JP6688774B2 - 抗菌性向上物質のスクリーニング方法 - Google Patents

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本発明は抗菌性物質と併用した場合にその抗菌性を向上させる物質をスクリーニングするための方法に関する。
近年、生活環境における様々な物質表面の殺菌及び防汚のために抗菌性物質を配合した洗浄剤が種々開発されている。例えば、ベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノール等の芳香族アルコール、ベンズアルデヒド等の芳香族アルデヒド、アルキレングリコールアルキルエーテル等は抗菌性を有することから、抗菌性洗浄剤の溶剤として広く使用されている。
しかしながら、抗菌性物質を単独で用いた場合には十分な抗菌性が得られず、他の抗菌性助剤等を併用してその抗菌力を補う場合が多い。例えば、特許文献1には第4級アンモニウム塩と抗菌性有機溶剤を組み合わせた抗菌剤、特許文献2には高浸透圧を付与する溶質と多価アルコール系抗菌物質を併用することが開示されている。
特開2012−36179号公報 特開2009−161518号公報
本発明は、抗菌性物質と併用した場合に、その抗菌性を向上させる物質を効率良く選択することが可能な方法を提供することに関する。
本発明者らは、化学物質が微生物に接触した際の、微生物の表層における物理的、熱力学的な変化を検討したところ、抗菌性物質(ベンジルアルコール)と併用するとその抗菌力を向上させる物質である塩化ベンザルコニウムが、微生物最外層のリポ多糖(LPS)を脱水和することにより、当該層の粘弾性を上昇させることを発見した。そして、更に検討した結果、その粘弾性の上昇は、リポ多糖が脱水和されてエントロピーが変化したことに起因することを見出し、特定の多糖類に対する脱水和能を指標とすることにより、抗菌性物質の抗菌性を向上させる物質をスクリーニングできることを明らかにした。
すなわち、本発明は、抗菌性物質と併用した場合に当該抗菌性物質の抗菌性を向上させる物質をスクリーニングする方法であって、リポ多糖、グルカン、ペプチドグリカン及びムコ多糖から選ばれる1種以上の多糖類に対する脱水和能を評価する工程を含む、前記スクリーニング方法に係るものである。
本発明の方法によれば、抗菌性物質と併用した場合に、当該抗菌性物質の抗菌力を向上し得る物質を、客観的且つ迅速に評価又は選択することができる。
抗菌性向上力とΔS(エントロピー変化)の相関を示すグラフ
本発明のスクリーニング方法は、特定の多糖類に対する脱水和能を評価することにより、抗菌性物質の抗菌性を向上させる物質をスクリーニングするものである。
本発明において、多糖類は、リポ多糖、グルカン、ペプチドグリカン及びムコ多糖から選ばれる1種以上である。斯かる多糖類としては、微生物表層に存在する多糖類であるのが好ましいが、それと同様の物理化学的性質を有する限り必ずしもそれに限定されるものではない。
ここで、リポ多糖(リポポリサッカライド)は、リピドAと呼ばれる脂質に多分子の糖からなる糖鎖が結合した糖脂質であり、具体的には、リン酸基が結合したグルコサミン2分子がグリコシド結合したものに複合結合した脂肪酸鎖と5〜8炭糖が結合した構造体を指す。
ペプチドグリカンは、ペプチドと糖からなる高分子であり、好適にはN−アセチルグルコサミンとN−アセチルムラミン酸の交互の繰り返しを単位としてそれらがオリゴペプチドによって架橋された構造体を指す。
グルカンとしては、βグルカンが好ましく、β−1,3−グルカンがより好ましい。β−1,3−グルカンとしては、β−1,3−グルカンの他に、D−グルコースがβ−1,3結合で重合したものを主鎖とし、その6位にβ−1,6結合で1個のD−グルコースが導入された構造を有するβ−1,3−1,6−グルカン等が包含される。β−1,3−グルカンとしては、例えばカードラン、ザイモサン等が挙げられ、β−1,3−1,6−グルカンとしては、例えばラミナリンが挙げられる。
