JP6698234B1 - 太陽電池ストリングの劣化検出方法、劣化検出システム及び劣化検出装置 - Google Patents

太陽電池ストリングの劣化検出方法、劣化検出システム及び劣化検出装置 Download PDF

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Abstract

【課題】太陽電池アレイを構成する複数の太陽電池ストリングから、劣化した太陽電池モジュールを含む太陽電池ストリングを容易且つ正確に検出することを可能とする。【解決手段】劣化した太陽電池モジュール4を含む太陽電池ストリング5を検出する、太陽電池ストリングの劣化検出方法であって、太陽電池ストリング5の発電電流値を検出する電流検出ステップと、複数の太陽電池ストリング5の発電電流値から相対電流比率を算出する算出ステップと、太陽電池モジュール4に劣化が生じていないときに算出ステップにより算出された相対電流比率を参照相対電流比率として記憶する記憶ステップと、クラスタ劣化有無判定用の相対電流比率と参照相対電流比率との比較に基づいて、太陽電池ストリング5が劣化した太陽電池モジュール4を含むか否かを判定する判定ステップと、を有する太陽電池ストリングの劣化検出方法、劣化検出システム及び劣化検出装置。【選択図】図5

Description

本発明は、太陽電池アレイを構成する複数の太陽電池ストリングをパワーコンディショナにより電力系統と連系させた太陽光発電システムにおいて、複数の太陽電池ストリングから劣化(故障または発電不良等の機能劣化)した太陽電池モジュールまたはクラスタを含む太陽電池ストリングを検出する、太陽電池ストリングの劣化検出方法、劣化検出システム及び劣化検出装置に関する。
太陽光発電システムは、複数の太陽電池モジュールを電気的に直列に接続した太陽電池ストリングを1単位とし、これを並列に複数接続して構成された太陽電池アレイを備えている。太陽電池アレイを構成する複数の太陽電池ストリングは、1つの接続箱を介してパワーコンディショナ(電力変換装置)に接続され、発電した電力が電力会社の商用電力系統に連系されるように構成されている。
太陽電池ストリングを構成する太陽電池モジュールは、複数の太陽電池セルを電気的に直列に接続したセルストリングと、セルストリングを迂回する経路上に設けられて当該セルストリングが発電不良を生じたときに他のセルストリングによる発電電流を迂回させるバイパスダイオードとを含むクラスタを1単位とし、これを直列に複数接続して構成されている。
太陽電池モジュールは、半導体と金属などの、熱膨張率の異なる材質を電気的に接合した構造を有しているので、日夜ないし季節毎の寒暖の繰り返しによる熱ストレス等のため、長期的には漸次機能劣化を生じる上、落雷、暴風雨等に際して部材が突発的に破損することもあり、こうした要因によって太陽電池モジュール全体として発電不良に至ることは不可避である。太陽電池モジュールの劣化を放置すると、当該太陽電池モジュールを有する太陽電池ストリング全体の発電損に至ることから、早期に劣化した太陽電池モジュールを特定し、交換する必要がある。
太陽電池アレイを構成する複数の太陽電池モジュールの中から劣化した太陽電池モジュールを検出する方法として、計測機器を用いてオンサイトで劣化した太陽電池モジュールを特定する方法や、ドローンに搭載した赤外線カメラにより撮影した赤外線カメラ画像に基づいて、劣化により異常に高温化した太陽電池モジュールを検知する方法などが知られている。しかし、例えば1MW規模の太陽光発電システムでは数千枚の太陽電池モジュールが配置されることから、上記の計測機器を用いた方法では、多数の太陽電池モジュールの中から劣化した太陽電池モジュールを効率的に特定することは容易ではなかった。また、ドローンに搭載した赤外線カメラを利用する方法であっても、太陽電池アレイの所在場所でドローン操作を行うことから、ドローン操作者が現地に行く必要があった。
そこで、従来、太陽電池ストリングの発電電流値を遠隔監視する遠隔監視システムが開発されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1では、一つの太陽電池ストリングごとの電流値と、太陽光発電システム全体の合計電流値とを測定し、一つの太陽電池ストリングごとの電流値と、太陽光発電システム全体の合計電流値から計算された一つあたりの太陽電池ストリングの電流値とを比較し、一つの太陽電池ストリングごとの電流値がそれぞれ計算された一つあたりの太陽電池ストリングの電流値より一定割合以上低下している場合にその低下状態にある太陽電池ストリングを故障候補として抽出する技術が開示されている。
国際公開第2011/101916号
上記従来の遠隔監視システムにおいて、太陽電池モジュールの劣化により太陽電池ストリングに発生した1クラスタ分の発電不良による発電損を検知することができれば、発電損を生じている太陽電池ストリングに劣化した太陽電池モジュールが含まれていると推定できることから、上記従来の計測機器やドローンを用いたオンサイトでの劣化した太陽電池モジュールの特定作業を大幅に効率化することができる。
そこで、本出願の発明者らは、それぞれ14枚の太陽電池モジュールが直列に接続された、発電不良クラスタを含まない8つの太陽電池ストリングを有する太陽電池アレイを用い、一定時間、ある太陽電池モジュールの1クラスタ分の領域を遮光して発電損を発生させ、この発電損を従来の遠隔監視システムにより遠隔監視する実験を行った。
図11は、上記実験において、1番〜8番の8つの太陽電池ストリングのうち、7番の太陽電池ストリング(図11において破線で示す。)のみを、11:30〜12:00の間、1クラスタ分遮光したときの、従来の遠隔監視システムによる、8つの太陽電池ストリングの発電電流の測定値を示す。また、図12は、上記実験において、図11の実験実施日とは異なる日に、1番〜8番の8つの太陽電池ストリングのうち、8番の太陽電池ストリングのみを、11:48〜13:51の間、1クラスタ分遮光(遮光1)した後(図12において破線で示す。)、3番の太陽電池ストリングのみを、13:51〜14:42の間、1クラスタ分遮光(遮光2)したときの、従来の遠隔監視システムによる、8つの太陽電池ストリングの発電電流の測定値を示す。
発明者らは、上記実験結果から、従来の遠隔監視システムが有する、以下の技術的な課題を見出した。
なお、以下においては、1クラスタ分の発電不良(バイパスダイオードを含む経路に電流が迂回した状態)を「クラスタ劣化」、バイパスダイオードを含む電流回路を「電流迂回回路」、クラスタ劣化がない太陽電池ストリングの発電量とクラスタ劣化を含む太陽電池ストリングの発電量との差を「クラスタ発電損」という。
すなわち、図11及び図12において、クラスタ劣化により生じるクラスタ発電損(クラスタ劣化により生じる電流値の低下分)R1は、クラスタ劣化が発生していない正常な太陽電池ストリングの個体差により生じる電流値の相違幅R2と同程度であるため、クラスタ劣化を生じた太陽電池ストリングの発電量プロファイル(発電量の時間変化グラフ)と、クラスタ劣化を含まない正常な太陽電池ストリングの発電量プロファイルとの比較によっては、クラスタ発電損を正確に検出することはできない、という課題がある。
