JP6686244B2 - 電極素子及び電極の生産方法、並びに、当該電極を用いる測定システムの作製 - Google Patents

電極素子及び電極の生産方法、並びに、当該電極を用いる測定システムの作製 Download PDF

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Description

本発明は、特定の材料を用いた電極として用いることができる電極素子の生産方法に関し、さらに具体的には絹電極として用いることができる電極素子の生産方法に関する発明である。さらに本発明は、生体親和性に優れる導電性素材を用いた、体表又は体内において用いる生体電極に関する発明であり、さらに具体的には、筋電計等の筋電測定システムや、脳波計等の脳波測定システムにおいて用いる生体電極、及び、当該生体電極を用いる筋電測定システム又は脳波測定システムに関する発明である。
現在、銅等の金属やカーボン等を導電素材として用いた従来の導電性繊維に代えて、より導電性及び親水性に優れて、かつ、生体への適合性が優れる素材として導電性高分子が着目されている。これは、金属やカーボン等は疎水性で、しかも硬質であり、生体との適合性に問題が認められるからである。例えば、生体電極として体表面に用いる場合には、当該生体電極と体表面とを電気的連続性を確保するために、導電性のペーストを当該生体電極と体表面の間で使用しなければならず、使用者において蒸れによる不快感や掻痒感、さらには接触性皮膚炎や細菌の感染等の問題が指摘されている。
このような問題を解決する素材として着目されている冒頭の導電性高分子として、既に「PEDOT−PSS(Poly(3,4-ethlenedioxythiophene)-polystyrenesulfonate)」が提供されており、当該導電性高分子を、生体材料である絹等の繊維にコーティングした導電性の繊維が、本発明者等によって開発されている(例えば、特許文献1、2、非特許文献1)。
導電性高分子を用いた生体電極の応用として、当該生体電極を用いる筋電計や脳波計が挙げられる。
ヒトや動物が歩いたり走ったり運動を行っているときは、そのもとになっている駆動力は筋の収縮によって生み出される。このような筋の活動状態を知る方法として、筋電図法(Electromyography:EMG)がある。筋電図法は、神経筋疾患の臨床診断に用いられる針筋電図と、動作解析に用いられる表面筋電図に二分される。
前者の針筋電図は、複雑な神経筋疾患が増加しつつある現代社会においてますます必要とされるものである。後者の表面筋電図では、生体表面電極を通して筋肉の活動電位を導出し、それを筋電図として視覚化することにより、動作に対応して、どの筋がどの時点で、どの程度活動しているかを知ることができる。
近年、筋電図を提供する筋電測定システムは、装置が高性能化及び低コスト化し、ソフトウエアも含めた使い勝手も向上したため、筋電位の測定自体は従来よりも容易になりつつある。また、汎用の信号処理ソフトを用いることによりパーソナルコンピュータを用いて様々な信号処理も簡単に実行できるようになった。
その結果、特に表面筋電測定システムにおいて、スポーツ動作解析やリハビリテーション分野での積極的な活用が検討されるに至っている。
脳波測定に関しては、医療機関における検査を始めとして、在宅検査、遠隔医療、心理学的研究、介護福祉分野、ユビキタスヘルスケアシステム、BCI(ブレインコンピュータインターフェース)等において重要な位置を占めつつある。
このような状況の中、より一般的な生活場面において脳波の測定を被験者に肉体的、心理的な負担をかけずに脳波測定を実行する手段が求められている。
また、脳波と眼球運動を関連づけるために、脳波と眼球運動の活動電位を同期させることが可能な複合システムも提供されている。
国際公開WO2013/073673号公報 特開2014−108134号公報
S. Tsukada, H. Nakashima, K. Torimitsu, "Conductive polymer combined silk fiber bundle for the bioelectrical signal recording", PLos ONE, 2012, Vol.7, e33689-1-10 Seul Gi Kim, Jong-Won Yang, Jun-Taek Lee, Jin-Yeol Kim, "Highly conductive PEDOT:PTS films interfacially polymerized using electro spray deposition and enhanced by plasma doping", Japanese Journal of Applied Physics, 2014, 53, 035501-1-7
[A]上記の非特許文献2には、PEDOT−PSSよりも導電性に優れた導電性高分子として、「PEDOT−pTS(poly(3,4-ethylene-dioxythiophene)-p-toluenesulfonate)」が開示されている。
本発明者等は、このPEDOT−pTSを上記のPEDOT−PSSに代えて、絹等を基材とする電極素子の本質成分として用いることを目指している。しかしながら、PEDOT−pTSは、PEDOT−PSSとは化学的な特性が異なっており、その実用化にはPEDOT−PSS独特の問題が存在する。
導電性高分子を導電成分として用いる電極素子を作出するには、塗布、化学的又は物理的処理、洗浄、乾燥等の工程を経なければならず、相応の手間とコストがかかる。基材の表面に導電性高分子による所望の描画を行い、当該描画部分をそのまま電極として用いることができれば理想的である。
ところが、導電性高分子で布等の基材の表面に描画を行うと滲んでしまい、企図する通りのデザインの平面形状の電極部分を作出することは困難である。
よって本発明の第1の課題は、PEDOT−pTSを導電性高分子として用いる場合における、滲みを抑制しつつ電極素子として実用可能な、基材に対する直接的かつ効率的な当該導電性高分子の適用手段を提供することにある。
[B]筋電測定システムや脳波測定システムのモニター用の金属製の表面生体電極は、既に広く普及している。筋肉の活動電位や脳波の測定に際しては、呼吸や体動によりノイズ(アーチファクト)が発生してしまうことが問題となっており、導電性ゲルの粘着性パッドの使用により、これを防いでいる。
しかしながら、このような使用形態は、筋肉の活動電位信号や脳波信号の高い周波数成分が減衰してしまい、正確な信号の解析や外部装置との高速通信を困難にする要因となっている。
また、粘着性パッドの装着者にとっては、当該パッドの皮膚における密着により蒸れが発生しやすくなり、長時間使用では不快感が生じることが少なくない。また、粘着剤の効果を高めるためのアルコール類による事前の脱脂処理は、皮膚への刺激が強く、敏感肌の装着者においては、掻痒感や接触性皮膚炎の原因となることも指摘されている。また、特に脳波測定を室外で行う場合、外見上の違和感も問題となる。
また、金属製の表面生体電極の導電性能では、かなり表面積を大きくする必要があり、かつ、硬質であるために、装着者の細かな筋肉の動きに伴い電極が微妙に動いてしまい、これがノイズ信号を生んで、正確な測定が困難になることが指摘されている。
本発明の第2の課題は、上記の筋電測定システムの金属製の表面生体電極に伴う欠点を克服した同用途の表面生体電極、すなわち、導電性ゲルを使用せず、かつ、使用態様に応じて導電性能に優れて電極本体の表面積をより小さくすることが可能であり、さらに、皮膚に密着させることが可能であり、少々の動きでは、電極と皮膚の間にブレを生じさせない、多様な生活場面において用いられる筋電測定システムや脳波測定システムに適用可能な表面用電極を提供することにある。
また、筋電測定システムや脳波測定システムで用いられる医療用の針電極やワイヤー電極においても、金属性の針の使用による痛覚や金属アレルギー等が問題となっており、より生体適合性に優れ、かつ、導電性能に優れた製品の提供が求められている。この針電極やワイヤー電極にまつわる問題の解決も、本発明の課題である。
さらに、上記の課題を克服した電極を活用する筋電測定システムや脳波測定システムの提供もまた、本発明の課題である。
[A]本発明者等は、上記の第1の課題の解決に向けて検討を行った結果、驚くべきことに、(1)酸化成分とpTS(p-toluenesulfonate)を含有する有機溶媒性溶液(以下、「pTS溶液」ともいう)と、(2)EDOT(3,4-ethylenedioxythiophene)、の混合液(以下、「pTS−EDOT混合液」ともいう)の、基材への接触による付着を行い、当該接触に同期させた重合促進処理を当該接触箇所に施すことを特徴とする、電極素子の生産方法(以下、本発明の生産方法ともいう)を提供することにより、基材における上記溶液乃至上記溶液の内容成分同士の重合により生成するPEDOT−pTS、の滲みを防止しつつ、PEDOT−pTSを含む所望の平面図形を基材上に描いて、当該描画部分の電気的抵抗値を低下させて電極としての働きを付与することができることを見出し、本発明を完成した。しかも、本発明の生産方法により、電極に至るまでの一連の作業が著しく省力化されることを見出した。
