JP6720649B2 - 高強度熱延鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、高強度熱延鋼板及びその製造方法に関する。
鋼の強度を高める強化法として、(1)C、Si、Mnなどの元素の添加による固溶強化、(2)Ti、Nbなどの析出物を利用した析出強化、(3)金属組織を転位強化又は結晶微細粒強化が発現した連続冷却変態組織とすることを利用する組織強化、が有効である。特に、自動車用部材は、軽量化、安全性及び耐久性の向上が進められており、素材である鉄鋼材料の高強度化が要求されている。
固溶強化は、析出強化及び組織強化に比べて強度上昇効果が小さいので、固溶強化のみで自動車用部材の素材に求められるような高強度化は困難である。
これに対し、析出強化については、本来のフェライト相の均一組織の優れた変形能を維持したまま高強度化を図ろうとする技術開発が、近年再び検討され始めた。例えば、Ti、Nb、Moなどの炭化物形成元素を活用し、微細な炭化物を析出させ、フェライト組織を強化する方法が提案されている(例えば、特許文献1〜3)。フェライトを主体とする転位密度の比較的低い組織中に、強度を向上させる微細な炭化物を析出させて析出強化による高強度化を図るものである。
これらの方法によると、析出強化を発現させるためには比較的高温で変態したフェライト組織とすることが必要である。転位強化を発現させるためには低温で変態させることが必要であるので、析出強化と転位強化を共に発現させることは困難であった。
一方で、比較的低温で変態したアシキュラー・フェライト組織からなり、微細な炭化物TiC,NbCが析出した組織を有する伸びフランジ性に優れる高強度鋼板が提案されている(例えば、特許文献4)。
しかし、熱延鋼板の高強度化に伴い、鋼板を打ち抜き加工して形成された穴の端面にハガレ又はメクレの欠陥が発生することが問題となっている。これらの欠陥は製品端面の意匠性を著しく損なうばかりか、応力集中部となって疲労強度などにも影響を及ぼす危険性がある。
以上のような問題に対して、加工時の結晶粒界での破壊を抑えるために、Bを添加したり、Pの添加量を制限したりすることで、打ち抜き端面の損傷の発生を抑えた高強度熱延鋼板が開発された(特許文献5、6)。さらに、フェライトの大角結晶粒界におけるC、又はCおよびBの偏析量を制御することで、極めて厳しい条件で打ち抜き加工を行った場合でも打ち抜き端面の損傷の発生を防止することのできる高強度熱延鋼板が開発された(特許文献7、8)。
なお、非特許文献1には、X線回折を測定して得られた結晶格子の歪を用いて、転位密度を算出することが提案されている。
特開2003−89848号公報 特開2007−262487号公報 特開2007−247046号公報 特開平7−11382号公報 特開2004−315857号公報 特開2005―298924号公報 特開2008−261029号公報 特開2008−266726号公報
G. K. Williamson and R. E. Smallman、「Dislocation densities in some annealed and cold-worked metals from measurements on X-ray Debye-Scherrer spectrum」、Philosophical Magazine、8巻、1956年、p.34−46
しかし、特許文献5〜8においては、析出強化と組織強化の両方の活用について検討は十分なされていなかった。析出強化鋼において高強度化は一般的には合金元素の含有量増加により析出強化量を増やす方法が考えられるが、コストが高くなるばかりか加工性等が劣化し、打ち抜き加工時の鋼板打ち抜き端面が損傷する恐れがあった。合金元素の含有量を抑えつつも更なる高強度化に検討の余地があった。
そこで、本発明は、鋼板の打ち抜き端面の損傷を抑えつつ、780MPa以上の引張強度を有する高強度熱延鋼板及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、変態による鋼板の転位密度を高めつつ、変態後に微細なTiC析出物の析出を狙った。そのために、鋼にBを含有させることにより、通常の冷却では600℃以下の低温で変態して生成する転位密度の高いベイニティックフェライトを、従来よりも高温で得やすくなることに着目した。一方で、変態後にも600℃以上であれば、TiC析出物の析出が可能であることに着目した。さらに、転位上に析出すると析出強化が有効に発揮されないため、TiC析出物は転位上ではない母相に析出させることで、転位強化と析出強化を効率良く発現させることを狙った。
そして、本発明者らは、高い転位密度による転位強化と、転位上ではない母相にTiC析出物を形成させることによる析出強化と、の両者を効率良く発現させて、合金元素を有効に活用することで、合金元素の含有量を抑えることができ、合金コストの低減が可能になるだけでなく、合金元素の含有に起因する加工性の低下も抑え、鋼板の打ち抜き端面の損傷の発生が抑制できることを見出した。
