以下、本発明を実施するためのいくつかの形態を、添付図面に基づいた実施例として詳細に説明する。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明による空気調和機は、屋外に設置される室外機(図示なし)と空調室Rの天井T1に取り付けられる室内機1がガス管と液管(いずれも図示なし)で接続されて冷媒回路を形成する。
図1ないし図3を参照して、この実施形態に係る室内機1は、天井裏T2に埋設される箱型の本体ユニット10と、天井T1の空調室R側に配置して同本体ユニット10の底面101に取付けられる化粧パネル70とを有する天井埋込型空気調和機であり、特に調和空気を広範囲にわたって吹き出す全方向吹出型の天井埋込型空気調和機である。
図3を参照して、本体ユニット10は板金で形成される長方形の天板111と、天板111の四辺から下方に延在する側板112,113で形成された箱型の外胴11を有する。天板111の長辺側の側板を側板112、短辺側の側板を側板113として、向かい合う二枚の側板113には、それぞれ2個の取付金具12が固着されている。
本体ユニット10は、この取付金具12を天井裏T2に固定された図示しない複数の吊りボルトにて吊り下げることで天井裏T2に設置される。
化粧パネル70は、天板111よりも大きい長方形の化粧パネル70の本体を形成するパネル部71と、パネル部71の裏面70Rから本体ユニット10側に立設され箱型の外胴11の開口された底面(本体ユニット10の底面101)に大きさを合わせて取り付けられる側壁部72を有する。
パネル部71は、向かい合う長辺のうちの後方に存在する一辺70b側に四角く開口された空気吸込部73を備えるとともに、一辺70bと向かい合う長辺の前方に存在する他辺70a側に空気吹出部74を備えている。
なお、図2における室内機1において、天板111方向を上面または上方、空調室R方向を底面または下方、空気吹出部74側を前面または前方、空気吸込部73側を背面側または後方、左側の短辺70c側を左側面または左方、右側の短辺70d側を右側面または右方として以下説明する。各部品においても同様である。
側壁部72は、図10(a)に示すように、パネル部71の各辺(長辺70a,70b,短辺70c,70d)に沿って四角形状に形成された空気吸込部73および空気吹出部74を囲む大きさのフレーム721と、フレーム721の短辺(パネル部71の短辺70c,70d側の辺)の間に架け渡された梁722とを有し、パネル部71(化粧パネル70)の裏面に一体的にネジ止めされる。
フレーム721と梁722はともに板金製であり、梁722はパネル部71の空気吸込部73と空気吹出部74との間に形成されている仕切部713上に配置される。
これによれば、図10(b)に示すように、化粧パネル70の梱包時に、梱包材側の突片によって梁722を押さえることにより、落下時等の衝撃による破損を防止することが可能となる。また、梁722を設けたことにより、化粧パネル70のパネル面70Sと平行な方向にかかる荷重に対しても耐え得る構造となる。
なお、梁722は、空気吸込部73と空気吹出部74等の形状や配置に応じてフレーム721の長辺70a,70bの間に架け渡されてもよい。
≪外胴≫
次に、図3〜図6を参照して、本体ユニット10に収納されている部品について説明する。外胴11の天板111の内面には、板厚の厚い発泡スチロールで形成された断熱材13を備える。
外胴11の側板112,113の内面には、断熱材13は設けずに薄い断熱シート(図示なし)があればよい。断熱材13の中央は開口され下方から見ると天板111の一部が露出している。天板111のこの露出した部分に熱交換器20とファンユニット30が固定される。
図2に示すように、外胴11の右側面の外面には室内機1を制御する電装部品(図示なし)を収納した電装品箱14が取り付けられる。
≪熱交換器≫
熱交換器20は、平行に並べられた複数の短冊状のアルミフィン23と、アルミフィン23を貫通する複数の伝熱管22で形成されるフィンチューブ型で、互いに分離されている2つの熱交換部として、図4において左側の前方熱交換部(第1熱交換部)20Lと、同じく図4において右側の後方熱交換部(第2熱交換部)20Rの2つの熱交換部を備えている。
前方熱交換部20Lと後方熱交換部20Rは向かい合うようにして天板111に取り付けられる。前方熱交換部20Lと後方熱交換部20Rは、天板111に対しほぼ垂直として互いに平行に配置されてもよいが、高さ寸法を低く抑えるとともに、熱交換面積の増大をはかるため、好ましくは図4に示すように、上端側の間隔(距離)が下端側の間隔(距離)よりも広く(長く)なる逆ハ字状に組み合わされる。なお、逆ハ字状ではなく、上端側の間隔(距離)が下端側の間隔(距離)よりも狭い(短い)ハ字状としてもよい。
