(実施の形態1)
まず図1を参照して、本発明の実施の形態1における電子部品実装システムの全体構成を説明する。電子部品実装システム1は、基板に電子部品が実装された実装基板を製造する機能を有し、上流側から順に基板供給装置M1、印刷装置M2、印刷検査装置M3、複数の電子部品搭載装置M4,M5,M6、リフロー装置M7及び基板回収装置M8を配置した実装ライン1aを含んで構成される。これらの装置は、LAN等の通信ネットワーク2を介して上位システム3に接続されている。以後、基板の搬送方向をX軸方向、X軸方向と水平面内で直交する方向をY軸方向、XY平面に対して直交する方向をZ軸方向と定義する。
基板供給装置M1は、作業対象となる基板を印刷装置M2に供給する。印刷装置M2は、基板に形成された電極にクリーム状の半田ペースト(以下、「半田」と略記する)を印刷する。印刷検査装置M3は、基板に印刷された半田の状態を検査する。電子部品搭載装置M4,M5,M6は、半田が印刷された基板に電子部品を搭載する。リフロー装置M7は半田を溶融させるための溶融ゾーンを有しており、電子部品が搭載された基板を所定の加熱プロファイルに従ってリフローすることで、半田を溶融させて基板と電子部品を半田接合させる。これにより実装基板が製造される。基板回収装置M8は、リフロー後の基板を回収する。印刷検査装置M3、電子部品搭載装置M4〜M6は、印刷装置M2によって半田が印刷された基板に電子部品を実装するための作業を行う実装用装置の一例である。
図2〜図8を参照して、印刷装置M2について説明する。図2及び図3において、印刷装置M2は、基台11上に基板保持移動機構12を備えており、基板保持移動機構12の上方にはスクリーンマスク13が設けられている。図4及び図5において、基板保持移動機構12のX軸方向における上流側には、基板供給装置M1から供給された基板4を受け取って基板保持移動機構12に搬送する搬入コンベア14が設けられている。基板保持移動機構12のX軸方向における下流側には、基板保持移動機構12から半田Pが印刷された基板4を受け取って印刷検査装置M3に搬出する搬出コンベア15が設けられている。
図3及び図4において、基板保持移動機構12は、基板保持部21と、移動テーブル部22を含んで構成される。基板保持部21は位置決めコンベア31、下受け部32及び一対のクランパ33を備えている。位置決めコンベア31は搬入コンベア14から受け取った基板4を所定のクランプ位置に位置決めする。下受け部32はクランプ位置に位置決めされた基板4を下方から支持する。一対のクランパ33は基板4を両側からクランプして保持する。
移動テーブル部22は複数のテーブル機構が多段積みされたXYθテーブル機構22a(図12)を含み、基板保持部21をX軸方向、Y軸方向、Z軸方向に移動させる。これにより、基板4はスクリーンマスク13の下面に接触し、印刷作業位置に位置決めされる。
図2及び図5において、スクリーンマスク13はXY平面に広がった矩形平板形状の金属部材によって構成され、その外周は枠部材13wによって支持されている。スクリーンマスク13の中央の矩形エリアは、その下面が基板4と接触する基板接触エリアRとなっており、この基板接触エリアRには、基板4に形成された電極4d(図2)の配置に対応して複数の開口部13hが設けられている。
図3において、スクリーンマスク13の下方領域にはカメラ16がX軸方向、Y軸方向に移動自在に設けられている。カメラ16は、撮像視野を上方に向けた上方撮像部16aと、撮像視野を下方に向けた下方撮像部16bを備えている。カメラ16は、ボール螺子機構をアクチュエータとするカメラ移動機構16kに駆動されることで、XY面内で移動する。上方撮像部16aは、スクリーンマスク13に設けられた一対のマスク側マーク13m(図5)を撮像する。下方撮像部16bは、基板4に設けられた1対の基板側マーク4m(図4)と、基板4の一角に設けられたバーコードラベル4b(図5)を撮像する。
図2及び図3において、スクリーンマスク13の上方領域には印刷ヘッド17がY軸方向に移動自在に設けられている。印刷ヘッド17は、移動ベース41と、2つのスキージ42と、2つのスキージ昇降シリンダ43を含んで構成される。移動ベース41はX軸方向に延びた部材であり、ボール螺子機構をアクチュエータとする印刷ヘッド移動機構17kに駆動されることで、Y軸方向に移動する。個々のスキージ42は移動ベース41に対してY軸方向に並んで対向配設されており、移動ベース41のY軸方向への移動によって一体となってY軸方向に移動する。2個のスキージ42はそれぞれX軸方向に延びた「へら」状の部材であり、互いに下方に広がる姿勢で斜め下方に延びている。個々のスキージ42が対向する面は、半田Pの掻き寄せ面42aとなっている。
スキージ昇降シリンダ43は、個々のスキージ42に対応して移動ベース41に対してY軸方向に並んで設けられている。2つのスキージ昇降シリンダ43は個別に作動して、スキージ42を移動ベース41に対して独立して昇降させる。個々のスキージ昇降シリンダ43は、対応するスキージ42の下端がスクリーンマスク13の上面から所定距離だけ離間した待機高さ位置(図3)と、下端がスクリーンマスク13に当接する当接高さ位置(図8(a))との間で昇降させる。
図3において、移動ベース41には、スキージ42の長手方向であるX軸方向に沿って移動自在なシリンジ44が設けられている。シリンジ44は、半田Pを真空状態で密封する容器44aと、半田Pが吐出される吐出口をスクリーンマスク13に向けた吐出部44bを備えている。シリンジ44は、シリンジ駆動機構45(図12)の駆動により、吐出部44bを介して容器44aに収納されている半田Pをスクリーンマスク13に供給する。シリンジ44は、半田Pをスクリーンマスク13に供給する半田供給部となっている。また、容器44aは、スクリーンマスク13に供給される前の半田Pを収納する半田収納部となっている。半田供給部はシリンジ44に限定されず、種々のものを採用してもよい。
