以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
図1はローリング抑制装置の第1実施形態を示すもので、移動電源車に適用した状態を示す概略側面図である。図2は、図1のA−A方向矢視図である。図3は図1におけるローリング抑制装置の部分を拡大して示す図である。図4は図3のB−B方向矢視図である。図5は、ローリング抑制装置における基礎側との連結部分を拡大して示す斜視図である。図6は、ローリング抑制装置における車両側との連結部分を拡大して示す斜視図である。
本実施形態のローリング抑制装置は、図1、図2、図3、図4に符号1で示すもので、本実施形態では、車両として、たとえば、図1に示すような移動電源車2のローリング抑制に適用する場合の例を示す。
ここで、先ず、移動電源車2の基本的な構成について概説する。
移動電源車2は、キャブオーバー型のトラックのフレーム3上に、荷台4を備え、荷台4の上側には、荷台4の上方を覆う箱形の収容壁5が設けられている。
フレーム3は、左右のタイヤ6よりも車体中央寄りとなる位置で前後方向に延びる左右一対のメインフレーム(サイドメンバとも称す)3aと、左右方向に延びて各メインフレーム3a同士を前後方向の複数個所で繋ぐクロスメンバ3bとを備えた構成の所謂ラダーフレームとされている。
荷台4は、フレーム3より左右方向に張り出して、移動電源車2の車幅と対応する幅寸法を備えている。
荷台4の上側には、収容壁5の内側となる配置で、ガスタービン7と、ガスタービン7の出力側に減速機8を介して接続された発電機9とが設けられている。
10は、ガスタービン7に対して収容壁5の外部の空気を給気するガスタービン用給気装置、11はガスタービン用給気消音器である。12は、ガスタービン7からの排気を収容壁5の外部に排気するガスタービン用排気装置、13はガスタービン用排気消音器である。14は収容壁5の内部に対して外部の空気を給気可能な給気口、15は収容壁5の内部の気体を外部に排気する排気装置である。
更に、荷台4上には、個別の説明は省略するが、ガスタービン7や発電機9に付設される様々な機器が設けられている。
一方、フレーム3の下側には、サスペンション(図示せず)によって懸架されたタイヤ6のほかに、走行用燃料のタンクや、エアタンクなどの車体下部側の付属機器16が取り付けられている。
以上の構成を備えた移動電源車2に本実施形態のローリング抑制装置1を適用する場合は、予め、図1、図2に示すように、移動電源車2を、電力供給が必要とされる現場の基礎(地面)17に設定された車両停止位置18に停止させる。
この際、基礎17には、図2に示すように、車両停止位置18を表示しておくようにすればよい。この車両停止位置18の表示は、移動電源車2を停止させるときの車体の前後方向位置および左右方向位置と、車体の向きとを、設定された車両停止位置18に合わせるための指標である。したがって、車両停止位置18の表示は、移動電源車2の図示しない運転者や停止位置を指示する誘導員が、移動電源車2の車体の前後方向位置および左右方向位置と、車体の向きについて、設定された車両停止位置18とのずれの有無を確認できるようにしてあればよい。なお、車両停止位置18の表示は、たとえば、図2に示すように、移動電源車2の車体全体を取り囲むような枠であってもよく、また、各タイヤ6を止める位置を指定する表示や、その他の任意の表示形式であってもよいことは勿論である。
なお、図2では、移動電源車2については、フレーム3を実線で示すと共に、車体の外形とタイヤ6を二点鎖線で示し、それ以外の構成は記載を省略してある。
本実施形態のローリング抑制装置1は、図1、図2に示すように、前記のように車両停止位置18に移動電源車2を停止させた状態にて、車体の前後方向におけるタイヤ6や車体下部側の付属機器16との干渉が生じない個所に配置されて、車体側の固定部としてのフレーム3と、基礎17とを繋ぐように設けられている。
この際、本実施形態のローリング抑制装置1は、車体の前後方向の複数個所に設けることが好ましい。これは、本実施形態のローリング抑制装置1の数が多いほど、1つのローリング抑制装置1が受ける荷重を低減させることができるためである。また、本実施形態のローリング抑制装置1を複数設ける場合は、車体の重心位置よりも前方の個所と重心位置よりも後方の個所とを含む配置で設けることが好ましい。これは、本実施形態のローリング抑制装置1によって後述するように移動電源車2のローリングを抑制するときに、個々のローリング抑制装置1が水平方向に捩じるようなモーメントを受けることを抑制するためである。したがって、これらの構成を採用すれば、本実施形態のローリング抑制装置1の後述する各構成部材や構成部材同士の可動部分に必要とされる剛性や強度について、要求値の引き下げを図る点で有利になる。
図1、図2では、移動電源車2の車体の前後方向の2個所に本実施形態のローリング抑制装置1を備えた構成例が示してある。
なお、本実施形態のローリング抑制装置1は、移動電源車2の車体の前後方向の1個所に設ける構成としてもよいことは勿論である。その場合、ローリング抑制装置1の前後方向の位置は、車体の重心位置にできるだけ近づけることが好ましい。このようにすれば、移動電源車2のローリングを抑制するときに、ローリング抑制装置1が、水平方向に捩じるようなモーメントを受けることを抑制するために有利な構成となる。
次に、本実施形態のローリング抑制装置1の具体的な構成について図3、図4を用いて説明する。なお、説明の便宜上、本実施形態のローリング抑制装置1については、車両停止位置18に停止させた移動電源車2の前、後、左、右の各方向に対応する方向を、ローリング抑制装置1の前、後、左、右という。
本実施形態のローリング抑制装置1は、左右方向に設定された間隔を隔てて配置された複数の屈曲リンク機構19a,19bを備えている。図4では、移動電源車2の車体の左端側に対応する位置と、右端側に対応する位置とに、屈曲リンク機構19aと屈曲リンク機構19bとを備えた構成が示してある。
各屈曲リンク機構19a,19bは、上部リンク部材20a,20bの下端側と、下部リンク部材21a,21bの上端側とを、前後方向に延びるリンク軸22a,22bを介して揺動可能に接続した構成とされている。なお、後述するように、各屈曲リンク機構19a,19bは、左右の片側から見て、図3に示すような直立した姿勢から、前後方向に傾いた姿勢となることがある。各屈曲リンク機構19a,19bに前後の傾きが生じると、リンク軸22a,22bには、前後方向に水平な姿勢から前下がりや前上がりの傾きが生じる。よって、前記した前後方向に延びるリンク軸22a,22bという表現は、リンク軸22a,22bが前後方向に水平な状態のみではなく、前下がりまたは前上がりの傾きを生じた状態で略前後方向に延びる状態も含むものとする。
