(本発明の概要)
歯牙の根管を切削拡大する治療は、人により根管が湾曲している程度や根管が石灰化して閉塞している状況などが異なっており、非常に難しい治療である。特に、従来の根管治療器では、単純な回転運動で切削工具を駆動することしか行わないため、根管の形状に沿った切削拡大を行えなかったり、切削工具に負荷がかかり破損したりする可能性があった。そこで、従来の根管治療器では切削拡大が困難な歯牙の根管については、術者が手指で切削工具を操作して切削拡大を行っていた。
術者が手指で切削工具を操作して困難な切削拡大が行なえるのは、根管の形状や状況に合わせて切削工具を操作しているためである。そこで、本発明に係る根管治療器では、モータで切削工具を駆動する根管治療器でありながら単純な回転運動で切削工具を駆動するのではなく、根管の形状や状況にあった駆動パターンを複数組み合わせて切削工具を駆動している。
まず、切削工具の駆動は、以下に説明する5つの基本的な駆動パターンに分解することができる。本発明に係る根管治療器でも、この5つの基本的な駆動パターンを組み合わせて切削工具を駆動する。具体的に、図1は、本発明に係る根管治療器に用いる基本的な駆動パターンを説明するための図である。図1に示す矢印は、切削工具の回転方向を示している。図1においては、ヘッド部に取付ける切削工具の側から切削工具の先端方向を向いた場合を基準に回転方向が記載されている。なお、通常の切削工具は、時計回り方向に回転させると歯牙の根管を切削することができるが、反時計回り方向に回転させると歯牙の根管を切削することができない或いは切削効率が低下する。そのため、以下、時計回り方向の方向を切削方向、反時計回り方向を非切削方向とし、時計回り方向の回転角度を切削方向の回転角度、反時計回り方向の回転角度を非切削方向の回転角度として定義する。もちろん、切削工具5には、反時計回り方向の方向に駆動した場合に歯牙の根管を切削することができるが、時計回り方向の駆動した場合には歯牙の根管を切削することができない或いは切削効率が低下する切削工具を採用することも可能であり、この場合には切削方向と非切削方向との関係が逆となる。
図1(a)に示す基本的な駆動パターンは、切削方向に180度回転、非切削方向に90度回転する。図1(b)に示す基本的な駆動パターンは、切削方向に90度回転、非切削方向に180度回転する。図1(c)に示す基本的な駆動パターンは、切削方向に180度回転、非切削方向に180度回転する。図1(d)に示す基本的な駆動パターンは、切削方向に360度回転、非切削方向に0度回転する。なお、図1(d)に示す基本的な駆動パターンは、通常、連続して切削方向に回転することを示し、例外的に、切削方向に360度回転だけ回転して停止することも含むものとする。図1(e)に示す基本的な駆動パターンは、切削方向に0度回転、非切削方向に360度回転する。なお、図1(e)に示す基本的な駆動パターンも、通常、連続して非切削方向に回転することを示し、例外的に、非切削方向に360度回転だけ回転して停止することも含むものとする。
図1に示す基本的な駆動パターンで記載された回転角度は例示であって、図1(a)に示す基本的な駆動パターンは、少なくとも切削方向の回転角度が非切削方向の回転角度より大きければよい。また、図1(b)に示す基本的な駆動パターンは、少なくとも切削方向の回転角度が非切削方向の回転角度より小さければよい。図1(c)に示す基本的な駆動パターンは、切削方向の回転角度と非切削方向の回転角度とが同じであればよい。
術者が手指で切削工具を操作して切削拡大を行う場合、例えば、術者は、図1(a)に示す基本的な駆動パターンのように切削方向に回転させながら切削拡大していき、強い抵抗を感じると非切削方向に回転させて切削工具の食い込みを解除する。さらに、術者は、根管の湾曲が大きくなる部分になると、図1(b)に示す基本的な駆動パターンのように切削方向の回転角度を非切削方向の回転角度よりも小さくして、湾曲した根管の内側の部分と外側の部分との切削度合いが同等となるようなに調整する。
術者が根管の形状や状況に合わせて基本的な駆動パターンを切替える代わりに、本発明に係る根管治療器では、異なる駆動パターン組み合わせて1つの駆動シーケンスとして予め設定しておき、当該駆動シーケンスに基づき切削工具を駆動する。つまり、駆動シーケンスでは、同じ駆動パターンを繰返すだけのシーケンスは含まれない。図2は、本発明に係る根管治療器に用いる駆動シーケンスの一例を説明するための図である。図2に示す実線の矢印は、切削工具の回転方向を示し、破線の矢印は駆動パターンを組み合わせたSET(後述)の繰返しを示している。図2においても、ヘッド部に取付ける切削工具の側から切削工具の先端方向を向いた場合を基準に回転方向が記載されている。そのため、時計回り方向の矢印が切削工具の切削方向の回転を、反時計回り方向の矢印が切削工具の非切削方向の回転をそれぞれ示している。
なお、本願において、駆動パターンとは、図1に示す基本的な駆動パターン以外に、当該基本的な駆動パターンを組み合わせたパターンも含むものとし、これを狭義の駆動パターンと定義する。
例えば、図1(a)に示す基本的な駆動パターンのみ、または図1(a)に示す基本的な駆動パターンと図1(c)に示す基本的な駆動パターンとを組み合わせたパターンを1つの狭義の駆動パターンとしてもよい。
次に、繰返しを含めた駆動パターンの単位をセット(SET)とし、広義の駆動パターンと定義する。例えば、図1(a)に示す基本的な駆動パターンのみを4回繰返す、または図1(a)に示す基本的な駆動パターンと図1(c)に示す基本的な駆動パターンとを組み合わせた駆動パターンを3回繰返すことをそれぞれ1つのセット(SET)とする。
次に、異なるセット(SET)を2つ以上組み合わせたものを駆動シーケンスとする。つまり、駆動シーケンスは、狭義または広義の駆動パターンを組み合わせたものである。
次に、繰返しを含めた駆動パターンの単位をセット(SET)とし、広義の駆動パターンと定義する。例えば、図1(a)に示す基本的な駆動パターンのみを4回繰返す、または図1(a)に示す基本的な駆動パターンと図1(c)に示す基本的な駆動パターンとを組み合わせた駆動パターンを3回繰返すことを1つのセット(SET)とする。
次に、異なるセット(SET)或いは異なる駆動パターンを組み合わせたものを駆動シーケンスとする。つまり、駆動シーケンスは、狭義または広義の駆動パターンを組み合わせたものである。
図2に示す駆動シーケンスは、SET1とSET2とで構成され、SET1が実行された後SET2が実行され、さらにSET2が実行された後SET1に戻り、その後交互に繰返し実行される。SET1は、図1(a)に示す基本的な駆動パターンを4回繰返すことで構成されている。つまり、SET1の駆動では、切削工具5を切削方向に合計720度、非切削方向に合計360度それぞれ回転させているので、結果的に切削工具5を切削方向に1周させている。SET2は、図1(b)に示す基本的な駆動パターンを4回繰返すことで構成されている。つまり、SET2の駆動では、切削工具5を切削方向に合計360度、非切削方向に合計720度それぞれ回転させているので、結果的に切削工具5を非切削方向に1周させている。
SET2の駆動は、切削工具を切削方向に90度回転させ、非切削方向に180度回転させる駆動パターンである。SET2の駆動は、特に湾曲が大きい根管に対し、湾曲した根管の内側の部分と外側の部分との切削度合いが同等となることを狙って切削拡大する方法である。このSET2の駆動は、バランスドフォーステクニック(Balanced force technique)と呼ばれる駆動で、切削工具が根管の形状に沿うように切削拡大する駆動である。
このように、図2に示す駆動シーケンスでは、SET1を主として根管を切削拡大させる機能として用い、SET2を主として根管の形状を維持させる機能として用いている。なお、図2に示す駆動シーケンスでは、SET1の駆動で切削工具を非切削方向にも回転させるので、切削工具の食い込みを防止して、切削工具の破折を低減することもできる。また、図2に示す駆動シーケンスでは、従来、術者が根管の形状や状況に合わせて選択的に行っていたバランスドフォーステクニックの駆動を、駆動シーケンスの中の1つの駆動パターンとして含ませている。そのため、1つの駆動シーケンスの駆動期間内に必ずバランスドフォーステクニックの駆動を行う期間が存在することになり、術者の能力に関わらず歯牙の根管を適切に切削することができる。
なお、1つの駆動シーケンスにおいて、切削方向、非切削方向の回転角度の合計が同一であれば、通常のファイルであっても、切削方向と非切削方向との関係が逆となるファイルであっても、同等の効果を得ることができる。
なお、図1(c)に示す基本的な駆動パターンは、切削工具を切削方向に90度、非切削方向に90度交互に回転させる切削方法であり、閉塞している根管の予備拡大や穿通に有効な方法である。図1(c)に示す基本的な駆動パターンは、ウォッチワインディングテクニック(Watch winding technique)と呼ばれる駆動である。駆動シーケンスに図1(c)に示す基本的な駆動パターンを含ませた場合、1つの駆動シーケンスの駆動期間内に必ずウォッチワインディングテクニックの駆動を行う期間が存在することになり、術者の能力に関わらず歯牙の根管を適切に切削することができる。
また、図2に示す駆動シーケンスでは、切削方向に回転する切削回転角度と非切削方向に回転する非切削回転角度とのうち、少なくとも一方の角度を複数種類含んでいる。具体的に、図2に示す駆動シーケンスでは、SET1の駆動で切削工具を切削方向に180度回転させ、SET2の駆動で切削工具を切削方向に90度回転させており、同じ方向の角度を複数種類含んでいる。なお、SET2の駆動では、切削方向の回転角度(90度)が、非切削方向の回転角度(180度)より小さい回転角度となっている。
