以下に、本発明の幾つかの実施形態について説明するが、同一の構成及び機能を有する部材には、各実施形態で同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
《第1実施形態》
第1実施形態のレーザ光照射装置100について、図1〜図8を参照して説明する。
図1、図2には、第1実施形態のレーザ光照射装置100の構成が概略的に示されている。図3は、レーザ光照射装置100のハードウェア構成を示すブロック図である。
レーザ光照射装置100は、一例として、対象物としての熱可逆記録媒体に対してレーザ光を照射して画像の記録や消去を行う装置である。以下では、熱可逆記録媒体を適宜「媒体」と略称する。
ここでは、レーザ光照射装置100は、リライタブルレーザシステムのレーザ記録・消去装置として用いられる。このリライタブルレーザシステムは、レーザ光照射装置100に加えて、熱可逆記録媒体が貼付された搬送用容器を搬送する例えばコンベア等を含む搬送手段、その制御部、タッチパネルを含むモニタ部等を備えている。
すなわち、レーザ光照射装置100は、例えばダンボール、プラスチックコンテナ等の搬送用容器に貼付された熱可逆記録媒体(例えばラベル)に対して、非接触式にて、画像の記録(書込み)や消去を繰返し行うことが可能である。このため、物流配送システムに特に好適に使用可能である。この場合、例えば、搬送手段としてのコンベアに載せたダンボールやプラスチックコンテナを移動させながら、ラベルに対して画像の記録や消去を行うことができ、ラインの停止が不要な点で、出荷時間の短縮を図ることができる。また、ラベルが貼付されたダンボールやプラスチックコンテナは、ラベルを剥がすことなく、そのままの状態で再利用し、再度、画像の消去や記録を行うことができる。
レーザ光照射装置100は、図1〜図3に示されるように、レーザ光出射手段11と、コリメータレンズ12b、拡散レンズ16、集光レンズ18及びレーザ光走査手段13を含む光学系30と、焦点位置制御手段40と、制御系50と、情報設定手段60と、距離計測手段70と、温度計測手段80と、プログラムユニット90とを備えている。
レーザ光出射手段11から出射されたレーザ光は、コリメータレンズ12bで平行光にされ、拡散レンズ16で拡散され、集光レンズ18でレーザ光走査手段13に集光される。レーザ光走査手段13は、集光レンズ18を介したレーザ光を偏向して熱可逆記録媒体上を走査する。ここでは、集光レンズ18は、2枚のレンズで構成されているが、1枚のレンズや3枚以上のレンズで構成されても良い。
ここで、拡散レンズ16は、図2に示されるように、焦点位置を変更可能となっている。詳述すると、拡散レンズ16は、焦点位置制御手段40としてのレンズ駆動装置により光軸方向に移動可能となっている。このレンズ駆動装置は、例えばパルスモータを含み、拡散レンズ16を高速で移動させることが可能であり、拡散レンズ16の高速での焦点位置制御が可能である。拡散レンズ16の焦点位置を制御することで、光学系30の焦点位置を制御でき、ひいては対象物上におけるビームスポット径を制御できる(対象物上におけるビームスポットのエネルギ密度を制御できる)。「エネルギ密度」は、ビームスポットの単位面積当たりの光強度(エネルギ)である。レンズ駆動装置は、制御系50によって制御される。
<制御手段>
制御系50は、レーザ光出射手段11の駆動電源である直流電圧源(図4参照)、ガルバノメータの駆動電源、ペルチェ素子などの冷却用電源(いずれも不図示)、主制御部50a(図3参照)、レーザ光出射手段11を駆動するレーザ駆動回路50b(図3参照)などで構成されている。主制御部50aは、例えばCPUとチップセットを含んで構成される。
主制御部50aは、画像記録時に発光トリガ信号と画像記録に適した光出力レベル(光出力設定値)をレーザ駆動回路50bに出力し、画像消去時に発光トリガ信号と画像消去に適した光出力レベル(光出力設定値)をレーザ駆動回路50bに出力する。
レーザ駆動回路50bは、主制御部50aからの光出力レベルに応じた駆動電流をレーザ光出射手段11に印加する。
<プログラムユニット>
プログラムユニット90は、タッチパネル入力やキーボード入力により、画像の記録又は消去のために、レーザ光の光出力、レーザ走査の速度等の条件入力や、記録する文字等の作成及び編集を行うユニットである。
<レーザ光出射手段>
レーザ光出射手段11としては、例えば、YAGレーザ、ファイバレーザ、半導体レーザ(LDやVCSEL)、ファイバ結合レーザなどが挙げられる。視認性の高いレーザ記録の実現には、レーザ光が照射される熱可逆記録媒体の記録領域を均一に加熱することが必要になるが、通常のレーザ光は中央部の強度が強いガウス分布になっており、このレーザ光で記録すると中央部に比べて周辺部でコントラストが低下するため、視認性が悪く画像品質が低下する。
これを回避する手段として、光分布変更光学素子(非球面レンズ、DOE素子など)を光路中に入れ込む方式があるが、装置コストが高くなり、収差による光分布歪み回避のため光学設計が難しくなるなどの問題がある。
そこで、ファイバ結合レーザを活用することで、光分布変更光学素子がなくてもファイバ端から出射されるレーザ光は、トップハット状のレーザ光を容易に得ることができ、視認性の高い画像記録が可能となる。従って、ファイバ結合レーザを用いることが特に好ましい。
レーザ光出射手段11から出射されるレーザ光の波長は、熱可逆記録媒体に添加する光熱変換材料と、繰返し画像処理に対する耐久性との関連から最適な値が選択される。
<レーザ光走査手段>
レーザ光走査手段13としては、レーザ光で熱可逆記録媒体上を2次元走査できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ガルバノスキャナ、ポリゴンスキャナ、MEMSスキャナ等を用いることができる。ここでは、2つのガルバノスキャナ13a、13bを組み合わせることで、熱可逆記録媒体をX方向(例えば水平方向)及びY方向(例えば鉛直方向)に2次元走査を可能としている。各ガルバノスキャナは、ガルバノメータと該ガルバノメータに取り付けられたガルバノミラーとを含んで構成される。レーザ光走査手段13は、主制御部50aにより制御される。
<焦点位置制御手段>
焦点位置制御手段40は、レーザ光出射手段11とレーザ光走査手段13との間に、光軸方向の位置を調整可能なレンズ(ここでは拡散レンズ16)を少なくとも1つ含むレンズ系を有し、該レンズの位置を調整することにより、光学系30からのレーザ光の集光位置、すなわち光学系30の焦点位置を制御する。
主制御部50aは、画像消去時には、焦点位置制御手段40を用いて拡散レンズ16の位置を熱可逆記録媒体の位置からデフォーカスするように制御する。これにより、熱可逆記録媒体上におけるビームスポット径が広がり、例えば光学系30の出射端に位置するガルバノスキャナ13bのみを単独で動作させビームをX方向のみに1次元走査させることで熱可逆記録媒体の画像を迅速に消去することが可能となる。また、ガルバノスキャナ13aのみを単独で動作させビームをY方向のみに1次元走査させても同様の効果が得られる。
一方、主制御部50aは、画像記録時には、焦点位置制御手段を介して拡散レンズ16の位置を熱可逆記録媒体の位置にフォーカスするように制御する。そして、2つのガルバノスキャナ13a、13bを動作させビームをX方向及びY方向に2次元走査させて、媒体に画像を描画する。
ここで、対象物としての熱可逆記録媒体においては、画像消去における照射パワー密度DL、画像記録における照射パワー密度DHとするとDL<DHという関係を有しているが、上述したようにビームスポット径は画像記録時よりも画像消去時の方が広がるため、必要な照射パワー密度を得るために、レーザ光出射手段11から出射されるレーザ光の出力を画像記録時よりも画像消去時の方が大きくなるように設定する必要がある。ただし、画像消去時のビームスポット径を画像記録時のビームスポット径に対してさほど広げない場合には、画像消去時のレーザ光の出力を画像記録時のレーザ光の出力以下とすることもあり得る。なお、「照射パワー密度」は、熱可逆記録媒体上におけるレーザ光のエネルギ密度を意味する。
<情報設定手段>
情報設定手段60は、画像消去情報、画像記録情報、及び熱可逆記録媒体とレーザ光照射装置100の出射窓(図2参照)との距離情報を入力し、設定する手段である。
画像記録工程及び画像消去工程では、熱可逆記録媒体とレーザ光照射装置100の出射窓との距離情報の設定値に基づいて、光学系30の焦点位置を制御する方式となっている。
画像消去情報、画像記録情報、及び距離情報を含む制御ファイルを情報設定手段60で作成して、情報設定手段60から各ガルバノスキャナ、レーザ光出射手段11などを制御する制御系50へ情報転送して動作させている。
情報転送は、画像記録工程と画像消去工程の間では行わないので画像記録工程から画像消去工程への移行に無駄な時間がかからない。
情報設定手段60から制御系50への情報転送は、搬送用容器がレーザ光出射手段11の前に移動する時間、停止時間に実施するので全体のシステムとしては問題とならない。すなわち、システム稼働上のタイムロスは発生しない。
情報設定手段60により設定された画像消去情報、画像記録情報、及び距離情報は、一つの制御ファイルとして実行される。これにより、レーザ光出射手段11への制御ファイルの転送時間を削減でき、高速での画像書き換えを実現できる。
<距離計測手段>
距離計測手段70は、熱可逆記録媒体とレーザ光照射装置100の出射窓との距離を計測する手段である。
