JP6696393B2 - ステンレス鋼の応力腐食割れ試験に用いる試験溶液の製造方法、及びステンレス鋼の応力腐食割れ試験方法 - Google Patents

ステンレス鋼の応力腐食割れ試験に用いる試験溶液の製造方法、及びステンレス鋼の応力腐食割れ試験方法 Download PDF

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Description

本発明は、ステンレス鋼の応力腐食割れ試験に用いる試験溶液の製造方法、及びステンレス鋼の応力腐食割れ試験方法に関する。
油井管やラインパイプには、大きな応力が加わった状態で内部に原油などの生産流体、前記生産流体に随伴する腐食性ガス(以下、「随伴ガス」という。)及び前記生産流体に随伴する水分(以下、「地層水」という。)が流れる。そのため、油井管やラインパイプの材料として用いられる鋼材には、応力腐食割れ(Stress Corrosion Cracking、以下、「SCC」という。)に対する耐性(以下、「耐SCC性」という。)が求められる。
特開平8−201270号公報には、金属材料の応力腐食割れ感受性を簡便に判定できる、金属材料の腐食試験方法が記載されている。この腐食試験方法は、被試験材のき裂発生に先立つ腐食損傷の密度、サイズ等を表面測定手段で測定し、この測定値と、記憶手段に記憶しておいた、腐食損傷の密度、サイズ等とSCC破断寿命との相関データベースより、演算手段において被試験材のSCC破断寿命を求める。
特開2015−225037号公報には、塩化物イオンを含む自然水環境で発生したすきま腐食を再現するすきま腐食試験方法が記載されている。この方法は、塩化物イオンを含む溶液中にすきまを形成した試験片を浸漬してすきま腐食を進行させるすきま腐食試験において、上記浸漬した試験片の電位を一定に保持してすきま腐食を発生させた後、該試験片と、予め自然水に浸漬して電位を貴化させた貴化処理材とを短絡させる。
特開平6−27076号公報には、硫化水素を含む水溶液中での鋼材の電気化学的測定方法が記載されている。この測定方法は、硫化水素を含んだ水溶液環境で鉄鋼材料の水素透過試験あるいは硫化物応力腐食割れ試験を行うにあたり、該水溶液を0.5m/s以上の速度で流動させる。
特開平8−201270号公報 特開2015−225037号公報 特開平6−27076号公報
姫野貞之、市村彰男、「溶液内イオン平衡に基づく化学分析」、化学同人(2002) Besmann, T.M., "SOLGASMIX-PV, a computer program to calculate equilibrium relationships in complex chemical systems", Oak Ridge National Laboratory, 1977
ステンレス鋼の耐SCC性の評価試験(以下「SCC試験」という。)は、オートクレーブを使用した高圧環境での4点曲げ試験や、硫化水素(HSガス)分圧、塩化物イオン(Cl)濃度、及び水素イオン指数(以下「pH」という。)を前記高圧環境と同じになるように制御した常圧環境での定荷重試験によって実施される。しかし、硫化水素ガス分圧、塩化物イオン濃度、及びpHをすべて同じ条件にしてSCC試験を実施しても、試験溶液の調整方法によって、異なる結果になる場合があることが判明した。
本発明の目的は、常圧環境においてステンレス鋼の耐SCC性を適正に評価することが可能な試験溶液の製造方法、及び試験方法を提供することである。
本発明の一実施形態による製造方法は、ステンレス鋼の応力腐食割れ試験に用いる試験溶液の製造方法であって、前記試験溶液の緩衝能を実環境の緩衝能の150%以下に調整し、前記試験溶液のpHを前記実環境のpHに調整する工程を備える。
本発明の一実施形態による試験方法は、上記製造方法によって製造された試験溶液を用いて応力腐食割れ試験を実施する。
本発明によれば、常圧環境においてステンレス鋼の耐SCC性を適正に評価することが可能な試験溶液の製造方法、及び試験方法が得られる。
図1は、本発明の一実施形態による試験方法のフロー図である。 図2は、初期状態から増加した水素イオン濃度に対するpHの変化を示すグラフである。
