しかしながら、特許文献1に記載された鋸では、輸送時や鋸盤に装着する際などに不用意にチップが外れてしまうことがあり、外れてしまったチップを付け直す作業が煩雑であるという問題がある。
本発明は上記事情に鑑み、煩雑な作業を必要とせず、凍結材を製材する場合であっても挽き曲がりを抑えることができる鋸を提供することを目的とする。
上記目的を解決する本発明の鋸は、鋸身の縁部から突出した複数の鋸歯を有する鋸において、
前記鋸歯は、
歯端から歯喉角で内側に傾斜した後、歯底に向かう厚み面と、
歯先部分に設けられ、前記鋸身の厚さ寸法よりも大きなアサリ幅寸法の第1アサリと、
前記第1アサリより前記歯底に近く、前記厚み面よりも内側に盛られた第2アサリとを備え、
前記厚み面は、前記歯端から内側に向かう内向部と、該内向部と前記歯底を結ぶ接続部とを有するものであり、
前記第2アサリは、前記内向部と前記接続部の境部分から該接続部に沿って形成された下流底側部分を有するものであることを特徴とする。
本発明の鋸において、前記接続部は、前記境部分において前記内向部と交差した面で該内向部に連結したものであってもよい。
また、上記目的を解決する鋸は、鋸身の縁部から突出した複数の鋸歯を有する鋸において、
前記鋸歯は、
歯端から歯喉角で内側に傾斜した後、歯底に向かう厚み面と、
歯先部分に設けられ、前記鋸身の厚さ寸法よりも大きなアサリ幅寸法の第1アサリと、
前記第1アサリより前記歯底に近く、前記厚み面よりも内側に設けられた係止部と、
前記係止部に係止され、前記鋸身の厚さ寸法よりも大きなアサリ幅寸法の第2アサリとを有するものであることを特徴とする。
ここで、鋸は、丸鋸やチップソーであってもよいし、鋸身の縁部において周方向に隣接した複数の鋸歯を備えた帯鋸であってもよい。前記係止部は、溝であってもよいし、貫通孔であってもよいし、スリットであってもよい。前記第1アサリは、歯先部分を折り曲げ等によって交互に振り分けたアサリ(振り分けアサリ)であってもよいし、歯先部分に合金を肉盛溶接し不要部分を研磨することで、あるいは歯先部分を押しつぶすことで台形形状に形成したアサリ(ばち形アサリ)であってもよい。
また、前記第2アサリは、剛体であってもよいし、弾性体であってもよい。前記第2アサリは、歯端から前記厚み面に沿いつつ歯底に向けて移動し該歯室に溜まるはずの鋸屑が前記鋸身の厚み方向両側にこぼれ落ちてしまうことを抑制する部材である。さらに、前記第2アサリは、剛体である場合には、前記第1アサリのアサリ幅寸法以下のアサリ幅寸法のものであり、前記第1アサリのアサリ幅寸法未満のアサリ幅寸法のものであることが好ましい。前記第2アサリは、例えば、ブラシやスポンジ等の柔軟なもの、あるいはゴム等の弾性限界が大きいものである場合には、前記第1アサリのアサリ幅寸法以上のアサリ幅寸法のものであってもよい。
この鋸によれば、前記第2アサリによって、歯端から前記厚み面に沿って移動し該歯室に溜まるはずの鋸屑が前記鋸身の厚み方向両側にこぼれ落ちてしまうことを抑制することができる。この結果、挽き材面に鋸屑が付着しにくくなり、凍結材を製材する場合であっても挽き曲がりを抑えることができる。また、前記第2アサリは、前記係止部に係止されているため、輸送時や鋸盤に装着する際などに不用意に該第2アサリが外れてしまうことも抑えられる。これにより、外れてしまった第2アサリを付け直すといったような煩雑な作業が不要になる。なお、本発明の鋸は、凍結材を製材する場合に特に効果を奏するものであるが、凍結していない木材を製材する場合であっても支障なく用いることができ、挽き材面に鋸屑が付着しにくくなるという点で効果を奏するものである。
また、この鋸において、前記第2アサリは、前記鋸身の厚み方向両側に張り出した一対の張出部を有するものであり、
前記一対の張出部は、前記係止部における、前記厚み方向両側にも位置するものであってもよい。
こうすることで、歯室から鋸身の厚み方向両側に鋸屑がこぼれ落ちてしまうことをより効率的に防ぐことができる。
さらに、この鋸において、前記厚み面は、歯端から内側に向かう内向部と、前記内向部と前記歯底を結ぶ接続部とを有するものであり、
