図1はこの発明の実施形態である給湯口アダプターを分解して示す斜視図、図2は側面断面図、図3は正面図、図4は平面図である。
これらの図に示すように本実施形態に採用される給湯口アダプターAは、浴槽壁Wに設けられた取付孔Hに組み付けられる。この給湯口アダプターAは、室外の給湯機から供給された湯水を浴槽内に供給する湯はり処理の他に、浴槽内の湯水を吸い込んで室外の給湯機に送り、そこで再加熱して、高温のお湯を浴槽内に戻すようにした追い焚き処理を行えるものである。
本実施形態の給湯口アダプターAは、槽外取付部材を構成するボディBと、フランジ部材3と、長ねじ4と、流路仕切部材等と称されるアダプター本体5とを基本的な構成要素として備えている。なお、以下の説明においては、発明の理解を容易にするため、給湯口アダプターAの軸心方向に沿って浴槽に対して内側(図2の左側)を「前側」「正面側」「表側(表面側)」とし、浴槽に対して外側(図2の右側)を「後側」「裏側(裏面側)」または「背面側」として説明する。
図5〜図7は本実施形態の給湯口アダプターAに採用されたボディBを示す図である。図2〜図7に示すようにボディBは、ボディ本体1と、一対(2本)の管用継手2,2とを備えている。ボディ本体1は、円形フランジ状の基板11と、基板11の裏面側に設けられた一対(2本)の管部12,12と、一対の管部12,12の後端にそれぞれ設けられ、かつ上記一対の管用継手2,2に対応してそれぞれ設けられる一対(2本)の継手受部13,13とを備えている。ボディ本体1において一対の管部12,12はボディ本体1の軸心X1と平行に後方に延びるように配置され、継手受部13,13は下方に屈曲するようにしてボディ本体10の軸心X1に対し斜め下方に延びるように配置されている。なお本実施形態において、ボディ本体1の軸心X1は、管部12の軸心に一致するものである。さらに本実施形態において、給湯口アダプターAの軸心およびボディBの軸心という場合、実質的にボディ本体1の軸心X1と同じ意味で用いられており、ボディ本体1の軸心X1と一致するものである。
管部12および継手受部13は断面が縦長楕円形の中空管状に形成されて互いに連通接続されて、管部12の前端が基板11の前面において開口されている。さらに継手受部13の後端には傾斜接合面14が設けられ、継手受部13の後端がこの傾斜接合面14において開口されている。傾斜接合面14は、継手受部13の軸心X13に対し直交する平面上に配置されており、換言するとボディ1の軸心X1に対し傾斜する平面上に配置されている。本実施形態においてボディ1の軸心X1に対する継手受部13の軸心X13の角度(折り曲げ角度)θ1は50°に設定されている(図6参照)。なお本実施形態において継手受部13の軸心X13は、傾斜接合面14の直交軸に相当する。
図8は図7のD1−D1線断面図である。図6〜図8に示すように一対の継手受部13,13における対向側の側部(内側部)には、その周壁上部および下部に、それぞれ上下方向に貫通し、かつ各継手受部13,13の内部にそれぞれ連通するピン差込孔15,15がそれぞれ形成されている。各ピン差込孔15,15は、各継手受部13,13の周壁上部および下部間において対応して配置されており、周壁上部からピン差込孔15,15に差し込まれた後述のステープル6のピン61,61が、各継手受部13,13の内部を通って周壁下部のピン差込孔15,15に挿通されるように構成されている。
図1および図7に示すようにボディ本体1の一対の継手受部13,13に管用継手2,2をそれぞれ固定するためのステープル6は、一対(2本)のピン61,61が並列に配置されて、各ピン61,61の一端部(上端部)が連結片62を介して連結された下向きコ字状ないし逆U字状のピン部材によって構成されている。
管用継手2は、往き管および戻り管等の外管9(図2参照)を接続するための外管接続部21と、外管接続部21の基端に、略前方に突出状に設けられた差込連結部25と、差込連結部25における外管接続部21側の端部外周に設けられた外向きフランジ23とを備えている。