各屈曲リンク機構19a,19bは、上部リンク部材20a,20bの長手方向と、下部リンク部材21a,21bの長手方向とが互いに交差する屈曲姿勢とされ、その屈曲姿勢の屈曲角度が各屈曲リンク機構19a,19b同士で揃えられている。
本実施形態のローリング抑制装置1は、更に、左右方向に延びて各屈曲リンク機構19a,19bの揺動中心同士を連結する梁部材23と、基礎17における左右方向の複数個所に設置されたアンカー24と、各アンカー24に各下部リンク部材21a,21bの下端側を連結する基礎側連結手段25と、移動電源車2における左右方向の複数個所に配置されてフレーム3に対する相対位置が固定された取付座26と、各取付座26に各上部リンク部材20a,20bの上端側を連結する車両側連結手段27とを備えた構成とされている。
基礎側連結手段25は、各下部リンク部材21a,21bをリンク軸22a,22bに平行な回転軸29を中心に左右方向に揺動可能とする左右方向の揺動手段28と、各下部リンク部材21a,21bを後述する基礎側で左右方向に延びる回転軸31を中心に前後方向に揺動可能とする前後方向の揺動手段30とを備えた構成とされている。
また、車両側連結手段27は、各上部リンク部材20a,20bをリンク軸22a,22bに平行な回転軸33を中心に左右方向に揺動可能とする左右方向の揺動手段32と、各上部リンク部材20a,20bを後述する車両側で左右方向に延びる回転軸35を中心に前後方向に揺動可能とする前後方向の揺動手段34とを備えた構成とされている。
更に、本実施形態のローリング抑制装置1は、基礎側連結手段25の各回転軸29の中心間距離を各リンク軸22a,22bの中心間距離と同様にして保持する下部側間隔保持手段36と、車両側連結手段27の各回転軸33の中心間距離を各リンク軸22a,22bの中心間距離と同様にして保持する上部側間隔保持手段37とを備える構成とされている。
本実施形態では、図3、図4に示すように、梁部材23は、左端側と右端側に、それぞれ前後方向に貫通する軸挿通孔38を備えていて、各軸挿通孔38に、各屈曲リンク機構19a,19bの各リンク軸22a,22bを回転可能に挿通させた構成とされている。
これにより、各屈曲リンク機構19a,19bは、それぞれの回動中心となるリンク軸22a,22b同士が、梁部材23を介して連結されると共に、各リンク軸22a,22bの中心間距離が、梁部材23によって一定に保持される。
なお、図3、図4では、梁部材23は、各軸挿通孔38に各リンク軸22a,22bの前後方向の中間部を挿通させた構成を示した。これに対し、図示しないが、各リンク軸22a,22bの前端側や後端側を、対応する上部リンク部材20a,20bや下部リンク部材21a,21bより前後方向に突出させると共に、各リンク軸22a,22bの突出端を、梁部材23の各軸挿通孔38に嵌める構成としてもよいことは勿論である。この場合は、各リンク軸22a,22bの端部を軸挿通孔38より突出させて、この突出端部に軸挿通孔38からの抜け止め手段を備えるようにすればよい。
各下部リンク部材21a,21bの下方には、移動電源車2の車幅よりも左右方向に長く延びる梁状の間隔保持部材39が配置されている。間隔保持部材39の左端側と右端側の上側には、各回転軸29を保持する個別のブラケット40が、各回転軸29の中心間距離が各リンク軸22a,22bの中心間距離と同様になる配置で設けられている。各回転軸29には、各下部リンク部材21a,21bの下端側が、左右方向に揺動可能に取り付けられている。
間隔保持部材39の左端側と右端側の下側には、それぞれ連結部材41が回転軸31を介して前後方向に揺動可能に取り付けられている。
基礎17には、各連結部材41を固定するためのアンカー24が設置されている。
アンカー24は、たとえば、図5に示すように、基礎17の表面に露出するプレート部42と、プレート部42の上面に上向きに突設された複数のボルト(スタッドボルト)43とを備えた構成とされている。
連結部材41は、アンカー24のプレート部42の上面に載置するためのプレート部44と、プレート部44におけるアンカー24の各ボルト43の配置に対応する個所に上下に貫通させて設けた貫通孔45とを備え、更に、各貫通孔45は、各ボルト43の径よりも設定された寸法分、大きな開口で形成した構成とされている。
更に、連結部材41をアンカー24に対して取り外し可能に固定する固定手段として、たとえば、各貫通孔45の開口よりも大きな平面形状を有し、中央部にボルト挿通孔46aを備えた押さえプレート46と、各ボルト43に上端側から螺着するナット47とを備えている。
なお、連結部材41の各貫通孔45を各ボルト43の径よりも所定の寸法で大きな開口としたのは、以下の理由による。
すなわち、アンカー24は、基礎17に予め設けられるものであるため、位置は固定されている。これに対し、移動電源車2は、車両停止位置18(図2参照)に乗り入れて停止させるものであるため、切り返しなどを行って停止位置をできるだけ車両停止位置18の表示に合わせるようにしても、車体の車幅方向の向きと、基礎17に設置された左右のアンカー24が並ぶ方向との間には、角度ずれが生じることがある。
そこで、本実施形態では、前記のような角度ずれが生じた場合であっても、それを補正するための補正手段として、連結部材41の各貫通孔45を各ボルト43の径よりも大きな開口とした構成を備えている。これにより、各連結部材41は、各貫通孔45に対応するボルト43を挿通させた状態であっても各アンカー24に対する前後左右方向の位置や角度姿勢を調整することができる。
したがって、各連結部材41を各アンカー24に取り付けるときには、先ず、各屈曲リンク機構19a,19bが並ぶ方向である間隔保持部材39の長手方向が、車両停止位置18(図2参照)に停止させた移動電源車2の車幅方向の向きに一致するように、連結部材41の前後方向位置および角度姿勢を調整して各アンカー24に載置する。その後は、各ボルト43に上方から嵌めた各押さえプレート46をプレート部44の上面に当ててから、各ボルト43にナット47を締めて、各連結部材41の固定を行うようにすればよい。
