JP6728856B2 - Rtm製造装置および繊維強化プラスチックのrtm製造方法 - Google Patents

Rtm製造装置および繊維強化プラスチックのrtm製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、RTM法による繊維強化プラスチックの製造装置および製造方法に関し、特に、三次元形状で、かつアンダーカットを有する形状のFRPを、簡易的な装置で高い生産性をもってRTM法で製造できる、繊維強化プラスチックの製造装置および製造方法に関する。
強化繊維と樹脂からなる繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastic:FRP)は、軽量かつ高強度という特性から、航空機や自動車などの部材に用いられている。FRPの成形方法として、ドライの強化繊維布帛からなる基材を成形型内に配置し、マトリックス樹脂を型内に注入し強化繊維基材内に含浸させ、樹脂を硬化させた後、成形品を脱型させる、RTM(Resin Transfer Molding)成形方法と呼ばれる成形方法が知られている。
特に、大型の成形品を生産する場合、あるいは成形品の生産速度を向上させる場合においては、複数の樹脂注入孔を設け、複数の注入点から樹脂を注入することで繊維強化プラスチックの成形時間を短縮する技術や、樹脂注入時は成形型内キャビティを最終成形品厚みより厚くしておき、型閉じにより高速含浸させることで繊維強化プラスチックの成形時間を短縮する技術が用いられる。
例えば、特許文献1では、成形型と積層体との間に、厚み方向に貫通する樹脂流路を形成する中間部材を配設し、該中間部材を介して、樹脂を強化繊維積層体に対して複数の箇所からほぼ同時に注入する技術が開示されている。この方法によれば、比較的大きな三次元面状体に対しても、樹脂注入から含浸・硬化までの成形工程を、樹脂が流れない領域を生じさせることなく、高速で実施できるとされる。
また、特許文献2では、最終成形品厚みより成形キャビティを厚くした状態の成形型間に強化繊維積層体とマトリックス樹脂を投入し、型閉じに応じて注入したマトリックス樹脂を展開・含浸する技術が開示されている。この方法によれば、強化繊維積層体の流動抵抗の影響をほとんど受けず、比較的大きな三次元面状体に対しても高速注入・含浸を行うことができ、成形時間を大幅に短縮できるとされる。
一方特許文献3では、強化繊維積層体を投入した三次元形状のキャビティ全体を厚くした状態でマトリックス樹脂を注入した後、所定の厚みにキャビティを変化させる技術が開示されている。この方法によれば、樹脂の流動性を高めた状態で注入を行い、かつ硬化後の成形品の繊維体積含有率Vfを高めることができ、高Vfに制御された三次元形状の成形品の生産性を大幅に向上できるとされる。
さらに特許文献4では、複数に分割した構造を有する成形型で強化繊維積層体を固定し、強化繊維積層体と該成形型の一部である可動型の間に隙間を形成した状態で樹脂を注入した後、該可動型を押し込むことで強化繊維積層体に樹脂を含浸する技術が開示されている。この技術によれば大型成形品の全体に効率的に樹脂を含浸させることができるとされる。
また特許文献5では、アンダーカットを有する強化繊維積層体の上に変形可能な中間部材を配置し、中間部材の上から加圧媒体により加圧する技術が開示されている。この技術によれば、アンダーカットを有するFRPを簡単な装置で成形できるとされる。
特開2005−246902号公報 特開2005−271551号公報 国際公開2014/192601号公報 特開2010−120271号公報 特開2009−28939号公報
しかしながら、特許文献1に開示される方法では、Vfを高めるためには樹脂注入圧を高める必要があり、これにより強化繊維が乱れ、物性が低下するという問題があった。また低圧で長時間をかけて注入した場合は、生産性が低下してしまう。
また特許文献2で開示される方法では、上下型の可動方向にのみキャビティが厚くなるため、リブを有するような三次元形状では立面部のキャビティを厚くすることができず、樹脂流動挙動に差ができることで未含浸部を生じやすいという問題があった。
特許文献3〜5で開示される方法では、三次元形状の成形に適しているものの、以下のような問題があった。特許文献3で開示される方法では、型と強化繊維積層体が接した状態で樹脂を注入するため、基材特性によっては樹脂含浸が困難という問題があった。また、分割型を稼動するための駆動機構が各分割型に必要となるため、立面を多く有するような大型構造に適用することは困難である。