いずれにしても、前方熱交換部20Lと後方熱交換部20Rの左右両端は、それぞれ連結板21,21によって連結されている。これにより、熱交換器20の内側の空間は左右両端が連結板21,21により塞がれた送風機室Fとなる。熱交換器20の底面(前方熱交換部20Lと後方熱交換部20Rの下端間の面)は、後述するドレンパン40によって塞がれる。
このように、前方熱交換部20Lと後方熱交換部20Rの左右両端が連結板21,21によって塞がれているため、空気吸込部73から吸い込まれた全ての空気が前方熱交換部20Lと後方熱交換部20Rを通過するため、無駄な空気の流れがなく熱交換能力がより高められる。
また、熱交換器20と外胴11との間隔において、外胴11と後方熱交換部20Rとの間に第1空気吸込室S1が設けられるとともに、外胴11と前方熱交換部20Lとの間に第2空気吸込室S2が設けられる。第1空気吸込室S1は空気吸込部73の直上に配置され、第2空気吸込室S2は後述する導風路Lを介して空気吸込部73に連通する。
≪送風ファン≫
ファンユニット30は、熱交換器20の内側に設けられた送風機室Fに配置される。ファンユニット30は、シロッコファンタイプの送風ファン31と、ファンモータ36と、送風ファン31を支え天板111に固定するファン取付台311(図3参照)と、ファンモータ36を天板111に固定するモータ取付台361(図3参照)を備える。
送風ファン31は、複数の羽根を備えた筒状の羽根車(シロッコファン)32と、羽根車32を収容する渦巻状のファンケーシング34と、羽根車32の中心に連結される回転軸35を有する。
送風ファン31の台数は、必要な空調能力に応じて任意に選択されるが、この実施形態では、4台)を横並びとして同軸上に配置している。なお、それぞれの送風ファン31は同じ構造を有するものである。
ファンユニット30は、ファンモータ36をモータ取付台361で天板111に固定した後、ファンモータ36の両端にそれぞれ2個づつ送風ファン31を回転軸35で互いに連結する。回転軸35の両端は、例えばL字金具からなる図示しない軸受け板を介して天板111に固定される。また、ファンケーシング34の上部にもファン固定部341(図4参照)があり、これを天板111にネジで固定する。
ファンケーシング34は、羽根車32を収容する収容部342と、収容部342から連続して熱交換器20の下端よりも下方に長く延出して形成される筒状の送風部343を有する。収容部342の側面には羽根車32に空気を取り込むファン吸込口344が円形に開口されている。
ファンケーシング34は、内部に羽根車32を収容できるように、羽根車32の軸線に平行な面で上下に分割して形成してもよいし、羽根車32の軸線に垂直な面で左右に分割して形成してもよい。なお、ファンケーシング34の内部は、収容部342と送風部343が連続して吹出空気Hの送風路33となる。
上記のように、この実施形態においては、熱交換器20に囲まれた内部空間を送風機室Fとしてファンユニット30を配置していることから、送風ファン31の羽根車32が回転すると、送風機室F内が負圧になり、空気吸込部73からの空気が前方熱交換部20Lと後方熱交換部20Rを通って送風機室F内に入り、ファン吸込口344に吸い込まれて羽根車32の周囲に排出され、排出された空気はファンケーシング34内の送風路33に沿って一方向に向かって吹き出され、空気吹出部74から空調室Rへ吹き出される。
≪ドレンパン≫
熱交換器20の下端には、熱交換器20で生成されるドレン水を受けるドレンパン40が設けられる。ドレンパン40は、発泡スチロール製の断熱部材41と熱交換器20と対向する面に設けられる樹脂製のドレンシート42が一体で成形される。
ドレンパン40は、熱交換器20の下端側の開口面を覆う大きさを有する矩形状に形成されており、送風機室Fと後述する導風路Lとを仕切る仕切板でもある。ドレンパン40には、ファンユニット30の筒状をなす送風部343が嵌合される通風孔43が送風ファン31の台数分(この実施形態では4台分)設けられている。
上記したように、熱交換器20は前方熱交換部20Lと後方熱交換部20Rを逆ハ字状に配置してなり上面よりも底面の方が狭いため、その分、ドレンパン40が小型となり、本体ユニット10内でドレンパン40の占める領域が小さくなりドレンパン40による通風抵抗も少なくなり、ドレンパン40の周囲の通風領域が拡大して通風効率のよいものとなる。
