JP6694819B2 - 表面に結合した単一特異性四量体抗体複合体の組成物を使用して、試料から標的実体を分離する方法 - Google Patents

表面に結合した単一特異性四量体抗体複合体の組成物を使用して、試料から標的実体を分離する方法 Download PDF

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Description

本出願は、参照によって本明細書に組み込まれる2014年1月21日に出願された米国仮特許出願第61/929,581号の利益を米国特許法第119条(e)の下で主張する。
本開示は、表面に結合した単一特異性四量体抗体複合体を用いて細胞を分離するための方法に関する。
多くの用途において、生体試料中の特定の細胞集団を濃縮する、あるいは減少させることが望ましい。血液学、免疫学および腫瘍学の分野では、関連した組織由来、例えば骨髄、脾臓、胸腺および胎児肝臓の末梢血および細胞懸濁液の試料に依存している。これらの不均一な試料から特定の細胞型を分離することは、これらの分野における研究の鍵である。免疫細胞、例えばT細胞およびB細胞の精製集団は、免疫機能の研究にとって必要であり、免疫療法で使用されている。細胞過程、分子過程および生化学過程の調査は、特定の細胞型を分離して、分析することを必要とする。赤血球、例えばT細胞、B細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞のリンパ球サブセット、ならびに例えば好中球、好塩基球および好酸球の顆粒球を単離する、または減少させるために多数の技術が用いられてきた。
造血細胞および免疫細胞は、密度などの物理特性に基づいて、およびモノクローナル抗体と、例えば磁性粒子の固体面とを用いる直接標的設定を介して分離されてきた。モノクローナル抗体を用いて、末梢血および関連する細胞懸濁液から細胞集団を分離するには2つの基本的な方法がある。これらの方法は、抗体(複数可)で識別/標識される所望の細胞であるかまたは望ましくない細胞であるかどうかの点で異なる。正の選択技術では、所望の細胞は抗体で標識され、残りの非標識/望ましくない細胞から取り除かれる。負の選択法では、望ましくない細胞が標識されて、取り除かれる。抗体と補体治療および免疫毒素の使用は、負の選択技術であり、一方、蛍光補助式細胞選択(FACS)および大部分の免疫吸着技術は正の選択と負の選択の両方に適応することができる。免疫吸着技術では、細胞はモノクローナル抗体で選択され、残りの細胞から取り除くことができる表面、例えばビーズのカラム、フラスコ、非磁性粒子および磁性粒子に優先的に結合される。免疫吸着技術は、臨床で、および研究で支持を得てきた。モノクローナル抗体によって標的細胞の高特異性を維持するが、FACSとは異なり、臨床的採取において大量の細胞を直接扱うようにスケールアップすることができ、例えば免疫毒素および補体などの細胞毒性試薬を用いる危険性を回避するからである。
磁性分離は、磁場勾配中に例えば遠心管またはカラムなどの容器内の磁性材料を選択的に保持するために用いられる過程である。目的の標的、例えば特定の生体細胞、タンパク質および核酸は、免疫親和性相互作用を含む特定の相互作用を介して、磁性粒子を標的の表面に結合させることによって磁性標識することができる。他の有用な相互作用としては、薬物−薬物受容体、抗体−抗原、ホルモン−ホルモン受容体、成長因子−成長因子受容体、糖質−レクチン、核酸配列−相補的核酸配列、酵素−補助因子または酵素−阻害剤結合が挙げられる。適切な容器内に目的の標的を含有する懸濁液は、次いで、懸濁液中の他の実体から標的を分離するのに十分な力の磁場勾配に曝露される。次いで、容器を適切な液体で洗浄して、非標識実体を取り除くことができ、結果として目的の標識の精製懸濁液になる。
細胞表面抗原に対するモノクローナル抗体の出現により、異なった細胞型を識別して分離する可能性が大きく広がった。大多数の磁性標識系は、モノクローナル抗体またはそれらの表面に共有結合されるストレプトアビジンと共に超磁性粒子を用いる。細胞分離用途において、これらの粒子は、所望の細胞が磁性標識されている正の選択、または大多数の望ましくない細胞が磁性標識されている負の選択のいずれかで用いることができる。目的の実体は一般的に磁性粒子上に捕えられているので、目的の標的がタンパク質または核酸である磁性分離用途は、正の選択方法と考えられる。
