JP6709544B2 - 調理器用トッププレート - Google Patents
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Description
本発明は、遮光膜が成膜されたガラス板を備える調理器用トッププレートに関する。
電磁加熱調理器や赤外線加熱調理器、ガス調理器等の調理器用のトッププレートとして、ガラス板を備えるトッププレートがある。このガラス板には、例えば、Ti等の金属からなる遮光膜が成膜されており、この遮光膜が調理器の内部に配置された加熱器等を視覚的に隠蔽することで、調理器に美観を付与している。
ここで、近年、調理器の利便性を向上させることを目的として、ガラス板の表面がタッチ面となるタッチパネルを備えたトッププレートが製造されている。この種のトッププレートでは、タッチパネルを的確に作動させるために、ガラス板に成膜される遮光膜の導電性を抑制して、電気抵抗を大きくすることが求められる。そのため、金属からなる遮光膜に代えて、半導体からなる遮光膜をガラス板に成膜する場合がある。
このようなトッププレートの一例が、特許文献1に開示されている。同文献に開示された調理器用のトッププレートにおいては、半導体であるSiからなる遮光膜がガラス板に成膜されている。これにより、金属からなる遮光膜と比較して、電気抵抗を大きくすることが可能となっている。
ところで、上記の遮光膜に求められる条件は、電気抵抗が大きいことのみではない。電気抵抗が大きいことに加えて、調理器が稼働する際の高温に耐え得るだけの高い耐熱性を備えることや、タッチパネルに青系統の色から赤系統の色までを良好に表示させるために、可視光域(波長400nm〜700nm)における透過率の変動幅が小さいことも要求される。
しかしながら、特許文献1に開示されたSiからなる遮光膜は、耐熱性については要求される条件を満たすものの、可視光域における透過率の変動幅が大きいという難点があった。詳述すると、短波長の光に対する透過率が長波長の光に対する透過率に比べて大幅に低く、例えば、LED(発光ダイオード)の光によってタッチパネルに表示を行うような場合に、青系統の色が良好に表示されないという不具合があった。
このような事情から、上記の条件の全てを満たす遮光膜を備えたトッププレートの開発が要求されていた。本発明の目的は、電気抵抗が大きく、高い耐熱性を備え、可視光域における透過率の変動幅が小さい遮光膜を備えた調理器用トッププレートを提供することにある。
上記の課題を解決するために創案された本発明は、一方面に遮光膜が成膜されたガラス板を備える調理器用トッププレートであって、遮光膜が、SiとZrとを混合した混合金属の酸窒化物からなり、且つ酸窒化物が酸素欠損状態または窒素欠損状態であり、且つ波長550nmの光に対する屈折率が2.3〜3.3である第一の層を備えていることに特徴付けられる。
上記の構成において、第一の層が、一般式Si1−xZrxOyNz(式中、xは0.1〜0.9であり、2y+3zは0.5〜3.5である)で表される化合物からなることが好ましい。
上記の構成において、波長400nm〜700nmの光に対する透過率の最大値が60%以下で、且つ透過率の変動幅が45%以下であることが好ましい。
上記の構成において、第一の層の電気抵抗の値が40kΩ/□以上であることが好ましい。
上記の構成において、遮光膜の厚みが20nm〜1000nmであることが好ましい。
上記の構成において、遮光膜が、第一の層の表面側及び裏面側のそれぞれに、Si若しくはAlの酸化物、窒化物、又は酸窒化物からなり、且つ第一の層よりも波長550nmの光に対する屈折率が小さく、且つ透明な第二の層を備えていてもよい。ここで、「透明」とは、波長400nm〜700nmの光に対する透過率が75%以上であることを意味する(以下、同じ)。
上記の構成において、遮光膜を挟んでガラス板とは反対側に配置されるタッチセンサーと、遮光膜を透過する光を出射する発光ダイオードとを備えていてもよい。
本発明に係る調理器用トッププレートは、電気抵抗が大きく、高い耐熱性を備え、可視光域における透過率の変動幅が小さい遮光膜が成膜されたガラス板を備えている。これにより、上記の条件の全てを満たす遮光膜を備えた調理器用トッププレートを得ることが可能である。
