JP6679726B2 - 発光性粒子 - Google Patents

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Description

本発明は、特定構造を有するエネルギードナー化合物と、特定構造を有するエネルギーアクセプター化合物とを含む発光性粒子に関する。
タンパク質、酵素又は無機化合物などを定量するための高感度かつ容易な測定法として蛍光検出法が広く用いられている。蛍光検出法は、特定波長の光により励起されて蛍光を発する測定対象物質を含むと考えられる試料に上記特定波長の励起光を照射した際に発する蛍光を検出することによって測定対象物質の存在を確認する方法である。測定対象物質が蛍光体でない場合には、例えば、測定対象物質と特異的に結合する物質を蛍光色素で標識した物質を、試料に接触させ、その後上記と同様にして、励起光を照射した際に発する蛍光を検出することにより、測定対象物質の存在を確認することができる。
特許文献1には、標的物質を含む試料と微粒子標識プローブとを混合して、標的物質と微粒子標識プローブとの複合体を形成することを含む、蛍光標識方法が記載されている。特許文献1に記載の微粒子標識プローブは、ドナー色素とアクセプター色素とを有するポリマー微粒子であり、エネルギー移動が可能であり、ストークスシフトが生じることが記載されている。
また特許文献2には、狭帯域モノマーを含む縮合発色団ポリマーを含むポリマードットであって、狭帯域モノマーが、BODIPY誘導体であり、縮合発色団ポリマーが、約70nm未満の半値全幅(FWHM)を有する発光スペクトルを有する、ポリマードットが記載されている。
米国特許第5573909号公報 特表2015−512955号公報
生体の窓領域(生体を透過しやすい近赤外波長域である650〜900nm付近)を利用したイメージングには、高い量子収率、高い輝度及び大きなストークスシフトを有する発光性粒子を使用することが望ましい。ドナーの発光とアクセプターの吸収の重なりのある系ではエネルギー移動を利用することができ、ストークスシフトの増大が可能である。本発明は、高い量子収率、高い輝度及び大きなストークスシフトを有する発光性粒子を提供することを解決すべき課題とした。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定構造を有するエネルギードナー化合物と、特定構造を有するエネルギーアクセプター化合物とを用いて発光性粒子を製造することによって、高い量子収率、高い輝度及び大きなストークスシフトを有する発光性粒子を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1] 下記式(1)で表される少なくとも一種のエネルギードナー化合物と、下記式(1)で表される少なくとも一種のエネルギーアクセプター化合物と、粒子とを含有する、発光性粒子。
式(1)中、m1及びm2はそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。Mは半金属原子又は金属原子を表す。R1、R2及びR3はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、エテニル基、エチニル基、アシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、又はアリールチオ基を表し、これらは置換基を有していてもよい。Y1及びY2はそれぞれ独立にハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、エテニル基、又はエチニル基を表し、これらは置換基を有していてもよく、Y1及びY2は互いに連結して環を形成してもよい。Ar1及びAr2はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香環を表す。X1及びX2はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、エテニル基、エチニル基、アシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、又はアミノ基を表し、これらは置換基を有していてもよい。m1が2以上である場合、複数のX1は同じ基でもそれぞれ異なる基でもよく、m2が2以上である場合、複数のX2は同じ基でもそれぞれ異なる基でもよい。
[2] 上記式(1)で表される化合物が、下記式(2)で表される化合物である、[1]に記載の発光性粒子。
式(2)中、Y1及びY2はそれぞれ独立にハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、エテニル基、又はエチニル基を表し、これらは置換基を有していてもよい。R3は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、エテニル基、エチニル基、又はアシル基を表し、これらは置換基を有していてもよい。Ar3及びAr4はそれぞれ独立にアリール基又はヘテロ環基を表し、これらは置換基を有していてもよい。R4〜R11はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、エテニル基、エチニル基、アシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、又はアミノ基を表し、これらは置換基を有していてもよい。
[3] R4〜R11の少なくとも1つ以上が、置換基を有していてもよいアリール基である、[2]に記載の発光性粒子。
[4] R4〜R11の少なくとも1つ以上が、式(3)で表される基である、[2]又は[3]に記載の発光性粒子。
式(3)中、R201〜R205は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、エテニル基、エチニル基、アシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、又はアミノ基であり、R201及びR205の少なくとも一方は水素原子以外の基である。R201とR202は互いに連結して環を形成してもよく、R202とR203は互いに連結して環を形成してもよく、R203とR204は互いに連結して環を形成してもよく、R204とR205は互いに連結して環を形成してもよい。
