JP6693641B2 - 触覚提示装置及び電子機器並びに触覚提示装置の駆動方法 - Google Patents

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本発明は、触覚提示装置及び電子機器並びに触覚提示装置の駆動方法に関し、特に、触覚を提示する触覚提示装置及び当該触覚提示装置を備えるタッチパネルや視覚障害者用端末などの電子機器並びに触覚を適切に提示するための駆動方法に関する。
指などをタッチすることで入力操作が可能なタッチパネルが搭載された表示装置は、入力操作に応じて表示内容や機器の動作を制御するシステムに組み込まれることで、使い勝手の良いインタラクティブな操作性の実現に貢献している。このため、タッチパネルが組み込まれたスマートフォン、タブレット端末、ノート型パーソナルコンピュータなどの情報機器が急速に普及している。
その一方で、タッチパネルが搭載された表示装置の表面は一様に硬く、画面上に表示されているどの部分を触っても同じ触覚を持つ。そのため、タッチパネルのどこを触れば有効な入力が可能であるか、また有効な入力がなされたか否かを、当該パネルを見ないで知覚することは事実上不可能である。従って、これらの装置を、表示装置の画面を見ずに触覚だけで操作することは困難である。
これに対して、例えば、テレビジョン受信機のリモコン、従来型の携帯電話端末(フィーチャーフォン)、パーソナルコンピュータのキーボードなどは、各々独立した操作キーを備えているため、触覚だけで操作キーの所在を知覚することができ、かつそれらの操作キーを押した時にも触覚を通じてそのことを知覚することができる。従って、操作キーの位置や配置を覚えさえすれば、手元を見ずに触覚だけで操作することはさほど困難なことではない。
このような背景から、表示装置に触覚を付与する技術が研究されている。例えば、圧電素子や偏心モーター等を用いて表示装置を機械的に振動させる方法や、静電気力によって操作者の指と装置との間の摩擦力を変化させ、装置を指でなぞった時に触覚(テクスチャ感)を提示する、いわゆる電気振動現象を利用した方法、指に電流を流してユーザの指の皮膚機械受容器の神経軸索を駆動する方法等である。
これらの方法のうち、電気振動現象を利用した方法に関して、例えば、下記特許文献1には、導電面と、前記導電面上に配置された絶縁面と、信号が前記装置と接触する使用者に結合するように構成され、これによって前記絶縁面上をスライドする前記使用者の少なくとも1本の指に触感が知覚されるコントローラを含む触覚提示装置が提案されている。
特開2011−248884号公報
電気振動現象を利用した触覚提示装置は、電極とその電極を保護する絶縁層とを備えており、絶縁層上で操作者の指を動かした時に、以下のメカニズムによって操作者に触覚を提示する。
(1)電極に電圧信号を印加すると、電極と操作者の指との間に静電気力が働く。静電気力は常に引力であり、この静電気力は電圧信号の周波数に応じて変動する。
(2)操作者の指と絶縁層表面との間に働く垂直抗力が静電気力の変動に応じて変動することにより、使用者が絶縁層表面で指を滑らせたときに、電圧信号の周波数に応じて摩擦力が変動する。
(3)摩擦力の変動は指のせん断方向に働く力を変動させ、電圧信号の周波数に応じた指の変形をもたらす。この変形(機械的な振動)が使用者の指の機械受容器によって検出され、ざらざらとしたテクスチャ感を知覚する。
このように、ざらざらとしたテクスチャ感を知覚可能にするためには、電極と操作者の指との間に適切な静電気力が働くように、電極に適切な電圧を印加する必要がある。しかしながら、適切な電圧を印加するのは容易ではなく、テクスチャ感を知覚しやすくするために電極に印加する電圧を高くすると、電極を保護する絶縁膜が摩耗等で万一失われた場合に操作者の指に高い電圧が印加され、操作者の指に適切でない電流が流れてしまう恐れがあり、安全性の観点から好ましくない。一方、電極に印加する電圧を低くすると十分なテクスチャ感を知覚することができなくなる。
特に、従来の触覚提示装置の接触面(絶縁層の表面)は平坦であり、平坦な接触面では指が接触面に密着して滑りにくくなり、テクスチャ感を知覚しにくくなる。そのため、電極に印加する電圧をより高くしなければならず、安全性を確保することが困難になる。従って、テクスチャ感を知覚しやすくすることと電極に印加する電圧を低減することとを両立させることが難しいという問題があった。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、その主たる目的は、テクスチャ感を知覚しやすくし、かつ、電極に印加する電圧を効果的に低減することができる触覚提示装置及び当該触覚提示装置を備える電子機器並びに触覚提示装置の駆動方法を提供することにある。
本発明の一側面は、支持基板と、前記支持基板上に形成された電極と、前記電極を覆う絶縁層と、を有するパネルと、前記パネルを駆動する駆動部と、を備え、前記駆動部が前記電極に電圧の信号を印加することによって、前記電極と操作者との間に生じる静電気力に基づき、前記操作者に触覚を提示する触覚提示装置であって、前記絶縁層の前記操作者が触れる接触面は、表面粗さRaが所定の範囲であり、前記電極に印加される電圧は、前記接触面の表面粗さRaに応じた電圧である、ことを特徴とする。
本発明の一側面は、支持基板と、前記支持基板上に形成された所定の方向に延在する複数の電極と、前記複数の電極を覆う絶縁層と、を有するパネルと、前記パネルを駆動する駆動部と、を備え、前記駆動部が前記電極に電圧の信号を印加することによって、前記電極と操作者との間に生じる静電気力に基づき、前記操作者に触覚を提示する触覚提示装置であって、前記絶縁層の前記操作者が触れる接触面は、表面粗さRaが所定の範囲であり、前記操作者に触覚を提示する領域に対応する電極に印加される電圧は、前記接触面の表面粗さRaに応じた電圧である、ことを特徴とする。
本発明の一側面は、支持基板と、前記支持基板上に形成された電極と、前記電極を覆う絶縁層と、を有するパネルと、前記パネルを駆動する駆動部と、を備え、前記駆動部が前記電極に電圧の信号を印加することによって、前記電極と操作者との間に生じる静電気力に基づき、前記操作者に触覚を提示する触覚提示装置であって、前記絶縁層の前記操作者が触れる接触面は、表面粗さRaが0.01μmよりも大きく、0.8μm未満の範囲であり、当該表面粗さRaと前記操作者が触覚を知覚可能な最低電圧(以下、検出閾電圧と呼ぶ)とは相関を有する、ことを特徴とする。
本発明の一側面は、電子機器であって、上記記載の前記触覚提示装置を、タッチパネル式の表示装置の前面若しくは背面に備える、ことを特徴とする。
本発明の一側面は、支持基板と、前記支持基板上に形成された電極と、前記電極を覆う絶縁層と、を有するパネルと、前記パネルを駆動する駆動部と、を備え、前記駆動部が前記電極に電圧の信号を印加することによって、前記電極と操作者との間に生じる静電気力に基づき、前記操作者に触覚を提示する触覚提示装置の駆動方法であって、前記絶縁層の前記操作者が触れる接触面は、表面粗さRaが所定の範囲に設定されており、前記駆動部は、前記電極に、前記接触面の表面粗さRaに応じた電圧の信号を印加する処理を実行する、ことを特徴とする。
本発明の一側面は、支持基板と、前記支持基板上に形成された所定の方向に延在する複数の電極と、前記複数の電極を覆う絶縁層と、を有するパネルと、前記パネルを駆動する駆動部と、を備え、前記駆動部が前記電極に電圧の信号を印加することによって、前記電極と操作者との間に生じる静電気力に基づき、前記操作者に触覚を提示する触覚提示装置の駆動方法であって、前記絶縁層の前記操作者が触れる接触面は、表面粗さRaが所定の範囲に設定されており、前記駆動部は、前記操作者に触覚を提示する領域に対応する電極を特定する処理と、前記特定した電極に、前記接触面の表面粗さRaに応じた電圧の電圧信号を印加する処理と、を実行する、ことを特徴とする。
本発明の触覚提示装置及び電子機器並びに触覚提示装置の駆動方法によれば、テクスチャ感を知覚しやすくし、かつ、電極に印加する電圧を効果的に低減することができる。
