JP6714343B2 - 多能性幹細胞の培養方法 - Google Patents

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Description

本発明は、多能性幹細胞の培養方法に関する。更に詳しくは、多能性幹細胞の分化多能性を維持したまま培養することができる培養方法に関する。
再生医療は、損傷や、機能を損失した臓器や組織に、体外で培養した細胞等を移植し、その損傷した組織や臓器の機能の復元を目指すものであり、現在治療が困難な症例に対し、唯一の治療法となり得る可能性を秘めた注目の技術である。移植される細胞の材料として想定されているのが、幹細胞である。特に、内胚葉、中胚葉、外胚葉の全てに分化可能な多能性幹細胞は、生体内の様々な細胞へと分化できる潜在的能力を有しているため、非常に有用な材料として期待されている。
多能性幹細胞を培養する方法としては、フィーダー細胞との共培養する方法及びマウスEHS肉腫から精製した基底膜成分であるマトリゲル(商品名)を用いる方法が知られている。しかし、これらの方法で培養した細胞は動物由来成分が混入するため、臨床用途では使用することができない。そのため、臨床用途では使用できる多能性幹細胞の培養方法として特定のタンパク質又は特定の高分子を含む培養基材を用いる方法が知られている。(例えば特許文献1、2)
しかし、特許文献1及び特許文献2に記載の方法では、高価な増殖因子等を用いるため、大量に培養することが困難であった。
特開2011−78370号公報 国際公開第2006/093207号
本発明の目的は、高価な増殖因子を用いることなく臨床用途で使用できる多能性幹細胞を大量に培養することができる培養方法を提供することである。
本発明者らは、鋭意研究を重ねてきた結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は細胞接着性最小アミノ酸配列(X)を1分子中に少なくとも1個有するポリペプチド(P)の存在下で多能性幹細胞を培養する工程を含むことを特徴とする多能性幹細胞の培養方法である。
本発明の多能性幹細胞の培養方法を用いると、高価なフィーダー細胞や動物由来成分を含まずに、分化多能性を維持した多能性幹細胞を効率的に大量に培養することが可能である。
本発明は、細胞接着性最小アミノ酸配列(X)を1分子中に少なくとも1個有するポリペプチド(P)の存在下で培養することを特徴とする多能性幹細胞の培養方法である。
ポリペプチド(P)は、多能性幹細胞の表面に存在する受容体と結合することができ、ポリペプチド(P)の種類に応じて多能性幹細胞に対して特異的な刺激を与えることによって、多能性幹細胞の分化多能性を維持したまま増殖させることや、特定の分化方向へ誘導をかけることができる。
本発明において細胞接着性とは、多能性幹細胞の表面に存在する受容体と結合することができる能力を意味する。
細胞接着性最小アミノ酸配列(X)とは、細胞に接着する能力を有するアミノ酸配列の最小単位であり、例えば、RGD配列、GAGAGS配列(1)又はIKVAV配列(36)があげられる。
ポリペプチド(P)としては、ポリペプチド(P)の多能性幹細胞への結合性及びポリペプチド(P)の安定性の観点から、下記タンパク質(A1)〜(A3)からなる群から選ばれる少なくとも1種のタンパク質であることが好ましい。
タンパク質(A1):RGD配列及びGAGAGS配列(1)を含むタンパク質。
タンパク質(A2):IKVAV配列(36)及びGAGAGS配列(1)を含むタンパク質。
タンパク質(A3):タンパク質(A1)又はタンパク質(A2)にカルボキシル基、スルホ基、アミノ基、アンモニオ基及びヒドロキシル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基(K)を導入した化学修飾タンパク質。
これらのタンパク質(A1)〜(A3)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明において、タンパク質(A1)及びタンパク質(A2)としては、天然物から抽出されたものでもよく、人工的に製造されるものでもよいが、動物由来成分を排除する観点から、人工的に製造されるタンパク質が好ましい。人工的に製造する方法としては、有機合成法(酵素法、固相合成法及び液相合成法等)及び遺伝子組み換え法等が挙げられる。
有機合成法としては、「生化学実験講座1、タンパク質の化学IV(1981年7月1日、日本生化学会編、株式会社東京化学同人発行)」及び「続生化学実験講座2、タンパク質の化学(下)(昭和62年5月20日、日本生化学会編、株式会社東京化学同人発行)」に記載されている方法等が適用できる。
遺伝子組み換え法に関しては、特許第3338441号公報に記載されている方法等が適用できる。有機合成法及び遺伝子組み換え法のうち、アミノ酸配列を簡便に変更でき、安価に大量生産できるという観点等から、遺伝子組み換え法が好ましい。
タンパク質(A1)はRGD配列及びGAGAGS配列(1)を含むタンパク質である。
タンパク質(A1)中に含まれる全アミノ酸数に対するRGD配列のアミノ酸の合計数の割合は、細胞結合性の観点から、1%〜20%が好ましく、更に好ましくは1%〜8%である。
タンパク質(A1)中に含まれる全アミノ酸数に対するGAGAGS配列(1)のアミノ酸の合計数の割合は、熱安定性の導入効率の観点から、40%〜90%が好ましく、更に好ましくは60%〜90%である。
タンパク質(A1)は、タンパク質(A1)に含まれる細胞接着性最小アミノ酸配列(X)が細胞表面の受容体と結合することによってタンパク質が細胞接着性を発現する。
タンパク質(A1)中に含まれる全アミノ酸数に対するRGD配列のアミノ酸数の合計数の割合は、下記条件によって求められる。
特定のアミノ酸残基で切断できる切断方法から2種類以上を用いて、タンパク質(A1)を30残基以下程度まで分解する。その後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて分離した後、プロテインシーケンサーにてアミノ酸配列を読み取る。得られたアミノ酸配列からペプチドマッピングして、タンパク質(A1)の全配列を決定する。その後、以下記載の測定式にてタンパク質(A1)中の全アミノ酸数に対する全てのRGD配列中のアミノ酸数の割合を算出する。
タンパク質(A1)中の全アミノ酸数に対する全てのRGD配列中のアミノ酸数の割合(%)=[{RGD配列の数}×3]÷{タンパク質(A1)中の全アミノ酸数}×100
タンパク質(A1)中に含まれる全アミノ酸数に対するGAGAGS配列(1)のアミノ酸の合計数の割合は、上記のRGD配列と同様にして以下の数式にて求められる。
タンパク質(A1)中に含まれる全アミノ酸数に対するGAGAGS配列(1)のアミノ酸の合計数の割合(%)=[{GAGAGS配列(1)の数}×6]÷{タンパク質(A1)中の全アミノ酸数}×100
タンパク質(A1)において、GAGAGS配列(1)とRGD配列との個数比率[(RGD配列の個数)/{GAGAGS配列(1)の個数}]は、熱安定性と多能性幹細胞への結合性の観点とから、0.005〜0.5が好ましく、更に好ましくは0.01〜0.2である。
タンパク質(A1)は、熱安定性の観点から、GAGAGS配列(1)が2個以上連続して結合したポリペプチド鎖(Y)を有することが好ましく、GAGAGS配列(1)が連続する個数は、2〜50個が更に好ましく、より好ましくは2〜33個であり、特に好ましくは2〜16個である。
タンパク質(A1)は、熱安定性の観点から、RGD配列がGAGAGS配列(1)又はポリペプチド鎖(Y)と交互に位置することが好ましく、特に好ましくはRGD配列がポリペプチド鎖(Y)とが交互に位置することである。
タンパク質(A1)において、RGD配列がGAGAGS配列(1)又はポリペプチド鎖(Y)と交互に位置する場合、タンパク質(A1)はRGD配列とGAGAGS配列(1)との繰り返し単位又はRGD配列とポリペプチド鎖(Y)との繰り返し単位を有するが、タンパク質(A1)に含まれるこれら両繰り返し単位の数は、タンパク質(A1)の熱安定性及びタンパク質(A1)の多能性幹細胞への結合性の観点から、1〜50が好ましく、更に好ましくは2〜40、特に好ましくは3〜30、最も好ましくは4〜20である。
タンパク質(A1)において、GAGAGS配列(1)が連続する個数、RGD配列とGAGAGS配列(1)又はポリペプチド鎖(Y)との繰り返し単位の数、GAGAGS配列(1)とRGD配列のそれぞれの個数はタンパク質(A1)のアミノ酸配列を前記のプロテインシーケンサーによって読み取ることで得られる。
また、タンパク質(A1)におけるGAGAGS配列(1)又はポリペプチド鎖(Y)とRGD配列との位置関係もタンパク質(A1)のアミノ酸配列を前記のプロテインシーケンサーによって読み取ることで得られる。
タンパク質(A1)は、分岐鎖を有していてもよいし、環状構造を有していてもよいし、一部が架橋していてもよいが、多能性幹細胞への結合性という観点から、架橋されていないことが好ましく、環状構造を有しない構造がより好ましく、更に好ましいのは直鎖構造又は分岐鎖を有する構造であり、特に好ましいのは直鎖構造である。なお、直鎖構造には、βシート構造(直鎖ペプチドが折れ曲がって直鎖ペプチド同士が平行に並び、その間に水素結合が作られる二次構造)も含まれる。
タンパク質(A1)は、熱安定性及びポリペプチド(P)の多能性幹細胞への結合性の観点から、RGD配列とGAGAGS配列(1)又はポリペプチド鎖(Y)とが、GAGAGS配列(1)又はポリペプチド鎖(Y)とRGD配列との間に他のアミノ酸配列を介して、交互に化学結合してなる構造であってもよく、RGD配列の末端に後述するアミノ酸配列(T)を有するアミノ酸配列とGAGAGS配列(1)又はポリペプチド鎖(Y)とが交互に化学結合してなる構造であってもよい。
RGD配列の末端としては、N末端及びC末端があり、RGD配列の末端に後述するアミノ酸配列(T)のうち、RGD配列のN末端に結合するアミノ酸配列(T1)としては、多能性幹細胞への接合性の観点から、好ましいのは(GVPGV)GG配列(2)、RKLPDA配列(3)、GAAVTG配列(4)、GLPGPKGD配列(5)、GGPAVTG配列(6)、AGPKGADGSPGPAVTG配列(7)、GAAVCEPG配列(8)、GAALCVSEPG配列(9)、SPASAALCVSEPG配列(10)、SPASAAVCEPG配列(11)、AGPKGADGSPGPAVCEPG配列(12)、AGPKGADGSPGPALCVSEPG配列(13)、GPAVCEPG配列(14)、GPALCVSEPG配列(15)又はGAAPGAS配列(16)であり、更に好ましいのは(GVPGV)GG配列(2)、RKLPDA配列(3)、GAAVTG配列(4)、GLPGPKGD配列(5)、GGPAVTG配列(6)又はAGPKGADGSPGPAVTG配列(7)であり、特に好ましいのは(GVPGV)GG配列(2)、RKLPDA配列(3)又はGAAVTG配列(4)である。