ドレンパン40のドレンシート42側には、熱交換器20で生成されるドレン水を受け止めるために樋部45が設けられる。なお、冷房運転時にファンケーシング34の外面側に生ずる結露水はドレンパン40で受けられるため、通風孔43の周りに防水処理を施すことが好ましい。
図示しないが、ドレンパン40には、ドレン水を排水するためのドレンポンプやドレンホース、それにドレンポンプをオンオフ制御するためのフロートスイッチ等が設けられてよい。
≪化粧パネル≫
図11ないし図13を参照して、化粧パネル70の構成について説明する。化粧パネル70は、一方の長辺70a側に空気吹出部74を備え、他方の長辺70b側に空気吸込部73を備えているが、このうちの空気吹出部74の部分は、パネル部71の一部分を長辺70aに沿って空調室R側に向けて断面台形状に隆起させた隆起部740として形成されている。
この実施形態によると、隆起部740は、2つの等しい長さの平行線と2つの半円からなる角丸長方形である長円形で側面(周面)は傾斜面を呈している。空気吹出部74は、隆起部740の中央部分に固定吹出部75を有し、左右両側に可動吹出部77L,77Rを備えている。可動吹出部77L,77Rを区別する必要がない場合には総称として可動吹出部77と言う。
図16を併せて参照して、可動吹出部77Lは、本体ユニット10の底面101と平行な化粧パネル70の裏面70R側の仮想平面に対して直交する軸線を中心として所定の角度範囲で回転する円錐台状の回転ユニット78Lを有している。可動吹出部77Rも、同様に本体ユニット10の底面101と平行な化粧パネル70の裏面70R側の仮想平面に対して直交する軸線を中心として所定の角度範囲で回転する円錐台状の回転ユニット78Rを有している。なお、化粧パネル70の裏面70R側の仮想平面は、空調室Rの天井面T1とも平行である。
これら回転ユニット78L,78Rの一部分によって隆起部740の両端に半円部が形成されている。なお、回転ユニット78L,78Rを区別する必要がない場合には総称として回転ユニット78と言う。
図13の斜視図から分かるように、固定吹出部75の頂面(底面)751と回転ユニット78の頂面(底面)781は、回転ユニット78が回転した状態でも常に同一平面上に存在しており、意匠性の向上が図られている。
固定吹出部75は断面台形状で、前方の長辺(特定辺)70a側の側面には、その長辺70aに向けて第1空気吹出口754が開口されており、第1空気吹出口754内には左右風向板752(図15参照)が設けられ、第1空気吹出口754の開口面には上下風向板753が設けられている。
可動吹出部77は、回転ユニット78の側面の一部分に第2空気吹出口783を有し、第2空気吹出口783には上下風向板782が設けられている。回転ユニット78の回転によって左右方向の風向が変えられるため、可動吹出部77には左右風向板は不要である。なお、固定吹出部75の第1空気吹出口754と可動吹出部77の第2空気吹出口783は、これら空気吹出口754,783に意匠的な統一感を持たせるうえで、同じ傾斜角を有する側面に沿って開口されている。
固定吹出部75の空気吹出方向は長辺70a方向であるのに対して、可動吹出部77は第2空気吹出口783が長辺70aに向く第1位置と短辺70c,70d側に向く第2位置との間で回転し、この回転範囲内で送風ファン31より送られてくる調和空気を所定方向に吹き出す。
図11に示すように、可動吹出部77が第1位置にあるとき、第1空気吹出口754と第2空気吹出口783は直線状に並べられる。この場合、第1空気吹出口754と第2空気吹出口783とが連続しているような外観とするため、第1空気吹出口754の両側にダミーフラップ791,791を設けることが好ましい。このダミーフラップ791も第1空気吹出口754と第2空気吹出口783と同じ傾斜面に配置される。
図12,13は、左側の可動吹出部77Lが第1位置で、右側の可動吹出部77Rが短辺70d側に向く第2位置にある状態を示している。このように、可動吹出部77が回転可能であることにより、この室内機1は後ろ側の長辺70b方向を除く全方向に調和空気を吹き出すことができる全方向(多方向)吹出型である。
また、図12,図13に示すように、可動吹出部77(77L)の第2空気吹出口783を短辺側に向く第2位置に回転させたとしても、第2空気吹出口783以外の部分は円錐の側面であるため、外観上第1空気吹出口754との連続感が得られる。すなわち、可動吹出部77を回転させたとしても、空気吹出部74の基本形状(長円形の隆起形状)が保たれる。