特許文献4で開示される方法では、樹脂注入時に成形品の一部の領域はキャビティが最終成形品厚みとなるため、樹脂注入中の型内のVfにばらつきが生じ、高Vf部に未含浸が生じやすくなる。
航空機構造ではリブにアンダーカットを有する形状が多々あるが、特許文献1〜4にはアンダーカット形状を製造するための技術は開示されていない。RTM法でのアンダーカット形状の成形技術として特許文献5が挙げられるが、強化繊維積層体の上に配置した中間部材を加圧することでキャビティの厚みが決定されるため、寸法精度が低くなるという問題があった。
本発明の課題は、上記のような従来技術の現状に鑑みて、アンダーカットを有する三次元形状のFRPをRTM法によって高い生産性で成形できるRTM製造装置およびRTM製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明に係る繊維強化プラスチックのRTM製造装置およびRTM製造方法は、以下のとおりである。
(1)複数の型からなり、アンダーカットを有する形状のキャビティが形成される成形型を有し、前記キャビティ内に強化繊維基材が積層された強化繊維積層体を配置するとともに、前記成形型に少なくとも一つの樹脂注入口と、少なくとも一つのスライドコア機構を設け、前記樹脂注入口からマトリックス樹脂を前記キャビティへ注入して前記強化繊維積層体に含浸、硬化させて繊維強化プラスチックを得るRTM製造装置において、前記スライドコア機構が前記アンダーカット部に挿入可能であり、前記マトリックス樹脂の注入前に前記スライドコア機構と前記強化繊維積層体の間に空隙が形成される位置に前記スライドコア機構を配置し、前記マトリックス樹脂が注入されつつあるときまたは注入された後、前記スライドコア機構が前記繊維強化プラスチックの形状を形成する位置に移動することを特徴とするRTM製造装置。
(2)(1)に記載のRTM製造装置において、少なくとも2つの前記スライドコア機構が連動して動作するRTM製造装置。
(3)(2)に記載のRTM製造装置において、隣り合った前記スライドコア機構の間にシール構造を有することを特徴とするRTM製造装置。
(4)(1)〜(3)のいずれかに記載のRTM製造装置において、前記スライドコア機構のうち少なくとも1つの駆動に、アンギュラピンまた加圧流体で膨張する袋の少なくとも一方を用いることを特徴とするRTM製造装置。
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載のRTM製造装置において、前記スライドコア機構の動作速度が可変であることを特徴とするRTM製造装置。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載のRTM製造装置を用いて繊維強化プラスチックを製造するRTM製造方法において、前記アンダーカットを有する形状のキャビティに前記強化繊維積層体を配置し、前記スライドコア機構と前記強化繊維積層体の間に空隙が形成される位置に前記スライドコア機構を配置し、前記空隙に前記マトリックス樹脂を注入しつつあるときまたは注入した後、前記スライドコア機構を前記繊維強化プラスチックの形状を形成する位置に移動し、前記マトリックス樹脂を含浸、硬化させることを特徴とするRTM製造方法。
本発明のRTM製造装置およびRTM製造方法によれば、平面部、立面部ともに強化繊維積層体と金型の間に空隙を形成した状態で樹脂を注入することができ、かつアンダーカット形状を簡単な金型構造で脱型できる。そのため、アンダーカットや立壁を有する複雑形状のFRPを、基材特性に関わらず、短時間かつ高い寸法精度で所望のFRPを得ることができる。
