以下、図面を参照して、本開示の技術を実施するための形態例を詳細に説明する。なお、作用又は機能が同じ働きを担う構成要素及び処理には、全図面を通して同じ符合を付与し、重複する説明を省略する。
色の表示に関して、黄色を“Y”、マゼンタ色を“M”、シアン色を“C”、黒色を“K”、白色を“W”、金色及び銀色等のよう金属光沢感を有するメタリック色を“Si”、透明色を“CL”で表す。
また、各部材又は画像を色毎に区別して説明する必要がある場合には、名称又は符号の末尾に各色に対応する色符号(Y、M、C、K、W、Si、CL)を付して区別する。一方、各部材又は画像を色毎に区別せずにまとめて説明する場合には、名称又は符号の末尾に付加する色符号を省略する。
図1に、開示の技術に係る電子写真方式を用いた画像形成装置10の要部構成を表す概略側面図の一例を示す。画像形成装置10には、例えば図示しない通信回線を介して画像データを受信し、受信した画像データに基づいた画像(ユーザ画像)を用紙等の記録媒体に形成する画像形成機能が搭載されている。
画像形成装置10は、Y、M、C、K、Si、及びCLの色毎に、図中矢印Aの方向に回転する6つの感光体1Y、1M、1C、1K、1Si、及び1CLと、帯電バイアスを供給することにより各感光体1の表面を帯電する帯電器2Y、2M、2C、2K、2Si、及び2CLを備える。
また、画像形成装置10は、帯電された感光体1表面を各色の画像情報に基づいて変調された光で露光し、感光体1上に静電潜像を形成するレーザ出力部3Y、3M、3C、3K、3Si、及び3CLと、各色の現像剤(トナー)を保持する現像ロール34Y、34M、34C、34K、34Si、及び34CLを各々備える。
また、画像形成装置10は、図示しない現像バイアス用電源によって各色の現像ロール34に現像バイアスを供給することにより、感光体1上の静電潜像を各色トナーで現像して感光体1上にトナー画像を形成する現像器4Y、4M、4C、4K、4Si、及び4CLと、感光体1上の各色トナー画像を中間転写ベルト6に転写する一次転写器5Y、5M、5C、5K、5Si、及び5CLを備える。
更に、画像形成装置10は、記録媒体の一例である用紙Pを収納する用紙収容部Tと、中間転写ベルト6上のトナー画像を用紙Pに転写する二次転写器7と、用紙Pに転写されたトナー画像を用紙Pに定着させる定着器9と、二次転写器7でトナー画像を用紙Pに転写した後、中間転写ベルト6表面に残留するトナーを除去するベルトクリーナー8を備える。
図1の画像形成装置10の例では複数の用紙収容部Tを備えており、各々の用紙収容部Tには記録媒体が収容される。具体的には、例えばA4及びA3というように、大きさが異なる用紙Pがそれぞれ収容されている。しかし、用紙収容部Tに収容される用紙Pはこれに限らず、例えばコート紙と非コート紙のように、材質の異なる用紙Pをそれぞれの用紙収容部Tに収容してもよい。また、画像形成装置10において用紙収容部Tが複数ある必要はなく、1つであってもよい。
記録媒体は表面にトナーが定着してユーザ画像が形成されるものであればどのようなものであってもよく、例えばオーバーヘッドプロジェクタ(Overhead projector:OHP)フィルムに代表される紙以外の素材を用いたシートであってもよい。
更に、画像形成装置10は、各感光体1の表面をクリーニングする図示しないクリーナーと、各感光体1表面の残留電荷を除去する図示しない除電器を備える。
なお、Y、M、C、K、Si、及びCL毎の感光体1、帯電器2、レーザ出力部3、及び現像器4は、互いに連携して中間転写ベルト6にトナー画像を形成する画像形成部15の一例である。
以降では、Y、M、C、Kの各色をまとめて「プロセスカラー」という場合がある。また、Si色のトナーは、ユーザ画像の色及び形状を生成するプロセスカラーのトナーとは異なり、例えばユーザ画像に金属光沢感を与える用途に用いられる特色トナーである。したがって、プロセスカラーのトナーが有機顔料を含むのに対して、Si色のトナーには金属顔料が含まれる。