この実施形態によれば、固定吹出部75の第1空気吹出口754と可動吹出部77の第2空気吹出口783は、パネル部71の一部分を空調室R側に向けて断面台形状に隆起させた隆起部740の側面に形成されており、これにより、第1空気吹出口754および第2空気吹出口783から調和空気が化粧パネル70のパネル面70Sに沿ってほぼ水平方向に吹き出されるため、調和空気をより遠方まで行き渡らせることができる。
また、第1空気吹出口754と第2空気吹出口783とから同時に調和空気が吹き出されるが、第1空気吹出口754から吹き出された空気流と第2空気吹出口783から吹き出された空気流との間に境界が生じ難く、空調室R内を万遍なく調和することができる。
なお、上記実施形態と異なり、第1空気吹出口754と第2空気吹出口783は、化粧パネル70のパネル面(もしくは天井面)と直交する垂直面内に開口されてもよい。
また、上記実施形態では、固定吹出部75と左右の可動吹出部77とを長円形の隆起部740内に納めているが、可動吹出部77が本体ユニット10の底面101と平行な化粧パネル70の裏面70R側の仮想平面に対して直交する軸線を中心として回転可能であれば、外観にとらわれることなく、単に固定吹出部75の両側に可動吹出部77が配置された態様であってもよく、このような態様も本発明に含まれる。
化粧パネル70の裏面70R側には、図14に示す仕切板ユニット50が取り付けられる。先の図4,図9等を併せて参照して、仕切板ユニット50は、その上面側(ドレンパン40と対向する面側)に、ドレンパン40に形成されている4つの通風孔43(43a〜43d;図9参照)にそれぞれ嵌合してファンユニット30の送風部343に連通する4つのダクト51(51a〜51d)を備えている。
この実施形態において、通風孔43(43a〜43d)は四角孔で、これに嵌合するダクト51(51a〜51d)は角筒状(四角い筒状)であり、これらのダクト51(51a〜51d)は角筒状として化粧パネル70の裏面70Rにまで延びている。
このうちの内側の2つのダクト51a,51bは、対応する通風孔43a,43bにそれぞれ嵌合し、外側に配置されている2つのダクト51c,51dは、対応する通風孔43a,43bにそれぞれ嵌合する。
ダクト51a,51bは固定吹出部75用のダクトであり、図15に示すように、仕切板ユニット50の下面側には、ダクト51a,51bに跨がって割り当てられる一つのチャンバー751aを有する中央吹出ユニット751が取り付けられる。
チャンバー751a内には、左右風向板752が設けられる。また、中央吹出ユニット751の前面側には、第1空気吹出口754が形成されており、その中に上下風向板753が設けられる。
なお、図示しないが、チャンバー751aの背面には左右風向板752を駆動するモータが配置され、また、第1空気吹出口754の脇には上下風向板754を駆動するモータが配置される。
外側のダクト51c,51dは可動吹出部77用のダクトであり、図16に示すように、左側のダクト51cの下端には、左側の可動吹出部77Lが備える回転ユニット78Lが回転可能に装着され、また、右側のダクト51dの下端には、右側の可動吹出部77Rが備える回転ユニット78Rが回転可能に装着される。
回転ユニット78L,78Rともにモータによって駆動される。この回転ユニット78を駆動するモータは、図14において外側のダクト51c,51dの脇に示されているモータカバー512内に配置されている。
この実施形態において、回転ユニット78L,78Rは、それぞれ、第2位置として第1位置から90゜以上の例えば100゜の位置にまで回転可能であるが、このような位置にまで回転させると、吹出空気が空調室Rに向かわずに空気吸込部73に吸い込まれるショートサーキット現象が起こるおそれがある。
これを防止するため、図11ないし図13を参照して、回転ユニット78と空気吸込部73との間に壁711が設けられている。
この実施形態において、壁711は、パネル部71の回転ユニット78の周りの一部分を短辺70c,70d側から回転ユニット78L,78Rと空気吸込部73との間に向けて回転ユニット78の頂面781の高さもしくは空気吸込部73の高さにまで立ち上がるスロープ状に形成されている。図11ないし図13において、壁711の稜線711aがスロープ状であることを示している。
これによれば、壁711によって回転ユニット78を最大回転位置付近にまで回転させた際のショートサーキット現象が防止されるとともに、吹出空気流が壁711のスロープ面712に沿ってより遠方にまで行き届くことになる。すなわち、壁711はショートサーキット現象の防止ばかりでなく、スロープ面712を備えていることにより吹出空気をより遠方にまで行き届かせる気流案内面としても機能する。
