次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る流体式トルク伝達装置としてのトルクコンバータ10の概略構成図である。同図に示すトルクコンバータ10は、エンジンを備えた車両に搭載されるものであり、図示しないフロントカバー(入力部材)や、ポンプインペラ20、タービンランナ30、タービンハブ(出力部材)12、ステータ40、図示しないダンパ機構およびロックアップクラッチ機構を有する。フロントカバーには、図示しないエンジンのクランクシャフト(出力軸)が固定される。また、タービンハブ12には、図示しない自動変速機(AT)あるいは無段変速機(CVT)のインプットシャフトが固定(スプライン嵌合)される。
ポンプインペラ20は、ポンプシェル21と複数のポンプブレード22とポンプコア23とを有し、ポンプシェル21は、フロントカバーに密に固定される。タービンランナ30は、タービンシェル31と複数のタービンブレード32とタービンコア33とを有し、タービンシェル31はタービンハブ12に固定される。フロントカバー側のポンプインペラ20と、タービンハブ12側のタービンランナ30とは互いに対向し合い、両者の間には、フロントカバーと同軸に回転可能な複数のステータブレード42を有するステータ40が配置される。これらのポンプインペラ20、タービンランナ30およびステータ40は、作動油(作動流体)を循環させるトーラス(環状流路)を形成する。
図2は、ステータ40の構成の概略を示す構成図である。ステータ40は、図示するように、環状のステータシェル41と、ステータシェル41よりも径が大きい環状のステータコア43と、ステータシェル41の外周面とステータコア43の内周面との間を繋ぐ複数のステータブレード42とを有する。ステータシェル41は、その回転方向を一方向のみに設定するワンウェイクラッチ50を介して図示しない固定シャフトに固定される。
ダンパ機構は、それぞれ複数のスプリングを有し、タービンシェル31と共にタービンハブ12に固定される。ロックアップクラッチ機構は、ロックアップピストンとその表面に貼着された摩擦材とを有する。
こうして構成されるトルクコンバータ10では、図示しないエンジンの作動に伴ってフロントカバーおよびポンプインペラ20が回転すると、ポンプインペラ20の外周側のポンプ出口からタービンランナ30の外周側のタービン入口への作動油の流れによりタービンランナ30が引きずられるようにして回転し始め、エンジンからの動力は、タービンランナ30(作動油)を介してフロントカバーおよびポンプインペラ20からタービンハブ12へ伝達される。また、タービンランナ30の内周側のタービン出口から流出した作動油は、ステータ40のステータ入口に流入し、ステータブレード42によってポンプインペラ20の回転を助ける方向に変更されて、ポンプインペラ20へと戻る。これにより、トルクコンバータ10は、ポンプインペラ20とタービンランナ30との回転速度差が大きい時には、トルク増幅機として作動し、図6におけるカップリング領域にある場合は、ステータ40がワンウェイクラッチ50を介して空転することにより流体継手として作動する。また、車両の発進後、所定の条件が満たされると(例えば、車速が所定値に達すると)、ロックアップクラッチ機構が作動させられ、エンジンからフロントカバーに伝えられた動力が、出力部材としてのタービンハブ12に直接伝達されるようになり、それにより、エンジンと変速機の入力軸とが機械的に直結される。また、フロントカバーからタービンハブ12に伝達されるトルクの変動は、ダンパ機構によって吸収される。