また、上記R1とR2が同程度であるため、発電量プロファイルの長期継続的な計測においてもクラスタ劣化がいつ生じたかを特定することが困難であるので、どの太陽電池ストリングの発電量プロファイルにクラスタ劣化が存在するかを判別することができない、という課題がある。
さらに、雲がかかることによる日射量の変動や、近辺の構造物等により部分的な影が生じることによって日射量が低下すると太陽電池ストリングの発電量も低下するので、図12の遮光2の発電量プロファイルに示されるように、正常な太陽電池ストリングの発電量とクラスタ劣化を含む太陽電池ストリングの発電量との差は日射量が十分大きい場合よりも相対的に小さくなるので、クラスタ発電損の検出がより困難になる、という課題がある。例えば、14枚の太陽電池モジュールで構成される太陽電池ストリングでは、発電電流値が10A(アンペア)の場合、1クラスタ分のクラスタ劣化による発電電流低下分は約0.24Aであるが、発電電流値が5Aに低下すると1クラスタ分のクラスタ劣化による発電電流低下分は約0.12Aに減少する。
さらに、電流センサの測定精度(CT:Current Transformerでは±0.2A程度)を考慮すると、上記の低日射の場合にはクラスタ発電損の検出ができなくなる、という課題がある。
特許文献1に開示された太陽光発電システムの故障検出方法を含む従来の遠隔監視システムでは、これらの技術的課題を有することにより、発電量プロファイルによるクラスタ発電損の検出は困難であった。
本発明は、上記課題を鑑みて成されたものであり、その目的は、太陽電池アレイを構成する複数の太陽電池ストリングから、劣化した太陽電池モジュールまたはクラスタを含む太陽電池ストリングを容易且つ正確に検出することが可能な、太陽電池ストリングの劣化検出方法、劣化検出システム及び劣化検出装置を提供することにある。
本発明の太陽電池ストリングの劣化検出方法は、太陽電池アレイを構成する複数の太陽電池ストリングから、劣化した太陽電池モジュールを含む太陽電池ストリングを検出する、太陽電池ストリングの劣化検出方法であって、複数の前記太陽電池ストリングのそれぞれの発電電流値を検出する電流検出ステップと、前記電流検出ステップで検出された複数の前記太陽電池ストリングの発電電流値から、それぞれの前記太陽電池ストリングの発電電流値の相対電流比率を算出する算出ステップと、複数の前記太陽電池ストリングを構成する複数の太陽電池モジュールの何れにもクラスタ劣化が生じていないときに前記算出ステップにより算出された、それぞれの前記太陽電池ストリングの相対電流比率を参照相対電流比率として記憶する記憶ステップと、クラスタ劣化有無判定時に、時系列で測定された前記発電電流値に対して前記算出ステップにより算出されたクラスタ劣化有無判定用の相対電流比率が前記記憶ステップで記憶された前記参照相対電流比率に前記クラスタ劣化による発電損よりも小さい発電損に対して予め設定された因子を乗じた値未満であるという事象が連続して生起し、かつ該連続して生起した事象の数が予め設定された所定の数以上である場合に、当該太陽電池ストリングがクラスタ劣化した前記太陽電池モジュールを含むと判定する判定ステップと、を有することを特徴とする。
本発明の太陽電池ストリングの劣化検出システムは、太陽電池アレイを構成する複数の太陽電池ストリングから、劣化した太陽電池モジュールを含む太陽電池ストリングを検出する、太陽電池ストリングの劣化検出システムであって、それぞれ対応する前記太陽電池ストリングに接続されて該太陽電池ストリングの発電電流値を検出する複数の電流検出部と、複数の前記電流検出部に接続されたデータ処理部と、ネットワークを介して前記データ処理部に接続されたサーバー装置と、前記データ処理部または前記サーバー装置の何れか一方に設けられ、複数の前記電流検出部から入力された複数の前記太陽電池ストリングの発電電流値から、それぞれの前記太陽電池ストリングの発電電流値の相対電流比率を算出する相対電流比率算出部と、前記データ処理部または前記サーバー装置の何れか一方に設けられ、複数の前記太陽電池ストリングを構成する複数の太陽電池モジュールの何れにもクラスタ劣化が生じていないときに前記相対電流比率算出部により算出された、それぞれの前記太陽電池ストリングの相対電流比率を参照相対電流比率として記憶する記録部と、前記サーバー装置に設けられ、時系列で測定された前記発電電流値に対して前記相対電流比率算出部により算出されたクラスタ劣化有無判定用の相対電流比率が前記記録部に記憶されている前記参照相対電流比率に前記クラスタ劣化による発電損よりも小さい発電損に対して予め設定された因子を乗じた値未満であるという事象が連続して生起し、かつ該連続して生起した事象の数が予め設定された所定の数以上である場合に、当該太陽電池ストリングがクラスタ劣化した前記太陽電池モジュールを含むと判定する劣化検出処理部と、を有することを特徴とする。
本発明の太陽電池ストリングの劣化検出装置は、太陽電池アレイを構成する複数の太陽電池ストリングから、劣化した太陽電池モジュールを含む太陽電池ストリングを検出する、太陽電池ストリングの劣化検出装置であって、それぞれ対応する前記太陽電池ストリングに接続されて該太陽電池ストリングの発電電流値を検出する複数の電流検出部と、複数の前記電流検出部から入力された複数の前記太陽電池ストリングの発電電流値から、それぞれの前記太陽電池ストリングの発電電流値の相対電流比率を算出する相対電流比率算出部と、複数の前記太陽電池ストリングを構成する複数の太陽電池モジュールの何れにもクラスタ劣化が生じていないときに前記相対電流比率算出部により算出された、それぞれの前記太陽電池ストリングの相対電流比率を参照相対電流比率として記憶する記録部と、クラスタ劣化有無判定時に、時系列で測定された前記発電電流値に対して前記相対電流比率算出部により算出されたクラスタ劣化有無判定用の相対電流比率が前記記録部に記憶されている前記参照相対電流比率に前記クラスタ劣化による発電損よりも小さい発電損に対して予め設定された因子を乗じた値未満であるという事象が連続して生起し、かつ該連続して生起した事象の数が予め設定された所定の数以上である場合に、当該太陽電池ストリングがクラスタ劣化した前記太陽電池モジュールを含むと判定する劣化検出処理部と、を有することを特徴とする。
本発明によれば、太陽電池アレイを構成する複数の太陽電池ストリングから、劣化した太陽電池モジュールまたはクラスタを含む太陽電池ストリングを容易且つ正確に検出することが可能な、太陽電池ストリングの劣化検出方法、劣化検出システム及び劣化検出装置を提供することができる。
本発明の一実施の形態である太陽電池ストリングの劣化検出システムの構成を概略で示す説明図である。 図1に示す太陽電池モジュールの構成を示す説明図である。 図1に示す太陽電池ストリングの劣化検出システムのブロック図である。 パラメータ入力とクラスタ劣化検出プログラムの動作を示すフローチャート図である。 クラスタ劣化検出プログラムの処理を示すフローチャート図である。 参照相対電流比率の一例を示す説明図である。 複数の測定時刻における判定用の相対電流比率の一例を、日射指数とともに示す説明図である。 クラスタ劣化の有無を判定するための発電損判定データ長の例を示す説明図である。 本発明を適用してクラスタ発電損を検出するためのパラメータ設定例を示す図である。 変形例の太陽電池ストリングの劣化検出システムのブロック図である。 従来の遠隔監視システムによる、8つの太陽電池ストリングの発電電流値の測定例を示す特性線図である。 従来の遠隔監視システムによる、8つの太陽電池ストリングの発電電流値の他の測定例を示す特性線図である。