その理由は、触覚提示装置の接触面の表面粗さを所定の範囲に設定し、かつ、接触面の表面粗さとテクスチャ感を知覚可能な電圧には相関があることから、表面粗さに応じた電圧(表面粗さに対応する電圧以上の電圧)を電極に印加して駆動するからである。また、表面粗さが0.00μmのときの検出閾電圧と比較して、より低い検出閾電圧となるような表面粗さを接触面に持たせるからである。
本発明の第1の実施の形態に係る触覚提示装置の一例を示す平面視図である。 本発明の第1の実施の形態に係る触覚提示装置の断面図であり、図1のA−A線における断面を示している。 本発明の第1の実施の形態に係る触覚提示装置の他の例を示す平面視図である。 本発明の第1の実施の形態に係る触覚提示装置の断面図であり、図3のB−B線における断面を示している。 本発明の第1の実施の形態に係る触覚提示装置の評価方法を説明する図である。 本発明の第1の実施の形態に係る触覚提示装置の評価結果を示すテーブルである。 本発明の第1の実施の形態に係る触覚提示装置の表面粗さと検出閾電圧との関係を示すグラフである。 本発明の第1の実施の形態に係る触覚提示装置における表面粗さと検出閾電圧と操作者が知覚する触覚との関係を示すテーブルである。 本発明の第1の実施の形態に係る触覚提示装置に関して、被験者4名の評価結果を示すテーブルである。 本発明の第1の実施の形態に係る触覚提示装置の表面粗さと検出閾電圧との関係を、30代前半男性を対象に調査した結果を示すグラフである。 本発明の第1の実施の形態に係る触覚提示装置の表面粗さと検出閾電圧との関係を、30代後半男性を対象に調査した結果を示すグラフである。 本発明の第1の実施の形態に係る触覚提示装置の表面粗さと検出閾電圧との関係を、20代女性を対象に調査した結果を示すグラフである。 本発明の第2の実施の形態に係る触覚提示装置の一例を示す平面視図である。 本発明の第2の実施の形態に係る触覚提示装置の他の例を示す平面視図である。 本発明の第1の実施例に係る触覚提示装置の構成を示す説明図である。 図15に示した触覚提示装置の駆動方法を説明する図である。 図15及び図16で示した触覚提示装置の断面モデルを示す模式図である。 本発明の第2の実施例に係る触覚提示装置の電極の具体的な形状を示す平面視図である。 図18のAにおけるX電極及びY電極の接続部分の構造を拡大した平面視図である。 図18のAにおけるX電極及びY電極の接続部分の構造を示す断面図であり、図19のC−C線における断面を示している。 本発明の第3の実施例に係る触覚提示装置のX電極駆動回路の詳細な構成を示す説明図である。 図21に示したX電極駆動回路の動作を説明するためのタイミングチャート図である。 本発明の第4の実施例に係る触覚提示装置を備える電子機器の一例を示す斜視図である。 本発明の第4の実施例に係る触覚提示装置を備える移動体の一例を示す斜視図である。 本発明の第1の実施の形態の変形例に係る触覚提示装置の断面図である。
背景技術で示したように、電気振動現象を利用した触覚提示装置が提案されているが、従来の触覚提示装置の接触面は平坦であり、平坦な接触面では指が接触面に密着して滑りにくいため、静電気力によるテクスチャ感を知覚しにくい。テクスチャ感を知覚しやすくするためには、100V以上の高い電圧を電極に印加しなければならず、駆動回路が複雑になると共に、電極を保護する絶縁膜が摩耗等で万一失われた場合に操作者の指に適切でない電流が流れてしまうため、装置の安全性が確保できないという問題があった。
この問題に対して、本願発明者は、接触面の形態が異なる各種触覚提示装置を作成し、各々の触覚提示装置において、操作者がテクスチャ感を知覚可能な最低電圧、即ち検出閾電圧を調べた。その結果、接触面にアンチグレア処理を施す(絶縁層の接触面を粗くする)と、提示された触覚が極めて分かりやすくなること、即ち、提示された触覚刺激を操作者が極めて知覚しやすくなること(第1の知見)を見出した。
本願発明者は、さらに実験を進めた結果、アンチグレア処理によって接触面の表面粗さが適度に大きくなることが、操作者が触覚刺激を知覚しやすくなる要因であることが分かった。即ち、接触面の表面粗さとその表面粗さにおいて操作者がテクスチャ感を知覚可能な最低電圧である検出閾電圧との間に特殊な相関があること(第2の知見)を見出した。なお、本明細書で使用する表面粗さとは、JIS B 0031、JIS B 0061の付属書等で定義されている算術平均粗さ(必要に応じて表面粗さRaと表記する。)である。この算術平均粗さは、粗さ曲線を中心線で折り返し、その粗さ曲線と中心線とによって得られた面積を長さLで割った値をマイクロメートル(μm)で表したものである。なお、上記算術平均粗さに代えて、JIS B 0601の付属書等で定義されている最大高さ(表面粗さRy)や十点平均粗さ(表面粗さRz)などを利用することも可能である。この最大高さは、粗さ曲線から基準長さだけを抜き取り、抜き取った部分の山頂線と谷底線との間隔をマイクロメートル(μm)で表したものである。また、十点平均粗さは、粗さ曲線から基準長さだけを抜き取り、抜き取った部分の、最も高い山頂から5番目までの山頂の標高の絶対値の平均値と、最も低い谷底から5番目までの谷底の標高の絶対値の平均値との和をマイクロメートル(μm)で表したものである。
そして、第1の知見に基づいて、接触面の表面粗さを適切な範囲に設定し、第2の知見に基づいて、表面粗さに応じた電圧(即ち、上記特殊な相関から必然的に導き出される、表面粗さに対応する検出閾電圧以上の電圧)を電極に印加する、若しくは、表面粗さが0.00μmのときの検出閾電圧と比較して、より低い検出閾電圧となるような表面粗さを接触面に持たせることにより、テクスチャ感を知覚しやすくし、なおかつ、電極に印加する電圧を効果的に低減させて、安全性の確保とテクスチャ感の触覚感度向上とを両立させることができることを見出した。
以下、本願発明者が第1の知見及び第2の知見を見出すに至った実験の内容について具体的に説明する。
[第1の実施形態]
以下の実験では、接触面が平坦なサンプルと接触面に各種表面粗さの微少な凹凸を形成したサンプルとを作成し、それらのサンプルに対して検出閾電圧を測定し、その検出閾電圧を比較検討した。
(サンプルの試作)
図1は、試作した触覚提示装置10のパネル10aの一例を示す平面視図である。触覚提示装置10の製作にあたり、ガラス等の透明絶縁性材料からなる支持基板上に、X軸と平行な方向(ここでは図の左右方向)に延在する複数のX電極(図ではX0〜X31の32本のX電極)と、Y軸と平行な方向(ここでは図の上下方向)に延在する複数のY電極(図ではY0〜Y51の52本のY電極)と、を形成した。このX電極及びY電極は、ITO(Indium Tin Oxide)で形成し、可視光で透明とした。また、X電極とY電極との間に絶縁層を形成し、X電極とY電極とが、その交差部において絶縁層により互いに絶縁されるようにした。さらに、X電極及びY電極の上層に別の絶縁層を形成した。この絶縁層16の表面が、操作者の指がタッチする接触面17となる。
図2に、図1のA−A線における断面図を示す。触覚提示装置10は、支持基板11上に、X電極12とY電極13とが交互に配置されており、X電極12とY電極13との間に絶縁層(図示せず)が形成されている。このX電極12とY電極13とが交差する部分の詳細な構造については後述する第2の実施例で説明する。X電極12及びY電極13を覆う絶縁層16はアクリル樹脂であり、その表面粗さRaは0.00μm(ほぼ平坦)であり、この絶縁層16の表面が接触面17となっている。このサンプルの構造や製造方法は、本願発明者の先願(特願2013−213009号)と同様であり、後述する実施例において詳細に記載する。