本発明は、このような知見に基づいてなされたものであり、その要旨は以下の通りである。
(1) 質量%で、
C:0.03〜0.08%、
Si:0.01〜1.50%、
Mn: 0.1〜1.5%、
Ti:0.05〜0.15%、
B:0.0002〜0.0030%、
P:0.1%以下、
S:0.005%以下、
Al:0.5%以下、
N:0.009%以下、
Nb、MoおよびVの合計:0〜0.02%、並びに、
CaおよびREMの合計:0〜0.01%
を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、かつ、C含有量に対するTi含有量の質量比Ti/Cが0.625〜3.000である化学成分を有し、
転位密度が1×1014〜1×1016−2であり、
結晶粒内のTiC析出物の平均直径が2.0nm以下であり、
結晶粒内のTiC析出物の平均個数密度が1×1017〜5×1018[個/cm]であり、
結晶粒内において、転位上ではない母相に析出しているTiC析出物として存在するTiの含有量が鋼板の全Ti含有量の30質量%以上であり、
引張強度が780MPa以上である高強度熱延鋼板。
(2) ベイニティックフェライトとフェライトとの合計の面積率が90%以上である(1)に記載の高強度熱延鋼板。
(3) ベイニティックフェライトの面積率が80%以上である(1)又は(2)に記載の高強度熱延鋼板。
(4) 前記化学成分を有する鋼片を、1200℃以上に加熱し、最終加工温度FT[℃]を970℃以上として熱間圧延する熱間圧延工程と、
前記熱間圧延した鋼板を、熱間圧延終了後に3〜5秒の間、空冷する空冷工程と、
前記空冷した鋼板を、冷却速度50℃/s以上で670〜720℃の範囲内の温度MT[℃]まで一次冷却し、続いて冷却速度5℃/s以下の冷却速度で5〜10秒間二次冷却し、続いて冷却速度30℃/s以上で500℃〜600℃の範囲内の温度CT[℃]まで三次冷却する冷却工程と、
前記三次冷却後、冷却した鋼板を巻取る巻取工程と、
を有する(1)〜(3)のいずれか1項に記載の高強度熱延鋼板の製造方法。
本発明によれば、引張強度が高く、かつ打ち抜き加工時の鋼板の打ち抜き端面の損傷が発生しにくい高強度熱延鋼板及びその製造方法を提供することができる。
(A)は転位上のTiC析出物の配列、および(B)は母相のTiC析出物の配列の模式図を示す。
本発明者らは、TiC析出物(以下「析出物」とも称する。)が形成される位置に注目し検討を行った。析出物が形成される位置として、析出物が、結晶粒界に析出して形成される場合と、結晶粒内において、転位上に析出して形成される場合と、結晶粒内において、転位上ではない母相(以下、単に「母相」とも称する)に均一に析出して形成される場合と、を考えた。通常の数マイクロメートル以上の結晶粒径を有する鋼は、結晶粒界の密度は低く、結晶粒界の析出物は強化に寄与しないと考えられる。本発明者らは、析出物が形成される位置と、析出物サイズと、個数密度と、鋼材の強度と、の関係について詳細に検討を行った。転位上に析出するか、母相に均一に析出するかは、熱間圧延の温度及び化学成分、析出物形成元素の過飽和度及び拡散長、並びに転位密度等に依存すると考えられる。
そこで、本発明者らは、次の実験を実施した。
表1に示す成分からなるa鋼、及びb鋼を作製した。a鋼、及びb鋼に対して、1250℃の溶体化熱処理を施し、最終加工温度FT[℃]を970℃とする熱間圧延を施した後、オーステナイトの再結晶を目的として3秒の空冷(保持)を行い、表2に示すように鋼板の変態温度制御および熱延コイルの巻取模擬を目的とし3段の冷却処理[50℃/sの冷却速度で冷却し600℃〜800℃(一時冷却停止温度)で冷却を停止した後、冷却速度5℃/s以下で10秒間空冷し、続けて50℃/sの冷却速度で550℃(巻取温度)まで冷却する冷却処理]を行い、1時間の保持を行った。
得られた試験片JIS Z 2201に準拠して5号試験片を採取した。引張試験をJIS Z 2241に準拠して行い、引張強度を測定した。
次に、金属組織の観察は、試料を鏡面研磨し、ナイタールエッチングを施して、光学顕微鏡を用いて行った。
転位密度の測定にはX線回折を用い、試料の板厚1/4の位置を板表面(圧延面)と水平な面となるように鏡面研磨して測定した。そして、X線回折測定から得られる歪から、非特許文献1に記載されている次式により転位密度ρを求めた。
式:ρ=14.4ε/b
ここで、式中、εはX線回折測定から得られる歪、bはバーガースベクトル(0.25nm)である。
また、結晶粒内に析出したTiC析出物の平均直径(以下「サイズ」とも称する)の測定、結晶粒内に析出したTiC析出物の平均個数密度の測定、およびTiC析出物の形成位置の決定は、三次元アトムプローブ測定法により、以下のようにして行った。
まず、測定対象の試料から、切断および電解研磨法により、必要に応じて電解研磨法と併せて集束イオンビーム加工法を活用し、針状の試料を作製した。針状試料に対し三次元アトムプローブ測定を行った。三次元アトムプローブ測定では、積算されたデータが再構築され実空間での実際の原子の分布像が得られる。
