JP6667810B2 - 触覚提示装置 - Google Patents
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Description
例えば特許文献1には、振動による触感の刺激を皮膚に提示する触感提示装置の一例についての記載がある。
例えば、特許文献1に記載されているように、振動部材を配置して触覚を提示する場合には、振動に反応するマイスナー小体又はパチニ小体を利用して触覚を提示することになり、他の受容器(メルケル細胞、ルフィニ終末)はほとんど刺激されない。これでは実際に物体に触れた場合の感覚とは異なった感覚を指に与えてしまうことになり、リアリティが得られない。例えば、指でグラスを掴むような映像に合わせて、指先を短時間振動させると、その振動による感覚に惑わされて人はグラスを掴んだという感覚を得るのであるが、これ自体リアリティのある触覚の提示がされたとはいいがたいものであった。
したがって、実際に指が物体に触れた場合に近い、よりリアリティのある触覚を提示するためには、上述した4つの受容器全てを、実際に指を動かした場合と同じように刺激する必要がある。しかし、従来から提案されている触覚提示装置では、4つの受容器全てを適切に刺激できるものは存在しなかった。
制御部は、電極部に印加するパルス電圧により、所定箇所の皮膚に、特定の空間解像度の圧覚および特定の周波数の振動感覚を提示し、内の第1の受容器を刺激し、シフト部材による電極部の皮膚との接触位置のシフトにより、所定箇所の皮膚に、特定の空間解像度よりも低い空間解像度の皮膚ずれ感覚および特定の周波数よりも高周波の振動感覚を提示する。
[1.装置の構成]
図1は、本発明の一実施の形態例による触覚提示装置100の全体構成を示す斜視図である。図2は、図1の触覚提示装置100を、矢印Aの方向から見た正面図である。また、図3は、図1に示す触覚提示装置100に指fを装着した状態を示す斜視図である。
なお、図2の正面図において、水平方向(左右方向)をx軸として示し、垂直方向(上下方向)をy軸として示す。図1及び図3において示すx軸及びy軸も図2と同じものである。
装着部110の上部には、連結部113を介してモーター保持部114が接続され、モーター保持部114に、円筒形状のモーター120が保持されている。ここで使用されるモーター120は、直流モーターであり、この回転軸121は、装着部110に装着される指fの長手方向とほぼ平行に配置されている。
指の腹fBと電極部140とが接触する位置は、モーター120の回転により、水平方向(x方向)にシフトする。
ここでは電極部140は、20個の電極素子141−1〜141−20を備え、水平方向に4個、垂直方向に5個のマトリクス状に配置されている。ここで、各電極素子141−1〜141−20は、例えば直径1.4mmの円形形状であり、水平方向及び垂直方向に2.0mm間隔で配置される。
図5は、触覚提示装置100の回路配置部150を構成する回路の例を示している。
触覚提示装置100は、通信ポート151を備え、指に与える力などの指令を外部から受信する。通信ポート151が受信した指令は、インターフェース部152で受信処理されて、制御部153に伝えられる。なお、インターフェース部152としては、無線信号用の受信部としてもよい。
そして、モーションセンサー154が検出した動きのデータについても考慮して、制御部153は、力又は振動を加えるように電極駆動部160に指示する。但し、モーションセンサー154の検出データは考慮しなくてもよい。
モーター120の駆動により指に刺激を与える処理と、電極部140へのパルス電圧の印加により指に刺激を与える処理との組み合わせ状況の詳細については後述する。
また、モーター駆動部156からモーター120に印加する駆動電圧(直流電圧)の極性を短時間で変化させて、モーター120を微少な角度で双方向に交互に回転させて、電極部140を左右に振動させるようにしてもよい。
また、制御部153は、電極駆動部160から電極素子141−1〜141−20にパルス電圧を供給する場合に、パルス電圧の極性を切り替えて陽極刺激と陰極刺激を交互に行うようにすることもできる。
但し、このように20個の電極素子141−1〜141−20に順番にパルス電圧を供給するのは一例であり、例えば指の腹fBの特定の1カ所に刺激を与える場合には、電極素子141−1〜141−20から選択した特定の1個(又は複数個)の電極素子のみにパルス電圧を供給するようにしてもよい。
次に、触覚提示装置100によって刺激される皮膚の受容器について説明する。
上述したように、指などの皮膚内には、触覚、圧覚、温度覚などを得る受容器として、複数種類の受容器が存在している。
図6は、皮膚の内部の受容器の配置状況を示す断面図である。図6に示すように、皮膚10内には、触覚や圧覚などの機械的変形に応答する受容器として、マイスナー小体11、メルケル細胞12、ルフィニ終末13、パチニ小体14が存在する。
メルケル細胞12の検出範囲bは、マイスナー小体11よりもさらに低周波の振動に応答し、比較的高い空間分解能を有する。