図3は、試作した他の触覚提示装置10のパネル10aの平面視図であり、図4は、図3のB−B線における断面図である。この触覚提示装置10は、図1及び図2に示す触覚提示装置10と共通する要素が多く、共通する要素の説明は省略する。主たる相違点は、図4に示すように、絶縁層16の更に上層に可視光に対する反射防止機能を備えたアンチグレア層(絶縁層)15が形成され、このアンチグレア層15の表面が接触面17となっていることである。このアンチグレア層15は、所定のサイズのシリカ等の絶縁性材料からなる粒子15aを分散させた、樹脂などの絶縁性の溶液状のコート層材料15bを絶縁層16の表面にスプレー塗布し、乾燥させ、硬化処理することで形成した。そして、コート層材料15bに対する粒子15aの含有割合やスプレー方法、粒子15aの材質、サイズ、形状、コート層材料15bの材質、粘度などを変えることで、アンチグレア層15の性状(表面粗さ)が異なる複数の触覚提示装置10を試作した。
(サンプルの評価)
図5に、試作した触覚提示装置10の評価方法の概要を示す。複数のX電極12及び複数のY電極13の内、Y20〜Y32の13本のY電極13に正弦波状の交流の電圧信号を印加し、残りのY電極13及び全てのX電極12をグランドに接続した。電圧信号の電圧振幅が十分に高い場合、接触面17を指でなぞる(接触面17上で指をスライドさせる)と、電圧信号を印加した領域(ハッチングを付加した領域)では、ざらざらとしたテクスチャ感を感じる。この状態からY電極13に印加する電圧信号の電圧振幅を徐々に下げて行き、電圧信号を印加した領域と他の領域とで触感の違いを区別できると思える最低の電圧を記録する。ここで記録する電圧は、正弦波状の交流の電圧信号のピークツーピークの値とした。この値は一般に正弦波状の交流の電圧信号の振幅とされる値の2倍の値である。この電圧が検出閾電圧であり、試作した複数の触覚提示装置10のそれぞれについて検出閾電圧を測定した。
図6に、試作した複数の触覚提示装置10の評価結果を示す。整理番号1のサンプルは、図1及び図2に示す、表面粗さRaが0.00μmのサンプル(接触面17が平坦なサンプル)であり、整理番号2から9のサンプルは、図3及び図4に示す、接触面17がアンチグレア層15で構成されたサンプルである。アンチグレア層15が無い接触面17が平坦なサンプル(整理番号1のサンプル)では、検出閾電圧の平均値は178.4Vであるが、アンチグレア層15を設けたサンプル(整理番号2から9のサンプル)では、検出閾電圧は67.8V〜127.6Vの範囲であり、アンチグレア層15は駆動電圧の低減化に有効であることが判明した。
このことから、電極に電圧信号を印加しない領域の触感、即ち触覚提示装置10の接触面17そのものが持つ素の状態の触感が、電極に電圧信号を印加することで提示される触覚の感じやすさに大きく影響することが分かった。言い換えると、電極に電圧信号を印加しないバックグランドの領域の触感が、電極に電圧信号を印加することで提示される触覚の感じやすさに大きく影響することが分かった。
例えば、整理番号1のサンプルにおける、電極に電圧信号を印加しない領域は、指と接触面との接触面積が相対的に大きくなることにより指が接触面に粘り着く感覚(英語で表記するとSticky)であり、電極に電圧信号を印加した領域の触感も同様にStickyであり、両者の触感の違いは区別しにくい。一方、アンチグレア層15を設けた、整理番号2〜9のサンプルは、触覚提示装置10の接触面17そのものが持つ素の状態の触感がさらさらした触感であり、素の状態の触感がさらさらしていると、電極に電圧信号を印加した領域のザラザラ感を感じやすい。
このような現象が生じる理由として、次の2つが考えられる。
(1)電極に電圧信号を印加していない領域から電極に電圧信号を印加した領域に渡って連続して指をスライドさせたとき、バックグランドのさらさらとした触感は、ザラザラとした触感を際立たせる。
(2)素の状態がStickyな接触面17の下層にある電極と、さらさらとした触感を持つ接触面17の下層にある電極に同じ電圧信号を印加し、同じように静電気力による引力を変化させた場合であっても、さらさらとした触感を持つ接触面17の方がザラザラ感を感じやすい。素の状態がStickyな接触面17では、操作者が接触面17上で指をスライドさせている最中でも意図せずにスライドが止まってしまう。このため、操作者の指と絶縁層表面との間に働く垂直抗力により生じる摩擦力は、静止摩擦係数が寄与する成分を含む。一方、素の状態がさらさらとした触感を持つ接触面17では、接触面17上で指がスムーズにスライドするため、操作者の指と絶縁層表面との間に働く垂直抗力により生じる摩擦力には静止摩擦係数が寄与する成分はなく、動摩擦係数が寄与する成分が支配的である。
また、図6のテーブルに示した、アンチグレア層15を設けた整理番号2〜9のサンプルで得られた検出閾電圧を詳細に考察すると、表面粗さRaの大きさと検出閾電圧との間に特殊な相関があることが分かる。即ち、表面粗さRaが0.0206μmよりも大きくなると、検出閾電圧は徐々に小さくなり、表面粗さRaが0.0503μmのサンプル(整理番号4のサンプル)で検出閾電圧は最小となる。更に、表面粗さRaが0.0503μmよりも大きくなると、検出閾電圧は徐々に大きくなる。このことより、検出閾電圧はアンチグレア層15の有無で変化するというより、接触面17の表面粗さRaに依存して変化し、検出閾電圧には極小値が存在することが見出された。
図7は、図6に示した全てのサンプルの表面粗さRaと検出閾電圧との関係を示したグラフである。表面粗さRaを0.01μmよりも大きくすることで検出閾電圧が低減する効果が得られることが分かる。また、表面粗さRaが0.05μmよりも大きくなると検出閾電圧が上昇する傾向であることが分かる。検出閾電圧が上昇する現象が生じる理由は、表面粗さRaが大きくなりすぎると、今度は接触面17の素の状態の表面の触感がザラザラしてきて、提示する触感のザラザラ感との区別がつきにくくなるためと考えられる。また、表面粗さRaが大きくなると、指が接触面17の凹凸に追従して変形し、接触面17の凸部に引っかかって滑りにくくなり、触感の変化が感じにくくなるためと考えられる。
図7のグラフを参照すると、整理番号1の触覚提示装置より低い検出閾電圧の触覚提示装置、例えば検知閾電圧が150V以下の触覚提示装置を設計したい場合、表面粗さRaを0.01μm〜0.3μmの範囲に設定することが望ましい。また、整理番号1の触覚提示装置の検知閾電圧である178.4Vより低い検知閾電圧を有する触覚提示装置を設計したい場合、表面粗さRaを0.01μm〜0.4μmの範囲に設定することが望ましい。
表面粗さRaと検出閾電圧と操作者が感じる触感との関係をさらに調査した結果を図8に示す。粒子15aを含んだ溶液状のコート層材料15bを用いて形成するアンチグレア層15では表面粗さRaをあまり大きくすることができないことから、図8では、アンチグレア層15を設けずに、絶縁層16として表面粗さRaが0.4μm〜3.2μmの部材を使用したサンプル(図のKB−115)についても操作者が感じる触感を記載した。
電極に印加する電圧信号の電圧振幅がゼロの条件において、表面粗さRaが0.00μmの時はStickyであり、表面粗さRaが0.0206μmから0.4μmの間ではさらさら感が感じられ、表面粗さRaが0.8μm以上の場合、ザラザラ感が感じられた。表面粗さRaが0.8μm以上の場合、指でなぞった感じがザラザラであることに加えて、摩擦力も大きく感じられることから、検出閾電圧を低減する効果は見込めない。また、表面粗さRaが0.8μmを超えると素の状態の触感の印象が悪い。従って、表面粗さRaは0.8μm未満に設定することが望ましい。
また、図8において表面粗さRaが0.0564μmのサンプル(整理番号5のサンプル)においてもStickyなことがあることが記録されている。Stickyな触感は環境温度や環境湿度、指先の水分量、指の押圧力などにより生じることがある。このようなStickyな触感が生じるとたちまち検出閾電圧が高くなることから、表面粗さRaは0.05μmよりも大きく設定することが望ましい。
以上の実験結果及び図7のグラフから、テクスチャ感を知覚しやすい状態を維持しつつ、検出閾電圧を効果的に低減するためには、表面粗さRaは、0.01μmよりも大きく、0.8μm未満の範囲、より好ましくは0.05μmよりも大きく、0.8μm未満の範囲に設定することが重要である。この範囲は、表面粗さRaは、操作者が触れる絶縁層の接触面と操作者の指との接触面積が相対的に大きくなることにより操作者の指が接触面に粘り着く状態よりも粗く、操作者の指が前記接触面の凹凸に追従して変形する状態よりも細かい範囲と言い換えることもできる。また、接触面17の表面粗さRaと検出閾電圧との間に特殊な相関があることから、電極に印加する信号電圧の電圧振幅は、接触面17の表面粗さRaに対応する電圧とすることが重要である。
