JP6680174B2 - サイレージフィルム - Google Patents
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Description
はじめに本発明のサイレージフィルムに用いる各層について説明する。
本発明のサイレージフィルムが有するEVOH層について説明する。該EVOH層は主としてEVOHからなる層であり、通常EVOH層の50重量%超がEVOHである。好ましくは70〜100重量%であり、特に好ましくは75〜90重量%がEVOHである。
かかるEVOHは、ガスバリア性を有する公知の非水溶性の熱可塑性樹脂であり、エチレンとビニルエステル系モノマーとの共重合体を、ケン化することによって得られる。エチレン−ビニルエステル系共重合体は、公知の任意の重合法、例えば、溶液重合、懸濁重合、エマルジョン重合などにより製造され、エチレン−ビニルエステル系共重合体のケン化も公知の方法で行い得る。かかるビニルエステル系モノマーとしては、代表的には酢酸ビニルである。
また、本発明に用いられるEVOHとしては、共重合体中に更に少量のプロピレン、イソブテン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のα−オレフィン、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、3―ブテン―1,2―ジオール等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類やそのエステル化物、アシル化物などのヒドロキシ基含有α−オレフィン誘導体、不飽和カルボン酸又はその塩・部分アルキルエステル・完全アルキルエステル・ニトリル・アミド・無水物、不飽和スルホン酸又はその塩、ビニルシラン化合物、塩化ビニル、スチレン等のコモノマーを共重合したものであっても差し支えない。さらに、ウレタン化、アセタール化、シアノエチル化、オキシアルキレン化、エポキシ化等「後変性」されていても差し支えない。
特にヒドロキシ基含有α−オレフィン類を共重合したEVOHは、成形性や延伸性が良好になる点で好ましく、中でも1,2−ジオールを側鎖に有するEVOH樹脂が好ましい。
本発明のサイレージフィルムにおけるEVOH層には、エチレン含有量70モル%以上のエチレン−酢酸ビニル系共重合体ケン化物(以下、かかる成分を高エチレンEVOHと称することがある。)を含むことが好ましい。かかる高エチレンEVOHを用いることで、EVOHのガスバリア性を損なうことなく、かつ突き刺し強度や引っ張り伸び性が良好となる傾向がある。
かかる高エチレンEVOHは、エチレン含有量70モル%以上のエチレン−酢酸ビニル系共重合体の酢酸ビニル成分をケン化することによって得られるものであり、エチレン含有量においてEVOHとは異なるものである。
本発明のサイレージフィルムに用いるEVOH層が高エチレンEVOHを含む場合、その配合割合はEVOHと高エチレンEVOHの総和に対する高エチレンEVOHの重量比にて通常1〜40重量%であり、さらに好ましくは1〜30重量%であり、より好ましくは5〜25重量%であり、さらに好ましくは10〜28重量%であり、さらに好ましくは15〜25重量%である。
EVOHを主成分とし、高エチレンEVOHを配合することにより、優れたガスバリア性を保持したまま、突き刺し強度や引っ張り破断伸び性を向上させることが可能となる。
上記EVOH層には、本発明の効果を阻害しない範囲(例えば通常樹脂組成物の20重量%未満、好ましくは1〜10重量%)にて、上記EVOH、高エチレンEVOH以外の熱可塑性樹脂や添加剤を含有していても良い。
上記高エチレンEVOH以外の熱可塑性樹脂としては、例えばポリオレフィン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂;ビニルエステル系樹脂;ポリエステル系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリオレフィン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ビニルエステル系樹脂にマレイン酸等の不飽和カルボン酸を付加反応またはグラフト反応することによって得られるカルボキシル基含有樹脂などが挙げられ、中でもカルボキシル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂が好ましい。
