JP6674748B2 - Glp−1分泌促進剤 - Google Patents

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Description

本発明は、GLP−1(Glucagon-like peptide-1)分泌促進剤に関する。
近年、糖尿病、脂質異常症、高血圧症等の生活習慣病が大きな問題となっている。生活習慣病の発症には、遺伝要因の他、食生活、喫煙や運動といった環境要因が関与する。その中でも消費カロリー量よりも摂取カロリー量が過剰な場合に引き起こされる肥満は重大なリスクファクターであり、肥満を予防又は改善することで生活習慣病を予防又は改善することが期待されている。生理系統を調節して生活習慣病の発症や肥満の予防又は改善に有用な素材、特に日常的に摂取できる飲食品として利用可能な素材への期待が高まっている。
GLP−1は、内分泌ホルモンであるグルカゴンと共通の遺伝子及び前駆体から産生されるホルモンである。グルカゴンが膵島のα細胞で産生されるのに対し、GLP−1は下部消化管(回腸、盲腸、結腸、直腸)粘膜上皮の内分泌細胞(L細胞)で産生され、その前駆体からグルカゴンとは異なったプロセシングを受け、栄養素の摂取によって速やかに分泌される。
GLP−1受容体はG蛋白質共役型受容体であり、膵臓β細胞をはじめ、末梢や中枢神経系、心臓、腎臓、消化管や肺などに発現する。GLP−1の作用として、膵臓β細胞に働きかけて血糖値依存性にインスリン分泌を促進し、血糖値を低下させるインクレチン(incretin:Intestine Secretion Insulin)作用がある。GLP−1はまた、膵臓α細胞からのグルカゴン分泌を抑制することにより、肝臓からのブドウ糖放出を低下させ、血糖値を低下させる。これらの作用は低血糖によるグルカゴン分泌と拮抗せず、またインスリン濃度に依存しないことが報告されている。GLP−1投与により1型糖尿病患者及び2型糖尿病患者で共に、血糖値を一定にするのに必要なインスリン量が減少したことも報告されている。
GLP−1はまた、末梢神経系と中枢神経系両方のメカニズムを介して胃運動を抑制することが知られている。胃排泄遅延は摂取した栄養素の吸収を遅延させるため、血糖値の上昇を抑制する。実際、GLP−1受容体作動薬は用量依存性に胃排泄遅延を引き起こす。さらに、食後早期の血糖値上昇と胃内容排出率が相関を示すことから、GLP−1の血糖値上昇抑制作用には胃排泄遅延も重要であることが示唆されている(参考文献1参照)。
このようにGLP−1は、インスリンやグルカゴン分泌、あるいは胃排泄速度を調節することで糖代謝を制御できる。
他にも、GLP−1は、食欲と摂食の抑制等の中枢神経系に対する作用を有することが知られている。すなわち、GLP−1は中枢神経系に存在するGLP−1受容体を介して食欲及び摂食の抑制効果を発揮することが報告されている(非特許文献2参照)。実際に、GLP−1受容体作動薬には抗肥満作用があることが報告されている(非特許文献3参照)。
よってこれらの作用を介して、GLP−1により、糖尿病やインスリン抵抗性の患者の症状を改善できる可能性がある(非特許文献4参照)。また、GLP−1の効果を高めることは、糖尿病などの生活習慣病の予防又は改善だけでなく、肥満の予防又は改善にも有用である。
しかし、GLP−1の活性本体はポリペプチドであり、生体内ではDPP4という酵素によって速やかに分解される。そのため、GLP−1の生体内での半減期は約2分と短い。
GLP−1の作用に着目した糖尿病治療薬としてはDPP4阻害薬とGLP−1受容体作動薬の二種類が知られている。DPP4阻害薬は、食事刺激により分泌された内因性GLP−1の分解を抑制することで、活性型GLP−1の血中濃度を高める。しかし、同化作用を有するホルモンであるGIPに対しても同様の作用を示すことから、その肥満を予防又は改善する作用が減弱する可能性がある。一方、GLP−1受容体作動薬はGLP−1に化学修飾を施すことでその半減期を延長するものである。しかし、消化酵素による消化又は分解を避けるためにGLP−1受容体作動薬を注射投与する必要があり、生体に対する負担が大きい。
したがって、生体内でのGLP−1濃度を長時間にわたって高めるためには、内因性GLP−1の分泌を促進することが望ましい。
ここで培養系での研究から、GLP−1の分泌を促進する物質として、パルミチン酸、オレイン酸、肉加水分解物、ガストリン放出ペプチド、カルバコール、フォルスコリン、イオノマイシン、酢酸ミリスチン酸ホルボール、必須アミノ酸、ロイシン、イソロイシン、スキムミルク、カゼイン、レプチン、ムスカリン性受容体M1及びM2、キラヤ又はその抽出物、リゾホスファチジルイノシトール又はその塩が、これまでに報告されている(非特許文献5〜9及び特許文献1〜2参照)。
また、GLP−1分泌に関わる分子として、グルコースをはじめとする甘味受容体であるT1R2/T1R3やL−アミノ酸をリガンドとするCasR、GPRC6A、T1R1/T3R3、中長鎖脂肪酸又は短鎖脂肪酸のリガンドであるGPR40、GPR43やGPR41などが知られている(非特許文献10参照)。他にも神経伝達物質であるアセチルコリン受容体であるM1RやM2R、セロトニン受容体の5−HT4Rやコレシストキニン受容体であるCCK1RがGLP−1分泌に関与することが知られている。これらGLP−1分泌関連因子の特徴として、G蛋白質共役型受容体やイオンチャネルを介して細胞内cAMPやCa2+濃度の上昇がGLP−1分泌に重要であることが挙げられる。実際、アデニル酸シクラーゼの活性化により細胞内cAMP濃度を上昇させるフォルスコリンやCa2+イオノフォアであるイオノマイシンによる刺激に応答してGLP−1を分泌することが知られている(非特許文献5及び11参照)。しかしながら、細胞内cAMPやCa2+濃度を上昇させる受容体の活性化に対して、必ずしもGLP−1分泌が誘導されるとは限らない。
ここで、「CysLT1受容体」とはLTC4、LTD4及びLTE4から成るシステイニルロイコトリエンの受容体の一つである。CysLT1受容体はG蛋白質共役受容体に分類され、肥満細胞、好酸球、内皮細胞などに発現する。CysLT1受容体は、ホスファチジルイノシトール-カルシウム経路の活性化を介して気管支平滑筋の収縮や増殖、好酸球の浸潤、肺粘膜層の侵襲を引き起こす。そこでCysLT1受容体のアンタゴニストは、主にアレルギー、気管支喘息治療薬や抗炎症薬として利用される。
しかしながら、CysLT1受容体とGLP−1分泌促進との関係性については知られていない。
特開2012−131742号公報 国際公開第2012/086406号パンフレット
インクレチン関連薬による糖尿病治療の新時代,2013,vol.43(12),p.1505-1508 Eur.J.Pharmacol,2002,vol.440(2-3),p.269-279 BMJ,2012,vol.344,d7771 医学のあゆみ,2009,vol.231(7),p.755-758 Endocrinology,2001,vol.142(10),p.4522-4528 Journal of Endocrinology,2006,vol.191,p.159-170 Nutrition,2009,vol.25(3),p.340-349 Endocrinology,2003,vol.144(7),p.3244-3250 Diabetes,2006,vol.52(2),p.252-259 Cell Metabolism,2012,vol.15,p.421-431 British Journal of Pharmacology,2011,vol.163,p.261-271
本発明は、GLP−1の分泌を促進する、GLP−1分泌促進剤の提供を課題とする。
また本発明は、GLP−1分泌促進剤の効能を生かし、またその投与の手段としての、肥満予防又は改善剤、食欲抑制剤、グルカゴン分泌抑制剤、及び胃排泄遅延剤の提供を課題とする。