ここで、本実施形態のトルクコンバータ10では、ポンプインペラ20とタービンランナ30とが、従来のトルクコンバータに比べて若干小径化されると共に、従来のトルクコンバータに比べて偏平化されたトーラスを構成するように形成されており、それにより、本実施形態のトルクコンバータ10は全体にコンパクト化されると共に充分なダンパ機構の搭載スペースを有する。ただし、何ら対策を施すことなくトーラス(ポンプインペラ20およびタービンランナ30)を偏平化、小径化すると、タービンブレード32からステータブレード42への作動油の流入角度がステータブレード42の回転軸心ACの延在方向に対して大きくなるため、ステータブレード42に流入した作動油の方向を急激に変化させなければならず、作動油の流れの剥離が生じ易くなって、トルクコンバータのトルク容量が低下するおそれがある。このため、本実施形態のトルクコンバータ10では、図3に示すように、装置中心線CCからステータブレード42の入口端縁42isまでの距離が外周端(ステータコア43側)から内周端(ステータシェル41側)にかけて比較的急な傾きをもって徐々に長くなると共に、装置中心線CCからステータブレード42の出口端縁42osまでの距離が外周端から内周端にかけて比較的緩やかな傾きをもって徐々に長くなるように構成される。なお、装置中心線CCは、図3に示すように、何れかのポンプブレード22の出口外周端22oと何れかのタービンブレード32の入口外周端32iとが対向するときに出口外周端22oと入口外周端32iとの間の中点(中央)とポンプインペラ20およびタービンランナ30の回転軸心ACとを通ると共に当該回転軸心ACと直交する直線である。これにより、タービンブレード32の出口内周端32oとステータブレード42の入口内周端42iiとの間における回転軸心ACの延在方向ののクリアランスを、ステータブレード42の出口内周端42oiとポンプブレード22の入口内周端22iとの間における回転軸心ACの延在方向のクリアランスよりも小さくする。ここで、ステータブレード42の出口内周端42oiとポンプブレード22の入口内周端22iとの間における回転軸心ACの延在方向のクリアランスを比較的大きくとるのは、以下の理由による。いま、トルクコンバータ10のポンプインペラ20が回転しタービンランナ30の回転が停止しているストール時を考える。このとき、ステータブレード42の腹面(凹曲面)に対する作動油の流入角度が深くなるため、ステータブレード42の腹面に対する作動油の衝突によりステータ40が回転軸心ACの延在方向のポンプインペラ20側へ押し付けられる。このため、ステータブレード42とポンプブレード22とが近づき、両者が干渉するおそれがある。したがって、ステータブレード42の出口内周端42oiとポンプブレード22の入口内周端22iとの間のクリアランスを比較的大きくとることで、こうした干渉を防止することができる。
また、出口外周端22oと入口外周端32iとの間の中点を含むと共に回転軸心ACと直交する平面を装置中心面PCと規定すれば、装置中心面PCから各タービンブレード32の最遠点32xまでの距離(=Dt)が装置中心面PCから各ポンプブレード22の最遠点22xまでの距離(=Dp)よりも長くなり、装置中心面PCからタービンシェル31の内面の最深部までの距離(=Dt)が装置中心面PCからポンプシェル21の内面の最深部までの距離(=Dp)よりも長くなる。すなわち、本実施形態のトルクコンバータ10に含まれるタービンランナ30は、ポンプインペラ20と概ね対称をなすように構成されたタービンランナ(図3における二点差線参照)に比べて、タービン入口とタービン出口との間の中央部付近からタービン出口にかけて回転軸心ACの延在方向かつ外方に拡大(延出)されており、それにより、トルクコンバータ10は装置中心線CC(装置中心面PC)に関して非対称なトーラスを有する。
次に、こうして構成された本実施形態のトルクコンバータ10の動作を、比較例のトルクコンバータ10Bの動作との比較において説明する。図4は、比較例のトルクコンバータ10Bの構成を本実施形態に係るトルクコンバータ10との比較をもって説明するための模式図である。比較例のトルクコンバータ10Bは、ステータ40Bを除いて、本実施形態に係るトルクコンバータ10の構成と同一である。したがって、比較例のトルクコンバータ10Bの構成のうちステータ40B以外の構成については同一の符号を付し、その説明は重複するから省略する。