JP6680825B2 - 脳波の評価方法及び評価装置 - Google Patents
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Description
ところで、脳波は経時的に変化するものであるから、脳波によって精神状態を判定するためには、脳波の経時的な変化を重視する必要がある。
経時的な変化に着目した手法として、特開2009−297232号の発明がある。この発明は、周波数帯ごとに経時的なグラフを作成するが、計測中に現れるマスキングを排除することは考慮されていない。
脳波を測定する第1ステップと、
測定された脳波をデジタル変換してデジタル信号を出力する第2ステップと、
デジタル信号をFFT解析して周波数毎の経時的なパワー変化を表示する時間軸スペクトラムデータを生成する第3ステップと、
前記時間軸スペクトラムデータにおける注目すべき周波数帯のパワーを平均値に置き換えて、平均値時間軸スペクトラムデータを生成する第4ステップと、
平均値時間軸スペクトラムデータから特定の時間幅を複数取り出して、各時間幅毎に周波数を軸とした周波数軸スペクトラムデータを生成する第5ステップ。
また、特定の時間幅は、平均値時間軸スペクトラムデータにおいて、スペクトル値に急激な変化が現れる時間幅とすることが好ましい。
測定された脳波をデジタル変換してデジタル信号を出力する手段と、デジタル信号をFFT解析して周波数毎の経時的なパワー変化を表示する時間軸スペクトラムデータを生成する手段と、前記時間軸スペクトラムデータにおける適当な時間範囲において、注目すべき周波数帯毎のパワー平均値の全時間範囲の平均値が基準値より低いか否かを判定するパワー比較手段と、基準値より低い状態を安定して保っている持続時間が、基準時間を超えるか否かを判定する持続時間比較手段と、特に注目すべき周波数解像度の高い領域におけるパワー平均値が基準値より小さいか否かを判定する周波数特性比較手段、とを備えた脳波の評価装置
また、この発明の装置を使用することにより、前頭部皮膚上接触電極から得られた脳波信号をFFT解析し、時系列データに変換したパワーについて、(1)パワー強度、(2)持続性、(3)周波数特性という3つの特性を、ビジュアル化し数値化することにより、安静状態(空性)の達成度を評価することができる。したがって、安静状態を持続できる者を容易に選別することができると共に、訓練中の者が自己の到達レベルを把握することができる。
そして、この発明によって安静状態を持続できると判定された者を被験者として、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚などを感受した時の特徴的な脳波を、この発明の方法によって評価すると、脳波評価の精度を向上させることができる。これは脳波スイッチ、リラクゼーション、睡眠導入、インスピレーションの発揚、心理学実験などにも応用できる。
脳波の測定における電極配置は、国際10−20法(図2)が国際標準とされているが、この配置に限られるものではない。以下の実施例では図3に示す二カ所(EEG Measuring Device)に電極を配置して測定している。大脳の前頭前野が思考力や想像力などの知的活動に関係が深いとされるからである。
電極により取得された脳波信号は、フィルターでノイズが除去され、アンプで増幅され、ADコンバーターによりデジタル信号に変換されてパソコンなどの解析機器に出力される。
この過程は、従来行われている通常の手法により行う。例えばNeurosky社製の装置により脳波を測定し、デジタル変換してデジタル信号を出力する。
各図において縦軸の数値は出力される電圧(以下「パワー」という。)であるが、中間にノイズフィルターなどの回路が介在しているために、MKS単位など絶対的な数値ではなく、同じ装置で比較するための相対的な値である。
入力されたデジタル信号をFFT解析することによって、細分化された周波数ごとの(例えば0.5刻み)細分化された時間ごとの(例えば0.5秒刻み)パワーが得られる。その一部を以下(表1)に示す。
この表で周波数毎の全時間の平均値を取り、グラフ化したのが周波数スペクトラムデータ(図4)である。この図では、周波数帯ごとのパワーの時系列変化を理解することができない。