本発明者らは、硫化水素ガス分圧、塩化物イオン濃度、及びpHをすべて同じ条件にしても、SCC試験の評価結果が異なる場合がある原因を調査した。その結果、異なる評価結果となった試験の間で、採用した試験溶液の緩衝能が異なっていたことが判明した。このことから、ステンレス鋼の耐SCC性を適正に評価するためには、硫化水素ガス分圧、塩化物イオン濃度、及びpHに加えて、試験溶液の緩衝能を適正に調整する必要があることを知見した。
試験溶液の緩衝能がステンレス鋼のSCC試験に影響を与える理由は、下記のとおりである。
SCCの起点として、pHの局所低下によるステンレス鋼の脱不働態化が挙げられる。ステンレス鋼の表面には不働態皮膜が形成されているが、Fe2+やCr3+等の金属イオンはごくわずかに溶出している。この溶出した金属イオンにより次式のような加水分解反応が起こって、表面近傍の局所的なpHが低下する。
n++nHO→M(OH)+nH
pHが低下すると金属イオンはより溶出しやすくなり、また電気的中性を保つために陰イオンであるClが電気泳動によって濃化する。これら一連の化学反応は自己触媒反応であり、これによってステンレス鋼の表面は一層厳しい腐食環境へ変化していく。
ステンレス鋼が不働態状態を維持できる最も低いpHを脱不働態化pHと呼ぶ。ステンレス鋼の表面のpHが脱不働態化pHを下回ると、皮膜が破壊されてSCCの起点となる。この脱不働態化pHは材料固有の値であり、耐食性を示す指標の一つである。すなわち、脱不働態化pHが低いほど、低pH環境でも不働態を維持でき、耐食性が優れることを意味する。
一方、ある種の溶液にはpHの緩衝作用がある。弱酸とその塩との混合液、又は弱塩基とその塩との混合液は、酸や塩基を多少加えても元のpHをほとんど変化させない。この緩衝作用の強さを緩衝能と呼ぶ。緩衝能は、ある溶液のpHを1.0下げるために必要な水素イオン濃度(mol/L)として定義される。
上述したステンレス鋼表面の加水分解反応によるpHの低下は、試験溶液の緩衝作用の影響を受ける。同じ材料を同じ初期pHの試験溶液で試験しても、試験溶液の緩衝能が異なればpHの低下挙動が異なるため、材料の不働態皮膜の挙動、ひいてはSCC試験の評価結果が異なることになる。
具体的には、緩衝能の大きい試験溶液を用いて耐SCC試験を実施した場合、鋼表面のpHが低下しにくく、不働態皮膜が破壊されにくいので、SCCが発生しにくくなる。反対に、緩衝能の小さい試験溶液を用いて耐SCC試験を実施した場合、鋼表面のpHが低下しにくく、不働態皮膜が破壊されやすいので、SCCが発生しやすくなる。
そのため、材料が実際に使用される環境(以下「実環境」という。)に対応した耐SCC性を評価するためには、試験溶液のpHだけでなく、緩衝能も実環境と同程度に調整して試験をする必要がある。詳しい調査の結果、試験溶液の緩衝能を実環境の緩衝能の150%以下にすれば、適正に耐SCC性を評価できることが分かった。
本発明は、上記の知見に基づいて完成された。以下、図面を参照して、本発明の一実施形態によるSCC試験方法を説明する。
図1は、本発明の一実施形態による試験方法のフロー図である。この試験方法は、試験溶液を製造する工程(ステップS1)と、製造された試験溶液を用いてSCC試験を実施する工程(ステップS2)とを備えている。試験溶液を製造する工程(ステップS1)は、実環境の緩衝能及びpHを求める工程(ステップS1−1)と、試験溶液を調整する工程(ステップS1−2)とを含んでいる。以下、各工程を詳述する。
[試験溶液を製造する工程(ステップS1)]
[実環境の緩衝能及びpHを求める工程(ステップS1−1)]
実環境の緩衝能及びpHを求める前提として、実環境を設定する。実環境を定義するパラメータとしては、温度、随伴ガス中の硫化水素ガス分圧及び二酸化炭素ガス分圧、並びに地層水中の塩化物イオン濃度などがある。これらのパラメータは、例えば油井であれば試掘をして実測したものであってもよいし、類似した環境での実績値から推測したものであってもよい。
上記のパラメータに基づいて、実環境の緩衝能及びpHを求める。実環境の緩衝能及びpHは例えば、実測して求めることができる。すなわち、実環境として設定した随伴ガス中の硫化水素ガス分圧及び二酸化炭素ガス分圧、並びに地層水中の塩化物イオン濃度を再現し、溶液のpHを測定すればよい。緩衝能は、pHを測定しながら溶液に塩酸を加え、pHを1.0だけ低下させるために必要な水素イオン濃度(mol/L)を測定することで求めることができる。
