JP6688652B2 - 合わせガラス用中間膜及び合わせガラス - Google Patents
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Description
真空脱気法では、少なくとも2枚のガラス板の間に合わせガラス用中間膜が積層された積層体をゴムバックに入れて減圧吸引し、ガラス板と中間膜との間に残留する空気を脱気しながら予備圧着し、次いで、例えばオートクレーブ内で加熱加圧して本圧着を行うことにより自動車用フロントガラスを得る。
しかしながら、このような表面に連続した溝形状の凹部を有する合わせガラス用中間膜を用いて真空脱気法により合わせガラスを製造しても、脱気が不充分となって、中間膜中に残存する空気が発泡を起こし、合わせガラスの透明性が低下してしまうことがあるという問題があった。
以下に本発明を詳述する。
真空脱気法では、予備圧着において、少なくとも2枚のガラス板の間に合わせガラス用中間膜が積層された積層体をゴムバックに入れて減圧吸引し、ガラス板と中間膜との間に残留する空気を脱気した後、加熱により積層体端部の合わせガラス用中間膜とガラスとを密着させてシールすることが行われる。このようなシールにより、ゴムバックから取り出した後も内部を真空状態に保つことができ、本圧着までの間に空気が侵入するのを防止することができる。実際の生産では、製造時間の短縮のため、脱気と加熱とは同時に行われる。
本発明者らは、鋭意検討の結果、予備圧着において脱気と加熱とを同時に行ったときに、脱気が充分に完了する前に、積層体端部において合わせガラス用中間膜とガラスとがシールされてしまうことにより、充分に脱気が行われず、積層体内部に多くの空気が残存してしまうことを見出した(以下、これを「先行シール」ともいう。)。先行シールが起こった積層体は、本圧着時にオートクレーブした後に、残存する空気が発泡をおこして、合わせガラスの透明性の低下の原因となる。
本発明者らは、更に鋭意検討の結果、底部が連続した溝形状の凹部の底部の曲率半径Rを45μm以下とすることにより、真空脱気法において高い脱気性を発揮することができ、透明性の高い合わせガラスが製造可能となることを見出し、本発明を完成した。
なお、本発明の合わせガラス用中間膜は、真空脱気法以外に用いてもよい。
図1及び図2に、刻線状の凹部が等間隔に平行して並列した合わせガラス用中間膜の一例を表す模式図を示した。
図3に、刻線状の凹部が等間隔ではないが平行して並列している合わせガラス用中間膜の一例を表す模式図を示した。図3において、凹部1と凹部2との間隔Aと、凹部1と凹部3との間隔Bとは異なる。
なお、本発明の合わせガラス用中間膜が、両面に多数の凹部を有し、該凹部は、底部が連続した溝形状を有し、隣接する前記底部が連続した溝形状の凹部が規則的に並列している場合には、いずれか一方の表面における上記底部が連続した溝形状の凹部の底部の曲率半径Rが45μm以下であればよい。
また、予備圧着において減圧吸引する際、排気される方向を分散させて脱気を円滑に行うことができるため、上記一方の表面が有する前記底部が連続した溝形状の凹部と前記反対側の表面が有する前記底部が連続した溝形状の凹部との交差角θが0°を超えることが好ましく、20°以上であることがより好ましく、90°であることが最も好ましい。なお、上記交差角θは上記一方の表面が有する上記底部が連続した溝形状の凹部と上記反対側の表面が有する上記底部が連続した溝形状の凹部とが成す角のうち、鋭角の方を指す。
図4に底部が連続した溝形状の凹部の底部の曲率半径R及び凹部の間隔Smを説明する模式図を示した。図4(a)において合わせガラス用中間膜の表面20は、底部が連続した溝形状の凹部21を有している。Smは、該凹部21間の間隔を意味する。また、図4(b)において、凹部21の底部に接する形で円を描いたときに、該円の半径がRである。
図5に隣接する底部が連続した溝形状の凹部の最底部間の最短距離を結んだ線の方向に、JIS B 0601(1994)に準拠して粗さ曲線を作成したときに、高さが最大となる点が該最底部間の最短距離を結んだ線の中心に位置していない合わせガラス用中間膜の模式図を示す。図5から判るように、高さが最大となる点が最底部間の最短距離を結んだ線の中心に位置していないとは、上記隣接する底部が連続した溝形状の凹部の形状が隣接する底部が連続した溝形状の凹部の最底部間の最短距離を結んだ線の中心に、前記最底部間の最短距離を結んだ線に対して垂直な線を引いた際の、前記垂直な線を軸としたときに非対称であることを意味する。このように上記隣接する底部が連続した溝形状の凹部の形状を非対称とすることにより、上記底部が連続した溝形状の凹部の底部の曲率半径Rを容易に45μm以下とすることができる。
