JP6686700B2 - 繊維強化樹脂部品のフランジ製造方法及び繊維強化樹脂部品のフランジ構造 - Google Patents

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Description

本発明は、繊維強化樹脂部品のフランジ製造方法及び繊維強化樹脂部品のフランジ構造に関する。
自動車(車両)には衝突時における車体及び搭乗者の保護のため、一般に車体の前後に衝突時の衝撃エネルギーを吸収するバンパが取り付けられている。バンパは自動車が障害物と衝突した際に加わる大きな負荷に対して非可逆的にエネルギーを吸収する必要がある。バンパの支持構造として、バンパをクラッシュボックスを介してフロントサイドメンバに支持する構成がある。
クラッシュボックスには、衝突時の圧縮エネルギー吸収による乗員保護、機能部品損傷低減の役割の他に、車両が故障等により自走できない場合、他車で引張って安全な場所(修理場所)へ移動させる際、あるいは、移動台車に固定して輸送する際に、曲げ荷重をフロントサイドメンバへ伝達し、車両移動、車両固定の各安全性を確保する役割がある。
図11(a)に示すように、特許文献1には、車両のエネルギー吸収構造として、左右一対のフロントサイドメンバ61の前端に固定されたエネルギー吸収部材としてのクラッシュボックス62を介してバンパリインフォースメント63を支持する構造が開示されている。なお、図11(a)ではバンパリインフォースメント63の左側部分のみ図示する。
図11(a),(b)に示すように、クラッシュボックス62は、FRP(繊維強化樹脂)製の略矩形筒状のエネルギー吸収体62Aと、エネルギー吸収体62Aに一体に設けられてバンパリインフォースメント63に接合された前フランジ62Fと、フロントサイドメンバ61に接合された後フランジ62Rとを備えている。後フランジ62Rは、エネルギー吸収体62Aの後端と共にフロントサイドメンバ61の前フランジ61Fに突き当てられており、前フランジ61Fに対し、ボルト、ナット等の締結具にて接合されている。
前フランジ62Fは、エネルギー吸収体62Aの前端から上下左右に張り出した前壁62FFと、前壁62FFの上端から前方に延出された上壁62FUと、前壁62FFの下端から前方に延出された下壁62FLとを有する。
前壁62FFは、エネルギー吸収体62Aの前端と共にバンパリインフォースメント63の後壁に突き当てられている。この状態で、上壁62FU、下壁62FLは、バンパリインフォースメント63の上壁、下壁に接合されている。この接合には、ボルト、ナットによる締結と比較して応力集中が生じ難い接合形態、例えば接着、溶着、リベット等の接合形態が採用されている。
また、クラッシュボックスとフロントサイドメンバとの接合構造として、図12に示すように、クラッシュボックス62の後フランジ62Rと、フロントサイドメンバ61の前フランジ61Fとの間にブラケット64を介在させた状態で、ボルト65及びナット66により後フランジ62R及び前フランジ61Fを締め付け固定したものもある。
特開2015−196463号公報
従来、クラッシュボックス等のエネルギー吸収部材と、そのエネルギー吸収部材が連結される部材との結合部の結合構造は、エネルギー吸収部材及びエネルギー吸収部材が連結される部材がそれぞれ有するフランジに形成されたボルト挿通孔に挿通されたボルトと、ボルトに螺合するナットとの締め付け固定により構成されている。
車両が故障等により自走できない場合、他車で引張って安全な場所(修理場所)へ移動させる。また、自走以外で輸送する際、例えば、トレーラー、船舶、列車等に車両を固定して移動させる。車両の固定は、通常、前側、後側の各2点で固定する。そして、車両の牽引あるいは固定の際に、クラッシュボックスのフランジ部に応力が集中する。クラッシュボックスを繊維強化樹脂製とした場合、応力集中による繊維層間剥離を防止するためには、板厚の増加や別部品による補強等が必要になり、コストや質量が増加する。また、車両のクラッシュボックスに限らず、応力集中が生じる状態で使用されるフランジを有する部品では同様の問題が生じる。
本発明は前記の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、補強用の別部品を必要とせず、応力集中を緩和することができる繊維強化樹脂部品のフランジ製造方法及び繊維強化樹脂部品のフランジ構造を提供することにある。