上記添加剤としては、例えば酸化防止剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、界面活性剤、抗菌剤、乾燥剤、アンチブロッキング剤、難燃剤、架橋剤、硬化剤、発泡剤、結晶核剤、防曇剤、生分解用添加剤、シランカップリング剤、酸素吸収剤等が挙げられる。
本発明のサイレージフィルムを構成する疎水性熱可塑性樹脂層は、EVOH層が水分によりガスバリア性能が低下することを防ぐ目的で設けられる。疎水性熱可塑性樹脂層における疎水性熱可塑性樹脂とは、EVOHおよび接着性樹脂以外の熱可塑性樹脂を意味する。
疎水性が高い点で水酸基、カルボキシル基等の極性基やアミド結合等の極性結合を有さない樹脂が好ましく、中でも機械的強度や成形加工性の点で、さらに好ましくはポリオレフィン系樹脂であり、特に好ましくはポリエチレン、ポリプロピレンである。
上記疎水性熱可塑性樹脂の融点は、通常150〜300℃である。
上記の様に、本発明における疎水性熱可塑性樹脂層は、単層ないし多層で構成することができる。疎水性熱可塑性樹脂層におけるEVOHの含有濃度の調整が容易であるという観点から、多層構造であることが好ましい。
接着性樹脂層を構成する接着性樹脂としては特に限定されず、公知の接着性樹脂を用いればよい。一般的には、不飽和カルボン酸またはその無水物をオレフィン系重合体(前述の広義のポリオレフィン系樹脂)に付加反応やグラフト反応等により化学的に結合させて得られるカルボキシル基を含有する変性オレフィン系重合体を挙げることができ、具体的には、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン、無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−エチルアクリレート共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−酢酸ビニル共重合体等から選ばれる1種または2種以上の混合物が好適なものとして挙げられる。かかる接着性樹脂は上記疎水性熱可塑性樹脂層における疎水性熱可塑性樹脂には含まない。
さらに、疎水性熱可塑性樹脂層にて、EVOH層を接着性樹脂層を介して挟持し、かつ上記EVOH層の両面における前記疎水性熱可塑性樹脂層が上記条件を満たす場合、本発明の効果がより効果的に得られる点で好ましい。
該多層構造体を製造する過程で発生する端部や不良品等を再溶融成形して得られる、樹脂組成物とEVOH以外の疎水性熱可塑性樹脂の混合物を含むリサイクル層を設けても良い。
本発明のサイレージフィルムの製造方法としては、EVOHを溶融した状態で成形する方法(溶融成形法)と、EVOHを溶媒に溶解して成形する方法(例えば溶液コート法)等に大別される。中でも生産性の観点から、溶融成形法が好ましい。
具体的には、例えば、EVOHの成形品(例えばフィルムやシート)に接着性樹脂および疎水性熱可塑性樹脂を溶融押出する方法、疎水性熱可塑性樹脂のフィルムやシートに接着性樹脂およびEVOHを溶融押出する方法、EVOH層と疎水性熱可塑性樹脂層とを接着性樹脂を介して共押出する方法が挙げられ、詳細にはT−ダイ押出、インフレーション押出、ブロー成形、異型押出等が採用される。特に、インフレーション押出法を採用する場合、サイレージフィルムの機械強度の点からそのブローアップ比は、通常1〜10であり、好ましくは2〜8である。
本発明のサイレージフィルムを用いたサイレージの作成方法は特に限定するものではない。
サイレージ原料としては、常用される原料が適宜用いられ、通常は牧草である。例えば具体的には、オーチャードグラス、チモシー、ペレニアンライグラス、イタリアンライグラス、ケンタッキーブルーグラス、トールフェスク、スーダングラス、ワラ等のイネ科植物;シロクローバー、アカクローバー、アルファルファ等のマメ科植物;トウモロコシ類;その他あぜ草、野草、野菜屑等が挙げられる。これらは単独でも、2種以上を併用してもよい。
また、オールインサイレージのように、上記の牧草に、0.1〜30重量%にて穀類、ぬか類、大豆、大豆粕、ビール粕、などの濃厚飼料や未利用・低利用飼料資源などの副資材を一緒に混ぜてサイレージ化することも可能である。
本発明のサイレージフィルムは、牧草サイレージ用として用いることが好ましく、特には牧草を70〜99.9重量%にて含有するサイレージを包装するフィルムとして用いることが好ましい。
このとき、サイレージ原料を細断したり、踏圧したりしてサイレージ原料密度を上げ、フィルム内の酸素残存量を少なくするようにした場合、好気性細菌の活動やカビの発生が抑制され、良いサイレージが得られる傾向がある。
