JP6721912B2 - リチウムスズ硫化物 - Google Patents

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Description

本発明は、リチウムスズ硫化物に関する。
リチウムイオン二次電池は、高エネルギー密度電池として注目され、携帯機器(小型民生用途)のみならず、車載用、社会インフラ等の定置用途にも用途が拡大している。これら大型リチウムイオン二次電池への要求の一つとして、安全性の向上が挙げられる。通常のリチウムイオン二次電池(以後「液系リチウムイオン二次電池」と言うこともある)には有機電解液が使用され、粘度低下剤として消防法危険物第4類の第二石油類に該当する可燃性の低沸点溶媒(炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル等)が大量に含まれるため、電池の発火、発煙の懸念がある。安全性の向上のための企業努力は行われているものの、構成部材の変更、つまり電解液をより可燃性の低い固体電解質に変更し、材料構成上、飛躍的な安全性向上が図れれば、安全性配慮のためのコスト低減がはかれ、産業上きわめて有用である。
固体電解質には高分子系と無機系があるが、高分子系は現状室温以下でのイオン伝導度が低く、60℃以上でないと液系に近い十分な電池作動が見込めない。一方、無機系には酸化物系と硫化物系があるが、酸化物系はイオン伝導度が高いものの、成形性が低く脆いためプレスのみによる電池構築が困難という問題がある。よって、硫化物系の固体電解質の開発が近年急速に加速されている。このような固体電解質としては、種々の化合物が見出されており、例えば、リチウムスズ硫化物においては、単斜晶系のLi2SnS3 (空間群C2/c)等が固体電解質材料として知られている(例えば、非特許文献1及び2参照)。しかし、その性能はいまだ十分とは言えず、さらに他の固体電解質が所望されている。
また、大型リチウムイオン二次電池への重要な要求としては、容量の増加も挙げられる。容量の増加には、大容量の電極活物質が必要である。硫化物系の電極材料は現在主流の酸化物系の電極材料と比較して、大きな容量を有するという利点がある。
より高性能な電極及び電解質を得るためには、3次元的な体積変化やイオン伝導が可能で等方的な(3次元的に対称性の高い)結晶構造を有する物質の開発が求められている。
J. Mater. Chem. A, 2, 6100-6106 (2014). Chem. Mater. 27, 189-196 (2015)
本発明は、上記した従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、イオン伝導度が高く、リチウムイオン二次電池用の固体電解質又は電極活物質として使用することができる化合物を提供することである。
本発明者らは、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、特定の組成を有し、立方晶岩塩型構造の結晶相を有するリチウムスズ硫化物は、リチウム原子とスズ原子とが三次元的に等価な立方晶を形成し、固体電解質として有用であることを見出した。また、このリチウムスズ硫化物と特定の他の硫化物(リチウムニオブ硫化物、リチウムチタン硫化物又はリチウムチタンニオブ硫化物)との固溶体は、リチウムイオン二次電池用電極活物質としても有用であることを見出した。また、このようにして得られた立方晶リチウムスズ硫化物を不活性雰囲気下に熱処理をすることで低温且つ簡便に単斜晶リチウムスズ硫化物が得られることも見出した。本発明は、このような知見に基づき、さらに研究を重ね、完成されたものである。即ち、本発明は、以下の構成を包含する。
項1.リチウム、スズ及び硫黄を構成元素として含み、
前記リチウムと前記スズとの組成比(Li/Sn)がモル比で1.5〜3.5であり、
前記硫黄と前記スズとの組成比(S/Sn)がモル比で2.5〜4.5であり、
立方晶岩塩型構造の結晶相を有する、リチウムスズ硫化物。
項2.前記立方晶岩塩型構造の結晶相の格子定数が5.0〜5.4Åである、項1に記載のリチウムスズ硫化物。
項3.CuKα線によるX線回折図における回折角2θ= 10°〜80°の範囲内において、±1.0°の許容範囲で、少なくとも、33.9°に最強ピークを有し、48.8°に2番目に強いピークを有する、項1又は2に記載のリチウムスズ硫化物。
項4.前記2θ= 33.9°のピークの半値幅が0.20〜1.05°である、項1〜3のいずれか1項に記載のリチウムスズ硫化物。
項5.前記リチウムと前記スズとの組成比(Li/Sn)がモル比で1.5〜2.5であり、前記硫黄と前記スズとの組成比(S/Sn)がモル比で2.5〜3.5である立方晶岩塩型構造の結晶相からなる、項1〜4のいずれか1項に記載のリチウムスズ硫化物。
項6.前記リチウムと前記スズとの組成比(Li/Sn)がモル比で1.5〜2.5であり、前記硫黄と前記スズとの組成比(S/Sn)がモル比で2.5〜3.5である立方晶岩塩型構造の結晶相と、
前記リチウムと前記スズとの組成比(Li/Sn)がモル比で3.0〜7.0であり、
前記硫黄と前記スズとの組成比(S/Sn)がモル比で3.0〜5.5であり、25.5°に最強ピーク又は2番目に強いピークを有する結晶相とを有する、項1〜4のいずれか1項に記載のリチウムスズ硫化物。
項7.項1〜6のいずれか1項に記載のリチウムスズ硫化物と、
リチウム、ニオブ及び硫黄を構成元素として含み、立方晶岩塩型構造の結晶相からなるリチウムニオブ硫化物、リチウム、チタン及び硫黄を構成元素として含み、立方晶岩塩型構造の結晶相からなるリチウムチタン硫化物、及びリチウム、チタン、ニオブ及び硫黄を構成元素として含み、立方晶岩塩型構造の結晶相からなるリチウムチタンニオブ硫化物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の硫化物と
の固溶体からなる、リチウムスズ硫化物含有固溶体。
項8.項1〜7のいずれか1項に記載のリチウムスズ硫化物又はリチウムスズ硫化物含有固溶体の製造方法であって、
硫化リチウム及び硫化スズを含む原料を用い、メカニカルミリング処理に供する工程
を備える、製造方法。
項9.前記硫化リチウムの使用量が、前記硫化スズ1モルに対して、0.5〜2.0モルである、項8に記載の製造方法。
項10.前記原料として、硫化ニオブ及び/又は硫化チタンを用いる、項8又は9に記載の製造方法。
項11.項1〜6のいずれか1項に記載のリチウムスズ硫化物からなるリチウムイオン二次電池用固体電解質。
項12.項7に記載のリチウムスズ硫化物含有固溶体からなるリチウムイオン二次電池用電極活物質。
項13.項11に記載のリチウムイオン二次電池用固体電解質、及び/又は項12に記載のリチウムイオン二次電池用電極活物質を用いたリチウムイオン二次電池。
項14.リチウム、スズ及び硫黄を構成元素として含み、前記リチウムと前記スズとの組成比(Li/Sn)がモル比で1.5〜3.5であり、前記硫黄と前記スズとの組成比(S/Sn)がモル比で2.5〜4.5であり、単斜晶構造の結晶相を有するリチウムスズ硫化物の製造方法であって、
項1〜6のいずれか1項に記載のリチウムスズ硫化物を、不活性雰囲気下に300〜650℃で熱処理する工程
を備える、製造方法。
本発明のリチウムスズ硫化物は、立方晶岩塩型構造の結晶相を有しており、イオン伝導度が高くリチウムイオン二次電池の固体電解質として有用である。また、この立方晶岩塩型構造の結晶相を有するリチウムスズ硫化物と特定の他の硫化物(リチウムニオブ硫化物、リチウムチタン硫化物又はリチウムチタンニオブ硫化物)との固溶体は、電子伝導度が高くリチウムイオン二次電池の電極活物質として有用である。また、本発明のリチウムスズ硫化物を不活性雰囲気下に熱処理をすることで低温且つ簡便に単斜晶リチウムスズ硫化物が得られる。
実施例1〜2で得られたLi2SnS3粉末及びLi3SnS4粉末のX線回折パターンを示す。原料であるLi2S粉末、SnS2粉末及び硫黄粉末のピークとともに示す。既報のLi2SnS3 (C2/c)のピークも示す。なお、2θ= 10〜25°付近には大気暴露防止のために用いたポリマー製の大気非暴露フォルダーによる影響も確認されている可能性がある。 実施例3で得られた各粉末のX線回折パターンを示す。なお、2θ= 10〜25°付近には大気暴露防止のために用いたポリマー製の大気非暴露フォルダーによる影響も確認されている可能性がある。 実施例3で得られた各粉末の格子定数を示すグラフである。 実施例3で得られた各粉末の高エネルギーX線を用いたX線回折測定より得られた二体分布関数g(r)である。 実施例3で得られた各粉末の容量又はLiの原子量を横軸とした充放電曲線である。 実施例4で得られた各粉末の格子定数を示すグラフである。 実施例5で得られたLi2SnS3粉末のX線回折パターンを示す。実施例1で得られた立方晶岩塩型Li2TiS3のピークもあわせて示す。また、立方晶岩塩型Li2TiS3及び単斜晶Li2TiS3粉末の計算によるスペクトルもあわせて示す。 実施例1で得られたLi2SnS3粉末の熱重量分析の結果である。
1.リチウムスズ硫化物