さらに、根管治療においては、径が太い切削工具で根管の切削拡大する前に、径が細い切削工具で予め切削を行って、進入経路(グライドパスと呼ばれることがある)を確保することが必要となる場合がある。しかし、径が細い切削工具をモータで駆動した場合、切削工具の破損の可能性が、径が太い切削工具に比べて高くなる。そこで、本発明に係る根管治療器では、駆動シーケンスの中に切削工具に加わる負荷を低減する駆動パターン(例えば、図1(b))を含ませることで、径が細い切削工具でもモータで駆動することを可能になる。よって、本発明に係る根管治療器では、径が細い切削工具で予め進入経路を確保する切削を安全、確実に行うことができる。
以上に説明した本発明の概要について、さらに具体的な実施の形態として図面を参照しながら以下に説明する。
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る歯科用治療装置は、歯科用根管治療のハンドピースを組み込んだ根管拡大及び根管長測定システムを含む根管治療器である。しかし、本発明に係る歯科用治療装置は、根管治療器に限定されるものではなく、同様の構成を有する歯科用治療装置について適用することができる。
[歯科用治療装置の構成]
図3は、本発明の実施の形態1に係る根管治療器の外観の構成を示す概略図である。図4は、本発明の実施の形態1に係る根管治療器の機能の構成を示すブロック図である。図3に示す根管治療器100は、歯科用根管治療のためのハンドピース1、モータユニット6、制御ボックス9を含んでいる。
歯科用根管治療のハンドピース1は、ヘッド部2と、ヘッド部2に連接される細径のネック部3と、該ネック部3に連接され手指によって把持される把持部4とを備えている。そして、把持部4の基部には、ヘッド部2に保持される切削工具5(ファイル或いはリーマなど)を回転駆動させるためのモータユニット6が着脱自在に接続される。ハンドピース1にモータユニット6が連結された状態で歯科用のインスツルメント10を構成する。
モータユニット6は、図4に示すようにマイクロモータ7を内蔵し、該マイクロモータ7へ電源を供給する電源供給用リード線71および、後述する根管長測定回路12へ信号を伝送する信号用リード線8などを内装するホース61を介して、制御ボックス9に連結してある。ここで、信号用リード線8は、モータユニット6及びハンドピース1内を経て切削工具5と電気的に導通し、電気信号を伝達する導電体の一部である。なお、切削工具5は、根管長測定回路12の一方の電極となる。
制御ボックス9は、制御部11、比較回路110、根管長測定回路12、モータドライバ13、設定部14、操作部15、表示部16および報知部17などを備えている。なお、制御ボックス9には、図3に示すように、本体側部にインスツルメント10を不使用時に保持するためのホルダ10aを取付けてある。また、制御ボックス9には、フートコントローラ18を制御部11に連結し、リード線19を根管長測定回路12に連結してある。リード線19は、制御ボックス9から引き出されているが、ホース61の途中から分岐するように引き出してもよい。リード線19の先端には、患者の唇に掛けられる口腔電極19aを電気的に導通する状態で取付けてある。なお、口腔電極19aは、根管長測定回路12の他方の電極となる。
制御部11は、根管拡大及び根管長測定システム全体の制御を行うもので、主要部はマイクロコンピュータで構成されている。制御部11には、比較回路110、根管長測定回路12、モータドライバ13、設定部14、操作部15、表示部16、報知部17およびフートコントローラ18を接続してある。制御部11は、切削対象物を切削する切削工具5の回転方向を制御している。具体的に、制御部11は、切削工具5を時計回り(右回りともいう)方向に回転させる正転駆動、切削工具5を反時計回り(左回りともいう)方向に回転させる逆転駆動、および切削工具5を時計回り方向と反時計回り方向とに交互に回転させるツイスト駆動(レシプロ駆動)のいずれかの制御を行う。ここで、切削工具の回す方向(時計回り方向や反時計回り方向)は、ヘッド部2に取付ける切削工具5の側から切削工具5の先端方向を向いた場合を基準に考えるものとする。さらに、制御部11は、時計回りの回転角度、回転速度、あるいは回転角速度(回転数)、反時計回りの回転角度、回転速度、あるいは回転角速度(回転数)のそれぞれのパラメータを変更して、切削工具5を回転させる駆動の制御を行うことができる。
ここで、回転角度は、回転角速度(回転数)を一定にした場合の回転時間(駆動期間ともいう)などで規定してもよい。また、回転角度は、駆動電流量やトルク量などの切削工具5の駆動に関連する量で規定してもよい。なお、以下の説明では回転角度を用いて説明するが、回転回数と置き換えてもよい。たとえば、切削工具5の回転回数を2分の1回転とすることと、切削工具5が180度回転することとは同じことである。また、切削工具5の回転速度が120回毎分と一定の場合に切削工具5を0.25秒駆動することと、切削工具5が180度回転することとは同じことである。厳密には切削工具やモータのかかる負荷によって、例えば制御上の回転時間と実際の回転角度とは対応関係を補正しなければならない場合があるが、補正量は極めて小さく本発明の実施においては無視することができる。以降の実施の形態では、回転数を用いて切削工具5の回転の速さを表す。なお、回転数の単位には、回毎分(rpm:revolutions per minute)を用いる。
比較回路110は、切削工具5に加わる負荷を検出するために必要な構成であり、当該負荷の検出が必要な場合に選択して設けることが可能な構成である。比較回路110は、モータドライバ13により切削工具5を時計回り方向または反時計回り方向に回転させているいずれかの時点で、負荷の比較を行うことが可能である。具体的に、比較回路110は、切削工具5を時計回り方向または反時計回り方向に所定の回転角度(例えば180度)回転させた後に、切削工具5に加わる負荷と基準負荷とを比較することができる。
根管長測定回路12は、切削工具5の先端の根管内での位置を検出するために必要な構成であり、当該位置の検出が必要な場合に選択して設けることが可能な構成である。根管長測定回路12は、歯牙の根管内に挿入した切削工具5を一方の電極、患者の唇に掛けた口腔電極19aを他方の電極として閉回路を構成する。そして、根管長測定回路12は、切削工具5と口腔電極19aとの間に測定電圧を印加し、切削工具5と口腔電極19aとの間のインピーダンスを計測することによって、歯牙の根尖位置から切削工具5の先端までの距離を測定することができる。切削工具5の先端が根尖位置に到達したことを根管長測定回路12が検出したとき、切削工具の挿入量、すなわち根管口から切削工具の先端までの距離を根管長とすることができる。なお、切削工具5と口腔電極19aとの間のインピーダンスを計測して、根管長を測定する電気的根管長測定方法は公知のものであり、実施の形態1に係る根管治療器100には、公知になっているすべての電気的根管長測定方法を適用することができる。
モータドライバ13は、電源供給用リード線71を介してマイクロモータ7に接続し、制御部11からの制御信号に基づいて、マイクロモータ7に供給する電源を制御している。モータドライバ13は、マイクロモータ7に供給する電源を制御することで、マイクロモータ7の回転方向、回転数および回転角度など、つまり切削工具5の回転方向、回転数および回転角度などを制御することができる。
設定部14は、切削工具5の回転方向、回転数および回転角度などを制御する基準を設定する。また、設定部14は、切削工具5に加わる負荷と比較回路110おいて比較する切替基準(駆動シーケンス、または駆動パターンのパラメータを切替えるための基準)、基準負荷、タイミングなどを設定する。さらに、設定部14は、根管長測定回路12を用いて予め根尖位置を基準位置、根尖位置から所定距離にある位置を切替位置(駆動シーケンス、または駆動パターンのパラメータを切替えるための基準)としてそれぞれ設定したりすることができる。なお、根管治療器100は、設定部14に予め基準位置を設定しておくことで、切削工具5の先端がこの基準位置に達したとき、切削工具5の回転方向、回転数および回転角度のパラメータを変更することができる。
操作部15は、切削工具5の回転数および回転角度のパラメータを設定する他、根管長測定を行うか否かの選択なども設定することができる。また、操作部15は、正転駆動と逆転駆動との切換えや、正転駆動とツイスト駆動との切換えを手動で行うことができる。
表示部16は、後述するように根管内での切削工具5の先端の位置や切削工具5の回転方向、回転数および回転角度などを表示する。さらに、報知部17が術者に対して報知するための情報を、表示部16に表示することもできる。
報知部17は、現在、制御部11で行っている切削工具5の駆動状態を、光、音や振動などにより報知する。具体的に、報知部17は、切削工具5の駆動状態を報知するために、必要に応じてLED(Light Emitting Diode),スピーカーや振動子などを設け、正転方向の駆動と逆転方向の駆動とで発光するLEDの色を変えたり、スピーカーから出力する音を変えたりする。なお、報知部17は、表示部16で、術者に対して切削工具5の駆動状態を表示することができる場合、LED,スピーカーや振動子など別途設けなくてもよい。
フートコントローラ18は、マイクロモータ7による切削工具5の駆動制御を足踏操作によって行う操作部である。なお、マイクロモータ7による切削工具5の駆動制御は、フートコントローラ18に限定されるものではなく、ハンドピース1の把持部4に操作スイッチ(図示せず)を設け、この操作スイッチとフートコントローラ18とを併用して切削工具5の駆動制御を行うようにしてもよい。また、たとえば、フートコントローラ18の足踏操作がなされている状態で、さらに切削工具5が根管内に挿入されたことを根管長測定回路12が検出したことで、切削工具5の回転を開始するようにしてもよい。
