JP6728417B2 - Cmp依存性シアリダーゼ活性 - Google Patents
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Description
ター部分へ伝達するのをを触媒する。このプロセスは“グリコシル化”としても知られる。たとえば糖タンパク質の構造部分である炭水化物部分は、“グリカン”とも呼ばれる。グリカンはすべての既知の翻訳後タンパク質修飾の最も多くを構成する。グリカンは、接着、免疫応答、神経細胞移動および軸索伸長にわたる広範な生物学的認識プロセスに関与する。グリカンは、糖タンパク質の構造部分として、タンパク質フォールディングならびにタンパク質の安定性および生物活性の支持においても役割をもつ。
て糖タンパク質のグリカン部分の翻訳後生合成が起きる。糖タンパク質の単一(分枝または線状)炭水化物鎖は一般にN−またはO−結合型グリカンである。翻訳後プロセシングに際して、炭水化物は一般にアスパラギンを介して(“N−結合型グリコシル化”)、またはセリンもしくはトレオニンを介して(“O−結合型グリコシル化”)、ポリペプチドに結合する。グリカンの合成は、N−またはO−結合型(=“N−/O−結合型”)のいずれであっても、幾つかの異なる膜固定型グリコシルトランスフェラーゼの活性により作用を受ける。糖タンパク質は1以上のグリカン結合したアミノ酸(=“グリコシル化部位”)を含む場合がある。個々のグリカン構造は線状または分枝状の場合がある。分枝は炭水化物の顕著な特徴であり、それはDNA、RNAおよびポリペプチドに一般的な線状性と対照的である。グリカン構造体は、それらの基本構築ブロックである単糖の不均一性が大きいことと合わせて、高い多様性を示す。さらに、特定の糖タンパク質種のメンバーにおいては特定のグリコシル化部位に結合するグリカンの構造が変動する可能性があり、こうしてそれぞれの糖タンパク質種、すなわちポリペプチド部分の同一アミノ酸配列を共有する種における、ミクロ不均一性が生じる。
ゼに、グリコシド結合の形成に際してNeu5Ac残基が伝達されるアクセプター糖残基のヒドロキシル位置に応じて、(i)ST3Gal、(ii)ST6Gal、(iii)ST6GalNAc、または(v)ST8Siaなどの表記がなされている。より総称的なシアリルトランスフェラーゼの表記、たとえばST3、ST6、ST8も行なうことができる;よって、“ST6”は詳細にはα2,6シアリル化を触媒するシアリルトランスフェラーゼを包含する。
にしばしばみられる末端残基であるが、O−結合型グリカンおよび糖脂質にも存在する場合がある。さらに、末端Galβ1,4GlcNAc部分は、あるターゲット糖タンパク質においてガラクトシルトランスフェラーゼ酵素活性の結果として生成する可能性がある。酵素β−ガラクトシド−α2,6−シアリルトランスフェラーゼ(=“ST6Gal”)は、グリカンまたはグリカン分枝(当技術分野で“アンテナ”としても知られる)の末端Galβ1,4GlcNAcアクセプター部分のα2,6−シアリル化を触媒することができる。その一般的側面については、DallOlio F. Glycoconjugate Journal 17 (2000) 669-676の文献を参照する。ヒトおよび他の哺乳動物には、ST6Galの幾つかの種(アイソザイム)があると思われる。本開示は、特にヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼI(=hST6Gal−I;IUBMB酵素命名法によればEC 2.4.99.1)およびそのバリアントを開示するが、それらに限定されない。
ル化に対する工学的ツールとなりつつある。
(a)SEQ ID NO:1の位置90から位置108までのアミノ酸モチーフを含む可溶性ヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼI;
(b)シチジン−5’−モノホスホ−N−アセチルノイラミニン酸またはその機能均等物;
(c)糖タンパク質および糖脂質から選択されるグリコシル化されたターゲット分子;ターゲット分子は1以上のアンテナを含み、少なくとも1つのアンテナは末端構造としてガラクトシル残基のC6位にヒドロキシル基をもつβ−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン部分を有する;
(d)グリコシルトランスフェラーゼ酵素活性を可能にする水溶液
を含む水性組成物であって、
さらに、グリコシルトランスフェラーゼ酵素活性を可能にする条件下で5’−シチジン−一リン酸中のホスホエステル結合を加水分解できる酵素を含む水性組成物を開示する。
(a)請求項1および2に従った水性組成物を用意する;
(b)工程(a)の水性組成物をインキュベートし、それによりシチジン−5’−モノホスホ−N−アセチルノイラミニン酸またはその機能均等物を補基質として反応させることにより、1以上の末端アンテナ形N−アセチルノイラミニル−α2,6−β−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン残基を形成し、それにより5’−シチジン−一リン酸が形成される;
(c)工程(b)で形成された5’−シチジン−一リン酸のホスホエステル結合を加水分解し、それにより5’−シチジン−一リン酸仲介による阻害を低減し、それにより可溶性ヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼIの活性を維持する;
工程を含み、
それにより、シアリル化されたターゲット分子をインビトロで製造する方法を開示する。
8までのアミノ酸モチーフを含む可溶性ヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼIの使用を開示する。
限り、一般に複数表記、すなわち“1以上の(one or more)”を含む。本明細書中で用い
る“複数(plurality)”は1より多いことを意味すると解釈される。たとえば、複数は少
なくとも2、3、4、5またはより多いことを表わす。具体的に述べない限り、または状況から明らかでない限り、本明細書中で用いる用語“または(or)”は包括的であると解釈される。
アセチルノイラミニン酸)残基と反応する特定の形態のグリコシル化である。そのような反応は一般に、シアリルトランスフェラーゼ酵素により、シチジン−5’−モノホスホ−N−アセチルノイラミニン酸をドナー化合物または補基質として用いて触媒される。
