以下に、本発明における溶融用ヒータ(以下、「溶融ヒータ」という。)と溶着機の好ましい実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。図1において、(a)は溶融用ヒータの第1実施形態の取付け状態を示した概略正面図であり、(b)は(a)の概略右側面図である。なお、溶融ヒータは、主に多点溶融用である。
図1に示すように、本例の溶融ヒータは、ヒータプレート1と電極部2、3とを有する溶融ヒータである。ヒータプレート1は、適宜の厚さ、長さ、幅の矩形状を呈した発熱抵抗体であり、本例は導電性セラミック製である。電極部2、3は、ヒータプレート1の両面の所定方向の両端に施され、本例では、上下方向の両端に一対が施されている。また、電極部2、3が施される任意の位置には、表裏両面に貫通する貫通穴4が設けられる。
溶融ヒータの電極部には、対向する電極部に向けて突出させた状態で少なくとも2つの突出電極が設けられている。本例では、図1に示すように、電極部2、3にはそれぞれ、対向する反対側の電極部3、2に向けて突出させた状態で、2つの突出電極部2a、3a及び2つの突出電極部2b、3bが設けられている。本例の4つの突出電極部2a、3a、2b、3bは、それぞれ2つの角部を有する矩形状を呈しており、同図上側の突出電極部2aは角部A1、A3を有し、突出電極部2bは角部A5、A7を有している。同様に、同図下側の突出電極部3aは角部A2、A4を有し、突出電極部3bは角部A6、A8を有している。そして、幾何学的には、突出電極部2a、2bの4つの角部A1、A3、A5、A7、及び突出電極部3a、3bの4つの角部A2、A4、A6、A8は、それぞれ略同一直線上に位置していると共に、角部A1、A3が形成する線分(或は角部A5、A7が形成する線分)と、角部A2、A4が形成する線分(或は角部A6、A8が形成する線分)とは、互いに略平行となっている。なお、本例の角部は、すべて略直角である。
図1の対応領域PAは、ヒータプレート1の発熱面に向けて対向配置された樹脂製ワークにおける溶融接合部となる部位(端面)を、発熱面上に正射影的に投影して形成される領域であり、二か所以上形成される。図1に示した本例の対応領域PAは、後述の図4、5に示した溶着機本体9に、図3に示したボデー5とUチューブ6を樹脂製ワークとしてワーク固定治具12及び13にそれぞれ固定保持して溶着接合する際に、4か所のボデー5の環状端5aと、これらにそれぞれ調芯状態で対向配置される4個所のUチューブ6の環状端6aとを、それぞれヒータプレート1両面の発熱面上に投影した片面4箇所ずつの領域であり、チューブ環状端の端面の投影領域であるからそれぞれ円形状(或は所定の厚みのリング状)領域となる。
ここで、導電体に電極対を設けて抵抗を超える電圧を印加して両極間を通電して電流経路を形成した場合、この電流経路は最小発熱量の原理に従い、導電体から発生する単位時間・体積当たりのジュール熱が最小となるような経路が選択される。そして、発熱量が最小となる電流経路は、両電極間の最短距離となる経路と一致する場合がほとんどである。そこで本発明では、ヒータプレートに施す電極部に、互いの電極部に向かって突出するような突出形状部(突出電極)を複数箇所に形成し、これらの突出電極の対が発熱ピーク領域を持たせたい所望の領域を挟み込むようにして近づけ、これらの間の複数箇所の領域(発熱ピーク領域を持たせたい領域)を、すべて同一発熱量となる条件(電極間距離、電気抵抗など)の発熱領域とすることで、これらの領域に集中的に電流(帯状電流)が流れやすくなるようにして、発熱面の所望の領域に適切な発熱ピーク領域を少なくとも2つ構成することを可能としている。