ここで、熱可逆記録媒体とレーザ光照射装置100の出射窓との距離は、「ワーク間距離」(図2参照)ともいい、「ワーク間距離」は、例えば、物指し(スケール)、センサなどにより測定することができる。
距離計測は、熱可逆記録媒体が大きく傾斜していない場合には、処理を簡素化でき、低コストで実現できるので、熱可逆記録媒体の1箇所を計測することが好ましい。なお、傾斜している熱可逆記録媒体に対して記録する場合には、複数箇所の計測を行う必要があり3箇所での計測が好ましい。
距離計測手段70としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、距離センサを用いて測定することができる。
距離センサとしては、例えば、非接触型距離センサと接触型センサが挙げられる。接触型センサは計測対象の媒体にダメージを与え、高速計測が難しいことから、非接触型距離センサが好ましい。非接触型センサの中でも、正確で高速な距離計測が可能で、安価で小型な点から、レーザ変位センサが特に好ましい。
距離センサで計測する位置としては、熱可逆記録媒体が傾斜することを考えると、熱可逆記録媒体の平均距離に相当する距離である画像記録する中央部が好ましい。主制御部50aは、複数箇所の距離計測を行う場合に、計測位置での距離結果に基づいて、三次元に傾いたことを想定し、算出して、焦点位置制御手段40を介して光学系30の集光位置補正(焦点位置補正)を行う。
<温度計測手段>
温度計測手段80は、熱可逆記録媒体の温度及び周囲温度の少なくとも一方の温度を計測する手段であり、主制御部50aは、温度計測手段80の計測結果に基づき、照射パワーを制御する。
熱可性逆記録媒体は、熱で画像記録及び画像消去を行うので温度により最適な照射パワーが異なる。具体的には、温度が高いときには低照射パワーに、温度が低いときには高照射パワーにレーザ光を照射するように制御するのが好ましい。
温度計測手段80としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、温度センサを用いて測定することができる。
温度センサとしては、例えば、周囲温度計測を行う環境温度センサ、媒体温度計測を行う媒体温度センサ、などが挙げられる。
環境温度センサとしては、安価で使用でき、高速、高精度での計測が可能となる点から、例えば、サーミスタを用いることが好ましい。
媒体温度センサとしては、非接触での計測が可能となる点から、例えば、放射温度計を用いることが好ましい。
<画像記録工程>
画像記録工程は、計測した距離に基づいて照射パワーを調整したレーザ光を熱可逆記録媒体に照射して加熱することにより画像を記録する工程である。
ここで、照射パワーは、Pw/V(ただし、Pwは照射光量(媒体に照射されるレーザ光の光量)、Vは熱可逆記録媒体上でのレーザ光の走査速度を表す。)に比例する。従って、Pw/Vが略一定になるようにレーザ光の走査速度(V)及び照射光量(Pw)の少なくとも一方を調整することにより照射パワーを調整することが好ましい。
照射パワーの制御方法としては、照射パワーを上げることは、レーザ光の走査速度を下げる又は照射光量を上げることで実現できる。照射パワーを下げることは、レーザ光の走査速度を上げる又は照射光量を下げることで実現できる。
レーザ光の走査速度を制御する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、走査用ミラーの動作を担うモータの回転速度を制御する方法、などが挙げられる。
レーザ光の照射パワーを制御する方法としては、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、光出力設定値(光出力レベル)を変更する方法、レーザ光源(レーザ光出射手段11)を駆動するための駆動信号(パルス信号)のピークパワー(パルス振幅)、ON時間(パルス幅)、デューティ(パルス幅/パルス周期)での調整による制御方法などが挙げられる。
光出力設定値の変更方法としては、記録部分により、光出力設定値を変更する方法が挙げられる。駆動信号のパルス幅による制御方法としては、記録部分により、パルス幅を変更することで、照射光量の調整による照射パワーの調整が可能となる。
ところで、熱可逆記録媒体にレーザ光を照射して加熱することにより熱可逆記録媒体に記録された画像を消去した直後に描画画像を記録する場合には、描画画像の濃度の低下、繰り返し耐久性の低下などの問題が起きることがある。
また、画像記録工程において一定の光出力で画像記録する場合には、線幅太り、文字、記号のツブレの発生、画像濃度低下や、情報読取コード読み取り性低下、繰り返し耐久性の低下などの問題が起きることがある。
熱可逆記録媒体に描画画像を記録するのみの場合、又は熱可逆記録媒体に対して、画像を消去するために熱を加えてから(画像消去後)充分時間が経ち放熱された後に描画画像を記録する場合には、レーザ光が照射された熱可逆記録媒体の熱可逆性記録層の加熱領域から、熱可逆性記録層の周囲に熱が拡散されることになるので、熱可逆性記録層は急冷される。
しかし、熱可逆記録媒体に対して、画像を消去するために熱を加えた直後(画像消去直後)に描画画像を記録する場合には、画像消去時に加えた熱が熱可逆記録媒体に蓄熱されていることがあり、このとき描画画像を記録すると、熱可逆性記録層の加熱領域の周囲も熱が残っている状態なので、熱可逆記録媒体に描画画像を記録するのみの場合に比べて、熱可逆性記録層は徐冷されることになる。これにより、描画画像濃度の低下や情報コードの読み取り性の低下が起きると考えられる。
また、画像記録工程において、一定の光出力で描画画像を記録する場合には、最も蓄熱していない領域に画像を記録するときに充分な画像濃度が得られるようにレーザ光の出力を設定する必要があるが、この出力値で蓄熱の大きい領域に画像を記録すると、熱可逆性記録層は過剰に加熱されてしまう。これにより、繰り返し耐久性の低下、情報読取コードの読み取り性の低下、文字、記号のツブレなどが起きると考えられる。
これらの現象は、1台のレーザ光照射装置で画像消去と画像記録を両方行う場合のスループットを高めるために、画像の書き換えに要する時間を短くすればするほど、つまり画像消去終了時から画像記録開始時までの時間を短くすればするほど、起こりやすくなる。
また、以上のような諸問題は、画像線が隣接しない単線よりも画像線が隣接した複数の描画線からなる描画画像の方が起こりやすい。これは、画像線が隣接しない単線の方が隣接した複数の描画線からなる描画画像よりも熱可逆性記録層の加熱領域が狭いために、該加熱領域からその周囲への熱の拡散が速く起こり、熱可逆性記録層が急冷となり、かつ過加熱されにくいためと考えられる。
レーザ駆動回路50bは、図4に示されるように、電源としての直流電圧源と、レーザ光出射手段11としてのLD(レーザダイオード)と、LCフィルタ、スイッチング素子SW1〜SW3、発光制御部107、電流センサ102、電流検出部103、電流制御部104などを含む。
LCフィルタは、誘導性素子としてのコイルLと容量性素子としてのコンデンサCを有する出力フィルタである。
スイッチング素子SW1は、LDとLCフィルタとの間の導通/非導通を切り替えるためのトランジスタである。
発光制御部107は、主制御部50aからの発光トリガ信号及び光出力レベルに基づいて発光制御信号(パルス信号)を生成し、該発光制御信号をスイッチング素子SW1に出力して該スイッチング素子SW1をON/OFFさせることで、LDの発光制御を行う。スイッチング素子SW1のON時にLDに駆動電流ILD(パルス電流)が印加され、LDが発光する。
ここでは、主制御部50aから発光制御部107に画像記録時と画像消去時との間で異なる光出力レベルが出力されるため、画像記録時と画像消去時との間で電流値が異なる駆動電流ILDがLDに印加される。
電流センサ102は、直流電圧源とLCフィルタとの間に接続され、駆動電流ILDを検出する。
電流検出部103は、電流センサ102の出力値と、発光制御部107によるスイッチング素子SW1のON時間(発光制御信号のパルス幅)から、駆動電流ILDの電流値を検出する。
スイッチング素子SW2は、直流電圧源と電流センサ102との間の導通/非導通を切り替えるためのトランジスタである。
スイッチング素子SW3は、LCフィルタとグランド(アース)との間の導通/非導通を切り替えるためのトランジスタである。
ここで、主制御部50aは、光出力レベルに応じてLDの電流設定値である閾値Ithを設定し、電流制御部104に出力する。ここでは、画像記録時の駆動電流ILD及び画像消去時の駆動電流ILDに個別に対応する異なる2つの閾値Ithが設定される。
電流制御部104は、電流検出部103の出力値と主制御部50aからの閾値Ithを比較し、その比較結果に基づいてスイッチング素子SW2、SW3を制御する。具体的には、図5に示されるように、SW2をON、SW3をOFFのときに駆動電流ILDが閾値Ithを上回ったときにスイッチング素子SW2をOFF、スイッチング素子SW3をONとし、駆動電流ILDが閾値Ithを下回ったときにスイッチング素子SW2をON、スイッチング素子SW3をOFFとする。これにより、各駆動電流ILDを対応する閾値Ith近傍に制御することができ、ひいては画像記録時及び画像消去時にLDを安定した光出力で発光させることができる。
