以下、添付図面を参照してこの発明を実施するための形態について説明する。
(3相/直流マトリクスコンバータの全体構成)
図1は、本発明の実施の形態である電力変換装置としての3相/直流マトリクスコンバータ1の構成を示すブロック図である。図1に示すように、3相/直流マトリクスコンバータ1は、3相交流電源PS(交流装置)から電力線LR,LS,LTを介してそれぞれR相、S相、T相の3相交流電力が入力され、入力された3相交流電力を、一旦直流電力に変換することなく、直流電力に直接変換し、電力線LU(Pライン),LV(Nライン)を介して蓄電池LD(直流装置)に出力する。また、逆に、蓄電池LDからの直流電力を、直接、3相交流電源PS側に交流電力として出力する。すなわち、3相/直流マトリクスコンバータ1は、3相交流電力と蓄電池電力との間の電力変換を相互、かつ、直接に行うものである。
3相/直流マトリクスコンバータ1は、入力コンデンサ40、リアクトル30、双方向スイッチ回路10、制御部20、電流検出部51、電流調整部52、及び電流設定部50を有する。
入力コンデンサ40は、コンデンサ41〜43を有する。コンデンサ41〜43は、一端がR相、S相、T相にそれぞれ接続され、他端が共通接続される。入力コンデンサ40は、各相の電流・電圧のリップルを低減する。
リアクトル30は、電力線LU上に配置され、リップルを低減する。
双方向スイッチ回路10は、入力された3相交流電力を直流電力に変換するように、入力された3相交流電力の蓄電池LDへの供給をON/OFFする。また、双方向スイッチ回路10は、入力された直流電力を3相交流電力に変換するように、入力された直流電力の3相交流電源PSへの供給をON/OFFする。双方向スイッチ回路10は、双方向スイッチ群SWを有する。双方向スイッチ群SWは、6つの双方向スイッチSRP,SSP,STP,SRN,SSN,STNを有する。双方向スイッチ回路10は、制御部20による制御のもと、6つの双方向スイッチSRP,SSP,STP,SRN,SSN,STNがそれぞれ所定のタイミングでON/OFFすることで、入力された3相交流電力を単相交流電力に変換する。
双方向スイッチSRPは、R相とPラインとの間の接続をON/OFFする。双方向スイッチSSPは、S相とPラインとの間の接続をON/OFFする。双方向スイッチSTPは、T相とPラインとの間の接続をON/OFFする。双方向スイッチSRNは、R相とNラインとの間の接続をON/OFFする。双方向スイッチSSNは、S相とNラインとの間の接続をON/OFFする。双方向スイッチSTNは、T相とNラインとの間の接続をON/OFFする。
なお、各双方向スイッチSRP,SSP,STP,SRN,SSN,STNは、例えば、図2(a)に示すスイッチSと等価である。図2(a)に示すスイッチSは、制御部20から制御端子CT経由でスイッチング信号を受け、ONして端子T1と端子T2とを接続し、OFFして端子T1と端子T2とを遮断する。スイッチSは、端子T1と端子T2との間で双方向に電流が流れ得る。
図2(a)に示すスイッチSは、理想的なスイッチである。実際にスイッチを構成する素子は、スイッチング時間が存在するため、転流する時の開放モード、短絡モードを考慮して、例えば、図2(b)、又は図2(c)に示すように接続されて構成されていてもよい。図2(b)に示す構成は、例えば、逆阻止機能を有する素子EL1,EL2を並列接続して実現された構成である。逆阻止機能を有する素子EL1,EL2は、例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)でもよい。端子T1’,T2’は、それぞれ、図2(a)に示す端子T1,T2に対応しており、制御端子CT1’,CT2’は、図2(a)に示す制御端子CTに対応している。
あるいは、図2(c)に示す構成は、例えば、逆阻止機能が無い素子EL11,EL12を直列接続して実現された構成である。逆阻止機能が無い素子EL11,EL12は、例えば、還流ダイオードが両端に接続された絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)でもよいし、又は、電界効果トランジスタ(FET)でもよい。端子T1”は、図2(a)に示す端子T1に対応している。端子T2”は、図2(a)に示す端子T2に対応している。制御端子CT1”,CT2”は、図2(a)に示す制御端子CTに対応している。
電流設定部50は、3相交流電源PSと蓄電池LDとの間を移動する電力量および電力の移動方向として、電力線LUに流れる電流の電流方向F/Bと電流量Aとを示す電流設定値を電流調整部52に入力する。電流検出部51は、電力線LUに流れる電流の電流方向F/Bと電流量A1とを検出し、この検出結果を電流調整部52に入力する。電流調整部52は、電流検出部51が検出した電流方向F/Bと電流量A1とが電流設定部50から入力された電流設定値となるように第2の制御信号である信号レベルG1を制御部20に出力する。
(制御部の処理概要)
制御部20は、双方向スイッチ回路10における双方向スイッチ群SWのスイッチングパターンを生成する。制御部20は、双方向スイッチ回路10に入力された3相交流電力に対して仮想AC/DC変換処理を行い、仮想AC/DC変換処理が行われた電力に対して仮想DC/DC変換処理を行うように、双方向スイッチ回路10のスイッチングパターン(すなわち、スイッチング信号のパターン)を生成する。以下において、「仮想AC/DC変換処理を行う」とは、仮想AC/DC変換処理を仮想的に行うことを意味し、「仮想DC/DC変換処理を行う」とは、仮想DC/DC変換処理を仮想的に行うことを意味しているものとする。
制御部20は、入力された3相交流電力に対して、入力された3相交流電力における各相の電圧の大小関係に応じて区分された複数のモード(例えば、図4に示すモードm1〜m6)について互いに異なる仮想AC/DC変換処理を行うように、双方向スイッチ回路10のスイッチングパターンを生成する。ここで、モードm1は、R相電圧が最大値のとき(あるいはS相電圧とT相電圧とが交差するとき)を始点(0°)として、0°〜60°の位相区間である。同様にして、モードm2〜m6は、それぞれ、60°〜120°、120°〜180°、180°〜240°、240°〜300°、300°〜360°の位相区間である。
制御部20は、同期信号検出部21を有する。同期信号検出部21は、S相とT相との電圧差が0となる交差点を検出し、この交差点位相を0°として入力側の各相(R相、S相、T相)の交流電圧を第1の制御信号GGとして推定するとともに、推定された各相の交流電圧の大小関係に応じてそのときのモードmが複数のモードm1〜m6におけるどのモードであるかを認識する。
制御部20は、スイッチング周期発生部29を有する。スイッチング周期発生部29は、スイッチングパターンを生成する基本処理周期であるスイッチング周期Tを発生する。このスイッチング周期Tは、3相交流電源PSの電源周波数とは独立して生成されるものである。
制御部20は、第1のキャリア波形パターン発生部22を有する。第1のキャリア波形パターン発生部22は、入力された3相交流電力に対して、複数のモードm1〜m6に対し異なる第1のキャリア波形パターン、例えば、図5〜図10に示す第1のキャリア波形パターンCW11〜CW13をスイッチング周期発生部29が発生したスイッチング周期Tごとに繰り返し生成する。すなわち、第1のキャリア波形パターン発生部22は、同期信号検出部21によって認識されたモードm1〜m6に応じて、仮想AC/DC変換処理に用いるべき第1のキャリア波形パターンCW11〜CW13をスイッチング周期Tごとに決定する。スイッチング周期Tは、例えば、100μs程度である。
制御部20は、位相情報生成部23を有する。位相情報生成部23は、図5(a)に示すように、第1のキャリア波形パターン発生部22が決定した第1のキャリア波形パターンCW11〜CW13と入力側の相に対応した第1の制御信号GGとを比較して、比較結果に応じて仮想的に各双方向スイッチSRP〜STNが直流電力を発生させるような仮想的な複数のスイッチング信号(R相パルス、S相パルス、T相パルス)を発生させる。それとともに、位相情報生成部23は、仮想的な複数のスイッチング信号(R相パルス、S相パルス、T相パルス)のレベル(High、Low)の組み合わせに応じた複数の線間電圧発生区間φTS(例えば、図5(d)に示すモードm1における区間TS11,TS12,TS13)を求める。また、位相情報生成部23は、線間電圧発生区間φTSにおける選択された+側相と−側相とを求める。位相情報生成部23は、各モードm1〜m6で得られるスイッチング周期T内の選択2相間電圧の平均が等しくなるように、複数の線間電圧発生区間φTSを求める。言い換えると、後述するように、位相情報生成部23は、直流電力を発生させるような仮想的なスイッチング動作を各双方向スイッチSRP〜STNが行うように、各双方向スイッチSRP〜STNに仮想的にAC/DC変換処理(仮想AC/DC変換処理)を行う。
なお、仮想的なスイッチング動作とは、実際に各双方向スイッチSRP〜STNが行うものとは異なるスイッチング動作であるが、仮想AC/DC変換→仮想DC/DC変換の途中段階における仮想的な直流電力を発生させることを考えるために各双方向スイッチSRP〜STNが仮想的に行っているものとみなすスイッチング動作である。途中段階における仮想的な直流電力を発生させる処理は、あくまで仮想的なものであって、実際にその処理自体が行われるわけではない。
また、制御部20は、仮想AC/DC変換処理が行われた電力に対して、複数のモードm1〜m6について互いに異なる仮想DC/DC変換処理を行うように、双方向スイッチ回路10のスイッチングパターン(すなわち、スイッチング信号のパターン)を制御する。
具体的に、制御部20は、第2のキャリア波形パターン発生部24を有する。第2のキャリア波形パターン発生部24は、同期信号検出部21が認識した複数のモードm1〜m6に応じて異なる第2のキャリア波形パターン(例えば、図5〜図10に示す第2のキャリア波形パターンCW21〜CW26)を生成する。制御部20は、この第2のキャリア波形パターンCW21〜CW26を用いて仮想DC/DC変換処理を行うように双方向スイッチ回路10を制御する。すなわち、制御部20は、認識されたモードm1〜m6に応じて、仮想DC/DC変換処理に用いる複数の線間電圧発生区間φTSに対応した第2のキャリア波形パターンCW21〜CW26を生成する。この第2のキャリア波形パターンCW21〜CW26も、同じモード内であれば、スイッチング周期Tで繰り返し生成される。このとき、複数の線間電圧発生区間φTSは、仮想的な複数のスイッチング信号のレベルの組み合わせに応じたものとなっている。つまり、制御部20は、認識されたモードと、仮想的に各双方向スイッチSRP〜STNが直流電力を発生させるような複数のスイッチング信号のレベルの組み合わせとに応じて、第2のキャリア波形パターンCW21〜CW26を生成する。