本発明者らは上記課題に鑑み、GLP−1の分泌を促進する素材について鋭意検討を行った。その結果、CysLT1受容体のアンタゴニストにGLP−1分泌促進作用があることを見出した。さらにCysLT1受容体のアンタゴニストが、肥満の予防又は改善、食欲の抑制、グルカゴン分泌の抑制、及び胃排泄の遅延に有用であることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものである。


本発明は、CysLT1受容体のアンタゴニストを有効成分とする、GLP−1分泌促進剤に関する
また本発明は、CysLT1受容体のアンタゴニストを有効成分とする、肥満予防又は改善剤に関する。
また本発明は、CysLT1受容体のアンタゴニストを有効成分とする、食欲抑制剤に関する。
また本発明は、CysLT1受容体のアンタゴニストを有効成分とする、グルカゴン分泌抑制剤に関する。
さらに本発明は、CysLT1受容体のアンタゴニストを有効成分とする、胃排泄遅延剤に関する。


本発明のGLP−1分泌促進剤は、GLP−1の分泌を効果的に促進することができる
また本発明の肥満予防又は改善剤は、GLP−1の分泌の促進を介して、肥満を予防又は改善することができる。
また本発明の食欲抑制剤は、GLP−1の分泌の促進を介して、食欲を抑制することができる。
また本発明のグルカゴン分泌抑制剤は、GLP−1の分泌の促進を介して、グルカゴンの分泌を抑制することができる。
さらに本発明の胃排泄遅延剤は、GLP−1の分泌の促進を介して、胃排泄を遅延させることができる。