金属顔料を含むトナーには、金色又は銀色を表すSi色の他、例えば白色(W)のトナーが含まれる。W色のトナーは、例えばプロセスカラーのトナーで形成されたトナー画像の下地として、当該トナー画像の視認性を高める用途に用いられる特色トナーの一例である。以降では、Si色のトナーを、金属顔料を含むトナーの代表例として説明を進めるが、Si色のトナーの代わりにW色のトナーを用いてもよい。
一方、CL色のトナーは、プロセスカラーのトナーで形成されたトナー画像を被覆する用途に用いられる特色トナーの一例である。CL色のトナーは、用紙P上でプロセスカラーのトナー画像より上に配置されるため、下層に位置するプロセスカラーのトナー画像が視認できる程度の透明度を有する。したがって、CL色のトナーに金属顔料は含まれない。
次に、図1に示した画像形成装置10における画像形成動作について説明する。
まず、例えば、図示しない通信回線を介して図示しないパーソナルコンピュータ等の端末装置から画像形成対象であるユーザ画像に対応した画像データが画像形成装置10へ出力される。
画像形成装置10にユーザ画像が入力されると、画像形成装置10は帯電器2に帯電バイアスを供給し、感光体1の表面を負極に帯電する。
一方、ユーザ画像は、画像形成装置10の制御部60に入力される。制御部60は、ユーザ画像をそれぞれプロセスカラー、Si色、及びCL各色の画像データに分解した後、各色の画像データに基づいた変調信号を、対応する色のレーザ出力部3に出力する。レーザ出力部3は、入力された変調信号に従って変調されたレーザ光線11を出力する。
この変調されたレーザ光線11は、それぞれ感光体1の表面に照射される。感光体1表面は帯電器2により負極に帯電した状態にあるが、感光体1表面にそれぞれレーザ光線11が照射されると、レーザ光線11が照射された部分の電荷が消滅して、感光体1上には各色の画像データに対応した静電潜像が各々形成される。
更に、各色現像器4には、それぞれY、M、C、K、Si、及びCLに着色され、負極に帯電したトナー、及び各トナーを感光体1表面に付着する現像ロール34が備えられている。
感光体1上に形成された静電潜像が現像器4に到達すると、図示しない現像バイアス用電源によって現像器4内の現像ロール34に現像バイアスが供給される。すると、現像ロール34の各々の周面に保持された各色のトナーが、それぞれ対応する色の感光体1の静電潜像に付着し、感光体1の各々に各色に対応したトナー画像が形成される。
更に、図示しないモータによりロール12A、12D、12E、及び二次転写器7のバックアップロール7Aが回転することによって、中間転写ベルト6が矢印14の方向に搬送され、一次転写器5と感光体1により形成される一次転写ニップ部の各々で中間転写ベルト6が感光体1に押し当てられる。この際、図示しない一次転写バイアス電源から一次転写器5に一次転写バイアスが供給され、感光体1に形成された各色のトナー画像が中間転写ベルト6に転写される(一次転写)。
中間転写ベルト6にトナー画像を転写した感光体1は、図示しないクリーナーにより表面に付着した残留トナー等の付着物が除去され、図示しない除電器により残留電荷が除去される。
一方、二次転写器7は中間転写ベルト6を張架するバックアップロール7Aと二次転写ロール7Bを含んで構成され、二次転写ロール7Bは中間転写ベルト6に接触して、中間転写ベルト6の搬送に追従して回転する。
また、図示しないモータにより、給紙ロール13及び用紙搬送ロール17が回転することで、用紙収容部T内の用紙Pが用紙搬送路24を通って、二次転写器7のバックアップロール7Aと二次転写ロール7Bとによって形成される二次転写ニップ部に搬送される。なお、何れの用紙収容部Tから用紙Pが給紙されるかは、制御部60による給紙ロール13の駆動制御によって決定される。制御部60は、用紙Pを給紙する方の用紙収容部Tに対応する給紙ロール13を回転駆動させることで、一方の用紙収容部Tから用紙Pを取り出し、用紙搬送路24に搬送する。
