本開示の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
[羽ばたき装置の全体構成]
図1は、実施の形態における羽ばたき装置1の概略斜視図であり、図2は、羽ばたき装置1の要部の概略斜視図である。図3(A)および図3(B)は、動力伝達機構30の斜視図である。図4(A)は、回転運動伝達部30Aおよび第1運動変換部30Bの近傍の構成を示す側面図であり、図4(B)は、第1運動変換部30Bの構成を示す平面図である。図5は、右側第2運動変換部30C1および左側第2運動変換部30C2の近傍の構成ならびにホバリング時の右側羽体40Rおよび左側羽体40Lの挙動を示す平面図である。図6(A)および図6(B)は、右側ローラ制御機構50Aの構成を示す斜視図および右側ローラ37Rの可動範囲を示す平面図であり、図6(C)および図6(D)は、右側ローラ制御機構50Aの動作を示す側面図である。図7(A)および図7(B)は、左側ローラ制御機構50Bの構成を示す斜視図および左側ローラ37Lの可動範囲を示す平面図であり、図7(C)および図7(D)は、左側ローラ制御機構50Bの動作を示す側面図である。まず、これら図1ないし図7を参照して、本実施の形態における羽ばたき装置1の全体構成について説明する。
図1に示すように、羽ばたき装置1は、躯体10と、躯体10に組付けられた動力源としての主回転電動機20と、主回転電動機20にて発生した動力を伝達する動力伝達機構30と、動力伝達機構30によって駆動される一対の羽体である第1羽体としての右側羽体40Rおよび第2羽体としての左側羽体40Lと、右側羽体40Rおよび左側羽体40Lの羽ばたき動作を変更させるための羽ばたき制御機構50と、上述した主回転電動機20に電力を供給するための図示しないバッテリとを備えている。主回転電動機20および動力伝達機構30は、右側羽体40Rおよび左側羽体40Lに対して揺動運動を入力するアクチュエータを構成している。
ここで、図1に示すように、羽ばたき装置1の前後、左右および上下にそれぞれX軸、Y軸およびZ軸をとり、羽ばたき装置1から見た前方側および後方側に向けての方向をそれぞれX1方向およびX2方向と定義し、羽ばたき装置1から見た右方側および左方側に向けての方向をそれぞれY1方向およびY2方向と定義し、羽ばたき装置1から見た上方側および下方側に向けての方向をそれぞれZ1方向およびZ2方向と定義し、以下においては、これら軸および方向を用いて説明を行なう。
なお、図2を参照して、上述したX軸が延在する方向である羽ばたき装置1の前後方向が、後述するスライダ35が往復直線運動する第1方向に該当し、上述したZ軸が延在する方向である羽ばたき装置1の上下方向が、後述する右側回転体38Rおよび左側回転体38Lの各々の第2回転軸102R,102L(図5参照)が延在する第2方向に該当する。また、上述したY軸が延在する方向である羽ばたき装置1の左右方向が、後述する右側回転体38Rおよび左側回転体38Lが並ぶ方向である第3方向に該当する。
(躯体の構成)
図1および図2に示すように、躯体10は、羽ばたき装置1の本体部を構成する部材であり、上述した主回転電動機20、動力伝達機構30、羽ばたき制御機構50およびバッテリが組付けられてなるものである。躯体10は、複数のフレーム状の部材が組み合わされた骨組みにて構成されており、これに加えて当該骨組みを覆う図示しないカバーを含んでいてもよい。
具体的には、図2に示すように、躯体10は、略平板状の一対のベースフレームとしての下フレーム11および上フレーム12と、矩形枠状の支持フレーム13と、棒状に延びる柱状フレーム14と、複数のステム15とを含んでいる。
複数のステム15の各々は、Z軸方向に延在するように互いに平行に配置されている。図示するように、本実施の形態においては、合計で4本のステム15が用いられており、これら4本のステム15が、それぞれ羽ばたき装置1の右前部、右後部、左前部および左後部に配置されている。
下フレーム11および上フレーム12は、複数のステム15に架設されることで当該複数のステム15によって支持されており、これら下フレーム11および上フレーム12は、Z軸方向の異なる位置に配置されている。より詳細には、下フレーム11は、羽ばたき装置1の上下方向の略中央部に配置されており、上フレーム12は、羽ばたき装置1の上下方向の上端部寄りの位置に配置されている。
支持フレーム13は、下フレーム11と上フレーム12との間に配置されている。より詳細には、支持フレーム13は、Z軸方向において下フレーム11と上フレーム12とによって挟み込まれた状態にあり、これら下フレーム11と上フレーム12とに固定されている。支持フレーム13は、その一対の開口面がY1方向およびY2方向を向くように配設されている。
柱状フレーム14は、上フレーム12に固定されており、当該上フレーム12から上方に向けて延在するように立設されている。
上述した複数のステム15は、炭素繊維製の棒状部材にて構成されていることが好ましく、上述した下フレーム11、上フレーム12、支持フレーム13および柱状フレーム14は、いずれも樹脂製の部材にて構成されていることが好ましい。このように構成することにより、高い剛性を確保しつつ、羽ばたき装置1を軽量化することができる。なお、下フレーム11、上フレーム12、支持フレーム13および柱状フレーム14には、軽量化のために、必要な剛性を確保した上で孔や切り欠き等が設けられていることが好ましい。
(主回転電動機の構成)
図1および図2に示すように、主回転電動機20は、羽ばたき装置1の下部に配置されており、下フレーム11に固定されることで躯体10に組付けられている。図2ないし図4に示すように、主回転電動機20は、回転運動を出力する出力シャフト20a(図4(A)参照)を含んでおり、当該出力シャフト20aは、Z軸方向に沿って延在するように配置されている。出力シャフト20aの先端には、ギヤ20bが固定されている。ギヤ20bは、出力シャフト20aの軸線回りの回転に伴って出力シャフト20aと共に回転する。
主回転電動機20は、使用者もしくは自動化されたアルゴリズムにより制御指示が与えられる制御部によってその動作が制御される。具体的には、当該制御部により、上述した図示しないバッテリから主回転電動機20に供給される電力が可変に調節され、これによって主回転電動機20の出力(すなわち回転数)が制御される。なお、上述した主回転電動機20の動作制御は、従来公知の一般的な手法であるため、ここではその詳細な説明は省略する。
(動力伝達機構の全体構成)
図2および図3に示すように、動力伝達機構30は、回転運動伝達部30Aと、第1運動変換部30Bと、一対の第2運動変換部である右側第2運動変換部30C1および左側第2運動変換部30C2とを含んでいる。回転運動伝達部30Aは、主回転電動機20の出力シャフト20aに生じた回転運動をそのまま回転運動として伝達する動力伝達部である。第1運動変換部30Bは、回転運動伝達部30Aから伝達された回転運動を往復直線運動に変換して伝達する動力伝達部である。右側第2運動変換部30C1は、羽ばたき装置1の右舷に設けられており、第1運動変換部30Bから伝達された往復直線運動を回転方向に沿った往復運動に変換して伝達する動力伝達部である。左側第2運動変換部30C2は、羽ばたき装置1の左舷に設けられており、第1運動変換部30Bから伝達された往復直線運動を回転方向に沿った往復運動に変換して伝達する動力伝達部である。
(回転運動伝達部の構成)
図2ないし図4に示すように、回転運動伝達部30Aは、第1伝達部材31と第2伝達部材32とを含んでいる。第1伝達部材31および第2伝達部材32は、いずれも支持フレーム13によって回転可能に支持されることで躯体10に組付けられている。
第1伝達部材31は、Z軸方向に沿って延在する第1接続ロッド31aと、第1接続ロッド31aの一端に固定されたギヤ31bと、第1接続ロッド31aの他端に固定されたギヤ31cとを有している。ギヤ31bおよびギヤ31cは、いずれも第1接続ロッド31aと共に第1接続ロッド31aの軸線回りに回転する。
第2伝達部材32は、Z軸方向に沿って延在する第2接続ロッド32aと、第2接続ロッド32aの所定位置に固定されたギヤ32bと、第2接続ロッド32aの所定位置に固定された回転伝達部材としてのディスク32cとを有している。ギヤ32bおよびディスク32cは、いずれも第2接続ロッド32aと共に第2接続ロッド32aの軸線回りに回転する。
第1接続ロッド31aの一端に固定されたギヤ31bは、出力シャフト20aの先端に固定されたギヤ20bと歯合している。また、第2接続ロッド32aの所定位置に固定されたギヤ32bは、第1接続ロッド31aの他端に固定されたギヤ31cと歯合している。