RGD配列の末端に後述するアミノ酸配列(T)のうち、RGD配列のC末端に結合するアミノ酸配列(T2)としては、多能性幹細胞への接合性の観点から、好ましいものは(GVPGV)GG配列(2)、RKLPDA配列(3)、SPASAAGY配列(17)、SPASAALCVS配列(18)、SPASAAVC配列(19)、AGPKGADGSPGP配列(20)、AGPKGADGSPGPAVC配列(21)、AGPKGADGSPGPALCVS配列(22)、AGPKGADGSP配列(23)、SPASAAGPVGSP配列(24)、CDAGY配列(25)、CDAGPVGSP配列(26)又はSAGPSAGY配列(27)であり、更に好ましいのは(GVPGV)GG配列(2)、RKLPDA配列(3)、SPASAAGY配列(17)、SPASAALCVS配列(18)、SPASAAVC配列(19)、AGPKGADGSPGP配列(20)、AGPKGADGSPGPAVC配列(21)、AGPKGADGSPGPALCVS配列(22)、AGPKGADGSP配列(23)又はSPASAAGPVGSP配列(24)であり、特に好ましいのは(GVPGV)GG配列(2)、RKLPDA配列(3)又はSPASAAGY配列(17)である。
RGD配列の末端にアミノ酸配列(T)を有するアミノ酸配列は、アミノ酸配列(T)を複数個有していてもよく、複数個ある場合のアミノ酸配列(T)はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
タンパク質(A1)の好ましいものとしては、以下のものが挙げられる。
(GAGAGS)配列(28)(Y1)、GAAVTG配列(4)、RGD配列及びSPASAAGY配列(17)が順に13回繰り返してなる構造を有する数平均分子量(以下、Mnと略記)約11万の配列(29)のタンパク質(A11);
(GAGAGS)配列(28)(Y1)、GAAVTG配列(4)、RGD配列及びSPASAAGY配列(17)が順に5回繰り返してなる構造を有するMn約2万の配列(31)のタンパク質(A12);
(GVPGV)GG配列(2)、(GAGAGS)配列(30)(Y2)、GAAVTG配列(4)、RGD配列及びSPASAAGY配列(17)が順に3回繰り返してなる構造を有するMn約1万の配列(32)のタンパク質(A13)等。
タンパク質(A2)はIKVAV配列(36)及びGAGAGS配列(1)を含むタンパク質である。
タンパク質(A2)中に含まれる全アミノ酸数に対する全てのIKVAV配列(36)のアミノ酸の合計数の割合は、細胞結合性の観点から、1%〜25%が好ましく、更に好ましくは1%〜10%である。
タンパク質(A2)中に含まれる全アミノ酸数に対するGAGAGS配列(1)のアミノ酸の合計数の割合は、熱安定性の導入効率の観点から、40%〜90%が好ましく、更に好ましくは60%〜90%である。
タンパク質(A2)は、タンパク質(A2)に含まれる細胞接着性最小アミノ酸配列(X)が細胞表面の受容体と結合することによって細胞接着性を発現する。
タンパク質(A2)中に含まれる全アミノ酸数に対するIKVAV配列(36)のアミノ酸の合計数の割合及び全アミノ酸数に対するGAGAGS配列(1)のアミノ酸の合計数の割合は、上記タンパク質(A1)のアミノ酸数等を測定する方法と同様の方法で、プロテインシーケンサーによって全配列を決定することで求めることができ、タンパク質(A1)におけるRGD配列を、IKVAV配列(36)と置き換えることで、計算することができる。
タンパク質(A2)において、GAGAGS配列(1)とIKVAV配列(36)との個数比率[(IKVAV配列(36)の個数)/{GAGAGS配列(1)の個数}]は、熱安定性と多能性幹細胞への結合性の観点とから、0.005〜0.5が好ましく、更に好ましくは0.01〜0.2である。
タンパク質(A2)は、熱安定性の観点から、GAGAGS配列(1)が2個以上連続して結合したポリペプチド鎖(Y)を有することが好ましく、GAGAGS配列(1)が連続する個数は、2〜50個が更に好ましく、より好ましくは2〜33個であり、特に好ましくは2〜16個である。
タンパク質(A2)は、熱安定性の観点から、IKVAV配列(36)がGAGAGS配列(1)又はポリペプチド鎖(Y)と交互に位置することが好ましく、特に好ましくはIKVAV配列(36)がポリペプチド鎖(Y)と交互に位置することである。
タンパク質(A2)において、IKVAV配列(36)がGAGAGS配列(1)又はポリペプチド鎖(Y)と交互に位置する場合、タンパク質(A2)はIKVAV配列(36)とGAGAGS配列(1)との繰り返し単位又はIKVAV配列(36)とポリペプチド鎖(Y)との繰り返し単位を有するが、タンパク質(A2)に含まれるこれら両繰り返し単位の数は、タンパク質(A2)の熱安定性及びタンパク質(A2)の多能性幹細胞への結合性の観点から、1〜50が好ましく、更に好ましくは2〜40、特に好ましくは3〜30、最も好ましくは4〜20である。
タンパク質(A2)において、GAGAGS配列(1)が連続する個数、IKVAV配列(36)とGAGAGS配列(1)又はポリペプチド鎖(Y)との繰り返し単位の数、GAGAGS配列(1)とIKVAV配列(36)のそれぞれの個数はタンパク質(A2)のアミノ酸配列を前記のプロテインシーケンサーによって読み取ることで得られる。
また、タンパク質(A2)におけるGAGAGS配列(1)又はポリペプチド鎖(Y)とIKVAV配列(36)との位置はアミノ酸配列を前記のプロテインシーケンサーによって読み取ることで得られる。
タンパク質(A2)は、分岐鎖を有していてもよいし、環状構造を有していてもよいし、一部が架橋していてもよいが、多能性幹細胞への結合性という観点から、架橋されていないことが好ましく、環状構造を有しない構造がより好ましく、更に好ましいのは直鎖構造又は分岐鎖を有する構造であり、特に好ましいのは直鎖構造である。なお、直鎖構造には、βシート構造(直鎖ペプチドが折れ曲がって直鎖ペプチド同士が平行に並び、その間に水素結合が作られる二次構造)も含まれる。
タンパク質(A2)は、熱安定性及びポリペプチド(P)の多能性幹細胞への結合性の観点から、IKVAV配列(36)とGAGAGS配列(1)又はポリペプチド鎖(Y)とが、IKVAV配列(36)とGAGAGS配列(1)又はポリペプチド鎖(Y)との間に他のアミノ酸配列を介して、交互に化学結合してなる構造であってもよく、IKVAV配列(36)の末端に後述するアミノ酸配列(U)を有するアミノ酸配列とGAGAGS配列(1)又はポリペプチド鎖(Y)とが交互に化学結合してなる構造であってもよい。
IKVAV配列(36)の末端としては、N末端及びC末端があり、IKVAV配列(36)の末端に後述するアミノ酸配列(U)のうち、IKVAV配列(36)のN末端に結合するアミノ酸配列(U1)としては、前記のRGD配列のN末端に結合するアミノ酸配列(T1)と同じ配列が挙げられ、好ましい配列も同じである。
IKVAV配列(36)の末端に後述するアミノ酸配列(U)のうち、IKVAV配列(36)のC末端に結合するアミノ酸配列(U2)としては、前記のRGD配列のC末端に結合するアミノ酸配列(T2)と同じ配列が挙げられ、好ましい配列も同じである。
IKVAV配列(36)の末端にアミノ酸配列(U)を有するアミノ酸配列は、アミノ酸配列(U)を複数個有していてもよく、複数個ある場合のアミノ酸配列(U)はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
タンパク質(A2)のうち、好ましいものとしては、以下のものが挙げられる。
(GAGAGS)配列(28)(Y1)、GAAPGAS配列(16)、IKVAV配列(36)及びSAGPSAGY配列(27)が順に13回繰り返してなる構造を有するMn約11万の配列(33)のタンパク質;
(GAGAGS)配列(28)(Y1)、GAAPGAS配列(16)、IKVAV配列(36)及びSAGPSAGY配列(27)が順に5回繰り返してなる構造を有するMn約2万の配列(34)のタンパク質;
(GVPGV)GG配列(2)、(GAGAGS)配列(30)(Y2)、GAAPGAS配列(16)、IKVAV配列(36)及びSAGPSAGY配列(27)が順に3回繰り返してなる構造を有するMn約1万の配列(35)のタンパク質等。
本発明におけるタンパク質(A3)は、タンパク質(A1)又はタンパク質(A2)にカルボキシル基、スルホ基、アミノ基、アンモニオ基及びヒドロキシル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基(K)を導入した化学修飾タンパク質である。
タンパク質(A1)又はタンパク質(A2)への官能基(K)の導入は、タンパク質(A1)又はタンパク質(A2)が有する反応性基含有アミノ酸残基(Z)にカルボキシル基、スルホ基、アミノ基、アンモニオ基及びヒドロキシル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基(K)を有する化合物(B)を反応して化学修飾することにより行うことができる。
なお、カルボキシル基及びスルホ基は、アルカリ金属カチオン(ナトリウムイオン及びカリウムイオン等)及びアルカリ土類金属カチオン(カルシウムイオン等)等との塩を形成していてもよい。
反応性基含有アミノ酸残基(Z)とは、タンパク質(A1)及びタンパク質(A2)を構成するアミノ酸の主鎖を形成するペプチド結合に用いられるカルボキシル基及びアミノ基以外の反応性基を含有するアミノ酸残基を意味する。
反応性基含有アミノ酸残基(Z)が含有する反応性基とは、化合物(B)と反応することができる反応性基であり、好ましいものとしてはヒドロキシル基、カルボキシル基、メルカプト基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基が挙げられる。