CysLT1受容体のアンタゴニストによる、NCI−H716細胞におけるGLP−1の分泌促進作用を示すグラフである。 CysLT1受容体のアンタゴニストによる、マウス結腸初代培養細胞におけるGLP−1の分泌促進作用を示すグラフである。
本明細書において「予防」とは、個体における疾患若しくは症状の発症の防止若しくは遅延、又は個体の疾患若しくは症状の発症の危険性を低下させることをいう。
また、本明細書において「改善」とは、疾患、症状若しくは状態の好転若しくは緩和、疾患、症状若しくは状態の悪化の防止若しくは遅延、又は疾患、症状若しくは状態の進行の逆転、防止若しくは遅延をいう。
さらに本明細書において「非治療的」とは、医療行為、すなわち治療による人体への処置行為を含まない概念である。
本明細書において「GLP−1分泌促進」とは、経口摂取した場合に消化管粘膜上皮の内分泌細胞(L細胞)からのGLP−1分泌を促進すること、又は食事、特に糖質又は脂質を多く含む食事を摂取することで引き起こされる生体内でのGLP−1分泌を促進することをいう。あるいは、主として食後に生じる生体内でのGLP−1分泌に伴う血中GLP−1濃度上昇を増強するか、上昇したGLP−1濃度を維持するか、又は上昇したGLP−1濃度の低下を抑制することをいう。ここで「食後」とは、摂取した食事中の炭水化物がおおむね吸収されるまでの時間を指し、食事の摂取後の直後(0分)から6時間後まで、好ましくは5時間後まで、より好ましくは4時間後まで、さらに好ましくは3時間後までの時間を指す。
また本明細書において「食欲抑制」とは、食欲ないしは摂食量の低下、それに伴う体重増加の抑制又は減少をいう。当該抑制はGLP−1の中枢神経系の視床下部摂食中枢を介する作用が主である。
さらに本明細書において「グルカゴン分泌抑制」とは、GLP−1の膵臓α細胞への直接作用によるグルカゴン分泌抑制のみならず、膵臓β細胞からのインスリンやδ細胞からのソマトスタチンを介するパラクライン的な膵臓α細胞抑制をも含む。
本発明のGLP−1分泌促進剤、肥満予防又は改善剤、食欲抑制剤、グルカゴン分泌抑制剤、及び胃排泄遅延剤は、CysLT1受容体のアンタゴニストを有効成分とする。また、CysLT1受容体のアンタゴニストを適用することで、GLP−1の分泌を促進すること、肥満を予防又は改善すること、食欲を抑制すること、グルカゴンの分泌を抑制すること、及び胃排泄を遅延することができる。
ここで、「CysLT1受容体」とは前述のように、LTC4、LTD4及びLTE4から成るシステイニルロイコトリエンの受容体の一つである。CysLT1受容体はG蛋白質共役受容体に分類され、肥満細胞、好酸球、内皮細胞などに発現する。CysLT1受容体は、ホスファチジルイノシトール-カルシウム経路の活性化を介して気管支平滑筋の収縮や増殖、好酸球の浸潤、肺粘膜層の侵襲を引き起こす。そこでCysLT1受容体のアンタゴニストは、主にアレルギー、気管支喘息治療薬や抗炎症薬として利用される。しかし、GLP−1の分泌を促進するためにCysLT1受容体のアンタゴニストを用いることについては、これまでに全く報告されていない。


本発明で用いるCysLT1受容体のアンタゴニストの具体例としては、モンテルカスト、ザフィルルカスト、プランルカストなどが挙げられる。なお、これらの化合物の構造式を下記式(1)〜(3)に示す。しかし本発明はこれらに制限するものではない。
Figure 0006674748
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本発明で用いるCysLT1受容体のアンタゴニストは、市販品であってもよいし、常法に基づき製造することもできる。
本発明においては、CysLT1受容体のアンタゴニストとしていずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なおCysLT1受容体のアンタゴニスト、例えば式(1)〜(3)で表されるような化合物には、幾何異性体、光学異性体、立体異性体などの異性体を有する化合物が存在する。ここで本発明で用いるCysLT1受容体のアンタゴニストは式(1)〜(3)で表されるような化合物に限定するものではなく、これらの異性体をも包含する。さらに、本発明で用いるCysLT1受容体のアンタゴニストは、いずれかの異性体であっても、異性体の混合物であってもよい。
さらに本発明において、CysLT1受容体のアンタゴニストを塩の形態で有効成分として含有させてもよい。このような塩としては特に限定されず、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩、アルミニウム、亜鉛等の両性金属塩、アミノ酸塩、アミン塩等が挙げられる。これらのうち、ナトリウム塩、カリウム塩及びカルシウム塩が好ましい。また本発明において、CysLT1受容体のアンタゴニストを水和物の形態で有効成分として含有させてもよい。
なお前記CysLT1受容体のアンタゴニストは、細胞から乳酸脱水素酵素を漏出させないことが確認されている。すなわちCysLT1受容体のアンタゴニストは、安全性が高いことが確認されている。
後述の実施例で実証するように、CysLT1受容体のアンタゴニストは下部消化管(回腸、盲腸、結腸、及び直腸)細胞(L細胞)におけるGLP−1分泌を促進する作用を有する。したがってCysLT1受容体のアンタゴニストは、GLP−1分泌促進に有用である。さらには前述のように、GLP−1分泌を促進することにより、肥満の予防又は改善、食欲の抑制、グルカゴン分泌の抑制、及び胃排泄の遅延が可能となることが報告されている。したがってCysLT1受容体のアンタゴニストは、肥満の予防又は改善、食欲の抑制剤、グルカゴン分泌の抑制、及び胃排泄の遅延にも有用である。


CysLT1受容体のアンタゴニストは、GLP−1分泌促進剤、肥満予防又は改善剤、食欲抑制剤、グルカゴン分泌抑制剤、又は胃排泄遅延剤として使用することができる。またCysLT1受容体のアンタゴニストをこれらの剤を製造するために使用することができる。


本発明のGLP−1分泌促進剤、肥満予防又は改善剤、食欲抑制剤、グルカゴン分泌抑制剤、及び胃排泄遅延剤の形態は適宜選択することができる。例えば、前記有効成分単体を本発明のGLP−1分泌促進剤、肥満予防又は改善剤、食欲抑制剤、グルカゴン分泌抑制剤、及び胃排泄遅延剤として用いてもよい。あるいは、前記有効成分と、薬学的に許容される担体とを含む本発明のGLP−1分泌促進剤、肥満予防又は改善剤、食欲抑制剤、グルカゴン分泌抑制剤、又は胃排泄遅延剤を医薬組成物として使用してもよい。あるいは、本発明のGLP−1分泌促進剤、肥満予防又は改善剤、食欲抑制剤、グルカゴン分泌抑制剤、又は胃排泄遅延剤を化粧料組成物に含有させてもよい。