そして、二次転写ニップ部において、矢印22で示した用紙Pの搬送方向(用紙搬送方向)に搬送されてきた用紙Pが、ユーザ画像に対応したトナー画像が形成されている中間転写ベルト6の面と対向した状態で中間転写ベルト6に押し当てられる際に、二次転写バイアス電源から二次転写ロール7Bに二次転写バイアスが供給され、中間転写ベルト6に形成されたトナー画像が用紙Pに転写される(二次転写)。なお、二次転写器7で金属顔料を含むトナー画像が転写された用紙Pは、第1の記録媒体の一例である。
用紙Pにトナー画像を転写した後の中間転写ベルト6は、ベルトクリーナー8により表面に付着した残留トナー等の付着物が除去される。
一方、トナー画像が転写された用紙Pは、定着手段の一例である定着器9により加熱及び加圧され、用紙Pにトナー画像が定着する。
定着器9は、加熱ロール91、加圧ロール92、駆動ロール93、外部加熱ロール94、補助ロール95、及び定着ベルト96を含む。定着ベルト96は、加熱ロール91及び駆動ロール93の周囲に架け渡され、例えば駆動ロール93の回転に追従して矢印97の方向に回転する平ベルトの一例である。
加熱ロール91は内部に発熱体を有し、発熱体から発せられる熱で加熱ロール91に接触しながら回転する定着ベルト96を加熱する。加熱ロール91における定着ベルト96の加熱方法に制限はなく、例えば加熱ロール91の内部に赤外線ヒータを設け、赤外線ヒータの発熱で定着ベルト96を加熱してもよい。また、加熱ロール91の内部に磁界を発生させる励磁コイルを設け、励磁コイルから発せられる磁界の変動によって、加熱ロール91の表面に配置される感温磁性合金に誘導電流を発生させて発熱を促し、定着ベルト96を加熱してもよい。
駆動ロール93は、図示しないモータによって回転駆動し、周囲に架け渡された定着ベルト96との摩擦力を利用して、定着ベルト96を矢印97の方向に回転させる。この際、定着ベルト96に接触して回転する補助ロール95及び外部加熱ロール94を、定着ベルト96を押し付ける位置に配置することで、定着ベルト96に更に張力を加え、定着ベルト96が駆動ロール93の回転に追従して円滑に回転するようにしている。
また、外部加熱ロール94は、加熱ロール91と同じく内部に発熱体を備え、加熱ロール91で加熱される定着ベルト96の面とは反対側の面から定着ベルト96の加熱を行う。このようにすることで、トナー画像の定着時に用紙P等に奪われる熱量を補給し、定着ベルト96の温度をトナー画像の定着に適した予め定めた範囲内の温度に保つ。
加圧ロール92は、加熱ロール91と対向する位置に配置され、加圧ロール92と加熱ロール91とによって形成される定着ニップ部において、トナー画像が転写された用紙P及び定着ベルト96を挟み込みながら用紙Pを搬送する。
定着ニップ部では、トナー画像が転写された用紙Pに、加熱ロール91で加熱された定着ベルト96が押し付けられ、且つ、定着ベルト96の熱によってトナー画像の乾燥が促進されることによって、用紙Pにトナー画像が定着する。
なお、加圧しながら用紙Pにトナー画像を定着するものであれば、定着手段の構成に制限はない。例えば定着器9は、加熱ロール91の周囲に定着ベルト96を取り付ける形態であってもよい。この場合、駆動ロール93、外部加熱ロール94、及び補助ロール95は不要となる。
定着器9を通過した用紙Pにおける用紙搬送方向下流側の一端が搬送路弁20に到達すると、搬送路弁20の端20Aの位置によって用紙Pの搬送先が選択される。
搬送路弁20は用紙搬送路24の分岐点に配置される。搬送路弁20は、搬送路弁20の一方の端20Bが例えば画像形成装置10に固定され、端20Bを中心にして端20Aを予め定めた範囲内で図1の上下方向に移動することで、用紙Pの搬送先を振り分ける。