本発明に係るRTM製造装置の一例を示した概略縦断面図である。 本発明の第1の実施態様に係るRTM成形装置の一作動状態を示す概略縦断面図である。 本発明の第1の実施態様に係るRTM成形装置の一作動状態を示す概略縦断面図である。 本発明の第1の実施態様に係るRTM成形装置の一作動状態を示す概略縦断面図である。 本発明の第1の実施態様に係るRTM成形装置を用いて得られる強化繊維プラスチックの形状を示したアイソメ図である。 本発明に係るRTM製造装置のスライドコアの駆動にアンギュラピンを用いた例を示す概略縦断面図である。 本発明に係るRTM製造装置を用いて得られる強化繊維プラスチックを例示した概略斜視図である。 本発明に係るRTM製造装置のスライドコアの駆動に加圧流体で膨張する袋を用いた例を示す概略縦断面図である。 本発明に係るRTM製造装置の作動状態を例示した概略縦断面図である。 本発明の第2の実施態様に係るRTM成形装置を用いて得られる強化繊維プラスチックの形状を示したアイソメ図である。 本発明の第2の実施態様に係るRTM成形装置を用いて得られる強化繊維プラスチックの形状を示した上面図である。 本発明の第2の実施態様に係るRTM成形装置の一作動状態を示す概略縦断面図と平面図である。 本発明の第2の実施態様に係るRTM成形装置の一作動状態を示す概略縦断面図と平面図である。 本発明の第2の実施態様に係るRTM成形装置の一作動状態を示す概略縦断面図と平面図である。
以下に、本発明の望ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。
本発明の第1の実施態様について、図を用いて説明する。図1は本発明に係るRTM製造装置1の一例の概略模式図であり、図2〜4は、本発明の一実施態様のRTM製造装置の一作動状態における概略断面図を示している。図5に示す本実施態様で得られる繊維強化プラスチック2は、平滑なパネル部21とZ断面補強部22からなる。本実施態様ではZ断面補強部22は、Z型の断面形状を有し、アンダーカット部221を有する。
本実施態様のRTM製造装置1は、キャビティ12を形成する一対の、一方の成形型10aと、対向する他方の成形型10bと、スライドコア11から形成される成形型10、樹脂注入機9、樹脂注入ライン91、樹脂注入孔92、真空吸引装置8、真空吸引ライン81と、成形型間のシール材13から構成されている。10aとして上型を示し、樹脂注入孔92、真空吸引孔82を設けており、また他方の成形型10bとして下型を示し、スライドコア11、成形型間のシール材13を設けているが、逆の場合でも本発明の実施に問題はない。また、スライドコア11、樹脂注入孔92、真空吸引孔82は一方の成形型10a、他方の成形型10bどちらに設けられていても本発明の実施に問題はない。さらに樹脂注入孔92、真空吸引孔82はスライドコア11に設けられていても良い。本発明においてスライドコアとは、金型内部にてスライドする機構のことをいい、その機構の一部は本RTM製造装置で得られる繊維強化プラスチックの形状のキャビティ12を形成するキャビティ面を形成している。本発明においてキャビティとは、シール材でシールされた、成形型、スライドコアの間の空間を表す。本発明において成形型10、スライドコア11の材質は必要な強度、剛性があれば特に限定されないが、成形品の精度と成形品の表面品位を高めるためには金属であることが望ましく、例えばスチールであることが好ましく、さらには、熱膨張の観点からインバーであることが好ましい。
図6に、スライドコアの駆動にアンギュラピン3を用いた場合の本発明に係るRTM製造装置の一例を示す。図6においてアンギュラピン3は、可動板31に接続されており、可動板の上下動32に伴いスライドコア11が横方向33に可動する。本発明でアンギュラピンとは、ピンが接続された可動板31の法線方向とピンの中心線が角度θ(0°<θ<90°)となるものを指す。アンギュラピンの上下動32はこの可動板により行われるため、例えば図7のようにアンダーカット部が複数存在するような形状の成形品を所望する場合も、同じ可動板上に複数のアンギュラピン3およびスライドコア11を設けることで実現可能であり、スライドコア11の駆動源を増やす必要がなく、装置の複雑化を避けることができる。なお可動板の駆動については、油圧、空圧、機械式等の中から最適なものを選択すればよく、特に制限されない。
図8は、スライドコアの駆動に加圧流体で膨張する袋16を用いた場合の本発明に係るRTM製造装置の概略断面図である。図8では、スライドコア11と加圧流体で膨張する袋16がスライド受け部17に格納されている。スライド受け部の材質は必要な強度、剛性があれば特に限定されないが、成形品の精度と成形品の表面品位を高めるためには金属であることが望ましく、例えばスチールであることが好ましく、さらには、熱膨張の観点からインバーであることが好ましい。また、加圧流体で膨張する袋16の材質は、加圧流体を入れたときに漏れが無い密閉性と、体積が大きくなる膨張性、所定の温度、大きさで破裂しない強度、加圧流体によって劣化・腐食しない耐久性を有していれば材質、形態を特に限定するものではないが、例えば、ナイロン、ポリプロピレンなどの樹脂製のフィルムを密閉シールして袋状にしたものや、シリコーンゴム、ブチルゴムなどを材料としたゴム状のシートを接着して袋状にしたものを用いることが好ましい。加圧流体については、圧縮空気、加圧水、油等、成形に必要な圧力や作業環境に応じて適切なものを選択すればよい。なお本発明においてスライドコア11の駆動方法は、ここに例示したアンギュラピン3、加圧流体で膨張する袋16以外にスプリング、シリンダなど、必要なスライド量さえ得ることができれば特に限定されない。