抗体に直接結合されている磁性粒子を利用するいくつかの市販の細胞分離製品は、入手可能である(Miltenyi Biotec Inc.,Gladbach,Germany.,Life Technologies Corp.,Carlsbad, USA, BD Biosciences, San Jose, USA)。他の方法は、ビオチンに結合した特異的抗体による標的細胞の標識化、続いて、ビオチン標識抗体に結合するストレプトアビジン被覆磁性粒子の添加により、標的細胞の標識化を利用している(Miltenyi Biotec, Inc. Life Technologies,BD Biosciences,およびSTEMCELL Technologies Inc., Vancouver, Canada)。別の例は、EasySep(商標)細胞分離系(STEMCELL Technologies Inc.)であり、それによって二重特異性四量体抗体複合体を用いて、磁性粒子を目的の細胞に架橋させる。四量体抗体複合体(TAC)は、第1の種由来の抗体のFcフラグメントに結合する第2の種由来の2つの抗体によって四量体アレイに保持された第1の種由来の2つのモノクローナル抗体を含む(Lansdorpに対する米国特許第4,868,109号を参照されたい。TACおよびTACを調製するための方法の記載を参照することによって同特許は、本明細書に組み込まれる)。
二重特異性TACの調製において、最終抗体組成物を含む3つの異なるTACを形成することができる。第1の動物種由来の当量濃度の2つの異なる抗体(AおよびB)に第2の動物種由来の当量の架橋抗体(C)を組み合わせる場合、25%は抗体Aに対する単一特異性TACであり、25%は第2の抗体Bに対する単一特異性TACであり、およびTACの50%は抗体AとBに対して二重特異性である。第1の種由来の各抗体の比率を操作して、単一特異性TAC対二重特異性TACの比率をそれぞれの標的抗原に特異的な第1または第2の抗体に向けることができる。
本発明で用いるように、単一特異性TACは、単一の標的実体に特異的である。一実施形態において、単一特異性TACは、第1の動物種由来の2つの同一の抗体を含有し、これらの抗体は、同じ抗原エピトープを認識し、第1の動物種のFcフラグメントを認識する第2の動物種由来の2つの抗体によって四量体アレイに保持されている。別の実施形態において、単一特異性TACは、第1の動物種由来の2つの異なる抗体クローンを含有し、これらの抗体クローンは、同じ標的抗原上の異なるエピトープを認識し、第1の動物種のFcフラグメントを認識する第2の動物種由来の2つの抗体によって四量体アレイに保持されている。さらに別の実施形態において、単一特異性TACは、第1の動物種由来の2つの異なる抗体クローンを含有し、これらの抗体クローンは、同じ標的実体上に発現する異なる抗原を認識し、第1の動物種のFcフラグメントを認識する第2の動物種由来の2つの抗体によって四量体アレイに保持されている。
単一特異性TACは、単一のIgG抗体分子を有する2つだけの抗原結合部位と比較して、4つの抗原結合部位を有するので、その標的実体のための複合体の結合価を増やすことができる。
直接的または間接的のいずれかで中間受容体−リガンドの相互作用を介して粒子に直接結合され、それによって受容体またはリガンドのいずれか1つが磁性粒子に最初に結合される抗体を記載する特許は、米国特許第3970518A号、同第4230685号、同第8298782B2号、同第7160723B2号および同第5543289A号に記載されており、これらの特許は参照によって本明細書に組み込まれている。これらの例の各々において、標的実体を認識する単一抗体または複数抗体のいずれかは、物理吸着または化学的結合などの当業者には容易に明らかな従来の技法を用いて、粒子に結合される。
抗体などのリガンドの固体面への物理吸着は、多数の自然過程において重要な役割を果たしており、生体材料用途においてかなりの有用性を保持している。固体面でのタンパク質吸着現象を理解する努力がなされ進歩しているのだが、タンパク質が例えばフラスコ、ビーズまたは粒子のカラムの固体面に吸着されるときに生じる、観察された現象に関して、かなり異なり、矛盾する解説がある[1]。固体面へのタンパク質吸着は、反応緩衝液のpHおよびイオン強度、反応の温度、およびタンパク質の等電点などの多数の要因によって影響されることがある。加えて、表面の大きさ、表面電荷、表面の反応部分もタンパク質の吸着に大きく寄与する。タンパク質が最初に吸着される、または表面に濃縮されると、前記表面に共有結合されることができる。