ここで、制御部20は、スイッチ制御部28を有する。スイッチ制御部28は、入力されたPラインの信号レベルG1をPラインコンパレータCPの−側に入力する。また、反転器27は、Pラインの信号レベルG1を反転し、反転されたNラインの信号レベルG2をNラインコンパレータCNの−側に入力する。PラインコンパレータCP及びNラインコンパレータCNの各+側には、第2のキャリア波形パターン発生部24が生成した第2のキャリア波形パターンCW2(CW21〜CW26)が入力される。
PラインコンパレータCPは、Pラインの信号レベルG1と第2のキャリア波形パターンCW2とを比較する。一方、NラインコンパレータCNは、Nラインの信号レベルG2と第2のキャリア波形パターンCW2とを比較する。スイッチ制御部28は、PラインコンパレータCPの比較結果をもとに、線間電圧発生区間φTSのR相パルス、S相パルス、T相パルスによって得られる選択2相間電圧をPWM制御し、Pラインに接続される双方向スイッチSRP,SSP,STPをスイッチングするスイッチング信号φSRP、φSSP、φSTPを生成する。また、スイッチ制御部28は、NラインコンパレータCNの比較結果をもとに、線間電圧発生区間φTSの選択2相間電圧をPWM制御し、Nラインに接続される双方向スイッチSRN,SSN,STNをスイッチングするスイッチング信号φSRN、φSSN、φSTNを生成する。PN線間電圧は、スイッチング周期Tごとに、制御部20内で生成されるPN線間の電圧である。
図3に示すように、電流調整部52は、3相交流電源PS側から蓄電池LD側への電流方向(F)とする場合、蓄電池LDのPN相間電圧Vb(図1参照)に比して、制御部20での仮想DC/DC変換処理によって生成されるスイッチング周期Tでの電圧P1、P2、P3の平均直流電圧Vave(例えば、図5(h)のPN線間電圧の平均)を大きくするとともに蓄電池LD側のPN相間電圧VbとPN線間電圧の平均直流電圧Vaveとの差電圧に比例する量を電流量とする信号レベルG1(第2の制御信号)を生成し、蓄電池LD側から3相交流電源PS側への電流方向(B)とする場合、蓄電池LD側のPN相間電圧Vbに比してPN線間電圧の平均直流電圧Vaveを小さくするとともに蓄電池LD側のPN相間電圧VbとPN線間電圧の平均直流電圧Vaveとの差電圧に比例する量を電流量とする信号レベルG1(第2の制御信号)を生成する。
すなわち、電流調整部52は、3相交流電源PSと蓄電池LDとの間を移動する電力量および電力の移動方向を調整する。具体的には、PN相間電圧Vbに比して、平均直流電圧Vaveを大きくするか小さくするかによって電流方向(F/B)を変え、その差電圧の大きさ(絶対値)によって電流量Aを調整している。
(モードの説明)
ここで、同期信号検出部21によって認識される複数のモードm1〜m6について図4を用いて説明する。
同期信号検出部21は、検出された各相(R相、S相、T相)の交流電圧の大小関係に応じて、図4に示すような6つのモードm1〜m6を認識する。
モードm1では、R相が最大電圧相であり、T相が最小電圧相であり、S相が中間電圧相である。例えば、同期信号検出部21は、R相が最大電圧相であり、T相が最小電圧相であり、S相が中間電圧相であることを認識した場合、現在のモードがモードm1であると認識する。
モードm2では、S相が最大電圧相であり、T相が最小電圧相であり、R相が中間電圧相である。例えば、同期信号検出部21は、S相が最大電圧相であり、T相が最小電圧相であり、R相が中間電圧相であることを認識した場合、現在のモードがモードm2であると認識する。
モードm3では、S相が最大電圧相であり、R相が最小電圧相であり、T相が中間電圧相である。例えば、同期信号検出部21は、S相が最大電圧相であり、R相が最小電圧相であり、T相が中間電圧相であることを認識した場合、現在のモードがモードm3であると認識する。
モードm4では、T相が最大電圧相であり、R相が最小電圧相であり、S相が中間電圧相である。例えば、同期信号検出部21は、T相が最大電圧相であり、R相が最小電圧相であり、S相が中間電圧相であることを認識した場合、現在のモードがモードm4であると認識する。
モードm5では、T相が最大電圧相であり、S相が最小電圧相であり、R相が中間電圧相である。例えば、同期信号検出部21は、T相が最大電圧相であり、S相が最小電圧相であり、R相が中間電圧相であることを認識した場合、現在のモードがモードm5であると認識する。
モードm6では、R相が最大電圧相であり、S相が最小電圧相であり、T相が中間電圧相である。例えば、同期信号検出部21は、R相が最大電圧相であり、S相が最小電圧相であり、T相が中間電圧相であることを認識した場合、現在のモードがモードm6であると認識する。
なお、同期信号検出部21は、R相の検出電圧が最大となる点である、モードm1の開始時点を基準に各モードm1〜m6を認識するようにしてもよい。
(具体的な仮想AC/DC変換処理)
次に、複数のモードm1〜m6のそれぞれにおける仮想AC/DC変換処理について、図5〜図10を用いて説明する。なお、図5〜図10では、各モードm1〜m6内で連続する2つのスイッチング周期Tについて示している。なお、以下では、説明の簡略化のため、信号レベルG1に応じて決定した直流電圧設定ゲインが1である場合について例示的に説明する。
[モードm1]
モードm1では、第1のキャリア波形パターン発生部22が、図5(a)に示すように、仮想AC/DC変換処理に用いるべき第1のキャリア波形パターンCW1として、立ち下がりの鋸歯状波W11と立ち上がりの鋸歯状波W12とを有する第1のキャリア波形パターンCW11を決定する。なお、「立ち下がりの鋸歯状波」とは、時間の経過に応じて振幅が直線的に減少していく負の傾きを持った鋸歯状波を指し、「立ち上がりの鋸歯状波」とは、時間の経過に応じて振幅が直線的に増加していく正の傾きを持った鋸歯状波を指すものとする。
一方、位相情報生成部23には、同期信号検出部21が直接検出したR相電圧a、S相電圧b、T相電圧cが入力される。あるいは、位相情報生成部23は、R相の検出電圧が最大となる点である、モードm1の開始時点を基準に、R相電圧a、S相電圧b、T相電圧cを推定する。R相電圧a、S相電圧b、T相電圧cは、各スイッチング周期Tごとに求められ、スイッチング周期Tの経過に伴って変化する。なお、図5では、隣接するスイッチング周期TでR相電圧a、S相電圧b、T相電圧cである場合を示している。ここで、入力あるいは推定されるR相電圧a、S相電圧b、T相電圧cは、それぞれ、相電圧を「−1」と「1」の間に規格化したものである。このとき、図5(d)に示す区間(線間電圧発生区間)TS11,TS12,TS13の直流電圧は、それぞれ、ST間電圧=b−c、RT間電圧=a−c、RS間電圧=a−bとなる。
モードm1における各相のパルスについて図5(a),(b)を参照して説明する。モードm1では、R相が最大電圧相、T相が最小電圧相、S相が中間電圧相となる。最大電圧相と最小電圧相では、パルスはそれぞれの電位に比例する時間分、ONとなる。したがって、R相のパルス幅x=T|a|、T相のパルス幅z=T|c|となる。ここで、R相パルスがONとなるタイミング(区間TS11が終わるタイミング)は、R相電圧|a|と鋸歯状波W11との交点から求められる。R相パルスは、R相電圧|a|が鋸歯状波W11の値以上のときにONとなる。これにより、R相パルスが得られる。T相パルスがOFFとなるタイミング(区間TS11後の区間TS12が終わるタイミング)は、T相電圧|c|と鋸歯状波W12との交点から求められる。T相パルスは、T相電圧|c|が鋸歯状波W12の値以上のときにONとなる。これにより、T相パルスが得られる。中間相パルスは、最大電圧相又は最小電圧相のパルスのどちらかがOFFのときにONする。したがって、S相パルスは、R相電圧|a|と鋸歯状波W11との交点、およびT相電圧|c|と鋸歯状波W12との交点から求められる。
ここで、線間電圧発生区間TS11、TS12、TS13の幅は、それぞれ、T×(1−|a|)、T×(|a|+|c|−1)、T×(1−|c|)となる。すなわち、仮想AC/DC変換処理により、仮想的な直流電圧を生成するための、線間電圧発生区間TS11、TS12、TS13に対応した幅をそれぞれ有する仮想的な複数のスイッチング信号(R相パルス、S相パルス、T相パルス)が生成される。
また、仮想AC/DC変換処理における線間電圧発生区間TS11、TS12、TS13の直流電圧(図5(c)に示した選択2相間電圧)は、それぞれ、ST間電圧=b−c、RT間電圧=a−c、RS間電圧=a−bとなる。選択2相間電圧における2つの電圧相のうちレベルの大きい電圧相を+側相とし、レベルの小さい電圧相を−側相とすると、線間電圧発生区間TS11、TS12、TS13において、それぞれ、S相、R相、R相が+側相であり、T相、T相、S相が−側相である。位相情報生成部23は、時々刻々と、線間電圧発生区間φTS(TS11、TS12、TS13)を第2のキャリア波形パターン発生部24及びスイッチ制御部28に出力するとともに、+側相及び−側相をスイッチ制御部28に出力する。
ところで、スイッチング周期Tの直流電圧の平均は、それぞれの線間電圧発生区間TS11,TS12,TS13ごとに直流電圧を積算しそれぞれを加算してスイッチング周期Tで除して、次式(1)のように表すことができる。
スイッチング周期Tの直流電圧の平均={(b−c)×T×(1−a)+(a−c)×T×(a−c−1)+(a−b)×T×(1+c)}/T
=a2+c2−b(a+c) ・・・(1)
ここで、a+b+c=0(3相条件)を考慮すると、式(1)は次式(2)に変形できる。
スイッチング周期Tの直流電圧の平均=a2+b2+c2 ・・・(2)
さらに、交流理論から、a2+b2+c2=3/2より、式(2)は次式(3)に変形できる。
スイッチング周期Tの直流電圧の平均=3/2 ・・・(3)
式(3)に示すように、スイッチング周期Tの仮想的な直流電圧の平均を、一定電圧とすることができる。
モードm1における入力電流について説明する。R相の入力電流は、R相電圧aの時間に比例する正の電流が流れる。T相の入力電流は、T相の電圧の大きさ|c|に比例する負の電流が流れる。S相の入力電流は、線間電圧発生区間TS11で正の電流が流れ、線間電圧発生区間TS13で負の電流が流れる。したがって、流れる電流は、T×(1−a)−T×(1+c)=T(−a−c)=Tbとなり、スイッチング周期Tで除すると、S相電圧bとなる。したがって、R相、S相、T相には、それぞれ、R相電圧a、S相電圧b、T相電圧cに比例する電流が流れることになり、入力交流電流の各相を正弦波とすることができる。
[モードm2]