搬送路弁20の端20Aが図1の上方向に移動している場合、画像形成装置10の外部に設けられた排出棚Qへ用紙Pを搬送する用紙搬送路24Aが閉じられるため、用紙Pは用紙搬送路24Bに搬送され、貯留ロール16の回転に伴い貯留棚Rに貯留される。
一方、搬送路弁20の端20Aが図1の下方向に移動している場合、貯留棚Rに用紙Pを搬送する用紙搬送路24Bが閉じられるため、用紙Pは用紙搬送路24Aに搬送され、排出棚Qに排出される。
このように、用紙搬送路24A、24Bは用紙搬送路24の一区間であり、用紙搬送路24に含まれる。
制御部60は、定着器9によってトナー画像が定着された用紙Pが用紙搬送路24を搬送する場合には、図1の下方向に搬送路弁20の端20Aを移動して、用紙Pを排出棚Qに排出するように制御する。また、制御部60は、トナー画像が何れの画像形成面にも形成されていない白紙の用紙Pを搬送する場合には、図1の上方向に搬送路弁20の端20Aを移動して、白紙の用紙Pを貯留棚Rに貯留するように制御する。
なお、用紙Pの両面にユーザ画像を形成する両面印刷の場合にも、用紙Pを反転させるために用紙Pを貯留棚Rに貯留する場合があるが、開示の技術を簡潔に説明するため、以降では、用紙Pの片面にユーザ画像を形成する片面印刷の場合を例にして説明を行う。
貯留棚Rに貯留された白紙の用紙Pは、例えば用紙収容部Tに収容される用紙Pの代わりに、二次転写器7でトナー画像を転写する場合の用紙Pとして用いられるが、貯留棚Rに貯留された用紙Pの搬送タイミング等の詳細については後ほど説明を行う。
以上により、ユーザ画像が用紙Pに形成されて、画像形成動作が終了する。なお、図1に示した画像形成装置10の構成は一例であり、例えばCL色のトナー画像を形成する画像形成部15CLが存在しない構成であってもよい。また、Si色のトナー画像を形成する画像形成部15Siの代わりに、W色のトナー画像を形成する画像形成部15Wを設ける構成や、画像形成部15Siと画像形成部15Wとを共に設ける構成であってもよい。
図2は、画像形成装置10の定着器9でトナー画像を用紙Pに定着させる場合の、定着ニップ部における定着ベルト96とトナー画像に含まれるトナー粒子21の状況を示した模式図である。
図2に示すように、定着ベルト96は、例えばシリコーンゴム等で形成された弾性層18の用紙Pと接触する側の表面に、弾性層18よりトナー粒子21が付着しにくいPFA等のフッ素樹脂で形成された離型層19を重ね合わせた層構造を有する。これは、用紙P上のトナー粒子21が定着ニップ部に加えられる圧力によって用紙Pから剥離して、定着ベルト96に付着しにくいようにするためである。
ここで、トナー粒子21が金属顔料を含むトナーのトナー粒子、例えばSi色のトナー粒子である場合について説明する。Si色のトナー粒子は金属顔料を含むため、金属顔料を含まないプロセスカラーのトナー粒子に比べて平均粒径が大きく、且つ、硬度が高い。また、Si色のトナー粒子は扁平形状に形成され、トナー粒子の扁平面と用紙Pの画像形成面とが互いに向き合うように配置されることで、金属光沢感を表現する。なお、上述したSi色のトナー粒子の特徴は、Si色以外の他の金属顔料を含む色のトナーにも見られる特徴である。
例えば図2に示すように、扁平形状をしたSi色のトナー粒子の扁平面が、用紙Pの画像形成面と交差するような状態、すなわちトナー粒子が隆起している状態で、Si色のトナー粒子が用紙Pに転写されている場合には、定着器9で用紙Pにトナー画像の定着を繰り返し行うことで、図3のように、定着器9による加圧によってトナー粒子の側面等の鋭角部が離型層19に押し付けられるため、離型層19が変形し、離型層19に凹凸が生じることがある。
離型層19に凹凸が生じた場合、Si色のトナーを加圧定着する際にトナー画像部表面に均一な力がかからず、定着ベルト96上の凹凸が生じた箇所とそうでない箇所で、金属光沢感に差が生じることがある。また、同様に定着ベルト離型層19に凹凸が生じた状態でカラートナーを加圧定着すると、画像表面の光沢感に差が生じることがある。