なお、根管治療器100の制御ボックス9は、歯科用診療台の側部に設置するトレーテーブルやサイドテーブル上に載置して使用する構成について説明したが、本発明はこれに限定されず、トレーテーブルやサイドテーブル内に制御ボックス9を組込んだ構成であってもよい。
次に、切削工具5の駆動制御を行う根管治療器100の回路構成について、さらに詳しく説明する。図5は、本発明の実施の形態1に係る根管治療器100の回路構成を示す回路図である。図5に示す根管治療器100には、切削工具5の駆動制御に関わるマイクロモータ7、制御部11、比較回路110、根管長測定回路12、モータドライバ13、および設定部14の部分について図示してある。
さらに、モータドライバ13は、トランジスタスイッチ13a、トランジスタドライバ回路13b、回転方向切換スイッチ13c、および負荷検出用抵抗13dを含んでいる。なお、回転方向切換スイッチ13cは、リレー素子として説明するが、FETなどの半導体のスイッチ素子でモータ駆動回路を構成してもよい。設定部14は、基準負荷設定用の可変抵抗14a、デューティ設定用の可変抵抗14b、および基準位置設定用の可変抵抗14cを含んでいる。なお、設定部14には、比較回路110において検出した負荷と基準負荷とを比較するタイミングを示す回転角度(または回転時間)を設定する構成なども含まれるが、当該構成については図5に図示していない。また、図5に示す根管治療器100には、主電源20およびメインスイッチ21に接続してある。切削工具5は、図示していないが適宜の歯車機構等を介してマイクロモータ7に保持してある。
トランジスタドライバ回路13bは、制御部11のポート11aから出力する制御信号で作動し、トランジスタスイッチ13aのオン・オフを制御してマイクロモータ7を駆動する。マイクロモータ7は、回転方向切換スイッチ13cの状態に応じて時計回り方向または反時計回り方向に回転する。制御部11のポート11aから出力する制御信号が、たとえば一定の周期で繰返されるパルス波形である場合、そのパルス波形の幅、すなわちデューティ比は、設定部14のデューティ設定用の可変抵抗14bによって調整される。マイクロモータ7は、このデューティ比に対応した回転数で切削工具5を駆動する。
回転方向切換スイッチ13cは、制御部11のポート11bから出力する制御信号で、切削工具5を時計回り方向に駆動するか、反時計回り方向に駆動するかを切換える。制御部11は、ポート11cに入力される負荷検出用抵抗13dの電流量(または電圧値)に基づき、切削工具5に加わる負荷を検出する。そのため、負荷検出用抵抗13dは、切削工具5に加わる負荷を検出する負荷検出部として機能している。なお、負荷検出部は、負荷検出用抵抗13dの電流量(または電圧値)に基づいて切削工具5に加わる負荷を検出する構成に限定されるものではなく、たとえば切削工具5の駆動部分にトルクセンサを設けて切削工具5に加わる負荷を検出する構成など別の構成であってもよい。検出される負荷は、たとえば切削工具5に加わるトルク値に制御部11で換算され、表示部16に表示される。また、比較回路110では、制御部11で換算されたトルク値と、基準負荷設定用の可変抵抗14aを用いて設定したトルク値とを比較している。もちろん、比較回路110は、トルク値に換算せずに負荷検出用抵抗13dの電流量(または電圧値)と可変抵抗14aの電流量(または電圧値)とを直接比較する構成でもよい。
さらに、制御部11は、根管長測定回路12で測定した根管長をポート11dに入力する。そのため、根管長測定回路12は、切削工具5の先端の根管内での位置を検出する位置検出部として機能している。また、制御部11は、負荷検出部で検出した切削工具5に加わる負荷をポート11eから比較回路110へ出力し、比較回路110が基準負荷と比較した比較結果をポート11eから入力する。そのため、比較回路110は、負荷検出部で検出した負荷と基準負荷とを比較する負荷比較部として機能している。なお、制御部11は、上記アナログ回路で説明した構成を、ひとつのマイクロコンピュータにソフトウェアとしてまとめてもよい。
図6は、切削工具5の回転方向を示した模式図である。図6に示す切削工具5の回転方向では、ヘッド部2に取付ける切削工具5の側から切削工具5の先端方向を向いて切削工具5を右回りに回転させる時計回り方向5aの方向の駆動と、左回りに回転させる反時計回り方向5bの方向の駆動とが図示されている。なお、予め定められた回転角度で時計回り方向5aに切削工具5を回転させる駆動と、予め定められた回転角度で反時計回り方向5bに切削工具5を回転させる駆動とを交互に行う駆動が、ツイスト駆動である。
次に、図3に示す表示部16に設ける液晶表示パネルの表示について説明する。図7は、図3に示す表示部16に設ける液晶表示パネルの表示例を示す図である。
図7に示す表示部16は、液晶表示パネルであり、測定した根管長を詳細に表示するための多数の要素を含むドット表示部52と、根管長を複数のゾーンに分けて段階的に表示するためのゾーン表示部54と、各ゾーンの境界を示す境界表示部56と、根尖までの到達率を表示する到達率表示部58とが設けてある。
ドット表示部52は、切削工具5の先端が根尖に近づくにつれ、上から下に向かって要素が順に表示されるようになっている。目盛「APEX」の位置が根尖の位置を表わし、当該目盛まで要素が到達したとき、切削工具5の先端が根尖の位置にほぼ到達したことを示す。
また、表示部16には、負荷検出部(負荷検出用抵抗13d、図5参照)で検出した負荷を表示するための多数の要素を含むドット表示部60と、負荷を複数のゾーンに分けて段階的に表示するためのゾーン表示部62とが設けてある。ドット表示部60は、負荷検出部で検出した負荷が大きくなるに従って、上から下に向かって要素が順に表示される。
たとえば、ドット表示部60には、歯牙を切削しているときに加わる切削工具5の負荷を、斜線で示した要素60aで表示する。なお、ドット表示部60は、表示が頻繁に切換わるのを防ぐため、ピークホールド機能を有し、所定時間内に検出した負荷の最大値を一定時間表示するようにしてもよい。
また、ドット表示部60には、設定部14(図5参照)で設定した基準負荷に対応する要素60bを表示してもよい。要素60bをドット表示部60に表示することで、基準負荷に対して、負荷検出部で検出した負荷にどの程度マージンが存在しているのかを視覚化することができる。
さらに、表示部16には、切削工具5の回転数や切削工具5に加わる負荷を数値で表示する数値表示部64と、切削工具5の回転の向き(時計回り方向、反時計回り方向)および切削工具5の回転数の大小を表示する回転表示部68とが設けてある。
実施の形態1に係る根管治療器100では、ヘッド部2に取付けた切削工具5を制御部11に予め設定されている駆動シーケンスに従い駆動する。駆動シーケンスには、複数の駆動パターンが含まれ、複数の駆動パターンのうち少なくとも1つの駆動パターンが、他の駆動パターンと異なっている。
具体的に、本発明の実施の形態1に係る根管治療器100では、図2に示す駆動シーケンスに従い駆動する。図2に示す駆動シーケンスには、SET1で採用した駆動パターンが含まれ、切削方向に180度だけ切削工具5を回転させ、さらに非切削方向に90度だけ切削工具5を回転させる駆動を4回繰返している。また、図2に示す駆動シーケンスには、SET2で採用した駆動パターンが含まれ、切削方向に90度だけ切削工具5を回転させ、さらに非切削方向に180度だけ切削工具5を回転させる駆動を4回繰返している。つまり、根管治療器100は、SET1で採用した駆動パターンとSET2で採用した2駆動パターンとを順に繰返す駆動シーケンスに従い切削工具5を駆動する。
なお、駆動シーケンスにおいて、切削工具5を切削方向および非切削方向にそれぞれ1周させることは、切削効率を確保する点で重要である。そのため、それぞれSETの駆動で、駆動パターンを4回繰り返すのではなく、規定の回転角度分だけ回転させることができない場合を考慮して、予め駆動パターンを5回繰り返すように設定してもよい。
図2に示した駆動シーケンスは、切削工具5を切削方向に180度、非切削方向に90度回転させるツイスト駆動であるSET1で採用した駆動パターンと、切削工具5を切削方向に90度、非切削方向に180度回転させるバランスドフォーステクニックと呼ばれる駆動のSET2で採用した駆動パターンとを組み合わせた駆動である。そのため、根管治療器100では、従来、術者が根管の形状や状況に合わせて選択的に行っていたバランスドフォーステクニックの駆動を、最初から1つの駆動シーケンスの中に駆動パターンとして含ませることで、1つの駆動シーケンスの駆動期間内に必ずバランスドフォーステクニックの駆動を行う期間が存在することになり、術者の能力に関わらず歯牙の根管を適切に切削することができる。
特に、湾曲が大きい根管を切削する場合、単純にツイスト駆動のみ、あるいは連続回転で切削したのでは、切削工具5が根管の湾曲に追従せずに本来の切削拡大では必要のない部分を切削して根管を直線化したり、レッジ(ledge)と呼ばれる窪みを生じさせたりすることが考えられる。ここで、図8は、根管の直線化を説明するための図である。図8に示す根管51に対して切削拡大を行った場合、斜線部51aまで歯牙が切削され湾曲していた根管51が直線化している。しかし、根管治療器100では、当該駆動シーケンスに従いツイスト駆動のSET1で採用した駆動パターンの後に、バランスドフォーステクニックの駆動であるSET2で採用した駆動パターンで駆動する期間が設けてあるので、根管の湾曲した形状に沿うように切削拡大することができ、根管の直線化や、レッジの発生を抑制することができる。
また、図2に示した駆動シーケンスは、SET1の期間はバランスドフォーステクニックの駆動であるSET2の期間より切削効率が高いので、バランスドフォーステクニックの欠点である切削効率の低下を補うことができる。つまり、図2に示した駆動シーケンスは、従来の単一パターンの駆動では不可能であった、切削効率と根管形態を保った切削の両立を実現できるのである。