以下、本発明の実施形態に係る調理器用トッププレートについて添付の図面を参照して説明する。なお、以下の説明においては、光の波長が400nm〜700nmとなる範囲を可視光域と表記する。
<第一実施形態>
まず、本発明の第一実施形態に係る調理器用トッププレートの構成について説明する。尚、第一実施形態に係る調理器用トッププレートを適用する調理器としては、電磁調理器が好適である。
まず、本発明の第一実施形態に係る調理器用トッププレートの構成について説明する。尚、第一実施形態に係る調理器用トッププレートを適用する調理器としては、電磁調理器が好適である。
図1は、第一実施形態に係る調理器用トッププレート1を示す平面図である。同図に示すように、調理器用トッププレート1はガラス板2を備えており、このガラス板2は鍋等を載置して調理を行うための調理部2aと、調理器の温度等を調節するためのタッチパネルを備えたタッチパネル部2bとを有している。また、図2に示すように、調理器用トッププレート1は、ガラス板2の下面2cに遮光膜3を有している。この調理器用トッププレート1の遮光膜3が形成された領域において、可視光域における透過率の最大値が60%以下とされると共に、透過率の変動幅(透過率の最大値と最小値とのパーセンテージの差)が45%以下とされている。なお、可視光域における透過率の最小値としては、0.25%以上であることが好ましく、1%以上であることがより好ましい。
ここで、ガラス板2としては、600℃からの急冷に耐える、いわゆる耐熱衝撃性に優れたガラスが使用でき、具体的には50×10−7/℃以下の熱膨張係数を有するガラスが好適であり、低膨張の硼珪酸ガラス、石英ガラスあるいはβ−石英固溶体を主結晶とする低膨張結晶化ガラスを使用することが可能である。特に、30℃〜500℃における平均熱膨張係数が−10×10−7/℃〜+30×10−7/℃、さらに好ましくは−10×10−7/℃〜+20×10−7/℃のガラスは、耐熱衝撃性がさらに高く、ガラス板2内での温度分布が大きくなっても応力が発生しにくく、割れにくいため好ましい。
遮光膜3は、少なくとも調理部2a及びタッチパネル部2bの領域に形成されており、調理器の内部に配置された加熱器等を視覚的に隠蔽し得る最小限の領域にのみ成膜されていることが好ましく、ガラス板2の下面2cの全面に成膜されていることがより好ましい。
この遮光膜3は、SiとZrとを混合した混合金属の酸窒化物からなると共に、酸窒化物が酸素欠損状態または窒素欠損状態であり、その色がグレー系統の色になっている。なお、本実施形態においては、遮光膜3が単一の層からなり、この層が第一の層3aを構成している(組成については後述する)。また、遮光膜3は、波長550nmの光に対する屈折率が2.3〜3.3の範囲内とされている。さらに、遮光膜3は、その電気抵抗(シート抵抗)の値が40kΩ/□以上とされている。
また、遮光膜3は、その厚みが20nm〜1000nmの範囲内とされている。この厚みを変更することにより、上記の(A)遮光膜3が形成された領域における調理器用トッププレート1の透過率、及び、(B)遮光膜3の電気抵抗の値を調節することができる。また、遮光膜3において、酸素及び窒素の含有量を変更することにより、上記(A)及び(B)の調節に加え、(C)遮光膜3の屈折率の調節も可能である。
遮光膜3(第一の層3a)は、具体的には、一般式Si1−xZrxOyNz(式中、xは0.1〜0.9であり、2y+3zは0.5〜3.5である)で表される化合物からなる。
ここで、xの値は0.2〜0.8であることが好ましく、0.3〜0.7であることがより好ましい。なお、xの値が小さすぎると、可視光域における透過率の変動幅が大きくなる傾向がある。一方、xの値が大きすぎると、電気抵抗の値が不足する傾向がある。
また、2y+3zの値は1〜3.2であることが好ましく、1.5〜3であることがより好ましい。なお、2y+3zの値が小さすぎると、可視光域における透過率の変動幅が大きくなる傾向、及び、電気抵抗の値が不足する傾向がある。一方、2y+3zの値が大きすぎると、可視光域における透過率の最大値が高くなる傾向がある。