従って、以降では、金属顔料を含むトナー画像を用紙Pに定着させる場合に、塑性変形により生じている離型層19の傷を解消する画像形成装置10について説明する。なお、ここでは、離型層19の変形によって生じる離型層19の凹凸を、「離型層19の傷」と表現する場合がある。
なお、一次転写器5の一次転写ニップ部でも金属顔料を含むトナー粒子が中間転写ベルト6に押し付けられる場合があり、また、二次転写器7の二次転写ニップ部でも金属顔料を含むトナー粒子が用紙Pに押し付けられる場合がある。
しかし、一次転写ニップ部及び二次転写ニップ部における圧力は、定着ニップ部の圧力の約1/5から約1/10程度と低い。また、金属顔料を含むトナーの周囲には樹脂がコーティングされている場合が多いが、当該樹脂は、例えば加圧又は加熱が繰り返されるに従って変形していく。したがって、一次転写ニップ部及び二次転写ニップ部における金属顔料を含むトナーの周囲には、定着ニップ部における金属顔料を含むトナーに比べて、樹脂がより均一にコーティングされていることが多い。
したがって、一次転写ニップ部及び二次転写ニップ部では、金属顔料を含むトナーの周囲に付着する樹脂が緩衝材となり、定着ベルト96と比較して感光体1、中間転写ベルト6、及び二次転写ロール7Bには傷がつきにくくなる。すなわち、金属顔料を含むトナーに圧力をかけることで感光体1、中間転写ベルト6、及び二次転写ロール7Bに生じる傷は、定着ベルト96に生じる傷と比較して画像の品質に影響を与えにくいといえる。
次に、図4を参照して、開示の技術に係る画像形成装置10の電気系統の要部構成について説明する。
開示の技術に係る画像形成装置10は、画像形成装置10の動作を制御する制御部60にCPU(Central Processing Unit)30を備える。また、画像形成装置10は、各種プログラムや各種パラメータ等が予め記憶されたROM(Read Only Memory)31、及びCPU30による各種プログラムの実行時のワークエリア等として用いられるRAM(Random Access Memory)32を備える。
CPU30、ROM31、及びRAM32は、画像形成装置10のバス35で互いに接続される。バス35には、各色に対応した各々の画像形成部15、中間転写ベルト6を搬送する各種ロールを回転駆動する中間転写ベルト搬送モータ群33、用紙Pを用紙搬送路24上に搬送する各種ロールを回転駆動する用紙搬送モータ群34が接続される。更に、バス35には、各色に対応した各々の一次転写器5、並びに、二次転写器7、定着器9、及び搬送路弁20が接続される。
中間転写ベルト搬送モータ群33には、例えばロール12A、12D、及び12Eを各々回転駆動する図示しないモータが含まれる。また、用紙搬送モータ群34には、給紙ロール13、用紙搬送ロール17、及び貯留ロール16を各々回転駆動する図示しないモータが含まれる。
ここで、用紙搬送モータ群34及び搬送路弁20は、用紙Pを搬送する搬送手段の一例である。
なお、バス35に接続されるCPU30の制御対象物は図4の制御対象物に限られない。例えば図示しない通信回線と接続する通信デバイス、ユーザの指示を受け付ける入力デバイス、及び画像形成装置10の動作状態等を通知する出力デバイスをバス35に接続してもよい。また、制御部60は開示の技術に係る制御手段の一例であり、例えばコンピュータが用いられる。
次に、図5を参照して、画像形成装置10の作用について説明する。図5は、例えば用紙P上に形成されたトナー画像を定着器9で定着した後に、CPU30によって実行される画像形成プログラムによる画像形成処理の流れの一例を示すフローチャートである。