本発明の生産方法において、pTS溶液とEDOTを混合することにより、直ちにEDOTの重合反応がpTS−EDOT混合液中において進行し、高分子ポリマーであるPEDOT−pTSが形成される。この重合反応は、下記式に従う。酸化成分としてFe3+が例示されているが、後述するように、これに限定されるものではない。
本発明の生産方法において「同期」とは、pTS−EDOT混合液が基材に接触するタイミングに関連させたタイミングで重合促進処理を行うことを意味する。具体的には、両タイミングは同時であっても良く、pTS−EDOT混合液が基材に接触するタイミングからタイムラグを設けて、重合促進処理を行っても良い。当該タイムラグは、原則として1分以内であることが好適である。
すなわち本発明の生産方法は上記事項に加えて、同期させた重合促進処理は、pTS−EDOT混合液の基材への接触から1分以内に開始することを好適とする、電極素子の生産方法である。また、例えば基材表面上において重合促進処理を行う状態を継続的に保ちつつ、その上にpTS−EDOT混合液の接触を行い、当該タイムラグを実質的に設けない態様も、本発明の生産方法における「同期」に含まれる。
なお、pTS溶液にバインダーを含有させることにより、上記の同期のタイムラグを延長することが可能である。具体的には、このバインダーを用いた場合の同期させた重合促進処理は、pTS−EDOT混合液の基材への接触から24時間以内に開始することが好適であり、さらに好適には45分以内であり、最も好適には10分以内である。ただしこの場合の基材へのpTS−EDOT混合液の付着は、含浸ではなく、主にバインダーの接着力による表面的な接着によるところに特徴がある。
本発明の生産方法における重合促進処理は、上式のpTS−EDOT混合液における、PEDOT−pTSへの重合反応を促進する処理から選ばれる1種若しくは2種以上であれば特に限定されず、例えば、局所的な加熱処理等が挙げられる。局所的な加熱処理としては、(a)該当部分における50〜90℃の放熱体の直接的若しくは間接的な接触、及び/又は、(b)該当部分が50〜90℃になるように設定された熱風との接触、等が挙げられる。ここで「局所的な加熱処理」とは、例えば、「加熱雰囲気」に基材を載置して加熱処理を行うのではなく、上記の放熱体と該当部分の接触や、該当部分近傍に限定した熱風処理等、該当部分とその他の部分を区別して、実質的に該当部分のみに向けての加熱処理である。後述の線状基材の場合は、「局所」とは長さ方向のみを指標とした「局所」であり、幅方向は部分の区別が困難であるために、「局所」の指標とはならない。放熱体の「直接的な接触」とは、放熱体を直接pTS−EDOT混合液の付着部分に接触させることを意味するものであり、「間接的な接触」とは、放熱体をpTS−EDOT混合液の付着部分とは異なる基材の部分に接触させて予め混合液の付着部分を所定の温度に加熱しておくことを意味するものである。「間接的な接触」の典型例として、布状基材における混合液の付着部分の裏側に放熱体を接触させる態様が挙げられる。放熱体の材料は特に限定されないが、金属であることが好適である。
例えば本発明の生産方法において、(1)酸化成分とpTSを含有する有機溶媒性溶液と、(2)EDOTの混合液の、基材への接触による付着部分を、基材平面上の一部における描画デザインとすることにより、「付着部分が滲みにくい」という本発明の生産方法の特徴を活かすことができる。描画デザインとは、単純な一面付着とは異なるものであり、丸、三角等の単純な図形から、動植物画、人物画等の各種描写図、文字、模様等を包含するものである。
本発明の生産方法を行うに際して、マスク処理を行って、基材上の特に描画デザインの作成をより緻密に行うことができる。マスク処理とは、予め、導電性高分子の付着を行わない部分をマスクで覆う処理を行うことある。このマスク処理態様は、本発明の生産方法において、(1)酸化成分とpTSを含有する有機溶媒性溶液と、(2)EDOT、の混合液の、基材への接触による付着を行う前に、当該付着予定箇所を除く部分にマスク処理を行った後、少なくとも当該付着予定箇所において上記混合液との接触を行い、さらに重合促進処理を行った後に、上記マスクを除去することを特徴とするものである。
マスク処理の具体例としては、例えば、マスク剤として防染糊又はミツロウの塗布が挙げられる。防染糊としては、正麩糊、コーンスターチ糊、さつまいもデンプン糊等のデンプン糊;ゴム糊;ふのり等の海藻糊;その他各種の型糊が挙げられる。防染糊としては、デンプン糊が好適である。使用時の防染糊の濃度(糊粉末質量/水質量)は、特に限定されないが、概ね3〜5質量%ある。防染糊の除去は水洗により行うことができる。ミツバチの巣由来の蝋であるミツロウも好適である。使用時は通常、直接加温して融解させて用いる。またミツロウの除去は加温により再び融解させて行う。
本発明の生産方法に用いられる基材は、絹繊維を材料とする基材、又は、セリシン若しくはフィブロインを被覆した基材であることが好適である。さらに、絹繊維は、セッケン精練、アルカリ精練、セッケン・アルカリ精練、酵素精練、高温・高圧精練、又は、酸精練されていることが好適である。基材の形状は、糸状、紐状、布若しくはリボン状の繊維束、膜状、布状、フィルム状、シート状、又は、ゲル状等特に限定されないが、上述のように本発明の生産方法が、基材上のPEDOTの滲みを防止することを主要な効果の一つとしていることから、一定の広さの平面が伴う基材、すなわち、膜状、フィルム状、又は、シート状であることが好適である。しかしながら、これ以外の形状の基材であっても、本発明の生産方法を行うことにより生産効率を著しく向上させることができる。
pTS溶液におけるpTSの含有量は、当該有機溶媒性溶液に対して0.1〜10質量%であることが好適である。EDOTは、適宜水等の水性溶媒に希釈して用いてもよい。
pTS溶液における酸化成分は、所定の酸化能がある成分であれば特に限定されず、遷移金属、ハロゲン等が例示され、特に遷移金属が好適である。
本発明の生産方法における接触による付着は、滴下、噴霧、浸漬、転写、又は、塗布により行われることが好適である。なお、前記のマスク処理を行う態様では、EDOT−pTS混合液の無駄を排除するために、これらの混合液の付着が標的部分近傍においてのみ行われるように、塗布、滴下、又は、噴霧により行われることが好適であり、特に好適には、塗布又は滴下が選択される。ただし、後述する実施例3(1)のように、浸漬処理が出来ない訳ではない。
本発明の電極素子は、上述した本発明の生産方法により生産されたことを特徴とする電極素子であり、さらに、本発明の電極は、本発明の電極素子を用いてなることを特徴とする電極である。本発明の電極は、本発明の生産方法により電極素子を生産し、次いで、当該電極素子を用いて電極を生産することを特徴とする、電極の生産方法により生産することができる。本発明の生産方法においては、生産される電極素子に、2以上の異なる導電率の領域を設けることが容易に可能である。
本発明の電極素子は、抵抗値が低く、基材として絹等の繊維を用いているために肌触りが良く、耐久性と耐水性に優れ、柔軟性を伴うために、電極、特に生体電極のパーツ又は電極そのものとして用いることが可能であり、しかも、描画が自在な本発明の生産方法により効率的に生産を行うために、従来よりも多彩なデザインの電極素子として生産することができる。
[B]さらに本発明者等は、上記の本発明の生産方法を用いて生産した電極素子を用いた生体電極を、筋電測定システムや脳波測定システムに適用することにより、筋電測定システムや脳波測定システムにまつわる、上記の第2の課題を解決し得ることを見出し、上記の本発明の電極素子を用いてなることを特徴とする、表面又は穿刺用の生体電極(以下、本発明の生体電極ともいう)と、その生産方法を提供する。
ここで用いられている用語の大部分に関しては、本発明の生産方法に関して上記した通りである。
本発明の生体電極は、(a)表面用電極、又は、(b)穿刺用電極、に大別される。
(a)表面用電極の場合は、電極素子の皮膚との接触可能面積が、0.25〜100cmであることが、本発明の電極素子の「小型かつ高性能」の特徴が顕れ好適であり、特に当該電極素子の形状が「線状」又は「平面状」であることが好適である。ここで、「線状」とは、糸状、紐状、布若しくはリボン状の繊維束等を意味するものであり、「平面状」とは、布状、膜状、フィルム状、又は、シート状等を意味するものである。これらの「線状」又は「平面状」の他に、例えば「ゲル状」の基材を用いることも可能である。基材が平面状である場合には、pTS−EDOT混合液の基材への接触は、基材平面上の一部における描画デザインを伴うことが、電極素子の生産工程での描画の滲みにくさを活用する上で好適である。
(b)穿刺用電極の場合は、電極素子を直接的に生体組織に差し入れる部分を有している態様が挙げられる。この場合、本発明の生体電極の形状は、典型的には、線状又は針状である、これは電極素子の形状とほぼ一致し、これらの形状の先端部から生体内への刺し入れを行うことができる。
また、これとは別個に、電極素子とこれを生体内に刺し入れるための補助機構が設けられている態様が挙げられる。後述するように、当該機構は注射針状の器具等が例示され、これを生体内に刺し入れた後に、電極素子部分のみを生体内に残して、当該補助機構は抜き去ることにより、生体電極素子部分の体内残置を行うことができる。
穿刺用電極の電極素子の生体組織との接触可能表面積は、0.0004〜0.02cmが好適である。
