JP6673169B2 - 試料の吸光度分布を近似式により推定する方法、および分光分析装置 - Google Patents

試料の吸光度分布を近似式により推定する方法、および分光分析装置 Download PDF

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本発明は、測定対象の試料における複数の部分を透過した光の各光量に基づいて、前記試料の吸光度分布を近似式により推定する方法に関する。
分光分析装置は、物質が特定の波長において固有の吸光係数を有するという特性を利用し、吸光される波長によって物質を特定し、その波長における吸光度(または透過率)によって物質の濃度を測定する装置である。分光分析装置としては、赤外線、可視光線等を利用する装置や、クロマトグラフなどが知られている(例えば、特許文献1)。
分光分析装置は、測定対象とする試料に光源から光を照射し、試料を透過した光をグレーティングミラーで分光し、分光した光の光量を分光光度計に備えられた受光手段である光センサーで測定する。光センサーには、例えば、フォトダイオードアレイ(PDA)素子が用いられている。
上記分光光度計は、上記光センサーの他に、光量を順次記憶する記憶手段を備えている。記憶手段は、光センサーで刻々と測定された光量を演算して試料の吸光度を推定する推定手段を有している。時間または空間を引数として推定手段で推定した複数の吸光度を線で結ぶことによって、吸光度のピークを求めることができる。
PDA素子を備えた分光光度計では、PDA素子で測定された光量を規定のPDA積算時間で積算し、吸光度を推定する。PDA素子で光量を測定するときの積算時間は、一般に、分光分析装置に設けられたランプ光源、およびスリット幅に応じて、吸光度ピークのS/N比を考慮して一定の値に設定される。このためPDA素子による測定周期は、分光分析装置に依存することなく固定される。
特開2003−185498号公報
分光分析装置のうちクロマトグラフとしては、ガスクロマトグラフ(GC)や液体クロマトグラフ(LC)が知られている。例えば、液体クロマトグラフは、試料に含まれる成分が溶媒へ溶け出すのに必要な溶出時間が成分によって異なることを利用し、測定領域に時系列に流れてくる成分の吸光度を測定し、各成分の濃度を検出する装置である。液体クロマトグラフでは、測定領域に成分が時間方向にずれて流れてくるが、単一の物質であっても、時間方向に一定の広がりを持って溶出するため、測定領域に存在する物質の濃度は一定の広がりをもって変動し、その吸光度も一定の広がりをもって変動する。従って、1回の光量の測定時間(蓄積時間)が長くなると信号強度が高くなるため、S/N比は増加するものの、その期間中における光量の変動が大きくなる。即ち、1回の測定時間中に光量は大きく変動しているにも関わらず、観測されるのは、その期間における光量の積分値にすぎない。よって、光量には非線型の歪みが生じる。
一方、吸光度は、光量の対数に対応するため、光量の吸光度の平均値は吸光度の平均値と一致しないため、非線型の歪みが生じた光量に基づいて推定される吸光度の精度は更に低下する。例えば、基準の吸光度を1、基準の光量を1E−1(即ち、10−1)とすると、吸光度が2のときの光量は1E−2(即ち、10−2)、吸光度が3のときの光量は1E−3(即ち、10−3)となる。
吸光度が2と吸光度が3の吸光度の平均は2.5となる。
(2+3)/2=2.5
一方、吸光度が2のとき光量と吸光度が3のときの光量との平均を求めると5.5E−3(即ち、5.5×10−3)となる。
{(1E−2)+(1E−3)}/2=5.5E−3
光量5.5E−3を吸光度に換算すると、おおよそ2.26となり、上述した吸光度の平均(2.5)と一致しない。
分光光度計での測定が単一波長であれば、吸光度の平均と、光量の平均を換算して求められる吸光度が一致しない場合であっても、定量精度が落ちる程度の影響しか受けない。しかし、分光光度計で複数の波長を計測して吸光度スペクトルとして扱う場合は、単一物質の結果であるのに、ピーク波形の傾斜やピーク強度に応じてスペクトルが歪む事を示す。このため、不純物を含まない単一物質であっても、スペクトル変動があるように検出され、不純物を含むように見えたり、スペクトル形状による物質同定精度が低下するという問題があった。
こうした問題を防ぐために、従来では、吸光度ピーク半値幅に対して、測定点を20点以上確保することが求められる。