さらに、yの値は0〜1.7(ただし、0は含まない)であることが好ましく、0〜1.5(ただし、0は含まない)であることがより好ましく、0〜1.2(ただし、0は含まない)であることが最も好ましい。なお、yの値が大きすぎると、可視光域における透過率の最大値が高くなる傾向がある。
加えて、zの値は0〜1.1(ただし、0は含まない)であることが好ましく、0〜1(ただし、0は含まない)であることがより好ましく、0〜0.7(ただし、0は含まない)であることが最も好ましい。なお、zの値が大きすぎると、可視光域における透過率の最大値が高くなる傾向がある。
遮光膜3を挟んでガラス板2とは反対側(遮光膜3の下方)には、人体(指)がタッチパネル部2bに接触したことを検知するための透明なタッチセンサー4が配置されている。また、タッチセンサー4の下方には、遮光膜3を透過してタッチパネルを照らす光Lを出射する発光装置5が配置されている。この発光装置5は、各々が相互に異なる色の光L(例えば、青、黄、緑、赤等)を発光する複数のLED(発光ダイオード)を備えている。
本発明の第一の実施例として、スパッタリング法により遮光膜3をガラス板2の下面2cに成膜し、上記の第一実施形態に係る調理器用トッププレート1を作製した。そして、(1)遮光膜3の電気抵抗の値、(2)遮光膜3の耐熱性、及び、(3)遮光膜3が形成された領域における調理器用トッププレート1の可視光域における透過率の(1)〜(3)の項目について、調理器用トッププレートに適切か否かの検証を行った。
以下、遮光膜3をガラス板2に成膜した際の具体的な条件について説明する。
スパッタリング法を実行するにあたり、マグネトロンスパッタ装置を使用した。ターゲットとして、SiとZrとを混合した混合金属で構成されたターゲットを使用した。SiとZrとの比は、at%で3:2とした。また、ガラス板2として、日本電気硝子社製の透明結晶化ガラス(製品名:ネオセラム N−0)を使用した。なお、このガラス板2の厚みは3mmであり、波長550nmの光に対する屈折率は1.54である。
そして、ターゲットとガラス板2とが対向するように、ターゲットとガラス板2とをチャンバー内に設置し、Arに加えて、O2とN2とをチャンバー内に流入させつつ、スパッタリング法(反応性スパッタリング法)を実行した。チャンバー内に流入させるArとO2とN2との比は、流量比でAr:O2:N2=12:5:1とした。また、チャンバー内の真空度が、2.5×10−1Pa〜2.8×10−1Paとなるように雰囲気を調節した。さらに、印加する電力の範囲を12kW〜16kWとした。そして、膜厚が40nmとなるように遮光膜3をガラス板2に成膜し、調理器用トッププレート1を作製した。なお、成膜した遮光膜3の波長550nmの光に対する屈折率は2.84であった。
この第一の実施例でガラス板2に成膜した遮光膜3は、一般式Si1−xZrxOyNzにおいて、xの値が0.44であり、yの値が0.8であり、zの値が0.3である化合物(2y+3zの値は2.5)でなる。
以下、上記の(1)〜(3)の項目について、具体的な検証の方法を説明する。
(1)遮光膜3の電気抵抗の値については、三菱化学社製のテスター(製品名:Loresta MP)を用いて、電気抵抗(シート抵抗)の値を割り出し、その値が40kΩ/□以上である場合を合格とした。(2)遮光膜3の耐熱性については、調理器用トッププレート1を350℃の温度で5時間保持した後、遮光膜3の剥離の有無を目視で確認し、剥離が無い場合を合格とした。(3)遮光膜3が形成された領域における調理器用トッププレート1の透過率(入射角0°)については、日立製作所社製の分光光度計(製品名:U−4100)を用いて割り出した。そして、透過率の最大値が60%以下で、且つ透過率の変動幅が45%以内である場合を合格とした。
以下、上記の(1)〜(3)の項目について、検証の結果を示す。