容器44aには、バーコードラベル46が付されている。バーコードラベル46には、容器44aを識別するための識別情報が記録されている。バーコードラベル46は、印刷装置M2や上位システム3と通信可能に接続されたバーコードリーダ47(図1)によって読み取られる。バーコードリーダ47は通信部を備えており、読み取ったバーコードラベル46を印刷装置M2に送信する。
図3において、印刷装置M2の筐体48の上面にはシグナルタワー49が筐体48に対して倒伏姿勢若しくは起立姿勢となるように回動自在に設けられている。シグナルタワー49は、印刷装置M2で異常が発生した場合等に点滅し、作業者OP(図2)に報知する。
次に、印刷装置M2における動作を説明する。以下の動作は、印刷装置M2に備えられた制御部90(図12)が各種機構を制御することによってなされる。まず図6(a)に示すように、基板保持部21は、搬入コンベア14から受け取った基板4を位置決めコンベア31によって所定のクランプ位置に位置決めし、下受け部32により下方から支持したうえで、クランパ33によってクランプする(矢印a)。次いで図6(b)に示すように、移動テーブル部22は基板保持部21を移動させ、基板4をスクリーンマスク13の基板接触エリアRの下方に位置させる(矢印b)。
次いで図7(a)に示すように、上方撮像部16aは基板接触エリアR内に設けられた一対のマスク側マーク13m(図5)を下方から撮像する。また、下方撮像部16bは基板保持部21に保持された基板4の一対の基板側マーク4m(図4)を撮像する。次いで図7(b)に示すように、基板保持移動機構12は、マスク側マーク13mと基板側マーク4mが平面視において一致するように基板4を移動させたうえで上昇させ、基板接触エリアRに基板4を接触させる(矢印c)。これにより、各電極4dは対応する開口部13hと合致してスクリーンマスク13の上面側に露出する。
基板4が基板接触エリアRに接触した状態では、個々のクランパ33は基板接触エリアRを外れたエリアでスクリーンマスク13の下面に接触する。図5に示すように、半田Pは、基板接触エリアRを外れた一方のクランパ33の上方に対応するスクリーンマスク13上のエリアに供給される(図5)。
次いで、スキージ42によるスキージング動作が実行される。すなわち図8(a)に示すように、一方のスキージ42は、クランパ33の上方において当接高さ位置に下降することで、下端をスクリーンマスク13に当接させる。次いで図8(b)に示すように、移動ベース41はY軸方向に移動することで、一方のスキージ42をスクリーンマスク13上で摺動させる(矢印d)。スキージ42によって掻き寄せられる半田Pはスクリーンマスク13上でローリングし、開口部13hを通過するときにその開口部13h内に充填される。スキージ42が摺動している間、半田Pにはストレスがかかって粘度が低下した状態となる。一方のクランパ33から他方のクランパ33の上方まで移動したスキージ42は、待機高さ位置まで上昇する。
半田Pを充填後、基板保持移動機構12は基板保持部21を下降させて版離れを行う。これにより、基板4の電極4d上には、スクリーンマスク13の厚さに対応した半田Pの層である半田部Pa(図9)が形成される。次いで、基板保持移動機構12はクランパ33を開いて基板4の保持を解除し、位置決めコンベア31を作動させて搬出コンベア15に受け渡す。搬出コンベア15は受け取った基板4を下流の印刷検査装置M3へ搬出する。これにより、印刷装置M2における作業が終了する。その後、印刷装置M2には新たな基板4が搬入されるが、その基板4に対しては他方のスキージ42が摺動することで半田Pが印刷される。このように、本実施の形態1における印刷装置M2は、ペースト状の半田Pが供給されたスクリーンマスク13に対してスキージ42を摺動させることで基板4に半田Pを印刷する。
次に図9を参照して、印刷検査装置M3の構成について説明する。基台51の上面には、印刷装置M2及び電子部品搭載装置M4と連結された基板搬送機構52が設けられている。基板搬送機構52は、印刷装置M2から搬出された半田印刷後の基板4を搬送して所定の検査位置に位置決めする。基板搬送機構52の上方には、Y軸方向に伸びたY軸ビーム53と、X軸方向に伸びたX軸ビーム54より成るカメラ移動機構によって水平移動する検査用カメラ55が設けられている。カメラ移動機構を作動させることにより、検査用カメラ55は検査位置に位置決めされた基板4の上方に移動して半田部Paを撮像する。
半田部Paの撮像データは印刷検査装置M3に備えられた検査処理部104(図16)によって認識処理されることで、基板4に印刷された半田Pの印刷状態の各種検査が実行される。検査処理部104が実行する検査項目としては、例えば、半田部Paの印刷量が十分であるか否かの検査が挙げられる。なお、印刷検査装置M3が有する機能を印刷装置M2に組み入れ、印刷装置M2で検査を行ってもよい。
次に図10及び図11を参照して、電子部品搭載装置M4〜M6について説明する。基台60の中央部には、X軸方向に延びた一対の搬送コンベアを備えた基板搬送機構61が設けられている。基板搬送機構61は、基板4を搬送して所定の実装作業位置に位置決めする。基板搬送機構61の両側には、部品供給部62がそれぞれ配置されている。部品供給部62には、台車63に装着された複数のテープフィーダ64が配置されている。テープフィーダ64は、電子部品5を保持したキャリアテープ65をピッチ送りすることによって、後述する搭載ヘッド69による部品取出位置まで電子部品5を供給する。キャリアテープ65は、台車63に回転自在に保持された供給リール66に巻回収納されている。
基台60のX軸方向における一端部にはY軸ビーム67が設けられており、Y軸ビーム67にはX軸ビーム68がY軸方向に移動自在に架設されている。X軸ビーム68には搭載ヘッド69がX軸方向に移動自在に装着されている。搭載ヘッド69は、Y軸ビーム67、X軸ビーム68の駆動によってXY面内で移動する。
搭載ヘッド69には、電子部品5を吸着して保持可能な複数の吸着ノズル70が装着されている。吸着ノズル70は部品取り出し位置に供給された電子部品5を取り出し、基板4に搭載する。