前記係止部は、前記内向部と前記接続部の境部分の内側に設けられたものであることが好ましい。
ここで、前記接続部は曲面であってもよい。また、前記係止部がスリットである場合は、前記鋸の走行方向と直交する方向よりも該走行方向の上流側に向けて、前記境部分から延在したものであってもよい。また、前記スリットは、前記内向部の延長線上に設けられた切り欠きであってもよい。なお、ここにいう走行方向とは、切削する際の鋸歯の移動方向のことであり、往復移動する鋸の場合には、初期位置に戻す移動方向のことではなく、初期位置から切削を開始した際の鋸歯の移動方向のことである。
歯端から前記内向部に沿って移動してきた鋸屑は、前記内向部と前記接続部の境部分から、鋸身の厚み方向両側にこぼれ落ちやすいという傾向がある。このため、前記係止部を、前記境部分の内側に設ける態様を採用すれば、鋸屑のこぼれ落ちをより効果的に防ぐことができる。
さらに、この鋸において、前記第2アサリは、前記鋸身の厚み方向両側に張り出した一対の張出部と、該一対の張出部を連結する連結部とを有するものであり、
前記連結部は、前記境部分に設けられたものであってもよい。
ここで、前記連結部は、前記境部分から外側に突出していないものであってもよい。すなわち、前記連結部は、前記境部分の形状に倣った形状のものであってもよい。また、前記第2アサリは、その素材は限定されず、樹脂やゴム等で構成してもよいが、鋸身と同じく合金工具鋼鋼材等の金属で構成した場合には、該第2アサリを前記係止部に係止させた状態で、該第2アサリと併せて鋸歯を研磨することもできる。
また、この鋸において、前記厚み面は、歯端から内側に向かう内向部と、前記内向部と前記歯底を結ぶ接続部とを有するものであり、
前記係止部は、前記接続部に設けられたものであってもよい。
ここで、前記係止部は、前記接続部における、前記内向部側と前記歯底側のうちの該内向部側に設けられたものであってもよいし、前記接続部における、前記歯端よりも内側に設けられたものであってもよい。また、前記内向部は、前記歯端から前記歯喉角で内側に傾斜した傾斜部で構成されたものであってもよいし、該傾斜部と、該傾斜部から前記接続部まで延在した曲面部とを有するものであってもよい。あるいは、前記歯端から前記歯喉角で内側に傾斜した第1傾斜部と、該第1傾斜部とは内側に向かう角度が異なる第n傾斜部(ただし、n≧2)を有していてもよい。さらに、前記接続部は、外側に向かう外向部そのものであってもよいし、前記内向部につながった垂直部と該垂直部につながった該外向部とを有するものであってもよい。特に、垂直部が設けられた場合には、前記係止部は、該垂直部と該外向部の境部分の内側に設けられたものであってもよい。なお、前記外向部は、傾斜部であってもよいし、曲面部であってもよい。
また、この鋸において、前記第2アサリは、前記接続部よりも内側に位置する部分を有する態様も好ましい態様の一つである。
ここで、前記第2アサリは、前記接続部よりも内側に位置する部分のみで構成されたものであってもよいし、前記内向部よりも内側に位置する部分も有するものであってもよい。
上記目的を解決する第2の鋸は、鋸身の縁部から突出した複数の鋸歯を有する鋸において、
前記鋸歯は、
歯端から歯喉角で内側に傾斜した後、歯底に向かう厚み面と、
歯先部分に設けられ、前記鋸身の厚さ寸法よりも大きなアサリ幅寸法の第1アサリと、
前記第1アサリよりは前記歯底に近く、前記厚み面よりも内側に盛られた第2アサリとを有するものであることを特徴とする。
ここで、前記第2アサリは、前記厚み面よりも内側に付着されたものであってもよい。より具体的には、接着されたものであってもよいし溶着されたものであってもよい。
この第2の鋸においても、前記第2アサリによって、挽き材面に鋸屑が付着しにくくなり、凍結材を製材する場合であっても挽き曲がりを抑えることができる。さらに、前記第2アサリは、前記第1アサリよりは前記歯底に近く、前記厚み面よりも内側に盛られたものであるため、該第2アサリが不用意に外れてしまうこともなくなり、外れてしまった第2アサリの付け直しといった煩雑な作業が生じることはない。