医薬組成物を調製する場合は、通常、前記有効成分と好ましくは薬学的に許容される担体を含む製剤として調製する。薬学的に許容される担体とは、一般的に、前記有効成分とは反応しない、不活性の、無毒の、固体又は液体の、増量剤、希釈剤又はカプセル化材料等をいい、例えば、水、エタノール、ポリオール類(例えば、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、及びポリエチレングリコール等)、適切なそれらの混合物、植物性油などの溶媒又は分散媒体などが挙げられる。
医薬組成物は、経口により、非経口により、例えば、口腔内に、皮膚に、皮下に、粘膜に、静脈内に、動脈内に、筋肉内に、腹腔内に、膣内に、肺に、脳内に、眼に、又は鼻腔内に投与される。経口投与製剤としては、錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、カプセル剤、チュアブル剤、ペレット剤、シロップ剤、液剤、懸濁剤及び吸入剤などが挙げられる。非経口投与製剤としては、坐剤、保持型浣腸剤、点滴剤、点眼剤、点鼻剤、ペッサリー剤、注射剤、口腔洗浄剤、並びに軟膏、クリーム剤、ローション、ゲル剤、制御放出パッチ剤及び貼付剤などの皮膚外用剤などが挙げられる。医薬組成物は、徐放性皮下インプラントの形態で、又は標的送達系(例えば、モノクローナル抗体、ベクター送達、イオン注入、ポリマーマトリックス、リポソーム及びミクロスフェア)の形態で、非経口で投与してもよい。
医薬組成物はさらに医薬分野において慣用の添加剤を含んでいてもよい。そのような添加剤には、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、抗酸化剤、着色剤、矯味剤などがあり、必要に応じて使用できる。長時間作用できるように徐放化するためには、既知の遅延剤等でコーティングすることもできる。賦形剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、寒天、軽質無水ケイ酸、ゼラチン、結晶セルロース、ソルビトール、タルク、デキストリン、デンプン、乳糖、白糖、ブドウ糖、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム等が使用できる。結合剤としては、例えば、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、エチルセルロース、カゼインナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、寒天、精製水、ゼラチン、デンプン、トラガント、乳糖等が挙げられる。崩壊剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、結晶セルロース、デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ等が挙げられる。滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、硬化油、ショ糖脂肪酸エステル、ロウ類等が挙げられる。抗酸化剤としては、トコフェロール、没食子酸エステル、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、アスコルビン酸等が挙げられる。必要に応じてその他の添加剤や薬剤、例えば制酸剤(炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、合成ヒドロタルサイト等)、胃粘膜保護剤(合成ケイ酸アルミニウム、スクラルファート、銅クロロフィリンナトリウム等)を加えてもよい。
化粧料組成物を調製する場合、その形態は適宜選択することができ、溶液、乳液、粉末、水−油二層系、水−油−粉末三層系、ゲル、タブレット等の固形、エアゾール、ミスト、カプセル及びシート等任意の形態とすることができる。また、化粧料組成物の製品形態も任意であり、例えば、洗顔料、メーク落とし、化粧水、美容液、パック、乳液、クリーム及びサンスクリーン等のスキンケア化粧料、ファンデーション、化粧下地、口紅、アイシャドー、アイライナー、マスカラ、アイブロー、頬紅及びネイルエナメル等のメイクアップ化粧料、ヘアシャンプー、ヘアリンス、整髪料、染毛料及び育毛剤等の毛髪化粧料、石鹸、ボディソープ、デオドラント化粧料及び浴用剤等のボディ洗浄料、歯磨剤及び洗口剤等の口腔化粧料、香水等の芳香化粧料等が挙げられる。また、この化粧料は、日本の薬事法上、化粧品及び医薬部外品のどちらに属しても良い。
化粧料組成物は、化粧品、医薬部外品及び医薬品等に慣用される他の成分、例えば、粉末成分、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、シリコーン、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、保湿剤、水溶性高分子、増粘剤、皮膜剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料、水等を必要に応じて配合し、常法により製造することができる。
その他の化粧料組成物に配合可能な成分としては、例えば、防腐剤(エチルパラベン、ブチルパラベン等)、消炎剤(例えば、グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸誘導体、サリチル酸誘導体、ヒノキチオール、酸化亜鉛、アラントイン等)、美白剤(例えば、アスコルビン酸及びその誘導体、胎盤抽出物、ユキノシタ抽出物、アルブチン等)、各種抽出物(例えば、オウバク、オウレン、シコン、シャクヤク、センブリ、バーチ、セージ、ビワ、ニンジン、アロエ、ゼニアオイ、アイリス、ブドウ、ヨクイニン、ヘチマ、ユリ、サフラン、センキュウ、ショウキョウ、オトギリソウ、オノニス、ニンニク、トウガラシ、チンピ、トウキ、海藻等)、賦活剤(例えば、ローヤルゼリー、感光素、コレステロール誘導体等)、血行促進剤(例えば、ノニル酸ワレニルアミド、ニコチン酸ベンジルエステル、ニコチン酸β−ブトキシエチルエステル、カプサイシン、ジンゲロン、カンタリスチンキ、イクタモール、タンニン酸、α−ボルネオール、ニコチン酸トコフェロール、イノシトールヘキサニコチネート、シクランデレート、シンナリジン、トラゾリン、アセチルコリン、ベラパミル、セファランチン、γ−オリザノール等)、抗脂漏剤(例えば、硫黄、チアントール等)、抗炎症剤(例えば、トラネキサム酸、チオタウリン、ヒポタウリン等)及び殺菌剤(例えば、トリクロサン、塩化セチルピリジニウム、チモール類、塩化ベンザルコニウム等)等が挙げられる。
前記医薬組成物及び化粧料組成物は、口腔用組成物、外用組成物、内服組成物などの形態で適用することができる。
本発明のGLP−1分泌促進剤、肥満予防又は改善剤、食欲抑制剤、グルカゴン分泌抑制剤、及び胃排泄遅延剤は、食料、飲料、飼料、ペットフードに添加又は配合して使用することができる。あるいは、GLP−1の分泌促進により治療、予防又は改善しうる疾患又は状態の治療、予防又は改善等をコンセプトとしてその旨を表示した飲食品、すなわち、健康食品、機能性表示食品、病者用食品及び特定保健用食品などに添加又は配合して使用することができる。前記の、健康食品、機能性食品、病者用食品、特定保健用食品は、具体的には、細粒剤、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、シロップ剤、液剤、流動食等の各種製剤形態として使用することができる。製剤形態の食品は、医薬製剤と同様に製造することができ、前記有効成分と、食品として許容できる担体、例えば適当な賦形剤(例えば、でん粉、加工でん粉、乳糖、ブドウ糖、水等)等とを混合した後、慣用の手段を用いて製造することができる。さらに、スープ類、ジュース類、乳飲料、茶飲料、コーヒー飲料、ココア飲料、ゼリー状飲料、スポーツ飲料、ダイエット飲料などの液状食品組成物、プリン、ヨーグルトなどの半固形食品組成物、パン類、うどんなどの麺類、クッキー、チョコレート、キャンディ、ガム、せんべいなどの菓子類、ふりかけ、バター、ジャムなどのスプレッド類等に、本発明のGLP−1分泌促進剤、肥満予防又は改善剤、食欲抑制剤、グルカゴン分泌抑制剤、又は胃排泄遅延剤を添加又は配合して、食品組成物を製造することができる。