図10において、搭載ヘッド69は撮像視野を下方に向けた基板認識カメラ71を備えている。基板認識カメラ71は、実装作業位置に位置決めされた基板4の基板側マーク4mやバーコードラベル4bを撮像する。基板搬送機構61とテープフィーダ64の間には、撮像視野を上方に向けた部品認識カメラ72が設けられている。部品認識カメラ72は、その上方を移動する搭載ヘッド69により保持された電子部品5を下方から撮像する。図11では、Y軸ビーム67とX軸ビーム68と基板認識カメラ71等の図示を省略している。
図11において、電子部品搭載装置M4〜M6の筐体73の上面にはシグナルタワー74が筐体73に対して倒伏姿勢若しくは起立姿勢となるように回動自在に設けられている。シグナルタワー74は、電子部品搭載装置M4〜M6で異常が発生した場合等に点滅することで、作業者OPに報知する。
次に、電子部品搭載装置M4〜M6における動作について説明する。以下に説明する動作は、電子部品搭載装置M4〜M6が備える制御部110(図16)が各種機構を制御することによってなされる。まず、基板搬送機構61は、上流側の装置から受け取った基板4を搬送して実装作業位置に位置決めする。次いで、基板認識カメラ71は、基板4の基板側マーク4mを撮像する。次いで、搭載ヘッド69は、テープフィーダ64によって供給された電子部品5を取り出し、部品認識カメラ72の上方を経由して基板4の所望の実装点の上方へ移動する。このとき、部品認識カメラ72は、吸着ノズル70に保持された電子部品5を撮像する。次いで、搭載ヘッド69は、基板4の基板認識カメラ71と部品認識カメラ72による撮像を介して取得した撮像データに基づき、XY平面における位置とθ方向の補正がなされたうえで、電子部品5を基板4に搭載する。
次に図12を参照して、制御系の構成を説明する。本実施の形態1では、上位システム3と印刷装置M2に限定して説明する。上位システム3は、通信部80、記憶部81、半田管理部82を含んで構成される。通信部80は印刷装置M2の通信部91と信号の送受信を行う。
記憶部81は、基板4に半田Pを印刷するために必要な印刷作業データ81a、基板4に印刷された半田P(電極4dに形成された半田部Pa)の状態を検査するために必要な検査作業データ81b、基板4に電子部品5を搭載するために必要な搭載作業データ81cに加え、許容時間データ81d等を記憶する。
許容時間データ81dは、印刷装置M2においてスクリーンマスク13に供給された半田Pの使用を許容することができる時間(以後、「許容時間T1」と称する)を規定したデータである。すなわち、半田Pはチキソ性を有しており、空気に曝されることで徐々に乾燥する。なお、「乾燥する」とは、半田Pの硬度が高くなることと同義である。スクリーンマスク13上の半田Pが一定以上乾燥すると、開口部13hへの充填性が悪化して印刷不良の要因となる。また、半田Pが印刷された基板4は、印刷装置M2を搬出された後に複数の実装用装置にて所定の作業を受けるが、その間も基板4上の半田P(半田部Pa)は空気に曝され続けるので乾燥が進行する。基板4に印刷された半田Pが一定以上乾燥すると、電子部品5の電極が半田Pになじまず、基板4と電子部品5の接合強度が不十分となって不良基板が発生する。なお、半田Pは、スクリーンマスク13に供給されてから、基板4に印刷された状態でリフロー装置M7において溶融される前までの間に乾燥が進行する。そこで、スクリーンマスク13上に供給された半田Pを対象として、基板4に印刷されるまで空気に晒されることを許容できる時間を許容時間T1として設定し、許容時間T1を超えた場合は半田Pを基板4に印刷しないようにしている。
図13を参照して、許容時間T1を決定する一例について説明する。許容時間データ81dには、実装基板を製造する目的のために、半田Pがスクリーンマスク13に供給されてから、基板4に印刷された状態でリフロー装置M7にて溶融されるまでの間に、半田Pが空気に晒されることを許容できる許容時間T2が含まれている。なお、許容時間T2は個別に記憶部81に記憶されていてもよい。また、記憶部81には、印刷検査装置M3で基板4が所定の作業を受けて隣接する下流側装置に搬送されるまでに要すると推定される推定時間taと、個々の電子部品搭載装置M4〜M6で基板4が所定の作業を受けて隣接する下流側装置に搬送されるまでに要すると推定される推定時間tb,tc,tdが記憶されている。したがって、印刷装置M2で設定可能な許容時間T1の最大値は、許容時間T2から推定時間ta,tb,tc,tdを減算することで求められる(許容時間T1の最大値=T2−(ta+tb+tc+td))。許容時間T1は最大値の範囲内で決定される。なお、許容時間T1の算出は上記に限定されず、様々な考えに基づいて行ってよい。このように、記憶部81は、スクリーンマスク13に供給された半田Pの許容時間T1を記憶する。
半田管理部82は、スクリーンマスク13上に供給された半田Pを管理するものであり、内部処理機能として時間計測部83、判定部84を有する。時間計測部83は、半田Pがスクリーンマスク13に供給されている間の時間を計測する。計測開始のタイミングは、例えば、シリンジ44から半田Pを供給してシリンジ駆動機構45の作動が停止したときでもよい。時間計測部83による計測間隔は、スクリーンマスク13上における半田Pの状態に応じて異なる。すなわち、半田Pは与えられるストレスによって硬度が変化し、スキージ42の摺動により移動している間の半田Pの乾燥の進行度は、スクリーンマスク13上で滞留している間の進行度よりも遅い。そこで図14(a),(b)に示すように、時間計測部83は、半田移動時における計測間隔saを、半田未移動時における計測間隔sbよりも大きくして時間を計測するようにしている。
すなわち、時間計測部83は、半田Pがスキージ42によりスクリーンマスク13上を移動している時間の計測間隔saを、半田Pがスクリーンマスク13上を移動していない時間の計測間隔sbよりも大きくなるように重み付けをして時間を計測する。なお、半田Pがスキージ42によって移動している間における乾燥の進行度はゼロに近い。そのため、時間計測部83は、重み付けによって半田Pがスキージ42によりスクリーンマスク13上を移動している間の時間を計測しないようにしてもよい。