上記底部が連続した溝形状の凹部の間隔Smの好ましい下限は100μm、より好ましい下限は150μmである。
なお、本明細書における上記底部が連続した溝形状の凹部の間隔Smは、JIS B 0601(1994)に規定される。測定条件は、例えば、基準長さ=2.5mm、評価長さ12.5mm、触針の先端半径=2μm、先端角度=60°、測定速度=0.5mm/sの条件で測定を行うことができる。ここで、合わせガラス用中間膜中の任意の5点を測定し、その平均値をSmとする。
上記底部が連続した溝形状の凹部の粗さRzの好ましい下限は10μm、より好ましい下限は20μmである。
なお、本明細書における上記底部が連続した溝形状の凹部の粗さRzは、JIS B 0601(1994)に規定される。
本発明の合わせガラス用中間膜が多層構造である場合には、2層以上の樹脂層として、第1の樹脂層と第2の樹脂層とを有し、かつ、第1の樹脂層と第2の樹脂層とが異なる性質を有することにより、1層だけでは実現が困難であった種々の性能を有する合わせガラス用中間膜を提供することができる。
上記熱可塑性樹脂として、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体、ポリ三フッ化エチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセタール、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。なかでも、上記熱可塑性樹脂はポリビニルアセタール、又は、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含有することが好ましく、ポリビニルアセタールを含有することがより好ましい。
上記可塑剤としては、合わせガラス用中間膜に一般的に用いられる可塑剤であれば特に限定されず、例えば、一塩基性有機酸エステル、多塩基性有機酸エステル等の有機可塑剤や、有機リン酸化合物、有機亜リン酸化合物等のリン酸可塑剤等が挙げられる。
上記有機可塑剤として、例えば、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、テトラエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート、ジエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、ジエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート等が挙げられる。なかでも、上記有機可塑剤はトリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、又は、トリエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエートを含むことが好ましく、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエートを含むことがより好ましい。
上記接着力調整剤としては、例えば、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩が好適に用いられる。上記接着力調整剤として、例えば、カリウム、ナトリウム、マグネシウム等の塩が挙げられる。
上記塩を構成する酸としては、例えば、オクチル酸、ヘキシル酸、2−エチル酪酸、酪酸、酢酸、蟻酸等のカルボン酸の有機酸、又は、塩酸、硝酸等の無機酸が挙げられる。合わせガラスを製造するときに、ガラスと樹脂層との接着力を容易に調製できることから、ガラスと接触する樹脂層は、接着力調整剤として、マグネシウム塩を含むことが好ましい。
合わせガラスの耐貫通性をより一層向上させる観点からは、上記アルカリ金属、アルカリ土類金属及びマグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種の金属の含有量の好ましい下限は1ppm、より好ましい下限は5ppm、更に好ましい下限は20ppm、特に好ましい下限は50ppmである。合わせガラス用中間膜とガラスとの接着力を調節し剥離を防止することで、予備圧着時のシール不良をより一層防止することができることから、上記アルカリ金属、アルカリ土類金属及びマグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種の金属の含有量の好ましい上限は500ppm、より好ましい上限は300ppm、更に好ましい上限は150ppm、特に好ましい上限は100ppmである。