ルフィニ終末13の検出範囲cは、メルケル細胞12の検出範囲bと周波数分解能はほぼ同じであるが、空間分解能がメルケル細胞12の検出範囲bよりも低くなっている(劣っている)。
パチニ小体14の検出範囲dは、高い周波数(例えば60Hzから800Hz付近まで範囲)の振動に応答するが、空間分解能は低い(劣る)。
次に、図8を参照して、4つの受容器(マイスナー小体、メルケル細胞、ルフィニ終末、パチニ小体)を個別に刺激する4つの刺激モードの処理について説明する。この4つの刺激モードは、制御部153(図5参照)が、外部からの指示などに基づいて、指fに与える触覚(力覚、振動覚など)を判断して設定する。図8に示す各受容器の検出範囲a,b,c,dは、図7に示す各受容器の検出範囲a,b,c,dと同じである。また、図8に示す電極素子141tは、電極素子141−1〜141−20の内で、パルス電圧を印加するターゲットとなる電極(以下、「ターゲット電極」と称する。)である。なお、図8では、電極部140とモーター120とを接続する構成は簡易化されて示されている。
マイスナー小体11(検出範囲a)に対して触覚提示装置100が刺激を与える場合には、ターゲット電極141tに対して陽極刺激となる極性のパルス電圧を印加する。このときのパルス電圧の印加周波数は、例えば15Hz〜60Hzの範囲内の周波数(例えば30Hz)に設定する。なお、陽極刺激が行われるターゲット電極141tの周辺の他の電極素子は、例えば接地電位とする。電極素子141−1〜141−20の周囲の接地電極142についても接地電位とする。
メルケル細胞12(検出範囲b)に対して触覚提示装置100が刺激を与える場合には、ターゲット電極141tに対して陰極刺激となる極性のパルス電圧を印加する。このときのパルス電圧の印加周波数は、例えば15Hz以下の低周波数に設定する。なお、陰極刺激が行われるターゲット電極141tの周辺の他の電極素子は、例えば接地電位とする。電極素子141−1〜141−20の周囲の接地電極142についても接地電位とする。
ルフィニ終末13(検出範囲c)に対して触覚提示装置100が刺激を与える場合には、モーター120を回転させて、電極部140を水平方向x1にシフトさせる。このモードでは、電極部140を使った電圧パルスの印加は行わない。
パチニ小体14(検出範囲d)に対して触覚提示装置100が刺激を与える場合には、モーター120を交互に微少に回転させて、電極部140が左右に振動した状態とする。このモードでは、電極部140を使った電圧パルスの印加は行わない。
なお、ルフィニ終末刺激モードとパチニ小体刺激モードとで、電極部140による電圧パルスの印加を行わないのは、それぞれのモードを単独で使用する場合であり、他のモードと組み合わせて刺激を行う際には、電極部140を使った電圧パルスを印加する場合もある。具体的に刺激を行う例については後述する。
次に、上述した各モードを組み合わせて、実際に指が物体に触れる動作を再現する刺激を触覚提示装置100が行う例について説明する。
図9は、指fが特定の素材21の表面を滑らせた状態を再現する例である。すなわち、図9Aに示すように、特定の材質感(例えば凹凸感)を持った素材21の表面に、指fの腹fBが接触した状態で、素材21を水平方向(M1方向)に移動させる。
ここで、素材21の表面(テクスチャ面)に細かな凹凸があるとすると、その細かな凹凸に対応して、指fの腹fBに対して垂直方向に振動する力覚が加わりながら、水平移動に対応した水平方向の力覚が生じる。
印加するパルス電圧の周波数は、素材21の表面の凹凸の間隔と、指fが移動する速度により決まる。例えば、素材21の表面の凹凸が1mm間隔で、指が60mm/sの速度で動くとき、指fが上下に振動する周波数の中心周波数は約60Hzになる。この場合、60Hzの周波数でターゲット電極141tにパルス電圧を印加することで、素材21の表面を滑らせた場合と同様の感覚を指fに与えることができる。
図10Aに示すように、凹凸形状を持った素材22に指fが接しているとき、指fには水平方向の力と垂直方向の力とを合成した力P1が生じる。
この力P1を触覚提示装置100が表現するために、力P1を水平成分と垂直成分に分解する。そして、分解した2成分の内の水平成分については、図10Bに示すように、ルフィニ終末刺激モードでモーター120を回転させることで、指fに力覚が与られる。また、垂直成分については、図10Bに示すように、ターゲット電極141tへのパルス電圧の印加で、マイスナー小体刺激モード又はメルケル細胞刺激モードにより、指fに圧覚が与えられる。
これに対して、水平成分の力覚は、モーター120の回転によって指fの腹fBの広い面積に対して与えるため、電極使用時のような高い空間分解能を与えることはできないが、高い空間分解能を持たない受容器であるルフィニ終末によって、皮膚の横ずれが検知されるため、特に問題になることはない。
図11Aは、実際に指fが物体に接触する際の皮膚変形量(縦軸)を示す。ここでは、期間T11は、指fが物体への接触を開始して、徐々に皮膚変形量が増える期間である。期間T12は、指fが物体に接触した状態が維持され、皮膚変形量が一定の期間である。期間T13は、指fが物体から離れだして、徐々に皮膚変形量が低下して、指fが物体から離れて皮膚変形がなくなる期間である。