判定部84は、時間計測部83によって計測される時間(計測時間)と許容時間T1とを比較し、計測時間が許容時間T1を超えたか否かを判定する。判定部84により計測時間が許容時間T1を超えたと判定されたとき、上位システム3は通信部80を介して印刷装置M2に信号を送信する。すなわち判定部84は、時間計測部83によって計測された時間に基づいて、スクリーンマスク13に供給された半田Pが許容時間T1を超えたか否かを判定する。
印刷装置M2が備える制御部90は、通信部91、記憶部92、機構駆動部93、認識処理部94、作業禁止部95、報知部96を含んで構成される。記憶部92は、上位システム3から受信した印刷作業データ81aや許容時間データ81d等を記憶する。機構駆動部93は制御部90によって制御されて、搬入コンベア14等の各種機構を駆動する。これにより、半田Pが供給されたスクリーンマスク13上でスキージ42を摺動させ、スクリーンマスク13の下面に位置決めされた基板4に半田Pを印刷する作業が実行される。
認識処理部94は、カメラ16によって撮像された基板側マーク4m及びマスク側マーク13mの撮像データを認識処理することで、スクリーンマスク13と基板4の位置ずれ量を求める。基板保持移動機構12は、求められた位置ずれ量に基づいて基板4を移動させ、スクリーンマスク13の下面に位置決めする。また、認識処理部94はカメラ16によって撮像されたバーコードラベル4bの撮像データを認識処理することで、基板4の識別情報を認識する。これにより、印刷装置M2に搬入された基板4が特定される。
作業禁止部95は、時間計測部83による計測時間が許容時間T1を超えたと判定部84によって判定されたとき、上位システム3から信号を受信することで、印刷装置M2での作業を禁止させる。より具体的には、作業禁止部95は機構駆動部93に作業禁止を指令し、当該指令を受けた機構駆動部93は各種機構の駆動を停止する。すなわち作業禁止部95は、判定部84によってスクリーンマスク13に供給された半田Pが許容時間T1を超えたと判定された場合に、基板4に半田Pを印刷するための作業を禁止させる。
報知部96は、判定部84による計測時間が許容時間T1を超えたと判定されたとき、上位システム3から信号を受信することで、シグナルタワー49を点灯させる。これにより、作業者OPは印刷装置M2で異常が発生したことに気付くことができる。すなわち報知部96は、判定部84によってスクリーンマスク13に供給された半田Pが許容時間T1を超えたと判定された場合に作業者OPに報知する。なお、報知部96は、作業禁止部95によって印刷装置M2での作業が禁止されたときに、シグナルタワー49を点灯させるようにしてもよい。
本実施の形態1における電子部品実装システム1は以上のように構成される。次に図15のフローチャートを参照して、半田Pの管理方法について説明する。まず、時間計測部83は計測時間をクリア、すなわちゼロにする(ST1:計測時間クリア工程)。次いで、シリンジ44はスクリーンマスク13に半田Pを供給する(ST2:半田供給工程)。次いで、時間計測部83は半田Pがスクリーンマスク13上で滞留している状態に対応した計測間隔、すなわち図14(b)に示す半田未移動に対応した計測間隔で時間の計測を開始する(ST3:半田未移動時間計測工程)。
次いで、判定部84は時間計測部83によって計測される時間が許容時間T1を超えたか否かを判定する(ST4:第1の許容時間超過判定工程)。許容時間T1を超えていないと判定された場合((ST4)で示す「No」)、時間計測部83はスキージ42の摺動が開始されたか否かを判断する(ST5:摺動開始有無判断工程)。「スキージ42の摺動が開始された」とは、スクリーンマスク13上の半田Pがスキージ42によって掻き寄せられることで移動を開始することを意味する。スキージ42の摺動が開始されていないと判断された場合((ST5)で示す「No」)は(ST4)に戻る。
その一方で、スキージ42の摺動が開始されたと判断された場合((ST5)で示す「Yes」)、時間計測部83は半田未移動時間の計測間隔に対応した時間の計測を停止する(ST6:半田未移動時間計測停止工程)。そして、時間計測部83は図14(a)で示す半田移動に対応した計測間隔で計測を開始する(ST7:半田移動時間計測開始工程)。(ST6)と(ST7)は、時間計測部83による時間の計測間隔を切り換える計測間隔切り換え工程を構成する。
次いで判定部84は、時間計測部83により計測された時間、すなわち半田未移動時間に対応した計測間隔で計測された時間と、半田移動時間に対応した計測間隔で計測された時間の合計時間が許容時間T1を超えたか否かを判定する(ST8:第2の許容時間判定工程)。
許容時間T1を超えていないと判定された場合((ST8)で示す「No」)、時間計測部83はスキージ42の摺動が終了したか否かを判断する(ST9:摺動終了有無判断工程)。ここでの判断は、例えば、移動ベース41の駆動源である印刷ヘッド移動機構17kの駆動の停止の有無でなされる。スキージ42の摺動が終了していないと判断された場合((ST9)で示す「No」)、(ST8)に戻る。その一方で、スキージ42の摺動が終了したと判断された場合(ST9で示す「Yes」)、時間計測部83は半田移動時間に対応した計測間隔での時間の計測を停止する(ST10:半田移動時間計測停止工程)。次いで(ST3)に戻り、時間計測部83は半田未移動に対応した計測間隔で時間の計測を開始する。その後の(ST4)では、判定部84は、これまでに計測された計測時間、すなわち半田未移動時間と半田移動時間のそれぞれに対応した計測間隔で計測された時間の合計時間に基づいて許容時間T1を超えたか否かを判定する。
また、(ST4)又は(ST8)において、時間計測部83により計測された計測時間が許容時間T1を超えたと判定された場合((ST4)又は(ST8)で示す「Yes」)、上位システム3は印刷装置M2に信号を送信し、作業禁止部95は印刷装置M2での作業を禁止させる(ST11:作業禁止工程)。次いで、報知部96はシグナルタワー49を点灯させて作業者OPに報知する(ST12:報知工程)。