ポリビニルアセタールAとポリビニルアセタールBとの性質が異なるため、1層だけでは実現が困難であった種々の性能を有する合わせガラス用中間膜を提供することができる。例えば、2層の上記第2の樹脂層の間に、上記第1の樹脂層が積層されており、かつ、ポリビニルアセタールAの水酸基量がポリビニルアセタールBの水酸基量より低い場合、上記第1の樹脂層は上記第2の樹脂層と比較してガラス転移温度が低くなる傾向にある。結果として、上記第1の樹脂層が上記第2の樹脂層より軟らかくなり、合わせガラス用中間膜の遮音性が高くなる。また、2層の上記第2の樹脂層の間に、上記第1の樹脂層が積層されており、かつ、ポリビニルアセタールAの水酸基量がポリビニルアセタールBの水酸基量より高い場合、上記第1の樹脂層は上記第2の樹脂層と比較してガラス転移温度が高くなる傾向にある。結果として、上記第1の樹脂層が上記第2の樹脂層より硬くなり、合わせガラス用中間膜の耐貫通性が高くなる。
上記ポリビニルアセタールXは、ポリビニルアルコールをアルデヒドによりアセタール化することにより調製することができる。上記ポリビニルアルコールは、通常、ポリ酢酸ビニルをけん化することにより得られる。
上記ポリビニルアルコールの平均重合度の好ましい下限は200、好ましい上限5000である。上記ポリビニルアルコールの平均重合度を200以上とすることにより、得られる遮音中間膜の耐貫通性を向上させることができ、5000以下とすることにより、遮音層の成形性を確保することができる。上記ポリビニルアルコールの平均重合度のより好ましい下限は500、より好ましい上限は4000である。
なお、上記ポリビニルアルコールの平均重合度は、JIS K6726「ポリビニルアルコール試験方法」に準拠した方法により求められる。
上記アセタール基量は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により、上記ポリビニルアセタールXのアセタール基が結合しているエチレン基量を測定することにより求めることができる。
なお、上記遮音層における可塑剤の含有量は、合わせガラス作製前の可塑剤含有量であってもよく、合わせガラス作製後の可塑剤含有量であってもよい。
上記合わせガラス作製後の可塑剤の含有量は、以下の手順に従って測定できる。即ち、まず合わせガラスを作製した後、温度25℃、湿度30%の環境下で4週間静置する。その後、合わせガラスを液体窒素により冷却することでガラスと合わせガラス用中間膜を引き剥がす。得られた合わせガラス用中間膜を、厚さ方向に切断し、温度25℃、湿度30%の環境下に2時間静置した後、保護層と遮音層との間に指又は機械を入れ、温度25℃、湿度30%の環境下で剥離し、遮音層について10gの長方形状の測定試料を得る。得られた測定試料を、ソックスレー抽出器を用いて12時間、ジエチルエーテルで可塑剤を抽出した後、測定試料中の可塑剤の定量を行い、遮音層中の可塑剤の含有量を求める。
上記保護層は、例えば、ポリビニルアセタールYと可塑剤とを含有することが好ましく、ポリビニルアセタールXより水酸基量が大きいポリビニルアセタールYと可塑剤とを含有することがより好ましい。
また、上記ポリビニルアルコールの平均重合度の好ましい下限は200、好ましい上限は5000である。上記ポリビニルアルコールの平均重合度を200以上とすることにより、合わせガラス用中間膜の耐貫通性を向上させることができ、5000以下とすることにより、保護層の成形性を確保することができる。上記ポリビニルアルコールの平均重合度のより好ましい下限は500、より好ましい上限は4000である。
上記炭素数が3〜4のアルデヒドとしては、直鎖状のアルデヒドであってもよいし、分枝状のアルデヒドであってもよく、例えば、n−ブチルアルデヒド等が挙げられる。
なお、上記保護層における可塑剤の含有量は、合わせガラス作製前の可塑剤含有量であってもよく、合わせガラス作製後の可塑剤含有量であってもよい。合わせガラス作製後の可塑剤の含有量は、上記遮音層と同様の手順によって測定することができる。
また、合わせガラスの遮音性がより一層向上することから、上記遮音層におけるポリビニルアセタールX100質量部に対する、可塑剤の含有量(以下、含有量Xともいう。)は、上記保護層におけるポリビニルアセタールY100質量部に対する、可塑剤の含有量(以下、含有量Yともいう。)より多いことが好ましく、5質量部以上多いことがより好ましく、15質量部以上多いことが更に好ましく、20質量部以上多いことが特に好ましい。含有量X及び含有量Yを調整することにより、上記遮音層のガラス転移温度が低くなる。結果として、合わせガラスの遮音性がより一層向上する。
