JP6696135B2 - 鋼管軸力部材 - Google Patents
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Description
この冷間ロール成形によって製造された鋼管は、製造時のロール間張力に起因するバウシンガー効果によって、管軸方向の圧縮載荷時の降伏応力が、引張載荷時の降伏応力よりも低下してしまうこと、残留応力を有することによって、全体座屈耐力が低下するという問題がある。
しかし、ひずみ除去焼鈍を行うと、同時に加工硬化の影響も除去されてしまうため、鋼管軸力部材の降伏応力が小さくなってしまうという課題がある。
非特許文献1は、冷間成形された鋼管部材に溶融亜鉛めっき処理が施される場合、溶融亜鉛めっき処理によって、製管のままの鋼管と比べ、降伏応力が上昇することを開示している。また、非特許文献1は、降伏応力の上昇だけでなく、細長比の中程度又は大きい領域において、座屈耐力上昇効果があるということも開示している。そして、非特許文献1では、短柱圧縮試験の降伏応力の上昇効果は、残留応力の除去と、ひずみ時効促進によるものと推定している。
また、非特許文献1に開示された技術では、管の軸方向の引張載荷時の材料特性のみに着目するだけであり、残留応力の影響を除去した圧縮載荷時の材料特性については、着目されていない。
本発明では、断面が円形又は角形の鋼管であるのが好ましい。
このような本発明によれば、座屈耐力を向上させ、トラス等に用いられる鋼管軸力部材とすることができる。
また、断面が円形又は角形の鋼管とすることにより、屋根トラス、小規模橋梁等に好適に使用することができる。
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1には、本発明の実施形態に係るトラス構造1が示されている。
トラス構造1は、体育館や工場等の比較的大空間の屋根を構成するものであり、図示を略したが、トラス構造1の上部には、屋根材が敷設される。
このトラス構造1は、水平方向に延びる一対の主管2と、一対の主管2の間に斜めに架設される支管3とを備える。
鋼管軸力部材としての支管3は、主管2よりも小径の断面円形の鋼管から構成され、端部は、プレス加工等により平板状につぶされている。
主管2及び支管3は、主管2に溶接固定されたガセットプレート4に、支管3の端部平板状の部分を溶接により接合され、又は、ボルトナットを用いて接合される。
主管2及び支管3は、隣り合う支管3のなす角が所定の角度となるように接合され、構造設計上、支管3には、圧縮方向の軸力が作用するように設計されている。但し、実際には、接合時の誤差等もあるため、支管3には、曲げ荷重が作用することもある。
なお、主管2は、断面円形の鋼管によらず、角形鋼管、H形鋼であってもよい。また、支管3の端部は平板状とする場合に限らず、支管3の部材断面のままボルトにて接合してもよい。接合部は、ピン接合、剛接合等であってもよい。さらに、支管3が同一平面内にない立体トラスに鋼管軸力部材を適用してもよい。
このようなトラス構造1を構成する支管3の材質としては、JIS G3444で規定される一般構造用炭素鋼鋼管STK400、STK490、STK500、STK540を採用することができる。
また、本実施形態では支管3として円形鋼管を用いているが、これに限られず、JIS G3466で規定される一般構造用角形鋼管STKR400、STKR490、建築構造用冷間ロール成形角形鋼管BCR295、UBCR365等も採用することができる。
支管3として用いられた構造用低温熱処理鋼管は、冷間ロール成形によって製造された後、200℃以上、450℃以下の低温熱処理を行い、少なくとも低温熱処理を10分から60分保持することにより、ひずみ時効が生じた鋼管である。
まず、本発明者らは、座屈耐力の支配因子となる初期不整を調査し、細長比に応じて初期不整の影響度が異なることを明らかにした。
特に、細長比が小さい範囲(細長比45以下)では、機械的特性が座屈耐力に与える影響が大きいことから、その範囲において従来の座屈耐力強化方法であるひずみ除去焼鈍では座屈耐力の向上はみられない。
そこで、影響度の大きい機械的特性を変化させる手段として、ひずみ時効を活用し、圧縮時の降伏応力を上昇させることにより、座屈耐力を上昇させた。