本実施態様では、強化繊維積層体4が設置されるキャビティ12は、成形型間のシール材13と、スライドコア11と成形型10間に設けられた、スライドコア11の駆動方法に応じたシール材13によってシールされる。スライドコア11と成形型10間にシール材13を設けることで、RTM成形方法に用いられる低粘度のマトリックス樹脂を用いた場合であっても、スライドコア11と成形型10との間へのマトリックス樹脂の漏れを防ぐことが可能となり、連続での高速成形を実現できる。
本実施態様ではキャビティ12内に、パネル部41とZ型の断面を有する補強部42からなる三次元形状の強化繊維積層体4を配置する。本発明における強化繊維積層体4は、強化繊維基材を複数層積層したものの他に、強化繊維基材が一層のみの場合や、強化繊維を多軸方向に配置し、一体化させたものも含む。また、本発明における強化繊維基材とは、強化繊維からなる基材の総称である。本発明における強化繊維基材に用いられる強化繊維としては、例えば炭素繊維やガラス繊維、アラミド繊維、PBO(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維、チラノ(チタンアルミナ)繊維、ナイロン繊維などが挙げられる。もちろん、単一の繊維で構成するだけでなく複数の繊維から構成される基材も用いることができる。
また、強化繊維基材の形態は、平織りや綾織り、朱子織り等の織物に限らず、ストランドを一方向に揃えたUD(ni irection)材料、ノンクリンプファブリック材料や多軸基材、ランダムマットやコンティニアスストランドマット等のマット材料やニット材料、ストランドを引き揃えて熱可塑性バインダーやステッチで固定し、シート状にした基材、およびこれらを組み合わせたハイブリッド基材も用いることができる。
また本実施態様ではパネル部41と補強部42を任意の方法で一体化させた強化繊維積層体4を用いるが、本発明において強化繊維積層体の形態は特に制限されず、分割して製作した複数の強化繊維積層体、分割された強化繊維積層体を一体化して製作した強化繊維積層体、一体で製作した強化繊維積層体など、所望の繊維強化プラスチックの形状に適した手法で製作すればよい。
図2〜4を用いて、本実施態様での本発明のRTM製造装置の動作について説明する。本発明では、強化繊維積層体4を成形型10内に設置する際、アンダーカット部421を型内に納めるために図1のようにスライドコア11が強化繊維積層体4のアンダーカット部421の端部422より外側になる位置に配置される。この状態で強化繊維積層体4を成形型10上に配置する。次いで、任意の駆動源によりスライドコア11が、強化繊維積層体4のアンダーカット部421とパネル部41の間の、破線で図示した空間43の間に挿入される。本発明に係るRTM製造装置では、マトリックス樹脂の注入前にスライドコア11は、図3のようにスライドコア11と強化繊維積層体4の間に破線で示す空隙45が形成される位置X1に配置される。また、スライドコア11を有していない側の成形型(本実施態様では一方の成形型10a)は、一方の成形型10aのキャビティ面12aと強化繊維積層体4のパネル部41の間に破線で示す空隙46が形成される位置Y1まで近接させる。位置X1と、スライドコア11の垂直面11aの最終位置X2の距離Wと、位置Y1と一方の成形型10aのキャビティ面12aの最終位置Y2の距離Hは、用いる強化繊維積層体の特性に応じて、空隙45、46が形成されるように決定すればよい。なお最終位置X2およびY2とは、キャビティ12が所望の繊維強化プラスチック2の形状を形成する位置である。また本実施態様では図3のようにスライドコアの垂直面11aと強化繊維積層体4の間に空隙45が、一方の成形型10aのキャビティ面12aと強化繊維積層体4のパネル部41の間に空隙46が形成されているが、本発明では空隙の形成箇所はこれに限らない。