そこで、本発明の一実施の形態では、接触面17の表面粗さRaが上記の所定の範囲となるようにアンチグレア層15を形成し、接触面17の表面粗さRaに応じた電圧を電極に印加、好ましくは、接触面17の表面粗さRaに対応する検出閾電圧以上の電圧(上限は特に限定されないが、印加電圧を低減して安全性を確保する観点から、従来の装置の印加電圧以下の電圧)を電極に印加して触覚提示装置10を駆動するように制御する。これにより、安全性の確保とテクスチャ感の知覚感度向上とを両立させる。
なお、接触面17の表面粗さRaが上記所定の範囲であり、かつ、接触面17の表面粗さに応じた電圧(接触面17の表面粗さRaに対応する検出閾電圧以上の電圧)で駆動する限りにおいて、触覚提示装置10の構成や制御方法は適宜変更可能である。
例えば、本実施形態では、最上層に、粒子15aを含んだコート層材料15bを用いて形成したアンチグレア層15を配置したが、接触面17に表面粗さが上記所定の範囲の凹凸が形成されていればよく、アンチグレア層15を省略することもできる。
また、X電極12及びY電極13の上層の絶縁層16をSiOなどで形成し、フッ酸などを用いたウェットエッチングによって絶縁層16を不均一にエッチングすることにより、接触面17に所望の表面粗さの凹凸を形成することができる。また、絶縁膜16の表面をサンドブラストなどによって部分的に削り取ることによって、接触面17に所望の表面粗さの凹凸を形成することもできる。
また、本実施形態では、X電極12及びY電極13の上層に絶縁層16を形成したが、コート層材料15bがある程度の粘度を有し、コート層材料15bが薄い部分でもある程度の厚さを確保できる場合は、図25に示すように、絶縁層16を省略し、X電極12及びY電極13の上層に直接アンチグレア層15を形成してもよい。
また、図4では、粒子15aを均一な径の球体として記載したが、表面粗さが上記所定の範囲内であれば、不均一な径の球体を混合してもよいし、球体が扁平した形状や円柱状、部分的に尖った形状などとしてもよい。また、図4では、接触面17をなだらかな凹凸にしているが、凸部の先端が尖った形状としてもよい。
また、樹脂シートを溶液中にくぐらせ、当該樹脂シート表面にアンチグレア層を形成し、当該樹脂シートを絶縁層16に糊付けすることで、接触面にアンチグレア層を形成することもできる。
本願発明者は、前述の図5乃至図8を用いて説明したサンプルの評価と同じ評価を、被験者を追加して実施した。前述の図6乃至図8で示した検出閾電圧および信号電圧がゼロの時の感触は40代男性を被験者としたときの結果である。追加した被験者は、30代前半男性、30代後半男性、20代女性の3名である。
図9に、40代男性および追加した被験者3名、計4名の検出閾電圧を示す。4名全員に共通する特徴として、アンチグレア層15が無い接触面17が平坦なサンプル(整理番号1のサンプル)の検出閾電圧が、他のどのアンチグレア層15を設けたサンプル(整理番号2から9)の検出閾電圧よりも高い値であった点が挙げられる。この結果から、アンチグレア層15が駆動電圧の低減化に有効であることが判明した。
また、表面粗さRaが0.0206μmよりも大きくなると、検出閾電圧は徐々に小さくなり、40代男性と30代前半男性は表面粗さRaが0.0503μmの整理番号4のサンプル、30代後半男性は表面粗さRaが0.093μmの整理番号6のサンプル、20代女性は表面粗さRaが0.1375μmの整理番号7のサンプルで検出閾電圧はそれぞれ最小となった。更に、各被験者で最小の検出閾電圧が得られた表面粗さよりもRaが大きくなると、検出閾電圧は徐々に大きくなる。以上の結果より、全ての被験者で検出閾電圧は表面粗さRaに依存して変化し、極小値が存在することが見出された。
追加した被験者3名の、表面粗さRaと検出閾電圧との関係をプロットし、近似曲線を付与したグラフを図10、図11、図12にそれぞれ示す。図10が30代前半男性、図11が30代後半男性、図12が20代女性の検出閾電圧である。これらの図より、表面粗さRaを0.01μmよりも大きくすることで検出閾電圧を低減する効果が得られること、また検出閾電圧が最低になる表面粗さよりもRaが大きい領域にて、検出閾電圧が上昇する傾向が見られることが分かる。この傾向は図7で示した、40代男性の表面粗さRaと検出閾電圧との関係でも見られた。つまり、4名の被験者全員の評価結果に対して同じ傾向が確認できた。
図7および図10〜図12の近似曲線を参照すると、検出閾電圧が最小となる表面粗さRaは、順に0.05μm、0.03μm、0.075μm、0.08μmであり、4名の検出閾電圧の間には個人差が認められるものの、検出閾電圧を低減させるためには、表面粗さRaを0.03μmよりも大きくすることが望ましい。
図8を参照して説明した信号電圧がゼロの時の感触に関し、40代男性および追加した被験者3名、計4名の評価結果は次の通りであった。被験者3名は表面粗さRaが0.4μmでさらさら感を感じ、表面粗さRaが0.8μm以上の場合でザラザラ感を感じた。残りの被験者1名は、表面粗さRaが0.4μmでさらさら感を感じ、表面粗さRaが0.8μmでさらさら感とザラザラ感の両方を感じ、表面粗さRaが1.6μm以上でザラザラ感を感じた。これらの結果から、多くの被験者は表面粗さRaが0.8μmを超えるとザラザラ感を感じる。前述のとおり、表面粗さRaが0.8μm以上の場合、指でなぞった感じがザラザラであることに加えて、摩擦力も大きく感じられることから、検出閾電圧を低減する効果は見込めない。加えて、触感の印象が悪い。従って、表面粗さRaは0.8μm未満に設定することが望ましい。
4人の被験者に対する上記評価結果から、テクスチャ感を知覚しやすい状態を維持しつつ、検出閾電圧を効果的に低減するために好適な表面粗さRaは、0.01μmよりも大きく、0.8μm未満の範囲、より好ましくは0.03μmよりも大きく、0.8μm未満の範囲であることが分かった。
[第2の実施形態]
前記した第1の実施形態で記載した触覚提示装置のパネルは、支持基板と、当該支持基板上に形成された所定の方向に延在する複数の電極と、前記複数の電極を覆う絶縁層と、で構成されていたが、電極が複数であることは必須ではない。そこで、本実施形態では電極が一つの触覚提示装置を試作した。
まず、本願発明者は、図13に示すような触覚提示装置10のパネル10aを試作した。この触覚提示装置10のパネル10aは、支持基板11と、当該支持基板11上に形成された一つの電極11aと、当該電極11aに対して電圧信号を出力する駆動部19と、前記電極11aを覆う絶縁層16と、で構成され、この絶縁層16の表面が接触面17とされる。
また、本願発明者は、図14に示すような触覚提示装置10のパネル10aを試作した。この触覚提示装置10のパネル10aは、支持基板11と、当該支持基板11上に形成された一つの電極11aと、当該電極11aに対して電圧信号を出力する駆動部19と、前記電極11aを覆う絶縁層16と、絶縁層16の更に上層に可視光に対する反射防止機能を備えたアンチグレア層15とで構成され、このアンチグレア層15の表面が接触面17とされる。アンチグレア層15の性状(表面粗さ)が異なる複数の触覚提示装置10を試作した。
これらパネル10aを次の通り評価した。駆動部19が出力する電圧信号の電圧振幅が十分に高い場合、接触面17を指でなぞる(接触面上で指をスライドさせる)とざらざらとしたテクスチャ感を感じる。この状態から電極11aに印加する電圧信号の電圧振幅を徐々に下げて行き、電極11aに印加する電圧信号の振幅が0Vのときとで触感の違いを区別できると思える最低の電圧を記録する。この電圧が検出閾電圧であり、試作した複数の触覚提示装置10のそれぞれについて検出閾電圧を測定した。