一般に、グリコシルトランスフェラーゼ酵素活性が起きうる(=“グリコシルトランスフェラーゼ酵素活性を可能にする”条件下の)水性組成物は、具体的にはpH6〜pH8のpH範囲、より具体的にはpH6〜pH7の範囲に緩衝化できる、よりいっそう具体的には溶液を約pH6.5に緩衝化できる緩衝塩、たとえばトリス、MES、リン酸塩、酢酸塩、または他の緩衝塩により緩衝化される必要があることを当業者は認識している。緩衝液はさらに中性塩、たとえばNaClを含有することができるが、これに限定されない。さらに、特定の態様において、当業者は二価カチオン、たとえばMg2+またはMn2+を含む塩、たとえばMgCl2およびMnCl2(これらに限定されない)を水性緩衝液に添加することを考慮できる。さらに他の特定の態様において、グリコシルトランスフェラーゼ酵素活性を可能にする水性組成物は、抗酸化剤および/または界面活性剤を含むことができる。当技術分野で既知の、グリコシルトランスフェラーゼ酵素活性を可能にする条件には、周囲(室)温度、より一般的には0℃〜40℃、特に10℃〜30℃の範囲、特に約20℃の温度が含まれる。前記条件はそのような酵素活性を可能にする一般的条件を示すが、グリコシルトランスフェラーゼ活性はさらに、補基質として、活性化された糖ドナー(たとえば、具体的にはCMP−Neu5Ac)の存在をさらに必要とする。しかし、用語“グリコシルトランスフェラーゼ酵素活性を可能にする”は必ずしも補基質の存在を含まないと解釈される。よって、本明細書において用語“グリコシルトランスフェラーゼ酵素活性を可能にする”には、本開示の対象である哺乳動物グリコシルトランスフェラーゼの加水分解(シアリダーゼ)活性、特に5’−シチジン−一リン酸(CMP)の存在下での加水分解活性を可能にする条件も含まれる。
酸モチーフは、この酵素が5’−CMPと相互作用するために必要である。きわめて顕著に、位置1から位置108までの連続N末端範囲のアミノ酸を欠如したトランケーション欠失変異体である可溶性ヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼIバリアントは、CMPの存在下ですらシアリダーゼ活性を示さない。よって、ヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼIにおいてSEQ ID NO:1中の位置90から位置108までのアミノ酸モチーフはこれらの特性が存在するために必須であると結論された。
チルノイラミニル−α2,6−β−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン部分のα2,6グリコシド結合の形成を触媒し、それにより遊離N−アセチルノイラミニン酸を生成することができる。本明細書に開示するすべての側面のうち特定の態様において、このバリアント哺乳動物グリコシルトランスフェラーゼは、ヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼIを開示するSEQ ID NO:1の位置90から位置108までのアミノ酸モチーフを含む可溶性酵素である。本明細書に開示する教示には、SEQ ID NO:1の位置90から位置108までのアミノ酸モチーフを含む相同シアリルトランスフェラーゼが含まれる。
胞の格別な利点は、それらがトランスフェクション、それに続く培養およびターゲット遺伝子の一過性発現にきわめて好適なターゲットであるということである。よって、ターゲットタンパク質を組換え発現により産生させるためにHEK細胞を効果的に使用できる。著しく有利には、翻訳生成物を分泌経路へ指向させるように発現構築体を設計して、本明細書に開示するバリアント哺乳動物グリコシルトランスフェラーゼまたは融合ポリペプチドを分泌させる。それでもなお、ジャーカット(Jurkat)、NIH3T3、HeLa、COSおよびチャイニーズハムスター卵巣(Chinese Hamster Ovary)(CHO)細胞は周知の代替細胞であり、形質転換および本明細書に開示するすべての側面の特定の態様のための代替宿主生物として含まれる。
つのガラクトース部分をもち、それらをシアリル化することができる。適切な反応条件下で、N末端トランケート型バリアント△89 hST6Gal−Iは、免疫グロブリンFc部分にビ−シアリル化されたG2グリカン(G2+2SA)をもつIgGの合成を触媒する。しかし、5’−CMPが蓄積すると、この酵素バリアントは、ビ−シアリル化された(G2+2SA)抗体から加水分解によりシアル酸部分を除去するシアリダーゼとして作用し、モノ−シアリル化された(G2+1SA)抗体を生成する。この特性は予想外に見出され、固有のシアリダーゼ(ノイラミニダーゼ)活性であると思われる。
ない。インキュベーション時間に応じて、△89 hST6Gal−IをCMP加水分解酵素と組み合わせたものは、2アンテナ型(bi-antennary)グリカンをもつモノクローナル抗体を基質として用いるシアリル化実験において良好な性能を示す。本開示の態様を用いて、比較的短いインキュベーション期間、たとえば8時間後に、好ましいビ−シアリル化されたグリカンが著しく有利に得られる。4アンテナ型(tetra-antennary)グリカンも基
質として受け入れられる(データを示していない)。これらの結果は、療法用抗体のインビトロ糖工学操作のための技術的利点を立証する。
1. 5’−シチジン−一リン酸の存在下で、N−アセチルノイラミニル−α2,6−β−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン部分、すなわちシアリル化された糖タンパク質または糖脂質中のグリカンの末端構造である部分におけるα2,6グリコシド結合をインビトロ加水分解するための、SEQ ID NO:1の位置90から位置108までのアミノ酸モチーフを含む可溶性ヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼIの使用。
4. 糖タンパク質が、細胞表面−糖タンパク質および血清−糖タンパク質からなる群から選択される、項目1〜3のいずれか1項に記載の使用。
7. 糖タンパク質が哺乳動物由来の形質転換された宿主細胞において組換え製造される、項目6に記載の使用。
10.