吸着条件または結合化学に応じて、抗体の配向性により、抗体がその標的抗原に機能的に結合できない立体構造で結合されることができる。抗体の配向性は、吸着または結合の反応条件を修正することによって、または中間体を使用することによって操作することができ、該中間体は、表面から外側に向かう反応性Fab結合ドメインによって抗体を方向づけるのに役立つことができる表面に最初に結合されるものである(米国特許第8298782B2号または同第4,230,685号を参照されたい)。プロテインAまたはストレプトアビジンなどの抗体結合中間体の結合の場合でも、前記中間体の結合も非効率的であり得、理想的とは言えない結合効率になる。
前述したことを考慮すると、当分野では、標的実体と非標的実体との混合物を分画する際に用いられる標的実体に特異的な表面の調製に関して、抗体結合方法を改善するための簡単で新規の方法を提供する必要がある。
本発明者は、標的実体と非標的実体との混合物を分画する際に用いられる表面に単一特異性四量体抗体複合体を結合するための方法を開発した。本発明者は、単一特異性四量体抗体複合体を表面に結合することによって、標的実体と非標的実体との混合物を分画するための当量抗体濃度でモノクローナル抗体を表面に結合する既存の方法よりも改善されることを示した。
細胞表面抗原に対するモノクローナル抗体の出現により、異なった細胞型を識別して分離する可能性が大きく広がった。四量体抗体複合体(TAC)は、第1の動物種由来の2つの抗体を含んでおり、これらの抗体は第1の動物種由来のFcフラグメントに特異的な第2の動物種由来の2つの抗体によって四量体アレイに保持されている(Lansdorpに対する米国特許第4,868,109号を参照されたい。TACおよびTACを調製するための方法の記載を参照することによって同特許は、本明細書に組み込まれる)。本開示の方法は、標的実体と非標的実体とから構成されている試料を分画する際に用いられる磁性粒子などの表面に結合される単一特異性TACの使用を示す。
単一特異性TACは、細胞などの標的実体の単一の型に特異的である。一実施形態において、単一特異性TACは、第1の動物種由来の2つの同一の抗体を含有し、これらの抗体は、同じ抗原エピトープを認識し、および第1の動物種のFcフラグメントを認識する第2の動物種由来の2つの抗体によって四量体アレイに保持されている。別の実施形態において、単一特異性TACは、第1の動物種由来の2つの異なる抗体クローンを含有し、これらの抗体クローンは同じ標的抗原の異なるエピトープを認識し、および第1の動物種のFcフラグメントを認識する第2の動物種由来の2つの抗体によって四量体アレイに保持されている。さらに別の実施形態において、単一特異性TACは、第1の動物種由来の2つの異なる抗体クローンを含有し、これらの抗体クローンは、細胞などの同じ標的実体上に発現する異なる抗原を認識し、第1の動物種のFcフラグメントを認識する第2の動物種由来の2つの抗体によって四量体アレイに保持されている。
本発明の方法は、表面に結合した単一特異性TACが、標的実体と非標的実体とを含有する試料から標的実体を分画する場合、表面に結合したモノクローナル抗体よりも効果的であり、既存の方法を上回る予想外の改善である。
標的実体に特異的な抗体の当量濃度で、表面に結合した単一特異性TACは、標的実体と非標的実体との混合物から標的実体を分画する際により効果的である。
一実施形態において、本開示の方法は、ヒト全血などの複合試料から赤血球を効率的に標識し、および減少させることができる。
したがって、一実施形態において、本開示は、標的実体と非標的実体とを含む試料において非標的実体から標的実体を分離するための方法を提供し、該方法は、
(a)標的実体に特異的であり、表面に結合した少なくとも1つの単一特異性四量体抗体複合体(TAC)を準備することと、
(b)TAC結合表面が標的実体に結合することを可能にする条件下で、TAC結合表面と試料を接触させることと、
(c)試料から標的実体−TAC結合表面を分離させて非標的実体から標的実体を分離することとを含む。
一実施形態において、表面は、磁性粒子などの粒子である。磁性粒子方法の有益性は、この方法が免疫磁性細胞分離方法であるので、完全に自動化することができ、それによってさらに試料取扱を減少させ、ウイルスまたは寄生体などの血液媒介病原菌への曝露を最小化することができることである。
標的実施体は、細胞、細菌、ウイルス、細胞小器官、タンパク質または核酸であり得る。
一実施形態において、標的細胞は、赤血球、リンパ球、単核細胞、顆粒球、腫瘍細胞、幹細胞、造血前駆細胞、間葉細胞、乳腺上皮細胞、神経細胞、内皮幹細胞および胚性幹細胞からなる群から選択される。