また、図11Cに示すように、低周波振動又は速度を検出するマイスナー小体は、皮膚変形の速度が一定閾値を超えている間(ここでは期間T11と期間T13の間)、活動する。
さらに、図11Dに示すように、高周波振動又は加速度を検出するパチニ小体は、皮膚変形の加速度が一定閾値を超えたとき(ここでは期間T11の最初と最後、及び期間T13の最初と最後)、活動する。
人間は、これら図11B,C,Dに示す活動により得た感覚を合成することで、物体との接触感を持つことができる。なお、図11の例は、皮膚の接触に関する刺激を行う例のため、ルフィニ終末への刺激は行っていないが、ルフィニ終末への刺激を行うためのモーター電圧の印加を同時に組み合わせるようにしてもよい。
具体的には、図11Eに示すように、メルケル細胞の活動期間(図11B)に対応して、期間T11,T12,T13の全ての期間に、一定間隔で陰極刺激を行うパルス電圧が電極部140に供給され、メルケル細胞刺激モードによる刺激が行われる。また、マイスナー小体の活動期間(図11C)に対応して、期間T11及び期間T13に、一定間隔で陽極刺激を行うパルス電圧が、電極部140に供給されて、マイスナー小体刺激モードによる刺激がなされる。
メルケル細胞刺激モードで刺激を行う期間と、マイスナー小体刺激モードで刺激を行う期間は混在しているため、電極駆動部160では、モードの切り替わりに対応して、パルス電圧の極性を切り替える処理が行われる。なお、図11の例では、メルケル細胞刺激モードで刺激を行うタイミングと、マイスナー小体刺激モードで刺激を行うタイミングは、パルス電圧を印加する時間が多少ずれており(例えば0.2msから10ms程度のずれが発生)、完全な同時刺激ではないが、この程度の時間のずれが生じても、人間の感覚上は同時に刺激があると感じる。
また、触覚提示装置100は、指fの腹fBと接触する電極部140と、その電極部140を水平方向に移動や振動させるモーター120だけの比較的簡単な構成で、4種類のモードの刺激を行うことができる。
なお、図1に示す触覚提示装置100では、電極部140を水平方向にシフトさせるシフト部材の一例として、モーター120を使用した例を示した。これに対して、モーター以外のシフト部材を使用して、電極部140を水平方向に移動させたり、振動させるようにしてもよい。
また、図1に示す触覚提示装置100の各部の構成(指の装着部110の形状や、モーター120の配置位置など)についても、一例を示すものであり、その他の構成としてもよい。
さらに、図4に示す電極素子141−1〜141−20の数や配置状態についても、一例を示すものであり、その他の配置状態としてもよい。
また、上述した実施の形態例では、指の腹の皮膚に触覚を提示する装置とした。これに対して、本発明は、指以外の箇所の皮膚に触覚を提示する装置に適用してもよい。
Claims (6)
- ユーザーの所定箇所の皮膚と接した状態で装着される装着部と、
前記装着部に取り付けられ、前記所定箇所の皮膚に接触する電極部と、
前記電極部の前記皮膚との接触位置をシフトさせるシフト部材と、
前記電極部に印加するパルス電圧により、前記所定箇所の皮膚に、特定の空間解像度の圧覚および特定の周波数の振動感覚を提示し、前記シフト部材による前記電極部の前記皮膚との接触位置のシフトにより、前記所定箇所の皮膚に、前記特定の空間解像度よりも低い空間解像度の皮膚ずれ感覚および前記特定の周波数よりも高周波の振動感覚を提示する制御部とを備える
触覚提示装置。 - 前記制御部は、前記電極部に印加するパルス電圧の極性の設定により、メルケル細胞をターゲットにしたパルス電圧の印加による圧覚の提示と、マイスナー小体をターゲットにしたパルス電圧の印加による前記特定の周波数の振動感覚の提示とを選択的に行うようにした
請求項1に記載の触覚提示装置。 - 前記制御部は、前記シフト部材による前記電極部の一方のシフトと他方のシフトを組み合わせた振動を行うことで、パチニ小体をターゲットにした刺激による前記高周波の振動感覚の提示を行い、前記振動による刺激時よりも前記電極部を大きくシフトさせることで、ルフィニ終末をターゲットにした刺激による皮膚ずれ感覚の提示を行う
請求項1又は2に記載の触覚提示装置。 - 前記シフト部材はモーターであり、
前記制御部は、前記モーターに対して一方の極性のパルス電圧と他方の極性のパルス電圧とを与えて前記電極部を振動させて、前記パチニ小体をターゲットにした刺激を行うと共に、前記モーターに対して一方の極性の電圧を与えて前記電極部を大きくシフトさせる
請求項3に記載の触覚提示装置。 - 前記電極部は、皮膚と接触する箇所に、所定間隔で配置した複数の電極素子を備え、
前記制御部は、前記パルス電圧を、前記複数の電極素子に順に供給する
請求項1〜4のいずれか1項に記載の触覚提示装置。 - 前記所定箇所は指であり、前記電極部は、指の腹の皮膚と接触するようにして、指の腹に対して触覚を提示する
請求項1〜5のいずれか1項に記載の触覚提示装置。
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