以上のように構成されるレーザ駆動装置50bの動作は、一般的な同期整流を用いた非絶縁DCDCコンバータと同じである。電源電圧+VをSW2,SW3で構成される同期整流回路によってチョッピングし、コイルLとコンデンサCとで構成されたLCフィルタで平滑化することで、安定な駆動電流ILDを得ることができる。駆動電流ILDは常に電流センサ102と電流検出部103により監視され、その値は電流制御部104で電流設定値と比較され、同期整流回路のONデューティ比の大小にフィードバックされる。レーザ光のCW/パルス駆動の切り替えはSW1により行う。発光制御信号により、SW1を切り替えることで、SW1のON時に矩形パルス状の駆動電流ILDを供給できる。レーザ光の照射開始時に流れる駆動電流ILDは容量性素子Cの両端電圧によるため、駆動電流ILDが所望の範囲に収まるまでに、数ms〜数10msの遷移時間(セトリングタイム)を要するデメリットがあるが、出力フィルタがコイルLのみの構成(Lフィルタ)よりも低リップルで、小型化しやすいメリットがある。また、以上の構成に当てはまらない方式の光源駆動回路であっても、その動作範囲(ダイナミックレンジ)以上の光出力レベル信号が入力された場合等、安定した回路動作が得られず、セトリングタイムのような不安定時間が生じることがある。
以上のような構成を有するレーザ駆動回路50bを備えるレーザ光照射装置100においては、例えば画像消去から画像記録に切り替える際、光出力レベルをPH→PLのように切り替える(図6の太線参照)ことになるが、安定したPLを得るまでに数msの時間(遷移時間Ts)が必要となる。また、例えば画像記録から画像消去に切り替える際、光出力レベルをPL→PHのように切り替える(図6の細線参照)ことになるが、安定したPHを得るまでに数msの時間(遷移時間Ts)が必要となる。
このような事情は、その逆のPL→PHばかりでなく、レーザ光照射装置100を起動して、最初の画像消去を実行するときの0→PH、或いは最初の画像記録を実行するときの0→PLでも、安定した光出力となるまでには数msの時間が必要となる。
もし、不安定な光出力のまま画像記録を行った場合には、図7上図(破線)に示されるように書き始めの画像がどうしてもかすれてしまう。このような画像は、特にバーコードやQRコード(登録商標)である場合には読み取りエラーを引き起こす要因になり、誤った配送先に搬送用容器が送られてしまうおそれがある。
また、不安定な光出力のまま画像消去を行った場合には、図7下図(破線)に示されるように消し損じが発生し、その状態のまま画像記録で上書きされるので、同様の読み取りエラーを発生させることになる。
一方、先に図2を参照して説明したように、レーザ光照射装置100は1台で画像記録、画像消去を行うために、焦点位置制御手段40を用いて、画像記録時及び画像消去時それぞれに最適な照射パワーとなるように熱可逆記録媒体上でのビームスポット径、及びレーザ光出射手段11から出射されるレーザ光の出力を調整する。
そこで、制御系50は、焦点位置制御手段40を用いて、「画像消去時」及び「画像記録時」における拡散レンズ16の位置制御に加えて、主制御部50aが光出力レベル(光出力設定値)を変更するときのLDの光出力が安定するまでの遷移時間Ts(図6参照)における拡散レンズ16の位置制御を行う。
具体的には、拡散レンズ16の位置を、遷移時間Tsにおける熱可逆記録媒体上におけるビームスポットの照射パワー密度が、熱可逆記録媒体が画像消去、或いは画像記録される、所謂「状態変化」するのに必要な最低照射パワー密度Dthよりも小さくなるような(好ましくは充分小さくなるような)ビームスポット径となるように設定する。
詳述すると、遷移時間Tsに、画像記録時や画像消去時よりもビームスポット径を大きく(好ましくは充分に大きく)する。
この結果、LDの光出力が不安定な時間である遷移時間Tsに熱可逆記録媒体の状態変化を引き起こさない照射パワー密度のレーザ光が照射される。
画像消去→画像記録、或いは画像記録→画像消去の切り替えは、すぐに実行されるわけではなく、どちらか一方の動作が完了してから、熱可逆記録媒体が充分に冷却するまでの冷却時間TCが数10ms必要である。しかし、光出力レベルを変更してからLDの光出力が安定するまでの遷移時間TSは、TCよりも短いので、このような方法を行ってもタクトタイムの増大をもたらすようなことがない。
ここでは、レーザ光照射装置100は2つの異なる光エネルギモード(レーザ光照射モード)を有し、互いに切り替えが可能である。モードの種類として例えば、熱可逆記録媒体に対して約100[W]の光エネルギでビーム径が広いレーザ光を走査する消去モードと、約20[W]の光エネルギでビーム径の狭いレーザ光を走査する記録モードがある。
次に、熱可逆記録媒体における、状態変化について説明する。
<画像記録及び画像消去メカニズム>
前記画像記録及び画像消去メカニズムは、熱により色調が可逆的に変化する態様である。前記態様はロイコ染料及び可逆性顕色剤(以下、「顕色剤」と称することがある。)からなり、色調が透明状態と発色状態とに熱により可逆的に変化する。
図17(A)に、前記樹脂中に前記ロイコ染料及び前記顕色剤を含んでなる熱可逆記録層を有する熱可逆記録媒体について、その温度−発色濃度変化曲線の一例を示し、図17(B)に、透明状態と発色状態とが熱により可逆的に変化する前記熱可逆記録媒体の発消色メカニズムを示す。
まず、初め消色状態(A)にある前記記録層を昇温していくと、溶融温度T1にて、前記ロイコ染料と前記顕色剤とが溶融混合し、発色が生じ溶融発色状態(B)となる。溶融発色状態(B)から急冷すると、発色状態のまま室温に下げることができ、発色状態が安定化されて固定された発色状態(C)となる。この発色状態が得られたかどうかは、溶融状態からの降温速度に依存しており、徐冷では降温の過程で消色が生じ、初期と同じ消色状態(A)、あるいは急冷による発色状態(C)よりも相対的に濃度の低い状態となる。一方、発色状態(C)から再び昇温していくと、発色温度よりも低い温度T2にて消色が生じ(DからE)、この状態から降温すると、初期と同じ消色状態(A)に戻る。
溶融状態から急冷して得た発色状態(C)は、前記ロイコ染料と前記顕色剤とが分子同士で接触反応し得る状態で混合された状態であり、これは固体状態を形成していることが多い。この状態では、前記ロイコ染料と前記顕色剤との溶融混合物(前記発色混合物)が結晶化して発色を保持した状態であり、この構造の形成により発色が安定化していると考えられる。一方、消色状態は、両者が相分離した状態である。この状態は、少なくとも一方の化合物の分子が集合してドメインを形成したり、結晶化した状態であり、凝集あるいは結晶化することにより前記ロイコ染料と前記顕色剤とが分離して安定化した状態であると考えられる。多くの場合、このように、両者が相分離して前記顕色剤が結晶化することにより、より完全な消色が生じる。
なお、図17(A)に示す、溶融状態から徐冷による消色、及び発色状態からの昇温による消色はいずれもT2で凝集構造が変化し、相分離や前記顕色剤の結晶化が生じている。
更に、図17(A)において、前記記録層を溶融温度T1以上の温度T3に繰返し昇温すると消去温度に加熱しても消去できない消去不良が発生したりする場合がある。これは、前記顕色剤が熱分解を起こし、凝集あるいは結晶化しにくくなってロイコ染料と分離しにくくなるためと思われる。繰返しによる前記熱可逆記録媒体の劣化を抑えるためには、前記熱可逆記録媒体を加熱する際に図17(A)の前記溶融温度T1と前記温度T3の差を小さくすることにより、繰返しによる前記熱可逆記録媒体の劣化を抑えられる。
以上のような画像記録及び画像消去メカニズムに対して本発明の適用方法としては、熱可逆記録媒体の温度しきい値を設定し、該温度しきい値を超えないように照射パワーまたは照射パワー密度を制御することが考えられる。温度しきい値の設定方法として、例えば以下の2つがある。
(1)T2を温度しきい値とする。画像記録も画像消去も生じない温度T2以下の媒体温度(熱可逆記録媒体の温度)になるように、レーザ光の照射パワーまたは照射パワー密度を制御する。
(2)画像記録時はT1を温度しきい値として、画像消去時はT2を温度しきい値とする。それぞれの工程において、温度しきい値を超えないように、レーザ光の照射パワーまたは照射パワー密度を制御する。
上記温度しきい値を超えないための照射パワーの最小エネルギ(最小値)は、対象物、目的等に応じて決定して良く、特に制限はない。温度しきい値の測定によらず、最小エネルギを実験的に求める決定方法としては、例えば、バーコード品質、官能検査の他、加工用途では加工材料の表面変質、変形、溶断などがある。この決定方法によれば、認識できないようなわずかな状態変化は許容することもできる。
また、温度しきい値は、媒体温度やレーザ光源温度などの各構成要素の温度特性によって変動する。より効果的な媒体温度、レーザ光源温度の計測手段を用いて、計測値をもとに補正することが好ましい。補正手段として例えばレーザ光のI−L温度特性(電流−光出力温度特性)を温度カーブとして設定し、取得したレーザ光源の温度により出力するピークパワーを推測し、パルス幅補正によってパワー調整することで媒体温度を制御する方法がある。
以下に、第1実施形態のレーザ光照射装置100を用いるレーザ光照射方法について図8を参照して説明する。図8のフローチャートは、主制御部50aによって実行される処理アルゴリズムに基づいている。ここでの制御は、ユーザによりリライタブルレーザシステムのモニタ部のタッチパネルを介して処理開始要求が入力され主制御部50aに送られたときに開始される。なお、モニタ部と主制御部50aは通信可能に接続されている。
ここで、ユーザによるタッチパネルを介しての入力操作により、レーザ光照射モードを記録モード及び消去モードのいずれかに初期設定可能となっている。ここでは、消去モードに初期設定され、消去モードを先頭に消去モードと記録モードが交互に繰り返される。