[5] R4〜R11の少なくとも1つ以上が、式(4)で表される基である、[2]に記載の発光性粒子。
式(4)中、R101は、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、エテニル基、エチニル基、又はアシル基を表し、これらは置換基を有していてもよい。Ar101はアリール基、又はヘテロ環基を表し、これらは置換基を有していてもよい。Ar101とR201は互いに連結して環を形成してもよい。
[6] Y1及びY2がフッ素原子である、[1]から[5]の何れか一に記載の発光性粒子。
[7] エネルギードナー化合物とエネルギーアクセプター化合物のモル比が1:10〜10:1である、[1]から[6]の何れか一に記載の発光性粒子。
[8] 上記粒子に対するエネルギードナー化合物とエネルギーアクセプター化合物の総量が0.5質量%〜10質量%である、[1]から[7]の何れか一に記載の発光性粒子。
[9] ドナー化合物とアクセプター化合物のストークスシフトが40nm以上である、[1]から[8]の何れか一に記載の発光性粒子。
[10] 上記粒子がラテックス粒子である、[1]から[9]の何れか一に記載の発光性粒子。
[11] 蛍光極大波長が650〜900nmである、[1]から[10]の何れか一に記載の発光性粒子。
[12] 励起極大波長が600nm〜900nmである、[1]から[11]の何れか一に記載の発光性粒子。
本発明の発光性粒子は、高い量子収率、高い輝度及び大きなストークスシフトを有することから、各種のアッセイにおいて有用である。
図1は、化合物D−1の1H NMRスペクトルを示す。 図2は、化合物D−2の1H NMRスペクトルを示す。 図3は、化合物D−3の1H NMRスペクトルを示す。 図4は、化合物D−4の1H NMRスペクトルを示す。 図5は、化合物D−5の1H NMRスペクトルを示す。 図6は、化合物D−6の1H NMRスペクトルを示す。 図7は、化合物D−7の1H NMRスペクトルを示す。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
特許文献1には、複数種のBODIPY色素(BODIPYは、boron-dipyrrometheneの略称である)を使用したドナー色素及びアクセプター色素を含む粒子が記載されているが、高い量子収率、高い輝度及び大きなストークスシフトの観点では改善の余地があった。本発明においては、式(1)で表される特定構造を有するエネルギードナー化合物と、式(1)で表される特定構造を有するエネルギーアクセプター化合物とを組み合わせて使用することによって、高い量子収率、高い輝度及び大きなストークスシフトを有する発光性粒子を製造することが可能になった。上記した本発明の効果は、特許文献1及び特許文献2からは予想できない顕著な効果である。なお、本発明の発光性粒子が蛍光粒子である場合、輝度とは、蛍光強度のことである。
[本発明の発光性粒子]
本発明の発光性粒子は、下記式(1)で表される少なくとも一種のエネルギードナー化合物と、下記式(1)で表される少なくとも一種のエネルギーアクセプター化合物と、粒子とを含有する、発光性粒子である。
式(1)中の各記号の意味は、本明細書中に定義した通りである。
本明細書において、半金属原子とは、金属と非金属の中間の性質を示す物質を示し、ホウ素原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子、及びアンチモン原子が挙げられ、ホウ素原子が好ましい。
本明細書において、金属原子としては、銅、コバルト、鉄、アルミニウム、亜鉛等が挙げられる。
本明細書において、アルキル基とは、直鎖、分岐鎖、環状又はこれらの組み合わせの何れでもよく、直鎖又は分岐鎖アルキル基の炭素数は好ましくは1〜36であり、より好ましくは1〜18であり、さらに好ましくは1〜12であり、特に好ましくは1〜6である。環状のアルキル基としては、例えば炭素数3〜8のシクロアルキルなどが挙げられる。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、及びシクロヘキシル基などが挙げられる。
本明細書において、アリール基とは、炭素数が6〜48のアリール基が好ましく、炭素数が6〜24のアリール基がより好ましく、炭素数が6〜14のアリール基がさらに好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基、フェナントレニル基、ビフェニル基、フルオレニル基などが挙げられる。
本明細書において、ヘテロ環基としては、好ましくは5〜7員の置換もしくは無置換、飽和もしくは不飽和、芳香族もしくは非芳香族、単環もしくは縮環のヘテロ環基の何れでもよい。ヘテロ環基は、好ましくは、環構成原子が炭素原子、窒素原子及び硫黄原子から選択され、かつ窒素原子、酸素原子及び硫黄原子のいずれかのヘテロ原子を少なくとも一個有するヘテロ環基であり、さらに好ましくは、炭素数3〜30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。ヘテロ環基としては、例えば、フリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、キノリル基、イソキノリル基、アクリジニル基、フェナントリジニル基、プテリジニル基、ピラジニル基、キノキサリニル基、ピリミジニル基、キナゾリル基、ピリダジニル基、シンノリニル基、フタラジニル基、トリアジニル基、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、インダゾリル基、イソオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、フリル基、チエニル基、ピロリル基、インドリル基、イミダゾピリジニル基、カルバゾリル基等が挙げられる。
本明細書において、アシル基としては、好ましくは炭素数2〜15の直鎖、又は分岐アルカノイル基であり、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、ベンゾイル基などが挙げられる。
本明細書において、アルコキシ基としては、好ましくは、炭素数1〜20のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基などが挙げられる。