上述した本発明の生体電極は、筋電測定システム又は脳波測定システムに好適に用いることができる。
本発明における電極素子等における導電部分の電気抵抗値は、以下のように算出している。「導電部分」とは、基材において導電処理、具体的にはPEDOT-pTSの付着がなされている領域のことを意味するものである。例えば、基材の一部のみにPEDOT-pTSが付着している場合には、当該PEDOT-pTS付着領域が「導電部分」に該当する。
(a) 線状の電極素子等の電気抵抗値は、断面積約2.5x10−4cmで線状長さ1cm当たりの電気抵抗値をテスターで検出した値である。断面積の約2.5x10−4cmは、標準的な太さの絹糸の断面積である。「約」とは、「2.5」の小数点第2位以降の数字は四捨五入されることを意味している。断面積は抵抗値と反比例するので、断面積に応じた抵抗値を容易に算出することができる。線状基材の断面積が増加すれば、それに応じてPEDOT−pTSの断面積も増加することが見込まれ、本発明の電極素子同士、または、他の電極素子との比較検討が容易に可能であり、本発明における適切な電気抵抗値のパラメータである。1cmの長さが確保できない場合は、当該線状の電極素子の全導電領域における電気抵抗値を測定して、その電気抵抗値を1cm長と上記断面積に換算することにより比較をすることができる。
(b) 基材の形状が線状以外の場合、典型的には織物等の平面状部材の場合には、単純に基材の断面積のみで判断することはできないが、一般的に総合的な導電断面積換算としては、一本の線状部材の断面積よりも大きくなる。よって、基材の形状が線状以外の場合には、導電部分における1cm長における電気抵抗値を求め、これを「1cm当たりの電気抵抗値(ΩまたはkΩ/cm)」として、上記(a)の線状部材の好適範囲、および、最適範囲を、本発明の電極素子の特徴として規定することができる。
本発明により、電極、特に生体電極において用いることが好適な絹等の繊維を用いた電極素子を、基材への滲みを伴わずに、かつ、効率的に生産することが可能な電極素子の生産方法が提供される。さらに本発明は、当該生産方法により生産される小型かつ高性能の電極素子と、これを用いる生体電極等の電極及び当該電極の生産方法を提供する。当該生体電極は、特に、筋電測定システムや脳波測定システムの生体電極として好適に用いることが可能であり、その生産方法も提供される。
本発明の生産方法の一実施態様を示す概略図である。 絹織物上に、亜鈴状の平面電極を描いて、これを脳表面に直接用いる脳波測定用の電極として用いる態様を、ヒト脳の模型を用いて示した図面である。図2(a)は、平織りの絹織物上に複数の亜鈴状の描画を行って作出した平面電極の一部を示しており、絹織物において十分にPEDOT−pTSが含浸され、脳との接触面にもPEDOT−pTSが付着している電極を示している。図2(b)は、脳との接触面のみにPEDOT−pTSが付着している電極を示している。 シルクスクリーンを用いて、熱ヘッドによる局所加熱を行った場合の滲みの抑制を明らかにした図面である。 本発明の生産方法において熱風を用いた局所加熱の効果を検討した結果を示す図面である。 ミツロウによるリング状のマスク領域を設けて、本発明の生産方法の検証を行った結果を示す写真である。 正麩糊による長さ方向のマスク領域を設けて、本発明の生産方法の検証を行った結果を示す写真である。 比較例として加熱雰囲気中における電気抵抗値の経時的変化を示す図面である。 本発明の表面用電極を用いた筋肉の活動電位の測定の様子を示した図面のうち、用いた表面用電極3本を示している。 本発明の表面用電極を用いた筋肉の活動電位の測定の様子を示した図面のうち、図7(a)に示されている表面用電極を用いた筋電の活動電位の測定の様子を示している。 本発明の表面用電極を用いた筋肉の活動電位の測定の様子を示した図面のうち、図7(b)に様子が示されている測定により得られた筋電図を示している。 本発明の穿刺用電極(針電極)を用いて得られた脳波を示した図面である。図8(a)は、この測定の様子を示す概略図であり、図8(b)は、この測定により得られた脳波を示している。 本発明の穿刺用電極(針電極)を用いて筋肉の活動電位を測定した結果を示した図面である。図9(a)は、その様子を示す概略図であり、図9(b)は、この測定により得られた針筋電図である。
[A]本発明の生産方法
[A]−1: pTS−EDOT混合液
上述したようにpTS−EDOT混合液は、pTS溶液とEDOTの混合液である。
pTS溶液
pTS溶液は、pTS(p-toluenesulfonate)と酸化成分を含有する有機溶媒性溶液である。
pTSは、パラトルエンスルホン酸化合物(パラトルエンスルホン酸(トシル酸)との塩やエステル)として知られており、市販もなされている。
pTS溶液の溶媒となり得る有機溶媒は、pTSと酸化成分等を溶解することが可能であり、かつ、好適には水性溶媒との相溶性が良好であるものである。具体的には、炭素原子数が1〜6の1価の低級アルコール、具体的には、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ペンタノール、又は、ヘキサノールが挙げられる。これらの1価の低級アルコールを構成する炭素原子の骨格は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよく、1種のみならず2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、適宜水で希釈して用いてもよい。これらの中で、炭素原子数が1〜4の1価の低級アルコール、具体的には、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、又は、ブタノール、がpTS溶液の有機溶媒として好適である。
pTS溶液中に含有させる酸化成分は、pTS−EDOT混合液におけるPEDOT−pTSへの重合反応を活性化することが可能である限り特に限定されず、遷移元素、ハロゲン等が例示される。
遷移元素としては、鉄、チタン、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、亜鉛等の第一遷移元素;モリブデン、銀、ジルコニウム、カドミウム等の第二遷移元素;セリウム、白金、金等の第三遷移元素が例示される。これらの遷移元素は、金属単体としても、金属塩として用いてもよい。これらの中でも、鉄、亜鉛等の第一遷移元素を用いることが好適である。
pTS溶液中の酸化成分の含有量は、用いる酸化成分の種類によっても異なり、上記の重合反応を活性化できる量であれば特に限定されない。例えば、本明細書の実施例で用いている第二鉄イオン(Fe3+)であれば、塩化第二鉄として、当該溶液に対して1〜10質量%であることが好適であり、特に好適には3〜7質量%である。この配合量が多すぎると重合反応の進行は速いが、後工程での鉄の除去が困難になり、少ないと重合反応の進行が遅くなる。
pTS溶液中のドーパントとして働くpTSの含有量は、当該溶液に対して0.1〜10質量%が好適であり、さらに好適には0.15〜7質量%、特に好適には1〜6質量%、最も好適には2〜5質量%である。
pTS溶液における、その他の含有成分については後述する。
EDOT
EDOTは、上記のように3,4−エチレンジオキシチオフェンとして公知であり、市販もなされている。常温で液体で水溶性であり、適宜水等の水性溶媒に希釈して用いることも可能である。
バインダー
上記のpTS溶液にバインダーを含有させることができる。上述したように、バインダーを含有させることによりpTS−EDOT混合液に重合促進処理を同期して施すタイミングを遅らせることができる。しかしながら、基材へのPEDOT−pTSの付着は含浸よりも、このバインダー自体の接着力による表面的な付着の要素が大きくなる。
ここで用いられるバインダーは、特に限定されず、例えばその溶解の特徴に応じて選択することが可能であり、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等が挙げられる。具体的には、ナフィオン、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ−p−キシレン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、ポリアミド、ブタジエン系樹脂、フッ素系樹脂等の熱可塑性エラストマーを含む熱可塑性樹脂;ポリウレタン系樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、変性シリコーン樹脂、フタル酸樹脂、フェノール樹脂、フラン樹脂、アニリン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂;エポキシアクリレート系、アクリルエポキシカチオン重合系、感光性ポリイミド等の光硬化性樹脂等が挙げられる。
これらのうち、上記の各種ビニル樹脂、ナフィオン、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、フタル酸樹脂、変性シリコーン樹脂、アクリル系樹脂が好適である。
