JP6664747B2 - コア/シェル型Ln錯体ナノ粒子 - Google Patents

コア/シェル型Ln錯体ナノ粒子 Download PDF

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Description

本発明は、新規なランタノイド金属(Ln)(以下、「ランタノイド金属」を、「Ln」という。)錯体を含むアップコンバージョン材料に関し、より詳細には、該アップコンバージョン材料としてのナノ粒子及びこれを用いたディスプレー、レーザー、センサー、エレクトロルミネッセンス及び光起電装置に関する。
アップコンバージョン材料は、近年、照明、バイオマーカー、太陽電池及び光触媒のような光エネルギー利用の分野において興味深い技術となりつつあり、低エネルギー光子からより高いエネルギー光子へ転換するその可能性において注目されている。太陽エネルギーは、豊富な再生可能エネルギー源であり、それ故、この光電変換系はその効果的な利用のために最適化の検討がなされてきた。
しかしながら、単接合太陽電池のエネルギー変換効率は、光吸収体のバンドギャップよりも低いエネルギーでの光吸収能力がないことに起因する32%までのShockley−Queisser限界に限られる(非特許文献1)。
さらに、従来の光起電装置は、主に屋外において1sunの光強度(100mW/cm)においてAM1.5のスペクトルについて最適化される。曇天及びセンサー技術における新たな屋内用途のためには、近赤外領域及び10−4sun乃至10−2sunの低い光強度における太陽電池の性能の最適化が必要である。
光エネルギー利用の分野においてこれらの目的を達成するために、低いエネルギー光子からより高いエネルギー光子への変換は、即ち、フォトン・アップコンバージョンは、興味深い技術となっている(非特許文献2乃至5)。
3価のLnイオン(Ln3+)発光は、長い発光寿命(μ秒又はm秒オーダー)を有するシャープな帯として現われ、そして高い化学的/耐光学的安定性を有するため、この特性は、ディスプレー、レーザー、センサー、エレクトロルミネッセンス及び光起電装置における広範な用途のために使用されている(非特許文献6乃至12)。
Shockley,W.ら,J.Appl.Phys.,32,510−519頁(1961年) Ende,B.M.,ら,Phys.Chem.Chem.Phys.,11,11081−11095頁(2009年) Zhou,D.ら,ACS Nano,10,5169−5179頁(2016年) Yu,J.ら,Nanoscale,8,4173−4180頁(2016年) Goldschmidt,J.C.ら,Adv.Optical Master.,3,510−535頁(2015年) Binnemans,K.ら,Chem.Rev.,102,2303−2345頁(2002年) Hasegawa,Y.ら、Appl.Phys.Lett.,83,3599−3601頁(2003年) Yang,X.ら,Nanoscale,8,11123−11129頁(2016年) Hanaoka、K.ら,J.Am.Chem.Soc.,126,12470−12476頁(2004年) Li,Y.ら,ACS Nano,10,2766−2773頁(2016年) Xu,H.ら,Coord.Chem.Rev.,293−294,228−249頁(2015年) Buenzli,J.−C.G.ら、Handbook on the Physics and Chemistry of Rare Earths,44,169−281頁(2014年) Schietinger,S.ら,Nano Lett.,9,2477−2481頁(2009年) Boyer,J.−C.ら,Nano Lett.,7,847−852頁(2007年) Wang,Z.ら,Mater.Lett.,65,3516−3518頁(2011年) Buenzli,J.−C.ら,Chem.Soc.Rev.34,1048−1077(2005年) Dong,H.ら,Chem.Soc.Rev.,44,1608−1634頁(2015年)
しかし、Lnが誘導するアップコンバージョン発光は、有機色素の光吸収(吸収係数 ε=10乃至10dmmol−1cm−1)よりもかなり小さな光吸収(吸収係数 ε=1乃至100dmmol−1cm−1)(非特許文献16)を有する電気双極子禁制(ラポルテ(Laporte)禁制)4f−4f電子遷移に起因している。それゆえ、かなり高い照射光強度(10mW/cm乃至10mW/cm)を有する連続波長(CW)レーザー励起が、Lnのアップコンバージョン発光に必要とされる(非特許文献17)。
このことは、この系が、太陽光照射のような特に低い励起光下の効率的な光エネルギーの利用に適切なものではないことを意味し、ゆえに、種々の太陽光を再生可能エネルギーとして使用することの実用化を阻んでいる。
Ln3+は、複数の中間エネルギーレベルを有し、そして、可視から赤外波長域まで所望の発光を示し得る。
その励起エネルギーは、低エネルギー光子がより高いエネルギー光子へ変換され得る金属間エネルギー移動経路を経て他の金属へ転換され得る。例えば、増感剤(Yb3+)及び発光体(Er3+、Ho3+、及びTm3+)がゲストとしてドープされたNaYFのような誘電性ホスト格子中において、増感剤としてのYb3+により吸収された近赤外(NIR)励起光が、Er3+、Ho3+、及びTm3+への多重エネルギー移動を経て、可視又は紫外光へ変換され得る(非特許文献13乃至15)。他のアップコンバージョンシステムもまた、三重項−三重項消滅及び二光子吸収に基づき報告されてきたが、スペクトル範囲及び光強度に関し効果的な光エネルギー利用のためには幾つかの限界がある。