本発明のリチウムスズ硫化物は、リチウム、スズ及び硫黄を構成元素として含み、前記リチウムと前記スズとの組成比(Li/Sn)がモル比で1.5〜3.5であり、前記硫黄と前記スズとの組成比(S/Sn)がモル比で2.5〜4.5であり、立方晶岩塩型構造の結晶相を有する。これにより、リチウム原子とスズ原子とが三次元的に等価な立方晶を形成し、イオン伝導度が高く固体電解質として有用であるとともに、特定の他の硫化物(リチウムニオブ硫化物、リチウムチタン硫化物又はリチウムチタンニオブ硫化物)と固溶体を形成することで電極活物質として有用な化合物を得ることができる。上記のような特徴を有する本発明のリチウムスズ硫化物は、既報にはない結晶構造を有する化合物であり、高いイオン伝導度を得ることができる。
このような本発明のリチウムスズ硫化物は、X線回折結果に基づいて、空間群:
で帰属させた場合に、格子定数が5.0〜5.4Åの範囲内の立方晶岩塩型構造の結晶相に帰属されることが好ましい。このような本発明のリチウムスズ硫化物は、純度が高く結晶性が良好な場合には、格子定数は5.1〜5.3Åの範囲となり、より純度が高く結晶性が良好な場合には5.2〜5.3Åの範囲となることが好ましい。
このような本発明のリチウムスズ硫化物は、CuKα線によるX線回折図における回折角2θ= 10°〜80°の範囲内において、±1.0°(特に±0.5°)の許容範囲で、少なくとも、33.9°に最強ピークを有し、48.8°に2番目に強いピークを有することが好ましい。なお、本明細書において、「最強ピーク」とは、強度が最も高いピークを意味し、「2番目に強いピーク」とは、強度が2番目に強いピークを意味する。
なお、本発明において、X線回折スペクトルは、粉末X線回折測定法によって求められるものであり、例えば、以下の測定条件:
X線源:CuKα 40kV−40mA
測定条件:2θ= 10〜80°、0.1°ステップ、走査速度0.5秒/ステップ
で測定することができる。
本発明のリチウムスズ硫化物は、上記した2θ位置に回折ピークを有するが、結晶性が良好な硫化物については、その結晶性の程度によって、回折角2θ= 10〜80°の範囲内において、±1.0°の許容範囲で、60.8°及び71.7°の少なくとも1箇所(特に全て)にも、回折ピークが認められる。
本発明の結晶性リチウムスズ硫化物は、リチウムとスズとの組成比(Li/Sn)がモル比で1.5〜2.5(特に1.8〜2.2)であり、硫黄とスズとの組成比(S/Sn)がモル比で2.5〜3.5(特に2.8〜3.2)であるリチウムスズ硫化物からなる結晶相を少なくとも有している。このリチウムスズ硫化物からなる結晶相は、上記した位置にピークを有しており、2θ= 33.9°のピークが最強ピークである。
また、本発明のリチウムスズ硫化物は、前記2θ= 33.9°のピークの半値幅は0.20〜1.05°が好ましく、0.50〜0.95°がより好ましい。前記最強ピークの半値幅がこの範囲に存在していることにより、高導電性の結晶子と、粒界抵抗を低減できる低結晶性の成分が共存し、導電性と成型性を兼ね備えたち密成型体を構築しやすくすることができる。
本発明のリチウムスズ硫化物は、上記の回折ピークを有するものであるが、各元素の比率については、特に、組成式:Lin1SnSm1で表した場合に、n1及びm1が、それぞれn1= 2、m1= 3のときに、本発明のリチウムスズ硫化物の結晶構造が最も安定化すると考えられる。また、n1及びm1が、例えばn1= 3、m1= 4である場合には、前記の結晶構造を有するリチウムスズ硫化物結晶相(本発明のリチウムスズ硫化物結晶相)と、それとは異なるリチウムスズ硫化物結晶相(他のリチウムスズ硫化物結晶相)との二相構造を形成しやすい。このような観点から、リチウムLiとスズSnとの組成比Li/Snは、モル比で1.5〜3.5、好ましくは1.8〜3.2であり、硫黄SとスズSnとの組成比S/Snは、モル比で2.5〜4.5、好ましくは2.8〜4.2である。具体的には、Li/Snが1.5〜2.5、S/Snが2.5〜3.5のときに、特に本発明のリチウムスズ硫化物結晶相からなる結晶構造を安定化することができる。Li/Snが2.5〜3.5、S/Snが3.5〜4.5のときには、特に本発明のリチウムスズ硫化物結晶相と他のリチウムスズ硫化物結晶相との二相構造を取ることができる。
二相構造を取る場合に形成される他のリチウムスズ硫化物結晶相は、リチウムとスズとの組成比(Li/Sn)がモル比で3.0〜7.0であり、硫黄とスズとの組成比(S/Sn)がモル比で3.0〜5.5であり、CuKα線によるX線回折図における回折角2θ= 10°〜80°の範囲内において、±1.0°(特に±0.5°)の許容範囲で、少なくとも、25.5°に最強ピークを有する結晶相である。
上記他のリチウムスズ硫化物は、上記した2θ位置に回折ピークを有するが、結晶性が良好な硫化物については、その結晶性の程度によって、回折角2θ= 10〜80°の範囲内において、±1.0°の許容範囲で、27.9°、38.0°、45.0°及び50.1°の少なくとも1箇所(特に全て)にも、回折ピークが認められる。また、さらに結晶性が良好な硫化物については、その結晶性の程度によって、回折角2θ= 10〜80°の範囲内において、±1.0°(特に±0.5°)の許容範囲で、27.0°、30.2°、31.3°、52.8°、53.8°、55.6°、60.4°、65.3°、69.5°及び72.0°の少なくとも1箇所にも、回折ピークが認められる。
上記他の結晶性リチウムスズ硫化物は、リチウムとスズとの組成比(Li/Sn)がモル比で3.0〜5.0(特に3.5〜4.5)であり、硫黄とスズとの組成比(S/Sn)がモル比で3.0〜5.0(特に3.5〜4.5)であるリチウムスズ硫化物からなる結晶相を少なくとも有している。
また、上記他の結晶性リチウムスズ硫化物は、前記2θ= 25.5°のピークの半値幅は0.20〜1.05°が好ましく、0.25〜0.85°がより好ましい。前記2θ= 25.5°のピークの半値幅がこの範囲に存在していることにより、高導電性の結晶子と、粒界抵抗をさらに低減することで粒子間のイオン伝導を補助する低結晶性の成分が共存しやすくし、導電性と成型性をより兼ね備えたち密成型体を構築しやすくすることができる。
上記他の結晶性リチウムスズ硫化物は、上記の回折ピークを有するものであるが、各元素の比率については、特に、組成式:Lin1SnSm1で表した場合に、n1及びm1が、それぞれn1= 4、m1= 4のときに、本発明のリチウムスズ硫化物の結晶構造が最も安定化すると考えられる。このような観点から、リチウムLiとスズSnとの組成比Li/Snは、モル比で3.0〜7.0が好ましく、3.5〜6.5がより好ましい。また、硫黄SとスズSnとの組成比S/Snは、モル比で3.0〜5.5が好ましく、3.5〜5.3がより好ましい。具体的には、Li/Snが3.5〜4.5、S/Snが3.5〜4.5のときに、特に前記の他のリチウムスズ硫化物結晶相からなる結晶構造を安定化することができる。
このような条件を満たす本発明のリチウムスズ硫化物としては、具体的には、一般式(1):
Lin1SnSm1 (1)
[式中、n1及びm1は、1.5≦n1≦3.5(好ましくは1.8≦n1≦3.2);2.5≦m1≦4.5(好ましくは2.8≦m1≦4.2)を満たす。]
で表されるリチウムスズ硫化物が挙げられる。なかでも、一般式(1A):
Lin1SnSm1 (1A)
[式中、n1及びm1は、1.5≦n1≦2.5(好ましくは1.8≦n1≦2.2);2.5≦m1≦3.5(好ましくは2.8≦m1≦3.2)を満たす。]
で表されるリチウムスズ硫化物は異相の少ない(異相のほとんどない)結晶構造を取ることができ、一般式(1B):
Lin1SnSm1 (1B)
[式中、n1及びm1は、2.5≦n1≦3.5(好ましくは2.8≦n1≦3.2);3.5≦m1≦4.5(好ましくは3.8≦m1≦4.2)を満たす。]
で表されるリチウムスズ硫化物は、本発明のリチウムスズ硫化物結晶相と上記他のリチウムスズ硫化物結晶相との二相構造を取ることができるため好ましい。
なお、二相構造を取る場合、各相の存在比は特に制限されないが、成型性、イオン伝導性、大気安定性、電気化学的安定性等のバランスの観点から、本発明のリチウムスズ硫化物結晶相は20〜99モル%(特に40〜90モル%)が好ましく、上記他のリチウムスズ硫化物結晶相は1〜80モル%(特に10〜60モル%)が好ましい。
なお、本発明のリチウムスズ硫化物結晶相が最も安定化するリチウムスズ硫化物の組成は、Li2SnS3であり、Li3SnS4組成ではLi2SnS3結晶相(立方晶岩塩型構造の結晶相)とLi4SnS4結晶相との二相構造を取ることができる。
また、上記一般式(1):Lin1SnSm1におけるn1とm1との関係については、n1= 2, m1= 3であるとき、結晶性を高くしやすいため好ましい。なお、上記以外であっても、n1≒2×(m1)-4であれば、スズを含む結晶相の陽イオンと陰イオンのバランスを取ることができる。
また、本発明のリチウムスズ硫化物の平均粒子径は、1〜30μmが好ましく、2〜20μmがより好ましい。本発明の結晶性リチウムスズ硫化物の平均粒子径は、電子顕微鏡(SEM)観察により測定する。