緩衝能は、計算によって求めることもできる。緩衝能は例えば、酸の濃度が酸解離定数よりも十分に大きい25℃の環境では、次の式で表される(姫野貞之、市村彰男、「溶液内イオン平衡に基づく化学分析」、化学同人(2002))。
Figure 0006696393

ここで、βは緩衝能(mol/L)、[H]は水素イオン濃度(mol/L)、Kaは酸解離定数(mol/L)、CHAは酸濃度(mol/L)である。
化合物種がより多岐にわたる場合のpHの値は、ギブスエネルギー最小化法によって水素イオンの活量を求めることで算出することも可能である(Besmann, T.M., "SOLGASMIX-PV, a computer program to calculate equilibrium relationships in complex chemical systems", Oak Ridge National Laboratory, 1977)。狙いの初期pHとなる溶液の成分を決定した後、水素イオン濃度を変えながらpHを計算することで、当該溶液のpH緩衝能を求めることができる。
[試験溶液を調整する工程(ステップS1−2)]
上記で求めた実環境の緩衝能及びpHに基づいて、試験溶液を調整する。具体的には、試験溶液の緩衝能を実環境の緩衝能の150%以下に調整し、試験溶液のpHを実環境のpHに調整する。
試験溶液の緩衝能及びpHは、試験溶液に溶解させる試薬によって調整することができる。試験溶液に溶解させる試薬は、例えば弱酸とその塩等であり、より具体的には酢酸、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等である。
試験溶液の緩衝能及びpHは、封入するガス(硫化水素ガスや二酸化炭素ガス)の圧力を考慮する必要がある。例えば、二酸化炭素ガスの分圧を低くすると、試験溶液に溶け込む二酸化炭素ガスの量が減り、試験溶液のpHが上昇する。また、二酸化炭素ガスと炭酸水素ナトリウムとが緩衝液を形成するため、試験溶液の緩衝能も、二酸化炭素ガスの量によって変化する。
そのため、実環境と異なるガス分圧でSCC試験を実施する場合、これによるpH及び緩衝能の変化を考慮して、試験溶液の成分を調整する必要がある。例えば、実環境の二酸化炭素ガス分圧よりも低い二酸化炭素ガス分圧でSCC試験を実施する場合、実環境と同じ成分の試験溶液ではpHが実環境よりも高くなるので、酸を加えて実環境のpHに近づける必要がある。このとき、緩衝能を合わせて調整する必要がある。
試験溶液のpHは、溶解させる弱酸の量と塩の量との比によって定まる。具体的には、塩の量に対する弱酸の量の比を大きくするほど、試験溶液のpHは低下する。一方、試験溶液の緩衝能は、溶解させる弱酸の量と塩の量との総和によって定まる。具体的には、弱酸の量と塩の量との総和が大きくなるほど、試験溶液の緩衝能は大きくなる。これによって例えば、弱酸の量と塩の量との比率を一定にしつつその総量を変化させることで、試験溶液のpHを一定にしつつ緩衝能だけを変化させることができる。
試験溶液の緩衝能及びpHは、実環境の場合と同様、実測して求めてもよいし、試験溶液の成分から計算によって求めてもよい。
緩衝能及びpHの調整に加えて、試験溶液の塩化物イオン濃度を実環境の塩化物イオン濃度に調整する。塩化物イオン濃度は、例えば、試験溶液に溶解させる塩化ナトリウムの量によって調整することができる。
[SCC試験を実施する工程(ステップS2)]
製造された試験溶液を用いてSCC試験を実施する。SCC試験は特に限定されないが、例えば定荷重試験や4点曲げ試験である。具体的には、腐食性ガスを封入したオートクレーブ又はガラスセル内において、試験片(引張試験片又は曲げ試験片)に所定の大きさの応力(引張応力又は曲げ応力)を加え、その状態で試験溶液に浸漬する。所定温度で所定時間保持した後、試験片を観察して割れの有無を判定する。