上記保護層の厚さは、上記保護層の役割を果たし得る範囲に調整すればよく、特に限定されない。ただし、上記保護層上に凹凸を有する場合には、直接接する上記遮音層との界面への凹凸の転写を抑えられるように、可能な範囲で厚くすることが好ましい。具体的には、上記保護層の最小厚みの好ましい下限は100μm、より好ましい下限は300μm、更に好ましい下限は400μm、特に好ましい下限は450μmである。上記保護層の最大厚みの上限については特に限定されないが、充分な遮音性を達成できる程度に遮音層の厚さを確保するためには、実質的には1000μm程度が上限であり、800μmが好ましい。
本発明において合わせガラス用中間膜の少なくとも一方の表面に多数の凹部を形成する方法としては、例えば、エンボスロール法、カレンダーロール法、異形押出法、メルトフラクチャーを利用した押出リップエンボス法等が挙げられる。なかでも、隣接する底部が連続した溝形状の凹部が規則的に並列している形状が容易に得られることから、エンボスロール法が好適である。
上記ガラス板は、一般に使用されている透明板ガラスを使用することができる。例えば、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入りガラス、線入り板ガラス、着色された板ガラス、熱線吸収ガラス、熱線反射ガラス、グリーンガラス等の無機ガラスが挙げられる。また、ガラスの表面に紫外線遮蔽コート層が形成された紫外線遮蔽ガラスも用いることができる。更に、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアクリレート等の有機プラスチックス板を用いることもできる。
上記ガラス板として、2種類以上のガラス板を用いてもよい。例えば、透明フロート板ガラスと、グリーンガラスのような着色されたガラス板との間に、本発明の合わせガラス用中間膜を積層した合わせガラスが挙げられる。また、上記ガラス板として、2種以上の厚さの異なるガラス板を用いてもよい。
真空脱気法では、少なくとも2枚のガラス板の間に合わせガラス用中間膜が積層された積層体を、ゴムバックに入れて減圧吸引し、ガラス板と中間膜との間に残留する空気を脱気しながら予備圧着し、次いで、例えばオートクレーブ内で加熱加圧して本圧着を行う。ここで予備圧着時に、脱気と加熱とを同時に行うことにより、大幅に製造時間を短縮して生産効率を上げることが可能となる。本発明の合わせガラス用中間膜を用いることにより、予備圧着時に脱気と加熱とを同時に行っても先行シールが起こることを防止することができ、高い脱気性を発揮して、透明性の高い合わせガラスを得ることができる。
(保護層用樹脂組成物の調製)
平均重合度が1700のポリビニルアルコールをn−ブチルアルデヒドでアセタール化することにより得られたポリビニルブチラール(アセチル基量1モル%、ブチラール基量69モル%、水酸基量30モル%)100質量部に対して、可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)36質量部を添加した。更に、接着力調整剤として、2−エチル酪酸マグネシウムと酢酸マグネシウムとの混合物(質量比で1:1)を、マグネシウムの含有量が50ppmとなるように添加した。ミキシングロールで充分に混練し、保護層用樹脂組成物を得た。
平均重合度が2300のポリビニルアルコールをn−ブチルアルデヒドでアセタール化することにより得られたポリビニルブチラール(アセチル基量12.5モル%、ブチラール基量64モル%、水酸基量23.5モル%)100質量部に対して、可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)76.5質量部を添加し、ミキシングロールで充分に混練し、中間層用樹脂組成物を得た。
得られた中間層用樹脂組成物と保護層用樹脂組成物を、共押出機を用いて共押出することにより、保護層用樹脂組成物からなる第1の保護層、中間層用樹脂組成物からなる中間層及び保護層用樹脂組成物からなる第2の保護層がこの順に積層された3層構造の合わせガラス用中間膜を得た。
なお、凹凸付与後に得られる合わせガラス用中間膜において、第1の保護層の厚み方向の断面形状が楔形、最大厚みが525μm、最小厚みが350μm、中間層の厚み方向の断面形状が楔形、最大厚みが150μm、最小厚みが100μm、第2の保護層の厚み方向の断面形状が楔形、最大厚みが525μm、最小厚みが350μm、中間膜全体の厚み方向の断面形状が楔形、最大厚みが1200μm、最小厚みが800μmとなるように押出条件を設定した。
第1の工程として、下記の手順により合わせガラス用中間膜の両面にランダムな凹凸形状を転写した。まず、鉄ロール表面に、ブラスト剤を用いてランダムな凹凸を施した後、該鉄ロールをバーチカル研削し、更に、より微細なブラスト剤を用いて研削後の平坦部に微細な凹凸を施すことにより、粗大なメインエンボスと微細なサブエンボスをもつ同形状の1対のロールを得た。該1対のロールを凹凸形状転写装置として用い、得られた合わせガラス用中間膜の両面にランダムな凹凸形状を転写した。この時の転写条件として、合わせガラス用中間膜の温度を80℃、上記ロールの温度を145℃、線速を10m/min、線幅を1.5m、プレス線圧を0〜200kN/mとした。