モードm2では、第1のキャリア波形パターン発生部22が、図6(a)に示すように、仮想AC/DC変換処理に用いるべき第1のキャリア波形パターンCW1として、立ち上がりの鋸歯状波W12を有する第1のキャリア波形パターンCW12を決定する。位相情報生成部23は、同期信号検出部21の検出結果に応じて、R相電圧a、S相電圧b、T相電圧cを取得し、あるいは推定する。このとき、図6(d)に示す線間電圧発生区間TS21、TS22、TS23の直流電圧は、それぞれ、ST間電圧=b−c、RT間電圧=a−c、RS間電圧=b−aとなる。
モードm2における各相のパルスについて図6(a),(b)を参照して説明する。モードm2では、S相が最大電圧相、T相が最小電圧相、R相が中間電圧相となる。位相情報生成部23は、R,S,T相のパルスのON,OFF順序を変えずに、最大電圧相と最小電圧相でそれぞれの電位に比例する時間をONとするため、モードm2では、T相電圧|c|と電圧(|b|+|c|−1)と鋸歯状波W12とを用いて、図6(b)に示す各相パルスのON,OFFタイミングを生成する。
ここで、線間電圧発生区間TS21、TS22、TS23の幅は、それぞれ、T×(|b|+|c|−1)、T×(1−|b|)、T×(1−|c|)となる。すなわち、仮想AC/DC変換処理により、仮想的な直流電圧を生成するための、線間電圧発生区間TS21、TS22、TS23に対応した幅をそれぞれ有する仮想的な複数のスイッチング信号(R相パルス、S相パルス、T相パルス)が生成される。
ここで、仮想AC/DC変換処理における線間電圧発生区間TS21、TS22、TS23の直流電圧(図6(c)に示した選択2相間電圧)は、それぞれ、ST間電圧=b−c、RT間電圧=a−c、SR間電圧=b−aとなる。選択2相間電圧における2つの電圧相のうちレベルの大きい電圧相を+側相とし、レベルの小さい電圧相を−側相とすると、線間電圧発生区間TS21、TS22、TS23において、それぞれ、S相、R相、S相が+側相であり、T相、T相、R相が−側相である。位相情報生成部23は、時々刻々と、線間電圧発生区間φTS(TS21、TS22、TS23)を第2のキャリア波形パターン発生部24及びスイッチ制御部28に出力するとともに、+側相及び−側相をスイッチ制御部28に出力する。
ところで、モードm2でのスイッチング周期Tの直流電圧の平均は、次式(4)のように表すことができる。
スイッチング周期Tの直流電圧の平均={(b−c)×T×(−c+b−1)+(a−c)×T×(−b+1)+(b−a)×T×(1+c)}/T
=b2+c2−a(b+c) ・・・(4)
ここで、a+b+c=0(3相条件)を考慮すると、式(4)は次式(5)に変形できる。
スイッチング周期Tの直流電圧の平均=a2+b2+c2 ・・・(5)
さらに、交流理論から、a2+b2+c2=3/2より、式(5)は次式(6)に変形できる。
スイッチング周期Tの直流電圧の平均=3/2 ・・・(6)
式(6)に示されるように、スイッチング周期Tの仮想的な直流電圧の平均を、一定電圧とすることができる。
モードm2における入力電流について説明する。モードm2では、S相が最大電圧相で、T相が最小電圧相なので、S相はS相電圧bの時間に比例する正の電流が流れ、T相は、T相電圧cの時間に比例する負の電流が流れる。R相は線間電圧発生区間TS22で負の電流が流れ、線間電圧発生区間TS23で正の電流が流れる。このため、流れる電流は、T×(1−b)−T×(1+c)=Taとなり、スイッチング周期Tで除するとR相電圧aとなる。従って、電圧に比例する電流が各相に流れ、入力交流電流の各相を正弦波とすることができる。
[モードm3]
モードm3では、第1のキャリア波形パターン発生部22が、図7(a)に示すように、仮想AC/DC変換処理に用いるべき第1のキャリア波形パターンとして、立ち下がりの鋸歯状波W11を有する第1のキャリア波形パターンCW13を決定する。位相情報生成部23は、同期信号検出部21の検出結果に応じて、R相電圧a、S相電圧b、T相電圧cを取得し、あるいは推定する。このとき、図7(d)に示す線間電圧発生区間TS31、TS32、TS33の直流電圧は、それぞれ、ST間電圧=c−b、RT間電圧=a−c、RS間電圧=a−bとなる。
モードm3における各相のパルスについて図7(a),(b)を参照して説明する。モードm3では、S相が最大電圧相、R相が最小電圧相、T相が中間電圧相となる。R,S,T相のパルスのON、OFF順序を変えずに、最大電圧相と最小電圧相でそれぞれの電位に比例する時間をONとするため、モードm3では、R相電圧|a|と電圧(|a|+|b|−1)と鋸歯状波W11とを用いて、図7(b)に示す各パルスのON,OFFタイミングを生成する。
ここで、線間電圧発生区間TS31、TS32、TS33の幅は、それぞれ、T×(1−|a|)、T(1−|b|)、T×(|a|+|b|−1)となる。すなわち、仮想AC/DC変換処理により、仮想的な直流電圧を生成するための、線間電圧発生区間TS31、TS32、TS33に対応した幅をそれぞれ有する仮想的な複数のスイッチング信号(R相パルス、S相パルス、T相パルス)が生成される。
ここで、仮想AC/DC変換処理における線間電圧発生区間TS31、TS32、TS33の直流電圧(図7(c)に示した選択2相間電圧)は、それぞれ、ST間電圧=b−c、TR間電圧=c−a、SR間電圧=b−aとなる。選択2相間電圧における2つの電圧相のうちレベルの大きい電圧相を+側相とし、レベルの小さい電圧相を−側相とすると、線間電圧発生区間TS31、TS32、TS33において、それぞれ、S相、T相、S相が+側相であり、T相、R相、R相が−側相である。位相情報生成部23は、時々刻々と、線間電圧発生区間φTS(TS31、TS32、TS33)を第2のキャリア波形パターン発生部24及びスイッチ制御部28に出力するとともに、+側相及び−側相をスイッチ制御部28に出力する。
ところで、モードm3でのスイッチング周期Tの直流電圧の平均は、次式(7)のように表すことができる。
スイッチング周期Tの直流電圧の平均={(b−c)×T×(1+a)+(−a+c)×T×(1−b)+(−a+b)×T×(−a+b−1)}/T
=a2+b2−c(a+b) ・・・(7)
ここで、a+b+c=0(3相条件)を考慮すると、式(7)は次式(8)に変形できる。
スイッチング周期Tの直流電圧の平均=a2+b2+c2 ・・・(8)
さらに、交流理論から、a2+b2+c2=3/2より、式(8)は次式(9)に変形できる。
スイッチング周期Tの直流電圧の平均=3/2 ・・・(9)
式(9)に示されるように、スイッチング周期Tの仮想的な直流電圧の平均を、一定電圧とすることができる。
モードm3における入力電流について説明する。最大電圧相のS相には、S相電圧bの時間に比例する正の電流が流れる。最小電圧相のR相には、R相電圧aの時間に比例する負の電流が流れる。T相は、線間電圧発生区間TS31で負の電流が流れ、線間電圧発生区間TS32で正の電流が流れる。このため、流れる電流は、T×(1−b)−T×(1+a)=Tcとなり、スイッチング周期Tで除するとT相電圧cとなる。従って、電圧に比例する電流が各相に流れ、入力交流電流の各相を正弦波とすることができる。
[モードm4〜m6]
モードm4における仮想AC/DC変換処理は、図8に示すように、モードm1における仮想AC/DC変換処理(図5参照)と同様である。線間電圧発生区間TS41、TS42、TS43も、モードm1と同様にして求められる。線間電圧発生区間TS41、TS42、TS43において、それぞれ、T相、T相、S相が+側相であり、S相、R相、R相が−側相である。
モードm5における仮想AC/DC変換処理は、図9に示すように、モードm2における仮想AC/DC変換処理(図6参照)と同様である。線間電圧発生区間TS51、TS52、TS53も、モードm2と同様にして求められる。線間電圧発生区間TS51、TS52、TS53において、それぞれ、T相、T相、R相が+側相であり、S相、R相、S相が−側相である。
モードm6における仮想AC/DC変換処理は、図10に示すように、モードm3における仮想AC/DC変換処理(図7参照)と同様である。線間電圧発生区間TS61、TS62、TS63も、モードm3と同様にして求められる。線間電圧発生区間TS61、TS62、TS63において、それぞれ、T相、R相、R相が+側相であり、S相、T相、S相が−側相である。
(具体的な仮想DC/DC変換処理)
次に、複数のモードm1〜m6のそれぞれにおける仮想DC/DC変換処理について、図5〜10を参照して説明する。まず、第2のキャリア波形パターン発生部24は、図5(e),(f)〜図10(e),(f)に示すように、モードm1〜m6に対応して、第2のキャリア波形パターンCW2(CW21〜CW26)を生成する。第2のキャリア波形パターンCW2は、複数の線間電圧発生区間φTSのうち連続する2つの線間電圧発生区間に跨って山型にレベルが変化するパターンを有するように決定される。また、第2のキャリア波形パターンCW2は、複数の線間電圧発生区間φTSが切り換わる際に+側相または−側相に共通する相がある場合、切り換わる2つの線間電圧発生区間に跨って山型にレベルが連続するパターンを有し、線間電圧発生区間φTSが切り換わる際に+側相と−側相との間で反転する相がある場合、切り換わる2つの線間電圧発生区間φTSの境界で鋸歯状にレベルが変化するパターンを有するように決定される。
[モードm1]
図5(e),(f)に示すように、モードm1では、第2のキャリア波形パターン発生部24が、仮想DC/DC変換処理に用いるべき第2のキャリア波形パターンCW1として、線間電圧発生区間TS11、TS12、TS13の順に立ち上がりの鋸歯状波、立ち下がりの鋸歯状波、立ち上がりの鋸歯状波を有する第2のキャリア波形パターンCW21を決定する。
[双方向スイッチSRP、SSP、STPのスイッチング]
PラインコンパレータCPは、第2のキャリア波形パターンCW21とPラインの信号レベルG1とを比較する。スイッチ制御部28は、PラインコンパレータCPの比較結果をもとに、Pラインに接続される双方向スイッチSRP、SSP、STPのスイッチングを制御する。この双方向スイッチSRP、SSP、STPのスイッチングは、Pラインの電圧に関し、それぞれR相パルス、S相パルス、T相パルスをPWM制御することに等しい。スイッチ制御部28は、図5(e)に示すように、線間電圧発生区間TS11において、PラインコンパレータCPの比較結果が、第2のキャリア波形パターンCW21よりPラインの信号レベルG1が大きい時点t1〜t12の間、+側相すなわちS相を選択し、スイッチング信号φSSPをONレベルにするとともに、Pラインに接続される他のスイッチング信号φSRP、φSTPをOFFレベルにする。一方、スイッチ制御部28は、線間電圧発生区間TS11において、PラインコンパレータCPの比較結果が、第2のキャリア波形パターンCW21よりPラインの信号レベルG1が小さい時点t12〜t13の間、−側相すなわちT相を選択し、スイッチング信号φSTPをONレベルにするとともにPラインに接続される他のスイッチング信号φSRP、φSSPをOFFレベルにする。