本発明者らは、鋭意検討した結果、太陽光照射のような低い励起光下においてもアップコンバージョン発光を示す新規な発光体を開発する目的で、有機及び無機材料の錯体形成を通じた機能性界面の構築を見出した。
即ち、本発明は、
<1>
1)コア/シェル構造からなり、
2)前記コアは、Tm粒子、TmCl粒子、TmF粒子、Er粒子、ErCl粒子、ErF粒子、Ho粒子、 HoCl粒子又はHoF粒子であるランタノイド金属を含むナノ粒子からなり、
3)前記シェルは、Ln、Ln(NO、Ln(CHCOO)、Ln(CFSO、Ln(SO、Ln(CO、LnCl、LnBr又はLnI(式中、Lnは、ランタノイド金属を表す。)であるランタノイド金属層からなり、さらに
4)前記シェルには、スクアリウム系色素、シアニン系色素、フタロシアニン系色素、ポルフィリン系色素、アゾ化合物、クマリン系色素、インドリン系色素、エオシン、フルオレセイン、ローダミン、メロシアニン、クマリン、又はインドリンから選ばれる配位子を配位してなることを特徴とする、
コア/シェル型ランタノイド錯体ナノ粒子。
<2> 前記コアが、Tm粒子又はEr粒子である、<1>に記載のコア/シェル型ランタノイド錯体ナノ粒子。
<3> 前記シェル層のランタノイド金属が、Yb(NO、Yb(CHCOO)、Yb(CFSO、Yb(SO、Yb(CO、YbCl、YbBr,YbI又はErである、<1>に記載のコア/シェル型ランタノイド錯体ナノ粒子。
<4> 前記シェル層が、YbCl又はErである、<1>に記載のコア/シェル型ランタノイド錯体ナノ粒子
<5> 前記配位子が、インディゴ色素又はスクアリウム系色素から選ばれる配位子である、<1>に記載のコア/シェル型ランタノイド錯体ナノ粒子。
<6> 粒子径が、10nm乃至1000nmである、<1>に記載のコア/シェル型ランタノイド錯体ナノ粒子。
<7> 粒子径が、10nm乃至30nmである、<1>に記載のコア/シェル型ランタノイド錯体ナノ粒子。
<8> 粒子径が、15nm乃至25nmである、<1>に記載のコア/シェル型ランタノイド錯体ナノ粒子。
<9>
1)コア/シェル構造としてのコアに、Tm粒子、TmCl粒子、TmF粒子、Er粒子、ErCl粒子、ErF粒子、Ho粒子、 HoCl粒子又はHoF粒子であるランタノイド金属を含むナノ粒子を有し、
2)前記コアのランタノイド金属を含むナノ粒子に、シェルとしてLn、Ln(NO、Ln(CHCOO)、Ln(CFSO、Ln(SO、Ln(CO、LnCl、LnBr又はLnI(式中、Lnは、ランタノイド金属を表す。)であるランタノイド金属層を形成させコア/シェル構造のナノ粒子とし、
3)前記シェルを、スクアリウム系色素、シアニン系色素、フタロシアニン系色素、ポルフィリン系色素、アゾ化合物、クマリン系色素、インドリン系色素、エオシン、フルオレセイン、ローダミン、メロシアニン、クマリン、又はインドリンから選ばれる配位子で処理し、前記コア/シェル構造のナノ粒子上に配位子を配位させる、
コア/シェル型ランタノイド錯体ナノ粒子の製造方法。
10> <1>乃至<8>のいずれか1項に記載のコア/シェル型ランタノイド錯体ナノ粒子を含む、太陽電池。
11> <1>乃至<8>のいずれか1項に記載のコア/シェル型ランタノイド錯体ナノ粒子を含む、光触媒。
12> <1>乃至<8>のいずれか1項に記載のコア/シェル型ランタノイド錯体ナノ粒子を含む、センサー。
13> <1>乃至<8>のいずれか1項に記載のコア/シェル型ランタノイド錯体ナノ粒子を含む、バイオマーカー。
本発明によれば、新規なアップコンバージョン発光が提供される。この青色発光のアップコンバージョンは、太陽光照射出力よりもより有意に低い励起出力により得られ得る。
また、本発明によるナノ粒子は、照明、太陽電池、光触媒、センサー、エレクトロルミネッセンス、並びに、生物学的イメージング及び光療法等のバイオマーカー等に用いられる。
図1は、Tmナノ粒子(左図)及びコア/シェル型Tm/Yb酸化物ナノ粒子(右図)のSEM画像を示す図である。(注:コア/シェル構造のコアのLn金属をTm、シェルのLn金属をYbとした場合、Tm/Ybと表す。以下同様。) 図2は、(a)Tmナノ粒子、(b)Ybナノ粒子及び(c)コア/シェル型Tm/Yb酸化物ナノ粒子のTm 4d及びYb 4dのXPS帯(横軸を結合エネルギー(Binding Energy(eV))とし、縦軸を強度(任意)(Intensity(a.u.)で表す。)を示す図である。 図3は、(a)調製直後及び(b)焼成後のコア/シェル型Tm/Yb酸化物ナノ粒子のEDSパターン(横軸をエネルギー(Energy(eV))とし、縦軸を強度(任意)(Intensity(a.u.))で表す。)を示す図である。 図4は、分子組成及びサンプルの組成の模式図である。 図5は、インディゴ色素が配位したコア/シェル型Tm/Yb酸化物ナノ粒子のSEM画像(左図)、S原子のEDSマッピング(中央図)、及びYb原子のEDSマッピング(右図)を示す図である。 図6は、(a)インディゴ色素のみ、及び(b)コア/シェル型Tm/Yb酸化物ナノ粒子に配位したインディゴ色素のN 1s XPS帯(横軸を結合エネルギー(Binding Energy(eV))とし、縦軸を強度(任意)(Intensity(a.u.))で表す。)を示す図である。 図7は、インディゴ色素のみ(破線)、及びコア/シェル型Tm/Yb酸化物ナノ粒子に配位したインディゴ色素(実線)のFT−IRスペクトル(横軸を波数(Wavenumber(cm−1))とし、縦軸を透過率(Transmittance(%)で表す。)を示す図である。 