そして、TiC析出物の形成位置を確認し、TiC析出物の立体分布像の体積とTiC析出物の数から、結晶粒内に析出したTiC析出物の個数密度を求めた。そして、この操作を5回実施した平均値を「結晶粒内に析出したTiC析出物の平均個数密度」とした。
また、TiC析出物同士の立体配置から、列状に配置している場合は転位上のTiC析出物(転位上に析出したTiC析出物)と判断し、独立して配置している場合は転位上ではない母相へのTiC析出物(転位上ではない母相に析出したTiC析出物)と判断した。図1(A)に転位上のTiC析出物の配列、および図1(B)に転位上ではない母相へのTiC析出物の配列の模式図を示す。転位上ではない母相に析出したTiC析出物を構成するTi原子数と、鋼板のTi含有量とから、転位上ではない母相のTiC析出物として存在するTiの含有量の比率(鋼板の全Ti含有量に対する質量比)を計算した。なお、表2中、このTiの含有量の比率を「母相析出Ti成分比」と表記する。
また、結晶粒内に析出したTiC析出物のサイズは、観察されたTiC析出物の構成原子数とTiCの格子定数から、TiC析出物を球状と仮定し算出した直径(球相当直径)である。任意に30個以上のTiC析出物の直径を測定し、その平均値を求めた。
表2に、表1に示したa鋼、b鋼を用いて上述の実験を行った結果を示す。b鋼の一次冷却停止温度が800℃では、TiC析出物は全て転位上に比較的大きなサイズで生成していた。b鋼の一次冷却停止温度が760℃および720℃では、TiC析出物は転位上に生成している場合と、母相に微細に析出している場合とが含まれ、一次冷却停止温度が低くなるにつれて母相に析出する比率が上昇した。母相に析出する場合は転位上に析出する場合に比べて、TiC析出物の個数密度が非常に高くなることがわかった。b鋼の一次冷却停止温度が680℃では、TiC析出物は全て母相の高個数密度微細析出物であった。b鋼の一次冷却停止温度が640℃では、母相の高個数密度微細析出物に加えて、転位上に小さなサイズのTiC析出物が低個数密度に析出している場合があった。b鋼の一次冷却停止温度が600℃では、TiC析出物はほとんど析出しておらず、転位上に低個数密度で析出しているのみであった。
これに対しa鋼は、b鋼と同じように、一次冷却温度が800℃では比較的大きなサイズのTiC析出物が転位上に析出し、760〜670℃では一次冷却停止温度が低下するに従い母相に高個数密度に析出する場合が増加し、640℃では母相の高個数密度の析出物と転位上に小さなサイズのTiC析出物が低個数密度に析出する場合とがあり、600℃では転位上に低個数密度に析出しているのみであった。
しかしながら、a鋼は、b鋼に比較して一次冷却の停止温度が720〜760℃の高温のときまで転位密度が高くなる傾向にあった。転位密度が影響し、a鋼では鋼の全Ti含有量に対する転位上のTiC析出物として存在するTiの比率が、b鋼よりも高くなったと考えられる。しかし、a鋼において母相にTiC析出物が析出する比率を高めた場合には引張強度が非常に大きくできることがわかった。
転位密度と共に、a鋼において母相にTiC析出物が析出する比率を高めた場合に引張強度が非常に大きくなる理由は以下のように推測した。まず、母相にTiC析出物が析出する比率を高めれば、TiC析出物の個数密度を高くすることができ、析出強化量を大きくできる。さらにa鋼においては、Bを含有した影響で一次冷却の停止温度が比較的高温でも、転位密度を高くすることができ、大きな転位強化量を得ることができる。a鋼では、共に大きく発現させることは困難であった析出強化と転位強化の両方を大きく発現させることで、大きな引張強度を得ることができたと考えられる。更には、転位上にTiC析出物が存在した場合には障害物としての転位とTiC析出物との位置が重なってしまうために強化量が抑えられてしまうのに対し、転位上ではない母相にTiC析出物が析出することで転位とTiC析出物とのいずれもが変形時の障害物として有効に作用し、析出強化をより有効に活用できるからと考えられる。
なお、一次冷却の停止温度が高温のときほどTiC析出物は転位上に粗大に析出し易く、一次冷却の停止温度が低温のときほどTiC析出物は析出し難くいが、転位上ではない母相にTiC析出物が密に且つ微小に析出する一次冷却の停止温度の温度域が存在する。本来、転位密度は一次冷却の停止温度が高温のときほど低下する傾向があり、Bを含有していないb鋼のように、その温度域では高い転位密度が得られない。しかし、Bを含有させたa鋼はb鋼に比べ、転位上ではない母相にTiC析出物が密に且つ微小に析出する一次冷却の停止温度の温度域まで温度を高めても、高い転位密度が得られたと考えられる。これにより、上述のように析出強化と転位強化との両方の効率良い発現が実現されると考えられる。
また、析出強化と転位強化との両方の効率良い発現により、合金元素を有効に活用することで、合金元素の含有量を低減でき、合金元素に起因する加工性の低下も抑えられると考えられる。