(1)遮光膜3の電気抵抗の値は1985kΩ/□であった。(2)遮光膜3の剥離は確認されなかった。(3)遮光膜3が形成された領域における調理器用トッププレート1の透過率は、図3に実線で示すとおりの結果であり、透過率の最大値は49.4%であった。また、透過率の変動幅は21.2%であった。なお、参考までに波長460nm、530nm、630nmの各波長の光に対する透過率は、それぞれ33.1%、38.4%、45.1%であった。ここで、図3に点線で示しているのは、遮光膜3が形成された領域における調理器用トッププレート1の可視光域における反射率(入射角0°)である。この反射率についても、上記の分光光度計を用いて割り出した。
検証の結果から、遮光膜3は、タッチパネルを的確に作動させるのに十分な電気抵抗の値を有している。また、調理器が稼働する際の高温に耐え得るだけの耐熱性を備えている。さらに、調理器の内部を視覚的に隠蔽するのに十分な程度に、透過率の最大値が抑制されている。加えて、タッチパネルに青系統の色から赤系統の色までを良好に表示させ得る程度に、可視光域における透過率の変動幅が小さくなっている。ここで、透過率は、遮光膜3のみの透過率ではなく、調理器用トッププレート1の透過率である。しかしながら、ガラス板2及びタッチセンサー4は透明であり、光の吸収がないため、上記の検証の結果から、遮光膜3の透過率の最大値が抑制されていること、及び透過率の変動幅が小さいということが言える。
<第二実施形態>
以下、本発明の第二実施形態に係る調理器用トッププレートについて説明する。なお、この第二実施形態の説明において、上記の第一実施形態で既に説明した事項については、第二実施形態の説明で参照する図面に同一の符号を付すことで、重複する説明を省略し、第一実施形態との相違点についてのみ説明する。
以下、本発明の第二実施形態に係る調理器用トッププレートについて説明する。なお、この第二実施形態の説明において、上記の第一実施形態で既に説明した事項については、第二実施形態の説明で参照する図面に同一の符号を付すことで、重複する説明を省略し、第一実施形態との相違点についてのみ説明する。
図4(タッチセンサー4及び発光装置5の図示は省略)は、第二実施形態に係る調理器用トッププレート1において、タッチパネル部2bの近傍を示す縦断正面図である。同図に示すように、第二実施形態に係る調理器用トッププレート1が、上記の第一実施形態に係る調理器用トッププレート1と相違している点は、ガラス板2の下面2cに成膜された遮光膜3が三層からなる構造を有している点である。
この遮光膜3は、上記の第一実施形態において第一の層3aを構成する層の上面側及び下面側のそれぞれに、Si若しくはAlの酸化物、窒化物、又は酸窒化物からなる第二の層3bを備えている。この第二の層3bは、第一の層3aよりも波長550nmの光に対する屈折率が小さく、且つ透明な層とされている。これにより、第一の層3aのみをガラス板2に成膜した場合と比較して、反射率(調理器用トッププレート1の反射率)が抑制されている。なお、この第二の層3bについても、第一の層3aと同様に、タッチパネルを的確に作動させるのに十分な電気抵抗の値を有し、且つ調理器が稼働する際の高温に耐え得るだけの耐熱性を備えている。
また、遮光膜3は、第一の層3aと二つの第二の層3bとを含めた全厚みが20nm〜1000nmの範囲内とされている。なお、第一の層3aの厚みと二つの第二の層3bの厚みとの各々は、以下のような手順で設定すればよい。すなわち、上記の実施例1における(1)〜(3)の全てを満たすように第一の層3aの厚みを設定すると共に、設定した第一の層3aの厚みを基準にして、調理器用トッププレート1の反射率を抑制し得るように二つの第二の層3bの厚みをそれぞれ設定する。
ここで、遮光膜3における傷の発生を防止することを目的として、第二の層3bは硬さに優れた層で構成されることが好ましい。この観点から第二の層3bは、例えば、SiNで構成されることが好ましい。
本発明の第二の実施例として、スパッタリング法により遮光膜3をガラス板2の下面2cに成膜し、上記の第二実施形態に係る調理器用トッププレート1を作製した。そして、(1)遮光膜3を構成する三層のうち、第一の層3aの電気抵抗の値、(2)遮光膜3の耐熱性、及び、(3)遮光膜3が形成された領域における調理器用トッププレート1の可視光域における透過率の(1)〜(3)の項目について、調理器用トッププレートに適切か否かの検証を行った。なお、実施例2の実施条件は、上記の実施例1と一部が共通しているので、実施例1の実施条件との相違点についてのみ説明する。