次いで、作業禁止部95は、作業禁止を解除するための禁止解除作業が完了したか否かを判断する(ST13:禁止解除作業完了判断工程)。すなわち、報知を受けた作業者OPは、禁止解除作業の一つであるスクリーンマスク13上の半田Pを除去する作業を行う。また、シリンジ44の容器44aに貯留された半田Pが一定量以下である場合、作業者OPは新規の容器44aに交換する作業を行う。このとき、作業者OPはバーコードリーダ47の読み取り面を容器44aに付されているバーコードラベル46に相対させる。これにより、バーコードリーダ47はバーコードラベル46を読み取り、印刷装置M2に送信する。印刷装置M2の制御部90は、送信されたバーコードラベル46に基づいて、新たに交換された容器44aの識別情報を認識する。バーコードリーダ47と制御部90は、識別情報を認識する認識部を構成する。
作業禁止部95は、識別情報が認識されたことを受けて禁止解除作業が完了したと判断し((ST13)で示す「Yes」)、印刷装置M2での作業の禁止を解除する。すなわち、作業禁止部95は、認識部によって識別情報が認識されるまで作業を禁止させる。なお、容器44aに貯留された半田Pの量が十分なことから容器44aの交換作業が必要無い場合、作業者OPは許容時間T1を過ぎたスクリーンマスク13上の半田Pを除去した後、操作入力部としてのタッチパネル(図示省略)を介して禁止解除作業が完了した旨の入力を行う。(ST13)で禁止解除作業が完了したと判断された場合は、(ST1)に戻る。
以上説明したように、本実施の形態1における印刷装置M2によれば、半田Pがスキージ42によりスクリーンマスク13上を移動している時間の計測間隔を、半田Pがスクリーンマスク13上を移動していない時間の計測間隔よりも大きくなるように重み付けをして時間を計測するので、半田Pをより正確に管理して不良基板の発生を未然に防止することができる。本実施の形態1において、半田管理部82を備えた上位システム3と印刷装置M2は、半田管理システムを構成する。
本実施の形態1における印刷装置M2及び半田管理システムはこれまで説明した構成に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更することができる。例えば、時間計測部83による計測時間が許容時間T2を超えたか否かを判定部84によって判定し、計測時間が許容時間T2を超えたと判定された場合に作業禁止部95によって作業を禁止するようにしてもよい。また、半田管理部82を印刷装置M2に組み入れてもよく、作業禁止部95、報知部96を上位システム3に組み入れてもよい。さらに、バーコードリーダ47は読み取ったバーコードラベル46を上位システム3に送信してもよい。
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2を説明する。本実施の形態2では、印刷検査装置M3や電子部品搭載装置M4〜M6等の実装用装置を搬送される基板4に印刷された半田P(電極4dに形成された半田部Pa)も管理する点で、本実施の形態1と相違する。まずは図16を参照して、制御系の構成について説明する。なお、本実施の形態1で説明した構成と同じものについては、その説明を省略する。
図16において、上位システム3Aが備える半田管理部82Aは、時間計測部83A、判定部84A、推定時間算出部85、練り動作実行部86を含んで構成される。時間計測部83Aは、半田Pがスクリーンマスク13上に供給されてから基板4に印刷されるまでの時間と、印刷装置M2によって半田Pが基板4に印刷されてからの時間を計測する。半田Pがスクリーンマスク13上に供給されてから基板4に印刷されるまでの時間は、本実施の形態1で説明したとおり、時間計測部83Aによって、半田移動時間と半田未移動時間のそれぞれに対応する計測間隔に基づいて計測される。すなわち、半田Pがスクリーンマスク13上に供給されてから基板4に印刷されるまでの時間は、半田Pがスキージ42によりスクリーンマスク13上を移動している時間と、半田Pがスクリーンマスク13上を移動していない時間の合計時間を含む。また、時間計測部83Aは、半田Pがスキージ42によりスクリーンマスク13上を移動している時間の計測間隔を、半田Pがスクリーンマスク13上を移動していない時間の計測間隔よりも小さくなるように重み付けをして時間を計測する。
半田Pが基板4に印刷されてからの計測開始タイミングは、例えば、基板4への半田Pの印刷のためにスキージ42の摺動が終了した時点を設定してもよい。時間計測部83Aによる時間の計測は個々の基板4ごとに行われ、半田Pの管理が不要となる位置、すなわち基板4がリフロー装置M7の溶融ゾーンに搬入されたとき、若しくは後述する判定部84Aによって基板4上の半田Pが許容時間T2を超えたと判定された時点で終了する。
判定部84Aは、時間計測部83Aによって計測された時間に基づいて、基板4に印刷された半田Pが許容時間T2を超えたか否かを判定する。許容時間T2とは、前述のとおり、半田Pがスクリーンマスク13に供給されてから、基板4に印刷された状態でリフロー装置M7にて溶融されるまでの間に、半田Pが空気中に晒されることを許容できる時間である。
判定部84Aによる具体的な判定方法を2つ例示する。一つめの例は、時間計測部83Aによって計測される時間が、許容時間T2を超えたか否かを判定する方法である。例えば、基板4が電子部品搭載装置M4に搬入された時点で、時間計測部83Aによって計測される計測時間teが許容時間T2を超えるような場合には、当該基板4に印刷された半田Pは使用できない状態となっている。したがって、その基板4は電子部品5が搭載されても不良基板として破棄されることを免れない。そこで、半田Pがスクリーンマスク13に供給されてからの時間(経過時間)を計測し、基板4が実装用装置を搬送される所定の時点で許容時間T2を超えたならば、当該半田Pが印刷された基板4に対する作業を禁止させることで、電子部品5の無駄を防止するようにしている。すなわち一つめの例では、判定部84Aは、半田Pがスクリーンマスク13上に供給されてから基板4に印刷されるまでの時間と、半田Pが基板4に印刷されてからの時間(経過時間)の合計時間が許容時間T2を超えたか否かを判定する。