また、本発明のリチウムスズ硫化物は、ペレット化した際にイオン伝導度が、1×10-8〜1×10-3Scm-1となることが好ましく、1×10-7〜1×10-3Scm-1となることがより好ましい。特に、本発明のリチウムスズ硫化物をペレット化した際の電子抵抗値から算出される電子伝導度よりも、イオン伝導度のほうが10倍以上高いことが好ましい。本発明のリチウムスズ硫化物の電子伝導度は、直流分極法によって測定する。また、イオン伝導度は、ブロッキング電極を用いた交流インピーダンス法により測定する。
本発明のリチウムスズ硫化物は、上記した条件を満足するものであるが、該リチウムスズ硫化物の性能を阻害しない範囲であれば、その他の不純物が含まれていてもよい。この様な不純物としては、原料に混入する可能性のある遷移金属、典型金属等の金属類;原料及び製造時に混入する可能性のある炭素、酸素等を例示できる。さらに、原料の残存物(硫化リチウム(Li2S)、硫化スズ(SnS2)等)や、本発明の目的物以外の生成物等も不純物として含まれることがある。これらの不純物の量については、上記したリチウムスズ硫化物の性能を阻害しない範囲であればよく、通常、上記した条件を満足するリチウムスズ硫化物におけるリチウム、スズ及び硫黄の合計量100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、3重量部以下がさらに好ましい。
これらの不純物が存在する場合には、上記したX線回折図におけるピークの他に、不純物に応じて回折ピークが存在することがある。
2.リチウムスズ硫化物含有固溶体
本発明のリチウムスズ硫化物は、リチウムニオブ硫化物、リチウムチタン硫化物及びリチウムチタンニオブ硫化物と類似した立方晶岩塩型構造の結晶相を形成する。このため、本発明のリチウムスズ硫化物は、リチウムニオブ硫化物、リチウムチタン硫化物又はリチウムチタンニオブ硫化物と固溶体を形成し得る。固溶体を形成し得るリチウムニオブ硫化物、リチウムチタン硫化物及びリチウムチタンニオブ硫化物としては、国際公開第2014/148432号に記載のものを採用できる。具体的には、以下のものを採用できる。
リチウムニオブ硫化物は、リチウム、ニオブ及び硫黄を構成元素として含み、立方晶岩塩型構造の結晶相を有する。このようなリチウムニオブ硫化物は、CuKα線によるX線回折図における回折角2θ= 10°〜80°の範囲内において、±2°の許容範囲で、少なくとも、35.0°、50.3°、及び62.7°の位置に回折ピークを有することが好ましい。
該リチウムニオブ硫化物は、上記した2θ位置に回折ピークを有することを特徴とするものであるが、さらに、結晶性が良好な硫化物については、その結晶性の程度によって、回折角2θ= 10〜100°の範囲内において、30.1°、73.9°、84.4°及び94.7°の少なくとも1箇所(特に30.1°及び73.9°)にも、回折ピークが認められることが好ましい。
また、該リチウムニオブ硫化物は、X線回折結果に基づいて、空間群:
で帰属させた場合に、格子定数が4.9〜5.3Åの範囲内の立方晶岩塩型構造の結晶相に帰属されることが好ましい。該リチウムニオブ硫化物は、結晶性が良好な場合には、格子定数は5.0〜5.2Åの範囲となり、より結晶性が良好な場合には5.10〜5.15Åの範囲となることが好ましい。
上記リチウムニオブ硫化物は、リチウム、ニオブ及び硫黄を構成元素として立方晶岩塩型構造の結晶相を有する限り、各元素の比率については特に限定されるものではないが、特に、組成式:Lin2NbSm2で表した場合に、n2及びm2が、それぞれn2= 3、m2= 4のときに、特に安定且つ理想的な立方晶岩塩型構造の結晶相になる。このような観点から、ニオブNbと硫黄Sとの組成比S/Nbは、モル比で2〜6が好ましく、3〜5がより好ましく、3.5〜4.5がさらに好ましい。また、ニオブNbとリチウムLiとの組成比Li/Nbは、モル比で1〜5が好ましく、2〜4がより好ましく、2.5〜3.5がさらに好ましい。つまり、S/Nbが3.5〜4.5、Li/Nbが2.5〜3.5のときに、特に安定な立方晶岩塩型構造の結晶相を取ることができる。
このような条件を満たすリチウムニオブ硫化物としては、具体的には、一般式(2):
Lin2NbSm2
[式中、1≦n2≦5(好ましくは2≦n2≦4、より好ましくは2.5≦n2≦3.5);2≦m2≦6(好ましくは3≦m2≦5、より好ましくは3.5≦m2≦4.5)である。]
で示されるリチウムニオブ硫化物が安定な立方晶岩塩型構造の結晶相を取るため好ましい。なお、最も良好な安定性を示すリチウムニオブ硫化物は、Li3NbS4である。
また、上記一般式(2):Lin2NbSm2におけるn2とm2との関係については、m2= n2+1であるとき、リチウム原子とニオブ原子の数の和が、硫黄原子の数に合致し、立方晶岩塩型構造の結晶相における陽イオンの数と陰イオンの数のバランスが保たれるため好ましい。また、2m1= n1+5の時、リチウム原子、ニオブ原子、硫黄原子の価数がそれぞれ+1、+5、-2の状態で、陽イオンと陰イオンのバランスが保たれ、立方晶岩塩型構造の結晶相をとりやすくなるため、好ましい。
上記リチウムチタン硫化物は、リチウム、チタン及び硫黄を構成元素として含み、立方晶岩塩型構造の結晶相を有する。
具体的には、該リチウムチタン硫化物の結晶構造は、CuKα線によるX線回折図における回折角2θ= 10°〜80°の範囲内において、±2°の許容範囲で、30.6°、35.5°、51.0°、60.6°、及び63.7°の位置に回折ピークを有することによって特徴付けられることが好ましい。
該リチウムチタン硫化物は、上記した2θ位置に回折ピークを有することが好ましいが、さらに、結晶性が良好なリチウムチタン硫化物については、その結晶性の程度によって、回折角2θ= 10°〜100°の範囲内において、75.0°、83.1°、85.8°、及び96.5°の少なくとも1箇所に明瞭な回折ピークが認められることが好ましい。
また、該リチウムチタン硫化物は、X線回折結果に基づいて、空間群:
で帰属させた場合に、格子定数が4.8〜5.3Åの範囲内の岩塩型結晶に帰属されることが好ましい。該リチウムチタン硫化物は、結晶性が良好な場合には、格子定数は4.9〜5.2Åの範囲となり、より結晶性が良好な場合には4.95〜5.15Åの範囲となり、さらに、結晶性が良好な場合には5.00〜5.10Åの範囲となることが好ましい。
上記リチウムチタン硫化物は、リチウム、チタン及び硫黄を構成元素として立方晶岩塩型構造の結晶相を有する限り、各元素の比率については特に限定されるものではないが、特に、組成式:Lin3TiSm3で表した場合に、n3及びm3が、それぞれn3= 2、m3= 3のときに、特に安定且つ理想的な立方晶岩塩型構造の結晶相になると考えられる。このような観点から、チタンTiと硫黄Sとの組成比S/Tiは、モル比で2〜5が好ましく、2.2〜4.5がより好ましく、3〜4がさらに好ましい。また、チタンTiとリチウムLiとの組成比Li/Tiは、モル比で0.4〜6が好ましく、1〜4がより好ましく、1.5〜3がさらに好ましい。つまり、S/Tiが3〜4、Li/Tiが1.5〜3のときに、特に安定な立方晶岩塩型構造の結晶相を取ることができる。
このような条件を満たすリチウムチタン硫化物としては、具体的には、一般式(3):
Lin3TiSm3
[式中、0.4≦n3≦6(好ましくは1≦n3≦4、より好ましくは1.5≦n3≦3);2≦m3≦5(好ましくは2.2≦m3≦4.5、より好ましくは3≦m3≦4)である。]
で表されるリチウムチタン硫化物が安定な立方晶岩塩型構造の結晶相を取るため好ましい。なお、最も良好な安定性を示すリチウムチタン硫化物はLi2TiS3である。
また、上記一般式(3):Lin3TiSm3におけるn3とm3との関係については、m3= n3+1であるとき、リチウム原子とチタン原子の数の和が、硫黄原子の数に合致し、立方晶岩塩型構造の結晶相における陽イオンの数と陰イオンの数のバランスが保たれるため好ましい。また、2m3= n3+4の時、リチウム原子、チタン原子、硫黄原子の価数がそれぞれ+1、+4、-2の状態で、陽イオンと陰イオンのバランスが保たれ、立方晶岩塩型構造の結晶相をとりやすくなるため、好ましい。
上記リチウムチタンニオブ硫化物は、リチウム、チタン、ニオブ及び硫黄を構成元素として含み、立方晶岩塩型構造の結晶相を有する。このようなリチウムチタンニオブ硫化物は、CuKα線によるX線回折図における回折角2θ= 10°〜80°の範囲内において、±2°の許容範囲で、少なくとも、30.5°、35.3°、50.6°、及び63.2°の位置に回折ピークを有することが好ましい。
該リチウムチタンニオブ硫化物は、上記した2θ位置に回折ピークを有することが好ましいが、さらに、結晶性が良好な硫化物については、その結晶性の程度によって、回折角2θ= 10〜100°の範囲内において、60.3°、74.5°、83.7°及び95.6°の少なくとも1箇所(特に60.3°及び74.5°)にも、回折ピークが認められることが好ましい。
また、該リチウムチタンニオブ硫化物は、X線回折結果に基づいて、空間群:
で帰属させた場合に、格子定数が4.8〜5.3Åの範囲内の立方晶岩塩型構造の結晶相に帰属されることが好ましい。該リチウムチタンニオブ硫化物は、結晶性が良好な場合には、格子定数は4.9〜5.2Åの範囲となり、さらに結晶性が良好な場合には4.95〜5.15Åの範囲となり、特に結晶性が良好な場合には5.05〜5.15Åの範囲となることが好ましい。該リチウムチタンニオブ硫化物の格子定数は、チタンの、チタン及びニオブの合計に対する存在比Ti/(Ti+Nb)によって変化し、Ti/(Ti+Nb)が1に近づくと小さくなり、Ti/(Ti+Nb)が0に近づくと大きくなる傾向がある。
上記リチウムチタンニオブ硫化物は、リチウム、チタン、ニオブ及び硫黄を構成元素として立方晶岩塩型構造の結晶相を有する限り、各元素の比率については特に限定されるものではないが、特に、組成式:Lin4Ti1-kNbkSm4で表した場合に、n4及びm4が、それぞれn4= 2+k、m4= 3+kのときに、特に安定且つ理想的な立方晶岩塩型構造の結晶相になる。このような観点から、チタンTi及びニオブNbの和と、硫黄Sとの組成比S/(Ti+Nb)が、モル比で2〜6が好ましく、2.2〜5がより好ましく、3〜4.5がさらに好ましい。また、チタンTi及びニオブNbの和と、リチウムLiとの組成比Li/(Ti+Nb)が、モル比で0.4〜6が好ましく、1〜4がより好ましく、1.5〜3.5がさらに好ましい。つまり、S/(Ti+Nb)が3〜4.5、Li/(Ti+Nb)が1.5〜3.5のときに、特に安定な立方晶岩塩型構造の結晶相を取ることができる。また、ニオブNbの、チタンTi及びニオブNbの和に対する比Nb/(Ti+Nb)については、大きいほうがサイクル特性及び初期充電容量が高く、小さいほうが充放電電位及び充放電容量が高く、コスト的に有利である観点から、バランスを取ることが好ましい。このため、Nb/(Ti+Nb)は0より大きく1未満の値であるが、高性能型用途には0.25以上1未満が好ましく、0.5以上1未満がより好ましく、0.75以上1未満がさらに好ましい。
このような条件を満たすリチウムチタンニオブ硫化物としては、具体的には、一般式(4):
Lin4Ti1-kNbkSm4
[式中、0.4≦n4≦6(好ましくは1≦n4≦4、より好ましくは1.5≦n4≦3.5);2≦m4≦6(好ましくは2.2≦m4≦5、より好ましくは3≦m4≦4.5);0<k<1(好ましくは0.25≦k<1、より好ましくは0.5≦k<1、さらに好ましくは0.75≦k≦1)である。]
で示されるリチウムチタンニオブ硫化物が安定な立方晶岩塩型構造の結晶相を取るため好ましい。
このようなリチウムチタンニオブ硫化物は、組成式では上記のとおりであるが、実際には、一般式(5):
(1-k)Lin5TiSm5・kLin2NbSm2
[式中、n2、m2及びkは前記に同じ;0.4≦n5≦6(好ましくは1≦n5≦4、より好ましくは1.5≦n5≦3.5);2≦m5≦6(好ましくは2.2≦m5≦5、より好ましくは3≦m5≦4.5)である。]
の構成を有する。
なお、特に良好な安定性を示すリチウムチタンニオブ硫化物は、Li2.5Ti0.5Nb0.5S3.5(0.5Li2TiS3・0.5Li3NbS4)、Li2.75Ti0.25Nb0.75S3.75(0.25Li2TiS3・0.75Li3NbS4)、Li2.25Ti0.75Nb0.25S3.25(0.75Li2TiS3・0.25Li3NbS4)等である。
また、上記一般式(4):Lin4Ti1-kNbkSm4におけるn4とm4との関係については、m4= n4+1であるとき、リチウム原子、チタン原子及びニオブ原子による価数の和が硫黄原子による価数に合致し、立方晶岩塩型構造の結晶相における陽イオンと陰イオンのバランスが保たれるため好ましい。つまり、一般式(5):(1-k)Lin5TiSm5・kLin2NbSm2においては、m2= n2+1であり、且つm5= n5+1であるとき、リチウム原子と、チタン原子又はニオブ原子による価数の和が硫黄原子による価数に合致し、立方晶岩塩型構造の結晶相における陽イオンと陰イオンのバランスが保たれるため好ましい。
上記のとおり、本発明のリチウムスズ硫化物は、CuKα線によるX線回折図における回折角2θ= 10°〜80°の範囲内において、±1.0°(特に±0.5°)の許容範囲で、少なくとも、33.9°に最強ピークを有し、48.8°に2番目に強いピークを有し、結晶性が良好な硫化物については、その結晶性の程度によって、60.8°及び71.7°の少なくとも1箇所(特に全て)にも、回折ピークが認められる。
一方、本発明のリチウムスズ硫化物含有固溶体のピーク位置については、Nb及び/又はTiの含有量が大きくなるに従い(Snの含有量が少なくなるに従い)、高角側に若干シフトするものの、本発明のリチウムスズ硫化物と類似した挙動を示す。
このような本発明のリチウムスズ硫化物含有固溶体は、X線回折結果に基づいて、空間群:
で帰属させた場合に、Liイオン及びSnイオンと、Nbイオン及び/又はTiイオンとが、ランダムに4aサイトを占有する。また、格子定数は、Nb及び/又はTiの含有量が大きくなるに従い(Snの含有量が少なくなるに従い)、若干小さくなる。このような観点から、格子定数は4.95〜5.35Åが好ましく、5.00〜5.30Åがより好ましく、さらには5.05〜5.25Åがさらに好ましい。
上記リチウムチタンニオブ硫化物は、リチウム、ニオブ及び/又はチタン、スズ及び硫黄を構成元素として立方晶岩塩型構造の結晶相を有する限り、各元素の比率については特に限定されるものではないが、特に、組成式:Lin6(Ti1-iNbi)1-jSnjSm6で表した場合に、特に安定且つ理想的な立方晶岩塩型構造の結晶相になる観点から、ニオブNb、チタンTi及びスズSnの和と、硫黄Sとの組成比S/(Nb+Ti+Sn)が、モル比で2.0〜7.0が好ましく、2.5〜6.5がより好ましく、3.0〜6.0がさらに好ましい。また、ニオブNb、チタンTi及びスズSnの和と、リチウムLiとの組成比Li/(Nb+Ti+Sn)が、モル比で1.0〜5.0が好ましく、1.5〜4.5がより好ましく、2.0〜4.0がさらに好ましい。つまり、S/(Nb+Ti+Sn)が3.0〜6.0、Li/(Nb+Ti+Sn)が2.0〜4.0のときに、特に安定な立方晶岩塩型構造の結晶相を取ることができる。また、スズSnの、ニオブNb、チタンTi及びスズSnの和に対する比Sn/(Nb+Ti+Sn)については、小さいほうが電子伝導度が高くサイクル特性及び初期充電容量が高い観点から、Sn/(Nb+Ti+Sn)は0より大きく1未満の値であるが、高性能型用途には0.10〜0.50が好ましく、0.15〜0.30がより好ましい。さらに、ニオブNbの、チタンTi及びニオブNbの和に対する比Nb/(Ti+Nb)については、大きいほうがサイクル特性及び初期充電容量が高く、小さいほうが充放電電位及び充放電容量が高く、コスト的に有利である観点から、バランスを取ることが好ましい。このため、Nb/(Ti+Nb)は0より大きく1未満の値であるが、高性能型用途には0.25以上1未満が好ましく、0.5以上1未満がより好ましく、0.75以上1未満がさらに好ましい。
このような条件を満たすリチウムスズ硫化物含有固溶体としては、具体的には、一般式(6):
Lin6(Ti1-iNbi)1-jSnjSm6
[式中、1.0≦n6≦5.0(好ましくは1.5≦n6≦4.5、より好ましくは2.0≦n6≦4.0);2.0≦m6≦7.0(好ましくは2.5≦m6≦6.5、より好ましくは3.0≦m6≦6.0);0<j<1(好ましくは0.10≦j≦0.50、より好ましくは0.15≦j≦0.30);0<i<1(好ましくは0.25≦i<1、より好ましくは0.5≦i<1、さらに好ましくは0.75≦i≦1)である。]
で示されるリチウムスズ硫化物含有固溶体が安定な立方晶岩塩型構造の結晶相を取るため好ましい。
このようなリチウムスズ硫化物含有固溶体は、組成式では上記のとおりであるが、実際には、一般式(6A)〜(6C):
(1-j)Lin2NbSm2・j Lin1SnSm1 (6A)
(1-j)Lin3TiSm3・j Lin1SnSm1 (6B)
(1-j)Lin4Ti1-kNbkSm4・j Lin1SnSm1 (6C)
[式中、n1、n2、n3、n4、m1、m2、m3、m4、j及びkは前記に同じである。]
の構成を有する。
なお、特に良好な安定性を示すリチウムスズ硫化物含有固溶体は、Li2.75Nb0.75Sn0.25S3.75(0.75Li3NbS4・0.25Li2SnS3)、Li2.5Nb0.5Sn0.5S3.5(0.5Li3NbS4・0.5Li2SnS3)、Li2.25Nb0.25Sn0.75S3.25(0.25Li3NbS4・0.75Li2SnS3)等である。
また、上記一般式(6):Lin6(Ti1-iNbi)1-jSnjSm6におけるn6とm6との関係については、m6= n6+1であるとき、リチウム原子、ニオブ原子、チタン原子及びスズ原子による価数の和が硫黄原子による価数に合致し、立方晶岩塩型構造の結晶相における陽イオンと陰イオンのバランスが保たれるため好ましい。