上記課題を解決する繊維強化樹脂部品のフランジ製造方法は、多層織物又は積層織物を強化基材とし、樹脂をマトリックスとした繊維強化樹脂製で、他の部材との連結に使用されるフランジを備えた繊維強化樹脂部品のフランジの製造方法である。そして、前記強化基材の製造工程として、前記他の部材と連結される側の部分に、前記多層織物又は積層織物の織物層を結合する結合糸条が、前記多層織物又は積層織物をそれぞれ積層方向において2つに分割する状態で結合することにより分割された前記織物層の間にスリット部が存在する仮強化基材を形成する仮強化基材製造工程を備える。また、前記仮強化基材製造工程で製造された前記仮強化基材の前記スリット部により分割された前記織物層を互いに異なる方向に延びるように屈曲させて2つのフランジを形成するフランジ形成工程とを備える。ここで、「糸条」とは、繊維が撚りを掛けられずに引きそろえられた繊維束あるいは繊維に撚りを掛けられた糸を意味する。
この構成によれば、2つのフランジを形成する繊維として2つのフランジに跨って連続する繊維が存在する構成となり、応力集中が緩和される。したがって、この製造方法で製造されたフランジを有する強化基材を使用した繊維強化樹脂部品は、補強用の別部品を必要とせず、応力集中を緩和することができる。
繊維強化樹脂部品のフランジ製造方法は、前記フランジ形成工程で形成された前記フランジの根元部から前記フランジが分岐された本体部にかけて前記スリット部と交差するステッチを施す縫製工程を備えていることが好ましい。この製造方法で製造された繊維強化樹脂部品のフランジは、フランジの根元部からフランジが分岐された本体部にかけてスリット部と交差するステッチが存在しないフランジに比べて、本体部を介して加わる応力に対する強度が高くなる。
上記課題を解決する繊維強化樹脂部品のフランジ構造は、多層織物又は積層織物を強化基材とし、樹脂をマトリックスとした繊維強化樹脂製で、他の部材との連結に使用されるフランジを備えた繊維強化樹脂部品のフランジ構造である。そして、前記強化基材は、本体部と、前記本体部から2方向以上に分岐した分岐部とを備えており、前記本体部を構成する織物層は結合糸条により結合されて一体化されており、前記分岐部のうちの2つの分岐部は、前記本体部の織物層が2つに分割され、かつ分割された各織物層が互いに異なる方向に延びるように折り曲げられているフランジを構成している。
この構成によれば、2つのフランジを形成する繊維として2つのフランジに跨って連続する繊維が存在する構成となり、応力集中が緩和される。したがって、この製造方法で製造されたフランジを有する強化基材を使用した繊維強化樹脂部品は、補強用の別部品を必要とせず、応力集中を緩和することができる。
前記フランジが前記本体部から分岐する箇所の根元部から前記本体部にかけてステッチが施されていることが好ましい。この構成によれば、フランジの根元部からフランジが分岐された本体部にかけてスリット部と交差するステッチが存在しないフランジに比べて、本体部を介して加わる応力に対する強度が高くなる。
本発明によれば、補強用の別部品を必要とせず、応力集中を緩和することができる。
一実施形態のバンパの支持状態を示す模式平面図。 クラッシュボックスとフロントサイドメンバ等との連結部の模式断面図。 (a)はクラッシュボックスをフロントサイドメンバ側から見た部分模式斜視図、(b)はクラッシュボックスの筒部の模式断面図。 (a)はクラッシュボックスを構成する多層織物の部分模式図、(b)は分岐部が形成された状態の多層織物の部分模式図。 (a)は多層織物をその長手方向と直交し、かつ緯糸を含む平面で切断した概略断面図、(b)は多層織物から形成され、かつ先端側の角部が除去された四角筒状体の概略斜視図。 多層織物の先端側を示す概略斜視図。 (a)は図6のA−A線における模式断面図、(b)は図6のB−B線における模式断面図、(c)は(b)のC−C線において切断した場合の先端側を示す模式断面図。 (a),(b)はそれぞれ別の実施形態におけるクラッシュボックスとフロントサイドメンバ等との連結部の模式断面図。 (a)は別の実施形態のバンパ支持構造を示す模式平面図、(b)は同じく別の実施形態のバンパ支持構造を示す模式斜視図。 (a),(b)は別の実施形態のクラッシュボックス製造方法を説明する模式図。 (a)は従来技術のバンパ支持構造を示す模式部分分解斜視図、(b)は同じくバンパ支持構造を示す平断面図。 別の従来技術のバンパ支持構造の接合構造を示す模式部分断面図。
以下、本発明を自動車のフロントバンパに具体化した一実施形態を図1〜図7にしたがって説明する。