実環境に対応した耐SCC性を評価するためには、硫化水素分圧、塩化物イオン濃度、pH、温度を実環境と同じにし、さらに試験溶液の緩衝能を実環境の緩衝能の150%以下にする必要がある。一方、二酸化炭素ガス分圧は、それ自体はSCC試験の結果に影響を与えることが少ない。ただし上述のとおり、二酸化炭素ガス分圧が変化すると、試験溶液の緩衝能及びpHが変化する。そのため、実環境と異なる二酸化炭素ガス分圧でSCC試験を実施する場合、二酸化炭素ガス分圧の変化による緩衝能及びpHの変化を考慮して、試験溶液を調整しておく必要がある。試験溶液の緩衝能及びpHを適切に調整しておけば、実環境と異なる二酸化炭素ガス分圧でSCC試験を実施しても、実環境に対応した耐SCC性を評価することができる。
[本実施形態の効果]
図2は、初期状態から増加した水素イオン濃度に対するpHの変化を示すグラフである。図中の実線C1は試験溶液の緩衝能が小さい場合のpHの変化を示し、破線C2は試験溶液の緩衝能が大きい場合のpHの変化を示す。
前述のとおり、ステンレス鋼の表面では、金属イオンの溶出によって局所的にpHの低下が起こる。表面のpHが材料に固有の値である脱不働態化pHを下回ると、SCCが発生する。図2に示すように、同じ脱不働態化pHを持つ材料を同じ初期pHの試験溶液で試験を実施した場合であっても、緩衝能が小さい試験溶液で試験を実施するとSCCが発生しやすくなる。すなわち、試験溶液の緩衝能を正しく設定しなければ、適正な結果が得られない可能性がある。
本実施形態では、試験溶液の緩衝能を実環境の緩衝能の150%以下にする。この範囲であれば、実環境に対応した耐SCC性を適正に評価できる。試験溶液の緩衝能は、好ましくは実環境の緩衝能の130%以下であり、さらに好ましくは実環境の緩衝能の120%以下であり、さらに好ましくは実環境の緩衝能の100%以下である。
試験溶液の緩衝能は、実環境の緩衝能よりも小さくてもよい。他の条件が同じ場合、試験溶液の緩衝能が小さい程、SCCが発生しやすくなる。試験溶液の緩衝能を実環境の緩衝能よりも小さくすることは、実環境よりも過酷な条件で耐SCC性を評価することを意味する。そのため、より保守的な材料開発をすることができる。
一方、試験溶液の緩衝能を過度に小さくすると、本来はSCCが発生するおそれがない材料にまでSCCが発生することになる。そのため、試験溶液の緩衝能は、好ましくは実環境の緩衝能の10%以上である。試験溶液の緩衝能は、さらに好ましくは実環境の緩衝能の30%以上であり、さらに好ましくは実環境の緩衝能の50%以上であり、さらに好ましくは実環境の緩衝能の80%以上である。
本実施形態による試験方法は、硫化物応力腐食割れ(Sulfide Stress Cracking、以下「SSC」という。)試験に特に好適に用いることができる。SSCは通常、常温高圧環境で発生する。本実施形態による試験方法によれば、二酸化炭素ガスの分圧を下げて、常圧で適正なSSC試験を実施することができる。これによって、高圧環境を保持するために大掛かりな設備となるオートクレーブを使用することなく、一般的な実験室においてもガラスセルを使用して、耐SSC性をより簡便に評価することができる。
以上、本発明の一実施形態による試験方法を説明した。本実施形態では、試験溶液の製造方法(ステップS1)が、実環境の緩衝能及びpHを求める工程(ステップS1−1)と、求めた緩衝能及びpHの値に基づいて試験溶液を調整する工程(ステップS1−2)とを備える場合を説明した。しかし、実環境の緩衝能及びpHを毎回求める必要はない。すなわち、予め求めておいた実環境の緩衝能及びpHの値に基づいて、試験溶液を調整してもよい。あるいは、外部から入手した実環境の緩衝能及びpHの値に基づいて、試験溶液を調整してもよい。すなわち、実環境の緩衝能及びpHを求める工程(ステップS1−1)は、実施されなくてもよい。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されない。
ガス分圧及び試験溶液の成分を変えて、SSC試験を実施した。具体的には、マルテンサイト系ステンレス(0.01%C−0.13%Cr−5%Ni−2.5%Mo)に対して、定荷重試験(NACE A法のproof ring)及びオートクレーブ試験(4点曲げ法)を実施した。定荷重試験は、外径6.35mmの丸棒試験片、4点曲げ試験は厚さ2mm、幅10mm、長さ75mmの板状試験片を用いた。各試験を2つの試験片で行い、720時間の試験期間後に割れの発生した試験片の数を調べた。試験はすべて常温(25℃)で実施した。