以下、図面を参照して本発明をより具体的に例示説明する。
図1に示す太陽光発電システム1は、太陽電池アレイ2をインバータからなるパワーコンディショナ(電力変換装置:PCS)3により電力系統に連携させた構成を有している。
太陽電池アレイ2は、それぞれ8つの太陽電池モジュール4が電気的に直列に接続されて構成された複数(M台)の太陽電池ストリング5を有している。複数の太陽電池ストリング5は、それぞれ接続箱6の内部で電気的に並列に接続されることで集電され、接続箱6を介してパワーコンディショナ3に電気的に接続されている。接続箱6は、それぞれの太陽電池ストリング5に対応した複数の断路器6aと、それぞれの断路器6aに対応した逆流防止用ダイオード6bとを備えている。
パワーコンディショナ3は、太陽電池アレイ2により発電された直流の発電電流を交流に変換して電力系統に出力するとともに、全ての太陽電池ストリング5の発電電力を最大にするようにMPPT(Maximum Power Point Tracking)方式により電圧を制御する。
図2に示すように、それぞれの太陽電池モジュール4は、その内部構成として、それぞれ10個の太陽電池セル(発電素子)4aが5個ずつ2列に並べて配置されるとともに電気的に直列に接続されたセルストリング4bと、セルストリング4bを迂回する電流経路(電流迂回回路)上に設けられたバイパスダイオード(BPD)4cと、を含んで構成される3つのクラスタ4dを有し、それぞれのクラスタ4dが互いに電気的に直列に接続された構成となっている。なお、便宜上、図2においては、それぞれのセルストリング4bにおいて1つの太陽電池セル4aにのみ符号を付してある。
バイパスダイオード4cは、遮光物による影等によってセルストリング4bに不均一に太陽光が照射されたり、太陽電池セル4aの発電性能が低下するなどして、クラスタ4d内のセルストリング4bの発電量が相対的に低下した部分の両端電圧が、同じクラスタ4d内のセルストリング4bの正常に発電している部分によって発生した発電電圧より高くなってバイパスダイオード4cの順方向電圧に等しくなったときに瞬時に作動し、セルストリング4bを迂回するように発電電流を電流迂回回路へバイパスさせて、セルストリング4bにホットスポット(発電電流の熱変換による損失)が発生することを回避するためのものである。したがって、正常な太陽電池モジュール4の全体に均一に太陽光が照射されると、各太陽電池セル4aの発電によって生じる起電力の合計がバイパスダイオード4cの順方向電圧以上となるので、図2中に太線で示すように、発電電流はバイパスダイオード4cを通らずに各セルストリング4bを順に流れる。
なお、太陽電池アレイ2を構成する太陽電池ストリング5の数は任意である。また、太陽電池ストリング5を構成する太陽電池モジュール4の数も任意である。さらに、太陽電池モジュール4を構成するクラスタ4dの数及びクラスタ4dを構成する太陽電池セル4aの数もそれぞれ任意である。
上記の太陽光発電システム1において、太陽電池モジュール4に劣化(発電性能の低下)が生じると、当該太陽電池モジュール4を有する太陽電池ストリング5の全体に発電損が生じることから、早期に劣化した太陽電池モジュール4を特定し、交換する必要がある。本発明の一実施の形態である太陽電池ストリングの劣化検出方法によれば、太陽電池アレイ2を構成する複数の太陽電池ストリング5から、劣化した太陽電池モジュール4を含む太陽電池ストリング5を容易且つ正確に検出することができる。
本発明の一実施の形態である太陽電池ストリングの劣化検出方法は、例えば、図1に示す構成を有する本発明の一実施の形態である太陽電池ストリングの劣化検出システム10を用いて実施することができる。
太陽電池ストリングの劣化検出システム10は、太陽電池アレイ2を構成する複数の太陽電池ストリング5から、劣化した太陽電池モジュール4を含む太陽電池ストリング5を検出するものであり、データロガー20とサーバー装置30とを有している。
データロガー20は、それぞれ対応する太陽電池ストリング5に接続された複数の電流検出部としての電流センサ21を備えている。複数の電流センサ21は、それぞれ対応する太陽電池ストリング5の発電電流値を検出することができる。発電電流値の測定は、全ての電流センサ21が同期して数秒間隔で行われる。
また、データロガー20は、複数の太陽電池ストリング5の電圧値を検出する電圧センサ22を備えている。ここで、全ての太陽電池ストリング5の電圧はパワーコンディショナ3によるMPPT制御によって同電圧になるので、電圧センサ22は任意の一つの太陽電池ストリング5の電圧値を測定すればよい。
データロガー20はデータ処理部23を備えている。データ処理部23は、例えばCPU(中央演算処理装置)等を備えたマイクロコンピュータにより構成することができる。
複数の電流センサ21及び電圧センサ22はデータ処理部23に接続されており、複数の電流センサ21により検出された各太陽電池ストリング5の発電電流値の測定データ及び各太陽電池ストリング5に加わる電圧の測定データは、それぞれデータ処理部23に入力される。複数の電流センサ21が同期して数秒間隔で発電電流値を測定すると、データ処理部23では測定された各々の発電電流値について所定の時間(例えば1分間)の平均値を算出することによって発電電流値の読み取り誤差を極小化する。
データロガー20には、日射量検出部としての日射量センサ24が接続されている。日射量センサ24は太陽電池アレイ2が設置された場所における日射量を検出することができる。日射量センサ24により検出された日射量のデータはデータ処理部23に入力される。
データロガー20には、温度センサ25が接続されている。温度センサ25は太陽電池セル4aの温度を検出することができる。温度センサ25により検出された太陽電池セル4aの温度のデータはデータ処理部23に入力される。
データロガー20には、データ処理部23で処理したデータやグラフ等を表示可能な表示部26が設けられるとともに、データ処理部23に対して各種の指令等を入力するための入力部27が設けられている。表示部26は、例えば液晶パネル等のディスプレイで構成することができ、入力部27は表示部26にタッチパネルとして設けた構成とすることができる。また、データロガー20には図示しないデータ記録部が設けられ、電流センサ21、電圧センサ22、日射量センサ24及び温度センサ25の測定データやデータ処理部23で処理したデータの一時蓄積が行われる。
データロガー20にはネットワークインターフェース28が設けられている。ネットワークインターフェース28は、例えばインターネット等のネットワーク40に接続可能であり、データ処理部23はネットワーク40を介してサーバー装置30及び操作端末50に接続可能となっている。
ネットワークインターフェース28としては、例えば、Wi−FiやLTE等、種々の通信規格を有する無線インターフェースを用いることができるが、有線のインターフェースであってもよい。