この管用継手2において、差込連結部25の軸心X25に対し、外管接続部21の軸心X21は折れ曲がるように配置されており、差込連結部25の軸心X25に対し外管接続部21の軸心X21の角度(折り曲げ角度)θ2は50°に設定されている(図8参照)。この折り曲げ角度θ2は、上記折り曲げ角度θ1と同じ角度に設定されている。
フランジ23の前面は傾斜接合面24として構成されており、この傾斜接合面24は差込連結部25の軸心X25に対し直交する平面上に配置されている。換言すれば外管接続部21の軸心X21に対し傾斜する平面上に傾斜接合面24が配置されている。なお本実施形態において差込連結部25の軸心X25は、傾斜接合面24の直交軸に相当する。
管用継手2における外管接続部21および差込連結部25は、中空管状に形成されて互いに連通されており、外管接続部21の後端開口が差込連結部25の前端開口に連通されている。
管用継手2の外管接続部21の断面形状は、円形に形成されており、往き管および戻り管等の外管9を外嵌して固定できるようになっている。
差込連結部25はその断面形状が、継手受部13の開口部の形状に対応して縦長の楕円形状に形成されており、この差込連結部25がボディ本体1における継手受部13の開口に差し込むことができるように構成されている。
図6に示すように差込連結部25におけるフランジ23の近傍には、周方向に連続するピン収容溝26が形成されている。なお差込連結部25の先端側には、周方向に連続するパッキン収容溝27が形成されている。
また図6〜図8等に示す一対の管用継手2,2のフランジ23における両側部には、両側方に突出するようにスペーサ用突部(リブ)18,18が形成されている。スペーサ用突部18,18のうち、フランジ23の対向し合う内側部に配置されるスペーサ用突部18,18は、一対の管用継手2,2をボディ本体1に組み付けて並列に配置した際に、一対の管用継手2,2間において当接することによって、一対の管用継手2,2間を一定の間隔に保持して、一対の管用継手13,13同士が近付く方向に可動しないようにしている。なおスペーサ用突部18,18はフランジ23の外側部にも設けられているが、後述するように管用継手2,2はその軸心回りに180°回転させた状態でもボディ本体1に組み付けることが可能であり、その際にも一対の管用継手2,2間においてスペーサ用突部18,18が対向し合うように、スペーサ用突部18,18は管用継手2,2のフランジ両側部にそれぞれ形成されている。
以上の構成の一対の管用継手2,2を上記ステープル6を介してボディ本体1に組み付ける。すなわち一対の管用継手2,2の各差込連結部25,25を、ボディ本体1における一対の継手受部13,13の開口端部に、管用継手2,2側の傾斜接合面24,24がボディ本体1側の傾斜接合面14,14に接合するように差し込む。この差込状態においては、一対の管用継手2,2の各ピン収容溝26,26が、ボディ本体1における一対の継手受部13,13の各ピン差込孔15,15に対応して配置される。そしてステープル6の一方のピン61を一対の継手受部13,13のうち一方の継手受部13における周壁上部のピン差込孔15に差し込むと同時に、他方のピン61を他方の継手受部13における周壁上部のピン差込孔15に差し込む。これにより、ステープル6の各ピン61,61が、対応する継手受部13,13内にそれぞれ挿入されて、対応する管用継手2,2の各ピン収容溝26,26にそれぞれ収容配置されるとともに、各ピン61,61の先端部が、対応する継手受部13,13の周壁下部の各ピン差込孔15,15にそれぞれ挿通配置される。こうして管用継手2,2が一対のピン61,61を介してボディ本体1に抜け止め状態に取り付けられる。
本実施形態において、ステープル6は一対のピン61,61を一対の継手受部13,13に差し込む際に一対のピン61,61を弾性復元力に抗して開く方向に押し開いた状態で差し込むように構成されており、差し込まれた一対のピン61,61は弾性復元力によって互いに近付く方向(閉じる方向)に付勢された状態となっている。従って、ステープル6の各ピン61,61は、一対の継手受部13,13の内周面に常時圧接した状態となり、ステープル6のピン61,61が不用意に抜け出してしまうのを確実に防止することができる。