しかし、実際の測定では、光量の蓄積時間はほぼ固定されているため、光量の蓄積時間を調整して測定点の数を調整することは難しい。
また、分光分析装置(特に、クロマトグラフ)は、近年、高分解能化が進んでいる反面、分析時間を短く、分析を高速化することが望まれている。分析を高速化するには、サンプリング回数を減らすことが考えられ、サンプリング回数を減らしても吸光度のピークを精度良く検出することが望まれる。しかし、サンプリング回数を減らすと、信号強度が低下するため、S/N比が低下し、推定される吸光度の精度が悪くなる。
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、測定対象の試料における複数の部分を透過した光の各光量に基づいて、前記試料の吸光度分布を近似式により推定するにあたり、分析を高速化しても吸光度分布を精度良く求められる方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、こうした推定方法を用いた分光分析装置を提供することにある。
上記課題を解決することのできた本発明に係る方法とは、測定対象の試料における複数の部分を透過した光の各光量に基づいて、前記試料の吸光度分布を近似式により推定する方法であって、前記近似式を、当該近似式による吸光度から換算された光量と予め記憶された光量との誤差が最小となる条件で決定する点に要旨を有する。
前記各光量は、複数の波長ごとに測定されており、前記近似式は、各波長で相似であることが好ましい。
前記近似式は、前記試料における複数の部分のそれぞれついて決定することが好ましい。
前記近似式に基づいて、吸光度のピーク位置または吸光度の強度を求めることが好ましい。
上記課題を解決できた本発明に係る分光分析装置とは、光源と、当該光源から出力され、試料を透過した光を受光して光量を出力する受光手段とにより構成される光学系と、当該光学系または前記試料を移動させながら、当該試料における複数の部分を透過したときの前記光量を順次記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された光量に基づいて、試料の吸光度分布を近似式により推定する推定手段とを有し、前記推定手段は、前記近似式を、当該近似式による吸光度から換算された光量と前記記憶された光量との誤差が最小となる条件で決定する点に要旨を有する。
本発明によれば、測定対象の試料における複数の部分を透過した光の各光量に基づいて、前記試料の吸光度分布を近似式により推定するにあたり、前記近似式を、当該近似式による吸光度から換算された光量と予め記憶された光量との誤差が最小となる条件で決定しているため、分析を高速化しても吸光度分布を精度良く求めることができる。
図1は、液体クロマトグラフの構成の一部を示したブロック図である。 図2は、吸光度分布を推定する手順を説明するためのフローチャートを示している。 図3は、クロマトグラフの保持時間に対して吸光度分布をプロットしたグラフである。 図4は、クロマトグラフの保持時間に対して吸光度分布をプロットしたグラフである。 図5は、クロマトグラフの保持時間に対して吸光度分布をプロットしたグラフである。 図6は、クロマトグラフの保持時間に対して吸光度分布をプロットしたグラフである。
本発明者は、測定対象の試料における複数の部分を透過した光の各光量に基づいて、前記試料の吸光度分布を近似式により推定するにあたり、分析を高速化しても吸光度分布を精度良く求める方法を提供するために、鋭意検討を重ねてきた。その結果、前記近似式を、当該近似式による吸光度から換算された光量と予め記憶された光量との誤差が最小となる条件で決定すれば、分析を高速化しても、吸光度分布を精度良く求められることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、区間平均を移動平均に変更したうえで、吸光度曲線(例えば、クロマトグラフで求められる曲線)が局所的に多項式に近似できることを利用し、近似式を用いて光量で誤差エネルギーを最小化して(好ましくは、最小二乗法によるあてはめを行って)吸光度分布を推定したものである。従来では光量が1次関数として変化すると仮定して吸光度分布を求めていたが、本発明によれば光量が多項式の関数として変化すると考えて吸光度分布を求めているため、吸光度分布を精度良く求めることができる。また、本発明によれば、従来よりも蓄積時間を短くして信号処理を行うことができるため、細かい時間ステップでデータを表示でき、その結果、クロマトピークの視認性を高めることができる。