なお、図2に示した駆動シーケンスにおいて、より切削効率を高めるには、例えばSET1で採用する駆動パターンをツイスト駆動(レシプロ駆動)ではなく、切削工具5を切削方向のみ回転させる駆動パターンに置換えることで実現できる。つまり、当該駆動シーケンスでは、SET1で採用する駆動パターンにおいて非切削方向に切削工具5を回転させない分だけ切削効率を高めることができる。
以上のように、本実施の形態1に係る根管治療器100が制御する駆動シーケンスは、複数の駆動パターンを含み、複数の駆動パターンのうち少なくとも1つの駆動パターンが、他の駆動パターンと異なっているだけでなく、切削方向に切削工具5を回転する駆動(切削方向の駆動)と、非切削方向に切削工具5を回転する駆動(非切削方向の駆動)と有する駆動パターンを少なくとも1つ含んでいればよい。
換言すれば、本実施の形態1に係る根管治療器100が制御する駆動シーケンスは、第1駆動パターンおよび第2駆動パターンの少なくとも2つ以上の駆動パターンを含んでおり、第1駆動パターンが切削方向の駆動および非切削方向の駆動を有し、第2駆動パターンが切削方向の駆動および非切削方向の駆動のうち少なくとも一方の駆動を有している。そのため、本実施の形態1に係る根管治療器100は、1つの駆動シーケンスの中に複数の駆動パターンを含ませることで、1つの駆動シーケンスの駆動期間内に根管の形状や状況にあった駆動を行う期間が存在することになり、術者が意識して根管の形状や状況にあった駆動パターンを選択する必要がない。よって、本実施の形態1に係る根管治療器100は、術者の能力、根管の形状や状況に関わらず歯牙の根管を適切に切削することができる。
(実施の形態2)
実施の形態1に係る根管治療器100は、切削工具5を切削方向に180度、非切削方向に90度回転させる駆動を4回繰返す駆動パターンと、切削工具5を切削方向に90度、非切削方向に180度回転させる駆動を4回繰返す駆動パターンとを含む駆動シーケンスに従い切削工具5を駆動する構成を説明した。実施の形態1に係る根管治療器100では、複数の駆動パターンのうち少なくとも1つの駆動パターンが、他の駆動パターンと異なっていれば、各々の駆動パターンに対しては特に条件を課していなかった。一方、本実施の形態2に係る根管治療器100では、各々の駆動パターンに対して新たに条件を課す場合について説明する。なお、本実施の形態2に係る根管治療器100でも、図3〜図5に示した実施の形態1に係る根管治療器100と同じ構成を用いるため、同じ符号を用いて詳しい説明を繰返さない。
本実施の形態2に係る根管治療器100では、1つの駆動シーケンスに含まれる駆動パターンのうち少なく1つは切削方向の駆動と非切削方向の駆動とを必ず含む駆動パターンに限定する。つまり、当該駆動パターンは、図1に示す基本的な駆動パターンのうち図1(a)〜図1(c)の3つの駆動パターンに限定する条件が課されている。本実施の形態2に係る根管治療器100では、このような条件が課されている駆動パターン(第1駆動パターン)と、このような条件が課されていない駆動パターン(第2駆動パターン)とを組み合わせた駆動シーケンスに基づいて切削工具5を駆動する。なお、本実施の形態2に係る駆動パターンでは、話を簡単にするために、切削方向の回転を非切削方向の回転の先に行うか、切削方向の回転を非切削方向の回転の後に行うかで区別しないものとする。もちろん、駆動パターンについて、切削方向の回転を非切削方向の回転の先に行うか、切削方向の回転を非切削方向の回転の後に行うかで区別してもよい。
以下、具体的に本実施の形態2に係る根管治療器100で制御される駆動シーケンスについて説明する。図9は、本発明の実施の形態2に係る根管治療器100が制御する駆動シーケンスの一例を説明するための図である。図9に示す実線の矢印は、切削工具5の回転方向を示し、破線の矢印はSET1からSET2へ、あるいはSET2からSET1へ移行する様子を示している。図9においても、ヘッド部2に取付ける切削工具5の側から切削工具5の先端方向を向いた場合を基準に回転方向が記載されている。そのため、時計回り方向の矢印が切削工具5の切削方向の回転を、反時計回り方向の矢印が切削工具5の非切削方向の回転をそれぞれ示している。
図9(a)に示す駆動シーケンスは、図1(a)に示す基本的な駆動パターンを採用したSET1と、図1(b)に示す基本的な駆動パターンを採用したSET2とを組み合わせ、それぞれの回転角度を変更したものである。具体的に、SET1で採用した駆動パターンでは、切削方向の回転角度α1=180度、切削回転数N1=300rpm、非切削方向の回転角度β1=60度、非切削回転数N2=300rpm、繰返し回数=1回と設定されている。SET2で採用した駆動パターンでは、切削方向の回転角度α2=60度、切削回転数N3=300rpm、非切削方向の回転角度β2=120度、非切削回転数N4=300rpm、繰返し回数=1回と設定されている。
図9(a)に示す駆動シーケンスでは、SET1で採用した駆動パターンで主に根管を切削する。SET1での駆動では、回転角度β1=60度分だけ非切削方向に回転するので切削工具5の根管の内壁への食い込みを解除する効果は少ない。一方、SET2での駆動では、非切削方向に回転角度β2=120度回転させるので、切削工具5の根管の内壁への食い込みを解除する効果が大きく、切削工具5の破損を防止できる。また、図9(a)に示す駆動シーケンスでは、SET1で採用した駆動パターンとSET2で採用した駆動パターンとで同じ回転数で駆動しており、回転数を変化させる駆動は行っていない。
図9(a)に示す駆動シーケンスでは、SET1の駆動の結果として、切削方向に切削工具5を120度回転させ、SET2の駆動の結果として、非切削方向に切削工具5を60度回転させている。そのため、1回の駆動シーケンスの駆動の結果、切削方向に切削工具5を60度回転させることが可能で、当該駆動シーケンスを6回繰返すことで、切削工具5を切削方向に1周させることができる。
なお、SET1で採用した駆動パターンは、切削方向の駆動による回転角度α1=180度と非切削方向の駆動による回転角度β1=60度との比率が6対2と6対1〜6対5の範囲内であり、SET2で採用した駆動パターンは、切削方向の駆動による回転角度α2=60度と非切削方向の駆動による回転角度β2=120度との比率が1.5対3と2対3〜1対3の範囲内である。
図9(b)に示す駆動シーケンスも、図1(a)に示す基本的な駆動パターンを採用したSET1と、図1(b)に示す基本的な駆動パターンを採用したSET2とを組み合わせ、それぞれの回転角度を変更したものである。具体的に、SET1で採用した駆動パターンでは、500rpm、繰返し回数=1回と設定されている。SET2で採用した駆動パターンでは、切削方向の回転角度α2=60度、切削回転数N3=300rpm、非切削方向の回転角度β2=150度、非切削回転数N4=300rpm、繰返し回数=3回と設定されている。SET2の駆動では、図9(b)に図示しているSET2で採用した駆動パターンが連続して3回行われた駆動パターンとなる。
図9(b)に示す駆動シーケンスでは、SET1で採用した駆動パターンで主に根管を切削し、SET2で採用した駆動パターンで切削工具5の根管の内壁への食い込み防止と解除を行っている。図9(b)に示す駆動シーケンスは、図9(a)に示す駆動シーケンスに比べSET2で採用した駆動パターンの繰返し回数が多いので、切削工具5の破損をより防止することができる。また、図9(b)に示す駆動シーケンスでは、SET2で採用した駆動パターンがバランスドフォーステクニックの駆動としても機能している。なお、図9(b)に示す駆動シーケンスでは、切削回転数N1を300rpmから500rpmにすることで切削効率の向上を図っている。
図9(b)に示す駆動シーケンスは、SET1の駆動の結果として切削方向に切削工具5を90度回転させ、SET2の駆動の結果として非切削方向に切削工具5を90度×3回=270度回転させている。そのため、1回の駆動シーケンスの駆動の結果、非切削方向に切削工具5を180度回転させることが可能で、当該駆動シーケンスを2回繰返すことで、切削工具5を非切削方向に1周させることができる。
なお、SET1で採用した駆動パターンは、切削方向の駆動による回転角度α1=180度と非切削方向の駆動による回転角度β1=90度との比率が6対3と6対1〜6対5の範囲内であり、SET2で採用した駆動パターンは、切削方向の駆動による回転角度α2=60度と非切削方向の駆動による回転角度β2=150度との比率が1.2対3と2対3〜1対3の範囲内である。
図9(c)に示す駆動シーケンスも、図1(a)に示す基本的な駆動パターンを採用したSET1と、図1(b)に示す基本的な駆動パターンを採用したSET2とを組み合わせ、それぞれの回転角度を変更したものである。具体的に、SET1で採用した駆動パターンでは、切削方向の回転角度α1=180度、切削回転数N1=500rpm、非切削方向の回転角度β1=90度、非切削回転数N2=300rpm、繰返し回数=5回と設定されている。SET2で採用した駆動パターンでは、切削方向の回転角度α2=90度、切削回転数N3=300rpm、非切削方向の回転角度β2=180度、非切削回転数N4=300rpm、繰返し回数3回と設定されている。
図9(c)に示す駆動シーケンスでは、SET1の駆動の結果として切削方向に切削工具5を90度×5回=450度回転させており、切削方向の回転角度α1と非切削方向の回転角度β1との差分を累積した累積差分値が1周=360度(設定値)を超える値となっているので切削効率が向上する。つまり、1つのSET1の駆動において切削工具5を切削方向に1周以上させることができれば、根管を切削する駆動(切削方向の駆動)を十分確保できているので切削効率が向上する。なお、図9(c)に示す駆動シーケンスでは、SET2の駆動の結果として非切削方向に切削工具5を90度×3回=270度回転させている。そのため、1回の駆動シーケンスの駆動の結果、切削方向に切削工具5を180度回転させことが可能で、当該駆動シーケンスを2回繰返すことで、切削工具5を切削方向に1周させることができる。