本発明のGLP−1分泌促進剤、肥満予防又は改善剤、食欲抑制剤、グルカゴン分泌抑制剤、及び胃排泄遅延剤における前記有効成分の含有量は適宜決定できる。
例えば、本発明のGLP−1分泌促進剤、肥満予防又は改善剤、食欲抑制剤、グルカゴン分泌抑制剤、及び胃排泄遅延剤の総量中、前記有効成分の含有量は0.0001質量%以上が好ましく、0.0007質量%以上がより好ましく、0.002質量%以上がさらに好ましく、1.0質量%以下が好ましく、0.8質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下がさらに好ましく、0.0001〜1.0質量%が好ましく、0.0007〜0.8質量%がより好ましく、0.002〜0.1質量%がさらに好ましい。


本発明のGLP−1分泌促進剤、肥満予防又は改善剤、食欲抑制剤、グルカゴン分泌抑制剤、及び胃排泄遅延剤の投与又は摂取対象は、好ましくは温血脊椎動物であり、より好ましくは哺乳動物である。本明細書において哺乳動物は、例えば、ヒト、並びにサル、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタなどの非ヒト哺乳動物が挙げられる。本発明のGLP−1分泌促進剤、肥満予防又は改善剤、食欲抑制剤、グルカゴン分泌抑制剤、及び胃排泄遅延剤は、ヒトへの投与に好適である。


本発明のGLP−1分泌促進剤、肥満予防又は改善剤、食欲抑制剤、グルカゴン分泌抑制剤、及び胃排泄遅延剤は、GLP−1分泌の促進を所望する対象者に好ましく適用することができる。あるいは、運動不足者や中高年者にも好ましく適用することができる。
また、本発明のGLP−1分泌促進剤、肥満予防又は改善剤、食欲抑制剤、グルカゴン分泌抑制剤、及び胃排泄遅延剤は、GLP−1の分泌が抑制された条件下で好ましく適用することができる。さらに、本発明のGLP−1分泌促進剤、肥満予防又は改善剤、食欲抑制剤、グルカゴン分泌抑制剤、及び胃排泄遅延剤は、経口投与するのが好ましい。


本発明のGLP−1分泌促進方法、肥満予防又は改善方法、食欲抑制方法、グルカゴン分泌抑制方法、及び胃排泄遅延方法において、投与又は摂取することで適用する前記有効成分の有効量は、個体の状態、体重、性別、年齢、素材の活性、投与又は摂取経路、投与又は摂取スケジュール、製剤形態又はその他の要因により適宜決定することができる。例えば、前記有効成分の有効量は、1日あたり、体重1kgあたり、好ましくは0.1mg以上、より好ましくは0.7mg以上、好ましくは10mg以下、より好ましくは2mg以下、又は好ましくは0.1〜10mg、より好ましくは0.7〜2mgである。なお前記有効成分は、1日1回〜数回に分け、又は任意の期間及び間隔で摂取・投与され得る。
また、前記有効成分の投与又は摂取は、全身への投与又は摂取でもよいし、局所への投与又は摂取でもよい。