(a)SEQ ID NO:1の位置90から位置108までのアミノ酸モチーフを含む可溶性ヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼI;
(b)シチジン−5’−モノホスホ−N−アセチルノイラミニン酸またはその機能均等物;
(c)糖タンパク質および糖脂質から選択されるグリコシル化されたターゲット分子;ターゲット分子は1以上のアンテナを含み、少なくとも1つのアンテナは末端構造としてガラクトシル残基のC6位にヒドロキシル基をもつβ−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン部分を有する;
(d)グリコシルトランスフェラーゼ酵素活性を可能にする水溶液
を含む水性組成物であって、
さらに、グリコシルトランスフェラーゼ酵素活性を可能にする条件下で5’−シチジン−一リン酸中のホスホエステル結合を加水分解できる酵素を含む水性組成物。
16. 糖タンパク質が哺乳動物由来の形質転換された宿主細胞において組換え製造される、項目15に記載の水性組成物。
19. 水溶液が、水、pH6〜pH8のpH範囲に緩衝化できる緩衝塩、ならびに場合により中性塩、二価カチオンを含む塩、抗酸化剤、界面活性剤、およびその混合物からなる群から選択される化合物を含む、項目10〜18のいずれか1項に記載の水性組成物。
21. 5’−シチジン−一リン酸中のホスホエステル結合を加水分解できる酵素が、アルカリホスファターゼ、酸性ホスファターゼ、および5’ヌクレオチダーゼからなる群から選択される、項目10〜20のいずれか1項に記載の水性組成物。
24. 5’ヌクレオチダーゼが、哺乳動物由来の、特にヒト由来の5’ヌクレオチダーゼCD73である、項目21に記載の水性組成物。
NO:1の位置90から位置108までのアミノ酸モチーフを含む可溶性ヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼIのシアリル化活性を維持するための、項目10〜24のいずれか1項に記載の水性組成物の使用。
(a)項目10〜24のいずれか1項に記載の水性組成物を用意する;
(b)工程(a)の水性組成物をインキュベートし、それによりシチジン−5’−モノホスホ−N−アセチルノイラミニン酸またはその機能均等物を補基質として反応させることにより、1以上の末端アンテナ形N−アセチルノイラミニル−α2,6−β−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン残基を形成し、それにより5’−シチジン−一リン酸が形成される;
(c)工程(b)で形成された5’−シチジン−一リン酸のホスホエステル結合を加水分解し、それにより5’−シチジン−一リン酸仲介による阻害を低減し、それにより可溶性ヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼIの活性を維持する;
工程を含み、
それにより、シアリル化されたターゲット分子をインビトロで製造する方法。
29. 工程(b)と(c)を同じ容器内で実施する、項目27および28に記載の方法。
33. 工程(b)および(c)を約96時間実施する、項目5〜7のいずれか1項に記載の方法。
38. 血清−糖タンパク質が、グリコシル化されたタンパク質シグナル伝達分子、グリコシル化された免疫グロブリン、およびグリコシル化されたウイルス由来のタンパク質から選択される、項目37に記載の使用。
40. 糖タンパク質が哺乳動物由来の形質転換された宿主細胞において組換え製造される、項目39に記載の使用。
43.
(a)SEQ ID NO:1の位置90から位置108までのアミノ酸モチーフを含む可溶性ヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼI;
(b)シチジン−5’−モノホスホ−N−アセチルノイラミニン酸またはその機能均等物;
(c)糖タンパク質および糖脂質から選択されるグリコシル化されたターゲット分子;ターゲット分子は1以上のアンテナを含み、少なくとも1つのアンテナは末端構造としてガラクトシル残基のC6位にヒドロキシル基をもつβ−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン部分を有する;
(d)グリコシルトランスフェラーゼ酵素活性を可能にする水溶液
を含む水性組成物であって、
さらに、グリコシルトランスフェラーゼ酵素活性を可能にする条件下で5’−シチジン−一リン酸中のホスホエステル結合を加水分解できる酵素を含む水性組成物。
49. 糖タンパク質が哺乳動物由来の形質転換された宿主細胞において組換え製造される、項目48に記載の水性組成物。
52. 水溶液が、水、pH6〜pH8のpH範囲に緩衝化できる緩衝塩、ならびに場合により中性塩、二価カチオンを含む塩、抗酸化剤、界面活性剤、およびその混合物からなる群から選択される化合物を含む、項目43〜51のいずれか1項に記載の水性組成物。
54. シアリル化されたターゲット分子をインビトロで製造する方法であって、
(a)項目43〜53のいずれか1項に記載の水性組成物を用意する;
(b)工程(a)の水性組成物をインキュベートし、それによりシチジン−5’−モノホスホ−N−アセチルノイラミニン酸またはその機能均等物を補基質として反応させることにより、1以上の末端アンテナ形N−アセチルノイラミニル−α2,6−β−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン残基を形成し、それにより5’−シチジン−一リン酸が形成される;
(c)工程(b)で形成された5’−シチジン−一リン酸を蓄積させる;
工程を含み、
それにより、シアリル化されたターゲット分子をインビトロで製造する方法。