詳述すると、コンベア等の搬送手段によりレーザ光照射装置100に対向する位置に順次搬送される搬送用容器に貼付されたラベル(熱可逆記録媒体)には消去すべき画像が記録されており、該画像をレーザ光照射装置100で消去後、新たな画像を記録する。搬送用容器毎に、この消去→記録の動作が繰り返される。
主制御部50aは、記録モード時に画像記録に適した光出力レベルをPLに設定し、消去モード時に画像消去に適した光出力レベルをPHに設定する。
また、主制御部50aは、拡散レンズ16を、記録モード時には画像記録に適したビームスポット径が得られるフォーカス位置に位置させ、消去モード時には画像消去に適したビームスポット径が得られるデフォーカス位置(以下では「消去用デフォーカス位置」とも呼ぶ)に位置させる。
そこで、記録モード時には、媒体上において光出力レベルPHとフォーカス位置の組み合わせに対応する照射パワー密度(Dth以上)を得ることができ、ひいては媒体上に画像を精度良く記録できる。また、消去モード時には、媒体上において光出力レベルPLと消去用デフォーカス位置の組み合わせに対応する照射パワー密度(Dth以上)を得ることができ、ひいては媒体上の画像を精度良く消去できる。
最初のステップS1では、モード変更タイミングである否かを判断する。すなわち、消去モード又は記録モードが終了したタイミングであるか否かを判断する。このタイミングは、主制御部50aが各モードでのLDの発光動作(発光制御信号)を監視して捉える。モード変更タイミングでないと判断した場合には「待ちの状態」となり、モード変更タイミングであると判断した場合には次のステップS2に移行する。
ステップS2では、モード変更前の位置(フォーカス位置又は消去用デフォーカス位置)に位置する拡散レンズ16を、媒体上におけるビームスポット径が、画像記録時及び画像消去時のビームスポット径よりも大きくなる位置(好ましくは充分に大きくなる位置)に移動させる。すなわち、拡散レンズ16を、消去用デフォーカス位置よりもデフォーカス量が大きい(好ましくは充分に大きい)デフォーカス位置に移動させる。つまり、拡散レンズ16を、媒体上におけるビームスポット径の照射パワー密度が最低照射パワー密度Dth未満となる位置に移動させる。
この結果、モード変更時における遷移時間Tsに、媒体上におけるビームスポットの照射パワー密度を媒体の状態変化が発生しない大きさにすることができ、ひいては画像のかすれや消し残りが発生するのを抑制できる。
次のステップS3では、所定時間が経過したか否かを判断する。この所定時間は、遷移時間Ts以上の時間に設定されることが好ましく、スループット向上(システム稼働のロスタイム抑制)の観点から、遷移時間Tsよりも僅かに長く設定されることがより好ましい。所定時間が経過していないと判断した場合には「待ちの状態」となり、所定時間が経過した判断した場合には、次のステップS4に移行する。
ステップS4では、拡散レンズ16をモード変更後の位置(フォーカス位置又は消去用デフォーカス位置)に移動させる。
次のステップS5では、処理を終了するか否かを判断する。処理を継続する場合には、ステップS1に戻り、終了する場合には、フローは、終了する。
なお、モード変更時以外、例えば処理開始時に光出力レベルを0から立ち上げるときや、処理終了時に光出力レベルを0に立ち下げるときにも、図8のフローと同様の制御を行うことが好ましい。ただし、光出力レベルを0から立ち上げるときには変更前(光出力レベルが0のとき)の拡散レンズ16の位置は任意で良い。また、光出力レベルを0に立ち下げるときには変更後(光出力レベルが0のとき)の拡散レンズ16の位置は任意で良い。
以上説明した第1実施形態のレーザ光照射装置100は、媒体にレーザ光を照射する、レーザ光出射手段11としてのLD(レーザ光源)を含む照射手段と、LDを駆動するレーザ駆動回路50bと、レーザ駆動回路50bを介してLDの光出力レベルを変更する主制御部50aと、媒体上におけるビームスポットの照射パワー密度(エネルギ密度)を、光出力レベルの変更前及び変更後の少なくとも一方よりも変更中の方が低くなるように制御する照射パワー密度制御手段(光スポット制御手段)と、を備えている。
なお、本明細書中、「光出力レベルの変更」は、光出力レベルを0よりも大きい値から0よりも大きい他の値に変更することや、光出力レベルを0から0よりも大きい値に変更することや、光出力レベルを0よりも大きい値から0に変更することを含む。
第1実施形態のレーザ光照射装置100によれば、光出力レベルの変更中(光出力が遷移する時間)に対象物上におけるビームスポットのエネルギ密度を媒体の状態変化が起きにくい大きさにすることができる。なお、ここで言う「状態変化」とは、例えば熱可逆記録媒体においては記録状態と消去状態との間で状態が転移することであり、さらに例えば加工材料においては溶融や形状変化等が発生することを意味する。
この結果、媒体に不要な状態変化が発生するのを抑制できる。
一方、特許文献1に開示されているLED駆動回路を光照射装置に用いた場合に該LED駆動回路を介して光出力レベルを変更しても、光出力が安定するまでに数ms〜数十msの遷移時間を要する。この遷移時間中に対象物に照射されるエネルギ(熱・光)やそのエネルギ密度によっては、対象物に不要な状態変化が発生することが懸念される。
また、照射パワー密度制御手段は、LDからの光の光路上に配置された拡散レンズ16を含み、該拡散レンズ16の焦点位置を調整可能であるため、簡易な手法により、対象物上におけるビームスポットの照射パワー密度を制御することができる。
また、照射パワー密度制御手段は、拡散レンズ16をその光軸方向に移動させるための焦点位置制御手段40を更に含むため、簡易な構成により、媒体上におけるビームスポットの照射パワー密度を制御することができる。
また、照射パワー密度制御手段は、記録モードと消去モードとの間での光学系30のフォーカス調整にも用いられる拡散レンズ16を駆動する焦点位置制御手段40としてレンズ駆動装置を含むため、照射パワー密度を制御するための専用の手段を別途設ける場合に比べて、部品点数の削減、低コスト化及び小型化を図ることができる。
また、別の観点からすると、照射手段は、LDからの光の光路上に配置された光学系30を更に含み、照射パワー密度制御手段は、光学系30の拡散レンズ16の焦点位置を調整する。
この場合、簡易な構成により、媒体上におけるビームスポットの照射パワー密度を制御することができる。
また、照射パワー密度制御手段が、光出力レベルの変更中に、媒体上おけるビームスポットのエネルギ密度を該媒体の状態変化が生じる最低の値(最低照射パワー密度Dth)を基準に制御する場合には、媒体の不要な状態変化を引き起こす不安定な出力の光が照射されるのをより確実に抑制できる。
また、レーザ駆動回路50bは、コイルL及びコンデンサCを有するLCフィルタと、該LCフィルタに導通可能な直流電圧源と、LDとLCフィルタとの導通/非導通を切り替えるためのスイッチング素子SW1と、光出力レベルに基づいてスイッチング素子SW1を制御する発光制御部107と、直流電圧源からLCフィルタを介してLDに印加される駆動電流ILDを光出力レベルに応じた電流設定値(閾値Ith)に基づいて制御する、電流センサ102、電流検出部103及び電流制御部104を含む電流制御系と、を更に含む。
この場合、駆動電流ILDを所望の電流値近傍に安定化させることができ、ひいてはLDの光出力を所望の光出力レベル近傍に安定化させることができる。また、例えばLフィルタを用いる場合に比べて、小型化及び低コスト化を図ることができる。
また、主制御部50aは、LDの光出力レベルを媒体に対する画像記録を行うための第1の光出力レベル(PL)と、LDの光出力が媒体に対する画像消去を行うための第2の光出力レベル(PH)との間で変更するため、1台のレーザ光照射装置100により、媒体に対する画像記録及び画像消去の双方を行うことができる。
また、主制御部50aは、光出力レベルを第1及び第2の光出力レベルの少なくとも一方と0との間で変更するため、例えば処理開始時に光出力レベルを0から第1又は第2の光出力レベルに立ち上げて画像記録又は画像消去を行うことや、処理終了時に光出力レベルを第1又は第2の光出力レベルから0に立ち下げることができる。
また、レーザ光照射装置100と、媒体が取り付けられた搬送用容器(物体)をレーザ光照射装置100に対向する位置を含む搬送路上で搬送する搬送手段と、を備えるリライタブルレーザシステムでは、搬送路上で搬送される搬送容器毎に画像記録及び画像消去を連続して高精度に行うことができる。
上記第1実施形態で説明したことは、結局、「光出力レベルを変更したときに光出力が安定するまでの遷移時間」において、照射パワー密度が、熱可逆記録媒体が「状態変化」するのに必要な最低照射パワー密度Dthよりも小さく(好ましくは充分小さく)なるようなビームスポット径となっていればよい、ということに他ならない。
やや観点を変えて、遷移時間において、媒体上におけるビームスポットの照射パワー(エネルギ)を熱可逆記録媒体が「状態変化」するのに必要な最低照射パワーよりも小さく(好ましくは充分小さく)することでも、媒体の不要な状態変化を抑制できる。例えば、照射光の一部を遮光することでも、媒体の不要な状態変化を抑制できる。
《第2実施形態》
そこで、第2実施形態では、図9に示されるレーザ光出射手段11と媒体との間のレーザ光の光路上に該レーザ光の一部を遮光する遮光部として開口径を調整可能なアパーチャ部材10(絞り調整可能な開口絞り)を配置し、制御系50に開口径制御手段(不図示)を設けている。また、照射パワー密度制御手段に代えて、照射パワー制御手段を設けている。
この場合、レンズ系のレンズをメカニカルに駆動させるよりも機構的にコンパクトになるという利点を有する。