以下、遮光膜3をガラス板2に成膜した際の具体的な条件について説明する。
遮光膜3のガラス板2への成膜は、以下の三つの工程によって実行した。第一の工程としてスパッタリング法を実行するにあたり、ターゲットとして、Siで構成されたターゲットを使用した。これにより、第二の層3b(上面側)をガラス板2に成膜した。チャンバー内に流入させるArとN2との比は、流量比でAr:N2=0:1とした。また、チャンバー内の真空度が、2.0×10−1Pa〜2.5×10−1Paとなるように雰囲気を調節した。さらに、印加する電力の範囲を12kW〜16kWとした。そして、膜厚が62.58nmとなるように窒化ケイ素で構成された第二の層3bをガラス板2に成膜した。なお、成膜した第二の層3bの波長550nmの光に対する屈折率は1.79であった。
次に、第二の工程としてスパッタリング法を実行するにあたり、ターゲットとして、SiとZrとを混合した混合金属で構成されたターゲットを使用した。SiとZrとの比は、at%で3:2とした。これにより、既に成膜済の第二の層3b(上面側)に重ねて第一の層3aをガラス板2に成膜した。チャンバー内に流入させるArとO2とN2との比は、流量比でAr:O2:N2=12:5:1とした。また、チャンバー内の真空度が、2.5×10−1Pa〜2.8×10−1Paとなるように雰囲気を調節した。さらに、印加する電力の範囲を12kW〜16kWとした。そして、膜厚が173.79nmとなるように第一の層3aをガラス板2に成膜した。なお、成膜した第一の層3aの波長550nmの光に対する屈折率は2.84であった。この第二の工程の実行により、上記の第一の実施例における遮光膜3と同一な組成を有する第一の層3aが成膜される。
最後に、第三の工程としてスパッタリング法を実行するにあたり、第一の工程と同様に、ターゲットとして、Siで構成されたターゲットを使用した。これにより、既に成膜済の第二の層3b(上面側)、及び、第一の層3aに重ねて第二の層3b(下面側)をガラス板2に成膜した。チャンバー内に流入させるArとN2との比は、流量比でAr:N2=0:1とした。また、チャンバー内の真空度が、2.0×10−1Pa〜2.5×10−1Paとなるように雰囲気を調節した。さらに、印加する電力の範囲を12kW〜16kWとした。そして、膜厚が87.31nmとなるように窒化ケイ素で構成された第二の層3bをガラス板2に成膜した。なお、成膜した第二の層3bの波長550nmの光に対する屈折率は1.79であった。以上の第一〜第三の工程によってガラス板2に遮光膜3を成膜した。
以下、上記の(1)〜(3)の項目について、具体的な検証の方法を説明する。
(1)第一の層3aの電気抵抗の値は、図5a、図5bに示す方法によって割り出した。詳述すると、図5a、図5bにクロスハッチングを施して示すように、遮光膜3に対して80mmの間隔を空けて平行に超音波はんだ付けを実行した。これにより、遮光膜3を構成する三層の厚み方向にはんだを浸透させた。はんだ付けは80mmの長さとなるように実行した。そして、はんだ付けを実行した領域と、上記のテスターとを接続し、第一の層3aの電気抵抗の値を割り出した。(2),(3)の項目については、上記の実施例1と同様にして検証を行った。
以下、上記の(1)〜(3)の項目について、検証の結果を示す。
(1)第一の層3aの電気抵抗の値は620kΩ/□であった。(2)遮光膜3の剥離は確認されなかった。(3)調理器用トッププレート1の透過率は、図6に実線で示すとおりの結果であり、透過率の最大値は32.9%であった。また、透過率の変動幅は30.0%であった。なお、参考までに波長460nm、530nm、630nmの各波長の光に対する透過率は、それぞれ7.0%、13.7%、25.9%であった。ここで、図6に点線で示しているのは、調理器用トッププレート1の可視光域における反射率(入射角0°)である。この反射率についても、上記の分光光度計を用いて割り出した。