これを時系列データに変換する。すなわち、表1のデータを、各周波数ごとの時系列データに変換する。FFTアナライザーによるEEGスペクトルは、ある時間範囲において、等間隔で細かくサンプリングされた時刻 (time[sec.])を横軸とし、細分化された周波数 (frequency[Hz]) ごとのレベル値を縦軸として表現される。その一部を表2に示す。これをグラフとして出力したものが時間軸スペクトラムデータ(図5)である。
前記周波数スペクトラムデータの時系列データへの変換は、例えばLitlesoftware社製のアプリ(ソフトウェア)により行う。
時間を横軸とした図5においては、周波数帯ごとの時系列変化を理解することができる。
前記周波数スペクトラムデータは出力せずに、時間軸スペクトラムデータを直接出力するようにしてもよく、この時間軸スペクトラムデータの出力も必須ではない。
第3ステップで得た時間軸スペクトラムデータは、詳細なために全体像を把握しにくい。そこで、注目すべき周波数帯のパワーを平均値に置き換えて、平均値時間軸スペクトラムデータを生成する。
注目すべき周波数帯は任意に設定してよいが、ここでは従来からの仮説にしたがい、δ波(1−3Hz)、θ波(4−7Hz)、α波(8−13Hz)、β波(14−27Hz)の4分割周波数帯、および全周波数帯(1−27Hz)とする。
これらの各周波数帯のパワーの平均値を経時的(0.5秒刻み)に取得したものが表3であり、これをグラフ化して出力したものが図6である。
平均値時間軸スペクトラムデータから特定の時間幅を複数取り出して、各時間幅毎に周波数を軸とした周波数軸スペクトラムデータを生成する。
前記特定の時間幅とは、スペクトル値に急激な変化が現れる時間幅を意味する。
この図から、図4のスペクトラムデータからは読み取ることができないが、経時的に分析すると周波数帯ごとのパワーが変化していることが理解できる。
図7においては、3秒と54秒付近に急激な変化が見られる。そこで、時間幅として1〜2.5秒、3〜54秒、54.5〜58秒を取り出して、各時間帯における平均値周波数スペクトラムが図8である。
なお、「特定の時間幅」を上記のように取り扱う理由は、「スペクトル値に急激な変化が現れる時間幅」が、図8のとおり、五感からの刺激や思考の変化など、いわゆる「雑念」が生じている証拠だと考えられ、任意の時間幅を取り出すと平均化されて変化が埋もれてしまう恐れがあるためである。この図のPa(1-2.5sec.)とPa(54.5-58sec.)の同じような波形は、外部からの機械音である。
ここで、開始と終了の時刻をそれぞれt1とt2とすると、その間の持続時間Δ(デルタ)t(=t2-t1+0.5sec.)は52秒であり、それを可視化したのが熟達者の持続時間グラフである。
この時間帯の平均値時間軸スペクトラムを参照データ(Reference)として設定する(図10)。
測定された脳波をデジタル変換してデジタル信号を出力する手段(第2ステップに対応)。デジタル信号をFFT解析して周波数毎の経時的なパワー変化を表示する時間軸スペクトラムデータを生成する手段(第3ステップに対応)。前記時間軸スペクトラムデータにおける注目すべき周波数帯のパワーを平均値に置き換えて、平均値時間軸スペクトラムデータを生成する手段(第4ステップに対応)。
そして、被験者の脳波を評価するために、基準値となる熟達者の時間軸スペクトラムデータと平均値時間軸スペクトラムデータ、及び被験者の時間軸スペクトラムデータと熟達者の時間軸スペクトラムデータとの比較手段、被験者の平均値時間軸スペクトラムデータと熟達者の平均値時間軸スペクトラムデータとの比較手段を備えている。
以下具体的に説明する。
適当な時間範囲において、各周波数帯のパワー平均値 (Pa)が、基準値(Par)より低いかを判定する。基準値よりも小さければパワー強度が熟達者と同じレベルにあると評価され、パワー強度のテストは合格となる。不合格の場合(No)は基礎的な訓練を繰り返す。
不合格者は、「初心者(Beginner)」、または「達成率0%」と評価され、合格の場合は、「中級者(Middler)」、または「達成率50%」と評価される。