図9に、本発明に係るRTM製造装置で樹脂の注入前に空隙が形成された状態の概略断面図の例を複数示す。図9(a)では、本実施態様のようにスライドコア11の垂直面11aと強化繊維積層体4の補強部42の立面423の間に空隙45が形成されている。また図9(b)では、スライドコア11と、補強部42の立面423とフランジ部424それぞれの間で空隙47が形成されている。こうすることで、補強部42全体への樹脂含浸を良好にすることができる。これは例えば、スライドコア11の表面に加圧膨張が可能なシートを設置し、空隙形成時は膨張させず、後述する樹脂含浸プロセス時に加圧・膨張させる、等の方法で実現することができる。
また、同様の手法により図9(c)のようにスライドコア表面全体と、補強部42、パネル部41の下部の間に空隙48を形成することにより、一方の成形型10aとパネル部41の間の空隙46と連通させることもできる。これにより、より強化繊維積層体4に樹脂を均一に拡散することができる。また、スライドコアの駆動源にアンギュラピン3を用いた場合は、図9(d)のようにパネル部41の下面412と他方の成形型10b(ここでは下型)との間にも空隙46を形成することができ、より多くの樹脂流路を形成することができる。
なお、本発明では一方の成形型10aと強化繊維積層体4のパネル部41の間の空隙46は存在していてもしていなくても、どちらでもよい。空隙46が存在しない場合は、スライドコア11と補強部間の空隙を通じて優先的に補強部42に樹脂を流すことが可能であるし、空隙46が存在する場合は強化繊維積層体4全体により均一に樹脂を拡散することが可能となる。なお本発明でのスライドコアと強化繊維積層体間の空隙形成は上記に限らず、基材特性、成形プロセスの都合で適宜調整すれば良い。
本発明では強化繊維積層体4を成形型内に設置した後、キャビティ12内は真空吸引孔82を通じて、真空吸引装置8によって減圧される。本実施態様では、キャビティ12内に強化繊維積層体4を設置した図3の状態において、キャビティ12は成形型間のシール材13と、スライドコア11の駆動源に応じたシール材13によってシールされているため、減圧することができる。なお成形型間のシール材13は、強化繊維積層体と金型の間に空隙を形成した状態で成形型間をシールすることができれば、取付箇所、材質、形態は特に制限されない。
キャビティ内の減圧が完了した後、樹脂注入孔92よりキャビティ12内に所定量のマトリックス樹脂が注入される。真空吸引孔は、マトリックス樹脂注入前に閉止しても良いし、マトリックス樹脂注入中またはマトリックス樹脂注入後に閉止しても良い。本実施態様では、注入されたマトリックス樹脂は、強化繊維積層体4と比べて流動抵抗の少ない空隙45、46を流動してキャビティ全体に流動する。このように、図8に示したような空隙をマトリックス樹脂の流路として用いることにより、強化繊維基材の種類や特性に関わらず、高速でマトリックス樹脂をキャビティ内に注入することができる。樹脂注入孔92は、より効率的にマトリックス樹脂をキャビティ内に充填するため、空隙45および46の近辺に設けることが望ましい。または、樹脂注入孔から空隙45、46にマトリックス樹脂を流動させるための溝を金型に形成しておくことでも、効率的にマトリックス樹脂を注入することができる。
所定量のマトリックス樹脂を注入した後、もしくは注入している途中に、任意の駆動源によりスライドコア11が最終位置X2まで移動する。また、一方の成形型10aと強化繊維積層体4の間に空隙46を形成している場合、一方の成形型10aは、キャビティ面12aの位置が最終位置Y2になるよう移動する。これらの、スライドコア11と成形型10aの動きは同時に行ってもよいし、独立して行っても良い。スライドコア11の駆動にアンギュラピン3を用いる場合、アンギュラピン3が設置される可動板31を一方の成形型10aにて押し下げるような構造にすると、スライドコア11と一方の成形型10aが干渉することを確実に避けられるため、装置が損傷する恐れがなくなり好ましい。スライドコア11と一方の成形型10aの最終位置X2、Y2への移動により、注入された樹脂が強化繊維積層体4に含浸する。
なお本発明では、スライドコア11および一方の成形型10aの移動速度は可変となっている。本実施態様の場合、突き出し板の駆動源(油圧等)やプレス機構の駆動源の速度調整により容易にスライドコア11および一方の成形型10aの移動速度を変更することができる。移動速度については、強化繊維積層体4の含浸特性に応じて調整することで、強化繊維基材に乱れのない、力学物性に優れた成形品を得ることができる。