したがって、本実施形態では、基礎側連結手段25は、回転軸29、ブラケット40、間隔保持部材39、回転軸31および連結部材41により構成されている。また、左右方向の揺動手段28の機能は、間隔保持部材39に設けた各ブラケット40に各下部リンク部材21a,21bの下端側が各回転軸29を介して左右方向に揺動可能に取り付けられている部分で得ることができる。前後方向の揺動手段30の機能は、各アンカー24に連結される各連結部材41に対し、間隔保持部材39が各回転軸31を介して前後方向に揺動可能に取り付けられている部分で得ることができる。更に、下部側間隔保持手段36は、間隔保持部材39および各回転軸29を保持した各ブラケット40により構成されている。
各上部リンク部材20a,20bの上方には、左右方向に延びる梁状の間隔保持部材48が配置されている。間隔保持部材48の左端側と右端側の下側には、各回転軸33を保持する個別のブラケット49が、各回転軸33の中心間距離が各リンク軸22a,22bの中心間距離と同様になる配置で設けられている。各回転軸33には、各上部リンク部材20a,20bの上端側が、左右方向に揺動可能に取り付けられている。
間隔保持部材48の上側には、移動電源車2のフレーム3における左右の各メインフレーム3aに対応する2個所に、それぞれ連結部材50が回転軸35を介して前後方向に揺動可能に取り付けられている。
各メインフレーム3aの下側には、取付座26が設けられている。
各取付座26は、たとえば、図6に示すように、メインフレーム3aの下面に取り付けられたプレート部51と、プレート部51の下面に下向きに突設された複数のボルト(スタッドボルト)52とを備えた構成とされている。
連結部材50は、取付座26のプレート部51の下面に沿わせて配置するプレート部53と、プレート部53における取付座26の各ボルト52の配置に対応する個所に上下に貫通させて設けたボルト挿通孔54とを備えた構成とされている。
更に、連結部材50を取付座26に対して取り外し可能に固定する固定手段としては、連結部材50の各ボルト挿通孔54に挿通させた各ボルト52に下端側から螺着させて締めるナット55を備えている。
したがって、本実施形態では、車両側連結手段27は、回転軸33、ブラケット49、間隔保持部材48、回転軸35および連結部材50により構成されている。また、左右方向の揺動手段32の機能は、間隔保持部材48に設けた各ブラケット49に各上部リンク部材20a,20bの上端側が各回転軸33を介して左右方向に揺動可能に取り付けられている部分で得ることができる。前後方向の揺動手段34の機能は、各取付座26に連結される各連結部材50に対し、間隔保持部材48が各回転軸35を介して前後方向に揺動可能に取り付けられている部分で得ることができる。更に、上部側間隔保持手段37は、間隔保持部材48および各回転軸33を保持した各ブラケット49により構成されている。
なお、梁部材23は、後述するように移動電源車2のローリングを抑制する際に長手方向に沿って作用することになる圧縮方向の応力や引張方向の応力に対して座屈による変形や伸び変形を生じることなく耐え得る強度や剛性を備えている。
また、各リンク軸22a,22b、各回転軸29、各回転軸31、各回転軸33,各回転軸35による揺動部分は、移動電源車2のローリングを抑制する際に揺動以外の方向の動きを抑制できる強度を備えている。
各屈曲リンク機構19a,19bにおける上部リンク部材20a,20bや下部リンク部材21a,21bは、移動電源車2のローリングを抑制する際に圧縮方向や曲げ方向の応力が作用しても変形を抑制できる十分な強度や剛性を備えている。
更に、本実施形態における間隔保持部材39と間隔保持部材48は、移動電源車2のローリングを抑制する際に曲げ方向の応力、更には、引張方向や圧縮方向の応力が作用しても変形を抑制できる十分な強度や剛性を備えている。
以上の構成としてある本実施形態のローリング抑制装置1を使用する場合は、移動電源車2が車両停止位置18に停止している状態で、先ず、アンカー24および取付座26が取り外され且つ各屈曲リンク機構19a,19bが屈曲角度ができるだけ小さくなるように折りたたまれている状態のローリング抑制装置1を、車体の左右いずれか片側から、移動電源車2のフレーム3と基礎17との間の隙間へ挿入する。
次に、上部の間隔保持部材48を図示しないジャッキなどを用いて持ち上げて、各屈曲リンク機構19a,19bを上下方向に広げる。その状態で、各連結部材50は、各取付座26に位置を合わせて連結し、また、各連結部材41は、各アンカー24に位置を合わせて連結して、本実施形態のローリング抑制装置1を形成する。
なお、この際、車体の車幅方向の向きと、基礎17に設置された左右のアンカー24が並ぶ方向との間に生じている角度ずれは、各連結部材41に備えた前述の補正手段によって補正することができる。
また、移動電源車2を車両停止位置18に停止させるときには、車体の停止位置が設定された車両停止位置18に対して前後左右方向に位置ずれを生じる場合があるが、左右方向の位置ずれは、基礎側連結手段25と車両側連結手段27に備えた左右方向の各揺動手段28,32の角度の変化で吸収することができる。また、前後方向の位置ずれは、基礎側連結手段25と車両側連結手段27に備えた前後方向の各揺動手段30,34の角度の変化で吸収することができる。
更に、移動電源車2では、車体の重心位置の左右方向への偏りや、左右の図示しないサスペンションの特性の差や、基礎17の表面の傾斜などの原因により、基礎17に左右方向に並べて設置された各アンカー24を結ぶ線と、フレーム3に左右方向に並べて設けられた各取付座26を結ぶ線とが必ずしも平行にならずに上下方向の角度ずれを生じる場合がある。このような角度ずれが生じている場合は、各アンカー24と各連結部材41との間や、各取付座26と各連結部材50との間に、シムなどの図示しない調整部材を適宜介装して、各連結部材41と各連結部材50の固定される位置を調整すればよい。
各連結部材50の対応する各取付座26への連結は、必要に応じて作業者が車体の下側に入って作業を行うようにすればよい。なお、この連結作業の作業性を高めるために、基礎17に、作業者が入って連結作業を行うための図示しないピットを備えるようにしてもよい。このピットは、たとえば、移動電源車2が車両停止位置18に進入して停止するまでの各タイヤ6の移動経路と干渉しないように配置するか、あるいは、連結作業まではピットを塞いでピット上をタイヤ6が通過できるようにするための蓋を備える構成とすればよい。
前記のように移動電源車2側と基礎17側に連結された本実施形態のローリング抑制装置1が形成されている状態において、地震による振動が外力として移動電源車2に作用すると、移動電源車2には振動が生じる。