ムコ多糖としては、ポリ-β1−4−N−アセチルグルコサミン(キチン)及びポリ-β1,4-グルコサミン(キトサン)が好ましい。
斯かる多糖類は、これらの1種、又は2種以上を混合して用いることができる。
上記多糖類に対する脱水和能とは、当該多糖類における糖鎖の水和構造を不安定化させる能力を意味する。
ここで、多糖類の糖鎖の水和には、糖の水酸基と水分子の水素結合による水素結合性水和と、周囲の水分子同士の水素結合による疎水性水和があるが、本発明においては、それらの何れの水和構造を不安定化するものであってもよい。
「不安定化」とは、水素結合を不安定化することを意味し、水分子の分極率を変化させること等が挙げられるが、好適には、水分子の分極率を変化させることである。水分子の分極率を変化させることとは、具体的には、双極子-双極子相互作用、イオン-双極子相互作用を生じさせることが挙げられる。
後記試験例に示すとおり、抗菌性物質の抗菌性を向上する物質を微生物に作用させると、微生物表層の多糖層が脱水和され微生物表面の粘弾性が上昇する(試験例2)。また、微生物表層の多糖層の水和構造が破壊され、その規則性が崩壊すると、エントロピーが増大する(試験例3)。そして、微生物に脱水和能を有する物質を作用させ、これに抗菌性物質を添加した場合、多糖層との反応におけるエントロピー変化(ΔS)と、脱水和能を有する物質が溶剤の抗菌性を向上させ得る濃度の逆数の対数値には、正の相関が認められ、ΔSが大きいほど、より低濃度で抗菌性を向上することが判明した(試験例4)。
したがって、特定の多糖類との反応によって生じるエントロピーの変化量を測定することによって、多糖類に対する脱水和能が評価でき、抗菌性物質の抗菌性を向上させ得る物質をスクリーニングすることができる。
本発明において、エントロピー変化量(ΔS)の算出方法は、例えば、等温滴定カロリメトリー(ITC)による相互作用熱量解析が挙げられる。
本発明において、抗菌性物質としては、細菌や真菌等の微生物に対して抗菌作用を有する物質であれば特に制限はないが、好ましくは、トリクロサンやイソプロピルメチルフェノール(IPMP)などの殺菌剤、アンピシリン、クローラムフェニコールなどの抗生剤、パラベン類(パラオキシ安息香酸エステル及びこれらの塩:例えば、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン及びこれらの塩等)、安息香酸などの防腐剤、芳香族アルコール、芳香族アルデヒド、並びに下記式(1)又は(2)で表わされる抗菌性溶剤が挙げられる。
〔式中、Rは、炭素数5〜10のアルキル基若しくはアルケニル基、又はベンジル基を示し、Aは、炭素数1〜10のアルキレン基を示し、nは0〜5の数を示し、n個のAは同一でも異なってもよい。〕
ここで、芳香族アルコールとしては、好ましくはベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノール、フェノキシエタノール、1-フェノキシ-2-プロパノール、フェネチルアルコール、ベンジルグリコール等が挙げられ、このうちベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノール、フェノキシエタノール、フェネチルアルコールがより好ましい。
芳香族アルデヒドとしては、好ましくはベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、2−フェニルプロピオンアルデヒド等が挙げられ、このうちベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒドがより好ましい。
式(1)で示されるヒドロキシ化合物、式(2)で示されるアルデヒド化合物において、Aで示される炭素数1〜10のアルキレン基としては、炭素数2又は3のアルキレン基が好ましい。