上記溶液におけるバインダーの含有量は、本発明の電極素子の導電性が維持される範囲内であれば特に限定されないが、pTS溶液とEDOTの総量の10〜30質量%が第1に好ましく、10〜40質量%又は1〜30質量%が第2に好ましく、1〜40%が第3に好ましく、1〜50質量%又は0.1〜40質量%が第4に好ましく、0.1〜50質量%が第5に好ましい。また、pTS溶液の総量の0.1〜1質量%、0.1〜10質量%、1〜10質量%、40〜50質量%、30〜50質量%、30〜40質量%も好ましい。
その他の成分
上記のpTS溶液に、pTS−EDOT混合液の基材への付着性と、出来上がった本発明の電極素子の導電性を損なわない等、本発明の効果を量的又は質的に損なわない限り、他の成分を必要に応じて配合することができる。
当該他の成分としては、例えば、グリセロール、ポリエチレングリコール−ポリプレングリコールポリマー、エチレングリコール、ソルビトール、スフィンゴシン、及び、フォスファチジルコリン、好ましくはグリセロール、ポリエチレングリコール−ポリプレングリコールポリマー、及び、ソルビトール、からなる1種又は2種以上が挙げられる。これらの成分を配合することにより、本発明の電極素子の濡れ特性を調整し、柔軟性を付与することによって、生体電極としての使用時における生体組織、特に皮膚との親和性を向上させることができる。
その他、第4級アルキルアンモニウム塩、ハロゲン化アルキルピリジニウム等のカチオン性界面活性剤;アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、脂肪酸塩等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等の非イオン性界面活性剤;キトサン、キチン、グルコース、アミノグリカン等の天然多糖類;糖アルコール、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
pTS−EDOT混合液
pTS−EDOT混合液は、pTS溶液とEDOTを混合して得られる混合液であり、上記混合によりPEDOT−pTSへの重合反応が即座に開始する。
この重合反応を基材の上において、さらに重合反応を加速させるための重合促進処理を行いつつ、基材における当該混合液の接触と重合促進処理のタイミングを同期させることにより、基材上でのPEDOT−pTS滲みを防止しつつ、PEDOT−pTSの基材上における付着を促進させ、基材上にPEDOT−pTSの描画を自在に、かつ、極めて効率的に行うことができる。
pTS溶液とEDOTの混合は、この工程の最初の段階で行われるものである。容積比でpTS溶液:EDOT=10:1〜100:1、好適には20:1〜40:1である。
[A]−2: 重合促進処理
上述したように重合促進処理は、pTS−EDOT混合液におけるPEDOT−pTSへの重合反応を促進する処理から選ばれる1種若しくは2種以上であれば特に限定されず、例えば、加熱処理等が挙げられる。加熱処理としては、(a)該当部分における50〜90℃の放熱体の直接的若しくは間接的な接触、又は、(b)該当部分が50〜90℃になるように設定された熱風との接触、等が挙げられる。「該当部分」とは、具体的には基材上においてpTS−EDOT混合液を接触させた部分のことを意味する。
これらの重合促進処理を行う時間は、PEDOT−pTSの導電性を損なわずに重合が行われ、かつ、可能な限り短時間であることが好ましい。なお、本発明の電極素子における導電性の目安となる電気抵抗は可能な限り小さいことが好適であるが、当該電気抵抗の上限は大きくても15.0×10 Ω/cmであることが好適であり、特に好適には2.0×10Ω/cm以下である。ただし、積極的に電気抵抗を高くすることを所望する場合には、長時間の重合促進処理を行えば、処理時間の長さに応じて電気抵抗の高い、すなわち、2.0×10Ω/cmを超える電気抵抗値の電極素子を得ることが可能であり、この処理時間のコントロールにより電極素子の電気抵抗を自由に調整することができる。
なお、マスク処理を行う場合には、マスク剤の残存成分が残ると電気抵抗値が大きくなる傾向がある。よって、マスク処理を行う場合で、かつ、電気抵抗値を小さくしたい場合には、選択するマスクを除去が容易な素材とすることと、水洗等のマスクの除去手段を精度良く行うことが好適である。
上記加熱処理(a)、(b)について、
(a)該当部分における50〜90℃の放熱体の直接的若しくは間接的な接触は、(i)直接的な接触は放熱体の接触から、(ii)間接的な接触は、基材のpTS−PEDOT混合液付着部分の付着前の加熱時間を除いて、それぞれ3〜10分間の加熱時間が好適であり、特に好適には3〜6分間であり、最も好適には4〜6分間である。この好適時間以外の加熱時間であると、電極素子の電気抵抗の値を想定条件以内とすることが困難となる。ただし、上述したように、意図的に電気抵抗値を上げたい場合にはこの限りではない。
(b)該当部分が50〜90℃になるように設定された熱風との接触である場合は、3〜10分間が好適であり、特に好適には3〜6分間であり、最も好適には4〜6分間である。この好適時間以外の加熱時間であると、電極素子の電気抵抗の値を想定条件以内とすることが困難となる。
このような条件の加熱処理は、例えば熱源を1000Wとして、該当部分との距離を7〜20cm程度として、風量を1〜2m/分とすることで行うことができる。
なお、この熱風との接触は、上記した50〜90℃に保った雰囲気内で該当部分に向けて送風を行う態様も含まれる。
これらの重合促進処理を単独で、又は、組み合わせて行うことで、基材の該当部分におけるPEDOT−pTSの、速やかで、かつ、導電性の良好な状態での生成を行うことができる。
[A]−3: 基材
本発明の生産方法に用いられる基材は、セリシン又はフィブロインが含まれている限り限定されるものではなく、これらのタンパク質を本来的に含む絹であっても、事後的にこれらのタンパク質を付加したものであってもよい。
セリシン又はフィブロインを被覆する基材の材料としては、ナイロン等のポリアミド繊維、PET等のポリエステル繊維、アクリル繊維、アラミド繊維、ポリウレタン繊維、炭素繊維等の合成繊維;綿、麻、ジュート等の植物性繊維;上記の絹の他、羊毛、コラーゲン繊維等の動物性繊維;或いは、これらの混合繊維を広く用いることができる。染色を施した繊維であってもよい。なお、「被覆」は、外見上被覆成分で対象物の表面を覆う行為であり、その具体的な態様は問わないこととする。例えば、被覆成分の被覆対象物への「付着」、「含有」、「染み込み」のいずれの態様であってもよい。
セリシン、フィブロリン共に、公知の方法により絹(生糸)より得ることが可能であり、かつ、市販もなされている。セリシンは、生糸の外側をなすタンパク質成分であり、例えば、特開平11−131318号公報に開示された方法により、生糸から回収することが可能であり、かつ、市販もなされている(例えば、株式会社高原社等)。フィブロインは、生糸の芯部分をなすタンパク質成分であり、例えば、特開平6−70702号公報に開示された方法により、絹繊維をアルカリ溶液で溶解し、透析することにより得ることが可能であり、市販もなされている(シルクゲンGソルブルKE:一丸ファルコス株式会社)。これらのセリシン又はフィブロインは、基本的には被覆の対象(糸や布地を含む)を水溶液状のセリシン又はフィブロインに浸し、乾燥させた後、洗浄することで皮膜を形成加工させて作出することができる(特許文献3)。また、このような被覆の作業を外注して、所望のセリシンの被覆基材を得ることも可能である[例えば、株式会社アート(群馬県桐生市):http://art-silk.jp/]。
上記の「絹繊維」とは、「絹(シルク)又はこれを主体とする繊維」を意味するものである。絹繊維は、絹単体であってもよいが、必要に応じて他の繊維との混合繊維を用いることが可能である。ここで「他の繊維」とは、上記のセリシン又はフィブロインを被覆する対象として例示した、合成繊維、植物性繊維、絹以外の動物性繊維が挙げられる。また、絹は、通常の家蚕糸や野蚕糸、蜘蛛や蜂由来の天然絹の他、遺伝子組み換え技術を用いて得られる絹、例えば、蛍光タンパク質をコードする遺伝子を組み込んだ蚕から得られる「光る絹」等を用いることも可能である。
これらの繊維の中でも、本来的にセリシンやフィブロリンを含み、PEDOT−pTSとの親和性や接着性に優れ、さらに生体親和性や強度にも優れる絹(シルク)又はこれを主体とする繊維、すなわち「絹繊維」、を選択することが好ましい。
また、生糸等からセリシンをはじめ、その他の不純物を除く工程である「精練」が行われた基材を用いることが好適である。精練には、セッケン精練、アルカリ精練、セッケン・アルカリ精練、酵素精練、高温・高圧精練、酸精練等が挙げられ、いずれの精練方法も用いることができる。これらの精練は、糸単位で行うことも、布単位で行うことも可能である。すなわち、絹の布状基材は、生絹織物であっても、練絹織物であってもよい。
基材の形状は、糸状、紐状、布若しくはリボン状の繊維束、膜状、フィルム状、シート状、又は、ゲル状等であり、布状、膜状、フィルム状、又は、シート状(以下、これらを平面状基材と総称することもある)が本発明の生産方法の適用対象として好適であり、糸状、紐状、布若しくはリボン状の繊維束(以下、これらを線状基材と総称することもある)においても、生産の効率化という観点から本発明の生産方法を適用することに大きな意義があることは、述した通りである。基材が平面状である場合には、pTS−EDOT混合液の基材への接触は、基材平面上の一部における描画デザインを伴うことが、本発明の生産方法に伴う描画の滲みにくさを発揮する上で好適である。