検証の結果から、第一の層3aは、タッチパネルを的確に作動させるのに十分な電気抵抗の値を有している。これにより、遮光膜3が十分な電気抵抗の値を有していることになる。また、遮光膜3は、調理器が稼働する際の高温に耐え得るだけの耐熱性を備えている。さらに、調理器の内部を視覚的に隠蔽するのに十分な程度に、透過率の最大値が抑制されている。加えて、タッチパネルに青系統の色から赤系統の色までを良好に表示させ得る程度に、可視光域における透過率の変動幅が小さくなっている(透過率については、遮光膜3のみの透過率ではなく、調理器用トッププレート1の透過率である)。また、上記の実施例1との比較において、調理器用トッププレート1の反射率が抑制されている。
<第三実施形態>
以下、本発明の第三実施形態に係る調理器用トッププレートについて説明する。なお、この第三実施形態の説明において、上記の第一実施形態、或いは、第二実施形態で既に説明した事項については、第三実施形態の説明で参照する図面に同一の符号を付すことで、重複する説明を省略し、第一実施形態との相違点についてのみ説明する。
以下、本発明の第三実施形態に係る調理器用トッププレートについて説明する。なお、この第三実施形態の説明において、上記の第一実施形態、或いは、第二実施形態で既に説明した事項については、第三実施形態の説明で参照する図面に同一の符号を付すことで、重複する説明を省略し、第一実施形態との相違点についてのみ説明する。
図7(タッチセンサー4及び発光装置5の図示は省略)は、第三実施形態に係る調理器用トッププレート1において、タッチパネル部2bの近傍を示す縦断正面図である。同図に示すように、第三実施形態に係る調理器用トッププレート1が、上記の第一実施形態に係る調理器用トッププレート1と相違している点は、ガラス板2の下面2cに成膜された遮光膜3が五層からなる構造を有している点である。
この遮光膜3は、上記の第一実施形態において第一の層3aを構成する層の上面側に、酸化ニオブからなり、且つ可視光域において相対的に屈折率が大きい高屈折率層3cと、酸化ケイ素からなり、且つ可視光域において相対的に屈折率が小さい低屈折率層3dとを交互に積層した三層を備えている。この三層は、二つの高屈折率層3cの相互間に低屈折率層3dが介在してなる。これにより、遮光膜3が形成された領域における調理器用トッププレート1の可視光域における反射率が高くなると共に、遮光膜3は黒っぽいシルバー系統の色となる。また、遮光膜3は、第一の層3aの下面側に、窒化ケイ素からなる第二の層3bを備えている。
ここで、高屈折率層3cは、酸化ニオブのみに限らず、例えば、酸化チタン、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化タンタル、酸化タングステン、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ニオブ、窒化チタン、窒化ランタン、窒化イットリウム、窒化タンタル、窒化タングステン等によって構成することができる。また、低屈折率層3dは、酸化ケイ素のみに限らず、例えば、酸化アルミニウム等によって構成することができる。
なお、第一の層3aを構成する層の上面側に積層される層の数(高屈折率層3cの層の数と低屈折率層3dの層の数との和)は、三層に限られるものではない。高屈折率層3cと低屈折率層3dとを交互に積層する限りで、三層から層の数を変更してもよい。この場合、層の数の下限は二層であり、層の数の上限は二十層である。好ましい層の数の上限としては、十五層、或いは、十層である。
本発明の第三の実施例として、スパッタリング法により遮光膜3をガラス板2の下面2cに成膜し、上記の第三実施形態に係る調理器用トッププレート1を作製した。そして、(1)遮光膜3を構成する五層のうち、第一の層3aの電気抵抗の値、(2)遮光膜3の耐熱性、及び、(3)遮光膜3が形成された領域における調理器用トッププレート1の可視光域における透過率の(1)〜(3)の項目について、調理器用トッププレートに適切か否かの検証を行った。なお、実施例3の実施条件は、上記の実施例1および実施例2と一部が共通しているので、実施例1および実施例2の実施条件との相違点についてのみ説明する。