Rで示される炭素数5〜10のアルキル基又はアルケニル基としては、直鎖又は分岐鎖の何れでも良いが、炭素数5〜8のアルキル基が好ましく、例えばn−ブチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。
nは0〜3の数であるが、1〜3が好ましく、1又は2が更に好ましい。
尚、n個のAは同一でも異なってもよい。
抗菌性溶剤の好適な具体例としては、例えばベンジルアルコール、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、2−(2−エチルヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエ−テル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、2−[2−(2−エチルヘキシルオキシ)エトキシ]エタノール、2−ベンジルオキシエタノール、2−フェノキシエタノール、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、2−フェニルプロピオンアルデヒド、ヘキサナール、2-エチルブチルアルデヒド、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ペンタノール、1-フェノキシ-2-プロパノール等が挙げられる。
本発明のスクリーニング方法の具体的態様として、例えば、以下の(A)〜(C)の工程が挙げられる。
(A)ITC装置を用いて、リポ多糖、グルカン、ペプチドグリカン及びムコ多糖から選ばれる1種以上の多糖類の溶液に、被験物質含有溶液を接触させる工程
(B)前記多糖類溶液に生じたエントロピー変化量(ΔS)を測定する工程
(C)ΔS>0となる被験物質を、抗菌性物質と併用した場合にその抗菌性を向上させる物質として選択する工程
ここで、ITC装置としては、滴下液のサンプルセルとリファレンスセル、滴定シリンジ、コンピュータ制御された電動ビュレット、断熱ジャケット(インナーシールド)、電力供給装置及び検出器を備えた装置、例えば、MicroCal社製のVP−ITC等が使用できる。
VP−ITCを用いる場合、多糖類溶液はセル側のサンプルとし、被験物質含有溶液を、シリンジ側のサンプルとするのが好ましい。
多糖類溶液及び被験物質含有溶液は、多糖類又は被験物質を、適当な緩衝液、例えばPBSを用いて、0.1〜10質量%に調製したものが使用される。
多糖類溶液と被験物質含有溶液との接触は、温度20〜40℃、好ましくは25〜35℃、セル側の攪拌速度500〜1500rpm、1回の滴下量5〜15μL、滴下間隔300〜500秒、全滴下量を150〜300μLで行うことができる。例えば、測定温度30℃、セル側の攪拌速度1000rpm、1回の滴下量10μL、滴下間隔300秒、全滴下量200μLの条件が挙げられる。
具体的な手順としては、例えば、PBSを用いて0.1質量%に調製した多糖類溶液をセルに、PBSを用いて1質量%に調製した被験物質含有溶液をシリンジ側に準備し、任意の一定温度に保たれたサンプルセル中にシリンジから10μLずつ300秒間隔で計20回滴下し、リファレンスセルとの温度差をゼロに制御するためにサンプルセルに供給される単位時間当たりのフィードバック電力(熱量)に対し、セルにPBSを用いて同様の操作で得られる単位時間当たりのフィードバック電力(熱量)を引いて得られた熱量を算出する方法を採用することができる。
ここで、1滴下あたりの最大熱量の絶対値が1cal/mol(4.18J/mol)以下の場合を検出限界とする。
エントロピー変化(ΔS)の算出は、例えばMicroCal,LLC,ITCというソフトを用いて行うことができる。具体的には、例えば、ITCとサンプルセル中におけるリガンドとシリンジ中の標的分子の反応は1:1ではないことを考慮し、測定値を逐次反応モデルであるSequential Binding Sitesによってフィッティングしてそれぞれの反応のエンタルピー変化(ΔH)と結合定数(KA)を算出し、例えば一つ目の反応の値を用いることで、ΔS=ΔH/T+RlnKAという式に代入することでΔSを算出する方法が挙げられる。ここで、Tは絶対温度、Rは気体定数を示す。1滴下あたりの最大熱量の絶対値が1cal/mol(4.18J/mol)以下、すなわち検出限界以下の場合には、ΔSはnot detected(n.d.)とする。