その結果は、図7を参照して説明した結果と同様であった。即ち、接触面にアンチグレア処理を施す(絶縁層の接触面を粗くする)と、提示された触覚が極めて分かりやすくなった。つまり、提示された触覚刺激を操作者が極めて知覚しやすくなった。また、アンチグレア処理によって接触面の表面粗さが適度に大きくなることで、操作者が触覚刺激を知覚しやすくなった。即ち、接触面の表面粗さとその表面粗さにおいて操作者がテクスチャ感を知覚可能な最低電圧である検出閾電圧との間に特殊な相関がみられた。より具体的には、表面粗さRaを0.01μmよりも大きくすることで検出閾電圧が低減する効果が得られることが分かった。また、検出閾電圧の極小値は表面粗さRaが0.05μm付近であることが分かった。また、表面粗さRaが0.01μmより大きく、0.2392μmより小さい範囲の検出閾電圧は表面粗さRaが0.00μmの場合の検出閾電圧より小さいことが分かった。
このように、表面粗さを適度に大きくすることで、操作者が触覚刺激を知覚しやすくなる理由は、次の(1)〜(3)の一連の記載の通りである。この理由は第1の実施形態において操作者が触覚刺激を知覚しやすくなる理由と同様である。
(1)表面粗さが小さく平坦な場合:接触面と操作者の指の表皮とが密着し、接触面と表皮との間に分子間力が強く働く。このとき、適度な湿り気があると水素結合が生じるため分子間力は強くなる。操作者が指を動かした時に表皮と接触面との間に働く摩擦力の要因である垂直抗力について考えると、垂直抗力の一つの要素として静電気力、他の要素として分子間力がある。この分子間力が大きいことで、静電気力の割合が小さくなり、静電気力を制御し変動させても垂直抗力の変動割合は小さい。このため、摩擦の変動割合は小さく、操作者は触覚刺激を知覚しにくい。
(2)表面粗さが(1)よりも大きく、適度な粗さの場合:表皮と接触面との間に部分的に空隙が生じ、この空隙のために接触面と表皮との間にはたらく分子間力は急激に減少する。摩擦力の要因である垂直抗力の一つの要素として静電気力、他の要素として分子間力があるが、静電気力の割合が大きくなることで、静電気力の強弱が摩擦の変動に現れやすい。
(3)表面の粗さが(2)よりもさらに粗い場合:操作者が指を動かした時に表皮が接触面の凹凸に追従して変形するようになり、この変形に伴う摩擦力が大きくなる。この摩擦力が大きいため、静電気力の変動で変化する摩擦力の変動割合が小さい。このため、テクスチャ感を感じにくくなる。
以下、上記構成の触覚提示装置10(特に第1の実施形態の触覚提示装置10)の具体的な構造及び駆動方法並びに利用形態の一例について説明する。
まず、本発明の第1の実施例について、図15乃至図18を参照して説明する。本実施例では、触覚提示装置10のX電極及びY電極に印加する電圧信号の周波数の具体例について説明する。
図15は、本発明の第1の実施例に係る触覚提示装置10の構成を示す説明図である。触覚提示装置10のパネル部分には、平面状の支持基板11上に、X軸方向に延在する複数のX電極12と、X軸方向に直交するY方向に延在する複数のY電極13と、が形成されている。
X電極12とY電極13とは、その交差部で絶縁層(図示せず)を介して交差しており、この絶縁層により両者の電気的な絶縁性が保たれている。また、X電極12及びY電極13の上には絶縁層及び/又はアンチグレア層(図示せず)が形成されており、この絶縁層及び/又はアンチグレア層により、触覚提示装置10の接触面を指で触った時の、X電極12と指、Y電極13と指との電気的な絶縁性が保たれている。
X電極12の各々はX電極駆動回路(駆動部)20に接続され、Y電極13の各々はY電極駆動回路(駆動部)30に接続され、X電極駆動回路20及びY駆動電極回路30は制御部40に接続されている。制御部40は、外部(例えば、当該触覚提示装置10が搭載される電子機器の動作を制御するプロセッサ)から入力された情報に基づいて、操作者に触覚を提示する領域に対応する電極を特定し、特定した電極を駆動するための制御信号をX電極駆動回路20及びY駆動電極回路30に出力し、X電極駆動回路20及びY駆動電極回路30は、制御信号に基づいて、絶縁層又はアンチグレア層の表面粗さに応じた電圧振幅の電圧信号をX電極12及びY電極13に印加する。この構成によって、触覚提示装置10は、所望の領域にテクスチャ感を提示することが可能となる。なお、請求の範囲では、制御信号を出力する制御部40と制御信号に基づいて電極に電圧を印加する駆動電極回路とをまとめて、駆動部と称している。
図16は、図15に示した触覚提示装置10の駆動方法を示す説明図である。ここで、各々のX電極12及びY電極13は、電極毎に異なる記号によって区別するものとする。即ち、図16に示す例では、支持基板11上に28本のX電極12と46本のY電極13とが形成されているが、各々のX電極12を下から上方向にX00〜X27とし、各々のY電極13を右から左方向にY03〜Y48とする。また、テクスチャ感を提示しようとする領域を対象領域50とする。対象領域50は、X方向はX11〜X14の範囲、Y方向はY24〜Y27の範囲である。制御部40は、外部から与えられた対象領域50に対する情報に基づいて、X電極駆動回路20及びY駆動電極回路30に制御信号を与える。
この制御信号を受けて、X電極駆動回路20はX11〜X14に第1の周波数(ここでは周波数f=1000Hz)の交流電圧信号を印加し、Y駆動電極回路30はY24〜Y27に第2の周波数(周波数f=1240Hz)の交流電圧信号を印加する。また、図16では、X電極駆動回路20及びY駆動電極回路30は、上記に該当しないX電極12及びY電極13は、電極同士の容量結合によって電圧が誘起されることを防ぐために接地又は直流電圧を印加している。
上記構成では、X11〜X14のX電極12上の領域から対象領域50を除いた領域では電極に印加している電圧信号に応じたテクスチャ感は提示されない(素の状態のテクスチャ感しか提示されない)。また、Y24〜Y27のY電極13上の領域から対象領域50を除いた領域でも電極に印加している電圧信号に応じたテクスチャ感は提示されない(素の状態のテクスチャ感しか提示されない)。このことから、人間の指は、電極に印加する電圧信号の周波数が1000Hzや1240Hzの場合には電圧信号に応じたテクスチャ感を知覚しない性質であることを確認した。
一方、対象領域50では、f=1000Hzの電圧信号が印加されたX電極12とf=1240Hzの電圧信号が印加されたY電極13とが互いに隣接しているので、波動の分野で知られるうなりが生じており、このうなりによりテクスチャ感が提示されている。そこで、本実施例では、各々の電極に印加する電圧信号の周波数では電圧信号に応じたテクスチャ感が提示されず、うなりによって規定される周波数で電圧信号に応じたテクスチャ感が提示されるように、各々の電極に印加する電圧信号の周波数を設定して、対象領域50を触覚で判別できるようにする。
図17は、図15及び図16で示した触覚提示装置10の断面モデルを示す模式図である。前述の通り、複数のX電極12と複数のY電極13とは、平面状の支持基板11上で隣り合うように配置されている。そして、X電極12及びY電極13のうち、対象領域50内に配置された2つのX電極12と2つのY電極13とに対向する位置に、指をモデル化した電極51が一つ配置されている。人体にはある程度の接地効果があるため、この電極51は抵抗値Rを有する抵抗52を介して接地されているものとしてモデル化することができる。
ここで、対象領域50内のX電極12に、V=Acos(2πft)で表される電圧信号Vを印加する。電圧信号Vの振幅はA、周波数はfであり、tは時刻を表す。また、対象領域50内のY電極13に、V=Acos(2πft)で表される電圧信号Vを印加する。電圧信号Vの振幅は電圧信号Vの振幅と等しいA、周波数はfである。
電極51と対象領域50内のX電極12の各々との間は、静電容量Cを有する平行平板コンデンサとしてモデル化することができる。また、電極51と対象領域50内のY電極13の各々との間は、静電容量Cを有する平行平板コンデンサとしてモデル化することができる。このとき、電極51に現れる電圧Vは、抵抗値Rが十分高いとき、式1で表される。
Figure 0006693641