また、この第2の鋸において、前記第1アサリと、前記第2アサリとが一体的に盛られたものであってもよい。
こうすることで、前記第1アサリと併せて前記第2アサリを盛ることができ、作業を容易にすることができる。
さらに、この第2の鋸において、前記厚み面は、歯端から内側に向かう内向部と、前記内向部と前記歯底を結ぶ接続部とを有するものであり、
前記第2アサリは、前記接続部よりも内側に位置する部分を有するものである態様も好ましい態様の一つである。
前記第2アサリを、前記接続部よりも内側に位置する部分を有する態様とすれば、鋸屑のこぼれ落ちをより効果的に防ぐことができる。
本発明によれば、煩雑な作業を必要とせず、凍結材を製材する場合であっても挽き曲がりを抑えることができる鋸を提供するを提供することができる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
本発明は、帯鋸、丸鋸やチップソー等、様々な鋸に適用することができるが、以下の説明では、本発明を帯鋸に適用した形態を例に挙げて説明する。
図1(a)は、本発明の帯鋸11を一対の鋸車9,9に巻き掛けた鋸車ユニット90を概念的に示す図であり、同図(b)は、同図(a)に示す鋸車ユニット90を右方向から見た図である。図1に示す鋸車ユニット90は、単独で、あるいは複数並べて帯鋸盤に設置されるものである。
図1に示すように、鋸車ユニット90は、上下に間隔をあけて配置された一対の鋸車9,9と、これら鋸車9,9に巻き掛けられた帯鋸11とを備えている。図1(a)において円弧状の矢印で示すように、上下一対の鋸車9,9それぞれは、時計回りに回転するものであり、一対の鋸車9,9が回転すると、直線の矢印で示すように、帯鋸11が時計回りに走行する。なお、図1(a)に示す鋸車ユニット90を右方向から見ている同図(b)では、帯鋸11は、下方に向かって走行する。以下の説明では、帯鋸が走行する方向を走行方向D1と称することがある。本実施形態の帯鋸11は、図1(a)では手前側の縁、同図(b)では左側の縁に複数の鋸歯1Bを有している。なお、鋸歯1Bの詳しい説明は後述する。
図1(a)では、一点鎖線で示す木材Wが、走行する帯鋸11に向けて図の手前側から奥側に送られ、これによって木材Wが切削される。また、図1(b)では、不図示の木材が、走行する帯鋸11に向けて図の左側から右側に送られ、これによって木材Wが切削される。なお、図1(b)において、帯鋸11の右側の縁にも複数の鋸歯を設け、木材が図の左側から右側に送られてくる場合も、木材が図の右側から左側に送られてくる場合も、いずれの場合でも木材を切削できる態様を採用することもできる。すなわち、本発明は、往復挽き用の両歯帯鋸に適用することも可能である。
本実施形態の帯鋸11を詳しく説明する前に、従来の鋸の一部を示した図2〜図4を用いて、本明細書および特許請求の範囲で用いる用語の意義を説明する。すなわち、本明細書および特許請求の範囲における用語は、図2〜図4を用いた以下の説明に基づき解釈するものとする。
図2は、本明細書および特許請求の範囲で用いる用語の意義を説明するための図である。この図2では、縁部を含む鋸身1Aの一部と、複数の鋸歯1Bのうちの一部の鋸歯1Bを示している。
図2に示すように、鋸10は、鋸身1Aと、この鋸身1Aの縁部から突出した鋸歯1Bとを有している。鋸歯1Bは、最も底になる箇所が歯底53になり、先端が歯端51になる。図2では、歯端51を結ぶ歯端線L1を太い二点鎖線で示しており、歯底53を結ぶ歯底線L2を細い二点鎖線で示している。すなわち、鋸10のうち、歯端線L1と歯底線L2との間の部分が鋸歯1Bに相当し、鋸歯1B以外の部分が鋸身1Aに相当する。また、鋸歯1Bと鋸歯1Bとの間には歯室4が形成されており、この歯室4は、切削時に生じた鋸屑を収容する空間である。なお、本明細書では、鋸歯1Bにおいて、歯端51側(図では上側)を先端側TIと称し、歯底53側(図では下側)を底側BOと称することがある。なお、鋸が、例えば丸鋸である場合には、歯端線L1は歯端円になり、歯底線L2は歯底円になる。