2つめの例は、基板4が実装用装置を搬送される所定の時点からリフロー装置M7でリフローされるまでに要すると推定される推定時間を加味する方法である。図17を参照して、基板4が電子部品搭載装置M4に搬入された時点を例に挙げて説明する。図17(a)は、半田Pがスクリーンマスク13に供給されてから基板4に印刷された状態で電子部品搭載装置M4に搬入されるまでの計測時間teと、電子部品搭載装置M4に基板4が搬入されてからリフロー装置M7にてリフローされるまでの間に要すると推定される推定時間tb,tc,tdの合計時間が、許容時間T2の範囲内である場合を示している。通常、基板4は印刷された半田Pが許容時間T2内に溶融されるように複数の実装用装置を搬送される。
推定時間算出部85は、基板4が電子部品搭載装置M4に搬入された所定の時点からリフロー装置M7にてリフローされるまでに要すると推定される推定時間を算出する。図17(a)に示す例では、基板4が電子部品搭載装置M4に搬入されてからリフロー装置M7にてリフローされるまでに要すると推定される推定時間は、電子部品搭載装置M4〜M6での推定時間tb,tc,tdを合計することで求められる。すなわち推定時間算出部85は、半田Pが印刷された基板4が実装用装置を搬送される所定の時点から、半田Pの管理が不要となる位置(ここではリフロー装置M7の溶融ゾーン)に至るまでに要すると推定される推定時間を算出する。
図17(b)では、計測時間teと、電子部品搭載装置M4に基板4が搬入されてからリフロー装置M7にてリフローされるまでの間に要すると推定される推定時間tb,tc,tdの合計時間が、許容時間T2を超える場合を示している。この場合、基板4上の半田Pは、スクリーンマスク13に供給されてから溶融されるまでに要する時間が許容時間T2を超える。したがって、電子部品搭載装置M4〜M6において当該半田Pが印刷された基板4に作業を実行しても、電子部品5の無駄を招くだけである。したがって、判定部84Aは、半田Pがスクリーンマスク13上に供給されてから基板4に印刷されるまでの時間と、半田Pが基板に印刷されてから実装用装置を搬送される所定の時点までの時間と、所定の時点から半田Pの管理が不要となる位置(ここではリフロー装置M7における溶融ゾーン)に至るまでに要すると推定される推定時間の合計時間が許容時間T2を超えたか否かを判定するようにしている。そして、合計時間が許容時間T2を超えると判定されたならば、実装用装置での基板4に対する作業を禁止させる。これにより、不良基板の発生を早期の段階で予見できるとともに、電子部品5の無駄を防止することができる。
練り動作実行部86は、何れかの実装用装置において基板4に対する作業が禁止された際に、一定の要件下でスクリーンマスク13上に供給された半田Pをスキージ42によって往復移動させるいわゆる「練り動作」を実行する。すなわち、実装用装置で基板4に対する作業が中止されると、印刷装置M2での印刷作業も中止される。「練り動作」は、印刷作業が中止されている間にスクリーンマスク13上の半田Pの乾燥を抑制するためになされるものである。
印刷検査装置M3が備える制御部100は、通信部101、記憶部102、機構駆動部103、検査処理部104、作業禁止部105、報知部106を含んで構成される。記憶部102は、上位システム3から受信した検査作業データ81bや許容時間データ81d等を記憶する。機構駆動部103は、制御部100によって制御されて、カメラ駆動機構を駆動することで、基板4の上方に検査用カメラ55を移動させる。
検査処理部104は、検査用カメラ55による撮像を介して取得した撮像データを認識処理し、半田部Paを認識する。そして、検査処理部104は、認識処理結果に基づいて半田部Paの状態を検査する。作業禁止部105は、基板4に印刷された半田Pの経過時間が許容時間T2を超えたと判定された場合、上位システム3から信号を受信することで、印刷検査装置M3での作業を禁止させる。
報知部106は、検査処理部104によって半田部Paの状態が不良と判定されたならば、印刷検査装置M3に備えられたシグナルタワー107(図1)を制御して点灯させ、作業者OPに報知する。また、報知部106は、判定部84Aによって基板4に印刷された半田Pが許容時間T2を超えたと判定された場合に上位システム3から信号を受信することで、シグナルタワー107を制御して点灯させ、作業者OPに報知する。
電子部品搭載装置M4〜M6が備える制御部110は、通信部111、記憶部112、機構駆動部113、認識処理部114、作業禁止部115、報知部116を含んで構成される。記憶部112は、上位システム3から受信した搭載作業データ81cや許容時間データ81d等を記憶する。機構駆動部113は、制御部110によって制御されて、Y軸ビーム67等の各種機構を駆動する。これにより、基板4に電子部品5を搭載する作業が実行される。
認識処理部114は、基板認識カメラ71によって取得した撮像データや、部品認識カメラ72によって取得した撮像データを認識処理することで、基板4や電子部品5の位置ずれを求める。電子部品5の搭載位置は、この位置ずれ量に基づいて補正される。
作業禁止部115は、基板4に印刷された半田Pの経過時間が許容時間T2を超えたと判定された場合、上位システム3から信号を受信することで、当該基板4が搬入された電子部品搭載装置M4〜M6での作業を禁止させる。より具体的には、作業禁止部115は機構駆動部113に作業禁止を指令し、当該指令を受けた機構駆動部113は各種機構の駆動を停止する。すなわち作業禁止部115は、判定部84Aによって基板4に印刷された半田Pが許容時間T2を超えたと判定された場合に、実装用装置に対して許容時間T2を超えた半田Pが印刷された基板4に電子部品5を実装するための作業を禁止させる。印刷検査装置M3の作業禁止部105も同様である。