以下、具体的なプロセスについて詳述する。
まず、低温熱処理鋼管としてSTK400円形鋼管を用い、11段階の温度で熱処理を行い、圧縮試験を実施して、ひずみ除去焼鈍(at 650℃)を行ったSTK400円形鋼管の円柱圧縮試験の結果と比較した。
試験体の円柱径は、板厚×0.7(mm)とし、試験体の高さは、円柱径×2(mm)とした。具体的には、板厚6(mm)のものを使用し、円柱径4.2mm、高さ8.4mmのものを試験体とした。
試験体と試験機との接触面は焼き付き防止のため、グリースを塗布して潤滑させた。
試験結果の応力―ひずみ関係における降伏応力の定義は、降伏棚を有する試験体は下降伏点とし、明瞭な降伏棚を有さない試験体は、0.2%の塑性ひずみを生じた点とした。
STK400円形鋼管の成分は表1に示される通りである。また、11段階で行った熱処理及びその際の圧縮載荷時の降伏応力を、ひずみ除去焼鈍を行った結果とともに表2に示す。なお、表2中、焼き戻しパラメータ(ラーソンミラーパラメータ)は、下記式(1)によって計算した。Tは熱処理温度(K)、tは熱処理時間(h)、Cは材料固有の係数であり、鋼材の場合20とした。
以上のことから、JIS G3444で規定される一般構造用炭素鋼鋼管、JISG3466で規定される一般構造用角形鋼管のいずれも、200℃以上、450℃以下の低温熱処理を行い、少なくとも10分以上、60分以下保持することにより、圧縮載荷時の降伏応力の向上が認められることがわかった。
また、ひずみ除去焼鈍における熱処理温度である650℃の際の圧縮載荷時の降伏応力に対する低温熱処理の際の圧縮載荷時の降伏応力の比の値が1.17以上となる焼き戻しパラメータ(ラーソンミラ―パラメータ)は9.1〜13.9である。
次に、本実施形態に係る低温熱処理鋼管を用いた鋼管軸力部材が、どの程度の細長比まで座屈耐力を向上させる効果を奏するのか、FEM解析によって求めた。
解析モデルは、図4(A)、図4(B)に示されるように、座屈長さLの円形鋼管STK400又は角形鋼管STKR400とした。円形鋼管、角形鋼管の鋼管径及び板厚を表5に示す。なお、FEM解析は、図4(B)に示されるように、下端をピン支持とし、上端をローラー支持として解析を行った。
また、初期不整として、残留応力については、鋼管外表面及び内表面は実測値、板厚内の分布については線形補間したものを導入し、初期たわみについては、形状がsin半波形を、最大たわみが座屈長さL/1000を導入した。
円形鋼管STK400の場合は、3段階の熱処理温度での解析を行い、ひずみ除去焼鈍の解析結果とともに、その解析結果を表6に示す。角形鋼管STKR400の場合は、2水準の熱処理温度での解析を行い、その解析結果を表7に示す。
表6の結果において、細長比と座屈耐力との関係を、図5に示されるグラフで示した。また、表7の結果において、細長比と座屈耐力との関係を図6に示されるグラフで示した。
650℃でひずみ除去焼鈍を行った鋼管に対して、200℃以上、450℃以下で低温熱処理を行った鋼管は、図5及び図6における黒塗りのプロットの部分で大幅に向上しており、細長比45以下で顕著に座屈耐力が向上することが確認された。
このように200℃以上、450℃以下の低温熱処理を、10分〜60分保持することにより、ひずみ時効による降伏応力の上昇が見られ、特に細長比45以下の範囲で合理的に座屈耐力を向上させることができることがわかった。
また、低温熱処理の熱処理温度を400℃前後とすることにより、圧縮載荷時の降伏応力及び座屈耐力を向上させることができることを確認することができた。
Claims (3)
- 低温熱処理を行った構造用鋼管を用いた細長比45以下の鋼管軸力部材であって、
前記構造用鋼管に650℃でひずみ除去焼鈍を行った際の圧縮載荷時の降伏応力に対して、前記構造用鋼管に前記低温熱処理を行ってひずみ時効が生じた際の圧縮載荷時の降伏応力の比の値が1.17以上であることを特徴とする鋼管軸力部材。 - 請求項1に記載の鋼管軸力部材において、
断面が円形であることを特徴とする鋼管軸力部材。 - 請求項1に記載の鋼管軸力部材において、
断面が角形であることを特徴とする鋼管軸力部材。
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