以下、遮光膜3をガラス板2に成膜した際の具体的な条件について説明する。
遮光膜3のガラス板2への成膜は、以下の五つの工程によって実行した。第一の工程としてスパッタリング法を実行するにあたり、ターゲットとして、Nbで構成されたターゲットを使用した。これにより、酸化ニオブからなる高屈折率層3cをガラス板2に成膜した。チャンバー内に流入させるArとO2との比は、流量比でAr:O2=3:2とした。また、チャンバー内の真空度が、2.0×10−1Pa〜2.5×10−1Paとなるように雰囲気を調節した。さらに、印加する電力の範囲を25kW〜30kWとした。そして、膜厚が61.47nmとなるように高屈折率層3cをガラス板2に成膜した。なお、成膜した高屈折率層3cの波長550nmの光に対する屈折率は2.35であった。
次に、第二の工程としてスパッタリング法を実行するにあたり、ターゲットとして、Siで構成されたターゲットを使用した。これにより、既に成膜済の高屈折率層3cに重ねて酸化ケイ素からなる低屈折率層3dをガラス板2に成膜した。チャンバー内に流入させるArとO2との比は、流量比でAr:O2=3:2とした。また、チャンバー内の真空度が、2.0×10−1Pa〜2.5×10−1Paとなるように雰囲気を調節した。さらに、印加する電力の範囲を20kW〜25kWとした。そして、膜厚が99.59nmとなるように低屈折率層3dをガラス板2に成膜した。なお、成膜した低屈折率層3dの波長550nmの光に対する屈折率は1.48であった。
次に、第三の工程としてスパッタリング法を実行するにあたり、第一の工程と同様に、ターゲットとして、Nbで構成されたターゲットを使用した。これにより、既に成膜済の高屈折率層3cおよび低屈折率層3dに重ねて酸化ニオブからなる高屈折率層3cをガラス板2に成膜した。チャンバー内に流入させるArとO2との比は、流量比でAr:O2=3:2とした。また、チャンバー内の真空度が、2.0×10−1Pa〜2.5×10−1Paとなるように雰囲気を調節した。さらに、印加する電力の範囲を27kW〜32kWとした。そして、膜厚が73.87nmとなるように高屈折率層3cをガラス板2に成膜した。なお、成膜した高屈折率層3cの波長550nmの光に対する屈折率は2.35であった。
次に、第四の工程としてスパッタリング法を実行するにあたり、ターゲットとして、SiとZrとを混合した混合金属で構成されたターゲットを使用した。SiとZrとの比は、at%で3:2とした。これにより、既に成膜済の二つの高屈折率層3cおよび低屈折率層3dに重ねて第一の層3aをガラス板2に成膜した。チャンバー内に流入させるArとO2とN2との比は、流量比でAr:O2:N2=12:5:1とした。また、チャンバー内の真空度が、2.0×10−1Pa〜2.5×10−1Paとなるように雰囲気を調節した。さらに、印加する電力の範囲を12kW〜16kWとした。そして、膜厚が130.19nmとなるように第一の層3aをガラス板2に成膜した。なお、成膜した第一の層3aの波長550nmの光に対する屈折率は2.84であった。この第四の工程の実行により、上記の第一の実施例における遮光膜3と同一な組成を有する第一の層3aが成膜される。
最後に、第五の工程としてスパッタリング法を実行するにあたり、ターゲットとして、Siで構成されたターゲットを使用した。これにより、既に成膜済の二つの高屈折率層3c、低屈折率層3d、及び、第一の層3aに重ねて窒化ケイ素からなる第二の層3bをガラス板2に成膜した。チャンバー内に流入させるArとN2との比は、流量比でAr:N2=0:1とした。また、チャンバー内の真空度が、2.0×10−1Pa〜2.5×10−1Paとなるように雰囲気を調節した。さらに、印加する電力の範囲を12kW〜16kWとした。そして、膜厚が98.36nmとなるように第二の層3bをガラス板2に成膜した。なお、成膜した第二の層3bの波長550nmの光に対する屈折率は1.79であった。以上の第一〜第五の工程によってガラス板2に遮光膜3を成膜した。
以下、上記の(1)〜(3)の項目について、検証の結果を示す。なお、(1)〜(3)の検証の方法については、上記の実施例2と同様にして行った。