図2に示す鋸10は、図の右側から左側に向けて走行するものであり、図2では、右側から左側に向かう矢印によって走行方向D1を示している。この走行方向D1は、鋸歯1Bの移動方向に相当し、図の右側が走行方向における上流UPになり、図の左側が走行方向における下流DWになる。なお、丸鋸やチップソーの場合には、回転軸方向に見て、走行方向は周方向に一致する。
図2に示すように、鋸歯1Bにおける、走行方向の下流DW側には、厚み面5が設けられており、この厚み面5は、内向部5Aと接続部5Bとを有している。また、内向部5Aと接続部5Bとの境が境部分52になる。なお、厚み面5は、切削時に生じた鋸屑が歯底方向へ移動する際に伝っていく面でもある。内向部5Aは、歯端51から内側に向かう部分であり、ここでいう内側とは、走行方向の上流UP側を意味し、より具体的には、走行方向と直交する方向D2よりも、走行方向の上流UP側を意味するものとする。図2に示す鋸10では、内向部5A全体が歯喉角αで内側に傾斜している。歯喉角αは、すくい角とも称され、木材の硬度等によってその大きさが調整される角度であり、この歯喉角αを大きくすればするほど切削抵抗が小さくなり切れ味が良くなる一方、歯先は弱くなる。接続部5Bは、内向部5Aと歯底53とを結ぶ部分であり、境部分52から歯底53まで外側(走行方向の下流DW側であり、より具体的には、走行方向と直交する方向D2よりも、走行方向の下流DW側)に向かっている。図2では、厚み面5等の内側を、符号INを付した矢印で示しており、厚み面5等の外側を、符号OUTを付した矢印で示している。
図3は、図2に示す鋸10とは厚み面5の構成が異なる鋸10を示す図である。
図2に示す鋸10は、前述したように内向部5A全体が歯喉角αで内側に傾斜したものであるが、図3(a)に示すように、内向部5Aが、歯端51から歯喉角αで内側に傾斜した傾斜部と、この傾斜部から接続部5Bまで延在した曲面部とを有するものであってもよい。なお、内向部5Aのうち、歯端51から歯喉角αで内側に傾斜した傾斜部が、すくい面に相当し、歯喉と称される場合もある。また、接続部5Bは、図3(a)において二点鎖線で示すように、外側に向かう二つの曲面部が連続したものであってもよい。また、図3(b)において実線で示すように、接続部5Bを外側に傾斜した傾斜部で構成してもよいし、図3(b)において二点鎖線で示すように、走行方向と直交する方向D2に延在した垂直部とこの垂直部につながり、外側に向かって傾斜した傾斜部とを有するものであってもよい。
図4(a)は、図2に示す鋸10のB−B断面図であり、走行方向の下流側から見た図である。図4(b)は、振り分けアサリを採用した場合における、図4(a)に対応する状態を示す図である。
図2および図4(a)に示すように、鋸歯1Bにおける、歯端51を含む歯先部分には、第1アサリ3が設けられている。この第1アサリ3は、先端部分の幅であるアサリ幅寸法W1が最も大きく、このアサリ幅寸法W1を、鋸身1Aの厚さ寸法Tよりも大きく形成することで、材料と鋸との接触抵抗を減少させている。ここで、図2および図4(a)に示す鋸10の第1アサリ3には、図4(a)に示すように走行方向から見て台形状のアサリ(ばち形アサリ)を採用しているが、図4(b)に示すように、歯先部分を折り曲げ等によって交互に振り分けたアサリ(振り分けアサリ)を採用してもよい。なお、図4(a)および同図(b)では、鋸身1Aの厚み方向を符号D3を付した両矢印で示している。すなわち、鋸身1Aの厚み方向とは、図4では紙面の左右方向になり、図2および図3では紙面に直交する方向になる。
次いで、図1に示す帯鋸11を詳細に説明する。なお、以下に説明する本発明の実施形態や変形例においては、図2〜図4を用いて説明した鋸10における構成要素の名称と同じ名称の構成要素には、これまで用いた符号を付して説明し、重複する説明は省略することがある。