初心者の平均値時間軸スペクトラム(図14)では、1〜27Hzの周波数帯におけるパワー平均値Pa(1-27Hz)が基準値(Par)5000を超えているので不合格とされる。この被験者は、再度基礎的な訓練をする必要があるものと判定される。
以下の二つの図(図15,図16)では、パワー平均値Pa(1-27Hz)が基準値(Par)5000を下回る時間帯があるので、一定の安静状態が得られており、パワー強度テストは合格となる。
図14は、初心者(Beginner)のパワー平均値が基準値より高い値のまま、測定時間が31秒を経過している。精神集中力が切れてしまったためである。そこで、持続性を判定する上での基準時間(tr)は32秒にするのが適当であり、これを超えれば合格と評価される。
不合格(No)の場合は再度基礎的な訓練が必要と評価される。
訓練後1(Trained1)については図15において、パワー平均値Pa(1-27Hz)が基準値(Par) 5000より低い時点としてt1=3.5とt2=31が算定できて、その結果から持続時間Δ(デルタ)t (=31-3.5+0.5) は28秒であり、持続時間グラフは図17となる。これは基準時間(tr)30秒に満たないので不合格となる。これらの被験者は、再度基礎的な訓練をする必要があるものと判定される。
訓練後2(Trained2)については図16において、同様にしてパワー平均値Pa(1-27Hz)が基準値(Par) 5000より低い時点として、t1=24.5とt2=61が算定できて、Δ(デルタ)tは(=61-24.5+0.5)37秒である(図18)。これは基準時間(tr)32秒を超えるので合格となる。合格者は、「上級者(Senior)」、または「達成率80%」と評価される。
図12における熟達者(Master)の状態は、「達人(Master)」、または「達成率100%」と評価され、参照データ(Reference)として位置付けられる。
それに対して、訓練後2(Trained2)について、各周波数帯平均値の全時間(Δ(デルタ)t=37sec.)の平均値を周波数特性レーダーグラフとしたのが図19である。これは、参照データ(Reference)と比較して、βLPa'以外にも基準特性(Pa'r)4000を超えているので、周波数特性は不合格となり、上級者(Sinior)に止まる。それは、図20のとおりパワー平均値(Pa)がβL (14-20.5Hz) 以外に複数のピークを持っているためであり、意志の働きで脳波をコントロールし切れていないことを示している。
1)リラクゼーション
脳波強度の低減は脳の活動を最小限にすることであるので、これを持続することは疲労した脳を休めてリフレッシュすることになる。
例えば、図21のとおり初心者(Beginner)は雑念のために脳波のパワー強度が大きい。
それに対して熟達者(Master)は最小限になっていて、疲労した脳を休めてリラックスすることになる。
脳波強度の低減の持続に努力することを止めて、集中力を拡散することにより、自然と睡眠状態に導かれる。
図21において、精神集中に要する17〜18Hz付近のピークを取り去れば、自然と睡眠状態に導かれる。ただし、それを実現するには繰り返しの練習が必要となる。
無感覚無思考の状態は、知性の束縛からの解放を与えて、インスピレーション(ひらめき(insight))を発揚させ、創造的なアイディアをもたらす可能性がある。
これは近年、「ぼんやりした」状態により「ひらめき」が獲得されるという説が、ジョン・クーニオス(John Kounios)他によりデフォルト・モード・ネットワーク(DMN:Default Mode Network)として報告されたが、それよりも本発明は積極的で具体的な方法である。
雑念のない心理学実験ができる。例えば、光の感受性についての実験。
静かな快適な部屋でリラックスした訓練後の前、1.5メートルに40型(inch)のディスプレーを置き、一面に明るめのマリーンブルーの画像が映し出されるように設定する。
熟達者が、アイマスクを装着して、開始から20秒の間を準備期間とし、その後40秒まで安静状態を保って無感覚無思考を続け、最後に61秒までアイマスクを外してディスプレーのマリーンブルーの画面を見つめたとき、注目すべき周波数帯(1-27Hz)における平均値時間軸スペクトラムデータが図22である。