図8は、(a)Tmナノ粒子、(b)コア/シェル型Tm/Yb酸化物ナノ粒子、(c)インディゴ色素が配位したコア/シェル型Tm/Yb酸化物ナノ粒子の、シンクロトロンXRPDパターン(λ=0.9988Å)(横軸を2θ(deg)とし、縦軸を比強度(Relative Intensityで表す。)を示す図である。 図9は、図8のXRPDパターンについてリートベルト法を用い解析したTmナノ粒子の回折パターンの結果(横軸を2θ(deg)とし、縦軸を強度(Intensity)で表す。)を示す図である。 図10は、Tm酸化物微結晶とナノ粒子の部分的な構造の違いを示す図である。 図11は、コア/シェル型酸化物ナノ粒子の表面におけるインディゴ色素からYb3+へのエネルギー移動(インディゴ色素が配位したYb/Yb酸化物ナノ粒子中のYb3+の発光スペクトル(a)、及びインディゴ色素が配位したTm/Yb酸化物ナノ粒子中のYb3+の発光スペクトル(b)励起波長は640nmであった。)(横軸を波長(Wavelength(nm))とし、縦軸を強度(任意)(Intensity(arb.units.))で表す。)を示す図である。 図12は、コア/シェル型酸化物ナノ粒子の表面におけるインディゴ色素からYb3+へのエネルギー移動(987nmにおいてモニターしたインディゴ色素が配位したYb/Yb酸化物ナノ粒子の励起スペクトル)(横軸を波長(Wavelength(nm))とし、縦軸を強度(任意)(Intensity(arb.units.))で表す。)を示す図である。 図13は、インディゴ色素の水溶液中における吸収(破線)及び発光スペクトル(実線、励起波長は610nm)(横軸を波長(Wavelength(nm))とし、縦軸を吸光度(Absorbance)及び強度(任意)(Intensity(a.u.))で表す。)を示す図である。 図14は、インディゴ色素の配位により誘発されたコア/シェル型Tm/Yb酸化物ナノ粒子のアップコンバージョン発光(CW Xeランプを用いた640nmの励起により測定された発光スペクトル)(横軸を波長(Wavelength(nm))とし、縦軸を強度(任意)(Intensity(arb.units.))で表す。)を示す図である。 図15は、インディゴ色素の配位により誘発されたコア/シェル型Tm/Yb酸化物ナノ粒子のアップコンバージョン発光(475nmにおいてモニターした励起スペクトル)(横軸を波長(Wavelength(nm))とし、縦軸を強度(任意)(Intensity(arb.units.))で表す。)を示す図である。 図16は、インディゴ色素(indigo dye)の配位により誘発されたコア/シェル型Tm/Yb酸化物ナノ粒子のアップコンバージョン発光(エネルギー移動(Energy transfer)経路の模式図)を示す図である。 図17は、各励起光強度におけるインディゴ色素の配位により誘発されたコア/シェル型Tm/Yb酸化物ナノ粒子によるアップコンバージョン発光(横軸を波長(Wavelength(nm))とし、縦軸を強度(任意)(Intensity(arb.units.))で表す。)、及びアップコンバージョン発光の励起光強度の依存性(図中右上図:横軸を励起光強度(mW/cm))とし、縦軸を発光強度(Emission Intensity)で表す。)を示す図である。 図18は、キノン系色素(1−ヒドロキシ−4−アミノアントラキノン)色素が配位したコア/シェル型Tm/Yb酸化物ナノ粒子の固体状態における吸収スペクトルを示す図である。 図19は、キノン系色素(1−ヒドロキシ−4−アミノアントラキノン)色素が配位したコア/シェル型Tm/Yb酸化物ナノ粒子のアップコンバージョン発光(CW Xeランプを用いた580nmの励起により測定された発光スペクトル)を示す図である。 図20は、スクアリウム系色素(2,4−Bis[8−hydroxyl−1,1,7,7−tetramethyljulolidin−9−yl]squaraineが配位したコア/シェル型Tm/Yb酸化物ナノ粒子の固体状態おける吸収スペクトルを示す図である。 図21は、スクアリウム系色素(2,4−Bis[8−hydroxyl−1,1,7,7−tetramethyljulolidin−9−yl]squaraineが配位したコア/シェル型Tm/Yb酸化物ナノ粒子のアップコンバージョン発光(CW Xeランプを用いた750nmの励起により測定された発光スペクトル)を示す図である。 図22は、各励起光強度におけるスクアリウム系色素の配位により誘発されたコア/シェル型Er/Er錯体ナノ粒子によるアップコンバージョン発光を示す図である。
次に本発明について以下述べる。
本発明によれば、低照度の励起で誘発される新規のアップコンバージョン発光系が提案される。
本発明のナノ粒子は、コア部分のLn含有ナノ粒子(例えばLnナノ粒子)、Ln3+イオン及び配位構造を有するシェルからなり、シェルにおいて配位子がLn3+イオンと配位している。
本発明のナノ粒子は、3価のLnイオン(Ln3+)を、効率的なアップコンバージョン発光を発生させるためのコア材料として使用する。Ln3+は、内殻の4f軌道の電子遷移に由来する固有かつ興味深い光学特性を示す。
Ln金属は、常温及び常圧において容易に酸素と反応させることができ、そしてしたがってLn酸化物は、最も安定でかつ一般的なLn化合物である。Ln酸化物ナノ粒子の使用は、一般的にアップコンバージョン材料として使用されているLnをドープした誘電材料のような合成の困難性は軽減され得る。
一般的に、Lnイオンは、酸素原子と結合すると熱による振動が生じ易く、発光が失活するため、発光材料としてわずかの報告があるのみである。したがって、アップコンバージョン材料のためのLn酸化物の用途のためには、光アンテナとしての有機化合物と反応し得る比表面積の大きいナノオーダーの構造を適用することが重要である。