図5(a)は、図1(b)に示す帯鋸11の円で囲んだA部を拡大して示す図である。なお、図1(b)では、走行方向D1が下方に向かっているが、図5(a)では、図2に対応させて、走行方向D1が、図の右側から左側に向かう方向になるように向きを変更している。図5(b)は、同図(a)に示す第2アサリ7を上から見た状態を示す図であり、同図(c)は、同図(a)の円で囲んだD部を拡大して示す図である。また、図6(a)は、図5(a)に示す帯鋸11を、左斜め上方から見た斜視図であり、図6(b)は、図5(a)のC−C断面図である。
図5(a)および図6(a)に示すように、帯鋸11は、鋸歯1Bに設けられた係止部6と、この係止部6に係止された第2アサリ7とを有している。本実施形態の係止部6はスリットであり、第1アサリ3よりも底側BOであって、内向部5Aと接続部5Bの境部分の内側に設けられている。また、図5(c)に示すように、本実施形態における帯鋸11の内向部5A(図5(a)参照)は、図2に示す鋸10と同様に、全体が歯喉角αで内側に傾斜した傾斜部で構成されており、この内向部5Aの延長線上に係止部6が設けられている。
本実施形態の第2アサリ7は、例えば、合金工具鋼鋼材で構成された帯鋸11よりも柔らかい金属、例えば、ステンレス鋼によって構成されている。なお、第2アサリ7の素材は限定されるものではなく、樹脂によって構成してもよいし、帯鋸11と同じ金属(例えば、合金工具鋼鋼材)で構成してもよいし、さらには、ブラシやスポンジ等の柔軟なもの、あるいはゴム等の弾性限界の大きいもので構成することもできる。
図5(b)に示すように、第2アサリ7は、一対の張出部72と、これら一対の張出部72を連結する連結部71を有し、平面視において略U字状に形成されている。図5(a)および図6(a)では、走行方向D1における中央の係止部6に第2アサリ7を係止させる動きを一点鎖線の矢印で示しており、内向部5Aにおける、第1アサリ3よりも底側BOの部分を、一対の張出部72の間に挿入させつつ、連結部71を係止部6に挿入させる動きになる。これにより、図5(a)および図6(a)において、走行方向の上流UP側の係止部6に示すように、第2アサリ7が係止される。
図6(b)に示すように、係止部6に第2アサリ7が係止された状態では、鋸身1Aの厚み方向D3の両側それぞれに張出部72が張り出し、第2アサリ7のアサリ幅寸法W2が、鋸身1Aの厚さ寸法Tよりも大きくなっている。また、本実施形態では、第2アサリ7のアサリ幅寸法W2が、第1アサリ3のアサリ幅寸法W1より小さく設定されている。なお、本実施形態の第1アサリ3は、例えば、ステライト(登録商標)を歯先部分に肉盛溶接した後、余分な部分を研削して台形状に形成されたばち形アサリである。ここで、第1アサリとしては、替歯式(着脱式)のものを採用することもできる。
また、図5(c)および図6(a)に示すように、一対の張出部72は、係止部6における、厚み方向D3の両側にも位置している。さらに、図5(a)、同図(c)、図6(a)および同図(b)に示すように、一対の張出部72は、接続部5Bの内側に位置する部分、すなわち内向部5Aと接続部5Bの境部分よりも底側BOに位置する底側部分721を有している。なお、この底側部分721を、図5(a)、同図(c)および図6(b)ではクロスハッチングで示し、図6(a)では、塗りつぶして示している。
本実施形態の帯鋸11は、鋸身1Aの厚さ寸法Tよりも大きなアサリ幅寸法W2の第2アサリ7を有するため、歯端51から歯底53に向けて厚み面5に沿って移動してきた鋸屑を歯室4に留め、鋸身1Aの厚み方向D3の両側に鋸屑がこぼれ落ちてしまうことを抑制することができる。特に、本実施形態の帯鋸11は、鋸身1Aの厚み方向D3の両側それぞれに張出部72が張り出し、この張出部72は、係止部6における、厚み方向D3の両側にも位置している。さらに、一対の張出部72は、接続部5Bの内側に位置する底側部分721を有している。これらにより、歯室4から鋸身1Aの厚み方向D3両側に鋸屑がこぼれ落ちてしまうことをより効率的に防ぐことができる。この結果、挽き材面に鋸屑が付着しにくくなり、凍結材を製材する場合であっても挽き曲がりを抑えることができる。