なお本実施形態においては、差し込まれた一対のピン61,61を弾性復元力によって互いに近付く方向(閉じる方向)に付勢させて、一対のピン61,61を一対の継手受部13,13の内周面に圧接することにより、ステープル6の抜け止めを図るようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、差し込まれた一対のピン61,61を弾性復元力によって互いに離れる方向(開く方向)に付勢させて、一対のピン61,61を一対の継手受部13,13の内周面に圧接することにより、ステープル6の抜け止めを図るようにしても良い。
また各管用継手2,2のパッキン収容溝27,27(図6参照)には図示を省略したパッキンがそれぞれ収容されており、そのパッキンによって管用継手2,2および一対の継手受部13,13間で水密が図られるようになっている。
またボディBが組み立てられた組立状態においては、継手受部13の傾斜接合面14と管用継手2の傾斜接合面24とが面接触することにより、継手受部13の軸心X13と管用継手2の外管接続部21の軸心X21とが一致するようになっている。従って、ボディB(ボディ本体1)の軸心X1に対する外管接続部21の軸心X21の角度(折り曲げ角度)θは、ボディ本体1の軸心X1および継手受部13の軸心X13間の折り曲げ角度θ1と、外管接続部21の軸心X21および差込連結部25の軸心X25間の折り曲げ角度θ2とを加えた値である100°に設定されている(図5参照)。このようにボディ本体1の軸心X1に対する外管接続部21の軸心X21の折り曲げ角度θが90°を超える角度に設定されているため、外管接続部21はその基端側(上端側)が先端側(下端側)に向かうに従って次第に前方に配置されるようになっている。
また本実施形態においては、管用継手2の内部における中空管状部と、ボディ本体1の管部12の内部における中空管状部とによって、外管接続部21の先端(下端)からボディ本体1の前端にかけて互いに独立した2本の管路が並列に設けられるとともに、各管路を湯水が流通できるように構成されている。
ここで本実施形態においては、折り曲げ角度θは、直角「90°」を含まない90°を超える角度に設定する必要があり、より好ましくは95°〜110°に設定するのが良い。
図9および図10はボディBの基板部分を示す図である。両図に示すようにボディBにおける基板11の前面側には、その上下位置にねじ切り孔16,16が形成されており、長ねじ4,4をねじ込んで固定できるように構成されている。
さらにボディBの基板11の外周部の4箇所には、外周部の一部を構成するようにして係止爪17がそれぞれ設けられている。各係止爪17の周方向の一端側は回転自在に取り付けられるとともに、他端側は固定されずに自由端となっている。これにより各係止爪17は、図9に示す閉じた状態と、図10に示す開いた状態との間で開閉自在に構成されている。そして図9に示すように各係止爪17を閉じた状態では各係止爪17が基板11の外周に沿うように配置されて基板11が正面視(前面視)で円形に形成されて、外径寸法が浴槽壁Wにおける取付孔Hの内径寸法よりも小さくなるように構成されている。よって係止爪17を閉じた状態では、基板11を取付孔Hに挿通できるように構成されている。また図10に示すように各係止爪17を開いた状態では各係止爪17が外径方向に突出するように配置される。この開いた状態では、円盤11を取付孔Hに挿通できないように構成されるとともに、各係止爪17の爪先が浴槽壁Wにおける取付孔Hの周縁部に係止できるように構成されている。
なおボディBにおける基板11より後方の部位、つまり管部12、継手受部13および管用継手2は軸心方向に直交する断面形状が、取付孔Hの断面形状内に収まるように構成されており、係止爪17を閉じた状態では基本的に、ボディB全体を取付孔Hに挿通できるように構成されている。