また、本発明によるナノ粒子において、コアとして、Ln酸化物の他にLnハロゲン化物、Ln酸ハロゲン化物等の使用も可能である。Ln金属は、ハロゲンとの結合により、コアナノ粒子の格子振動による熱失活を抑制することができ、発光強度が増大し得る。
したがって、本発明のナノ粒子に用いるコア構造には、Ln酸化物ナノ粒子、例えば、Tmナノ粒子(粒径約15nm)を用いる他、Lnハロゲン化物ナノ粒子、Ln酸ハロゲン化物ナノ粒子等、例えば、Tm、TmCl、TmF、Er、ErCl、ErF、Ho、HoCl、HoF等の粒子が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
上記Ln酸化物ナノ粒子、Lnハロゲン化物ナノ粒子、Ln酸ハロゲン化物ナノ粒子等の粒子サイズとしては、10nm乃至1000nm、より好ましくは10nm乃至100nm、さらに好ましくは10nm乃至20nm、最も好ましくは15nm乃至16nmである。
本発明のコア/シェル型Ln錯体ナノ粒子において、ナノ粒子は、コアのLnを含むナノ粒子(例えば、Ln酸化物)がLn原子でコートされ、コア/シェル構造を形成することもできる。コアとシェルのLn金属は、任意の元素の組み合わせを使用する。例えば、シェルに用いるLn金属として、Ce、Pr、Nd、Sm、Dy、Ho、Er、Tm、Yb等が挙げられ、より好ましくは、Ce、Nd、Ho、Er及びYbが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
被覆に用いられるシェル層の材料として、ランタノイド金属(Ln)を有するLn(NO、Ln(CHCOO)、Ln(CFSO、Ln(SO、Ln(CO、LnCl、LnBr、LnI及びLnが挙げられるがこれらに限定されるものではない。より好ましくは、Yb(NO、Yb(CHCOO)、Yb(CFSO、Yb(SO、Yb(CO、YbCl、YbBr、YbI及びErであり、最も好ましくはYbClである。例えば、Er、上記Tmナノ粒子をYbClで被覆すること等でコア/シェル構造が形成される。なお、Erをコアとする場合、シェル層はErであることが好ましい。
本発明のコア/シェル型Ln錯体ナノ粒子において、ナノ粒子表面には、ランタノイド原子と錯体を形成することができる化合物を配する。該配位子化合物は、化合物構造中に、下記式:
−O−(A)−(B)−NH−
(式中A及びBは同一又は異なって−CR−又は−CR=CR−を表し、mは0乃至2、nは0乃至2を表し、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、又はC,N若しくはO原子を有する置換基を表す。)部分を有する化合物が好ましい。
本発明のコア/シェル型Ln錯体ナノ粒子において、配位させる該配位子化合物の具体例として、スクアリウム系色素、シアニン系色素、フタロシアニン系色素、ポルフィリン系色素、アゾ化合物、クマリン系色素、インドリン系色素、エオシン、フルオレセイン、ローダミン、メロシアニン、クマリン、又はインドリン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
より好ましい配位子化合物の一例として、下記式
に表されるインディゴ色素(インディゴカルミン)、

に表されるスクアリウム系色素(2,4−Bis[8−hydroxyl−1,1,7,7−tetramethyljulolidin−9−yl]squaraine等が挙げられる。
本発明において、太陽エネルギー利用の観点から、可視光波長領域における高い吸収特性を有する有機色素は、発光性Lnイオンのエネルギードナーとしての、大きな利用可能性を有する。
本発明によれば、光アンテナとしての有機色素を用いたLn錯体が、コア/シェル構造のナノ粒子界面に形成される。
Ln3+のff発光は、高い吸収係数を有する有機化合物からのエネルギー移動を通じて発現され得、Ln3+と有機配位子との間の配位結合の形成により最も効率的に促進されることが良く知られている。したがって、界面における錯体形成を伴う有機−無機ハイブリッド系が、低い光照射下でも効率的な光吸収及びエネルギー移動を実現し得、適切なアップコンバージョン材料のためのLnナノ粒子の新規な適用が提供される。
本発明のコア/シェル型Ln錯体ナノ粒子の一例として、 インディゴ色素が配位された本発明のコア/シェル型Ln酸化物ナノ粒子の場合を述べる。
Yb−インディゴ色素の界面錯体は、Ym酸化物ナノ粒子上にナノオーダーの薄膜層として形成される。Tm/Yb酸化物ナノ粒子上のインディゴ色素は、円滑な表面を形成すると考えられる。シェル層のYbイオン及びインディゴ色素のS原子は、ナノ粒子上に均一に分布し、したがって、この色素は、ナノ粒子上の表面においてYbイオンと均一に配位する。
本発明によるナノ粒子中のコアのそれぞれのTmイオンは6個の酸素イオンに囲まれ、ひずみのある8面体構造を形成している。大きい比表面積を有するナノ粒子の表面において、低配位のTmイオンが多数存在することから、Tmナノ粒子はバルクのTm粉末よりもより低い結晶系を示している。
ナノ粒子におけるような、金属イオンの対称性の低い環境は、発光や吸収を基本的に禁ずるLnイオンのff遷移を許容する。
Tmの結晶サイズDは、シェラーの式(Scherrer equation)を用いて約16nmと見積もられ、Yb及びインディゴ色素との結合により、わずかに結晶成長する(約18及び25nm)。これは、粒子の表面状態がナノ粒子間の結合状態に影響することを示し得るものである。