本明細書において、アリールオキシ基としては、好ましくは炭素数6〜14のアリールオキシ基であり、例えば、フェノキシ基、ナフトキシ基、アントリルオキシ基などが挙げられる。
アルキルチオ基としては、好ましくは、炭素数1から30のアルキルチオ基であり、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基等が挙げられる。
アリールチオ基としては、好ましくは、炭素数6から30のアリールチオ基であり、例えば、フェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、m−メトキシフェニルチオ基等が挙げられる。
本明細書において、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
本明細書において、芳香環とは、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナンスレン環、ピレン環、ペリレン環及びテリレン環等の芳香族炭化水素環;インデン環、アズレン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピラゾール環、ピラゾリジン環、チアゾリジン環、オキサゾリジン環、ピラン環、クロメン環、ピロール環、ピロリジン環、ベンゾイミダゾール環、イミダゾリン環、イミダゾリジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、トリアジン環、ジアゾール環、インドリン環、チオフェン環、チエノチオフェン環、フラン環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアジン環、チアゾール環、インドール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾチアジアゾール環、ナフトチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ナフトオキサゾール環、インドレニン環、ベンゾインドレニン環、ピラジン環、キノリン環及びキナゾリン環等のヘテロ芳香環;並びにフルオレン環及びカルバゾール環等の縮合型芳香環等が挙げられ、炭素数5〜16の芳香環(芳香環及び芳香環を含む縮合環)が好ましい。
なお、芳香環は置換基を有していてもよく、「芳香環」との用語は、置換基を有する芳香環、及び置換基を有さない芳香環の両方を意味する。芳香環が有する置換基としては、後記する置換基群Aに記載の置換基が挙げられる。
本明細書において、アミノ基としては、アミノ基;モノ又はジメチルアミノ基、モノ又はジエチルアミノ基並びにモノ又はジ(n−プロピル)アミノ基等のアルキル置換アミノ基;モノ又はジフェニルアミノ基並びにモノ又はジナフチルアミノ基等の芳香族残基で置換されたアミノ基;モノアルキルモノフェニルアミノ基等のアルキル基と芳香族残基が一つずつ置換したアミノ基;ベンジルアミノ基、アセチルアミノ基、フェニルアセチルアミノ基等が挙げられる。ここで芳香族残基とは、芳香環から水素原子1個を除いた基を意味し、芳香環は本明細書中上記した通りである。
1、R2及びR3が表すアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、エテニル基、エチニル基、アシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、又はアリールチオ基は置換基を有していてもよく、上記置換基としては、下記の置換基群Aに記載の置換基が挙げられる。
置換基群A:
スルファモイル基、シアノ基、イソシアノ基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、ニトロ基、ニトロシル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基、アミド基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、カルバモイル基、アシル基、アルデヒド基、カルボニル基、アリール基、アルキル基、ハロゲン原子で置換されたアルキル基、エテニル基、エチニル基、シリル基、及びトリアルキルシリル基(トリメチルシリル基等)。
1及びY2が表すアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、エテニル基、又はエチニル基は置換基を有していてもよく、上記置換基としては、置換基群Aに記載の置換基が挙げられる。
1及びX2が表すアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、エテニル基、エチニル基、アシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、又はアミノ基は置換基を有していてもよく、上記置換基としては、置換基群Aに記載の置換基が挙げられる。
<式(1)で表される化合物>
式(1)中、m1及びm2はそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。Mは半金属原子又は金属原子を表す。R1、R2及びR3はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、エテニル基、エチニル基、アシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、又はアリールチオ基を表し、これらは置換基を有していてもよい。Y1及びY2はそれぞれ独立にハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、エテニル基、又はエチニル基を表し、これらは置換基を有していてもよく、Y1及びY2は互いに連結して環を形成してもよい。Ar1及びAr2はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香環を表す。X1及びX2はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、エテニル基、エチニル基、アシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、又はアミノ基を表し、これらは置換基を有していてもよい。m1が2以上である場合、複数のX1は同じ基でもそれぞれ異なる基でもよく、m2が2以上である場合、複数のX2は同じ基でもそれぞれ異なる基でもよい。