本開示の他の特徴および利点は、以下の発明を実施するための形態から明らかになろう。しかし、発明を実施するための形態および特定の実施例は、好ましい実施形態を示しているが、本開示の趣旨および範囲内での種々の変更および修正は、本発明を実施するための形態から当業者には明らかになるため、例示としてのみ示されることを理解すべきである。
ここで本開示を以下の図面との関連で述べることにする。
単一特異性抗グリコホリンA TACまたは抗グリコホリンA抗体のいずれかに結合されたカルボキシデキストラン磁性粒子を用いた、ヒト末梢全血からの赤血球の減少を示す。 単一特異性TAC結合磁性粒子を使用する免疫磁性赤血球減少、または赤血球の塩化アンモニウム溶解のいずれかを用いて、ヒト末梢血有核細胞の濃縮を比較する。 磁性粒子に結合した単一特異性抗CD66b TACを用いて、ヒト末梢全血からCD66b+顆粒球の正の選択を示す。
本開示の組成物および方法
本開示は、標的実体および非標的実体を含有する試料から標的実体を分離するための方法で用いられる表面に結合した単一特異性TACの組成物に関する。
一態様において、本開示は、標的実体および非標的実体を含んでいる試料中の非標的実体から標的実体を分離するための方法を提供し、該方法は、
(a)標的実体に特異的であり、表面に結合した少なくとも1つの単一特異性四量体抗体複合体(TAC)を準備することと、
(b)TAC結合表面が標的実体に結合することを可能にする条件下で、TAC結合表面と試料を接触させることと、
(c)試料から標的実体−TAC結合表面を分離させて非標的実体から標的実体を分離することとを含む。
この方法は、正および負の選択プロトコルの両方で使用することができる。正の選択のプロトコルにおいて、所望の実体は試料から取り除かれる。負の選択プロトコルにおいて、所望の実体は選択プロトコルの後に試料中に残り、その結果残りの試料は所望の実体のために濃縮されている。
本明細書で用いる場合、「標的実体」という用語は、本明細書に記載する方法によって試料から取り除かれることになる実体である。好適な実施形態において、標的実体は細胞である。正の選択プロトコルにおいて、所望の細胞は標的細胞である。負の選択プロトコルにおいて、所望の細胞は標的細胞ではなく、むしろ、非標的細胞である。
一実施形態において、表面は粒子である。粒子は磁性または非磁性であり得る。本明細書に記載の方法での有用な非磁性粒子の一例は、浮遊性粒子である。浮遊性粒子は、適切な緩衝液中に配置されると、浮遊し、それによって標的細胞−TAC結合粒子複合体が試料から分離できるようになる。
負の選択の細胞分離プロトコルにおいて、所望の細胞は結合粒子で標識されてなく、標的細胞で標識された結合粒子が取り除かれた後、試料中に残る。したがって、望ましくない細胞は、試料から取り除かれることになる「標的細胞」であり、所望の細胞は「非標的細胞」である。負の選択の細胞分離プロトコルにおいて、単一特異性TACは、試料から取り除きたいと思う標的細胞に特異的な抗体を含有する。したがって、本開示は、所望の細胞と望ましくない細胞とを含有する試料において所望の細胞を濃縮して回収するための負の選択細胞分離方法を提供し、該方法は、
(a)望ましくない細胞に特異的であり、粒子などの表面に結合した少なくとも1つの単一特異性TACを準備することと、
(b)TAC結合粒子が望ましくない細胞に結合することを可能にする条件下で、TAC結合粒子と試料を接触させることと、
(c)試料から標的細胞−TAC結合粒子複合体を分離させて、所望の細胞が濃縮した試料を得ることとを含む。
正の選択プロトコルにおいて、所望細胞は標的細胞である。正の選択において、抗体組成物は、試料から取り除きたいと思う所望の細胞に特異的な少なくとも1つの抗体を含有する。したがって、本開示は、所望の細胞と望ましくない細胞とを含有する試料から所望の細胞を回収するための正の選択方法を提供し、該方法は、
(a)所望の細胞粒子に結合する、表面に結合した少なくとも1つの単一特異性TACを準備することと、
(b)TAC結合粒子が所望の細胞に結合することを可能にする条件下で、TAC結合粒子と試料を接触させることと、
(c)試料から所望の細胞−TAC結合粒子複合体を分離させて、結合粒子に結合した所望の細胞が濃縮した第2の試料を得ることと、
(d)所望の細胞−TAC結合粒子複合体を洗浄して、結合粒子に結合している所望の細胞が精製された試料を得ることとを含む。
一実施形態において、正の選択方法としては、結合粒子から所望の細胞を分離するために、所望の細胞−TAC結合粒子複合体の脱凝集が挙げられる。この複合体は、種々の方法、これに限定されないが、例えば競合的解離法、物理的解離法、化学的解離法、酵素的解離法、または熱解離法を用いて、脱凝集させることができる。