線状基材の太さは特に限定されず、通常は0.1μm〜1mm程度の範囲で必要に応じて選択することができる。生体電極等の電極に使用する場合は、通常は1μm〜100μm程度である。線状基材の長さも必要に応じて選択することができる。
また、線状基材は、必要に応じた処理、例えば、親水性を向上するためのプラズマ処理、細孔処理、化学的コーティング処理等を施したものであってもよい。
布状基材が織物である場合の、織物の組織は特に限定されない。例えば、平織り、綾織り、朱子織り、の三原組織として用いることができる。さらに、三原組織を変化させ、又は、組み合わせた変化組織であってもよく、積極的な文様を伴う一重特別組織や紋織り組織であってもよい。さらに、経二重織物、緯二重織物、経緯二重織物、パイル織物、タオル織物、搦み織物等の多重の織物であってもよい。
[A]−4: 同期処理の態様
本発明の生産方法では、pTS−EDOT混合液の基材への接触に同期させて、上述した重合促進処理を行う「同期処理」を行う。
同期処理を行う際の、上記の接触から重合促進処理開始までの時間は、特に上述したバインダーが配合されていないpTS−EDOT混合液においては可能な限り短いことが好ましく、好適には1分以内、さらに好適には30秒以内である。この時間を短く管理することにより、pTS−EDOT混合液の基材上における滲みを防止し、かつ、電極素子の生産の効率化を実現することができる。また、バインダーが配合されたpTS−EDOT混合液においては、当該時間は24時間以内であることが好適であり、さらに好適には45分以内であり、最も好適には10分以内である。
具体的には、第1に、pTS溶液とEDOTを、好適には上述した容積比の範囲内で混合して、pTS−EDOT混合液を作出して、これを基材に接触させる段階(第1段階)と、第2に、上記の時間内に重合促進処理を行い、基材におけるpTS−PEDOTの付着を行う段階(第2段階)を、当該同期処理は含んでいる。
この第1段階と第2段階は、手作業で行うことも可能であるが、現実的には印刷工程技術等を用いて全部又は一部を自動化して行うことが好適である。
図1にこの工程を行うシステムの一実施態様の模式図を示す。
図1においては、同期処理の工程が示されている。上載した平面状の基材を矢印1の方向に送ることが可能なコンベアの案内ベルト2の上に、垂直上方向からpTS−EDOT混合液を接触させることが可能なインク機構3が設けられており、さらにその矢印1の方向の先には、放熱体として熱ヘッド4が設けられており、さらにその先には、重合促進処理機構5が設けられている。今、基材6が案内ベルト2のインク機構3と熱ヘッド4の間にセットされている。
インク機構3を介して基材6上にpTS−EDOT混合液を接触させる段階が、上記の第1段階であり、時間管理を行いつつ、熱ヘッド4又は重合促進処理機構5において、所定の重合促進処理を行う段階が上記の第2段階である。
インク機構3に設けられたインク出口31からは、pTS−EDOT混合液が基材6に対して供給され、所定の接触が行われる。インク機構3の中、又は、インク機構3から外付けで、特定の割合でpTS溶液とEDOTを混合する機構(図示せず)が設けられており当該混合機構を介して、インク出口31にpTS−EDOT混合液が供給される。インク出口31から基材6に対するpTS−EDOT混合液の接触形式は、シリンジピペット等を用いた滴下、インクジェットノズル等を用いた噴霧等が挙げられる。また、この図とは異なる態様で、シルクスクリーン等による転写を行うことができる。ここに示した同期処理は厳密な時間管理を伴うので、所望の描画デザインを基材上に行う機械的又は自動的設定が、例えば、ピエゾ素子等による感圧センサー等によりなされていることが好ましい。また、描画予定箇所の周りをマスク剤で被覆し、又は囲んで、pTS−EDOT混合液の当該被覆部分又は囲み領域への浸潤を抑制することで描画デザインの際部を鮮明にして、仕上がりのさらなる向上を行うこともできる。当該設定に従い、基材6に対するpTS−EDOT混合液の接触による描画を短時間に行い、直ちに案内ベルト2による矢印1方向への描画済み基材6の送りにより、当該描画部分を熱ヘッド4に直接的又は間接的に接触させ、及び/又は、重合促進処理機構5による処理を施すことにより、pTS−PEDOTへの重合促進を行うことが必要である。この接触による描画デザインと熱ヘッド4等による重合促進処理の開始までの時間が、上述した好適には1分以内、さらに好適には30秒以内として、本発明の生産方法が行われる。なお、上述したように、熱ヘッド4との直接的又は間接的な接触、すなわち放熱体との接触は重合促進処理の一つであり、当該接触処理無しで、重合促進処理機構5による重合促進処理を行ってもよいし、両者を組み合わせてよい。重合促進処理機構5においては、上記した重合促進処理、例えば、熱風処理等を行うための設備が設けられている。
一例として、例えば、上記熱ヘッド4と描画済み基材6の接触後に、重合促進機構5において設けられた熱風の送風装置(図示せず)による第1の熱風処理を行って乾燥を行い、その後該当部分の水洗浄やマスク剤の除去処理を行い、その後、再び第2の熱風処理を行って乾燥を行う工程が挙げられる。この場合、上記の第2段階は熱ヘッド4との接触と第1の熱風処理である。第1の熱風処理の後に行う水洗処理は、未反応のEDOT及び遷移金属等の酸化成分の除去のために行うものである。
これらの第1段階、第2段階の工程を経ての同期処理により、基材6へのpTS−PEDOTの付着工程が完了する。
なお、本例を示した図1はあくまでも略図である。本発明の生産方法の実施形態のバリエーションは多様である。例えば、インク機構3においては、pTS溶液とEDOTを別々に吐出させ、空中で両溶液を混ぜてpTS−EDOT混合液として、基材6に対して接触を行うことも可能である。さらに、本例においては、案内ベルト2による平面上における描画済み基材6の送り動作により、第1段階から第2段階への移行を行っているが、例えば、描画済み基材6が向く空間角度を変えて、当該変更角度において描画済み基材6が向かう方向から、熱風処理、熱ヘッドとの直接的又は間接的な接触処理等を行うことも可能である。また、特に基材6が線状基材である場合には、第2段階の工程を「吊し」状態や「張架」状態として行うことも可能である。
このようにして、本発明の電極素子を生産することができる。
[B]本発明の電極ないし生体電極の生産
上述したように、本発明の電極は、本発明の生産方法により得られた電極素子(本発明の電極素子)を用いてなることを特徴とする、電極である。「用いてなる」とは、本発明の電極素子を、電極の全部又は一部として用いていることを意味するものである。また、本発明の電極は、本発明の生産方法により電極素子を生産し、次いで、当該電極素子を用いて電極を生産することを特徴とする、電極の生産方法により生産することができる。
本発明の電極は、その性質上本発明の電極素子を適用可能な電極の全てであるが、抵抗値が低く、基材として絹等の繊維を用いているために肌触りが良く、耐久性と耐水性に優れ、柔軟性を伴うために、特に生体電極のパーツ又は当該製品そのものとして用いることが好ましい。
以下、本発明の電極を生体電極(本発明の生体電極)として用いる場合の態様を示す。
[B]−1: 表面用電極
表面用電極は、容積伝導により伝わって来る活動電位や脳波を皮膚の上や、直接筋肉や脳、その他の臓器の表面(以下、これらの表面を「体組織表面」ともいう)から電極の穿刺を伴わずに導出する電極であり、筋腹や頭部に貼り付けて使用する生体電極である。これを誘発電位導出用や治療用の刺激電極とすることもできる。
本発明の電極が表面用電極である場合、体表面との接触可能面積を小さくすることが好適である場合が多く認められる。このような場合には、特に、本発明の電極の使用は好適である。当該電極素子の体組織表面との接触可能面積は、0.0004〜100cmであることが好適であり、特に好適には0.0004〜25cmである。25cmを超える接触可能面積であっても表面用電極として用いることは可能であるが、「体組織表面と電極素子との接触面積を著しく少なくしても、活動電位または誘発電位、さらに脳波を良好に導出することができる」、という本発明の電極の特徴を十分に活かすことにならない。接触可能面積が0.0004cmより狭いと、十分に活動電位または誘発電位、さらに脳波を導出することが困難になる。ただし、今後筋電測定システムや脳波測定システムの性能が向上すれば、0.0004cmより狭い接触可能面積であっても表面用電極として良好に用いることができる可能性がある。
なお、「体組織表面との接触可能面積」とは、導電性材を表面用電極の電極素子として用いた場合に、体組織表面と接触し得る面積であり、例えば、電極素子が平面状の場合には、当該シート面の面積である。このような平面状の電極素子の場合には、特に0.25〜100cmが好適であり、さらに0.25〜25cmが好適である。電極素子が線状の場合には、当該線状電極素子の体表面との接触を予定する表面積の半分の面積(当該面積は、例えば線状素材の直径を一辺、体表面との接触を予定する長さを他の一辺とする「長方形の面積」として近似することができる)が体組織表面と接触し得る面積である。このような線状の電極素子の場合には、特に0.0004〜0.02cmが好適であり、さらに0.0004〜0.005cmが好適である。他の形状の場合であっても、現実的に体組織表面に接触し得る面積であり、当業者であれば容易に把握することが可能である。また、当該接触可能面積は、1個のまとまった電極素子である。例えば、1個の表面用電極の中に、複数個の電極素子同士が接触せずに設けられている場合には、各々の電極素子における面積である。