図3は、図1に示す太陽電池ストリングの劣化検出システム10のブロック図である。図3に示すように、データロガー20に設けられたデータ処理部23は、その機能として、相対電流比率算出部23aを有している。相対電流比率算出部23aは、それぞれの電流センサ21からデータ処理部23に入力された複数の太陽電池ストリング5の発電電流値から、それぞれの太陽電池ストリング5の発電電流値の相対電流比率を算出することができる。相対電流比率は、例えば、複数の太陽電池ストリング5の発電電流値のうち、発電電流値が最大となった太陽電池ストリング5の発電電流値を100とし、その他の太陽電池ストリング5の発電電流値を当該最大発電電流値に対する相対比率として算出することができる。
本実施の形態では、相対電流比率算出部23aは、それぞれの太陽電池ストリング5に対応する電流センサ21が所定の時間(例えば1分間)数秒間隔で同期して発電電流値を測定してその所定時間の平均値を計算することで発電電流値の読み取り誤差を低減した上で各太陽電池ストリング毎の発電電流測定値(1分値)とする。さらに、各太陽電池ストリング5の発電電流測定値からクラスタ発電損有無の判定用の相対電流比率を、所定時間毎(例えば1分毎)に繰り返し算出するように構成されている。
なお、複数の電流センサ21は、それぞれセンサインターフェース21aを介してデータ処理部23に接続され、日射量センサ24は、センサインターフェース24aを介してデータ処理部23に接続されている。また、温度センサ25は、センサインターフェース25aを介してデータ処理部23に接続されている。
また、データロガー20は、記録部としてのデータ記録部29を有している。データ記録部29はデータ処理部23に接続されている。データ記録部29は、複数の太陽電池ストリング5を構成する複数の太陽電池モジュール4の何れにも劣化が生じていないときに、相対電流比率算出部23aにより算出された、それぞれの太陽電池ストリング5の相対電流比率を参照相対電流比率として記憶することができる。参照相対電流比率としては、例えば、太陽電池アレイ2の現地における定期検査の際などにおいて、太陽電池ストリング5が太陽電池モジュール4のクラスタ劣化による発電損を生じていないことが確認されたときの、相対電流比率算出部23aにより算出された相対電流比率を採用することができる。即ち、各々の太陽電池ストリング5の参照相対電流比率は、それらが互いに異なる値であっても、その値のばらつきの原因がクラスタ劣化によるものではないことを意味している。
データ記録部29は、データ処理部23で処理された、その他のデータを記憶することもできる。
さらに、データ記録部29は、相対電流比率算出部23aが相対電流比率を算出するために必要なプログラム等を記憶することもできる。
管理サーバーであるサーバー装置30は、ネットワークインターフェース31を備え、このネットワークインターフェース31によりネットワーク40に接続されている。サーバー装置30は、ネットワーク40を介してデータロガー20のデータ処理部23及び操作端末50に接続可能となっている。
サーバー装置30には、情報処理部32が設けられている。情報処理部32は、例えばCPU(中央演算処理装置)等を備えたマイクロコンピュータにより構成することができる。情報処理部32には、ネットワーク40を介してデータ処理部23から相対電流比率算出部23aにより算出されたクラスタ劣化有無判定用の相対電流比率が入力されるとともに、データ記録部29に記憶されている参照相対電流比率が入力される。また、サーバー装置30には、DB(データベース)33が設けられ、情報処理部32からの要求に基づいてDB33に所定のデータを格納し、またはDB33に格納されたデータが読み出されて情報処理部32に入力される。
また、サーバー装置30の情報処理部32には、データロガー20から入力された、データの保存時刻、日射量センサ24により検出された日射量、太陽電池セル4aの温度、それぞれの電流センサ21により検出された電流値、電圧センサ22が検出した電圧値、電力及び電力量が入力される。ここで、上述したデータ記録部29に格納された参照相対電流比率をDB33に転送して格納するか、もしくは参照相対電流比率の算出を情報処理部32で行ってDB33に格納するようにしてもよい。また、情報処理部32は電流センサ21により検出された電流値の入力を受けて太陽電池ストリング5の相対電流比率を計算するようにしてもよい。
データロガー20からサーバー装置30への上記データの転送フォーマットは、例えば、所定時間毎(例えば1分毎)の上記各測定データを1つのCSVデータ列に格納して転送するようにしてもよい。このとき、CSVデータ列に複数のデータ格納リザーブ領域を設けてもよい。CSVデータ列では、コンマで区切られたデータ領域がCSVデータ列の何番目の位置にあるかによってそのデータ領域に格納されるデータの意味を定義することができる。従って、データ格納リザーブ領域に各太陽電池ストリング5の相対電流比率、参照相対電流比率を格納するデータ領域を割り当てることにより、相対電流比率算出部23aで算出された相対電流比率を情報処理部に転送可能となるとともに、データ記録部29に格納された各太陽電池ストリング5の参照相対電流比率をDB33に転送することが可能となる。
なお、上述のようにクラスタ劣化有無判定用の相対電流比率、電力及び電力量は、電流値及び電圧値等のRawデータから生成することができるので、サーバー装置30に転送された、データの保存時刻、電流値及び電圧値に基づいて、サーバー装置30の側において算出するようにしてもよい。
情報処理部32は、その機能として、劣化検出処理部32aを有している。劣化検出処理部32aは、入力されたクラスタ劣化有無判定用の相対電流比率と参照相対電流比率との比較に基づいて、それぞれの太陽電池ストリング5が劣化した太陽電池モジュール4を含むか否かを判定することができる。
本実施の形態では、劣化検出処理部32aは、相対電流比率算出部23aにより算出されたクラスタ劣化有無判定用の相対電流比率が予め設定した所定回数以上連続して参照相対電流比率未満となった太陽電池ストリング5を、劣化した太陽電池モジュール4を含む太陽電池ストリング5であると判定するように構成されている。また、本実施の形態では、劣化検出処理部32aは、日射量センサ24により検出された日射量が所定値未満(例えば500W/m未満)となったときに上記判定を行わないように構成されている。当該構成の具体的な実施形態については後述する。
情報処理部32は、その機能として、画面生成部32bを有している。画面生成部32bは、電流センサ21により検出されたそれぞれの太陽電池ストリング5の発電電流値、相対電流比率算出部23aで算出された相対電流比率、日射量センサ24により検出された日射量、劣化検出処理部32aにより処理された判定結果等の各種の情報を表示する画面データ(例えばHTMLで記述された画面)を生成することができるとともに、ネットワーク40を介して当該画面データを操作端末50に送信することができる。操作端末50ではWebブラウザ等のソフトウェアによって画面生成部32bで生成された画面データから表示画面を生成することができる。即ち、サーバー装置30は画面生成部32bを有することでWebサーバーの機能を有する。従って、操作端末50のオペレータは操作端末50に表示されたデータ入力のインターフェースによって所定のデータを入力することが可能であり、画面生成部32bは操作端末50から入力された所定のデータを用いて画面データを再構成することができる。