同様にして、スイッチ制御部28は、線間電圧発生区間TS12において、PラインコンパレータCPの比較結果が、第2のキャリア波形パターンCW21よりPラインの信号レベルG1が大きい場合、+側相すなわちR相を選択し、スイッチング信号φSRPをONレベルにするとともに、Pラインに接続される他のスイッチング信号φSSP,φSTPをOFFレベルにする。一方、スイッチ制御部28は、線間電圧発生区間TS12において、PラインコンパレータCPの比較結果が、第2のキャリア波形パターンCW21よりPラインの信号レベルG1が小さい場合、−側相すなわちT相を選択し、スイッチング信号φSTPをONレベルにするとともにPラインに接続される他のスイッチング信号φSRP,φSSPをOFFレベルにする。
さらに、スイッチ制御部28は、線間電圧発生区間TS13において、PラインコンパレータCPの比較結果が、第2のキャリア波形パターンCW21よりPラインの信号レベルG1が大きい場合、+側相すなわちR相を選択し、スイッチング信号φSRPをONレベルにするとともに、Pラインに接続される他のスイッチング信号φSSP,φSTPをOFFレベルにする。一方、スイッチ制御部28は、線間電圧発生区間TS13において、PラインコンパレータCPの比較結果が、第2のキャリア波形パターンCW21よりPラインの信号レベルG1が小さい場合、−側相すなわちS相を選択し、スイッチング信号φSSPをONレベルにするとともにPラインに接続される他のスイッチング信号φSRP,φSTPをOFFレベルにする。
[双方向スイッチSRN、SSN、STNのスイッチング]
一方、NラインコンパレータCNは、第2のキャリア波形パターンCW21とNラインの信号レベルG2とを比較する。スイッチ制御部28は、NラインコンパレータCNの比較結果をもとに、Nラインに接続される双方向スイッチSRN、SSN、STNのスイッチングを制御する。この双方向スイッチSRN、SSN、STNのスイッチングは、Nラインの電圧に関し、それぞれR相パルス、S相パルス、T相パルスをPWM制御することに等しい。スイッチ制御部28は、図5(f)に示すように、線間電圧発生区間TS11において、NラインコンパレータCNの比較結果が、第2のキャリア波形パターンCW21よりNラインの信号レベルG2が大きい時点t1〜t11の間、+側相すなわちS相を選択し、スイッチング信号φSSNをONレベルにするとともに、Nラインに接続される他のスイッチング信号φSRN、φSTNをOFFレベルにする。一方、スイッチ制御部28は、線間電圧発生区間TS11において、NラインコンパレータCNの比較結果が、第2のキャリア波形パターンCW21よりNラインの信号レベルG2が小さい時点t11〜t13の間、−側相すなわちT相を選択し、スイッチング信号φSTNをONレベルにするとともにNラインに接続される他のスイッチング信号φSRN,φSSNをOFFレベルにする。
同様にして、スイッチ制御部28は、線間電圧発生区間TS12において、NラインコンパレータCNの比較結果が、第2のキャリア波形パターンCW21よりNラインの信号レベルG2が大きい場合、+側相すなわちR相を選択し、スイッチング信号φSRNをONレベルにするとともに、Nラインに接続される他のスイッチング信号φSSN、φSTNをOFFレベルにする。一方、スイッチ制御部28は、線間電圧発生区間TS12において、NラインコンパレータCNの比較結果が、第2のキャリア波形パターンCW21よりNラインの信号レベルG2が小さい場合、−側相すなわちT相を選択し、スイッチング信号φSTNをONレベルにするとともにNラインに接続される他のスイッチング信号φSRN、φSSNをOFFレベルにする。
さらに、スイッチ制御部28は、線間電圧発生区間TS13において、NラインコンパレータCNの比較結果が、第2のキャリア波形パターンCW21よりNラインの信号レベルG2が大きい場合、+側相すなわちR相を選択し、スイッチング信号φSRNをONレベルにするとともに、Nラインに接続される他のスイッチング信号φSSN、φSTNをOFFレベルにする。一方、スイッチ制御部28は、線間電圧発生区間TS13において、NラインコンパレータCNの比較結果が、第2のキャリア波形パターンCW21よりNラインの信号レベルG2が小さい場合、−側相すなわちS相を選択し、スイッチング信号φSSNをONレベルにするとともにNラインに接続される他のスイッチング信号φSRN、φSTNをOFFレベルにする。
なお、上述したスイッチ制御部28による、双方向スイッチSRP、SSP、STP、SRN、SSN、STNのスイッチングは、実際のスイッチング制御である。
[PN線間電圧の平均直流電圧]
ここで、スイッチング信号φSRPのパルス幅は、R相パルスのパルス幅x(図5(b)参照)を、Pラインの信号レベルG1(信号レベルh)に比例して縮めたhxとなる。また、スイッチング信号φSSPのパルス幅は、S相パルスのパルス幅y(図5(b)参照)を、Pラインの信号レベルG1(信号レベルh)に比例して縮めたhyとなる。また、スイッチング信号φSTPのパルス幅は、T相パルスのパルス幅z(図5(b)参照)を、Pラインの信号レベルG1(信号レベルh)に比例して縮めたhzとなる。
また、各スイッチング信号φSRP、φSSP、φSTPは、択一的にONしているので、各スイッチング信号φSRP、φSSP、φSTPのパルス幅の期間では、それぞれ、R相電圧a、S相電圧b、T相電圧cが発生する。スイッチング周期Tの平均直流電圧Vaveは、それぞれの期間ごとに電圧を積算しそれぞれを加算してスイッチング周期Tで除して、次式(10)のように表すことができる。
スイッチング周期TのPライン出力電圧の平均
={a(hx)+b(hy)+c(hz)}/T
=h(ax+by+cz)/T ・・・(10)
上記より、R相のパルス幅x=T|a|、S相のパルス幅y=T|b|、T相のパルス幅z=T|c|であるから、式(10)は次式(11)に変形できる。
スイッチング周期TのPライン出力電圧の平均=h(a2+b2+c2) ・・・(11)
さらに、交流理論から、a2+b2+c2=3/2より、式(11)は次式(12)に変形できる。
スイッチング周期TのPライン出力電圧の平均=h×3/2 ・・・(12)
同様にして、スイッチング信号φSRNのパルス幅は、R相パルスのパルス幅x(図5(b)参照)を、Nライン制御信号G2の信号レベル−hに比例して縮めた−hxの絶対値となる。また、スイッチング信号φSSNのパルス幅は、S相パルスのパルス幅y(図5(b)参照)を、Nライン制御信号G2の信号レベル−hに比例して縮めた−hyの絶対値となる。また、スイッチング信号φSTNのパルス幅は、T相パルスのパルス幅z(図5(b)参照)を、Nライン制御信号G2の信号レベル−hに比例して縮めた−hzの絶対値となる。
したがって、スイッチング周期TのNライン出力電圧の平均は、次式(13)で表せる。
スイッチング周期TのNライン出力電圧の平均
={a(−hx)+b(−hy)+c(−hz)}/T
=−h(ax+by+cz)/T ・・・(13)
上記より、R相のパルス幅x=T|a|、S相のパルス幅y=T|b|、T相のパルス幅z=T|c|であるから、式(13)は式(14)に変形できる。
スイッチング周期TのNライン出力電圧の平均=−h(a2+b2+c2)・・・(14)
さらに、交流理論から、a2+b2+c2=3/2より、式(14)は次式(15)に変形できる。
スイッチング周期TのNライン出力電圧の平均=−h×3/2 ・・・(15)
この結果、スイッチング周期TのPライン出力電圧の平均と、Nライン出力電圧の平均とは、ともに、信号レベルh、−hに比例したものとなる。なお、スイッチング周期T(t1〜t2)におけるPN線間電圧は、図5(h)に示すように、スイッチング信号φSRP、φSSP、φSTPからスイッチング信号φSRN、φSSN、φSTNを減算した信号パターンとなる。
また、PラインとNラインとの間のPN線間電圧の平均は、式(12)の値から式(15)の値を減算して、次式(16)で表せる。
PN線間電圧の平均直流電圧Vave=h×3/2−(−h×3/2)
=h×3 ・・・(16)
したがって、PN線間電圧の平均直流電圧Vaveは、信号レベルhに比例したものとなる。
なお、図5に示すように、上述したスイッチング周期Tでは、Pラインの信号レベルG1が+hで、Nラインの信号レベルG2が−hであったが、Nラインの信号レベルG2の値を常に0に設定してもよい。
[モードm2〜m6]
モードm2では、図6(e),(f)に示すように、第2のキャリア波形パターン発生部24が、仮想DC/DC変換処理に用いるべき第2のキャリア波形パターンCW2として、線間電圧発生区間TS21,TS22,TS23の順に立ち上がりの鋸歯状波、立ち下がりの鋸歯状波、立ち下がりの鋸歯状波を有する第2のキャリア波形パターンCW22を決定する。
モードm2では、モードm1と同様に、PラインコンパレータCPは、図6(e)に示すように、第2のキャリア波形パターンCW22とPラインの信号レベルG1とを比較する。そして、スイッチ制御部28は、図6(g)に示すように、PラインコンパレータCPの比較結果をもとに、Pラインに接続される双方向スイッチSRP、SSP、STPのスイッチングを制御する。また、NラインコンパレータCNは、図6(f)に示すように、第2のキャリア波形パターンCW22とNラインの信号レベルG2とを比較する。そして、スイッチ制御部28は、図6(g)に示すように、NラインコンパレータCNの比較結果をもとに、Nラインに接続される双方向スイッチSRN、SSN、STNのスイッチングを制御する。その結果、図6(h)に示すように、モードm2におけるPN線間電圧が生成される。また、各スイッチング周期TでのPN線間電圧の平均直流電圧Vaveは、信号レベルh、−hに比例したものとなる。さらに、上述したように、平均直流電圧VaveとPN相間電圧Vbとの大小関係をもとに、Pラインの電流方向及び電流値が決定される。例えば、信号レベルG1が0.5で信号レベルG2が−0.5のときの平均直流電圧VaveがPN相間電圧Vbと同じ値である場合、信号レベルG1を0.5より大きくし、信号レベルG2を−0.5よりも小さくすることによって、平均直流電圧VaveはPN相間電圧Vbを超える。そして、このときは、3相交流電源PS側から蓄電池LD側に電流が流れることになる。
モードm3では、図7(e),(f)に示すように、第2のキャリア波形パターン発生部24が、仮想DC/DC変換処理に用いるべき第2のキャリア波形パターンCW2として、線間電圧発生区間TS31,TS32,TS33の順に立ち上がりの鋸歯状波、立ち上がりの鋸歯状波、立ち下がりの鋸歯状波を有する第2のキャリア波形パターンCW23を決定する。