上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下のGLP−1分泌促進剤、肥満予防又は改善剤、食欲抑制剤、グルカゴン分泌抑制剤、胃排泄遅延剤、使用、及び方法を開示する。


<1>CysLT1受容体のアンタゴニストを有効成分とする、GLP−1分泌促進剤、肥満予防又は改善剤、食欲抑制剤、グルカゴン分泌抑制剤、又は胃排泄遅延剤。


<2>前記アンタゴニストが、モンテルカスト、ザフィルルカスト、及びプランルカストからなる群より選ばれる少なくとも1種である、前記<1>項に記載の剤。
<3>前記アンタゴニストが、下部消化管(回腸、盲腸、結腸、又は直腸)細胞(L細胞)におけるGLP−1分泌を促進する、前記<1>又は<2>項に記載の剤。
<4>GLP−1分泌を促進することで、肥満を予防又は改善、食欲を抑制、グルカゴン分泌を抑制、又は胃排泄を遅延する、前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載の剤。
<5>前記剤の総量中、前記有効成分の含有量が、0.0001質量%以上、好ましくは0.0007質量%以上、より好ましくは0.002質量%以上、であり、1.0質量%以下、好ましくは0.8質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、である、前記<1>〜<4>のいずれか1項に記載の剤。


<6>GLP−1分泌促進剤、肥満予防又は改善剤、食欲抑制剤、グルカゴン分泌抑制剤、又は胃排泄遅延剤としての、CysLT1受容体のアンタゴニストの使用。
<7>GLP−1分泌促進剤、肥満予防又は改善剤、食欲抑制剤、グルカゴン分泌抑制剤、又は胃排泄遅延剤の製造のための、CysLT1受容体のアンタゴニストの使用。
<8>CysLT1受容体のアンタゴニストを、GLP−1分泌促進剤、肥満予防又は改善剤、食欲抑制剤、グルカゴン分泌抑制剤、又は胃排泄遅延剤として使用する方法。
<9>CysLT1受容体のアンタゴニストを適用する、GLP−1分泌促進方法、肥満予防若しくは改善方法、食欲抑制方法、グルカゴン分泌抑制方法、又は胃排泄遅延方法。


<10>前記アンタゴニストが、モンテルカスト、ザフィルルカスト、及びプランルカストからなる群より選ばれる少なくとも1種である、前記<6>〜<9>のいずれか1項に記載の使用又は方法。
<11>前記アンタゴニストが、下部消化管(回腸、盲腸、結腸、又は直腸)細胞(L細胞)におけるGLP−1分泌を促進する、前記<6>〜<10>のいずれか1項に記載の使用又は方法。
<12>GLP−1分泌を促進することで、肥満を予防又は改善、食欲を抑制、グルカゴン分泌を抑制、又は胃排泄を遅延する、前記<6>〜<11>のいずれか1項に記載の使用又は方法。
<13>CysLT1受容体のアンタゴニストをGLP−1分泌の促進を所望するヒト、運動不足者、又は中高年者に適用する、前記<6>〜<12>のいずれか1項に記載の方法。
<14>GLP−1の分泌が抑制された条件下で適用する、前記<6>〜<13>のいずれか1項に記載の方法。
<15>前記剤の総量中、CysLT1受容体のアンタゴニストの含有量が、0.0001質量%以上、好ましくは0.0007質量%以上、より好ましくは0.002質量%以上、であり、1.0質量%以下、好ましくは0.8質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、である、前記<6>〜<14>のいずれか1項に記載の使用又は方法。


<16>GLP−1分泌促進方法、肥満予防若しくは改善方法、食欲抑制方法、グルカゴン分泌抑制方法、又は胃排泄遅延方法のために用いる、CysLT1受容体のアンタゴニスト。
<17>GLP−1分泌促進薬、肥満予防若しくは改善薬、食欲抑制薬、グルカゴン分泌抑制薬、又は胃排泄遅延薬の製造のための、CysLT1受容体のアンタゴニストの使用。
<18>GLP−1分泌促進、肥満予防若しくは改善、食欲抑制、グルカゴン分泌抑制、又は胃排泄遅延の非治療的な処置方法のために用いる、CysLT1受容体のアンタゴニストの使用。


<19>前記アンタゴニストが、モンテルカスト、ザフィルルカスト、及びプランルカストからなる群より選ばれる少なくとも1種である、前記<16>〜<18>のいずれか1項に記載のアンタゴニスト又は使用。
<20>前記アンタゴニストが、下部消化管(回腸、盲腸、結腸、又は直腸)細胞(L細胞)におけるGLP−1分泌を促進する、前記<16>〜<19>のいずれか1項に記載のアンタゴニスト又は使用。
<21>GLP−1分泌を促進することで、肥満を予防又は改善、食欲を抑制、グルカゴン分泌を抑制、又は胃排泄を遅延する、前記<16>〜<20>のいずれか1項に記載のアンタゴニスト又は使用。
<22>CysLT1受容体のアンタゴニストをGLP−1分泌の促進を所望するヒト、運動不足者、又は中高年者に適用する、前記<16>〜<21>のいずれか1項に記載のアンタゴニスト又は使用。
<23>GLP−1の分泌が抑制された条件下で適用する、前記<16>〜<22>のいずれか1項に記載のアンタゴニスト又は使用。
<24>CysLT1受容体のアンタゴニストを医薬組成物又は化粧料組成物の形態で適用する、前記<16>〜<23>のいずれか1項に記載のアンタゴニスト又は使用。
<25>CysLT1受容体のアンタゴニストを食品、飲料、又は飼料の形態で適用する、前記<16>〜<23>のいずれか1項に記載のアンタゴニスト又は使用。
<26>CysLT1受容体のアンタゴニストの含有量が、0.0001質量%以上、好ましくは0.0007質量%以上、より好ましくは0.002質量%以上、であり、1.0質量%以下、好ましくは0.8質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、である、前記<16>〜<25>のいずれか1項に記載の使用。