以上により、主回転電動機20の出力シャフト20aに生じた回転運動が、第1伝達部材31および第2伝達部材32に回転運動のまま伝達されることになり、その結果、回転運動伝達部30Aの出力部である回転伝達部材としてのディスク32cが第2接続ロッド32aの軸線回りに回転運動することになる。すなわち、ディスク32cは、第2接続ロッド32aの延在方向と平行な方向(すなわちZ軸方向)に延在する第1回転軸101(図4(B)参照)を回転中心として回転する。なお、第1伝達部材31および第2伝達部材32は、ギヤ31b,31c,32bの歯数が調節されることにより、減速機として機能する。
(第1運動変換部の構成)
図2ないし図4に示すように、第1運動変換部30Bは、主回転電動機20および回転運動伝達部30Aの上方に配置されており、第1クランクアーム33Aおよび第2クランクアーム33Bならびにクランクピン34a,34b1,34b2(図4参照)からなるクランク機構と、スライダ35とを含んでいる。
スライダ35は、Y軸方向における外形寸法がX軸方向における外形寸法およびZ軸方向における外形寸法のいずれよりも小さい略平板状の形状を有しており、回転運動伝達部30Aの第2伝達部材32の上方に位置している。スライダ35は、躯体10によって移動可能に支持されている。
より詳細には、スライダ35は、支持フレーム13に設けられた一対のスライドガイド16a,16bによって移動可能に支持されている。スライドガイド16a,16bは、X軸方向に沿って延在するとともにZ軸方向に並んで配設されるように支持フレーム13によって支持されており、スライダ35の所定位置には、当該スライドガイド16a,16bが挿通される複数の貫通孔が設けられている。これにより、当該複数の貫通孔にスライドガイド16a,16bが挿通されることにより、スライダ35が、第1方向であるX軸方向に沿って一対のスライドガイド16a,16bよって案内されることになる。
ここで、スライダ35および一対のスライドガイド16a,16bは、支持フレーム13の内部に配置されている。すなわち、支持フレーム13は、X軸方向およびZ軸方向においてスライダ35および一対のスライドガイド16a,16bを取り囲んでいる。このように構成することにより、スライダ35が配置される部分の動力伝達機構30を全体として薄型化することができ、羽ばたき装置1の小型化が可能になる。なお、スライダ35には、軽量化のために、必要な剛性を確保した上で孔や切り欠き等が設けられていることが好ましい。
第1クランクアーム33Aおよび第2クランクアーム33Bを含むクランク機構は、スライダ35の下方であって第2伝達部材32の上方に配置されている。より詳細には、クランク機構は、支持フレーム13によって囲まれた空間の一部にY軸方向において跨ることとなるように、Z軸方向においてスライダ35と隣り合うように配設されている。第1クランクアーム33Aおよび第2クランクアーム33Bは、いずれもその延在方向がXY平面と平行となるように配置されている。
図4に示すように、第1クランクアーム33Aは、その一端がクランクピン34aによって第2伝達部材32のディスク32cの偏心位置に回転可能に組付けられており、その他端がクランクピン34b1によってスライダ35の前端位置に回転可能に組付けられている。第2クランクアーム33Bは、その一端がクランクピン34aによって第2伝達部材32のディスク32cの偏心位置に回転可能に組付けられており、その他端がクランクピン34b2によってスライダ35の後端位置に回転可能に組付けられている。
ここで、第1クランクアーム33Aの上記一端と第2クランクアーム33Bの上記一端とは、上述したように、共通のクランクピン34aによってディスク32cに回転可能に組付けられている。そのため、第1クランクアーム33Aおよび第2クランクアーム33Bの各々の一端は、ディスク32cの第1回転軸101の延在方向(すなわちZ軸方向)と平行な方向に延在する共通の回転軸を回転中心として、当該ディスク32cの偏心位置に回転可能に接続されることになる。
一方、第1クランクアーム33Aの上記他端と第2クランクアーム33Bの上記他端とは、上述したように、それぞれ互いに異なるクランクピン34b1,34b2によってスライダ35に回転可能に組付けられている。そのため、第1クランクアーム33Aおよび第2クランクアーム33Bの各々の他端は、ディスク32cの第1回転軸101の延在方向(すなわちZ軸方向)と平行な方向に延在しかつスライダ35の移動方向であるX軸方向において距離をもって位置する互いに異なる回転軸を回転中心として、スライダ35に対して回転可能に接続されることになる。
以上により、図4に示すように、回転運動伝達部30Aの出力部である回転伝達部材としてのディスク32cが第1回転軸101を回転中心として図中に示す矢印DR0方向に回転運動することにより、ディスク32cに組付けられた第1クランクアーム33Aの上記一端および第2クランクアーム33Bの上記一端(すなわち、クランクピン34aが位置する側の端部)も第1回転軸101を回転中心として矢印DR0方向に回転することになる。これに伴い、第1運動変換部30Bの出力部としてのスライダ35は、第1クランクアーム33Aおよび第2クランクアーム33Bによって周期的に押し引きされることになり、スライドガイド16a,16bの延在方向であるX軸方向に沿って往復直線運動することになる。
なお、図2ないし図4に示すように、スライダ35には、弾性付勢機構である第1付勢部としての前側弾性体60Aおよび第2付勢部としての後側弾性体60Bが設けられている。
(右側第2運動変換部の構成)
図2、図3および図5に示すように、右側第2運動変換部30C1は、スライダ35の右方に配置されており、第1弾性ベルトとしての右前側弾性ベルト36R1および右後側弾性ベルト36R2と、第1被掛合体としての右側ローラ37Rと、第1回転体としての右側回転体38Rとを主として含んでいる。
右側回転体38Rは、略円柱状の形状を有しており、躯体10によって回転可能に支持されている。より詳細には、右側回転体38Rは、下フレーム11および上フレーム12に固定されることでZ軸方向に沿って延在する右側ガイドシャフト18Rに回転可能に取付けられている。これにより、右側回転体38Rは、その周面がスライダ35の右側面35Rに対向するように配置されているとともに、右側ガイドシャフト18Rの延在方向(すなわちZ軸方向)と平行な方向に延在する第2回転軸102R(図5参照)を回転中心として回転可能に支持されている。
右前側弾性ベルト36R1および右後側弾性ベルト36R2は、それぞれスライダ35および右側回転体38Rに掛架されている。より詳細には、右前側弾性ベルト36R1は、その一端がスライダ35の右側面35Rの前端部に固定されており、スライダ35に対する非固定部分に該当するその他端が右側回転体38Rの周面の所定位置に固定されている。また、右後側弾性ベルト36R2は、その一端がスライダ35の右側面35Rの後端部に固定されており、スライダ35に対する非固定部分に該当するその他端が右側回転体38Rの周面の所定位置に固定されている。
ここで、右前側弾性ベルト36R1および右後側弾性ベルト36R2は、Z軸方向において互いにずれた位置に配置されている。より詳細には、右前側弾性ベルト36R1は、右後側弾性ベルト36R2よりも上方の位置に配置されており、右後側弾性ベルト36R2は、右前側弾性ベルト36R1よりも下方の位置に配置されている。これにより、右前側弾性ベルト36R1および右後側弾性ベルト36R2は、互いに干渉することなく独立してスライダ35と右側回転体38Rとを接続している。
右前側弾性ベルト36R1および右後側弾性ベルト36R2は、いずれもスライダ35から右側回転体38Rに動力を伝達するための部材であり、適度な弾性を有する樹脂製またはゴム製の部材にて構成されている。このように適度な弾性を有する部材にて右前側弾性ベルト36R1および右後側弾性ベルト36R2を構成することにより、右側羽体40Rが羽ばたき動作を行なうことによって主回転電動機20に印加されることとなる負荷が、当該右前側弾性ベルト36R1および右後側弾性ベルト36R2が伸縮することによって相当程度に吸収され、当該負荷の変動が抑制できることになり、羽ばたき装置1の運動効率が向上することになる。
右側ローラ37Rは、スライダ35と右側回転体38Rとの間に配置されており、躯体10によって上述した右側回転体38Rの第2回転軸102Rを回転中心として回転移動可能に支持されている。具体的には、上述した右側回転体38Rを回転可能に支持する右側ガイドシャフト18Rに、当該右側ガイドシャフト18Rに対して回転可能となるように一対のアームである右側上アーム19R1および右側下アーム19R2が組付けられており、当該右側上アーム19R1および右側下アーム19R2に固定されることでZ軸方向に沿って延在する右側ローラシャフト17Rに、右側ローラ37Rが回転可能に取付けられている。