図9(c)に示す駆動シーケンスでも、SET1で採用した駆動パターンで主に根管を切削し、SET2で採用した駆動パターンで切削工具5の根管の内壁への食い込み防止と解除を行っている。なお、SET1で採用した駆動パターンは、切削方向の駆動による回転角度α1=180度と非切削方向の駆動による回転角度β1=90度との比率が6対3と6対1〜6対5の範囲内であり、SET2で採用した駆動パターンは、切削方向の駆動による回転角度α2=90度と非切削方向の駆動による回転角度β2=180度との比率が1.5対3と2対3〜1対3の範囲内である。
図9(d)に示す駆動シーケンスも、図1(a)に示す基本的な駆動パターンを採用したSET1と、図1(b)に示す基本的な駆動パターンを採用したSET2とを組み合わせ、それぞれの回転角度を変更したものである。具体的に、SET1で採用した駆動パターンでは、切削方向の回転角度α1=180度、切削回転数N1=500rpm、非切削方向の回転角度β1=90度、非切削回転数N2=300rpm、繰返し回数=5回と設定されている。SET2で採用した駆動パターンでは、切削方向の回転角度α2=90度、切削回転数N3=300rpm、非切削方向の回転角度β2=180度、非切削回転数N4=300rpm、繰返し回数=5回と設定されている。
図9(d)に示す駆動シーケンスは、SET1で採用した駆動パターンで主に根管を切削し、SET2で採用した駆動パターンで切削工具5の根管の内壁への食い込み防止と解除を行っている。また、図9(d)に示す駆動シーケンスでは、SET2で採用した駆動パターンがバランスドフォーステクニックの駆動としても機能している。図9(d)に示す駆動シーケンスでは、SET1の駆動の結果として切削方向に切削工具5を90度×5回=450度回転させており、切削方向の回転角度α1と非切削方向の回転角度β1との差分を累積した累積差分値が1周=360度(設定値)を超える値となっているので切削効率が向上する。
なお、図9(d)に示す駆動シーケンスでは、SET2の駆動の結果として非切削方向にも切削工具5を90度×5回=450度回転させており、切削方向の回転角度α2と非切削方向の回転角度β2との差分を累積した累積差分値も1周=360度(設定値)を超える値となっている。
SET1およびSET2の駆動の結果は、ともに切削方向の駆動による回転角度と非切削方向の駆動による回転角度との差分を累積した累積差分値が設定値(360度)を超える条件(第1条件)として満たしている。また、SET1で採用した駆動パターンは、非切削方向の駆動による回転角度β1に対して切削方向の駆動による回転角度α1が大きい切削駆動パターンで、SET2で採用した駆動パターンは、切削方向の駆動による回転角度α2に対して非切削方向の駆動による回転角度β2が大きい非切削駆動パターンである。
なお、駆動シーケンスにおいて、切削方向の駆動による回転角度と非切削方向の駆動による回転角度との差分を累積した累積差分値が0(ゼロ)の場合は、切削工具5の切削方向に依存しない駆動が可能となる。
その他、根管治療器100において採用される駆動シーケンスの例を説明する。図10は、本発明の実施の形態2に係る根管治療器100が制御する駆動シーケンスの一覧を示す図である。図11は、本発明の実施の形態2に係る根管治療器100が制御する駆動シーケンスの別の一覧を示す図である。図12は、本発明の実施の形態2に係る根管治療器100が制御する駆動シーケンスのさらに別の一覧を示す図である。図10〜図12には、駆動シーケンスM1〜駆動シーケンスM18の18個の駆動シーケンス例が記載されているが、本発明はこれに限定されず、他の駆動シーケンスであってもよい。なお、図10〜図12に示す表において、SET1において切削方向の回転角度を切削回転角度α1、非切削方向の回転角度を非切削回転角度β1、切削方向の回転数を切削回転数N1、非切削方向の回転数を非切削回転数N2とする。同様に、SET2において切削方向の回転角度を切削回転角度α2、非切削方向の回転角度を非切削回転角度β2、切削方向の回転数を切削回転数N3、非切削方向の回転数を非切削回転数N4とする。SET3において切削方向の回転角度を切削回転角度α3、非切削方向の回転角度を非切削回転角度β3、切削方向の回転数を切削回転数N5、非切削方向の回転数を非切削回転数N6とする。SET4において切削方向の回転角度を切削回転角度α4、非切削方向の回転角度を非切削回転角度β4、切削方向の回転数を切削回転数N7、非切削方向の回転数を非切削回転数N8とする。
図10に示す駆動シーケンスM4では、図1(a)、図1(b)図1(e)のそれぞれに示す基本的な駆動パターンを組み合わせ、それぞれの回転角度を変更したものである。駆動シーケンスM4および図12に示す駆動シーケンスM16で示すように、駆動シーケンスに含まれる駆動パターンは、2つに限定されるものではなく2つ以上であればよい。
具体的に、駆動シーケンスM4においてSET1で採用した駆動パターンでは、切削方向の回転角度α1=180度、切削回転数N1=300rpm、非切削方向の回転角度β1=90度、非切削回転数N2=300rpm、繰返し回数=9回と設定されている。SET2で採用した駆動パターンでは、切削方向の回転角度α2=90度、切削回転数N3=300rpm、非切削方向の回転角度β2=180度、非切削回転数N4=300rpm、繰返し回数=3回と設定されている。SET3で採用した駆動パターンでは、切削方向の回転角度α3=0度、切削回転数N5=0rpm、非切削方向の回転角度β3=360度、非切削回転数N6=300rpm、繰返し回数=1回と設定されている。SET4で採用した駆動パターンでは、切削方向の回転角度α4=90度、切削回転数N7=300rpm、非切削方向の回転角度β4=180度、非切削回転数N8=300rpm、繰返し回数=2回と設定されている。
駆動シーケンスM4は、SET1で採用した駆動パターンで主に根管を切削し、SET2およびSET4で採用した駆動パターンでバランスドフォーステクニックの駆動を行い根管の形状に沿うように切削拡大し、SET3で採用した駆動パターンで根管の内壁への食い込みの解除を行っている。駆動シーケンスM4は、SET1の駆動の結果として切削方向に切削工具5を90度×9回=810度回転させ、SET2の駆動の結果として非切削方向に切削工具5を90度×3回=270度回転させ、SET3の駆動の結果として非切削方向に切削工具5を360度回転させ、SET4の駆動の結果として非切削方向に切削工具5を90度×2回=180度回転させている。
図11に示す駆動シーケンスM9では、図1(a)に示す基本的な駆動パターンと、図1(c)に示す基本的な駆動パターンとを組み合わせた構成である。具体的に、駆動シーケンスM9においてSET1で採用した駆動パターンでは、切削方向の回転角度α1=180度、切削回転数N1=300rpm、非切削方向の回転角度β1=90度、非切削回転数N2=300rpm、繰返し回数=1回と設定されている。SET2で採用した駆動パターンでは、切削方向の回転角度α2=60度、切削回転数N3=300rpm、非切削方向の回転角度β2=60度、非切削回転数N4=300rpm、繰返し回数=5回と設定されている。つまり、駆動シーケンスM9は、切削方向の駆動による回転角度と非切削方向の駆動による回転角度とが同じ対称駆動パターンであるSET2で採用した駆動パターンと、切削方向の駆動による回転角度と非切削方向の駆動による回転角度とが異なる非対称駆動パターンであるSET1で採用した駆動パターンとを含んでいる。なお、対称駆動パターンであるSET2で採用した駆動パターンは、繰返し回数が5回と複数回繰返されている。
駆動シーケンスでM9は、SET1で採用した駆動パターンで主に根管を切削し、SET2で採用した駆動パターンでウォッチワインディングテクニックの駆動を行うことで閉塞気味の根管の予備拡大や閉塞根管の穿通を考慮した駆動となっている。駆動シーケンスM9は、SET1の駆動の結果として切削方向に切削工具5を90度回転させ、SET2の駆動の結果として切削工具5を0度回転させている。そのため、1回の駆動シーケンスの駆動の結果、切削方向に切削工具5を90度回転させることが可能で、当該駆動シーケンスを4回繰返すことで、切削工具5を切削方向に1周させることができる。
図12に示す駆動シーケンスM18では、図1(c)に示す基本的な駆動パターンと、図1(d)に示す基本的な駆動パターンとを組み合わせた構成である。具体的に、駆動シーケンスM18においてSET1で採用した駆動パターンでは、切削方向の回転角度α1=90度、切削回転数N1=300rpm、非切削方向の回転角度β1=90度、非切削回転数N2=300rpm、繰返し回数=2回以上と設定されている。SET2で採用した駆動パターンでは、切削方向の回転角度α2=45度、切削回転数N3=300rpm、非切削方向の回転角度β2=0度、非切削回転数N4=0rpm、繰返し回数=1回と設定されている。
駆動シーケンスでM18は、SET1で採用した駆動パターンで切削工具5をツイスト駆動させ、SET2で採用した駆動パターンでツイスト駆動する位置を移動させることを考慮した駆動となっている。そのため、駆動シーケンスでM18は、閉塞根管の穿通に非常に有効な駆動を行うことができる。駆動シーケンスM18は、SET1の駆動の結果として切削工具5を0度回転させ、SET2の駆動の結果として切削工具5を切削方向に45度回転させている。そのため、1回の駆動シーケンスの駆動の結果、切削方向に切削工具5を45度回転させることが可能で、当該駆動シーケンスを8回繰返すことで、切削工具5を切削方向に1周させることができる。