式(1)中、m1及びm2はそれぞれ独立に0〜4の整数を表し、好ましくは、m1及びm2は共に1以上である。m1及びm2は同一でも異なる整数でもよいが、好ましくは同一の整数である。好ましくは、m1及びm2はそれぞれ独立に1又は2であり、より好ましくは、m1及びm2は共に1又は2であり、特に好ましくはm1及びm2は共に1である。
式(1)中、Mは半金属原子又は金属原子を表し、好ましくは半金属原子を表し、特に好ましくは、ホウ素原子を示す。
式(1)中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、エテニル基、エチニル基、アシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、又はアリールチオ基を表し、これらは置換基を有していてもよい。
好ましくは、R1及びR2はそれぞれ独立に、アリール基又はヘテロ環基であり、これらは置換基を有していてもよい。
1及びR2はそれぞれ同一でも異なっていてもよいが、好ましくは同一である。
1及びR2は、連結して環を形成することはない。
好ましくは、R3は、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロ環基であり、これらは置換基を有していてもよい。より好ましくは、R3は、水素原子である。
式(1)中、Y1及びY2はそれぞれ独立にハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、エテニル基、又はエチニル基を表し、これらは置換基を有していてもよく、Y1及びY2は互いに連結して環を形成してもよい。
好ましくは、Y1及びY2はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、又はアリールオキシ基を表し、これらは置換基を有していてもよく、Y1及びY2は互いに連結して環を形成してもよい。
より好ましくは、Y1及びY2はそれぞれ独立に、ハロゲン原子である。
さらに好ましくは、Y1及びY2はフッ素原子である。
1及びY2はそれぞれ同一でも異なっていてもよいが、好ましくは同一である。
式(1)中、Ar1及びAr2はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香環を表す。
好ましくは、Ar1及びAr2はベンゼン環を表す。
式(1)中、X1及びX2はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、エテニル基、エチニル基、アシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、又はアミノ基を表し、これらは置換基を有していてもよい。m1が2以上である場合、複数のX1は同じ基でもそれぞれ異なる基でもよく、m2が2以上である場合、複数のX2は同じ基でもそれぞれ異なる基でもよい。
好ましくは、X1及びX2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリール基を表す。
より好ましくは、X1及びX2は、それぞれ独立に、フェニル基、ナフチル基、又はアントリル基を表し、これらは置換基を有していてもよい。
好ましくは、m1が2以上である場合、複数のX1は同じ基である。
好ましくは、m2が2以上である場合、複数のX2は同じ基である。
式(1)で表される化合物は、分子内に、カルボン酸基、リン酸基、スルホ酸基などの酸性基を有さないことが好ましい。
<式(2)で表される化合物について>
式(1)で表される化合物の好ましい例としては、下記式(2)で表される化合物が挙げられる。
式(2)中、Y1及びY2はそれぞれ独立にハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、エテニル基、又はエチニル基を表し、これらは置換基を有していてもよい。
好ましくは、Y1及びY2はそれぞれ独立にハロゲン原子を表す。
特に好ましくは、Y1及びY2はフッ素原子である。
式(2)中、R3は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、エテニル基、エチニル基、又はアシル基を表し、これらは置換基を有していてもよい。
好ましくは、R3は、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロ環基であり、これらは置換基を有していてもよい。
より好ましくは、R3は、水素原子である。
式(2)中、Ar3及びAr4はそれぞれ独立にアリール基又はヘテロ環基を表し、これらは置換基を有していてもよい。上記置換基としては、置換基群Aに記載の置換基が挙げられる。
式(2)中、R4〜R11はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、エテニル基、エチニル基、アシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、又はアミノ基を表し、これらは置換基を有していてもよい。
式(2)中、好ましくは、R4〜R11の少なくとも1つ以上が、置換基を有していてもよいアリール基である。
さらに好ましくは、R4〜R7の少なくとも1つ以上が、置換基を有していてもよいアリール基であり、R8〜R11の少なくとも1つ以上が、置換基を有していてもよいアリール基である。
より好ましくは、R4〜R11の少なくとも1つ以上が、式(3)で表される基である。 さらに好ましくは、R4〜R7の少なくとも1つ以上が、式(3)で表される基であり、R8〜R11の少なくとも1つ以上が、式(3)で表される基である。
式(3)中、R201〜R205は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、エテニル基、エチニル基、アシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、又はアミノ基であり、R201及びR205の少なくとも一方は水素原子以外の基である。R201とR202は互いに連結して環を形成してもよく、R202とR203は互いに連結して環を形成してもよく、R203とR204は互いに連結して環を形成してもよく、R204とR205は互いに連結して環を形成してもよい。