ΔSが0以上となる被験物質は、系における規則性を崩壊することを意味しており、これは糖鎖の周りに規則性を持って並んだ水和構造を破壊すること、すなわち多糖類を脱水和することを示す。多糖類の脱水和は多糖構造の変化を引き起こすことから、抗菌性物質の抗菌性を向上させる物質となり得るが、好ましくは10以上、より好ましくは20以上である。
斯くして、ΔSが0以上である物質を選択することにより、抗菌性物質の抗菌性を向上させる物質として選択することができる。
ΔSが0以上となる物質としては、例えば、硫酸アンモニウム、硫酸カリウム、塩化ベンザルコニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム塩、アミンオキサイド、アルキルグルコシト、メタノール、クエン酸2アンモニウム、クエン酸3アンモニウム、ラウリルトリメチルアンモニウム塩、ヨウ化カリウム、キシリトール、エリスリトール、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化セシウム、塩化アンモニウム、硝酸カリウム、酢酸カリウム、リジン、アルギニン等が挙げられ、これら自体に抗菌性があるか否かは問われない。
上述した実施形態に関し、本発明においては以下の態様が開示される。
<1>抗菌性物質と併用した場合に当該抗菌性物質の抗菌性を向上させる物質をスクリーニングする方法であって、リポ多糖、グルカン、ペプチドグリカン及びムコ多糖から選ばれる1種以上の多糖類に対する脱水和能を評価する工程を含む、前記スクリーニング方法。
<2>脱水和能が多糖類との反応におけるエントロピー変化量(ΔS)を測定することによって評価される、<1>のスクリーニング方法。
<3>多糖類が微生物表層由来の多糖である、<1>又は<2>のスクリーニング方法。<4>グルカンがβ−1,3−グルカンであり、ムコ多糖がポリ-β1−4−N−アセチルグルコサミンである、<1>〜<3>のいずれかのスクリーニング方法。
<5>β−1,3−グルカンがβ−1,3−1,6−グルカンである<4>のスクリーニング方法。
<6>β−1,3−グルカンがカードラン又はラミナリンである<4>のスクリーニング方法。
<7>抗菌性物質がトリクロサン及びイソプロピルメチルフェノールから選ばれる殺菌剤、アンピシリン、及びクローラムフェニコールから選ばれる抗生剤、パラベン類及び安息香酸から選ばれる防腐剤、芳香族アルコール、芳香族アルデヒド、並びに下記式(1)又は(2):
〔式中、Rは、炭素数5〜10のアルキル基若しくはアルケニル基、又はベンジル基を示し、Aは、炭素数1〜10のアルキレン基を示し、nは0〜5の数を示し、n個のAは同一でも異なってもよい。〕
で表わされる抗菌性溶剤から選ばれる1種以上である<1>〜<5>の何れかのスクリーニング方法。
<8>抗菌性物質がベンジルアルコール、フェノキシエタノール、ベンジルグリコール、フェニルエチルアルコール、ペンタノール及びメチルパラベンから選ばれる1種以上である<6>のスクリーニング方法。
試験例1 2物質併用による抗菌性の向上
全ての試験液はPBSで調製し、pHが7.4になるよう塩酸もしくは水酸化ナトリウム水溶液でpHを調整した。表1に示す抗菌性物質と添加剤を単独又は組み合わせた試験液2mLにEscherichia coli JM109(coli JM109)の菌液(O.D.600nm=0.8)を20μL添加してテストチューブミキサーにて攪拌した。尚、菌液の調製は下記の手順で行った。LB寒天培地(Luria-Bertani AGAR >>DAIGO<< 和光純薬工業製)を用いて37℃で一夜培養し、培地上のcoli JM109の菌体を一白金耳掻き取り、LB液体培地(Luria-BertaniBROTH >>DAIGO<< 和光純薬工業製)に懸濁して37℃で1日間振盪培養した。