突出電極の間は、両電極部間の最短領域となることから、本発明の一方の突出電極における他方の電極部にむかう側の端部の形状は、幾何学的には所定の条件下における平行曲線であればよいが、図1に示すように、本例の4つの突出電極2a、2b、3a、3bのそれぞれの端部は、平行直線に形成されている。つまり、角部A1A3の線分と角部A2A4の線分が長さが等しく平行であり、角部A5A7の線分と角部A6A8の線分が長さが等しく平行となっている。
本例では、2つの矩形状領域A1A2A3A4とA5A6A7A8とが、電極部2、3の間の最短領域であるから、これら2つの矩形状領域に帯状の電流経路領域が形成される。したがって、これら2つの帯状電流経路領域においてヒータプレート1の発熱面が強く発熱し、この領域に応じて図1に示すような発熱ピーク領域TAが形成される。具体的には、2つの発熱ピーク領域TAは、帯状電流経路領域、つまり2つの矩形状領域A1A2A3A4とA5A6A7A8のやや内側に内包されるように、それぞれ形成される。そして図2は、本例の熱伝導の概略を示している。また、この電流経路領域は、対応領域PAに応じて形成されている。すなわち本例では、対応領域PAの位置に応じて4つの突出電極2a、2b、3a、3bを電極部2、3の適切な位置に形成することで、形成される帯状電流経路領域、つまり、発熱ピーク領域TAが、対応領域PAをそれぞれ被覆するようにしている。また、本例のように、突出電極の端部形状が、対向する長方形状に突き出した形状の場合、突出電極の構成が容易化されると共に、これらの対の間に形成される帯状電流の均一性が高く維持されやすい。
図示していないが、発熱ピーク領域を任意の領域に形成可能であるから、原理的には所定の均一加熱領域を任意に形成することが可能となる。この均一加熱領域は、発熱ピーク領域の温度や位置・形状、或は使用時間やヒータプレートの物性など、各種の要因で異なる。よって本発明では、少なくとも、ヒータプレートの適宜の位置に複数の均一加熱領域を持ち、又は適宜の位置に広範囲に亘る均一加熱領域を持つように構成することが可能となる。また、溶融ヒータはワークの溶融に必要となる最小限の領域のみが加熱されるから、エネルギー効率が良い。さらに、従来より広範囲に均一な発熱領域をヒータプレートの発熱面に形成可能であるから、様々な配置のワークに対し溶着精度が向上し、溶着ムラや収縮による歪みなどの問題が改善される。
また、本例の電極部2、3は、アルミニウム小片を高真空中で加熱して融解・蒸発させてヒータプレート1表面に凝着させるアルミニウム溶射蒸着した状態で、適宜の形状の電極部を構成するようにしている。電極部は、その他の金属蒸着膜、又は金属塗膜や金属箔などの導電性材料の塗布や塗着により施してもよい。導電性素材としては、セラミック製ヒータプレート1に導電性膜を付着・構成して良好な通電・耐熱及び発熱面の発熱が可能な素材であれば特に制限はなく、この他、銀、銅、ニッケルなどの金属粒子をアクリル樹脂系ワニスなどに分散して塗料化した導電性塗料や導電性顔料などでもよい。このような導電性材料を塗布により、適切な形状とする必要がある本発明の電極部を、容易に構成可能となる。
なお、図示していないが、電極部2には所定の延長部材が取り付けられ、この延長部材は、貫通穴4を介して一端側がボルトナットにより固着され、自由端側が適宜の材料よりなる断熱材にボルトナットにより固着されている。この断熱材は、図4、5に示した溶着機本体9の退避機構15に固定されており、溶融ヒータは、この断熱材を介して溶着機本体9に設けられる。また、延長部材の最も他端側にはボルトナットにより端子部が取り付けられており、この端子部には電線が繋がっている。この電線は、所定の電源に接続され、溶着機本体9の制御により、延長部材を介して電極部2、3に電圧を印加可能となっている。このように、延長部材を介して電極部2、3から離間させた位置に端子部を設けることで、電極部2、3の高温化による端子部の消耗を防ぐようにしている。また、上記のような延長部材は、例えばニッケルなど、酸化性に優れ、電極部2、3より熱膨張率の低い金属材料により長尺状に設けられる。