本発明の表面用電極の基本構成は、(1)電極素子、及び、(2)下記の信号ケーブルや発信チップ等の、電極素子で捉えた活動電位又は誘発電位、さらに脳波等を、増幅器等を含む筋電測定システムや脳波測定システムの本体に伝達するための機構である。この基本構成に則って、常法により本発明の表面用電極を生産することができる。
この基本構成の本発明の表面用電極を、測定を行う皮膚上の筋腹や頭皮、又は、直接筋肉や脳の表面に2箇所以上、好適には3箇所以上貼り付けて、当該電極素子で捉えられた活動電位や誘発電位、又は、脳波を、筋電測定システム又は脳波測定システム本体に伝達することにより、当該筋肉における活動電位や誘発電位、当該脳領域における脳波の測定を行うことができる。あるいは、電気刺激を行う皮膚上の筋腹や頭皮、又は、直接筋肉や脳の表面に2箇所以上、好適には3箇所以上の本発明の表面用電極を貼り付けて、当該対象に対する電気刺激を行うことができる。
この体組織表面への貼付手段は、例えば体組織表面が皮膚の場合には、両面テープ、片面テープ等を利用することにより手軽に行うことが可能である。両面テープは上記電極における電極素子以外の領域と体組織表面とを粘着させて用いることが可能であり、片面テープは、体組織表面に載置した電極素子の上側から体組織表面に粘着させて用いることが可能である。体組織表面が脳表面や臓器表面である場合には、上記の両面テープ等の接着手段を用いずに、脳等の表面の水分に依存した載置を行うことが好ましい。
また、例えば、上記電極素子の皮膚表面との非接触側に当該非接触側の面積よりも広い面積の部材を設けて、当該部材において設けた上記の皮膚表面と表面用電極の定着手段により、体組織表面上における表面用電極の定着を行うことができる。
例えば、上記部材を、皮膚に向かう側に粘着部が設けられた粘着シートとして、粘着シートの電極素子からはみ出した粘着部の粘着力により、皮膚と電極の定着を行うことができる。さらに、この粘着シートの代わりに、体に巻き付けるためのゴムバンドや金属バンドとすることにより、腕輪、リストバンド、腕時計バンド、腹巻き、サポーター等の生活製品の皮膚との接触部分に電極素子を組み込んだ本発明の表面用電極とすることができる。その他、衣服、帽子、眼鏡、靴類、ハンドル等の皮膚接触部分に表面用電極の素子を組み込んだ本発明の表面用電極の作出も可能である。
その他、本発明の表面用電極には、必要に応じて、蒸れを防止するための開口部や、汗や水蒸気等を吸い取ることができる吸水材を組み込んだ調湿部、を設けることが可能である。
本発明の表面用電極の第1の特徴として、平面状の基材の上では自在に電極素子の描画を行うことが可能であることが挙げられ、そのため電極の使用箇所を柔軟に選択することができる。例えば、衣服の裏側に本発明の表面用電極を貼り付けたテキスタイルの表面用電極において、身体の所望の部分の形状に適応させたデザインの表面用電極素子を容易に作出して、テキスタイルの表面用電極を多様化することが可能である。
例えば、直接脳や筋肉等の体内組織において穿刺用電極を用いる代わりに、本発明の表面用電極を直接当該体内組織上に載置して用いることができる。この場合、生体適合性に優れた絹織物等の平面状基材の平面上に、当該第1の特徴に基づいて、所望の形状の電極素子が描かれることによって設けられた電極素子で構成される生体適合性織物を体内組織の上に載置することにより、生体への負担が軽減された状態での脳波や筋肉の活動電位の測定を行うことができる。
本発明の表面用電極の第2の特徴として、特に、用いる電極素子の導電性能が従来の導電性ポリマーを用いた製品よりも優れており、従来よりも小型であっても正確に活動電位や誘発電位、さらに脳波を伝達することが可能であることが挙げられる。例えば、電極素子の形状を「線状」としても正確に活動電位や誘発電位、さらに脳波を伝達することが可能である。
また、小型の表面用電極素子をより高密度に設けたマルチチャンネルの表面用電極(多点電極)の提供が可能であり、これにより、広範囲の筋肉活動や多領域の脳波の解析を、さらに緻密に行うことが可能になる。
図2は、前述した生産工程に従って、平織りの絹織物上に複数(図2(a)は2本、(b)は3本、のそれぞれ一部を示す)の亜鈴状(両端が膨らんだ線状)の描画を行い、当該描画部分を平面の電極素子とした素材を、ヒトの脳の模型の上に載置した状態を示している。両端の膨らみの部分が、電極素子に相当し、これらを繋ぐ細い線状部分が電極素子同士を繋ぐコードに相当する。基材の中にPEDOT−pTSを十分に含浸させた場合には、図2(a)のようにPEDOT−pTSによる黒色の描画部分が表側になってもよい(裏面も同様に、基材に十分に含浸されたPEDOT−pTSが直接的に脳に接触している)。これに対して図2(b)のように基材の片面のみにPEDOT−pTSが付着している場合には、PEDOT−pTSの付着面が脳表面に接触している。本例は、一単位が10mm角程度の電極素子であるが、さらに大きさを調整することができる。本例程度のサイズであれば、10mm程度の間隔を空けて3×3程度の格子状とすることが、脳の表面用電極の場合に想定される。無論のこと、個々の亜鈴の描画単位をさらに微細にして、さらに高密度の脳に直接接触させることが可能な格子状の表面用電極とすることができる。
なお、この場合、外部機器と電気的に接続される有線コードは、絶縁性のコーティングがなされていることが好ましい。当該コーティング材料としては、後述するように、絹等の天然繊維、ポリエステル等の化学繊維、シリコーン樹脂等の合成樹脂等が例示される。
このように本発明の電極が表面用電極である場合には、上述した生活製品をはじめ、本発明の電極を組み込み可能な応用範囲は従来の生体電極と比べても格段に広くなっている。すなわち、生活のあらゆるシーンにおける活動電位や誘発電位、さらに脳波を測定することが可能になり、健康管理、病気診断、運動原理の解明等をより柔軟にかつ広範囲に行うことが可能である。
[B]−2: 穿刺用電極
穿刺用電極は、文字通りに生体内に電極素子を穿刺により接触させて所望の生体シグナルを導出する電極である。これを誘発電位導出用や治療用の刺激電極とすることもできる。この態様の生体電極素子の生体組織との接触可能表面積は、好適には0.0004〜0.02cmであり、特に好適には0.0004〜0.002cmである。これは従来に比べて非常に小さい表面積であるが、同時に良好な導電特性ゆえに優れた生体電極機能を発揮することができる。
本発明の穿刺用電極の基本構成は、(1)電極素子、及び、(2)下記の信号ケーブルや発信チップ等の、電極素子で捉えた活動電位又は誘発電位、さらに脳波等を、増幅器等を含む筋電測定システムや脳波測定システムの本体に伝達するための機構である。この基本構成に則って、常法により本発明の穿刺用電極を生産することができる。
この基本構成の本発明の穿刺用電極を、測定を行う生体組織に1箇所以上穿刺して、当該電極素子で捉えられた活動電位や誘発電位、又は、脳波を、筋電測定システム又は脳波測定システム本体に伝達することにより、当該筋肉における活動電位や誘発電位、当該脳領域における脳波の測定を行うことができる。あるいは、電気刺激を行う生体組織に1箇所以上穿刺して、当該対象に対する電気刺激を行うことができる。なお、これらの「1箇所以上」は、あくまでも用いる穿刺用電極の個数である。用いる電極全体としては、いずれも前述した表面用電極と同じく「2箇所以上、好適には3箇所以上」であるが、必ず全てを穿刺用電極とする必要は無く、必要に応じてこれらの一部を表面用電極とすることも可能である。仮に全てが穿刺用電極であれば、表面用電極と同様に、「2箇所以上、好適には3箇所以上」となる。
この態様の生体電極は典型的には、針状の形状をしておりこれを生体内に刺し入れて使用する「針電極」と、線状のワイヤー電極素子を注射針等の電極を体内に刺し入れるための補助機構を用いて生体内に刺入し、当該補助機構を取り去って使用する「ワイヤー電極」が含まれる。以下、これらの2つの典型例を中心に、本発明の電極が穿刺用電極として用いられる場合について述べる。
[B]−3: 針電極
本発明の電極を針電極として用いる場合には、原則として硬質の線状の素材、例えば硬質絹糸を基材として用いることができる。硬質の絹糸は、精練によるセリシンの除去を行わずに提供されているものであり、これに対して上述した生産工程を経て、PEDOT−pTSの付着を行うことにより、針金に近い硬度の、線状の電極素子とすることができる。このような本発明の針電極素子に、基本的な構成を公知の手段により付加することにより、本発明の針電極を生産することができる。電極素子の硬度がこの程度であれば、皮膚の柔らかい部分であれば生体外部から体内に穿刺することが十分に可能である。また、手術等を行いながらターゲット器官に直接刺し入れることも可能である。この針電極の直接刺し入れのターゲット器官としては、例えば、脳が挙げられるが、これに限定されるものではない。脳においては、例えば、本発明の針電極に向けて通電を行って、電気刺激をした場合の体の反射を観察することにより、被験者の脳の細かな機能の診断や脳機能の解明を行うことができる。