スライダ35と右側回転体38Rとの間に位置する部分の右前側弾性ベルト36R1および右後側弾性ベルト36R2は、それぞれ右側ローラ37Rに掛け回されている。換言すれば、右側ローラ37Rは、右前側弾性ベルト36R1および右後側弾性ベルト36R2の各々に所定の大きさの張力が付与されることとなるように、これら右前側弾性ベルト36R1および右後側弾性ベルト36R2に当接している。
ここで、Z軸方向に沿って見た場合に、右前側弾性ベルト36R1および右後側弾性ベルト36R2の各々は、いずれもS字状に延在するようにスライダ35、右側ローラ37Rおよび右側回転体38Rに跨って掛架されており、スライダ35と右側ローラ37Rとの間の位置および右側ローラ37Rと右側回転体38Rとの間の位置において、互いに重なるように交差している。これにより、右側ローラ37Rは、右前側弾性ベルト36R1および右後側弾性ベルト36R2によって挟み込まれることになる。
以上により、上述したスライダ35のX軸方向に沿った往復直線運動に伴い、右側回転体38Rに固定された部分の右前側弾性ベルト36R1および右後側弾性ベルト36R2がそれぞれ右側回転体38Rの回転方向に沿って送られることになり、これに伴って右側第2運動変換部30C1の出力部としての右側回転体38Rが、上述した第2回転軸102Rを回転中心として回転方向に往復運動することになる。
なお、上述したように、右前側弾性ベルト36R1および右後側弾性ベルト36R2の各々が右側ローラ37Rに掛け回されていることにより、各種の飛行態様を実現することが可能になる。
ここで、本実施の形態においては、右前側弾性ベルト36R1および右後側弾性ベルト36R2をいずれも歯を有さない摩擦ベルトにて構成するとともに、右側ローラ37Rおよび右側回転体38Rをいずれも歯を有さない摩擦ローラにて構成しているが、必ずしもこのように構成する必要はなく右前側弾性ベルト36R1および右後側弾性ベルト36R2をいずれも歯付きベルトにて構成するとともに、右側ローラ37Rおよび右側回転体38Rをいずれも歯付きローラ(ギヤ)にて構成することとしてもよい。
また、本実施の形態においては、右前側弾性ベルト36R1および右後側弾性ベルト36R2からなる2本の弾性ベルトを用いてスライダ35と右側回転体38Rとを接続しているが、これを1本の弾性ベルトにて接続することも可能である。その場合には、1本の弾性ベルトの一端をスライダ35の前端部に固定するとともに他端をスライダ35の後端部に固定し、スライダ35に対する当該1本の弾性ベルトの非固定部分を右側回転体38Rに巻回または固定することとすればよい。
(左側第2運動変換部の構成)
図2、図3および図5に示すように、左側第2運動変換部30C2は、スライダ35の左方に配置されており、第2弾性ベルトとしての左前側弾性ベルト36L1および左後側弾性ベルト36L2と、第2被掛合体としての左側ローラ37Lと、第2回転体としての左側回転体38Lとを主として含んでいる。
左側回転体38Lは、略円柱状の形状を有しており、躯体10によって回転可能に支持されている。より詳細には、左側回転体38Lは、下フレーム11および上フレーム12に固定されることでZ軸方向に沿って延在する左側ガイドシャフト18Lに回転可能に取付けられている。これにより、左側回転体38Lは、その周面がスライダ35の左側面35Lに対向するように配置されているとともに、左側ガイドシャフト18Lの延在方向(すなわちZ軸方向)と平行な方向に延在する第2回転軸102L(図5参照)を回転中心として回転可能に支持されている。
左前側弾性ベルト36L1および左後側弾性ベルト36L2は、スライダ35および左側回転体38Lに掛架されている。より詳細には、左前側弾性ベルト36L1は、その一端がスライダ35の左側面35Lの前端部に固定されており、スライダ35に対する非固定部分に該当するその他端が左側回転体38Lの周面の所定位置に固定されている。また、左後側弾性ベルト36L2は、その一端がスライダ35の左側面35Lの後端部に固定されており、スライダ35に対する非固定部分に該当するその他端が左側回転体38Lの周面の所定位置に固定されている。
ここで、左前側弾性ベルト36L1および左後側弾性ベルト36L2は、Z軸方向において互いにずれた位置に配置されている。より詳細には、左前側弾性ベルト36L1は、左後側弾性ベルト36L2よりも上方の位置に配置されており、左後側弾性ベルト36L2は、左前側弾性ベルト36L1よりも下方の位置に配置されている。これにより、左前側弾性ベルト36L1および左後側弾性ベルト36L2は、互いに干渉することなく独立してスライダ35と左側回転体38Lとを接続している。
左前側弾性ベルト36L1および左後側弾性ベルト36L2は、いずれもスライダ35から左側回転体38Lに動力を伝達するための部材であり、適度な弾性を有する樹脂製またはゴム製の部材にて構成されている。このように適度な弾性を有する部材にて左前側弾性ベルト36L1および左後側弾性ベルト36L2を構成することにより、左側羽体40Lが羽ばたき動作を行なうことによって主回転電動機20に印加されることとなる負荷が、当該左前側弾性ベルト36L1および左後側弾性ベルト36L2が伸縮することによって相当程度に吸収され、当該負荷の変動が抑制できることになり、羽ばたき装置1の運動効率が向上することになる。
左側ローラ37Lは、スライダ35と左側回転体38Lとの間に配置されており、躯体10によって上述した左側回転体38Lの第2回転軸102Lを回転中心として回転移動可能に支持されている。具体的には、上述した左側回転体38Lを回転可能に支持する左側ガイドシャフト18Lに、当該左側ガイドシャフト18Lに対して回転可能となるように一対のアームである左側上アーム19L1および左側下アーム19L2が組付けられており、当該左側上アーム19L1および左側下アーム19L2に固定されることでZ軸方向に沿って延在する左側ローラシャフト17Lに、左側ローラ37Lが回転可能に取付けられている。
スライダ35と左側回転体38Lとの間に位置する部分の左前側弾性ベルト36L1および左後側弾性ベルト36L2は、それぞれ左側ローラ37Lに掛け回されている。換言すれば、左側ローラ37Lは、左前側弾性ベルト36L1および左後側弾性ベルト36L2の各々に所定の大きさの張力が付与されることとなるように、これら左前側弾性ベルト36L1および左後側弾性ベルト36L2に当接している。
ここで、Z軸方向に沿って見た場合に、左前側弾性ベルト36L1および左後側弾性ベルト36L2の各々は、いずれもS字状に延在するようにスライダ35、左側ローラ37Lおよび左側回転体38Lに跨って掛架されており、スライダ35と左側ローラ37Lとの間の位置および左側ローラ37Lと左側回転体38Lとの間の位置において、互いに重なるように交差している。これにより、左側ローラ37Lは、左前側弾性ベルト36L1および左後側弾性ベルト36L2によって挟み込まれることになる。
以上により、上述したスライダ35のX軸方向に沿った往復直線運動に伴い、左側回転体38Lに固定された部分の左前側弾性ベルト36L1および左後側弾性ベルト36L2がそれぞれ左側回転体38Lの回転方向に沿って送られることになり、これに伴って左側第2運動変換部30C2の出力部としての左側回転体38Lが、上述した第2回転軸102Lを回転中心として回転方向に往復運動することになる。
なお、上述したように、左前側弾性ベルト36L1および左後側弾性ベルト36L2の各々が左側ローラ37Lに掛け回されていることにより、各種の飛行態様を実現することが可能になる。
ここで、本実施の形態においては、左前側弾性ベルト36L1および左後側弾性ベルト36L2をいずれも歯を有さない摩擦ベルトにて構成するとともに、左側ローラ37Lおよび左側回転体38Lをいずれも歯を有さない摩擦ローラにて構成しているが、必ずしもこのように構成する必要はなく、左前側弾性ベルト36L1および左後側弾性ベルト36L2をいずれも歯付きベルトにて構成するとともに、左側ローラ37Lおよび左側回転体38Lをいずれも歯付きローラ(ギヤ)にて構成することとしてもよい。
また、本実施の形態においては、左前側弾性ベルト36L1および左後側弾性ベルト36L2からなる2本の弾性ベルトを用いてスライダ35と左側回転体38Lとを接続しているが、これを1本の弾性ベルトにて接続することも可能である。その場合には、1本の弾性ベルトの一端をスライダ35の前端部に固定するとともに他端をスライダ35の後端部に固定し、スライダ35に対する当該1本の弾性ベルトの非固定部分を左側回転体38Lに巻回または固定することとすればよい。
(動力伝達機構の小括)