以上の知見により、本発明者らは、次の高強度熱延鋼板を見出した。
すなわち、本発明の好適な実施形態の高強度熱延鋼板(以下「鋼板」とも称する)は、質量%で、C:0.03〜0.08%、Si:0.01〜1.50%、Mn: 0.1〜1.5%、Ti:0.05〜0.15%、B:0.0002〜0.0030%、P:0.1%以下、S:0.005%以下、Al:0.5%以下、N:0.009%以下、Nb、MoおよびVの合計:0〜0.02%、並びに、CaおよびREMの合計:0〜0.01%を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、かつ、C含有量に対するTi含有量の質量比Ti/Cが0.625〜3.000である化学成分を有し、転位密度が1×1014〜1×1016−2であり、結晶粒内のTiC析出物の平均直径が2.0nm以下であり、
結晶粒内のTiC析出物の平均個数密度が1×1017〜5×1018[個/cm]であり、結晶粒内において、転位上ではない母相に析出しているTiC析出物として存在するTiの含有量が鋼板の全Ti含有量の30質量%以上であり、引張強度が780MPa以上である。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
まず、本発明の好適な実施形態の高強度熱延鋼板の化学成分について説明する。なお、化学成分の説明において、「%」は「質量%」を意味する。
(C:0.03〜0.08%)
Cは、微細なTiC析出物を生じて析出強化に寄与する重要な元素であり、また結晶粒界に偏析して鋼板の打ち抜き端面の損傷の発生を抑えるために必要な元素であり、0.03%以上の含有が好ましい。一方、C含有量が0.08%を超えると、粗大なセメンタイトが生じ、延性、特に、局部延性が低下する。よって、C含有量は0.03〜0.08%とし、好ましくは0.04〜0.06%とする。
(Si:0.01〜1.50%)
Siは、脱酸元素であり、0.01%以上含有する。また、Siは固溶強化に寄与する元素であるが、含有量が1.50%を超えると加工性が劣化するため、Si含有量の上限を1.50%とする。よって、Si含有量は0.01〜1.50%とし、好ましくは0.02〜1.30%とする。
(Mn: 0.1〜1.5%)
Mnは、脱酸、脱硫に有効な元素であり、固溶強化にも寄与するため、0.1%以上含有する。一方、Mn含有量が1.5%を超えると、偏析が生じ易くなり加工性が低下し、またコストが上昇するため好ましくない。よって、Mn含有量は0.1〜1.5%とし、好ましくは0.3〜1.4%とする。
(Ti:0.05〜0.15%)
Tiは、フェライトおよびベイニティックフェライトの粒内に微細なTiC析出物を析出し、析出強化に寄与する極めて重要な元素である。母相に析出して強度を上昇させるため、0.05%以上含有する。一方、0.15%を超えるTiが含有すると、コストが増加するばかりか、TiC析出物が粗大化しやすくなり、製造を難しくする。このため、本発明の好適な実施形態の析出物サイズおよび個数密度を達成するためには、Ti含有量は0.15%以下とすることが好ましい。よって、Ti含有量は0.05〜0.15%とし、好ましくは0.07〜0.13%とする。
(B:0.0002〜0.0030%)
Bは、ベイニティックフェライトを得るために重要な元素であり、B含有量が0.0002%以上でその効果が得られる。一方、B含有量0.003%を超えると、BN等の析出物を生じやすくなり効果は飽和するため0.0030%以下とする。よって、B含有量は0.0002〜0.0030%とし、好ましくは0.0005〜0.0020%とする。
(P:0.1%以下)
Pは、不純物であり、加工性や溶接性を損なうため、0.1%以下に制限する。特に、Pは粒界に偏析して延性を低下させるため、P含有量を0.02%以下に制限することが好ましい。ただし、脱Pコストの観点から、P含有量は0.005%以上とすることが好ましい。
(S:0.005%以下)
Sは、不純物であり、特に、熱間加工性を損なうため、0.005%以下に制限する。硫化物などの介在物による延性の低下を抑制するためには、S含有量を0.002%以下に制限することが好ましい。ただし、脱Sコストの観点から、S含有量は0.0005%以上とすることが好ましい。
(Al:0.5%以下)
Alは、脱酸剤であり、0.5%以下を含有させる。なお、Alが過剰に含有すると窒化物を形成し、延性が低下するため、0.15%以下に制限することが好ましい。なお、溶鋼の脱酸を十分に行うためには、0.002%以上を含有することが好ましい。
(N:0.009%以下)
Nは、TiNを形成し、鋼の加工性を低下させるため、また、TiC析出物を形成する有効なTi含有量の低下を招くため、0.009%以下に制限することが好ましい。ただし、脱Nコストの観点から、N含有量は0.001%以上とすることが好ましい。
(Nb、MoおよびVの合計:0〜0.02%)