これを遠心分離(7000g×5min.)して上清を除去した後、等量の生理食塩水で懸濁した。その後もう一度遠心分離し(7000g×5min.)、生理食塩水で菌液を調製した。試験液と菌液の混合液を所定の時間往復振とう(170回/min 振幅25mm)させながら接触させた後、100μLを分取して900μLのLP希釈液に懸濁することで試験液を不活化した。これをさらにLP希釈液(LP希釈液「ダイゴ」(日本製薬(株)製)精製水1L当たり ポリペプトン 1g、レシチン 0.7g、ポリソルベート80 20g、pH7.0〜7.4)製)にて希釈した後、前述の寒天培地に塗布して静置培養し、得られたコロニー数から生残菌数を求め、初発菌数の対数値と生残菌数の対数値の差をLog減少菌数として算出し、これを抗菌活性値とした。初発菌数の測定には、試験液の代わりにPBSで同様の操作を行った際に得られた生残菌数を用いた。なお、接触試験はガラス試験管内で行った。また、培養条件は37℃で1日間とした。
ベンジルアルコール(BA)を単独で接触した場合にはLog減少菌数(抗菌活性値)がほぼ0であったが、同条件(濃度、接触時間)であっても塩化ベンゼトニウム、塩化ベンジルトリブチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム(C8)、硫酸アンモニウム、塩化ベンジルトリメチルアンモニウムを添加すると抗菌性が向上した。尚、BAと組み合わせて用いた各種剤に関しても、単独で接触した場合には抗菌活性値がほぼ0である条件(濃度、接触時間)で用いた場合であっても抗菌性が向上した。
試験例2 抗菌性向上作用機構の解明
試験例1においてBAと組み合わせることで抗菌性が向上した物質の作用機構を解明するために、基板にcoli JM109を固定化し、抗菌性を向上させたC8塩化ベンザルコニウムを作用させた際の菌の粘弾性変化をQCM−D(Quartz Crystal Microbalance with Dissipation monitoring)を用いて解析した。尚、菌の固定は抗原抗体反応を用いた。金基板にカルボキシル基末端の自己組織化単分子膜を作成し、スクシンイミドエステル法によりストレプトアビジンを結合させた。さらにビオチン標識した抗coli抗体を反応させ、そこに菌を作用させることで金基板に菌を固定化した。
PBS(pH7.4)で調製したC8塩化ベンザルコニウムを添加すると、速やかに菌に蓄積した。また蓄積に伴ってまず物性が硬くなり、その後緩やかに軟らかくなった。またBAと組み合わせて作用させた場合にもC8塩化ベンザルコニウムによる一時的な物性の硬化が起こり、その後速やかに軟らかくなったことから、抗菌性を向上させる機構としてC8塩化ベンザルコニウムによる菌の硬化が重要であることが分かった。
試験例3 菌表層のLPSの脱水和
試験例2において菌の一時的な硬化が脱水和によるものだと考え、大腸菌をはじめとするグラム陰性細菌の最外層に存在するLPSとの反応による熱量変化を測定した。PBSで1%となるよう調製したリポポリサッカライド(LPS coli55:B5由来 CALBIOCHEM社製)溶液をセル側のサンプルとした。一方PBSで1%となるよう調製した塩化ベンゼトニウム、C8塩化ベンザルコニウム、塩化ベンジルトリブチルアンモニウム、硫酸アンモニウムの溶液をシリンジ側のサンプルとし、セル側に滴下することによる熱量変化を調べた。エントロピー変化(ΔS)の算出には、MicroCal, LLC, ITCというソフトを用いた。具体的な手順としては、測定値を逐次反応モデルであるSequential Binding Sitesによってフィッティングしてエンタルピー変化(ΔH)と結合定数(KA)を算出し、ΔS=ΔH/T+RlnKAという式に代入することでΔSを算出した。測定器は、MicroCal社製のVP−ITCを使用し、測定温度30℃、セル側の攪拌速度1000rpm、1回の滴下量10μL、滴下間隔300秒、全滴下量は200μLとした。