以上において説明した動力伝達機構30とすることにより、主回転電動機20の動力が右側回転体38Rおよび左側回転体38Lに分配されて伝達されることになり、右側回転体38Rおよび左側回転体38Lが、それぞれ第2回転軸102R,102Lを回転中心として回転方向に同期的に往復運動することになる。
(右側羽体および左側羽体の構成)
図1、図2および図5に示すように、右側羽体40Rおよび左側羽体40Lは、それぞれ棒状に延びる右側マスト39Rおよび左側マスト39Lに取付けられている。より詳細には、右側羽体40Rは、その上縁部が右側マスト39Rに固定されており、左側羽体40Lは、その上縁部が左側マスト39Lに固定されている。
ここで、上述したように、右側回転体38Rおよび左側回転体38Lは、スライダ35の右方および左方に配置されている。より詳細には、右側回転体38Rおよび左側回転体38Lは、スライダ35を挟むようにY軸方向において並んで配置されている。
上述した右側マスト39Rおよび左側マスト39Lは、これらY軸方向において並んで配置された右側回転体38Rおよび左側回転体38Lに組付けられており、これにより右側羽体40Rおよび左側羽体40Lは、それぞれ羽ばたき装置1の右舷側および左舷側に位置することになる。
より具体的には、右側回転体38Rのスライダ35が位置する側とは反対側の端部には、右側マスト39Rの一端である基端が固定されており、左側回転体38Lのスライダ35が位置する側とは反対側の端部には、左側マスト39Lの一端である基端が固定されている。これにより、右側羽体40Rは、その先端が右側回転体38Rから見て左側回転体38Lが位置する側とは反対側に位置するようにY1方向に向けて延在することになり、左側羽体40Lは、その先端が左側回転体38Lから見て右側回転体38Rが位置する側とは反対側に位置するようにY2方向に向けて延在することになる。
以上により、図5に示すように、右側回転体38Rおよび左側回転体38Lがそれぞれ第2回転軸102R,102Lを回転中心として回転方向に同期的に往復運動することにより、右側マスト39Rおよび左側マスト39Lは、それぞれ右側回転体38Rおよび左側回転体38Lに駆動されて同期的に揺動することになる。
その際、右側羽体40Rおよび左側羽体40Lも、それぞれ上述した第2回転軸102R,102Lを回転中心として回転方向に同期的に往復運動することになるため、右側羽体40Rおよび左側羽体40Lは、その先端がそれぞれX軸方向に概ね沿って移動するように同期的に揺動することになる。
ここで、図5においては、スライダ35の往復直線運動の際のスライダ35の重心位置の移動範囲を矢印AR1にて表わしており、右側羽体40Rおよび左側羽体40Lの揺動範囲を矢印AR2にてそれぞれ表わしている。なお、スライダ35の移動範囲のうち、スライダ35が最も前方に配置された場合における位置を第1位置とするとともに、スライダ35が最も後方に配置された場合における位置を第2位置として、以下の説明においては、これら第1位置および第2位置という用語もあわせて使用する。
(羽ばたき制御機構の全体構成)
図2に示すように、羽ばたき制御機構50は、右側羽体40Rの羽ばたき動作を変更させるための右側ローラ制御機構50Aと、左側羽体40Lの羽ばたき動作を変更させるための左側ローラ制御機構50Bとを含んでいる。
(右側ローラ制御機構の構成)
図2および図6に示すように、右側ローラ制御機構50Aは、右側ローラ37Rが位置する羽ばたき装置1の右舷側に配置されており、柱状フレーム14に組付けられた各種の部品によって構成されている。右側ローラ制御機構50Aは、右側ローラ37Rの位置を可変に調節するとともに、右側ローラ37Rの軸ぶれの程度を可変に調節する。
具体的には、右側ローラ制御機構50Aは、柱状フレーム14に固定された第1ステージ51aと、第1ステージ51aに組付けられた第1副回転電動機52aおよび第1送り機構部53aと、第1送り機構部53aに組付けられた連結部材54aと、連結部材54aに固定された第2ステージ55aと、第2ステージ55aに組付けられた第2副回転電動機56aおよび第2送り機構部57aと、第2送り機構部57aに組付けられたガイド部材58aとを含んでいる。
第1副回転電動機52aの回転軸には、ピニオンギヤが組付けられている。第1送り機構部53aは、スリットが設けられたギヤボックスと、ギヤボックスによって回転可能に支持されたウォームギヤと、ウォームギヤの端部に組付けられたスパーギヤと、ウォームギヤに歯合するナット部を含む可動体とを有している。なお、ウォームギヤは、その軸方向がX軸方向に平行となるように配置されている。
第1副回転電動機52aの回転軸に組付けられたピニオンギヤは、ウォームギヤの端部に組付けられたスパーギヤに歯合しており、これにより第1副回転電動機52aの回転軸が回転することに伴い、ウォームギヤが回転する。可動体は、ギヤボックスに設けられたスリットにその一部が挿通するように配置されており、ウォームギヤが回転することでウォームギヤの軸方向(すなわちX軸方向)に沿って移動する。
第2副回転電動機56aの回転軸には、ピニオンギヤが組付けられている。第2送り機構部57aは、スリットが設けられたギヤボックスと、ギヤボックスによって回転可能に支持されたウォームギヤと、ウォームギヤの端部に組付けられたスパーギヤと、ウォームギヤに歯合するナット部を含む可動体とを含んでいる。なお、ウォームギヤは、その軸方向がZ軸方向に平行となるように配置されている。
第2副回転電動機56aの回転軸に組付けられたピニオンギヤは、ウォームギヤの端部に組付けられたスパーギヤに歯合しており、これにより第2副回転電動機56aの回転軸が回転することに伴い、ウォームギヤが回転する。可動体は、ギヤボックスに設けられたスリットにその一部が挿通するように配置されており、ウォームギヤが回転することでウォームギヤの軸方向(すなわちZ軸方向)に沿って移動する。
ガイド部材58aは、その下端にガイド部58a1を有している。ガイド部58a1の下面には、Y軸方向に沿って延在する溝部が形成されている。ガイド部58a1の上記溝部を規定する一対の壁部の間の距離は、Z軸方向に沿って異なるように構成されており、より詳細には、当該一対の壁部の間の距離が、下方から上方に向かうにつれて徐々に減じるように構成されている。
当該溝部には、右側ローラ37Rを回転可能に支持する右側ローラシャフト17Rの上端が収容されている。これにより、右側ローラシャフト17Rの上端は、ガイド部58a1の上記一対の壁部により、X軸方向において挟まれた状態とされている。
ここで、上述したように、第1送り機構部53aには、連結部材54aが組付けられている。より詳細には、連結部材54aは、その一端が第1送り機構部53aの可動体に固定されており、その他端が、上述したように第2ステージ55aに固定されている。また、上述したように、第2送り機構部57aには、ガイド部材58aが組付けられている。より詳細には、ガイド部材58aは、その上端が第2送り機構部57aの可動体に固定されており、その下端に、上述したガイド部58a1を有している。
以上により、第1副回転電動機52aが駆動されることにより、ガイド部材58aのガイド部58a1は、第1送り機構部53aのウォームギヤの軸方向と平行な方向であるX軸方向に沿って矢印DR31A方向(図6(A)参照)に移動することになる。また、第2副回転電動機56aが駆動されることにより、ガイド部材58aのガイド部58a1は、第2送り機構部57aのウォームギヤの軸方向と平行な方向であるZ軸方向に沿って矢印DR32A方向(図6(A)参照)に移動することになる。
ここで、図6(A)を参照して、第1副回転電動機52aが駆動されることでガイド部58a1が矢印DR31A方向に移動することにより、ガイド部58a1の溝部を規定する上述した一対の壁部が、右側ローラシャフト17Rの上端に当接することになり、右側ローラシャフト17Rが移動することになる。
その際、図2および図3を参照して、前述のように、右側ローラシャフト17Rは、右側上アーム19R1および右側下アーム19R2を介して右側ガイドシャフト18Rに回転可能に組付けられているため、当該右側ローラシャフト17Rは、右側回転体38Rの第2回転軸102Rを回転中心として回転移動することになる。その結果、図6(B)に示すように、右側ローラ37Rは、右側回転体38Rの第2回転軸102Rを回転中心として図中矢印AR3方向に回転移動することになる。
すなわち、右側ローラ制御機構50Aを構成する上述した各種の部品のうち、特に第1副回転電動機52aおよび第1送り機構部53aが、右側ローラ37Rの位置を可変に調節する被掛合体位置調節機構として機能することになる。