図12に示す駆動シーケンスM19は、M18と同様に、図1(c)に示す基本的な駆動パターンと、図1(d)に示す基本的な駆動パターンとを組み合わせた構成である。駆動シーケンスM19は、根管治療器100において術者の手指の動きをより忠実に再現することを目指した駆動シーケンスである。具体的に、駆動シーケンスM19においてSET1で採用した駆動パターンでは、切削方向の回転角度α1=180度、切削回転数N1=100rpm、非切削方向の回転角度β1=180度、非切削回転数N2=100rpm、繰返し回数=1回と設定されている。SET2で採用した駆動パターンでは、切削方向の回転角度α2=180度、切削回転数N3=100rpm、非切削方向の回転角度β2=270度、非切削回転数N4=100rpm、繰返し回数=1回と設定されている。SET1の駆動は、手指によるウォッチワインディングテクニックの動きに類似するものであり、SET2の駆動は、手指によるバランスドフォーステクニックの動きに類似するものである。また、それぞれの回転数は、手指による回転速度と同等の100rpmに設定されている。したがって、M19の駆動によれば、術者は、手指の感覚と同等の感覚をもって根管拡大を行うことができる。
駆動シーケンスでM19は、SET1で採用した駆動パターンで切削工具5をツイスト駆動させ、SET2で採用した駆動パターンでツイスト駆動する位置を非切削方向に移動させることを考慮した駆動である。駆動シーケンスM19は、SET1の駆動の結果として切削工具5を0度回転させ、SET2の駆動の結果として切削工具5を非切削方向に90度回転させている。そのため、1回の駆動シーケンスの駆動の結果、非切削方向に切削工具5を90度回転させることが可能で、当該駆動シーケンスを4回繰返すことで、切削工具5を非切削方向に1周させることができる。
次に、本発明の実施の形態2に係る根管治療器100が、駆動シーケンスに従い切削工具5を駆動する処理についてフローチャートに基づいて説明する。
図13は、本発明の実施の形態2に係る根管治療器100において、駆動シーケンスに従い切削工具5を駆動する処理を説明するためのフローチャートである。まず、制御部11は、予め設定されている駆動シーケンスを読込み、読込んだ駆動シーケンスのSET1で採用した駆動パターンに従い切削工具5を駆動する(ステップS131)。
例えば、制御部11は、図10に示す駆動シーケンスM1に従い切削工具5を駆動する場合、SET1で採用した駆動パターンで切削方向の回転角度α1=180度、切削回転数N1=300rpm、非切削方向の回転角度β1=90度、非切削回転数N2=300rpmと設定されているパラメータに従い切削工具5を駆動する。ここで、制御部11は、術者が操作部15で複数の駆動シーケンスから、実行する駆動シーケンスを選択するようにしてもよい。
つまり、制御部11は、複数の駆動シーケンス(図10〜図12に示す駆動シーケンス)を記憶する記憶部(例えば、ROM、フラッシュメモリなど)と、記憶部で記憶した複数の駆動シーケンスのうち、駆動部の制御に用いる駆動シーケンスの選択を可能とする選択部である操作部15とを含むようにしてもよい。また、制御部11は、実行する駆動シーケンスに含まれる駆動パターンのパラメータ(回転角度、回転角速度、繰返し回数など)を術者が操作部15で入力できるようにしてもよい。つまり、各々の駆動パターンで予め定められるパラメータを入力する操作部15で、術者によるパラメータの入力を受付け可能にしてもよい。
次に、制御部11は、SET1で採用した駆動パターンで設定されている繰返し回数が終了したか否かを判断する(ステップS132)。例えば、図10に示す駆動シーケンスM1では、SET1で採用した駆動パターンの繰返し回数が5回に設定されているので、制御部11は、SET1で採用した駆動パターンの繰返し回数が5回になったか否かを判断する。繰返し回数が終了したと判断した場合(ステップS132:YES)、制御部11は、読込んだ駆動シーケンスのSET2で採用した駆動パターンに従い切削工具5を駆動する(ステップS133)。例えば、制御部11は、図10に示す駆動シーケンスM1に従い切削工具5を駆動する場合、SET2で採用した駆動パターンで切削方向の回転角度α2=90度、切削回転数N3=300rpm、非切削方向の回転角度β2=180度、非切削回転数N4=300rpmと設定されているパラメータに従い切削工具5を駆動する。繰返し回数が終了していないと判断した場合(ステップS132:NO)、制御部11は、処理をステップS131に戻す。
次に、制御部11は、SET2で採用した駆動パターンで設定されている繰返し回数が終了したか否かを判断する(ステップS134)。例えば、図10に示す駆動シーケンスM1では、SET2で採用した駆動パターンの繰返し回数も5回に設定されているので、制御部11は、SET2で採用した駆動パターンの繰返し回数が5回になったか否かを判断する。繰返し回数が終了したと判断した場合(ステップS134:YES)、制御部11は、読込んだ駆動シーケンスに他の駆動パターンが含まれていないか否か判断する(ステップS135)。繰返し回数が終了していないと判断した場合(ステップS134:NO)、制御部11は、処理をステップS133に戻す。
次に、読込んだ駆動シーケンスに他の駆動パターン(例えば、SET3、SET4で採用した駆動パターン)が含まれている場合(ステップS135:YES)、制御部11は、読込んだ駆動シーケンスの他の駆動パターンに従い切削工具5を駆動する(ステップS136)。制御部11は、設定されている繰返し回数、他の駆動パターンに従い切削工具5を駆動した後、処理をステップS135に戻す。つまり、制御部11は、読込んだ駆動シーケンスに含まれているSETで採用した駆動パターンを順に読み出して、切削工具5を駆動する。例えば、図10に示す駆動シーケンスM1では、SET2以降の駆動パターンが含まれていないが、駆動シーケンスM4では、SET3およびSET4で採用した駆動パターンが含まれているので、制御部11は、SET3およびSET4で採用した駆動パターンを順に読み出して、切削工具5を駆動する。
次に、読込んだ駆動シーケンスに他の駆動パターンが含まれていない場合(ステップS135:NO)、制御部11は、駆動を終了する操作が操作部15から入力されているか否かを判断する(ステップS137)。駆動を終了する操作が操作部15から入力されている場合(ステップS137:YES)、制御部11は駆動を終了する。駆動を終了する操作が操作部15から入力されていない場合(ステップS137:NO)、制御部11は、ステップS131の処理に戻り、読込んだ駆動シーケンスのSET1で採用した駆動パターンに従い切削工具5を駆動する(ステップS131)。
以上のように、本実施の形態2に係る根管治療器100の駆動方法は、制御部11が駆動シーケンスに従い切削工具5の駆動し、当該駆動シーケンスには複数の駆動パターンを含み、少なくとも1つの駆動パターン)が他の駆動パターンと異なり、切削方向に切削工具5を回転する駆動と、非切削方向に切削工具5を回転する駆動とを有する駆動パターンを少なくとも1つ含んでいる。そのため、本実施の形態2に係る根管治療器100の駆動方法では、1つの駆動シーケンスの中に複数の駆動パターンを含ませることで、1つの駆動シーケンスの駆動期間内に根管の形状や状況にあった駆動を行う期間を設けることができ、術者が意識して駆動パターンを選択する必要がない。よって、本実施の形態2に係る根管治療器100の駆動方法は、術者の能力、根管の形状や状況に関わらず歯牙の根管を適切に切削することができる。
なお、図10〜図12に示す駆動シーケンスにおいて、制御部11は、SET1で採用した駆動パターンとSET2で採用した駆動パターンとを連続で駆動することを前提に説明したが、これに限定されない。例えば、駆動パターンの間に停止動作を設定してもよい。具体的に、駆動シーケンスM1において、SET1で採用した駆動パターンを5回繰返した後に停止動作(例えば、500m秒)を設定し、その後SET2で採用した駆動パターンを5回繰返してもよい。さらに、駆動パターンにおいて切削方向の駆動と非切削方向の駆動との間にも停止動作を設定してもよい。例えば、駆動シーケンスM1のSET1で採用した駆動パターンにおいて、切削方向の回転角度α1=180度、切削工具5を回転させた後に停止動作(例えば、50m秒)を設定し、その後、非切削方向の回転角度β1=90度、切削工具5を回転させてもよい。つまり、駆動パターンは、駆動の間での停止動作の有無も1つのパラメータとして各々の駆動パターンで予め定められてもよい。
(実施の形態3)
本発明の実施の形態1で説明した、駆動シーケンスに従い切削工具5を駆動する制御に、切削工具5に加わる負荷に基づく制御を組み合わせた場合について説明する。なお、実施の形態3に係る根管治療器は、図3〜図5に示した実施の形態1に係る根管治療器100と同じ構成を用いるため、同じ符号を用いて詳しい説明を繰返さない。
図14は、本発明の実施の形態3に係る根管治療器100において、切削工具5に加わる負荷に基づく制御を説明するためのフローチャートである。まず、制御部11は、予め設定されている第1駆動シーケンスを読込み、読込んだ第1駆動シーケンスのSET1で採用した駆動パターンから順に切削工具5を駆動する(ステップS141)。例えば、制御部11は、図10に示す駆動シーケンスM2を第1駆動シーケンスとして予め設定されており、駆動シーケンスM2のSET1およびSET2で採用した駆動パターンに従い切削工具5を駆動する。具体的に、制御部11は、駆動シーケンスM2においてSET1の駆動の結果として切削方向に180度×9回=1620度、切削工具5を回転するため、主に根管の切削を目的に切削工具5を駆動している。