負の選択または正の選択のいずれかで、上記ステップ(b)で形成した粒子に結合した標的細胞は、種々の技法を用いて、非磁性非標的細胞から分離させることができる。
好適な実施形態において、粒子は磁性粒子であり、および磁性粒子で標識された標的細胞を含有する試料は磁場内に配置される。磁性粒子で標識された標的細胞は、磁場に向かって遊走し、非磁性非標的細胞が磁性粒子で標識された標的細胞から容易に分離可能な位置で保持される。
本開示の方法は、血液(特に臍帯血と全血)、骨髄、胎児肝臓、バフィーコート懸濁液、白血球除去試料、胸水と腹水、および胸腺細胞懸濁液と脾細胞懸濁液を含む赤血球を含有する生体試料のプロセシングで使用されてもよい。本方法を用いて、全血または全骨髄などの赤血球を含有する生体試料から赤血球を減少させることができる。
本開示の方法を用いて、任意の細胞型、これらに限定されないが、例えばT細胞、B細胞、NK細胞、樹状細胞、単核細胞、好塩基球、肥満細胞、前駆細胞、幹細胞および腫瘍細胞が濃縮された試料を調製することができる。
一実施形態において、本開示の方法を用いて、選択された分化細胞型、例えばT細胞、B細胞、NK細胞、単核細胞、樹状細胞、好塩基球および形質細胞が濃縮された試料、例えば血液および骨髄から細胞標品を調製することもできる。これにより、成長因子産生および成長因子への反応を含む特定の細胞間相互作用の研究が可能になる。特定の細胞型の分子分析および生化学分析も可能になる。NK細胞、樹状細胞およびT細胞が濃縮された細胞標品は、特定の悪性腫瘍に対する免疫療法でも用いることができる。
抗体組成物および粒子組成物
本開示は、本明細書に記載の方法で使用される抗体および粒子組成物を含む。
単一特異性TACは、標的細胞上の抗原に結合する(a)第1の抗体と、それに間接的に結合している、同じ標的細胞に結合する(b)第2の抗体とを含有する。これらの2つの抗体は、同じ動物種の同一または異なる抗体クローンであり得、同じ標的細胞上に発現する同じ抗原または異なる抗原上の異なるエピトープを認識する。
好適な実施形態において、少なくとも1つの単一特異性TACは、物理吸着または化学的結合などの当業者には容易に明らかな従来の技法を用いて、粒子に直接結合される。
「第1の抗体」および「第2の抗体」という用語は、この抗体組成物が少なくとも1種類の抗体を含む(1つの抗体分子とは対照的に)ことを意味する。1種類の抗体とは、抗原上で特定のエピトープに結合する1つの抗体を意味する。例えば、抗原CD3に結合する抗体は、1種類の抗体と考えられる。
一態様において、本開示の単一特異性TACは、標的細胞に特異的な(a)1つの抗体と、それに間接的に結合している、同じ標的細胞に特異的な(b)第2の抗体とを含む。「間接的に結合している」ことによって、抗体(a)および抗体(b)は互いに直接共有結合していないが、免疫複合体などの結合部分を介して結合していることを意味する。好適な実施形態において、抗体組成物は1つの抗体で標的細胞(a)を含有し、標的細胞は単一特異性四量体抗体複合体を調製することによって同じ標的細胞(b)に特異的な第2の抗体に間接的に結合している。単一特異性四量体抗体複合体は、第1の動物種由来の標的細胞に結合することができるモノクローナル抗体と、第1の動物種の抗体のFcフラグメントに対して向けられている第2の動物種の等モル量のモノクローナル抗体とを混合することによって調製されることもある。第1の動物種由来の抗体は、第1の動物種の抗体のFcフラグメントに対して向けられている、およそ等モル量の完全長の第2の動物種のモノクローナル抗体、または同モノクローナル抗体のF(ab’)2フラグメントと反応することもある。
「少なくとも1つの単一特異性TAC」という用語は、少なくとも1つのTACが単一粒子に直接結合していることを意味する。好適な実施形態において、単一特異性TACは、細胞などの1種類の標的実体に特異的である。一実施形態において、単一特異性TACは、第1の動物種由来の同一の2つの抗体を含有し、これらの2つの抗体は、同じ抗原エピトープを認識し、第1の動物種のFcフラグメントを認識する第2の動物種由来の2つの抗体によって四量体アレイ内に保持されている。別の実施形態において、単一特異性TACは、第1の動物種由来の2つの異なる抗体クローンを含有し、これらの抗体クローンは、同じ標的抗原上の異なるエピトープを認識し、第1の動物種のFcフラグメントを認識する第2の動物種由来の2つの抗体によって四量体アレイに保持されている。さらに別の実施形態において、単一特異性TACは、第1の動物種由来の2つの異なる抗体クローンを含有し、これらの抗体クローンは同じ標的細胞上に発現する異なる抗原を認識し、第1の動物種のFcフラグメントを認識する第2の動物種由来の2つの抗体によって四量体アレイに保持されている。