Nb、V、及びMoは、鋼板に任意に含む任意元素である。Nb、V、及びMoもTiと同様にフェライト結晶粒内に炭化物を析出する元素であるが、Nb、Mo、及びVともに合金コストが高い割に見合った析出強化能はTiより小さい。よって、Nb、Mo及びVの合計の含有量は0〜0.02%とする。
なお、鋼中でこれらの元素はTiC析出物と複合し、(Ti,M)Cとして存在する。ここで、MはNb、V、及びMoの一種または二種以上である。
(CaおよびREMの合計:0〜0.01%)
CaおよびREMは、鋼板に任意に含む任意元素である。CaおよびREMは介在物の形態を制御する機能を有する元素である。ただし、CaおよびREMの合計の含有量は0〜0.01%以下とする。
なお、REMは、Sc、Yおよびランタノイドの合計17元素を指し、その少なくとも1種である。上記REMの含有量はこれらの元素の少なくとも1種の合計含有量を意味する。ランタノイドの場合、工業的にはミッシュメタルの形で添加される。
(不純物)
不純物とは、原材料に含まれる成分、または、製造の過程で混入する成分であって、意図的に鋼板に含有させたものではない成分を指す。例えば、不純物としては、スクラップから混入する可能性がある、Ni、Cu、Sn等が挙げられる。Ni、Cu、Sn等の不純物の許容範囲は、それぞれ0.01%以下である。
(C含有量に対するTi含有量の質量比Ti/C)
C含有量に対するTi含有量の質量比Ti/Cは3.000以下とすることが重要である。これは原子数の比率に換算するとTi/Cが約0.75以下に相当する。従来の析出強化鋼板では、TiC析出物を析出させるために、C含有量に対してTi含有量を過剰に含有させていた。しかし、Tiをなるべく鋼中に固溶として残存させずに、TiC析出物としてTiの析出を促進させ、析出強化に有効に寄与させるためには、TiをCに対して過剰にならないように含有させることが必要である。また、質量比Ti/Cが3.000を超えるとTiC析出物が十分析出しした際には、結晶粒界へのCの偏析量が低下し鋼板の打ち抜き端面の損傷が発生しやすくなる。より好ましい質量比Ti/Cの上限は2.5以下である。Ti含有量の下限値が0.05%であり、C含有量の上限値が0.08%であることから、質量比Ti/Cの下限値は0.625以上とする。
次に、本発明の好適な実施形態の高強度鋼板の金属組織について説明する。
本発明の好適な実施形態の鋼板の金属組織は、実質的にベイニティックフェライトとフェライトとからなることが好ましい。実質的にとは面積率にして90%以上を有していることを意味する。つまり、本発明の好適な実施形態の鋼板は、ベイニティックフェライトとフェライトとの合計の面積率(全組織に対する面積率)が90%以上であることが好ましい。更に、ベイニティックフェライトの面積率(全組織に対する面積率)が80%以上であることが好ましい。
ここで、面積率は、次に示す方法により測定される。
まず、鋼板の圧延方向および板厚方向に平行な断面が得られるように切り出した試験片を鏡面研磨し、ナイタール液でエッチングして、金属組織を光学顕微鏡で観察する。マルテンサイト、パーライト等の第二相を認識し、ポイントカウント法により、マルテンサイト、パーライト等の第二相以外の面積率を測定しベイニティックフェライトとフェライトとの合計の面積率とする。
次に、フェライトの面積率の測定には、さらに電解研磨した試験片を用いる。続いてEBSP−OIMTM(Electron Back Scatter Diffraction Pattern−Orientation Imaging Microscopy)法を用いて、倍率2000倍、40μm×80μmエリア、測定ステップ0.1μmの測定条件でEBSP測定を実施する。
EBSP−OIMTM法は、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)内で高傾斜した試料に電子線を照射し、後方散乱して形成された菊地パターンを高感度カメラで撮影し、コンピュータ画像処理することにより照射点の結晶方位を短時間で測定する装置およびソフトウェアで構成されている。EBSP測定ではバルク試料表面の結晶方位の定量的解析ができ、分析エリアはSEMで観察できる領域である。数時間かけて測定し、分析したい領域を等間隔のグリッド状に数万点マッピングして行い、試料内の結晶方位分布を知ることができる。
測定結果より、Kernel Average Misorientation(KAM)法を用い、フェライトの面積率を求める。Kernel Average Misorientation(KAM)法は測定データうちのあるピクセルの隣り合う6個のピクセル間の方位差の平均し、その値をその中心のピクセルの値とする計算を各ピクセルに行う。粒界を超えないようにこの計算を実施することで粒内の方位変化を表現するマップを作成できる。すなわち、このマップは粒内の局所的な方位変化に基づくひずみの分布を表している。フェライトは拡散変態よっており、変態ひずみが小さいため、KAM法でその6個のピクセル間の方位差の平均が1°以下のものをフェライトとここでは定義し、面積率を求める。