スライドコア11および一方の成形型10aがそれぞれ最終位置に移動した、図4の状態で注入されたマトリックス樹脂が硬化される。マトリックス樹脂を硬化させるための熱源は、成形型10に加圧水や熱媒油を流すための温度調節ラインを設けることで得ても良いし、成形型の外側に別途熱板を設けることで得ても良い。なお本発明で使用するマトリックス樹脂としては、例えばエポキシ樹脂やビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂に限らず、アクリル樹脂やポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂等の熱可塑性樹脂も使用することができる。特に樹脂粘度が一時100mPa・s以下であるような、粘度が低く強化繊維基材への含浸が良好な樹脂が特に好ましい。特に強化繊維基材への含浸性を高めるためには、樹脂粘度が一時5〜50mPa・sであるような樹脂が好ましい。
硬化が完了した後、一方の成形型10aを上昇させ、次いで突き出し板を上昇させることでスライドコア11により成形品が脱型され、かつスライドコアがアンダーカット部とパネル部の間の空間43より外側に移動するため、所望の繊維強化プラスチック2を得ることができる。
図10、図11は、本発明の第2の実施態様にて得られる繊維強化プラスチック6の概略斜視図および概略上面図を示している。第1の実施態様と同様に平滑なパネル部61とZ断面補強部62、63からなるが、本実施態様ではそれぞれのアンダーカット部621、631が接し二面アンダーカット部64を形成しており、一方向へのスライドコアの移動だけでは脱型ができない構成となっている。このような構成の場合本発明では図12のように二面アンダーカット部処理用スライドコア711と、一面アンダーカット部処理用スライドコア712に分割した構成を用いることができる。
図12〜図14を用いて本実施態様に係る本発明のRTM製造装置の動作について説明する。なお図12〜図14は本実施態様に係る本発明のRTM製造装置の、二面アンダーカット64付近でのスライドコアの動作を平面的に示したものと、概略断面図である。本実施態様に係る本発明のRTM製造装置は、第1の実施態様と同様に、繊維強化プラスチック6の形状のキャビティを形成する一対の、一方の成形型70aと、対向する他方の成形型70bと、二面アンダーカット部処理用スライドコア711と、一面アンダーカット部処理用スライドコア712から形成される成形型70、樹脂注入孔92、真空吸引孔82、成形型間のシール材73、図示しない樹脂注入機、樹脂注入ライン、真空吸引装置、真空吸引ライン、プレス機構、から構成されている。第1の実施態様と同様、二面アンダーカット部処理用スライドコア711、一面アンダーカット部処理用712、樹脂注入孔92、真空吸引孔82は一方の成形型70a、他方の成形型70bどちらに設けられていても本発明の実施に問題はない。さらに樹脂注入孔92、真空吸引孔82は二面アンダーカット部処理用スライドコア711、一面アンダーカット部処理用スライドコア712のいずれかまたはいずれにも設けられていても良い。
本実施態様では図12〜図14に示すように複数のスライドコア機構が互いに異なる方向に作動するため、互いの動作に干渉することが無いよう、連動して作動するように制御される。複数のスライドコア機構の連動動作は、それぞれのスライドコア機構に独立した駆動手段を設けても良いし、各々のスライドコア機構をレール溝等で接続し、1つのスライドコア機構の動作に追従させて他のスライドコア機構を作動させるなど、機械的に連動させることでも達成できる。
また、本発明ではこのようにスライドコア機構を連動させて用いる場合、隣り合ったスライドコアの間にはシール構造76が設けられる。シール構造76は、摺動するスライドコア間での樹脂漏れを防ぐことができれば特に限定されない。このシール構造の存在により、スライドコア間に樹脂が侵入し固着することを抑制でき、所望のFRPの連続成形が可能となる。
本実施態様では、第1の実施態様と同様、強化繊維積層体が設置されるキャビティ72は、成形型間のシール材と、スライドコアの駆動源に応じたシール材と複数のスライドコア間に設けたシール構造によってシールされる。