したがって、本発明によるコア/シェル型Ln錯体ナノ粒子の粒子サイズとしては、10nm乃至1000nm、より好ましくは10nm乃至100nm、さらに好ましくは10nm乃至30nm、最も好ましくは15nm乃至25nmである。
コア/シェル型Yb/Yb酸化物ナノ粒子の表面における界面錯体において、640nmの光励起により、Yb3+5/27/2と帰属される987nmの発光帯が観測された。発光帯位置においてモニターした励起スペクトルは、インディゴ色素のππ遷移に相当する位置に観測され、インディゴ色素からYb3+へのエネルギー移動がナノ粒子の表面において起こったものと確認される。このYb3+の発光帯は、コアをTmナノ粒子としたコア/シェル型Tm/Yb酸化物ナノ粒子において消失したため、励起エネルギーは、インディゴ色素からYb3+へのエネルギー移動後に、界面においてTm3+へと移動し得る。
本発明によるインディゴ色素が配位したコア/シェル型Tm/Yb酸化物ナノ粒子は、475nmにおいて青色発光を生じる。この発光は、Tm3+遷移に由来し、640nmの光励起により誘発され得る。即ち、界面錯体において、色素からYb3+へ、その後のYb3+からTm3+へというような多段階のエネルギー移動プロセスを通じたアップコンバージョン発光であることを示している。475nmにおいてモニターした励起スペクトルは、アップコンバージョン発光が、640nm付近におけるインディゴ色素のππ吸収からのエネルギー移動を通じて生じることを支持するものである。Tm3+のエネルギードナーであるYb3+の励起状態は、インディゴ色素からのエネルギー移動により効率的に生成されるものであり、禁制のff遷移の直接励起によって生成されるものではない。
本発明によるインディゴ色素が配位したコア/シェル型Tm/Yb酸化物ナノ粒子の発光強度は、励起強度に依存する。このアップコンバージョンの青色発光は、640±5nmにおける照射強度が1.4mW/cmの太陽光よりもかなり弱い光源であるCW Xeランプにより得られることが特筆すべき点である。本発明によるインディゴ色素が配位したTm/Yb酸化物ナノ粒子において、アップコンバージョン発光は、0.14mW/cmの励起光源においても可能である。
中間に介在する励起状態を利用した多段階吸収によるLnイオンのアップコンバージョンの系において、一般的に、発光状態を得るために必要な光子の数は、飽和しない条件下では、以下の関係により表される。
∝P
(式中Iはアップコンバージョン発光の強度を表し、Pは励起光強度を表し、そしてnはアップコンバージョンの発生に必要とされる光子の数を表す。)
低いエネルギーレベルを経たアップコンバージョンによりTm3+状態から発光させるためには、図16に示したように3つの光子を必要とする(N〜3)。
本発明によるインディゴ色素が配位したTm/Yb酸化物ナノ粒子の界面錯体を用いた系においては、I及びPの線形関係が得られ(n=1)、このことは、Tm3+への多段階エネルギー移動に必要なYb3+の励起状態が、インディゴ色素からのエネルギー移動により界面で高密度に得られることを示す。
アップコンバージョン発光の絶対量子収率(φUC)を、積分球及び640nmにおいて0.01mW/cm付近のより低い出力密度を有する150W Xeランプを使用し測定する場合、注目すべきは、インディゴ色素が配位したTm/Yb酸化物ナノ粒子のφUCは、このようなより低い光照射下においても0.3%に達したことである。これは、ナノ粒子上での界面錯体の形成による色素からYb3+への分子内エネルギー移動、及びコア/シェル界面でのYb3+からTm3+への金属間エネルギー移動が効率的に生じた結果であり、太陽光のようなかなり微弱な励起光によりLnを用いたアップコンバージョン発光を観測した最初のものである。
本発明による色素が配位したナノ粒子の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、本発明による色素が配位したコア/シェル型Tm/Yb酸化物ナノ粒子の製造方法としては以下の方法がある。
(1)粒子サイズ約15nmのTmナノ粒子は10mMのTbClエタノール溶液に浸漬し、70℃において60分間撹拌後、400℃で60分間焼成することで、Yb酸化物又は水酸化物の薄膜層がTmナノ粒子上に形成される。
(2)次いで、インディゴ色素(インディゴカルミン)水溶液のpHをpH8に調整し、コア/シェル型Tm/Yb酸化物ナノ粒子を加え60分間撹拌する。
これにより、インディゴ色素は、Tmナノ粒子の表面上のYbイオンと配位する。後述するXPS及びFT−IRにより、Tm/Yb酸化物ナノ粒子上でインディゴ色素はYbイオンとインドール骨格の窒素及びカルボニル基の酸素と配位結合を形成していることが確認できる。
本発明によれば、太陽光照射のような低い励起光下でもアップコンバージョンの青色発光を示す、コア/シェル型Ln錯体ナノ粒子、例えば、インディゴ色素が配位したコア/シェル型Ln含有ナノ粒子、より詳細にはインディゴ色素が配位したコア/シェル型Yb/Tm酸化物ナノ粒子で構成された新規のアップコンバージョン発光系が提供される。例えば、本発明によるYb−インディゴ色素の界面錯体が、コアのTmナノ粒子上でナノオーダーの薄膜シェル層として形成される。
以下の実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
<試薬>
Ln酸化物ナノ粒子及びLn塩化物は関東化学株式会社で購入した。インディゴ色素は東京化成工業株式会社で購入した。また、特に明記のない限り、その他の試薬及び溶媒は、関東化学又は和光純薬工業から購入したものをそのまま使用した。
<測定装置>