比較例のトルクコンバータ10Bのステータ40Bは、装置中心線CCからステータブレード42Bの入口端縁42Bisまでの距離がステータブレード42Bの外周端から内周端に亘って同一である距離Z0iとなると共に、装置中心線CCからステータブレード42Bの出口端縁42Bosまでの距離がステータブレード42Bの外周端から内周端に亘って同一である距離Z0oとなるように構成される。即ち、比較例のステータ40のステータブレード42Bは、入口内周端42Biiと出口内周端42Boiとの間の距離が入口外周端42Bioと出口外周端42Booとの間の距離(Z0i+Z0o)と同一である。これに対して、本実施形態に係るステータ40のステータブレード42は、入口内周端42iiと出口内周端42oiとの間の距離(Z1i+Z1o)が入口外周端42ioと出口外周端42ooとの間の距離(Z0i+Z0o)よりも長くなっている。
図5は、本実施形態に係るトルクコンバータのステータ40における作動油の流れと、比較例のトルクコンバータのステータ40Bにおける作動油の流れとを説明する説明図である。なお、図中、「Va」は、タービンブレード32の出口内周端(タービン出口)から作動油が流出する方向およびその速度を示すベクトルであり、「Vb」は、タービン30の回転に伴ってタービンブレード32の出口内周端が移動する方向(周方向)およびその速度を示すベクトルである。また、「Vc」は、ベクトルVaとベクトルVbとを合成した合成ベクトルであり、タービン30が回転しているときに実際にタービンブレード32から作動油が流出する方向およびその速度を示す。即ち、ベクトルVcは、タービン30が回転しているときに、タービンブレード32からステータブレード42へ作動油が流入する方向およびその速度を示す。比較例では、ステータブレード42Bの入口内周端から出口内周端までの距離が短いため、タービンブレード32の出口内周端からステータブレード42Bの入口内周端に流入した作動油は、ステータブレード42Bによって急激に方向が変化させられて、ステータブレード42Bの出口内周端から流出される。このため、当該ステータブレード42Bと隣り合うステータブレード42Bの対向面(凸曲面)において作動油の流れが剥離し、トルクの伝達効率が低下してしまう。特に、偏平化したトルクコンバータ10においては、偏平化されていないトルクコンバータに比べて、ステータブレード42の回転軸心ACの延在方向に対してタービンブレード32の出口内周端から作動油が流出する角度が大きくなるため、入口内周端から出口内周端までの距離が短い従来のステータブレード42Bでは、タービンブレード32の出口内周端から流出した作動油の流れを適切に整流することが困難である。これに対して、本実施形態では、ステータブレード42の入口内周端から出口内周端までの距離が十分にあるため、タービンブレード32の出口内周端からステータブレード42の入口内周端に流入した作動油は、ステータブレード42の曲面(凹曲面)に沿って比較的緩やかに変化させられて出口内周端から流出される。このため、当該ステータブレード42と隣り合うステータブレード42の対向面(背面,凸曲面)において生じる作動油の流れの剥離は少なくなり、十分なトルク伝達効率を有する。
図6は、トルクコンバータ10の性能線図である。図中、速度比eは、ポンプインペラ20の回転速度をNpとし、タービンランナ30の回転速度をNtとしたときに、e=Nt/Npで示され、トルク比Tは、ポンプインペラ20に入力されるトルク(入力トルク)をTpとし、タービンランナ30に出力されるトルク(出力トルク)をTtとしたときに、t=Tt/Tpで示され、容量係数Cは、C=Tp/Np2 [Nm/rpm2]で示され、伝達効率ηは、η=(Nt×Tt/Np×Tp)×100(%)で示される。また、「Ts」は、速度比eが値0、即ちポンプインペラ20の回転速度Npが値0でなくタービンランナ30の回転速度Ntが値0であるストール時のトルク比(ストールトルク比)を示し、「Cs」は、ストール時の容量係数(ストール容量係数)を示す。トルクコンバータ10は、図中、トルク比Tおよび伝達効率ηを良好な状態としつつ、高いトルク容量(容量係数)を確保することが望ましい。
