成分の粉末が得られる。
直接注射のためのより濃縮された又は高度に濃縮された溶液の調製も考えられ、ここでの溶媒としてのDMSOの使用は極めて急速な浸透をもたらし、高濃度の活性薬剤を小さな腫瘍領域に送達すると考えられる。
製剤化したら、液剤は、投与製剤と適合性の様式で、かつ治療的に有効な量で投与されるだろう。製剤は、様々な剤形で、例えば上記のタイプの注射液で容易に投与されるが、薬物放出カプセルなども使用することができる。
水溶液での非経口投与のために、例えば、液剤は、必要であれば適切に緩衝化されるべきであり、液体希釈剤は、まず、十分な食塩水又はブドウ糖を用いて等張とすべきである。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下、及び腹腔内投与のために特に適している。これに関連して、使用され得る無菌水性媒体は、本開示に鑑みて当業者には公知であろう。例えば、1用量を、等張NaCl溶液 1mlに溶解することができ、皮下点滴療法用液体 1000mlに加えるか又は提案された注入部位に注射するかのいずれかを行なうことができる(例えば、「Remington's Pharmaceutical Sciences」第15版、1035-1038及び1570-1580頁を参照)。投与量の幾分の変更が、処置される被験者の容態に依存して必然的に生じるだろう。投与責任者は、いずれの事象においても、個々の被験者に対する適切な用量を決定するだろう。
本発明のヒトモノクローナル抗体は、治療混合物内に1用量あたり約0.0001〜1.0mg、又は約0.001〜0.1mg、又は約0.1〜1.0、又は更には約10mgを含むように製剤化され得る。複数回の用量を投与してもよい。
静脈内又は筋肉内注射などの非経口投与用に製剤化された化合物に加えて、他の薬学的に許容される剤形としては、例えば、錠剤又は経口投与用の他の固形剤;徐放性カプセル剤;及び現在使用されている任意の他の剤形が挙げられる。
いくつかの実施態様では、リポソーム及び/又はナノ粒子の使用が、宿主細胞への抗体の導入のために考えられる。リポソーム及び/又はナノ粒子の形成及び使用は、当業者には公知である。
ナノカプセル剤は一般的に、安定かつ再現性のある方法で化合物を封入することができる。細胞内へのポリマーの過剰積載に起因する副作用を回避するために、このような超微細粒子(サイズは約0.1μm)が、インビボで分解され得るポリマーを使用して一般的に設計される。これらの必要条件を満たす生分解性ポリアルキル−シアノアクリレートナノ粒子が、本発明への使用に考えられ、このような粒子は容易に作製され得る。
リポソームは、水性媒体に分散したリン脂質から形成され、多重膜同心円状二層小胞(多重膜小胞(MLV)とも呼ばれる)を自発的に形成する。MLVは一般的に25nmから4μmの直径を有する。MLVの超音波処理により、コアに水溶液を含有している200〜500Åの範囲の直径を有する小さな単層小胞(SUV)が形成される。リポソームの物理的特徴は、pH、イオン強度、及び二価陽イオンの存在に依存する。
本発明は更に、以下の図面及び実施例によって説明されるだろう。しかしながら、これらの実施例及び図面は、いずれにしても、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。