ここにおいて、青色の光によるパワー平均値のピーク(Pa)は、43〜46秒、49〜52秒、56〜59秒と順に下がっているのは、心理学で「馴化」(Habituation)と呼ばれる現象と考えることができる。
ただし、ここでは20秒の準備期間(1-20sec.)は表示されていない。
この発明によれば、被験者が安静状態を保つことができる者であることを平均値時間軸スペクトラムデータ(図22)の40秒以前で確認することができるので、マスキングを排除した状態で視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚などを感受した時の、特徴的な脳波の検出の精度を向上させることができる。
例えば、電子機器の制御におけるオン・オフのスイッチとして利用できる。すなわち、人間の意志によって脳波強度の大と小をコントロールできれば、その中間値を閾値 (Threshold)として、ロー(L)とハイ(H)のデジタル回路入力インターフェイスとすることが可能である。
図23は、無感覚無思考(No feeling no thinking)の時間軸パワー平均値をロー(L)、1から10までを順に足すという暗算(Mental calculation)を13秒間にわたった時の時間軸パワー平均値をハイ(H)とし、その中間値を閾値(Threshold)とすることができる。
Claims (4)
- 脳波を測定する第1ステップと、
測定された脳波をデジタル変換してデジタル信号を出力する第2ステップと、
デジタル信号をFFT解析して選定された全周波数帯の周波数毎の経時的なパワー変化を表示する時間軸スペクトラムデータを生成する第3ステップと、
前記時間軸スペクトラムデータについて、全周波数帯を複数の周波数帯に分割し、分割された周波数帯ごとのパワー及び全周波数帯のパワーをそれぞれの平均値に置き換えて、平均値時間軸スペクトラムデータを生成する第4ステップと、
全周波数帯の平均値時間軸スペクトラムデータからスペクトル値に急激な変化が現れる特定の時間幅を複数取り出して、各時間幅毎に周波数を軸とした周波数軸スペクトラムデータを生成する第5ステップと、
よりなる、脳波情報の取得方法。 - 請求項1の方法で熟達者の脳波情報を取得した後、第4ステップで取得した平均値時間軸スペクトラムデータから、最初にスペクトル値に急激な変化が現れた後、次に急激な変化が現れるまでの時間帯を基準となる時間帯として選定する第6ステップと、
基準となる時間帯の平均値時間軸スペクトラムデータを参照データとして設定する第7ステップ、
とを行う、脳波の評価方法。 - 請求項2の方法で設定された参照データとしての平均値時間軸スペクトラムデータ又は請求項1の方法で取得した熟達者の周波数軸スペクトラムデータと、請求項1の方法で取得した被験者の平均値時間軸スペクトラムデータ又は周波数軸スペクトラムデータとを比較することにより、被験者の脳波を評価する、脳波の評価方法。
- 測定された脳波をデジタル変換してデジタル信号を出力する手段と、
デジタル信号をFFT解析して選定された全周波数帯の周波数毎の経時的なパワー変化を表示する時間軸スペクトラムデータを生成する手段と、
前記時間軸スペクトラムデータを、全周波数帯を複数の周波数帯に分割し、分割された周波数帯毎のパワー及び全周波数帯におけるパワーをそれぞれの平均値に置き換えて平均値時間軸スペクトラムデータを生成する手段と、
前記平均値時間軸スペクトラムデータにおける適当な時間範囲において、分割された周波数帯毎のパワー又は全周波数帯のパワー平均値の全時間範囲の平均値が基準値より低いか否かを判定するパワー比較手段と、
分割された周波数帯ごとのパワー又は全周波数帯のパワー平均値が基準値より低い状態を保っている持続時間が、基準時間を超えるか否かを判定する持続時間比較手段と、
分割された周波数帯ごとのパワー又は全周波数帯のパワー平均値が基準値より小さいか否かを判定する周波数特性比較手段、
とを備え、
前記基準値を、請求項2の方法で設定された参照データとしての平均値時間軸スペクトラムデータ又は請求項1の方法で取得した熟達者の周波数軸スペクトラムデータとした、
脳波の評価装置。
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