図1〜図4に示すようにアダプター本体5は、中空構造の円盤状の槽内突出部51を備えている。槽内突出部51はその外径寸法が浴槽壁Wにおける取付孔Hの内径寸法よりも大きく形成されており、取付孔Hに挿通できないようになっている、
また槽内突出部51の前壁には多数の小孔によって構成される一対の吐出口52,52が左右に並んで形成されている。
槽内突出部51の裏面側には、吐出口52,52に対応して一対(2本)の管部55,55が後方に延びるように形成されている。各吐出口52,52と対応する各管部55,55とはそれぞれ連通接続されており、管部55,55にその後端開口から導入された湯水は管部55,55を通って、それぞれ対応する吐出口52,52から吐出されるように構成されるとともに、吐出口52,52から吸引された湯水は、それぞれ対応する管部55,55の後端開口から流出するようになっている。
さらに各管部55,55は、ボディBの管部12,12の前面開口の形状に対応して縦長の楕円形に形成されている。
なお本実施形態においては、アダプター本体5の槽内突出部51が前部として構成されるとともに、管部55,55が後部として構成されている。
図1〜図3、図11に示すようにフランジ部材3は正面視円形ないし環状に形成されており、外径寸法が取付孔Hの内径寸法よりも大きく形成されて、取付孔Hを挿通できないように構成されている。
フランジ部材3には、アダプター本体5の一対の管部55,55に対応して、一対の管部挿通孔31,31が形成されるとともに、両管部挿通孔31,31はその中間部32において連通接続されている。さらにフランジ部材3には、その上下2箇所にねじ止め孔35,35が形成されるとともに、各ねじ止め孔35,35にそれぞれ隣接して連通接続する大径のねじ頭部挿通孔36,36が形成されている。ねじ頭部挿通孔36はその内径寸法が長ねじ4の頭部の外径寸法よりも大きく形成されており、長ねじ4の頭部を挿通できるように構成されている。ねじ止め孔35はその内径寸法が長ねじ4の頭部の外径寸法よりも小さく、かつ長ねじ4の軸部の外径寸法よりも大きく形成されており、長ねじ4の頭部は挿通できないものの長ねじ4の軸部は挿通配置できるように構成されている。
またフランジ部材3の前後両面側には、環状のパッキン38,38が着脱自在に取り付けられている。
このフランジ部材3およびボディBが浴槽壁Wの取付孔周縁部を挟持することにより浴槽壁Wに固定される。すなわち図1、図2および図12(b)に示すようにボディBが各係止爪17を開いた状態で各係止爪17が浴槽壁Wの裏面側(槽外側)における取付孔Hの周縁部に係止するように配置されるとともに、フランジ部材3の外周縁部が浴槽壁Wの表面側(槽内側)における取付孔Hの周縁部に係止するように配置される。さらに2本の長ねじ4,4がフランジ部材3の各ねじ止め孔35,35に挿通されてボディBの各ねじ切り孔16,16にねじ込まれる。こうしてフランジ部材3およびボディBが浴槽壁Wの取付孔周縁部を挟持するようにして浴槽壁Wに固定される。
またアダプター本体5がその管部55,55がフランジ部材3の管部挿通孔31,31に挿通されて管部55,55の後端開口がボディBの基板11における管部12,12の前端開口に対応して配置された状態で、図3に示すようにアダプター本体5の前面側から4本のねじ41が槽内突出部51に挿通されてフランジ部材3にねじ止め固定される。こうしてアダプター本体5がフランジ部材3を介してボディBに固定されて、給湯口アダプターAが浴槽壁Wに組み付けられる。なおアダプター本体5の槽内突出部51には、必要に応じてフィルター部材が取り付けられる。
この構成の給湯口アダプターの取付構造においては図2の想像線に示すように、2本の外管接続部21,21に、可撓性を有するフレキシブル管等によって構成される往き管および戻り管等の2本の外管9,9の一端がそれぞれ接続されるとともに、2本の外管9,9の他端が室外の給湯機に接続される。そして湯はりをダブル搬送で行う場合には、室外給湯機から2本の外管9,9にそれぞれ湯水が供給されて、両外管9,9から外管接続部21,21を介してボディBの2本の管路内に導入される。各管路内に導入された湯水は各管路を通ってアダプター本体5の2本の管部55,55内に導入されて、2つの吐出口52,52から浴槽内に吐出されるようになっている。