TAC結合粒子は、少なくとも1つのTAC結合粒子が1つの標的細胞に結合できる条件下で試料と混合される。
好適な実施形態において、標的細胞に特異的な単一特異性TACは、物理吸着または化学的結合などの当業者には容易に明らかな従来の技法を用いて、粒子に直接結合される。
本開示の脈絡内で、抗体はモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体、抗体フラグメント(例えば、FabおよびF(ab’)2)、キメラ抗体、二価抗体または二重特異性抗体を含むと理解される。抗体は、例えば、10−1以上の適当な親和性(結合定数)で結合する場合、標的細胞または赤血球の表面で選択抗原に対して反応すると理解される。
モノクローナル抗体は、好ましくは本開示の抗体組成物で用いられる。有核細胞の表面で選択抗原に特異的なモノクローナル抗体は、当業者には容易に明らかな従来の技法を用いて、容易に得ることができる、または作製することができる。
本開示は、アプタマーまたはキメラ抗体誘導体、すなわち、非ヒト動物可変領域とヒト定常領域を組み合わせる抗体分子が考えられる。キメラ抗体分子は、ヒト定常領域と共に、例えば、マウス、ラットまたは他の種の抗体由来の抗原結合ドメインを含むことができる。キメラ抗体を作製するための種々の方法は記述されており、分化細胞または腫瘍細胞の表面で選択抗原を認識する、免疫グロブリン可変領域を含有するキメラ抗体を作製するために用いることができる。例えば、KimおよびHong[2]を参照されたい。
以下の非限定実施例は、本開示を例示する。
実施例1
四量体抗体複合体の調製
本開示の方法で使用するための単一特異性な四量体抗体複合体を調製するために、以下のプロトコルを用いることができる:(a)標的細胞(例えば抗赤血球(グリコホリンA)、CD8、CD16,CD19、CD36、CD56、CD66bなど)上の抗原特異的抗体1mgを取る;(b)P9抗体を1mgまたはP9 F(ab’)2抗体断片を0.68mg加える。37℃で終夜インキュベートする。四量体の調製についてのさらなる情報は、Lansdorpに対する米国特許第4,868,109号を参照されたい。同特許は、参照によって本明細書に組み込まれている。異なる標的細胞上に発現する抗原に異なる抗体を組み入れる単一特異性四量体抗体複合体は、別々に調製する。
異なる抗体で調製した単一特異性TACを各粒子に別々に結合する。結合粒子混合物は、減少させたいと望む細胞に応じて種々の結合粒子を組み合わせることによって作製する。
種々の単一特異性TACの濃度は、変わる。一般的に、有核細胞上で発現する抗原に対する抗体は、単一特異性TAC中では2.5〜400μg/mLである。次いで、細胞懸濁液中の各抗細胞抗体の最終濃度が0.125〜20μg/mLになるように、結合粒子組成物を細胞に1:20で希釈する。各粒子の最終濃度は、0.05〜5mg/mLである。
実施例2
磁性粒子に結合した単一特異性TACの調製
本開示の方法で使用するための結合モノクローナル抗体または単一特異性TACを用いて粒子を調製するために、以下のプロトコルを用いることができる:(a)抗グリコホリンA抗体単独を200μg、またはP9抗体200μgと共に四量体抗体複合体中で結合した抗グリコホリンA抗体を200μgを取る;(b)カルボキシデキストラン磁性粒子80mgを加える;次いで(c)15〜37℃で終夜インキュベートして、抗体または単一特異性TACの磁性粒子上への受動的吸着を促進する。次いで、抗グリコホリンA抗体の最終濃度が1〜10μg/mLの間になるように、この組成物を試料に1:20で希釈する。磁性粒子の最終濃度は、0.4〜4mg/mLである。
別の実施形態において、磁性粒子への抗体またはTACの化学架橋は、当業者には容易に明らかである従来の技術を使用して行われる。本開示の具体的な非限定例は、カルボキシデキストラン磁性粒子への抗グリコホリンA単一特異性TACのEDC−NHS架橋であろう。次いで、単一特異性TAC中の抗グリコホリンA抗体の最終濃度が1〜10ug/mLになるように、抗グリコホリンA単一特異性TAC結合粒子を試料に1:20で希釈する。
実施例3
磁性粒子に直接結合した抗グリコホリンAに特異的な単一特異性四量体抗体複合体を使用して、ヒト末梢全血由来の末梢血有核細胞の免疫磁性が負の細胞を濃縮する方法
磁性細胞分離を用いる、ヒト末梢全血由来の末梢血有核細胞を濃縮するための負の選択のプロトコルを、以下に提示する。