図12〜14を用いて、本実施態様での本発明のRTM製造装置の動作について説明する。本実施態様ではキャビティ72内に、パネル部41とZ型の断面を有する補強部42を複数組み合わせた三次元形状の強化繊維積層体44を投入する。第1の実施態様と同様に、強化繊維積層体を成形型内に設置する際、アンダーカット部を型内に納めるために図12のようにスライドコアが完全に開ききった状態となる。この状態で強化繊維積層体44を成形型上に配置する。
次いで、図示しない駆動源の作動によって二面アンダーカット部処理用スライドコア711、一面アンダーカット部処理用スライドコア712が、強化繊維積層体4のアンダーカット部421とパネル部41の間の空間43の間に挿入される。このとき第1の実施態様と同様に、各々のスライドコアは、図13のようにスライドコアの垂直面711a、712aと強化繊維積層体4の間にそれぞれ空隙47、空隙48が形成される位置X1に配置される。このときそれぞれのスライドコアの垂直面711a、722aと最終位置X2までの距離A1、A2は任意に設定可能だが、樹脂流動の均一性を得るためにはA1とA2は等しくすることが好ましい。
その後、スライドコアを有していない側の成形型(本実施態様では一方の成形型70a)を、一方の成形型70aのキャビティ面72aと強化繊維積層体44のパネル部41の間に空隙46が形成される位置Y1まで近接させる。位置Y1と一方の成形型70aのキャビティ面72aの最終位置Y2の距離Hは、用いる強化繊維積層体の特性に応じた空隙46が形成されるように決定すればよい。なお最終位置X2およびY2とは、キャビティ72が所望の繊維強化プラスチック6の形状を形成する位置である。第1の実施態様で述べたとおり、本発明ではスライドコアと強化繊維積層体の間の空隙は任意に調整可能であり、成形品形状や成形プロセスに応じて例えば図9のように適宜調整すればよい。
第1の実施態様と同様、強化繊維積層体44を成形型内に設置した後、キャビティ内は真空吸引孔82を通じて、真空吸引装置によって減圧される。本実施態様では、キャビティ72内に強化繊維積層体44を設置した図13の状態においてキャビティ内の減圧が完了した後、樹脂注入孔92よりキャビティ72内に所定量のマトリックス樹脂が注入される。真空吸引孔82は、マトリックス樹脂注入前に閉止しても良いし、マトリックス樹脂注入中またはマトリックス樹脂注入後に閉止しても良い。第1の実施態様と同様に、注入されたマトリックス樹脂は、強化繊維積層体4と比べて流動抵抗の少ない空隙46、47、48を流動してキャビティ全体に流動する。
所定量のマトリックス樹脂を注入した後、もしくは注入している途中に、二面アンダーカット部処理用スライドコア711、一面アンダーカット部処理用スライドコア712が互いの動きに干渉しないよう連動しながら最終位置X2まで移動する。また、一方の成形型70aは、キャビティ面72aの位置が最終位置Y2になるよう移動する。これらの、二面アンダーカット部処理用スライドコア711、一面アンダーカット部処理用スライドコア712と成形型10aの動きは同時に行ってもよいし、独立して行っても良い。これらの、二面アンダーカット部処理用スライドコア711、一面アンダーカット部処理用スライドコア712と成形型70aの動きにより、注入された樹脂が強化繊維積層体44に含浸する。
硬化が完了した後、一方の成形型10aを上昇させ、次いで二面アンダーカット部処理用スライドコア711、一面アンダーカット部処理用スライドコア712を後退させることにより所望の繊維強化プラスチック6を得ることができる。
これまで説明してきた実施態様のとおり、本発明に係るRTM製造装置、RTM製造方法を用いることで、マトリックス樹脂注入時は強化繊維積層体と金型の間に形成された空隙を利用してマトリックス樹脂を注入できるため、含浸性の低い強化繊維積層体や、高Vfかつ厚いFRPを容易に製造することができる。特に本発明は、所望のFRPが三次元形状を有し、さらに板厚の少なくとも一部が4mm以上であり、Vfが50%以上あるような大型のものでも容易に効率よく製造することが可能となる。
本発明に係るRTM製造装置およびRTM製造方法は、三次元形状およびアンダーカットを有するあらゆるFRP成形品の製造に適用可能であり、特に、航空機や自動車の一次構造体など、パネルと補強部からなる構造体の製造に好適である。
1 RTM製造装置
10 第1の実施態様の成形型
10a 第1の実施態様の一方の成形型
10b 第1の実施態様の他方の成形型