[B]−4: ワイヤー電極
本発明の電極をワイヤー電極として用いる場合には、電極素子とは別個に当該電極素子を生体内に刺し入れるための補助機構(以下、穿刺補助機構ともいう)が必要である。最も基本的な穿刺補助機構は、長さ方向に両端が開口した貫通孔を伴う中空針である。この中空針の貫通孔に線状の電極素子を通した状態で、皮膚外から穿刺を行い、その後中空針を引き抜くことにより、電極素子のみを生体内に存置することができる。このような本発明のワイヤー電極は、本発明の電極素子に上記補助機構等を公知の手段により付加して、所望の電極を生産することができる。
ワイヤー電極の用途は、上述した針電極と同様である。
[B]−5: PEDOT−pTSの特性を利用した穿刺用電極
PEDOT−pTSは水分に接触すると膨潤する特性を有しており、この性質を活用した体内電極の提供も可能である。基本的な考え方は、上記のワイヤー電極と同様である。すなわち、湿潤状態から乾燥状態に向かう際のPEDOT−pTSの収縮に伴う応力によって、当該PEDOT−pTSが付着した電極素子の穿刺補助機構に対する付着を行い、これが体内電極として提供される。当該体内電極の穿刺補助機構を用いて、皮膚外からの穿刺を行うと、経時的に電極素子のPEDOT−pTSに生体内の水分が供給されて膨潤して、電極素子の穿刺補助機構に対する付着状態が解除される。この解除された状態で穿刺補助機構を皮膚から引き抜くことにより、電極素子のみを生体内に残置することができる。
[B]−6: 電気抵抗値の自由な調節
前述した電極素子の生産工程においては、熱処理等の時間を調節することにより、PEDOT−pTSを用いた電極素子における電気抵抗値を調節することができる。すなわち、電極素子において、2以上の異なる導電率の領域を設けることが可能である。これは、上記の電極素子の生産工程を用いた場合の大きな特徴の一つである。通常であれば、電極素子の電気抵抗値は低ければ低いほど好適であるが、例えば、通電を行って発熱を起こして当該熱により患部を焼く等の治療を、本発明の生体内電極を用いて行う場合には、針状の電極素子の先端部側の電気抵抗値を大きくして、残りの部分の電気抵抗値を低くする。そして、穿刺初期には、活動電位や誘発電位の測定を、電圧を印加する場合であっても低電圧で行い、測定・診断後に、低電気抵抗の領域を引き抜き、高電気抵抗の部分のみを残して高電圧を印加することによって、当該電極素子近傍に熱を発生させて、相応の治療効果を提供することが可能である。
また、例えば、電極素子として用いる部分以外を絶縁物質、例えば、絹等の天然繊維、ポリエステル等の化学繊維、シリコーン樹脂等の合成樹脂等で、表面コーティング処理等を行うことにより、所望の部分のみ電極素子が露出した体内電極を作出することができる。
[B]−7: ドラッグデリバリーシステム
本発明の体内電極の一部に、体内に薬液を注入するための注入機構を設けて、筋肉の活動電位や脳波に応じた薬液を体内に供給することが可能である。例えば、薬物輸送のための管を注入機構として設けることが挙げられる。また、薬物輸送手段を電極素子の基材(絹繊維等)の浸透圧移動とすることにより、電極素子と薬物輸送路を一体化することも可能である。薬物としては、例えば、脳電極として本発明の体内電極を用いる場合は、中枢神経の障害を緩和する薬物、例えばGSNO(S-Nitrosoglutathione)等が挙げられる。
[C]筋電測定システムと脳波測定システムとその生産
本発明の筋電測定システムと脳波測定システムは、電極として本発明の生体電極(表面用電極又は穿刺用電極)を用いることを特徴とするが、筋電測定システムや脳波測定システムとして必要な他の機構を備えている。例えば、電極の他に、増幅部、誘発電位を得るための各種刺激部、解析・記録・加算・校正等を行う解析部、音声や動画等により筋電や脳波の動きを表示する表示部等が必要に応じて備わっている。電気信号の伝達手段は、有線であっても無線であってもよい。本発明の筋電測定システムは、上記の生産方法により電極を生産し、次いで、当該電極を生体に接触させる電極(生体電極)として筋電測定システムに設けることにより生産することができる。この際、上記の他の機構を公知の手段により組合せて付加することにより、所望の構成の筋電測定システムを生産することができる。さらに、本発明の脳波測定システムは、上記の生産方法により電極を生産し、次いで、当該電極を生体に接触させる電極(生体電極)として脳波測定システムに設けることにより生産することができる。この際、上記の他の機構を公知の手段により組合せて付加することにより、所望の構成の脳波測定システムを生産することができる。
筋電測定システムと脳波測定システムは、それぞれ他の種類の生体シグナルと同期させることによって、筋肉や脳の状態把握をより突っ込んで行うことが可能であり、筋電測定システムであれば、例えば、血圧、心電信号、パルスオキシ信号、筋力、関節角度等を組み合わせて同期させることができる。
脳波測定システムであれば、脳波と眼球運動を示す筋電信号を同期させることも可能である。この脳波と筋電信号の組み合わせの場合の生体電極として、本発明の生体電極は有用である。
以下、本発明の実施例を開示する。特に断らない限り、含有量は配合対象に対する質量%である。
[材料]
本発明の電極素子の基となる基材として、(1)酵素精練(タンパク質分解酵素による精練)がなされた絹糸からなる平織りの絹織物(厚さ0.4mm程度)、(2)6匁羽二重(薄絹布、厚さ0.12mm程度)、(3)ポリエステル布地にセリシンを被覆した布地(アート株式会社(群馬県桐生市)の委託製造、厚さ0.15mm程度)を用いた。
pTS溶液としては、遷移金属の鉄(III)イオンとpTSとを含むブタノール溶液(Heraeus社製 CLEVIOS C-B 40 V2:p−トルエンスルホン酸鉄(III)として、約4質量%である:「CLEVIOS」は登録商標)を用いた。EDOTとしては、EDOTの水溶液(Heraeus社製CLEVIOS MV2、EDOT約98.5質量%である:「CLEVIOS」は登録商標)を用いた。
[実施例1] 熱ヘッドを用いた加熱処理の検討
上記の基材として用いる平織りの絹織物(4cm×4cm)に対して、上記のpTS溶液を6.3mlと、EDOT220μlを準備し、これらを混合して30秒以内に、2つの互いに隣接した長方形形状(1cm×2cm)に型抜きがなされたシルクスクリーンを用いて、上記の基材として用いる絹織物の上に当該混合液を転写した。この作業は70℃の加熱雰囲気内において20分間行われた。
その結果、企図した形状は全て絹織物上で滲んでしまい、この方法では絹織物上にPEDOT−pTSの描画を行うことは困難であることが明らかになった(図示せず)。
これに対して、上記の2つの長方形形状の型抜きがなされたシルクスクリーンを用いて、上記の基材として用いる絹織物の上に上記混合液を転写し、当該転写部分の全面の上から70℃の金属製の熱ヘッド(放熱体)を速やかに転写部分に直接接触させて、5分間その熱ヘッドとの接触状態を維持した。その結果、上記のような滲みが無く、企図した通りの長方形のPEDOT−pTSの描画を行うことができた(図3)。
次いで、この長方形描画部分の電気抵抗値を測定したところ、1.7×10 Ω/cm程度と、非常に低い電気抵抗値を示した。
この結果は、本発明の生産方法を行うことにより、布状基材等の平面基材上に自由に描画が可能であり、かつ、当該描画部分は低電気抵抗値とすることが可能であることが明らかになった。
[実施例2] 熱風を用いた加熱処理の検討
本実施例では、上記の熱ヘッドに代えて、900Wのドライヤーの熱風を上記2つの長方形の描画部分の温度が70℃になるように設定して、描画部分の局所の熱風処理を4分間行った。対照として、70℃の加熱雰囲気において描画を行った布状基材を用いた。
本例では、わずか4分間の局所の熱風処理で、描画は滲まずに、しかも、1.6×10Ω/cmという低い電気抵抗値が得られた。これに対して、加熱雰囲気を用いた対照は、実施例1の対照のように描画部分が滲んだだけではなく、電気抵抗値は4.0×10 Ω/cm程度という高い値であった(図4)。
これは、熱風処理のように、速やかに加熱部分の温度を上昇させることが可能な局所の加熱手段が、本発明の生産方法において極めて好適な実施態様であることがわかる。
上記の平織りの絹織物(1)に代えて、ポリエステル布地にセリシンを被覆した布地(2)を用いて同様の試験を行ったところ、同様に低い電気抵抗値が得られた。
[実施例3] マスクを用いた処理の検討
本実施例では、マスクを用いて上記の熱風処理を行った。
(1)ミツロウ又は型糊をマスク処理剤として用いた態様
5cm×5cmの6匁羽二重(薄絹布)(2)上に、ミツロウ(松葉薬品社製)を70〜80℃で溶かして、これを直径3cmのガラスリング上に十分に塗布して、これを当該薄絹布上に押しつけて、略当該リング形状のミツロウ塗布領域を作成した。当該塗布領域のミツロウが十分に固まったことを確認してから、上記のpTS溶液とEDOTの実施例1と同じ容積比の混合液10mlに30秒間浸漬した後、速やかに900Wのドライヤーで表面温度70℃の条件で局所加熱を5分間行い、PEDOT−pTSの重合反応を進行させた。その後、再び70℃で加熱することでミツロウを溶融させて除去し、さらにPEDOT−pTSの洗浄を水洗により行った。その際の状態を示した写真が、図5(a)である。リング形状(一部)のミツロウ塗布領域には黒色のPEDOT−pTSは認められないことが明確に確認される。黒色部分の電気抵抗値を測定したところ、1.2×10Ω/cmと若干高い値であったが、これはミツロウの除去が十分ではなかったことに起因すると考えられる。マスク剤をミツロウに代えて、市販の型糊(田中直染料店)を用いて、使用後に水洗除去を行ったところ、5.0×10Ω/cmと低電気抵抗値であることが確認された。