転位密度は、転位強化を得るため、1×1014−2以上であることが好ましい。一方で1×1016−2を超えると再結晶が起きやすくなり強度が著しく低下する。よって、転位密度は1×1014〜1×1016−2の範囲とする。より好ましくは、2×1014〜2×1015−2である。なお、転位密度の測定方法は既述の通りである。
結晶粒内に析出したTiC析出物の個数密度は、析出強化を活用するため、高いほうが好ましい。よって、転位強化と合わせて引張強度780MPa以上を達成する析出強化を得るためには、TiC析出物の平均個数密度は、1×1017〜5×1018[個/cm]とする。好ましくは2×1017個/cm〜5×1018である。なお、TiC析出物の個数密度の測定方法は既述の通りである。
結晶粒内に析出したTiC析出物の平均直径は、2.0nmを超えると、個数密度が減少するため、析出強化量が低下する。よって、TiC析出物の平均直径は、2.0nm以下とする。好ましくは1.5nm以下である。一方で、TiC析出物の平均直径は、析出強化量を高める観点から、0.8nm以上とすることが好ましい。なお、TiC析出物の平均直径の測定方法は既述の通りである。
転位上ではない母相に析出しているTiC析出物として存在するTiの含有量は、鋼板の全Ti含有量の30質量%以上である。より好ましくは40%以上である。このTiの含有量は、鋼板の全Ti含有量の30質量%以上とは、母相にTiC析出物が析出する比率を高められていることを示し、析出強化と転位強化の両方を大きく発現させ、高い引張強度の鋼板が得られる。一方、Tiの含有量は、高いほど好ましいが、析出物の粗大化を防ぐことがプロセス上難しい観点から、鋼板の全Ti含有量の90質量%以下であることがよい。
なお、「TiC析出物」とは、炭化物だけでなく、炭化物中に窒素が若干混入した炭窒化物も含む。また、「TiC析出物」とは、TiC析出物の中にNb、Mo、及びVの一種又は二種以上が固溶した析出物((Ti,M)C析出物[MはNb、V、及びMoの一種または二種以上])も含む。
次に、本発明の好適な実施形態の鋼板の製造方法について説明する。
本発明の好適な実施形態の鋼板の製造方法は、上記本発明の好適な実施形態の鋼板の化学成分を有する鋼片を、1200℃以上に加熱し、最終加工温度FT[℃]を970℃以上として熱間圧延する熱間圧延工程と、熱間圧延した鋼板を、熱間圧延終了後に3〜5秒の間、空冷する空冷工程と、空冷した鋼板を、冷却速度50℃/s以上で670〜720℃の範囲内の温度MT[℃]まで一次冷却し、続いて冷却速度5℃/s以下の冷却速度で5〜10秒間二次冷却し、続いて冷却速度30℃/s以上で500℃〜600℃の範囲内の温度CT[℃]まで三次冷却する冷却工程と、三次冷却後、冷却した鋼板を巻取る巻取工程と、を有する。
(熱間圧延工程)
熱間圧延工程では、鋼片に、例えば、粗圧延と仕上げ圧延とを経る熱間圧延を施し、熱延鋼板を得る。鋼片は、鋼を常法によって溶製、鋳造し、得られた鋼片を使用する。鋼片は、生産性の観点から、連続鋳造設備で製造することが好ましい。
熱間圧延の加熱温度は、炭化物形成元素(Ti)と炭素を十分に鋼材中に分解溶解させるため、1200℃以上とする。好ましくは1220℃以上である。一方、加熱温度を過度に高温にすることは、経済上好ましくないため、1300℃以下とすることがよい。鋳造後、鋼片を冷却して、1200℃以上の温度で圧延を開始してもよい。1200℃以下に冷却された鋼片を加熱する場合は、1時間以上の保持を行うことが好ましい。
熱間圧延の最終加工温度FT[℃]は、970℃以上とする。これは、高温でのTiC析出物の粗大化を抑制するとともに、加工による転位の回復を促進し冷却中のポリゴナルフェライトの核生成を抑制するためである。熱間圧延の最終加工温度FT[℃]は、高温でのTiC析出物の析出を抑制するため、好ましくは980℃以上とする。ただし、スケール疵の発生を抑制する操業上の観点から、1050℃以下とすることがよい。
なお、最終加工温度FTとは、熱間圧延された圧延板が最終スタンドから排出されたとときの温度を示す。
(空冷工程)
空冷工程では、熱間圧延した鋼板(圧延板)を保持し、空冷する。これは、ベイニティックフェライトをより得やすくするため、オーステナイトの再結晶を促進させるためである。空冷時間が3秒未満であると、未再結晶粒オーステナイトからの変態となるため冷却中のポリゴナルフェライトが生成しやすくなる恐れがある。空冷時間が5秒超であるとオーステナイト中でのTiC析出物の析出が進行し、ベイニティックフェライト中の有効な析出が少なくなってしてしまう恐れがある。よって、空冷は3〜5秒間行う。好ましくは空冷は3〜4秒間行う。
(冷却工程)
冷却工程では、空冷した鋼板を、一次冷却、二次冷却、及び三次冷却を経る冷却を行う。
一次冷却の冷却速度は、50℃/s以上とする。これは冷却中のフェライト変態を抑制し、転位密度の低下の抑制と、変態後のTiC析出物の粗大化に伴う個数密度の低下を抑制するためである。一次冷却の冷却速度は、60℃/s以上が好ましい。一次冷却の冷却速度の上限は、特に定めないが、冷却設備の能力上300℃/s以下が妥当である。