表1に、試験条件(ガス分圧及び試験溶液の成分)並びに試験結果(割れ発生数)を示す。表1は、実環境を想定した高圧での試験条件及びその試験結果である。試験溶液の緩衝能は、試験溶液に塩酸を添加し、目標pHから1.0だけ低下する水素イオン濃度を測定することで求めた。
Figure 0006696393
表1に示すように、この材料では、pHが3.5及び4の場合はSSCが発生し、pHが5の場合はSSCが発生しない。
表2は、表1の条件から、二酸化炭素ガス分圧を低下させて大気圧で測定した場合の試験条件及びその試験結果である。試験溶液の成分は、表1の試験溶液とpHが同じになるように調整した。表1の場合と同様、試験溶液の緩衝能は、試験溶液に塩酸を添加し、目標pHから1.0だけ低下する水素イオン濃度を測定することで求めた。
Figure 0006696393
表2の「比率」の欄には、当該試験溶液の緩衝能と、当該試験溶液とpHが同じ高圧の試験溶液(表1)の緩衝能(実環境の緩衝能)との比率が記載されている。具体的には、試験溶液1−2〜1−4の「比率」の欄には、これらの緩衝能を試験溶液1−1の緩衝能で除した値が記載されている。同様に、試験溶液2−2〜2−5の「比率」の欄には、これらの緩衝能を試験溶液2−1の緩衝能で除した値が記載されている。試験溶液3−2〜3−4の「比率」の欄には、これらの緩衝能を試験溶液3−1の緩衝能で除した値が記載されている。
試験溶液1−2〜1−4の試験結果と試験溶液1−1の試験結果との比較、及び、試験溶液2−2〜2−5の試験結果と試験溶液2−1の試験結果との比較から、試験溶液の緩衝能が実環境の緩衝能の150%以下であれば、実環境と同じ試験結果が得られることが分かる。換言すれば、試験溶液の緩衝能が実環境の緩衝能の150%よりも高いと、pHを同じにしても、正しい試験結果が得られない。具体的には、試験溶液1−4は試験溶液1−1と同じpHであり、このpHでは本来SSCが発生するはずであるが、試験溶液1−4を用いた試験では緩衝能が大きすぎるためSSCが発生しなかった。試験溶液2−4及び2−5についても同様であった。
試験溶液3−1〜3−4による試験は、上記とは反対に、本来SSCが発生しないpHにおいて、どの程度まで緩衝能を下げればSSCが発生するかを確認するために実施したものである。試験溶液の緩衝能が実環境の10%の場合(試験溶液3−2)、高圧での試験結果と同様にSSCが発生しなかった。一方、試験溶液の緩衝能が実環境の4%の場合(試験溶液3−3)、SSCが発生した。試験溶液3−4による試験は、オートクレーブ試験(4点曲げ)でも同じ結果が得られることを確認するために実施したものである。これらの結果から、試験溶液の緩衝能が実環境の10%以上であれば、実環境と同じ試験結果が得られることが分かる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態は本発明を実施するための例示にすぎない。よって、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態を適宜変形して実施することが可能である。

Claims (6)

  1. ステンレス鋼の応力腐食割れ試験に用いる試験溶液の製造方法であって、
    前記試験溶液の緩衝能を実環境の緩衝能の150%以下に調整し、前記試験溶液のpHを前記実環境のpHに調整する工程を備える、製造方法。
  2. 請求項1に記載の製造方法であって、
    前記実環境の緩衝能及びpHを求める工程をさらに備える、製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の製造方法であって、
    前記試験溶液の緩衝能を前記実環境の緩衝能の10〜150%に調整する、製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法によって製造された試験溶液を用いてステンレス鋼の応力腐食割れ試験を実施する、試験方法。
  5. 請求項4に記載の試験方法であって、
    前記応力腐食割れ試験を常圧で実施する、試験方法。
  6. 請求項5に記載の試験方法であって、
    前記応力腐食割れ試験が硫化物応力腐食割れ試験である、試験方法。
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