別の好ましい態様によれば、R4〜R11の少なくとも1つ以上が、式(4)で表される基である。さらに好ましくは、R4〜R7の少なくとも1つ以上が、式(4)で表される基であり、R8〜R11の少なくとも1つ以上が、式(4)で表される基である。
式(4)中、R101は、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、エテニル基、エチニル基、又はアシル基を表し、これらは置換基を有していてもよい。Ar101はアリール基、又はヘテロ環基を表し、これらは置換基を有していてもよい。Ar101とR201は互いに連結して環を形成してもよい。
式(2)で表される化合物は、分子内に、カルボン酸基、リン酸基、スルホ酸基などの酸性基を有さないことが好ましい。
<式(1)で表される化合物の具体例>
式(1)で表される化合物の具体例を以下に記載する。Meはメチル基を示し、Buはn−ブチル基を示し、Phはフェニル基を示す。
<エネルギードナー化合物とエネルギーアクセプター化合物の組み合わせについて>
本発明においては、式(1)で表される少なくとも一種のエネルギードナー化合物と、式(1)で表される少なくとも一種のエネルギーアクセプター化合物を使用する。即ち、本発明においては、選択された化合物がそれぞれエネルギードナー化合物とエネルギーアクセプター化合物となるように、式(1)で表される化合物の中からエネルギードナー化合物(ドナーとも略記する)とエネルギーアクセプター化合物(アクセプターとも略記する)の組み合わせを選択して使用する。
上記に示した化合物E−1〜E−65についての、ドナーとアクセプターの組み合わせの具体例を以下に記載する。
エネルギードナー化合物とエネルギーアクセプター化合物の選択に関しては、吸収が短波長の化合物がエネルギードナー化合物であり、吸収が長波長の化合物がエネルギーアクセプター化合物であり、エネルギードナー化合物の発光とエネルギーアクセプター化合物の吸収が少しでも重なっている場合には、本発明の発光性粒子において使用できる可能性がある。エネルギーアクセプター化合物の吸収の極大波長が、エネルギードナー化合物の吸収の波長より10〜100nm程度長波長側にある場合が好ましい。エネルギーアクセプター化合物の吸収の極大波長が、エネルギードナー化合物の吸収の波長より10〜50nm長波長側にある場合がより好ましい。
エネルギードナー化合物の発光が吸収のどの程度長波長に出るか(ストークスシフトの大きさ)は化合物によって異なるため、一概には言えないが、式(1)で表される化合物では吸収極大波長+30nm程度に発光の極大があり、そこから+100nm程度までは発光スペクトルが存在するため、その付近に吸収を持つアクセプター化合物を併用することによりエネルギー移動の系が実現できることが想定される。
なお、各化合物の吸収波長に関しては、化合物を合成して測定するだけでなく、Gaussian等による計算から予測することも可能であり、計算値の関係から、エネルギードナー化合物とエネルギーアクセプター化合物の組み合わせを推定することもできる。
本発明においては、ストークスシフトの大きさが、好ましくは25nm以上であり、より好ましくは30nm以上であり、より一層好ましく35nm以上であり、さらに好ましく40nm以上であり、さらに一層好ましくは45nm以上であり、特に好ましくは50nm以上である。ストークスシフトの大きさの上限は特に限定されないが、一般的には、150nm以下である。
<式(1)で表される化合物の使用量>
本発明で用いる粒子(即ち、式(1)で表される化合物を添加する前の粒子)に対する式(1)で表されるエネルギードナー化合物と式(1)で表されるエネルギーアクセプター化合物の総量は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、好ましくは0.1質量%〜20質量%であり、より好ましくは0.2質量%〜20質量%であり、さらに好ましくは0.3質量%〜15質量%であり、特に好ましくは0.5質量%〜10質量%である。
エネルギードナー化合物とエネルギーアクセプター化合物のモル比は、1:10〜20:1であることが好ましく、1:5〜10:1であることがより好ましい。
本発明の発光性粒子においては、エネルギードナー化合物として式(1)で表される少なくとも一種の化合物を使用し、エネルギーアクセプター化合物として、式(1)で表される少なくとも一種の化合物を使用するが、エネルギーアクセプター化合物として二種以上の式(1)で表される化合物を使用してもよく、またエネルギーアクセプター化合物として二種以上の式(1)で表される化合物を使用してもよい。上記の場合、使用される式(1)で表される化合物の合計量が、上記の範囲内となることが好ましい。
<式(1)で表される化合物の製造方法>
式(1)で表される化合物は、例えば、以下に示す合成スキームにより製造することができる。
上記合成スキームにおけるR1及びX1の定義は、式(1)におけるR1及びX1の定義と同義である。
化合物A−10と化合物A−20とのMacromolecules 2010、43、193−200に記載の方法に従って反応させることにより、化合物A−30を合成することができる。次いで、化合物A−30、式:X1−B(OH)2で表される化合物、及びフッ化セシウム(CsF)をジメトキシエタン(DME)と水の混合溶液に加え、真空引き、窒素置換を繰り返して脱気を行う。酢酸パラジウム(Pd(OAc)2)、及び2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’、6’−ジメトキシビフェニル(Sphos)を加え、昇温し、還流下、所定の時間(例えば、2〜24時間)反応させることにより、化合物D−10を製造することができる。
化合物D−10は、式(1)で表される化合物の定義の範囲内である。化合物D−10以外の式(1)で表される化合物についても、化合物A−10、化合物A−20、及び式:X1−B(OH)2で表される化合物の何れか一種以上の化合物を、対応する化合物に置き換えることによって、製造することができる。
<粒子>