56. 工程(b)と(c)を同じ容器内で実施する、項目54および55に記載の方法。
58. 項目10〜24のいずれか1項に記載の組成物におけるシアリルトランスフェラーゼ酵素活性を維持するための、5’−シチジン−一リン酸中のホスホエステル結合を加水分解できる酵素の使用。
アクセプター部位を有し、その際、シアリル化された免疫グロブリンの調製物中のアクセプター部位の25%未満がシアリル化されておらず、75%以上がシアリル化されている、項目27〜33のいずれか1項に記載の方法に従って得られる調製物。
シアリルトランスフェラーゼ酵素活性についての試験
アシアロフェツイン(脱シアリル化されたフェツイン,Roche Applied Science)をアクセプターとして用い、CMP−9−フルオロ−NANA(CMP−9−フルオレセイニル−NeuAc)をドナー基質として用いた(Brossmer, R. & Gross H. J. (1994) Meth. Enzymol. 247, 177-193)。ドナー化合物からアシアロフェツインへのシアル酸の伝達を測定することにより、シアリルトランスフェラーゼの酵素活性を決定した。反応ミックス(35mMのMES,pH6.0,0.035%のTriton X−100,0.07%のBSA)は、2.5μgの酵素試料、5μLのアシアロフェツイン(20mg/mL)および2μLのCMP−9−フルオロ−NANA(1.0mg/mL)を、51μLの総体積中に含有していた。反応ミックスを37℃で30分間、インキュベートした。10μLの阻害物質CTP(10mM)の添加により反応を停止した。反応ミックスを、0.1Mトリス/HCl,pH8.5で平衡化したPD10脱塩用カラムに装填した。平衡化用緩衝液を用いてフェツインをカラムから溶離した。画分サイズは1mLであった。形成されたフェツインの濃度を蛍光分光光度計により決定した。励起波長は490nmであり、発光を520nmで測定した。酵素活性をRFU(relative fluorescence unit(相対蛍光単位))として表示した。10,000RFU/μgは0.0839nmol/μg×分の比活性に等しい。
SDSゲル電気泳動
NuPAGEゲル(4〜12%,Invitrogen)を用いて分析用SDSゲル電気泳動を実施した。試料(36μL)を12μLのNuPAGE LDS試料緩衝液(Invitrogen)で希釈し、85℃で2分間、インキュベートした。一般に5μgのタンパク質を含有するアリコートをゲルに装填した。SimplyBlue SafeStain(Invitrogen)を用いてゲルを染色した。
エドマン分解によるN末端シーケンシング
発現したヒトST6Gal−IのバリアントのN末端配列を、Life Technologiesから入手した試薬およびデバイスを用いるエドマン分解により分析した。試料の調製を、Life Technologies ProSorb試料調製カートリッジ(カタログ番号401950)およびLife Technologies ProBlott Mini PK/10メンブレン(カタログ番号01194)の指示マニュア
ルの記載に従って行なった。シーケンシングのためにProcise Protein Sequencing Platformを用いた。
グリコシル化されたヒトST6Gal−I酵素の質量分析
HEK細胞において発現したヒトST6Gal−Iのバリアントの分子質量を分析した。グリコシル化された形態のヒトST6Gal−Iが産生され、産生された物質をMicromass Q−Tof UltimaおよびSynapt G2 HDMSデバイス(Waters UK)ならびにMassLynx V 4.1ソフトウェアを用いて分析した。質量分析測定のために、試料をエレクトロスプレー媒体(20%アセトニトリル+1%ギ酸)中で緩衝化した。illustra(商標) MicroSpin(商標) G−25カラム(GE−Healthcare)による緩衝液交換を行なった。濃度1mg/mLのシアリルトランスフェラーゼバリアント20μgを予備平衡化したカラムに適用し、遠心により溶離した。得られた溶出液をエレクトロスプレーイオン化質量分析により分析した。
脱グリコシル化されたヒトST6Gal−I酵素の質量分析
HEK細胞において発現したヒトST6Gal−Iのバリアントの分子質量を分析した。脱グリコシル化された形態のヒトST6Gal−Iを、Micromass Q−Tof UltimaおよびSynapt G2 HDMSデバイス(Waters UK)ならびにMassLynx V 4.1ソフトウェアを用いて分析した。
脱グリコシル化のために、シアリルトランスフェラーゼの試料を変性および還元した。100μgのシアリルトランスフェラーゼに45μLの変性用緩衝液(6M塩酸グアニジニウム)および13μLのTCEP(=トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン;0.1mM,変性用緩衝液中に希釈)を添加した。さらに、塩酸グアニジニウムの全濃度が約4Mになるように、適宜な体積の超純水を添加した。試料を37℃で1時間インキュベートした後、超純水で予備平衡化したBio−SpinR 6トリスカラム(Bio Rad)を用いて緩衝液を交換した。全試料をカラムに適用し、遠心により溶離した。得られた溶出液に0.1U/μLのPNGase−F溶液5.5μLを添加し、37℃で一夜インキュベートした。その後、試料を30%のACN(=アセトニトリル)および1%のFA(=ホルムアミド)に調整し、エレクトロスプレーイオン化質量分析により分析した。
哺乳動物宿主細胞におけるヒトST6Gal−Iのトランケート型バリアント△89の一過性発現のためのpM1MT発現構築体のクローニング