1.磁性粒子に結合した単一特異性グリコホリンA TACをヒト末梢全血1mL当たり50μL加える。
2.室温で5分間、インキュベートする。
3.出発全血試料に相当する量のリン酸緩衝生理的食塩水(PBS)で試料を希釈し、次いで静かに混合する。
4.試料を含有する管をマグネット内に置く。
5.室温で5分間、インキュベートする。
6.濃縮した細胞を試料から取り除き、試料管は、マグネット内に保持しておく。
7.ステップ1のように当量の結合粒子を、希釈した濃縮試料に加える。
8.室温で5分間、インキュベートする。
9.試料を含有する管をマグネット内に置く。
10.室温で5分間、インキュベートする。
11.濃縮した細胞を試料から取り除き、試料管は、マグネット内に保持しておく。
12.これで、新しい管中の所望の細胞が使える状態になる。
本実施例は、ヒト全血の主要成分である赤血球を、磁性粒子に結合した抗グリコホリンA単一特異性TACを使用する前述の方法を用いて、減少させることができることを示す。図1Bに示すように、上述の方法を用いて、磁性粒子に結合したグリコホリンA単一特異性TACを使用することによる赤血球の減少後は、磁性粒子単独をヒト全血に加えると、CD45−GlyA+が濃縮細胞の99.95%であるのと比較して、CD45+GlyA−は濃縮細胞の99.05%である。
実施例4
磁性粒子に直接結合した抗CD66bに特異的な単一特異性四量体抗体複合体を使用して、ヒト末梢全血からの顆粒球の免疫磁性の正の選択方法
磁性細胞分離を用いて、ヒト末梢全血から顆粒球を単離するための正の選択プロトコルを以下に提示する。
1.磁性粒子に結合した単一特異性抗CD66b TACをヒト末梢全血1mL当たり5μL加える。
2.室温で5分間、インキュベートする。
3.出発全血試料に相当する量のPBSで試料を希釈し、次いで静かに混合する。
4.試料を含有する管をマグネット内に置く。
5.室温で5分間、インキュベートする。
6.望ましくない細胞を含有する上清を試料から取り除き、所望の細胞を含有する試料管は、マグネット内に保持しておく。
7.所望の細胞を含有する管をマグネットから取出し、所望の細胞を含有する管の試料をPBSで再懸濁させる。
8.ステップ4〜7をあと2回繰り返し、5分間のマグネット分離を計3回行う。
9.これで、結合粒子で標識した所望の細胞が使える状態になる。
本実施例は、磁性粒子に結合した抗CD66b単一特異性TACを用いて、ヒト全血から顆粒球の正の選択が行えることを示す。図3に示すように、上述の方法を用いて、顆粒球の正の選択を行い、74.7%まで濃縮することができる。
実施例5
磁性粒子に結合した抗グリコホリンA抗体と、磁性粒子に結合した抗グリコホリンA単一特異性TACのヒト赤血球減少についての比較
本実施例は、抗グリコホリンA抗体または抗グリコホリンA単一特異性TACのいずれかに結合した磁性粒子を用いて、ヒト全血から赤血球を免疫磁性減少させることを示す(図1)。ヒト全血中の赤血球は、グリコホリンAに特異的なモノクローナル抗体結合磁性粒子または単一特異性TAC結合磁性粒子のいずれかを使用し、実施例3に記載の方法を用いて、減少させた。抗グリコホリンA単一特異性TACは実施例1に記載のように調製した。抗グリコホリンAモノクローナル抗体または単一特異性TACのいずれかと結合した磁性粒子は、実施例2に記載のように調製した。A)(左から右に)いずれの抗体も含まない単独の磁性粒子、磁性粒子に結合した単一特異性抗グリコホリンA TAC、当量の磁性粒子に結合した、当量濃度の抗グリコホリンA モノクローナル抗体、および当量の磁性粒子に結合した2倍濃度の抗グリコホリンAモノクローナル抗体を比較する、最終試料の画像である。架橋抗マウスIgG1抗体を単一特異性TACの考慮に入れる場合、抗グルコホリンAの濃度を2倍にすると、当量の全抗体濃度がもたらされる。赤血球を効率的に減少させた唯一の試料は、磁性粒子に結合した単一特異性抗グルコホリンA TACで分離された試料であった。B)濃縮した試料を抗グリコホリンA(GlyA)FITCおよび抗CD45 APCで染色し、次いでフローサイトメトリーで解析して、濃縮試料中のCD45+/GlyA−細胞のパーセンテージを評価することによって赤血球の減少程度を決定した。単独の磁性粒子は、0.03%のCD45+/GlyA−細胞をもたらした。磁性粒子に結合した単一特異性抗グリコホリンA TACは、99.05%のCD45+/GlyA−細胞をもたらした。比較として、磁性粒子に結合したモノクローナル抗グリコホリンA抗体の当量濃度は、わずか0.35%のCD45+/GlyA−をもたらした。グリコホリンAモノクローナル抗体の濃度を2倍にすると、CD45+/GlyA−細胞は3.51%に少し増加した。