(2)デンプン糊(正麩糊)をマスク処理剤として用いた態様
2cm×5cmの6匁羽二重(薄絹布)の長さ方向全長(5cm)に、幅1cmのメンディングテープを布幅半分に貼り付けて、その上から正麩糊(田中直染料店)の4質量%水溶液を刷毛で十分に塗布し、糊が十分に乾いたことを確認してから、メンディングテープを剥がして、PEDOT−pTS重合領域を露出させた。当該重合領域の上から、上記のpTS溶液とEDOTの実施例1と同じ容積比の混合液2mlを筆で素早く塗布後、30秒間十分浸潤させた後、速やかに900Wのドライヤーで表面温度70℃の条件で局所加熱を5分間行い、PEDOT−pTSの重合反応を進行させた。その後、十分水洗を行って、PEDOT−pTSの洗浄と糊の除去を行った。その際の状態を示した写真が、図5(b)である。明瞭に、正麩糊の塗布領域には黒色のPEDOT−pTSは認められないことがはっきりと確認される。電気抵抗値を測定したところ、7.0×10Ω/cmと若干高い値であったが、これは正麩糊が僅かに残存していたことに起因すると考えられる。
[比較例1] 加熱雰囲気中における電気抵抗値の経時的変化
加熱雰囲気中での抵抗値の時間依存性を検討した。上記した平織りの絹織物(4cm × 4cm)を、上記のpTS溶液とEDOTの、実施例1と同じ容積比の混合液10mlに浸漬して、これを30秒以内に70℃の加熱雰囲気中に載置して、当該浸漬物の経時的に電気抵抗値を測定した(図6)。その結果、雰囲気加熱後20分間で電気抵抗値は最低値となったが、当該最低値は2.0×10Ω/cmを明白に超えており、この方法では上述した実施例1又は2程には電気抵抗値が下がらないことが明らかになった。
[実施例4] 本発明の表面用電極を用いた筋肉の活動電位の測定
被験者の上腕部に、実施例1と同様の素材と熱ヘッドを用いた方法で作成した、抵抗値1.5x104Ω/cmのリボン状の表面用シルク電極(幅1cm、長さ6cm)3本(図7(a):内、1本が基準電極、残り2本は測定電極)を2cmの間隔で配置し、無線筋電計にそれぞれ接続した時に得られた筋電の時間的変化を示す。測定に際し、シルク電極と皮膚との間には、ジェル等のインピーダンスを低減させるための物質は塗布せず、直接皮膚に接触させた(図7(b))。固定のために電極全体を透明粘着シートでカバーし、皮膚表面に付着させているが、このシートは全体を固定するためであり、個々の電極を表面に粘着させるためではない。電極の皮膚への接触のために特に強い力を要しない。
その結果、実質的にアーチファクトが存在しない、活動電位を反映した良好な表面筋電図を得ることができた(図7(c))。
[実施例5] 本発明の穿刺用電極(針電極)を用いた脳波の測定
硬質絹糸に対し、PEDOT−pTSを重合させたシルク電極は、その硬さ故に、脳や筋肉組織へ刺入することができる。本実施例では、3号硬質絹糸(直径0.20〜0.269mm)を基材として用いて、実施例2のドライヤーによる熱処理を用いた方法に準じて作成した硬質線状のシルク電極を、ニワトリ胚(胚齢16〜20日)の頭蓋骨を除去した脳に刺入することで脳神経活動を測定した。図8(a)は、その様子の概略図である。測定に際し、測定電極だけでなく基準電極も同一の穿刺用のシルク電極を用いた。これにより、ガンマ波(図中矢印)を含む脳波(周波数50〜70Hz)を測定することができた(図8(b))。
[実施例6] 本発明の穿刺用電極(針電極)を用いた筋肉の活動電位の測定
本実施例では、実施例2のドライヤーによる熱処理を用いた方法で作成した点以外は、実施例5と同じく3号硬質絹糸を基材として作成した穿刺用電極を、ニワトリ大腿筋の筋肉組織に刺入・留置し、動きに伴う筋肉内部の電位変化を測定した。測定に際し、基準となるシルク電極は、皮膚直下の筋肉表面に設置した。図9(a)は、その様子を示す概略図である。
その結果、実質的にアーチファクトが存在しない、活動電位を反映した良好な針筋電図を得ることができた(図9(b))。
1: 矢印
2: 案内ベルト
3: インク機構
4: 熱ヘッド
5: 重合促進処理機構
6: 基材

Claims (17)

  1. (1)酸化成分とpTS(p-toluenesulfonate)を含有する有機溶媒性溶液と、(2)EDOT(3,4-ethylenedioxythiophene)、の混合液の、絹若しくは絹を主体とする繊維を材料とする基材、又は、セリシンを被覆した繊維基材への接触による付着を、当該(1)と(2)の混合後30秒以内に行い、かつ、当該混合液の基材への接触後1分以内に重合促進処理を当該接触箇所において開始することにより、基材にPEDOT−pTSが付着した電極素子を生産することを特徴とする、電極素子の生産方法であって、さらに当該重合促進処理は、下記(a)及び/又は(b)の局所的な加熱処理であることを特徴とする、電極素子の生産方法。
    (a)該当部分における50〜90℃の放熱体の直接的若しくは間接的な接触。
    (b)該当部分が50〜90℃になるように設定された熱風との接触。
  2. 上記生産方法において、局所的な加熱処理(a)及び/又は(b)は、3〜10分間行われることを特徴とする、請求項1に記載の電極素子の生産方法。
  3. 上記生産方法において、局所的な加熱処理(a)及び/又は(b)は、機械的設定若しくは自動的設定において行われることを特徴とする、請求項1又は2に記載の電極素子の生産方法。
  4. 上記生産方法において、基材への接触による付着は、滴下、噴霧、又は、転写により行われることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の電極素子の生産方法。
  5. 上記生産方法において、基材への接触による付着、機械的設定若しくは自動的設定において行われることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の電極素子の生産方法。
  6. 上記生産方法において、(1)酸化成分とpTS(p-toluenesulfonate)を含有する有機溶媒性溶液と、(2)EDOT(3,4-ethylenedioxythiophene)の混合液の、基材への接触による付着部分は、基材平面上の一部における描画デザインであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の電極素子の生産方法。
  7. 上記生産方法において、(1)酸化成分とpTS(p-toluenesulfonate)を含有する有機溶媒性溶液と、(2)EDOT(3,4-ethylenedioxythiophene)、の混合液の、基材への接触による付着を行う前に、当該付着予定箇所を除く部分に防染糊又はミツロウを塗布した後、少なくとも当該付着予定箇所において上記混合液との接触を行い、さらに重合促進処理を行った後に、上記防染糊又はミツロウを除去することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の電極素子の生産方法。
  8. 上記生産方法において、絹若しくは絹を主体とする繊維を材料とする基材の絹は、セッケン精練、アルカリ精練、セッケン・アルカリ精練、酵素精練、高温・高圧精練、又は、酸精練されていることを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の電極素子の生産方法。
  9. 上記生産方法において、基材上に2以上の異なる導電率の領域を設けることを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の電極素子の生産方法。
  10. 請求項1〜のいずれかに記載の生産方法により生産されたことを特徴とする、電極素子。
  11. 請求項1〜のいずれかに記載の電極素子の生産方法により電極素子を生産し、次いで、当該電極素子を用いて電極を生産することを特徴とする、電極の生産方法。
  12. 上記電極は、表面又は穿刺用の生体電極であることを特徴とする、請求項11に記載の電極の生産方法。
  13. 請求項11または12記載の生産方法により生産されたことを特徴とする、電極。
  14. 請求項11または12記載の生産方法により電極を生産し、次いで、当該電極を生体に接触させる電極として筋電測定システムに設けることを特徴とする、筋電測定システムの生産方法。
  15. 請求項13に記載の電極を用いてなることを特徴とする、筋電測定システム。
  16. 請求項11または12に記載の生産方法により電極を生産し、次いで、当該電極を生体に接触させる電極として脳波測定システムに設けることを特徴とする、脳波測定システムの生産方法。
  17. 請求項13に記載の電極を用いてなることを特徴とする、脳波測定システム。
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