一方、図6(A)を参照して、第2副回転電動機56aが駆動されることでガイド部58a1が矢印DR32A方向に移動することにより、ガイド部58a1の溝部に対する右側ローラシャフト17Rの上端の挿入量が変化することになる。ここで、上述したように、ガイド部58a1の溝部を規定する一対の壁部の間の距離がZ軸方向に沿って異なっているため、ガイド部58a1の溝部に対する右側ローラシャフト17Rの上端の挿入量が変化することに伴い、当該一対の壁部と右側ローラシャフト17Rの上端との間の距離も変化することになる。
これにより、ガイド部58a1の右側ローラシャフト17Rに対する当接状態に変化が生じることになり、これに伴ってガイド部材58aによる右側ローラシャフト17Rの拘束状態が変化し、結果として右側ローラシャフト17Rに生じる軸ぶれ(すなわち、右側ローラ37Rに生じる軸ぶれ)の大きさが可変に調節されることになる。
すなわち、右側ローラ制御機構50Aを構成する上述した各種の部品のうち、ガイド部材58aが、右側ローラ37Rの軸ぶれを規制する規制部に該当することになり、また、右側ローラ制御機構50Aを構成する上述した各種の部品のうち、特に第2副回転電動機56aおよび第2送り機構部57aが、右側ローラ37Rの軸ぶれの大きさを可変に調節する軸ぶれ調節機構として機能することになる。
(左側第2運動変換部の構成)
図2および図7に示すように、左側ローラ制御機構50Bは、左側ローラ37Lが位置する羽ばたき装置1の左舷側に配置されており、柱状フレーム14に組付けられた各種の部品によって構成されている。左側ローラ制御機構50Bは、左側ローラ37Lの位置を可変に調節するとともに、左側ローラ37Lの軸ぶれの程度を可変に調節する。
具体的には、左側ローラ制御機構50Bは、柱状フレーム14に固定された第1ステージ51bと、第1ステージ51bに組付けられた第1副回転電動機52bおよび第1送り機構部53bと、第1送り機構部53bに組付けられた連結部材54bと、連結部材54bに固定された第2ステージ55bと、第2ステージ55bに組付けられた第2副回転電動機56bおよび第2送り機構部57bと、第2送り機構部57bに組付けられたガイド部材58bとを含んでいる。
第1副回転電動機52bの回転軸には、ピニオンギヤが組付けられている。第1送り機構部53bは、スリットが設けられたギヤボックスと、ギヤボックスによって回転可能に支持されたウォームギヤと、ウォームギヤの端部に組付けられたスパーギヤと、ウォームギヤに歯合するナット部を含む可動体とを有している。なお、ウォームギヤは、その軸方向がX軸方向に平行となるように配置されている。
第1副回転電動機52bの回転軸に組付けられたピニオンギヤは、ウォームギヤの端部に組付けられたスパーギヤに歯合しており、これにより第1副回転電動機52bの回転軸が回転することに伴い、ウォームギヤが回転する。可動体は、ギヤボックスに設けられたスリットにその一部が挿通するように配置されており、ウォームギヤが回転することでウォームギヤの軸方向(すなわちX軸方向)に沿って移動する。
第2副回転電動機56bの回転軸には、ピニオンギヤが組付けられている。第2送り機構部57bは、スリットが設けられたギヤボックスと、ギヤボックスによって回転可能に支持されたウォームギヤと、ウォームギヤの端部に組付けられたスパーギヤと、ウォームギヤに歯合するナット部を含む可動体とを含んでいる。なお、ウォームギヤは、その軸方向がZ軸方向に平行となるように配置されている。
第2副回転電動機56bの回転軸に組付けられたピニオンギヤは、ウォームギヤの端部に組付けられたスパーギヤに歯合しており、これにより第2副回転電動機56bの回転軸が回転することに伴い、ウォームギヤが回転する。可動体は、ギヤボックスに設けられたスリットにその一部が挿通するように配置されており、ウォームギヤが回転することでウォームギヤの軸方向(すなわちZ軸方向)に沿って移動する。
ガイド部材58bは、その下端にガイド部58b1を有している。ガイド部58b1の下面には、Y軸方向に沿って延在する溝部が形成されている。ガイド部58b1の上記溝部を規定する一対の壁部の間の距離は、Z軸方向に沿って異なるように構成されており、より詳細には、当該一対の壁部の間の距離が、下方から上方に向かうにつれて徐々に減じるように構成されている。
当該溝部には、左側ローラ37Lを回転可能に支持する左側ローラシャフト17Lの上端が収容されている。これにより、左側ローラシャフト17Lの上端は、ガイド部58b1の上記一対の壁部により、X軸方向において挟まれた状態とされている。
ここで、上述したように、第1送り機構部53bには、連結部材54bが組付けられている。より詳細には、連結部材54bは、その一端が第1送り機構部53bの可動体に固定されており、その他端が、上述したように第2ステージ55bに固定されている。また、上述したように、第2送り機構部57bには、ガイド部材58bが組付けられている。より詳細には、ガイド部材58bは、その上端が第2送り機構部57bの可動体に固定されており、その下端に、上述したガイド部58b1を有している。
以上により、第1副回転電動機52bが駆動されることにより、ガイド部材58bのガイド部58b1は、第1送り機構部53bのウォームギヤの軸方向と平行な方向であるX軸方向に沿って矢印DR31B方向(図7(A)参照)に移動することになる。また、第2副回転電動機56bが駆動されることにより、ガイド部材58bのガイド部58b1は、第2送り機構部57bのウォームギヤの軸方向と平行な方向であるZ軸方向に沿って矢印DR32B方向(図7(A)参照)に移動することになる。
ここで、図7(A)を参照して、第1副回転電動機52bが駆動されることでガイド部58b1が矢印DR31B方向に移動することにより、ガイド部58b1の溝部を規定する上述した一対の壁部が、左側ローラシャフト17Lの上端に当接することになり、左側ローラシャフト17Lが移動することになる。
その際、図2および図3を参照して、前述のように、左側ローラシャフト17Lは、左側上アーム19L1および左側下アーム19L2を介して左側ガイドシャフト18Lに回転可能に組付けられているため、当該左側ローラシャフト17Lは、左側回転体38Lの第2回転軸102Lを回転中心として回転移動することになる。その結果、図7(B)に示すように、左側ローラ37Lは、左側回転体38Lの第2回転軸102Lを回転中心として図中矢印AR3方向に回転移動することになる。
すなわち、左側ローラ制御機構50Bを構成する上述した各種の部品のうち、特に第1副回転電動機52bおよび第1送り機構部53bが、左側ローラ37Lの位置を可変に調節する被掛合体位置調節機構として機能することになる。
一方、図7(A)を参照して、第2副回転電動機56bが駆動されることでガイド部58b1が矢印DR32B方向に移動することにより、ガイド部58b1の溝部に対する左側ローラシャフト17Lの上端の挿入量が変化することになる。ここで、上述したように、ガイド部58b1の溝部を規定する一対の壁部の間の距離がZ軸方向に沿って異なっているため、ガイド部58b1の溝部に対する左側ローラシャフト17Lの上端の挿入量が変化することに伴い、当該一対の壁部と左側ローラシャフト17Lの上端との間の距離も変化することになる。
これにより、ガイド部58b1の左側ローラシャフト17Lに対する当接状態に変化が生じることになり、これに伴ってガイド部材58bによる左側ローラシャフト17Lの拘束状態が変化し、結果として左側ローラシャフト17Lに生じる軸ぶれ(すなわち、左側ローラ37Lに生じる軸ぶれ)の大きさが可変に調節されることになる。
すなわち、左側ローラ制御機構50Bを構成する上述した各種の部品のうち、ガイド部材58bが、左側ローラ37Lの軸ぶれを規制する規制部に該当することになり、また、左側ローラ制御機構50Bを構成する上述した各種の部品のうち、特に第2副回転電動機56bおよび第2送り機構部57bが、左側ローラ37Lの軸ぶれの大きさを可変に調節する軸ぶれ調節機構として機能することになる。
(動力伝達機構、右側羽体および左側羽体の動作)
図8ないし図11は、羽ばたき装置1の動力伝達機構30の動作を説明するための図である。ここで、各図における(A)および(B)は、第1運動変換部30Bの動作を説明するための平面図および側面図であり、各図における(C)は、右側第2運動変換部30C1および左側第2運動変換部30C2の動作を説明するための平面図である。次に、これら図8ないし図11と、前述の図5とを参照して、羽ばたき装置1の動力伝達機構30の動作について説明する。
以下において説明する動力伝達機構30の動作は、図5に示す状態から、回転運動伝達部30Aの出力部である回転伝達部材としてのディスク32cが反時計回りに1回転する期間における動作であり、図8ないし図11は、時系列でこれを示している。なお、このディスク32cが反時計回りに1回転する期間が、右側羽体40Rおよび左側羽体40Lの同期的な羽ばたき動作の1周期に該当することになる。