図7は、装置中心線CCからステータブレードの入口内周端までの距離(軸方向距離)とトルクコンバータの容量係数Cとの関係を示す説明図であり、図8は、装置中心線CCからステータブレードの出口内周端までの距離とトルクコンバータの容量係数Cとの関係を示す説明図である。図中、「C0.2」は、速度比eが値0.2のときの容量係数を示し、「C0.4」は、速度比eが値0.4のときの容量係数を示し、「C0.6」は、速度比eが値0.6のときの容量係数を示し、「C0.8」は、速度比eが値0.8のときの容量係数を示す。上述したように、「Cs」は、ストール容量係数を示し、「Ts」は、ストールトルク比を示す。また、「Z0i」のラインは、装置中心線CCからステータブレードの入口内周端までの距離がZ0iである比較例のトルクコンバータ10Bの特性を示し、「Z1i」のラインは、装置中心線CCからステータブレードの入口内周端までの距離がZ1iである本実施形態に係るトルクコンバータ10の特性を示し、「Z0o」のラインは、装置中心線CCからステータブレードの出口内周端までの距離がZ0oである比較例のトルクコンバータ10Bの特性を示し、「Z1o」のラインは、装置中心線CCからステータブレードの出口内周端までの距離がZ1oである本実施形態に係るトルクコンバータ10の特性を示す。図7に示すように、軸方向距離が距離Z0iから距離Z1iまでは、軸方向距離が長いほど、即ち、装置中心線CCからステータブレードの入口内周端までの距離が長いほど、何れの速度比eにおいてもトルク容量が増加すると共にストールトルク比が増加していることが分かる。なお、軸方向距離が距離Z1iよりも長く、ステータブレードとタービンブレードとの接触限界付近まで至ると、トルク容量とストールトルク比が若干減少する傾向が見られる。一方、図8に示すように、軸方向距離が距離Z0oから距離Z1iよりも短い距離Z1oまでは、軸方向距離が長いほど、即ち、装置中心線CCからステータブレードの出口内周端までの距離が長いほど、何れの速度比eにおいてもトルク容量が増加すると共にストールトルク比が増加する傾向を示しているが、速度比eが小さいとき(ポンプインペラ20とタービンランナ30との回転速度差が大きいとき)の容量係数、特に、ストール容量係数については、軸方向距離がZ1oを超えると、急激に減少する傾向を示すことが分かる。これは、ポンプインペラ20は、エンジンからの動力によって回転するため、ステータブレード側の作動油に対して吸引作用を働かせることができ、ステータブレードの出口とポンプブレードの入口とのクリアランスをあまり小さくする必要がない一方、上述したように、ストール時においてステータブレードがポンプブレード側へ押し付けられることによってステータブレードとポンプブレードとが近づくためであると考えられる。したがって、ステータブレード42は、装置中心線CCからステータブレード42の入口内周端までの距離がZ1iで、且つ、装置中心線CCからステータブレード42の出口内周端までの距離がZ1oのときに、トルクコンバータ10は、優れた容量係数を示す。
ここで、本実施形態のトルクコンバータ10において、トルク容量の向上と装置の小型化との両立を図るためには、装置中心線CCからタービンブレード32の回転軸心ACの延在方向に最も遠い最遠点32xと装置中心線CCからポンプブレード22の回転軸心ACの延在方向に最も遠い最遠点22xとの間の長さDtpとしてトルクコンバータ10の偏平率ΛをΛ=(Dtp)/(Rtp−Rs)と表した場合、トルクコンバータ10は、例えば0.5≦Λ≦0.65を満たすように構成されると好ましい。また、装置中心線CCからステータブレード42の入口外周端42ioまでの距離をZ0iとし、装置中心線CCからステータブレード42の入口内周端42iiまでの距離をZ1iとしたとき、その距離の比率Z1i/Z0iが、例えば2.63≦Z1i/Z0i≦3.92を満たすように構成されると好ましい。