次いで、合わせガラス用中間膜の第2の保護層の表面にも同様の操作を施し、底部が連続した溝形状(刻線状)の凹部を付与した。以下、第1の保護層の表面を第1の表面、第2の保護層の表面を第2の表面と、呼ぶことが有る。また、第1の表面が有する底部が連続した溝形状の凹部と、第2の表面が有する底部が連続した溝形状の凹部との交差角θが20°となるようにした。
JIS B 0601(1994)に準じる方法により、得られた合わせガラス用中間膜の第1の表面及び第2の表面における底部が連続した溝形状の凹部の間隔Sm、粗さRzを測定した。なお、測定方向は底部が連続した溝形状に対して垂直方向とし、カットオフ値=2.5mm、基準長さ=2.5mm、評価長さ=12.5mm、触針の先端半径=2μm、先端角度=60°、測定速度=0.5mm/sの条件で測定を行った。合わせガラス用中間膜表面の形状のばらつきがあるため、面内を5点測定し、その平均値を評価結果とした。
また、合わせガラス用中間膜を片刃カミソリ(フェザー安全カミソリ社製、FAS−10)を用いて底部が連続した溝形状の方向に対して垂直方向、かつ、膜厚み方向に平行に、切断面を変形させないように、カミソリを凹部と垂直方向に滑らせることなく、厚み方向に平行方向に押し出すことで切断し、その断面をマイクロスコープ(オリンパス社製「DSX−100」)を用いて観察し、測定倍率を277倍にて撮影し、更に撮影画像を50μm/20mmになるように拡大表示させた状態で、付属ソフト内の計測ソフトを用いて、底部が連続した溝形状の底部に内接する円を描いたときの該円の半径(即ち、曲率半径R)を求めた。また、測定時の環境は23℃及び30RH%下とした。
また、得られた合わせガラス用中間膜の隣接する底部が連続した溝形状の凹部の最底部間の最短距離を結んだ線の方向に、JIS B 0601(1994)に準拠して粗さ曲線を作成したところ、得られた粗さ曲線の高さが最大となる点が、該最底部間の最短距離を結んだ線の中心に位置していた。即ち、得られた合わせガラス用中間膜の隣接する底部が連続した溝形状の凹部は、最底部間の最短距離を結んだ線に対して垂直な線を軸にしたときに、対称の形状であった。
得られた合わせガラス用中間膜の厚みが厚い方の端部から、30cmの位置にガラスの中心が来るように、得られた合わせガラス用中間膜を二枚のクリアガラス板(縦30cm×横30cm×厚さ2.5mm)の間に挟み、はみ出た部分を切り取り、積層体を得た。得られた積層体をガラスの表面温度が50℃になるまでオーブン内で予備加熱した後、ゴムバッグ内に移し、ゴムバッグを吸引減圧機に接続し、加熱すると同時に−600mmHgの減圧下で10分間保持しながら、積層体の温度(予備圧着温度)が90℃となるように加熱した後、大気圧に戻して予備圧着を終了した。
予備圧着された積層体をオートクレーブ中に入れ、温度140℃、圧力1300kPaの条件下で10分間保持した後、50℃まで温度を下げ大気圧に戻すことにより本圧着を終了して、合わせガラスを得た。
合わせガラスを作製した後、温度25℃、湿度30%の環境下で4週間静置した。その後、合わせガラスを液体窒素により冷却することでガラスと合わせガラス用中間膜を引き剥がした。得られた合わせガラス用中間膜を、厚さ方向に切断し、温度25℃、湿度30%の環境下に2時間静置した後、保護層と中間層との間に指又は機械を入れ、温度25℃、湿度30%の環境下で剥離し、保護層及び中間層のそれぞれについて10gの長方形状の測定試料を得た。得られた測定試料について、ソックスレー抽出器を用いて12時間、ジエチルエーテルで可塑剤を抽出した後、測定試料中の可塑剤の定量を行い、保護層及び中間層中の可塑剤の含有量を求めた。
用いるポリビニルブチラールのアセチル基量、ブチラール基量及び水酸基量、可塑剤の含有量を表1、2に示すように変更し、三角形斜線型ミルを用いて表面にミル加工を施した金属ロールの形状を変更することにより、第1の保護層、中間層及び第2の保護層の最大厚み、最小厚み、楔角及び断面形状を表1、2に示すように変更し、第1の表面及び第2の表面の底部が連続した溝形状の凹部の曲率半径R、間隔Sm、粗さRzを表1、2に示したようにした以外は、実施例1と同様の方法により合わせガラス用中間膜及び積層体を作製した。
実施例及び比較例で得られた合わせガラス用中間膜及び合わせガラスについて、以下の方法により予備圧着後の積層体の平行光線透過率を評価した。