反応性基のうち、化合物(B)との結合形成の容易さ、ポリペプチド(P)の多能性幹細胞への結合性の観点から、ヒドロキシル基、カルボキシル基及び第1級アミノ基が好ましく、更に好ましくはヒドロキシル基及びカルボキシル基、特に好ましくはヒドロキシル基である。
反応性基含有アミノ酸残基(Z)としては、反応性基がヒドロキシル基であるセリン残基及びトレオニン残基、反応性基がカルボキシル基であるアスパラギン酸残基及びグルタミン酸残基、反応性基が第1級アミノ基であるリシン残基、反応性基が第1級及び第2級アミノ基であるアルギニン残基、並びに反応性基が第2級アミノ基であるヒスチジン残基及びトリプトファン残基、反応性基がメルカプト基であるシステイン残基等が挙げられる(バイオコンジュゲート テクニークス、Greg T.Hermanson著、Academic Press発行、1996)。
反応性基含有アミノ酸残基(Z)の内、化合物(B)との反応性の観点から、セリン残基、トレオニン残基、チロシン残基、アスパラギン酸残基、グルタミン酸残基、リシン残基、アルギニン残基、ヒスチジン残基及びトリプトファン残基が好ましく、更に好ましくはセリン残基、トレオニン残基、アスパラギン酸残基及びグルタミン酸残基であり、特に好ましくはセリン残基又はトレオニン残基である。
タンパク質(A1)又はタンパク質(A2)が有する反応性基含有アミノ酸残基(Z)と化合物(B)との反応により官能基(K)が導入する場合、ポリペプチド(P)の多能性幹細胞への結合性の観点から、化合物(B)とタンパク質(A1)又はタンパク質(A2)とを物理吸着(ファンデルワールス力による吸着)及び化学結合(共有結合、イオン結合、水素結合等)等によって結合することが好ましく、化学結合によって結合することが更に好ましい。
化合物(B)とタンパク質(A1)及びタンパク質(A2)とを化学結合させる方法としては、公知の方法が適用でき、特開2007−51127号公報等に記載の方法が挙げられる。化学結合の内、結合の強さ、多能性幹細胞接着性、及び再現性の観点から、共有結合が好ましい。
なお、化学結合を形成する反応には反応溶媒を使用してもよく、反応溶媒としては公知のものが使用でき、例えば、水、臭化リチウム水溶液、過塩素酸リチウム水溶液、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、ジメチルスルフォキシド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン及びこれらの少なくとも1種類を含む混合溶媒等が挙げられる。
タンパク質(A1)又はタンパク質(A2)が有する反応性基含有アミノ酸残基(Z)と化合物(B)との反応により官能基(K)を共有結合により導入する方法としては、反応性基含有アミノ酸残基(Z)が有する反応性基がヒドロキシル基である場合、官能基(K)を有するハロゲン化物である化合物を用いてタンパク質(A1)又はタンパク質(A2)とをエーテル化反応(ウイリアムソン合成法)する方法、及び官能基(K)を有するカルボン酸と反応性基含有アミノ酸残基(Z)が有するヒドロキシル基をエステル化反応する方法等が挙げられる。
官能基(K)を有するハロゲン化物である化合物としては、炭素数2〜30のカルボン酸のハロゲン化物、炭素数2〜30のスルホン酸のハロゲン化物、炭素数2〜30のアミノ基を有するハロゲン化物、炭素数2〜30のアルコールのハロゲン化物及び炭素数2〜30のアンモニオ基を有するハロゲン化物等が挙げられる。
官能基(K)を有するカルボン酸としては、炭素数2〜30のカルボキシル基を有するアルコール、炭素数2〜30のカルボキシル基を有するスルホン酸、炭素数2〜30のカルボキシル基を有するアミン及び炭素数2〜30のアンモニオ基を有するカルボン酸等が挙げられる。
官能基(K)を有するカルボン酸と反応性基含有アミノ酸残基(Z)が有するヒドロキシル基をエステル化反応する場合、炭素数2〜30のカルボキシル基を有するスルホン酸が有するスルホ基は、アルカリ金属カチオン(ナトリウムイオン及びカリウムイオン等)及びアルカリ土類金属カチオン(カルシウムイオン等)等との塩を形成していてもよい。
反応性基含有アミノ酸残基(Z)が有する反応性基がカルボキシル基の場合、官能基(K)を有するアミンと反応性基含有アミノ酸残基(Z)が有するカルボキシル基とをアミド化反応する方法及び官能基(K)を有するアルコールと反応性基含有アミノ酸残基(Z)が有するカルボキシル基とをエステル化反応する方法等が挙げられる。
官能基(K)を有するアミンとしては、炭素数2〜30のアミノ基を有するアルコール、炭素数2〜30のカルボキシル基を有するアミン及び炭素数2〜30のスルホ基を有するアミン等が挙げられる。
官能基(K)を有するアルコールとしては、炭素数2〜30のカルボキシル基を有するアルコール、炭素数2〜30のアミノ基を有するアルコール、炭素数2〜30のスルホ基を有するアルコール及び炭素数2〜30のアンモニオ基を有するアルコール等が挙げられる。
官能基(K)を有するアミンと反応性基含有アミノ酸残基(Z)が有するカルボキシル基とをアミド化反応する場合において、炭素数2〜30のカルボキシル基を有するアミンのカルボキシル基及び炭素数2〜30のスルホ基を有するアミンのスルホ基は、アルカリ金属カチオン(ナトリウムイオン及びカリウムイオン等)及びアルカリ土類金属カチオン(カルシウムイオン等)等との塩を形成していてもよい。
官能基(K)を有するアルコールと反応性基含有アミノ酸残基(Z)が有するカルボキシル基とをエステル化反応する場合、炭素数2〜30のカルボキシル基を有するアルコールのカルボキシル基及び炭素数2〜30のスルホ基を有するアルコールのスルホ基は、アルカリ金属カチオン(ナトリウムイオン及びカリウムイオン等)及びアルカリ土類金属カチオン(カルシウムイオン等)等との塩を形成していてもよい。
タンパク質(A1)又はタンパク質(A2)が有する反応性基含有アミノ酸残基(Z)と化合物(B)とを用いて官能基(K)をイオン結合により導入する方法としては、反応性基含有アミノ酸残基(Z)が有する反応性基がアミノ基である場合、官能基(K)を有するカルボン酸で反応性基含有アミノ酸残基(Z)が有するアミノ基を中和反応する方法等が挙げられる。反応性基含有アミノ酸残基(Z)が有するアミノ基を中和反応する場合、反応性基含有アミノ酸残基(Z)が有するアミノ基を塩酸等の無機酸を用いて中和してから炭素数2〜30のカルボキシル基を有するスルホン酸又は炭素数2〜30のカルボキシル基を有するアルコールとのイオン交換反応を行っても良い。
官能基(K)を有するカルボン酸としては、炭素数2〜30のカルボキシル基を有するアルコール、炭素数2〜30のカルボキシル基を有するスルホン酸、炭素数2〜30のカルボキシル基を有するアミン及び炭素数2〜30のアンモニオ基を有するカルボン酸等が挙げられる。
官能基(K)を有するカルボン酸で反応性基含有アミノ酸残基(Z)が有するアミノ基を中和反応する場合、炭素数2〜30のカルボキシル基を有するスルホン酸が有するスルホ基は、アルカリ金属カチオン(ナトリウムイオン及びカリウムイオン等)及びアルカリ土類金属カチオン(カルシウムイオン等)等との塩を形成していてもよい。
炭素数2〜30のカルボン酸のハロゲン化物はハロゲン化アシルではなく、炭素数2〜30のカルボン酸が有する炭素原子に結合する水素原子をハロゲン原子で置換した化合物が挙げられ、フルオロ酢酸、クロロ酢酸、ブロモ酢酸、2−クロロプロピオン酸、3−クロロプロピオン酸、ω−クロロオクタデカン酸、ω−ブロモエイコサン酸及びω−クロロトリコサン酸等が挙げられ、クロロ酢酸が好ましい。
炭素数2〜30のスルホン酸のハロゲン化物はスルホン酸が有する炭素原子に結合した水素原子をハロゲン原子で置換した化合物が挙げられ、クロロスルホン酸(ClSOH)、クロロエタンスルホン酸、フルオロスルホン酸、p−クロロベンゼンスルホン酸、ω−クロロオクタデカンスルホン酸、ω−クロロトリコサンスルホン酸及びこれらの塩(アルカリ金属塩)等が挙げられ、クロロエタンスルホン酸が好ましい。
炭素数2〜30のアミノ基を有するハロゲン化物としては、炭素数2〜17のハロゲン化(塩素及び臭素等)アルキル基を有するアミンが挙げられ、アミノエチルクロリド、N−メチルアミノプロピルクロリド、ジメチルアミノエチルクロリド、ジエチルアミノエチルクロリド、ジベンジルアミノエチルブロミド、ジメチルアミノプロピルブロミド、ジエチルアミノプロピルクロリド及びジベンジルアミノプロピルクロリド等が挙げられる。
炭素数2〜30のアルコールのハロゲン化物としては、2−フルオロエタノール、クロロエタノール、3−ブロモプロピルアルコール、p−クロロフェノール、ω−クロロオクタデシルアルコール、ω−ブロモエイコシルアルコール及びω−クロロトリコシルアルコール等が挙げられ、クロロエタノールが好ましい。
炭素数2〜30のアンモニオ基を有するハロゲン化物としては、前記の炭素数2〜30のアミノ基を有するハロゲン化物が有するアミノ基を4級化剤(メチルクロリド、エチルクロリド、ベンジルクロリド、ジメチル炭酸、ジメチル硫酸及びエチレンオキシド等)によって4級化した化合物が挙げられ、クロロエチルトリメチルアンモニウムクロリドが好ましい。
炭素数2〜30のカルボキシル基を有するアルコールとしては、ヒドロキシ酢酸、ヒドロキシプロピオン酸、パントテン酸、グルクロン酸、サリチル酸、4−ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシ基を有するアミノ酸(Ser及びThr)、ω−ヒドロキシオクタデカン酸、ω−ヒドロキシエイコサン酸及びω−ヒドロキシトリコサン酸等が挙げられる。
炭素数2〜30のカルボキシル基を有するスルホン酸としては、スルホ酢酸、スルホコハク酸、o−スルホ安息香酸、m−スルホ安息香酸、p−スルホ安息香酸、2,4−ジスルホ安息香酸、3−スルホフタル酸、3,5−ジスルホフタル酸、4−スルホイソフタル酸、2−スルホテレフタル酸、2−メチル−4−スルホ安息香酸、2−メチル−3,5−ジスルホ安息香酸、4−プロピル−3−スルホ安息香酸、4−イソプロピル−3−スルホ安息香酸、2,4,6−トリメチル−3−スルホ安息香酸、2−メチル−5−スルホテレフタル酸、5−メチル−4−スルホイソフタル酸、5−スルホサリチル酸及び3−オキシ−4−スルホ安息香酸等が挙げられる。