SEM画像は、インレンズ(in−lens)二次電子検出器を備えたZEISS ULTRA 55走査型電子顕微鏡(Carl−Zeiss NTS GmbH製)により得た。
EDS分析は、上記装置にBruker−QUANTAX検出器を用い測定した。
X線光電子分光分析(XPS)を、Al−Kα モノクロメータX線源(1253.6keV)を備えたKRATOS AXIS ULTRA DLD(島津製作所製)を用いて行い、結合エネルギーは、Au 4fレベル(84.0eV)で校正した。
シンクロトロン粉末X線回折(XRPD)パターンは、SPring−8 BL02B2ビームライン、検出器にイメージングプレートを用い、そして、照射X線波長が0.9988Åを備える大型デバイ−シェラーカメラ(Debye−Scherrer camera)を用いて得た。
FT−IRスペクトルは、Nicolet iS5(サーモサイエンティフィック(Thermo Scientific)社製)によりダイヤモンドクリスタルを備える減衰全反射(ATR)モードで測定した。
電子吸収及び発光スペクトルは、絶対反射測定用付属装置を備えるShimadzu UV−3100、及びHoriba Jobin−Ybon Fluorog3−22でそれぞれ測定した。
励起光源は、Horiba Jobin−Ybon Fluorog3−22に付属されるXeランプを用い、励起光強度は、NDフィルターを用いることで調整した。レーザー光源には、671nm 50mW DPSS レーザーを用い、可変式電源により強度を調整した。
蛍光量子収率は、C9920−02 Absolute PL Quantum Yield Measurement System(浜松ホトニクス株式会社製)を用いることにより測定した。
実施例1
コア/シェル型Tm/Yb酸化物ナノ粒子の製造。
粒子サイズが約15nmのTmナノ粒子(関東化学社製)を窒素雰囲気下200℃において20分間焼成し、表面に吸着している水を除去した。Tmナノ粒子(10wt%)0.4gを10mMのYbCl・6HO(関東化学社製) エタノール溶液5mLに浸漬させ、そして70℃において60分間攪拌した。溶液をろ過し除去した後に、得られたナノ粒子を400℃において60分間焼成した。
実施例2
インディゴ色素が配位したコア/シェル型Tm/Yb酸化物ナノ粒子の製造。
インディゴ色素(インディゴカルミン、東京化成工業社製)を超純水に溶解し(1.25mM)、トリエチルアミンを加えpH8に調整した。このインディゴ色素水溶液に実施例1で得られたTm/Yb酸化物ナノ粒子(10wt%)を加え、コロイド状の懸濁液を60分間攪拌させた。得られた青色のナノ粒子は、エタノールで洗浄しその後に真空で乾燥させた。
実施例4
スクアリウム系色素が配位したコア/シェル型Tm/Yb酸化物ナノ粒子の製造。
スクアリウム系色素(2,4−Bis[4−(N,N−dibenzylamino)−2,6dihydroxyphenyl]squaraine(Aldrich社製))をクロロホルムに溶解し(0.3mM)、実施例1で得られたTm/Yb酸化物ナノ粒子(5wt%)を加え、コロイド状の懸濁液を60分間攪拌させた。得られた青色のナノ粒子は、クロロホルムで洗浄しその後に真空で乾燥させた。
実施例5
コア/シェル型Er/Yb酸化物ナノ粒子の製造。
(注:コア/シェル構造のコアのLn金属をEr、シェルのLn金属をYbとした場合、Er/Ybと表す。以下同様。)
コア/シェル型Tm/Yb酸化物ナノ粒子において、Tmナノ粒子の代わりにErナノ粒子を用いた以外は実施例1と同様の方法でEr/Yb酸化物ナノ粒子を製造した。
実施例6
フタロシアニン系色素が配位したコア/シェル型Er/Yb酸化物ナノ粒子の製造。
フタロシアニン系色素(Sn(IV)2,3−ナフタロシアニンジクロリド(東京化成工業社製))を1−メチル−2−ピロリドンに溶解し(0.2mM)、実施例5で得られたEr/Yb酸化物ナノ粒子(5wt%)を加え、コロイド状の懸濁液を60分間攪拌させた。得られた灰色のナノ粒子は、エタノールで洗浄しその後に真空で乾燥させた。
実施例7
スクアリウム系色素が配位したコア/シェル型Er/Yb酸化物ナノ粒子の製造。
スクアリウム系色素(2,4−Bis[8−hydroxyl−1,1,7,7−tetramethyljulolidin−9−yl]squaraine(Aldrich社製))をクロロホルムに溶解し(1.0mM)、実施例5で得られたEr/Yb酸化物ナノ粒子(5wt%)を加え、コロイド状の懸濁液を60分間攪拌させた。得られた青色のナノ粒子は、クロロホルムで洗浄しその後に真空で乾燥させた。
比較例1
インディゴ色素が配位したYb/Yb酸化物ナノ粒子の製造。
ナノ粒子の表面におけるインディゴ色素からYbイオンへのエネルギー移動を明らかにするために、Ybナノ粒子をコア構造としてYbナノ粒子(関東化学社製)を用いた以外は、実施例1及び2と同様の方法で製造した。
実施例8
スクアリウム系色素が配位したEr酸化物ナノ粒子の製造。
スクアリウム系色素が配位したEr酸化物ナノ粒子は、該色素を配位させるナノ粒子にErを用いた以外は、実施例7と同様の方法で製造した。
結果
実施例1及び比較例1の結果を以下に示す。
実施例1におけるコア/シェル型Tm/Yb酸化物ナノ粒子の構造を、図1に示す。図1の査型電子顕微鏡(SEM)画像の結果から、Ybシェル層の形成によるTmナノ粒子の構造の変化は観測されなかった。
コア/シェル型Tm/Yb酸化物ナノ粒子の元素組成を、X線光電子分光法(XPS)及びエネルギー分散型X線分析装置(EDS)によって確認した。図2に示すように、Tm/Yb酸化物ナノ粒子(c)において、Tm(図中a)及びYb(図中b)の4dXPS帯が、それぞれのオキシドのバンドに相当する176eV及び185eVにそれぞれ観測された。