以上説明したように、本実施形態のトルクコンバータ10は、装置中心線CCからステータブレード42の入口内周端42iiまでの距離が装置中心線CCからステータブレード42の入口外周端42ioまでの距離よりも長くなるようにステータブレード42を構成する。即ち、タービンブレード32の出口内周端32oとステータブレード42の入口内周端42iiとの間におけるステータ40の回転軸心ACの延在方向のクリアランスが、ステータブレード42の出口内周端42oiとポンプブレード22の入口内周端22iとの間における回転軸心ACの延在方向のクリアランスよりも小さくなるようにステータブレード42を構成する。これにより、回転軸心ACの延在方向におけるステータブレード42の長さを確保することができ、タービンブレード32の出口内周端32oから流出された作動油の流れをステータブレード42によりスムーズに変更することができる。この結果、作動油の流れの剥離を抑制して、トルク容量を増加させることができる。また、ストール時においてステータブレード42がポンプブレード22側へ押し付けられることによる両者の干渉を抑制することができる。
本実施形態のトルクコンバータ10では、装置中心線CCからステータブレード42の出口端縁42osまでの距離がステータブレード42の外周端から内周端にかけて徐々に長くなるようにステータブレード42を構成するものとしたが、装置中心線CCからステータブレード42の出口端縁42osまでの距離がステータブレード42の外周端から内周端に亘って同一になるようにステータブレード42を構成するものとしてもよい。
以上説明したように、本開示の流体式トルク伝達装置は、ポンプシェル(21)の内側に複数のポンプブレード(22)を有するポンプインペラ(20)と、前記ポンプインペラ(20)と対向して配置されタービンシェル(31)の内側に複数のタービンブレード(32)を有するタービンランナ(30)と、前記ポンプインペラ(20)と前記タービンランナ(30)との間に配置され該タービンランナ(30)から該ポンプインペラ(20)への作動流体の流れを整流する複数のステータブレード(42)を有するステータ(40)とを備える流体式トルク伝達装置(10)であって、前記ステータブレード(42)は、前記タービンブレード(32)の出口内周端(32o)と該ステータブレード(42)の入口内周端(42ii)との間におけるステータ(40)の回転軸心の延在方向のクリアランスが、該ステータブレード(42)の出口内周端(42oi)と前記ポンプブレード(22)の入口内周端(22i)との間における回転軸心の延在方向のクリアランスよりも小さくなるように形成されていることを要旨とするものである。
この本開示の流体式トルク伝達装置では、ポンプブレード(22)を含むポンプインペラ(20)、タービンブレード(32)を含むタービンランナ(30)、ステータブレード(42)を含むステータ(40)とを備えて構成されるものである。そして、タービンブレード(32)の出口内周端(32o)とステータブレード(42)の入口内周端(42ii)との間におけるステータ(40)の回転軸心の延在方向のクリアランスが、ステータブレード(42)の出口内周端(42oi)とポンプブレード(22)の入口内周端(22i)との間における回転軸心の延在方向のクリアランスよりも小さくなるようにステータブレード(42)を形成する。このように、タービンブレード(32)の出口内周端(32o)とステータブレード(42)の入口内周端(42ii)との間のクリアランスを小さくすることで、ステータ(40)の回転軸心の延在方向におけるステータブレード(42)の長さを確保する。これにより、タービンブレード(32)の出口内周端(32o)から流出された作動流体の流れをステータブレード(42)の凹曲面によりスムーズに変更することが可能となり、作動流体の流れの剥離を抑制して、トルク容量を増加させることができる。この結果、トルク容量を良好に確保しつつ、流体式トルク伝達装置の小型化を可能とすることができる。ここで、流体式トルク伝達装置のポンプインペラ(20)が回転しタービンランナ(30)の回転が停止しているストール時には、ステータブレード(42)の腹面(凹曲面)に対する作動流体の流入角度が深くなり、ステータブレード(42)の腹面に対する作動流体の衝突によりステータ(40)がポンプインペラ(20)の回転軸心の延在方向(ポンプインペラ側)へ押し付けられる。このため、ステータブレード(42)の出口内周端(42oi)とポンプブレード(22)の入口内周端(22i)との間のクリアランスを小さくすると、ステータブレード(42)とポンプブレード(22)とが干渉するおそれがある。そこで、ステータブレード(42)の出口内周端(42oi)とポンプブレード(22)の入口内周端(22i)との間のクリアランスを大きくすることで、こうした干渉を防止することができる。