ヒトST6Gal−Iのトランケート型バリアント△89を、一過性発現のためにエリスロポエチンシグナルペプチド配列(Epo)および2アミノ酸(“AP”)のペプチドスペーサーを用いてクローニングした。Epo−AP−△89 hST6Gal−I構築体のためにコドン最適化cDNAを合成した;参照:SEQ ID NO:3。hST6Gal−Iコード領域には、天然リーダー配列およびN末端タンパク質配列の代わりに、宿主細胞系の分泌機構による発現ポリペプチドの適正プロセシングを確実にするためのエリスロポエチンシグナル配列プラスAPリンカー配列がある。さらに、発現カセットは、予備消化したpM1MTベクターフラグメント(Roche Applied Science)の多重クローニング部位へのクローニングのためのSalIおよびBamHI制限部位を備えている。したがって、ST6Gal−Iコード配列の発現は、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)極初期(immediate-early)エンハンサー/プロモーター領域、続
いて調節発現のための“イントロンA”、およびBGHポリアデニル化シグナルの制御下にある。HEK細胞におけるEpo−AP−△89 hST6Gal−I構築体の発現、および細胞上清中への△89 hST6Gal−Iタンパク質の分泌は、実施例8の記載に従って実施された。
哺乳動物宿主細胞におけるヒトST6Gal−Iのトランケート型バリアント△108の一過性発現のためのpM1MT発現構築体のクローニング
ヒトST6Gal−Iのトランケート型バリアント△108を、一過性発現のためにエリスロポエチンシグナルペプチド配列(Epo)および4アミノ酸(“APPR”)のペプチドスペーサーを用いてクローニングした。Epo−APPR−△108 hST6Gal−I構築体のためにコドン最適化cDNAを合成した;参照:SEQ ID NO:6。天然hST6Gal−I由来のmRNAリーダーおよびN末端タンパク質配列を、HEK宿主細胞系の分泌機構によるポリペプチドの適正プロセシングを確実にするためにエリスロポエチンシグナル配列および“APPR”リンカー配列で交換した。さらに、発現カセットは、予備消化したpM1MTベクターフラグメント(Roche Applied Science)の多重クローニング部位へのクローニングのためのSalIおよびBamHI制限部位をもつ。それにより、hST6Gal−Iコード配列の発現は、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)極初期エンハンサー/プロモーター領域の制御下に置かれた;発現ベクターはさらに調節発現のための“イントロンA”、およびBGHポリアデニル化シグナルを備えている。HEK細胞におけるEpo−APPR−△108 hST6Gal−I構築体(SEQ ID NO:6)の発現、および細胞上清中への△108 hST6Gal−Iタンパク質の分泌は、実施例8の記載に従って実施された。
HEK細胞の形質転換ならびに一過性発現および分泌
プラスミドDNAのトランスフェクションによる一過性遺伝子発現(transient gene expression)(TGE)は、哺乳動物細胞培養においてタンパク質を製造するための迅速な方策である。組換え体ヒトタンパク質の高レベル発現のために、懸濁適応させたヒト胎児腎(HEK)293細胞系をベースとするTGEプラットホームを用いた。細胞をシェーカーフラスコ内において37℃で無血清培地条件下に培養した。約2×106vc/mLの細胞に、293−Free(商標) (Merck)トランスフェクション試薬により複合体形成したpM1MT発現プラスミド(0.5〜1mg/L 細胞培養物)を製造業者のガイドラインに従ってトランスフェクションした。トランスフェクションの3時間後、発現を増強するために、バルプロ酸(valproic acid)、すなわちHDAC阻害物質を添加した(最終濃度4mM)(Backliwal et al. (2008), Nucleic Acids Research 36, e96)。毎日、培養物に6%(v/v)のダイズペプトン水解物ベースの供給物を補足した。培養上清をトランスフェクション後7日目に遠心により採集した。
形質転換したHEK細胞の上清からのヒトST6Gal−IのN末端トランケーションバリアントの精製
HEK細胞を実施例8の記載に従って形質転換した。発現構築体を実施例6および7に従って作製した。
簡略化した精製プロトコルを用いて、HEK細胞発酵の上清から2種類のバリアントEpo−AP−△89 hST6Gal−IおよびEpo−APPR−△108 hST6Gal−Iを精製した。第1工程で、体積0.1Lの培養上清を濾過し(0.2μm)、溶液を緩衝液A(20mMリン酸カリウム,pH6.5)に対して透析した。透析物を、緩衝液Aで平衡化したS−Sepharose(商標) ff(Fast Flow)カラム(1.6
cm×2cm)に装填した。100mLの緩衝液Aで洗浄した後、10mLの緩衝液Aお
よび200mMのNaClを含む10mLの緩衝液Aの直線勾配で酵素を溶離し、続いて200mMのNaClを含む48mLの緩衝液Aを用いる洗浄工程を行なった。画分(4mL)を分析用SDSゲル電気泳動により分析した。