具体的には、図10に示されるように、アパーチャ部材10として複数の絞り羽を含む開口絞りを用い、その開口を開口径制御手段により調整することで、レーザ光出射手段11から媒体に向かうビームの一部を遮光でき、ひいては媒体上における照射パワーを制御できる。ここでは、開口絞りの開口径を最大にすると入射光を全て通過させることができ、開口径を最小(0)にすると入射光を全て遮ることができる。なお、開口絞りの設計(例えば開口径の調整幅、最大径、最小径)は、適宜変更可能である。
なお、ここでは、アパーチャ部材10は、集光レンズ18とレーザ光走査手段13との間のレーザ光の光路上に配置されているが、これに限らず、例えば、レーザ光出射手段11とコリメータレンズ12bとの間の光路上、コリメータレンズ12bと拡散レンズ16との間の光路上、拡散レンズ16と集光レンズ18との間の光路上、レーザ光走査手段13と出射窓との間の光路上等に配置しても良い。
また、遮光部材としては、アパーチャ部材10に限らず、要は、レーザ光の光路の一部を遮光し、その遮光量を調整可能なものであれば良い。例えば、拡散板や後述する光熱変換部20をレーザ光の光路を横切る方向に移動可能に設けても良い。
開口径制御手段の動作は、アパーチャ部材10の開口径を光出力レベルの変更中に変更前及び変更後の少なくとも一方よりも小さくする。例えば、アパーチャ部材10の開口径を光出力レベルの変更中にレーザ光の一部を通過させる大きさとし、変更前及び変更後の少なくとも一方にレーザ光の全部を通過させる大きさとする。
第2実施形態のレーザ光照射装置200を用いるレーザ光照射方法の全体的なフローは、図8のフローに準ずる。なお、モード変更時以外、例えば処理開始時に光出力レベルを0から立ち上げるときや、処理終了時に光出力レベルを0に立ち下げるときにも、図8のフローと同様の制御を行うことが好ましい。ただし、光出力レベルを0から立ち上げるときには変更前(光出力レベルが0のとき)のアパーチャ部材10の開口径は任意で良い。また、光出力レベルを0に立ち下げるときには変更後(光出力レベルが0のとき)のアパーチャ部材10の開口径は任意で良い。
以上説明した第2実施形態のレーザ光照射装置200では、照射パワー制御手段は、LDからの光の一部を遮光し、その遮光量を調整可能な遮光部を含むため、上記第1実施形態と同様の効果を奏するとともに、簡易な手法により、媒体上におけるビームスポットの照射パワーを制御することができる。
また、遮光部は、絞り調整可能な開口絞りである場合には、開口径を適宜調整可能であるため、不安定なレーザ光の媒体上におけるビームスポットの照射パワーを容易に制御できる。
《第3実施形態》
第3実施形態を図11及び図12を参照して説明する。
第3実施形態のレーザ光照射装置300では、図11に示されるように、コリメータレンズ12bと拡散レンズ16との間のレーザ光の光路上に光偏向手段14が配置され、レーザ光出射手段11と媒体との間のレーザ光の光路から外れた位置に遮光部としての光熱変換部20が配置されている点が上記第1実施形態のレーザ光照射装置100と異なる。
<光偏向手段>
光偏向手段14としては、例えば音響光学素子(AOL)、ガルバノスキャナ、MEMSスキャナなどの偏向光学素子を用いることができ、数ms以下での高速なレーザ光の偏向が可能である。
<光熱変換部>
光熱変換部20は、レーザ光の光エネルギを吸収する部材であり、例えば金属、樹脂、紙等の基材に対して、光熱変換材料を塗布する、静電植毛等の表面処理を施すなど、レーザ光に対する表面反射率を低減させる工夫がなされている。
光熱変換部20は、ここでは、レーザ光照射装置100の筐体内部に配置されている(図11参照)。光熱変換部20を装置内部に配置する場合の動作として、例えば、コリメータレンズ12bからの平行光を、音響光学素子(AOL)、ガルバノスキャナ、MEMSスキャナなどによって数ms以下の周期で高速に偏向して、光熱変換部20に当てる方法が挙げられる。
レーザ光照射装置300では、レーザ光出射手段11から出射されたレーザ光は、コリメータレンズ12bで平行光にされ、光偏向手段14に入射する。光偏向手段14は、コリメータレンズ12bからの平行光の偏向方向を拡散レンズ16に向かう方向(媒体に導かれる方向)と光熱変換部20に向かう方向との間で切り換え可能に構成、配置されている。光偏向手段14は、主制御部50aにより制御される。
ここでは、主制御部50a(図3参照)は、LDの光出力レベルの変更前及び変更後の少なくとも一方において、コリメータレンズ12bからの平行光を光偏向手段14で拡散レンズ16に向かう方向に偏向する。拡散レンズ16で拡散された光は、集光レンズ18で集光され、レーザ光走査手段13により媒体上を走査される。
一方、主制御部50aは、LDの光出力レベルの変更中(遷移時間)に、上記平行光を光偏向手段14で光熱変換部20に向けて偏向する。
結果として、所望の安定した出力のレーザ光のみを媒体に照射することができる。
以下に、第3実施形態のレーザ光照射装置300を用いるレーザ光照射方法について図12を参照して説明する。図12のフローチャートは、主制御部50aによって実行される処理アルゴリズムに基づいている。ここでの制御は、図8のフローチャートと概ね同様の手順で行われる。当初、光偏向手段14によるレーザ光の進行方向(偏向方向)は、該レーザ光が媒体に導かれる方向に設定されている。
最初のステップS11では、モード変更タイミングである否かを判断する。モード変更タイミングでないと判断した場合には「待ちの状態」となり、モード変更タイミングであると判断した場合には次のステップS12に移行する。
ステップS12では、LDからのレーザ光の進行方向を媒体に導かれる方向から光熱変換部20に向かう方向に変更する。
この結果、モード変更時における遷移時間Tsに媒体に不要な状態変化を引き起こす不安定な光が照射されるのを抑制でき、ひいては画像のかすれや消し残りが発生するのを抑制できる。
次のステップS13では、所定時間が経過したか否かを判断する。この所定時間は、遷移時間Ts以上の時間に設定されることが好ましく、スループット向上(システム稼働のロスタイムを抑制)の観点から、遷移時間Tsよりも僅かに長く設定されることがより好ましい。所定時間が経過していないと判断した場合には「待ちの状態」となり、所定時間が経過したと判断した場合には、次のステップS14に移行する。
ステップS14では、LDからのレーザ光の進行方向を光熱変換部20に向かう方向から媒体に導かれる方向に変更する。
次のステップ15では、処理を終了するか否かを判断する。処理を継続する場合には、ステップS11に戻り、終了する場合には、フローは、終了する。
なお、モード変更時以外、例えば処理開始時に光出力レベルを0から立ち上げるときや、処理終了時に光出力レベルを0に立ち下げるときにも、図12のフローと同様の制御を行うことが好ましい。ただし、光出力レベルを0から立ち上げるときには変更前(光出力レベルが0のとき)の光偏向手段14による偏向方向は任意で良い。また、光出力レベルを0に立ち下げるときには変更後(光出力レベルが0のとき)の光偏向手段14による偏向方向は任意で良い。
以上説明した第3実施形態のレーザ光照射装置300は、媒体(対象物)にレーザ光を照射する、レーザ光出射手段11としてのLD(レーザ光源)を含む照射手段と、LDを駆動する、コイルL及びコンデンサCを有するLCフィルタを含むレーザ駆動回路50b(光源駆動回路)と、レーザ駆動回路50bを介してLDの光出力レベルを変更する主制御部50a(光出力制御部)と、光出力レベルの変更中に媒体にレーザ光が照射されないように、LDからの光の進行方向を制御する進行方向制御手段と、を備えている。
この場合、媒体に不要な状態変化が発生するのを抑制できる。
また、進行方向制御手段は、LDからの光を偏向する光偏向手段14を含むため、光出力レベルの変更前及び変更後の少なくとも一方と変更中との間で光の進行方向を容易かつ迅速に切り替えることができる。
また、LDと媒体との間のレーザ光の光路から外れた位置に配置された光熱変換部20(遮光部)を更に備え、進行方向制御手段は、光出力レベルの変更中にレーザ光の進行方向を遮光部に向けるため、該レーザ光が装置内の部材で反射して媒体に向かうのを抑制できる。
また、光熱変換部20は、入射されたレーザ光の少なくとも一部を熱変換又は散乱させるため、強度の強い迷光が装置内の部材に照射されるのを抑制できる。
なお、レーザ光照射装置300の動作フローは、記録、消去の2つのモードのどちらかにかかわらず、レーザ出力の開始前に、レーザ光の照射位置を光熱変換部20に設定し、ある任意時間の予備照射をすることが好ましい。予備照射の出力パターンは、CW、パルス等がある。出力パターンをパルスとすることで、照射する平均的な光エネルギを低減することが可能になる。このとき、予備照射の発光デューティを低く設定したとしても、コンデンサCの両端電圧を上昇させられるため、「かすれ画像」、「書き残し」に対して効果的である。
しかし、電流制御は一般的に、平均電流によって安定化されるため、照射開始前と照射時のデューティの差が大きいほど、書き始めの出力が変動して安定性が悪化する傾向がある。この出力安定性を向上させるためには、コイルLの小容量化と、コンデンサCの大容量化が効果的である。
また、一回の照射の後、数秒以下の短い時間内に再度照射を行えば、コンデンサCの電荷が保持される時間内であれば、予備照射をせずに「かすれ画像」、「書き残し」を低減させることができる。ただし、コンデンサCに蓄積された電荷はスイッチング素子SW1のリーク電流等により減少していくため、一定時間の待機時間の後に照射する際には、予備照射による再充電が必要になる。