図3(a)は、溶融ヒータにより溶融される樹脂製ワーク(樹脂成形品)の一例を示している。本発明の対象とする樹脂製ワークは、複数(少なくとも2つ)の管状(環状)端をそれぞれ有しており、本例ではコリオリ式流量計を構成する一対のボデー5とUチューブ6である。2本のUチューブ6は、円弧状の湾曲部7と、4本の管状端6aを有し、ボデー5も4本の管状端5aを有する。
図3(a)に示した樹脂製ワークは、並列2本の湾曲チューブを有するタイプであり、湾曲部7を有するUチューブ6が、湾曲したセンサチューブの一部を構成している。図3(b)に示したように、Uチューブ6が2本並列されているから、その管状端6aは4箇所であり、溶着箇所は4点となる。この4点に対応して、ボデー5にも、管状端6aと溶着機本体9で溶着接合される管状端5aが4箇所ある。よって、溶融接合部8が4点となっている。これらの管状端5aは、角柱形状の付根部5bを介してボデー5内の流路に連通している。なおボデー5は、Uチューブ6に測定対象流体の流出入を媒介する部材であり、その内部の流路などは図示していないが、例えば、入口側及び出口側で流体が分岐・合流するタイプや、1本の管を周回させることにより事実上並列2本のUチューブを構成するループタイプなどがあるが特に制限はない。
なお、本発明の溶融ヒータに使用できる樹脂製ワークとしては、上記の例のほか、後述のワーク固定治具、治具固定用ステージ、並びに溶融ヒータなどを樹脂製ワークに応じて適切に構成することで、一対から成る樹脂製ワークの複数の管状端を有する場合、具体的にはこれらの管状端が、PFA、変性PTFEなどの熱可塑性を有するフッ素樹脂から成る複数本のチューブやパイプのような場合であっても使用可能(多点同時溶融接合可能)である。さらに、このような環状ワークは熱可塑性を有する樹脂であればフッ素樹脂以外でもよく、例えば、塩化ビニリデン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、スチロール、ABS、ポリカーボネート、ポリエチレン、超高分子ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル、ブチレート、アセテート、ポリアミド、ポリアセタール、AS、フッ化ビニリデンなどの樹脂材料により形成するようにしてもよい。
図4は、溶着機本体9の概略平面図であり、図5は、溶着機本体9の概略側面図である。本発明の溶着機は、上述の溶融ヒータを搭載し、複数の樹脂製ワークを同時に溶融した状態で一対から成る複数の樹脂製ワークの管状端を同時に接合可能である。なお、溶融接合する樹脂製ワークとして、図3に示したボデー5とUチューブ6を例に説明する。
図4、5において、溶着機本体9は、移動機構10、この移動機構10に対向するスライド機構11、ボデー5及びUチューブ6をそれぞれ固定保持した一対のワーク固定治具12及び13、ストッパ14、退避機構15、制御機構16を有している。移動機構10は、ボールネジ17、モータ18を備え、モータ18により回転するボールネジ17を介して、棒状のガイド部19に沿って前進或は後退可能に取付けられている。また、溶着機本体9は、一対の治具固定用ステージ20及び21を備え、この治具固定用ステージ20及び21に、後述する図7、11に示したワーク固定治具12及び13がそれぞれ着脱可能に備えられている。また、治具固定用ステージ20には、ワーク固定治具12の位置を調整するための位置調整機構55を備えている。なお、ストッパ14は、治具固定用ステージ20及び21を前進或は後退させた状態で任意の位置で締め付け可能であり、このストッパ14を緩めることでワーク固定治具12及び13同士の間隔を調整し、締め付けることで溶着作業時にワーク固定治具12及び13を所定位置に固定することができる。