図1に示すように、車体を構成する左右一対のフロントサイドメンバ11には、ブラケット12を介してエネルギー吸収部材としてのクラッシュボックス13が、それぞれ後端において固定されている。両クラッシュボックス13の前端にはフロントバンパ14が固定されている。クラッシュボックス13は、略筒状に形成され、その筒方向が車体の前後方向に沿って延びるように設けられている。クラッシュボックス13は、多層織物を強化基材とし、樹脂をマトリックスとした繊維強化樹脂製である。クラッシュボックス13は、フロントサイドメンバ11の先端に、ボルト15及びナット16を介して固定されている。
図3(a),(b)に示すように、クラッシュボックス13は、略四角筒状に形成された筒部17と、筒部17の後端に設けられたフランジ18a,18b,19a,19bとを有する。フランジ18a,18bは、筒部17の両側壁17aにそれぞれ設けられ、各側壁17aから2方向に、側壁17aに対して直角に、かつ互いに逆方向に延びるように設けられている。フランジ19aは、筒部17の上壁から上側に直角に延びるように形成され、フランジ19bは、筒部17の下壁から下側に直角に延びるように形成されている。各フランジ18a,18b,19a,19bにはボルト挿通孔20が形成されている。なお、図3(a)はクラッシュボックス13をフロントサイドメンバ11に固定される側(後ろ側)から見た部分模式斜視図である。
図2に示すように、クラッシュボックス13は、外側に突出する両フランジ18aとフロントサイドメンバ11のフランジ11aとの間に跨るブラケット12が介在する状態で、ボルト挿通孔20、ブラケット12及びフランジ11aを貫通するボルト15と、ボルト15に螺合するナット16とによりフロントサイドメンバ11に締め付け固定されている。クラッシュボックス13の内側に突出するフランジ18bは、ボルト挿通孔20及びブラケット12を貫通するボルト15と、ボルト15に螺合するナット16とによりブラケット12に締め付け固定されている。即ち、クラッシュボックス13の各側壁17aは、2つのフランジ18a,18b及びブラケット12を介してフロントサイドメンバ11に固定されている。また、クラッシュボックス13の上壁及び下壁は、フランジ19a,19b及びブラケット12を介してフロントサイドメンバ11に固定されている。
次にクラッシュボックス13の筒部17の両側壁17aに設けられたフランジ18a,18bの構造について詳述する。
図2及び図3(a)に示すように、フランジ18a,18bは、側壁17aの端部から2方向に分岐しているが、その厚さは、側壁17aの厚さとほぼ同じに形成されている。クラッシュボックス13を構成する繊維強化樹脂の強化基材の材料となる四角筒状体は、全長に亘って同じ層数である端部から2つのフランジ18a,18bを側壁17aと同じ厚さで分岐させるため、図2に示すように、フランジ18a,18bは側壁17aの厚さの半分の厚さの層が互いに異なる方向に延びるように折り曲げられ、かつ少なくとも折り曲げ部の少なくとも基端がステッチ糸23により結合(縫合)されている。
詳述すると、側壁17aとなる部分を構成する多層織物24は、図4(a)に示すように、全ての層が図示しない結合糸条で結合された本体部24aと、本体部24aの織物層に続く織物層が織物層の厚さ方向(積層方向)においてスリット部26により2つに分割された分割部24bとを有する。2つの分割部24bのそれぞれの織物層は図示しない結合糸条で結合されている。そして、図4(b)に示すように、両分割部24bが互いに異なる方向に延びるように折り曲げられた状態でステッチ糸23で結合され、本体部24aから2方向に分岐した分岐部24cを構成する。
次に筒部の先端にフランジを備えた強化基材の製造方法を説明する。
強化基材は多層織物から形成される。多層織物は、経糸xが多層織物の長手方向に、蛇行する状態で延び、緯糸yと交絡することで基本的に各層が分離不能に拘束されている。しかし、この実施形態で使用される多層織物は、隣り合う織物層で分離可能な部分が存在する。経糸xは、多層織物の各織物層を結合する結合糸条を構成する。
詳述すると、図5(a)及び図7(a)に示すように、多層織物30は、多層織物30の厚さ方向(図5の上下方向)の中間部に、幅方向の両端側を除いて隣り合う織物層が分離可能なスリット部としての第1のスリット31を有する。第1のスリット31は、多層織物30の全長にわたって形成されている。第1のスリット31は、多層織物30を第1のスリット31と対応する箇所において積層方向に広げて開口することにより、図5(b)に示すように、四角筒状体32を形成可能とするために設けられている。