図5に示す状態においては、スライダ35が、スライダ35の往復直線運動の可動範囲内の中央位置にある。この場合、右側羽体40Rおよび左側羽体40Lは、それぞれ3時の位置および9時の位置にあり、上方からZ2方向に向けて見下ろした場合に、これら右側羽体40Rおよび左側羽体40Lが同一直線上に位置している。なお、その際、ディスク32cに組付けられた第1クランクアーム33Aの上記一端および第2クランクアーム33Bの上記一端(すなわち、ピン34aが位置する側の端部)は、9時の位置にある(図4参照)。なお、以下においては、このディスク32cに組付けられた第1クランクアーム33Aの上記一端および第2クランクアーム33Bの上記一端のことを「接続点」と称する。
まず、図8に示すように、主回転電動機20の動力の伝達を受けてディスク32cが図5に示す状態から反時計回りに90°回転することにより、上記接続点が9時の位置から6時の位置にまで達するに際しては、スライダ35が図中に示すDR11方向に向けて移動することになり、これに伴ってスライダ35の重心位置もX2方向に向けて移動する。そして、上記接続点が6時の位置に達することにより、スライダ35が可動範囲内の最後部である第2位置に配置されることになる。
また、その際、右側羽体40Rおよび左側羽体40Lは、右側回転体38Rおよび左側回転体38Lがそれぞれ時計回りおよび反時計回りに回転することによって図中に示すDR21方向に向けて(すなわち、それぞれ6時の位置側に向けて)移動することになるが、この移動は概ねX2方向に向けての移動となる。
次に、図9に示すように、主回転電動機20の動力の伝達を受けてディスク32cが図8に示す状態からさらに反時計回りに90°回転することにより、上記接続点が6時の位置から3時の位置にまで達するに際しては、スライダ35が図中に示すDR12方向に向けて移動することになり、これに伴ってスライダ35の重心位置もX1方向に向けて移動する。
また、その際、右側羽体40Rおよび左側羽体40Lは、右側回転体38Rおよび左側回転体38Lがそれぞれ反時計回りおよび時計回りに回転することによって図中に示すDR22方向に向けて(すなわち、それぞれ3時の位置側および9時の位置側に向けて)移動することになるが、この移動は概ねX1方向に向けての移動となる。
次に、図10に示すように、主回転電動機20の動力の伝達を受けてディスク32cが図9に示す状態からさらに反時計回りに90°回転することにより、上記接続点が3時の位置から12時の位置にまで達するに際しては、スライダ35が図中に示すDR13方向に向けて移動することになり、これに伴ってスライダ35の重心位置もX1方向に向けて移動する。そして、上記接続点が12時の位置に達することにより、スライダ35が可動範囲内の最前部である第1位置に配置されることになる。
また、その際、右側羽体40Rおよび左側羽体40Lは、右側回転体38Rおよび左側回転体38Lがそれぞれ反時計回りおよび時計回りに回転することによって図中に示すDR23方向に向けて(すなわち、それぞれ12時の位置側に向けて)移動することになるが、この移動は概ねX1方向に向けての移動となる。
次に、図11に示すように、主回転電動機20の動力の伝達を受けてディスク32cが図10に示す状態からさらに反時計回りに90°回転することにより、上記接続点が12時の位置から9時の位置にまで達するに際しては、スライダ35が図中に示すDR14方向に向けて移動することになり、これに伴ってスライダ35の重心位置もX2方向に向けて移動する。
また、その際、右側羽体40Rおよび左側羽体40Lは、右側回転体38Rおよび左側回転体38Lがそれぞれ時計回りおよび反時計回りに回転することによって図中に示すDR24方向に向けて(すなわち、それぞれ3時の位置側および9時の位置側に向けて)移動することになるが、この移動は概ねX2方向に向けての移動となる。
以上において説明したように、本実施の形態における羽ばたき装置1においては、動力源としての主回転電動機20にて発生した動力が動力伝達機構30を介して右側羽体40Rおよび左側羽体40Lに伝達されることでこれら右側羽体40Rおよび左側羽体40Lが同期的に所定の周期で揺動することになる。これに伴い、当該右側羽体40Rおよび左側羽体40Lに後述する所定の揚力が発生することになり、これによって羽ばたき装置1の飛行が実現可能とされている。
(右側羽体および左側羽体の羽ばたき動作)
図12は、羽ばたき装置1のホバリング時の右側羽体40Rおよび左側羽体40Lの羽ばたき動作を示す模式図である。次に、この図12を参照して、羽ばたき装置1のホバリング時の右側羽体40Rおよび左側羽体40Lの羽ばたき動作について説明する。
図12を参照して、上述したように右側羽体40Rおよび左側羽体40Lが揺動することにより、これら右側羽体40Rおよび左側羽体40Lは、羽ばたき動作の1周期の間に順に、後方切り返し、前方羽ばたき、前方切り返し、後方羽ばたきの4つの動作を連続的に行なう。
ここで、図12の上段においては、右側羽体40Rに注目して、この4つの動作を当該右側羽体40Rの形状変化を時系列で示す簡易的な断面にて表わしており、図12の下段においては、この4つの動作の際の羽ばたき装置1の状態を簡易的な平面図にてそれぞれ示している。なお、図12の上段に示す右側羽体40Rの断面は、当該右側羽体40Rの延在方向(すなわち、右側マスト39Rの延在方向)と直交する方向の断面を示しており、図の左側が羽ばたき装置1の前方側に相当し、図の右側が羽ばたき装置1の後方側に相当する。
後方切り返しは、右側羽体40Rおよび左側羽体40Lが図5において示した揺動範囲(図中矢印AR2参照)の最後部にきた際(すなわち、図8に示す状態にある際)の動作であり、右側羽体40Rおよび左側羽体40Lの傾斜姿勢が、それぞれの上縁部が下縁部よりも後方にある状態から、上縁部が下縁部よりも前方にある状態に切り換わる動作である。
前方羽ばたきは、右側羽体40Rおよび左側羽体40Lが図5において示した揺動範囲(図中矢印AR2参照)の最後部から最前部へと移動する際(図9に示す状態がこれに含まれる)の動作であり、右側羽体40Rおよび左側羽体40Lの傾斜姿勢が、それぞれの上縁部が下縁部よりも前方にある状態が維持されつつ、右側羽体40Rおよび左側羽体40Lが相対的に前方に向けて移動する動作である。
前方切り返しは、右側羽体40Rおよび左側羽体40Lが図5において示した揺動範囲(図中矢印AR2参照)の最前部にきた際(すなわち、図10に示す状態にある際)の動作であり、右側羽体40Rおよび左側羽体40Lの傾斜姿勢が、それぞれの下縁部が上縁部よりも後方にある状態から、下縁部が上縁部よりも前方にある状態に切り換わる動作である。
後方羽ばたきは、右側羽体40Rおよび左側羽体40Lが図5において示した揺動範囲(図中矢印AR2参照)の最前部から最後部へと移動する際(図11に示す状態がこれに含まれる)の動作であり、右側羽体40Rおよび左側羽体40Lの傾斜姿勢が、それぞれの下縁部が上縁部よりも前方にある状態が維持されつつ、右側羽体40Rおよび左側羽体40Lが相対的に後方に向けて移動する動作である。
上記の後方切り返し、前方羽ばたき、前方切り返し、後方羽ばたきの4つの動作のうち、特に前方羽ばたきおよび後方羽ばたきの2つの動作中においては、図12の上段において矢印F1,F2にて示すように、右側羽体40Rに斜め上方に向けての流体力が発生する。ここで、前方羽ばたきの際に発生する流体力(図中に示す矢印F1に該当)の水平成分と、後方羽ばたきの際に発生する流体力(図中に示す矢印F2に該当)の水平成分とが、前後方向において釣り合うことにより、右側羽体40Rには、上方に向けての揚力が発生することになる。なお、ここではその説明は省略するが、左側羽体40Lにも、同様の上方に向けての揚力が発生することになる。
上述したように、右側羽体40Rと左側羽体40Lとは、前後方向において同期的に往復運動するように駆動されるため、各々の羽体の動作は、図12の下段に示すように鏡面対称となり、右側羽体40Rに発生する揚力と左側羽体40Lに発生する揚力とにより、羽ばたき装置1に上方に向けての浮上力が発生することになる。これにより、羽ばたき装置1の飛行が実現できることになる。
[羽体の構造および羽体の製造方法の詳細な説明]
図13は、図1中の羽ばたき装置が備える羽体を示す平面図である。なお、図13中には、代表的に図1中の左側羽体40Lが示されているが、図1中の右側羽体40Rおよび左側羽体40Lは、同様の構造を有する。以下、図1中の右側羽体40Rおよび左側羽体40Lを特に区別しない場合には、単に「羽体40」といい、図1中の右側マスト39Rおよび左側マスト39Lを特に区別しない場合には、単に「マスト39」という。
図1および図13を参照して、右側羽体40Rおよび左側羽体40Lは、それぞれ、図5中の右側回転体38Rおよび左側回転体38Lから、Y1方向およびY2方向に延出している。