<27>CysLT1受容体のアンタゴニストを有効量適用する、非治療的なGLP−1分泌促進方法、肥満予防若しくは改善方法、食欲抑制方法、グルカゴン分泌抑制方法、又は胃排泄遅延方法。
<28>前記アンタゴニストが、モンテルカスト、ザフィルルカスト、及びプランルカストからなる群より選ばれる少なくとも1種である、前記<27>項に記載の方法。
<29>前記アンタゴニストが、下部消化管(回腸、盲腸、結腸、又は直腸)細胞(L細胞)におけるGLP−1分泌を促進する、前記<27>又は<28>項に記載の方法。
<30>GLP−1分泌を促進することで、肥満を予防又は改善、食欲を抑制、グルカゴン分泌を抑制、又は胃排泄を遅延する、前記<27>〜<29>のいずれか1項に記載の方法。
<31>CysLT1受容体のアンタゴニストをGLP−1分泌の促進を所望するヒト、運動不足者、又は中高年者に適用する、前記<27>〜<30>のいずれか1項に記載の方法。
<32>GLP−1の分泌が抑制された条件下で適用する、前記<27>〜<31>のいずれか1項に記載の方法。
<33>CysLT1受容体のアンタゴニストの有効量が、1日あたり、体重1kgあたり、0.1mg以上、好ましくは0.7mg以上、であり、10mg以下、好ましくは2mg以下、である、前記<27>〜<32>のいずれか1項に記載の方法。
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
試験例1 ヒト盲腸腺癌由来上皮細胞を用いたGLP-1分泌促進試験
(1)試験物質溶液の調製
CysLT1受容体のアンタゴニストであるモンテルカスト(Cayman Chemical社製)、ザフィルルカスト(Cayman Chemical社製)及びプランルカスト(Cayman Chemical社製)をそれぞれ、DMSO(Dimethyl sulfoxide、和光純薬工業社製)で濃度が10mM、30mM又は100mMとなるように希釈した。これらの希釈液をDiprotin-A(DPP4阻害剤、Sigma社製、終濃度80μM)を含むKRB(Krebs-Ringer bicarbonate)バッファー(Sigma社製)に1/1000量添加し、試験物質溶液を調製した。これとは別に、コントロールとしてDMSOを準備した。
(2)ヒト盲腸腺癌由来上皮細胞の培養
NCI-H716細胞(ヒト盲腸腺癌由来上皮細胞、American Type Culture Collectionより入手)をRPMI1640(10%ウシ胎児血清含有、高グルコース、invitrogen社製)を用いて、37℃、5%CO2存在下で培養して増殖させた。増殖させた細胞を、マトリゲル(60μL/well;BD社)をコーティングした48ウエルプレートに2.5×10cell/well(n=4)となるように播き、DMEM培地(10%ウシ胎児血清含有、高グルコース、invitrogen社製)で培養した。
(3)GLP-1の分泌促進
培養開始から3日後に、培地を前記試験物質溶液に交換し30分間培養した。
培養後、アプロチニン溶液(プロテアーゼ阻害剤、和光純薬工業社製)を加えた微量遠心管に上清を回収した。浮遊細胞を除去した後、GLP-1の定量まで-80℃で保存した。
(4)結果
GLP-1の定量は、GLUCAGON-LIKE PEPTIDE-1(ACTIVE)ELISA KIT(ミリポア社製)を用いて、キットに添付のAssay bufferで10倍希釈した上清に対して行った。また、有意差検定をStudent t-testにより実施した。
GLP-1の定量結果を図1に示す。ここでGLP-1の分泌量は、コントロール(DMSO)を添加したときのGLP-1の分泌量を「1」とし、コントロールを添加したときのGLP-1の分泌量に対する相対値として示している。
図1に示すように、CysLT1受容体のアンタゴニストの作用により、GLP-1の分泌が促進される。また、モンテルカストは30μM以上の濃度範囲で、コントロールと比べて統計学的に有意に、かつ用量に依存して、GLP-1の分泌が促進された。さらに、ザフィルルカストとプランルカストは10μM以上の濃度範囲で、コントロールと比べて統計学的に有意に、かつ用量に依存して、GLP-1の分泌が促進された。
試験例2 マウス結腸初代培養細胞を用いたGLP-1分泌刺激試験
(1)試験物質溶液の調製
CysLT1受容体のアンタゴニストであるモンテルカスト(Cayman Chemical社製)をDMSO(和光純薬工業社製)で濃度が10mM、30mM又は100mMとなるように希釈した。これらの希釈液を、ジプロチン-A(DPP4阻害剤、Sigma社製、終濃度80μM)とfatty acid free BSA(Sigma社製、終濃度0.1%)を含む138バッファー(4.5mM KCl、138mM NaCl、4.2mM NaHCO3、1.2mM NaH2PO4、2.6mM CaCl2、1.2mM MgCl2、10mM HEPES、NaOHにてpH7.4に調整)に1/1000量添加し、試験物質溶液を調製した。これとは別に、コントロールとしてDMSOを準備した。
(2)マウス結腸初代培養細胞の培養
マウス(C57BL/6J、雄、11〜15週齢、日本クレア社より入手)を麻酔下で頚椎脱臼により安楽死させた後結腸を摘出し、氷冷したL-15培地(Sigma社製)に浸透した。これを氷冷したD-PBS(Dulbecco's Phosphate-Buffered Saline、life technologies社製)中に移し、腸管に付着した脂肪、血管等を丁寧に除去した。管腔内を氷冷したD-PBSで洗浄した後、メスを用いて組織を2mm2以下の小片に細切した。小片をD-PBSで3〜4回洗浄した後、0.4mg/mL collagenase XI(Sigma社製)のDMEM溶液を10mL添加し、10秒間おだやかに転倒混和し、37℃で5分間インキュベートした。上清を除去した後、再びcollagenase溶液を10mL添加して10秒間おだやかに転倒混和し、37℃で5分間インキュベートした。その後、上清を除去し、再びcollagenase溶液を10mL添加して10秒間おだやかに転倒混和し、37℃で15分間インキュベートした。その間、5分ごとに10秒間振とうした。インキュベート後に上清を回収(上清1)した。同様にして、collagenase溶液を添加して15分間インキュベートし、上清を回収(上清2)した。上清1と上清2はそれぞれ、約800rpmで3分間遠心した(室温)。
上清を除去し、complete culture medium(10% FBS(invitrogen社製)、1% glutamax(invitrogen社製)、1% penicillin/streptomycin(invitrogen社製)含有DMEM)7mLに懸濁した。これを、DMEMで10倍希釈したマトリゲル(BD biosciences社製)を100μL/wellとなるようにコートした24ウェルプレートに播種(24wells/1匹)し、37℃、5%CO2下で2日間培養した。
(3)GLP-1の分泌促進
培養開始から2日後に、培地を前記試験物質溶液に交換し30分間培養した。
培養後、アプロチニン溶液(プロテアーゼ阻害剤、和光純薬工業社製)を加えた微量遠心管に上清を回収した。浮遊細胞を除去した後、残った細胞をcell lysis buffer(0.5%sodium deoxycholate monohydrate(Sigma社製)、1% Igepal CA-630(Sigma社製)、5% Tris-HCl(pH7.4)、150mM NaCl、EDTA-free protease inhibitor cocktail tablet(Roche社製))で溶解し、GLP-1定量まで-80℃で保存した。
(4)結果
GLP-1の定量は、GLUCAGON-LIKE PEPTIDE-1(ACTIVE)ELISA KIT(ミリポア社製)を用いて、上清については原液を、細胞溶解液については138バッファーで25倍希釈したものを用いた。そして、モンテルカストのGLP-1分泌促進作用は、以下の式で示すactive GLP-1分泌率をもとに評価した。また、有意差検定をStudent t-testにより実施した。