この際、車体が傾きを伴わずに上下方向に振動するときには、左右の各屈曲リンク機構19a,19bが同位相で且つ同じ変化量で上下に伸縮する。
また、タイヤ6が変形することなどに伴って車体が傾きを伴わずに左右方向に振動するときには、基礎側連結手段25に備えた左右方向の各揺動手段28同士が左右の同じ方向に同じ角度で揺動し、車両側連結手段27に備えた左右方向の各揺動手段32同士が左右の同じ方向に同じ角度で揺動し、更に、各屈曲リンク機構19a,19bが同じ屈曲角度の角度変化を生じる。
更に、タイヤ6が変形することなどに伴って車体が傾きを伴わずに前後方向に振動するときには、基礎側連結手段25に備えた前後方向の各揺動手段30同士が前後の同じ方向に同じ角度で揺動し、車両側連結手段27に備えた前後方向の各揺動手段34同士が左右の同じ方向に同じ角度で揺動し、更に、各屈曲リンク機構19a,19bが同じ屈曲角度の角度変化を生じる。
したがって、移動電源車2に車体の傾きを伴わずに上下方向成分、左右方向成分、前後方向成分のうちの単数又は複数の成分による振動が生じる場合は、本実施形態のローリング抑制装置1は、その振動に追従して変形することができる。この際、屈曲リンク機構19aと屈曲リンク機構19bとは、同じ屈曲角度で互いに平行な姿勢となるので、梁部材に対して何ら応力が作用することはない。
次に、本実施形態のローリング抑制装置1による移動電源車2のローリング抑制作用について説明する。
ここで、先ず、地震による振動が外力として移動電源車2に作用して、移動電源車2の車体が、図4に一点鎖線の矢印で示すように左側へのローリングを生じようとする場合について説明する。
この場合は、左側の屈曲リンク機構19aは、一点鎖線で示すように上下方向寸法が小さくなる方向の変形を生じようとし、一方、右側の屈曲リンク機構19bは、一点鎖線で示すように上下方向寸法が大きくなる方向の変形を生じようとする。
左側の屈曲リンク機構19aでは、上下方向寸法が小さくなる変形は、屈曲姿勢の屈曲角度が小さくなる変形であるため、リンク軸22aは元の位置から右方向へ変位しようとする。
右側の屈曲リンク機構19bでは、上下方向寸法が大きくなる変形は、屈曲姿勢の屈曲角度が大きくなる変形であるため、リンク軸22bは元の位置から左方向へ変位しようとする。
したがって、車体が左側へのローリングを生じようとするときには、リンク軸22aとリンク軸22bは、互いに近接する方向へ変位しようとする。
しかし、各リンク軸22a,22bは梁部材23の両端側に取り付けられているため、リンク軸22a,22b同士を互いに近接させる方向へ変位させようとする力は、梁部材23に対して長手方向に沿って両端側から圧縮する方向の応力として作用するようになる。この際、梁部材23が、前記圧縮する方向の応力に耐え得る十分な強度と剛性を備えるものとしてあるので、各リンク軸22a,22bが互いに接近する変位は阻止され、よって、車体の左側へのローリングは抑制される。
次いで、地震による振動が外力として移動電源車2に作用して、移動電源車2の車体が、図4に二点鎖線の矢印で示すように右側へのローリングを生じようとする場合について説明する。
この場合は、左側の屈曲リンク機構19aは、二点鎖線で示すように上下方向寸法が大きくなる方向の変形を生じようとし、一方、右側の屈曲リンク機構19bは、二点鎖線で示すように上下方向寸法が小さくなる方向の変形を生じようとする。
左側の屈曲リンク機構19aでは、上下方向寸法が大きくなる変形は、屈曲姿勢の屈曲角度が大きくなる変形であるため、リンク軸22aは元の位置から左方向へ変位しようとする。
右側の屈曲リンク機構19bでは、上下方向寸法が小さくなる変形は、屈曲姿勢の屈曲角度が小さくなる変形であるため、リンク軸22bは元の位置から右方向へ変位しようとする。
したがって、車体が右側へのローリングを生じようとするときには、リンク軸22aとリンク軸22bは、互いに離反する方向へ変位しようとする。
しかし、各リンク軸22a,22bは梁部材23の両端側に取り付けられているため、リンク軸22a,22b同士を互いに離反させる方向へ変位させようとする力は、梁部材23に対して長手方向に沿って両端側を引っ張る方向の応力として作用するようになる。
この際、梁部材23が、前記引っ張り方向の応力に耐え得る十分な強度と剛性を備えるものとしてあるので、各リンク軸22a,22bが互いに離反する変位は阻止され、よって、車体の右側へのローリングは抑制される。
このように、本実施形態のローリング抑制装置1によれば、設定された車両停止位置18に停止した状態の移動電源車2に対し、地震による振動が外力として作用しても、移動電源車2が左右方向にローリングすることを抑制することができる。
よって、本実施形態のローリング抑制装置1を適用した移動電源車2は、たとえば、原子力発電所や通信設備のような使用現場で非常用電源として用いている状態で地震が発生した場合であっても、横転につながるようなローリングが生じることを抑制することができる。このため、移動電源車2では、発電機能の健全性の維持を図ることができる。
本実施形態のローリング抑制装置1は、間隔保持部材39と各ブラケット40とにより下部側間隔保持手段36を構成しているため、各連結部材41をそれぞれ対応するアンカー24に連結するときには、予め、下部側間隔保持手段36によって各回転軸29の中心間距離を各リンク軸22a,22bの中心間距離と同様にして保持した状態の下で、連結作業を行うことができる。
よって、本実施形態のローリング抑制装置1では、各連結部材41の各アンカー24に対する連結作業の精度に影響を受けることなく、各回転軸29の中心間距離を各リンク軸22a,22bの中心間距離と同様にして保持する構成の精度を高めることができる。
また、本実施形態のローリング抑制装置1は、間隔保持部材48と各ブラケット49とにより上部側間隔保持手段37を構成しているため、各連結部材50をそれぞれ対応する取付座26に連結するときには、予め、上部側間隔保持手段37によって各回転軸33の中心間距離を各リンク軸22a,22bの中心間距離と同様にして保持した状態の下で、連結作業を行うことができる。
よって、本実施形態のローリング抑制装置1では、各連結部材50の各取付座26に対する連結作業の精度に影響を受けることなく、各回転軸33の中心間距離を各リンク軸22a,22bの中心間距離と同様にして保持する構成の精度を高めることができる。
ところで、前記したローリング抑制作用について、移動電源車2に作用する振動がより大きくなっても、横転につながるようなローリングの発生を抑制できるようにするためには、すべての屈曲リンク機構19a,19bの屈曲角度を揃えることが有効である。