本発明のリチウムスズ硫化物含有固溶体は、上記した条件を満足するものであるが、該リチウムスズ硫化物固溶体の性能を阻害しない範囲であれば、その他の不純物が含まれていてもよい。この様な不純物としては、原料に混入する可能性のある遷移金属、典型金属等の金属類;原料及び製造時に混入する可能性のある炭素、酸素等を例示できる。さらに、原料の残存物(硫化リチウム、硫化チタン、硫化ニオブ、硫化スズ、硫黄等)や、本発明の目的物以外の生成物等も不純物として含まれることがある。これらの不純物の量については、上記したリチウムスズ硫化物固溶体の性能を阻害しない範囲であればよく、通常、上記した条件を満足するリチウムスズ硫化物固溶体におけるリチウム、チタン、ニオブ、スズ及び硫黄の合計量100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、3質量部以下がさらに好ましい。
これらの不純物が存在する場合には、上記したX線回折図におけるピークの他に、不純物に応じて回折ピークが存在することがある。
3.リチウムスズ硫化物及びリチウムスズ硫化物含有固溶体の製造方法
本発明のリチウムスズ硫化物は、例えば、原料として、硫化リチウム(Li2S)及び硫化スズ(SnS2)を用い、メカニカルミリング処理に供することによって得ることができる。また、本発明のリチウムスズ硫化物含有固溶体は、例えば、原料として、硫化リチウム(Li2S)及び硫化スズ(SnS2)と、硫化ニオブ(NbS2)及び/又は硫化チタン(TiS2)とを用い、メカニカルミリング処理に供することによって得ることができる。さらに、目的とするリチウムスズ硫化物及びリチウムスズ硫化物含有固溶体と同一の組成比となるように調整するため、硫黄を原料として使用することもできる。
メカニカルミリング処理は、機械的エネルギーを付与しながら原料を摩砕混合する方法であり、この方法によれば、原料に機械的な衝撃及び摩擦を与えて摩砕混合することによって、硫化リチウム及び硫化スズが激しく接触して微細化され、原料の反応が生じる。つまり、この際、混合、粉砕及び反応が同時に生じる。このため、原料を高温に熱することなく、原料をより確実に反応させることが可能である。メカニカルミリング処理を用いることで通常の熱処理では得ることのできない、準安定結晶構造が得られることがある。
メカニカルミリング処理としては、具体的には、例えば、ボールミル、ビーズミル、ロッドミル、振動ミル、ディスクミル、ハンマーミル、ジェットミル等の機械的粉砕装置を用いて混合粉砕を行うことができる。
原料として用いる硫化リチウム(Li2S)については特に限定はなく、市販の硫化リチウムを用いることができる。特に、高純度のものを用いることが好ましい。また、硫化リチウムをメカニカルミリング処理によって混合粉砕するので、使用する硫化リチウムの粒径についても限定はなく、通常は、市販されている粉末状の硫化スズを用いることができる。
原料として用いる硫化スズ(SnS2)についても特に限定はなく、市販されている任意の硫化スズを用いることができる。特に、高純度のものを用いることが好ましい。また、硫化スズをメカニカルミリング処理によって混合粉砕するので、使用する硫化スズの粒径についても限定はなく、通常は、市販されている粉末状の硫化スズを用いることができる。
原料として用いる硫化ニオブ(NbS2)についても特に限定はなく、市販されている任意の硫化ニオブを用いることができる。特に、高純度のものを用いることが好ましい。また、硫化ニオブをメカニカルミリング処理によって混合粉砕するので、使用する硫化ニオブの粒径についても限定はなく、通常は、市販されている粉末状の硫化ニオブを用いることができる。
原料として用いる硫化チタン(TiS2)についても特に限定はなく、市販されている任意の硫化チタンを用いることができる。特に、高純度のものを用いることが好ましい。また、硫化チタンをメカニカルミリング処理によって混合粉砕するので、使用する硫化チタンの粒径についても限定はなく、通常は、市販されている粉末状の硫化チタンを用いることができる。
原料として用いる硫黄についても特に限定はなく、任意の硫黄を用いることができる。特に、高純度のものを用いることが好ましい。また、硫黄をメカニカルミリング処理によって混合粉砕するので、使用する硫黄の粒径についても限定はなく、通常は、市販されている粉末状の硫黄を用いることができる。
これら原料の混合比率については、目的とするリチウムスズ硫化物及びリチウムスズ硫化物含有固溶体におけるリチウム、スズ、ニオブ、チタン及び硫黄の元素比と同一の比率となるようにすることができる。具体的には、硫化リチウムの使用量は、硫化スズ1モルに対して、0.75〜1.75モルが好ましく、0.90〜1.60モルがより好ましい。なお、硫化リチウムの使用量を硫化スズ1モルに対して0.75〜1.25モルとした場合には特に安定な結晶構造のリチウムスズ硫化物結晶相の単相が製造されやすく、硫化リチウムの使用量を硫化スズ1モルに対して1.25〜1.75モルとした場合には特に安定な結晶構造のリチウムスズ硫化物結晶相と上記他のリチウムスズ硫化物結晶相との二相構造が製造されやすい。
また、硫化リチウムスズ硫化物固溶体を製造しようとする場合には、ニオブ、チタン及びスズの組成比が硫化リチウムスズ硫化物固溶体の範囲となるように、硫化ニオブ、硫化チタン、及び硫化スズの合計で0.75〜1.75モル、特に0.90〜1.60モルとなるように調整することが好ましい。
なお、硫黄の使用量は、ニオブ、チタン及びスズの組成比が硫化リチウムスズ硫化物固溶体の範囲となるように、適宜調整することが好ましい。
メカニカルミリング処理を行う際の温度については、特に制限はないが、硫黄が揮発しにくくするとともに、既報の結晶相が生成されにくくする観点から、300℃以下、好ましくは-10〜200℃でメカニカルミリング処理を行うことが好ましい。
メカニカルミリング処理の時間については、特に限定はなく、目的のリチウムスズ硫化物又はリチウムスズ硫化物含有固溶体が析出した状態となるまで任意の時間メカニカルミリング処理を行うことができる。
例えば、メカニカルミリング処理は、0.1〜300時間の処理時間の範囲内において、0.1〜100kWh/原料混合物1kgのエネルギー量で行うことができる。なお、このメカニカルミリング処理は、必要に応じて途中に休止を挟みながら複数回に分けて行うこともできる。
上記したメカニカルミリング処理により、目的とするリチウムスズ硫化物及びリチウムスズ硫化物含有固溶体を微粉末として得ることができる。
4.リチウムスズ硫化物及びリチウムスズ硫化物固溶体の用途
上記した本発明のリチウムスズ硫化物は、上記のとおりイオン伝導度に優れることから、イオン伝導体(特に固体電解質)として有用であり、特に、リチウムイオン二次電池用固体電解質として使用することが好ましい。また、本発明のリチウムスズ硫化物含有固溶体は、上記のとおり電子伝導度に優れることから、電極活物質(特に正極活物質)として有用であり、特に、リチウムイオン二次電池用電極活物質(特にリチウムイオン二次電池用正極活物質)として使用することが好ましい。
本発明のリチウムスズ硫化物をリチウムイオン二次電池用固体電解質として使用する場合、本発明のリチウムイオン二次電池(特に全固体型リチウムイオン二次電池)の構造は、本発明のリチウムスズ硫化物を固体電解質として用いること以外は、公知のリチウムイオン二次電池と同様とすることができる。
正極としては、本発明のリチウムスズ硫化物含有固溶体を正極活物質として使用することもできるし、正極活物質としてはコバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)、酸化バナジウム系材料、硫黄系材料等の公知の正極活物質を使用することもできる。この正極活物質と必要に応じて導電剤及びバインダーを含む正極合剤をAl、Ni、ステンレス、カーボンクロス等の正極集電体に担持させることができる。導電剤としては、例えば、黒鉛、コークス、カーボンブラック、針状カーボン等の炭素材料を用いることができる。また、バインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリイミド(PI)、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリル、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等の材料を単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
また、負極としては、本発明のリチウムスズ硫化物含有固溶体を負極活物質として使用することもできるし、負極活物質としては金属リチウム、炭素系材料(活性炭、黒鉛等)、ケイ素、酸化ケイ素、Si−SiO系材料、リチウムチタン酸化物等の公知の負極活物質を用いることもできる。この負極活物質と必要に応じて導電剤及びバインダーを含む正極合剤をAl、Ni、ステンレス、カーボンクロス等の負極集電体に担持させることができる。導電剤としては、例えば、黒鉛、コークス、カーボンブラック、針状カーボン等の炭素材料を用いることができる。また、バインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリイミド(PI)、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリル、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等の材料を単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