一次冷却の停止温度MT[℃]は、変態に伴う転位密度を高めるため、および変態後の母相(転位上ではない母相)にTiC析出物が析出する比率を高め、TiC析出物の個数密度を高めるために、670℃〜720℃とする。一次冷却の停止温度MT[℃]が720℃を超えると、転位上への析出が促進され、TiC析出物のサイズが大きくなり、TiC析出物の個数密度が低下する。一方で、一次冷却の停止温度MT[℃]が670℃未満になるとTiC析出物の析出が不十分になり、TiC析出物の個数密度が低下する。
二次冷却は、変態とTiC析出物の析出の促進のため、5℃/s以下の冷却速度で行う。二次冷却の冷却速度の下限は、特に定めないが、製造コストの観点から、空冷での冷却速度が好ましい。
二次冷却の冷却時間は、5〜10秒間とする。二次冷却の冷却時間が5秒未満であると変態とTiC析出物の析出が不十分となり、十分な析出強化量が得られない。一方で、二次冷却の冷却時間が10秒を超えるとTiC析出物の析出物が粗大化し、鋼板の引張強度が低下する。二次冷却の冷却時間は、6〜8秒間とすることが好ましい。
三次冷却の冷却速度は、30℃/s以上とする。これは、二次冷却中に生成したTiC析出物の粗大化を防ぐためである。三次冷却の冷却速度は35℃/s以上とすることが好ましい。三次冷却の冷却速度の上限は、特に定めないが、冷却設備の能力上、100℃/s以下が妥当である。
三次冷却の停止温度CT[℃]は、TiC析出物の粗大化を防止するために、600℃以下とする。三次冷却の停止温度CT[℃]が600℃超であると、TiC析出物の粗大化、転位の回復による転位密度の低下が進行し、所望の引張強度を得ることが困難になり、また、鉄炭化物が析出して結晶粒界へのCの偏析量が低下し鋼板の打ち抜き端面損傷が発生しやすくなる。三次冷却の停止温度CT[℃]は、製造のしやすさから500℃以上とする。三次冷却の停止温度CT[℃]は、520〜590℃とすることが好ましい。
(巻取工程)
巻取工程では、冷却した鋼板を巻き取る。鋼板の巻き取りは、特に制限はなく、常法に従って実施すればよい。
(その他の工程)
巻き取り後の鋼板に、1)鋼板形状の矯正や可動転位導入により延性の向上を図ることを目的として、スキンパス圧延、2)鋼板の表面に付着しているスケールの除去を目的として、酸洗、3)めっき処理等の周知の処理を施してもよい。
本発明の好適な実施形態の高強度熱延鋼板及びその製造方法は、780MPa以上の引張強度が求められる、自動車部品等の各種部材に適用可能である。
以下、本発明の好適な実施形態を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。
表3に示した成分組成を有する鋼を溶解し、鋳造した。表3の成分値は化学分析値で質量%である。次に、表4に示した製造条件で、鋼片に熱間圧延を施した後、得られた熱延板の冷却及び巻き取りを施し、熱延鋼板を製造した。
得られた熱延鋼板から、JIS Z 2201に準拠して5号試験片を採取した。引張試験をJIS Z 2241に準拠して行い、引張特性を評価した。
打ち抜き端面損傷の有無は、日本鉄鋼連盟規格JFS T 1001−1996記載の方法でクリアランスを20%として、得られた熱延鋼板を打ち抜き、打ち抜いた端面を目視により観察し、損傷の有無を調べた。
その他、得られた熱延鋼板について、ベイニティックフェライト及びフェライトの面積率、ベイニティックフェライトの面積率、転位密度、結晶粒内のTiC析出物の平均直径、結晶粒内のTiC析出物の平均個数密度、転位上ではない母相に析出しているTiC析出物として存在するTiの含有量(鋼板の全Ti含有量に対するTiの含有量)について、既述の方法に従って測定した。
これら結果を表5に示す。
なお、表4〜表5中の略称の詳細は、次の通りである。
・熱間圧延の終了温度: 最終加工温度FT[℃]
・一次冷却のMT: 一次冷却の停止温度MT
・三次冷却のCT: 三次冷却の停止温度CT
・TiC析出物の粒径: 結晶粒内のTiC析出物の平均直径
・TiC析出物の密度: 結晶粒内のTiC析出物の平均個数密
・母相析出Ti成分比: 転位上ではない母相に析出しているTiC析出物として存在するTiの含有量(鋼板の全Ti含有量に対するTiの含有量(質量%))
上記結果から、試験No.1、2、7、10、12、17は、鋼板の化学成分、金属組織及び製造条件を本発明の好適な実施形態の範囲内とした例であり、高強度であり、打ち抜き端面の損傷比率も小さい。
一方、試験No.3は、一次冷却停止温度が高く、転位上へのTiC析出物の析出が促進され、母相のTiC析出物として存在するTiの比率が低下し、TiC析出物のサイズが大きくなり、個数密度が低下して、引張強度が低下した例である。
試験No.4は、三次冷却の冷却速度が遅く、析出物が粗大化し、引張強度が低下した例である。
試験No.5は、二次冷却の冷却時間が短く、TiC析出物の析出が不十分で、析出物の個数密度が低下し、引張強度が低下した例である。