その結果、C8塩化ベンザルコニウムに加え、試験例1において抗菌性向上効果を示した塩化ベンゼトニウム、ベンジルトリブチルアンモニウム塩、硫酸アンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウムはLPSと反応させた際、脱水和を示唆する正のエントロピー変化が確認された。
試験例4 抗菌性向上力とΔSの相関
全ての試験液はPBSで調製し、pHが7.4になるよう塩酸もしくは水酸化ナトリウム水溶液でpHを調整した。表4に示す添加剤を含む試験液2mLに前述した方法と同じ方法で調製したcoli JM109の菌液(O.D.600nm=0.8)を20μL添加してテストチューブミキサーにて攪拌した。所定の時間往復振とう(170回/min 振幅25mm)させながら接触させた後、100μLを分取して900μLのLP希釈液に懸濁することで試験液を不活化した。これをさらにLP希釈液にて希釈した後、前述の寒天培地に塗布して静置培養し、得られたコロニー数から生残菌数を求め、初発菌数の対数値と生残菌数の対数値の差をLog減少菌数として算出し、これを抗菌活性値とした。初発菌数の測定には、試験液の代わりにPBSで同様の操作を行った際に得られた生残菌数を用いた。なお、接触試験はガラス試験管内で行った。また、培養条件は37℃で1日間とした。種々の濃度で上記の抗菌性試験を実施し、1%のBAを5分間接触させた際の抗菌活性値が0から2まで上昇するために必要な濃度を測定した。
LPSとのΔSと抗菌性を向上させるために必要な濃度の逆数の対数値に正の相関が得られ、ΔSが大きいほどより低濃度で抗菌性を向上させることが示された(図1)。すなわち、ΔSが大きい添加剤ほど抗菌性向上力が高いことが示された。
試験例5 抗菌性向上力評価
全ての試験液はPBSで調製し、pHが7.4になるよう塩酸もしくは水酸化ナトリウム水溶液でpHを調整した。表5に示す添加剤を含む試験液2mLにcoli JM109及び、Pseudomonas aeruginosa NBRC13275(aeruginosa)、Staphylococcus aureus NBRC13276(aureus)の菌液(いずれもNBRC(独立行政法人製品評価技術基盤機構 生物遺伝資源部門)から購入)、Phoma sp. A−BT(環境分離株)、Cladosporium sp. PA−4(環境分離株)の胞子液を20μL添加してテストチューブミキサーにて攪拌した。尚、菌液の調製は前述の方法で行ったが、aeruginosa及びaureusの培養にはSoybean Casein Digest(SCD)寒天培地(和光純薬工業)及びSCD培地(和光純薬工業)を使用した。また胞子液の調製は、25℃で1週間培養したPotato Dextrose Agar(PDA Difco)平板上の供試菌株に対して0.05% Tween20を滴下し、軽く揺することで回収した。試験液と菌液又は胞子液を所定の時間往復振とう(170回/min 振幅25mm)させながら接触させた後、100μLを分取して900μLのLP希釈液に懸濁することで試験液を不活化した。これをさらにLP希釈液にて希釈した後、前述の寒天培地に塗布して静置培養し、得られたコロニー数から生残菌数を求め、初発菌数の対数値と生残菌数の対数値の差をLog減少菌数として算出し、これを抗菌活性値とした。初発菌数の測定には、試験液の代わりにPBSで同様の操作を行った際に得られた生残菌数を用いた。なお、接触試験はガラス試験管内で行った。また、培養条件はaeruginosa及びaureusは30℃で1日間、Phoma sp.及びCladosporium sp.は25℃でそれぞれ2日間、3日間とした。前述までに抗菌性向上力とΔSの相関が確認された添加剤に関して、大腸菌以外の菌種、またBA以外の抗菌性物質に対して抗菌性試験を実施し、抗菌性向上効果が認められるか測定した。