即ち、JIS K 7105に準拠して、合わせガラス製造時における予備圧着後の積層体の平行光線透過率Tp(%)を、ヘーズメーター(村上色彩研究所社製、HM−150)を用いて測定した。
測定位置は積層体の2つの対角線が交差する中央部、積層体の各頂点から対角線方向に10cm離れた4点を合わせた5点として、その平均値をTpとした。
測定前に上記測定点を中心に5cm×5cmで積層体から切り出し、測定用サンプルとする。
なお、合わせガラスの透明性の低下は、予備圧着時における脱気不良に起因する。従って、合わせガラス用中間膜の脱気性は、合わせガラスの発泡性等を評価するよりも、予備圧着後の積層体の平行光線透過率を測定することにより、より精密に評価することができる。
結果を表1、2に示した。
2 任意に選択した一の凹部に隣接する凹部
3 任意に選択した一の凹部に隣接する凹部
A 凹部1と凹部2との間隔
B 凹部1と凹部3との間隔
20 合わせガラス用中間膜の表面
21 底部が連続した溝形状の凹部
22 凸部
30 合わせガラス用中間膜の表面
31 底部が連続した溝形状の凹部
32 凸部
33 隣接する底部が連続した溝形状の凹部の最底部間の最短距離を結んだ線
34 隣接する底部が連続した溝形状の凹部の最底部間の最短距離を結んだ線の中心に引いた該最底部間の最短距離を結んだ線に対して垂直な線
Claims (10)
- 少なくとも一方の表面に多数の凹部を有し、前記凹部は、底部が連続した溝形状を有し、隣接する前記底部が連続した溝形状の凹部が規則的に並列している合わせガラス用中間膜であって、前記底部が連続した溝形状の凹部の底部の曲率半径Rが45μm以下であり、
一端と、前記一端の反対側に他端とを有し、前記他端の厚みが、前記一端の厚みよりも大きいことを特徴とする合わせガラス用中間膜。 - 底部が連続した溝形状の凹部の底部の曲率半径Rが0.1μm以上であることを特徴とする請求項1記載の合わせガラス用中間膜。
- 隣接する底部が連続した溝形状の凹部の最底部間の最短距離を結んだ線の方向に、JIS B 0601(1994)に準拠して粗さ曲線を作成したときに、高さが最大となる点が前記最底部間の最短距離を結んだ線の中心に位置していないことを特徴とする請求項1又は2記載の合わせガラス用中間膜。
- 底部が連続した溝形状の凹部の間隔Smが400μm以下であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の合わせガラス用中間膜。
- 底部が連続した溝形状の凹部の粗さRzが60μm以下であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の合わせガラス用中間膜。
- 多数の凹部を有する表面は、更に多数の凸部を有し、かつ、前記凸部の頭頂部が平坦ではないことを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の合わせガラス用中間膜。
- アルカリ金属、アルカリ土類金属及びマグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種の金属を含み、前記アルカリ金属、アルカリ土類金属及びマグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種の金属の含有量が1ppm以上、500ppm以下であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6に記載の合わせガラス用中間膜。
- 一方の表面及び該一方の表面とは反対側の表面の両方に多数の凹部を有し、前記凹部は、底部が連続した溝形状を有し、前記一方の表面が有する前記底部が連続した溝形状の凹部と前記反対側の表面が有する前記底部が連続した溝形状の凹部との交差角θが0°を超えることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6又は7に記載の合わせガラス用中間膜。
- 厚み方向に第1の樹脂層と第2の樹脂層と第3の樹脂層とをこの順に有する積層構造を有し、前記第1の樹脂層の厚みと、前記第3の樹脂層の厚みとが異なることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7又は8に記載の合わせガラス用中間膜。
- 請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の合わせガラス用中間膜が、一対のガラス板の間に積層されていることを特徴とする合わせガラス。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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