炭素数2〜30のカルボキシル基を有するアミンとしては、炭素数2〜20のアミノカルボン酸及び炭素数4〜30のペプチドが挙げられ、2−アミノ酢酸、3−アミノプロピオン酸、ω−アミノオクタデカン酸、ω−アミノエイコサン酸、アミノ酸{アラニン(Ala)、アルギニン(Arg)、アスパラギン(Asn)、アスパラギン酸(Asp)、システイン(Cys)、グルタミン(Gln)、グルタミン酸(Glu)、グリシン(Gly)、ヒスチジン(His)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、リジン(Lys)、メチオニン(Met)、フェニルアラニン(Phe)、プロリン(Pro)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)及びバリン(Val)等}及びアミノ酸が2〜15個結合したペプチド等が挙げられる。
炭素数2〜30のアンモニオ基を有するカルボン酸としては、前記の炭素数2〜30のカルボキシル基を有するアミンが有するアミノ基を4級化剤(メチルクロリド、エチルクロリド、ベンジルクロリド、ジメチル炭酸、ジメチル硫酸及びエチレンオキシド等)によって4級化した化合物が挙げられる。
炭素数2〜30のアミノ基を有するアルコールとしては、炭素数2〜10のアルカノールアミン[モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、モノブタノールアミン、ジブタノールアミン、トリブタノールアミン、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン及びN,N,N’,N’−テトラキス(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン等]及びこれらのアルキル(炭素数1〜18)置換体[N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−オクタデシルジエタノールアミン、N,N−ジエチル−N’,N’−ビス(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N−ジオクタデシル−N’,N’−ビス(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン及びN,N,N’−トリオクタデシル−N’−ヒドロキシエチルエチレンジアミン等]等が挙げられる。
炭素数2〜30のスルホ基を有するアミンとしては、スルファニル酸、2−アミノエタンスルホン酸、3−アミノプロパンスルホン酸、p−アミノベンゼンスルホン酸、ω−アミノオクタデカンスルホン酸、ω−アミノエイコサンスルホン酸及びω−アミノトリコサンスルホン酸等が挙げられる。
炭素数2〜30のスルホ基を有するアルコールとしては、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、3−ヒドロキシプロパンスルホン酸、p−ヒドロキシベンゼンスルホン酸、ω−ヒドロキシオクタデカンスルホン酸、ω−ヒドロキシエイコサンスルホン酸、ω−ヒドロキシトリコサンスルホン酸、スルホエチレングリコール、2−スルホプロピレングリコール、1,2−ジスルホプロピレングリコール、2−スルホブタンジオール、2−スルホヘキサンジオール、1,5−ジスルホヘキサンジオール、2,5−ジスルホヘキサンジオール、1,3,5−トリスルホヘキサンジオール、1,2,4−トリスルホヘキサンジオール、2−スルホウンドデカンジオール、4−スルホウンドデカンジオール、6−スルホウンドデカンジオール、2,4−ジスルホウンドデカンジオール及び2,6,10−トリスルホウンドデカンジオール等が挙げられる。
炭素数2〜30のアンモニオ基を有するアルコールとしては、前記の炭素数2〜30のアミノ基を有するアルコールが有するアミノ基を4級化剤(メチルクロリド、エチルクロリド、ベンジルクロリド、ジメチル炭酸、ジメチル硫酸及びエチレンオキシド等)によって4級化した化合物が挙げられる。
官能基(K)としては、ポリペプチド(P)の多能性幹細胞への結合性の観点から、カルボキシル基及びスルホ基が好ましい。
化合物(B)としては、ポリペプチド(P)の多能性幹細胞への結合性の観点から、炭素数2〜30のカルボン酸のハロゲン化物、炭素数2〜30のスルホン酸のハロゲン化物、炭素数2〜30のカルボキシル基を有するアルコール、炭素数2〜30のカルボキシル基を有するアミン及び炭素数2〜30のスルホ基を有するアルコールが好ましく、更に好ましいのは炭素数2〜30のカルボン酸のハロゲン化物及び炭素数2〜30のスルホン酸のハロゲン化物であり、特に好ましいのはクロロ酢酸、クロロエタンスルホン酸、クロロスルホン酸及びこれらの塩(好ましくはアルカリ金属塩)であり、最も好ましくはクロロ酢酸、クロロエタンスルホン酸及びこれらの塩である。
タンパク質(A3)が有する官能基(K)の平均個数は、ポリペプチド(P)の多能性幹細胞への結合性の観点から、タンパク質(A3)1分子あたり1〜156個が好ましく、更に好ましくは10〜120個、特に好ましくは30〜115個、最も好ましくは60〜90個である。
官能基(K)の平均個数は、官能基(K)を有するハロゲン化物を使用してエーテル化反応により化学修飾した場合、用いた化学修飾前のタンパク質(A1)、タンパク質(A2)及び化学修飾されたタンパク質(A3)について、以下のポストラベル法によるHPLC測定による各アミノ酸のピーク面積から算出することができる。
<ポストラベル法によるタンパク質(A3)中の官能基(K)の平均個数>
タンパク質(A3)中の官能基(K)の平均個数は、タンパク質に塩酸等の酸を加え加熱することにより、タンパク質をアミノ酸に加水分解してからオルトフタルアルデヒド又はニンヒドリンを用いてラベル化したアミノ酸をHPLCにより、アミノ酸のピーク面積を求め、下記式により求める。なお、基準は化学修飾されないグリシンのピークを用いる。
タンパク質(A3)中の官能基(K)の平均個数=Σ{γ−(βa÷αa)÷(β0÷α0)×γ}
α0:タンパク質(A1又はA2)中のグリシンのHPLCのピーク面積
β0:タンパク質(A1又はA2)中の各アミノ酸のHPLCのピーク面積
αa:タンパク質(A3)中のグリシンのHPLCのピーク面積
βa:タンパク質(A3)中の各アミノ酸のHPLCのピーク面積
γ:タンパク質(A1)中の各アミノ酸の数
官能基(K)を有するハロゲン化物以外の化合物(B)により化学修飾した場合、官能基(K)の平均個数は、用いた化学修飾前のタンパク質(A1)、タンパク質(A2)及び化学修飾されたタンパク質(A3)について、MALDI−TOF MS(Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization−Time−of−Flight mass spectrometer)を用いてタンパク質の質量測定を行い、質量電荷比(m/z値)とそのピーク強度を求め、下記式により求める。
<MALDI−TOF MSの測定によるタンパク質(A3)中の官能基(K)の平均個数>
タンパク質(A3)中の官能基(K)の平均個数={[Σ(Mn×Nn)÷100]−M0}÷L
M0:タンパク質(A1)又は(A2)のm/z値
Mn:タンパク質(A3)のm/z値
Nn:タンパク質(A3)の全ピーク強度の和を100%とした場合のMnのピーク強度の割合(%)
L:化合物(B)がタンパク質(A1)又は(A2)中の反応性基含有アミノ酸残基(Z)に結合した際に増加する分子量である。例えば、化合物(B)がパントテン酸であり、パントテン酸のヒドロキシル基とタンパク質(A1)に含まれる反応性基含有アミノ酸残基(Z)の側鎖に有するカルボキシル基(反応性基)とを脱水縮合反応させた場合、Lは「219(パントテン酸の分子量)−18(水の分子量)=201」である。
本発明に用いるポリペプチド(P)は、必要に応じて滅菌処理を施してもよい。
滅菌処理の方法としては、特に限定されないが、放射線滅菌、エチレンオキサイドガス滅菌、プラズマ滅菌、γ線滅菌、アルコール滅菌、オートクレーブ滅菌及びろ過滅菌等が挙げられる。
本発明における多能性幹細胞としては、胚性幹細胞(ES細胞)、核移植ES細胞(ntES細胞)及び人工多能性幹細胞(iPS細胞)等が挙げられる。多能性幹細胞は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの多能性幹細胞のうち、ポリペプチド(P)の多能性幹細胞への結合性の観点から、胚性幹細胞(ES細胞)、核移植ES細胞(ntES細胞)及び人工多能性幹細胞(iPS細胞)が好ましく、更に好ましいのは胚性幹細胞(ES細胞)及び人工多能性幹細胞(iPS細胞)である。
多能性幹細胞の由来動物としては、特に限定されないが、ブタ、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ウサギ、カンガルー、サル、ラット、マウス及びヒト等の哺乳類動物が好ましく、更に好ましいのはマウス及びヒトである。
本発明の培養方法は、前記のポリペプチド(P)を含む培養液(F)中で多能性幹細胞が集合した多能性幹細胞集合体を得る工程を含むことが好ましい。
培養液(F)としては、無血清培地及び血清培地が好ましく、特に無血清培地が好ましい。
無血清培地としては、Grace培地、IPL−41培地、Schneider’s培地、Opti−PROTMSFM培地、Opti−MEMTMI培地、VP−SFM培地、CD293培地、293SFMII培地、CD−CHO培地、CHO−S−SFMII培地、FreeStyleTM293培地、CD−CHO AGTTM培地、RPMI培地、DMEM培地、MEM培地、GMEM培地、Eagle’sMEM培地、BME培地、DME培地、αMEM培地、IMEM培地、ES培地、DM−160培地、Fisher培地、F12培地、WE培地、ASF103培地、ASF104培地、ASF301培地、TC−100培地、Sf−900II培地、Ex−cell405培地、Express−Five培地、Drosophila培地、Ham’s F−12K培地及びこれらの混合培地等が挙げられる。
これらの内、多能性幹細胞の安定性の観点から、Opti−PROTMSFM培地、Opti−MEMTMI培地、VP−SFM培地、CD293培地、293SFMII培地、CD−CHO培地、CHO−S−SFMII培地、FreeStyleTM293培地、CD−CHO AGTTM培地、DMEM培地、GMEM培地、Ham’s F−12K培地及びこれらの混合培地が好ましく、更に好ましくはOpti−PROTMSFM培地、VP−SFM培地、CD293培地、293SFMII培地、FreeStyleTM293培地、DMEM培地、GMEM培地、Ham’s F−12K培地及びこれらの混合培地である。