また追い焚きを行う場合には、アダプター本体5における一方の吐出口52から浴槽内の湯水が吸引されて、アダプター本体5の一方の管部55を通って、ボディBの一方の管路内に導入される。一方の管路に導入された湯水はその管路を通って一方の外管接続部21から一方の外管9に供給され、その外管9を通って室外給湯機に戻される。また給湯機に戻された湯水は加熱されて、その湯水が他方の外管に供給され、ボディBの他方の管路、アダプター本体5の他方の管部55を通って他方の吐出口52から浴槽内に吐出されるようになっている。こうして浴槽内と室外給湯機との間に湯水が循環されて、追い焚きが行われるようになっている。
以上のような構成を有する給湯口アダプターAにおいては、浴槽壁Wに組み付けられた既存の給湯口アダプターを取り替えるに際して、以下に説明するように浴槽裏側の取付孔周辺で作業を行わずに、つまり浴槽内側からの作業で、既存の給湯口アダプターを撤去して新規の給湯口アダプターAを組み付けることができる。
まず、既存の給湯口アダプター(旧アダプター)におけるアダプター本体5に対応する部材を取り外す。続いて、旧アダプターにおけるフランジ部材3に対応する部材(旧雄ねじ部材)を取り外すが、その前に旧アダプターにおけるボディBに対応する部材(旧ボディ)に、浴槽内側から取付孔を通じてワイヤー等の案内部材の端部を固定しておく。その状態で旧雄ねじ部材を取り外して旧ボディを浴槽外側において取り外す。その後、旧ボディに接続された2本の外管(旧外管)を室外給湯機側から引っ張って、旧ボディおよび案内部材を作業可能な広いスペースまで引き出して、旧ボディを案内部材から取り外して、旧ボディおよび旧外管を廃棄する。
その後、室外給湯機に接続した新たな2本の外管9,9を、案内部材の端部に固定する。なお旧外管を交換せずに給湯口アダプターのみを交換するような場合には、旧外管を廃棄せずにその旧外管を案内部材に固定することになる。
次に浴槽内側から案内部材を引っ張って、外管9の端部を取付孔Hを介して浴槽内側に引き込む。続いて図12(a)に示すように外管9から案内部材を取り外してから、その外管9,9の端部に本実施形態の給湯口アダプターAにおけるボディBを取り付ける。すなわちボディBの外管接続部21,21に外管9,9の端部を嵌め込んで、外管9,9の接続端部外周に管バンド91,91をそれぞれ巻き付けて固定する。このとき、管バンド91,91の各留め金部92,92を後側(外管接続部21,21の背面側)にそれぞれ配置する。
なおボディBに外管9,9を接続するに際には、予めボディBの外管接続部21,21に短寸の補助外管を管バンド91,91を介してそれぞれ固定しておき、その一対の補助外管に管用継手等をそれぞれ介して、浴槽内に引き込んだ外管9,9を接続するようにしても良い。
こうしてボディBに外管9,9を接続した後、ボディBを外管9,9と共に取付孔Hを介して浴槽外部に配置する。このときボディBのねじ切り孔16に予め長ねじ4の先端をねじ込んでおき、その長ねじ4の頭部を浴槽内側における取付孔Hの周縁部に係止することにより、ボディBを長ねじ4を介して浴槽外側における取付孔Hの近傍に仮保持しておく。
次にドライバー等を用いて浴槽内側から取付孔Hを通じてボディBの係止爪17を開く。続いて浴槽内側からフランジ部材3のねじ頭部挿通孔36に長ねじ4の頭部を挿通させた後、フランジ部材3を少量周方向に回転させて、長ねじ4の軸部をねじ頭部挿通孔36からねじ止め孔35に導入する。その後、長ねじ4をねじ込んでいくことにより、ボディBを前面側(浴槽壁外面)に引き寄せて、ボディBの係止爪17を浴槽壁外面の取付孔周縁部に圧接するとともに、フランジ部材3の外周縁部を浴槽壁内面の取付孔周縁部に圧接する。こうしてボディBおよびフランジ部材3を、両者で浴槽壁Wの取付孔周縁部を内外から挟持することにより浴槽壁Wに固定する。