△89 hST6Gal−I酵素を含有する画分をプールし、緩衝液B(50mM MES,pH6.0)に対して透析した。透析したプールを、緩衝液Bで平衡化したHeparin Sepharose ffカラム(0.5cm×5cm)に装填し、200mMのNaClを含む緩衝液Bを用いて溶離した。酵素を含有する画分(1mL)をプールし、緩衝液Bに対して透析した。タンパク質濃度を280nm(E280nm[1mg/mL]=1.931)で測定した。質量分析は、組換え発現したEpo−AP−△89 hST6Gal−I酵素がN末端アミノ酸APを含まずに分泌されたことを示した。この所見は予想外であり、発現したタンパク質のEpo部分が除去された状態の、シグナルペプチダーゼによる異例な開裂を指摘した。組換え体ヒト△89 hST6Gal−I酵素について、3.75nmol/μg×分の比活性が決定された。図2は、HEK細胞から精製した組換え体△89 hST6Gal−IバリアントのSDS−PAGEの結果を示す。△108 hST6Gal−I酵素を含有する画分をプールし、貯蔵緩衝液(20mMのリン酸カリウム,100mMの塩化ナトリウム,pH6.5)に対して透析した。280nmの波長でモル吸光係数1.871を用いてタンパク質濃度を決定した。Epo−APPR−△108−hST6Gal−I発現構築体で形質転換したHEK細胞から分泌された組換えタンパク質の質量分析により、N末端配列“APPR”が確認され、こうしてシグナルペプチダーゼによる予想したEPOシグナル配列の開裂が示された。HEK細胞からの組換え体ヒト△108 hST6Gal−Iバリアントについて、>600RFU/μgの比活性が決定された。図3は、HEK細胞から精製した組換え体△108 hST6Gal−IバリアントのSDS−PAGEの結果を示す。
△89 hST6Gal−Iを用いるヒト化モノクローナル抗体IgG4 MABのシアリル化
高度にガラクトシル化されたヒト化モノクローナル抗体IgG4 MABをシアリル化実験に用いた。反応混合物は、IgG4 MAB(300μg;55μLの35mM酢酸ナトリウム/トリス緩衝液,pH7.0中)、ドナー基質CMP−NANA(150μg;50μLの水中)およびシアリルトランスフェラーゼ(30μgの△89 hST6Gal−I;20mMのリン酸カリウム、0.1MのNaCl,pH6.5 中)を含有していた。試料を37℃で一定時間インキュベートした。反応を停止するために、試料を−20℃で凍結した。質量分析のために、100μLの変性用緩衝液(6M塩化グアニジニウム)および30μLのTCEP(=トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン;0.1mMの変性用緩衝液中に希釈)を試料に添加し、試料を37℃で1時間インキュベートした。予備平衡化したillustra(商標) Nap5−カラム(GE−Healthcare)を用いて、試料をエレクトロスプレー媒体[20%のACN(=アセトニトリル),1%のFA(=ホルムアミド)]中に緩衝化した。試料をエレクトロスプレーイオン化質量分析により分析し、G2+0SA、G2+1SAおよびG2+2SA N−グリカンの含量を決定した。Micromass Q−Tof UltimaおよびSynapt G2 HDMSデバイス(Waters UK)を用い、使用したソフトウェアはMassLynx V 4.1であった。シアリル化の反応速度を決定するために、反応物を最大72時間インキュベートした。図4は、インキュベーション期間の異なる時点で得られた異なる状態にシアリル化されたターゲットタンパク質の相対量を示す。
G2+0SA、G2+1SAおよびG2+2SAの含量を、質量分析により決定した。バリアント△89 hST6Gal−Iについては、2時間のインキュベーション後に既に高含量(88%)のビ−シアリル化された形態のG2+2SAが得られた。参照:図4。このデータは、△89 hST6Gal−Iの固有のCMP−依存性シアリダーゼ(ノイ
ラミニダーゼ)活性のためG2+0SAおよびG2+1SAが経時的に再び増加したことをも示す。48時間のインキュベーション後、71%のG2+1SA含量が得られた。
図5は、異なるIgG4 MAB試料の質量分析により得られたスペクトルを示す。試料を時点t=0(下パネル)、時点t=8時間(中パネル)および時点t=48時間(上パネル)で採取した。G2+0SA、G2+1SAおよびG2+2SAグリカンを含むIgG分子の質量スペクトルにおける1電荷状態(one charge state)の質量電荷比(mass over
charge)(m/z)信号を表示する。異なる状態にシアリル化された種の相対強度がこれらの信号から導かれる。図4に対応して、t=0時間ではG2+0SAが主グリカン種である。t=8時間では、G2+2SAに対する信号が優勢形態であり、これに対しt=48時間ではG2+1SAが最も多量に存在する種である。決定した数値については図4を参照されたい。
CTPによる△89 hST6Gal−Iのシアリダーゼ活性の阻害
化合物シチジン−5’−三リン酸(CTP)は強力なシアリルトランスフェラーゼ阻害物質であることが知られている(Scudder PR & Chantler EN BBA 660 (1981) 136-141)。
シアリダーゼ活性が△89 hST6Gal−Iに固有の活性であることを立証するために、阻害実験を実施した。第1相実験では、△89 hST6Gal−IによるIgG4
MABのシアリル化を実施して、高含量のG2+2SAを達成した(参照:実施例10)。7時間のインキュベーション後、G2+2SA含量は94%であった。その後、△89 hST6Gal−Iのシアリダーゼ活性を阻害するためにCTPを添加した(CTPの最終濃度:0.67mM)。種々の時点で試料を採取し、G2+0SA、G2+1SAおよびG2+2SAの含量を質量分析により決定した。結果を図6に示す。図4に示した阻害物質を含まない状態と比較して、シアリダーゼ活性により生じたG2+2SAの分解は有意に低減した。72時間のインキュベーション後、73%のG2+2SAがなお存在していた。既知のシアリルトランスフェラーゼ活性の阻害物質によるシアリダーゼ活性の阻害は、△89 hST6Gal−Iの同じ活性中心に両方の活性があることを強く指摘する。
△89 hST6Gal−IによるIgG1 MABのシアリル化