この実施形態によれば、第1空気吹出口754と第2空気吹出口783とから吹き出される空気は化粧パネル70のパネル面に沿って流れるため、化粧パネル70のうち、空気吸込部73を除く残りのパネル面70Sが壁711のスロープ面712を含めて気流案内面として作用する。
先にも説明したように、化粧パネル70は、側壁部72を本体ユニット10の底面開口内に嵌め込みネジ止めによって本体ユニット10に取り付けられる。この実施形態において、空気吸込部73は第1空気吸込室S1側に配置されており、この組み立て時に、図6の矢印で示すように、ドレンパン40の底面40R(図3,図9参照)と化粧パネル70の裏面70Rとの間に空気吸込部73から吸い込まれた空気の一部を第2空気吸込室S2に導く導風路Lが形成される。
この導風路L内において、第2空気吸込室S2に向かう空気はダクト51,51間を通過するが、より多くの通風量を確保するため、図9に示すように、ダクト51,51間に対応するドレンパン40の底面40Rには通風路Lの断面積を拡大する凹部46が形成されている。
また、この室内機1においては、先の図4,図6に示したように、化粧パネル70に固定吹出部75と可動吹出部77を含む隆起部740を設け、隆起部740の側面に固定吹出部75の第1空気吹出口754と可動吹出部77の第2空気吹出口783を形成したことにより、ドレンパン40と化粧パネル70との間で上下幅のより大きな導風路Lを確保することができる。
また、先の図4,図6を参照して、空調室R内から見て、空気吸込部73が隆起部740よりも上方で化粧パネル70のパネル面70S内に含まれるように配置されていることにより、位置的に導風路Lに対して空気吸込部73が近くなり、空気吸込部73から吸い込まれた空気の一部が導風路Lを介して第2空気吸込室S2側に向かいやすくなる。
≪組立≫
次に、室内機1の組立について説明する。本体ユニット10は、まず、外胴11の天板111側を組立台の上に置き、外胴11の内側に断熱材13を嵌め込む。そして、組立済みの熱交換器20(前方熱交換部20Lと後方熱交換部20Rを連結板21で連結した熱交換器)のガス連結管と液連結管(ともに図示しない)を側板113から引き出した状態として、熱交換器20を図示しない所定の取付具を介して天板111に固定する。その後に、組立済みのファンユニット30を熱交換器20内の送風機室F内に配置してモータ取付台361とファン固定部341を介して天板111に固定する。
次に、ドレンパン40のドレンシート42側の樋部45を熱交換部20L,20Rの下端に合わせて外胴11の底面に嵌め込む。この時、ドレンパン40の通風孔43にファンケーシング34の送風部343を嵌合する。
上記のように組み立てられた本体ユニット10と、化粧パネル70は個別に梱包され設置現場に搬送される。本体ユニット10は、先に天井裏T2に埋め込まれた複数の吊りボルトにて吊り下げることで天井裏T2に設置される。
そして、化粧パネル70を空調室R側から取り付ける。この時、仕切板ユニット50のダクト51をドレンパン40の通風孔43を介してファンケーシング34の送風部343に接続する。そして図示しないが、冷媒配管と電源線および信号線を室外機に接続することで室内機1が運転可能となる。
≪運転≫
室内機1の停止時は、図11に示すように、可動吹出部77L,77Rの回転ユニット78L,78Rは、初期位置として、それらの第2空気吹出口783が固定吹出部75の第1空気吹出口754と同じ方向(長辺70a側)に向いており(第1位置)、第1空気吹出口754、第2空気吹出口783は、ともに上下風向板782,753により閉じられている。
そして、ユーザーによるリモートコントローラー(図示なし)の指令や、空調システムの指令によって、室外機の圧縮機およびファンモータ(いずれも図示なし)と室内機1のファンモータ36が運転を開始する。
室内機1は、ファンモータ36の運転により送風ファン31が回転する。送風ファン31の回転により、送風ファン31の送風部343内の空気が吹き出されることで送風機室F内は負圧となり、化粧パネル70に設けられている空気吸込部73から空調室R内の空気Kが吸い込まれる。
図6を参照して、空気吸込部73から吸い込まれた空気Kは、第1空気吸込室S1に流入するとともに、導風路Lを通って第2空気吸込室S2にも流入する。第1空気吸込室S1内の空気は、後方熱交換部20Rを通り冷媒と熱交換されて送風機室Fに入る。同様に、第2空気吸込室S2内の空気は、前方熱交換部20Lを通り冷媒と熱交換されて送風機室Fに入る。