以下、本発明について説明する。
まず、本発明の推定方法を実施する推定手段を備えた分光分析装置の一例を、図1を用いて説明する。図1は、分光分析装置として知られている液体クロマトグラフの構成の一部を示したブロック図である。なお、本発明の推定方法を実施できる分光分析装置は、液体クロマトグラフに限定されるものではなく、ガスクロマトグラフなどのクロマトグラフや、赤外線、可視光線等を利用する装置が挙げられる。
液体クロマトグラフは、通常、試料導入部、カラム、光源1、光源1から出力され、試料を透過した光を受光して光量3を出力する受光手段2、A/D変換器、光量3を記憶する記憶手段4、記憶手段4に記憶された光量3に基づいて、試料の吸光度分布を近似式により推定する推定手段5、およびデータ表示部を含んで構成されている。光源1および受光手段2は、まとめて光学系と呼ばれる。
試料導入部からカラムには一定流量で溶媒が供給されており、試料導入部に試料が注入されると、該試料は溶媒流に随伴してカラムに導入される。カラムを通過する間に試料中の各成分は時間方向に分離され、カラム出口から順に排出され、検出器へ導入される。
検出器は、測定対象とする試料に光を照射する光源1、試料を透過した光を分光するグレーティングミラー、分光した光を受光して光量を出力する受光手段2を備えている。受光手段2は、光センサーと呼ばれることがある。
検出器では、グレーティングミラーで分光した光の光量3が、受光手段2で検出され、検出信号が時々刻々と出力される。出力された検出信号は、A/D変換器でデジタル値に変換され、光量3を順次記憶する記憶手段4に入力される。
記憶手段4は、A/D変換器で変換されたデジタル値(クロマトグラムデータ)を格納するメモリ4aを備えている。メモリ4aには、後述する図2に示したフローチャートに基づく吸光度分布を推定するプログラムが記憶されている。
記憶手段4に備えられたメモリ4aは、後述する図2に示した手順でクロマトグラムデータ(即ち、受光手段2で測定された光量)を演算し、試料の吸光度分布を推定手段5で推定し、データ表示部に表示する。
なお、記憶手段4は、例えば、パーソナルコンピュータであり、該コンピュータに予めインストールされたデータ処理ソフトウエアを動作させることにより、各部の機能を実現できる。記憶手段4は、デジタル電子回路でもよい。
上記検出器および記憶手段4において本発明に係る推定方法を用いて吸光度分布を推定する手順を、図2のフローチャートを用いて説明する。なお、図2では、上記A/D変換器における変換工程は省略して説明した。
S1は、吸光度分布の推定を開始するステップである。S2は、移動窓の範囲におけるデータを取得するステップである。S2では、試料に光源から光を照射し、試料を透過した光をグレーティングミラーで分光し、分光した光の光量を光センサーで測定する。S3は、近似式m(t)をフィッティングするステップである。S4は、誤差エネルギーを最小とする近似式m(t)のパラメータを決定し、吸光度分布を決定するステップである。S5は、全ての処理が済んでいるかどうか、確認するステップである。S6は、S5で処理済みと判断された場合に、吸光度分布の推定を終了するステップである。S7は、S5で未処理部分があると判断された場合に、移動窓をシフトし、S2に戻るステップである。
以下、上記S4で吸光度分布を決定する際に用いる本発明に係る吸光度分布の推定方法について説明する。
本発明に係る吸光度分布の推定方法は、時間ごとまたは空間ごとに試料の吸光度分布を推定する受光手段で刻々と得られた各光量から吸光度分布を推定する方法であり、前記受光手段は、吸光度分布においての時間方向または空間方向の近似式を有しており、該近似式を用いて、近似式による吸光度から換算された光量と、予め記憶された前記各光量との誤差エネルギーが最小となる条件で吸光度分布を決定する点に特徴がある。
各光量3は、複数の波長ごとに測定されており、上記近似式は、各波長で相似であることが好ましい。
上記近似式は、上記試料における複数の部分のそれぞれについて決定することが好ましい。
上記近似式に基づいて、吸光度のピーク位置または吸光度の強度を求めることが好ましい。
上記近似式は、時間または空間を引数とした多項式であればよい。
上記近似式を用い、光量で誤差エネルギーを最小化することにより、吸光度分布を精度良く推定できる。
光量で誤差エネルギーを最小化する際には、誤差エネルギーが最小となるように、上記近似式のパラメータを最小二乗法で決定することが好ましい。