報知部116は、判定部84Aによって基板4に印刷された半田Pが許容時間T2を超えたと判定された場合に上位システム3から信号を受信することで、シグナルタワー74を制御して点灯させ、作業者OPに報知する。すなわち、報知部116は、判定部84Aによって基板4に印刷された半田Pが許容時間T2を超えたと判定された場合に作業者OPに報知する。印刷検査装置M3の報知部106も同様である。
次に図18を参照して、本実施の形態2における半田Pの管理方法を説明する。ここでは、実装用装置として電子部品搭載装置M4を例に挙げ、さらに判定部84Aは一つめの判定方法で判定を行う場合を説明する。まず、基板搬送機構61は基板4を装置内に搬入する(ST21:基板搬入工程)。次いで、基板認識カメラ71は搬入された基板4のバーコードラベル4bを撮像する(ST22:撮像工程)。次いで、認識処理部114はバーコードラベル4bを認識処理し、基板4の識別情報を認識する(ST23:識別情報認識工程)。認識された識別情報は上位システム3Aに送られる。次いで、判定部84Aは、識別情報に対応する基板4に印刷された半田Pを対象として、時間計測部83Aによって計測されている計測時間を読み出す(ST24:計測時間読み出し工程)。ここで読み出される計測時間は、半田Pがスクリーンマスク13に供給されてから、基板4に印刷された状態で電子部品搭載装置M4に搬入された所定の時点までの経過時間である。
次いで判定部84Aは、読み出された計測時間が許容時間T2を超えたか否かを判定する(ST25:許容時間超過判定工程)。許容時間T2を超えていないと判定された場合((ST25)で示す「No」)、半田管理部82Aは電子部品搭載装置M4で所定の作業が完了したか否かを判断する(ST26:作業完了判断工程)。作業が完了したと判断されたならば((ST26)で示す「Yes」)、基板搬送機構61は基板4を下流の電子部品搭載装置M5へ搬出する(ST27:基板搬出工程)。また、作業が完了していないと判断されたならば((ST26)で示す「No」)、(ST25)に戻る。
(ST25)で許容時間T2を超過したと判定された場合((ST25)で示す「Yes」)、作業禁止部115は電子部品搭載装置M4での基板4に対する作業を禁止させる(ST28:作業禁止工程)。このとき、作業禁止となった基板4が搬入されている電子部品搭載装置M4よりも上流に配置された印刷検査装置M3に後続の基板4が搬入されている場合、作業禁止部105によってその基板4に対する作業を禁止させるようにしてもよい。すなわち、複数の実装用装置のうち一の実装用装置に搬入された基板4上の半田Pが許容時間T2を超えたと判定部84Aによって判定された場合に、作業禁止部はその基板4が搬入されている実装用装置よりも上流に配置された実装用装置における作業を禁止させる。これにより、不良基板が連続して発生する事態を防止することができる。
次いで報知部116はシグナルタワー74を制御して点灯させ、作業者OPに報知する(ST29:報知工程)。次いで、作業禁止部115は禁止解除作業がなされたか否かを判定する(St30:禁止解除作業判断工程)。すなわち、作業者OPは、作業禁止の対象となった基板4を実装用装置から取り出す。基板4を取り出した後、作業者OPはタッチパネル等の操作入力部(図示省略)を介して禁止解除作業が完了した旨の入力を行う。禁止解除作業がなされたと判定されたならば(ST30で示す「Yes」)、(ST21)に戻る。
次に図19を参照して、判定部84Aが2つめの判定方法により判定を行う場合の半田Pの管理方法を説明する。なお、図18で示す工程と同一の工程に関しては、その説明を省略する。本例では、(ST34)の計測時間読み出し工程の次に以下の工程が加わる。すなわち、推定時間算出部85は、基板4が電子部品搭載装置M4に搬入された所定の時点からリフロー装置M7の溶融ゾーンに搬入されるまでの間に要すると推定される推定時間を算出する(ST35:推定時間算出工程)。次いで、判定部84Aは、半田Pがスクリーンマスク13に供給されてからの経過時間(時間計測部83Aによって計測された計測時間)と推定時間の合計時間が、許容時間T2を超えたか否かを判定する(ST37:許容時間超過判定工程)。
次に図20を参照して、半田Pの練り動作実行処理フローを説明する。このフローは、実装用装置で基板4に対する作業が禁止された際になされる。すなわち、練り動作実行処理フローは、半田Pがスクリーンマスク13上に供給されてから基板4に印刷されるまでの時間と、印刷装置M2によって半田Pが基板4に印刷されてからの時間(経過時間)を時間計測部83Aによって計測し、計測された時間に基づいて基板4上の半田Pが許容時間T2を超えたか否かを判定部84Aによって判定し、判定部84Aによって基板4上の半田Pが許容時間T2を超えたと判定された場合に、実装用装置の基板4に対する作業を作業禁止部105,115によって禁止させた際になされる。
まず、練り動作実行部86は、何れかの実装用装置で作業禁止を受けた基板4が発生したか否かを判断する(ST51:作業禁止基板有無判断工程)。練り動作実行部86は、作業禁止を受けた基板4が発生するまで(ST51)を繰り返す((ST51)で示す「No」)。そして作業禁止を受けた基板4が発生した場合((ST51)で示す「Yes」)、印刷装置M2の制御部90は基板4への半田Pの印刷作業を停止させる(ST52:印刷作業停止工程)。
次いで、練り動作実行部86は、半田Pがスクリーンマスク13に供給されてからの経過時間と、実装用装置において基板4に対する作業禁止を解除するまでに要すると推定される作業時間(推定解除作業時間)の合計時間が、許容時間T2を超えるか否かを判定する(ST53:許容時間超過工程)。推定解除作業時間は作業者OPによって予め設定され、記憶部81に記憶されている。