レーザ照射が終了したときには、レーザ光照射装置300の動作を停止するが、レーザ光が意図せず装置外に漏れるのを防ぐため、装置停止時にはレーザ光の偏向方向を装置内部の光熱変換部20に設定するか、レーザ光の出射窓に備えられた遮光部品、例えば絞りやシャッタなどを閉じることが好ましい。装置を継続して動作させる場合は、モード切り替えの有無を選択し、再度、レーザ光照射前に、レーザ光の偏向方向を光熱変換部20に設定して予備照射を行ってから各モードのレーザ光を照射することが好ましい。
《第4実施形態》
第4実施形態のレーザ光照射装置400は、図13に示されるように、集光レンズ18を介したレーザ光の進行方向をレーザ光走査手段13によって光熱変換部20に向かう方向と媒体に向かう方向との間で切り替え可能に構成されている点が上記第3実施形態のレーザ光照射装置300と異なる。
詳述すると、第4実施形態では、レーザ光走査手段13による走査範囲内に媒体と光熱変換部20が配置されている。そして、主制御部50aは、レーザ光走査手段13を用いて、集光レンズ18を介したレーザ光により、LDの光出力レベルの変更前及び変更後の少なくとも一方に媒体を走査し、変更中に光熱変換部20を走査する。
ここでは、走査範囲内の中央(走査中央)に媒体が配置され、端部(走査端)に光熱変換部20が配置されている。
なお、ここでは、レーザ光走査手段13として2つのガルバノスキャナ13a、13bが用いられているが、その代わりに回転ミラーを持つポリゴンスキャナを用いると、ガルバノミラーよりも走査角が大きく、媒体への照射開始前に常に光熱変換部20上を走査(予備照射)することができる。
第4実施形態のレーザ光照射装置400を用いるレーザ光照射方法の全体フローは、図12のフローに準ずる。なお、モード変更時以外、例えば処理開始時に光出力レベルを0から立ち上げるときや、処理終了時に光出力レベルを0に立ち下げるときにも、図12のフローと同様の制御を行うことが好ましい。ただし、光出力レベルを0から立ち上げるときには変更前(光出力レベルが0のとき)のレーザ光走査手段13による偏向方向は任意で良い。また、光出力レベルを0に立ち下げるときには変更後(光出力レベルが0のとき)のレーザ光走査手段13による偏向方向は任意で良い。
以上説明した第4実施形態のレーザ光照射装置400では、進行方向制御手段(主制御部50a)は、LDからの光で媒体を走査するレーザ光走査手段13(走査手段)を用いてレーザ光の進行方向を制御する。
この場合、第3実施形態と同様の効果を奏するとともに、レーザ光の進行方向を制御するための専用の偏向手段を必要としないため小型化及び低コスト化を図ることができる。
《第5実施形態》
第5実施形態のレーザ光照射装置500では、図14に示されるように、光熱変換部20が装置外部(筐体外)に配置されている点が上記第4実施形態と異なる。
第5実施形態のレーザ光照射装置500を用いるレーザ光照射方法は、上記第4実施形態と概ね同じである。
ここでは、レーザ光走査手段13として2つのガルバノスキャナ13a、13bを用いている。光熱変換部20の配置は特に限定されないが、数ms以下の高速切り替えのため、熱可逆記録媒体の表面や、熱可逆記録媒体の表面を含む平面上などが適している。
ただし、不要な(不安定な出力の)レーザ光が装置外部へ照射されるため、熱可逆記録媒体に影響を与えない光熱変換をする工夫が必要であり、例えば、熱可逆記録媒体の一部、数cm角の区間に熱可逆記録層を塗布せずに状態変化のない無効領域を形成する方法が挙げられる。ここでは、レーザ光を無効領域上に配置された遮光部20に照射するようにしているが、遮光部20を配置せずに無効領域に直接照射するようにしても良い。無効領域に照射する場合、遮光部20を設ける必要がない。
以上説明した第5実施形態のレーザ光照射装置500では、進行方向制御手段(主制御部50a)は、光出力レベルの変更中にレーザ光の進行方向を媒体の状態変化が生じない無効領域上に配置された遮光部20に向けるため、上記第4実施形態と同様の効果を奏するとともに、レーザ光走査手段13による走査範囲を拡大する必要がなく、かつ装置の小型化を図ることができる。
《第6実施形態》
第6実施形態のレーザ光照射装置600では、図15に示されるように、装置内部(筐体内)に遮光シャッタ21が配置されている点が上記第1実施形態と異なる。
詳述すると、遮光シャッタ21は、レーザ光走査手段13からのレーザ光の光路の少なくとも一部を遮光可能に構成、配置されている。
ここでは、遮光シャッタ21は、レーザ光照射装置600の出射窓近傍に配置されているが、要は、レーザ光出射手段11と出射窓との間のレーザ光の光路近傍の位置に配置されれば良い。
遮光シャッタ21は、数ms以下で高速にレーザ光の光路上に移動させるために、パルスモータ、リニアモータなどを含む駆動装置によって高速にレーザ光の光路上に移動できるようになっている。この駆動装置は、主制御部50aにより制御される。
遮光シャッタ21は、例えばスライド方式や振り子方式で動作して光を遮るものでも良いし、絞り調整可能な開口絞りなどのアパーチャ部材であって媒体の状態変化が起こる最低照射パワー密度よりも照射パワー密度が大きいレーザ光を小さく絞ったり開口を閉じて完全に遮光するようなものでも良い。なお、遮光シャッタ21は、前述した光熱変換部20と同様の材料からなるものであっても良い。
第6実施形態のレーザ光照射装置600を用いるレーザ光照射方法は、図16のフローチャートの手順(ステップS21〜ステップS25)で実施される。遮光シャッタ21は、レーザ光走査手段13からのレーザ光(走査光)の少なくとも一部を遮光する遮光位置と該遮光位置から退避する退避位置との間を移動可能となっている。当初、遮光シャッタ21は、退避位置に位置する。
第6実施形態のレーザ光照射方法では、ステップS21の実行後、光出力レベルの変更中に遮光シャッタ21を退避位置から遮光位置に移動させ(ステップS22)、光出力レベルの変更後(ステップS23でYES)に遮光シャッタ21を遮光位置から退避位置に移動させる(ステップS24)。なお、ステップS21、S23、S25は、図8のステップS1、S3、S5と同様である。また、光出力レベルの変更前及び変更後の一方が0である場合、該一方において、遮光シャッタ21を遮光位置に位置させても良い。
以上説明した第6実施形態のレーザ光照射装置600は、対象物にレーザ光を照射する、LDを含む照射手段と、LDを駆動する、コイルL及びコンデンサCを有するLCフィルタを含むレーザ駆動回路50bと、該レーザ駆動回路50bを介してLDの光出力レベルを変更する主制御部50aと、LDからの光の少なくとも一部を遮光する遮光位置と該遮光位置から退避する退避する退避位置との間で移動可能な遮光シャッタ21と、該遮光シャッタ21を、光出力レベルの変更前及び変更後の少なくとも一方に退避位置に位置させ、変更中に遮光位置に位置させる、駆動装置を含む位置制御手段と、を備えている。
この場合、光出力レベルの変更中に、媒体に不要な状態変化を引き起こす不安定なレーザ光の少なくとも一部が遮光シャッタ21により遮光される。
この結果、媒体に不要な状態変化が発生するのを抑制できる。
《第7実施形態》
第7実施形態のレーザ光照射装置700では、レーザ光源(例えばLD)を変調して、画像消去時と画像記録時とでピークパワー(光出力レベル)を異ならせる。
ところで、画像記録工程及び画像消去工程の時間短縮を図るためには、短時間に媒体(熱可逆記録媒体)を加熱できるよう、媒体上における光スポットの照射パワーを上げる必要がある。
画像消去時には、画像記録時よりも加熱温度は低いが加熱時間を長くする必要があり、高速で消去するためにビーム径を大きくして高パワーでレーザ光を媒体に照射することで、消去に必要な加熱時間、加熱温度を短時間で実現することが可能となる。一方、画像記録時には高精細、高速での画像記録を実現するためにビーム径を小さくする必要があるため、拡散レンズ16の焦点位置をレーザ光照射面(媒体表面)付近に調整する。
レーザ光源の出力制御(変調)には、ピークパワー制御方式(強度変調)とパルス幅制御方式(パルス幅変調:PWM)がある。
パルス幅制御方式におけるレーザ光源の平均出力(照射光量)の概念図である図18から分かるように、照射光量Pwは、ピークパワーPp、パルスのデューティ比D=W/T(周期T、パルス幅W)とすると、Pw=Pp×Dで示される。すなわち、Pp、Dの少なくとも一方を調整することにより、熱可逆記録媒体の状態変化に影響する照射光量Pwを変化させることができる。
一方、ピークパワー制御方式は、高速でのピークパワーPpを高速に変更することが高出力になるほど困難であり、画像記録時には高速での照射パワー変更が要求されるので不向きである。
他方、パルス幅制御方式では、高速制御が可能であるが、画像消去時に合わせて高いピークパワーを設定し、さらに画像記録時にパルス幅を狭くすると、短時間で高いエネルギが媒体に照射されるため、熱可逆記録媒体の繰返し耐久性が悪化する問題がある。
つまり、ピークパワー制御方式及びパルス幅制御方式の一方のみを用いると、高速応答と繰返し耐久性の両立が困難である。
そこで、第7実施形態では、レーザ光照射装置において、照射パワー制御に、ピークパワー制御方式とパルス幅制御方式の両方式を用いる。具体的には、ピークパワー制御方式は、画像消去工程と画像記録工程の切替時のみに2段階でピークパワー変更を行い、画像記録工程と画像消去工程の各工程内の出力制御は、高速パワー制御が必要なので、パルス幅制御方式を用いる。