この点、本実施形態のローリング抑制装置1は、各回転軸29の中心間距離、および、各回転軸33の中心間距離を、各リンク軸22a,22bの中心間距離と同様にして保持する構成の精度を高めることが可能なため、すべての屈曲リンク機構19a,19bの屈曲角度を精度よく揃えることができる。このため、本実施形態のローリング抑制装置1によれば、移動電源車2のローリング抑制効果の向上化を図ることができる。
更に、各屈曲リンク機構19a,19bは、屈曲姿勢から、移動電源車2の車体の上下方向や左右方向への変位に伴って上部リンク部材20a,20bと下部リンク部材21a,21bとが一直線上に並ぶ配置になるまで伸展すると、それ以上の車体の変位を拘束する作用を生じるようなる。そのため、本実施形態のローリング抑制装置1は、各屈曲リンク機構19a,19bにおける上部リンク部材20a,20bと下部リンク部材21a,21bの長さ寸法を適切に設定することにより、地震発生時などに移動電源車2の車体の浮き上がりや横滑りを拘束するストッパの機能を発揮することができる。
[第1実施形態の応用例]
図7は、第1実施形態のローリング抑制装置の応用例を示すもので、図4と同じ方向から見た図である。
なお、図7において第1実施形態と同一のものには同一符号を付してその説明を省略する。
本応用例のローリング抑制装置1は、第1実施形態と同様の構成において、移動電源車2の車体が振動を生じていない初期状態から振動による変位を生じるときに、その車体の変位に伴って弾性変形を生じるばね要素56を更に備える構成としたものである。
ばね要素56は、たとえば、図7に示すように、コイルばねのような一軸方向に伸縮変形する形式のものとし、このばね要素56を、梁部材23と下部側の間隔保持部材39との間に接続した構成とする。
なお、車体が左方向へ変位するときと右方向へ変位するときに偏った力が発生しないように、2つのばね要素56を左右対称となる配置で備えるようにしてある。
更に、梁部材23と間隔保持部材39との相対位置の変化に対応するために、ばね要素56における梁部材23との接続部分と、間隔保持部材39との接続部分は、共に揺動可能としてある。
この構成によれば、第1実施形態に比して、移動電源車2の車体について上下方向、左右方向、前後方向の振動の固有振動数を高めることができる。
更に、ばね要素56の剛性の大きさを調整することにより、車体の固有振動数を調整することができる。したがって、ばね要素56の剛性の大きさの調整により、車体の固有振動数を、地震の振動の有する加振エネルギが低い振動数に調整することが可能になる。
なお、ばね要素56は、移動電源車2の車体が振動を生じることに伴って弾性変形を生じ、その弾性変形の復元力を車体に対して作用させることができるようにしてあれば、コイルばね以外の物を用いるようにしてもよく、また、図示した以外の配置としてもよいことは勿論である。
更に、本応用例のローリング抑制装置1は、各屈曲リンク機構19a,19bの上下方向の伸縮に伴って伸縮するダンパ57を備えた構成としてある。
ダンパ57は、たとえば、図7に示すように、間隔保持部材39と間隔保持部材48との間に左右一対で配置して、下端側を間隔保持部材39に揺動可能に取り付け、上端側を間隔保持部材48に揺動可能に取り付けた構成とする。
このようにダンパ57を備える構成とすることにより、移動電源車2の車体に生じる振動に対して減衰を付加することができる。更に、ダンパ57の間隔保持部材39と間隔保持部材48との間に取り付けるときに初期状態での鉛直方向からの傾斜角度を調整することにより、上下方向の振動と左右方向の振動とに対する減衰係数を調整することができる。
なお、ダンパ57は、各屈曲リンク機構19a,19bの上下方向の伸縮に伴って伸縮するようにしてあれば、図示した以外の配置としてもよいことは勿論である。
[第2実施形態]
図8はローリング抑制装置の第2実施形態を示すもので、図4と同じ方向から見た図である。
なお、図6において第1実施形態と同一のものには同一符号を付してその説明を省略する。
本実施形態のローリング抑制装置は、図8に符号1Aで示すもので、第1実施形態と同様の構成において、基礎17に設ける各アンカー24を、移動電源車2のフレーム3に設けた各取付座26の下方となる位置に配置する構成としたものである。
また、本実施形態では、左右の各屈曲リンク機構19a,19bを、各取付座26の下方に配置した構成としてある。これに伴い、梁部材23は、左右方向の両端側が各屈曲リンク機構19a,19bの各リンク軸22a,22bの位置に配置されるように、左右方向の長さ寸法が調整してある。
なお、間隔保持部材39と間隔保持部材48は、左右方向の長さ寸法を、各屈曲リンク機構19a,19b同士、および、各アンカー24同士の左右方向の間隔に合わせた寸法としてある。
本実施形態のローリング抑制装置1Aは、第1実施形態のローリング抑制装置1と同様に使用して、同様の効果を得ることができる。
更に、本実施形態のローリング抑制装置1Aは、移動電源車2のフレーム3の真下の空間にほぼ納めた配置とすることができる。このため、本実施形態のローリング抑制装置1Aは、移動電源車2に適用するときに、フレーム3の左右両側に配置されているタイヤ6(図2参照)や車体下部側の付属機器16(図1参照)に対する干渉を回避した位置に設置しやすいものとすることができる。
また、梁部材23の長さ寸法は、第1実施形態に比して短くすることができるため、梁部材23を、長手方向に沿って作用する圧縮方向の応力に対して座屈変形が生じ難いものとすることができる。
[第3実施形態]
図9はローリング抑制装置の第3実施形態を示すもので、図4と同じ方向から見た図である。
なお、図9において第1実施形態と同一のものには同一符号を付してその説明を省略する。
本実施形態のローリング抑制装置は、図9に符号1Bで示すもので、第1実施形態と同様の構成において、移動電源車2側に設ける取付座26を、フレーム3の左右の各メインフレーム3aの下側に取り付けた構成に代えて、フレーム3の左右両側に、移動電源車2の車幅と対応する位置まで左右方向に突出する左右一対の支持梁部材58を取り付け、各支持梁部材58における突出端側の下側に、取付座26を左右一対で設けた構成としたものである。
各支持梁部材58は、フレーム3に対して剛接合されている。また、各支持梁部材58は、移動電源車2のローリングを抑制する際に曲げ方向の応力が作用しても変形を抑制できる十分な強度や剛性を備えている。したがって、本実施形態では、各取付座26は、各支持梁部材58を介在した状態で、フレーム3に対する相対位置が固定されている。