また、電解質層としては、本発明のリチウムスズ硫化物を、必要に応じて公知のバインダーを用いて常法により層状に成形し、電解質層として使用することができる。バインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリイミド(PI)、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリル、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等の材料を単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。なお、本発明のリチウムスズ硫化物含有固溶体をリチウムイオン二次電池用電極活物質(特にリチウムイオン二次電池用正極活物質)として使用する場合は、電解質としては従来から公知の電解質を使用することもできる。
セパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、ナイロン、芳香族アラミド、無機ガラス等の材質からなり、多孔質膜、不織布、織布等の形態の材料を用いることができる。
さらに、その他の公知の電池構成要素を使用して、常法に従って、リチウムイオン二次電池を組立てることができる。なお、本発明において、「リチウムイオン二次電池」とは、負極材料として金属リチウムを用いた「リチウム二次電池」も包含する概念である。
なお、リチウムイオン二次電池の形状についても特に限定はなく、円筒型、角型等のいずれであってもよい。
5.単斜晶リチウムスズ硫化物の製造方法
上記した本発明のリチウムスズ硫化物を、不活性雰囲気下に300〜650℃で熱処理することにより、単斜晶リチウムスズ硫化物を得ることができる。得られる単斜晶リチウムスズ硫化物は、リチウム、スズ及び硫黄を構成元素として含み、前記リチウムと前記スズとの組成比(Li/Sn)がモル比で1.5〜3.5であり、前記硫黄と前記スズとの組成比(S/Sn)がモル比で2.5〜4.5であり、単斜晶構造の結晶相を有するリチウムスズ硫化物である。従来は、単斜晶リチウムスズ硫化物を得ようとする場合、原料を真空封管しつつ約750℃で熱処理をする必要があることと比較すると、より低温、簡便、且つ安全に単斜晶リチウムスズ硫化物を得ることができる。このため、本発明のリチウムスズ硫化物は、単斜晶リチウムスズ硫化物の合成中間体として使用することもできる。
不活性雰囲気としては、特に制限はなく、アルゴンガス雰囲気、窒素ガス雰囲気等を採用できる。
熱処理温度としては、低温すぎると準安定相である本発明のリチウムスズ硫化物の結晶構造を変えることができず、高温すぎると著しい重量減少が起こり単斜晶リチウムスズ硫化物が得られない。このような観点から、熱処理温度は300〜650℃が好ましく、350〜600℃がより好ましい。
また、熱処理時間は特に制限されないが、十分に結晶構造を変えられる時間とすることが好ましく、10分〜24時間が好ましく、30分〜3時間がより好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施例のみに限定されないことは言うまでもない。
なお、原料は市販品を精製せずに使用した。
硫化リチウム粉末: 200メッシュ、99.9%、三津和化学薬品
硫化スズ(SnS2):99.5%、三津和化学薬品
硫化チタン(TiS2):99.9%、高純度化学研究所
硫化ニオブ(NbS2):99%、高純度化学研究所
硫黄粉末:99%、和光純薬工業。
[実施例1:Li2SnS3粉末の合成]
アルゴン雰囲気(大気非暴露)のグローブボックス中において、市販の硫化リチウム(Li2S)粉末及び硫化スズ(SnS2)粉末を、それぞれモル比で1: 1となるように秤量・混合し、その後、直径4mmのジルコニアボール約500個(90g)を入れた45mLのジルコニア容器を用いて、ボールミル装置(フリッチュ P-7、クラシックライン)で510rpm、50時間のメカニカルミリング処理を行うことでLi2SnS3粉末を得た。なお、上記メカニカルミリング処理は、雰囲気制御用オーバーポット中で、1時間のミリング処理を、15分間の休止を挟みながら合計50回行った。
[実施例2:Li3SnS4粉末の合成]
アルゴン雰囲気(大気非暴露)のグローブボックス中において、市販の硫化リチウム(Li2S)粉末、硫化スズ(SnS2)粉末及び硫黄粉末(S (=1/8S8) )を、それぞれモル比で1.5: 1: 0.5となるように秤量・混合し、その後、直径4mmのジルコニアボール約500個(90g)を入れた45mLのジルコニア容器を用いて、ボールミル装置(フリッチュ P-7、クラシックライン)で510rpm、50時間のメカニカルミリング処理を行うことでLi3SnS4粉末を得た。なお、上記メカニカルミリング処理は、雰囲気制御用オーバーポット中で、1時間のミリング処理を、15分間の休止を挟みながら合計50回行った。
[試験例1:X線回折(その1)]
実施例1〜2で得られた粉末について、CuKα線を用いたX線回折(XRD)を測定した。結果を図1に示す。参考のため、図1には、原料として用いた硫化リチウム(Li2S)、硫化スズ(SnS2)及び硫黄のピークもあわせて示す。また、既報(Chem. Mater. 27, 189-196 (2015))のLi2SnS3(C2/c)のピークも示す。なお、XRD測定においては、作製した試料の大気暴露を避けるため、ポリマー製の大気非暴露フォルダーを用いて行ったため、2θ= 10〜25°付近にはポリマーによる影響も一部確認されている可能性がある。
図1に示すX線回折図では、実施例のLi2SnS3粉末及びLi3SnS4粉末のいずれにおいても、Li2S、SnS2及びS8の出発物質に対応する回折ピークは、メカニカルミリングによって消失し、代わりにいくつかの新しいピークが現れた。具体的には、いずれの場合も、33.9°に最強ピークを有し、48.8°に2番目に強いピークを有する他、60.8°及び71.7°の位置にもピークを有していた。得られた結晶相は、空間群:
で帰属され、既報のLi2SnS3粉末に見られる単斜晶ではなく、立方晶岩塩型構造の新結晶相が得られていることが分かる。なお、格子定数は約5.27Åであった。なお、Li2SnS3粉末はLi2SnS3相単独相である一方、Li3SnS4粉末には、25.5°の位置にもピークが認められ、Li2SnS3相とLi4SnS4相との二相構造を取ることが理解できる。実施例1及び2における33.9°のピークの半値幅(全値半幅)はそれぞれ、0.9°、0.7°であった。
イオン伝導度測定
実施例1及び2で得られたLi2SnS3及びLi3SnS3粉末80mgに対して直径10mmの錠剤成型器で一軸油圧プレス機を用いて、室温(25℃)330MPaで1分間加圧成形することで、イオン伝導度測定用の加圧成形体を得た。得られた加圧成型体に対してステンレススチールをブロッキング電極として用いた交流インピーダンス測定を行うことで、25℃におけるイオン伝導度を測定した。実施例1のLi2SnS3粉末の室温加圧成型体は7.40×10-7 S cm-1、実施例2のLi3SnS4組成粉末の室温加圧成型体は6.81×10-6 S cm-1のイオン伝導度を有することが分かった。
[実施例3:Li3NbS4-Li2SnS3固溶体(Li3-yNb1-ySnyS4-y; Li3-x/3Nb1-xSn4x/3S4)の合成]
Li 3 NbS 4 (y= 0; x= 0)
アルゴン雰囲気(大気非暴露)のグローブボックス中において、市販の硫化リチウム(Li2S)粉末、硫化ニオブ(NbS2)粉末及び硫黄粉末を、それぞれモル比で1.5: 1: 0.5となるように秤量・混合し、その後、直径4mmのジルコニアボール約500個(90g)を入れた45mLのジルコニア容器を用いて、ボールミル装置(フリッチュ P-7、クラシックライン)で510rpm、50時間のメカニカルミリング処理を行うことでLi3NbS4粉末を得た。なお、上記メカニカルミリング処理は、雰囲気制御用オーバーポット中で、1時間のミリング処理を、15分間の休止を挟みながら合計50回行った。
Li 2.75 Nb 0.75 Sn 0.25 S 3.75 (y= 0.25; x= 0.20)