退避機構15は、ハンドル23、ヒータ取付け部24を有し、このヒータ取付け部24に前述した溶融ヒータ(ヒータプレート1)を取付け可能になっている。退避機構15は、ガイド部19に対して横移動並びに枢着回転可能に取付けられ、ガイド部19を介して定位置に設置された状態で微調整でき、ガイド部19を介して任意の位置まで横移動させ、ハンドル23を手動で操作回転することでワーク固定治具12及び13にそれぞれ取り付けられた左右のボデー5(管状端5a)、Uチューブ6(管状端6a)の間に溶融ヒータを持ち上げて配置し、或は、このボデー5、Uチューブ6の間から溶融ヒータを退避させて溶着機本体9に形成された図示しない収納ボックスに収納可能になっている。図示しないが、退避機構15は、自動操作機構により回転操作することもできる。制御機構16は、工程歩進スイッチ25、操作パネル26を有している。制御機構16は、工程歩進スイッチ25のオンにより動作可能となり、操作パネル26を介して移動機構10の動作を制御したり、溶融ヒータの加熱を制御してボデー5、Uチューブ6を溶融させて溶着することが可能になっている。上記した溶着機本体9は、あくまでも例であって、溶融ヒータを所定温度まで加熱して樹脂製ワークを溶着可能な構造を有していれば、突き合わせ溶着機以外のあらゆる溶着機を用いることが可能である。
図6は、図3に示したボデー5とUチューブ6を、溶融ヒータ(ヒータプレート1)を用いて溶着機本体9で溶着する際の状態を模式的に示している。同図に示すように、ボデー5の4箇所の管状端5aと、Uチューブ6の4箇所の管状端6a同士が、所定の加熱状態のヒータプレート1に所定の間隙を介して非接触に近接して溶融され、所定の工程を経て多点溶着接合される。
図7〜9は、ワーク固定治具12に、2本のUチューブ6側を固定した様子を示した斜視図である。ワーク固定治具は、複数の管状端を有する樹脂製ワークを着脱自在に溶着機本体に固定するものであり、これらの複数の管状端を、溶着すべき規定の位置にて保持できるよう、樹脂製ワークに適合させた形状・構造にて設計されている。本例のワーク固定治具12は、加工された3枚のプレート28、32、37を重ねてボルト27で固定したスロット部材であり、これに固定ブロック39が着脱自在に設けられる。上側のスロットプレート28は、U字状の開口部29が形成され、開口部29に沿って切欠部30が形成され、切欠部30に沿って段部面31が形成されている。下側のスロットプレート32は、側面部に係止部33aを有する凸部33が設けられ、図面正面側に凹状に切り欠かれた係止部34が設けられていると共に、U字状の段部面35を有する凹部面36が形成されている。スロットプレート28と32に挟み込まれるプレート37にも、開口部29と同形状の開口部38が形成されている。
図8は、固定ブロック39の斜視図であり、図10は、固定ブロック39をワーク固定治具12に取付けた状態を示した斜視図(図9)の縦断面図である。本例の固定ブロック39は、ノブ体40とブロック体41からなる。
図10に示すように、ノブ体40の内周面にはめねじ部42が設けられている。磁性部材43は、環状凸部44と、環状凸部44に一体的に延設された雄ねじ部45を有する。ブロック体41には、中央部に形成された穴部46と、ブロック体41の底面側に開口して穴部46と連通した拡径空間部47が形成されており、また、ワーク固定治具12の厚みに適合した厚みであって、スロットプレート28とプレート37に設けられた開口部29、38及びUチューブ6の各形状に適合した断面U字形状の側面部48が形成されている。また、ブロック体41の底面正面側には、スロットプレート32の正面側に設けられた係止部34の形状に適合する係止部49が形成されている。