15mgの量の高度にガラクトシル化されたヒト化モノクローナル抗体IgG1 MABをシアリル化処理に用いた。反応混合物は、規定量のIgG1 MAB(15mg;20mMの酢酸ナトリウム、50mMのトリス緩衝液,pH8.0を含有する1,854μLの水性緩衝液中)、ドナー基質CMP−NANA(7,500μg;2,500μLの水中)およびシアリルトランスフェラーゼ(1,500μg;組換え製造し、精製した△89 hST6Gal−I;202μLの20mMのリン酸カリウム、0.1MのNaCl,pH6.5 中)を含有していた。成分を混合し、得られた反応混合物を37℃で、2時間、4時間、8時間、24時間、および48時間を含む種々の時間、インキュベートした。シアリル化された抗体の精製を実施例13に従って実施した。
シアリル化度を分析するために、124μLの変性用緩衝液(6Mの塩化グアニジニウム;水中)および30μLのTCEP(=トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン;0.1mM,変性用緩衝液中に希釈)を76μL(250μgのIgG1 MABに相当する)に添加し、試料を37℃で1時間インキュベートした。その後、予備平衡化したillustra(商標) Nap5−カラム(GE−Healthcare)を用いて、試料をエレクトロスプレー媒体[20%のACN(=アセトニトリル),1%のFA(=ホルムアミド)]中に緩衝化した。その後、試料をエレクトロスプレーイオン化質量分析により分析し、G2+0SA、G2+1SAおよびG2+2SA N−グリカンの含量を決定した。Synapt G2 HDMSデバイス(Waters UK)を用い、使用したソフトウェアはMassLynx V 4.1であった。
シアリル化されたIgG1 MABの精製
実施例12のインキュベートしたシアリル化反応混合物からシアリルトランスフェラーゼおよびCMP−NANAを分離するために、インキュベートしたIgG1 MABをプロテインAを用いて精製した。25mMのトリス、25mMのNaCl、5mMのEDTA(=エチレンジアミン四酢酸),pH7で平衡化したプロテインAカラムに反応混合物を適用した。カラムを25mMのトリス、25mMのNaCl、500mMのTMAC(=塩化テトラメチルアンモニウム)、5mMのEDTA,pH5.0で洗浄し、次いで25mMのトリス、25mMのNaCl、5mMのEDTA,pH7.1で洗浄した。IgG1 MABを25mMクエン酸Naで溶離した。低pHにおける自然脱シアリル化を避けるために、1Mトリス,pH9.0を用いてpHをpH7.0に調整した。この方法を用いて、純粋な形態のシアリル化されたIgG1 MABを一般的収量12mgで得た。
CMPの存在下および非存在下でのIgG1 MABに対する△89 hST6Gal−Iのシアリダーゼ活性
シチジン一リン酸(5’−CMP,=CMP)はシアリルトランスフェラーゼ酵素により触媒される反応の生成物であり、グリコシルトランスフェラーゼ反応中に補基質CMP−NANAから生成する。シアリル化反応のインキュベーション時間に伴なって、CMPが反応混合物中に蓄積する。固有のシアリダーゼ活性がCMP依存性であることを立証するために、実施例12の記載に従ってCMP−NANAの存在下で△89 hST6Gal−Iと共にインキュベートすることにより、高度にシアリル化されたIgG1モノクローナル抗体IgG1 MAB G2+2SAを製造し、実施例13の記載に従って精製した。実施例12に従ってシアリル化のためのインキュベーション期間8時間で高度にシアリル化された1,250μg(194μL中)の量のIgG1 MABに、125μgのシアリルトランスフェラーゼバリアント(30μg/300μg IgG1 MAB)を添加した。種々のN末端トランケート型hST6Gal−I酵素バリアントをCMP−依存性シアリダーゼ活性について調べた:
・ △89 hST6Gal−I (実施例9)
・ △108 hST6Gal−I (実施例9)
・ △57 hST3Gal−I(R&D Systemsから入手)
△89 hST6Gal−I(16.8μL,125μgを含む)、△108 hST6Gal−I(17.3μL,125μgを含む)、△57 hST3Gal−I(20.1μL,125μgを含む)および陰性対照(酵素なし,20.1μLの超純水)を用いて、4つの異なる実験を行なった。これらの酵素をCMP(モル濃度で10倍過剰)の存在下および非存在下でシアリダーゼ活性について試験した。濃度は下記に示すとおりであった:
△89 hST6Gal−I(16.8μL,125μgを含む):11,8μgのCMP(c=0.5mg/mL,23,6μL)
△108 hST6Gal−I(17.3μL,125μgを含む):12,3μgのCMP(c=0.5mg/mL,24,5μL)
△57 hST3Gal−I(20.1μL,125μgを含む):12,3μgのCMP(c=0.5mg/mL,24,5μL)
陰性対照(酵素なし):12,3μgのCMP(c=0.5mg/mL,24,5μL)
試料を37℃で20mMのクエン酸ナトリウム、35mMのトリス,pH6.5 中においてインキュベートした。種々のインキュベーション時間後、アリコートを試料として採
取し、分析した。
試料中のIgG1 MABのシアリル化度を分析するために、124μLの変性用緩衝液(6M塩化グアニジニウム,水中)および30μLのTCEP(=トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン;0.1mM,変性用緩衝液中に希釈)を76μL(250μgのIgG1 MABに相当する)に添加し、試料を37℃で1時間インキュベートした。その後、予備平衡化したillustraTM Nap5−カラム(GE−Healthcare)を用いて、試料をエレクトロスプレー媒体(20%のACN(=アセトニトリル),1%のFA(=ホルムアミド))中に緩衝化した。その後、試料をエレクトロスプレーイオン化質量分析により分析し、G2+0SA、G2+1SAおよびG2+2SA N−グリカンの含量を決定した。Synapt G2 HDMSデバイス(Waters UK)を用い、使用したソフトウェアはMassLynx V 4.1であった。