まず、ステップS10において、CPU30は、定着器9で用紙Pに定着させたトナー画像に、金属顔料を含むトナー(図1の例ではSi色のトナー)が含まれるか否かを判定する。トナー画像にSi色のトナーが含まれるか否かは、例えば、CPU30でユーザから受け付けたユーザ画像をそれぞれプロセスカラー、Si、及びCL各色の画像データに分解した結果から判断される。
ステップS10の判定処理が否定判定の場合、すなわち、例えばトナー画像がY、M、C、K、及びCL色の少なくとも1つのトナーによって形成されており、Si色のトナーが含まれない場合には、図5に示す画像形成処理を終了する。そして、再びトナー画像を用紙Pに形成し、定着器9でトナー画像を用紙Pに定着した場合に、図5に示す画像形成処理を実行する。
上述したように、金属顔料が含まれないトナーの場合、金属顔料を含むトナーに比べて平均粒径が小さく、且つ、硬度が低い。また、金属顔料が含まれないトナーの形状は球形となるように形成されている。
したがって、金属顔料が含まれないトナーを用紙Pに定着する場合には、金属顔料を含むトナーを用紙Pに定着する場合と比較して定着ベルト96の離型層19に傷が付きにくいため、離型層19の傷を考慮した特定の処理を実施しなくてよい。
一方、ステップS10の判定処理が肯定判定の場合、すなわち、トナー画像にSi色のトナーが含まれる場合には、ステップS20に移行する。
ステップS20において、CPU30は、累積画像形成カウンタを1つ増加する。累積画像形成カウンタは、定着器9でSi色のトナーが含まれるトナー画像を用紙Pに定着した定着回数を表す変数であり、RAM32の予め定めた領域に記憶される。
ステップS30において、CPU30は、Si色のトナーで形成されたトナー画像の面積を取得し、Si色のトナーで形成されたトナー画像の累積面積(以降、単に「累積面積」という)を算出する。そして、CPU30は、算出した累積面積を、例えばRAM32の予め定めた領域に記憶する。
Si色のトナーで形成されたトナー画像の面積は、例えば、ユーザから受け付けたユーザ画像をそれぞれプロセスカラー、Si、及びCL各色の画像データに分解した場合のSi色の画像データから取得すればよい。
ステップS40において、CPU30は、ステップS20でRAM32に記憶した累積画像形成カウンタを参照し、累積画像形成カウンタが規定回数以上であるか否かを判定する。
規定回数は、定着器9でこれ以上Si色のトナーが含まれるトナー画像を用紙Pに定着した場合、定着ベルト96の離型層19に生じる傷によって、画像の品質が低下し始めると認められる回数に設定される。
したがって、ステップS40の判定処理が肯定判定の場合、すなわち、累積画像形成カウンタが規定回数以上である場合にはステップS60に移行し、後ほど説明する離型層19の傷を修復する処理を実行する。
一方、ステップS40の判定処理が否定判定の場合、すなわち、累積画像形成カウンタが規定回数未満である場合には、ステップS50に移行する。
なお、当該規定回数は、例えば画像形成装置10の実機による実験や画像形成装置10の設計仕様に基づくコンピュータシミュレーション等により求められ、例えばROM31の予め定めた領域に予め記憶されている。
ステップS50において、CPU30は、ステップS30でRAM32に記憶した累積面積を参照し、累積面積が規定面積以上であるか否かを判定する。
規定面積は、ステップS40で説明した規定回数と同じく、定着器9でこれ以上Si色のトナーが含まれるトナー画像を用紙Pに定着した場合、定着ベルト96の離型層19に生じる傷によって、画像の品質が低下し始めると認められる面積に設定される。
したがって、ステップS50の判定処理が肯定判定の場合、すなわち、累積面積が規定面積以上である場合にはステップS60に移行し、次に説明する離型層19の傷を修復する処理を実行する。
一方、ステップS50の判定処理が否定判定の場合、すなわち、累積面積が規定面積未満である場合には、図5に示す画像形成処理を終了する。