上記のようにサイレージを各種サイロに密封し、嫌気性条件下で貯蔵し、発酵させればよい。かかる貯蔵期間は、通常1〜36ヶ月、さらには2〜24ヶ月である。
そして、整形した牧草に通常のラップ巻きつけ機を使用して本発明のサイレージフィルムを巻きつけ、サイレージを密封する。かかるフィルムを上記牧草に巻きつける際には、サイレージ中に残存する空気を可能な限り減少させることが好ましいため、フィルムに張力をかけて延伸しながら巻きつけ、サイレージに対してフィルムを密着させることが好ましい。
また、サイレージフィルムの巻きつけ回数は、通常2〜10重、好ましくは2〜8重、特に好ましくは2〜5重である。
尚、実施例中「部」「%」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
(1)延伸性(ラッピング適性)
得られたサイレージフィルムを用いて、下記の条件にて引張弾性、破断点応力および破断伸度を測定した。その結果を表1に示す。
装置 :島津製作所製 オートグラフAGS−H
サンプル:15mm短冊形(n=5;上記フィルムをMD/TD方向に切り出したもの)
条件 :チャック間距離50mm 引張速度500mm/分
環境 :23℃、50%RH
得られたサイレージフィルムを用いて、下記の条件にて易破袋性を測定した。かかる値が低いほど、サイレージ破袋作業効率に優れることを意味する。その結果を表1に示す。
装置 :安田精機製作所 エルメンドルフ形引裂度試験機
サンプル:幅63mm、長さ76mm
条件 :ISO6383−2準拠
環境 :23℃、50%RH
疎水性熱可塑性樹脂層(II)/疎水性熱可塑性樹脂層(I)/接着性樹脂層/EVOH層/接着性樹脂層/疎水性熱可塑性樹脂層(I)/疎水性熱可塑性樹脂層(II)=厚み6μm/14μm/1μm/1μm/1μm/14μm/6μm(全厚43μm)という層構成を有するサイレージフィルムを作成した。
EVOH層として、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(エチレン含有量44モル%、ケン化度99.7モル%、MFR(210℃、2160g)3.5g/10分)を用いた。
上記構造のサイレージフィルムを下記条件で製膜し、幅 750mm、全厚43μmのサイレージフィルムを得た。
ダイ:450mm、設定温度220℃
フィルム引取速度:45m/分
実施例1において、サイレージフィルムの疎水性熱可塑性樹脂層として、上記疎水性熱可塑性樹脂組成物層(II)のみを用い、 疎水性熱可塑性樹脂層(II)/接着性樹脂層/EVOH層/接着性樹脂層/疎水性熱可塑性樹脂層(II))=厚み 20μm/1μm/1μm/1μm/20μm (全厚 43μm)とした以外は同様に行い、得られたサイレージフィルムを同様に評価した。結果を表1に示す。
すなわち、本発明のサイレージフィルムは、高いラッピング特性(延伸性)と易破袋性の両立が可能であることがわかった。
2 疎水性熱可塑性樹脂層
2a EVOH高濃度疎水性熱可塑性樹脂層
2b EVOH低濃度疎水性熱可塑性樹脂層
3 接着性樹脂層
Claims (2)
- エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物層の少なくとも一面に、接着性樹脂層を介して疎水性熱可塑性樹脂層を有し、
前記疎水性熱可塑性樹脂層が、エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物を含有し、
前記疎水性熱可塑性樹脂層におけるエチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物の濃度において、前記エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物層に最も近い表面層が、同エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物層から最も遠い表面層よりも高濃度であり、その濃度差が0.1〜10重量%であることを特徴とするサイレージフィルム。 - 前記エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物層の厚み(TE)と前記疎水性樹脂層の厚み(TH)との比(TH/TE)が、1〜200であることを特徴とする請求項1に記載のサイレージフィルム。
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