このようにして調和された空気は、送風ファン31の回転により、ファンケーシング34の送風部343からダクト51を介して化粧パネル70の固定吹出部75と可動吹出部77に向けて送出される。
固定吹出部75に送出された調和空気は、第1空気吹出口754から左右風向板752および上下風向板753によって案内される方向に向けて吹き出される。また、可動吹出部77に送出された調和空気は、回転ユニット78の回転方向および上下風向板782によって案内される方向に向けて吹き出される。
回転ユニット78L,78Rは、その回転が個別に制御可能であることから、ユーザーが求めるところにしたがい、空気吸込部73がある後ろ側の長辺70b方向を除く多方向に調和空気を供給することができる。
≪仕切板ユニットの支持構造≫
この実施形態に係る室内機1は、先にも説明したように、化粧パネル70の裏面70Rに図14に示す仕切板ユニット50を備える。仕切板ユニット50は、化粧パネル70の空気吹出部74に装着されるが、固定吹出部75、可動吹出部77等が設けられているため、大型でかつ重量がある。
図10で説明したフレーム721は、落下時等の衝撃による破損を防止する意図で化粧パネル70の裏面に設けられているが、ここでは、図17に示すように、化粧パネル70の裏面70R側で仕切板ユニット50を支えるフレーム760を設ける。
図17(a)に示すように、フレーム760は、メインフレームとして、化粧パネル70の長辺70a,70bに沿ってそれぞれ配置される長辺フレーム761,762と、長辺フレーム761,762の両端間において化粧パネル70の短辺70c,70dに沿ってそれぞれ配置される短辺フレーム763,764とを備えている。
短辺フレーム763と短辺フレーム764の間には、2本の梁765,766が架け渡されている。長辺フレーム761,762、短辺フレーム763,764および梁765,766はともに板金製であることが好ましい。
図17(b)に示すように、化粧パネル70には、仕切板ユニット50がその固定吹出部75と可動吹出部77が空調室R側に突出するように取り付けられて空気吹出部74となる開口部74aが化粧パネル70の長辺70aに沿って形成されている。
梁765,766は、空気吹出部74が設けられる開口部74aの長辺の側にそれぞれ配置され、仕切板ユニット50は、化粧パネル70の裏面70R側において梁765,766に支持される。
なお、仕切板ユニット50は、その前縁50a、右側縁50bおよび左側縁50cの3縁が、前方の長辺フレーム761と左右の各短辺フレーム763,764にて囲まれるようにしてフレーム760内に嵌め込まれた状態で化粧パネル70の裏面70Rに搭載される。この結果、梁765,766は仕切板ユニット50と化粧パネル70の裏面70Rとの間に挟み込まれる。
これによれば、化粧パネル70に変形や歪みを与えることなく、仕切板ユニット50を化粧パネル70の裏面に搭載することができる。
≪可動吹出部の構成≫
図18に示すように、ファンユニット30と回転ユニット78(78L,78R)は仕切板ユニット50を介して空気が流通可能に接続されるが、図19の分解斜視図に示すように、仕切板ユニット50には、回転ユニット78を回転させる駆動手段600が設けられている。駆動手段600は、回転ユニット78L,78Rの各々に設けられるが、その構成は同じである。
図20,21を併せて参照して、駆動手段600は、回転ユニット78の上部に一体に連結される円環状の回転リング610と、回転リング610を回転させるモータユニット650とを備えている。
回転リング610は円筒部611を有し、円筒部611の外周には、ラック歯613が外周の円弧面に沿って形成されている。ラック歯613は円筒部611の全周にわたって形成されてもよいが、少なくとも回転ユニット78の回転範囲(上記した第1位置と第2位置とにかけての範囲)を実現する範囲に形成されればよい。
また、円筒部611の外周には、半径方向外側に向けてフランジ614が同心状に形成されている。以下、このフランジ614を外フランジと言う。円筒部611の内部には、可動吹出部用のダクト51(51c,51d)に通ずる通気孔612が四角形状に形成されている。
図22に示すように、モータユニット650は、正転と逆転が可能なモータ(好ましくはステッピングモータ)651と、その出力軸651aに取り付けられるピニオン歯車652と、取付用のマウント653を有し、ピニオン歯車652が回転リング610のラック歯613と噛合するように後述するダクトカバー630の所定部位に取り付けられる。
図19と図23を参照して、仕切板ユニット50の両側には、回転リング610が嵌め込まれる円形の開口部520が形成されている。開口部520の内周には半径方向内側に向けてフランジ521が同心円状に形成されている。以下、このフランジ521を内フランジと言う。