間隔保持部材48の上側には、各支持梁部材58に取り付けられた各取付座26の下方位置となる2個所に、それぞれ連結部材50が回転軸35を介して前後方向に揺動可能に取り付けられている。
各連結部材50は、第1実施形態と同様に、各取付座26に対して取り外し可能に固定されている。
本実施形態のローリング抑制装置1Bは、第1実施形態のローリング抑制装置1と同様に使用して、同様の効果を得ることができる。
更に、本実施形態では、各取付座26が移動電源車2における車幅方向の両端付近に配置されているため、各連結部材50を各取付座26に連結する作業は、車体の側方から実施することが可能になる。よって、本実施形態のローリング抑制装置1Bは、各連結部材50の各取付座26に対する連結作業の作業性を高めることができる。
また、本実施形態では、各連結部材50が、間隔保持部材48に取り付けられて各回転軸33を保持している各ブラケット49のほぼ真上に配置されていれば、移動電源車2のローリングを抑制する際、間隔保持部材48には曲げ方向の応力が作用しなくなる。よって、本実施形態では、間隔保持部材48に必要とされる強度や剛性を、第1実施形態に比して引き下げることができて、間隔保持部材48の重量や製造コストの低減化を図ることができる。
[第4実施形態]
図10はローリング抑制装置の第4実施形態を示すもので、図4と同じ方向から見た図である。
なお、図10において第1実施形態と同一のものには同一符号を付してその説明を省略する。
本実施形態のローリング抑制装置は、図10に符号1Cで示すもので、第1実施形態と同様の構成において、移動電源車2側に設ける取付座26を、フレーム3の左右の各メインフレーム3aの下側に取り付けた構成に代えて、荷台4の左右両端寄りの下側に、取付座26を左右一対で設けた構成としたものである。
本実施形態では、各取付座26の上下方向位置を、第1実施形態における各取付座26の上下方向位置と同様とするために、各取付座26は、荷台4の下面に対して個別の取付部材59を介装した状態で取り付けられている。
したがって、本実施形態では、各取付座26は、各取付部材59と荷台4を介在した状態で、フレーム3に対する相対位置が固定されている。
なお、本実施形態では、荷台4には、移動電源車2のローリングを抑制する際に曲げ方向の応力が作用することになる。そのため、荷台4は、前記のような曲げ応力が作用しても変形を抑制できる十分な強度や剛性を備えることができるように、必要に応じて補強材60を適宜用いて構造的な補強を行うようにすればよい。
間隔保持部材48の上側には、各取付座26の下方位置となる2個所に、それぞれ連結部材50が回転軸35を介して前後方向に揺動可能に取り付けられている。
各連結部材50は、第1実施形態と同様に、各取付座26に対して取り外し可能に固定されている。
本実施形態のローリング抑制装置1Cは、第1実施形態のローリング抑制装置1と同様に使用して、同様の効果を得ることができる。
更に、本実施形態では、各取付座26が移動電源車2における荷台4の左右両端寄りに配置されているため、各連結部材50を各取付座26に連結する作業は、車体の側方から実施することが可能になる。よって、本実施形態のローリング抑制装置1Cは、各連結部材50の各取付座26に対する連結作業の作業性を高めることができる。
また、本実施形態では、各連結部材50が、間隔保持部材48に取り付けられて各回転軸33を保持している各ブラケット49のほぼ真上に配置されていれば、移動電源車2のローリングを抑制する際、間隔保持部材48には曲げ方向の応力が作用しなくなる。よって、本実施形態では、間隔保持部材48に必要とされる強度や剛性を、第1実施形態に比して引き下げることができて、間隔保持部材48の重量や製造コストの低減化を図ることができる。
[第4実施形態の変形例]
第4実施形態のローリング抑制装置1Cは、図11に変形例を示すように、各取付部材59とフレーム3との間に、横方向に延びる支持梁部材61を介装して設けた構成としてもよい。
図11におけるその他の構成は図10に示したものと同様であり、同一のものには同一の符号を付してその説明を省略する。
本変形例のローリング抑制装置1Cは、第4実施形態と同様の効果を得ることができる。
更に、本変形例では、各取付座26は、各取付部材59と荷台4に加えて、支持梁部材61を介在した状態でフレーム3に対する相対位置が固定されている。したがって、移動電源車2のローリングを抑制する際に荷台4に作用する曲げ方向の応力を軽減することができる。このため、荷台4の構造的な補強を行う補強材60に必要とされる強度や剛性を、第4実施形態に比して引き下げることができる。
[第5実施形態]
図12はローリング抑制装置の第5実施形態を示すもので、図10、すなわち、図4と同じ方向から見た図である。
なお、図12において、第4実施形態や第1実施形態と同一のものには同一符号を付してその説明を省略する。
本実施形態のローリング抑制装置は、図12に符号1Dで示すもので、第4実施形態と同様の構成において、上部側間隔保持手段37を、各上部リンク部材20a,20bの上端側を保持した間隔保持部材48(図10参照)を備える構成とすることに代えて、上部リンク部材20aと上部リンク部材20bの途中位置同士を繋ぐ間隔保持部材62を備える構成としたものである。
上部リンク部材20aと上部リンク部材20bには、上端から設定された寸法分、離れた位置となる途中位置に、リンク軸22a,22bと平行な方向に延びる軸63a,63bがそれぞれ設けられている。なお、各軸63a,63bは、各軸63a,63bの中心間距離が、各上部リンク部材20a,20bの上端側に配置された各回転軸33の中心間距離、および、各リンク軸22a,22bの中心間距離と等しくなるように、各上部リンク部材20a,20bにおける設置位置が定められている。
間隔保持部材62は、梁部材23と平行に左右方向に延びる梁状の部材であり、左端側が軸63aに揺動可能に接続され、右端側が軸63bに揺動可能に接続されている。
なお、間隔保持部材62は、梁部材23に対して各リンク軸22a,22bの軸心方向の位置をずらした状態で、各上部リンク部材20a,20bに取り付けられている。これにより、各屈曲リンク機構19a,19bの屈曲角度が小さくなるときにも、間隔保持部材62が梁部材23と干渉することを防止することができる。