本発明の発光性粒子は、粒子を含む。粒子の材質及び形態は特に限定されず、例えば、ポリスチレンビーズなどの有機高分子粒子、又はガラスビーズ等の無機粒子を用いることができる。粒子の材質の具体例としては、スチレン、メタクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、ブタジエン、塩化ビニル、酢酸ビニルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、又はブチルメタクリレートなどのモノマーを重合させたホモポリマー、並びに2種以上のモノマーを重合させたコポリマーなどが挙げられ、上記のホモポリマー又はコポリマーを均一に懸濁させたラテックスでもよい。また、粒子としては、その他の有機高分子粉末、無機物質粉末、微生物、血球、細胞膜片、リポソーム、マイクロカプセルなどが挙げられる。粒子としては、ラテックス粒子が好ましい。
ラテックス粒子を使用する場合、ラテックスの材質の具体例としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、スチレン−スチレンスルホン酸塩共重合体、メタクリル酸重合体、アクリル酸重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、ポリ酢酸ビニルアクリレートなどが挙げられる。ラテックスとしては、単量体としてスチレンを少なくとも含む共重合体が好ましく、スチレンと、アクリル酸又はメタクリル酸との共重合体が特に好ましい。ラテックスの作製方法は特に限定されず、任意の重合方法により作製することができる。但し、本発明の発光性粒子に抗体を標識して使用する場合には、界面活性剤が存在すると抗体固定化が困難となるため、ラテックスの作製には、無乳化剤乳化重合、即ち界面活性剤などの乳化剤を用いない乳化重合が好ましい。
<発光性粒子>
本発明の発光性粒子は、式(1)で表されるエネルギードナー化合物と、式(1)で表されるエネルギーアクセプター化合物とを含むことにより、高い量子収率、高い輝度及び大きなストークスシフトとを同時に達成している。
発光性粒子の励起極大波長とは、励起スペクトルで蛍光強度の最も大きい波長である。発光性粒子の蛍光極大波長とは、蛍光スペクトルで蛍光強度の最も大きい波長のことである。また、励起スペクトルとは、蛍光強度の励起波長依存性を示し、蛍光スペクトルは、蛍光強度の蛍光波長依存性を示す。
本発明の発光性粒子の励起極大波長は、好ましくは600nm〜900nmであり、より好ましくは650nm〜900nmである。
本発明の発光性粒子の蛍光極大波長は、好ましくは650nm〜900nmであり、より好ましくは680nm〜900nmである。
発光性粒子の蛍光強度とは、ある測定条件で測定した際の発光の強度のことであり、測定条件に依存するため一般的には相対的な比較をするために用いられる。
本発明の発光性粒子の励起極大波長、蛍光極大波長、及び蛍光強度は、市販の蛍光分光光度計を使用して測定することができ、例えば、島津製作所製の蛍光分光光度計RF−5300PCを使用して測定することができる。
発光性粒子の量子収率とは、発光性粒子が吸収した光子数に対する蛍光として発光した光子数の割合のことである。
本発明の発光性粒子が示す量子収率は、好ましくは0.25以上であり、より好ましくは0.30以上であり、さらに好ましくは0.35以上であり、特に好ましくは0.40以上である。量子収率の上限は特に限定されないが、一般的には、1.0以下である。
本発明の発光性粒子の量子収率は、市販の量子収率測定装置を使用して測定することができ、例えば、浜松ホトニクス社製の絶対PL量子収率測定装置C9920−02を使用して測定することができる。
(発光性粒子の平均粒径(平均粒子径)の測定方法)
本発明の発光性粒子の平均粒径は、粒子の材質や被検物質を測定する濃度範囲、測定機器などによって異なるが、0.001〜10μm(より好ましくは0.01〜1μm)の範囲が好ましい。本発明に用いることが可能な発光性粒子の平均粒径は、市販の粒度分布計等で計測することができる。粒度分布の測定方法としては、光学顕微鏡法、共焦点レーザー顕微鏡法、電子顕微鏡法、原子間力顕微鏡法、静的光散乱法、レーザー回折法、動的光散乱法、遠心沈降法、電気パルス計測法、クロマトグラフィー法、超音波減衰法等が知られており、それぞれの原理に対応した装置が市販されている。これらの測定方法のうち、粒子径範囲及び測定の容易さから、動的光散乱法を用いて発光性粒子の平均粒径を測定することが好ましい。動的光散乱を用いた市販の測定装置としては、ナノトラックUPA(日機装(株))、動的光散乱式粒径分布測定装置LB−550((株)堀場製作所)、濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000(大塚電子(株))等が挙げられる。本発明では、平均粒径は、25℃にて、粘度0.8872CP、水の屈折率1.330の条件で測定したメジアン径(d=50)として求めるものとする。
<発光性粒子の製造方法>
本発明の発光性粒子の製造方法は特に限定されないが、式(1)で表される少なくとも一種のエネルギードナー化合物と、式(1)で表される少なくとも一種のエネルギーアクセプター化合物と粒子とを混合することによって製造することができる。例えば、ラテックス粒子などの粒子に、エネルギードナー化合物とエネルギーアクセプター化合物を添加することによって、本発明の発光性粒子を作製することができる。より具体的には、水及び水溶性有機溶剤(テトラヒドロフラン、メタノール等)の何れか一種以上を含む粒子の溶液に、エネルギードナー化合物とエネルギーアクセプター化合物を含む溶液を添加して攪拌することにより、本発明の発光性粒子を製造することができる。
本発明の発光性粒子は、分散液の形態で使用してもよい。
分散液は、本発明の発光性粒子を分散媒に分散することにより製造することができる。分散媒としては、水、有機溶媒、又は水と有機溶媒との混合物等が挙げられる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒などを使用することができる。
分散液における発光性粒子の固形分濃度は特に限定されないが、一般的には0.1〜20質量%であり、好ましくは0.5〜10質量%であり、より好ましくは1〜5質量%である。
<発光性粒子の利用>