上記光センサーは、単一チャンネルでも、複数チャンネルでもよい。単一チャンネルとは、特定の波長における光量を測定できることを意味する。複数チャンネルとは、複数の特定の波長における光量を測定できることを意味する。
以下、単一チャンネルの光センサーを用い、分光分析装置としてクロマトグラフを用いた場合について、本発明に係る吸光度分布の推定方法を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
単一チャンネルの光センサーに入力された光量をx(t)とすると、測定初期、即ち、変数t=tのときの光量は、x(t)で表すことができる。tは所定の時間幅または空間幅である。基準光量(例えば、クロマトグラフでは移動相)が入力されているとすると、ノイズを考慮しない場合の吸光度分布は下記(a)で表される。下記(a)では、常用対数を用いているが、自然対数を用いてもよい。
log10{x(t)/x(t)} ・・・(a)
クロマトグラフの場合は、吸光度分布の形状が、ほぼガウス関数の形状になるため、標準偏差をσとしたとき、通常、±0.5σ程度の範囲であれば2次関数で近似できる。
そこで、±0.5σ程度の区間を移動窓として、その移動窓の中心の吸光度分布を求める事を考える。
ここでは、吸光度分布を求める近似式として、移動窓の中心がt=0となる2次式(下記(b)を参照)を用いて考える。なお、吸光度分布を求める近似式は、時間または空間を引数とした多項式であればよい。上記多項式は2次式に限定されず、1次式でもよいし、3次式以上の多項式でもよい。多項式は、1次式または2次式が好ましい。時間を引数にするとは、例えば、クロマトグラフのように、アクティブな光センサーの位置は固定し、吸光度分布の経時変化を推定することを意味する。空間を引数にするとは、例えば、X線回折や赤外吸光顕微鏡のように、アクティブな光センサーを移動し、空間全体を一度にスキャンすることを意味する。
m(t)=a×t+b×t+c ・・・(b)
光センサーで得られた初期光量をx(t)、初期より後のタイミングにおける光センサーで刻々と得られた光量をx(t)、吸光度分布においての近似式をm(t)としたとき、誤差エネルギーは、例えば、下記(1)で与えられ、下記(1)が最小となる近似式m(t)を決定する。即ち、下記(1)で表される誤差エネルギーが最小となるように、近似式m(t)におけるパラメータa、b、cを求める。移動窓の中心をt=0とするため、上記近似式m(t)にt=0を代入して算出されるパラメータcが移動窓の中心における吸光度分布となる。
|10m(t)×x(t)−x(t)| ・・・(1)
上記誤差エネルギーを最小とする近似式m(t)を決定するにあたっては、最小二乗法を用いることができる。
上記誤差エネルギーを最小とする近似式m(t)を決定して吸光度分布を推定する方法は、PDAのショットノイズよりもADコンバータの熱雑音が支配的な領域において有用である。なお、PDAのショットノイズなど他のノイズ分布が支配的な場合は、別のモデル関数を用いることができる。
このようにして吸光度分布を推定する処理を、移動窓をずらしながら行えば、それぞれの時間における吸光度分布を推定できる。
上記では、移動窓の中心をt=0とし、吸光度分布を推定する手順について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、分析結果の応答性が重要となるシステムでは、移動窓の中心ではなく、最新データを求める位置をt=0とした近似式m(t)を用いても良い。
上記では、近似式m(t)として2次式を用いたが、近似式の次数は2次に限定されず、例えば、プラント内部での原料濃度の時系列変化を測定する場合は、近似式m(t)としてより単純な1次式を用いてもよい。
以上、単一チャンネルの光センサーを用いた場合について説明した。
上記光センサーは、単一チャンネルに限定されず、複数チャンネルでもよい。複数チャンネルの場合は、上述した単一チャンネルによる推定方法を各チャンネルに適用すればよい。
複数チャンネルの光センサーを用いた場合であって、チャンネル数よりも試料の数が少ないときは、近似式m(t)を各チャンネル間で共有して吸光度分布を推定することが好ましく、近似式m(t)を共有することにより、パラメータ数を減らすことができる。
以下、複数チャンネルの光センサーを用い、(a)単一物質の吸光度分布を推定する方法と、(b)複数物質の吸光度分布を推定する方法について説明する。