1つのX電極12と指をモデル化した電極51との間に働く静電気力をFe1とすると、Fe1は、平行平板コンデンサの電極間に働く力として知られている公式を用いて、式2で表される。ここで、εは誘電率、Sは平行平板コンデンサの電極面積である。
Figure 0006693641
同様に、1つのY電極13と指をモデル化した電極51との間に働く静電気力をFe2とすると、Fe2は、式3で表される。
Figure 0006693641
静電気力Fe1と静電気力Fe2とを人の指先で区別できない程度に、電極の間隔が細かい場合は、Fe1及びFe2の各々の力を合計した力がマクロ的に指に働くものとみなすことができる。指をモデル化した電極51に働くすべての力の合計Fは、図17よりF=2(Fe1+Fe2)であるから、前記のV、V、式2及び式3を用いると、式4で表される。
Figure 0006693641
式4より、モデル化した電極51に働くすべての力の合計Fは、値域が[0、A/(εS)]で周波数が(f+f)である周期関数に、値域が[0、2]で、周波数が(f−f)の絶対値である周期関数を乗算して得られるものであることがわかる。その包絡線の周波数は(f−f)の絶対値となる。
本実施例では、周波数f=1000Hz、周波数f=1240Hzとしているため、その差の絶対値は240Hzとなる。このため、指に働く引力Fは、式4に示すように240Hzで変化する。従って、人間が触覚提示装置10の接触面17を指でなぞると、240Hzの周波数で摩擦力の変化が生じる。240Hzは人間の皮膚の機械受容器が感度を有する周波数であるので、テクスチャ感の知覚をもたらすことができる。
さらに、支持基板11上の全てのX電極12に周波数fの電圧信号を印加し、全てのY電極13に周波数fの電圧信号を印加し、fとfとの差の絶対値に対するテクスチャ感の知覚の有無を実験的に確認した。その結果、fとfとの差の絶対値が10Hzよりも大きく1000Hz未満の場合にテクスチャ感が知覚され、fとfとの差の絶対値が10Hz以下または1000Hz以上の場合、テクスチャ感が知覚されないことが確認された。
また、X電極12とY電極13に同じ電圧信号を印加し、その電圧信号の周波数を変化させてテクスチャ感の知覚の有無を実験的に確認した。その結果、電圧信号の周波数が5Hzよりも大きく500Hz未満の範囲内にある場合にテクスチャ感が知覚され、電圧信号の周波数がこの範囲内にない場合にはテクスチャ感が知覚されないことが確認された。
これらの結果から、X電極12に印加する電圧信号の周波数をfとし、Y電極13に印加する電圧信号の周波数をfとした場合、f及びfを共に500Hz以上とし、fとfとの差の絶対値が10Hzよりも大きく1000Hz未満となるようにfとfを設定すれば、周波数fの電圧信号を与えたX電極12と周波数fの電圧信号を与えたY電極13とが交差する領域に電圧信号に応じたテクスチャ感を提示し、他の領域には電圧信号に応じたテクスチャ感を提示しない(接触面17の素の状態でのテクスチャ感しか提示しない)触覚提示装置10が実現可能となる。
なお、X電極12及びY電極13に印加する電圧信号の周波数は上記記載に限定されず、接触面17の表面粗さや検出閾電圧などに応じて適宜変更可能である。また、上記では、X電極12及びY電極13に正弦波状の交流の電圧信号を印加したが、断続的にオンとオフが繰り返されるパルス状の電圧信号を印加することも可能である。
次に、本発明の第2の実施例について、図18乃至図20を参照して説明する。本実施例では、触覚提示装置10のX電極及びY電極の具体的形状及び触覚提示装置10の製造方法について説明する。
図18は、図15で示した触覚提示装置10の支持基板11、X電極12、Y電極13の具体的な形状を示す平面視図である。図18では、X電極12及びその配線を破線で示し、Y電極13及びその配線を実線で示している。
X電極12は、複数の菱形の電極が接続部を介して数珠状に連結された形状である。即ち、一つのX電極12は、左右に隣り合う菱形の電極を接続部により電気的に接続した形状である。このX電極12は、Y軸方向に2mmの間隔で配置されている。即ちX電極12同士のピッチは2mmである。Y電極13も同様に、複数の菱形の電極が接続部を介して数珠状に連結された形状である。即ち、一つのY電極13は、上下に隣り合う菱形の電極を接続部により電気的に接続した形状である。このY電極13は、X軸方向に2mmの間隔で配置されている。即ちY電極同士のピッチは2mmである。
X電極12及びY電極13は、平面視した時に、菱形の電極の接続部同士が絶縁膜を介して重なり合うように形成されている。また、X電極12の菱形の部分の主要部とY電極13の菱形の部分の主要部とは重ならないように形成されている。つまり、X電極12の菱形の部分の主要部とY電極13の菱形の部分の主要部とが、平面視した時に隣り合う形状となっている。
図19及び図20は、図18で示したX電極12及びY電極13それぞれの接続部の構造を拡大した図であり、図19は、図18のブロックAとして示した電極の相互間の接続部を示す平面視図、図20は図19のC−C線における断面図である。
X電極12は、菱形の電極がブリッジ電極12aにより相互に接続されて構成されている。また、Y電極13も、菱形の電極がこれと同一の材料による接続部13aにより相互に接続されて構成されている。ブリッジ電極12aとY電極13の接続部13aとは、絶縁層14によって絶縁されている。
図20を参照して、X電極12及びY電極13の接続部分の断面構造と製造手順について説明する。まず、ガラス等の透明絶縁性材料からなる支持基板11上に、ブリッジ電極12aをITOなどの透明導電性材料を用いて形成する。
次に、ブリッジ電極12aの上に絶縁層14を有機材料で形成する。有機材料で形成することによって、絶縁層14の膜厚を厚くすることができ、X電極12とY電極13との間の交差部に形成される本来不要な結合容量を小さくすることができる。この絶縁層14は、Y電極13の接続部13aとブリッジ電極12aとを絶縁するように、Y軸方向(図の奥行き方向)においてブリッジ電極12aを覆い、ブリッジ電極12aとX電極12の菱形部とが接触するように、X軸方向(図の左右方向)においてブリッジ電極12aの端部を覆わない形状に形成される。次に、X電極12、Y電極13、接続部13aとその他の配線及び端子18をITOなどの透明導電性材料を用いて一括して形成する。
次に、絶縁層16を有機材料で成膜し、その上に、所定のサイズのシリカ等からなる粒子15aを含んだ溶液状のコート層材料15bをスプレー塗布し、乾燥させてアンチグレア層15を形成する。その際、コート層材料15bに対する粒子15aの含有割合やスプレー方法、粒子15aの材質、サイズ、形状、コート層材料15bの材質、粘度などを変えて、アンチグレア層15の表面粗さRaが0.01μm(好ましくは0.05μm)よりも大きく、0.8μm未満の範囲になるようにする。その後、端子18部分にコンタクトホールを形成する。
支持基板11に形成された複数の端子18は、X電極12又はY電極13と配線により接続される。そして、端子18にフレキシブルプリント基板(FPC:Flexible Printed Circuit)の一端を、異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)を介して貼り付けて、FPCの他端をX電極駆動回路20及びY駆動電極回路30が実装されたプリント基板に接続させる。
以上の工程によって、図18乃至図20に示した構造の触覚提示装置10を製造することができる。なお、上述した触覚提示装置10のX電極12及びY電極13の形状や触覚提示装置10の製造方法は一例であり、適宜変更可能である。
次に、本発明の第3の実施例について、図21及び図22を参照して説明する。本実施例では、触覚提示装置10の電極駆動回路の具体的構成及びその動作方法について説明する。
図21は、図15で示した触覚提示装置10のX電極駆動回路20の詳細な構成を示す図である。Y駆動電極回路30もX電極駆動回路20と同一の構成を備えているので、ここではX電極駆動回路20の構成についてのみ説明することとする。