次に、アダプター本体5をその管部55をフランジ部材3の管部挿通孔31および取付孔Hを通じてボディBの基板前面側における管部12の前端開口に対応して配置し、その状態でアダプター本体5の前面側からねじ41を貫通してフランジ部材3にねじ込むことにより、アダプター本体5をフランジ部材3に固定する。これにより本実施形態の給湯口アダプターAが浴槽壁Wに組み付けられて、給湯口アダプターの交換作業が完了する。
このように浴槽外側(裏側)の取付孔周辺で作業できないような場合でも、旧アダプターを取り外して新規の給湯口アダプターAを確実に組み付けることができる。
一方、本実施形態の給湯口アダプターAにおいては、ボディ本体1の軸心1に対する外管接続部21の軸心X21の折り曲げ角度θを100°と大きくしているため、浴槽壁Wにおける取付孔Hの裏面側に十分なスペースがない場合例えば、図12(a)に示すように取付孔Hの裏面側近傍に外壁W1が配置されているような場合であっても、浴槽内側からの作業で確実に組み付けることができる。すなわち浴槽内側において、ボディBに外管9を接続した後、ボディBを外管9と共に浴槽内側から取付孔Hに挿通する場合、ボディBを回転させつつ、ボディBを取付孔Hに挿通していき、最終的に同図(b)に示すようにボディBの全体を浴槽裏面側に押し込んで、ボディBの軸心X1を取付孔Hの軸心に一致させるように配置することになる。このとき仮に、ボディBの軸心1に対する外管接続部21の軸心X21の折り曲げ角度θ(図5参照)が90°以下に設定されていると、外管接続部21,21に外管9,9を固定するための管バンド91,91の留め金部92,92が、ボディBの後端よりも後方に突出するように配置されるため、その留め金部92,92が外壁W1に干渉してしまい、ボディBを所定位置まで押し込むことができず、給湯口アダプターAを組み付けることが困難になってしまう。
そこで本実施形態においては、ボディBの軸心1に対する外管接続部21の軸心X21の折り曲げ角度θを100°と大きくしているため、図12(b)に示すようにボディBの全体を浴槽裏面側に押し込んだ際に、外管接続部21がその先端側(下端側)が基端側(上端側)に比べて前方に位置するように配置される。このため管バンド91の留め金部92も前方に配置されて、留め金部92が外壁W1に干渉するのを防止でき、ボディBを所定位置まで確実に押し込むことができて、給湯口アダプターAを確実に組み付けることができる。換言すれば、浴槽裏面側にボディBを収納できるスペースさえ存在していれば、給湯口アダプターAを浴槽壁Wに確実に組み付けることができる。
以上のように本実施形態の給湯口アダプターAによれば、ボディ本体1における一対の継手受部13,13に一対の管用継手2,2を取り付けるに際し、1つのステープル6の一対のピン61,61を、対応する継手受部13,13にそれぞれ差し込んで、一対の管用継手2,2を抜け止め状態に固定するものであるため、1つのステープル6を差し込むだけで2本の管用継手2,2を取り付けることができ、ボディ本体1への管用継手2,2の取付作業を簡単に行うことができる。
さらに本実施形態においては、ボディ本体1における一対の継手受部13,13間にステープル6が架け渡されるように配置されるため、一対の継手受部13,13がステープル6によって補強されて、強度を高めることができ、一対の継手受部13,13が不用意に変形するのを有効に防止することができる。
また本実施形態においては、差し込まれたステープル6の一対のピン61,61が弾性復元力によって互いに接近する方向(閉じる方向)に付勢されることによって、ステープル6の不用意な抜け止めを図っていることは既述した通りである。その一方仮に、ボディBに接続された外管9,9を後方(下方)へ引っ張るような力が作用した場合には、一対の管用継手2,2はその基端側(前端側)に比べて先端側(後端側)が近接する方向に変位するため、一対の管用継手2,2と共に一対の継手受部13,13の先端側も近接する方向に変位する。そうするとステープル6の一対のピン61,61が閉じる方向に変形(弾性復帰)して、一対のピン61,61の弾性復元力(テンション)が消失してしまい、一対のピン61,61がピン差込孔16,16から不用意に抜け出してしまうおそれがある。