情報処理部32にはDB(データベース)33が接続されている。DB33には、劣化検出処理部32aによるクラスタ発電損有無の判定及び画面生成部32bによる画面の生成を実行するために必要な劣化検出処理プログラムが格納されている。
操作端末50は、例えばCPU(中央演算処理装置)等を備えたマイクロコンピュータにより構成されており、ネットワーク40を介してデータロガー20及びサーバー装置30に接続されて、これらとの間で相互に通信が可能となっている。操作端末50は、例えば、太陽光発電システム1とは別の場所に設けられた監視センターに設置することができるが、太陽光発電システム1の現地で作業する作業者がサーバー装置30にアクセスするためのノートパソコン、タブレット型パソコン等の携帯型の端末であってもよい。
操作端末50は、データロガー20及びサーバー装置30に対して、太陽電池ストリング5が劣化した太陽電池モジュール4を含むか否かの判定を開始する指令信号を送信し、データロガー20及びサーバー装置30に判定を実行させることができる。また、操作端末50は、液晶パネル等で構成された表示部に、サーバー装置30の画面生成部32bにより生成された判定結果等の情報を表示することができる。ここで、データロガー20への、太陽電池ストリング5が劣化した太陽電池モジュール4を含むか否かの判定を開始する指令信号の入力は、入力部27から行うようにしてもよい。また、表示部26でデータロガー20による判定結果等の情報を表示するようにしてもよい。
情報処理部32のDB33に格納された劣化検出処理プログラムは、図4に示すように、画面生成部32bに、発電損判定の操作を行うための発電損判定画面を操作端末50の表示部に表示させるよう動作する。また、劣化検出処理プログラムは、オペレータにより操作端末50の入力部が操作されて、判定対象となる複数の太陽電池ストリング5を含む太陽電池アレイ2のグループIDが選択されるとともに、測定日、グラフ表示を開始する時刻及び終了する時刻が指定されると、画面生成部32bに、グループIDに対応した複数(M台)の太陽電池ストリング5の発電電流値のグラフ(測定点はN個)を操作端末50の表示部に表示させるように動作する。例えば、グラフ表示時刻を、過去の11:00〜12:00と指定した場合、測定時間間隔が1分であれば、N=約60個の測定データをグラフに表示させる。なお、上記時間帯で測定中であれば、測定されたデータを随時表示する。さらに、劣化検出処理プログラムは、オペレータにより操作端末50の入力部が操作されて、参照相対電流比率Io、日射量の閾値Wp及び判定閾値αが情報処理部32に入力または選択される度に、グループIDに対応した複数の太陽電池ストリング5が発電損を生じているか否かの発電損判定処理を開始し、発電損を生じている太陽電池ストリングがある場合には、発電損判定画面の発電損ストリング表示領域に「発電損あり」と表示し、発電損を生じている太陽電池ストリングがない場合には発電損判定画面の発電損ストリング表示領域には何も表示しないように動作する。上記処理の詳細については後述する。
次に、上記構成を有する太陽電池ストリングの劣化検出システム10により、M台の太陽電池ストリング5を含む太陽電池アレイ2を判定対象として、本実施の形態の太陽電池ストリングの劣化検出方法を実行する手順について説明する。
図5に示すように、まず、複数の電流センサ21が、判定対象となる所定のグループIDに属する複数の太陽電池ストリング5の発電電流値を検出し(電流検出ステップ)、データロガー20がこれらの発電電流値を測定データとして取得する。測定データの取得は、例えば1分毎など、所定時間間隔で、所定の日射量がある時間、例えば早朝から夕刻まで行われる。本実施形態では測定データの取得が連続して行われるものとする。
次に、オペレータにより操作端末50の入力部が操作されて、図5に示すように、予めデータ記録部29に記憶されている参照相対電流比率Ioがサーバー装置30の情報処理部32に入力されるとともに、判定閾値α、調整パラメータβ及び日射量の閾値Wpがサーバー装置30の情報処理部32に入力される。図5に示すように、クラスタ劣化検出プログラムは、発電電流値測定データ、参照相対電流比率Io、判定閾値α、調整パラメータβ及び日射量の閾値Wpの入力を受けてステップS1以降の処理を実行するので、発電電流値測定データは所定の時間(1分間)間隔で入力される毎にクラスタ劣化有無の判定処理を行う。同様に、オペレータにより参照相対電流比率Io、判定閾値α、調整パラメータβ及び日射量の閾値Wpが更新(再入力)される毎にクラスタ劣化有無の判定処理を行う。
ここで、参照相対電流比率Ioは、上記の通り、複数の太陽電池ストリング5を構成する複数の太陽電池モジュール4の何れにもクラスタ劣化が生じていないときに相対電流比率算出部23aにより算出された、それぞれの太陽電池ストリング5の相対電流比率である。本実施の形態では、太陽電池アレイ2の現地における定期検査の際などにおいて、太陽電池ストリング5が太陽電池モジュール4のクラスタ劣化による発電損を生じていないことが確認されているときに相対電流比率算出部23aにより算出された相対電流比率を参照相対電流比率Ioとしてデータ記録部29に記憶し(記憶ステップ)、当該参照相対電流比率Ioをクラスタ劣化有無の判定の際にサーバー装置30の情報処理部32に入力する。図6に、データ記録部29に記憶された参照相対電流比率Ioの一例を示す。なお、計測チャネルは、クラスタ劣化有無の判定対象となる複数の太陽電池ストリング5に割り当てられた番号である。図6においては、発電電流値が最大となるch3とch6に対応する太陽電池ストリング5の参照相対電流比率Ioを100として、その他の計測チャネルの参照相対電流比率Ioを相対比率で示しているが、上述のとおり、参照相対電流比率Ioはクラスタ劣化による発電損が生じていないことが確認されているときの相対電流比率であるから、各計測チャネルの参照相対電流比率Ioの値のばらつきは、クラスタ劣化による発電損よりも小さい発電損を含む各太陽電池ストリング5の発電性能の個体差と考えてよい。この場合、各太陽電池ストリング5の発電性能の個体差に含まれる発電損とは、クラスタ劣化に至らない程度の太陽電池セル4aの劣化や太陽電池ストリング5全体における抵抗成分の増大によるものである。ただし、参照相対電流比率Ioは太陽電池ストリング5の発電電流の測定値から算出されるので、電流センサ21の測定精度に起因する不確定さを含んでいる。