回転リング610を開口部520に嵌め込むと、外フランジ614が内フランジ521上に配置され、回転リング610の回転に伴って、外フランジ614が内フランジ521上を摺動する。外フランジ614と内フランジ521は、回転体の軸方向の荷重を受ける一種のスラスト軸受けとして機能する。
回転リング610が開口部520に嵌め込まれた後、回転リング610を押さえるためダクトカバー630が被せられる。ダクトカバー630は、仕切板ユニット50にネジ止めされる。
上述したように、ダクトカバー630には、ドレンパン40に形成されている通風孔43に接続するダクト51(51c,51d)が形成されている。また、ダクトカバー630には、モータユニット650を取り付ける台座部631が形成されている。
図27に示すように、ダクトカバー630の裏面630Rには、回転リング610の円筒部611が嵌合する環状のガイド溝635が形成されている。また、ダクトカバー630の裏面630Rでガイド溝635で囲まれた円形部分は、図27ではダクトカバー630の縁630aよりもやや低い高さ(図28の断面図では縁630aよりもやや高い高さ)の内底面633となっている。
ダクト51(51c,51d)は四角形状であるが、ダクトカバー630の上面から内底面633に向けて漸次その通風面積(横断面の面積)が広げられ、内底面633では頂点(角部)が環状のガイド溝635に接する大きさに広がっており、回転リング610は内底面633側のダクト51の外接円に沿って回転する。
ファンユニット30から回転ユニット78の第2空気吹出口783に至る通風路において、回転ユニット78の回転部分で送風圧力が変化するが、上記のように、回転リング610を、内底面633側のダクト51の外接円に沿って回転させることにより、送風路が部分的にも塞がれないため、回転ユニット78の回転部分での圧力変化を少なくすることができる。また、回転リング610とダクト51の連結部分(接続部分)の構造を小型化することができる。
なお、回転リング610はダクト51の4個の頂点に接していなくてもよく、例えば回転リング610を、内底面633側のダクト51の隣接する2つの頂点に接する大きな円形とし、ダクト51の通風面積を縮小することなく(ダクトを一部分でも塞ぐことなく)回転させるようにしてもよい。
再び図19を参照して、この実施形態によると、ダクトカバー630に対してさらに外装カバー640が被せられる。この外装カバー640は、ダクトカバー630よりも一回り大きいが、場合によっては省略されてもよい。
回転ユニット78の空気吹出方向を変える際、回転リング610はモータ651によって開口部520内で回転する。この回転時に回転リング610にガタ付きが生じないようにする必要がある。このガタ付きには、横方向(半径方向)のガタ付きと、縦方向(軸方向)のガタ付きとがある。
まず、横方向(半径方向)のガタ付きを防止するため、図24に示す安定座523が用いられる。安定座523は、平面状の座部524と、座部524の一端からほぼ垂直に立ち上がる側壁部525とを有し、座部524の底部にはすり割りが入れられた弾性変形可能な取付脚526が設けられている。側壁部525は、外フランジ614の外周縁614aに沿う円弧面525aが形成されている。
安定座523は、好ましくはポリアセタール(POM)等の低摩擦樹脂で形成され、この例では図23に示すように、内フランジ521の外周側の付け根の4箇所に90゜間隔で設けられる。別の例として、120゜間隔で3箇所に設けられてもよい。また、安定座523の長さ(内フランジ521の円周方向に沿った長さ)が長い場合には、2箇所に配置されてもよい。
安定座523は、回転リング610の外フランジ614の外周縁614aに沿うように内フランジ521に取り付けられるが、安定座523を取り付けるには、図25に示すように、内フランジ521に係合孔522を穿設し、この係合孔522に取付脚526を弾性変形させながら押し込めばよい。
このように、内フランジ521側に外フランジ614の外周縁614aに接する安定座523を複数箇所に設けることにより、回転リング610の横方向(半径方向)のガタ付きを防止することができる。
次に、縦方向(軸方向)のガタ付きを防止するため、図26に示すように、回転リング610の円筒体611の内部に突片616を設ける。上記したように、円筒部611に形成される通気孔612は四角形状であるため、円筒部611内には四角形の各辺を形成する内壁617が存在する。突片616は、この内壁617に立設される。