羽体40は、不織布70と、フレーム体80と、樹脂材(不図示)とを有する。不織布70は、羽体40の羽面を形成する。不織布70は、可撓性を有する。不織布70には、天然素材が用いられてもよいし、合成繊維が用いられてもよい。
フレーム体80は、不織布70が形成する羽面(不織布70の表面)に沿って設けられている。フレーム体80は、不織布70が形成する羽面上で帯状に延びている。フレーム体80は、高強度で、撓み易く、繰り返し変形に強い材料から形成されている。フレーム体80は、たとえば、炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)やABS樹脂から形成されている。
不織布70は、その構成部位として、付け根部71と、先端部72と、前縁部(上縁部)73と、後縁部(下縁部)74とを有する。付け根部71と、先端部72と、前縁部73と、後縁部74とに囲まれた領域に、羽面が形成されている。
付け根部71は、不織布70のうちで、羽体40の揺動中心(図5中の第2回転軸102R,102L)に最も近い位置に設けられている。先端部72は、付け根部71から離れて位置する。先端部72は、図5中の右側回転体38Rおよび左側回転体38Lから延出する羽体40の先端に設けられている。前縁部73は、付け根部71および先端部72の間で延びている。前縁部73は、付け根部71および先端部72の間で直線状に延びている。前縁部73は、付け根部71および先端部72の間でY軸方向に延びている。マスト39は、前縁部73に沿って設けられている。前縁部73には、マスト39を通じて揺動運動が入力される。後縁部74は、付け根部71および先端部72の間で延びている。後縁部74は、付け根部71および先端部72の間で、屈曲および/または湾曲しながら延びている。後縁部74は、前縁部73への揺動運動の入力に対して前縁部73よりも遅れて動作する。
前縁部73および後縁部74は、不織布70が形成する羽面を挟んで上下方向(Z軸方向)に対向している。後縁部74は、前縁部73の下方に配置されている。不織布70は、前縁部73および後縁部74の間で上下に垂れ下がっている。不織布70は、付け根部71および先端部72を結ぶ方向(Y軸方向)が長手方向となり、前縁部73および後縁部74が対向する方向(Z軸方向)が短手方向となる細長い形状を有する。
フレーム体80は、その構成部位として、第1枠部81と、第2枠部82と、支脈部83とを有する。
第1枠部81は、前縁部73に沿って延びている。第2枠部82は、後縁部74に沿って延びている。第2枠部82は、第1枠部81とともに枠形状をなしている。第1枠部81および第2枠部82は、不織布70が形成する羽面の周縁に沿って帯状に延びている。
支脈部83は、第1枠部81および第2枠部82により囲まれる領域に設けられている。支脈部83は、第1枠部81および第2枠部82の間で延びている。支脈部83は、第1枠部81および第2枠部82の間で直線状に延びている。支脈部83は、付け根部71および先端部72を結ぶ方向(Y方向)において付け根部71から先端部72に近づきながら、第1枠部81から第2枠部82まで延びている。複数の支脈部83が、第1枠部81および第2枠部82の間で延びている。
なお、支脈部が第1枠部81および第2枠部82の間で延びる形状(経路)は、上記構成に限られない。たとえば、支脈部は、第1枠部81および第2枠部82の間で湾曲状に延びてもよいし、付け根部71および先端部72を結ぶ方向(Y軸方向)において付け根部71から先端部72に近づきながら、第1枠部81から第2枠部82まで延びる支脈部(上記支脈部83)と、付け根部71および先端部72を結ぶ方向(Y軸方向)において付け根部71から先端部72に近づきながら、第2枠部82から第1枠部81まで延びる支脈部とが、互いに交差するように設けられてもよい。
図14は、図13中の2点鎖線XIVで囲まれた範囲の羽体表面を拡大して示す図である。図15は、図13中のXV−XV線上の矢視方向から見た羽体断面を拡大して示す図である。
図13から図15を参照して、不織布70は、繊維76を織らずに絡み合わせたものであり、その内部に空隙77を含む。空隙77は、繊維76間に存在する隙間として形成されている。
樹脂材91は、空隙77に配置されている。樹脂材91は、空隙77の空間の一部に配置されている。言い換えれば、樹脂材91は、空隙77の空間の全部を満たすように設けられていない。典型的な例として、樹脂材91は、繊維76同士が交わる位置から、互いに交わる繊維76と繊維76との隅部に広がって設けられている。樹脂材91は、空隙77による隙間(空気層)を部分的に残しながら、不織布70の表面の全体に渡って配置されている。
不織布70およびフレーム体80は、樹脂材91によって一体とされている。不織布70およびフレーム体80は、不織布70の表層に配置される樹脂材91によって一体とされている。
不織布70としては、たとえば、ポリエステルを用いることができる。不織布70に用いられる材質は、200℃以上の耐熱温度を有することが好ましい。不織布70の目付け(単位面積当たりの重量)は、10mg/m2以下であることが好ましい。
樹脂材91としては、たとえば、PP(ポリプロピレン)やPET(ポリエチレンテレフタレート)を用いることができる。樹脂材91は、不織布70に対して、5mg/m2以下の割合で設けられることが好ましい。
図16は、実施の形態における羽体の製造方法を示す斜視図である。図16中には、図13中の羽体の製造方法の工程が示されている。
図16を参照して、まず、不織布70と、樹脂シート90(シート状の樹脂材)と、フレーム体80とを準備する。
より具体的には、不織布を裁断することにより、所定の羽形状を有する不織布70を得る。フレーム体80の原材料(たとえば、CFRP、または、カーボン繊維を含有する板状または棒状部材)を加工することによって、所定のフレーム形状を有するフレーム体80を得る。樹脂材91と同一材料からなる樹脂シート(たとえば、PP樹脂シート)を裁断することによって、不織布70と同一形状を有する樹脂シート90を得る。
次に、不織布70、樹脂シート90およびフレーム体80を含む積層体を加熱しつつ、その積層方向に加圧することによって、樹脂材91により不織布70およびフレーム体80を一体とする。
より具体的には、上金型93および下金型94間に、不織布70、樹脂シート90およびフレーム体80を挙げた順に重ね合わせる。上金型93および下金型94を近接移動させることによって、上記の積層体を加熱しつつ、積層体の積層方向に圧力を加える。これにより、樹脂シート90を構成する樹脂材料が不織布70に含まれる空隙に進入する形態により、樹脂シート90が不織布70に溶着されると同時に、空隙に進入した樹脂材料を接着剤として、不織布70とフレーム体80とが一体化される。これにより、図13から図15中に示す不織布70、フレーム体80および樹脂材91からなる羽体40が製造される。
金型への樹脂の付着を防ぐため、上金型93および下金型94の表面を覆うようにポリテトラフルオロエチレンやシリコンの薄膜が設けられることが好ましい。また、上金型93および下金型94と、積層体との間に、ポリテトラフルオロエチレン製のシートやシリコン製のシートが介挿されてもよい。
上記の不織布70およびフレーム体80を一体にする工程時、不織布70の耐熱温度未満、かつ、樹脂材91の溶融温度以上の温度で、積層体を加熱することが好ましい。この場合、加熱による不織布70の品質低下を防ぎつつ、樹脂材91によって不織布70およびフレーム体80をより確実に一体化することができる。
このような構成を備える羽体40およびその製造方法によれば、羽面を形成する構造材として、不織布70が用いられている。不織布70は、多数の空隙77を含む軽量素材であるため、羽体40を軽量化することができる。また、繊維76が絡み合って構成される不織布70は、破れが生じ難く、さらにその不織布70の羽面に沿ってフレーム体80が設けられるため、高強度な羽体40を得ることができる。
また、多数の空隙77を含む不織布70は、吸音効果に優れる。さらに、不織布70は、多数の繊維76を織ったものではなく柔軟性に優れるため、羽体40の揺動運動時に生じる音(羽ばたき音)を小さく抑制することができる。この際、樹脂材91は、不織布70の空隙77の空間の一部に配置されるため、このような羽ばたき音を小さく抑制する効果を良好に得ることができる。また、不織布70の空隙77に配置される樹脂材91は、羽体の強度を増す補強材としても機能する。
羽体40の製造工程時、樹脂シート90の厚みは、不織布70の厚みよりも小さいことが好ましい。一例として、樹脂シート90の厚みが、2μmであり、不織布70の厚みが、5μmである。このような構成によれば、樹脂材91が不織布70の空隙77の空間の一部に配置される構成を、より容易に得ることができる。