ところが本実施形態の給湯口アダプターAにおいては、一対の管用継手2,2にそれぞれ外管9,9が並列状に連結されているため、外管9,9同士が互いに接触し合うことによって、一対の管用継手2,2および一対の継手受部13,13が近接する方向に変位するのを有効に防止でき、閉じる方向への弾性復元力が常に一対のピン61,61に作用する。このため一対のピン61,61が抜けて、一対の管用継手2,2が不用意に外れてしまうのを確実に防止することができる。特に本実施形態においては、一対の管用継手2,2の対向面にスペーサ用突部18,18を形成して、一対の管用継手2,2が互いに近接する方向(内側)に変位するのを防止しているため、一対の継手受部13,13が内側に変位するのをより確実に防止でき、弾性復元力が一対のピン61,61を閉じる方向により確実に作用するので、一対の管用継手2,2が不用意に外れてしまうのをより一層確実に防止することができる。
一方、本実施形態の給湯口アダプターAにおいては、1つのステープル6によって2本の管用継手2,2を連結するようにしているため、省スペース化を図ることができ、浴槽の取付孔裏面側に十分なスペースがない場合であっても、より一層確実に組み付けることができる。
すなわち通常、ステープル6を用いて管用継手2をボディ本体1の継手受部13に取り付けるような場合例えば図14および図15に示すように、各継手受部13,13にそれぞれステープル6,6を採用するのが想定される。詳細に説明すると、一対の継手受部13,13の各周壁上部および下部の両側にそれぞれピン差込孔15,15を形成して、各継手受部13,13にそれぞれ1つずつ計2つのステープル6,6を準備しておく。そして一方の継手受部13のピン差込孔15,15に、1つのステープル6の一対のピン61,61をそれぞれ差し込むとともに、他方の継手受部13のピン差込孔15,15に、残り1つのステープル6の一対のピン61,61をそれぞれ差し込むことにより、各継手受部13,13にそれぞれステープル6,6を介して管用継手2,2を取り付けるものである。
ここでステープル6はコ字状ないしU字状に形成しているため、図14および図15に示す構造では、ステープル6の両ピン61,61を連結する連結片62が、継手受部13,13の外方(上方)に突出するように配置される。このため浴槽の取付孔裏面側のスペースが狭いような場合には、ステープル6における外側に突出した連結片62が、外壁W1等の周辺部位に干渉する可能性が高くなり、確実に組み付けることができないおそれがある。
そこで本実施形態においては図7および図8に示すように、ボディ本体1における一対の継手受部13,13の対向側部にそれぞれ設けられた2つのピン差込孔15,15に、ステープル6の一対のピン61,61を差し込んで、1つのステープル6を一対の継手受部13,13間に架け渡すように配置しているため、ステープル6の連結片62は、一対の継手受部13,13の上端位置よりも下方に配置され、外方に突出するようなことはない。このようにステープル6の一部が外方に突出しないため、浴槽の取付孔裏面側のスペースが狭いような場合であっても、ステープル6の一部が外壁等の周壁部位に干渉することがなく、より一層確実に組み付けることができる。
また本実施形態の給湯口アダプターAにおいては、外管9をボディBの軸心X1に対しほぼ直交する方向に配置するようにしたL型仕様の形態で使用しているが、本実施形態においてはL型仕様だけでなく、外管9をボディBの軸心X1に対し平行に配置するようにしたS型仕様の形態でも使用することも可能である。すなわち図5および図6に示すように本実施形態の給湯口アダプターAにおいては、ボディ本体1の継手受部13に設けられた傾斜接合面14を、管用継手2に設けられた傾斜接合面24に接合させて、管用継手2の外管接続部21の折り曲げ角度θを100°に設定するとともに、ボディ本体1の軸心X1に対する傾斜接合面14の直交軸X13の折り曲げ角度θ1と、傾斜接合面24の直交軸X25に対する外管接続部21の軸心X21の折り曲げ角度θ2とを共に50°に設定している。