(a)複数チャンネルの光センサーを用い、単一物質の吸光度分布を推定する方法
複数チャンネルの光センサーを用い、単一物質の吸光度分布を推定するにあたっては、上記(1)の代わりに、下記(1a)で与えられる誤差エネルギーを最小化して吸光度分布を推定すればよく、下記(1a)で与えられる誤差エネルギーを最小化するために、近似式m(t)のパラメータを決定し、該近似式m(t)を用いて吸光度分布を推定すればよい。下記(1a)において、Sはチャンネルiにおけるスペクトル、x(t)はチャンネルiにおける光センサーで得られた初期光量、x(t)はチャンネルiにおける光センサーで得られた初期より後のタイミングの光量を示す。
|10Si×m(t)×x(t)−x(t)| ・・・(1a)
複数チャンネルで単一物質の吸光度変化(濃度変化)を測定する場合であって、近似式m(t)が時間または空間に依存しているときは、近似式m(t)は各チャンネルで相似形である。従って、各チャンネルで近似式m(t)とパラメータa、b、cを共有し、近似式m(t)に、各チャンネルにおけるスペクトル(即ち、チャンネルiにおけるスペクトルS)を掛けることで、吸光度分布を推定できる。即ち、移動窓の中心をt=0とすると、上記近似式m(t)にt=0を代入して算出されるパラメータcに、チャンネルiにおけるスペクトルSを掛けたS×cが移動窓の中心における吸光度分布となる。
但し、各チャンネルにおけるスペクトルSを掛るため、a=1と固定して良く、実際には、パラメータとして、S、b、cを求めればよい。
(b)複数チャンネルの光センサーを用い、複数物質の吸光度分布を推定する方法
複数チャンネルの光センサーを用い、複数物質の吸光度分布を推定するにあたっては、上記(1)の代わりに、下記(1b)で与えられる誤差エネルギーを最小化して吸光度分布を推定すればよく、下記(1b)で与えられる誤差エネルギーを最小化するために、近似式m(t)のパラメータを決定し、該近似式m(t)を用いて吸光度分布を推定すればよい。下記(1b)において、ΣSsiはチャンネルiにおけるスペクトルSの和、x(t)はチャンネルiにおける光センサーで得られた初期光量、x(t)はチャンネルiにおける光センサーで得られた初期より後のタイミングの光量を示す。
|10ΣSsi×ms(t)×x(t)−x(t)| ・・・(1b)
試料に複数物資が含まれる場合は、物質の数に応じた近似式m(t)が必要になる。また、それぞれに対応したSsiも必要になる。従って、求めるべきパラメータは、Ssi、b、cとなる。即ち、移動窓の中心をt=0とすると、上記近似式m(t)にt=0を代入して算出されるパラメータcに、チャンネルiにおけるスペクトルSを掛けたΣSsi×cが移動窓の中心における吸光度分布となる。
siは「チャンネル数」×「試料に含まれる物質の数」の2次元のマトリックス状ではあるが、実際には、チャンネルが変っても物質の濃度比は変らないため、各試料由来のスペクトルSと各試料の濃度mの二つのスペクトルのベクトルの直積で示される。
以上、複数チャンネルの光センサーを用い、吸光度分布を推定する方法について説明した。
上記では、(1)に示すように、吸光度分布を常用対数変換したときの誤差エネルギーを用いて説明したが、吸光度分布を自然対数変換して誤差エネルギーを求めてもよく、この場合は、下記(2)で与えられる誤差エネルギーを最小化して吸光度分布を推定すればよい。
|em(t)×x(t)−x(t)| ・・・(2)
上記分光光度計を備えた分光分析装置としては、例えば、赤外線、可視光線等を利用する装置や、クロマトグラフなどを用いることができる。上記分光分析装置は、特に、クロマトグラフが好ましい。本発明の方法は、例えば、LC−PDAで吸光度クロマトを計測する場合や、吸光度の時間または空間の変化を計測する場合に好適に用いられる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限を受けるものではなく、前記および後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
クロマトグラフにおける分光光度計の光センサーで刻々と得られた光量のデータとして、シミュレーションによるノイズのない光量データを用いて、次の条件で吸光度分布を推定した。
(比較例1)
(A)シミュレーションによるノイズのない光量データにノイズを付加した後、吸光度分布を推定した。付加したノイズは、標準偏差σ=7e−5、平均=0として加えた。