同図に示すように、磁性部材43の環状凸部44は、空隙Gを空けてブロック体41の拡径空間部47に嵌合していると共に、雄ねじ部45はブロック体41の穴部46を挿通してブロック体41の上面側で調整ナット50とノブ体40のめねじ部42に螺着している。また、磁性部材43は、スロットプレート32の凹部面36と磁力で吸着可能となっている。磁性部材43の環状凸部44は拡径空間部47に嵌合しながら空隙Gの範囲で上下動可能であることから、調整ナット50によって磁性部材43底面の凹部面36からの高さを調整することにより、ブロック体41とスロットプレート32との間の磁力による吸着力を調整可能となっている。例えば調整ナット50の締付け位置を雄ねじ部45の深い位置にしておき、ブロック体41底面を凹部面36に密着させた際に、磁性部材43底面が凹部面36からある程度浮いた状態となるようにした場合、その浮いた高さに応じて磁力による吸着力が弱まる。
図7〜9に示すように、4本のUチューブ6をワーク固定治具12に固定する場合、先ず、Uチューブ6の湾曲部7を、断面コ字状のスロット(溝)に嵌合させる。図7に示すように、この断面コ字状のスロットは、図面上側のUチューブ6用として、切欠部30と段部面31とプレート37の上面から構成され、図面下側のUチューブ6用として、段部面35と凹部面36とプレート37の下面から構成されている。これらのスロット形状は、製品として完成後のUチューブ6に要求される形状に高精度に適合した形状となっている。
図8に示すように、湾曲部7をスロットに適切に嵌合させて2本のUチューブ6を取り付け、各管状端6aをワーク固定治具12から突出させた状態で、固定ブロック39を取り付ける。このように、Uチューブ6は、ワーク固定治具12のスロットに嵌め込んで固定ブロック39を磁力でプレート32に乗せるように貼り付けるだけで、簡単に治具に固定できる。また、図10に示す固定ブロック39を取り付けた状態では、ブロック体41の側面部48は、Uチューブ6(湾曲部7)の内周側、或は開口部29、38の形状と高精度に適合しているので、2本のUチューブ6は共に、上下左右の4面から形状を理想的な仕上がり形状に沿った寸法形状で挟持・拘束された矯正状態となる。このため、溶着工程において管状端6aが溶融されても、この熱処理に伴って生じやすい内側や捩れ方向への反り返りや曲がりなどの形状変形を効果的に防止しつつ固定保持できる。
また、固定ブロック39の取り付け状態において、ブロック体41の側面部48と、この側面部48が対向する開口部29、38の間に、所定のガタツキが生じるように設計しておくことで、ノブ体40を掴んでブロック体41を吸着している凹部面36から引き剥がす際、磁力から解放された際の反動でブロック体41がUチューブ6に無理な力で衝突してUチューブ6が損傷してしまう可能性を低めることができる。
図11は、ワーク固定治具13に、ボデー5側を固定する様子を示した斜視図である。本例のワーク固定治具13は、矩形平面状の底面プレート51の端面に2つのコ字状の嵌合部52aを有する受け部材52が設けられ、平面部には、2つの係合部53aを有するガイド部材53と、係止部材54が設けられた構成から成る。ガイド部材53と係止部材54は、ボデー5に適合する位置に設けられているので、ボデー5を2か所の係合部53aに係合させると、係止部材54はボデー5の背面側をガイドした状態となると共に、2つの付根部5bは、2つの嵌合部52aにそれぞれ嵌合状態となる。このように、ボデー5は、特に付根部5bを嵌合部52aに嵌め合せるようにワーク固定治具13に乗せるだけで、簡単に治具に固定できる。