スクリーンマスク13に供給されてからの半田Pの経過時間と推定解除作業時間の合計時間が許容時間T2を超えていないと判定された場合(ST53で示す「No」)、練り動作実行部は、スクリーンマスク13上の所定のエリアでスキージ42の往復移動を開始させる(ST54:スキージ往復移動開始工程)。すなわち図21(a)に示すように、クランパ33をスクリーンマスク13の下面に接触させ、且つ半田Pをクランパ33の上方に掻き集めた状態で、一方のスキージ42はスクリーンマスク13に当接する当接高さ位置まで下降する。次いで図21(b)に示すように、スクリーンマスク13がクランパ33によって支持されているエリアR1内で一方のスキージ42を移動させる(矢印e)。このエリアR1は、開口部13hが形成されていない開口部非形成エリアである。したがって、このエリアR1内でスキージ42を摺動させても半田Pがスクリーンマスク13の下面側に回りこむことはない。
次いで図21(c)に示すように、一方のスキージ42は上昇するとともに、他方のスキージ42は当接高さ位置まで下降する。次いで図21(d)に示すように、他方のスキージ42はエリアR1内を移動する(矢印f)。次いで、他方のスキージ42は上昇する。その後、図21(a)〜(d)の動作が繰り返し実行される。すなわち、作業禁止部105,115によって実装用装置の基板4に対する作業が禁止された際に、半田Pがスクリーンマスク13に供給されてからの経過時間と、推定解除作業時間との合計時間が許容時間T2を超えていない場合、開口部13hを避けたスクリーンマスク13上のエリアR1でスキージ42によって半田Pを往復移動させる。このように、スキージ42を往復移動させることで半田Pの「練り動作」が行われ、これにより実装用装置で基板4に対する作業が禁止されている間にスクリーンマスク13上の半田Pの乾燥が進行する事態を抑制することができる。
スキージ42の往復移動、言い換えれば半田Pの練り動作が開始されたならば、時間計測部83Aは半田移動時間に対応した計測間隔での計測を開始する(ST55:半田移動時間計測開始工程)。ここでも、時間計測部83Aは、半田移動時の計測間隔を半田未移動時の計測間隔よりも大きくなるように重み付けをして時間を計測する。すなわち、時間計測部83Aは、半田Pがスキージ42によりスクリーンマスク13上を移動している時間の計測間隔を、半田Pがスクリーンマスク13上を移動していない時間の計測間隔よりも大きくなるように重み付けをして時間を計測する。
次いで、練り動作実行部86は、時間計測部83Aによって計測される半田Pがスクリーンマスク13に供給されてからの経過時間(スキージ42の往復移動時間を含む)と、推定解除作業時間の合計時間が許容時間T2を超えたか否かを判定する(ST56:許容時間超過判断工程)。許容時間T2を超えていないと判定された場合((ST56)で示す「No」)、練り動作実行部は実装用装置での禁止解除作業が完了したか否かを判断する(ST57:禁止解除作業完了有無判断工程)。禁止解除作業が完了していないと判断された場合((ST57)で示す「No」)、(ST56)に戻る。
禁止解除作業が完了したと判断された場合((ST57)で示す「Yes」)、スキージ42は往復移動を停止し(ST58:往復移動停止工程)、さらに時間計測部83Aは半田移動に対応した間隔での時間の計測を停止する(ST59:計測停止工程)。
また、(ST53)、(ST56)で許容時間を超えたと判断された場合、スクリーンマスク13上の半田Pは使用できない状態となっているので、報知部96はシグナルタワー49を点灯させて作業者OPに報知する(ST60:報知工程)。その後、作業者OPはスクリーンマスク13から半田Pを除去する等の作業を行う。以上の工程を経て、半田Pの練り動作実行処理フローは終了する。
以上説明したように、本実施の形態2における電子部品実装システムによれば、半田Pを許容時間に則して正確に管理した状況下で半田Pの乾燥を抑制することができる。なお、スキージ42により半田Pがスクリーンマスク13上を移動している間の時間を時間計測部83Aが計測しないように重み付けした場合、作業禁止を受けた基板4が発生した後、半田Pがスクリーンマスク13に供給されてからの経過時間と推定解除作業時間の合計時間が許容時間T2を超えているか否かの判定を行わずに((ST43)を省略)、スキージ42の往復移動を開始してもよい。この場合、(ST45)、(ST46)、(ST50)も省略される。
また、(ST43)では、基板4がリフロー装置M7にてリフローされるまでの時間を考慮して許容時間T2を超えるか否かを判定してもよい。すなわち、練り動作実行部86は、半田Pがスクリーンマスク13上に供給されてからの経過時間と推定解除作業時間に加え、印刷装置M2によって基板4に半田Pが印刷されてから当該基板4上の半田Pの管理が不要となる位置(リフロー装置M7の溶融ゾーン)に基板4が到達するまでに要すると推定される推定基板到達時間の合計時間が許容時間T2を超えたか否かを判定する。推定基板到達時間は、印刷検査装置M3で基板4が所定の作業を受けて隣接する下流側装置に搬送されるまでに要すると推定される推定時間taと、個々の電子部品搭載装置M4〜M6で基板4が所定の作業を受けて隣接する下流側装置に搬送されるまでに要すると推定される推定時間tb,tc,tdと、印刷装置M2において基板4に半田Pが印刷されてから隣接する印刷検査装置M3に搬送されるまでに要すると推定される推定時間の合計時間を含む。これらの推定時間は、記憶部81に予め記憶されている。
半田Pがスクリーンマスク13に供給されてからの経過時間と、推定解除作業時間と、推定基板到達時間の合計時間が許容時間T2を超えていないと判定された場合、スキージ42によって半田Pを往復移動させる(ST44)。その一方で、許容時間T2を超えたと判定された場合、スクリーンマスク13上の半田Pは許容時間T2以内に溶融されないため、報知部96は作業者OPに報知する(ST50)。このように、推定基板到達時間を考慮して許容時間T2の超過を判定することで、半田Pをさらに厳正に管理しつつその乾燥を抑制することができる。
本発明はこれまで説明した実施の形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。例えば、半田管理部82Aを印刷装置M2に組み入れてもよく、作業禁止部95、報知部96を上位システム3Aに組み入れてもよい。