このため、管用継手2をボディ本体1の継手受部13に接続するに際して、図5に示す状態から管用継手2を軸心回りに180°回転させて接続すると図13に示すように、ボディ本体1の軸心X1と、外管接続部21の軸心X21とが平行になり、外管接続部21に接続する外管9をボディBから後方に直線上に引き出すことができる。従って浴槽壁Wにおける取付孔Hの裏側に障害物がないような場合には図13に示すS型仕様の形態を採用して、浴槽壁Wに組み付けた給湯口アダプターAの裏面側からアダプターAの軸心X1に平行な直線上に沿って外管9を引き出すことができる。このように施工現場の状況に応じて、図5に示すように外管9を給湯口アダプターAの軸心X1に対しほぼ直交する方向に引き出したり、図13に示すように軸心X1に対し平行な方向に引き出したりすることができ、汎用性を向上させることができる。なお既述した通り、一対の管用継手2,2の各フランジ23,23の両側にそれぞれスペーサ用突部18,18を形成しているため、図5に示すL型仕様形態から一対の管用継手2,2を180°回転させて図13に示すS型仕様形態に設定したとしても、一対の管用継手2,2の内側にスペーサ用突部18,18が対向して配置される。このためL型仕様形態およびS型仕様形態のいずれの場合でも、一対の管用継手2,2間を一定の間隔に保持できるため、不用意にステープル6が外れてしまうのを確実に防止することができる。
なお本発明においては、ボディ本体1の軸心X1に対する傾斜接合面14の直交軸X13の折り曲げ角度θ1と、傾斜接合面24の直交軸X25に対する外管接続部21の軸心X21の折り曲げ角度θ2とを必ずしも一致させる必要はなく、両折り曲げ角度θ1,θ2を多少異なるように設定しても良い。
また上記実施形態においては、ボディBから外管9を下方に引き出す場合を例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明においては、ボディBからの外管9の引出方向は限定されず例えば、側方、上方、後方等の方向に引き出すようにしても良い。要はボディBから一対の外管9,9が並列に配置されるようにすれば良い。
また上記実施形態においては、給湯口アダプターを交換する際に、本発明の給湯口アダプターAを用いる場合を例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明の給湯口アダプターは、新築時や、浴槽全体のリフォーム時等、アダプターが未装着の浴槽壁に給湯口アダプターを新規に取り付ける場合にも適用することができる。
また上記実施形態においては、ピン収容溝26を管用継手2における差込連結部25の全周に設ける場合を例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明においては、ピン収容溝26は、差込連結部25の外周における少なくともステープル6のピン61が挿入される部分に形成されていれば良く、差込連結部25の周方向の一部のみに形成されていても良い。
また上記実施形態においては、ボディBをフランジ部材3および長ねじ4によって浴槽壁Wに固定するようにしているが、本発明においては、ボディBの浴槽壁Wへの固定方法は特に限定されるものではなく、どのような固定手段を用いても良い。
さらに上記実施形態においては、アダプター本体5を、フランジ部材3および長ねじ4を介してボディBに連結固定するようにしているが、本発明においてはアダプター本体5のボディBへの連結方法は特に限定されるものではなく、どのような連結手段を用いても良い。
また本発明においては、管バンド91および留め金部92の素材は特に限定されるものではなく、例えば金属製であっても、合成樹脂製であっても、合成ゴム製であっても、布製であっても良く、どのような素材を用いても良い。さらに管バンド91の素材と、留め金部92の素材とを同じ素材で形成しても良いし、異なる素材で形成するようにしても良い。