血清培地としては、上記無血清培地に血清を加えたもの等が挙げられる。
血清培地に用いる上記無血清培地としては、DMEM培地、GMEM培地、RPMI培地、MEM培地、BME培地、DME培地、αMEM培地、IMEM培地、ES培地、DM−160培地、Fisher培地、F12培地、WE培地、ASF103培地、ASF104培地、ASF301培地、TC−100培地、Sf−900II培地、Ex−cell405培地、Express−Five培地、Drosophila培地及びこれらの混合培地等が挙げられる。
血清としては、ヒト血清及び動物血清(ウシ血清、ウマ血清、ヤギ血清、ヒツジ血清、ブタ血清、ウサギ血清、ニワトリ血清、ラット血清及びマウス血清等)等が挙げられる。
培養液(F)としては、これらの無血清培地及び血清培地を1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
培養液(F)としては、必要に応じて血清、増殖因子及び/又は抗菌剤等を添加したものも利用できる。培養液、血清及びその使用量、増殖因子及びその使用量、並びに抗菌剤及びその使用量の具体例としては、特開2005−2106号公報に記載されたものがそのまま利用できる。
ポリペプチド(P)を含む培養液(F)中において、多能性幹細胞を集合させ、多能性幹細胞集合体を形成させてもよい。
ポリペプチド(P)を含む培養液(F)中で多能性幹細胞を集合させ、多能性幹細胞集合体を得る工程は、多能性幹細胞の増殖性の観点から、10rpm〜200rpmで撹拌下に行うことが好ましく、更に好ましくは50rpm〜150rpmである。
ポリペプチド(P)を含む培養液(F)中で多能性幹細胞を集合させ、多能性幹細胞集合体を得る工程は、培養容器としてフラスコを用い、ポリペプチド(P)を含む培養液(F)に多能性幹細胞を播種し、30〜50℃(好ましくは35〜40℃)の温度で二酸化炭素を3〜7容量%含む雰囲気下で行うことが好ましく、4.7〜5.3容量%含む雰囲気下で行うことが更に好ましい。
ポリペプチド(P)を含む培養液(F)中で多能性幹細胞が集合した多能性幹細胞集合体を得る工程において、培養後の多能性幹細胞集合体の個数平均粒子径は、細胞集合体の収率と多能性幹細胞の生存率の観点から、10〜500μmが好ましく、50〜500μmがより好ましく、より更に好ましくは50〜300μmである。
なお、本発明における多能性幹細胞集合体の粒子径は、以下の方法により求めることができる。
<多能性幹細胞集合体の粒子径の測定方法>
得られた細胞が集合した多能性幹細胞集合体を含む培養液を、384wellプレートに100μLずつ、10wellに添加し、多能性幹細胞集合体の顕微鏡画像(倍率40倍、CKX41、OLYMPUS社製)を取得し、多能性幹細胞集合体数の解析を行う。画像解析ソフト(image J、アメリカ国立衛生研究所)及びマイクロメーター(目盛10μm、目盛長1mm)を用いて解析することにより得られた多能性幹細胞集合体の粒子径を測定することができる。
なお、画像解析ソフトにより得られる数値の単位が「ピクセル」である場合、マイクロメーターにより画像を計測して1ピクセルが何μmに相当するのかを算出し、実際の単位「μm」に換算する。
また、培養液に含まれる多能性幹細胞の全多能性幹細胞集合体に含まれる100〜200μmの粒子径を有する多能性幹細胞集合体の割合が、全多能性幹細胞集合体の合計数に基づいて40%以上であることが好ましい。この割合が大きいほど多能性幹細胞の生存率が高くなり、物性のそろった状態の良い多能性幹細胞が回収でき好ましい。
100〜200μmの粒子径を有する細胞集合体の割合は、下記の計算方法で算出する。
ポリペプチド(P)を加えて浮遊培養した多能性幹細胞に含まれる100〜200μmの細胞集合体の割合(%)={100〜200μmの細胞集合体数}/{全細胞集合体数}×100
本発明の培養方法は、ポリペプチド(P)を含む培養液(F)中で多能性幹細胞が集合した多能性幹細胞集合体を得る工程に加えて、細胞増殖性の観点から、多能性幹細胞を培養液(F)の合計体積に基づいて500〜100,000個/mLの濃度で播種する工程を有することが好ましく、更に好ましくは2,000〜10,000個/mLである。
多能性幹細胞を培養液(F)に播種する方法としては、多能性幹細胞を含む懸濁液をポリペプチド(P)を含む培養液(F)に加えることで行うことができる。
ポリペプチド(P)を含む培養液(F)中で多能性幹細胞が集合した多能性幹細胞集合体を得る工程で用いるポリペプチド(P)の使用量は、ポリペプチド(P)の多能性幹細胞への結合性の観点から、多能性幹細胞を播種する工程において培養液(F)の合計体積に基づいて好ましくは0.001〜1000μg/mLであり、更に好ましくは0.01〜100μg/mLであり、特に好ましくは0.1〜50μg/mLである。
ポリペプチド(P)を含む培養液(F)中で多能性幹細胞が集合した多能性幹細胞集合体を得る工程の後、多能性幹細胞集合体を回収する方法は、特開2005−2106号公報に記載の方法等が利用できる。
本発明の培養方法は、ポリペプチド(P)を含む基質(G)の表面で接着培養する工程を含むことも好ましい。
ポリペプチド(P)を含む基質(G)の表面で接着培養する工程で用いる基質(G)としては、その表面にポリペプチド(P)を有していれば良く、特開2005−2106号公報に記載されたものを適用することができ、ポリペプチド(P)を含むリン酸緩衝液を乾燥してなることが好ましく、基質(G)の表面はリン酸緩衝液で更に洗浄してあることが好ましい。
本発明の基質(G)に含まれるポリペプチド(P)の含有量は、細胞接着性の観点及び安定的に再現性よく培養する観点から、後記の接着培養方法に含まれる多能性幹細胞を播種する工程における基質(G)の表面に存在するポリペプチド(P)の含有量が、基質(G)の単位面積あたり、0.001〜10μg/cmが好ましく、更に好ましくは0.01〜10μg/cm、特に好ましくは0.5〜6.7μg/cmである。
なお、本発明において、前記の単位面積は、細胞が接着し得る表面の表面積を意味し、細胞が入り込まないような微小な凹凸(例えば、1μm以下)は平坦な表面として取扱うが、単位面積を高める目的でリブ(畝)等が設けてあるものについてはそのリブの表面積を単位面積に含まれる。
単位面積あたりのポリペプチド(P)の含有量の測定方法は特に限定されないが、例えば、免疫学的測定法が利用でき、特開2005−2106号公報に記載された方法で測定することができる。
ポリペプチド(P)を含む基質(G)の表面で接着培養する工程は、基質(G)に多能性幹細胞を播種し、30〜50℃(好ましくは35〜40℃)の温度で二酸化炭素を3〜7容量%含む雰囲気下で行うことが好ましく、4.7〜5.3容量%含む雰囲気下で行うことが好ましい。
本発明の培養方法は、ポリペプチド(P)を含む基質(G)の表面で接着培養する工程に加えて、細胞増殖性の観点から、多能性幹細胞を200〜40,000個/cmの濃度で基質(G)に播種する工程を有することが好ましく、更に好ましくは500〜20,000個/cmである。
多能性幹細胞を基質(G)に播種する方法としては、多能性幹細胞を含む懸濁液を基質(G)に加える方法等が挙げられる。多能性幹細胞を含む懸濁液にはピルビン酸ナトリウム、MEM非必須アミノ酸、2−メルカプトエタノール及びKnock Out Serum Replacement等の公知の添加剤を含んでいても良い。
本発明の基質(G)に播種した多能性幹細胞のうち、基質(G)に接着する多能性幹細胞の割合を示す細胞接着率は、細胞の収率及び再現性等の観点から、60〜100%であることが好ましく、更に好ましくは80〜100%である。
細胞接着率は、基質(G)中のポリペプチド(P)の割合を増やすことで上昇し、ポリペプチド(P)の割合を少なくすることで減少する。また、ポリペプチド(P)が、カルボキシル基、スルホ基、アミノ基、アンモニオ基及びヒドロキシル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基(K)が導入されたタンパク質(A3)であると、細胞接着率は高くなり、官能基(K)がカルボキシル基及びスルホ基であると更に好ましい。
多能性幹細胞がマウスES細胞である場合の細胞接着率の測定法の一例を以下に説明する。
基質(G)に、ポリペプチド(P)が付着した部分の面積に対して131.5μL/cmの割合で0.02Mリン酸緩衝液[pH7.2、99.5重量%塩化ナトリウム水溶液を0.85重量%含有するリン酸緩衝生理食塩水(以下、PBS溶液と略記)]を加えて2回洗浄する。
次に、GMEM培地(Invitrogen社製)中に100mMピルビン酸ナトリウム(Sigma aldrich社製)を1質量%、MEM非必須アミノ酸溶液(Invitrogen社製)を1質量%、55mM 2−メルカプトエタノール(Invitrogen社製)を0.18質量%、Knock Out Serum Replacement(Thermo Fisher Scientific社製)を10質量%、1 million units/mL Leukemia Inhibitory Factor (LIF) (MERCK MILLIPORE社製)を0.2質量%でそれぞれ含むマウスES細胞用培地を作製し、作製したマウスES細胞用培地をポリペプチド(P)が付着した部分の面積に対して131.5μL/cmの割合で加え、37℃、二酸化炭素濃度5容量%のインキュベーター内で10分間保存する。10分後、マウスES細胞をポリペプチド(P)が付着した部分の面積に対して2×10個/cmの割合で添加し、更に37℃、二酸化炭素濃度5容量%のインキュベーター中にて2時間放置して培養する。
培養終了後、アスピレーターを用いて培地を除去し、細胞に直接当たらないように注意しながらPBS溶液をポリペプチド(P)が付着した部分の面積に対して131.5μL/cmの割合で加えて2回洗浄した後、アスピレーターを用いてPBS溶液を除去する。次に、マウスES細胞用培地をポリペプチド(P)が付着した部分の面積に対して131.5μL/cmの割合で加え、37℃、二酸化炭素濃度5容量%のインキュベーター内で10分間保存する。10分後、Cell count reagent SF溶液をGMEM培地に対して10μL/100μLの割合で加え、37℃、二酸化炭素濃度5容量%の条件下で2時間静置させる。その後、吸光度計(UERSAmax,Molecular Devices)を用いて、450nm及び650nmの吸光度(それぞれ、OD450及びOD650)を測定する。次いで、あらかじめ作製しておいた細胞数と吸光度(OD450−OD650)との検量線にあてはめ培養液中の接着細胞数(X)を算出する。