ステップS50の判定処理が否定判定の場合、累積画像形成カウンタが規定回数未満で、且つ、累積面積が規定面積未満である状況にある。すなわち、画像の品質が低下したと認められる程度の傷が定着ベルト96の離型層19に生じている状況ではないため、離型層19の傷を考慮した特定の処理を実施しなくてよい。
ステップS60において、CPU30は、離型層19の傷を修復する処理を実行する。具体的には、CPU30は、用紙Pを収納する複数の用紙収容部Tのうち、何れかの用紙収容部Tから用紙Pを取り出して定着器9に搬送するように、用紙搬送モータ群34を制御する。
この場合、CPU30は、例えば用紙Pが二次転写器7の二次転写ニップ部を通過する際に、二次転写バイアス電源から二次転写器7に二次転写バイアスを供給しないように制御する。すなわち、何れの色のトナー画像も転写されていない白紙の用紙Pを定着器9の定着ニップ部に搬送する。
定着器9の定着ニップ部で白紙の用紙Pに対して圧力が加えられると、定着ベルト96の離型層19が白紙の用紙Pに押し付けられるため、傷が発生する前の形状に近づくように定着ベルト96の離型層19が変形する。すなわち、累積画像形成カウンタが規定回数以上、又は、累積面積が規定面積以上となった場合に、白紙の用紙Pを定着器9に搬送することで、定着ベルト96の離型層19に生じた傷が修復される。
CPU30は、図1の上方向に搬送路弁20の端20Aを移動させ、定着器9を通過した白紙の用紙Pを用紙搬送路24Bに搬送し、貯留棚Rに貯留する。
CPU30は、例えば次に用紙Pにユーザ画像に対応したトナー画像を形成する際、給紙ロール13の回転駆動を停止させ、用紙収容部Tから用紙Pを給紙する代わりに、貯留棚Rに貯留された白紙の用紙Pが、用紙搬送路24を図1の矢印22の方向に搬送されるように、貯留ロール16を回転駆動させる。
なお、貯留棚Rに貯留した白紙の用紙Pに画像を形成するタイミングはこれに限られない。例えば、貯留棚Rに白紙の用紙Pを貯留してからN回目(Nは正の整数)の画像形成のタイミングで、貯留棚Rに貯留した白紙の用紙Pを用紙搬送路24に搬送するようにしてもよい。
ステップS70において、CPU30は、RAM32に記憶される累積画像形成カウンタ及び累積面積をそれぞれ“0”にリセットする。これにより、累積画像形成カウンタが規定回数以上、又は、累積面積が規定面積以上となる度に、白紙の用紙Pが定着器9に搬送され、定着ベルト96の離型層19に生じた傷が修復されることになる。
なお、定着器9でSi色のトナー画像を用紙Pに同じ回数定着した場合であっても、Si色のトナー画像の面積が大きいほど、定着ベルト96の離型層19に生じる傷の量が増加する傾向が見られる。
したがって、CPU30は、例えばステップS40でSi色のトナー画像の面積を取得した場合、Si色のトナー画像の面積が大きくなるに従って、当初の規定回数より小さくなるように規定回数を設定し直してもよい。
反対に、定着器9でSi色のトナー画像を用紙Pに同じ回数定着した場合であっても、Si色のトナー画像の面積が小さいほど、定着ベルト96の離型層19に生じる傷の量が減少する傾向が見られる。
したがって、CPU30は、Si色のトナー画像の面積が小さくなるに従って、当初の規定回数より大きくなるように規定回数を設定し直してもよい。
なお、定着回数及び累積面積は、定着器9におけるSi色のトナー画像の定着頻度を表す指標の一例である。
このように開示の技術に係る画像形成装置10は、金属顔料を含むトナー画像の定着頻度が規定値以上となった場合に、白紙の用紙Pを定着器9に搬送することで、定着ベルト96の表面に生じた傷を解消する。
<画像形成処理の変形例>
図5に示した画像形成処理では、ステップS30でSi色のトナー画像の累積面積を算出し、ステップS50で累積面積と規定面積とを比較して、白紙の用紙Pを定着器9に搬送するか否かを制御した。