X電極駆動回路20は、入力端子として、データ入力端子21a、クロック入力端子21b、スタートパルス入力端子21cを備える。これらの入力端子は制御部40と接続され、この制御部40が生成する制御信号を受ける。
また、X電極駆動回路20は、出力端子としてX電極12に印加する電圧信号を出力する複数の出力端子22を備える。図21に示す例では、出力端子22の数は50個であり、これらをそれぞれA0〜A49ということにする。
また、X電極駆動回路20は、これらの入出力端子に加え、周波数fの交流電圧を生成する交流電圧生成部23a、周波数fの交流電圧を生成する交流電圧生成部23b、周波数fの交流電圧を生成する交流電圧生成部23cを有する。周波数f、f、fは、各々1000Hz、1240Hz、3000Hzである。
また、X電極駆動回路20は、50ビットのシフトレジスタ24を有する。シフトレジスタ24は50個の出力端子(Q0〜Q49)を持ち、それらの出力は各々2ビットデータレジスタ25に接続されている。各々の2ビットデータレジスタ25は、データ入力端子21aとバス接続されている。
各々の2ビットデータレジスタ25からの出力信号は、2入力4出力デコーダ26に接続されている。2入力4出力デコーダ26は、入力された2ビットの信号を入力とし、この入力信号に応じて、4つの出力端子のうちのいずれか1つにハイレベルの電圧信号を出力する。入力された2ビットの信号とハイレベルの電圧信号が出力される出力端子との間には1対1の関係がある。
2入力4出力デコーダ26からの出力端子のうちの1つは本実施例では使用せず、残る3つの出力端子の各々にスイッチトランジスタ27のゲート電極が接続される。これら3つの出力端子の各々に接続されたスイッチトランジスタ27をSW1〜SW3という。
スイッチトランジスタ27の出力側の端子は共に増幅器28の入力に接続される。スイッチトランジスタ27のSW1〜SW3の入力側の端子は、各々交流電圧生成部23a〜23cの出力端子に接続される。即ち、SW1〜SW3の各々の入力側の端子に、各々周波数f、f、fの交流電圧が入力される。2入力4出力デコーダ26は、これらの周波数のうち増幅器28に出力する交流電圧を、2ビットデータレジスタ25からの出力に応じて選択的に切り替える機能を果たしている。
そして、増幅器28によって増幅された交流電圧が、出力端子22から各々のX電極12に対して出力されることとなる。即ち、X電極駆動回路20は、制御部40からデータ入力端子21aを通じて入力された信号に応じて、周波数f、f、fのうちのいずれかの交流電圧信号を選択し、出力端子22を通じてX電極12に対して出力する回路としての機能を果たす。
図22は、図21で示したX電極駆動回路20の動作を示すタイミングチャート図である。図中の「CLK」は、クロック入力端子21bを通じて制御部40から入力されるクロック波形電圧である。「D[1:0]」は、データ入力端子21aを通じて制御部40から入力される2ビットのデータ信号である。「ST」は、スタートパルス入力端子21cを通じて制御部40から入力されるスタートパルス波形電圧である。
ここで、データ入力端子21aを通じて制御部40から入力されるD[1:0]は2進数表記であるので、「00」、「01」、「10」、「11」の4通りの値を取り得る。シフトレジスタ24は、CLKの立ち上がりエッジ毎にSTの値をラッチし、シフトレジスタの出力端子Q0に出力する。そしてQ0の値を、CLKの1周期分遅延してQ1に出力する。更に、Q1の値を、CLKの1周期分遅延して、Q2に出力する。このようにシフトレジスタ24は、出力端子Q0〜Q49に、順にCLKの立ち上がりエッジに同期したパルス波形電圧を出力するものである。
シフトレジスタ24の出力端子にパルス波形電圧が出力されると、その立ち上がりエッジに同期して2ビットデータレジスタ25のレジスタ値が、その時のデータD[1:0]の値に更新されて、2ビットデータレジスタ25の出力端子に出力される。
2ビットデータレジスタ25の端子に出力された信号を受けて、2入力4出力デコーダ26は、SW1からSW3のうちひとつのスイッチトランジスタ27をオンにし、それに応じて出力端子22に、周波数f、f、fのうちのいずれかの交流電圧信号が出力される。
X電極駆動回路20は、データD[1:0]=00に周波数fを、D[1:0]=01に周波数fを、D[1:0]=10に周波数fを対応させている。そのため、図22に示した時刻t1の時に、出力端子22のA0に周波数がfである電圧信号が、時刻t2の時に出力端子22のA1に周波数がfである電圧信号が、時刻t3の時に出力端子22のA2に周波数がfである電圧信号が出力される。それぞれの電圧信号の振幅は70Vである。なお、D[1:0]=11はここでは使用しない。
出力端子22に出力される電圧信号は、次にスタートパルス入力端子21cにパルス波形電圧が入力され、2ビットデータレジスタ25のレジスタ値が更新されるまで、その周波数は変化しない。
なお、図22は、シフトレジスタ24の50個の出力端子Q0〜Q49の出力波形のうちのQ0〜Q2を例示し、その他の出力波形についての記載を省略している。また、X電極駆動回路20の50個の出力端子22A0〜A49の電圧信号についても同様にA0〜A2を例示し、その他の電圧信号についての記載を省略している。また、上述した電極駆動回路の構成及び駆動方法は一例であり、適宜変更可能である。
次に、本発明の第4の実施例について、図23及び図24を参照して説明する。本実施例では、前記した実施形態及び第1乃至第3の実施例で示した触覚提示装置10の利用形態の一例について説明する。
図23は、本発明の応用形態に係る電子機器100の構成を示す斜視図である。電子機器100は、例えばスマートフォン、タブレット端末、電子ブックリーダー、ノートブック型パーソナルコンピュータなどである。
電子機器100は、タッチパネル式表示装置101を備え、このタッチパネル式表示装置101の前面もしくは背面に、前述した触覚提示装置10が配設されている。ここで、タッチパネル式表示装置101として、静電容量方式タッチパネルを採用すると触覚提示装置10との間で機能が両立しなくなるので、光学式タッチパネルなどを使用することが望ましい。
電子機器100は、内蔵されたプロセッサ103による処理結果がタッチパネル式表示装置101に表示され、その表示に応じてユーザがタッチパネル式表示装置101を操作入力する。なお、電子機器100はプロセッサを内蔵せず、タッチパネル式表示装置101が外部装置による処理結果を表示し、これに応じた操作入力を当該外部装置に返すというものであってもよい。
タッチパネル式表示装置101上に、複数の操作キー102が表示され、これに合わせて、触覚提示装置110が各々の操作キー102に対応する位置に複数の孤立したテクスチャ感を提示する。ユーザはこのテクスチャ感によって操作キー102の位置を探り当てることができ、操作キー102を注視することなくキー入力を行うことが可能となる。これにより、例えば、視覚の不自由なユーザであっても電子機器100を利用することができる。
また、この電子機器100を、自動車、自転車、二輪車、航空機、列車、船舶などの移動体に搭載されたナビゲーション装置として利用することもできる。図24は、本発明の応用形態に係る移動体200の構成を示す斜視図である。移動体200は、ユーザ(運転者)が座る運転席201と、図23に示した電子機器100をナビゲーション装置として搭載したダッシュボード202と、ハンドル、アクセル、ブレーキなどの操舵機構203などを備える。
この電子機器100は、図23に示した例と同じように、操作キー102に対応する位置に複数の孤立したテクスチャ感を提示する。ユーザはこのテクスチャ感によって操作キー入力を行うことが可能となる。また、処理結果として提示された経路情報で、地図上に表示された経路に対してテクスチャ感を提示し、この経路の表示を目立たせることも可能である。これにより、ユーザは前方注意義務の履行に専念しつつ、ナビゲーション装置の操作を行うことが可能となるので、安全運転を継続することが可能となる。
なお、本発明は上記実施形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、触覚提示装置10の構成や製造方法、駆動方法、利用方法などは適宜変更可能である。