実施例6
ヒト全末梢血中の赤血球の塩化アンモニウム低浸透圧溶解後と比較して、単一特異性グリコホリンA TACを用いた赤血球の免疫磁性減少の後の濃縮末梢血有核細胞の比較
本実施例は、磁性粒子に結合した単一特異性グリコホリンA TACを使用して、ヒト末梢血有核細胞を免疫磁性濃縮すると、標準の塩化アンモニウム溶解方法と比較して、同程度の出現頻度の細胞集団をもたらした(図2)。赤血球は、実施例3による方法または標準の塩化アンモニウム低浸透圧溶解のいずれかを用いて、減少させ、次いで洗浄した。濃縮した試料は、抗CD4もしくはCD19FITC、抗CD8もしくはCD56PE、抗CD3 PerCP−Cy5.5、および抗CD45APCで染色し、フローサイトメトリーで分析した。試料をCD45+細胞上でゲーティングし、集団をFSC/SSCゲーティングまたは細胞表面マーカー(n=6)の発現のいずれかによって特定した。
実施例7
磁性粒子に結合した抗CD66b単一特異性TACを用いる、ヒト末梢全血からの顆粒球の免疫磁性の正の選択
本実施例は、実施例4に記載の方法により、磁性粒子に結合した単一特異性抗CD66b TACを用いて、ヒト全血からの顆粒球の免疫磁性の正の選択を示す(図3)。塩化アンモニウム溶解全血、および正に選択された試料を抗CD45で染色して、フローサイトメトリーで分析した。試料をCD45+上でゲーティングし、顆粒球を高FSCおよびSSCゲーティングに基づいて特定した。出発全血試料では、CD45+細胞の54.8%が顆粒球であった。次の免疫磁性の正の選択では、CD45+細胞の74.7%は顆粒球であった。
本発明は、現在好ましい実施例と変えられるものを参照して記述したが、本発明が開示されている実施例に限定されないことを理解されるべきである。それとは反対に、本発明は、添付の特許項の趣旨および範囲内に含まれる種々の修正および均等の構成を包含することを意図する。
すべての刊行物、特許および特許出願は本明細書では、各個々の刊行物、特許または特許出願がその全体を参照によって組み込まれていることを具体的かつ個別に示している場合と同じ程度に、その全体を参照によって組み込んでいる。



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Claims (13)

  1. 標的実体および非標的実体を含む試料から標的実体を分離する方法であって、前記方法が
    (a)前記標的実体に特異的であり、表面に結合した少なくとも1つの単一特異性四量体抗体複合体(単一特異性TAC)を準備することと、
    (b)単一特異性TAC結合表面が前記標的実体に結合することを可能にする条件下で、前記単一特異性TAC結合表面と前記試料を接触させることと、
    (c)前記試料から前記標的実体−単一特異性TAC結合表面を分離させて前記非標的実体から前記標的実体を分離することと
    を含む、方法。
  2. 前記表面がフラスコ、ビーズカラムまたは粒子である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記表面が粒子である、請求項2に記載の方法。
  4. 前記粒子が磁性である、請求項3に記載の方法。
  5. 前記粒子が非磁性である、請求項3に記載の方法。
  6. 磁性粒子に結合した前記単一特異性TACに結合している前記標的実体が、前記標的実体を前記非標的実体から分離するのに十分な力の磁場内に前記試料を置くことによって分離される、請求項4の記載の方法。
  7. 前記標的実体が、細胞、細菌、ウイルス、細胞小器官、タンパク質および核酸からなる群から選択される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記標的実体が細胞である、請求項7に記載の方法。
  9. 前記細胞が赤血球、リンパ球、単核細胞、顆粒球、腫瘍細胞、幹細胞、造血前駆細胞、間葉細胞、乳腺上皮細胞、神経細胞、内皮幹細胞、内皮前駆細胞および胚性幹細胞からなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
  10. 前記細胞が赤血球である、請求項9に記載の方法
  11. 前記単一特異性TACが抗グリコホリンA抗体を含む、請求項10に記載の方法
  12. 前記細胞が顆粒球である、請求項9に記載の方法
  13. 前記単一特異性TACが抗CD66b抗体を含む、請求項12に記載の方法
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