11 第1の実施態様のスライドコア
11a 第1の実施態様のスライドコアの垂直面
12 第1の実施態様のキャビティ
12a 第1の実施態様の一方の成形型10aのキャビティ面
13 第1の実施態様の成形型間のシール材
16 加圧流体で膨張する袋
17 スライド受け部
2 第1の実施態様に係る繊維強化プラスチック
21 パネル部
22 Z断面補強部
221 アンダーカット部
3 アンギュラピン
31 可動板
32 可動板の上下動
33 可動板の横方向移動
4 強化繊維積層体
41 パネル部
412 パネル部の下面
42 補強部
421 アンダーカット部
422 アンダーカット部の端部
43 アンダーカット部とパネル部の間の空間
44 第2の実施態様に係る強化繊維積層体
45 スライドコアと強化繊維積層体間の空隙
46 一方の成形型と強化繊維積層体間の空隙
47 二面アンダーカット部処理用スライドコアと強化繊維積層体間の空隙
48 一面アンダーカット部処理用スライドコアと強化繊維積層体間の空隙
5 プレス機構
6 第2の実施態様に係る繊維強化プラスチック
61 パネル
62 Z断面補強部
621 アンダーカット部
63 Z断面補強部
631 アンダーカット部
64 二面アンダーカット部
70 第2の実施態様の成形型
70a 第2の実施態様の一方の成形型
70b 第2の実施態様の他方の成形型
71 スライドコア
711 二面アンダーカット部処理用スライドコア
711a二面アンダーカット部処理用スライドコアの垂直面
712 一面アンダーカット部処理用スライドコア
712a一面アンダーカット部処理用スライドコアの垂直面
72 第2の実施態様のキャビティ
72a 一方の成形型10aのキャビティ面
73 成形型間のシール材
76 シール構造
8 真空吸引装置
81 真空吸引ライン
82 真空吸引孔
9 樹脂注入機
91 樹脂注入ライン
92 樹脂注入孔

Claims (6)

  1. 複数の型からなり、アンダーカットを有する形状のキャビティが形成される成形型を有し、前記キャビティ内に強化繊維基材が積層された強化繊維積層体を配置するとともに、前記成形型に少なくとも一つの樹脂注入口と、少なくとも一つのスライドコア機構を設け、前記樹脂注入口からマトリックス樹脂を前記キャビティへ注入して前記強化繊維積層体に含浸、硬化させて繊維強化プラスチックを得るRTM製造装置において、前記スライドコア機構が前記アンダーカット部に挿入可能であり、前記マトリックス樹脂の注入前に前記スライドコア機構と前記強化繊維積層体の間に空隙が形成される位置に前記スライドコア機構を配置し、前記マトリックス樹脂が注入されつつあるときまたは注入された後、前記スライドコア機構が前記繊維強化プラスチックの形状を形成する位置に移動することを特徴とするRTM製造装置。
  2. 請求項1に記載のRTM製造装置において、少なくとも2つの前記スライドコア機構が連動して動作するRTM製造装置。
  3. 請求項2に記載のRTM製造装置において、隣り合った前記スライドコア機構の間にシール構造を有することを特徴とするRTM製造装置。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のRTM製造装置において、前記スライドコア機構のうち少なくとも1つの駆動に、アンギュラピンまた加圧流体で膨張する袋の少なくとも一方を用いることを特徴とするRTM製造装置。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のRTM製造装置において、前記スライドコア機構の動作速度が可変であることを特徴とするRTM製造装置。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のRTM製造装置を用いて繊維強化プラスチックを製造するRTM製造方法において、前記アンダーカットを有する形状のキャビティに前記強化繊維積層体を配置し、前記スライドコア機構と前記強化繊維積層体の間に空隙が形成される位置に前記スライドコア機構を配置し、前記空隙に前記マトリックス樹脂を注入しつつあるときまたは注入した後、前記スライドコア機構を前記繊維強化プラスチックの形状を形成する位置に移動し、前記マトリックス樹脂を含浸、硬化させることを特徴とするRTM製造方法。
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