次に、制御部11は、負荷検出部で検出した切削工具5に加わる負荷を取得する(ステップS142)。具体的に、制御部11は、切削工具5を切削方向に回して駆動したときに加わる負荷を負荷検出部で検出し、検出した負荷を取得する。次に、比較回路110は、取得した負荷と、設定部14で設定した切替負荷とを比較する(ステップS143)。これにより、第1駆動シーケンスでの駆動が、必要以上の負荷が切削工具5に加わっていることが検出でき、当該負荷を軽減するために駆動シーケンスを切替える。なお、切替負荷は、基準負荷より小さい値に設定されている。
取得した負荷が切替負荷以上となると判断した場合(ステップS143:YES)、制御部11は、第2駆動シーケンスを読込み、読込んだ第2駆動シーケンスのSET1で採用した駆動パターンから順に切削工具5を駆動する(ステップS144)。例えば、制御部11は、切替負荷以上の負荷が切削工具5に加わると、図10に示す駆動シーケンスM3である第2駆動シーケンスにシーケンスを切替え、駆動シーケンスM3のSET1およびSET2で採用した駆動パターンに従い切削工具5を駆動する。具体的に、制御部11は、駆動シーケンスM3においてSET2の駆動の結果として切削工具5を非切削方向に360度回転させて根管壁への食い込みを解除する駆動を行い、切削工具5に加わる負荷を低減している。
なお、ステップS144の処理において、第1駆動シーケンスから第2駆動シーケンスへと駆動シーケンス自体を切替える例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、制御部11は、切替負荷以上の負荷が切削工具5に加わった場合、駆動シーケンス自体を切替えることなく、第1駆動シーケンスで採用した駆動パターンの回転角度、回転角速度、繰返し回数などのパラメータを変更してもよい。
取得した負荷が切替負荷未満となると判断した場合(ステップS143:NO)、または第2駆動シーケンスに従い切削工具5を駆動している場合(ステップS144)、制御部11は、負荷検出部で検出した切削工具5に加わる負荷をさらに取得する(ステップS145)。次に、比較回路110は、取得した負荷と、設定部14で設定した基準負荷とを比較する(ステップS146)。取得した負荷が基準負荷以上となると判断した場合(ステップS146:YES)、制御部11は、切削工具5の駆動を停止する、または非切削回転方向に切削工具5を回す(ステップS147)。つまり、第2駆動シーケンスにシーケンスを切替えても切削工具5に加わる負荷を低減することができず、切削工具5に加わる負荷が基準負荷を超えた場合や、第1駆動シーケンスに従い切削工具5を駆動していても基準負荷を超えた場合に、制御部11は、切削工具5の駆動を停止等する。なお、制御部11は、取得した負荷が基準負荷以上となると判断した場合、駆動パターンの回転角度、回転角速度、繰返し回数などのパラメータを変更してもよい。
取得した負荷が基準負荷未満となると判断した場合(ステップS146:NO)、または切削工具5の駆動を停止等している場合(ステップS147)、制御部11は、駆動を終了する操作が操作部15から入力されているか否かを判断する(ステップS148)。駆動を終了する操作が操作部15から入力されている場合(ステップS148:YES)、制御部11は駆動を終了する。駆動を終了する操作が操作部15から入力されていない場合(ステップS148:NO)、制御部11は、ステップS149の処理に進む。
次に、制御部11は、負荷検出部で検出した切削工具5に加わる負荷を取得する(ステップS149)。取得した負荷が切替負荷以上となると判断した場合(ステップS149a:YES)、制御部11は、第2駆動シーケンスの駆動を維持してステップS144の処理に戻る。取得した負荷が切替負荷未満となると判断した場合(ステップS149a:NO)、第1駆動シーケンスの駆動に切替えるためステップS141の処理に戻る。
以上のように、制御部11は、負荷検出部で検出した切削工具5に加わる負荷に応じて、駆動シーケンスを選択、または記駆動シーケンスに含まれる駆動パターンのパラメータを変更する。具体的に、制御部11は、切削工具5に加わる負荷が切替基準未満なら第1駆動シーケンスに従い切削工具5を駆動し、切削工具5に加わる負荷が切替基準以上なら第2駆動シーケンスまたは駆動パターンのパラメータを変更した第1駆動シーケンスに従い切削工具5を駆動する。そのため、本実施の形態3に係る根管治療器100は、切削工具5に加わる負荷に応じた駆動パターンに従い切削工具5を駆動することができ、切削工具5に加わる負荷を低減することができる。また、制御部11は、取得した負荷が基準負荷以上となると判断した場合、切削工具5の回転を非切削回転方向に駆動(非切削方向の駆動)または切削工具5の回転を停止する駆動に制御するので、加わる負荷による切削工具の破損を防止することができる。
(実施の形態4)
本発明の実施の形態1で説明した、駆動シーケンスに従い切削工具5を駆動する制御に、根管長測定回路12から取得した切削工具5の位置(根管長測定回路12で得られる切削工具5の先端の根管内での位置)に基づく制御を組み合わせた場合について説明する。なお、本実施の形態4に係る根管治療器100は、図3〜図5に示した実施の形態1に係る根管治療器100と同じ構成を用いるため、同じ符号を用いて詳しい説明を繰返さない。
まず、切削工具5の位置に応じた制御として、制御部11は、切削工具5の位置が根尖に近くなった場合(切替位置に到達した場合)に、駆動シーケンスを切替える制御を行う。具体的に、制御部11は、切削工具5の位置が根尖に近くなった場合、図12に示す駆動シーケンスM17の様なツイスト駆動にシーケンスを切替える。なお、制御部11は、駆動シーケンスM17のSET1のみの駆動シーケンス(純粋なツイスト駆動)に切替えてもよい。
図15は、本発明の実施の形態4に係る根管治療器100において、切削工具5の位置に応じた制御を説明するためのフローチャートである。まず、制御部11は、予め設定されている第1駆動シーケンスを読込み、読込んだ第1駆動シーケンスのSET1で採用した駆動パターンから順に切削工具5を駆動する(ステップS151)。例えば、制御部11は、図10に示す駆動シーケンスM5を第1駆動シーケンスとして予め設定されており、駆動シーケンスM5のSET1およびSET2で採用した駆動パターンに従い切削工具5を駆動する。具体的に、制御部11は、SET1の駆動の結果として切削方向に360度×3回=1080度、切削工具5を回転するため、主に根管の切削を目的に切削工具5を駆動している。
次に、制御部11は、根管長測定回路12で得られる切削工具5の位置を取得する(ステップS152)。制御部11は、根管長測定回路12から取得した切削工具5の位置が切替位置に到達したか否か(切削工具の位置≦切替位置)を判断する(ステップS153)
取得した切削工具5の位置が切替位置に到達したと判断した場合(ステップS153:YES)、制御部11は、第2駆動シーケンスを読込み、読込んだ第2駆動シーケンスのSET1で採用した駆動パターンから順に切削工具5を駆動する(ステップS154)。例えば、制御部11は、切削工具5の位置が根尖に近くなった場合に、回転角度が小さいツイスト駆動(具体的に、切削方向の回転角度α1=90度、非切削方向の回転角度β1=90度)を含む駆動シーケンスM17である第2駆動シーケンスにシーケンスを切替え、駆動シーケンスM17のSET1およびSET2で採用した駆動パターンに従い切削工具5を駆動する。
なお、ステップS154の処理において、第1駆動シーケンスから第2駆動シーケンスへと駆動シーケンス自体を切替える例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、制御部11は、切替位置に到達したと判断した場合、駆動シーケンス自体を切替えることなく、第1駆動シーケンスで採用した駆動パターンの回転角度、回転角速度、繰返し回数などのパラメータを変更してもよい。
取得した切削工具5の位置が切替位置に到達していないと判断した場合(ステップS153:NO)、または第2駆動シーケンスに従い切削工具5を駆動している場合(ステップS154)、制御部11は、根管長測定回路12で得られる切削工具5の位置をさらに取得する(ステップS155)。次に、制御部11は、根管長測定回路12から取得した切削工具5の位置が基準位置に到達したか否か(切削工具の位置≦基準位置)を判断する(ステップS156)。取得した切削工具5の位置が基準位置に到達したと判断した場合(ステップS156:YES)、制御部11は、切削工具5の駆動を停止する、または非切削回転方向に切削工具5を回す(ステップS157)。なお、制御部11は、取得した切削工具5の位置が基準位置に到達したと判断した場合、駆動パターンの回転角度、回転角速度、繰返し回数などのパラメータを変更してもよい。
取得した切削工具5の位置が基準位置に到達していないと判断した場合(ステップS156:NO)、または切削工具5の駆動を停止等している場合(ステップS157)、制御部11は、駆動を終了する操作が操作部15から入力されているか否かを判断する(ステップS158)。駆動を終了する操作が操作部15から入力されている場合(ステップS158:YES)、制御部11は駆動を終了する。駆動を終了する操作が操作部15から入力されていない場合(ステップS158:NO)、制御部11は、ステップS159の処理に進む。
次に、制御部11は、根管長測定回路12で得られる切削工具5の位置を取得する(ステップS159)。根管長測定回路12から取得した切削工具5の位置が切替位置に到達したと判断した場合(ステップS159a:YES)、制御部11は、第2駆動シーケンスの駆動を維持してステップS154の処理に戻る。取得した切削工具5の位置が切替位置に到達していないと判断した場合(ステップS159a:NO)、第1駆動シーケンスの駆動に切替えるためステップS151の処理に戻る。