第7実施形態によれば、画像消去工程と画像記録工程の切替時のピークパワー変更時の遷移時間に熱可逆記録媒体に不要なエネルギが照射されることを抑制でき、ひいては「かすれ文字」、「消し残し」などの不要な状態変化を抑制することができる。なお、LCフィルタを含む光源駆動回路によって生じるピークパワー変更時の遷移時間とその影響は、先に図7、図8を用いて説明した通りである。
以下に、第7実施形態の制御系50の主制御部50aの構成について図19を参照して説明する。
第7実施形態の主制御部50aは、図19に示される変調手段50a−1、温度取得手段50a−2、走査速度取得手段50a−3、補正手段50a−4、光出力設定手段50a−5を含んで構成される。
<変調手段>
変調手段50a−1は、レーザ光源としてのLDに変調信号(例えばPWM信号)を出力して直接変調を行い、媒体上の光スポットの照射パワーを制御する。ここでは40kHzのPWM信号を元に発光デューティ比(D=W/T)を変更することで照射パワーを制御する。通常の画像記録工程及び画像消去工程においては、室温25℃のときの基準となる発光デューティ比を75%(以下では「基準デューティ比」とも呼ぶ)としている。発光デューティ比は、例えば媒体温度、走査速度などに基づいて補正することが好ましい。
<温度取得手段>
温度取得手段50a−2は、対象物の温度を取得するための手段である。ここでは、熱可逆記録媒体の温度を間接的に測定するため、サーミスタによって熱可逆記録媒体の周囲の雰囲気温度を計測する。なお、温度取得手段として、サーミスタに代えて、熱電対、測温抵抗体等の接触式温度センサや、放射温度計等の非接触式温度センサを用いても良い。
<走査速度取得手段>
走査速度取得手段50a−3は、熱可逆記録媒体のレーザ光走査面上におけるレーザ光の走査速度を取得する。レーザ光の走査速度を取得する方法としては、特に制限は無く、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、走査用ミラーの回転速度、及び走査用ミラーと対象物との距離(ワーク間距離)によって算出することができる。
<補正手段>
補正手段50a−4は、温度取得手段50a−2によって取得された媒体温度、走査速度取得手段50a−3によって取得されたレーザ光の走査速度を用いて、変調手段50a−1が出力するPWM信号の発光デューティ比を補正する。熱可逆記録媒体に対する適当な照射パワーは、媒体温度が下がるほど、走査速度が上がるほど大きくなる。発光デューティ比の補正方法としては、例えばマイコン等を用いたソフトウェアによるパルス幅補正がある。なお、補正手段50a−4は、媒体温度、走査速度に代えて又は加えて、例えば湿度センサで取得される媒体の周囲の雰囲気湿度により発光デューティ比を補正しても良い。
<光出力設定手段>
光出力設定手段50a−5は、レーザ駆動回路50bを用いてレーザ光のピークパワー(光出力レベル)を設定する。ピークパワーの設定方法としては、ピーク情報を含むアナログ信号と、アナログ信号に追随するようにレーザ光源の駆動電流をフィードバック制御するACC(Auto Current Control)やフォトダイオード等によりLDの出力をフィードバック制御するAPC(Auto Power Control)が一般的である。第7実施形態において、ピークパワーの設定値は、画像記録工程と画像消去工程で切り替えることとする。
以下に、第7実施形態における主制御部50aによる照射パワー又は照射パワー密度の制御を図20、図21及び図23のフローチャートを用いて説明する。なお、以下では、照射パワー又は照射パワー密度を制御するモードを「空うちモード」、空うちモードのうち発光デューティ比のみを制御するモードを「低デューティ比モード」、空うちモードのうち走査速度のみを制御するモードを「スイングモード」、空うちモードのうち発光デューティ比及び走査速度を制御するモードを「低デューティ比・スイングモード」と呼ぶ。
図20は、「低デューティ比モード」を選択する場合における照射パワー又は照射パワー密度の制御を示すフローである。フローのスタートにおいては、レーザ光照射装置は既に起動しており、初期設定を完了してレーザ光を照射可能な状態で待機中である。初期設定では、発光デューティ比が基準デューティ比に設定されている。
ステップS31においては、モード変更タイミングであるか否かを判断する。具体的には、動作モードとして、例えば、熱可逆記録媒体の画像記録モード、画像消去モード、待機モードの3種類ある。そして、これら3種類のモードのうち2種類のモード間でモード変更が行われる。モード変更タイミングである場合には次のステップS32に移行し、モード変更タイミングでない場合には同じ判断を再び行う。
例えば、待機モードから画像記録モードに変更するとき、レーザ光の照射を開始してから照射光のピークパワーが安定するまでの遷移時間の間、照射パワー又は照射パワー密度を低くするために、次のステップS32を実行する。また、例えば、画像記録モードから待機モードに変更するとき、レーザ光の照射を終了し、照射光のピークパワーが安定するまでの遷移時間の間、照射パワー又は照射パワー密度を低くするために、次のステップS32を実行する。また、例えば、画像記録モードと消去モードとの間でモードを変更するとき、照射光のピークパワーが安定するまでの遷移時間の間、照射パワー又は照射パワー密度を低くするために、次のステップS32を実行する。ただし、画像記録中であっても、印字しない領域が多くレーザ光照射の時間間隔が広い(遷移時間の応答速度と同等でmsオーダ)場合は、モード変更タイミングであると擬制し、時間間隔を埋めるように次のステップS32を実行する。
なお、モード変更タイミングでない場合とは、例えば、待機中、画像記録中、画像消去中などである。
ステップS32においては、モード変更中に発光デューティ比を基準デューティ比から下げる。すなわち、照射光のピークパワーが安定していないモード変更中に、変調手段50a−1は、低デューティ比モードを設定、実行する(図22(A)参照)。低デューティ比モードにより照射光量が小さくなり、熱可逆記録媒体の温度上昇を抑えることができる。低デューティ比モードは、ピークパワーが安定するまで実行するが、その実行時間は、次のステップS33で決定する。
ステップS33では、所定時間が経過したか否かを判断する。ここでの判断が肯定されるとステップS34に移行し、否定されると同じ判断を再び行う。具体的には、低デューティ比モードの実行時間を決定し、低デューティ比モードの実行開始から実行終了までの間(実行時間)、待機する。この実行時間は、レーザ光のピークパワーが所望のパワー(図22(A)におけるPp1やPp2)に到達し安定するまでの時間である。実行時間は、ピークパワーの立ち上り時/立ち下り時の遷移時間(実質的には立ち上がり開始から立ち上り終了までの時間の10〜90%/立ち下り開始から立ち下り終了までの時間の10〜90%)よりも長い時間であることが好ましい。その他に、ピークパワーをフォトダイオードなどの受光素子でモニタし、予め設定された閾値を超えた時間を実行時間とする方法もある。
ステップS34では、発光デューティ比を基準デューティ比に戻す。すなわち、低デューティ比モードを終了し、通常の動作モードの発光デューティ比に設定する。ステップS34の実行タイミングは、実行の遅れによってピークパワーが変動しないよう、ステップS33の実行直後であることが好ましい。具体的には、ステップS34は、ステップS33が実行されてから、ピークパワーの立ち上がり時/立ち下り時の遷移時間よりも十分短い時間が経過する前に実行されることが好ましい。
ステップS35では、処理を終了するか否かを判断する。レーザ光照射装置がレーザ光を照射中である場合又は待機する場合は、ここでの判断が否定され、ステップS41に戻る。一方、画像記録と画像消去を終了する場合は、ここでの判断が肯定され、フローが終了する。
エンドでは、処理終了フローを実行する。処理終了フローは、レーザ光が確実に照射されないようにレーザ駆動回路50bを停止し、例えば遮光シャッタによりレーザ光出射窓を塞ぐ等、レーザ光が外部に漏れることがないようにしてからレーザ光照射装置を停止する。
図21は、「スイングモード」を選択する場合における照射パワー又は照射パワー密度の制御を示すフローである。フローのスタート、S41、S43、S44、S45、エンドの動作は、それぞれ図20におけるスタート、S31、S33、S34、S35、エンドと同様であるので、ステップS42についてのみ説明する。
ステップS42においては、照射光のピークパワーが安定していない間、主制御部50aはレーザ光走査手段13を用いて走査速度が速いスイングモード(図22(B)参照)を設定、実行する。スイングモードによりレーザ光が媒体上で拡散されることで照射パワーが小さくなり、熱可逆媒体の温度上昇を抑えることができる。照射パワーと走査速度の関係は、前述した通りである。スイングモードはピークパワーが安定するまで実行するが、その実行時間は次のステップS43で決定する。
図23は、変調手段50a−1の動作モードとして「低デューティ比・スイングモード」を選択する場合における照射パワー又は照射パワー密度の制御を示す図である。「低デューティ比・スイングモード」では「低デューティ比モード」と「スイングモード」を組み合わせて行うため、S31及びS41に対応するS51と、S32に対応するS52と、S42に対応するS53と、S33及びS43に対応するS54と、S34に対応するS55と、S44に対応するS56と、S35及びS45に対応するS57の順で実行する。
以上説明した図20、図21、図23のフローチャートにより、レーザ光のピークパワーが安定していないモード変更中(遷移時間)に、照射パワーk・Pw/V(kは比例定数)をより効果的に下げることができる。