本発明の発光性粒子は、具体的な蛍光検出法の一例としては、タンパク質、酵素又は無機化合物などを定量するための蛍光検出法において使用することができる。
以下に、本発明の実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下の実施例に示される材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
用語は以下の意味を示す。
MS:質量分析 (mass spectrometry)
ESI:エレクトロスプレーイオン化(electrospray ionization)
NMR:核磁気共鳴(nuclear magnetic resonance)
Me:メチル基
Et:エチル基
Bu:n−ブチル基
PL:フォトルミネッセンス
THF:テトラヒドロフラン
(化合物D−1の合成)
化合物D−1は上記のスキームに従って合成した。化合物A−1はBioorganic&Medicinal Chemistry 2004、12、2079−2098に記載の方法に従って合成した。化合物A−2はAlfa Aesar社の市販品を使用した。化合物A−1と化合物A−2を出発原料としてMacromolecules 2010、43、193−200に記載の方法にしたがって化合物A−3を合成した。化合物A−3は質量分析により同定した。
MS(ESI+)m/z:797.0([M+H]+
上記で合成した化合物A−3を用いて、化合物D−1を以下の通り合成した。
化合物A−3(600mg、0.75mmol)、2,4,6−トリメチルフェニルボロン酸(494mg、3.01mmol)、及びフッ化セシウム(1.14g、7.50mmol)をジメトキシエタン(DMEと略記する:30mL)と水(3mL)の混合溶液に加え、真空引き、窒素置換を繰り返して脱気を行った。そこに、酢酸パラジウム(Pd(OAc)2と略記する。34mg、0.15mmol)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’、6’−ジメトキシビフェニル(Sphos、123mg、0.30mmol)を加え、昇温した。還流下、12時間反応させた後、放冷し、水を加え抽出を行った。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過、濃縮し粗体を得た。得られた粗体をシリカゲルカラム(50容量%クロロホルム/ヘキサン)で精製し、化合物D−1(396mg、収率67%)を得た。得られた化合物D−1は1H NMRスペクトル、及び質量分析により同定した。1H NMRスペクトルは図1に示す。
MS(ESI+)m/z:781.1([M+H]+
(化合物D−2の合成)
化合物D−2は、2,4,6−トリメチルフェニルボロン酸の代わりに1−ナフタレンボロン酸を用いたこと以外は化合物D−1と同様の方法で合成した。得られた化合物D−2は1H NMRスペクトル、及び質量分析により同定した。1H NMRスペクトルは図2に示す。
MS(ESI+)m/z:797.3([M+H]+
(化合物D−3の合成)
化合物D−3は、2,4,6−トリメチルフェニルボロン酸の代わりに9−アントラセンボロン酸を用いたこと以外は化合物D−1と同様の方法で合成した。得られた化合物D−3は1H NMRスペクトル、及び質量分析により同定した。1H NMRスペクトルは図3に示す。
MS(ESI+)m/z:897.3([M+H]+
(化合物D−4の合成)
化合物D−4は、化合物A−2の代わりにp−メトキシベンゾヒドラジンを用いたこと以外は化合物D−1と同様の方法で合成した。得られた化合物D−4は1H NMRスペクトル、及び質量分析により同定した。1H NMRスペクトルは図4に示す。
MS(ESI+)m/z:741.3([M+H]+
(化合物D−5の合成)
化合物D−5は、化合物A−2の代わりにp−メトキシベンゾヒドラジンを用い、2,4,6−トリメチルフェニルボロン酸の代わりに2,4−ジメトキシフェニルボロン酸を用いたこと以外は化合物D−1と同様の方法で合成した。得られた化合物D−5は1H NMRスペクトル、及び質量分析により同定した。1H NMRスペクトルは図5に示す。
MS(ESI+)m/z:777.3([M+H]+
(化合物D−6の合成)
化合物D−6は、化合物A−2の代わりにp−メトキシベンゾヒドラジンを用い、2,4,6−トリメチルフェニルボロン酸の代わりに2,4−ジブトキシフェニルボロン酸を用いたこと以外は化合物D−1と同様の方法で合成した。得られた化合物D−6は1H NMRスペクトル、及び質量分析により同定した。1H NMRスペクトルは図6に示す。
MS(ESI+)m/z:945.5([M+H]+
(化合物D−7の合成)
化合物D−7は、化合物A−2の代わりに化合物A−6を用いたこと以外は化合物D−1と同様の方法で合成した。得られた化合物D−7は1H NMRスペクトル、及び質量分析により同定した。1H NMRスペクトルは図7に示す。
MS(ESI+)m/z:841.4([M+H]+
化合物A−6は下記スキームに従って、以下の通り合成した。
化合物A−4(15.0g、74,2mmol)をメタノール(MeOHとも表記する。200mL)に加え、そこに硫酸(7.27g、74.2mmol)を滴下した。加熱還流させて5時間反応させ、放冷した後に析出した固体をろ過し、メタノールで洗浄することで化合物A−5(14.7g、収率92%)を得た。
化合物A−5(6.00g、27.7mmol)をエタノール(EtOHとも表記する。140mL)に加え、ヒドラジン一水和物(8.32g、166mmol)を滴下した。加熱還流させて9時間反応させ、放冷した後に析出した固体をろ過し、メタノールで洗浄することで化合物A−6(3.60g、収率60%)を得た。
化合物D−8〜D−10は米国特許第5433896号に記載の方法に従って合成した。
比較化合物R−1はJournal of American Chemical Society 2004,126,10619−10631に記載の方法に従って合成した。
比較化合物R−2はAldrich社の市販品を使用した。
化合物D−1〜D−10及び比較化合物R−1〜R−2の構造を以下に示す。
(蛍光ラテックス分散液の作製)