アルゴン雰囲気(大気非暴露)のグローブボックス中において、市販の硫化リチウム(Li2S)粉末、硫化ニオブ(NbS2)粉末、硫化スズ(SnS2)粉末及び硫黄粉末を、それぞれモル比で1.375: 0.75: 0.25: 0.375となるように秤量・混合し、その後、直径4mmのジルコニアボール約500個(90g)を入れた45mLのジルコニア容器を用いて、ボールミル装置(フリッチュ P-7、クラシックライン)で510rpm、50時間のメカニカルミリング処理を行うことでLi2.75Nb0.75Sn0.25S3.75粉末(0.75Li3NbS4・0.25Li2SnS3)を得た。なお、上記メカニカルミリング処理は、雰囲気制御用オーバーポット中で、1時間のミリング処理を、15分間の休止を挟みながら合計50回行った。
Li 2.5 Nb 0.5 Sn 0.5 S 3.5 (y= 0.50; x= 0.43)
アルゴン雰囲気(大気非暴露)のグローブボックス中において、市販の硫化リチウム(Li2S)粉末、硫化ニオブ(NbS2)粉末、硫化スズ(SnS2)粉末及び硫黄粉末を、それぞれモル比で1.25: 0.5: 0.5: 0.25となるように秤量・混合し、その後、直径4mmのジルコニアボール約500個(90g)を入れた45mLのジルコニア容器を用いて、ボールミル装置(フリッチュ P-7、クラシックライン)で510rpm、50時間のメカニカルミリング処理を行うことでLi2.5Nb0.5Sn0.5S3.5粉末(0.5Li3NbS4・0.5Li2SnS3)を得た。なお、上記メカニカルミリング処理は、雰囲気制御用オーバーポット中で、1時間のミリング処理を、15分間の休止を挟みながら合計50回行った。
Li 2.25 Nb 0.25 Sn 0.75 S 3.25 (y= 0.75; x= 0.69)
アルゴン雰囲気(大気非暴露)のグローブボックス中において、市販の硫化リチウム(Li2S)粉末、硫化ニオブ(NbS2)粉末、硫化スズ(SnS2)粉末及び硫黄粉末を、それぞれモル比で1.125: 0.25: 0.75: 0.125となるように秤量・混合し、その後、直径4mmのジルコニアボール約500個(90g)を入れた45mLのジルコニア容器を用いて、ボールミル装置(フリッチュ P-7、クラシックライン)で510rpm、50時間のメカニカルミリング処理を行うことでLi2.25Nb0.25Sn0.75S3.25粉末(0.25Li3NbS4・0.75Li2SnS3)を得た。なお、上記メカニカルミリング処理は、雰囲気制御用オーバーポット中で、1時間のミリング処理を、15分間の休止を挟みながら合計50回行った。
Li 2 SnS 3 (y= 1; x= 1)
実施例1のLi2SnS3粉末を用いた。
[試験例2:X線回折(その2)]
実施例3で得られた各粉末について、CuKα線を用いたX線回折(XRD)を測定した。結果を図2に示す。なお、XRD測定においては、作製した試料の大気暴露を避けるため、ポリマー製の大気非暴露フォルダーを用いて行ったため、2θ= 10〜25°付近にはポリマーによる影響も一部確認されている可能性がある。
実施例1で得られたLi2SnS3粉末は、国際公開第2014/148432号で開示された立方晶岩塩型Li3NbS4と同様の構造を有していた。このため、Li2SnS3とLi3NbS4との固溶体が得られるかどうか実験を行った。この結果、全てのパターンは立方晶岩塩型構造の結晶相として同定することができ、陽イオンであるLiイオン、Nbイオン及びSnイオンは、Fm-3m空間群の4aサイトをランダムに共有している。なお、ピーク位置は、Sn含有量の増加とともに徐々に低角度側にシフトしていた。
次に、各粉末の格子定数を評価した。格子定数は、TOPASプログラム(Bruker AXS)を用いて、立方晶岩塩型構造の結晶相のX線回折パターンのフィッティングにより評価した。結果を図3に示す。この結果、格子定数は、Li2SnS3組成の増加とともに増大することが理解できる。
次に、各粉末の格子定数、密度、導電率及び放電容量を評価した。結果を表1に示す。なお、密度としては、X線回折分析から得られた格子定数からdXRDと、ガス比重計を用いて測定した粉末真密度(粉体密度)dPOWとを評価した。放電容量は、後述の試験例3の結果を採用した。この結果、dPOWの結果は、dXRDの結果と整合していることが理解できる。また、表1の結果は、実施例1で得られたLi2SnS3粉末が、立方晶岩塩型Li3NbS4と固溶体を形成していることを示唆している。なお、電子伝導率は、Snの含有量が増大するに伴い、1.31×10-2 Scm-1から測定困難な水準(10-8Scm-1以下)まで減少し、表1中、x= 1で示される粉末、すなわちLi2SnS3粉末は電解質として有用であり、表1中、x= 0.25〜0.75で示される粉末、すなわちLi2SnS3とLi3NbS4との固溶体は電極活物質として有用であることが理解できる。
次に、高エネルギーX線を用いて透過法によるX線回折(XRD)を行うと、比較的低角度の回折実験において、試料表面(表面の粗さ等)の影響を受けにくく、且つ、大気非暴露フォルダーの影響を低減することができる。また、二体相関関数解析を行うことで、短距離の構造の情報を得ることができる。実施例3で得た各粉末を、38keVのX線を使用したX線回折測定より得られた二体分布関数g(r)を図4に示す。いずれの試料も、2.45〜2.50Åに最強ピーク(Nb-S又はSn-S相間に帰属できるピーク)が確認された。これらの位置は、格子定数の1/2よりも短いことから、Li-S距離>Sn-S距離>Nb-S距離であることが示唆される。また、Li2SnS3粉末のプロファイルは、立方晶岩塩型構造の結晶相の予想されるプロファイルと一致した。これらのプロファイルは、組成の変化に対応して連続的に変化した。これらの結果からも、実施例1で得られたLi2SnS3粉末が、立方晶岩塩型Li3NbS4と固溶体を形成していることを示唆している。
[試験例3:充放電試験]
次に、実施例3で得た各粉末を電極活物質(正極活物質)として用いて、以下の方法で電気化学セルを作製し、電流密度20mA/gにおいて、定電流充放電測定を行った。
電気化学セルの作製方法としては、まず、作用極は、実施例4で得られた各硫化物粉末に対して、アセチレンブラックとバインダーであるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を、硫化物粉末: アセチレンブラック: PTFE= 84: 8: 8の質量比になるように加え、乳鉢で15分間混練した後、アルミニウムメッシュに張り付けることで作製した。セパレータとしてはポリプロピレンを用い、対極としてはリチウムを用いた。電解液としては、1mol dm-3のヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)をエチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)との質量比1: 1の混合溶媒に溶解させたもの(1M LiPF6 EC/DMC)を用いた。結果を図5に示す。この結果、x= 1で示される粉末、すなわちLi2SnS3粉末は充放電容量が小さいことからも固体電解質として有用であり、また、x= 0.25〜0.75で示される粉末、すなわちLi2SnS3とLi3NbS4との固溶体は充放電容量及びサイクル特性に優れており電極活物質として有用であることが理解できる。なかでも、x= 0.25〜0.43で示される粉末は、Li3NbS4粉末と比較しても遜色のない程度の充放電容量及びサイクル特性を有していた。
[実施例4:Li2TiS3-Li2SnS3固溶体(Li2Ti1-xSnxS3)の合成]
Li 2 TiS 3 (x= 0)
アルゴン雰囲気(大気非暴露)のグローブボックス中において、市販の硫化リチウム(Li2S)粉末及び硫化チタン(TiS2)粉末を、それぞれモル比で1: 1となるように秤量・混合し、その後、直径4mmのジルコニアボール約500個(90g)を入れた45mLのジルコニア容器を用いて、ボールミル装置(フリッチュ P-7、クラシックライン)で510rpm、50時間のメカニカルミリング処理を行うことでLi2TiS3粉末を得た。なお、上記メカニカルミリング処理は、雰囲気制御用オーバーポット中で、1時間のミリング処理を、15分間の休止を挟みながら合計50回行った。
Li 2 Ti 0.75 Sn 0.25 S 3 (x= 0.25)
アルゴン雰囲気(大気非暴露)のグローブボックス中において、市販の硫化リチウム(Li2S)粉末、硫化チタン(TiS2)粉末、及び硫化スズ(SnS2)粉末を、それぞれモル比で1: 0.75: 0.25となるように秤量・混合し、その後、直径4mmのジルコニアボール約500個(90g)を入れた45mLのジルコニア容器を用いて、ボールミル装置(フリッチュ P-7、クラシックライン)で510rpm、50時間のメカニカルミリング処理を行うことでLi2Ti0.75Sn0.25S3粉末(0.75Li2TiS3・0.25Li2SnS3)を得た。なお、上記メカニカルミリング処理は、雰囲気制御用オーバーポット中で、1時間のミリング処理を、15分間の休止を挟みながら合計50回行った。
Li 2 Ti 0.5 Sn 0.5 S 3 (x= 0.50)