先に説明したとおり、照射パワー制御方法としてのパルス幅制御は、ピークパワー制御に比べて高速性に優れている。
ここで、レーザ駆動回路が出力フィルタとしてのLCフィルタを有するスイッチング回路である場合に、LCフィルタの周波数応答によって決定されるピークパワー制御時の出力電流の立ち上がり時間は数ms以上となる。更に、スイッチング回路は電流制御を出力電流の平均値によって行うため、ピークパワー制御中もレーザ光照射を継続する必要がある。
継続して照射されるレーザ光の照射パワーによって、画像記録と画像消去の切替時、ピークパワー変更中の数msの遷移時間には、熱可逆記録媒体に不要なエネルギが付与される。
図22(A)に示されるように、ピークパワーをPp1からPp2に変更するときの数msの遷移時間に、発光デューティ比DをDNからDPに低くすることで、照射パワーk・Pw/Vを下げ、熱可逆記録媒体の温度上昇を抑制できる。
また、図22(B)に示されるように、ピークパワーをPp1からPp2に変更するときの数msの遷移時間に、走査速度をVNからVPに上げることで、照射パワーk・Pw/Vを下げ、熱可逆記録媒体の温度上昇を抑制できる。
以上の説明から分かるように、発光デューティ比と走査速度の少なくとも一方を用いて、遷移時間における熱可逆記録媒体の温度が、該熱可逆記録媒体の状態変化が生じる温度未満になるように照射パワーk・Pw/Vを制御することができる。
以上説明した第7実施形態のレーザ光照射装置では、光スポット制御手段は、媒体に照射されるレーザ光の発光デューティ比を変更する変調手段50a−1を含む。
この場合、媒体上における光スポットのエネルギ(照射パワー)やエネルギ密度(照射パワー密度)を媒体の状態変化が生じる最小の値よりも小さくでき、光出力レベル変更中の照射光による「かすれ文字」、「消し残し」を抑制できる。
そして、光スポット制御手段は、変調手段50a−1を用いて、照射パワー又は照射パワー密度を制御する。
また、照射手段は、レーザ光を走査するためのレーザ光走査手段13を含み、該レーザ光走査手段13は、レーザ光の走査速度を変更可能であることが好ましい。
この場合に、光スポット制御手段は、レーザ光走査手段13を用いて、照射パワー又は照射パワー密度を制御することが好ましい。
また、光スポット制御手段は、媒体の温度に基づいて、照射パワー又は照射パワー密度を制御することが好ましい。
なお、第7実施形態において、主制御部50aは、走査速度取得手段50a−3を有していなくても良い。この場合、補正手段50a−4は、温度取得手段50a−2からの媒体温度を用いて、変調手段50a−1が出力するPWM信号の発光デューティ比を補正する。
また、第7実施形態において、主制御部50aは、温度取得手段50a−2を有していなくても良い。この場合、補正手段50a−4は、走査速度取得手段50a−3からのレーザ光の走査速度を用いて、変調手段50a−1が出力するPWM信号の発光デューティ比を補正する。
また、第7実施形態において、主制御部50aは、光出力設定手段50a−5を有していなくても良い。
また、第7実施形態において、主制御部50aは、走査速度取得手段50a−3、温度取得手段50a−2、補正手段50a−4を有していなくても良い。この場合、変調手段50a−1からPWM信号がレーザ駆動回路50bに直接的に出力される。
以上説明したように、上記各実施形態のレーザ光照射装置及びレーザ光照射方法によれば、熱可逆記録媒体に対し、画像消去のときは消去開始時における「書き残し」、画像記録のときには記録開始時における「かすれ画像」の発生を抑制できる。
そして、上記各実施形態のレーザ光照射装置は、1台で高速かつ高精度な画像書き換えを行うことができる。
なお、上記各実施形態で説明したレーザ光照射装置の構成は、一例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。例えば、レーザ光源からのレーザ光の光路上に配置される光学系の光学部材の種類、数、配置は、適宜変更可能である。
また、上記各実施形態では、1台のレーザ光照射装置を使用する例について説明したが、例えば複数台のレーザ光照射装置を搬送手段による搬送路に沿って配置し、順次もしくは並行して稼働させても良い。
また、レーザ駆動回路の構成は、適宜変更可能である。レーザ駆動回路は、例えばLCフィルタに代えてLフィルタを用いても良い。また、レーザ駆動回路は、コンデンサCを有し、コイルLを有していなくても良い。
また、レーザ光照射装置のレーザ光の照射対象となる対象物は、熱可逆記録媒体に限られない。
以下に、発明者らが上記各実施形態を発案するに至った思考プロセスを説明する。
従来、熱可逆記録媒体に対しての画像記録及び画像消去は、加熱源を熱可逆記録媒体に接触させて熱可逆記録媒体を加熱する接触式の記録方法で行われている。加熱源としては、通常、画像記録にはサーマルヘッド等が用いられ、画像消去には熱ローラ、セラミックヒータ等が用いられている。このような接触式の記録方法は、熱可逆記録媒体がフィルム、紙等のフレキシブルなものである場合には、プラテン等によって熱可逆記録媒体を加熱源に均一に押し当てることにより、均一な画像記録及び画像消去を行うことができ、かつ従来の感熱紙用のプリンタの部品を転用することによって画像記録装置及び画像消去装置を安価に製造できるという利点がある。
一方で、熱可逆記録媒体について、離れた位置から画像の書き換えを行いたいという要望がある。例えば、熱可逆記録媒体の表面に凹凸が生じた場合や離れたところから均一に画像記録及び画像消去する方法として、レーザ光を用いる方法が提案されている(特開2000−136022号公報参照)。この提案の方法は、物流ラインに用いる搬送用容器に熱可逆記録媒体を使用して非接触記録を行うものであり、書き込みはレーザ光で実施し、消去は熱風、温水、又は赤外線ヒータで行うと記載されている。
このようなレーザ光による記録方法として、高出力のレーザ光を熱可逆記録媒体に照射して、その位置をコントロール可能なレーザ記録装置(レーザマーカー)が提供されている。レーザマーカーを用いて、レーザ光を熱可逆記録媒体に照射して、熱可逆記録媒体中の光熱変換材料が光を吸収して熱に変換し、その熱で記録及び消去を行うことが可能である。これまでレーザ光による画像記録及び画像消去を行う方法として、ロイコ染料と可逆性顕色剤、種々の光熱変換材料を組み合わせて、近赤外レーザ光により記録する方法が提案されている(特開平11−151856号参照)。
近年、レーザ光照射装置においても、低コスト化及び小スペース化が要求されており、一台のレーザ光照射装置(一つのレーザ光出射手段)で、画像消去と画像記録を両方行うレーザ照射方法が提案されている。この場合、画像消去と画像記録について、共通のレーザ素子、及びレーザ素子を駆動するための共通の光源駆動装置が必要となる。ここで用いる熱可逆記録媒体は、比較的低い照射パワー密度DLで画像消去を行い、比較的高い照射パワー密度DHで画像記録を行うが、そのため光源駆動装置は2つの光出力レベルでパルス駆動/DC駆動をレーザ素子に実行させるように切り替えなければならない。
このような光源駆動装置として、スイッチング方式を利用した方法が提案されている(特開2012−084630号公報参照)。この提案の方法は、上記各実施形態と同様に、レーザ素子としてのLDに流れる電流ILDを電流センサでモニタし、電流センサでモニタされた電流を電流検出部で検出し、その情報を電流制御部に送った後、基準電圧と比較することにより、所望の電流ILD (0)に対して大きい場合には一のスイッチをONにし、他のスイッチをOFFにしてILDを調整し、逆に所望の電流ILD (0)に対して小さい場合には一のスイッチをOFFにし、他のスイッチをONにしてILDを調整する。このときILDの時間に対する振る舞いは図5に示すようになるが、リップル振幅ARを小さく抑えるためには、
(1)リップル周期TRを小さくする
(2)リップル勾配LRを小さくする
ことが求められる。特に(2)については出力フィルタとしての誘導性負荷Lのインダクタンスを大きくする必要があり、そのため光源駆動装置のサイズが大きくなり、高コスト化しやすいという問題がある。
これに対し、出力フィルタとして誘導性負荷Lと容量性素子Cを組み合わせた方式が主に照明用LED用途で多く提案されている(特許文献1参照)。この方式であれば、誘導性負荷のインダクタンスを小さくしても、容量性素子との連動でリップル勾配LRを小さくできるので、光源駆動装置のサイズが小さくなり、コストダウンを図ることができる。
しかし、出力フィルタとしてLCフィルタを用いることから、例えばILDのレベル制御時には、容量性素子Cのチャージのために、数ms〜数10msのセトリングタイム(制定時間)を必要とする。
熱可逆記録媒体を用いた印字・消去アプリケーションにおいては、セトリングタイムは、記録開始時の「かすれ画像」や、消去開始時の「消し残し」が生じる。セトリングタイムにおける、所望の光エネルギレベルに満たない、あるいは超える間、熱可逆記録媒体に影響を与えないように制御する必要がある。
すなわち、出力フィルタを、誘導性負荷Lと容量性素子Cとを組み合わせて構成する方式は、リップル勾配LRが小さくなるのに関連して、例えば半導体レーザの光出力レベルをPLとPHとの間で変える場合、PLからPH、或いはPHからPLに安定化されるまでに数msかかり、また安定化されているかどうかをモニタし続けなければならないため、熱可逆記録媒体に対し、画像消去のときには消去開始時に「消し残し」を生じたり、画像記録のときには記録開始時に「かすれ画像」を生じたりする問題がある。
そこで、発明者らは、このような問題を解決すべく、上記各実施形態を発案するに至った。