ポリペプチド(P)の代わりにフィブロネクチンを0.5μg/cmで基材にコーティングした比較用基質を作製し、同様に細胞を播種し、培養2時間後にPBS溶液で洗浄しない以外は上記と同様の実験を行う。この比較用基質の接着細胞数(X0)を測定し、比較用基質の接着細胞数(X0)に対する培養液中の接着細胞数(X)の割合を細胞接着率として算出する。
なお、この測定においては、播種したすべての細胞が接着したことを顕微鏡観察で確認したものを用いる。
ここでは、多能性幹細胞がマウスES細胞である場合の細胞接着率の測定法を説明したが、多能性幹細胞が他の種類であったとしても、上記方法で用いた培地を別の種類の細胞用の培地に置換することで、同様に細胞接着率を測定することができる。
以下、実施例及び比較例により本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<製造例1>
特表平3−502935号公報に記載の実験例1−3に記載の方法と同様にして、(GAGAGS)配列(28)(Y1)、GAAVTG配列(4)、RGD配列及びSPASAAGY配列(17)が順に13回繰り返してなる構造を有するMn約11万の配列(29)のタンパク質を遺伝子組換え大腸菌により製造し、カラムクロマトグラフィーにて精製してポリペプチド(P−1)を得た。
<製造例2>
ポリペプチド(P−1)の作製方法と同様にして、(GAGAGS)配列(28)(Y1)、GAAPGAS配列(16)、IKVAV配列(36)及びSAGPSAGY配列(27)が順に13回繰り返してなる構造を有するMn約11万のアミノ酸配列(33)のタンパク質を遺伝子組換え大腸菌により製造し、精製してポリペプチド(P−2)を得た。
<製造例3>
ポリペプチド(P−1)50mgとクロロ酢酸(和光純薬工業株式会社製)230mgとを4.5M過塩素酸リチウム水溶液1.5mLに溶解した後、その溶液を攪拌しながら、水酸化ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)100mgを溶解した4.5M過塩素酸リチウム水溶液1.325mLを一定速度で滴下した。室温(約25℃)で1時間攪拌したのち、反応液を透析、凍結乾燥して、ポリペプチド(P−3)を得た。
<製造例4>
「クロロ酢酸230mg」を「クロロエタンスルホン酸ナトリウム(Alfa Aesar社製)405mg」に変更したこと以外は製造例3と同様にして、ポリペプチド(P−4)を得た。
<製造例5>
「クロロ酢酸230mg」を「クロロエタノール(和光純薬工業株式会社製)94mg」に変更したこと以外は製造例3と同様にして、ポリペプチド(P−5)を得た。
<製造例6>
「クロロ酢酸230mg」を「2−クロロエチルアミン(東京化成工業株式会社製)280mg」に変更したこと以外は製造例3と同様にしてポリペプチド(P−6)を得た。
<製造例7>
「クロロ酢酸230mg」を「N,N−ジメチルアミノエチルクロリド(和光純薬工業株式会社製)150mg」に変更したこと以外は製造例3と同様にして、ポリペプチド(P−7)を得た。
<製造例8>
「クロロ酢酸230mg」を「クロロエチルトリメチルアンモニウムクロリド(和光純薬工業株式会社製)380mg」に変更したこと以外は製造例3と同様にして、ポリペプチド(P−8)を得た。
<製造例9>
ポリペプチド(P−2)50mgとクロロエタンスルホン酸ナトリウム(Alfa Aesar社製)405mgとを4.5M過塩素酸リチウム水溶液1.5mLに溶解した後、その溶液を攪拌しながら、水酸化ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)100mgを溶解した4.5M過塩素酸リチウム水溶液1.325mLを一定速度で滴下した。室温(約25℃)で1時間攪拌したのち、反応液を透析、凍結乾燥して、ポリペプチド(P−9)を得た。
<製造例10>
「クロロエタンスルホン酸ナトリウム405mg」を「クロロエチルトリメチルアンモニウムクロリド(和光純薬工業株式会社製)380mg」に変更したこと以外は製造例9と同様にして、ポリペプチド(P−10)を得た。
<ポリペプチド(P−3)中の官能基(K)の平均個数>
ポリペプチド(P−3)1mgを6N 塩酸200μLに加え脱気した。泡が発生しなくなるまで脱気した溶液を減圧密封下で110℃、22時間の加水分解を行った。次に、エバポレーターを用いて6N塩酸(和光純薬工業株式会社製)を試料希釈液(アミノ酸自動分析用試料希釈液 Na型 pH2.20)に置換した後、2mLになるように試料希釈液で希釈した。希釈した溶液を試料希釈液で更に10倍希釈し、0.2μmのフィルターを通し測定用試料とした。
ラベル化試薬としてはオルトフタルアルデヒド、スタンダードとしてはアミノ酸混合標準液H型を用いてポストラベル法によるHPLC測定を行った。HPLC測定での溶出時間からアミノ酸の種類を同定した。
更にポリペプチド(P−3)に代えてポリペプチド(P−1)を用いる以外は同様にして、HPLC測定を行った。
ポリペプチド(P−1)及びポリペプチド(P−3)のHPLC測定でそれぞれ得られたシグナルのピーク面積から、下記式により官能基(K)の平均個数を算出した。
官能基(K)の平均個数=Σ{γ−(βa÷αa)÷(β0÷α0)×γ}
なお、α0はポリペプチド(P−1)中のグリシンのHPLCのピーク面積を、β0はポリペプチド(P−1)中の各アミノ酸のHPLCのピーク面積を、αaはポリペプチド(P−3)中のグリシンのHPLCのピーク面積を、βaはポリペプチド(P−3)中の各アミノ酸のHPLCのピーク面積を、γはポリペプチド(P−1)中の各アミノ酸の数をそれぞれ表す。
なお、HPLC測定は、以下の条件で行った。
<HPLC測定条件>
カラム:Shim−pack Amino−Naカラム温度:60℃
移動相:アミノ酸分析移動相セット(Na 型)(メーカー名:株式会社島津製作所)流速:0.6mL/min検出波長:励起波長350nm,測定波長450nm
<ポリペプチド(P−4)〜(P−8)、(P−9)及び(P−10)中の官能基(K)の平均個数>
ポリペプチド(P−3)に代えてポリペプチド(P−4)〜(P−8)を用いたこと以外はポリペプチド(P−3)の場合と同様にして、ポリペプチド(P−4)〜(P−8)について、化学修飾により導入された官能基(K)の平均個数を求めた。また、ポリペプチド(P−3)に代えてポリペプチド(P−9)〜(P−10)を用い、ポリペプチド(P−1)に代えてポリペプチド(P−2)を用いたこと以外はポリペプチド(P−3)の場合と同様にして、ポリペプチド(P−9)〜(P−10)について、化学修飾により導入された官能基(K)の平均個数を求めた。これらの導入した官能基(K)の種類と共に結果を表1に示す。
Figure 0006714343
<実施例1:培養液中での多能性幹細胞の培養>
1重量%ポリビニルアルコール(JP−18、日本塩ビ・ポバール株式会社製)水溶液をコーティングして細胞が接着しないようにした細胞非接着性スピンナーフラスコ(Double CelStir Spinner Flask、Wheaton社製)に、マウスES細胞用培地[100mM ピルビン酸ナトリウム(Sigma aldrich社製)を1質量%で含み、MEM非必須アミノ酸溶液(Invitrogen社製)を1質量%で含み、55mM 2−メルカプトエタノール(Invitrogen社製)を0.18質量%で含み、Knock Out Serum Replacement(Thermo Fisher Scientific社製)を10質量%で含み、1 million units/mL Leukemia Inhibitory Factor (LIF) (MERCK MILLIPORE社製)を0.2質量%で含むGMEM培地(Invitrogen社製)]9mL、マウスES細胞懸濁液1ml(10個/mL)[ATCC(American Type Culture Collection)製]、ポリペプチド(P−1)溶液100μL(10μg/mL)をそれぞれ加え、37℃、二酸化炭素濃度5容量%のインキュベーター中にて、100rpmの速度で5日間旋回培養を行い、多能性幹細胞集合体が浮遊した培養液を得た。
得られた多能性幹細胞集合体の個数平均粒子径は120μmであった。培養後、細胞培地を遠心管に移し、4℃、1000rpmの条件で5分間遠心分離し上清を除去し、沈殿した細胞をPBS溶液1mLで2回洗浄して培養した細胞(C1−1)を得た。
また、マウスES細胞用培地に代えて、αMEM培地(和光純薬工業社製)に細胞培養用ウシ胎児血清(FBS)(HyClone社製)を10質量%で含んだマウスES細胞誘導用培地を使用したこと以外は、細胞(C1−1)を得る操作と同様の操作を行い、培養した細胞(C1−2)細胞を得た。
培養で得られた多能性幹細胞集合体の個数平均粒子径は、以下の画像解析により求めた。結果を表2に示す。
多能性幹細胞集合体を含む培養液を、384wellプレートに100μLずつ、10wellに添加し、顕微鏡画像(倍率40倍、CKX41、OLYMPUS社製)を取得し、画像解析ソフト(image J、アメリカ国立衛生研究所)及びマイクロメーター(目盛10μm、目盛長1mm)を用いて顕微鏡画像に含まれる細胞集合体の粒子径をそれぞれ測定し、顕微鏡画像に含まれる集合体の数平均値を算出して個数平均粒子径として表2に示す。
また、顕微鏡画像に含まれる細胞集合体のうち、100〜200μmの細胞集合体数の割合を、下記の計算方法で算出して表2に示す。
100〜200μmの細胞集合体の割合(%)={顕微鏡画像に含まれる100〜200μmの細胞集合体数}/{顕微鏡画像に含まれる全細胞集合体数}×100
なお、画像解析ソフトにより得られる数値の単位が「ピクセル」である場合、マイクロメーターにより画像を計測して1ピクセルが何μmに相当するのかを算出し、実際の単位「μm」に換算した。
得られた細胞(C1−1)及び(C1−2)について、以下の方法で細胞数と分化状態の評価を行った。結果を表2に示す。
<細胞数の測定>