ここで、Si色のトナー画像の面積と、定着器9の定着ベルト96に生じる傷の関係について考えてみると、用紙Pに形成されるSi色のトナー画像の用紙搬送方向に沿った長さ(用紙搬送方向長さ)が長いほど、定着器9の定着ニップ部において、Si色のトナー粒子が定着ベルト96に接触する時間が長くなる。したがって、Si色のトナー画像の用紙搬送方向長さが長いほど、定着ベルト96に傷が付きやすくなる傾向が見られる。
そこで、ステップS30において、CPU30は、Si色のトナー画像の面積の代わりに、用紙Pの用紙搬送方向長さに対するSi色のトナー画像の用紙搬送方向長さの割合(面積率)を累積した値である累積面積率を算出するようにしてもよい。そして、ステップS50において、累積面積率が規定面積率以上となる場合に、ステップS60に移行するようにしてもよい。
図6は、用紙Pに形成されるSi色のトナー画像23の一例を示す図であり、矢印22の示す方向に向かって用紙Pが搬送される。図6において、長さW1が用紙Pの用紙搬送方向長さであり、長さW2がSi色のトナー画像23の用紙搬送方向長さである。すなわち、図6に示したトナー画像23の面積率は(W2/W1)によって表される。
なお、規定面積率は、規定回数及び規定面積と同じく、定着器9でこれ以上Si色のトナーが含まれるトナー画像を用紙Pに定着した場合、定着ベルト96の離型層19に生じる傷によって、画像の品質が低下し始めると認められる面積率に設定される。
累積面積率は、定着回数及び累積面積と同じく、定着器9におけるSi色のトナー画像の定着頻度を表す指標の一例である。
以上、実施の形態を用いて開示の技術について説明したが、開示の技術は各実施の形態に記載の範囲には限定されない。開示の技術の要旨を逸脱しない範囲で各実施の形態に多様な変更又は改良を加えることができ、当該変更又は改良を加えた形態も開示の技術の技術的範囲に含まれる。
例えばステップS20及びS40の処理を省略して、定着器9で用紙Pに定着させたSi色のトナー画像の定着回数を用いずに、定着器9で用紙Pに定着させたSi色のトナー画像の累積面積を用いて、白紙の用紙Pを定着器9に搬送するか否か制御するようにしてもよい。
また、例えばステップS30及びS50の処理を省略して、定着器9で用紙Pに定着させたSi色のトナー画像の累積面積を用いずに、定着器9で用紙Pに定着させたSi色のトナー画像の定着回数を用いて、白紙の用紙Pを定着器9に搬送するか否か制御するようにしてもよい。
更に、画像形成装置10は、貯留棚Rに貯留した白紙の用紙Pを、以降の画像形成動作でトナー画像が転写される用紙Pとして再利用したが、貯留棚Rに貯留した白紙の用紙Pを、ステップS60の処理で定着器9に搬送する白紙の用紙Pとして繰り返し使用し、例えばユーザが指定した部数の画像形成が終了した後に、白紙のまま排出棚Qに排出するようにしてもよい。
また、各実施の形態では、一例として制御部60における画像形成処理をソフトウエアで実現する形態について説明したが、例えば図5に示したフローチャートと同等の処理をハードウエアで処理させるようにしてもよい。この場合、制御部60における処理をソフトウエアで実現する場合に比べて、処理の高速化が図られる。
また、実施の形態では、画像形成プログラムがROM31にインストールされている形態を説明したが、これに限定されるものではない。開示の技術に係る画像形成プログラムは、コンピュータ読取可能な記録媒体に記録された形態で提供することも可能である。例えば、開示の技術に係る画像形成プログラムは、CD(Compact Disc)−ROM、DVD(Digital Versatile)−ROMまたはUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の可搬型記録媒体に記録された形態で提供することも可能である。また、開示の技術に係る画像形成プログラムは、フラッシュメモリ等の半導体メモリ等に記録された形態で提供することも可能である。