本実施形態では、左右のブラケット49は、個別の接続部材64a,64bの下側に設けられ、それぞれの接続部材64a,64bの上側に、左右の連結部材50が、回転軸35を介して前後に揺動可能に取り付けられている。
また、本実施形態では、各取付座26は、荷台4の下面に直接取り付けられている。各連結部材50は、第4実施形態と同様に、各取付座26に対して取り外し可能に固定されている。
したがって、本実施形態では、各取付座26は、荷台4を介在した状態で、フレーム3に対する相対位置が固定されている。また、車両側連結手段27は、回転軸33、ブラケット49、各接続部材64a,64b、回転軸35、連結部材50により構成されている。左右方向の揺動手段32の機能は、各接続部材64a,64bに設けた各ブラケット49に各上部リンク部材20a,20bの上端側が各回転軸33を介して左右方向に揺動可能に取り付けられている部分で得ることができる。前後方向の揺動手段34の機能は、各取付座26に連結される各連結部材50に対し、各接続部材64a,64bが各回転軸35を介して前後方向に揺動可能に取り付けられている部分で得ることができる。
本実施形態のローリング抑制装置1Dは、第4実施形態のローリング抑制装置と同様に使用して同様の効果を得ることができる。
更に、本実施形態では、上部側間隔保持手段37を構成するための間隔保持部材62は、各上部リンク部材20a,20bの上端から設定された寸法分、離れた位置となる途中位置に取り付けられているので、第4実施形態における間隔保持部材48(図10参照)に比して低い位置、すなわち、荷台4からより離れた位置に配置することができる。
したがって、本実施形態のローリング抑制装置1Dは、移動電源車2に適用するときに、フレーム3との干渉や、フレーム3の下側に取り付けられている艤装品との干渉を回避した状態で設置しやすいものとすることができる。
[第5実施形態の変形例]
第5実施形態のローリング抑制装置1Dは、図13に変形例を示すように、各屈曲リンク機構19a,19bにおける各上部リンク部材20a,20bの長さ寸法が、各下部リンク部材21a,21bの長さ寸法よりも大となる構成としてもよい。
この構成では、各屈曲リンク機構19a,19bでは、各下部リンク部材21a,21bの基礎に対する角度が、図12に示した構成に比して小さくなる。したがって、移動電源車2の左右方向の振動に伴って各下部リンク部材21a,21bが回転軸29を中心に揺動しても、各下部リンク部材21a,21bの基礎17との接触が生じないように、下部リンク部材21a,21bの角度は設定されている。
図13におけるその他の構成は図12に示したものと同様であり、同一のものには同一の符号を付してその説明を省略する。
本変形例のローリング抑制装置1Dは、第5実施形態と同様の効果を得ることができる。
更に、本変形例では、各上部リンク部材20a,20bを各下部リンク部材21a,21bを長くすることに伴い、上部リンク部材20a,20bの途中位置に取り付けられた間隔保持部材62をより低い位置に配置することが可能になる。
よって、本変形例のローリング抑制装置1Dは、移動電源車2に適用するときに、フレーム3との干渉や、フレーム3の下側に取り付けられている艤装品との干渉を回避した状態として更に設置しやすいものとすることができる。
[第6実施形態]
図14はローリング抑制装置の第6実施形態を示すもので、図10、すなわち、図4と同じ方向から見た図である。
なお、図14において、第4実施形態や第1実施形態と同一のものには同一符号を付してその説明を省略する。
本実施形態のローリング抑制装置は、図14に符号1Eで示すもので、第4実施形態と同様の構成において、上部側間隔保持手段37を移動電源車2の車体とは別体の間隔保持部材48(図10参照)を備えた構成とすると共に、下部側間隔保持手段36を基礎17とは別体の間隔保持部材39(図10参照)を備えた構成とすることに代えて、上部側間隔保持手段37として移動電源車2の車体の構成の一部を用いると共に、下部側間隔保持手段36を基礎17側に備える構成としたものである。
本実施形態では、第4実施形態と同様に、左右のブラケット49は、個別の接続部材64a,64bの下側に設けられ、それぞれの接続部材64a,64bの上側に、左右の連結部材50が、回転軸35を介して前後に揺動可能に取り付けられている。また、各取付座26は、荷台4の下面に直接取り付けられている。各連結部材50は、各取付座26に対して取り外し可能に固定されている。
したがって、本実施形態では、各取付座26は、荷台4を介在した状態で、フレーム3に対する相対位置が固定されている。
また、車両側連結手段27は、回転軸33、ブラケット49、各接続部材64a,64b、回転軸35、連結部材50により構成されている。左右方向の揺動手段32の機能は、各接続部材64a,64bに設けた各ブラケット49に各上部リンク部材20a,20bの上端側が各回転軸33を介して左右方向に揺動可能に取り付けられている部分で得ることができる。前後方向の揺動手段34の機能は、各取付座26に連結される各連結部材50に対し、各接続部材64a,64bが各回転軸35を介して前後方向に揺動可能に取り付けられている部分で得ることができる。
更に、上部側間隔保持手段37は、各回転軸33を保持した各ブラケット49、各接続部材64a,64b、回転軸35、連結部材50と、移動電源車2における取付座26および荷台4によって形成されている。
また、本実施形態では、左右のブラケット40は、個別の接続部材65a,65bの上側に設けられ、それぞれの接続部材65a,65bの下側に、左右の連結部材41が、回転軸31を介して前後に揺動可能に取り付けられている。
また、基礎17には、左右方向に延びる間隔保持部材66が設置され、この間隔保持部材66に、各アンカー24が取り付けられている。なお、各アンカー24は、左右の各連結部材41と対応する位置に配置された状態で間隔保持部材66に取り付けられている。
この際、たとえば、各アンカー24が取り付けられた間隔保持部材66は、基礎17に沿う平面内で角度姿勢を調整可能とすると共に、角度調整された状態で図示しない固定手段により基礎17に固定できるようにすることが好ましい。このようにすれば、車両停止位置(図2参照)18に停止させた移動電源車2の車幅方向の向きと、基礎17に設置された各アンカー24が並ぶ方向との角度ずれを補正することができる。
各連結部材41は、各アンカー24に対して取り外し可能に固定されている。
したがって、本実施形態では、基礎側連結手段25は、回転軸29、ブラケット40、各接続部材65a,65b、回転軸31、連結部材41により構成されている。