例えば、第1の実施形態及び実施例では、X軸方向に延在するX電極12とY軸方向に延在するY電極13とを備える構成としたが、一方向に延在する電極のみを備える構成としてもよい。
本発明は、触覚を提示する触覚提示装置及び当該触覚提示装置を備えるタッチパネルや視覚障害者用端末などの電子機器並びに当該触覚提示装置の駆動方法に利用可能である。
10 触覚提示装置
10a パネル
11 支持基板
11a 電極
12 X電極
12a ブリッジ電極
13 Y電極
13a 接続部
14 絶縁層
15 アンチグレア層(絶縁層)
15a 粒子
15b コート層材料
16 絶縁層
17 接触面
18 端子
19 駆動部
20 X電極駆動回路(駆動部)
21a データ入力端子
21b クロック入力端子
21c スタートパルス入力端子
22 出力端子
23a、23b、23c 交流電圧生成部
24 シフトレジスタ
25 2ビットデータレジスタ
26 2入力4出力デコーダ
27 スイッチトランジスタ
28 増幅器
30 Y電極駆動回路(駆動部)
40 制御部
50 対象領域
51 電極
52 抵抗
100 電子機器
101 タッチパネル式表示装置
102 操作キー
103 プロセッサ
200 移動体
201 運転席
202 ダッシュボード
203 操舵機構

Claims (18)

  1. 支持基板と、前記支持基板上に形成された電極と、前記電極を覆う絶縁層と、を有するパネルと、前記パネルを駆動する駆動部と、を備え、前記駆動部が前記電極に電圧の信号を印加することによって、前記電極と操作者との間に生じる静電気力に基づき、前記操作者に触覚を提示する触覚提示装置であって、
    前記絶縁層の前記操作者が触れる接触面は、表面粗さRaが所定の範囲であり、
    前記電極に印加される電圧は、前記接触面の表面粗さRaに応じた電圧である、
    ことを特徴とする触覚提示装置。
  2. 支持基板と、前記支持基板上に形成された所定の方向に延在する複数の電極と、前記複数の電極を覆う絶縁層と、を有するパネルと、前記パネルを駆動する駆動部と、を備え、前記駆動部が前記電極に電圧の信号を印加することによって、前記電極と操作者との間に生じる静電気力に基づき、前記操作者に触覚を提示する触覚提示装置であって、
    前記絶縁層の前記操作者が触れる接触面は、表面粗さRaが所定の範囲であり、
    前記操作者に触覚を提示する領域に対応する電極に印加される電圧は、前記接触面の表面粗さRaに応じた電圧である、
    ことを特徴とする触覚提示装置。
  3. 前記表面粗さRaと当該表面粗さRaにおいて前記操作者が触覚を知覚可能な検出閾電圧とは相関を有し、
    前記電極に印加される電圧は、前記接触面の表面粗さRaに対応する前記検出閾電圧以上の電圧である、
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の触覚提示装置。
  4. 前記絶縁層は、前記接触面に前記所定の範囲の表面粗さRaを生じさせるサイズの粒子を絶縁性材料中に分散した構造である、
    ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載の触覚提示装置。
  5. 前記絶縁層は、前記電極を覆う下層の絶縁層と、前記下層の絶縁層を覆う上層の絶縁層
    と、で構成され、前記上層の絶縁層は、前記接触面に前記所定の範囲の表面粗さRaを生じさせるサイズの粒子を絶縁性材料中に分散した構造である、
    ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載の触覚提示装置。
  6. 前記絶縁層は、可視光に対する反射防止機能を備えたアンチグレア層である、
    ことを特徴とする請求項4に記載の触覚提示装置。
  7. 前記上層の絶縁層は、可視光に対する反射防止機能を備えたアンチグレア層である、
    ことを特徴とする請求項5に記載の触覚提示装置。
  8. 前記所定の範囲は、前記表面粗さRaが、0.01μmよりも大きく、0.8μm未満の範囲である、
    ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一に記載の触覚提示装置。
  9. 前記所定の範囲は、前記表面粗さRaが、0.03μmよりも大きく、0.8μm未満の範囲である、
    ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一に記載の触覚提示装置。
  10. 前記表面粗さRaの前記所定の範囲は、前記接触面と前記操作者の指との接触面積が相対的に大きくなることにより前記指が前記接触面に粘り着く状態よりも粗く、前記操作者の指が前記接触面の凹凸に追従して変形する状態よりも細かい範囲である、
    ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一に記載の触覚提示装置。
  11. 請求項1乃至1のいずれか一に記載の前記触覚提示装置を、タッチパネル式の表示装置の前面若しくは背面に備える、
    ことを特徴とする電子機器。
  12. 前記タッチパネルは、光学式タッチパネルである、
    ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
  13. 支持基板と、前記支持基板上に形成された電極と、前記電極を覆う絶縁層と、を有するパネルと、前記パネルを駆動する駆動部と、を備え、前記駆動部が前記電極に電圧の信号を印加することによって、前記電極と操作者との間に生じる静電気力に基づき、前記操作者に触覚を提示する触覚提示装置の駆動方法であって、
    前記絶縁層の前記操作者が触れる接触面は、表面粗さRaが所定の範囲に設定されており、
    前記駆動部は、前記電極に、前記接触面の表面粗さRaに応じた電圧の信号を印加する処理を実行する、
    ことを特徴とする触覚提示装置の駆動方法。
  14. 支持基板と、前記支持基板上に形成された所定の方向に延在する複数の電極と、前記複数の電極を覆う絶縁層と、を有するパネルと、前記パネルを駆動する駆動部と、を備え、前記駆動部が前記電極に電圧の信号を印加することによって、前記電極と操作者との間に生じる静電気力に基づき、前記操作者に触覚を提示する触覚提示装置の駆動方法であって、
    前記絶縁層の前記操作者が触れる接触面は、表面粗さRaが所定の範囲に設定されており、
    前記駆動部は、
    前記操作者に触覚を提示する領域に対応する電極を特定する処理と、
    前記特定した電極に、前記接触面の表面粗さRaに応じた電圧の信号を印加する処理と
    、を実行する、
    ことを特徴とする触覚提示装置の駆動方法。
  15. 前記表面粗さRaと当該表面粗さRaにおいて前記操作者が触覚を知覚可能な検出閾電圧とは相関を有し、
    前記駆動部は、
    前記特定した電極に、前記接触面の表面粗さRaに対応する前記検出閾電圧以上の電圧の信号を印加する、
    ことを特徴とする請求項1に記載の触覚提示装置の駆動方法。
  16. 前記所定の範囲は、前記表面粗さRaが、0.01μmよりも大きく、0.8μm未満の範囲である、
    ことを特徴とする請求項1乃至1のいずれか一に記載の触覚提示装置の駆動方法。
  17. 前記所定の範囲は、前記表面粗さRaが、0.03μmよりも大きく、0.8μm未満の範囲である、
    ことを特徴とする請求項1乃至1のいずれか一に記載の触覚提示装置の駆動方法。
  18. 前記表面粗さRaの前記所定の範囲は、前記接触面と前記操作者の指との接触面積が相対的に大きくなることにより前記指が前記接触面に粘り着く状態よりも粗く、前記操作者の指が前記接触面の凹凸に追従して変形する状態よりも細かい範囲である、
    ことを特徴とする請求項1乃至1のいずれか一に記載の触覚提示装置の駆動方法。
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