エネルギー分散型X線分析(EDS)の測定結果を図3に示す。コア/シェル型Tm/Ybナノ粒子においては、2.6keV周辺にClピークがなかったため、Yb酸化物又は水酸化物が、コロイド懸濁反応と焼成過程によりTmナノ粒子上に生成されたものと結論した。
実施例2において、Tm/Yb酸化物ナノ粒子をインディゴ色素(インディゴカルミン)と反応させることにより、図4に示すような構造の鮮やかな青色のナノ粒子を得た。
図5は、実施例2におけるインディゴ色素が配位したTm/Yb酸化物ナノ粒子のSEM画像を示す。図1中に示す実施例1のTm及びTm/Yb酸化物ナノ粒子と比較し、Tmの平均粒子サイズ15nmは、表面上におけるインディゴ色素の配位によりほとんど変化がなかったことから、Yb−インディゴ色素の界面錯体が、Tmナノ粒子上にナノオーダーのシェル層として形成されたことを示す。
実施例2においてTm/Yb酸化物ナノ粒子をインディゴ色素(インディゴカルミン)と反応させた後の、XPS分析及びFT−IR分析の結果を、それぞれ図6及び図7に示す。
図6のXPS及び図7のFT−IRの結果により、Tm/Yb酸化物ナノ粒子上のインディゴ色素のインドール骨格の窒素及びカルボニル基の酸素と配位結合を形成していることが示された。即ち、図6及び図7の結果において、399.8eVにおけるインディゴ色素のN1s XPS帯が、Tm/Yb酸化物ナノ粒子の配位によるより高いエネルギー側の400.5eVへ部分的にシフトされた。そしてまた、1700cm−1周辺のインディゴ色素のC=O伸縮振動が、Tm/Yb酸化物ナノ粒子上に消失し、そして酸素を介したYbイオン及び色素の間の結合が証明された。
このことは、Yb−O結合に帰属する602cm−1の新しいピークの出現によっても良く支持されるものである。
また、図5のEDSマッピングから、シェル層のインディゴ色素のS原子及びY原子は、ナノ粒子上に均一に分布し、したがって、この色素は、ナノ粒子上の表面においてYbイオンと均一に配位したといえる。
図8に、本発明によるインディゴ色素が配位したTm/Yb酸化物ナノ粒子(図中c)、Tmナノ粒子(図中a)、及びTm/Yb酸化物ナノ粒子(図中b)、のシンクロトロン粉末X線回折(XRPD)パターンを示す。また、各化合物のセルパラメーターを表1に纏める。
表1.各ナノ粒子のセルパラメーター.
Tmナノ粒子の構造解析の結果、α=13.802Å、b=3.441Å、c=8.506Å、β=100.175°、V=397.66Å、及びZ=6の単斜構造(空間群C2/m)を与えた。
また、リートベルト解析より得られたTmナノ粒子の回折パターンのシュミレーションの結果を図9に示す。得られたRwp及びR値は、それぞれ、0.13及び0.17であった。
さらに、図10から、それぞれのTmイオンは6個の酸素イオンに囲まれ、ひずみのある8面体構造を形成していると考えられた。また、酸化物のナノ粒子化により希土類イオン周辺の対称性が低下し、発光を強く促すのに非常に適した構造であることが証明された。
実施例9
コア/シェル型Tm/Yb錯体ナノ粒子(インディゴ色素が配位したTm/Yb酸化物ナノ粒子)のアップコンバージョン発光。
実施例2で得られたインディゴ色素が配位したTm/Yb酸化物ナノ粒子の発光スペクトルを、CWXeランプの励起波長640nmを用いて測定した。
結果
インディゴ色素が配位したYb/Yb酸化物ナノ粒子の発光スペクトルの測定結果を図11に示す。インディゴ色素を有するYb/Yb酸化物ナノ粒子は、987nmにおける発光帯を示し、これは、Ybイオンの5/27/2と帰属された。
また、987nmの発光帯でモニターした図12に示す励起スペクトルは、インディゴ色素のππ遷移に相当する位置に観測され、インディゴ色素からYbイオンへのエネルギー移動がナノ粒子の表面において起こったことを確認した。
図13に示すようなインディゴ色素の発光帯は、界面でYbイオンと錯形成することにより消失したため、界面のエネルギー移動プロセスは効率的のようである。
一方、インディゴ色素が配位したTm/Yb酸化物ナノ粒子において、640nm励起によるYbイオンの近赤外発光は、図11に示すように、観測されなかった。
インディゴ色素からYbイオンへのエネルギー移動後に、励起エネルギーは、界面においてTmイオンへと移動し得る。
図14は、可視波長領域においてインディゴ色素の配位により誘発されたTm/Yb酸化物ナノ粒子のアップコンバージョン発光を示す。640nm励起において、ナノ粒子は、475nmに青色発光を生じた。
Tmイオンの移動から生じた青色の発光は、赤色の光励起により誘発され得る。
即ち、界面錯体において、色素からYbへ、その後のYbからTmへというような多段階のエネルギー移動プロセスを通じたアップコンバージョン発光であることを示している。475nmにおいてモニターした励起スペクトルは、アップコンバージョン発光が、640nm付近におけるインディゴ色素のππ吸収からのエネルギー移動を通じて生じることを支持するものである(図15参照)。
一方、インディゴ色素が配位していない場合、酸化物ナノ粒子(実施例1)中のTm3+のアップコンバージョン発光は、Yb3+の直接励起によっては観測されることはなかった。Tm3+のためのエネルギードナーとしてのYb3+の励起状態は、インディゴ色素からのエネルギー移動により効率的に生成されるものであり、禁制のff遷移の直接励起によって生成されるものではないといえる(図16参照)。
その他の代表的なコア/シェル型Ln酸化物錯体ナノ粒子の結果を、図18及び図19(実施例3)に示す。
また比較例1の結果を、図20及び図21に示す。