モードm3では、モードm1と同様に、PラインコンパレータCPは、図7(e)に示すように、第2のキャリア波形パターンCW23とPラインの信号レベルG1とを比較する。そして、スイッチ制御部28は、図7(g)に示すように、PラインコンパレータCPの比較結果をもとに、Pラインに接続される双方向スイッチSRP、SSP、STPのスイッチングを制御する。また、NラインコンパレータCNは、図7(f)に示すように、第2のキャリア波形パターンCW23とNラインの信号レベルG2とを比較する。そして、スイッチ制御部28は、図7(g)に示すように、NラインコンパレータCNの比較結果をもとに、Nラインに接続される双方向スイッチSRN、SSN、STNのスイッチングを制御する。その結果、図7(h)に示すように、モードm3におけるPN線間電圧が生成される。また、各スイッチング周期TでのPN線間電圧の平均直流電圧Vaveは、信号レベルh、−hに比例したものとなる。さらに、上述したように、平均直流電圧VaveとPN相間電圧Vbとの大小関係をもとに、Pラインの電流方向及び電流値が決定される。
モードm4では、図8(e),(f)に示すように、第2のキャリア波形パターン発生部24が、仮想DC/DC変換処理に用いるべき第2のキャリア波形パターンCW2として、線間電圧発生区間TS41,TS42,TS43の順に立ち下がりの鋸歯状波、立ち上がりの鋸歯状波、立ち下がりの鋸歯状波を有する第2のキャリア波形パターンCW24を決定する。
モードm4では、モードm1と同様に、PラインコンパレータCPは、図8(e)に示すように、第2のキャリア波形パターンCW24とPラインの信号レベルG1とを比較する。そして、スイッチ制御部28は、図8(g)に示すように、PラインコンパレータCPの比較結果をもとに、Pラインに接続される双方向スイッチSRP、SSP、STPのスイッチングを制御する。また、NラインコンパレータCNは、図8(f)に示すように、第2のキャリア波形パターンCW24とNラインの信号レベルG2とを比較する。そして、スイッチ制御部28は、図8(g)に示すように、NラインコンパレータCNの比較結果をもとに、Nラインに接続される双方向スイッチSRN、SSN、STNのスイッチングを制御する。その結果、図8(h)に示すように、モードm4におけるPN線間電圧が生成される。また、各スイッチング周期TでのPN線間電圧の平均直流電圧Vaveは、信号レベルh、−hに比例したものとなる。さらに、上述したように、平均直流電圧VaveとPN相間電圧Vbとの大小関係をもとに、Pラインの電流方向及び電流値が決定される。
モードm5では、図9(e),(f)に示すように、第2のキャリア波形パターン発生部24が、仮想DC/DC変換処理に用いるべき第2のキャリア波形パターンCW2として、線間電圧発生区間TS51,TS52,TS53の順に立ち下がりの鋸歯状波、立ち上がりの鋸歯状波、立ち上がりの鋸歯状波を有する第2のキャリア波形パターンCW25を決定する。
モードm5では、モードm1と同様に、PラインコンパレータCPは、図9(e)に示すように、第2のキャリア波形パターンCW25とPラインの信号レベルG1とを比較する。そして、スイッチ制御部28は、図9(g)に示すように、PラインコンパレータCPの比較結果をもとに、Pラインに接続される双方向スイッチSRP、SSP、STPのスイッチングを制御する。また、NラインコンパレータCNは、図9(f)に示すように、第2のキャリア波形パターンCW25とNラインの信号レベルG2とを比較する。そして、スイッチ制御部28は、図9(g)に示すように、NラインコンパレータCNの比較結果をもとに、Nラインに接続される双方向スイッチSRN、SSN、STNのスイッチングを制御する。その結果、図9(h)に示すように、モードm5におけるPN線間電圧が生成される。また、各スイッチング周期TでのPN線間電圧の平均直流電圧Vaveは、信号レベルh、−hに比例したものとなる。さらに、上述したように、平均直流電圧VaveとPN相間電圧Vbとの大小関係をもとに、Pラインの電流方向及び電流値が決定される。
モードm6では、図10(e),(f)に示すように、第2のキャリア波形パターン発生部24が、仮想DC/DC変換処理に用いるべき第2のキャリア波形パターンCW2として、線間電圧発生区間TS61,TS62,TS63の順に立ち下がりの鋸歯状波、立ち下がりの鋸歯状波、立ち上がりの鋸歯状波を有する第2のキャリア波形パターンCW26を決定する。
モードm6では、モードm1と同様に、PラインコンパレータCPは、図10(e)に示すように、第2のキャリア波形パターンCW26とPラインの信号レベルG1とを比較する。そして、スイッチ制御部28は、図10(g)に示すように、PラインコンパレータCPの比較結果をもとに、Pラインに接続される双方向スイッチSRP、SSP、STPのスイッチングを制御する。また、NラインコンパレータCNは、図10(f)に示すように、第2のキャリア波形パターンCW26とNラインの信号レベルG2とを比較する。そして、スイッチ制御部28は、図10(g)に示すように、NラインコンパレータCNの比較結果をもとに、Nラインに接続される双方向スイッチSRN、SSN、STNのスイッチングを制御する。その結果、図10(h)に示すように、モードm6におけるPN線間電圧が生成される。また、各スイッチング周期TでのPN線間電圧の平均直流電圧Vaveは、信号レベルh、−hに比例したものとなる。さらに、上述したように、平均直流電圧VaveとPN相間電圧Vbとの大小関係をもとに、Pラインの電流方向及び電流値が決定される。
この結果、直流/交流系統連系装置である3相/直流マトリクスコンバータ1は、図3に示すように、電流設定部50が指示する電流設定値(電流方向F/Bと電流値A)となるように、信号レベルG1,G2の値が調整され、平均直流電圧VaveとPN相間電圧Vbとの大小関係をもとに、Pラインの電流方向及び電流値が制御される。すなわち、電流方向Fとなる場合には、電力量Aで、3相交流電力が蓄電池LD側に供給され、電流方向Bとなる場合には、電力量Aで、蓄電池LDの直流電力が3相交流電源PS側に供給される。
なお、図1に示した電流検出部51は、電流方向のみをスイッチ制御部28に入力する。制御部20は、電流方向に対応したスイッチング順序とする必要があるからである。
また、上述した3相/直流マトリクスコンバータ1では、スイッチング信号φSRP、φSSP、φSTPは、第2のキャリア波形パターンCW2によって変調されるが、この変調によって、R相、S相、T相に対するスイッチングが順次、R相→S相→T相→R相…のように所定順序で重複せずに、整然とつながるように変調されるため、転流の失敗を抑制できる。また、スイッチング信号φSRN、φSSN、φSTNのスイッチングも同様に整然とつながるように変調されるため、転流の失敗を抑制することができる。
また、スイッチング信号φSRP、φSSP、φSTP、φSRN、φSSN、φSTNのパルス幅は、双方向スイッチ群SWのスイッチング周波数限界の周期よりも大きいことが好ましい。これにより、パルス幅が双方向スイッチ群SWのスイッチング時間限界より長く確保されるため、転流の失敗を抑制できる。
(スイッチング回数の抑制)
ここで、スイッチング周期T内における双方向スイッチ群SWのスイッチング回数の抑制について説明する。仮想DC/DC変換処理では、1つのキャリア波形パターンの間(スイッチング周期T)に入力側の3種類のパルス(R相パルス、S相パルス、T相パルス)を3種類の線間電圧発生区間φTSごとに出力側(Pライン、Nライン)に変調することになる。
仮に、1つのキャリア波形パターンを3種類の線間電圧発生区間φTSごとに同様の三角波で構成する場合、双方向スイッチSRP〜STNについてスイッチング周期Tごとに3回のスイッチング回数が必要となる。
これに対し、本3相/直流マトリクスコンバータ1では、図5〜図10に示すように、それぞれの入力電圧相の選択(+側相、−側相)をみるとR相、S相、T相が、1つのキャリア波形パターンについて重なりを持ちながら現れる。すなわち、図5〜図10の(e)、(f)に示す複数の第2のキャリア波形パターンCW21〜CW26のそれぞれは、複数の線間電圧発生区間のうち連続する2つの区間に跨って山型にレベルが変化するパターンを有する。なお、各モードm1〜m6は、複数のスイッチング周期Tを含む。
例えば、図5(e)、(f)に示すように、第2のキャリア波形パターンCW21は、線間電圧発生区間TS11、TS12に跨って上側に山型にレベルが変化するパターンを有し、線間電圧発生区間TS12、TS13に跨って下側に山型にレベルが変化するパターンを有する。
また、図6(e)、(f)に示すように、第2のキャリア波形パターンCW22は、線間電圧発生区間TS21、TS22に跨って上側に山型にレベルが変化するパターンを有し、線間電圧発生区間TS23、TS21に跨って下側に山型にレベルが変化するパターンを有する。
また、図7(e)、(f)に示すように、第2のキャリア波形パターンCW23は、線間電圧発生区間TS32、TS33に跨って上側に山型にレベルが変化するパターンを有し、線間電圧発生区間TS33、TS31に跨って下側に山型にレベルが変化するパターンを有する。
また、図8(e)、(f)に示すように、第2のキャリア波形パターンCW24は、線間電圧発生区間TS42、TS43に跨って上側に山型にレベルが変化するパターンを有し、線間電圧発生区間TS41、TS42に跨って下側に山型にレベルが変化するパターンを有する。
また、図9(e)、(f)に示すように、第2のキャリア波形パターンCW25は、線間電圧発生区間TS53、TS51に跨って上側に山型にレベルが変化するパターンを有し、線間電圧発生区間TS51、TS52に跨って下側に山型にレベルが変化するパターンを有する。
また、図10(e)、(f)に示すように、第2のキャリア波形パターンCW26は、線間電圧発生区間TS63、TS61に跨って上側に山型にレベルが変化するパターンを有し、線間電圧発生区間TS62、TS63に跨って下側に山型にレベルが変化するパターンを有する。
より具体的には、各第2のキャリア波形パターンCW21〜CW26は、複数の線間電圧発生区間のそれぞれにおける2つの電圧相のうち電圧値の大きい電圧相を+側相とし電圧値の小さい電圧相を−側相とするとき、線間電圧発生区間が切り換わる際に+側相または−側相に共通する相がある場合、切り換わる2つの線間電圧発生区間に跨って山型にレベルが連続するパターンを有し、線間電圧発生区間が切り換わる際に+側相と−側相との間で反転する相がある場合、切り換わる2つの線間電圧発生区間の境界で鋸歯状にレベルが変化するパターンを有する。
例えば、第2のキャリア波形パターンCW21は、線間電圧発生区間TS11、TS12について−側相に共通するT相があるので、線間電圧発生区間TS11、TS12に跨って上側に山型にレベルが変化するパターンを有する。第2のキャリア波形パターンCW21は、線間電圧発生区間TS12、TS13について+側相に共通するR相があるので、線間電圧発生区間TS12、TS13に跨って下側に山型にレベルが変化するパターンを有する。第2のキャリア波形パターンCW21は、線間電圧発生区間TS13、TS11について+側相と−側相との間で反転するS相があるので、線間電圧発生区間TS13、TS11の境界で鋸歯状にレベルが変化するパターンを有する。