大腸菌以外の菌種やBA以外の抗菌性物質に対してもΔSが正となる添加剤は抗菌性向上効果を示すことが明らかとなり、本スクリーニング手法は種々の菌、種々の抗菌性物質に適用できることが示された。
試験例6 カビ表層の多糖層の脱水和
試験例5においてカビに対してもLPSを脱水和する添加剤が抗菌性向上効果を発揮したが、これはカビ表層に存在する多糖層が脱水和したことによるものだと考え、カビの表層を構成するβ-1,3-,1,6-グルカンのモデル物質としてラミナリンと添加剤との反応による熱量変化を測定した。PBSで1%となるよう調製したラミナリン溶液をセル側のサンプルとした。一方PBSで1%となるよう調製した硫酸アンモニウムの溶液をシリンジ側のサンプルとし、セル側に滴下することによる熱量変化を調べた。エントロピー変化(ΔS)の算出には、MicroCal, LLC, ITCというソフトを用い、前述の方法で算出した。測定器は、MicroCal社製のVP−ITCを使用し、測定温度30℃、セル側の攪拌速度1000rpm、1回の滴下量10μL、滴下間隔300秒、全滴下量は200μLとした。
その結果、LPSと同様にラミナリンと硫酸アンモニウムを反応させた際にも、脱水和を示唆する正のエントロピー変化が確認された。
実施例1 ΔS>0を指標とした抗菌性向上物質のスクリーニング
PBSで1%となるよう調製したリポポリサッカライド(LPS coli55:B5由来 CALBIOCHEM社製)溶液をセル側のサンプルとした。一方PBSで1%となるよう調製した表5に示す被検物質の溶液をシリンジ側のサンプルとし、セル側に滴下することによる熱量変化を調べた。測定器は、MicroCal社製のVP−ITCを使用し、測定温度30℃、セル側の攪拌速度1000rpm、1回の滴下量10μL、滴下間隔300秒、全滴下量は200μLとした。
アルキルグルコシド、C12塩化ベンザルコニウム、オクチルジメチルアミンオキサイド、硫酸カリウム、メタノール、及び塩化ベンジルトリメチルアンモニウムは、何れもΔS>0となった。
次に上記5物質の抗菌性向上力を評価した。全ての試験液はPBSで調製し、pHが7.4になるよう塩酸もしくは水酸化ナトリウム水溶液でpHを調整した。表6に示す抗菌性物質及び添加剤を含む試験液2mLにcoli JM109の菌液(O.D.600nm=0.8)を20μL添加してテストチューブミキサーにて攪拌した。所定の時間往復振とう(170回/min 振幅25mm)させながら接触させた後、100μLを分取して900μLのLP希釈液に懸濁することで試験液を不活化した。これをさらにLP希釈液にて希釈した後、前述の寒天培地に塗布して静置培養し、得られたコロニー数から生残菌数を求め、初発菌数の対数値と生残菌数の対数値の差をLog減少菌数として算出し、これを抗菌活性値とした。なお、接触試験はガラス試験管内で行った。また、培養条件は37℃で1日間とした。
ΔS>0であった物質はBAの抗菌性を向上させた。
以上より、ΔS>0を指標として抗菌性を向上させる物質をスクリーニングすることができた。

Claims (3)

  1. リポポリサッカライドとの反応におけるエントロピー変化量(ΔS)が>0となる物質を、微生物に対して抗菌作用を有する抗菌性物質と併用する当該抗菌性物質の抗菌性の向上方法であって、微生物がカビを含み、抗菌性物質がベンジルアルコール、フェノキシエタノール及びフェネチルアルコールから選ばれる1種以上の芳香族アルコールを含み、エントロピー変化量(ΔS)が>0となる物質が、硫酸アンモニウム、硫酸カリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化セシウム及び塩化アンモニウムから選ばれる1種以上である、方法。
  2. カビが、Cladosporium属又はPhoma属を含む、請求項1記載の抗菌性の向上方法。
  3. 抗菌性物質がベンジルアルコールである、請求項1又は2記載の抗菌性の向上方法。
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