Active GLP-1分泌率(%)=
(上清中active GLP-1量)/{(上清中active GLP-1量)+(細胞溶液中active GLP-1量)}×100
モンテルカストのGLP-1分泌促進作用の結果を図2に示す。図2に示すように、CysLT1受容体のアンタゴニストであるモンテルカストの作用により、GLP-1の分泌が促進される。さらに、モンテルカストの濃度が100μMの場合に、コントロールと比べて統計学的に有意に(p<0.05)GLP-1の分泌が促進された。

Claims (5)

  1. システイニルロイコトリエン−1受容体のアンタゴニストを有効成分とする、GLP−1分泌促進剤であって、前記アンタゴニストが、モンテルカスト、ザフィルルカスト、及びプランルカストからなる群より選ばれる少なくとも1種である、GLP−1分泌促進剤
  2. システイニルロイコトリエン−1受容体のアンタゴニストを有効成分とする、肥満予防又は改善剤であって、前記アンタゴニストが、モンテルカスト、ザフィルルカスト、及びプランルカストからなる群より選ばれる少なくとも1種である、肥満予防又は改善剤
  3. システイニルロイコトリエン−1受容体のアンタゴニストを有効成分とする、食欲抑制剤であって、前記アンタゴニストが、モンテルカスト、ザフィルルカスト、及びプランルカストからなる群より選ばれる少なくとも1種である、食欲抑制剤
  4. システイニルロイコトリエン−1受容体のアンタゴニストを有効成分とする、グルカゴン分泌抑制剤であって、前記アンタゴニストが、モンテルカスト、ザフィルルカスト、及びプランルカストからなる群より選ばれる少なくとも1種である、グルカゴン分泌抑制剤
  5. システイニルロイコトリエン−1受容体のアンタゴニストを有効成分とする、胃排泄遅延剤であって、前記アンタゴニストが、モンテルカスト、ザフィルルカスト、及びプランルカストからなる群より選ばれる少なくとも1種である、胃排泄遅延剤


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