多層織物30は、多層織物30の長手方向全長にわたって延びる第1のスリット31の他に、スリット部としての第2のスリット33及び第3のスリット34を有する。図6及び図7(b)に示すように、第2のスリット33は、多層織物30の先端側に設けられ、多層織物30の幅方向の全長にわたって延びるように形成されている。図7(c)に示すように、第2のスリット33は、後端側が第1のスリット31の前端と連続する状態に形成されている。第2のスリット33の前後方向の長さ(多層織物30の幅方向と直交する方向の長さ)は、第2のスリット33で分離される多層織物30の部分を折り曲げてフランジ18a,18b,19a,19bを形成した際に、予め設定されたフランジ18a,18b,19a,19bの長さとなるように形成されている。
図6、図7(b)及び図7(c)に示すように、第3のスリット34は、多層織物30の先端側で、多層織物30の幅方向の全長の略1/2の幅を有し、第2のスリット33によって区画された多層織物30の上側の部分と下側の部分の、互いに対向しない位置に、多層織物30の先端の手前まで延びるように形成されている。すなわち、第3のスリット34は、多層織物30の幅方向の端面からほぼ中央まで延び、端面において外部と連通する状態に形成されている。この多層織物30を形成する工程が、多層織物にわたるスリット部が存在する仮強化基材を形成する仮強化基材製造工程となる。
このように形成された多層織物30に対して、その先端側で、第2のスリット33の幅方向の中央付近に、図6に二点鎖線で示すように切り込み35を形成した後、多層織物30の幅方向の両側から中心側(中央側)に向かって押圧力を加えると、図5(b)に示すように、四角筒状体32が形成される。四角筒状体32は、両側壁32aの先端側に、第3のスリット34が側壁32aの上下方向全長にわたって延びるように形成される。
図5(b)に示す状態から、上壁32bの先端を上側に、下壁32cの先端を下側に折り曲げると、図3(a)に示すように、フランジ19a,19bが形成される。また、両側壁32aを前側から押圧すると、両側壁32aは、第3のスリット34を挟んだ部分が左右方向に屈曲変形し、図3(a)に示すように、フランジ18a,18bが形成される。両側壁32aからそれぞれフランジ18a,18bを形成する工程が、フランジ形成工程となる。また、フランジ18a,18bが図4(a)の分岐部24cに相当し、第3のスリット34がスリット部26に相当する。以上により、多層織物30を材料とした強化基材が形成される。この多層織物30は、図3(a)に示すクラッシュボックス13を製造する強化基材に相当する。
その後、多層織物30のフランジ18a,18bの根元部がステッチ糸23で縫着されて、フランジ18a,18bの根元部からフランジ18a,18bが分岐された本体部にかけてスリット部26と交差するステッチが施された状態となる。そして、マトリックス樹脂が含浸硬化された後、ボルト挿通孔20が形成されて、クラッシュボックス13が完成する。
この実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)繊維強化樹脂部品のフランジ製造方法は、多層織物24,30を強化基材とし、樹脂をマトリックスとした繊維強化樹脂製で、他の部材との連結に使用されるフランジを備えた繊維強化樹脂部品のフランジの製造方法である。そして、強化基材の製造工程として、長手方向の先端側(他の部材と連結される側)の部分に、多層織物の織物層を結合する結合糸条が、多層織物をそれぞれ厚さ方向(積層方向)において2つ分割する状態で結合することにより分割された織物層の間にスリット部26が存在する仮強化基材を形成する仮強化基材製造工程を備える。また、仮強化基材製造工程で製造された仮強化基材のスリット部26と対応する部分の多層織物を、スリット部26を挟んだ状態で互いに異なる方向(この実施形態では逆方向)に延びるように屈曲させて2つのフランジ18a,18bを形成するフランジ形成工程を備える。