得られた細胞(C1−1)1mLをマイクロチューブ(WATSON社製)に移し、1000rpmで10分間遠心分離した。上清を捨て、更に細胞溶解液(0.02重量% ドデシル硫酸ナトリウム、0.15M 塩化ナトリウム、1.5mM クエン酸3ナトリウムを含む)を1mL加え、37℃で3時間加温した。その後、100μLを96穴black plate(Corning社製)に移した。更に蛍光基質溶液[0.1重量% Hoechst33258(ナカイテスク社製)、0.02重量% ドデシル硫酸ナトリウム、0.15M 塩化ナトリウム、1.5mM クエン酸3ナトリウムを含む]を100μL加え、励起波長355nm、吸収波長460nmで蛍光強度を測定した。細胞数が分かっているサンプルで同様に蛍光強度を測定して作製した細胞数と蛍光強度との検量線を用いて蛍光強度から細胞数を算出した。得られた細胞(C1−2)についても同様に細胞数を算出した。
さらに、下記の比較例1の細胞(C’1−1)及び(C’1−2)についても同様に細胞数の測定を行い細胞数を算出した。下記の細胞(C’1−1)の細胞数に対する細胞(C1−1)の細胞数の倍数、及び、下記の細胞(C’1−2)の細胞数に対する細胞(C1−2)の細胞数の倍数を表2に示す。
培養後に得られた細胞数が多いほど収率が高くなり、培養条件として好ましいことを意味する。
<未分化状態の評価>
得られた細胞(C1−1)5mLを、15mL遠心管チューブ(アズワン社製)に移し、1000rpmで10分間遠心分離した。上清を捨て、更にTRIzol(Life Technologies社製)1mLを加え、室温で5分間静置した。更にクロロホルム(和光純薬工業株式会社製)200μLを加え、氷中に15分間静置した。その後、14,000gで10分間、4℃で遠心分離し、上清を新しいマイクロチューブに移した。そこへ、イソプロパノール(和光純薬工業株式会社製)500μL加え、−20℃で1時間静置し、14,000gで10分間、4℃で遠心分離した。上清を捨て、75%エタノールを1mL加え、14,000gで10分間、4℃で遠心分離した。上清を除去し、風乾し、沈殿が完全に乾燥した後、蒸留水(大塚製薬株式会社製)を20μL加え、完全に溶解させた。
SuperScript VILO cDNA Synthesis Kit(Life Technologies社製)のプロトコールに従い、cDNAを合成し、得られたcDNAと下記のプライマーを用いてリアルタイムPCR測定を行い、未分化状態のマーカーとなるマーカー遺伝子の発現量から細胞の分化状態を解析した。未分化マーカー遺伝子の発現量はハウスキーピング遺伝子であるGAPDH遺伝子の発現量を1.0とした場合の相対値に換算し、更に下記の比較例1の細胞(C’1−1)について同様に行って得られた未分化マーカー遺伝子の発現量を1.0とした場合の相対値として算出し、分化状態を評価した。結果を表2に示す。未分化マーカー遺伝子の発現量が1.0に近いほど未分化状態を維持していることを示す。
<分化状態の評価>
また、細胞(C1−2)も同様の操作を行い、cDNAを合成し、得られたcDNAと下記のプライマーを用いてリアルタイムPCR測定を行い、分化状態のマーカーとなるマーカー遺伝子の発現量から細胞の分化状態を解析した。各分化マーカー遺伝子の発現量はハウスキーピング遺伝子であるGAPDH遺伝子の発現量を1.0とした場合の相対値に換算し、更に下記の比較例1の細胞(C’1−2)について同様に行って得られた各分化マーカー遺伝子の発現量を1.0とした場合の相対値として算出し、分化状態を評価した。結果を表2に示す。各分化マーカー遺伝子の発現量の値が高いほど分化マーカー遺伝子に対応する細胞への分化が進んでいることを示す。
<未分化状態の評価及び分化状態の評価で用いたプライマー>
・未分化マーカー遺伝子:Nanog(Nanog−F:GAA TTC TGG GAA CGC CTC ATC及びNanog−R:CCT TGT CAG CCT CAG GAC TTG)。
・分化マーカー遺伝子:
(i)内胚葉マーカー遺伝子 Sox17(Sox17−F:GGA CAC GAC TGC GGA GTG AA及びSox17−R:GGT CGG CAA CCG TCA AAT G)。
(ii)中胚葉マーカー遺伝子 Brachyury(Brachyury−F:GAA CAG CTC TCC AAC CTA TG及びBrachyury−R:AGA CTG GGA TAC TGG CTA GAG)。
(iii)外胚葉マーカー遺伝子 Nestin(Nestin−F:GGG CCA GCA CTC TTA GCT TTG ATA及びNestin−R:TGA GCC TTC AGG GTG ATC CAG)。
・ハウスキーピング遺伝子:GAPDH(GAPDH−F:TGT GTC CGT CGT GGA TCT GA及びGAPDH−R:TTG CTG TTG AAG TCG CAG GAG)。
<実施例2〜10>
ポリペプチド(P−1)を表2のものに変更したこと以外は実施例1の細胞(C1−1)を得る操作と同様にしてマウスES細胞の培養を行い、細胞(C2−1)〜(C10−1)を得た。また、ポリペプチド(P−1)を表2のものに変更したこと以外は実施例1の細胞(C1−2)を得る操作と同様にしてマウスES細胞の培養を行い、細胞(C2−2)〜(C10−2)を得た。また培養で得られた細胞集合体の個数平均粒子径及び100〜200μmの細胞集合体の割合を実施例1と同様に測定した。下記の細胞(C’1−1)の細胞数に対する細胞(C2−1)〜(C10−1)の細胞数の倍数、及び、下記の細胞(C’1−2)の細胞数に対する細胞(C2−2)〜(C10−2)の細胞数の倍数を表2に示す。
細胞(C2−1)〜(C10−1)について実施例1の細胞(C1−1)と同様に細胞数と未分化状態の評価を行った。結果を表2に示す。また、細胞(C2−2)〜(C10−2)について、実施例1の細胞(C1−2)と同様に分化状態の評価を行った。結果を表2に示す。
<比較例1>
ポリペプチド(P−1)を使用しない以外は実施例1の細胞(C1−1)を得る操作と同様にして細胞(C’1−1)を得た。また、ポリペプチド(P−1)を使用しない以外は実施例1の細胞(C1−1)を得る操作と同様にして細胞(C’1−2)を得た。培養で得られた細胞集合体の個数平均粒子径及び100〜200μmの細胞集合体の割合を実施例1と同様に測定した。細胞(C’1−1)について実施例1の細胞(C1−1)と同様に細胞数と未分化状態の評価を行った。結果を表2に示す。また、細胞(C’1−2)について、実施例1の細胞(C1−2)と同様に分化状態の評価を行った。結果を表2に示す。
Figure 0006714343
表2に示すように、本発明の実施例1〜10は、比較例1との比較において得られた細胞数が多く、粒子径が100〜200μmの細胞集合体の割合が大きかった。更に、ポリペプチド(P−1)、(P−3)、(P−4)、(P−6)及び(P−7)を含む培養液中で培養した場合は未分化状態を維持しており、ポリペプチド(P−2)、(P−9)及び(P−10)を含む場合は中胚葉に、ポリペプチド(P−5)を含む場合は外胚葉に、ポリペプチド(P−8)を含む場合は内胚葉に特定して分化していることがわかる。
<実施例11:基質(G−1)を用いた培養>
ポリペプチド(P―1)1mgを4.5M過塩素酸リチウム水溶液50μLに溶解し、更にPBS溶液で希釈して、50μg/mLのポリペプチド(P−1)溶液を作製した。この溶液を60mm dishのポリスチレンプレート(Corning社製)1枚にそれぞれ2mL加え、37℃で30分間放置した。アスピレーターを用いて溶液を除去した後、PBS溶液2mLで2回洗浄し、基質(G−1)を得た。
以下の方法で基質表面に存在するポリペプチド量を測定した結果、基質(G−1)には、基質(G−1)の単位面積あたり6.625μg/cmのポリペプチド(P−1)が存在していた。
続いて、マウスES細胞用培地にマウスES細胞を3.33×10個/mLの濃度で懸濁して作製した懸濁液を基質(G−1)に加え、更に37℃、二酸化炭素濃度5容量%のインキュベーター内で4日間培養し、細胞(C11−1)を得た。
また、マウスES細胞用培地に代えて、マウスES細胞誘導用培地を使用したこと以外は、細胞(C11−1)を得る操作と同様の操作を行い、培養した細胞(C11−2)細胞を得た。
なお、播種時のマウスES細胞は、4,800個/cmの濃度であった。
細胞(C11−1)及び(C11−2)について下記の方法で細胞接着率及び細胞数を測定し、下記方法で分化状態の評価を行った。結果を表3に示す。
<基質表面に存在するポリペプチドの量の測定方法>
Micro BCATM protein assay kit(THERMO Fisher Scientific社製)のReagent A溶液とReagent B溶液とReagent C溶液とを25:24:1の比率で混合し、混合液(M)を得た。
基質(G−1)に混合液(M)を1mL加え、37℃で2時間静置した。
2時間後に、静置後の混合物を96穴プレート(日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)に100μLずつ8穴に分注し、次いで450nm(対照波長630nm)の吸光度でプレートリーダー(コロナ電気株式会社製MTA−32)を用い表面のポリペプチド量を測定し、8穴分(8ウェル分)の平均の平均値とあらかじめウシ血清アルブミンにより作成した検量線とから単位面積当たりのポリペプチド量を算出した。
<細胞接着率及び細胞数の測定>
[細胞接着率]
基質(G−1)に、ポリペプチド(P−1)を付着させた部分の面積に対して131.5μL/cmの割合でPBS溶液を加えて2回洗浄した。次に、GMEM培地中に100mMピルビン酸ナトリウム(Sigma aldrich社製)を1質量%、MEM非必須アミノ酸溶液(Invitrogen社製)を1質量%、55mM 2−メルカプトエタノール(Invitrogen社製)を0.18質量%、Knock Out Serum Replacement(Thermo Fisher Scientific社製)を10質量%、1 million units/mL Leukemia Inhibitory Factor (LIF) (MERCK MILLIPORE社製)を0.2質量%でそれぞれ含むマウスES細胞用培地を作製し、作製したマウスES細胞用培地をポリペプチド(P−1)が付着した部分の面積に対して131.5μL/cmの割合で加え、37℃、二酸化炭素濃度5容量%のインキュベーター内で10分間保存した。10分後にマウスES細胞をポリペプチド(P−1)が付着した部分の面積に対して2×10個/cmの割合で添加し、更に37℃、二酸化炭素濃度5容量%のインキュベーター中にて2時間放置して培養した。