実施例10
励起出力におけるアップコンバージョンの依存性の測定。
実施例2で得られたインディゴ色素が配位したTm/Yb酸化物ナノ粒子の発光スペクトルを、CWXeランプの励起波長640nmを用いて種々の出力で測定した。
その結果、発光強度は、図17に示すように励起出力に依存し、図17中右上に示すように励起出力及びアップコンバージョン発光強度とは比例関係であることが分かった。このアップコンバージョンの青色発光は、640±5nmにおいて1.4mW/cmの太陽光照射出力よりもかなり低い励起光出力であるCW Xeランプにより得られ得ることが特筆すべき点である。
本発明によるインディゴ色素と配位させたTm/Yb酸化物ナノ粒子によるアップコンバージョン発光は、0.14mW/cmの励起出力においても得られることが明らかとなった。
実施例11
励起出力におけるアップコンバージョンの依存性の測定。
実施例8で得られたスクアリウム系色素が配位したEr/Er酸化物ナノ粒子の発光スペクトルを、CWレーザーの励起波長671nmを用いて種々の出力で測定した。
その結果、発光強度は、図22に示すように励起出力に依存していることが分かった。
図17及び図22に示すように、本発明のナノ粒子はいずれも、従来の発光材料と比較して、太陽光照射のような低い励起出力下においてもアップコンバージョン発光を示す新規なナノ粒子であることが示された。
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は、かかる特定の実施態様に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲において、種々の改良・変更が可能である。
本発明によれば、新規なアップコンバージョン発光が提供される。この青色発光のアップコンバージョンは、太陽光照射出力よりもより有意に低い励起出力により得られ得る。
本発明によるナノ粒子を用いることにより、照明、太陽電池、光触媒、センサー、エレクトロルミネッセンス、並びに、生物学的イメージング及び光療法等のバイオマーカー等における可能性ある用途として期待される。

Claims (13)

  1. 1)コア/シェル構造からなり、
    2)前記コアは、Tm粒子、TmCl粒子、TmF粒子、Er粒子、ErCl粒子、ErF粒子、Ho粒子、 HoCl粒子又はHoF粒子であるランタノイド金属を含むナノ粒子からなり、
    3)前記シェルは、Ln、Ln(NO、Ln(CHCOO)、Ln(CFSO、Ln(SO、Ln(CO、LnCl、LnBr又はLnI(式中、Lnは、ランタノイド金属を表す。)であるランタノイド金属層からなり、さらに
    4)前記シェルには、スクアリウム系色素、シアニン系色素、フタロシアニン系色素、ポルフィリン系色素、アゾ化合物、クマリン系色素、インドリン系色素、エオシン、フルオレセイン、ローダミン、メロシアニン、クマリン、又はインドリンから選ばれる配位子を配位してなることを特徴とする、
    コア/シェル型ランタノイド錯体ナノ粒子。
  2. 前記コアが、Tm粒子又はEr粒子である、請求項1に記載のコア/シェル型ランタノイド錯体ナノ粒子。
  3. 前記シェル層のランタノイド金属が、Yb(NO、Yb(CHCOO)、Yb(CFSO、Yb(SO、Yb(CO、YbCl、YbBr,YbI又はErである、請求項1に記載のコア/シェル型ランタノイド錯体ナノ粒子。
  4. 前記シェル層が、YbCl又はErである、請求項1に記載のコア/シェル型ランタノイド錯体ナノ粒子
  5. 前記配位子が、インディゴ色素又はスクアリウム系色素から選ばれる配位子である、請求項1に記載のコア/シェル型ランタノイド錯体ナノ粒子。
  6. 粒子径が、10nm乃至1000nmである、請求項1に記載のコア/シェル型ランタノイド錯体ナノ粒子。
  7. 粒子径が、10nm乃至30nmである、請求項1に記載のコア/シェル型ランタノイド錯体ナノ粒子。
  8. 粒子径が、15nm乃至25nmである、請求項1に記載のコア/シェル型ランタノイド錯体ナノ粒子。
  9. 1)コア/シェル構造としてのコアに、Tm粒子、TmCl粒子、TmF粒子、Er粒子、ErCl粒子、ErF粒子、Ho粒子、 HoCl粒子又はHoF粒子であるランタノイド金属を含むナノ粒子を有し、
    2)前記コアのランタノイド金属を含むナノ粒子に、シェルとしてLn、Ln(NO、Ln(CHCOO)、Ln(CFSO、Ln(SO、Ln(CO、LnCl、LnBr又はLnI(式中、Lnは、ランタノイド金属を表す。)であるランタノイド金属層を形成させコア/シェル構造のナノ粒子とし、
    3)前記シェルを、スクアリウム系色素、シアニン系色素、フタロシアニン系色素、ポルフィリン系色素、アゾ化合物、クマリン系色素、インドリン系色素、エオシン、フルオレセイン、ローダミン、メロシアニン、クマリン、又はインドリンから選ばれる配位子で処理し、前記コア/シェル構造のナノ粒子上に配位子を配位させる、
    コア/シェル型ランタノイド錯体ナノ粒子の製造方法。
  10. 請求項1乃至8のいずれか1項に記載のコア/シェル型ランタノイド錯体ナノ粒子を含む、太陽電池。
  11. 請求項1乃至8のいずれか1項に記載のコア/シェル型ランタノイド錯体ナノ粒子を含む、光触媒。
  12. 請求項1乃至8のいずれか1項に記載のコア/シェル型ランタノイド錯体ナノ粒子を含む、センサー。
  13. 請求項1乃至8のいずれか1項に記載のコア/シェル型ランタノイド錯体ナノ粒子を含む、バイオマーカー。
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