この構成によれば、長手方向の先端側の部分に、多層織物の各織物層を結合する結合糸条が、多層織物をそれぞれ厚さ方向において2つ分割する状態で結合することにより分割された織物層の間にスリット部26が存在する仮強化基材が仮強化基材製造工程で形成される。そして、フランジ形成工程においては、仮強化基材製造工程で製造された仮強化基材のスリット部26により分割された織物層を互いに異なる方向(この実施形態では逆方向)に延びるように屈曲させて2つのフランジ18a,18bを形成する。そのため、2つのフランジ18a,18bを形成する繊維として2つのフランジ18a,18bに跨って連続する繊維が存在する構成となり、応力集中が緩和される。したがって、この製造方法で製造されたフランジを有する強化基材を使用した繊維強化樹脂部品は、補強用の別部品を必要とせず、応力集中を緩和することができる。
(2)繊維強化樹脂部品のフランジ製造方法は、フランジ形成工程で形成されたフランジ18a,18bの根元部からフランジ18a,18bが分岐された本体部にかけてスリット部26と交差するステッチを施す縫製工程を備えていることが好ましい。この製造方法で製造された繊維強化樹脂部品のフランジは、フランジ18a,18bの根元部からフランジ18a,18bが分岐された本体部にかけてスリット部と交差するステッチが存在しないフランジに比べて、本体部を介して加わる応力に対する強度が高くなる。
(3)繊維強化樹脂部品としてのクラッシュボックス13は、多層織物を強化基材とし、樹脂をマトリックスとした繊維強化樹脂製で、端部に他の部材との連結に使用されるフランジ構造としてのフランジ18a,18b,19a,19bを備えている。クラッシュボックス13を構成する強化基材22は、本体部24aと本体部24aから2方向以上に分岐した分岐部24cとを備えており、フランジ構造のうち側壁17aに形成されたフランジ18a,18bを構成する部分が、分岐部24cで構成されている。
この構成によれば、2つのフランジ18a,18bを形成する繊維として2つのフランジ18a,18bに跨って連続する繊維が存在する構成となり、クラッシュボックス13に引っ張り力や圧縮力が作用した際に応力集中が緩和される。したがって、補強用の別部品を必要とせず、応力集中を緩和することができる。
(4)フランジ18a,18bは、フランジ18a,18bの根元部からフランジ18a,18bが分岐された本体部にかけてスリット部26と交差するステッチが施されている。この構成によれば、フランジ18a,18bの根元部からフランジ18a,18bが分岐された本体部にかけてスリット部と交差するステッチが存在しないフランジに比べて、本体部を介して加わる応力に対する強度が高くなる。
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ 本体部から分岐された2つのフランジ18a,18bは、本体部に対して直交する状態で逆方向に分岐された構成に限らない。例えば、図8(a)に示すように、両フランジ18a,18bが直角を成し、かつ一方のフランジ18bは本体部と一直線上に位置する状態で分岐した構成でもよい。また、図8(b)に示すように、本体部と直交する状態で互いに逆方向に分岐し、かつスリット部26を挟んで折り曲げられた2つのフランジ18a,18bに加えて、本体部と一直線上に位置し、スリット部26を有さないフランジ18cを有する構成であってもよい。なお、図8(a),(b)においては、フランジ18a,18b等のハッチングを省略している。
○ 図9(a)に示すように、クラッシュボックス13は、フロントバンパ14の斜め後方に向かって延びる部分においてフロントバンパ14に固定される構造であってもよい。
○ 筒状のクラッシュボックス13は、略四角筒状に限らず、例えば、円筒状であってもよい。
○ 筒状のクラッシュボックス13に代えて、例えば、図9(b)に示すように、断面半円弧状の繊維強化樹脂部品としての支持部材27でフロントバンパ14を支持してもよい。支持部材27は、後端に互いに逆方向に向かって延びるフランジ27a,27bを有する。
○ クラッシュボックス13は本体部の複数個所から、それぞれ2つのフランジ18a,18bが分岐された構成であってもよい。
○ 繊維強化樹脂部品は、フロントバンパ14あるいはリヤバンパを支持するクラッシュボックスやバンパ支持部品に限らず、他の部材との連結に使用されるフランジを有し、一時的に通常使用状態より大きな応力を受ける状態で使用される部品や部材であってもよい。
○ 繊維強化樹脂部品は、車両以外の用途、例えば、航空機に使用されてもよい。航空機における用途として、例えば、ヘリコプターが不慮の故障で機体が着地する際の衝撃を少しでも和らげ、特に搭乗者への影響を軽減するために、座席床下部に使用するエネルギー吸収部材が挙げられる。