また、第2のキャリア波形パターンCW22は、線間電圧発生区間TS21、TS22について−側相に共通するT相があるので、線間電圧発生区間TS21、TS22に跨って上側に山型にレベルが変化するパターンを有する。第2のキャリア波形パターンCW22は、線間電圧発生区間TS22、TS23について+側相と−側相との間で反転するR相があるので、線間電圧発生区間TS22、TS23の境界で鋸歯状にレベルが変化するパターンを有する。第2のキャリア波形パターンCW22は、線間電圧発生区間TS23、TS21について+側相に共通するS相があるので、線間電圧発生区間TS23、TS21に跨って下側に山型にレベルが変化するパターンを有する。
また、第2のキャリア波形パターンCW23は、線間電圧発生区間TS31、TS32について+側相と−側相との間で反転するT相があるので、線間電圧発生区間TS31、TS32の境界で鋸歯状にレベルが変化するパターンを有する。第2のキャリア波形パターンCW23は、線間電圧発生区間TS32、TS33について−側相に共通するR相があるので、線間電圧発生区間TS32、TS33に跨って上側に山型にレベルが変化するパターンを有する。第2のキャリア波形パターンCW23は、線間電圧発生区間TS33、TS31について+側相に共通するS相があるので、線間電圧発生区間TS33、TS31に跨って下側に山型にレベルが変化するパターンを有する。
また、第2のキャリア波形パターンCW24は、線間電圧発生区間TS41、TS42について+側相に共通するT相があるので、線間電圧発生区間TS41、TS42に跨って下側に山型にレベルが変化するパターンを有する。第2のキャリア波形パターンCW24は、線間電圧発生区間TS42、TS43について−側相に共通するR相があるので、線間電圧発生区間TS42、TS43に跨って上側に山型にレベルが変化するパターンを有する。第2のキャリア波形パターンCW24は、線間電圧発生区間TS43、TS41について+側相と−側相との間で反転するS相があるので、線間電圧発生区間TS43、TS41の境界で鋸歯状にレベルが変化するパターンを有する。
また、第2のキャリア波形パターンCW25は、線間電圧発生区間TS51、TS52について+側相に共通するT相があるので、線間電圧発生区間TS51、TS52に跨って下側に山型にレベルが変化するパターンを有する。第2のキャリア波形パターンCW25は、線間電圧発生区間TS52、TS53について+側相と−側相との間で反転するR相があるので、線間電圧発生区間TS52、TS53の境界で鋸歯状にレベルが変化するパターンを有する。第2のキャリア波形パターンCW25は、線間電圧発生区間TS53、TS51について−側相に共通するS相があるので、線間電圧発生区間TS53、TS51に跨って上側に山型にレベルが変化するパターンを有する。
また、第2のキャリア波形パターンCW26は、線間電圧発生区間TS61、TS62について+側相と−側相との間で反転するT相があるので、線間電圧発生区間TS61、TS62の境界で鋸歯状にレベルが変化するパターンを有する。第2のキャリア波形パターンCW26は、線間電圧発生区間TS62、TS63について+側相に共通するR相があるので、線間電圧発生区間TS62、TS63に跨って下側に山型にレベルが変化するパターンを有する。第2のキャリア波形パターンCW26は、線間電圧発生区間TS63、TS61について−側相に共通するS相があるので、線間電圧発生区間TS63、TS61に跨って上側に山型にレベルが変化するパターンを有する。
さらに、各第2のキャリア波形パターンCW21〜CW26は、複数の線間電圧発生区間のそれぞれにおける2つの電圧相のうちレベルの大きい電圧相を+側相としレベルの小さい電圧相を−側相とするとき、モードが切り換わる際に+側相または−側相に共通する相がある場合、切り換わる2つのモードに跨って山型にレベルが連続するパターンを有し、モードが切り換わる際に+側相と−側相との間で反転する相がある場合、切り換わる2つのモードの境界で鋸歯状にレベルが変化するパターンを有する。
例えば、モードm1からモードm2に切り換わる際に、線間電圧発生区間TS13、TS21について+側相と−側相との間で反転するS相があるので、線間電圧発生区間TS13、TS21の境界で鋸歯状にレベルが変化するパターンを有する。
また、モードm2からモードm3に切り換わる際に、線間電圧発生区間TS23、TS31について+側相に共通するS相があるので、線間電圧発生区間TS23、TS31に跨って下側に山型にレベルが変化するパターンを有する。
また、モードm3からモードm4に切り換わる際に、線間電圧発生区間TS33、TS41について+側相と−側相との間で反転するS相があるので、線間電圧発生区間TS33、TS41の境界で鋸歯状にレベルが変化するパターンを有する。
また、モードm4からモードm5に切り換わる際に、線間電圧発生区間TS43、TS51について+側相と−側相との間で反転するS相があるので、線間電圧発生区間TS43、TS51の境界で鋸歯状にレベルが変化するパターンを有する。
また、モードm5からモードm6に切り換わる際に、線間電圧発生区間TS53、TS61について−側相に共通するS相があるので、線間電圧発生区間TS53、TS61に跨って上側に山型にレベルが変化するパターンを有する。
このように、立ち上がりと立ち下がりの鋸歯状波を組み合わせて1つのキャリア波形パターン(第2のキャリア波形パターンCW2)を構成することで、各スイッチング周期Tにおける各相の選択が1回になるようにすることができる。すなわち、最大電圧相は、必ず+側相であり、最小電圧相は、必ず−側相である。中間電圧相は、最大電圧相に対しては、−側相となり、最小電圧相に対しては、+側相になる。+側相は、第2の制御信号(例えば、Pライン制御信号G1)が第2のキャリア波形パターンCW2より大きくなる期間を選択し、−側相は、第2の制御信号(例えば、Pライン制御信号G1)が第2のキャリア波形パターンCW2より小さくなる期間を選択するようにする。この場合、下側に山型になるように立ち下がりの鋸歯状波と立ち上がりの鋸歯状波とを連続させると最大電圧相の選択は1回で済む。また、上側に山型になるように立ち上がりの鋸歯状波と立ち下がりの鋸歯状波とを連続させると最小電圧相の選択は1回で済む。これにより、各モード内において、各双方向スイッチSRP〜STNについてスイッチング周期Tごとに1回のスイッチング回数を実現できる。また、モードが切り換わる際においても、実質的に、各双方向スイッチSRP〜STNについてスイッチング周期Tごとに1回のスイッチング回数を実現できる。言い換えると、各モード内とモード間の切り換わりとで、同様の制御を実現できるので、切り替わりに伴う断続により発生する出力電圧の揺らぎ(デッドタイム等による揺らぎ)を低減でき、切り替わり目のショックも低減できる。
また、複数の線間電圧発生区間に跨って各双方向スイッチSRP〜STPのスイッチング信号φSRP〜φSTPをONレベルに維持できるので、図5〜図10の(g)に示すように、双方向スイッチSRP〜STPのスイッチング信号φSRP〜φSTPのパルス幅を広く確保できる。なお、双方向スイッチSRN〜STNのスイッチング信号φSRN〜φSTNについても同様である。すなわち、パルス幅を低負荷時でもデッドタイムに比べて大きく確保できるので、低負荷時における波形の歪率を高負荷時と同等程度に抑制できる。
なお、上述した3相/直流マトリクスコンバータ1における仮想AC/DC変換処理では、各スイッチング周期Tの出力電圧の平均は常に一定である。また、直流電流は、入力電圧の比で入力電流に分配される。さらに、出力電力が一定の時、この入力電流は、3相交流波形(例えば、正弦波)となる。
すなわち、
1)仮想AC/DC変換処理における入力電流は、仮想DC/DC変換処理による出力電力が一定である時、3相交流波形(例えば、正弦波)とすることができる。通常、短時間(0.1秒程度)では、電力は一定である。
2)仮想DC/DC変換処理による出力電圧は、変調信号(第2の制御信号)と同様な信号で得ることができる。
(実験結果)
図11は、電流方向F、すなわち3相交流電源PS側から蓄電池LD側に電力を供給する場合における各部の電流及び電圧の変化を示すタイミングチャートである。図11(a)は、R相の電圧VRを示している。系統相電圧は、実効値で115Vである。図11(b)に示した電流IRは、R相の電流IRを示している。図11(c)に示した平均直流電圧Vaveは、上述したように、例えば図5(h)に示したスイッチング周期Tの平均電圧である。この平均直流電圧Vaveは実質、85Vの直流電圧に相当しており、図11(e)に示した蓄電池LD側のPN相間電圧Vb(=80V)に比して大きくなっている。そして、図11(d)に示すように、蓄電池LD側に流れる電流Ibは、25Aである。
一方、図12は、電流方向B、すなわち蓄電池LD側から3相交流電源PS側に電力を供給する場合における各部の電流及び電圧の変化を示すタイミングチャートである。図12(a)は、R相の電圧VRを示している。系統相電圧は、115Vである。図12(b)に示した電流IRは、R相の電流IRを示している。図12(c)に示した平均直流電圧Vaveは、上述したように、例えば図5(h)に示したスイッチング周期Tの平均電圧である。この平均直流電圧Vaveは実質、75Vの直流電圧に相当しており、図12(e)に示した蓄電池LD側のPN相間電圧Vb(=80V)に比して小さくなっている。そして、図12(d)に示すように、蓄電池LD側から3相交流電源PS側に流れる電流Ibは、電流方向を加味して−25Aとなっている。なお、電流IRは、電圧VRに対して位相がずれており、負の電力となっている。
この3相/直流マトリクスコンバータ1では、蓄電池LD側の直流電圧を系統電圧以上に上げなくてもDC/DC変換が可能となるので、昇圧チョッパが不要となる。また、上述した3相/直流マトリクスコンバータ1では、従来、3相交流電源側の各相に3つのリアクトルを設けていたが、入出力3相交流は正弦波となるため、この3つのリアクトルは不要となり、蓄電池LD側に配置した1つのリアクトル30を設けるのみでよい。さらに、上述した3相/直流マトリクスコンバータ1では、蓄電池LDに対する充放電は、PN相間電圧Vbと平均直流電圧Vaveとの大きさを設定制御するのみで容易に行うことができる。