培養終了後、アスピレーターを用いて培地を除去し、細胞に直接当たらないように注意しながらPBS溶液をポリペプチド(P)が付着した部分の面積に対して131.5μL/cmの割合で加えて2回洗浄した後、アスピレーターを用いてPBS溶液を除去した。次に、マウスES細胞用培地をポリペプチド(P−1)が付着した部分の面積に対して131.5μL/cmの割合で加え、37℃、二酸化炭素濃度5容量%のインキュベーター内で10分間保存した。10分後にCell count reagent SF溶液をGMEM培地に対して10μL/100μLの割合で加え、37℃、二酸化炭素濃度5容量%の条件下で2時間静置させ、吸光度計(UERSAmax,Molecular Devices)を用いて、450nm及び650nmの吸光度(それぞれ、OD450及びOD650)を測定し、あらかじめ作製しておいた細胞数と吸光度(OD450−OD650)との検量線にあてはめ培養液中の接着細胞数(X)を算出した。
ポリペプチド(P−1)の代わりにフィブロネクチンを0.5μg/cmで基材にコーティングした比較用基質を作製し、同様に細胞を播種し、培養2時間後にPBS溶液で洗浄しない以外は上記と同様の実験を行い、比較用基質の接着細胞数(X0)を同様に測定し、比較用基質の接着細胞数(X0)に対する培養液中の接着細胞数(X)の割合を細胞接着率として算出した。
[細胞数の測定]
得られた細胞(C11−1)の上清をアスピレーターを用いて除去した後、PBS溶液2mLで2回洗浄した。洗浄した後、上清を捨て、更に細胞溶解液(0.02重量% ドデシル硫酸ナトリウム、0.15M 塩化ナトリウム、1.5mM クエン酸3ナトリウムを含む)を1mL加え、37℃で3時間加温した。その後、100μLを96穴black plate(Corning社製)に移した。更に蛍光基質溶液[0.1重量% Hoechst33258(ナカイテスク社製)、0.02重量% ドデシル硫酸ナトリウム、0.15M 塩化ナトリウム、1.5mM クエン酸3ナトリウムを含む]を100μL加え、励起波長355nm、吸収波長460nmで蛍光強度を測定した。細胞数が分かっているサンプルで同様に蛍光強度を測定して作製した細胞数と蛍光強度との検量線を用いて蛍光強度から細胞数を算出した。また、得られた細胞(C11−2)についても同様に細胞数を算出した。
さらに、下記比較例2の細胞(C’2−1)及び(C’2−2)についても同様に細胞数の測定を行い細胞数を算出した。下記の細胞(C’2−1)の細胞数に対する細胞(C11−1)の細胞数の倍数、及び、下記の細胞(C’2−2)の細胞数に対する細胞(C11−2)の細胞数の倍数を表3に示す。
<未分化状態の評価>
得られた細胞(C11−1)の上清をアスピレーターを用いて除去した後、PBS溶液2mLで2回洗浄した。洗浄した後、上清を捨て、更にTRIzol(Life Technologies社製)1mLを加え、室温で5分間静置した。更にクロロホルム(和光純薬工業株式会社製)200μLを加え、氷中に15分間静置した。その後、14,000gで10分間、4℃で遠心分離し、上清を新しいマイクロチューブに移した。そこへ、イソプロパノール(和光純薬工業株式会社製)500μL加え、−20℃で1時間静置し、14,000gで10分間、4℃で遠心分離した。上清を捨て、75%エタノールを1mL加え、14,000gで10分間、4℃で遠心分離した。上清を除去し、風乾し、沈殿が完全に乾燥した後、蒸留水(大塚製薬株式会社製)を20μL加え、完全に溶解させた。
SuperScript VILO cDNA Synthesis Kit(Life Technologies社製)のプロトコールに従い、cDNAを合成し、得られたcDNAと下記のプライマーを用いてリアルタイムPCR測定を行い、未分化状態のマーカーとなるマーカー遺伝子の発現量から細胞の分化状態を解析した。未分化マーカー遺伝子の発現量はハウスキーピング遺伝子であるGAPDH遺伝子の発現量を1.0とした場合の相対値に換算し、更に下記の比較例2の細胞(C’2−1)について同様に行って得られた未分化マーカー遺伝子の発現量を1.0とした場合の相対値として算出し、分化状態を評価した。結果を表2に示す。未分化マーカー遺伝子の発現量が1.0に近いほど未分化状態を維持していることを示す。
<分化状態の評価>
また、細胞(C11−2)も同様の操作を行い、cDNAを合成し、得られたcDNAと下記のプライマーを用いてリアルタイムPCR測定を行い、分化状態のマーカーとなるマーカー遺伝子の発現量から細胞の分化状態を解析した。各分化マーカー遺伝子の発現量はハウスキーピング遺伝子であるGAPDH遺伝子の発現量を1.0とした場合の相対値に換算し、更に下記の比較例2の細胞(C’2−2)について同様に行って得られた各分化マーカー遺伝子の発現量を1.0とした場合の相対値として算出し、分化状態を評価した。
<実施例12〜20>
ポリペプチド(P−1)を表3のものに変更したこと以外は実施例11の細胞(C11−1)を得る操作と同様にして、細胞(C12−1)〜(C20−1)を得た。また、ポリペプチド(P−1)を表3のものに変更したこと以外は実施例1の細胞(C11−2)を得る操作と同様にしてマウスES細胞の培養を行い、細胞(C12−2)〜(C20−2)を得た。また、実施例11〜20について、実施例1と同様に細胞接着率及び細胞数を測定した。下記の細胞(C’2−1)の細胞数に対する細胞(C12−1)〜(C20−1)の細胞数の倍数、及び、下記の細胞(C’2−2)の細胞数に対する細胞(C12−2)〜(C20−2)の細胞数の倍数を表3に示す。
細胞(C12−1)〜(C20−1)について実施例11の細胞(C11−1)と同様に細胞数と未分化状態の評価を行った。また、細胞(C12−2)〜(C20−2)について、実施例11の細胞(C11−2)と同様に分化状態の評価を行った。結果を表3に示す。
<比較例2>
ポリペプチド(P−1)の代わりに、20μg/mLゼラチン溶液(SIGMA aldrich社製)を使用したこと以外は実施例11の細胞(C11−1)を得る操作と同様にして、細胞(C’2−1)を得た。また、ポリペプチド(P−1)の代わりに、20μg/mLゼラチン溶液(SIGMA aldrich社製)を使用したこと以外は実施例11の細胞(C11−2)を得る操作と同様にして、細胞(C’2−2)を得た。
細胞接着率及び細胞数は、実施例11と同様に測定した。細胞(C’2−1)について実施例11の細胞(C11−1)と同様に未分化状態の評価を行った。結果を表3に示す。
細胞(C’2−2)について実施例11の細胞(C11−2)と同様に分化状態の評価を行った。結果を表3に示す。
Figure 0006714343
表3に示すように、本発明の実施例11〜20は比較例2との比較において細胞接着率が高く、また得られた細胞数が多い。更に、ポリペプチド(P−1)、(P−3)、(P−4)、(P−6)及び(P−7)を含む培養液中で培養した場合は未分化状態を維持しており、ポリペプチド(P−2)、(P−9)及び(P−10)を含む場合は中胚葉に、ポリペプチド(P−5)を含む場合は外胚葉に、ポリペプチド(P−8)を含む場合は内胚葉に特定して分化していることがわかる。
本発明の多能性幹細胞の培養方法は、高価な増殖因子を用いることなく多能性幹細胞の分化多能性を維持したまま動物由来成分を混入させることなく増殖させることや、特定の分化方向へ誘導をかけることができる。そのため、治療等に極めて有用である。

Claims (5)

  1. リペプチド(P)の存在下で多能性幹細胞を培養する工程を含む多能性幹細胞の培養方法であって、
    前記ポリペプチド(P)が、RGD配列及びGAGAGS配列(1)を含むタンパク質(A1)、IKVAV配列(36)及びGAGAGS配列(1)を含むタンパク質(A2)並びに下記タンパク質(A3)からなる群から選ばれる少なくとも1種のタンパク質であり、
    前記タンパク質(A1)が、RGD配列がGAGAGS配列(1)又はポリペプチド鎖(Y)と交互に位置する配列であり、
    前記ポリペプチド鎖(Y)が、GAGAGS配列(1)が2個以上連続して結合した配列であり、
    前記タンパク質(A1)において、GAGAGS配列(1)とRGD配列との個数比率[(RGD配列の個数)/{GAGAGS配列(1)の個数}]が、0.005〜0.5であり、
    前記タンパク質(A2)が、IKVAV配列(36)がGAGAGS配列(1)又は前記ポリペプチド鎖(Y)と交互に位置する配列であり、
    前記タンパク質(A2)において、GAGAGS配列(1)とIKVAV配列(36)との個数比率[(IKVAV配列(36)の個数)/{GAGAGS配列(1)の個数}]が、0.005〜0.5であり、
    前記多能性幹細胞を培養する工程では、前記ポリペプチド(P)を培養液(F)に溶解して、前記ポリペプチド(P)を含む前記培養液(F)中で前記多能性幹細胞が集合した多能性幹細胞集合体を得ることを特徴とする多能性幹細胞の培養方法。
    タンパク質(A3):タンパク質(A1)又はタンパク質(A2)にカルボキシル基、スルホ基、アミノ基、アンモニオ基及びヒドロキシル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基(K)を導入した化学修飾タンパク質。
  2. 前記多能性幹細胞が、胚性幹細胞(ES細胞)、核移植ES細胞(ntES細胞)及び人工多能性幹細胞(iPS細胞)からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の多能性幹細胞の培養方法。
  3. 前記多能性幹細胞集合体の個数平均粒子径が、50〜500μmである請求項1又は2に記載の多能性幹細胞の培養方法。
  4. 更に、前記多能性幹細胞を培養液(F)の合計体積に基づいて500〜100,000個/mLの濃度で播種する工程を含む請求項1〜3のいずれかに記載の多能性幹細胞の培養方法。
  5. 多能性幹細胞を播種する工程における前記ポリペプチド(P)の含有量が培養液(F)の合計体積に基づいて0.001〜1000μg/mLである請求項に記載の多能性幹細胞の培養方法。
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