○ 繊維強化樹脂は、多層織物に代えて積層織物を強化基材とし、樹脂をマトリックスとした繊維強化樹脂であってもよい。例えば、図10(a)に示すように、複数枚の平織物41を、長手方向の先端側の部分の所定範囲は、積層方向(厚さ方向)の片側半分の平織物41と、他の片側半分の平織物41との2つに分割する状態で結合糸条42aにより結合され、それ以外の部分は全ての平織物41が結合糸条42bで結合された仮強化基材を製造する。仮強化基材は、片側半分の平織物41と、他の片側半分の平織物41との間にスリット部43が形成された積層織物となる。次に、図10(b)に示すように、仮強化基材のスリット部43と対応する部分を、スリット部43を挟んだ状態で互いに異なる方向(この実施形態では逆方向)に延びるように屈曲させて2つのフランジ44a,44bを形成する。そして、2つのフランジ44a,44bの根元部とスリット部43とに跨るようにステッチ糸45で逢着する。その結果、スリット部43を挟んだ状態で互いに異なる方向に延びる2つのフランジ44a,44bを有する強化基材(積層織物)が形成される。
○ 多層織物の長手方向に、蛇行する状態で配列され、緯糸yと交絡することで、基本的には隣り合う織物層を分離不能に拘束し、スリットを形成する箇所では、スリットを挟んで位置する緯糸yと交絡しないように配列される経糸xの折り返し位置は、図5(a)に示すように、隣り合う2層を構成する緯糸yと係合する状態に限らない。例えば、3層以上の層を貫通した状態で折り返すようにしたり、隣り合う2層で折り返す経糸xと、3層以上の任意の層で折り返す経糸xとが混在したりする状態であってもよい。
○ 繊維強化樹脂部品の強化基材は、複数の織物層がスリット部を挟んで分割された分割部を有する多層織物あるいは積層織物を使用し、スリット部を開いて二つに折り曲げてフランジを形成した構成に限らない。例えば、最初からフランジが形成された強化基材と同じ断面形状の多層織物を製造してもよい。
x…結合糸条としての経糸、18a,18b,18c,19a,19b,27a,27b,44a,44b…フランジ、22…強化基材、24,30…多層織物、24a…本体部、24c…分岐部、26,43…スリット部、31…スリット部としての第1のスリット、33…スリット部としての第2のスリット、34…スリット部としての第3のスリット、42a,42b…結合糸条。

Claims (4)

  1. 多層織物又は積層織物を強化基材とし、樹脂をマトリックスとした繊維強化樹脂製で、他の部材との連結に使用されるフランジを備えた繊維強化樹脂部品のフランジの製造方法であって、
    前記強化基材の製造工程として、前記他の部材と連結される側の部分に、前記多層織物又は積層織物の各織物層を結合する結合糸条が、前記多層織物又は積層織物をそれぞれ厚さ方向において2つに分割する状態で結合することにより分割された前記織物層の間に前記多層織物又は積層織物の先端の手前まで延びるように形成されたスリット部が存在する仮強化基材を形成する仮強化基材製造工程と、
    前記仮強化基材製造工程で製造された前記仮強化基材の前記スリット部を挟んだ前記織物層を互いに異なる方向に屈変形させて2つのフランジを形成するフランジ形成工程とを備えることを特徴とする繊維強化樹脂部品のフランジ製造方法。
  2. 前記フランジ形成工程で形成された前記フランジの根元部から前記フランジが分岐された本体部にかけて前記スリット部と交差するステッチを施す縫製工程を備えている請求項1に記載の繊維強化樹脂部品のフランジ製造方法。
  3. 多層織物又は積層織物を強化基材とし、樹脂をマトリックスとした繊維強化樹脂製で、他の部材との連結に使用されるフランジを備えた繊維強化樹脂部品のフランジ構造であって、
    前記強化基材は、本体部と、前記本体部から2方向以上に分岐した分岐部とを備えており、前記本体部を構成する織物層は結合糸条により結合されて一体化されており、前記分岐部のうちの2つの分岐部は、前記本体部の織物層の間に前記多層織物又は積層織物の先端の手前まで延びるように形成されたスリット部によって2つに分割され、かつ前記スリット部を挟んだ織物層が互いに異なる方向に折り曲げられているフランジを構成していることを特徴とする繊維強化樹脂部品のフランジ構造。
  4. 前記フランジが前記本体部から分岐する箇所の根元部から前記本体部にかけてステッチが施されている請求項3に記載の繊維強化樹脂部品のフランジ構造。
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