また、第2アサリ7は、係止部6に係止されているため、輸送時や鋸車に装着する際などに不用意に外れてしまうことも抑えられる。これにより、外れてしまった第2アサリ7を付け直すといったような煩雑な作業が不要になる。
本実施形態の第2アサリ7は、ステンレス鋼等の金属で構成され、一対の張出部72間の間隔を、鋸歯1Bの厚さ寸法と略同じか、あるいは若干大きく設定している。ここで、第2アサリ7を金属や樹脂で構成し、一対の張出部72間の間隔を、鋸歯1Bの厚さ寸法よりも若干小さく設定することで、第2アサリ7を弾性変形させながら一対の張出部72間に内向部5Aを挿入させる態様を採用してもよい。この態様を採用すれば、一対の張出部72によって内向部5Aが挟み込まれるため、係止部6に係止されることとの相乗効果により第2アサリ7がより外れにくくなる。
また、第2アサリ7を、ブラシやスポンジなどの柔軟な素材、あるいはゴム等の弾性限界が大きい素材で構成し、この第2アサリ7のアサリ幅寸法W2を、第1アサリ3のアサリ幅寸法W1以上に設定してもよい。この態様とすれば、歯室4から鋸身1Aの厚み方向D3両側への鋸屑のこぼれ落ちをより少なくすることができる。
次に、図5および図6に示す帯鋸11の変形例について説明する。以下に説明する変形例においては、図5および図6に示す実施形態との相違点を中心に説明し、重複する説明は省略することがある。
図7(a)は、第1変形例の帯鋸12について、図5(a)に対応する状態を示す図であり、図7(b)は、第1変形例の帯鋸12について、図6(a)に対応する状態を示す図であり、図7(c)は、同図(a)の円で囲んだE部を拡大して示す図である。
図7(a)〜同図(c)に示すように、第1変形例の帯鋸12における連結部71は、内向部5Aと接続部5Bの境部分から外側に突出していないものである。すなわち、連結部71は、境部分の形状に倣った形状に構成されている。この帯鋸12によれば、第2アサリ7を係止部6に係止させた状態で、鋸歯1Bの研磨作業が可能になる。
ここで、第2アサリ7としては、予め境部分から外側に突出していない形状の連結部71を有するものを用いてもよいし、当初の連結部71は、図5および図6に示す形状であったものが、研磨作業によって鋸歯1Bとともに研磨され、境部分から外側に突出していない形状になったものでもよい。
図8(a)は、第2変形例の帯鋸13について、図5(a)に対応する状態を示す図であり、図8(b)は、第2変形例の帯鋸13について、図6(a)に対応する状態を示す図であり、図8(c)は、同図(a)において円で囲んだF部を拡大して示すである。
図8(a)および同図(b)に示すように、第2変形例の帯鋸13における係止部6は、内向部5Aと接続部5Bの境部分の内側に設けられたスリットである。具体的には、係止部6は、図8(a)において一点鎖線で示す、内向部5Aの延長線L3よりも、走行方向の上流UP側に向けて境部分から延在したものである。
次いで、本発明の鋸と本発明の第2の鋸との双方を適用した第2実施形態の帯鋸について説明する。
図9(a)は、第2実施形態の帯鋸14について、図5(a)に対応する状態を示す図であり、図9(b)は、同図(a)に示す帯鋸14を、左斜め上方から見た斜視図であり、同図(c)は、同図(a)のG−G断面図である。
図9(a)および同図(b)に示すように、第2実施形態の帯鋸14においても、第1アサリ3よりは歯底53に近く、厚み面5よりも内側に第2アサリ7が設けられている。この第2アサリ7は、図8(c)に示すように、鋸身1Aの厚み方向D3の両側に張り出した一対の張出部72を有しており、第2アサリ7のアサリ幅寸法W2は、鋸身1Aの厚さ寸法Tよりも大きく、第1アサリ3のアサリ幅寸法W1よりも小さく設定されている。また、鋸歯1Bにおける、第2アサリ7が設けられた部分には、鋸身1Aの厚み方向D3に貫通した貫通孔なる係止部6が形成されており、係止部6には、連結部71が挿通されている。この連結部71によって、一対の張出部72が連結されている。この第2アサリ7は、肉盛溶接によって金属が盛られて形成されたものであるが、例えば、樹脂からなる第2アサリを、溶着、あるいは接着剤によって接着することで鋸歯1Bに付着させてもよい。また、係止部6を、貫通していない穴や溝等によって構成してもよいし、係止部6と連結部71を省略し、張出部72を鋸歯1Bに付着させる態様も採用することができる。なお、連結部71を省略する態様は、本発明の第2の鋸を適用した態様に相当する。