図12は、本発明の溶着機本体9の治具固定用ステージにワーク固定治具の双方を固定した状態を示した斜視図である。ワーク固定治具12は、治具固定用ステージ20に載置されて係合枠体59等から成る所定の位置決め機構により位置決めされると共に、トグルクランプ機構の押さえ部材57で固定された状態となっている。また、治具固定用ステージ20は、所定の位置調整機構55で微細な位置調整が可能となっている。一方、ワーク固定治具13も、治具固定用ステージ21に載置されて係合枠体60等から成る所定の位置決め機構により位置決めされると共に、トグルクランプ機構の押さえ部材58で固定された状態となっている。ボデー5とUチューブ6とをそれぞれ取り付けたワーク固定治具13、12とが、上記のように治具固定用ステージ21、20にそれぞれ固定され、管状端5a、6aは、互いに高精度に調芯された状態で溶融ヒータで溶融接合される。
続いて溶着工程の一例を説明すると、溶着機本体9を用いてボデー5、Uチューブ6を溶着する場合は、予め、図示しないヒータ電源スイッチを溶着作業前にオンにして溶融ヒータを適切な温度に加熱すると共に、ワーク固定治具12、13にそれぞれボデー5、Uチューブ6を取り付けて固定保持させ、これらのワーク固定治具12、13を治具固定用ステージ20、21にそれぞれ位置決め機構を介して適切に固定し、移動機構10や位置調整機構55を調整して管状端5a、6aを正確に調芯させると共に、溶融ヒータ(電極部)に対しても管状端5a、6aを適切な配置となるようにする。
管状端5a、6a同士の位置合わせが完了した後、操作パネル26のボタン操作によりスライド機構11(Uチューブ6側)が、あらかじめ設定した位置まで離れることで、図6に示すように管状端5a、6aの間に溶融ヒータを差し込むスペースが生じる。この後、ハンドル23で適切な加熱状態となっている溶融ヒータを持ち上げることで溶融が開始される。この際、室温や周囲の状況によって溶融状態が変化するので、溶着機本体9に予め適切に設定されたタイマーを参考にしながら、適切な溶融状態を見極めて操作パネル26のボタンを押すことで、溶融ヒータが自動的に退避機構15によって降下すると共に移動機構10が制御機構16の動作制御により前進し、適切な溶融状態の管状端5a、6a同士が突き合わせ溶着接合される。
この場合、制御機構16により移動機構10の動作を制御しながら管状端5a、6a同士を所定の距離及び速度で押し付け圧接させ、この接合状態を一定時間加圧保持することで管状端5a、6aを適切な状態で多点同時溶着することができる。更に、この一定時間の加圧保持前に、例えば、本願出願人が出願した特許第3910567号の溶着方法を用いて、溶融接合した管状端5a、6aを突き合わせ方向と逆方向に引き延ばす工程を経るようにしてもよい。溶着接合後は、ワーク固定治具12、13からボデー5、Uチューブ6を取り外して、適宜の設備により冷却されるようにしてもよい。
溶融ヒータは、操作パネル26により設定された状態で、常に適切に制御されており、印加された電圧が電線、延長部材を介して電極部2、3に印加されて図2の発熱ピーク領域TAを中心にヒータプレート1が発熱する。このとき、管状端5a、6aの各対応領域PAが発熱ピーク領域TAに被覆されると共に、発熱ピーク領域TA内の温度分布は概ね均一であるから、管状端5a、6aの円周上を均等に溶融させることができる。溶融ヒータの表裏面は、略同様の発熱の分布形状になっており、電極部2、3の近傍は、熱放射によって発熱ピーク領域TAの中心よりも温度が下がった状態となる。管状端5a、6a部位を溶融させる場合、例えば、この端面側から0.8〜1.2mm程度の溶融深度(溶かし代)であるとよく、このときには全周を適切な状態で溶着しやすくなる。
これに対し、発熱ピーク領域がヒータプレートの中央付近に1箇所のみ発生し、そこを中心として円錐形状の温度分布が形成される従来のヒータに、上記のような2本のUチューブによる4本の管状端を使用した場合は、プレートの中央から離れるにしたがって温度勾配が大きくなることから、管状端の溶融の均一性が大きく損なわれて溶融ムラの発生が大きくなり、特に溶着後に硬化する際の樹脂の収縮の差も大きくなってしまう。これにより、Uチューブの内側の収縮が大きくなって内側に反り返ってしまう問題があった。本発明では、4本の管状端を必要な水準で均一に溶融させることができるから、このような溶融ムラの問題を生じることがない。