結果を図7〜10に示す。CMPを含まない反応混合物中においては、46時間のインキュベーション後ですらG2+2SAの分解がみられなかった(図7)。これに対し、CMPの存在下ではG2+1SA含量の増加を伴うG2+2SA分解が測定された(図8)。前記条件下で、△89 hST6Gal−IはCMP−依存性シアリダーゼ活性を示し、これに対し△108 hST6Gal−I(図9)および△57 ST3Gal−I(図10)はCMPの存在下でシアリダーゼ活性を示さなかった。後者の場合、この酵素は2−3グリコシド結合に特異的であることが認められている。
ホスファターゼ酵素活性の存在下で△89 hST6Gal−Iを用いるIgG4 MABのシアリル化
反応中に形成されたCMPを連続的に除去することにより、△89 hST6Gal−IのCMP−依存性シアリダーゼ活性の抑制を調べた。
これらの実験には、酵素(i)5’−ヌクレオチドに対して幅広い特異性をもつ5’−ヌクレオチダーゼ(EC 3.1.3.5)、および(ii)アルカリホスファターゼ(EC 3.1.3.1)(両方とも業者により提供された)を用いた。ここで用いた特定の5’−ヌクレオチダーゼはecto−5’−ヌクレオチダーゼまたはCD73(Cluster of Differentiation 73(クラスター分類73))としても知られ、ヒトにおいてはNT5E
遺伝子によりコードされる。両酵素ともCMPを脱リン酸化する;すなわち、CMP中のホスホエステル結合の加水分解を触媒する。この実施例の実験には、補基質CMP−NANAからシアリルトランスフェラーゼ反応により生成したCMPを分解するために、これらの酵素を用いた。CMPの非存在下では△89 hST6Gal−Iの固有のシアリダーゼ活性はみられなかった。
1,000μgのIgG4 MAB(182μL)に、500μgのCMP−NANA(3mg/mL,166.7μL)、100μgの△89 hST6Gal−I(13.4μL,30μg/300μg IgG4 MAB)および種々の量のヌクレオチダーゼ(Nu)およびアルカリホスファターゼ(AP)を添加した。APの活性にはZn2+イオンが必須であるので、これらを最終濃度0.1mMになるように添加した。用いた緩衝液は20mM酢酸ナトリウム/トリス,pH6.5であった。
種々の量の酵素を反応混合物に添加して、脱リン酸化酵素の作用を調べた:
1)5’−ヌクレオチダーゼCD73を0.1μg/μLの濃度で用いた。反応物に0.10μg、0.25μgおよび0.50μgを添加した。
2)アルカリホスファターゼ(AP)を1μg/μLおよび10μg/μLの濃度で用いた。反応物に1μg、5μg、10μgおよび100μgを添加した。
それぞれの量の酵素を添加した後、試料を37℃でインキュベートした。試料を幾つかの時点で採取して、シアリル化度を制御した。したがって、110μLの変性用緩衝液(6M塩化グアニジニウム)および30μLのTCEP(0.1mM,変性用緩衝液中に希釈)を90μLの試料(約250μgのIgG4 MAB)に添加し、試料を37℃で1時間インキュベートした。その後、予備平衡化したillustra(商標) Nap5−カラム(GE−Healthcare)を用いて、試料をエレクトロスプレー媒体[20%のACN(=アセトニトリル),1%のFA(=ホルムアミド)]中に緩衝化した。次いで、試料をエレクトロスプレーイオン化質量分析により分析し、G2+0SA、G2+1SAおよびG2+2SA N−グリカンの含量を決定した。Synapt G2 HDMSデバイス(Waters UK)を用い、使用したソフトウェアはMassLynx V 4.1であった。
5’−ヌクレオチダーゼCD73の存在下または非存在下での△89 hST6Gal−IによるIgG4 MABのシアリル化の結果を図11〜14に示す;アルカリホスファターゼの存在下または非存在下での△89 hST6Gal−IによるIgG4 MABのシアリル化の結果を図15〜19に示す。明らかになったように、5’−CMP中のホスホエステル結合を加水分解できるホスファターゼ活性を導入することにより、CMP仲介シアリダーゼ活性は効果的に低減し、シアリルトランスフェラーゼ活性は増強された。
Claims (2)
- インビトロで5’−シチジン−一リン酸の存在下に、ドナー化合物シチジン−5’−モノホスホ−N−アセチルノイラミニン酸から、またはその機能均等物から、アクセプター、すなわち糖タンパク質または糖脂質のグリカン部分中の末端β−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミンであるアクセプターへ、5−N−アセチルノイラミニン酸残基を伝達するための、SEQ ID NO:1の位置90から位置108までのアミノ酸モチーフを欠如する可溶性ヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼIの使用であって、
前記可溶性ヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼIがSEQ ID NO:1の位置109から位置406までのアミノ酸を含む、前記使用。 - 可溶性β−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼIのアミノ酸配列がSEQ ID NO:5のアミノ酸配列である、請求項1に記載の使用。
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