突片616の位置は、図27に示すダクトカバー630の裏面630Rにある内底面633に当接し得る位置とする。この例において、内底面633はダクト51の四角形の開口部のうちの3辺に沿って配置されているのに対して、図21に示すように、突片616は90゜間隔で4箇所に設けられている。
これによれば、回転リング610がどの回転位置にあっても、常に3つの突片616が内定面633上にあるため、突片616が内底面633から外れることはないが、摺動摩擦抵抗を小さくするうえで、内底面633に対する突片616一つ当たりの接触面積はできるだけ小さい方が好ましい。
また、突片616の突出高さは、図28に示すように、回転リング610にダクトカバー630を被せた際、突片616の先端が内底面633に当接する高さとする。
このように、回転リング610の円筒体611の内部に、ダクトカバー630の裏面630Rにある内底面633に当接する突片616を設けることにより、回転リング610の縦方向(軸方向)のガタ付きを防止することができる。
上記したように、回転リング610はモータ651によって仕切板ユニット50の開口部520内で回転するが、開口部520側の内フランジ521と回転リング610側の外フランジ614との隙間からの風漏れ防止対策と、特に冷房運転時の結露防止対策を講ずる必要がある。
そのため、この例では、図29と図30に示すように、外フランジ614の内面(内フランジ521と対向する面側)にシール材618を設けている。シール材618は適度な弾性および断熱性を備えていればよいが、回転リング610の回転に伴って内フランジ521に擦られるため、低摩擦繊維として、例えばポリアセタール製の繊維(多くの場合、短繊維)をテープ状もしくはシート状の基材に植毛したテープもしくはシートが好ましく採用される。
これによれば、内フランジ521と外フランジ614との間のクリアランスを実質的に0〜0.5mm程度として風漏れを防止することができる。また、結露も発生しない構造とすることができる。また、回転リング610の回転に伴う摺動摩擦抵抗も減ずることができる。
なお、図29に示されているように、回転リング610の裏面610R側には、回転ユニット78を連結する際に用いられるボス619が複数箇所に設けられている。
≪ファンユニットの構成≫
先の図3で説明したファンユニット30においては、送風ファン31は、そのファンケーシング34に設けられているファン取付台311を介して外胴11の天板111に固定し、また、ファンモータ36についても、そのモータ取付台361を介して外胴11の天板111に固定するようにしている。そのため、用いる部品点数が多く、また、送風ファン31とファンモータ36の位置出しにも高い精度が要求される。
図31および図32は、この点が改良されたファンユニット30Aである。ここでの実施形態においても、送風ファン31として好ましくはシロッコファンが用いられ、ファンモータ36も特に変更を要することなくそのまま用いられる。
このファンユニット30Aにおいて、送風ファン31のファンケーシング34は、ともに合成樹脂材よりなるケーシング下部371とケーシング上部372の2つに分割されているが、ケーシング下部371には、ファンモータ36のモータ取付台373が一体に形成されている。
ケーシング下部371の送風ファン31を支持する軸受け部と、モータ取付台373のファンモータ36を支持する軸受け部(ともに図示省略)は、ケーシング下部371にモータ取付台373を一体成型する際にあらかじめ芯出しされている。なお、ケーシング上部372は、例えばパチン錠等の係止具374にてケーシング下部371に止められてよい。
このファンユニット30Aによれば、送風ファン31とファンモータ36をあらかじめ連結し、ケーシング上部372を開いて、送風ファン31をケーシング下部371内に収納するとともに、ファンモータ36をモータ取付台373にセットすればよく、送風ファン31とファンモータ36の位置出し(芯出し)が容易に行える。
また、外胴11の天板111に対する固定も、送風ファン31とファンモータ36とで別々に行う必要がなく、ケーシング下部371に設けられている取付部(図示しない)のみを天板111に固定するだけで済む。
また、このファンユニット30Aは、最小単位でユニット化されているため、空気調和機に要求される吹出風量や空気吹出部の大きさ等に応じて使用するユニット数を選択すればよく、風量の異なる機種ごとにそれ専用のファンユニット(送風機)を設計する必要がなくなる。このファンユニット30Aによれば、個別的に風量調節が可能であるため、よりきめ細かな空調運転が可能となる。