図13は、本発明の溶融ヒータの第2実施形態の取付け状態を示した概略正面図である。同図に示すように、本例では、図示しない樹脂製ワークの管状端が3箇所の突き合わせ溶着の場合の一例であり、これらの管状端の対応領域は、同図に示す3箇所の対応領域PBとなっている。本例のヒータプレート64に施した電極部61、62には、それぞれ3つずつの突出電極61a、61b、61cと突出電極62a、62b、62cとを設けている。
突出電極61a、61b、61cには、それぞれ2つの角部B1B3、B5B7、B9B11が形成され、突出電極62a、62b、62cにも、それぞれ2つの角部B2B4、B6B8、B10B12が形成されており、本例では、3つの矩形状領域B1B2B3B4、B5B6B7B8、B9B10B11B12が、それぞれ電極部61、62間の距離が最短となる最短領域となっている。このため、これら3つの最短領域に、帯状の電流経路領域が形成され、これらの電流経路領域のやや内側に、本例の発熱ピーク領域TBが形成される。そして、これらの発熱ピーク領域TBは、それぞれ対応領域PBを被覆するように形成される。
本例のように、ワークがヒータプレートの発熱面に対して互いに離れた3箇所となるような場合であっても、それらの対応領域の位置を挟み込むように突出電極を形成することで、適切な領域に適切な発熱ピーク領域を形成することができる。
ただし、上記のような特に3点以上の多点溶融用の電極部を形成する際には、少なくとも以下の点に留意する必要がある。すなわち、上記3箇所の矩形状領域B1B2B3B4、B5B6B7B8、B9B10B11B12を、それぞれ突出電極間の最短領域とすること、つまりこれらの領域に集中的に帯状電流が流れやすくなるようにするためには、原理的には、これらの領域の電気抵抗が同一である必要があるから、具体的な設計条件として、電極部61、62間の距離をL1、角部B3とB6との間の距離をL2、突出電極の幅をL3とした場合、3つの突出電極におけるすべての距離L1が電極部61、62の最短距離に等しく、同様にすべての幅L3が等しくなるように形成しておけば好適である。また、上記条件を満たしていても、例えば距離L1と距離L2との差が小さい場合、角部B3とB6との間にも電流が流れやすくなってしまう点などにも留意すべきである。
図14は、電極部を前述の溶融ヒータの第1実施形態と同様に構成した試験例における熱画像データを示した写真である。電極部間の印加電圧はAC20Vであり、ヒータプレートの大きさは約50mm×80mm、厚さは約5mmであり、貫通穴は約Φ4.5mmとなっている。また、樹脂製ワークである4本の管状端は、チューブ径が約Φ4.8mm、各チューブの配列距離(ピッチ)は約36mm×12mmであり、溶融の際は発熱面から約1mm程度の距離に近接される。
同図に十字で示した4点の位置P1、位置P2、位置P3、位置P4において、2点P1、P4は、突出電極2a及び3aに挟み込まれた領域内に位置し、2点P2、P3は、突出電極2b及び3bに挟み込まれた領域内に位置しており、位置P1の温度は287.03度、位置P2の温度は300.63度、位置P3の温度は277.96度、位置P4の温度は278.18度となった。よって、本例では、少なくとも、3点の位置P1P3P4を含む広範囲の領域に亘って、略均一な加熱領域であると共に、位置P2を含む一部の領域は、最も温度が高い発熱ピーク領域となっていることが実証された。
更に、本発明は、前記実施の形態の記載に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載されている発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができるものである。