JP6657689B2 - 関係情報設定方法、流速計測方法、関係情報設定システム及び流速計測システム - Google Patents
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Description
本実施形態に係る流速計測システムは、例えば、ボイラーなどの蒸気製造装置と負荷設備との間に配設される配管内を流れる流体(例えば、蒸気)の流速を計測可能なシステムである。
本実施形態に係る流速計測システム100は、図1に示すように、加熱部(熱交換器)2と、プレヒーター2bと、温度計測部3と、制御ユニット(流速算出部)4と、を含む。図1において、配管10は、蒸気製造装置20(ボイラーなど)と負荷設備30との間に配設されている。蒸気製造装置20からの蒸気が配管10を流れ、負荷設備30に送られる。負荷設備30において、蒸気又は蒸気の熱が利用される。負荷設備30から排出された蒸気はドレンとして回収され、還水槽(不図示)に集約された後、蒸気製造装置20に再度給水される。また、配管10の周りには断熱材が巻かれている。
なお、ここでいう熱交換器は、温度の高い物体から温度の低い物体へ熱を移動させるものである。ヒーターは、熱交換器の例に該当する。
なお、図2において、矢印B11は、流体が配管10内を流れる向きの例を示している。
具体的には、メモリ63は、配管10の表面10aにおける温度分布と、配管10の内部を流れる流体の流速との関係を示す関係情報を予め(流速の計測よりも前に)記憶しておく。メモリ63は記憶部の例に該当する。メモリ63が記憶する関係情報では、流体の流速毎に、当該流速と温度分布とが対応付けられている。
そして、温度計測部3が配管10の表面10aにおける温度分布を計測すると、CPU62は、関係情報を参照して、温度計測部3が計測した温度分布に最も近い(例えば、差の絶対値の合計が最も小さい)温度分布に対応付けられている流速を読み出して、流速の計測値とする。
関係情報は、配管10の温度定常状態における熱の伝わりを、有限要素法で解析して求めることができる。以下では、制御ユニット4が有限要素法の計算を行う場合を例に説明するが、他のコンピュータを用いて有限要素法の解析を行うようにしてもよい。
配管10に有限要素法を適用するために、配管10の領域をセル(部分領域)に分割する。
同図に示す領域A11は、管内の領域(流体が流れる領域)を示す。領域A12は、配管10の領域(管壁の領域)を示す。領域A13は、配管10の周りに巻かれた断熱材の領域を示す。領域A14は、断熱材の外側の空気の領域を示す。また、矢印B11は、流体が配管10内を流れる向きの例を示している。
また、配管10の軸方向(長手方向)に関しては、例えば3mm幅など比較的小さい幅で均等に分割する。
また、加熱部2としてリング状のヒーターを用い、図4に示すように、配管10の長手方向における加熱部2の厚みを無視する。特に、加熱部2が、配管10の管壁の領域A12のセルのうち1つのみに入熱するものとして近似する。また、加熱部2自体の容量の影響は無視する(容量が十分に小さいものとする)。
以下の熱バランスによる方程式(以下の式(1))をセル毎に設定しておき、制御ユニット4が、有限要素法を用いて解析することで、セル間の温度差を算出する。有限要素法の解法(連立方程式の解法)として、例えばNewton-Raphson法を用いることができる。但し、制御ユニット4が用いる解法は、Newton-Raphson法に限らず、連立方程式に適用可能ないろいろな解法を用いることができる。
座標(i,j)に位置するセルにおける熱バランスは、式(1)のように表される。
上記のように、セル毎に熱バランスによる方程式(式(1))を設定する。当該方程式の設定は、例えば流速計測システム100のユーザーが行って、制御ユニット4のメモリ63に記憶させる。そして、制御ユニット4は、流速の設定値毎に有限要素法による解析を行って、温度分布と流速との関係を示す関係情報を取得する。
A[m2]は、伝熱面積を示す。ここでは、配管10のセルが管内の流体に接する面積である。
Δt[K]は、隣接するセルとの温度差を示す。ここでは、配管10と管内の流体との接触部分における温度差を示す。
λ[W/(m(メートル)・K)]は、配管10の素材(例えば鋼鉄)の熱伝導率を示す。
L[m]は、管軸方向(配管10の軸方向)におけるセルの長さを示す。
Δt[K]は、上記のように、隣接するセルとの温度差を示す。ここでは、配管10の半径方向に隣接する配管10のセル同士の接触部分における温度差を示す。
lnは、自然対数を示す。
ro/ri[m]は、半径方向におけるセル間の距離(例えば、セルの中心間の距離)を示す。
A[m2]は、上記のように、伝熱面積を示す。ここでは、配管10のセル同士(配管10の半径方向に隣接する配管10のセル)が接する面積である。
Δt[K]は、上記のように、隣接するセルとの温度差を示す。ここでは、管軸方向に隣接する配管10のセル同士の接触部分における温度差を示す。
Redは、レイノルズ数(Reynolds Number)を示す。
Prは、プラントル数(Prandtl Number)を示す。
XWTは、温度を修正する係数であり、加熱部2(ヒーター)からの距離に応じた値を取る。特に、XWTは、加熱部2の近傍について温度を高くする(すなわち、熱伝達を大きくする)。以下では、XWTを熱伝達率修正係数と称する。
di[m]は、配管10の内径を示す。
αi[W/(m2・K)]は、配管10の内部における熱伝導率を示す。
ν[m2/s]は、配管10内を流れる流体の動粘性係数を示す。
di[m]は、配管10の内径を示す。
ρ[kg(キログラム)/m3(立方メートル)]は、流体の密度を示す。
Cp[kJ(キロジュール)/(kg・K)]は、流体の比熱を示す。
同図に示すように、加熱部2のヒーターの設置位置(座標X1)の近傍で、熱伝達率修正係数XWTの値を1よりも大きくする。
例えば、流速計測システム100のユーザーが、配管10に流速既知の流体を流して温度分布を測定し、得られた計測結果に基づいて熱伝達率修正係数XWTの値を設定するようにしてもよい。
W[J(ジュール)/s]は、加熱部2による加熱量を示す。
G[kg/s]は、配管10を流れる流体の全流量を示す。
ΔT[℃(度)]は、加熱部2のヒーターの加熱による流体の上昇温度を示す。
YHTは、管断面を流れる流体の全量のうち、加熱部2のヒーターからの熱の伝達に寄与する流体の量(加熱部2のヒーターの加熱による熱を受けた流体の量)の割合を示す。具体的には、管断面における流体全体の面積をSとし、管断面における流体のうちヒーターの加熱による熱を受けた部分の面積をS1として、YHT=S1/Sと表される。以下では、YHTを温度境界係数と称する。
上述した温度分布の実測により、図6に示すように流速が速いほど温度境界係数YHTの値を小さくすることで、温度分布の解析値を実測値に近づけることができた。また、図6に示すように、流体が空気である場合と蒸気である場合とで、温度境界係数YHTの値として同じ値を用いて、温度分布の解析値を実測値に近づけることができた。
図7に示す温度境界係数YHTの値は、図6に示す温度境界係数YHTの値と同様である。具体的には、流速10m/s〜約31m/sの範囲では、図6に示す温度境界係数YHTの値を直線補間した値となっている。また、約31m/s以上の流速では、温度境界係数YHTの値は一定(0.185)となっている。
図8は、本実施形態に係る関係情報設定システムの概略構成を示す図である。図8に示す各部のうち、図1の各部に対応して同様の機能を有する部分には同一の符号(2、2b、3、4、10、20、30)を付して説明を省略する。
流速計5は流速計測部の例に該当し、配管10内を流れる流体の流速を計測する。流速計5を備えることで、関係情報設定システム101は、配管10における温度分布と、配管10内を流れる流体の流速とを計測する。これにより、関係情報設定システム101は、配管10の表面10aにおける温度分布と、配管10の内部を流れる流体の流速との実測値における対応関係を取得する。
また、関係情報設定システム101では、制御ユニット4は、流速計測システム100での制御ユニット4の機能に加えて、上述した、配管10の温度定常状態における熱の伝わりを有限要素法で解析する機能を有している。関係情報設定システム101の制御ユニット4は、流速計測システム100での制御ユニット4の機能を有している点で、流速算出部の例に該当する。
そこで、制御ユニット4が、配管10の温度定常状態における熱の伝わりを流体の流速毎に有限要素法で解析して関係情報を取得する。これにより、ユーザーが関係情報設定システム101を設定する負担を低減させることができる。制御ユニット4は、関係情報設定部の例に該当する。
制御ユニット4は、例えば、熱伝達率修正係数XWTの値と温度境界係数YHTの値との組み合わせを複数用意しておく。そして、制御ユニット4は、関係情報設定システム101が実測した流速(流速計5が計測した流速)について、熱伝達率修正係数XWTの値と温度境界係数YHTの値との組み合わせ毎に、有限要素法による解析を行って配管10における温度分布を算出する。そして、制御ユニット4は、配管10における温度分布の実測値に最も近い解析値を得られた、熱伝達率修正係数XWTの値と温度境界係数YHTの値との組み合わせを採用する。
同図の横軸は、配管10内を流れる流体の流れ方向(配管10の管軸方向)における所定の基準位置からの距離を示す。座標値が小さい側が、流体の流れの上流側を示し、座標値が大きい側が、流体の流れの下流側を示す。縦軸は、温度を示す。なお、加熱部2のヒーターの設置位置は、横軸の座標値0.5の位置である。
図9の例では、ヒーターの設置位置(横軸座標値0.5)の近傍で、配管10の温度の解析値が実測値よりも高くなっている箇所がある。特に、領域A21で配管10の温度の解析値が実測値よりも高くなっている。また、ヒーターの設置位置から下流側でも、配管10の温度の解析値が実測値よりも高くなっている箇所がある。
そこで、制御ユニット4は、例えば図5に示す例のように熱伝達率修正係数XWTの値を設定する。熱伝達率修正係数XWTの値を1より大きく設定することで、配管10の温度の解析値が低くなる。これは、配管10が流体によって冷却されることに相当する。
また、図9の例では、領域A22において、配管10の温度の解析値が実測値よりも低くなっている。そこで、制御ユニット4は、例えば図6及び図7に示す例のように温度境界係数YHTの値を設定する。これにより、配管10を流れる流体の温度が高く算出されるようになり、配管10の温度分布のうち当該流体から熱を受ける領域A22の部分の温度も高く算出されるようになる。
図10の横軸及び縦軸は、図9の場合と同様である。また、加熱部2のヒーターの設置位置も、図9の場合と同様、横軸の座標値0.5の位置である。
また、領域A21、A22は、それぞれ図9の領域A11、A12に対応する。
このように、熱伝達率修正係数XWTおよび温度境界係数YHTを導入することで、制御ユニット4による配管10の温度分布の解析精度が向上している。これにより、メモリ63が記憶する関係情報の精度が向上する。関係情報の精度が向上することで、制御ユニット4が当該情報を参照して取得する流速計測値の精度が向上する。
この場合、制御ユニット4が、有限要素法による解析を行う際に温度境界係数を用いることで、温度分布の解析値を実測値に近づけることができる。これにより、(流速算出部としての)制御ユニット4が温度分布の実測値から流速を求める際に、温度分布の実測値と関係情報に示される温度分布との乖離が小さくなる。当該乖離が小さくなることで、制御ユニット4は、関係情報に示される温度分布のうち、実測値に対応する温度分布を精度よく選択することができ、選択した温度分布に対応する流速を取得できる。この点で、制御ユニット4は、流速を精度よく求めることができる。
これにより、関係情報設定システム101では、配管10の温度分布と配管10を流れる流体の流速との関係を示す関係情報を、温度境界係数を用いない場合よりも精度よく求めることができる。関係情報の精度が高いことで、制御ユニット4(流速算出部)が当該関係情報を用いて流体の流速を算出する際に、流速を精度よく求めることができる。
これにより、制御ユニット4(関係情報設定部)は、流体の流速に応じた温度境界係数の値を用いることができ、関係情報をより高精度に求めることができる。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
Claims (8)
- 配管の内部を流れる流体の流速と前記配管の表面の温度分布との関係を示す関係情報を求める関係情報設定方法であって、
前記配管の表面の所定部分で熱交換を行う熱交換工程と、
前記配管を流れる流体のうち、前記配管の表面の所定部分で行われる熱交換による熱の伝達に寄与する流体の量的割合を示す温度境界係数であって、前記配管と前記流体との接触部分における温度差を算出するための係数である温度境界係数の値を取得する温度境界係数値取得工程と、
前記温度境界係数値取得工程で取得した温度境界係数の値に基づいて前記関係情報を求める関係情報設定工程と、
を含む関係情報設定方法。 - 前記温度境界係数値取得工程では、前記流体の流速毎に前記温度境界係数の値を取得する、
請求項1に記載の関係情報設定方法。 - 前記所定部分で熱交換が行われた前記配管の管軸方向における前記配管の表面の温度分布を計測する温度計測工程と、
前記流体の流速を計測する流速計測工程と、
を含み、
前記温度境界係数値取得工程では、前記温度計測工程で計測した前記温度分布、及び、前記流速計測工程で計測した流速に基づいて前記温度境界係数の値を設定する、
請求項1または請求項2に記載の関係情報設定方法。 - 配管の内部を流れる流体の流速が計測対象の流速となっている状態で、前記配管の表面の所定部分で熱交換を行う流速計測時熱交換工程と、
前記流速計測時熱交換工程にて前記所定部分で熱交換が行われた前記配管の管軸方向における前記表面の温度分布を計測する流速計測時温度分布計測工程と、
前記流速計測時温度分布計測工程で計測した前記温度分布、及び、請求項1から3のいずれか一項に記載の関係情報設定方法にて得られた関係情報に基づいて、前記配管の内部を流れる前記流体の流速を求める流速取得工程と
を含む流速計測方法。 - 配管の内部を流れる流体の流速と前記配管の表面の温度分布との関係を示す関係情報を求める関係情報設定システムであって、
前記配管の表面の所定部分で熱交換を行う熱交換器と、
前記配管を流れる流体のうち、前記配管の表面の所定部分で行われる熱交換による熱の伝達に寄与する流体の量的割合を示す温度境界係数であって、前記配管と前記流体との接触部分における温度差を算出するための係数である温度境界係数の値を取得する温度境界係数値取得部と、
前記温度境界係数値取得部が取得した温度境界係数の値に基づいて前記関係情報を求める関係情報設定部と、
を備える関係情報設定システム。 - 前記温度境界係数値取得部は、前記流体の流速毎に前記温度境界係数の値を取得する、 請求項5に記載の関係情報設定システム。
- 前記所定部分で熱交換が行われた前記配管の管軸方向における前記配管の表面の温度分布を計測する温度計測部と、
前記流体の流速を計測する流速計測部と、
を備え、
前記温度境界係数値取得部は、前記温度計測部が計測した前記温度分布、及び、前記流速計測部が計測した流速に基づいて前記温度境界係数の値を設定する、
請求項5または請求項6に記載の関係情報設定システム。 - 請求項5または請求項6に記載の関係情報設定システムと、
前記関係情報設定部が設定した関係情報を記憶する記憶部と、
配管の内部を流れる流体の流速が計測対象の流速となっている状態で、前記配管の表面の所定部分で熱交換を行う熱交換器と、
前記所定部分で熱交換が行われた前記配管の管軸方向における前記配管の表面の温度分布を計測する温度計測部と、
前記温度計測部が計測した温度分布、及び、前記記憶部が記憶している関係情報に基づいて、前記流体の流速を算出する流速算出部と、
を備える流速計測システム。
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