こうした本開示の流体式トルク伝達装置において、前記ステータブレード(42)は、互いに対向する前記ポンプブレード(22)の出口外周端(22o)と前記タービンブレード(32)の入口外周端(32i)との間の中央と前記ポンプインペラ(20)および前記タービンランナ(30)の回転軸心とを通ると共に前記ポンプインペラ(20)および前記タービンランナ(30)の回転軸心の延在方向に直交する装置中心線から該ステータブレード(42)の入口内周端(42ii)までの距離が前記装置中心線から該ステータブレード(42)の出口内周端(42oi)までの距離よりも長くなるように形成されているものとしてもよい。
この態様の本開示の流体式トルク伝達装置において、前記ステータブレード(42)は、前記装置中心線から該ステータブレード(42)の入口端縁(42is)までの距離が該ステータブレード(42)の外周端から内周端にかけて徐々に長くなるように形成されているものとすることもできる。こうすれば、タービンブレード32の出口に沿ってステータブレード(42)の入口のクリアランスを詰めることができ、タービンブレード(32)から流出される作動油をよりスムーズに整流することができ、トルク容量をより増加させることができる。
さらに、この態様の本開示の流体式トルク伝達装置において、前記ステータブレード(42)は、前記装置中心線から該ステータブレード(42)の出口端縁(42os)までの距離が該ステータブレードの外周端から内周端にかけて該装置中心線に対して所定の傾きをもって徐々に長くなるように形成されると共に、前記装置中心線から該ステータブレード(42)の入口端縁(42is)までの距離が該ステータブレード(42)の外周端から内周端にかけて該装置中心線に対して前記所定の傾きよりも大きな傾きをもって徐々に長くなるように形成されているものとしてもよい。こうすれば、タービンブレード(32)の出口とステータブレード(42)の入口との間のクリアランスと、ステータブレード(42)の出口とポンプブレード(22)の入口との間のクリアランスとをより適切に設定することができ、トルク容量をさらに増加させることができる。
また、本開示の流体式トルク伝達装置において、前記ステータブレード(42)は、前記装置中心線から該ステータブレード(42)の入口外周端(42io)までの距離をZ0iとし、前記装置中心線から該ステータブレード(42)の入口内周端(42ii)までの距離をZ1iとしたとき、2.63≦Z1i/Z0i≦3.92を満たすように形成されているものとしてもよい。この場合、前記ポンプブレード(22)および前記タービンブレード(32)の外周端の回転半径をRptとし、前記ステータブレード(42)の内周端の回転半径をRsとし、前記装置中心線から前記ポンプブレード(42)の回転軸心の延在方向に最も遠い最遠点(22x)と前記装置中心線から前記タービンブレードの回転軸心の延在方向に最も遠い最遠点(32x)との間の距離をDtpとしたとき、0.50≦Dtp/(Rpt−Rs)≦0.65を満たすように形成されているものとしてもよい。
さらに、本開示の流体式トルク伝達装置において、前記ポンプシェルと前記タービンシェルとは、互いに非対称に形成されているものとしてもよい。
以上、本開示の発明の実施の形態について説明したが、本開示の発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本開示の発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。