(1)第一の層3aの電気抵抗の値は820kΩ/□であった。(2)遮光膜3の剥離は確認されなかった。(3)調理器用トッププレート1の透過率は、図8に実線で示すとおりの結果であり、透過率の最大値は22.0%であった。また、透過率の変動幅は18.1%であった。なお、参考までに波長460nm、530nm、630nmの各波長の光に対する透過率は、それぞれ5.2%、8.0%、14.9%であった。ここで、図8に点線で示しているのは、調理器用トッププレート1の可視光域における反射率(入射角0°)である。
検証の結果から、第一の層3aは、タッチパネルを的確に作動させるのに十分な電気抵抗の値を有している。これにより、遮光膜3が十分な電気抵抗の値を有していることになる。また、遮光膜3は、調理器が稼働する際の高温に耐え得るだけの耐熱性を備えている。さらに、調理器の内部を視覚的に隠蔽するのに十分な程度に、透過率の最大値が抑制されている。加えて、タッチパネルに青系統の色から赤系統の色までを良好に表示させ得る程度に、可視光域における透過率の変動幅が小さくなっている。
ここで、本発明に係る調理器用トッププレートは、上記の各実施形態で説明した構成に限定されるものではない。例えば、図9(タッチセンサー4及び発光装置5の図示は省略)に示すように、遮光膜3は、第一の層3aと第二の層3bとを交互に重ね合わせた五層からなる構造としてもよいし、さらに多くの層からなる構造(例えば、七層からなる構造)としてもよい。このようにすれば、より調理器用トッププレートの反射率を抑制することが可能となる。
1 調理器用トッププレート
2 ガラス板
2a 調理部
2b タッチパネル部
2c 下面
3 遮光膜
3a 第一の層
3b 第二の層
3c 高屈折率層
3d 低屈折率層
4 タッチセンサー
5 発光装置
L 光
2 ガラス板
2a 調理部
2b タッチパネル部
2c 下面
3 遮光膜
3a 第一の層
3b 第二の層
3c 高屈折率層
3d 低屈折率層
4 タッチセンサー
5 発光装置
L 光
Claims (7)
- 一方面に遮光膜が成膜されたガラス板を備える調理器用トッププレートであって、
前記遮光膜が、SiとZrとを混合した混合金属の酸窒化物からなり、且つ前記酸窒化物が酸素欠損状態または窒素欠損状態であり、且つ波長550nmの光に対する屈折率が2.3〜3.3である第一の層を備えていることを特徴とする調理器用トッププレート。 - 前記第一の層が、一般式Si1−xZrxOyNz(式中、xは0.1〜0.9であり、2y+3zは0.5〜3.5である)で表される化合物からなることを特徴とする請求項1に記載の調理器用トッププレート。
- 波長400nm〜700nmの光に対する透過率の最大値が60%以下で、且つ該透過率の変動幅が45%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の調理器用トッププレート。
- 前記第一の層の電気抵抗の値が40kΩ/□以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の調理器用トッププレート。
- 前記遮光膜の厚みが20nm〜1000nmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の調理器用トッププレート。
- 前記遮光膜が、前記第一の層の表面側及び裏面側のそれぞれに、Si若しくはAlの酸化物、窒化物、又は酸窒化物からなり、且つ前記第一の層よりも波長550nmの光に対する屈折率が小さく、且つ透明な第二の層を備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の調理器用トッププレート。
- 前記遮光膜を挟んで前記ガラス板とは反対側に配置されるタッチセンサーと、前記遮光膜を透過する光を出射する発光ダイオードとを備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の調理器用トッププレート。
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