以上のように、制御部11は、根管長測定回路12で検出した切削工具5の位置に応じて、駆動シーケンスを選択、または記駆動シーケンスに含まれる駆動パターンのパラメータを変更する。具体的に、制御部11は、切削工具5の位置が切替位置に到達していないなら第1駆動シーケンスに従い切削工具5を駆動し、切削工具5の位置が切替位置に到達したなら第2駆動シーケンスまたは駆動パターンのパラメータを変更した第1駆動シーケンスに従い切削工具5を駆動する。そのため、本実施の形態4に係る根管治療器100は、切削工具5の位置に応じた駆動パターンに従い切削工具5を駆動することができ、切削工具5の位置にあった切削を行うことができる。また、制御部11は、根管長測定回路12で検出した切削工具5の位置が基準位置に到達したと判断した場合、切削工具5の回転を非切削回転方向に駆動(非切削方向の駆動)または切削工具5の回転を停止する駆動に制御するので、基準位置(根尖位置)近傍での作業を安全に行うことができる。
(変形例)
前述の本実施の形態4に係る根管治療器100では、切替位置に到達したか否かにより駆動シーケンスの切替、または記駆動シーケンスに含まれる駆動パターンのパラメータを変更する制御について説明した。しかし、本発明はこれに限られず、本実施の形態4の変形例に係る根管治療器100は、歯牙の根管を複数の領域に分け、その領域に応じて駆動シーケンスの切替、または記駆動シーケンスに含まれる駆動パターンのパラメータを変更する制御を行ってもよい。図16は、本発明の実施の形態4の変形例に係る根管治療器100において、根管の領域に応じた制御を説明するための概念図である。図16に示す歯牙50では、根管口から根尖に至る根管をA領域、B領域、C領域の順に3つの領域に分けている。
まず、制御部11は、切削工具5の先端がA領域内にある場合、図11に示す駆動シーケンスM12に従い切削工具5を駆動する。具体的に駆動シーケンスM12は、SET1で採用した駆動パターンとSET2で採用した駆動パターンとを含んでいる。SET1で採用した駆動パターンでは、切削方向の回転角度α1=180度、切削回転数N1=300rpm、非切削方向の回転角度β1=90度、非切削回転数N2=300rpm、繰返し回数=10回で切削工具5を駆動する。SET2で採用した駆動パターンでは、切削方向の回転角度α2=90度、切削回転数N3=300rpm、非切削方向の回転角度β2=180度、非切削回転数N4=300rpm、繰返し回数=5回で切削工具5を駆動する。駆動シーケンスM12では、SET1の駆動の結果として切削方向に切削工具5を180度×10回=1800度回転させており、主に根管の切削を目的に切削工具5を駆動している。つまり、根管口に近いA領域では、根管も太く、湾曲も少ないため、制御部11は、切削効率の高い駆動シーケンスM12に従い切削工具5を駆動する。
次に、制御部11は、切削工具5の先端がB領域内にある場合、図12に示す駆動シーケンスM16に従い切削工具5を駆動する。具体的に駆動シーケンスM16は、SET1で採用した駆動パターン〜SET4で採用した駆動パターンの4つのパターンを含んでいる。SET1で採用した駆動パターンでは、切削方向の回転角度α1=180度、切削回転数N1=300rpm、非切削方向の回転角度β1=90度、非切削回転数N2=300rpm、繰返し回数=2回で切削工具5を駆動する。SET2で採用した駆動パターンでは、切削方向の回転角度α2=90度、切削回転数N3=300rpm、非切削方向の回転角度β2=180度、非切削回転数N4=300rpm、繰返し回数=1回で切削工具5を駆動する。SET3で採用した駆動パターンでは、切削方向の回転角度α3=180度、切削回転数N5=300rpm、非切削方向の回転角度β3=90度、非切削回転数N6=300rpm、繰返し回数=2回で切削工具5を駆動する。SET4で採用した駆動パターンでは、切削方向の回転角度α4=90度、切削回転数N7=300rpm、非切削方向の回転角度β4=90度、非切削回転数N8=300rpm、繰返し回数=1回で切削工具5を駆動する。駆動シーケンスM16では、SET2で採用した駆動パターンにおいてバランスドフォーステクニックの駆動を行い根管の形状に沿うように切削拡大し、SET4で採用した駆動パターンにおいてウォッチワインディングテクニックの駆動で切削工具5を駆動している。つまり、B領域では、根管も次第に細くなり、湾曲が生じ始めるが、根尖位置まで距離があるため、制御部11は、切削効率を考慮しつつ根管の形状に沿う駆動シーケンスM16に従い切削工具5を駆動する。
次に、制御部11は、切削工具5の先端がC領域内にある場合、図12に示す駆動シーケンスM18に従い切削工具5を駆動する。具体的に駆動シーケンスM18は、SET1で採用した駆動パターンとSET2で採用した駆動パターンとを含んでいる。SET1で採用した駆動パターンでは、切削方向の回転角度α1=90度、切削回転数N1=300rpm、非切削方向の回転角度β1=90度、非切削回転数N2=300rpm、繰返し回数=2回以上で切削工具5を駆動する。SET2で採用した駆動パターンでは、切削方向の回転角度α2=45度、切削回転数N3=300rpm、非切削方向の回転角度β2=0度、非切削回転数N4=0rpm、繰返し回数=1回で切削工具5を駆動する。駆動シーケンスM18では、他の領域より小さい切削方向の回転角度(例えば90度)で切削工具5をツイスト駆動している。つまり、根尖に近いC領域では、根管も細く、湾曲も大きいため、制御部11は、切削効率よりも切削工具5への負担を軽減した駆動シーケンスM18に従い切削工具5を駆動する。
なお、制御部11は、切削工具5の先端が位置する領域に応じて、駆動シーケンス自体を切替える例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、制御部11は、切削工具5の先端が位置する領域に応じて、駆動シーケンス自体を切替えることなく、駆動シーケンスで採用した駆動パターンの回転角度、回転角速度、繰返し回数などのパラメータを変更してもよい。
以上のように、本変形例に係る根管治療器100では、歯牙の根管を複数の領域に分け、その領域に応じて駆動シーケンスの切替、または記駆動シーケンスに含まれる駆動パターンのパラメータを変更する制御を行うことで、根管の形状や状況にあった駆動パターンに従って切削工具5駆動することができ、歯牙の根管を適切に切削することができる。なお、制御部11は、A領域とB領域との間に第1切替位置を設け、B領域とC領域との間にも第2切替位置を設けることで、領域に応じて駆動シーケンスを切替える制御を行うことができる。
なお、制御部11は、A領域より上側の領域において単純な切削方向の回転運動のみ駆動しておき、A領域より当該変形例で説明した運動に切替えてもよい。
(その他の変形例)
さらに、実施の形態1〜4に係る根管治療器100では、ハンドピース1が、ホース61を介して、制御ボックス9に連結されている構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、コードレスタイプの根管治療器として構成してもよい。図17は、コードレスタイプの根管治療器の構成を示す概略図である。図17に示すコードレスタイプの根管治療器は、ハンドピース1の把持部4にバッテリーパック、マイクロモータ及び制御ボックスに相当する制御系を組み込み、各種操作部を把持部4の表面に設けてある。さらに、コードレスタイプの根管治療器には、把持部4に表示部16が設けてある。そのため、術者は、視線を大きく変えることなく、切削工具5を切削方向に駆動しているのか、非切削方向に駆動しているのか、現在の切削工具5の位置はどの程度か、切削工具5にかかっている負荷はどの程度か、回転数はいくらか、といった情報を確認することができる。図示していないが、口腔電極19a用のリード線19を把持部4より導出するよう構成してもよい。
また、実施の形態1〜4に係る根管治療器100では、切削工具5を駆動する動力源にマイクロモータ7を用いる場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、エアモータなどの別の駆動源であってもよい。
実施の形態1〜4に係る根管治療器100では、駆動シーケンス、切替負荷、切替位置、基準負荷、および基準位置などの設定値を記憶したレシピのうちから少なくとも1つの設定値を図4に示す設定部14で設定する構成でもよい。例えば、設定部14は、患者の性別や身長などを選択することで予め定められたレシピから駆動シーケンスなどの設定値を自動的に設定する構成でもよい。また、設定部14は、術者の好みの駆動シーケンスなどの設定値を予めレシピとして記憶させたり、患者毎に最適な駆動シーケンスなどの設定値を予めレシピとして記憶させたりする構成でもよい。
さらに、実施の形態1〜4に係る根管治療器100では、ヘッド部2に保持する切削工具5の種類に応じて、駆動シーケンス、切替負荷、切替位置、基準負荷、および基準位置などの設定値を予めレシピとして設定部14に記憶させておき、術者がヘッド部2に保持させた切削工具5の種類に基づき記憶させてあるレシピを設定部14から読出すことで、駆動シーケンスなどの設定値を設定する構成でもよい。もちろん、設定部14は、ヘッド部2に切削工具5の種類を識別することができるセンサを設け、当該センサからの検出結果に基づき記憶させてあるレシピを読出すことで、駆動シーケンスなどの設定値を設定する構成でもよい。
また、実施の形態1〜4に係る根管治療器100の構成を適宜組み合わせて構成してもよい。例えば、実施の形態3と実施の形態4とを組み合わせた根管治療器100では、負荷検出部で検出した切削工具5に加わる負荷および根管長測定回路12で検出した切削工具5の位置に応じて、駆動シーケンスを選択、または記駆動シーケンスに含まれる駆動パターンのパラメータを変更してもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。