上記構成を備える羽体40は、15cm2当たり50mg以下の重量を有することが好ましい。羽体40は、20m/sの風圧に耐え得る強度を有することが好ましい。羽体40がY軸方向において70mmの長さを有する場合に、1枚の羽体40により15gの推力が得られることが好ましい。
図17は、実施の形態における羽体の製造方法の第1変形例を示す図である。図17を参照して、本変形例では、不織布70およびフレーム体80を一体にする工程の前に、不織布70に含まれる空隙に樹脂材91を配置しておく。そのような方法としては、たとえば、不織布70および樹脂シート90を加熱により溶着する方法や、流動状の樹脂材料を準備し、その樹脂材料を不織布70に含浸させる方法などが挙げられる。
次に、樹脂材91を含む不織布70と、フレーム体80とからなる積層体を加熱することによって、樹脂材91により不織布70およびフレーム体80を一体とする。
図17中に示す例では、送りローラ95によって、樹脂材91を含む不織布70と、フレーム体80とを、加熱ローラ96および加熱ローラ97間に向けて送り出す。加熱ローラ96および加熱ローラ97間において、不織布70およびフレーム体80が加熱されることによって、樹脂材91により不織布70およびフレーム体80が一体化される(溶着)。
なお、加熱ローラ96および加熱ローラ97間において、互いのローラが近接する方向の圧力が、不織布70およびフレーム体80に加えられてもよい(熱圧着)。
本変形例に示すように、予め樹脂材91を不織布70の空隙に設けておき、その不織布70と、フレーム体80とを、溶着または熱圧着してもよい。本変形例によれば、樹脂材91が不織布70の空隙77の空間の一部に配置される構成を、より容易に得ることができる。
図18は、図13中の羽体の第1変形例を示す平面図である。図18を参照して、本変形例における羽体は、不織布70Aと、フレーム体80と、樹脂材(不図示)と、不織布70Bとを有する。
不織布70Aおよび不織布70Bは、同一形状を有する。不織布70Aおよび不織布70Bは、フレーム体80を挟持するように設けられている。不織布70Aおよびフレーム体80は、不織布70Aの空隙に配置される樹脂材によって一体とされている。不織布70Bおよびフレーム体80は、不織布70Bの空隙に配置される樹脂材によって一体とされている。不織布70Aおよび不織布70B同士は、これら不織布の空隙に配置される樹脂材によって接合されている。
図19は、実施の形態における羽体の製造方法の第2変形例を示す図である。図19中には、図18中の羽体の製造方法の工程が示されている。
図19を参照して、本変形例では、まず、不織布70Aと、樹脂シート90Aと、フレーム体80と、樹脂シート90Bと、不織布70Bとを準備する。
次に、不織布70A、樹脂シート90A、フレーム体80、樹脂シート90Bおよび不織布70Bを含む積層体を加熱しつつ、その積層方向に加圧することによって、樹脂材91により不織布70A、フレーム体80および不織布70Bを一体とする。より具体的には、上金型93および下金型94間に、不織布70A、樹脂シート90A、フレーム体80、樹脂シート90Bおよび不織布70Bを挙げた順に重ね合わせる。上金型93および下金型94を近接移動させることによって、積層体を加熱しつつ、積層体の積層方向に圧力を加える。
このような構成によれば、フレーム体80を挟み込む形で不織布70Aおよび不織布70B同士が接合されるため、羽体40の強度をより向上させることができる。また、羽体40の構造が、羽体40の表面と裏面との間で対称となるため、羽体40の揺動運動時に双方向のキャンバーを形成し易くなる。これにより、羽体40の羽ばたき速度に対称性を持たせて、推力を効果的に増大させることができる。
図20は、図13中の羽体の第2変形例を示す平面図である。図20を参照して、本変形例では、図18中の不織布70Aおよび不織布70Bに、それぞれ、貫通孔98および貫通孔99が形成されている。貫通孔98および貫通孔99は、不織布70Aおよび不織布70Bの積層方向において、互いに重なり合わないように設けられている。
このような構成によれば、不織布70Aおよび不織布70Bの使用にもかかわらず、羽体40の重量が大きくなることを抑制できる。
以下、本開示の構成と、本開示により奏される作用効果とについて、まとめて説明する。
本開示に従った羽体は、羽ばたき装置に用いられ、揺動運動することによって浮上力を発生する羽体である。羽体は、羽面を形成する不織布と、不織布に重ね合わされ、羽面に沿って延びるフレーム体と、不織布に含まれる空隙に配置され、不織布およびフレーム体を一体とする樹脂材とを備える。
このように構成された羽体によれば、不織布と、不織布により形成される羽面に沿って延びるフレーム体とを、不織布に含まれる空隙に配置される樹脂材により一体化することによって、軽量かつ高強度な羽体を実現することができる。この際、羽面を形成する構造材として、吸音性および柔軟性に優れる不織布を用いることにより、羽ばたき音を小さく抑制することができる。
また好ましくは、樹脂材は、不織布に含まれる空隙の一部の空間に配置される。
このように構成された羽体によれば、不織布を用いたことによる羽ばたき音の低減の効果を、良好に得ることができる。
また好ましくは、不織布として、フレーム体を挟んで積層される第1不織布および第2不織布が設けられる。
このように構成された羽体によれば、羽体をより高強度とすることができる。また、羽面の表側と裏側との間で良好な対称性を得ることによって、羽体の揺動運動時に発生する推力を増大させることができる。
また好ましくは、第1不織布および第2不織布には、それぞれ、第1貫通孔および第2貫通孔が設けられる。第1貫通孔および第2貫通孔は、第1不織布および第2不織布の積層方向において互いに重なり合わないように配置される。
このように構成された羽体によれば、第1不織布および第2不織布の使用にもかかわらず、羽体の重量が大きくなることを抑制できる。
本開示に従った羽ばたき装置は、上述のいずれかに記載の羽体と、躯体と、躯体に搭載され、羽体に揺動運動を入力するアクチュエータとを備える。
このように構成された羽ばたき装置によれば、エネルギー効率に優れ、羽ばたき音の小さい羽ばたき装置を実現することができる。
本開示に従った羽体の製造方法は、羽ばたき装置に用いられ、揺動運動することによって浮上力を発生する羽体の製造方法である。羽体の製造方法は、不織布、樹脂材およびフレーム体を準備する工程と、不織布、樹脂材およびフレーム体を含む積層体を加熱することによって、樹脂材により不織布およびフレーム体を一体とする工程とを備える。
このように構成された羽体の製造方法によれば、羽ばたき音が小さく抑制されるとともに、軽量かつ高強度である羽体を得ることができる。
また好ましくは、不織布およびフレーム体を一体とする工程は、積層体を加熱しつつ、その積層方向に加圧する工程を含む。
このように構成された羽体の製造方法によれば、樹脂材によって不織布およびフレーム体をより確実に一体とすることができる。
また好ましくは、不織布およびフレーム体を一体とする工程は、不織布の耐熱温度未満、かつ、樹脂材の溶融温度以上の温度で、積層体を加熱する工程を含む。
このように構成された羽体の製造方法によれば、不織布の品質を維持しつつ、樹脂材によって不織布およびフレーム体をより確実に一体とすることができる。
また好ましくは、不織布、樹脂材およびフレーム体を準備する工程は、不織布と、不織布の厚みよりも小さい厚みを有するシート状の樹脂材と、フレーム体とを準備する工程を含む。
このように構成された羽体の製造方法によれば、樹脂材が不織布に含まれる空隙の一部の空間に配置される構成を、より容易に得ることができる。これにより、不織布を用いたことによる羽ばたき音の低減の効果を、良好に得ることができる。
また好ましくは、羽体の製造方法は、不織布およびフレーム体を一体とする工程の前に、不織布に含まれる空隙に樹脂材を配置する工程をさらに備える。不織布およびフレーム体を一体とする工程は、空隙に樹脂材が配置された不織布と、フレーム体とからなる積層体を加熱することにより、樹脂材により不織布およびフレーム体を一体とする工程を含む。
このように構成された羽体の製造方法によれば、樹脂材が不織布に含まれる空隙の一部の空間に配置される構成を、より容易に得ることができる。これにより、不織布を用いたことによる羽ばたき音の低減の効果を、良好に得ることができる。
本出願は、2016年12月15日に出願した日本特許出願である特願2016−243312号に基づく優先権を主張する。当該日本特許出願に記載された全ての記載内容は、参照によって本明細書に援用される。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。