左右方向の揺動手段28の機能は、各接続部材65a,65bに設けた各ブラケット40に各下部リンク部材21a,21bの下端側が各回転軸29を介して左右方向に揺動可能に取り付けられている部分で得ることができる。前後方向の揺動手段30の機能は、各アンカー24に連結される各連結部材41に対し、各接続部材65a,65bが各回転軸31を介して前後方向に揺動可能に取り付けられている部分で得ることができる。
更に、下部側間隔保持手段36は、各回転軸29を保持した各ブラケット40、各接続部材65a,65b、回転軸31、連結部材41と、基礎17に固定されたアンカー24および間隔保持部材66により構成されている。
以上の構成としてある本実施形態のローリング抑制装置1Eは、第4実施形態と同様に使用して、第4実施形態と同様の移動電源車2のローリング抑制効果を得ることができる。
なお、本実施形態では、移動電源車2側に設ける取付座26を、荷台4の下面に取り付けた構成を示したが、第3実施形態と同様に、取付座26を、フレーム3に連結した左右の支持梁部材58(図9参照)に取り付けた構成としてもよい。
この場合は、上部側間隔保持手段37は、各回転軸33を保持した各ブラケット49、各接続部材64a,64b、回転軸35、連結部材50と、移動電源車2におけるフレーム3および各支持梁部材58によって形成することができる。
[使用方法の応用例]
前記各実施形態およびその応用例と変形例では、ローリング抑制装置1,1A,1B,1C,1D,1Eの使用方法として、移動電源車2が車両停止位置18に停止している状態で、アンカー24および取付座26が取り外されて各屈曲リンク機構19a,19bが折りたたまれている状態のローリング抑制装置1,1A,1B,1C,1D,1Eを、車体の左右いずれか片側から、移動電源車2のフレーム3と基礎17との間の隙間へ挿入して、アンカー24および取付座26にそれぞれ連結する方式を示した(図4参照)。
これに対し、各実施形態のローリング抑制装置1,1A,1B,1C,1D,1Eは、以下のような方式で使用するようにしてもよい。
図15(a)(b)は、ローリング抑制装置の使用方法の応用例をそれぞれ示す概要図である。なお、図15(a)(b)では、代表して、第1実施形態のローリング抑制装置1の場合について説明するが、他の実施形態および応用例、変形例も同様の使用方法を採用してよいことは勿論である。図15(a)(b)において第1実施形態と同一のものには同一符号を付してその説明を省略する。
図15(a)は、取付座26(図4参照)が取り外され且つ各屈曲リンク機構19a,19bが折りたたまれている状態のローリング抑制装置1を、基礎17における車両停止位置18(図2参照)に設けたピット67内に、予め設置したものである。ピット67には、車両停止位置18に移動電源車2を乗り入れるときにタイヤ6(図1参照)がピット上を通過できるようにするための蓋68が備えられている。
また、図15(b)は、取付座26(図4参照)が取り外され且つ各屈曲リンク機構19a,19bが折りたたまれている状態のローリング抑制装置1を、基礎17における車両停止位置18(図2参照)に予め設置したものである。この場合、ローリング抑制装置1の前後両側には、それぞれスロープ形成部材69を備えて、車両停止位置18に移動電源車2を乗り入れるときにタイヤ6がローリング抑制装置1の上方を通過するようにスロープ形成部材69で案内する構成とすればよい。
図15(a)(b)の構成では、移動電源車2を車両停止位置18に乗り入れて停止させた後、図示しないジャッキなどを用いて、各連結部材50を間隔保持部材48と一緒に持ち上げて、その状態で、各連結部材50を各取付座26に位置を合わせて連結することで、本実施形態のローリング抑制装置1を形成することができる。
なお、この際、車両停止位置18に停止した移動電源車2の車幅方向の向きと、基礎17に設置された左右のアンカー24が並ぶ方向との間に生じている角度ずれは、前述したと同様の補正手段によって補正するようにすればよい。
したがって、この場合は、ローリング抑制装置1を搬送したり、車体の左右いずれか片側から、移動電源車2のフレーム3と基礎17との間の隙間へ挿入したりする作業が不要になるため、移動電源車2を乗り入れた現場でローリング抑制装置1を形成するために要する作業の手間や労力を軽減することが可能になる。
なお、本発明は、前記各実施形態にのみ限定されるものではなく、各構成部材の長さや外形、断面形状等は一例であり、適宜変更してもよい。
屈曲リンク機構19a,19bは、左右一対で備える構成を示したが、屈曲リンク機構の数は3以上としてもよい。
連結部材41およびアンカー24は、連結部材41をアンカー24に対して取り外し可能に連結することができるようにしてあれば、連結部分の構成は図示した以外の構成を採用してもよい。
連結部材50および取付座26は、連結部材41を取付座26に対して取り外し可能に連結することができるようにしてあれば、連結部分の構成は図示した以外の構成を採用してもよい。
車両停止位置18に停止させた移動電源車2の車幅方向の向きと、基礎17に設置された各アンカー24が並ぶ方向との角度ずれを補正する手段は、基礎側連結手段25におけるアンカー24と連結部材41との連結部分に備えた角度ずれの補正手段と同様の構成を、車両側連結手段27における取付座26と連結部材50との連結部分に備える構成としてもよい。この場合、基礎側連結手段25における前記角度ずれの補正手段は、あってもよいし、なくてもよい。
第3実施形態では、支持梁部材58は、フレーム3から車体の幅寸法に対応する位置まで左右方向に突出するものとして示したが、車体よりも左右方向へ突出するようにしてもよい。この場合は、支持梁部材58を伸縮可能な構成として、移動電源車2の走行時には車体の幅寸法に収まるように縮めておくようにするか、あるいは、支持梁部材58を、走行時に取り外すことができる構成とすればよい。
第3実施形態と、第4実施形態およびその変形例では、移動電源車2のローリングを抑制するときに、間隔保持部材48には曲げ方向の応力が作用しなくなる。よって、この場合は、間隔保持部材48の形状を、フレーム3やフレーム3の下側に取り付けられている艤装品との干渉を回避するように湾曲させた形状や、屈曲させた形状としてもよい。
本発明のローリング抑制装置は、車両全体に生じるローリングの抑制や、荷台に生じるローリングの抑制が望まれる車両であれば、移動電源車以外の任意の車両に適用してもよい。
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。