蛍光ラテックス粒子の作製を行った。ラテックス粒子としてはスチレンとアクリル酸の9/1(質量比)混合物を水中に分散させた状態で重合させて作製した、平均粒径150nmの粒子を用いた。平均粒径は動的光散乱法を用いて測定した。上記で作製した固形分2%のラテックス粒子分散液(ラテックス分散液)(25mL、固形500mg)に対してTHF(5mL)を滴下して10分攪拌した。そこに、化合物D−1〜D−10及び比較化合物R−1〜R−2から選択した2種の化合物(種類は、下記表に示す通り)を含むTHF溶液(2.5mL)を15分間かけて滴下した。各試料に用いた化合物の量は下記表にまとめた。表中の化合物量のμmol/gはラテックスの固形1gに対する使用した化合物のモル数、質量%はラテックスの固形1gに対する使用した化合物の質量%を表す。化合物の滴下終了後、30分攪拌した後、減圧濃縮してTHFを除去した。その後、遠心分離して粒子を沈殿させた後、超純水を加えて再度分散させることで固形分濃度2%の蛍光ラテックス分散液を製造した。
(蛍光ラテックス分散液の評価)
上記で製造した固形分濃度2質量%の蛍光ラテックス分散液の蛍光量子収率の評価を行った。ラテックス分散液を超純水200倍に希釈したものを用い、励起極大波長、蛍光極大波長、蛍光強度の測定には島津製作所製の蛍光分光光度計RF−5300PCを使用し、量子収率の測定には浜松ホトニクス社製の絶対PL量子収率測定装置C9920−02を使用して評価を行った。評価結果は下記表にまとめた。ストークスシフトは、蛍光極大と励起極大との差である。蛍光強度は、試料番号17の化合物R−1の測定値を基準とした相対値で表した。なお、この評価において蛍光強度は1.5以上が好ましく、2.0以上がより好ましく、3.0以上がさらに好ましい。
上記の結果から、本発明の発光性粒子は、比較例の発光性粒子よりも量子収率が高いことが分かる。一般的には化合物の量を増加させると量子収率が低下する。しかし、試料番号5と試料番号17〜19との対比からも分かるように、本発明の発光性粒子によれば、比較例よりも多い化合物量の場合でも高い量子収率を維持できる。また、化合物D−1と、化合物D−4〜D−7の何れかを組み合わせた試料番号1〜7においては、特に蛍光強度が高かった。
上記した本発明の発光性粒子はいずれも29nm以上のストークスシフトを有し、蛍光極大波長を690nmより長波長に有する。本発明の発光性粒子は、特に生体の窓領域(生体を透過しやすい近赤外波長域である650〜900nm付近)を利用したイメージングに有用な粒子である。

Claims (12)

  1. 下記式(2)で表される少なくとも一種のエネルギードナー化合物と、下記式(2)で表される少なくとも一種のエネルギーアクセプター化合物と、粒子とを含有する、発光性粒子。
    式(2)中、Y及びYはそれぞれ独立にハロゲン原子を表す。は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、エテニル基、エチニル基、又はアシル基を表し、これらは置換基を有していてもよい。Ar及びArはそれぞれ独立にアリール基又はヘテロ環基を表し、これらは置換基を有していてもよい。R〜R11はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、エテニル基、エチニル基、アシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、又はアミノ基を表し、これらは置換基を有していてもよく、但し、R 〜R の少なくとも一つが置換基を有していてもよいアリール基であり、かつR 〜R 11 の少なくとも一つが置換基を有していてもよいアリール基であるか、R 〜R の少なくとも一つがアルコキシ基であり、かつR 〜R 11 の少なくとも一つがアルコキシ基である。
  2. 〜R の少なくとも一つが式(3)で表される基であり、 〜R 11 の少なくとも一つが式(3)で表される基である、請求項に記載の発光性粒子。
    式(3)中、R201〜R205は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、エテニル基、エチニル基、アシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、又はアミノ基であり、R201及びR205の少なくとも一方は水素原子以外の基である。R201とR202は互いに連結して環を形成してもよく、R202とR203は互いに連結して環を形成してもよく、R203とR204は互いに連結して環を形成してもよく、R204とR205は互いに連結して環を形成してもよい。
  3. エネルギードナー化合物は、R 〜R の少なくとも一つが式(3)で表される基であり、R 〜R 11 の少なくとも一つが式(3)で表される基であるか、Ar およびAr の少なくとも一つが置換基を有するアリール基である、請求項1又は2に記載の発光性粒子。
  4. エネルギーアクセプター化合物は、R 〜R の少なくとも一つがアルコキシ基であり、R 〜R 11 の少なくとも一つがアルコキシ基であるか、Ar およびAr の少なくとも一つがアルコキシ基を有するアリール基である、請求項1から3の何れか一項に記載の発光性粒子。
  5. 及びYがフッ素原子である、請求項1からの何れか一項に記載の発光性粒子。
  6. エネルギードナー化合物とエネルギーアクセプター化合物のモル比が1:10〜10:1である、請求項1からの何れか一項に記載の発光性粒子。
  7. 前記粒子に対するエネルギードナー化合物とエネルギーアクセプター化合物の総量が0.5質量%〜10質量%である、請求項1からの何れか一項に記載の発光性粒子。
  8. ドナー化合物とアクセプター化合物のストークスシフトが40nm以上である、請求項1からの何れか一項に記載の発光性粒子。
  9. 前記粒子がラテックス粒子である、請求項1からの何れか一項に記載の発光性粒子。
  10. 蛍光極大波長が650〜900nmである、請求項1からの何れか一項に記載の発光性粒子。
  11. 励起極大波長が600nm〜900nmである、請求項1から10の何れか一項に記載の発光性粒子。
  12. エネルギーアクセプター化合物の吸収の極大波長が、エネルギードナー化合物の吸収の波長より10〜100nm長波長側にある、請求項1から11の何れか一項に記載の発光性粒子。
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