図3に、クロマトグラフの保持時間に対し、(A)で推定した吸光度分布の結果を点線で示す。また、図3には、クロマトグラフの保持時間に対し、シミュレーションによるノイズのない光量データに基づいて推定した吸光度分布の結果を実線で示す。
図3から明らかなように、(A)では、一定のノイズを付加しているため、吸光度分布を推定する過程で対数変換すると、光量の少ない領域(即ち、吸光度の高い領域)でノイズの影響度が大きくなり、精度のよい吸光度ピークが得られていない。
(比較例2)
(B)シミュレーションによるノイズのない光量データにノイズを付加した後、光量で移動平均を算出し、吸光度分布を推定した。光量は、10の「−吸光度」乗で算出し、移動窓幅は5とした。
図4に、クロマトグラフの保持時間に対し、(B)で推定した吸光度分布の結果を点線で示す。また、図4には、クロマトグラフの保持時間に対し、シミュレーションによるノイズのない光量データに基づいて推定した吸光度分布の結果を実線で示す。
図4から明らかなように、(B)では、一定のノイズを付加し、非直線的に変化する(即ち、指数的に変化)ものに対して、移動平均を適用しているため、吸光度分布を推定する過程で対数変換すると、ノイズを付加しない場合に比べて吸光度分布が全体的に小さい結果となった。
(比較例3)
(C)シミュレーションによるノイズのない光量データにノイズを付加した後、吸光度分布を推定し、推定した吸光度分布で移動平均を推定し、吸光度分布を推定した。移動窓幅は5とした。
図5に、クロマトグラフの保持時間に対し、(C)で推定した吸光度分布の結果を点線で示す。また、図5には、クロマトグラフの保持時間に対し、シミュレーションによるノイズのない光量データに基づいて推定した吸光度分布の結果を実線で示す。
図5から明らかなように、(C)は、一定のノイズを付加し、吸光度分布で移動平均を推定したため、吸光度分布を推定する過程で対数変換すると、光量の少ない領域(即ち、吸光度の高い領域)でノイズの影響度が大きくなり、精度のよい吸光度ピークが得られていない。
(発明例)
(D)シミュレーションによるノイズのない光量データにノイズを付加した後、本発明に係る推定方法を用いて、吸光度分布を推定した。即ち、1次式の近似式を用いて光量で誤差エネルギーを最小化して吸光度分布を推定した。上記(1)で与えられる誤差エネルギーを最小二乗法により最小とする近似式m(t)のパラメータを決定し、該近似式m(t)を用いて吸光度分布を推定した。移動窓幅は5とした。
図6に、クロマトグラフの保持時間に対し、(D)で推定した吸光度分布の結果を点線で示す。また、図6には、クロマトグラフの保持時間に対し、シミュレーションによるノイズのない光量データに基づいて推定した吸光度分布の結果を実線で示す。
図6から明らかなように、本発明に係る吸光度分布の推定方法を用いれば、精度の良い吸光度ピークが得られる。
以上のように、光量で誤差エネルギーを最小化して吸光度分布を推定すれば、精度の良い吸光度ピークが得られる。

Claims (5)

  1. 測定対象の試料における複数の部分を透過した光の各光量に基づいて、前記試料の吸光度分布を近似式により推定する方法であって、
    前記近似式を、当該近似式による吸光度から換算された光量と前記各光量との誤差が最小となる条件で決定することを特徴とする、方法。
  2. 前記各光量は、複数の波長ごとに測定されており、
    前記近似式は、各波長で相似であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
  3. 前記近似式は、前記試料における複数の部分のそれぞれついて決定することを特徴とする、請求項1記載の方法。
  4. 前記近似式に基づいて、吸光度のピーク位置または吸光度の強度を求めることを特徴とする、請求項1記載の方法。
  5. 光源と、当該光源から出力され、試料を透過した光を受光して光量を出力する受光手段とにより構成される光学系と、
    当該光学系または前記試料を移動させながら、当該試料における複数の部分を透過したときの前記光量を順次記憶する記憶手段と、
    前記記憶手段に記憶された光量に基づいて、試料の吸光度分布を近似式により推定する推定手段とを有し、
    前記推定手段は、前記近似式を、当該近似式による吸光度から換算された光量と前記記憶された光量との誤差が最小となる条件で決定することを特徴とする、分光分析装置。
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