また、上述した3相/直流マトリクスコンバータ1では、制御部20は、入力された3相交流電力に対して、入力された3相交流電力における各相の電圧の大小関係に応じて区分された複数のモードm1〜m6に応じて異なる仮想AC/DC変換処理を行い、仮想AC/DC変換処理が行われた電力に対して、複数のモードm1〜m6に応じて異なる仮想DC/DC変換処理を行うように、双方向スイッチ回路10のスイッチングパターンを生成する。具体的には、制御部20は、入力された3相交流電力に対して、複数のモードm1〜m6に応じて異なる第1のキャリア波形パターンCW11〜CW13を用いて仮想AC/DC変換処理を行い、仮想AC/DC変換処理が行われた電力に対して、複数のモードm1〜m6に応じて異なる第2のキャリア波形パターンCW21〜CW26を用いて仮想DC/DC変換処理を行うように、双方向スイッチ回路10のスイッチングパターンを生成する。これにより、マトリクス演算のような複雑な演算を行うことなく、簡易な処理で3相交流電力と直流電力との間の電力変換を相互、かつ、直接に行うことができる。
また、上述した3相/直流マトリクスコンバータ1では、制御部20は、複数のモードm1〜m6のそれぞれにおいて、第1のキャリア波形パターンCW11〜CW13と入力側の相(R相、S相、T相)に対応した第1の制御信号GG(例えば、図5〜図10の(a)に示した電圧|a|、電圧|c|、電圧(|b|+|c|−1)、電圧(|a|+|b|−1))とを比較して、複数の線間電圧発生区間TS11〜TS63を求める。そして、制御部20は、複数の線間電圧発生区間TS11〜TS63に対応した第2のキャリア波形パターンCW21〜CW26を生成し、生成された第2のキャリア波形パターンCW21〜CW26と出力側(Pライン、Nライン)に対応した第2の制御信号(例えば、図5〜図10の(e)、(f)に示したPラインの信号レベルG1、Nラインの信号レベルG2)とを比較して、双方向スイッチ回路10のスイッチングパターンを生成する。これにより、複雑なマトリクス演算を行うことなく、仮想AC/DC変換処理及び仮想DC/DC変換処理を簡易に行うことができる。
さらに、上述した3相/直流マトリクスコンバータ1では、制御部20は、入力された3相交流電力における最大電圧相、最小電圧相、及び中間電圧相を認識する。そして、制御部20は、1スイッチング周期T中の複数の線間電圧発生区間を、中間電圧相及び最小電圧相に対応した第1の区間と、最大電圧相及び最小電圧相に対応した第2の区間と、最大電圧相及び中間電圧相に対応した第3の区間とに分けて求める。第1の区間は、例えば、図5〜図10に示す線間電圧発生区間TS11、TS22、TS32、TS43、TS53、TS61を含む。第2の区間は、例えば、図5〜図10に示す線間電圧発生区間TS12、TS21、TS33、TS42、TS51、TS63を含む。第3の区間は、例えば、図5〜図10に示す線間電圧発生区間TS13、TS23、TS31、TS41、TS52、TS62を含む。従って、1スイッチング周期T中に最大−最小、最大−中間、中間−最小の3種類の線間電圧を仮想的に発生でき、電流の引き算等の物理現象を利用してその仮想的な線間電圧により仮想的な直流電圧を略一定にすることができ、略一定の仮想的な直流電圧から、各々の電圧区間で作成する第2のキャリア波形パターンと第2の制御信号G1,G2とをコンパレートしてスイッチング信号を生成できる。これにより、第1の制御信号GGを正弦波とし、第2の制御信号G1,G2を直流とすることで、3相/直流マトリクスコンバータ1の入力電流を容易に正弦波とし、出力電圧を直流とすることができる。
また、上述した3相/直流マトリクスコンバータ1では、第2のキャリア波形パターンCW21〜CW26(図5〜図10の(e)、(f)参照)は、複数の線間電圧発生区間のうち連続する2つの区間に跨って山型にレベルが変化するパターンを有する。これにより、各スイッチング周期Tにおけるスイッチング回数を低減できるので、双方向スイッチ回路10における各双方向スイッチSRP〜STNのスイッチング損失を低減できる。
さらに、上述した3相/直流マトリクスコンバータ1では、第2のキャリア波形パターンCW21〜CW26(図5〜図10の(e)、(f)参照)が複数の線間電圧発生区間のうち連続する2つの区間に跨って山型にレベルが変化するパターンを有するので、双方向スイッチ回路10における各双方向スイッチSRP〜STNのスイッチング信号φSRP〜φSTNのパルス幅を容易に広く確保できる。これにより、転流の失敗を低減できる。また、電力の変換効率を向上できる。
また、上述した3相/直流マトリクスコンバータ1では、制御部20は、入力された3相交流電力における最大電圧相、最小電圧相、及び中間電圧相を認識する。制御部20により生成される第2のキャリア波形パターンCW21〜CW26は、複数の線間電圧発生区間のそれぞれにおける2つの電圧相のうちレベルの大きい電圧相を+側相としレベルの小さい電圧相を−側相とするとき、モードが切り換わる際に+側相または−側相に共通する相がある場合、切り換わる2つのモードに跨って山型にレベルが連続するパターンを有し、モードが切り換わる際に+側相と−側相との間で反転する相がある場合、切り換わる2つのモードの境界で鋸歯状にレベルが変化するパターンを有する。これにより、モードが切り換わる際においても、実質的に、各双方向スイッチSRP〜STNについてスイッチング周期Tごとに1回のスイッチング回数を実現できる。言い換えると、各モード内とモード間の切り換わりとで、同様の制御を実現できるので、切り替わり目のショックも低減できる。
さらに、上述した3相/直流マトリクスコンバータ1では、入力交流電圧の2相の交差点を差電圧のゼロクロス点として求め、このゼロクロス点を同期信号として各相の入力交流電圧を推定することもできる。この場合、各相の入力交流電圧を検出する場合に比べて、簡易に直流/交流系統連系装置を構成できる。
(同期信号検出部21の具体例)
まず、従来の同期信号検出部について説明する。図13は、従来の同期信号検出部の具体例を示すブロック図である。図13に示すように、従来の同期信号検出部は、PLL回路13を有する。PLL回路13は、発振部13a、第1の分周部13b、第2の分周部13c、位相比較部13d、及び生成部13eを有する。発振部13aは、基準信号(例えば、ゼロクロス信号)に応じた周波数で発振して、キャリア用クロックを生成する。発振部13aは、生成したキャリア用クロックを、第1の分周部13bに出力する。
第1の分周部13bは、Mを正の整数とするとき、キャリア用クロックをM(例えば、M=2N、Nは正の整数)分周して、6つのモードm1〜m6に対応した(例えば、6つのモードm1〜m6のそれぞれの周期と均等な周期を有する)モード周期クロックを生成する。第1の分周部13bは、例えば分周器13b1及び分周器13b2を有する。
例えば、P,Qを正の整数とし、N=P+Qとするとき、分周器13b1は、キャリア用クロックを2P分周して、キャリア周期クロックを生成する。分周器13b2は、キャリア周期クロックを2Q分周して、6つのモードm1〜m6に対応した(例えば、6つのモードm1〜m6のそれぞれの周期と均等な周期を有する)モード周期クロックを生成する。
第1の分周部13bの分周器13b2は、生成されたモード周期クロックを第2の分周部13cへ出力する。それとともに、第1の分周部13bの分周器13b2は、キャリア周期クロック、モード周期クロック、及びキャリア周期クロックからモード周期クロックまでの途中段階における分周クロック(以下、途中分周クロックという)をモード判定部14へ出力する。途中分周クロックは、キャリア周期クロックを繰り返し2分周してモード周期クロックを生成する際における複数の段階における分周クロックを含んでもよい。
第2の分周部13cは、モード周期クロックを6分周して、3相交流電源PSからの3相交流電力の周期に対応した(例えば、3相交流電力の周期と均等な周期を有する)追従信号を生成する。例えば、第2の分周部13cは、6分周器13c1を有する。6分周器13c1は、モード周期クロックを6分周して、追従信号を生成する。例えば、6つのモードの各周期は相電圧の1周期を6等分したものであるので、モード周期クロックを6分周することで、追従信号の周期を、相交流電源PSからの3相交流電力における相電圧の周期に対応したものとすることができる。
例えば、図14に示すように、6分周器13c1は、モード周期クロックを2分周した第1の分周クロックと、第1の分周クロックを2分周した第2の分周クロックと、第2の分周クロックを2分周した第3の分周クロック(追従信号)とを生成する。
このため、図13に示す6分周器13c1は、モード周期クロックを分周器13b2から受ける。6分周器13c1は、モード周期クロックを2分周して、第1の分周クロックを発生させる。6分周器13c1は、発生させた第1の分周クロックをさらに2分周して、第2の分周クロックを発生させる。6分周器13c1は、発生させた第2の分周クロックをさらに2分周して、第3の分周クロックを発生させる。このとき、図14に示すように、6分周器13c1は、第2の分周クロックの立ち上がりタイミングなどにより、モードm6からモードm1に戻るタイミングtcを認識できる。すなわち、6分周器13c1は、図14に示すタイミングtcにおいて、第1の分周クロック、第2の分周クロック、及び第3の分周クロックの各レベルをリセットする。例えば、タイミングtcにおいて、図14に示す破線のレベルを実線のレベルにリセットする。これにより、第3の分周クロックの周期がモード周期クロックの6クロック分となるので、第3の分周クロックを、モード周期クロックが6分周された追従信号とすることができる。
第2の分周部13cの6分周器13c1は、生成された第3の分周クロック(追従信号)を位相比較部13dへ出力する。それとともに、第2の分周部13cの6分周器13c1は、第1の分周クロック、第2の分周クロック、及び第3の分周クロック(追従信号)をモード判定部14へ出力する。
モード判定部14は、キャリア周期クロック、途中分周クロック、及びモード周期クロックを第1の分周部13bの分周器13b2から受け、第1の分周クロック、第2の分周クロック、及び第3の分周クロック(追従信号)を第2の分周部13cの6分周器13c1から受ける。モード判定部14は、第1の分周クロック、第2の分周クロック、及び第3の分周クロックの組み合わせに応じて、現在のモードmが6つのモードm1〜m6のいずれであるかを推定する。さらに、モード判定部14は、キャリア周期クロック、途中分周クロック、及びモード周期クロックの組み合わせに応じて、現在のタイミングが現在のモードにおけるどの時間位置(すなわち、図4の横軸における位置)にあるのかを推定する。そして、モード判定部14は、推定結果に応じて、各相の電圧を図4に示すように推定する。この各相の電圧が第1の制御信号GGである。
例えば、モード判定部14は、第1の分周クロック、第2の分周クロック、及び第3の分周クロックの各ビット値をまとめて現在の区間を示す第1のデータを生成する。モード判定部14は、キャリア用クロック、途中分周クロック、及びモード周期クロックの各ビット値をまとめて現在のタイミングを示す第2のデータを生成する。モード判定部14は、第1のデータ及び第2のデータをまとめて、時間位置データを生成する。そして、モード判定部14は、予め格納された正弦波データを参照し、生成された時間位置データに対応する各相の規格化振幅を特定し、特定された各相の規格化振幅を各相の電圧の推定結果とする。