また、第2アサリ7は、図9(a)および同図(c)では、クロスハッチングで示し、同図(b)では塗り潰して示すように、接続部5Bよりも内側に位置する底側部分721を有するものである。
第2実施形態の帯鋸14によっても、歯室4から鋸身1Aの厚み方向D3両側に鋸屑がこぼれ落ちてしまうことを防ぐことができ、特に、底側部分721によって鋸屑のこぼれ落ちを効率的に防ぐことができる。この結果、挽き材面に鋸屑が付着しにくくなり、凍結材を製材する場合であっても挽き曲がりを抑えることができる。さらに、第2アサリ7は、鋸歯1Bに盛られたものであるため、第2アサリ7が不用意に外れてしまうことをより確実に防止することができる。
次いで、本発明の第2の鋸を適用した第3実施形態の帯鋸について説明する。
図10(a)は、第3実施形態の帯鋸15について、図5(a)に対応する状態を示す図であり、図10(b)は、同図(a)に示す帯鋸15を、左斜め上方から見た斜視図であり、同図(c)は、同図(a)のH−H断面図である。
図10(a)〜同図(c)に示すように、第3実施形態の帯鋸15では、第1アサリ3と第2アサリ7が一体的に盛られた連続アサリ8が設けられている。この連続アサリ8は、図2に示す第1アサリ3と同様に、ステライト(登録商標)を肉盛溶接した後、余分な部分を研削して形成されるものである。また、第1アサリ3と第2アサリ7とが一体的に形成された連続アサリも、替歯式(着脱式)とする構成を採用してもよい。
図10(c)に示すように、連続アサリ8は、第1アサリ3が、アサリ幅寸法W1から底側BOに向かうに従い徐々に幅が小さくなり、第2アサリ7に連続している。第2アサリ7のアサリ幅寸法W2は、第1アサリ3のアサリ幅寸法W1より小さく、鋸身1Aの厚さ寸法Tよりも大きい。なお、図10(c)の二点鎖線で示すように、第2アサリ7も、アサリ幅寸法W2から底側BOに向かうに従い徐々に幅が小さくなる形状に設けてもよい。
また、連続アサリ8は、図10(a)および同図(b)に示すように、連続アサリ8によって内向部5Aが形成されており、具体的には、内向部5Aは、第1アサリ3と、第2アサリ7における先端側TIの部分とによって構成されている。第2アサリ7の底側BOの部分は、内向部5Aの延長線上に設けられ、底側部分721を形成している。
図11(a)は、第3実施形態の変形例である帯鋸16について、図5(a)に対応する状態を示す図であり、図11(b)は、同図(a)に示す帯鋸16を、左斜め上方から見た斜視図であり、同図(c)は、同図(a)のI−I断面図である。
図11(a)〜同図(c)では、内向部5Aと接続部5Bの境部分52よりも底側BOに位置する底側部分721のうち、境部分52よりも下流DW側に位置する下流底側部分721aを塗りつぶして示している。下流底側部分721aは、境部分52から接続部5Bに沿って形成されており、この下流底側部分721aによっても、歯室4からの鋸屑のこぼれ落ちを効率的に防ぐことができる。
本発明は上述の実施の形態に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことが出来る。例えば、本実施形態では、係止部6を、内向部5Aと接続部5Bの境部分52の内側に設けているが、係止部6を、接続部5Bの内側に設ける態様としてもよい。また、本実施形態では、第2アサリ7を鋸歯1Bに設けているが、第2アサリ7を、鋸歯1Bから鋸身1Aにかけて設けててもよい。
なお、以上説明した各実施形態や各変形例の記載それぞれにのみ含まれている構成要件であっても、その構成要件を他の実施形態や変形例に適用してもよい。