複数の電流センサ21が検出した複数の太陽電池ストリング5の発電電流値の測定データがデータロガー20に入力されると、相対電流比率算出部23aは、複数の太陽電池ストリング5の発電電流値の測定データから、それぞれの太陽電池ストリング5の発電電流値の相対電流比率I(tk)をクラスタ劣化有無判定用の相対電流比率として算出する(算出ステップ)。相対電流比率Ik=I(tk)(k=1〜N)は、同一時刻tkにおいて取得したそれぞれの太陽電池ストリング5の発電電流値のうち、最大の発電電流値を100とし、その他の発電電流値を当該最大発電電流値に対する相対比率として算出する。図7に、複数の測定時刻t1〜tNにおけるクラスタ劣化有無判定用の相対電流比率I1〜INの一例を示す。相対電流比率Ikは、同一時刻tk、即ち各太陽電池ストリング5への日射量が同じ状態で測定された太陽電池ストリング5の発電電流で決まるので、相対電流比率が100未満の太陽電池ストリング5は、相対電流比率が100である太陽電池ストリング5に対して相対的に発電性能が低下している可能性があることを示唆する。各計測チャネルで異なる時刻の相対電流比率を見ると、ch3とch6の間で一方の相対電流比率が100である時刻では他方の相対電流比率は99となっている。そして、ch3とch6以外の計測チャネルの相対電流比率は94から99の間で時間的に変動している。このように、最大電流比率を与える計測チャネルはch3とch6に対応する太陽電池ストリング5であって両者の発電性能は同等であるが、その他の計測チャネルに対応する太陽電池ストリング5の発電性能は相対的に低下していることを示唆している。しかし、従来技術の課題として記載したように、日射量が低い時に測定された相対電流比率ではクラスタ発電損の検出は困難である。また、相対発電電流比率はクラスタ発電損よりも小さい発電損を含む各太陽電池ストリング5の発電性能の個体差の影響を含むので、正味のクラスタ発電損以外の影響を排除する必要がある。また、相対電流比率は電流センサ21の測定精度に起因する不確定さも含んでいる。
そこで、まず以下の日射指数S(k)を導入して低日射で測定された相対電流比率をクラスタ発電損有無の判定から除外する処理を行う。日射量センサ24により日射量の検出が行われ(日射量検出ステップ)、そして、情報処理部32の劣化検出処理部32aが、日射量センサ24から入力される日射量に基づいて、日射指数S(k)を計算する(ステップS1)。k=1〜Nであり、日射指数S(k)の計算は、1回目からN回目までの測定点毎に行われる。日射指数S(k)の算出は、M台の各太陽電池ストリング5の一組について行われる。即ち、M台の太陽電池ストリングがほぼ等しい日射量を受けるものとして日射量が測定される。データ処理部23は、日射量センサ24から入力される日射量が閾値Wp以上のときにはS(k)=1、日射量センサ24から入力される日射量が閾値Wp未満のときはS(k)=0、と計算する。日射指数S(k)の一例は図7に示されている通りである。
日射量の閾値Wpは、例えば100〜1000W/mの範囲の中の所定の値に設定することができる。本実施の形態では、日射量の閾値Wpは500W/mである。
ステップS2において、劣化検出処理部32aにより算出されたS(k)=1ではないと判断されると、ステップS3において、劣化検出処理部32aは当該太陽電池ストリング5には発電損が検出できないと判断し、処理を完了する。このステップS3の処理は、クラスタ劣化有無の判定を行うステップ4以降の処理の前に行われるので、Wpに満たない日射条件で取得されたデータをクラスタ劣化有無の判定には用いられない。
次に、相対電流比率から太陽電池ストリング5の発電性能の個体差の影響を排除するために相対電流比率の連続性指数A(k)を導入する。ステップS2において、劣化検出処理部32aにより算出されたS(k)=1であると判断されると、ステップS4において、劣化検出処理部32aは、相対電流比率の連続性指数A(k)を算出する。
劣化検出処理部32aは、太陽電池ストリング5の相対電流比率の値が参照相対電流比率の値未満であるときにA(k)=1と算出し、太陽電池ストリング5の相対電流比率の値が参照相対電流比率の値以上であるときに、A(k)=0と算出する。相対電流比率の連続性指数A(k)の計算は、計測チャネルの太陽電池ストリング5のそれぞれについて行われる。ここで、参照相対電流比率は所定のグループIDに属する複数の太陽電池ストリング5の中の相対比率として各太陽電池ストリング5に対して設定されるので、その値が100未満であることは当該太陽電池ストリング5に発電損がある可能性があることを意味するが、クラスタ劣化がないことが確認済みの値であるので、ある特定の計測チャネルについてA(k)=1となることは、当該計測チャネルに該当する太陽電池ストリング5にはk番目のデータについてみれば参照相対電流比率を設定した時点以降に発電損が増加し、その原因としてクラスタ劣化の可能性があることを示唆している。
本実施の形態では、発電損の原因としてクラスタ劣化の有無を特定し、クラスタ劣化による発電損よりも小さい発電損の原因を排除するために、A(k)の算出の際に用いる参照相対電流比率の値として、データ処理部23から劣化検出処理部32aに入力された参照相対電流比率の値に調整パラメータβを乗じた値を用いるようにしている。調整パラメータβは、例えば0.90〜1.00に設定するなど、予め実験等により確定した値に設定することができる。例えば、β=1.00とすると、k番目の測定点に対して相対電流比率Ikが参照相対電流比率Ioを僅かでも下回ればA(k)=1となり、この測定点に関してはクラスタ発電損があると算定されるので、実際にはクラスタ劣化がなくてもクラスタ発電損より小さな発電損の原因事象によってクラスタ劣化があると判定される。こうした場合を排除するために、βは1.00より小さな値に設定することが望ましい。一方、βの値を極端に小さい値に設定すると、常にA(k)=0となり実際にクラスタ劣化がある場合でもこれを判別することができない。
ステップS5において、劣化検出処理部32aにより算出されたA(k)=1ではないと判断されると、ステップS3において、劣化検出処理部32aは当該太陽電池ストリング5にはクラスタ劣化による発電損は検出できないと判断し、処理を完了する。
次に、発電電流値の測定精度の影響を除外してクラスタ発電損有無の判定確度を高めるために発電損データ長L(N)と発電損判定データ長Lsを導入する。ステップS5において、劣化検出処理部32aにより算出されたA(k)=1であると判断されると、ステップS6において、劣化検出処理部32aは、発電損データ長L(N)を算出する。発電損データ長L(N)は、日射指数S(k)と相対電流比率の連続性指数A(k)との乗算値の和により算出される。つまり、L(N)=S(1)・A(1)+S(2)・A(2)+・・・+S(N)・A(N)で算出される。k=1〜Nに対して、S(k)・A(k)=1となるのは、S(k)=1でありかつA(k)=1の場合に限られる。即ち、所定の日射量以上で測定された発電電流値及び相対発電電流比率であって、かつ太陽電池ストリング5の発電性能の個体差が除外された場合の相対電流比率のみが発電損データ長L(N)の増加に寄与する。