位相比較部13dは、基準信号(例えば、ゼロクロス信号)をゼロクロス検出部12から受け、追従信号を第2の分周部13cから受ける。位相比較部13dは、基準信号の位相と追従信号の位相とを比較し、比較結果に応じた位相誤差信号を生成する。位相比較部13dは、例えば、位相差検出器13d1を有する。位相差検出器13d1は、基準信号の位相と追従信号の位相との位相差を検出し、検出された位相差に応じて位相誤差信号を生成する。位相比較部13dは、生成された位相誤差信号を生成部13eへ出力する。
生成部13eは、位相誤差信号を位相比較部13dから受ける。生成部13eは、位相誤差信号に応じて、発振制御信号を生成する。例えば、生成部13eは、追従信号が基準信号に比べて進み位相であることが位相誤差信号により示される場合、キャリア用クロックの周波数が高くなるように発振制御信号を生成する。例えば、生成部13eは、追従信号が基準信号に比べて遅れ位相であることが位相誤差信号により示される場合、キャリア用クロックの周波数が低くなるように発振制御信号を生成する。例えば、生成部13eは、フィルタ13e1を有する。フィルタ13e1は、例えば、位相誤差信号にローパスフィルタ処理を施すことで、発振制御信号を生成する。生成部13eは、生成された発振制御信号を発振部13aへ出力する。
これにより、発振部13aは、発振制御信号に基づいて、基準信号に応じた周波数で発振する。例えば、発振部13aは、発振器13a1及び分周器13a2を有する。発振器13a1は、発振制御信号に応じた周波数で発振して、内部クロックを生成する。発振器13a1は、生成された内部クロックを分周器13a2へ出力する。分周器13a2は、内部クロックを分周して(例えば、2分周して)キャリア用クロックを生成する。
PLL回路13では、位相差検出器13d1、フィルタ13e1、発振器13a1、分周器13a2、分周器13b1、分周器13b2、及び6分周器13c1を含む位相同期ループが形成されており、基準信号の位相と追従信号の位相とが一致した際に両者の位相関係がロック状態になる。すなわち、3相交流電源PSからの3相交流電力に対応した基準信号(ゼロクロス信号)の位相と、キャリア用クロックに対応して内部的に生成した追従信号とを同期させる。これにより、3相交流電源PSからの3相交流電力の周波数が変動したときに、その変動に追従することができる。すなわち、入力波形の変動に対して対応でき、入力波形の周期に応じて追従できる。
上述したように、従来は、図13に示したキャリア用クロックの周波数を変化させて追従信号を電源周波数(基準信号)に同期させていた。また、キャリア用クロックを受けた分周器13b1が生成したキャリア周期クロックを、スイッチング周期Tとして用いていた。したがって、スイッチング周期Tは、電源周波数(基準信号)に同期したものとなる。これに対し、本実施の形態では、図15に示すように、スイッチング周期TをPLL回路13から引き出さず、独立したスイッチング周期発生部29を設け、電源周波数の変動に影響を受けないスイッチング周期Tを発生している。なお、本実施の形態の同期信号検出部21は、図15に示したPLL回路13及びモード判定部14を有している。
(独立したスイッチング周期の作用)
図16は、電源周波数が変動した場合における電源周波数fに同期させた従来のスイッチング周期Tの変化を示す図である。図16に示すように、従来はキャリア用クロックの周波数を変化させてスイッチング周期Tを電源周期に同期させると共に、モードの切替周期(モード周期)に収まるスイッチング周期Tの数(Q個)を固定していた。従って、電源周波数が電源周波数f1から低い電源周波数f2(=f1/2:電源周波数f1の1/2)に変化した場合、モード周期は2倍となり、このモード周期に伴って、スイッチング周期T1は、2倍のスイッチング周期T2に変化する。
これに対し、図15、図17に示すように、本実施の形態では、スイッチング周期発生部29によって電源周波数とは独立した非同期のスイッチング周期を発生しているため、電源周波数が電源周波数f1から低い電源周波数f2(=f1/2:電源周波数f1の1/2)に変化した場合、モード周期は2倍となるが、スイッチング周期T1は変化しない。また、図17の場合、電源周波数f1のときの各モードにおけるスイッチング周期Tの数をQ個とすると、電源周波数f1より低い電源周波数f2に変化した場合、各モード周期は長くなり、各モードにおけるスイッチング周期Tの数は、Q´(>Q)個となる。
本実施の形態では、電源周波数が変化する場合であっても、所定のスイッチング周期を維持できる。従って、電源周波数が低くなる場合であっても、スイッチング周期が長くならないため、入力側に大きなフィルタを設けてスイッチング周期の変動に対応する措置を講じる必要がなくなる。
また、スイッチング周期発生部29の動作が電源周波数に依存しないため、スイッチング周期Tを容易かつ任意に設定することができる。
一方、本実施の形態では、モード周期に収まるスイッチング周期の数を固定しておらず、また、スイッチング周期Tが電源周波数、すなわちモード周期に同期していないため、図18に示すように、スイッチング周期Tがモードの切替時点t1を跨ぐ場合がある。本実施の形態では、このモードの切替時点t1を跨ぐ場合、切替時点t1を跨いだスイッチング周期T単位で実行する各処理、すなわち、第1のキャリア波形パターン発生部22、位相情報生成部23、及び、第2のキャリア波形パターン発生部24のスイッチング周期T単位で実行する各処理を、切替前のモードm1で1周期分、継続させる。そして、この継続したスイッチング周期T単位で実行する処理の終了時点t2で次のモードm2におけるスイッチング周期T単位で実行する各処理を行うようにする。
なお、スイッチング周期Tがモードの切替時点t1を跨ぐ場合にスイッチング周期T単位で実行する各処理(本実施の形態では、モードm1におけるスイッチング周期T単位で実行する各処理)を継続させ、次のスイッチング周期T単位で切替時点t1後のモード(本実施の形態では、モードm2)に応じた処理を行わせるためには、第1のキャリア波形パターン発生部22、位相情報生成部23、及び、第2のキャリア波形パターン発生部24は、スイッチング周期T単位の各更新点tsで、該各更新点tsのモードに対応した、スイッチング周期T単位で実行する処理を行えばよい。例えば、図18に示すように、終了時点t2より前の更新点群tsm1の各更新点tsはモードm1であるため、更新点群tsm1の更新点tsでは、モードm1に対応した、スイッチング周期T単位で実行する処理を行う。また、終了時点t2以降の更新点群tsm2の各更新点tsはモードm2であるため、更新点群tsm2の更新点tsでは、モードm2に対応した、スイッチング周期T単位で実行する処理を行う。
ところで、この切替時点t1を跨いだスイッチング周期Tにおける選択2相間電圧には、切替時点t1後に誤差が生じる。この誤差は、スイッチング周期Tの始めの時点での入力電圧の差によって生じる。例えば、モードm1からモードm2に跨るスイッチング周期Tでの処理では、モードm2の最初の入力電圧として本来の選択されるべきピーク値が選択されないため、入力電圧が減る。この入力電圧の減少が出力電圧の誤差となる。しかし、電源周期あるいはモード周期に比してスイッチング周期Tを十分短くすることによって、この誤差は無視することができる。
例えば、電源周波数fの電圧のピーク値を1に規格化して、COS(2πft)とすると、処理の切り替えが最大でスイッチング周期Tだけ遅れた(ずれた)場合、スイッチング周期Tの間に生ずる出力電圧の変化量δは、一つのモードに収容されるスイッチング周期Tの個数Qを例えば32とすると、ピークからの電圧位相の遅れ(ずれ)は2π/(32×6)となる。従って、出力電圧の変化は、
δ=1−COS(2π/(32×6))
=0.0005354・・・
となる。したがって、モードの切替時点t1をスイッチング周期Tが跨いだ場合の出力電圧の誤差は、最大でも電源周波数fの電圧のピーク値1に対して0.05%程度であり、出力電圧の変動に大きな影響を与えるものではないと言える。
(3相/3相マトリクスコンバータ)
上述した実施の形態では、電力変換装置として3相/直流マトリクスコンバータを例にあげて説明したが、3相/3相マトリクスコンバータも同様に適用することができる。すなわち、本実施の形態の電力変換装置は、3相/3相マトリクスコンバータによって3相交流電源から入力される3相交流電力を交流電力に直接変換することができる。
図19は、本発明の実施の形態である電力変換装置の他の例としての3相/3相マトリクスコンバータの構成を示すブロック図である。図19に示すように、3相/3相マトリクスコンバータ2は、図1に示した3相/直流マトリクスコンバータ1の双方向スイッチ回路10に替えて、3×3のマトリクスで9個の双方向スイッチSRU,SSU,STU,SRV,SSV,STV,SRW,SSW,STWをもつ双方向スイッチ群SW2を有した双方向スイッチ回路11を有する。そして、スイッチ制御部28は、位相情報生成部23から入力される線間電圧発生区間φTS、+側相、−側相、第2のキャリア波形パターン生成部24から入力される第2のキャリア波形パターンCW2、出力側の相に対応した第2の制御信号をもとに双方向スイッチ回路11のスイッチングパターンを生成し、双方向スイッチ群SW2をスイッチングする。そして、3相/3相マトリクスコンバータ2は、3相交流電源PSから入力される3相交流電力を負荷LD2に対する3相電力に直接変換して出力する。本実施の形態では、図19に示すように、制御信号発生部60が、負荷LD2側に出力する任意の3相交流電力に応じた制御信号(第2の制御信号)CSu,CSv,CSwを発生させてスイッチ制御部28へ供給する。出力側の相に対応した第2の制御信号CSu,CSv,CSwは、負荷LD2に供給すべき交流電力に応じた3相交流波形である。これにより、双方向スイッチ回路11から負荷LD2に、各第2の制御信号CSu,CSv,CSwに応じた3相交流の交流電力が出力されるように制御できる。言い換えると、制御部20は、各双方向スイッチSRU〜STWに仮想的にDC/AC変換処理(仮想DC/AC変換処理)を行わせる。これにより、複雑なマトリクス演算を行うことなく、仮想AC/DC変換処理及び仮想DC/AC変換処理を簡易に行うことができる。
この3相/3相マトリクスコンバータ2でも、3相/直流マトリクスコンバータ1と同様に、3相交流電源PSの電源周波数の変動に左右されずに、3相交流電源PSの同期とは予め独立して設定される所定スイッチング周期Tを生成するスイッチング周期発生部29を設けているので、電源周波数の変動を考慮した大きなフィルタの設置や運転範囲の制限を設ける必要がない。