試験No.6は、二次冷却の冷却時間が長く、析出物が粗大化し、析出物の個数密度が低下し、引張強度が低下した例である。
試験No.8は、三次冷却の停止温度が高く、TiC析出物のサイズが大きくなり、個数密度が低下し、転位の回復により転位密度が低下し、引張強度が低下し、さらに鉄炭化物の析出により打ち抜き端面損傷が発生した例である。
試験No.9は、熱間圧延後の空冷時間が長く、オーステナイト中での粗大なTiC析出物の析出が進行し、ベイニティックフェライト中のTiC析出物の個数密度が低下し、引張強度が低下した例である。
試験No.11は、熱間圧延の終了温度が低く、高温で粗大なTiC析出物が析出し、高温でフェライト変態が促進し転位密度が低下し、TiC析出物のサイズが大きくなり、個数密度が低下し、引張強度が低下した例である。
試験No.13は、一次冷却の停止温度が低く、TiC析出物の析出が不十分で、析出物の個数密度が低下し、母相のTiC析出物として存在するTiの比率が低下し、引張強度が低下した例である。
試験No.14は一次冷却の冷却速度が遅く、高温での変態に伴い、転位密度が低下し、TiC析出物のサイズが大きくなり、母相のTiC析出物として存在するTiの比率が低下し、引張強度が低下した例である。
試験No.15は、一次冷却停止温度が高く、転位上への析出が促進され、母相のTiC析出物として存在するTiの比率が低下し、TiC析出物のサイズが大きくなり、個数密度が低下して、さらに転位密度も低下して、引張強度が低下した例である。
試験No.16は、二次冷却の冷却速度が速く、TiC析出物の析出が不十分で、析出物の個数密度が低下し、母相のTiC析出物として存在するTiの比率が低下し、引張強度が低下した例である。
試験No.18は、熱間加工後の保持時間が短く、一次冷却中のフェライト変態が促進され、転位密度が低下し、TiC析出物のサイズが大きくなり、母相のTiC析出物として存在するTiの比率が低下し、引張強度が低下した例である。
試験No.19はCの含有量が少なく、析出物の個数密度が低下し、引張強度が低下し、また、Ti/Cの比率が高く、打ち抜き端面損傷が発生した例である。
試験No.20は、Bの含有量が少なく、転位密度が低下し、引張強度が低下した例である。
試験No.21はTi/Cの比率が高く、打ち抜き端面損傷が発生した例である。
試験No.22はTiの含有量が少なく、析出物の個数密度が低下し、また母相のTiC析出物として存在するTiの比率が低下し、引張強度が低下した例である。
試験No.23は、Bの含有量が多く、Bの添加効果が薄れ、転位密度が低下し、引張強度が低下した例である。
以上、本発明の好適な実施形態及び実施例について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。

Claims (3)

  1. 質量%で、
    C:0.03〜0.08%、
    Si:0.01〜1.50%、
    Mn: 0.1〜1.5%、
    Ti:0.05〜0.15%、
    B:0.0002〜0.0030%、
    P:0.1%以下、
    S:0.005%以下、
    Al:0.5%以下、
    N:0.009%以下、
    Nb、MoおよびVの合計:0〜0.02%、並びに、
    CaおよびREMの合計:0〜0.01%
    を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、かつ、C含有量に対するTi含有量の質量比Ti/Cが0.625〜3.000である化学成分を有し、
    転位密度が1×1014〜1×1016−2であり、
    結晶粒内のTiC析出物の平均直径が2.0nm以下であり、
    結晶粒内のTiC析出物の平均個数密度が1×1017〜5×1018[個/cm]であり、
    結晶粒内において、転位上ではない母相に析出しているTiC析出物として存在するTiの含有量が鋼板の全Ti含有量の30質量%以上であり、
    ベイニティックフェライトとフェライトとの合計の面積率が90%以上であり
    引張強度が780MPa以上である高強度熱延鋼板。
  2. ベイニティックフェライトの面積率が80%以上である請求項1に記載の高強度熱延鋼板。
  3. 前記化学成分を有する鋼片を、1200℃以上に加熱し、最終加工温度FT[℃]を970℃以上として熱間圧延する熱間圧延工程と、
    前記熱間圧延した鋼板を、熱間圧延終了後に3〜5秒の間、空冷する空冷工程と、
    前記空冷した鋼板を、冷却速度50℃/s以上で670〜720℃の範囲内の温度MT[℃]まで一次冷却し、続いて冷却速度5℃/s以下の冷却速度で5〜10秒間二次冷却し、続いて冷却速度30℃/s以上で500℃〜600℃の範囲内の温度CT[℃]まで三次冷却する冷却工程と、
    前記三次冷却後、冷却した鋼板を巻取る巻取工程と、
    を有する請求項1又は請求項2に記載の高強度熱延鋼板の製造方法。
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