次に、ステップS7において、劣化検出処理部32aは、ステップS6で算出された発電損データ長L(N)の最大値を発電損判定データ長Lsとして算出する。図8に発電損判定データ長Lsの算出例を示す。図8は太陽電池アレイ2を構成する特定の太陽電池ストリング5について発電損判定データ長Lsの計算例を4つ示している。いずれの例でも、データ数はN=20である。例1についてみると、データ番号1から10までは連続してS(k)・A(k)=1であるからデータ番号10が測定された時点でL(10)=10である。しかし、続くデータ番号11でS(11)・A(11)=0となるのでL(10)=10はリセットされL(11)=0となる。続くデータ番号12から16までは再び連続してS(k)・A(k)=1であるからデータ番号16が測定された時点でL(16)=5である。さらに続くデータ番号17でS(17)・A(17)=0となるのでL(16)=5はリセットされL(17)=0となる。さらに続くデータ番号18から20までは再び連続してS(k)・A(k)=1であるからデータ番号20が測定された時点でL(20)=3である。ここで、発電損判定データ長Lsは全データ数1〜20を通じて発電損データ長L(N)の最大値であるから発電損判定データ長Lsは10である。同様にして例2から例4における発電損判定データ長Lsはそれぞれ2、6、4である。
次に、ステップS8において、劣化検出処理部32aは、発電損判定データ長Lsと判定閾値αとを比較し、発電損判定データ長Lsが判定閾値α以上であると判断すると、ステップS9において、当該太陽電池ストリング5にクラスタ発電損があると判断する。判定閾値αは、予め行った実験結果等に基づいて任意に設定することができる。以下では、まず判定閾値αが5である場合について説明する。
図8に示す例においては、例1において発電損判定データ長Lsが10で、判定閾値α以上であるので、劣化検出処理部32aは太陽電池ストリング5にクラスタ発電損があると判定する(判定ステップ)。また、例3において発電損判定データ長Lsが6で、判定閾値α以上であるので、劣化検出処理部32aは太陽電池ストリング5にクラスタ発電損があると判定する(判定ステップ)。
一方、ステップS8において、劣化検出処理部32aは、発電損判定データ長Lsが判定閾値α未満であると判断すると、ステップS3において、当該太陽電池ストリング5にはクラスタ発電損は検出不可と判断し、処理を完了する。図8に示す例2、例4においては、発電損判定データ長Lsは何れも5未満であるので、太陽電池ストリング5にクラスタ発電損がないと判断される。ここで、判定閾値αを3にすると、例4において発電損判定データ長Lsが判定閾値αを上回るので、例4においても太陽電池ストリング5にクラスタ発電損があると判定される。
上記のように、クラスタ劣化検出処理プログラムの処理フローでは、まず所定の時間間隔で測定されたk=1〜Nの個々のデータに対してS(k)・A(k)=1となる、即ち所定の日射量以上の下で測定された太陽電池ストリング5の発電電流値及び相対電流比率であって太陽電池ストリング5の発電性能の個体差が除外されたデータを抽出した上で、S(k)・A(k)=1を満たすkが連続する場合のみを足し合わせて発電損データ長Lを算出する。特定のkのみでは、発電電流値の測定精度や短時間の日射変動がクラスタ発電損有無の判定の不確定要因となる。しかし、発電電流値の読み取り誤差や一時的な日射変動は発電電流測定値のランダムな変動要因であるのに対して、クラスタ発電損は、太陽電池ストリングの発電性能の個体差と同程度であってランダム変動量よりも大きい。従って、発電損データ長Lを算出することで十分大きなLではランダム変動量が確率的に除去されてクラスタ発電損が非変動量として抽出される。従ってLの最大値である発電損判定データ長Lsを発電損有無の判定指標として採用するこができる。
図9は、図11の8つの太陽電池ストリング5の発電電流の測定データを用いて本発明の太陽電池ストリングの劣化検知方法を適用し、クラスタ劣化の有無を正しく判定した時の判定閾値αと調整パラメータβを評価した実験結果の一例を示す。本実験では、1番〜8番の8つの太陽電池ストリングのうち、7番の太陽電池ストリングのみを、11:30〜12:00の間、1クラスタ分遮光することで疑似的にクラスタ発電損を生じさせて各太陽電池ストリングの発電電流値を同時に数秒間隔で測定し、1分間の平均値をプロットしている。そこで、1クラスタ分遮光した直後の測定データ(測定時刻は11:31)をクラスタ発電損判定用の第1番目のデータとし、1クラスタ分遮光を解除した直前の測定データ(測定時刻は11:59)までの連続した28個の測定データを用いた。ここで、日射量の閾値Wpは500W/mとしたが、上記測定データ取得時間中の日射量は500W/mを超えているので、この実験での日射指数はS(k)=1(k=1〜28)である。また、参照相対電流比率は、遮光する前の11:57の電流値測定データから求めた太陽電池ストリング5の相対電流比率とし、1〜8の太陽電池ストリングに対してこの順に96、94、99、97、100、100、95、99であった。図9の●で示したαとβの組み合わせの時に、7番目の太陽電池ストリングのみがクラスタ発電損ありと判定した。図9の実験結果から、β=0.98、0,99の場合であって、α≧5で常に正しくクラスタ発電損ありと判定できていることがわかる。
以上説明したように、本実施の形態の太陽電池ストリングの劣化検出システム10では、劣化検出処理部32aが、そのクラスタ劣化有無判定時に相対電流比率算出部23aにより算出されたクラスタ劣化有無判定用の相対電流比率とデータ記録部29に記憶されて劣化検出処理部32aに入力された参照相対電流比率との比較に基づいて、それぞれの太陽電池ストリング5が劣化した太陽電池モジュール4を含むか否かを判定することで、太陽電池アレイ2を構成する複数の太陽電池ストリング5から、劣化した太陽電池モジュール4を含む太陽電池ストリング5を容易且つ正確に検出することができる。従って、劣化した太陽電池モジュール4を含むと判断された太陽電池ストリング5の各太陽電池モジュール4を、従来の計測機器等を用いてオンサイトで検査することで、劣化した太陽電池モジュール4を容易に特定し、その交換作業を容易且つ効率的に行うことができる。
図10は、変形例の太陽電池ストリングの劣化検出システム10のブロック図である。なお、図10においては、前述した部材に対応する部材に同一の符号を付してある。
図10に示す変形例の太陽電池ストリングの劣化検出システム10のように、データロガー20を用いることなく、それぞれの電流センサ21に、データ処理部23及びネットワークインターフェース28を分散して設けた構成とすることもできる。
それぞれの電流センサ21に設けられたデータ処理部23は、ネットワークインターフェース28からゲートウェー60を介してネットワーク40に接続される。ここでネットワークインターフェース28として低消費電力で遠距離データ転送が可能なLPWA(Low Power Wide Area)を採用することができる。LPWAには、例えばLoRaWAN規格が含まれる。LoRaWANでは、電流センサ21に設けられたデータ処理部23とサーバー装置30との間の測定データの送受信は、ネットワーク40に設けられたネットワークサーバー61を介して行われる。