アルゴン雰囲気(大気非暴露)のグローブボックス中において、市販の硫化リチウム(Li2S)粉末、硫化ニオブ(NbS2)粉末、及び硫化スズ(SnS2)粉末を、それぞれモル比で1: 0.5: 0.5となるように秤量・混合し、その後、直径4mmのジルコニアボール約500個(90g)を入れた45mLのジルコニア容器を用いて、ボールミル装置(フリッチュ P-7、クラシックライン)で510rpm、50時間のメカニカルミリング処理を行うことでLi2Ti0.5Sn0.5S3粉末(0.5Li2TiS3・0.5Li2SnS3)を得た。なお、上記メカニカルミリング処理は、雰囲気制御用オーバーポット中で、1時間のミリング処理を、15分間の休止を挟みながら合計50回行った。
Li 2 SnS 3 (x= 1)
実施例1のLi2SnS3粉末を用いた。
[試験例4:X線回折(その3)]
実施例1で得られたLi2SnS3粉末は、国際公開第2014/148432号で開示された立方晶岩塩型Li2TiS3と同様の構造を有していた。このため、Li2SnS3とLi2TiS3との固溶体が得られるかどうか実験を行った。この結果、全てのパターンは立方晶岩塩型構造の結晶相として同定することができ、陽イオンであるLiイオン、Tiイオン及びSnイオンは、Fm-3m空間群の4aサイトをランダムに共有している。
次に、各粉末の格子定数を評価した。格子定数は、TOPASプログラム(Bruker AXS)を用いて、立方晶岩塩型構造の結晶相のX線回折パターンのフィッティングにより評価した。結果を図6に示す。この結果、格子定数は、Li2SnS3組成の増加とともに増大することが理解できる。このことから、実施例1で得られたLi2SnS3粉末が、立方晶岩塩型Li2TiS3と固溶体を形成していることを示唆している。
[試験例5:充放電試験]
次に、実施例5で得た各粉末を電極活物質(正極活物質)として用いて、以下の方法で電気化学セルを作製し、電流密度20mA/gにおいて、定電流充放電測定を行った。
電気化学セルの作製方法としては、まず、作用極は、実施例3で得られた各硫化物粉末に対して、アセチレンブラックとバインダーであるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を、硫化物粉末: アセチレンブラック: PTFE= 84: 8: 8の質量比になるように加え、乳鉢で15分間混練した後、アルミニウムメッシュに張り付けることで作製した。セパレータとしてはポリプロピレンを用い、対極としてはリチウムを用いた。電解液としては、1mol dm-3のヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)をエチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)との質量比1: 1の混合溶媒に溶解させたもの(1M LiPF6 EC/DMC)を用いた。カットオフ電池1.5-3.0Vの充放電試験において、Li2Ti0.75Sn0.25S3(x= 0.25)組成の固溶体では、286 mAh g-1の可逆充放電容量が得られた。このことより得られたLi2Ti0.75Sn0.25S3(x= 0.25)がリチウム二次電池の電極活物質として有用であることが分かった。
[実施例5:単斜晶Li2SnS3の合成]
アルゴン雰囲気(大気非暴露)のグローブボックス中において、実施例1で得られた立方晶岩塩型LSnS3を400℃で1時間加熱し、実施例5のLi2SnS3粉末を得た。
[試験例6:X線回折(その4)]
実施例5で得られた粉末について、CuKα線を用いたX線回折(XRD)を測定した。結果を図7に示す。参考のため、図7には、実施例1で得られた立方晶岩塩型Li2SnS3のピークもあわせて示す。また、立方晶岩塩型Li2SnS3及び単斜晶Li2SnS3粉末の計算によるスペクトルもあわせて示す。なお、XRD測定においては、作製した試料の大気暴露を避けるため、ポリマー製の大気非暴露フォルダーを用いて行ったため、2θ= 10〜25°付近にはポリマーによる影響も一部確認されている可能性がある。
図7に示すX線回折図では、実施例5の粉末の回折ピークは、既報の単斜晶Li2TiS3粉末と酷似しており、既報のLi2SnS3粉末と同様に単斜晶Li2SnS3が得られたことが理解できる。この結果から、実施例1で得られた立方晶岩塩型Li2SnS3は準安定相であることも理解できる。
[試験例7:熱重量分析(TGA)]
実施例1で得られた粉末について、熱重量分析を行った。結果を図8に示す。この結果、650℃付近から著しい重量減少が見られた。このため、密閉容器を用いずに常圧で立方晶岩塩型Li2SnS3を熱処理して単斜晶Li2SnS3を得る場合には、加熱温度は650℃以下とする必要があることが理解できる。従来の単斜晶Li2SnS3の製造方法では、原料を真空封管しつつ約750℃で熱処理をする必要があることと比較すると、より低温且つ簡便に単斜晶Li2SnS3を合成することができた。

Claims (14)

  1. リチウム、スズ及び硫黄を構成元素として含み、
    前記リチウムと前記スズとの組成比(Li/Sn)がモル比で1.5〜3.5であり、
    前記硫黄と前記スズとの組成比(S/Sn)がモル比で2.5〜4.5であり、
    立方晶岩塩型構造の結晶相を有する、リチウムスズ硫化物。
  2. 前記立方晶岩塩型構造の結晶相の格子定数が5.0〜5.4Åである、請求項1に記載のリチウムスズ硫化物。
  3. CuKα線によるX線回折図における回折角2θ= 10°〜80°の範囲内において、±1.0°の許容範囲で、少なくとも、33.9°に最強ピークを有し、48.8°に2番目に強いピークを有する、請求項1又は2に記載のリチウムスズ硫化物。
  4. 前記2θ= 33.9°のピークの半値幅が0.20〜1.05°である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のリチウムスズ硫化物。
  5. 前記リチウムと前記スズとの組成比(Li/Sn)がモル比で1.5〜2.5であり、前記硫黄と前記スズとの組成比(S/Sn)がモル比で2.5〜3.5である立方晶岩塩型構造の結晶相からなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載のリチウムスズ硫化物。
  6. 前記リチウムと前記スズとの組成比(Li/Sn)がモル比で1.5〜2.5であり、前記硫黄と前記スズとの組成比(S/Sn)がモル比で2.5〜3.5である立方晶岩塩型構造の結晶相と、
    前記リチウムと前記スズとの組成比(Li/Sn)がモル比で3.0〜7.0であり、
    前記硫黄と前記スズとの組成比(S/Sn)がモル比で3.0〜5.5であり、25.5°に最強ピーク又は2番目に強いピークを有する結晶相とを有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のリチウムスズ硫化物。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のリチウムスズ硫化物と、
    リチウム、ニオブ及び硫黄を構成元素として含み、立方晶岩塩型構造の結晶相からなるリチウムニオブ硫化物、リチウム、チタン及び硫黄を構成元素として含み、立方晶岩塩型構造の結晶相からなるリチウムチタン硫化物、及びリチウム、チタン、ニオブ及び硫黄を構成元素として含み、立方晶岩塩型構造の結晶相からなるリチウムチタンニオブ硫化物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の硫化物と
    の固溶体からなる、リチウムスズ硫化物含有固溶体。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のリチウムスズ硫化物又はリチウムスズ硫化物含有固溶体の製造方法であって、
    硫化リチウム及び硫化スズを含む原料を用い、メカニカルミリング処理に供する工程
    を備える、製造方法。
  9. 前記硫化リチウムの使用量が、前記硫化スズ1モルに対して、0.5〜2.0モルである、請求項8に記載の製造方法。
  10. 前記原料として、硫化ニオブ及び/又は硫化チタンを用いる、請求項8又は9に記載の製造方法。
  11. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のリチウムスズ硫化物からなるリチウムイオン二次電池用固体電解質。
  12. 請求項7に記載のリチウムスズ硫化物含有固溶体からなるリチウムイオン二次電池用電極活物質。
  13. 請求項11に記載のリチウムイオン二次電池用固体電解質、及び/又は請求項12に記載のリチウムイオン二次電池用電極活物質を用いたリチウムイオン二次電池。
  14. リチウム、スズ及び硫黄を構成元素として含み、前記リチウムと前記スズとの組成比(Li/Sn)がモル比で1.5〜3.5であり、前記硫黄と前記スズとの組成比(S/Sn)がモル比で2.5〜4.5であり、単斜晶構造の結晶相を有するリチウムスズ硫化物の製造方法であって、
    請求項1〜6のいずれか1項に記載のリチウムスズ硫化物を、不活性雰囲気下に300〜650℃で熱処理する工程
    を備える、製造方法。
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