この変形例の太陽電池ストリングの劣化検出システム10においては、サーバー装置30の情報処理部32に、その機能として相対電流比率算出部32cが設けられる。相対電流比率算出部32cは、それぞれの電流センサ21から入力された複数の太陽電池ストリング5の発電電流値から、それぞれの太陽電池ストリング5の発電電流値の相対電流比率を算出する。また、太陽電池アレイ2の現地における定期検査の際などにおいて、太陽電池ストリング5が太陽電池モジュール4のクラスタ劣化による発電損を生じていないことが確認されているときに相対電流比率算出部32cにより算出された相対電流比率が参照相対電流比としてDB33に記憶される。そして、情報処理部32の劣化検出処理部32aが、算出したクラスタ劣化有無判定用の相対電流比率とDB33から入力される参照相対電流比率との比較に基づいて、それぞれの太陽電池ストリング5が劣化した太陽電池モジュール4を含むか否かを判定する。
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
例えば、前記実施の形態では、太陽電池ストリングの劣化検出システム10は、データロガー20と、データロガー20にネットワーク40を介して接続されるサーバー装置30とを有するシステムとして構成されているが、これに限らず、データロガー20のデータ処理部23にサーバー装置30の情報処理部32の機能が実装され、オンサイトで本実施の形態の太陽電池モジュールの劣化検出方法を実行することが可能な太陽電池ストリングの劣化検出装置として構成することもできる。
この場合、操作端末50は、図1に示す場合と同様に、ネットワーク40を介して太陽電池ストリングの劣化検出装置と接続される構成としてもよく、または、太陽電池ストリングの劣化検出装置と一体の構成とすることもできる。
1 太陽光発電システム
2 太陽電池アレイ
3 パワーコンディショナ
4 太陽電池モジュール
4a 太陽電池セル
4b セルストリング
4c バイパスダイオード
4d クラスタ
5 太陽電池ストリング
6 接続箱
6a 断路器
6b 逆流防止用ダイオード
10 太陽電池ストリングの劣化検出システム
20 データロガー
21 電流センサ(電流検出部)
21a センサインターフェース
22 電圧センサ
23 データ処理部
23a 相対電流比率算出部
24 日射量センサ(日射量検出部)
24a センサインターフェース
25 温度センサ
25a センサインターフェース
26 表示部
27 入力部
28 ネットワークインターフェース
29 データ記録部(記録部)
30 サーバー装置
31 ネットワークインターフェース
32 情報処理部
32a 劣化検出処理部
32b 画面生成部
32c 相対電流比率算出部
33 DB(データベース)
40 ネットワーク
50 操作端末
60 ゲートウェー
61 ネットワークサーバー

Claims (3)

  1. 太陽電池アレイを構成する複数の太陽電池ストリングから、劣化した太陽電池モジュールを含む太陽電池ストリングを検出する、太陽電池ストリングの劣化検出方法であって、
    複数の前記太陽電池ストリングのそれぞれの発電電流値を検出する電流検出ステップと、
    前記電流検出ステップで検出された複数の前記太陽電池ストリングの発電電流値から、それぞれの前記太陽電池ストリングの発電電流値の相対電流比率を算出する算出ステップと、
    複数の前記太陽電池ストリングを構成する複数の太陽電池モジュールの何れにもクラスタ劣化が生じていないときに前記算出ステップにより算出された、それぞれの前記太陽電池ストリングの相対電流比率を参照相対電流比率として記憶する記憶ステップと、
    クラスタ劣化有無判定時に、時系列で測定された前記発電電流値に対して前記算出ステップにより算出されたクラスタ劣化有無判定用の相対電流比率が前記記憶ステップで記憶された前記参照相対電流比率に前記クラスタ劣化による発電損よりも小さい発電損に対して予め設定された因子を乗じた値未満であるという事象が連続して生起し、かつ該連続して生起した事象の数が予め設定された所定の数以上である場合に、当該太陽電池ストリングがクラスタ劣化した前記太陽電池モジュールを含むと判定する判定ステップと、
    を有することを特徴とする太陽電池ストリングの劣化検出方法。
  2. 太陽電池アレイを構成する複数の太陽電池ストリングから、劣化した太陽電池モジュールを含む太陽電池ストリングを検出する、太陽電池ストリングの劣化検出システムであって、
    それぞれ対応する前記太陽電池ストリングに接続されて該太陽電池ストリングの発電電流値を検出する複数の電流検出部と、
    複数の前記電流検出部に接続されたデータ処理部と、
    ネットワークを介して前記データ処理部に接続されたサーバー装置と、
    前記データ処理部または前記サーバー装置の何れか一方に設けられ、複数の前記電流検出部から入力された複数の前記太陽電池ストリングの発電電流値から、それぞれの前記太陽電池ストリングの発電電流値の相対電流比率を算出する相対電流比率算出部と、
    前記データ処理部または前記サーバー装置の何れか一方に設けられ、複数の前記太陽電池ストリングを構成する複数の太陽電池モジュールの何れにもクラスタ劣化が生じていないときに前記相対電流比率算出部により算出された、それぞれの前記太陽電池ストリングの相対電流比率を参照相対電流比率として記憶する記録部と、
    前記サーバー装置に設けられ、時系列で測定された前記発電電流値に対して前記相対電流比率算出部により算出されたクラスタ劣化有無判定用の相対電流比率が前記記録部に記憶されている前記参照相対電流比率に前記クラスタ劣化による発電損よりも小さい発電損に対して予め設定された因子を乗じた値未満であるという事象が連続して生起し、かつ該連続して生起した事象の数が予め設定された所定の数以上である場合に、当該太陽電池ストリングがクラスタ劣化した前記太陽電池モジュールを含むと判定する劣化検出処理部と、
    を有することを特徴とする太陽電池ストリングの劣化検出システム。
  3. 太陽電池アレイを構成する複数の太陽電池ストリングから、劣化した太陽電池モジュールを含む太陽電池ストリングを検出する、太陽電池ストリングの劣化検出装置であって、
    それぞれ対応する前記太陽電池ストリングに接続されて該太陽電池ストリングの発電電流値を検出する複数の電流検出部と、
    複数の前記電流検出部から入力された複数の前記太陽電池ストリングの発電電流値から、それぞれの前記太陽電池ストリングの発電電流値の相対電流比率を算出する相対電流比率算出部と、
    複数の前記太陽電池ストリングを構成する複数の太陽電池モジュールの何れにもクラスタ劣化が生じていないときに前記相対電流比率算出部により算出された、それぞれの前記太陽電池ストリングの相対電流比率を参照相対電流比率として記憶する記録部と、
    クラスタ劣化有無判定時に、時系列で測定された前記発電電流値に対して前記相対電流比率算出部により算出されたクラスタ劣化有無判定用の相対電流比率が前記記録部に記憶されている前記参照相対電流比率に前記クラスタ劣化による発電損よりも小さい発電損に対して予め設定された因子を乗じた値未満であるという事象が連続して生起し、かつ該連続して生起した事象の数が予め設定された所定の数以上である場合に、当該太陽電池ストリングがクラスタ劣化した前記太陽電池モジュールを含むと判定する劣化検出処理部と、
    を有することを特徴とする太陽電池ストリングの劣化検出装置。
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